特許第6805129号(P6805129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6805129燃焼機関の排ガス流を処理するための触媒における白金族金属支持体としての、チタニアがドープされたジルコニア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805129
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】燃焼機関の排ガス流を処理するための触媒における白金族金属支持体としての、チタニアがドープされたジルコニア
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/10 20060101AFI20201214BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20201214BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20201214BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20201214BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20201214BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20201214BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20201214BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20201214BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20201214BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20201214BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B01J23/10 AZAB
   B01J23/63 A
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   B01J37/03 B
   B01J37/02 101C
   B01J37/08
   B01J35/10 301J
   B01J37/04 102
   B01J32/00
   F01N3/10 A
   F01N3/28 Q
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-512699(P2017-512699)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公表番号】特表2017-532192(P2017-532192A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】US2015047386
(87)【国際公開番号】WO2016036592
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2018年7月27日
(31)【優先権主張番号】62/046,465
(32)【優先日】2014年9月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シャオミン ワン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ディーバ
(72)【発明者】
【氏名】シャオライ ヂェン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ティトルバッハ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ズンダーマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン アンドレアス シュンク
【審査官】 佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103130755(CN,A)
【文献】 特開平08−192051(JP,A)
【文献】 特開2000−327329(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/066155(WO,A1)
【文献】 特開平04−330940(JP,A)
【文献】 特表2010−506713(JP,A)
【文献】 特表2004−513771(JP,A)
【文献】 特開2011−136257(JP,A)
【文献】 特開昭63−156545(JP,A)
【文献】 特表2014−517765(JP,A)
【文献】 TAKAHASHI, N. et al.,Sulfur durability of NOx storage and reduction catalyst with supports of TiO2, ZrO2 and ZrO2-TiO2 mixed oxides,Applied Catalysis B:Environmental,NL,Elsevier,2006年11月28日,Vol. 72,pp. 187-195
