特許第6805089号(P6805089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新コスモス電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000002
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000003
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000004
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000005
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000006
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000007
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000008
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000009
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000010
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000011
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000012
  • 特許6805089-半導体式ガスセンサおよびガス検知方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805089
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】半導体式ガスセンサおよびガス検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   G01N27/12 B
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-119823(P2017-119823)
(22)【出願日】2017年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-2878(P2019-2878A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】中谷 忠司
(72)【発明者】
【氏名】三橋 弘和
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−038864(JP,A)
【文献】 実開昭60−007062(JP,U)
【文献】 特開2001−091486(JP,A)
【文献】 特開2002−014070(JP,A)
【文献】 特開2015−200647(JP,A)
【文献】 特開2011−027752(JP,A)
【文献】 実開昭54−103895(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0084787(US,A1)
【文献】 中国実用新案第206057238(CN,U)
【文献】 特開平06−148116(JP,A)
【文献】 特開平08−292202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置され、被検知ガスに接触する感応部と、
前記基板上に配置され、前記感応部を加熱する複数のヒータと、を備え、
前記ヒータは、検知電極として機能するように構成され
前記複数のヒータは、前記感応部が設けられる領域において、互いに並んで延びる線状パターンに形成されている、半導体式ガスセンサ。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に配置され、被検知ガスに接触する感応部と、
前記基板上に配置され、前記感応部を加熱する複数のヒータと、を備え、
前記感応部は、1つ設けられており、
前記複数のヒータは、1つの前記感応部に対して形成され
前記複数のヒータの少なくとも1つは、検知電極として機能するように構成されている、半導体式ガスセンサ。
【請求項3】
前記基板は、表面上に前記ヒータが形成される絶縁膜を含む、請求項1または2に記載の半導体式ガスセンサ。
【請求項4】
前記複数のヒータには、それぞれの一端および他端に接続される給電線が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体式ガスセンサ。
【請求項5】
前記基板は、前記複数のヒータおよび前記感応部が配置される配置部を含み、
前記複数のヒータは、前記給電線が接続される第1接続部を有する第1ヒータと、前記給電線が接続される第2接続部を有する第2ヒータとを含み、
前記第1接続部および前記第2接続部は、前記配置部の互いに対向する縁部近傍に配置され、
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータは、それぞれ、少なくとも、前記第1接続部および前記第2接続部から給電されるように構成されている、請求項4に記載の半導体式ガスセンサ。
【請求項6】
前記複数のヒータに対して、電圧を印加する印加手段をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体式ガスセンサ。
【請求項7】
前記印加手段は、前記複数のヒータに対して、互いに重ならない異なるタイミングにより、パルス電圧を印加するように構成されている、請求項6に記載の半導体式ガスセンサ。
【請求項8】
基板上に、複数のヒータを備える半導体式ガスセンサのガス検知方法において、
前記複数のヒータにより感応部を加熱するステップと、
前記複数のヒータにより加熱された前記感応部の電気抵抗の変化に基づいて、検知電極として機能する前記ヒータにより被検知ガスを検知するステップとを備え
前記複数のヒータは、前記感応部が設けられる領域において、互いに並んで延びる線状パターンに形成されている、ガス検知方法。
