(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805087
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】油圧バケットの油圧制御システム
(51)【国際特許分類】
B66C 3/18 20060101AFI20201214BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20201214BHJP
B66C 13/12 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
B66C3/18
F15B11/02 C
B66C13/12 J
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-116425(P2017-116425)
(22)【出願日】2017年6月14日
(65)【公開番号】特開2019-1586(P2019-1586A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】河原 康人
(72)【発明者】
【氏名】首藤 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−113847(JP,A)
【文献】
特開2016−078969(JP,A)
【文献】
特開2007−269463(JP,A)
【文献】
実公昭46−000031(JP,Y1)
【文献】
特開昭61−055090(JP,A)
【文献】
特開2006−240816(JP,A)
【文献】
特開2008−215504(JP,A)
【文献】
特開2005−140175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 3/18
B66C 13/12
F15B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラ又はコンピュータからの油圧バケットの開指令又は閉指令に連動して油圧ポンプ駆動用モータを正転又は逆転及び運転又は停止をさせ、該モータの回転方向によって、油の流れを双方向に流すことができる可逆式ポンプを駆動し、油の流れ方向を切り替えることにより、バケットの開動作又は閉動作を行い、油圧ポンプの押し込み圧が予め設定された規定圧に上昇することで開端又は閉端に到達したと判断し、該規定圧への上昇圧を使用して、該油圧ポンプの吐出量調整機構を駆動するアクチュエータを駆動し、ポンプの吐出量を抑制した状態に維持し、バケットを開端又は閉端の自動停止をさせる機構を有し、開端又は閉端の自動停止状態を維持し続けているアクチュエータ駆動油圧は、コントローラ若しくはコンピュータからの開指令又は閉指令が切られた時に、油圧ポンプ駆動用モータに並列接続した電磁弁が切れることで該アクチュエータを駆動保持している油圧回路を切り替えて圧力を抜くことで、開端又は閉端状態を解除し、開端又は閉端状態の解除をもって、再運転の受付を可能とすることを特徴とする油圧バケットの油圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに取り付けて荷役を行うための油圧バケットの油圧制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ごみ焼却設備に用いるごみクレーン等において、油圧バケットをクレーンに取り付けた、油圧バケット付きクレーンが汎用化されている。
【0003】
この油圧バケットには、油圧ポンプ駆動用モータに給電する動力線と、油圧回路の入り切りや油の流れる方向を入れ替えて、バケットの開き動作と閉じ動作をさせるための制御線を複合したケーブルが接続されている。
【0004】
油圧バケットは、空中にクレーンで吊り下げられているため、油圧バケットに給電するために、クレーンから給電ケーブルを垂らして、ケーブルリールで給電ケーブルの巻取り、緊張を行っている。
【0005】
従来の油圧バケットの給電ケーブルは、動力線と制御線を複合した多芯の太くて重いケーブルになるので、給電ケーブルを巻き取るケーブルリールも大型になり、クレーン上にケーブルリールを設置するための大きなスペースが必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、油圧バケットに給電するケーブルの芯線数を減らすことにより、ケーブルリールを小さくし、狭小なクレーン上の設置スペースの有効活用を図るとともに、クレーン寸法の小型化により、クレーンの移動範囲を広くし、建屋の有効利用を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の油圧バケットの油圧制御システムは、コントローラ又はコンピュータからの油圧バケットの開指令又は閉指令に連動して油圧ポンプ駆動用モータを正転又は逆転及び運転又は停止をさせ、該モータの回転方向によって、油の流れを双方向に流すことができる可逆式ポンプを駆動し、油の流れ方向を切り替えることにより、バケットの開動作又は閉動作を行い、油圧ポンプの押し込み圧が予め設定された規定圧に上昇することで開端又は閉端に到達したと判断し、該規定圧への上昇圧を使用して、該油圧ポンプの吐出量調整機構を駆動するアクチュエータを駆動し、ポンプの吐出量を抑制した状態に維持し、バケットを開端又は閉端の自動停止をさせる機構を有し、開端又は閉端の自動停止状態を維持し続けているアクチュエータ駆動油圧は、コントローラ若しくはコンピュータからの開指令又は閉指令が切られた時に、油圧ポンプ駆動用モータに並列接続した電磁弁が切れることで該アクチュエータを駆動保持している油圧回路を切り替えて圧力を抜くことで、開端又は閉端状態を解除し、開端又は閉端状態の解除をもって、再運転の受付を可能とすることを特徴とする。