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/94
F01N 3/10 − 3/38
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化触媒用の混合金属酸化物の複合材であって、前記複合材は、
55〜99質量%の範囲の量のジルコニア;
1〜25質量%の範囲の量のチタニア;
0.1〜20質量%の範囲の量の助触媒;
0〜20質量%の範囲の量の安定剤
を含み、前記複合材は、白金族金属(PGM)のための支持体として有効であり、
前記助触媒がランタナを含む、前記複合材。
【請求項2】
前記安定剤が0.1%〜5%の範囲の量で存在し且つ酸化ケイ素を含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項3】
前記安定剤が0.1%〜10%の範囲の量で存在し且つアルカリ土類金属酸化物を含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項4】
セリア含有率が20質量%以下である、請求項1に記載の複合材。
【請求項5】
1000℃で12時間、炉でエージングした後、10〜40m/gの範囲の表面積を有する、請求項1に記載の複合材。
【請求項6】
燃焼機関の排ガス流を処理するための触媒複合材であって、前記触媒複合材は、担体上に触媒材料を含み、前記触媒材料が、請求項1に記載の混合金属酸化物の複合材の上に担持された白金族金属(PGM)を含む、前記触媒複合材。
【請求項7】
前記混合金属酸化物の複合材が55〜90質量%の範囲の量のジルコニア;5〜25質量%の範囲の量のチタニア;5〜20質量%の範囲の量のランタン酸化物を含有する助触媒を含み;且つ
前記白金族金属がロジウムを含む、請求項6に記載の触媒複合材。
【請求項8】
0.1質量%〜5質量%の範囲の量のロジウムを含む、請求項6に記載の触媒複合材。
【請求項9】
5〜250の範囲というロジウムに対するチタニアの質量比を有する、請求項6に記載の触媒複合材。
【請求項10】
950℃でエージングした後に、50%以上という一酸化炭素、窒素酸化物及び水素の転化率;及び300℃での希薄過濃ラムダスイープ試験中に0.98〜1.02の範囲のラムダで10%以上という炭化水素の転化率をもたらすのに有効である0.25質量%のロジウムを含む、請求項8に記載の触媒複合材。
【請求項11】
内燃機関の炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物を含む排ガス流を処理するためのシステムであって、
この排ガス処理システムは、
排気マニホールドを介して内燃機関と流体連通する排気管;及び
請求項6に記載の触媒複合材
を含む、前記システム。
【請求項12】
炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物を含む気体流を請求項6に記載の触媒複合材と接触させることを含む排ガスの処理方法。
【請求項13】
前記混合金属酸化物の複合材が、55〜90質量%の範囲の量のジルコニア;5〜25質量%の範囲の量のチタニア;5〜20質量%の範囲の量のランタン酸化物を含有する助触媒を含み且つ前記白金族金属が、0.1〜5質量%の範囲の量の、例えば0.25質量%のロジウムを含み;且つ
950℃でエージングした後、前記触媒複合材が50%以上という一酸化炭素、窒素酸化物、及び水素の転化率;及び300℃での希薄過濃ラムダスイープ試験中に0.98〜1.02の範囲のラムダで10%以上という炭化水素の転化率をもたらすのに有効である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
排ガス浄化触媒用の混合金属酸化物の複合材の製造方法であって、
ジルコニウムの塩、金属助触媒の塩、及び任意に安定剤の塩の第1水溶液を得る又は形成すること;
チタンの塩の第2水溶液を得る又は形成すること;
前記第1水溶液と前記第2水溶液とを混合すること;並びに
ジルコニウム、助触媒の金属、任意の安定剤の金属、及びチタンを塩基性条件下で共沈させること;それによって共沈した混合金属酸化物の複合材を形成すること
を含み、前記助触媒がランタナを含む、前記製造方法。
【請求項15】
前記共沈した混合金属酸化物の複合材が、
55〜99%の範囲の量のジルコニア;1〜25%の範囲の量のチタニア;0.1〜20%の範囲の量の助触媒;0〜20質量%の範囲の量の安定剤
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記共沈した混合金属酸化物の複合材を乾燥及び焼成することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
排ガス浄化触媒用の混合金属酸化物の複合材の製造方法であって、
共沈したジルコニア及び金属助触媒及び任意の安定剤を得ること;
チタンの前駆体の水溶液を得ること;
前記共沈したジルコニア及び金属助触媒にチタンの前駆体を含浸させること;
それによって混合金属酸化物の複合材を形成すること
を含み、前記助触媒がランタナを含む、前記製造方法。
【請求項18】
前記混合金属酸化物の複合材が55〜99%の範囲の量のジルコニア;1〜25%の範囲の量のチタニア;0.1〜20%の範囲の量の助触媒;0〜20質量%の範囲の量の安定剤を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、排ガス浄化触媒のための混合金属酸化物支持体及びその使用方法に関する。更に詳細には、白金族金属(PGM)のための、チタニアがドープされたジルコニア支持体が提供される。具体的には、ランタナなどの助触媒、又は安定剤を任意に添加したチタニア−ジルコニア支持体は、低温(例えば、350℃未満又は400℃未満)で優れた三元変換(TWC:Three Way Conversion)触媒活性をもたらすロジウムを担持する。
