【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,2010年,Vol.107, No.4,pp.1547-1552
【文献】
Clin. Cancer Res.,2013年,Vol.19, No.20,pp.5626-5635
【文献】
Mol. Cancer,2013年,12:11
【文献】
J. Immunol.,2013年,Vol.191,pp.4165-4173
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒトCD73に結合し、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、およびそれぞれ配列番号13、14および15を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、単離抗体であって、IgG2ヒンジおよびIgG2 CH1ドメインを含む重鎖定常領域を含む、単離抗体。
ヒンジドメインが、野生型ヒトIgG2ヒンジドメイン(配列番号136)に対して、KabatシステムのEU指数に従うC219Sのアミノ酸置換を含む、請求項1に記載の単離抗体。
抗体が配列番号135に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号12に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の単離抗体。
さらなる治療剤が、プログラム細胞死タンパク質1(PD−1)アンタゴニスト、PD−L1アンタゴニスト、CTLA−4アンタゴニスト、またはリンパ球活性化遺伝子−3(LAG−3)アンタゴニストである、請求項13に記載の組成物。
請求項1に記載の抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードする核酸分子を含む発現ベクターで形質転換した細胞で抗体を発現させ、該細胞から抗体を単離することを含む、抗CD73抗体を製造する方法。
癌が膀胱癌、乳癌、子宮/子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、食道癌、消化器癌、膵臓癌、結腸直腸癌、結腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、胃癌、胚細胞癌、骨癌、肝臓癌、甲状腺癌、皮膚癌、中枢神経系の新生物、リンパ腫、白血病、骨髄腫、肉腫およびウイルス関連癌からなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
さらなる治療剤が、PD−1アンタゴニスト、PD−L1アンタゴニスト、CTLA−4アンタゴニストまたはLAG−3アンタゴニストである、請求項29に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0122】
詳細な記載
ここに記載するのは、CD73に特異的に結合し、それによりCD73活性を低減する、単離抗体、特にモノクローナル抗体、例えば、ヒトモノクローナル抗体(“アンタゴニスト抗CD73抗体”)である。ある態様において、ここに記載する抗体は、特定の重鎖および軽鎖生殖系列配列由来であり、かつ/または特定のアミノ酸配列を含むCDR領域のような特定の構造的特徴を有する。ここに提供されるのは、単離抗体、このような抗体を製造する方法、このような抗体を含む免疫複合体および二重特異性分子および該抗体を含むように製剤した医薬組成物である。またここに提供されるのは、腫瘍増殖のために、抗体を、単独でまたは他の治療剤(例えば、抗体)および/または癌治療と組み合わせて使用する方法である。したがって、ここに記載する抗CD73抗体を、例えば、腫瘍増殖の阻止、転移の阻止および腫瘍に対する免疫応答の増強を含む、広範な治療適用における処置において使用し得る。
【0123】
定義
本記載がより容易に理解され得るために、いくつかの用語をまず定義する。さらなる定義は、明細書の記載の中に示す。
【0124】
ここで使用する用語“分類群(Cluster of Differentiation)73”または“CD73”は、細胞外ヌクレオシド5’一リン酸をヌクレオシドに、すなわちアデノシン一リン酸(AMP)をアデノシンに変換できる酵素(ヌクレオチダーゼ)である。CD73は、通常グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合により細胞膜に固定された二量体として見られ、外酵素活性を有し、シグナル伝達に役割を有する。CD73の主要機能は、細胞外ヌクレオチド(例えば、5’−AMP)から、高度に免疫抑制性の分子であるアデノシンへの変換である。それゆえに、エクト5’−ヌクレオチダーゼは、プリンおよびピリミジンリボおよびデオキシリボヌクレオシド一リン酸の対応するヌクレオシドへの脱リン酸化を触媒する。CD73は広い基質特異性を有するが、プリンリボヌクレオシドに優先的である。
【0125】
