(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定領域は、前記表面側領域と前記電極側領域との間に位置する中間領域を含み、前記中間領域中の前記無機固体粒子の面積が占める割合Cは、前記割合Aよりも高く、かつ、前記割合Bよりも低い請求項1に記載の二次電池用電極構造体。
前記活物質粒子は、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム、スピネル構造を有するチタン酸リチウム、単斜晶型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、斜方晶型チタン含有複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン複合酸化物からなる群より選ばれる1種類以上の化合物を含む請求項1乃至7の何れか1項に記載の二次電池用電極構造体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述したように、電極一体型セパレータは、機械的強度を高める必要がないため、その膜厚を薄くすることができる。しかしながら、電極一体型セパレータを用いた場合、セパレータの内部に活物質含有層の一部が混入することがある。セパレータの膜厚が薄い場合、このセパレータ内に混入した活物質含有層の一部が表層に現れることにより、内部短絡が生じるという問題がある。
【0013】
この問題について、
図1を参照しながらより詳細に説明する。
図1は、従来の電極構造体の一例を概略的に示す断面図である。
図1に示す電極構造体500は、電極50と、セパレータ51とを含んでいる。セパレータ51は、複数の無機固体粒子51bからなる。セパレータ51は、電極50の活物質含有層上に、無機固体粒子51bを含むスラリーを直接塗布し、乾燥させることにより設けられた電極一体型セパレータである。
【0014】
電極50の活物質含有層の表面は、図示していないが、微細な凹凸を有することがある。活物質含有層がこのような凹凸を有している場合、凸部において、活物質含有層の一部が剥がれ易い傾向にある。また、電極構造体500は、電極一体型セパレータ51を形成後、電極50を所定の形状へと裁断することにより形成され得る。その際、裁断面である端部において活物質含有層の表面が剥がれ易い傾向にある。このようにして電極50から剥がれた活物質含有層の一部50a、及び活物質含有層に含まれ得る導電剤501は、
図1に示すように、無機固体粒子51b間の隙間に入り込むことがある。そして、活物質含有層の一部50a及び導電剤501の少なくとも一方が、セパレータ51の表層に達すると、これらが対向する電極と接触し易くなり、内部短絡を生じ易くなる。
【0015】
以上のことから、無機固体粒子からなる電極一体型セパレータを用いた場合、このような短絡を防止するために、セパレータ51の膜厚を厚くして、活物質含有層の一部50a及び導電剤501の少なくとも一方が、セパレータ51の表層に達することを防ぐ必要があった。
【0016】
このような問題は、電極一体型セパレータとして、無機固体粒子51bからなる膜ではなく、活物質含有層上に有機繊維を直接堆積させて形成した有機繊維の層を用いることにより改善され得る。すなわち、有機繊維の層は、1本以上のひも(紐)状の有機繊維を含み得る。このようなひも状の有機繊維の接触面積は、無機固体粒子の接触面積と比較して大きいため、活物質含有層の一部が剥離し、セパレータ内に侵入することを抑制することができると考えられる。
【0017】
しかしながら、有機繊維の層に空隙が多い場合、この空隙に活物質含有層の一部が入り込み、セパレータの表層に達することがある。したがって、有機繊維の層からなる電極一体型セパレータとして用いた場合にも、内部短絡の抑制について改善の余地があった。
[第1の実施形態]
第1の実施形態によると、電極構造体が提供される。電極構造体は、電極と、セパレータとを含んでいる。電極は、活物質含有層を含んでいる。活物質含有層は、活物質粒子を含んでいる。セパレータは、有機繊維の層と、無機固体粒子とを含んでいる。無機固体粒子は、有機繊維の層に担持されている。無機固体粒子は、セパレータの電極側とは反対の表面側(以下便宜上「表面側」という場合もある。)に偏って存在している。
【0018】
第1の実施形態に係る電極構造体に含まれるセパレータにおいて、表面側の有機繊維の層に含まれる、及び、有機繊維の層上に堆積する無機固体粒子の存在比率は、電極側の有機繊維の層に含まれる無機固体粒子の存在比率よりも高い。このようにセパレータの表面側に電極側よりも多くの無機固体粒子が存在すると、活物質含有層の剥がれを抑制することができるとともに、剥がれた活物質含有層の一部がセパレータの表層に到達することを抑制することができる。したがって、第1の実施形態に係る電極構造体では、活物質含有層の剥がれに起因する短絡が生じにくい。それゆえ、第1の実施形態に係る電極構造体では、セパレータの厚さを薄くすることが可能となる。これにより、第1の実施形態に係る電極構造体を備えた電池は、高容量化、軽量化及び低コスト化を実現することができる。
【0019】
図2は、第1の実施形態に係る電極構造体の一例を概略的に示す断面図である。
図2に示す電極構造体500は、セパレータ51が、有機繊維の層51aを含み、有機繊維の層51aの表面側に複数の無機固体粒子51bが配置されていること以外は、
図1に示す従来の電極構造体500と同様のものである。
【0020】
図2に示すセパレータ51は、電極側とは反対の表面側層Lbと、表面側層Lbと対向し、かつ、電極50の活物質含有層と接する電極側層Laと、表面側層Lbと電極側層Laとの間に位置する中間層Lcとの3つの層に分けることができる。
図2に示すセパレータ51において、電極側層Laは、有機繊維の層51aを含んでいる。表面側層Lbは、有機繊維の層51aと、有機繊維の層51aに担持された無機固体粒子51bとを含んでいる。中間層Lcは、有機繊維の層51aと、有機繊維の層51aに担持された無機固体粒子51bとを含んでいる。
【0021】
図2から明らかなように、表面側層Lbに多くの無機固体粒子51bが存在しているのに対し、電極側層Laには無機固体粒子51bがほぼ存在しない。すなわち、表面側層Lbにおける無機固体粒子51bの存在比率は、電極側層Laにおける無機固体粒子51bの存在比率よりも高い。このような構成を採用した場合、有機繊維の層51aが電極50の表面と接するため、活物質含有層が剥がれることを抑制することができる。また、セパレータ51において表面側に位置する無機固体粒子51bは、有機繊維の層51aの隙間を塞ぎ得る。したがって、活物質含有層の一部50a及び導電剤501が、有機繊維の層51aを抜けてセパレータ51の表層へと進出することを抑制することができる。更に、この電極50と向き合う対向電極において、活物質含有層の一部が剥がれた場合、この一部がセパレータ51内に侵入することを抑制することができる。したがって、
図2に示す電極構造体500は、
図1に示す電極構造体と比較して、活物質含有層の剥がれを抑制し、内部短絡を生じにくくすることができる。
【0022】
以下、第1の実施形態に係る電極構造体に含まれる電極及びセパレータについて詳細を説明する。
【0023】
(電極)
電極は、集電体と活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。活物質含有層は、活物質粒子と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。電極は、負極であってもよく、正極であってもよい。すなわち、第1実施形態に係る電極構造体は、負極構造体又は正極構造体であり得る。
【0024】
(負極)
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質含有層は、負極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
【0025】
負極集電体は、負極活物質にリチウムイオンが挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。負極集電体は、例えば、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0026】
また、集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
【0027】
負極活物質としては、リチウムイオン吸蔵放出電位が金属リチウムを基準とする電位で、1.0V(vs.Li/Li
+)以上3.0V(vs.Li/Li
+)以下である化合物を用いることが好ましい。
【0028】
負極活物質の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi
2+yTi
3O
7、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li
4+xTi
5O
12、0≦x≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO
2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、斜方晶型チタン含有複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン複合酸化物が挙げられる。
【0029】
上記斜方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li
2+aM(I)
2-bTi
6-cM(II)
dO
14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M(I)は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、−0.5≦σ≦0.5である。斜方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li
2+aNa
2Ti
6O
14(0≦a≦6)が挙げられる。
【0030】
上記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、Li
xTi
1-yM1
yNb
2-zM2
zO
7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、−0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、Li
xNb
2TiO
7(0≦x≦5)が挙げられる。
【0031】
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、Ti
1-yM3
y+zNb
2-zO
7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦y<1、0≦z<2、−0.3≦δ≦0.3である。
【0032】
負極活物質の一次粒径は、1nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が1nm以上の負極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の負極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0033】
負極活物質の比表面積は、3m
2/g以上200m
2/g以下であることが好ましい。3m
2/g以上の比表面積を有する負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。200m
2/g以下の比表面積を有する負極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0034】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
【0035】