【0002】
背景
未燃炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物の汚染物質に対する排出基準はますます厳しくなっている。このような基準を満たすために、内燃機関の排気ガスラインには、三元変換(TWC)触媒を含む触媒コンバータが配置されている。このような触媒は、排ガス流中の酸素によって未燃炭化水素と一酸化炭素の酸化を促進させるだけでなく、窒素酸化物の窒素への還元をも促進させる。政府規制(例えば、米国のLEVIIIや欧州のEuro 6&7)は、コールドスタートから触媒が完全に温まるまでの間の排出量を対象にしている。これに対処するための戦略は、低温で白金族金属(PGM)の妨げにならない支持体であって、その性能を向上させる支持体によってPGMが確実に供給されるようにすることである。
【0003】
ランタニドがドープされたジルコニアを、TWC用途のための支持体として有する触媒が、米国特許出願公開第2013/0115144号(U.S. Patent Appln. Pub. No. 2013/0115144)に示されている。国際公開第9205861号(WO9205861)は、ロジウムを担持するために使用されるべき共生成セリア−ジルコニア複合材について説明しており、ここでロジウムを助触媒として有する支持体上に卑金属酸化物が共分散され得る。
【0004】
規制された排出量を達成するために優れた触媒活性及び/又はライトオフ性能及び/又は成分の効率的な使用をもたらす触媒製品を提供することが、当該技術分野において引き続き求められている。
【0005】
発明の概要
排ガス浄化触媒のための混合金属酸化物の複合材、及びその製造方法及びその使用が提供される。これらの複合材は、白金族金属(PGM)、特にロジウムのための支持体として有効である。
【0006】
第1の態様は、55〜99質量%の範囲の量のジルコニア、1〜25質量%の範囲の量のチタニア、0〜20質量%の範囲の量の助触媒及び/又は安定剤を含む、排ガス浄化用触媒のための混合金属酸化物の複合材を提供する。助触媒は、希土類金属酸化物を含み、且つ0.1〜20%の範囲の量で存在する。助触媒は、ランタナ、タングスタ、セリア、ネオジミア、ガドリニア、イットリア、プラセオジミア、サマリア、ハフニア、又はそれらの組み合わせを含み得る。安定剤は、0.1〜5%の範囲の量で存在し且つ酸化ケイ素を含み得る。安定剤は、0.1〜10%の範囲の量で存在し且つアルカリ土類金属酸化物を含み得る。複合材のセリア含有率は、20質量%以下、又は10質量%以下、又は5質量%以下、又は1質量%以下、又は0.1質量%以下、又は更に0質量%であり得る。
【0007】
複合材は、ジルコニア、チタニア、及び助触媒及び/又は安定剤を共沈状態で含み得る。あるいは、複合材はジルコニア及び助触媒及び/又は安定剤を共沈状態で含んでもよく、チタニアはチタニア前駆体から含浸される。チタニア前駆体は、チタン塩、チタン含有有機錯体、チタニアゾル、又はコロイド状チタニアを含み得る。
【0008】
複合材は1000℃で12時間、炉でエージングした後に10〜40m/gの範囲の表面積を有し得る。
【0009】
別の態様は、担体上に触媒材料を含み、前記触媒材料が本明細書に開示された混合金属酸化物の複合体のいずれかに担持された白金族金属(PGM)を含む、燃焼機関の排ガス流を処理するための触媒複合材を提供する。触媒複合材は0.1〜5質量%の範囲の量のロジウムを含み得る。触媒複合材は、5〜250の範囲というロジウムに対するチタニアの質量比を有することができる。触媒複合材は、0.25質量%のロジウムを含んでよく、このことは950℃でのエージング後に50%以上という一酸化炭素と窒素酸化物の転化率;及び300℃での希薄過濃ラムダスイープ試験中に0.98〜1.02の範囲のラムダで10%以上という炭化水素の転化率をもたらすのに有効である。
【0010】
更なる態様では、内燃機関の炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物を含む排ガス流を処理するためのシステムは、排気マニホールドを介して内燃機関と流体連通する排気管;及び本明細書に開示された任意の触媒複合材を含む。
【0011】
別の態様では、排ガスの処理方法は、炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物を含む気体流を、本明細書に開示された任意の触媒複合材と接触させることを含む。混合金属酸化物の複合材は、55〜90質量%の範囲の量のジルコニア;5〜25質量%の範囲の量のチタニア;5〜20質量%の範囲の量のランタン酸化物を含有する助触媒を含んでよく且つ白金族金属は、0.25質量%の量のロジウムを含み;且つ950℃でエージングした後に、触媒複合材は、50%以上という一酸化炭素と窒素酸化物の転化率;及び300℃での希薄過濃ラムダスイープ試験中に0.98〜1.02の範囲のラムダで10%以上という炭化水素の転化率をもたらすのに有効であり得る。
【0012】