CD73はまたエクト5’ヌクレアーゼ(エクト5’NT、EC 3.1.3.5)とも呼ばれる。用語“CD73”は、細胞により天然で発現されるCD73のあらゆるバリアントまたはアイソフォームを含む。したがって、ここに記載する抗体は、ヒト以外の種からのCD73(例えば、カニクイザルCD73)と交差反応し得る。あるいは、抗体は、ヒトCD73に特異的であり、他の種と何ら交差反応性を示し得ない。CD73またはそのあらゆるバリアントおよびアイソフォームは、それらを天然で発現する細胞または組織から単離されても、当分野における周知の技術および/またはここに記載する技術を使用して組み換え的に生産されてもよい。
【0126】
ヒトCD73の2個のアイソフォームが同定されており、その両者は、同一のN末端およびC末端部分を共有する。アイソフォーム1(Accession No. NP_002517.1;配列番号1)は、574アミノ酸および9エクソンからなる最長タンパク質を表す。アイソフォーム2(Accession No. NP_001191742.1;配列番号2)は、アミノ酸404〜453を欠く524アミノ酸からなる短いタンパク質をコードする。アイソフォーム2は、8エクソンのみを有するが、NおよびC末端配列は同一である転写物を生じる、交互インフレームエキソンを欠く。
【0127】
カニクイザル(cyno)CD73タンパク質配列を配列番号3として提供する。用語カニクイザルおよびcynoは、いずれもMacaca fascicularis種をいい、明細書をとおして相互交換可能に使用される。
【0128】
ここで使用する用語“抗体”は、抗体全体およびその何らかの抗原結合フラグメント(すなわち、“抗原結合部分”)または単鎖を含み得る。“抗体”は、ある態様において、ジスルフィド結合により相互接続した少なくとも2個の重(H)鎖および2個の軽(L)鎖を含む糖タンパク質またはその抗原結合部分をいう。各重鎖は、重鎖可変領域(ここではV
Hと略す)および重鎖定常領域を含む。ある天然に存在するIgG、IgDおよびIgA抗体において、重鎖定常領域は3ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。ある天然に存在する抗体において、各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここではV
Lと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1ドメイン、CLからなる。V
HおよびV
L領域は、さらに、より保存的な、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に細分され得る。各V
HおよびV
Lは3個のCDRおよび4個のFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端で次の順に配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織または因子への結合に介在し得る。
【0129】
抗体の重鎖は、末端リシン(K)または末端グリシンおよびリシン(GK)を含んでも、含まなくてもよい。それゆえに、ここに提供する重鎖配列および重鎖定常領域配列のいずれかは、提供する配列の最後のアミノ酸が何であれ、GKまたはGで終わっても、KまたはGKを欠いてもよい。これは、末端リシンおよび時にはグリシンおよびリシンが、抗体の発現中に開裂されるからである。
【0130】
抗体は、一般にその同族抗原に高親和性で特異的に結合し、その親和性は10
−7〜10
−11M以下の解離定数(K
D)により反映される。約10
−6Mを超えるあらゆるK
Dは、一般に非特異的結合を表すと見なされる。ここで使用する抗原と“特異的に結合する”抗体は、該抗原および実質的に同一の抗原と、10
−7M以下、好ましくは10
−8M以下、よりさらに好ましくは5×10
−9M以下、最も好ましくは10
−8M〜10
−10M以下のK
Dを有することを意味する高親和性で結合するが、無関係の抗原と高親和性で結合しない抗体をいう。抗原は、ある抗原と高度な配列同一性を示すならば、例えば、その抗原の配列と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%以上の配列同一性を示すならば、その抗原と“実質的に同一”である。例として、ヒトCD73に特異的に結合する抗体はまたある非ヒト霊長類種(例えば、カニクイザル)からのCD73とも交差反応し得るが、他の種からのCD73とまたはCD73以外の抗原と交差反応し得ない。
【0131】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むが、これらに限定されない一般的に知られるアイソタイプのいずれか由来であり得る。IgGアイソタイプは、特定の種ではサブクラスに分割される:ヒトにおいてIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4ならびにマウスにおいてIgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3。ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体は、ヒトIgG1またはIgG2サブタイプのものである。免疫グロブリン、例えば、ヒトIgG1は、互いに最大で数アミノ酸異なる、いくつかのアロタイプで存在する。“抗体”は、例として、天然に存在するおよび天然に存在しない抗体の両者;モノクローナルおよびポリクローナル抗体;キメラおよびヒト化抗体;ヒトおよび非ヒト抗体;完全合成抗体;および単鎖抗体を含み得る。