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と負極集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシルメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0036】
活物質含有層中の活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0037】
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。
【0038】
或いは、電極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、電極を得ることができる。
【0039】
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm
3以上2.8g/cm
3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm
3以上2.6g/cm
3以下であることがより好ましい。
【0040】
(正極)
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
【0041】
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0042】
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0043】
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
【0044】
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
【0045】
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO
2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLi
xMn
2O
4又はLi
xMnO
2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLi
xNiO
2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLi
xCoO
2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLi
xNi
1-yCo
yO
2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLi
xMn
yCo
1-yO
2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLi
xMn
2-yNi
yO
4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLi
xFePO
4;0<x≦1、Li
xFe
1-yMn
yPO
4;0<x≦1、0<y<1、Li
xCoPO
4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe
2(SO
4)
3)、バナジウム酸化物(例えばV
2O
5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Li
xNi
1-x-yCo
xMn
yO
2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0046】
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLi
xMn
2O
4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLi
xNiO
2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLi
xCoO
2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLi
xNi
1-yCo
yO
2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLi
xMn
2-yNi
yO
4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLi
xMn
yCo
1-yO
2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLi
xFePO
4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Li
xNi
1-x-yCo
xMn
yO
2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
【0047】
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、Li
xVPO
4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
【0048】
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0049】
正極活物質の比表面積は、0.1m
2/g以上10m
2/g以下であることが好ましい。0.1m
2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m
2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0050】
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0051】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0052】
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0053】
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0054】
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0055】
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0056】
正極は、例えば、上述した負極と同様の方法により作製することができる。
【0057】
(セパレータ)
セパレータは、電極の活物質含有層上に直接設けられている。活物質含有層が集電体の両面に設けられている場合、セパレータは、一方の活物質含有層上に設けられていてもよく、両方の活物質含有層上に設けられていてもよい。
【0058】
有機繊維の層は、電極の活物質含有層上に堆積した有機繊維の集合体である。有機繊維の層は、活物質含有層上に直接設けられていてもよい。有機繊維の層は、1本以上の有機繊維を含んでいる。有機繊維の層は、1本の有機繊維、又は複数の有機繊維同士が、網の目状に交差した三次元的な網目状構造を有し得る。
【0059】
有機繊維は、例えば、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリケトン、ポリスルホン、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなる群から選択される少なくとも1つの有機材料を含む。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)などが挙げられる。ポリイミドおよびPVdFは、一般的に、繊維状とすることが困難な材料であるとされている。後述するエレクトロスピニング法を採用すると、こうした材料も繊維として層を形成することが可能である。有機繊維の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。有機材料としては、ポリアミドイミド、及びPVdFの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0060】
有機繊維において、長さ方向に対して垂直方向の断面形状は、特に限定されない。有機繊維の断面形状は、円状でもよく、楕円状でもよく、三角形状でもよく、あるいは、四角形以上の多角形状でもよい。
【0061】
有機繊維において、長さ方向に対して垂直方向の断面の平均直径、すなわち、有機繊維の太さは、10nm以上500nm以下であることが好ましい。有機繊維の太さがこの範囲内にあると、セパレータのイオン伝導性及び電解質含浸性が向上する傾向にある。有機繊維の太さは、30nm以上400nm以下であることがより好ましい。有機繊維の太さは、SEM(Scanning Electron Microscopy:走査電子顕微鏡)観察により測定することができる。
【0062】
有機繊維の1本当たりの平均的な長さは、例えば、700μm以上であり、1mm以上であることが好ましい。有機繊維の長さが長いと、活物質含有層の剥がれがより生じにくくなる傾向にある。有機繊維の長さに上限値は特にないが、一例によると、10mmである。有機繊維の長さは、SEM観察により測定することができる。
【0063】
活物質含有層の単位面積当たりの有機繊維の質量、すなわち、有機繊維の目付は、1×10
-5g/cm
2以上5×10
-3g/cm
2以下であることが好ましい。有機繊維の目付がこの範囲内にあると、セパレータのイオン伝導性及び電解質含浸性が向上する傾向にある。有機繊維の目付は、1×10
-4g/cm
2以上1×10
-3g/cm
2以下であることがより好ましい。有機繊維の目付は、SEM観察により測定することができる。
【0064】
無機固体粒子は、有機繊維の層に担持されている。無機固体粒子は、有機繊維の層の電極側と比較して有機繊維の層の表面側に多く存在するように偏在している。無機固体粒子は、有機繊維の層の内部に位置していてもよく、有機繊維の層上に位置していてもよい。また、無機固体粒子の一部が内部に位置し、他の部分が有機繊維の層上に位置していてもよい。無機固体粒子は、有機繊維の層内の空隙の一部を埋めるように存在していることが好ましい。
【0065】
セパレータにおいて、無機固体粒子が表面側に偏在していることは、例えば、以下の方法により確認することができる。先ず、電池を解体して、電極構造体を取り出す。次いで、電極構造体の端部を除く領域の一部を切り出し、電極構造体の厚さ方向の断面を含む試験片を得る。次いで、この試験片をイオンミリング装置に設置し、電極構造体の厚さ方向の断面を平滑に加工して加工面を得る。次いで、セパレータに電子伝導性を持たせるために、電極構造体の厚さ方向の断面に、電子伝導性材料を蒸着、又は、スパッタ法により電子伝導性材料を堆積させることにより観察面を得る。電子伝導性材料としては、例えば、炭素、又は、パラジウム及び金−パラジウム合金などの金属を挙げることができる。次いで、この観察面を、SEMで観察する。
【0066】
次に、観察面において、無機固体粒子の存在率を測定するための測定領域を定める。
図3は、測定領域の一例を説明するための説明図である。
図3に示す点線で囲まれた部分は、測定領域MRである。
図3に示すように、測定領域MRの形状は、電極の主面に対して平行方向の長さを横幅Waとし、電極の主面を下端とし、主面に対して垂直方向の高さを高さHaとする長方形とする。横幅Waの長さは、高さHaの高さの3倍以上の長さとする。高さHaの高さは、観察面におけるセパレータの断面において、電極の主面からの距離が最も高い部分の高さを1としたときに、0.95以上となるようにする。高さHaの高さは、例えば、13.58μmとする。
【0067】
次いで、
図4に示すように、測定領域MRを、電極側領域R1、表面側領域R2、及び中間領域R3の3つの領域に、測定領域MRの長辺と平行な2本の分割線DL1及びDL2に沿って分割する。
図4は、
図3に示す測定領域を拡大した断面図である。
【0068】
電極側領域R1は、3つの領域のうち最も電極(活物質含有層)の近くに位置している領域である。電極側領域R1の高さH1は、例えば、測定領域MRの高さHaにおいて、測定領域MRの電極側に位置する長辺の位置を0%とし、測定領域MRの表面側に位置する長辺の位置を100%としたときに、0%から5%までを占める高さとする。電極側領域R1の面積は、横幅Waと高さH1との積から求められる。