また、ジルコニウムの塩、金属助触媒の塩、及び任意に安定剤の塩の第1水溶液を得る又は形成すること;チタンの塩の第2水溶液を得る又は形成すること;第1水溶液と第2水溶液とを混合すること;並びにジルコニア、任意の助触媒又は安定剤の金属、及びチタニアを塩基性条件下で共沈させること、それによって共沈した混合金属酸化物の複合材を形成することを含む、混合金属酸化物の複合材の製造方法も提供される。この方法は更に共沈した混合金属酸化物の複合材を乾燥させること及び焼成することを含み得る。
【0013】
また、共沈したジルコニア及び金属助触媒及び任意の安定剤を得ること;チタンの前駆体の水溶液を得ること;共沈したジルコニア及び金属助触媒にチタンの前駆体を含浸させること;それによって混合金属酸化物の複合材を形成することを含む、混合金属酸化物の複合材の製造方法も提供される。
【0014】
本開示は、添付の図面に関連して本開示の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することにより、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、300℃におけるラムダに対する一酸化炭素(CO)の転化率のグラフを示す。
図2図2は、300℃におけるラムダに対する炭化水素(HC)の転化率のグラフを示す。
図3図3は、300℃におけるラムダに対する窒素酸化物(NO)の転化率のグラフを示す。
図4図4は、350℃におけるラムダに対する炭化水素(HC)の転化率のグラフを示す。
図5図5は、350℃におけるラムダに対する一酸化炭素(CO)の転化率のグラフを示す。
【0016】
発明の詳細な説明
混合金属酸化物の複合材は、55〜99質量%の範囲の量のジルコニア;1〜25質量%の範囲の量のチタニア;白金族金属(PGM)のための支持体として有効な0〜20%の範囲の量の助触媒及び/又は安定剤を含む。ウォッシュコートは燃焼機関、例えば、自動車エンジンの下流の処理用の触媒複合材又は物品として使用される担体の上に被覆され、その上に、PGM、特にロジウムが担持される。
【0017】
本明細書では以下の定義が使用される。
【0018】
白金族金属(PGM)成分は、PGMを含む任意の化合物を指す。例えば、PGMは金属の形、即ち、ゼロ価(zero valance)であるか、又は酸化物の形であってもよい。PGM成分について言及すると、任意の価電子状態のPGMが存在することが可能である。例えば、ロジウムはRh及び/又はRh3+、又は他の酸化状態で存在し得る。
【0019】
「BET表面積」は、N吸着測定により表面積を測定する比表面積測定法(Brunauer−Emmett−Teller法)を指す通常の意味を有する。特に記載のない限り、「表面積」はBET表面積を指す。
【0020】
触媒材料又は触媒ウォッシュコートにおける「支持体」とは、貴金属、安定剤、助触媒、結合剤等を、沈殿、会合、分散、含浸、又は他の適切な方法を通して受け取る材料を指す。ジルコニア、チタニア、及び必要に応じて助触媒及び/又は安定剤を含む混合金属酸化物の複合材は、支持体として有効である。他の支持体の例として、高表面積耐火性金属酸化物、酸素貯蔵成分を含有する複合材、及び本明細書に開示される混合金属酸化物を含む、耐火性金属酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
「遷移金属酸化物」(TMO)は、元素の周期律表の第3族〜第12族の金属の1つ以上の酸化物を指す。
【0022】
「耐火性金属酸化物支持体」はバルクアルミナを含み、セリア、ジルコニア、チタニア、シリカ、マグネシア、ネオジミア、及び他の材料はこのような使用について知られている。このような材料は、得られる触媒に耐久性を与えると考えられている。
【0023】
「高表面積耐火性金属酸化物支持体」とは、具体的には、20Åよりも大きな細孔と広い細孔分布を有する支持体粒子を意味する。高表面積の耐火性金属酸化物支持体、例えば、「ガンマアルミナ」又は「活性アルミナ」とも呼ばれるアルミナ支持体材料は、典型的には、1グラム当たり60平方メートル(「m/g」)を超える、しばしば約200m/g以上の新しい材料のBET表面積を示す。このような活性アルミナは、通常、アルミナのγ相とδ相の混合物であるが、かなりの量のイータ、カッパ、及びシータアルミナ相も含有し得る。
【0024】
「希土類金属酸化物」とは、元素の周期律表で定義されているスカンジウム、イットリウム、及びランタン系列の1つ以上の酸化物を指す。希土類金属酸化物は、例示的な酸素貯蔵成分と促進材料の両方になり得る。適切な酸素貯蔵成分の例としては、セリア、プラセオジミア、又はそれらの組み合わせが挙げられる。セリアの送達は、例えばセリア、セリウムとジルコニウムの混合酸化物、及び/又はセリウム、ジルコニウム、及び他の希土類元素の混合酸化物を使用することで達成され得る。適切な助触媒としては、ランタン、タングステン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、ハフニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の希土類金属の1種以上の非還元性酸化物が挙げられる。
【0025】
「アルカリ土類金属酸化物」は、例示的な安定剤材料である第II族金属酸化物を指す。適切な安定剤としては、金属がバリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の非還元性金属酸化物が挙げられる。好ましくは、安定剤はバリウム及び/又はストロンチウムの1つ以上の酸化物を含む。
【0026】