【0132】
ここで使用する抗体の“抗原結合部分”なる用語は、抗原(例えば、ヒトCD73)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントをいう。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントにより実施され得ることが示されている。抗体、例えば、ここに記載する抗CD73抗体の“抗原結合部分”なる用語に包含される結合フラグメントの例は、(i)V
L、V
H、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2個のFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)
2フラグメント;(iii)V
HおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単アームのV
LおよびV
HドメインからなるFvフラグメント;(v)V
HドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);および(vi)単離相補性決定領域(CDR)または(vii)所望により合成リンカーで連結されていてよい、2以上の単離CDRの組み合わせを含む。さらに、Fvフラグメント、V
LおよびV
Hの2個のドメインは別の遺伝子によりコードされるが、組み換え法を使用して、V
LおよびV
H領域が単鎖Fv(scFv)として知られる一価分子を形成するように対形成する、単タンパク質鎖として製造されることを可能とする合成リンカーにより、連結できる(例えば、Bird et al., (1988) Science 242:423-426; およびHuston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照)。このような単鎖抗体もまた、抗体の“抗原結合部分”なる用語に包含されることを意図する。これらおよび他の可能性のある構築物は、Chan & Carter (2010) Nat. Rev. Immunol. 10:301に記載されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られる慣用技術を使用して得られ、フラグメントは、インタクト抗体と同様の方法で有用性についてスクリーニングされる。抗原結合部分は、組み換えDNA技術またはインタクト免疫グロブリンの酵素もしくは化学開裂により生産される。
【0133】
“二特異性”または“二機能性抗体”は、異なる抗原に特異性を有する2抗原結合部位を生じる、2個の異なる重鎖/軽鎖対を有する人工的ハイブリッド抗体である。二特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメント連結を含む、多様な方法により産生できる。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148, 1547-1553 (1992)参照。
【0134】
ここで使用する用語“モノクローナル抗体”は、特定のエピトープに単一結合特異性および親和性を示す抗体または抗体の組成物であって、その中の全抗体が特定のエピトープに単一結合特異性および親和性を示す組成物をいう。一般にこのようなモノクローナル抗体は、単一細胞または核酸コード化抗体に由来し、何らかの配列変更を意図的に導入することなく増殖される。したがって、用語“ヒトモノクローナル抗体”は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域および所望により定常領域を有する、モノクローナル抗体をいう。ある態様において、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、トランスジェニックまたは染色体導入非ヒト動物(例えば、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニックマウス)から得たB細胞を、不死化細胞に融合することにより得たハイブリドーマにより生産する。
【0135】