この油圧バケットの油圧制御システムは、油圧ポンプ駆動用モータの回転方向で、油の流れ方向を入れ替える可逆式ポンプを用いることで、該モータのON/OFF又は相順切り替えのみで、開動作又は閉動作及び停止を行い、開端又は閉端に到達時は、油圧回路の圧力上昇で開端又は閉端に到達したものとし、該圧力上昇によって可逆式可変吐出量形油圧ポンプの吐出量を絞り込むためのアクチュエータを駆動保持し、該ポンプの吐出量を絞り込んだ状態を保持することで開端閉端の自動停止を行う。更に、開端及び閉端の自動停止の保持は、油圧ポンプ駆動用モータの電源と並列接続に接続した電磁弁でアクチュエータを保持している油を解除することにより、油圧ポンプの再吐出を可能とし、開端、閉端の自動停止状態をリセットすることで再運転を可能とする。
この一連のバケットの開、閉動作及び開端、閉端の自動停止及び自動停止のリセットを、油圧ポンプ駆動用モータの電源線の入りと切り、及び電源線の相順入れ替えのみで実現する。つまり、動力線のみで、制御線無しでバケット駆動用油圧回路を実現する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油圧バケットの油圧制御システムによれば、油圧バケットへの給電本数が減り、多芯給電ケーブルが細くて軽いケーブルになるので、クレーン上のケーブルリールが小さくなり、機器費が安くなる。加えて、ケーブルリールが小さくなることで、クレーンが小さくなり、クレーンの寄りが良くなることで、移動範囲が広くなり、クレーン運用面で効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の油圧バケットの油圧制御システムの一実施例を示す全体構成図である。
【
図2】本発明の油圧バケットの油圧制御システムの一実施例を示す電気回路図である。
【
図3】本発明の油圧バケットの油圧制御システムの一実施例を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の油圧バケットの油圧制御システムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0011】
例えば、清掃工場等でごみクレーン等は、
図1の形態で使用される。
荷を掴むための油圧バケットGBは、クレーンCR上の巻上げ装置HMからワイヤロープWRで吊り下げられ、宙吊り状態にある。
【0012】
ところで、この油圧バケットの油圧制御システムでは、三相交流電源PWをコントローラCL又はコンピュータからの開操作O又は閉操作Cを受けて、正相順で開閉する閉用電磁接触器CX、又はそれと逆相順に接続された開用電磁接触器OXの開閉により、電源のON/OFF又は相順の切り替えをした電源をバケット用給電線GLにより給電し、ケーブルリールCReを介してバケット用給電線(ケーブルリール巻取りケーブル)CAにより、宙吊り状態の油圧バケットGBに給電される。
この時、油圧バケットGBに給電されている給電線GL及び給電線CAは、制御線は含まれておらず、三相電源線の3本だけである。
【0013】
油圧バケットGBに給電された電源は、油圧バケットGBの内部で、油圧ポンプ駆動用モータMと開端閉端リセット用電磁弁SVに並列接続されている。
この時、コントローラCL又はコンピュータからの開閉信号に連動し、油圧ポンプ駆動用モータが正回転又は逆回転し、開閉信号に連動して開端閉端リセット用電磁弁SVがON/OFFする。
【0014】
閉じ方向に操作され正回転方向に油圧ポンプ駆動用モータMが回転するとオイルタンクOTからサクションフィルタSFと逆止弁CHを介してaのルートを通じて可逆式可変吐出量形油圧ポンプRPに吸い上げられた油は、aのルートを通して油圧シリンダCYのヘッド側HDに押し込まれる。
この時、aのルートに掛かった圧力によりパイロット付き逆止弁(閉時戻し回路用)PCaのパイロットが開放され、油圧シリンダCYのロッド側RDから排出される油が絞り弁TRを介してパイロット付き逆止弁(閉時戻し回路用)PCaからリターンフィルタRFを介してオイルタンクOTに戻される。
この一連の動作により油圧シリンダCYは閉方向CFに動かされ、油圧バケットGBは閉じ動作を行う。
【0015】