「ウォッシュコート」は、モノリス基材又はフィルター基材を通るハニカムフローなどの耐火性基材に適用される触媒又は他の材料の薄くて付着性のコーティングであり、これは処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性である。従って、「ウォッシュコート層」は、支持体粒子からなるコーティングと定義されている。「触媒付きウォッシュコート層」は、触媒成分が含浸された支持体粒子からなるコーティングである。
【0027】
混合金属酸化物の支持体材料
Ti−La−ZrO支持体材料は、以下のように調製される。1つの例示的な方法は、望ましい成分:チタン及びジルコニウム並びに任意の所望の助触媒を共沈させることである。別の例示的な方法は、共沈したジルコニア複合材(Ce−Zr、例えばLa−ZrOを除く)を用意し、次にチタン前駆体を含浸させることである。
【0028】
全ての所望の材料の共沈物を、2つの溶液を調製することによって調製する。第1の水溶液は、ジルコニウム塩の塩(例えば、硝酸ジルコニウム)を含む。第2の水溶液は、ランタンの塩(例えば、硝酸ランタン)及びチタニア前駆体を含む。溶液をアンモニア(NH)の水溶液に加え、その混合物を約9.0のpHで保持した。ろ液は、乾燥し、ラウリン酸などの酸で処理することによって得られる。更に、ろ液の洗浄、乾燥、及び焼成を行って、所望の複合材を得る。ジルコニアは一般的に55〜99質量%の範囲の量で存在し、チタニアは1〜25質量%の範囲の量で存在し;場合により助触媒及び/又は安定剤が0〜20質量%の範囲の量で存在することになるであろう。
【0029】
別の方法では、複合材料は、高表面積の共沈したLa安定化ジルコニア複合材上にチタニア前駆体(チタン化合物又はチタニアゾル)を含浸させることによっても製造され得る。
【0030】
支持体材料は多くの方法で特性決定され得る。例えば、チタンの結晶形はX線回折(XRD)によって決定され得る。新しい支持体材料の表面積は、60〜90m/gの範囲内にあり得る。エージング済み支持体材料は、1000℃で12時間、炉でエージングした後、10〜40m/gの範囲の表面積を有し得る。ロジウムに対するチタニアの質量比は、5〜250の範囲内にあり得る。
【0031】
触媒材料
触媒材料は以下のように調製される。所望の白金族金属(PGM)は、当技術分野で公知の方法、例えば、含浸初期湿潤法によってTi−La−ZrO支持体上に担持される。
【0032】
触媒複合材
触媒材料が調製されると、触媒複合材が担体上の1つ以上の層に調製され得る。本明細書に記載される触媒材料のいずれかの分散液を用いて、ウォッシュコート用のスラリーを形成することができる。
【0033】
スラリーには、他の白金族金属、他の支持体、他の安定剤及び助触媒、並びに1つ以上の酸素貯蔵成分などの任意の所望の追加成分が添加され得る。
【0034】
1つ以上の実施形態では、スラリーは酸性であり、約2〜約7未満のpHを有する。スラリーのpHは、スラリーに適量の無機酸又は有機酸を加えることによって下げられてもよい。両者の組み合わせは、酸と原材料の相溶性を考慮した際に使用することができる。無機酸としては、硝酸が挙げられるが、これに限定されない。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。その後、必要に応じて、酸素貯蔵成分の水溶性又は水分散性化合物、例えば、セリウム−ジルコニウム複合材、安定剤、例えば、酢酸バリウム、及び助触媒、例えば、硝酸ランタンがスラリーに添加され得る。その後、スラリーが粉砕されると、平均直径で約20ミクロン未満、即ち、約0.1ミクロン〜15ミクロンの粒径を有する実質的に全ての固形物が得られる。粉砕は、ボールミル又は他の同様の装置で行われてよく、スラリーの固形分は、例えば約10〜50質量%、更に具体的には約10〜40質量%であり得る。次に、担体が、そのようなスラリー中に1回以上浸漬されるか又はスラリーが、所望の充填量、例えば、約0.5〜約3.0g/inのウォッシュコート/金属酸化物複合材が担体上に堆積されるように担体上に被覆され得る。
【0035】
その後、被覆された担体が、例えば、500℃〜600℃で約1時間〜約3時間加熱することによって焼成される。
【0036】
典型的には、白金族金属が望ましい場合、金属成分は、耐火性金属酸化物の支持体上の成分、例えば、活性アルミナ又はセリア−ジルコニア複合材の分散を達成するために、化合物又は錯体の形で利用される。本明細書での目的のために、「金属成分」という用語は、焼成又はその使用の際に、触媒活性形態、通常は金属又は金属酸化物に分解又は変換する任意の化合物、錯体などを意味する。触媒組成物中に存在してよく且つ加熱時及び/又は真空の適用時に揮発又は分解によって金属成分から除去することができる金属又はその化合物又はその錯体又はその他の成分と、耐火性金属酸化物支持体粒子上に金属成分を含浸又は堆積させるために用いられる液体媒体が不利に反応しない限り、水溶性化合物又は水分散性化合物又は金属成分の錯体が使用されてもよい。場合によっては、触媒が使用され、運転中に直面する高温に曝されるまで、液体の除去が完了しないことがある。一般的に、経済性と環境面の両方の観点から、可溶性化合物又は貴金属錯体の水溶液が利用される。か焼工程の間、又は少なくとも複合材の使用の初期段階の間に、このような化合物は、金属又はその化合物の触媒的に活性な形に変換される。
【0037】
担体上に任意の層を堆積させるために上記の方法と同じ方法で、追加の層が調製され、前の層に堆積され得る。
【0038】
担体
1つ以上の実施形態では、触媒材料が担体上に配置される。
【0039】