ここで使用する用語“組み換えヒト抗体”は、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそれから製造したハイブリドーマに関してトランスジェニックまたは染色体導入である動物(例えば、マウス)から単離した抗体、(b)抗体を発現するように形質転換した宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離した抗体、(c)組み換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離した抗体および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含むあらゆる他の手段により製造、発現、創出または単離された抗体のような、組み換え手段により製造、発現、創出または単離されたすべてのヒト抗体を含む。このような組み換えヒト抗体は、特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列を利用し、生殖系列遺伝子によりコードされるが、例えば、抗体成熟に、生じるその後の再配列および変異を含む、可変および定常領域を含む。当分野で知られるように(例えば、Lonberg (2005) Nature Biotech, 23(9):1117-1125参照)、可変領域は抗原結合ドメインを含み、これは、外来抗原に特異的な抗体を形成するように再配列される種々の遺伝子によりコードされる。再配列に加えて、可変領域は、複数の1アミノ酸変化(体細胞性変異または超変異と称する)によりさらに修飾されて、抗体の外来抗原に対する親和性が増加され得る。定常領域は、抗原に対するさらなる応答において変化する(すなわち、アイソタイプスイッチ)。それゆえに、抗原への応答において軽鎖および重鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする再配列され、そして体細胞的に変異した核酸配列は、元の生殖系列配列と同一ではないかもしれないが、それでも実質的に同一または類似(すなわち、少なくとも80%同一性を有する)している。
【0136】
“ヒト”抗体(HuMAb)は、フレームワークおよびCDR領域の両者がヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である可変領域を有する抗体をいう。さらに、抗体が定常領域を含むならば、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。ここに記載する抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロで無作為または部位特異的変異誘発によりまたはインビボで体細胞性変異により導入した変異)。しかしながら、ここで使用する用語“ヒト抗体”は、マウスのような他の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図しない。用語“ヒト”抗体および“完全ヒト”抗体は、同義的に使用される。
【0137】
“ヒト化”抗体は、非ヒト抗体のCDRドメイン外のアミノ酸のいくつか、大部分またはすべてが、ヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸で置き換えられる抗体をいう。抗体のヒト化形態のある態様において、CDRドメイン外のアミノ酸のいくつか、大部分またはすべてはヒト免疫グロブリンからのアミノ酸で置き換えられ、一方、1以上のCDR領域内のいくつか、大部分またはすべてのアミノ酸は未変化である。アミノ酸の小さな付加、欠失、挿入、置換または修飾は、それらが抗体の特定の抗原に結合する能力を消失させない限り、許容される。“ヒト化”抗体は、元の抗体に類似する抗原特異性を保持する。
【0138】
“キメラ抗体”は、可変領域がマウス抗体由来であり、定常領域がヒト抗体由来である抗体のような、可変領域がある種由来であり、定常領域が他の種由来である抗体をいう。
【0139】
“修飾重鎖定常領域”は、定常ドメインCH1、ヒンジ、CH2およびCH3を含む重鎖定常領域をいい、ここで、定常ドメインの1以上は異なるアイソタイプ(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4)由来である。ある態様において、修飾定常領域は、ヒトIgG1 CH2ドメインおよびヒトIgG1 CH3ドメインに融合したヒトIgG2 CH1ドメインおよびヒトIgG2ヒンジを含む。ある態様において、このような修飾定常領域はまた、野生型アミノ酸配列に対して、ドメインの1以上においてアミノ酸修飾も含む。
【0140】
ここで、定常領域の同一性を示すことなく“CD73.3”または“CD73.4”として抗体をいうとき、特に断らない限り、ここに記載するいずれかの定常領域を有する、CD73.3またはCD73.4の可変領域をそれぞれ有する抗体をいう。
【0141】
ここで使用する“アイソタイプ”は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgE抗体)をいう。
【0142】
“アロタイプ”は、特定のアイソタイプ群内の天然に存在するバリアントをいい、このバリアントは、数アミノ酸異なる(例えば、Jefferis et al., (2009) mAbs 1:1参照)。ここに記載する抗体は、任意のアロタイプであり得る。
【0143】
ここで特記しない限り、すべてのアミノ酸番号は、KabatシステムのEU指数に従う(Kabat, E. A., et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)。