【請求項9】
基板上に、複数のヒータを備える半導体式ガスセンサのガス検知方法において、
1つの感応部に対して形成された前記複数のヒータにより前記感応部を加熱するステップと、
前記複数のヒータにより加熱された前記感応部の電気抵抗の変化に基づいて、前記複数のヒータのうち、検知電極として機能する少なくとも1つの前記ヒータにより被検知ガスを検知するステップとを備える、ガス検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体式ガスセンサおよびガス検知方法に関し、特に、感応部を備える半導体式ガスセンサおよび感応部を用いるガス検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感知物質(感応部)を備える半導体式ガスセンサが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、基板と、基板上に配置される感知物質(感応部)と、基板上に配置され、感応部を加熱する複数のヒータと、複数のヒータから離間して基板上に配置される感知電極(検知電極)とを備える半導体式ガスセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6001123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来より、感応部を備える半導体式ガスセンサの分野では、ヒータの感応部に覆われる正極側の部分が、ヒータの感応部に覆われる負極側の部分よりも高温になり、ヒータが配置される基板に温度勾配が生じることが知られている。また、基板の温度勾配が大きくなると、基板にひずみが生じ、半導体式ガスセンサの機械的強度が劣化することが知られている。そのため、基板の温度勾配を小さくすることが望まれている。この点、上記特許文献1に開示された半導体式ガスセンサでは、複数のヒータを備えているため、複数のヒータにより基板上の複数箇所から感応部を加熱することによって、基板の温度勾配を小さくすることが可能である。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された半導体式ガスセンサでは、ヒータと感知電極(検知電極)とが別個に設けられているため、構造が複雑化しているという問題点がある。そのため、構造を簡素化するとともに、基板の温度勾配を小さくすることが望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、基板の温度勾配を小さくすることができるとともに、構造を簡素化することが可能な半導体式ガス検知素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の局面による半導体式ガスセンサは、基板と、基板上に配置され、被検知ガスに接触する感応部と、基板上に配置され、感応部を加熱する複数のヒータと、を備え、ヒータは、検知電極として機能するように構成され、複数のヒータは、感応部が設けられる領域において、互いに並んで延びる線状パターンに形成されている
【0009】
この発明の第1の局面による半導体式ガスセンサでは、上記のように、感応部を加熱し、検知電極として機能する複数のヒータを設ける。これにより、基板上の複数のヒータにより、基板上の複数箇所から感応部を加熱することができるので、基板の温度勾配を小さくすることができる。また、ヒータが検知電極としても機能するので、ヒータと検知電極とを別々に設ける場合よりも構造を簡素化することができる。以上により、基板の温度勾配を小さくすることができるとともに、構造を簡素化することができる。
【0010】
この発明の第2の局面による半導体式ガスセンサは基板と、基板上に配置され、被検知ガスに接触する感応部と、基板上に配置され、感応部を加熱する複数のヒータと、を備え、感応部は、1つ設けられており、複数のヒータは、1つの感応部に対して形成され、複数のヒータの少なくとも1つは、検知電極として機能するように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面と同様に、基板の温度勾配を小さくすることができるとともに、構造を簡素化することができる。また、構造を簡素化することができる。
【0011】
上記第1または第2の局面による半導体式ガスセンサにおいて、好ましくは、基板は、表面上にヒータが形成される絶縁膜を含む。このように構成すれば、絶縁膜により基板とヒータとを容易に電気的に絶縁することができる。
【0012】
上記第1または第2の局面による半導体式ガスセンサにおいて、好ましくは、複数のヒータには、それぞれの一端および他端に接続される給電線が設けられている。このように構成すれば、給電線ごとに独立して電源部に接続することが可能になるので、各給電線を介して、複数のヒータごとに異なるタイミングで給電を行うことができる。
【0013】
この場合において、好ましくは、基板は、複数のヒータおよび感応部が配置される配置部を含み、複数のヒータは、給電線が接続される第1接続部を有する第1ヒータと、給電線が接続される第2接続部を有する第2ヒータとを含み、第1接続部および第2接続部は、配置部の互いに対向する縁部近傍に配置され、第1ヒータおよび第2ヒータは、それぞれ、少なくとも、第1接続部および第2接続部から給電されるように構成されている。このように構成すれば、第1ヒータに給電する第1接続部、および、第2ヒータに給電する第2接続部が、配置部の互いに対向する縁部近傍に配置されるので、配置部上において、第1接続部と第2接続部とが近傍に配置される場合と比較して、基板の温度勾配をより小さくすることができる。
【0014】
上記第1または第2の局面による半導体式ガスセンサにおいて、好ましくは、複数のヒータに対して、電圧を印加する印加手段をさらに備える。このように構成すれば、印加手段により、複数のヒータにそれぞれ電圧を印加して感応部を加熱することができる。
【0015】
この場合において、好ましくは、印加手段は、複数のヒータに対して、互いに重ならない異なるタイミングにより、パルス電圧を印加するように構成されている。このように構成すれば、印加手段は、複数のヒータに対して互いに重ならない異なるタイミングによりパルス電圧を印加するので、互いに重なるタイミングでパルス電圧を印加する場合と比較して、最大消費電力を小さくすることができる。このため、電池などの電源部により給電を行う場合には、電源部を小型化することができる。