担体は、触媒複合材を調製するために典型的に使用されるそれらの材料のいずれであってもよく、好ましくはセラミック又は金属ハニカム構造を含むであろう。流路が流体流通するように、基材の流入口面又は流出口面から細かくて平行なガス流路が貫通しているタイプのモノリシック基材などの任意の適切な担体(ハニカムフロースルー基材と呼ぶ)が使用され得る。流入口から流出口まで実質的に直線的な経路である流路は、触媒材料がウォッシュコートとして被覆される壁によって画定され、その流路を流れるガスが触媒材料に接触する。モノリシック基材の流路は、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形等の任意の適切な断面形状とサイズであり得る薄壁のチャンネルである。このような構造は、断面1平方インチ当たり約60個から約900個まで又はそれ以上のガス入口開口部(即ち、セル)を含有し得る。
【0040】
担体は、チャンネルが交互に遮断されるウォールフローフィルター基材であってもよく、これは、ガス流が一方向(入口方向)からチャンネルに入って、チャンネル壁を流れ、他の方向(出口方向)からチャンネルを出るようにする。二重酸化触媒組成物が、ウォールフローフィルター上にコーティングされ得る。このような担体が利用される場合、得られるシステムは、ガス状の汚染物質とともに粒子状物質を除去することができるであろう。ウォールフローフィルター担体は、コージェライト又はシリコンカーバイドなどの、当業界で一般に知られている材料から作られ得る。
【0041】
担体は、任意の適切な耐火材料、例えば、コージェライト、コージェライト−アルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、アルミナ、及びアルミノケイ酸塩等で作られ得る。
【0042】
本発明の触媒に有用な担体は、本質的に金属性であってもよく、1種以上の金属又は金属合金で構成されてもよい。金属性の担体は、波形板又はモノリシック形などの様々な形で使用され得る。好ましい金属支持体としては、耐熱金属及びチタンやステンレス鋼などの金属合金だけでなく、鉄が実質的な成分又は主要成分である他の合金も挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム及び/又はアルミニウムのうち1つ以上を含有してよく、これらの金属の総量は、有利には、少なくとも15質量%の合金、例えば、10〜25質量%のクロム、3〜8質量%のアルミニウム、20質量%までのニッケルを含み得る。合金は、少量又は微量の、マンガン、銅、バナジウム、チタンなどのうち1つ以上の他の金属を含んでもよい。金属性担体の表面は高温、例えば、1000℃以上で酸化されて、酸化物層を担体の表面に形成することによって合金の耐腐食性を改善し得る。このような高温誘導性酸化は、耐火性金属酸化物支持体と触媒的促進金属成分の担体への付着性を高め得る。
【0043】
別の実施形態では、1つ以上の触媒組成物が、連続気泡フォーム基材上に堆積され得る。このような基材は、当該技術分野において周知であり、典型的には、耐火性セラミック又は金属材料で形成される。
【0044】
本発明の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成又は工程段階の詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施することができる。以下では、単独で又は無制限の組み合わせで使用される記載されるような組み合わせを含む好ましい設計が提供され、その使用は、本発明の他の態様の触媒、システム、及び方法を含む。
【0045】
実施形態
様々な実施形態を以下に列挙する。以下に列挙する実施形態が、本発明の範囲に従う全ての態様及び他の実施形態と組み合わされ得ることが理解されるであろう。
【0046】
実施形態1は、ジルコニア、チタニア、及び助触媒及び/又は安定剤を含む、排ガス浄化触媒用の混合金属酸化物の複合材である。
【0047】
実施形態2は、触媒材料が本明細書に開示された混合金属複合材のいずれかに担持された白金族金属(PGM)を含む、担体上に前記触媒材料を含む、燃焼機関の排ガス流を処理するための触媒複合材である。
【0048】
実施形態3は、排気マニホールドを介して前記内燃機関と流体連通する排気管;及び本明細書に開示された任意の触媒複合材を含む、内燃機関の炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物を含む排ガス流を処理するためのシステムである。
【0049】
実施形態4は、炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物を含む気体流を本明細書に開示された触媒複合材のいずれかと接触させることを含む排ガスの処理方法である。
【0050】
実施形態5は、ジルコニウムの塩、金属助触媒の塩、及び任意に安定剤の塩の第1水溶液を得る又は形成すること;チタンの塩の第2水溶液を得る又は形成すること;第1水溶液と第2水溶液とを混合すること;並びに前記ジルコニウム、前記任意の助触媒又は安定剤の金属、及び前記チタンを塩基性条件下で共沈させること;それによって共沈した混合金属酸化物の複合材を形成することを含む、混合金属酸化物の複合材の製造方法である。
【0051】
実施形態6は、共沈したジルコニア及び金属助触媒及び任意の安定剤を得ること;チタンの前駆体の水溶液を得ること;前記共沈したジルコニア及び前記金属助触媒に前記チタンの前駆体を含浸させること;それによって共沈した混合金属酸化物の複合材を形成することを含む、混合金属酸化物の複合材の製造方法である。
【0052】