【0069】
表面側領域R2は、3つの領域のうち表面の最も近くに位置している領域である。表面側領域R2の高さH2は、例えば、測定領域MRの高さHaにおいて、測定領域MRの電極側に位置する長辺の位置を0%とし、測定領域MRの表面側に位置する長辺の位置を100%としたときに、90%から100%までを占める高さとする。表面側領域R2の面積は、横幅Waと高さH2との積から求められる。
【0070】
中間領域R3は、電極側領域R1と表面側領域R2との間に位置する領域である。中間領域R3は、典型的には、電極側領域R1及び表面側領域R2のそれぞれよりも大きい。中間領域R3の高さH3は、測定領域MRの高さHaにおいて、測定領域MRの電極側に位置する長辺の位置を0%とし、測定領域MRの表面側に位置する長辺の位置を100%としたときに、5%から90%までを占める高さとする。中間領域R3の面積は、横幅Waと高さH3との積から求められる。電極側領域R1の面積と、表面側領域R2の面積と、中間領域R3の面積との比は、例えば、5:10:85とする。
【0071】
次いで、分割した3つの領域において、それぞれ、画像解析ソフト等を用いて無機固体粒子の断面の面積を算出する。この測定を、電極において3か所の異なる位置で行い、その平均値を、分割した各領域における無機固体粒子の面積とする。次いで、電極側領域R1の全面積において無機固体粒子の面積が占める割合A、表面側領域R2の全面積において無機固体粒子の面積が占める割合B、及び中間領域R3の全面積において無機固体粒子の面積が占める割合Cを算出する。
【0072】
第1の実施形態に係る電極構造体に含まれるセパレータにおいて、表面側領域R2中の無機固体粒子の面積が占める割合Bは、電極側領域R1中の無機固体粒子の面積が占める割合Aよりも高い。割合Bが割合Aよりも高いと、無機固体粒子が、セパレータ内において表面側に偏って存在しているということができる。
【0073】
また、割合Bは、中間領域R3中の無機固体粒子の面積が占める割合Cよりも高いことが好ましい。割合Bが割合Cよりも高いと、電池の内部短絡がより生じにくくなる。また、割合Bは、割合Aと割合Cとの合計値よりも高いことが好ましい。
【0074】
また、割合Aは、割合Cよりも低いことが好ましい。割合Aが割合Cよりも低いと、電池の内部短絡がより生じにくくなる。
【0075】
セパレータにおいて、割合Bが割合Cより高く、かつ、割合Cが割合Aより高いことが特に好ましい。このようなセパレータは、電極側から表面側へと向かうに従って、無機固体粒子の存在比率が高まるということができる。セパレータがこのような構成を有していると、活物質含有層の一部がセパレータの表層により到達しにくくなり、電池の内部短絡が生じにくくなる傾向にある。
【0076】
割合Aと割合Bとの比A/Bは、0.11以下であることが好ましく、0.09以下であることがより好ましく、0.07以下であることが更に好ましい。比A/Bが低いと、無機固体粒子が、セパレータ内において表面側により偏在しているということができる。この比A/Bの下限値は、例えば、0である。
【0077】
割合Aと割合Cとの比A/Cは、0以上0.22以下であることが好ましい。比A/Cがこの範囲内にあると、電池の内部短絡がより生じにくい傾向にある。比A/Cは、0以上0.19以下であることがより好ましい。
【0078】
割合Bと割合Cとの比B/Cは、1.9以上7.3以下であることが好ましい。比B/Cがこの範囲内にあると、電池の内部短絡がより生じにくい傾向にある。比B/Cは、2.05以上3.6以下であることがより好ましい。
【0079】
電極側領域R1には、無機固体粒子が存在していてもよく、存在していなくてもよい。電極側領域R1の全面積において無機固体粒子の面積が占める割合Aは、例えば、10%以下であることが好ましく、8%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましい。割合Aが低いと、セパレータの質量が低下し、電池の質量エネルギー密度を高めることができる。電極側領域R1に存在する割合Aの下限値は、一例によると、0%である。
【0080】
表面側領域R2には、無機固体粒子が存在している。表面側領域R2の全面積において無機固体粒子の面積が占める割合Bは、例えば、50%以上であることが好ましく、60%以上であることが好ましく、70%以上であることが更に好ましい。割合Bが高いと、電池の内部短絡がより生じにくい傾向にある。すなわち、表面側領域R2に存在する無機固体粒子は、活物質含有層の一部がセパレータの表層に現れるのを抑制する。また、表面側領域R2に存在する無機固体粒子は、対向電極の活物質含有層から剥がれた活物質含有層の一部が、セパレータ内に侵入するのを抑制する。割合Bの上限値は、一例によると、100%である。
【0081】
中間領域R3には、無機固体粒子が存在していなくてもよいが、存在していることが好ましい。中間領域R3の全面積において無機固体粒子の面積が占める割合Cは、10%以上40%以下であることが好ましい。割合Cがこの範囲内にあると、セパレータの質量の低さと、内部短絡の生じにくさとを両立することができる。すなわち、中間領域R3に無機固体粒子が存在すると、剥がれた活物質含有層の一部が、表面側領域R2に侵入しにくくなる。一方、中間領域R3に過剰に無機固体粒子が存在すると、セパレータの質量が高くなる傾向にある。割合Cは20%以上40%以下であることがより好ましい。
【0082】
上述した方法では、
図3に示すように、領域全体がセパレータ内に位置する測定領域MRを用いたが、測定領域MRは、セパレータでない外部領域を含んでいてもよい。このような測定方法について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、測定領域の他の例を説明するための説明図である。
【0083】
先ず、SEMの観察面において、セパレータにおいて電極から最も離れた箇所に位置する点Pを確認する。次いで、この点Pを通り電極の主面と水平方向な線を一辺とするように、測定領域MRを定める。
図5に示す点線で囲まれた部分は、測定領域MRを示している。次いで、測定領域MRにおいて、セパレータ51の最表面を確認する。
図5に示す実線Lsは、セパレータ51の表面を概略的に示している。
図5に示すセパレータ51の表面は、無機固体粒子51bが連なることで形成されている。
図5において、点線と実線Lsとで囲まれた領域のうち、実線Lsの上側に位置する領域は、有機繊維及び無機固体粒子を含まない外部領域Vを示している。また、実線Lsの下側に位置する領域は、セパレータ51を示している。
【0084】
次いで、
図4を参照しながら説明した方法と同様の方法で、測定領域MRを領域R1乃至R3に分割する。次いで、表面側領域R2の全面積から外部領域Vが占める面積を除いた面積R2aを算出する。次いで、この面積R2aに占める無機固体粒子の面積を算出し、割合Bとする。電極側領域R1及び中間領域R3においても、それぞれ、外部領域Vが存在していた場合、全面積から外部領域Vが占める面積を除いた面積R1a及びR3aを算出する。次いで、この面積R1a及びR3aに占める無機固体粒子の面積を算出し、割合A及び割合Cを得る。
【0085】
無機固体粒子としては、特に限定はされないが、例えば、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、リン(P)などの元素を含む酸化物を用いることができる。無機固体粒子の一例としては、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)又はこれらの混合物が挙げられる。また、無機固体粒子として、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウムなどの金属酸化物や、酸化ランタンなどのランタイノド系酸化物などを用いても同様の効果が得られる。
【0086】
無機固体粒子としては、無機固体電解質粒子を用いることが好ましい。無機固体電解質粒子を用いると、セパレータのイオン伝導性が高まる傾向にある。無機固体電解質粒子は、25℃において1×10
-5S/cm以上のリチウムイオン伝導率を有することが好ましい。
【0087】
このリチウムイオン伝導率は、例えば、交流インピーダンス法により測定することができる。具体的には、先ず、錠剤成形器を用いて無機固体粒子を成形して、圧粉体を得る。次いで、圧粉体の両面に金(Au)を蒸着して、測定試料を得る。次いで、インピーダンス測定装置を用いて、測定試料の交流インピーダンスを測定する。測定装置としては、例えば、ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1260型を用いることができる。測定に際しては、測定周波数を5Hz乃至32MHzとし、測定温度を25℃とし、アルゴン雰囲気下で行う。
【0088】
次いで、測定された交流インピーダンスに基づいて、複素インピーダンスプロットを作成する。複素インピーダンスプロットは、横軸を実数成分として、縦軸に虚数成分をプロットしたものである。次いで、以下の式により、無機固体粒子のイオン伝導率σ
Liを算出する。なお、下記式において、Z
Liは複素インピーダンスプロットの円弧の直径から算出される抵抗値であり、Sは面積であり、dは厚みである。
【0090】
無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、又は硫化物系固体電解質を挙げることができる。酸化物系固体電解質としては、NASICON(Sodium (Na) Super Ionic Conductor)型構造を有し、一般式LiM
2(PO
4)
3で表されるリチウムリン酸固体電解質を用いることが好ましい。上記一般式中のMは、例えば、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、及びカルシウム(Ca)からなる群より選ばれる少なくとも一種類以上の元素である。一般式LiM
2(PO
4)
3で表されるリチウムリン酸固体電解質のイオン伝導率は、例えば、1×10
-5S/cm以上1×10
-3S/cm以下である。
【0091】
NASICON型構造を有するリチウムリン酸固体電解質の具体例としては、LATP(Li
1+x+yAl
x(Ti,Ge)
2-xSi
yP
3-yO
12;0<x≦2、0≦y<3)、Li
1+xAl
xGe
2-x(PO
4)
3;0≦x≦2、及び、Li
1+xAl
xZr
2-x(PO
4)
3;0≦x≦2、Li
1+2xZr
1-xCa
x(PO
4)
3;0≦x<1を挙げることができる。Li
1+2xZr
1-xCa
x(PO
4)
3は、耐水性が高く、還元性及びコストが低いことから、無機固体電解質粒子として用いることが好ましい。
【0092】
また、酸化物系固体電解質としては、上記リチウムリン酸固体電解質の他にも、アモルファス状のLIPON(Li
2.9PO
3.3N
0.46)、ガーネット型構造のLa
5+xA
xLa
3-xM
2O
12(AはCa,Sr,Ba,MはNb,Ta)、Li
3M
2-xL
2O
12(MはTa,Nb、LはZr)、Li
7-3xAl
xLa
3Zr
3O
12、及びLLZ(Li
7La
3Zr
2O
12)が挙げられる。固体電解質は、1種類であってもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。LIPONのイオン伝導率は、例えば、1×10
−6S/cm以上5×10
−6S/cm以下である。LLZのイオン伝導率は、例えば、1×10
−4S/cm以上5×10
−4S/cm以下である。
【0093】
また、固体電解質粒子としては、ナトリウム含有固体電解質を用いてもよい。ナトリウム含有固体電解質は、ナトリウムイオンのイオン伝導性に優れている。ナトリウム含有固体電解質としては、β−アルミナ、ナトリウムリン硫化物、及びナトリウムリン酸化物などを挙げることができる。ナトリウムイオン含有固体電解質は、ガラスセラミックスの形態にあることが好ましい。
【0094】