【0016】
この発明の第の局面によるガス検知方法は、基板上に、複数のヒータを備える半導体式ガスセンサのガス検知方法において、複数のヒータにより感応部を加熱するステップと、複数のヒータにより加熱された感応部の電気抵抗の変化に基づいて、検知電極として機能するヒータにより被検知ガスを検知するステップとを備え、複数のヒータは、感応部が設けられる領域において、互いに並んで延びる線状パターンに形成されている
【0017】
この発明の第の局面によるガス検知方法では、上記のように、検知電極として機能する複数のヒータにより感応部を加熱するステップを設ける。これにより、基板上の複数のヒータにより、基板上の複数箇所から感応部を加熱することができるので、基板の温度勾配を小さくすることができる。また、ヒータが検知電極としても機能するので、ヒータと検知電極とを別々に設ける場合よりもガス検知素子の構造を簡素化することができる。以上により、基板の温度勾配を小さくすることができるとともに、ガス検知素子の構造を簡素化することができる。
この発明の第4の局面によるガス検知方法は、基板上に、複数のヒータを備える半導体式ガスセンサのガス検知方法において、1つの感応部に対して形成された複数のヒータにより感応部を加熱するステップと、複数のヒータにより加熱された感応部の電気抵抗の変化に基づいて、複数のヒータのうち、検知電極として機能する少なくとも1つのヒータにより被検知ガスを検知するステップとを備える。これにより、上記第3の局面と同様に、基板の温度勾配を小さくすることができるとともに、ガス検知素子の構造を簡素化することができる。また、半導体式ガスセンサの構造を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、基板の温度勾配を小さくすることができるとともに、構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による半導体式ガスセンサの全体構成を示した分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による半導体式ガスセンサの第1ヒータおよび第2ヒータを示した平面図である。
図3図2の500−500線に沿った断面図である。
図4】本発明の一実施形態による半導体式ガスセンサの回路図である。
図5】本発明の一実施形態による半導体式ガスセンサによる電圧印加パターンを示した図である。
図6】本発明の一実施形態による半導体式ガスセンサによる電圧印加パターンの他の例を示した図である。
図7】本発明の実施例および比較例に用いる感応部を備えない半導体式ガスセンサの第1ヒータおよび第2ヒータを示した平面図である。
図8】比較例による半導体式ガスセンサの熱耐久性を確認する加速試験の結果について説明するためのグラフである。
図9】本発明の実施例による半導体式ガスセンサの熱耐久性を確認する加速試験の結果について説明するためのグラフである。
図10】本発明の一実施形態の第1変形例による半導体式ガスセンサの回路図である。
図11本発明の一実施形態の第1変形例による半導体式ガスセンサによる第1の電圧印加パターンを示した図である。
図12本発明の一実施形態の第1変形例による半導体式ガスセンサによる第2の電圧印加パターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具現化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1図6を参照して、本発明の一実施形態による半導体式ガスセンサ100の構成について説明する。
【0022】
(半導体式ガスセンサの構成)
図1に示すように、半導体式ガスセンサ100は、ガス検知素子100aと、ガス検知素子100aに電圧を印加する印加手段100bとを備えている。ガス検知素子100aは、基板1と、感応部2と、感応部2を加熱する複数のヒータとを備えている。複数のヒータは、第1ヒータ3と、第2ヒータ4とを含んでいる。第1ヒータ3および第2ヒータ4は、特許請求の範囲の「ヒータ」の一例である。
【0023】
半導体式ガスセンサ100のガス検知素子100aは、超微細構造の電子部品の製造技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により形成されている。すなわち、ガス検知素子100aは、半導体製造プロセスなどに基づき形成される極めて小型の素子(MEMSセンサ)である。ガス検知素子100aに含まれる基板1の後述する被支持部11a(図2参照)は、たとえば、一辺の大きさLが約0.1mmの矩形(略正方形)の平板形状を有している。なお、被支持部11aは、特許請求の範囲の「配置部」の一例である。
【0024】
ガス検知素子100aは、印加手段100bに接続され、印加手段100bにより電圧が印加される(電流が供給される)ように構成されている。印加手段100bは、所定時間毎(1つの周期)の一部の期間内に、ガス検知素子100aに対して電圧を印加するように構成されている。たとえば、印加手段100bは、30秒毎に(30秒周期で)約0.1秒だけガス検知素子100aにパルス電流を供給するように構成されている。
【0025】
(基板の構成)
図1に示すように、基板1は、基板1の一方表面側に設けられる絶縁膜11と、絶縁膜11を接触状態で支持する支持基板部12とを含んでいる。絶縁膜11は、たとえば、二酸化ケイ素により形成されている。支持基板部12は、たとえば、シリコン(ケイ素)を主成分とする材料により形成されている。
【0026】
絶縁膜11は、矩形状の被支持部11aと、被支持部11aを支持する支持部11bと、被支持部11aおよび支持部11bを囲むように配置される枠部11cとを含んでいる。被支持部11aには、支持部11bの一端が接続されている。また、支持部11bの他端は、枠部11cに接続されている。被支持部11a、支持部11bおよび枠部11cは、一体的に形成されている。
【0027】