【0144】
用語“抗原を認識する抗体”および“抗原に特異的な抗体”は、ここでは、用語“抗原に特異的に結合する抗体”と相互交換可能に使用する。
【0145】
ここで使用する“単離抗体”は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことを意図する(例えば、CD73に特異的に結合する単離抗体は、CD73以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。CD73のエピトープに特異的に結合する単離抗体は、しかしながら、異なる種由来の他のCD73タンパク質と交差反応性を有し得る。
【0146】
ここで使用する“CD73を阻害する”抗体は、CD73の生物学的および/または酵素機能を阻害する抗体をいう。これらの機能は、例えば、抗体がCD73酵素活性、例えば、アデノシンのCD73制御産生またはcAMP産生減少を阻害する能力をいう。
【0147】
ここで使用する“内在化”抗体は、細胞表面抗原への結合により細胞膜を超える抗体をいう。内在化は、抗体が介在する受容体、例えば、CD73の内在化を含む。ある態様において、抗体は、CD73発現細胞へ約10分以下のT
1/2の速度で“内在化”する。
【0148】
“エフェクター機能”は、抗体Fc領域とFc受容体またはリガンドの相互作用またはそれ由来の生化学的事象をいう。“エフェクター機能”の例は、Clq結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、ADCCおよび抗体依存性細胞貪食(ADCP)のようなFcγR介在エフェクター機能ならびに細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)下方制御を含む。このようなエフェクター機能は、一般にFc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と合わさることを必要とする。
【0149】
“Fc受容体”または“FcR”は、免疫グロブリンのFc領域に結合する受容体である。IgG抗体に結合するFcRは、対立遺伝子バリアントを含むFcγRファミリーの受容体およびこれらの受容体の異接合型を含む。FcγRファミリーは、3個の活性化(マウスにおけるFcγRI、FcγRIIIおよびFcγRIV;ヒトにおけるFcγRIA、FcγRIIAおよびFcγRIIIA)および1個の阻害性(FcγRIIB)受容体からなる。ヒトFcγRの種々の性質を表1に要約する。生得的エフェクター細胞型の大部分は、1以上の活性化FcγRおよび阻害性FcγRIIBを共発現し、一方ナチュラルキラー(NK)細胞は、マウスおよびヒトにおいて1活性化Fc受容体(マウスにおいてFcγRIIIおよびヒトにおいてFcγRIIIA)を選択的に発現するが、阻害性FcγRIIBを発現しない。ヒトIgG1は大部分のヒトFc受容体に結合し、それが結合する活性化Fc受容体のタイプに関して、マウスIgG2aに対応すると考えられる。
【0150】
【表1】
[この文献は図面を表示できません]
【0151】
“ヒンジ”、“ヒンジドメイン”または“ヒンジ領域”または“抗体ヒンジ領域”は、CH1ドメインをCH2ドメインに連結する重鎖定常領域のドメインをいい、ヒンジの上部、中間部および下部部分を含む(Roux et al., J. Immunol. 1998 161:4083)。ヒンジは、抗体の結合領域とエフェクター領域の間に多様なレベルの柔軟性を提供し、また、2重鎖定常領域間の分子間ジスルフィド結合の部位も提供する。ここで使用するヒンジは、全IgGアイソタイプについてGlu216で始まり、Gly237で終わる(Roux et al., 1998 J Immunol 161:4083)。野生型IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4ヒンジの配列を表2および31に示す。
【0152】
【表2】
[この文献は図面を表示できません]
* CH1ドメインのC末端アミノ酸配列。
【0153】
用語“ヒンジ”は、野生型ヒンジ(例えば表2および31に示すもの)ならびにそのバリアント(例えば、天然に存在しないヒンジまたは修飾ヒンジ)を含む。例えば、用語“IgG2ヒンジ”は、表2に示すような野生型IgG2ヒンジおよび1、2、3、4、5、1〜3、1〜5、3〜5および/または最大5、4、3、2または1変異、例えば、置換、欠失または付加を有するバリアントを含む。IgG2ヒンジバリアントの例は、1、2、3または全4システイン(C219、C220、C226およびC229)が他のアミノ酸に変えられているIgG2ヒンジを含む。特定の態様において、IgG2はC219S置換を含む。IgG2ヒンジは、またC220での置換またはC219およびC220両者での置換を含み得る。IgG2ヒンジは、単独でまたは重鎖もしくは軽鎖の他の領域における1以上の置換と一体となって、抗体にAまたはBの形態を取らせる置換を含み得る(例えば、Allen et al., (2009) Biochemistry 48:3755参照)。ある態様において、ヒンジは、少なくとも2アイソタイプからの配列を含むハイブリッドヒンジである。例えば、ヒンジは、あるアイソタイプからの上部、中間部または下部ヒンジおよび1以上の他のアイソタイプからのヒンジの残り部分を含み得る。例えば、ヒンジはIgG2/IgG1ヒンジであってよく、例えば、IgG2の上部および中間部ヒンジならびにIgG1からの下部ヒンジを含み得る。ヒンジは、エフェクター機能を有しても、エフェクター機能を除かれてもよい。例えば、野生型IgG1の下部ヒンジはエフェクター機能を提供する。