本明細書の実施形態1〜6はそれぞれ以下の設計の特徴を単独で又は組み合わせて有し得る。
【0053】
混合金属酸化物の複合材は、55〜99質量%の範囲の量のジルコニア;1〜25質量%の範囲の量のチタニア;0〜20質量%の範囲の量の助触媒及び/又は安定剤を含み得る。
【0054】
助触媒は、希土類金属酸化物を含み且つ0.1〜20%の範囲の量で存在する。
【0055】
助触媒は、ランタナ、タングスタ、セリア、ネオジミア、ガドリニア、イットリア、プラセオジミア、サマリア、ハフニア、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0056】
安定剤は、0.1〜5%の範囲の量で存在し且つ酸化ケイ素を含み得る。
【0057】
安定剤は、0.1〜10%の範囲の量で存在し且つアルカリ土類金属酸化物を含み得る。
【0058】
混合金属酸化物の複合材のセリア含有率は、20質量%以下、又は10質量%以下、又は5質量%以下、又は1質量%以下、又は0.1質量%以下、又はさらには0質量%であり得る。
【0059】
混合金属酸化物の複合材は、ジルコニア、チタニア、及び助触媒及び/又は安定剤を全て共沈状態で含み得る。
【0060】
混合金属酸化物の複合材は、ジルコニア及び助触媒及び/又は安定剤を共沈状態で含んでよく、チタニアはチタニア前駆体から含浸される。
【0061】
チタニア前駆体は、チタン塩、チタン含有有機錯体、チタニアゾル、又はコロイド状チタニアを含み得る。
【0062】
混合金属酸化物の複合材は、1000℃で12時間、炉でエージングした後、10〜40m/gの範囲の表面積を有し得る。
【0063】
触媒複合材は、0.1〜5質量%の範囲の量のロジウムを含み、質量%は複合材の総質量を基準とする。
【0064】
触媒複合材は、5〜250の範囲というロジウムに対するチタニアの質量比を有することができる;
【0065】
触媒複合材は、0.1質量%〜5質量%のロジウム、例えば0.25質量%のロジウムを含んでよく、これは950℃でエージングした後に50%以上という一酸化炭素、窒素酸化物、及び水素の転化率;及び300℃での希薄過濃ラムダスイープ試験中に0.98〜1.02の範囲のラムダで10%以上という炭化水素の転化率をもたらすのに有効である。
【0066】
混合金属酸化物の複合材は、55〜90質量%の範囲の量のジルコニア;5〜25質量%の範囲の量のチタニア;5〜20質量%の範囲の量のランタン酸化物を含有する助触媒を含んでよく且つ白金族金属は、0.25質量%の量のロジウムを含み;且つ950℃でエージングした後に、触媒複合材は、50%以上という一酸化炭素、窒素酸化物及び水素の転化率;及び300℃での希薄過濃ラムダスイープ試験中に0.98〜1.02の範囲のラムダで10%以上という炭化水素の転化率をもたらすのに有効であり得る。
【0067】
本方法は、共沈した混合金属酸化物の複合材を乾燥させ且つ焼成することを更に含み得る。
【0068】
実施例
以下の非限定的な実施例は、本発明の様々な実施形態を説明する役割を果たすであろう。各実施例では、担体はコージェライトであった。
【0069】
実施例1
遷移金属酸化物(TMO)として5%のチタニア(TiO)及び安定剤/ドーパントとして5%のランタナを含み、且つ残分はジルコニア(主成分)である例示的な混合金属酸化物(Ti−La−ZrO)を以下のように調製した。硝酸ジルコニウムの水溶液を調製し、溶液1を作った。硝酸ランタン水溶液を調製し、これにチタニアの前駆体(Ti−(V)−エトキシド)を加えて溶液2とした。溶液1と2をアンモニア(NH)水溶液に加え、混合物をpH約9.0で15分間混合条件で保持した。混合物を分割し、オートクレーブ内で150℃で12時間乾燥させた。ラウリン酸を加えて最終生成物の表面積を増やした。フィルターを用いてろ液を得て、これを次にアンモニア(25%溶液)で洗浄して硝酸塩を除去した。次にろ液を40℃で乾燥させ、700℃で焼成した。
【0070】
複合材を、BET法を用いて表面積について試験した。新しい複合材の表面積は70m/gであり、エージング済み複合材(1000℃で12時間、炉でエージング)の表面積は15m/gであった。
【0071】
実施例2
比較例
比較のために、10質量%のランタナ及び90質量%のジルコニアの複合材(La−ZrO)を、実施例1のTi−La−ZrO複合材と同じように作った。比較の複合材の表面積を、実施例1で使用された同じ試験方法を用いて試験した。比較の複合材は83m/gの新しい表面積を有し、エージング済み複合材(1000℃で12時間、炉でエージング)は25m/gの表面積を有していた。
【0072】
実施例3
実施例1のTi−La−ZrO複合材上に担持されたロジウム(Rh)を含む触媒材料を調製した。具体的には、0.25質量%の硝酸Rh溶液を、標準的な初期湿潤法を用いて複合材上に含浸させた。この材料を120℃で乾燥させ、次に空気中で550℃で1時間焼成した。試験のために、触媒材料を、酢酸ジルコニウム(複合材基準で5質量%)でスラリー化し、撹拌下で乾燥させ、空気中で550℃で2時間焼成し、250〜500μmまで粉砕/篩分けすることによって成形した。成形された触媒材料を、希薄過濃サイクル下で10%の水中で950℃で5時間エージングした。
【0073】
実施例4
比較例
比較例2のLa−ZrO複合材に担持されたロジウム(Rh)を含む比較の触媒材料を調製した。具体的には、0.25質量%の硝酸Rh溶液を、標準的な初期湿潤法を用いて複合材上に含浸させた。この材料を120℃で乾燥させ、次に空気中で550℃で1時間焼成した。試験のために、触媒材料を、酢酸ジルコニウム(複合材基準で5質量%)でスラリー化し、撹拌下で乾燥させ、空気中で550℃で2時間焼成し、そして250〜500μmまで粉砕/篩分けすることによって成形した。成形された触媒材料を、希薄過濃サイクル下で10%の水中で950℃で5時間エージングした。