無機固体粒子の形状は特に限定されないが、例えば、球状、楕円形状、扁平形状、又は繊維状などにすることができる。
【0095】
無機固体粒子の平均粒径は、15μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましい。無機固体粒子の平均粒径が小さいと、電池内部の抵抗が低い傾向にある。
【0096】
無機固体粒子の平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。無機固体粒子の平均粒径が大きいと、粒子同士の凝集が抑制される傾向にある。
【0097】
なお、無機固体粒子の平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置により求めた粒度分布において、体積積算値が50%となる粒径を意味している。この粒度分布測定を行う際の試料としては、無機固体粒子の濃度が0.01質量%乃至5質量%となるようにエタノールで希釈した分散液を用いる。
【0098】
セパレータにおける無機固体粒子の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。無機固体粒子の含有量が多いと、内部短絡がより生じにくくなる。
【0099】
セパレータにおける無機固体粒子の含有量は、99.5質量%以下であることが好ましく、99.3質量%以下であることがより好ましい。無機固体粒子の含有量が少ないと、セパレータの質量を低めることができ、電池の質量エネルギー密度を高め、軽量化することができる。
【0100】
セパレータの膜厚は、60μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましい。セパレータの膜厚が薄いと、電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0101】
セパレータの膜厚は、5μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが更に好ましい。セパレータの膜厚が厚いと、内部短絡がより生じにくい傾向にある。
【0102】
セパレータの膜厚は、例えば、以下の方法により得ることができる。先ず、上述した方法により得られた電極構造体の厚さ方向の断面のSEM画像について、セパレータに係る部分の厚みを測定する。この測定を、電極構造体の任意の5つの箇所で得られたSEM画像について行い、これらの平均値をセパレータの膜厚とする。
【0103】
セパレータは、有機繊維の層及び無機固体粒子の他に、結着剤やイオン伝導性ポリマーなどを含んでいてもよい。
【0104】
結着剤は、無機固体粒子を有機繊維の層に結着させる役割を果たす。結着剤としては、上述した電極で用いるものと同様のものを用いることができる。セパレータにおける結着剤の含有量は、1質量%以上7質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0105】
イオン伝導性ポリマーは、セパレータのイオン伝導性を高める。イオン伝導性ポリマーは、有機繊維の少なくとも一部を被覆していることが好ましく、また、無機固体粒子の少なくとも一部を被覆していることが好ましい。イオン伝導性ポリマーが有機繊維を被覆していると、有機繊維の層が活物質含有層から剥がれにくくなる。また、イオン伝導性ポリマーが有機繊維及び無機固体粒子を被覆していると、無機固体粒子が有機繊維の層から剥がれにくくなる。イオン伝導性ポリマーは、セパレータ内に均一に含まれていてもよく、電極側又は表面側に偏在していてもよい。
【0106】
イオン伝導性ポリマーは、固体状であってもよく、ゲル状であってもよい。イオン伝導性ポリマーは、ポリマーと非水電解質とを含んでいる。イオン伝導性ポリマーは、非水電解質を含浸するポリマーであってもよく、非水電解質とポリマーとの複合体であってもよい。非水電解質の詳細については、後述する。
【0107】
ポリマーの例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。また、ポリマーとしては、ポリメチルメタクリレートなどのカーボネート類とゲル化する高分子材料を用いることができる。
【0108】
セパレータは、例えば、以下の方法により製造することができる。
先ず、電極を準備する。次いで、電極上に有機繊維の層を形成する。具体的には、先ず、上述した有機材料を有機溶媒に溶解させて、原料溶液を準備する。有機溶媒としては、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、水、又はアルコール類など、任意の溶媒を用いることができる。原料溶液における有機繊維の濃度は、例えば、5質量%以上60質量%以下の範囲内とする。
【0109】
次いで、エレクトロスピニング法により、原料溶液を電極の表面に塗布し、有機繊維の層を直接形成する。具体的には、先ず、エレクトロスピニング装置を準備する。エレクトロスピニング装置は、紡糸ノズルと、紡糸ノズルを印加するための高電圧発生器と、紡糸ノズルに原料溶液を供給する定量ポンプとを備えている。次いで、高電圧発生器を用いて紡糸ノズルに電圧を印加しつつ、紡糸ノズルから電極の表面に向かって原料溶液を吐出する。これにより、電極の表面上にひも状の有機繊維が堆積して有機繊維の層が形成される。
【0110】
エレクトロスピニング法において、印加電圧は、溶媒・溶質種、溶媒の沸点・蒸気圧曲線、溶液濃度、温度、ノズル形状、及びサンプル−ノズル間距離などに応じて適宜決定される。ノズルとワーク間との電位差は、例えば、0.1kV以上100kV以下とする。原料溶液の供給速度もまた、溶液濃度、溶液粘度、温度、圧力、印加電圧、及びノズル形状などに応じて適宜決定される。ノズル形状がシリンジタイプの場合には、例えば、1ノズルあたり0.1μl/min以上500μl/min以下とする。また、ノズル形状が多ノズルやスリットの場合には、その開口面積に応じて供給速度を決定することができる。
【0111】
なお、有機繊維の層は、インクジェット法、ジェットディスペンサー法、又はスプレー塗布法などを用いて形成してもよい。
【0112】
次に、有機繊維の層上に、無機固体粒子の層を設ける。具体的には、先ず、無機固体粒子と結着剤と溶剤とを混合して、分散液を得る。分散液における無機固体粒子の濃度は、例えば、10質量%以上40質量%以下とする。溶剤としては、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、水、又はアルコール類などを用いることができる。次いで、この分散液を、有機繊維の層上に塗布する。なお、分散液の流動性が十分に高い場合、スプレー又はマイクログラビア法などを用いて分散液を塗布することができる。
【0113】
次いで、無機固体粒子を塗布後の有機繊維の層を乾燥させることにより、電極一体型セパレータを得ることができる。ここで、このようにして得られた電極一体型セパレータを、プレス処理に供してもよい。プレス処理を行うことにより、活物質含有層と有機繊維の層との密着性、及び、有機繊維と無機固体粒子との密着性を高めることができる。
【0114】
セパレータ内における無機固体粒子の偏りは、無機固体粒子の粒径、有機繊維の層の目付、及び有機繊維の太さ、及びプレス処理時の荷重などにより調整することができる。
【0115】
また、セパレータの膜厚は、有機繊維の層の厚さ及び無機固体粒子の層の厚さや、プレス処理時の荷重などにより調整することができる。有機繊維の層の厚さは、例えば、原料溶液の吐出量や有機繊維の太さにより調整することができる。無機固体粒子の層の厚さは、例えば、分散液の塗布量や無機固体粒子の粒径により調整することができる。
【0116】
次に、イオン伝導性ポリマーを含むセパレータの製造方法について説明する。先ず、上述したのと同様の方法で、電極一体型セパレータを準備する。
【0117】
次いで、上述したポリマーのモノマーと、電解質塩と、有機溶媒とを混合して、混合液を調製する。電解質塩及び有機溶媒としては、後述する非水電解質で説明するものと同じものを用いることができる。
【0118】
次いで、電極一体型セパレータに、混合液を含浸させる。次いで、例えば、このセパレータを加熱することにより、電解質塩を加水分解して酸触媒を生成し、モノマーを重合させる。酸触媒としては、例えば、フッ化水素(HF)などの無機酸、スルホン酸、カルボン酸及びこれらの混合物を用いることができる。このようにして、イオン伝導性ポリマー、すなわち、ゲル状非水電解質と一体化したセパレータを得ることができる。なお、酸触媒を用いる代わりに、重合開始剤を用いてもよい。
【0119】
以上説明した第1の実施形態によれば、電極構造体が提供される。電極構造体は、電極と、セパレータとを含んでいる。電極は、活物質含有層を含んでいる。活物質含有層は、活物質粒子を含んでいる。セパレータは、有機繊維の層と、無機固体粒子とを含んでいる。無機固体粒子は、有機繊維の層に担持されている。無機固体粒子は、セパレータの表面側に偏って存在している。したがって、第1の実施形態に係る電極構造体を用いると、活物質含有層の剥がれに起因する短絡が生じにくくすることができる。
【0120】
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、第1の実施形態に係る電極構造体と、対向電極と、電解質とを含む二次電池が提供される。
【0121】
電極構造体及び対向電極は、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。なお、第2の実施形態に係る二次電池は、電極構造体と対向電極との間に配された自立膜型セパレータを更に具備してもよい。
【0122】
また、第2の実施形態に係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
【0123】
さらに、第2の実施形態に係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
【0124】
第2の実施形態に係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
【0125】
以下、対向電極、電解質、自立膜型セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
【0126】
(対向電極)
対向電極は、第1の実施形態に係る電極構造体と向き合っている。以下、第1の実施形態に係る電極を第1電極、対向電極を第2電極として説明する。
【0127】
第1電極が負極である場合、第2電極は正極であり得る。第1電極が正極である場合、第2電極は負極であり得る。
【0128】
第2電極は、第1の実施形態と同様に、電極一体型セパレータを含む電極構造体であってもよい。この場合、第1電極及び第2電極は、互いのセパレータを介して向き合っていてもよく、電極とセパレータとが、交互に並ぶように配置されていてもよい。
【0129】
(電解質)
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
【0130】
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF
6が最も好ましい。
【0131】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0132】
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。ゲル状非水電解質としては、上述したイオン伝導性ポリマーと同様のものを用いることができる。
【0133】
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
【0134】
また、電解質は、水系電解質であってもよい。水系電解質は、水系溶媒と電解質塩とを含む。水系電解質は、液状であってもよい。液状水系電解質は、溶質としての電解質塩を水系溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
【0135】
水系溶媒としては、水を含む溶液を用いることができる。ここで、水を含む溶液とは、純水であってもよく、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