ここで、以下の説明では、基板1の厚み方向をA方向とし、A方向のうち支持基板部12から絶縁膜11に向かう方向をA1方向とし、A1方向の逆方向をA2方向とする。また、図2に示すように、A方向に直交し、基板1の被支持部11aの互いに対向する一対の一方端面10aが延びる方向をB方向とする。また、A方向に直交し、基板1の被支持部11aの互いに対向する一対の他方端面10bが延びる方向をC方向とする。すなわち、A方向およびB方向に直交する方向をC方向とする。なお、B方向およびC方向は、基板1の表面に沿った方向である。
【0028】
図1に示すように、被支持部11aには、一方表面側(以下に説明するA1方向側)に、感応部2と、第1ヒータ3および第2ヒータ4とが、被支持部11aに対して接触状態で配置されている。また、被支持部11aは、平面視において(A方向から見て)、矩形形状を有している。支持基板部12には、被支持部11aが設けられた範囲、および、被支持部11aが設けられた範囲を囲む所定範囲において、A2方向に窪む凹部12aが設けられている。すなわち、被支持部11aと支持基板部12とは、A方向に離間して配置されている。
【0029】
複数の支持部11bは、平面視において(A方向から見て)、それぞれ、被支持部11aを中心とする同一方向(A1方向側から見て反時計回り方向)に折れ曲がるL字形状を有している。また、支持部11bは、複数(4個)設けられている。また、複数の支持部11bは、それぞれの内側の一端が矩形形状の被支持部11aの互いに異なる隅部(角部)に接続されている。また、互いに隣接する支持部11bの間には、それぞれ貫通穴110が設けられている。貫通穴110は、互いに隣接する2つの支持部11bの縁部と、被支持部11aの縁部と、枠部11cの内側の縁部とにより形成されている。また、複数の支持部11bは、それぞれの外側(被支持部11aに接続される側とは逆側)の一端が、枠部11cを介して、支持基板部12に固定されている。複数の支持部11bには、リード線32a、32b、42a、42bが、それぞれ、A1方向側に接触状態で配置されている。なお、リード線32a、32b、42a、42bは、特許請求の範囲の「給電線」の一例である。
【0030】
枠部11cは、被支持部11aおよび支持部11bを内側に配置する矩形の環状形状を有している。また、枠部11cのA1方向側の表面には、第1ヒータ3の後述する平坦部33a、33b、および、第2ヒータ4の後述する平坦部43a、43bが接触状態で配置されている。
【0031】
支持基板部12は、凹部12aにより、被支持部11aから離間して配置されている。すなわち、支持基板部12は、複数の支持部11bにより被支持部11aを浮いた状態で支持している。
【0032】
(感応部の構成)
図1に示す感応部2は、金属酸化物半導体により形成されている。金属酸化物半導体の材質としては、たとえば、酸化スズや、酸化インジウム、酸化亜鉛などを用いることが可能であるが、特にこれらに限定されるものではない。感応部2は、第1ヒータ3および第2ヒータ4により加熱されることによって、感応部2に接触する雰囲気ガスに含まれる被検知ガスと反応して、抵抗値を変化させる特性を有している。半導体式ガスセンサ100は、この感応部2の特性を利用して、被検知ガスを検知するように構成されている。
【0033】
図2に示すように、感応部2は、第1ヒータ3の後述するヒータ部31と、第2ヒータ4の後述するヒータ部41との全体を被覆するように配置されている。また、感応部2は、概して、平面視において(A方向から見て)、被支持部11aの外縁(一対の一方端面10aおよび一対の他方端面10b)に沿った矩形形状に形成されている。なお、図1および図2では、便宜的に、ヒータ部31とヒータ部41とにそれぞれハッチングを付しているが、図1および図2のハッチングは、断面を示すものではない。
【0034】
図3に示すように、感応部2は、ヒータ部31の上面(A1側の面)およびヒータ部41の上面(A1側の面)に接触するとともに、ヒータ部31とヒータ部41との間の隙間に入り込むように配置(充填)されている。感応部2は、ヒータ部31とヒータ部41との間の隙間では、絶縁膜11に接触している。
【0035】
(第1ヒータおよび第2ヒータの構成)
図1に示す第1ヒータ3および第2ヒータ4の材質としては、たとえば、白金や金などを用いることが可能であるが、特にこれらに限定されるものではない。第1ヒータ3および第2ヒータ4は、最も温度が高くなる部分が、感応部2により被検知ガスを検知可能となる所定温度になるように、印加手段100bにより電圧が印加(給電)される。たとえば、第1ヒータ3および第2ヒータ4は、最も温度が高くなる部分が500℃となるように印加手段100bにより電圧が印加(給電)される。また、第1ヒータ3および第2ヒータ4は、1つの感応部2に対して形成されている。つまり、第1ヒータ3および第2ヒータ4は、共通の感応部2のうちの、それぞれ異なる部分に設けられている。また、第1ヒータ3および第2ヒータは、少なくとも一方が検知電極として機能するように構成されている。なお、接続部D1は、特許請求の範囲の「第1接続部」の一例である。また、接続部E1は、特許請求の範囲の「第2接続部」の一例である。
【0036】
第1ヒータ3は、ヒータ部31と、リード線32aおよび32bと、平坦部33aおよび33bとを含んでいる。ヒータ部31と、リード線32aおよび32bと、平坦部33aおよび33bとは、薄板状の金属層として一体的に形成されている。第1ヒータ3は、絶縁膜11上(A1方向側の表面上)に、絶縁膜11と接触状態で配置されている。
【0037】
図2に示すように、ヒータ部31は、所定パターンの線状(ライン状)形状に形成されている。詳細には、ヒータ部31は、B方向およびC方向に交互に蛇行する蛇行形状(ミアンダ形状)を有している。また、ヒータ部31は、リード線32aおよび32bよりも細く形成されており、リード線32aおよび32bよりも電気抵抗が大きくなるように構成されている。また、ヒータ部31は、第1ヒータ3のうち、概して、A方向において、基板1の被支持部11aと重なる部分である。また、ヒータ部31は、一方端部にリード線32aが接続される接続部D1を有している。また、ヒータ部31は、他方端部にリード線32bが接続される接続部D2を有している。
【0038】