【0074】
実施例5
試験
実施例3及び比較例4のエージング済み触媒材料を、ラムダスイーププロトコル下で異なる温度(250℃、300℃、350℃及び450℃)で試験した。条件は次の通りであった:GHSV=70000h−1(1mLの被覆触媒まで標準化)及び振動フィード(λavg±0.05、1秒希薄、1秒過濃、180秒/位置)。
【0075】
300℃では、実施例1のTi−La−ZrO複合材を使用する触媒材料は、市販のLa−Zr複合材を使用する触媒材料に比べて優れた性能を示した。より高い温度では、様々な触媒材料の性能は顕著ではなかった。コールドスタート中の排出を低減し且つライトオフ性能を向上させるためには、350℃〜400℃未満の実行性能が望ましい。図1〜3は、300℃における実施例3及び比較例4の触媒材料の排出物(一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NO))の転化率を示す。
【0076】
実施例6
担体上に2つの層を有する触媒材料を含む配合済み自動車触媒複合材を調製した。総貴金属負荷量は60g/ftであり、Pt/Pd/Rh比は0/55/5であった。基材のセル密度は600セル/平方インチであり、壁厚は約4ミル(又は101.6μm)であった。基材のサイズは4.66×3インチであり、体積は51.17inであった。
【0077】
担体上に堆積した下層はパラジウム(Pd)を含み、その一部はセリア−ジルコニア酸素貯蔵成分(OSC)によって担持され、別の部分は高表面積のガンマ−アルミナ支持体によって担持された。下層はバリアとジルコニアも含有していた。下層の負荷量は2.332g/inであった。
【0078】
下層の上に堆積した上層は、支持体上にロジウム(Rh)を含み、この支持体は、9質量%のランタナ含有率を有する市販のLa−ZrOの上に含浸された5%のTiOを含んでいた。上層の負荷量は1.403g/inであった。
【0079】
実施例7
比較例
担体上に2つの層を有する触媒材料を含む比較の配合済み自動車触媒複合材を調製した。総貴金属負荷量は60g/ftであり、Pt/Pd/Rh比は0/55/5であった。基材のセル密度は600セル/平方インチであり、壁厚は約4ミル(又は101.6μm)であった。基材のサイズは4.66×3インチであり、体積は51.17inであった。
【0080】
担体上に堆積された下層は、パラジウム(Pd)を含み、その一部はセリア−ジルコニア酸素貯蔵成分(OSC)によって担持され、別の部分は高表面積ガンマ−アルミナ支持体によって担持された。下層はバリアとジルコニアも含有していた。下層の負荷量は2.332g/inであった。
【0081】
下層に堆積された上層は、9質量%のランタナ含有率を有する市販のLa−ZrO支持体上にロジウム(Rh)を含んでいた。上層の負荷量は1.403g/inであった。
【0082】
実施例8
試験
実施例6及び比較例7の配合済み触媒複合材を、希薄/過濃サイクル下にて10%の水中で950℃で5時間エージングした。エージング済み複合材を、異なる温度(300℃、350℃及び450℃)でラムダスイーププロトコルで試験した。条件は次の通りであった:GHSV=125000h−1(1mLの被覆触媒まで標準化)及び振動フィード(λavg±0.025、0.5秒希薄、0.5秒過濃、50秒/位置)。
【0083】
実施例6の触媒複合材は、300℃〜350℃での炭化水素(HC)の転化率について利点を示した。図4は、300℃〜350℃、特に過濃条件下での実施例6及び比較例7の配合済み触媒複合材の場合について炭化水素(HC)の排出物の転化率を示す。400℃以上では、大きな利点はなかった。図5に示すように、一酸化炭素(CO)の転化率の場合、実施例6の触媒複合材は300℃〜350℃での改善を示した。窒素酸化物(NO)の転化率の場合、大きな違いはなかったが、触媒の試験方法自体が要因となり得る、即ち、NOx転化率が高すぎるために、2つの触媒間の違い(支持体材料の違いではない)を区別することができないことに留意するべきである。
【0084】
本明細書を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、材料又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通して様々な箇所における「1つ以上の実施形態では」、「ある実施形態では」、「一実施形態では」、又は「実施形態では」などの表現の出現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を意味していない。さらには、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態で任意の適切な方法で組み合わされ得る。
【0085】
本発明を好ましい実施形態に重点を置いて説明してきたが、好ましい装置及び方法のバリエーションを使用してよく、本発明を本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施してもよいことが意図されていることは当業者には明らかであろう。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に包含される全ての変更を含む。
図1
図2
図3
図4
図5