【0136】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0137】
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
【0138】
無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する固体物質である。
【0139】
(自立膜型セパレータ)
自立膜型セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
【0140】
(外装部材)
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
【0141】
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
【0142】
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0143】
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0144】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
【0145】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0146】
(負極端子)
負極端子は、上述の負極活物質のリチウムイオンの吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
【0147】
(正極端子)
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li
+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0148】
次に、第2の実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0149】
図6は、第2の実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。
図7は、
図6に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
【0150】
図6及び
図7に示す二次電池100は、
図6に示す袋状外装部材2と、
図6及び
図7に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
【0151】
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0152】
図6に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、
図7に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
【0153】
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、
図7に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
【0154】
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
【0155】
図6に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
【0156】
第2の実施形態に係る二次電池は、
図6及び
図7に示す構成の二次電池に限らず、例えば
図8及び
図9に示す構成の電池であってもよい。
【0157】
図8は、第2の実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。
図9は、
図8に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
【0158】
図8及び
図9に示す二次電池100は、
図8及び
図9に示す電極群1と、
図8に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
【0159】
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0160】
電極群1は、
図9に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
【0161】
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
【0162】
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。
図9に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
【0163】
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
【0164】
第2の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る電極構造体を含んでいる。そのため、第2の実施形態に係る二次電池は、内部短絡が生じにくい。したがって、第2の実施形態に係る二次電池は、高容量化及び軽量化を実現することができる。
【0165】
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、組電池が提供される。第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
【0166】
第3の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
【0167】
次に、第3の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0168】
図10は、第3の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。
図10に示す組電池200は、5つの単電池100a〜100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a〜100eのそれぞれは、第2の実施形態に係る二次電池である。
【0169】
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、
図10の組電池200は、5直列の組電池である。
【0170】
図5に示すように、5つの単電池100a〜100eのうち、左端に位置する単電池100aの正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に接続されている。また、5つの単電池100a〜100eうち、右端に位置する単電池100eの負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に接続されている。
【0171】
第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を具備する。したがって、第3の実施形態に係る組電池は、高容量化及び軽量化を実現することができる。
【0172】
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第2の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
【0173】
第4の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
【0174】
また、第4の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0175】
次に、第4の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0176】
図11は、第4の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。
図12は、
図11に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0177】
図11及び
図12に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
【0178】
図11に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
【0179】
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
【0180】
単電池100は、
図11及び
図12に示す構造を有している。複数の単電池100の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きになるように揃えて積層されている。複数の単電池100の各々は、
図12に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
【0181】
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
【0182】
正極側リード22の一端は、単電池100の積層体において、最下層に位置する単電池100の正極端子7に接続されている。負極側リード23の一端は、単電池100の積層体において、最上層に位置する単電池100の負極端子6に接続されている。
【0183】
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ341と、負極側コネクタ342と、サーミスタ343と、保護回路344と、配線345及び346と、通電用の外部端子347と、プラス側配線348aと、マイナス側配線348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200において負極端子6及び正極端子7が延出する面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
【0184】
正極側コネクタ341には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、正極側リード22の他端が挿入されることにより、正極側コネクタ341と正極側リード22とは電気的に接続される。負極側コネクタ342には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、負極側リード23の他端が挿入されることにより、負極側コネクタ342と負極側リード23とは電気的に接続される。
【0185】
サーミスタ343は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ343は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路344に送信する。
【0186】
通電用の外部端子347は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子347は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。
【0187】
保護回路344は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路344は、プラス側配線348aを介して通電用の外部端子347と接続されている。保護回路344は、マイナス側配線348bを介して通電用の外部端子347と接続されている。また、保護回路344は、配線345を介して正極側コネクタ341に電気的に接続されている。保護回路344は、配線346を介して負極側コネクタ342に電気的に接続されている。更に、保護回路344は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
【0188】