リード線32aの接続部D1側とは逆側の端部(外側の端部)は、平坦部33aに接続されている。また、リード線32bの接続部D2側とは逆側の端部(外側の端部)は、平坦部33b(図2参照)に接続されている。半導体式ガスセンサ100(図1参照)は、リード線32aを介して接続部D1側からヒータ部31に電流を供給(給電)するように構成されている。つまり、ヒータ部31の接続部D1側は、印加手段100bの後述する電源部51の正極側に接続されている。また、ヒータ部31の接続部D2側は、印加手段100bの電源部51の負極側に接続されている。また、リード線32aおよびリード線32bは、互いに異なる支持部11b上に、支持部11bに接触状態で配置されている。
【0039】
図3に示す平坦部33aおよび33bは、絶縁膜11(枠部11c(図1参照))上(A1方向側の表面上)に、絶縁膜11に接触状態で配置されている。平坦部33aおよび33bは、矩形形状を有している。平坦部33aおよび33bは、第1ヒータ3を絶縁膜に対して固定する部分である。
【0040】
図1に示す第2ヒータ4は、基本的に第1ヒータ3と同様の構成を備えている。このため、以下、簡単に第2ヒータ4について説明する。
【0041】
第2ヒータ4は、ヒータ部41と、リード線42aおよび42bと、平坦部43aおよび43bとを含んでいる。第2ヒータ4は、絶縁膜11(枠部11c)上(A1方向側の表面上)に、接触状態で配置されている。
【0042】
図2に示すように、ヒータ部41は、第2ヒータ4のうち、概して、A方向において、基板1の被支持部11aと重なる部分である。また、ヒータ部41は、B方向およびC方向に交互に蛇行する蛇行形状(ミアンダ形状)を有している。また、ヒータ部41は、一方端部にリード線42aが接続される接続部E1を有している。また、ヒータ部41は、他方端部にリード線42bが接続される接続部E2を有している。
【0043】
リード線42aの接続部E1側とは逆側の端部(外側の端部)は、平坦部43aに接続されている。また、リード線42bの接続部E2側とは逆側の端部(外側の端部)は、平坦部43bに接続されている。半導体式ガスセンサ100は、リード線42aを介して、接続部E1側からヒータ部41に電流を供給(給電)するように構成されている。つまり、ヒータ部41の接続部E1側は、印加手段100bの後述する電源部51の正極側に接続されている。また、ヒータ部41の接続部E2側は、印加手段100bの電源部51の負極側に接続されている。また、リード線42aおよびリード線42bは、リード線32aおよびリード線32bが配置されていない互いに異なる支持部11b上に、支持部11bに接触状態で配置されている。
【0044】
図3に示す平坦部43aおよび43bは、絶縁膜11(枠部11c(図1参照))上(A1方向側の表面上)に、接触状態で取り付けられている。
【0045】
図2に示すように、第1ヒータ3および第2ヒータ4は、同一形状を有している。また、第1ヒータ3は、平面視において(A方向から見て)、被支持部11aの中心に対して180度回転させた場合に、第2ヒータ4に重なる位置に配置されている。すなわち、第1ヒータ3は、第2ヒータ4に対して、回転対称(180度回転対称)となる位置に配置されている。また、ヒータ部31およびヒータ部41は、蛇行形状を有する部分が互いに噛み合うように対向して配置されている。また、ヒータ部31およびヒータ部41は、B方向において、略全域でオーバーラップしている。また、ヒータ部31およびヒータ部41は、C方向において、接続部D1およびD2を含むヒータ部31の一端と、接続部E1およびE2を含むヒータ部41の一端とを除く略全域でオーバーラップしている。また、第1ヒータ3および第2ヒータ4は、感応部2が設けられる領域(被支持部11a)の略全域にわたって設けられている。
【0046】
リード線32aが接続される接続部D1と、リード線42aが接続される接続部E1とは、被支持部11aの互いに対向する縁部近傍に配置されている。詳細には、接続部D1と接続部E1とは、被支持部11aの互いに対向する1組の対角近傍にそれぞれ配置されている。より詳細には、接続部D1は、被支持部11aのB1方向側、かつ、C1方向側の隅部(角部)に配置されている。接続部E1は、被支持部11aのB2方向側、かつ、C2方向側の隅部に配置されている。要するに、接続部D1と接続部E1とは、被支持部11aの最も離間した位置の近傍にそれぞれ配置されている。
【0047】
リード線32bが接続される接続部D2と、リード線42bが接続される接続部E2とは、接続部D1および接続部E1が配置されておらず、被支持部11aの互いに対向する1組の対角近傍に、それぞれ配置されている。なお、一般的に、ヒータ部31およびヒータ部41は、給電される側(後述する接続部D1および接続部E1)が最も高温になる。そのため、半導体式ガスセンサ100では、被支持部11aの最も離れた対角部が高温になり、全体として基板1(被支持部11a)の温度勾配が均一化される。より詳細には、接続部D2は、被支持部11aのB1方向側、かつ、C2方向側の隅部に配置されている。接続部E2は、被支持部11aのB2方向側、かつ、C1方向側の隅部に配置されている。
【0048】
図4に示す印加手段100bは、第1ヒータ3および第2ヒータ4に対して電圧を印加するように構成されている。印加手段100bは、第1ヒータ3および第2ヒータ4に給電する電源部51と、第1ヒータ3(ヒータ部31)に直列に接続される第1スイッチ52aと、第2ヒータ4(ヒータ部41)に直列に接続される第2スイッチ52bと、制御部53とを備えている。電源部51は、蓄電池や商用電源などから構成することができる。電源部51は、たとえば、小型のリチウムイオン電池である。
【0049】
第1ヒータ3と第2ヒータ4とが、それぞれ第1スイッチ52aと第2スイッチ52bとを介して、互いに独立して電力供給を受けられるように、電源部51に接続されている。すなわち、第1スイッチ52aをオンすることにより、接続部D1を介してヒータ部31(第1ヒータ3)に給電され、第2スイッチ52bをオンすることにより、接続部E1を介してヒータ部41(第2ヒータ4)に給電される。
【0050】
制御部53は、第1スイッチ52aおよび第2スイッチ52bのオン、オフを所定のタイミングで個別に切り替える制御を行うように構成されている。
【0051】