aラインの圧力上昇により、シャトル弁SHを介してaライン側から開閉端検出用シーケンス弁SQに圧力が加えられているが、前記のバケットの閉じ動作によりバケットが閉端に到達すると、aラインの圧力が大きく上昇し、その時の圧力上昇値より少し低い目に予め設定されている開閉端検出用シーケンス弁が作動し、閉端開端検出時油圧方向eに油を流し開端閉端リセット用電磁弁SVへと油を流す。この時、開端閉端リセット用電磁弁SVは油圧ポンプ駆動用モータMに連動して通電作動した状態にあり、開閉端検出用シーケンス弁SQからの油圧の流れeをポンプ吐出容量可変用アクチュエータVAへと導く。油eの圧力によりポンプ吐出容量可変用アクチュエータVAが動作し、これを受けて可逆式可変吐出量形油圧ポンプRPの吐出量が絞られ、バケット閉端状態で油の流れは停止する。
なお、ポンプ吐出容量可変用アクチュエータVAを作動させている油eの圧力は、逃げ場が無い状態にあるため、コントローラCL又はコンピュータからの閉指令が継続され、油圧ポンプ駆動用モータMが継続回転している状態においては、油eの圧力が保持され、可逆式可変吐出量形油圧ポンプRPの吐出量が絞られた状態が保持されている。つまり閉端状態が保持され続ける。
【0016】
この時、コントローラCL又はコンピュータからの閉操作が切れると、油圧ポンプ駆動用モータM及び開端閉端リセット用電磁弁SVへの給電が遮断される。
開端閉端リセット用電磁弁SVが切れると、ポンプ吐出容量可変用アクチュエータVAを押し込み保持している油eが、開端閉端リセット時油流方向rに切り替えられオイルタンクOTへと排出され、ポンプ吐出容量可変用アクチュエータVAが元の位置に戻ることで、該ポンプRPが吐出可能状態に復帰し、閉端保持状態がリセットされる。
【0017】
これに対して、開操作Oの方向にコントローラCL又はコンピュータ操作した時は、開用電磁接触器OXから逆相での電源がバケットに給電され、油圧ポンプ駆動用モータMを逆回転させ可逆式可変吐出量形油圧ポンプRPを逆方向に駆動する。これにより、開動作時油流方向bラインを通ってオイルタンクOTから可逆式可変吐出量形油圧ポンプRPに油が吸い上げられ、開動作時油流方向bラインを通って油圧シリンダCYのロッド側に油が押し込まれる。
この時、bラインの圧力を受けてパイロット付き逆止弁(開時戻し回路用)PCbのパイロットが開放し、油圧シリンダCYのヘッド側HDから排出された油がPCbを通り、リターンフィルタRFを介してbラインを通ってオイルタンクOTに戻される。
この一連の動作により、油圧シリンダCYは開方向OFに動かされ、油圧バケットGBは開き動作をする。
【0018】
この時、bラインに圧力が掛かっているので、bライン側からシャトル弁SHを介して開閉端検出用シーケンス弁SQに圧力が加えられ、バケットが開端に到達した時の圧力上昇を受けて開閉端検出用シーケンス弁SQが作動し、該シーケンス弁が開き、ON状態の開端閉端リセット用電磁弁SVを介してポンプ吐出容量可変用アクチュエータVAに閉端開端検出時油圧eが掛かり可逆式可変吐出量形油圧ポンプRPの吐出量が絞られ、バケット開端状態で油の流れは停止する。
可逆式可変吐出量形油圧ポンプRPの吐出量を絞っている閉端開端検出時油圧eは、コントローラCL又はコンピュータからの開指令が切れることでバケットへの給電が切れ、開端閉端リセット用電磁弁SVが切れることで、可逆式可変吐出量形油圧ポンプRPの吐出量を絞っているに閉端開端検出時油圧eが開端閉端リセット時油流方向rに切り替えられ、該ポンプRPが吐出可能状態に復帰し、開端保持状態がリセットされる。
【0019】
なお、aラインbラインの各々に安全弁REを配置し、圧力の異常上昇に対する機器の破損を保護している。
【0020】
以上、本発明の油圧バケットの油圧制御システムについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の油圧バケットの油圧制御システムによれば、バケットに給電するケーブルの芯線数を減らすことができ、ケーブルリールを小さくし、狭小なクレーン上の設置スペースの有効活用を図るとともに、クレーン寸法の小型化により、バケットの移動範囲を広くし、建屋の有効利用を図ることができ、産業上の利用の可能性は大きい。
【符号の説明】
【0022】
PW 三相交流電源
CL コントローラ
C 閉操作
O 開操作
CX 閉用電磁接触器
OX 開用電磁接触器
GL バケット用給電線
CRe ケーブルリール
CA バケット用給電線(ケーブルリール巻取りケーブル)
GB 油圧バケット
CR クレーン
HM 巻上げ装置
WR ワイヤロープ
M 油圧ポンプ駆動用モータ
SV 開端閉端リセット用電磁弁
RP 可逆式可変吐出量形油圧ポンプ
CH 逆止弁
SH シャトル弁
PCa パイロット付き逆止弁(閉時戻し回路用)
PCb パイロット付き逆止弁(開時戻し回路用)
SQ 開閉端検出用シーケンス弁
VA ポンプ吐出容量可変用アクチュエータ
RE 安全弁
TR 絞り弁
OT オイルタンク
SF サクションフィルタ
RF リターンフィルタ
CY 油圧シリンダ
HD 油圧シリンダのヘッド側
RD 油圧シリンダのロッド側
CF バケット閉方向
OF バケット開方向
a 閉動作時油流方向
b 開動作時油流方向
e 閉端開端検出時油圧方向
r 開端閉端リセット時油流方向