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
【0189】
保護回路344は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路344は、サーミスタ343から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路344と外部機器への通電用の外部端子347との電気的な接続を遮断する。
【0190】
サーミスタ343から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
【0191】
なお、保護回路344としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
【0192】
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子347を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子347を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子347を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子347を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
【0193】
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子として用いてもよい。
【0194】
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
【0195】
第4の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池又は第3の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、第4の実施形態に係る電池パックは、高容量化及び軽量化を実現することができる。
【0196】
[第5の実施形態]
第5の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。
【0197】
第5の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。第5の実施形態に係る車両は、車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む。
【0198】
第5の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
【0199】
第5の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
【0200】
第5の実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、電池パックは、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
【0201】
次に、第5の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0202】
図13は、第5の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
【0203】
図13に示す車両400は、車両本体40と、第4の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。
図13に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
【0204】
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
【0205】
図13では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
【0206】
次に、
図14を参照しながら、第5の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
【0207】
図14は、第5の実施形態に係る車両の一例を概略的に示した図である。
図14に示す車両400は、電気自動車である。
【0208】
図14に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
【0209】
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、
図14に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
【0210】
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
【0211】
3つの電池パック300a、300b及び300cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
【0212】
組電池200a〜200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。組電池200a〜200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
【0213】
電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を集めるために、組電池監視装置301a〜301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a〜200cに含まれる単電池100の電圧、及び温度などに関する情報を収集する。
【0214】
電池管理装置411と組電池監視装置301a〜301cとの間には、通信バス412が接続されている。通信バス412は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
【0215】
組電池監視装置301a〜301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a〜200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
【0216】
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば
図14に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a〜200cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフされるリレー回路(図示せず)を備えている。
【0217】
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411、あるいは車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、出力電圧を制御する。
【0218】
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。この回転は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
【0219】
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源41に入力される。
【0220】
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置411内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子に接続されている。
【0221】
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置415を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子に接続されている。
【0222】
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
【0223】
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して他の装置とともに電池管理装置411を協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
【0224】
第5の実施形態に係る車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、第5の実施形態に係る車両は、高い信頼性と高い性能とを実現することができる。
【実施例】
【0225】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
【0226】
<実施例1>
(正極の作製)
以下のようにして正極を作製した。
先ず、正極活物質、導電剤及び結着剤を、溶媒に分散してスラリーを調製した。正極活物質、導電剤及び結着剤の割合は、それぞれ、93質量%、5質量%及び2質量%であった。正極活物質としては、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2)を用いた。導電剤としては、アセチレンブラックとカーボンブラックとの混合物を用いた。混合物におけるアセチレンブラックとカーボンブラックとの質量比は、2:1であった。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)を用いた。
【0227】
次いで、調製したスラリーを、正極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させることで正極活物質含有層を形成した。正極集電体としては、厚さ12μmのアルミニウム合金箔を用いた。次いで、正極集電体と正極活物質含有層とをプレスして、正極を作製した。
【0228】
(負極の作製)
以下のようにして負極を作製した。
先ず、負極活物質、導電剤及び結着剤を、溶媒に分散してスラリーを調製した。負極活物質、導電剤及び結着剤の割合は、それぞれ、95質量%、3質量%及び2質量%とした。負極活物質としては、リチウムチタン酸化物LTO(Li
4Ti
5O
12)粉末を用いた。リチウムチタン酸化物のリチウムイオン吸蔵放出電位は、1.5V(vs.Li/Li
+)以上1.7V(vs.Li/Li
+)以下であった。導電剤としては、アセチレンブラックとカーボンブラックとの混合物を用いた。混合物におけるアセチレンブラックとカーボンブラックとの質量比は、2:1であった。結着剤としては、PVdFを用いた。溶媒としては、NMPを用いた。
【0229】
次いで、得られたスラリーを、負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させることで負極活物質含有層を形成した。負極集電体としては、厚さ12μmのアルミニウム合金箔を用いた。次いで、負極集電体と負極活物質含有層とをプレスして、負極を得た。
【0230】
(セパレータの作製)
先ず、負極活物質含有層の全体に、エレクトロスピニング法を用いて有機繊維の層を形成した。具体的には、先ず、有機材料を有機溶媒に溶解させて、原料溶液を調製した。原料溶液における有機材料の濃度は、15質量%とした。有機材料としては、ポリアミドイミドを用いた。有機溶媒としては、ジメチルアセトアミドを用いた。次いで、高電圧発生器を用いてエレクトロスピニング装置の紡糸ノズルに15.5kVの電圧を印加した。次いで、定量ポンプを用いて、5μl/minの供給速度で、紡糸ノズルに原料溶液を供給し、紡糸ノズルから負極表面に向かって原料溶液を吐出した。紡糸ノズルを負極表面上で移動させることにより、負極表面上に有機繊維の層を形成した。次いで、もう一方の面の負極活物質含有層上にも、同様の方法で有機繊維の層を形成した。なお、有機繊維の太さは380nmとし、有機繊維の目付は、1.1×10
-4g/cm
2とした。
【0231】