印加手段100bは、制御部53により第1スイッチ52aおよび第2スイッチ52bのオン、オフを切り替えることによって、第1ヒータ3および第2ヒータ4に対して、互いに重ならない異なるタイミングにより、パルス電圧を印加するように構成されている。また、印加手段100bは、制御部53により第1スイッチ52aおよび第2スイッチ52bのオン、オフを切り替えることによって、第1ヒータ3および第2ヒータ4に対して、交互にパルス電圧を印加するように構成されている。また、印加手段100bは、制御部53により第1スイッチ52aおよび第2スイッチ52bのオン、オフを切り替えることによって、第1ヒータ3および第2ヒータ4に対して、互いに略同じ時間幅のパルス電圧を印加するように構成されている。
【0052】
(半導体式ガスセンサの回路構成)
次に、図4を参照して、半導体式ガスセンサ100の回路構成の例について説明する。なお、半導体式ガスセンサ100の回路構成は、一例であり、以下で説明する構成に限定されるものではない。
【0053】
半導体式ガスセンサ100の回路は、電源部51と、素子抵抗Rと、固定抵抗R1と、固定抵抗R2と、第1スイッチ52aと、第2スイッチ52bと、電圧計Vm1と、電圧計Vm2とを備えている。
【0054】
固定抵抗R1と第1スイッチ52aとは、直列に接続されている。また、電圧計Vm1は、固定抵抗R1間の電圧を測定可能なように、固定抵抗R1に並列に接続されている。固定抵抗R1は、ヒータ部31に直列に接続されている。
【0055】
固定抵抗R2と第2スイッチ52bとは、直列に接続されている。また、電圧計Vm2は、固定抵抗R2間の電圧を測定可能なように、固定抵抗R2に並列に接続されている。固定抵抗R2は、ヒータ部41に直列に接続されている。
【0056】
素子抵抗Rは、感応部2と、ヒータ部31と、ヒータ部41との合成抵抗であり、可変抵抗である。素子抵抗R(ヒータ部31)は、接続部D1に接続されるリード線32aを介して正極側の電源部51に接続されるとともに、接続部D2に接続されるリード線32bを介して負極側の電源部51に接続されている。また、素子抵抗R(ヒータ部41)は、接続部E1に接続されるリード線42aを介して正極側の電源部51に接続されるとともに、接続部E2に接続されるリード線42bを介して負極側の電源部51に接続されている。
【0057】
(印加手段による電圧印加パターン、および、被検知ガスのガス検知方法)
図4に示す制御部53は、第1スイッチ52aと、第2スイッチ52bとのオン、オフを切り替えることによって、所定周期ごとに第1ヒータ3および第2ヒータ4に対して、パルス電圧を印加する制御を行うように構成されている。なお、以下の図5および図6についての説明では、図4も合わせて参照するものとする。
【0058】
印加手段100b(制御部53)は、図5に示すように、第1ヒータ3および第2ヒータ4に対して、互いに略重ならないタイミングで、順番に、パルス電圧を印加する制御を行うように構成されている。また、第1ヒータ3および第2ヒータ4に対して、略連続するタイミングで、パルス電圧を印加する制御を行うように構成されている。詳細には、印加手段100b(制御部53)は、時間幅S1秒の1周期ごとに、t1秒間(t1×2<S1)だけ第1スイッチ52aのオン状態を継続するとともに、第1スイッチ52aをオフにするのと略同時に、第2スイッチ52bオンにして、t1秒間だけ第2スイッチ52bのオン状態を継続する制御を行うように構成されている。t1は、第1ヒータ3および第2ヒータ4に印加するパルス電圧のパルス幅である。
【0059】
印加手段100b(制御部53)は、1周期ごとに、第1ヒータ3および第2ヒータ4の両方に対して、1回ずつパルス電圧を印加する制御を行うように構成されている。また、半導体式ガスセンサ100は、時間幅S1秒の1周期に1回だけ被検知ガスの検知を行うように構成されている。
【0060】
電圧計Vm2は、連続して印加される複数のパルス電圧の最後に、すなわち、第2スイッチ52bがオフになる直前に、ヒータ部41に直列に接続される固定抵抗R2間の電圧を測定するように構成されている。つまり、ヒータ部41(第2ヒータ4)は、検知電極として機能する。これにより、半導体式ガスセンサ100は、被検知ガスによる素子抵抗Rの抵抗値の変化を取得して、被検知ガスを検知するように構成されている。一例ではあるが、一周期の時間幅S1が30秒に設定され、t1が0.05秒に設置される。
【0061】
すなわち、接続部D1からの給電の後、略連続して接続部E1からの給電を行う。そして、所定時間後に、再び、接続部D1からの給電の後、略連続して接続部E1からの給電を行う。このように、所定周期ごとに、接続部D1、E1の順に給電を繰り返し行う。
【0062】
被検知ガスのガス検知方法は、第1ヒータ3および第2ヒータ4に対して印加手段100bにより電圧を印加することによって、第1ヒータ3および第2ヒータ4を加熱するステップと、第1ヒータ3および第2ヒータ4により加熱された感応部2の電気抵抗の変化に基づいて、検知電極として機能する第2ヒータ4(ヒータ部41)により被検知ガスを検知するステップとを備えている。
【0063】
また、連続してパルス電圧を印加させない電圧印加パターンの他の例として、たとえば、図6に示すように、制御部53は、t2秒間の第1スイッチ52aのオン状態、および、t2秒間の第2スイッチ52bのオン状態を、所定時間間隔t3をあけて交互に繰り返す制御を行うように構成されている。なお、時間幅S2秒の1周期ごとに、第1スイッチ52aおよび第2スイッチ52bのオン状態が1回ずつ交互に繰り返される。一例ではあるが、一周期の時間幅S2が30秒に設定され、t2が0.1秒に設置される。t2は、第1ヒータ3および第2ヒータ4に印加するパルス電圧のパルス幅である。また、半導体式ガスセンサ100は、時間幅S2秒の1周期に1回だけ被検知ガスの検知を行うように構成されている。
【0064】
電圧計Vm1は、第1ヒータ3に対して印加されるパルス電圧の最後に、すなわち、第1スイッチ52aがオフになる直前に、ヒータ部31に直列に接続される固定抵抗R1間の電圧を測定するように構成されている。また、電圧計Vm2は、第2ヒータ4に対して印加されるパルス電圧の最後に、すなわち、第2スイッチ52bがオフになる直前に、ヒータ部41に直列に接続される固定抵抗R2間の電圧を測定するように構成されている。すなわち、他の例では、ヒータ部31(第1ヒータ3)およびヒータ部41(第2ヒータ4)が、それぞれ、検知電極として機能する。