次に、有機繊維の層に、無機固体粒子を担持させた。具体的には、先ず、無機固体粒子及び結着剤を、溶媒に分散させて分散液を調製した。無機固体粒子及び結着剤の割合は、それぞれ、30質量%及び1.5質量%とした。無機固体粒子としては、平均粒径が1.8μmのアルミナ(Al
2O
3)を用いた。アルミナの25℃におけるリチウムイオン伝導率は、0S/cmであった。結着剤としては、カルボキシメチルセルロースを用いた。次いで、スプレーを用いて、この分散液を有機繊維の層上に塗布した。この分散液の塗布は、もう一方の面の有機繊維の層上にも同様に行った。次いで、分散液を塗布した有機繊維の層を乾燥させて、電極一体型セパレータを得た。このようにして、負極活物質含有層の両面にセパレータが形成された負極構造体を得た。
【0232】
(非水電解質の調製)
電解質塩を有機溶媒に溶解させて、液状非水電解質を得た。電解質塩としては、LiPF
6を用いた。非水電解質におけるLiPF
6のモル濃度は、1
.5mol/Lとした。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒を用いた。PCとDECとの体積比は、1:2であった。
【0233】
(二次電池の作製)
先ず、正極と負極構造体とを、正極と負極との間にセパレータが位置するように積層して積層体を得た。次に、この積層体を渦巻き状に捲回して電極群を作製した。これを加熱プレスすることにより、偏平状電極群を作製した。得られた電極群を、薄型の金属缶に収納した。次いで、電極群を収容した先の金属缶容器に、液状非水電解質を注液して二次電池を作製した。
【0234】
<実施例2>
無機固体粒子として、アルミナを用いる代わりにLiLaZrO(Li
7La
3Zr
2O
12)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。LiLaZrOの平均粒径は、1.8μmであり、25℃におけるリチウムイオン伝導率は、3×10
−4S/cmであった。
【0235】
<実施例3>
無機固体粒子として、アルミナを用いる代わりに、LiAlTiPO(Li
2O
−Al
2O
3−SiO
2−P
2O
5−TiO
2)を用いたこと、及び、無機固体粒子を含む分散液の塗布量を増加したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。LiAlTiPOの平均粒径は、1.0μmであり、25℃におけるリチウムイオン伝導率は、1×10
−4S/cmであった。
【0236】
<実施例4>
有機繊維の太さを380nmから300nmに変更したこと以外は、実施例3に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0237】
<実施例5>
有機繊維の太さを380nmから300nmに変更したこと、及び、有機繊維の目付を1.1×10
-4g/cm
2から2.5×10
-4g/cm
2に変更したこと以外は、実施例3に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0238】
<実施例6>
有機繊維の太さを380nmから300nmに変更したこと、及び、有機繊維の目付を1.1×10
-4g/cm
2から3.0×10
-4g/cm
2に変更したこと以外は、実施例3に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0239】
<実施例7>
非水電解質の有機溶媒を、PC及びDECの混合溶媒から、PC及びエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒に変更したこと以外は、実施例2に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。なお、PCとEMCとの体積比は、1:2であった。
【0240】
<実施例8>
非水電解質の有機溶媒を、PC及びDECの混合溶媒から、PC及びEMCの混合溶媒に変更したこと以外は、実施例3に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0241】
<実施例9>
先ず、実施例1に記載したのと同様の方法で、負極構造体、及び液状非水電解質を準備した。次いで、液状非水電解質に、モノマーを加えて混合液を得た。混合液におけるモノマーの濃度は、2質量%とした。モノマーとしては、メチルメタクリレートを用いた。次いで、外装缶内に電極群及び混合液を収納し、60℃の温度で24時間にわたって加熱することにより、液状非水電解質をゲル化させた。このようにしてイオン伝導性ポリマーを含む二次電池を得た。
【0242】
<実施例10>
先ず、アルミナを用いる代わりにジルコニア(ZrO
2)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、負極構造体を得た。ジルコニアの平均粒径は、1.8μmであり、25℃におけるリチウムイオン伝導率は、0S/cmであった。次いで、この負極構造体を用いたこと以外は、実施例9に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0243】
<実施例11>
先ず、実施例3に記載したのと同様の方法で負極構造体を準備した。次いで、この負極構造体を用いたこと以外は、実施例9に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0244】
<実施例12>
先ず、LiAlTiPOの平均粒径を1.0μmから0.4μmに変更したこと、有機繊維の太さを380nmから170nmに変更したこと、及び、有機繊維の目付を1.1×10
-4g/cm
2から3.0×10
-4g/cm
2に変更したこと以外は、実施例11に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0245】
<実施例13>
先ず、アルミナを用いる代わりに、LiZrCaPO(Li
1.2Zr
1.9Ca
0.1P
3O
12)を用いたこと、有機繊維の太さを380nmから300nmに変更したこと無機固体粒子を含む分散液の塗布量を増加したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で負極構造体を得た。LiZrCaPOの平均粒径は、2.8μmであり、25℃におけるリチウムイオン伝導率は、1.2×10
−4S/cmであった。次いで、この負極構造体を用いたこと以外は、実施例9に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0246】
<実施例14>
先ず、有機繊維の太さを380nmから300nmに変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、有機繊維の層を得た。次いで、アルミナ(Al
2O
3)の代わりに、LiZrCaPOを用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で無機固体粒子を含む分散液を調製した。次いで、スプレーを用いて、分散液を有機繊維の層上に塗布した。この分散液の塗布は、もう一方の面の有機繊維の層上にも同様に行った。なお、分散液の塗布量は、実施例1の分散液の塗布量よりも多かった。次いで、分散液を塗布した有機繊維の層を乾燥させた後、セパレータ全体にプレス処理を施した。このようにして、負極活物質含有層の両面にセパレータが形成された負極構造体を得た。次いで、この負極構造体を用いたこと以外は、実施例9に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0247】
<実施例15>
先ず、有機繊維の太さを380nmから300nmに変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、有機繊維の層を得た。次いで、アルミナ(Al
2O
3)の代わりに、LiZrCaPOを用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で無機固体粒子を含む分散液を調製した。次いで、スプレーを用いて、分散液を有機繊維の層上に塗布した。この分散液の塗布は、もう一方の面の有機繊維の層上にも同様に行った。次いで、分散液を塗布した有機繊維の層を乾燥させた後、セパレータ全体にプレス処理を施した。次いで、乾燥後のセパレータの表面上に、スプレーを用いて分散液を塗布した。この分散液の塗布は、もう一方の面のセパレータの表面上にも同様に行った。なお、分散液の塗布量は、実施例1の分散液の塗布量よりも多かった。このようにして、負極活物質含有層の両面にセパレータが形成された負極構造体を得た。次いで、この負極構造体を用いたこと以外は、実施例9に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0248】
<実施例16>
有機材料としてポリアミドイミドの代わりにポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いたこと、有機繊維の太さを380nmから300nmに変更したこと、及び、有機繊維の目付を1.1×10
-4g/cm
2から3.0×10
-4g/cm
2に変更したこと以外は、実施例2に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0249】
<実施例17>
LiAlTiPOの平均粒径を1.0μmから0.4μmに変更したこと、有機材料としてポリアミドイミドの代わりにポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いたこと、有機繊維の太さを380nmから170nmに変更したこと、及び、有機繊維の目付を1.1×10
-4g/cm
2から3.0×10
-4g/cm
2に変更したこと以外は、実施例3に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0250】
<実施例18>
負極活物質として、リチウムチタン酸化物の代わりにナトリウムニオブチタン複合酸化物(Li
2Na
1.5Ti
5.5Nb
0.5O
14)を用いたこと以外は、実施例12に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。ナトリウムニオブチタン酸化物のリチウムイオン吸蔵放出電位は、1.0V(vs.Li/Li
+)以上1.3V(vs.Li/Li
+)以下であった。
【0251】
<実施例19>
負極活物質として、リチウムチタン酸化物の代わりにナトリウムニオブチタン複合酸化物を用いたこと、LiZrCaPOの平均粒径を2.8μmから1.0μmに変更したこと、有機繊維の目付を1.1×10
-4g/cm
2から3.0×10
-4g/cm
2に変更したこと以外は、実施例13に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0252】
<実施例20>
負極活物質として、リチウムチタン酸化物の代わりにニオブチタン複合酸化物(Nb
2TiO
7)を用いたこと以外は、実施例12に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。ニオブチタン複合酸化物のリチウムイオン吸蔵放出電位は、1.3V(vs.Li/Li
+)以上1.5V(vs.Li/Li
+)以下であった。
【0253】
<実施例21>
負極活物質として、ナトリウムニオブチタン酸化物の代わりにニオブチタン複合酸化物を用いたこと、及び、有機繊維の太さを300nmから170nmに変更したこと以外は、実施例19に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0254】
<実施例22>
負極活物質として、ナトリウムニオブチタン酸化物の代わりにニオブチタン複合酸化物を用いたこと、スプレーの代わりにマイクログラビア法により有機繊維の層上に無機固体粒子の層を形成したこと、及び、無機固体粒子の層を形成後、セパレータにプレス処理を行ったこと以外は、実施例19に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0255】
<比較例1>
先ず、負極活物質として、リチウムチタン酸化物の代わりにニオブチタン複合酸化物を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で負極を作製した。次いで、無機固体粒子及び結着剤を、溶媒に分散してスラリーを調製した。無機固体粒子及び結着剤の割合は、それぞれ、30質量%及び1.5質量%とした。無機固体粒子としては、LiAlTiPOを用いた。結着剤としては、カルボキシメチルセルロースを用いた。次いで、負極活物質含有層上に、このスラリーを塗布し、乾燥させて、無機固体粒子の膜からなる電極一体型セパレータを得た。無機固体粒子の膜の膜厚は、14μmであった。このようにして負極構造体を得た。
【0256】
次いで、この負極構造体を用いたこと以外は、実施例9に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0257】
<比較例2>
無機固体粒子として、LiAlTiPOの代わりにLiAlGePO(Li
1.5Al
0.5Ge
1.5P
3O
12)を用いたこと、及び、無機固体粒子の膜の厚さを14μmから56μmに変更したこと以外は、比較例1に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。LiAlGePOの平均粒径は、1.7μmであり、25℃におけるリチウムイオン伝導率は、4×10
-4S/cmであった。
【0258】
<比較例3>
有機繊維の層上への無機固体粒子を含む分散液の塗布を省略したこと以外は、実施例9に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0259】
<比較例4>
有機繊維の層の形成と無機固体粒子を含む分散液のスプレー塗布とを同時に実施したこと以外は、実施例9に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0260】
<比較例5>
有機繊維の層の代わりにポリエチレンフィルムを用いたこと以外は、実施例13に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0261】
<比較例6>
ポリエチレンフィルムの代わりにセルロース製不織布を用いたこと以外は、比較例5に記載したのと同様の方法で二次電池を得た。
【0262】
<評価方法>
(セパレータの断面における無機固体粒子の存在率)
実施例1乃至22並びに比較例1、2、及び4乃至6に係るセパレータについて、上述した方法で、セパレータの厚さ方向の断面の領域R1乃至R3において無機固体粒子が占める割合A、B及びCを測定した。その結果を、表1に示す。
【0263】
(セパレータの膜厚)
実施例1乃至22及び比較例1乃至6に係るセパレータについて、上述した方法で膜厚を測定した。その結果を、表1に示す。
【0264】
(自己放電率)
実施例1乃至22及び比較例1乃至6に係る二次電池について、自己放電率を測定した。具体的には、先ず、二次電池を25℃の温度で、充電状態SOC(State of Charge)が100%となるまで充電し、その後、SOCが0%となるまで放電した。次いで、放電後の電池をSOCが50%となるまで充電し、充電直後の電池電圧をテスターを用いて測定した。このときの電池電圧を初期電圧Vとした。次いで、この電池を室温で7日間にわたって静置した後、テスターを用いて電池電圧を測定した。このときの電池電圧を試験後電圧ΔVとした。次いで、試験後電圧ΔVを初期電圧Vで除することにより、自己放電率ΔV/Vを算出した。なお、比較例1に係る二次電池は、内部短絡が生じたため、充電することができなかった。この結果を表2に示す。
【0265】
(レート特性)
実施例1乃至22及び比較例1乃至6に係る二次電池について、レート特性を測定した。具体的には、先ず、二次電池を1CのレートでSOCが100%となるまで定電流充電を行った。その後、レートが1/20Cとなるまで定電圧充電を行った。次いで、二次電池を5Cのレートで、SOCが0%となるまで放電した。このときの放電容量を5C放電容量とした。次いで、この二次電池を、再び1Cのレートで、SOCが100%となるまで充電した。その後、レートが1/20Cとなるまで定電圧充電を行った。次いで、二次電池を1Cのレートで、SOCが0%となるまで放電した。このときの放電容量を1C放電容量とした。次いで、5C放電容量を1C放電容量で除することにより、容量比5C放電容量/1C放電容量を算出した。この結果を表2に示す。
【0266】
下記表1に、実施例1乃至20及び比較例1乃至6に係るセパレータに関するデータをまとめる。
【0267】
【表1】
【0268】
上記表1において、「構成成分」という見出しの下方の列において、「無機固体粒子」という見出しの更に下方の列のうち、「種類」と表記した列には、無機固体粒子として用いた化合物の種類を記載している。また、「平均粒径(μm)」と表記した列には、無機固体粒子の平均粒径を記載している。
【0269】
また、「有機繊維」という見出しの下方の列のうち、「有機材料」と表記した列には、有機繊維として用いた化合物の種類を記載している。また、「太さ(nm)」と表記した列には、有機繊維の長さ方向と垂直な断面の平均直径を記載している。また、「有機繊維の目付(g/cm
2)」と表記した列には、活物質含有層の単位面積当たりの有機繊維の質量を記載している。
【0270】
また、「イオン伝導性ポリマー」と表記した列には、セパレータが、イオン伝導性ポリマー、すなわち、ゲル状非水電解質を含浸しているかいないかを記載している。
【0271】
また、「セパレータ」という見出しの下方の列において、「無機固体粒子の存在率」という見出しの更に下方の列のうち、「割合A(%)」と表記した列には、電極側領域の全面積において無機固体粒子の面積が占める割合を記載している。「割合C(%)」と表記した列には、中間領域の全面積において無機固体粒子の面積が占める割合を記載している。「割合B(%)」と表記した列には、表面側領域の全面積において無機固体粒子の面積が占める割合を記載している。
【0272】
また、「厚さ(μm)」と表記した列には、セパレータの膜厚を記載している。
【0273】
下記表2に、実施例1乃至20及び比較例1乃至6に係る二次電池に関するデータをまとめる。
【0274】
【表2】
【0275】
上記表2において、「正極」という見出しの下方の「正極活物質」と表記した列には、正極活物質の種類を記載している。また、「負極」という見出しの下方の「負極活物質」と表記した列には、負極活物質の種類を記載している。
【0276】
また、「電解質」という見出しの下方の列のうち、「電解質塩」と表記した列には、電解質塩の種類を記載している。また、「溶媒」と表記した列には、溶媒の種類を記載している。
【0277】
また、「電池特性」という見出しの下方の列のうち、「自己放電率(%)」と表記した列には、試験後電圧ΔVを初期電圧Vで除することにより得られた自己放電率ΔV/Vを記載している。「レート特性(%)」と表記した列には、5C放電容量を1C放電容量で除することにより得られた容量比5C放電容量/1C放電容量を記載している。
【0278】
表1及び表2に示すように、有機繊維の層と無機固体粒子とを含み、無機固体粒子が表面側に偏っているセパレータを用いた実施例1乃至22に係る二次電池の自己放電率及びレート特性は、有機繊維の層を含まない比較例1及び2、無機固体粒子を含まない比較例3、無機固体粒子が均一に存在している比較例4、並びに、有機繊維の層の代わりに自立膜型セパレータを用いた比較例5及び6に係る自己放電率及びレート特性よりも優れていた。
【0279】
また、実施例1乃至3の比較から明らかなように、25℃において1×10
-5S/cm以上のリチウムイオン伝導性を有する固体電解質粒子を用いた場合、無機固体粒子を用いた場合と比較して、自己放電率が低下し、レート特性が高まる傾向が見られた。
【0280】
また、実施例1及び実施例9、並びに、実施例3及び実施例11から明らかなように、イオン伝導性ポリマーを用いた場合、液状非水電解質を用いた場合と比較して、自己放電率が低下し、レート特性が高まる傾向が見られた。
【0281】
表1及び表2に示すように、負極活物質の種類、及び非水電解質の種類を変更した場合にも、優れた自己放電率を実現することができた。
【0282】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、電極構造体が提供される。電極構造体は、電極と、セパレータとを含んでいる。電極は、活物質含有層を含んでいる。活物質含有層は、活物質粒子を含んでいる。セパレータは、有機繊維の層と、無機固体粒子とを含んでいる。無機固体粒子は、有機繊維の層に担持されている。無機固体粒子は、セパレータの表面側に偏って存在している。したがって、実施形態に係る電極構造体を用いると、活物質含有層の剥がれに起因する短絡が生じにくくすることができる。
【0283】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
活物質粒子を含む活物質含有層を含む電極と、
前記活物質含有層上に設けられた有機繊維の層、及び、前記有機繊維の層に担持された無機固体粒子を含むセパレータとを含み、
前記無機固体粒子は、前記セパレータの前記電極側とは反対の表面側に偏って存在している電極構造体。
[2]
前記セパレータの主面に対して垂直方向の断面は、前記電極側とは反対の表面側領域と、前記表面側領域と対向する電極側領域とを含み、前記表面側領域中の前記無機固体粒子の面積が占める割合Bは、前記電極側領域中の前記無機固体粒子の面積が占める割合Aよりも高い[1]に記載の電極構造体。
[3]
前記セパレータの主面に対して垂直方向の断面は、前記表面側領域と前記電極側領域との間に位置する中間領域を含み、前記中間領域中の前記無機固体粒子の面積が占める割合Cは、前記割合Aよりも高く、かつ、前記割合Bよりも低い[2]に記載の電極構造体。
[4]
前記割合Bは、50%以上100%以下である[2]又は[3]に記載の電極構造体。
[5]
前記割合Aは、0%以上10%以下である[2]乃至[4]の何れか1に記載の電極構造体。
[6]
前記割合Cは、10%以上40%以下である[3]乃至[5]の何れか1に記載の電極構造体。
[7]
前記無機固体粒子は、25℃において1×10-5S/cm以上のリチウムイオン伝導率を有する固体電解質粒子を含む[1]乃至[6]の何れか1に記載の電極構造体。
[8]
前記有機繊維の層は、イオン伝導性ポリマーを更に含む[1]乃至[7]の何れか1に記載の電極構造体。
[9]
前記活物質粒子は、リチウムイオン吸蔵放出電位が金属リチウムを基準とする電位で、1.0V(vs.Li/Li+)以上3.0V(vs.Li/Li+)以下である化合物を含む[1]乃至[8]の何れか1に記載の電極構造体。
[10]
前記活物質粒子は、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム、スピネル構造を有するチタン酸リチウム、単斜晶型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、斜方晶型チタン含有複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン複合酸化物からなる群より選ばれる1種類以上の化合物を含む[1]乃至[9]の何れか1に記載の電極構造体。
[11]
[1]乃至[10]の何れか1に記載の電極構造体と、
前記電極構造体と対向する電極と、
電解質と
を具備する二次電池。
[12]
[11]に記載の二次電池を具備する電池パック。
[13]
通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する[12]に記載の電池パック。
[14]
複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[12]又は[13]に記載の電池パック。
[15]
[12]乃至[14]の何れか1に記載の電池パックを搭載した車両。
[16] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む[15]に記載の車両。