【0065】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
本実施形態では、上記のように、感応部2を加熱し、検知電極として機能する複数のヒータ(第1ヒータ3および第2ヒータ4)を設ける。これにより、基板1(被支持部11a)上の複数のヒータにより、基板1(被支持部11a)上の複数箇所から感応部2を加熱することができるので、基板1(被支持部11a)の温度勾配を小さくすることができる。また、ヒータ(第1ヒータ3および第2ヒータ4の少なくとも一方)が検知電極としても機能するので、ヒータと検知電極とを別々に設ける場合よりも構造を簡素化することができる。以上により、基板1(被支持部11a)の温度勾配を小さくすることができるとともに、構造を簡素化することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、感応部2を、1つ設け、複数のヒータ(第1ヒータ3および第2ヒータ4)を、1つの感応部2に対して形成する。これにより、構造を簡素化することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、基板1に、表面上に第1ヒータ3および第2ヒータ4が形成される絶縁膜11を設ける。これにより、絶縁膜11により基板1と第1ヒータ3および第2ヒータ4とを容易に電気的に絶縁することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、複数のヒータ(第1ヒータ3および第2ヒータ4)に、それぞれの一端および他端に接続されるリード線32a、32bおよびリード線42a、42bが設ける。これにより、リード線32a、32bおよびリード線42a、42bごとに独立して電源部51に接続することが可能になるので、各給リード線32a、32bおよびリード線42a、42bを介して、ヒータ(第1ヒータ3および第2ヒータ4)ごとに異なるタイミングで給電を行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、基板1に、複数のヒータ(第1ヒータ3および第2ヒータ4)および感応部2を配置する被支持部11aを設け、第1ヒータ3に、リード線32aが接続される接続部D1を設け、第2ヒータ4に、リード線42aが接続される接続部E1を設け、接続部D1および接続部E1を、被支持部11aの互いに対向する縁部近傍に配置し、第1ヒータ3および第2ヒータ4を、それぞれ、接続部D1および接続部E1から給電されるように構成する。これにより、第1ヒータ3に給電する接続部D1、および、第2ヒータ4に給電する接続部E1が、被支持部11aの互いに対向する縁部近傍に配置されるので、被支持部11a上において、接続部D1と接続部E1とが近傍に配置される場合と比較して、基板1(被支持部11a)の温度勾配をより小さくすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、複数のヒータ(第1ヒータ3および第2ヒータ4)に対して、電圧を印加する印加手段100bを設ける。これにより、印加手段100bにより、複数のヒータにそれぞれ電圧を印加して感応部2を加熱することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、印加手段100bを、複数のヒータ(第1ヒータ3および第2ヒータ4)に対して、互いに重ならない異なるタイミングにより、パルス電圧を印加するように構成する。これにより、印加手段100bは、複数のヒータに対して互いに重ならない異なるタイミングによりパルス電圧を印加するので、互いに重なるタイミングでパルス電圧を印加する場合と比較して、最大消費電力を小さくすることができる。このため、電池などの電源部51により給電を行う場合には、電源部51を小型化することができる。
【0073】
(実施例)
次に、図7図9を参照して、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0074】
実施例では、図1に示す半導体式ガスセンサ100から感応部2を取り除いた構成、すなわち、図7に示す構成を用いて繰り返し電圧を印加(給電)することにより、ヒータ部31またはヒータ部41の少なくとも一方が断線するまでの経過時間(経過日数)を測定した。測定は、断線後に改めて新しいものを用意し、合計50個に対して行った。
【0075】
具体的には、図5に示すように、0.3秒周期で(S1=0.3)、接続部D1を介して0.1秒間(t1=0.1)だけヒータ部31に給電するとともに、互いに重ならない異なるタイミングで、接続部E1を介して0.1秒間(t1=0.1)だけヒータ部41に給電した。つまり、0.3秒間のうち、0.1秒だけは、ヒータ部31およびヒータ部41に給電しない。このような給電により、第1ヒータ3および第2ヒータ4は、最も温度が高くなる部分(接続部D1、接続部E1)が約550℃になる。このように、熱耐久性を確認するために、通常の使用状況よりも過酷な使用状況で試験(加速試験)を行い、ヒータ部31またはヒータ部41の少なくとも一方が断線するまでの経過時間(経過日数)を測定した。
【0076】
比較例では、トータルの給電時間を実施例と合せるために、0.3秒周期で(0.3秒毎に)、接続部D1を介して0.2秒間(t1×2)だけヒータ部31に給電した。つまり、ヒータ部31にのみ給電し、接続部E1を介してヒータ部41に給電しない。そして、ヒータ部31が断線するまでの経過時間(経過日数)を測定した。測定は、断線後に改めて新しいものを用意し、合計50個に対して行った。
【0077】
要するに、実施例では、2箇所からヒータ(ヒータ部31およびヒータ部41)に給電を行い、比較例では、1箇所からヒータ(ヒータ部41)に給電を行った。
【0078】
<比較例の測定結果>
図8に示すように、比較例では、15日以上20日未満で断線したものが9個、20日以上25日未満で断線したものが25個、25日以上30日未満で断線したものが12個、30日以上35日未満で断線したものが4個という結果になった。平均して約23.6日で断線するという結果になった。
<実施例の測定結果および評価>
図9に示すように、実施例では、40日以上45日未満で断線したものが3個、45日以上50日未満で断線したものが14個、50日以上55日未満で断線したものが19個、55日以上60日未満で断線したものが12個、60日以上65日未満で断線したものが2個という結果になった。平均して約52.1日で断線するという結果になった。
【0079】
実施例の方が比較例よりも、2倍以上断線までに日数を要することが分かった。すなわち、実施例の構成を用いて、個々のヒータの加熱時間を短くして2箇所から感応部2を加熱する構成の方が、基板1(被支持部11a)の温度勾配を小さくすることができ、繰り返しの熱応力を緩和できるので、ガス検知素子100a(図1参照)の寿命が長くなると考えられる。
【0080】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0081】
たとえば、上記実施形態では、図2に示すように、第1ヒータ3(第2ヒータ4)に対して、ヒータ部31(ヒータ部41)の一方端部側である接続部D1(接続部E1)側のみから給電した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図10に示す第1変形例の半導体式ガスセンサ200のように、電源部51に、電源部51の極性を入れ換えることが可能な極性反転手段510を設けて、ヒータ部31(ヒータ部41)に対して、ヒータ部31(ヒータ部41)の他方端部側である接続部D2(接続部E2)側からも給電するように構成してもよい。なお、極性反転手段510は、極性反転スイッチなどを含む。
【0082】
また、極性反転手段510を用いることなく、電源部51とは極性が逆向きの電源部51aを、電源部51に対して並列に接続することにより、第1ヒータ3(第2ヒータ4)に対して、ヒータ部31(ヒータ部41)の他方端部側である接続部D2(接続部E2)側からも給電するように構成してもよい。
【0083】
半導体式ガスセンサ200のように、第1ヒータ3および第2ヒータ4に対して、極性を反転して給電することによって、基板1(図1参照)上において感応部2を加熱する箇所を分散することができるので、基板1(被支持部11a(図1参照))の温度勾配をより小さくすることができる。
【0084】
なお、一例ではあるが、図10に示す半導体式ガスセンサ200では、以下のような2つのパターン(第1の電圧印加パターン、第2の電圧印加パターン)により電圧を印加することが可能である。
【0085】
第1の電圧印加パターンとして、図1に示すように、接続部D1からの給電の後、略連続して接続部E1からの給電を行う。そして、所定時間後に、極性を入れ換えて給電を行う。具体的には、接続部D2からの給電の後、略連続して接続部E2からの給電を行う。このように、所定周期ごとに、接続部D1、E1、D2、E2の順に給電を繰り返し行う。図10に示す電圧計Vm2は、連続して印加される複数のパルス電圧の最後に、すなわち、接続部E1および接続部E2からの給電がオフになる直前に、ヒータ部41に直列に接続される固定抵抗R2間の電圧を測定するように構成されている。要するに、ヒータ部41が検知電極として機能する。
【0086】
第2の電圧印加パターンとして、図1に示すように、接続部D1からの給電を行い、所定時間経過後に、極性を入れ換えて接続部D2からの給電を行う。そして、所定時間経過後に、接続部E1からの給電を行い、所定時間経過後に、極性を入れ換えて接続部E2からの給電を行う。このように、所定周期ごとに、接続部D1、D2、E1、E2の順に給電を繰り返し行う。図10に示す電圧計Vm1は、ヒータ部31に印加されるパルス電圧の最後に、すなわち、接続部D1およびD2からの給電がオフになる直前に、ヒータ部31に直列に接続される固定抵抗R1間の電圧を測定するように構成されている。また、電圧計Vm2は、ヒータ部41に印加されるパルス電圧の最後に、すなわち、接続部E1およびE2からの給電がオフになる直前に、ヒータ部41に直列に接続される固定抵抗R2間の電圧を測定するように構成されている。要するに、ヒータ部31およびヒータ部41が検知電極として機能する。
【0087】
また、上記実施形態では、ヒータを2つ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ヒータを3つ以上設けてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、印加手段が、複数のヒータに対して、互いに重ならない異なるタイミングにより、パルス電圧を印加するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数のヒータに対して、互いに重なるタイミングによりパルス電圧を印加してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、ヒータを蛇行形状に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、ヒータを直線状やL字状に形成してもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、本発明の配置部である被支持部を矩形形状に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、被支持部を円形形状に形成してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、第1ヒータおよび第2ヒータに印加するパルス電圧のパルス幅を同じにした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1ヒータおよび第2ヒータに印加するパルス電圧のパルス幅を異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 基板
2 感応部
3 第1ヒータ(ヒータ)
4 第2ヒータ(ヒータ)
11 絶縁膜
11a 被支持部(配置部)
32a、32b、42a、42b リード線(給電線)
100、20半導体式ガスセンサ
100印加手段
D1 第1接続部
E1 第2接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12