【0154】
用語“CH1ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおける可変ドメインをヒンジに連結する重鎖定常領域をいう。ここで使用するCH1ドメインは、A118で始まり、V215で終わる。用語“CH1ドメイン”は、野生型CH1ドメイン(例えばIgG1について配列番号98およびIgG2について配列番号124を有する)ならびにそのバリアント(例えば、天然に存在しないCH1ドメインまたは修飾CH1ドメイン)を含む。例えば、用語“CH1ドメイン”は、野生型CH1ドメインおよびその1、2、3、4、5、1〜3、1〜5、3〜5および/または最大5、4、3、2または1変異、例えば、置換、欠失または付加を有するバリアントを含む。CH1ドメインの例は、ADCC、CDCまたは半減期のような抗体の生物学的活性を修飾する変異を伴うCH1ドメインを含む。抗体の生物学的活性に影響するCH1ドメインへの修飾がここで提供される。CH1ドメインは、置換C131Sを含んでよく、この置換は、IgG2抗体またはヒンジおよび/またはヒンジとCH1のようなIgG2抗体の少なくとも一部を含む抗体に、抗体のA形態ではなく、B形態を採らせる。
【0155】
用語“CH2ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおけるヒンジをCH3ドメインに連結する重鎖定常領域をいう。ここで使用するCH2ドメインはP238で始まり、K340で終わる。用語“CH2ドメイン”は、野生型CH2ドメイン(例えばIgG1について配列番号137を有する;表35)ならびにそのバリアント(例えば、天然に存在しないCH2ドメインまたは修飾CH2ドメイン)を含む。例えば、用語“CH2ドメイン”は、野生型CH2ドメインおよびその1、2、3、4、5、1〜3、1〜5、3〜5および/または最大5、4、3、2または1変異、例えば、置換、欠失または付加を有するバリアントを含む。CH2ドメインの例は、ADCC、CDCまたは半減期のような抗体の生物学的活性を修飾する変異を伴うCH2ドメインを含む。ある態様において、CH2ドメインは、エフェクター機能を低減させる置換A330S/P331Sを含む。抗体の生物学的活性に影響するCH2ドメインへの他の修飾がここで提供される。
【0156】
用語“CH3ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおけるCH2ドメインに対してC末端である重鎖定常領域である。ここで使用するCH3ドメインはG341で始まり、K447で終わる。用語“CH3ドメイン”は、野生型CH3ドメイン(例えばIgG1について配列番号138を有する;表35)ならびにそのバリアント(例えば、天然に存在しないCH3ドメインまたは修飾CH3ドメイン)を含む。例えば、用語“CH3ドメイン”は、野生型CH3ドメインおよびその1、2、3、4、5、1〜3、1〜5、3〜5および/または最大5、4、3、2または1変異、例えば、置換、欠失または付加を有するバリアントを含む。CH3ドメインの例は、ADCC、CDCまたは半減期のような抗体の生物学的活性を修飾する変異を伴うCH3ドメインを含む。抗体の生物学的活性に影響するCH3ドメインへの修飾がここで提供される。
【0157】
“CLドメイン”は、軽鎖の定常ドメインをいう。用語“CLドメイン”は野生型CLドメインおよびそのバリアント、例えば、C214Sを含むバリアント。
【0158】
“天然配列Fc領域”または“天然配列Fc”は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域は、天然配列ヒトIgG1 Fc領域;天然配列ヒトIgG2 Fc領域;天然配列ヒトIgG3 Fc領域;および天然配列ヒトIgG4 Fc領域ならびに天然に存在するそのバリアントを含む。天然配列Fcは、Fcの種々のアロタイプを含む(例えば、Jefferis et al., (2009) mAbs 1:1参照)。
【0159】
用語“エピトープ”または“抗原決定基”は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原(例えば、CD73)上の部位をいう。タンパク質抗原内のエピトープは、隣接アミノ酸(通常直線状エピトープ)またはタンパク質の3次元折り畳みにより並置される非隣接アミノ酸(通常立体エピトープ)の両者から形成され得る。隣接アミノ酸から形成されるエピトープは、一般に、しかし常にではないが、変性溶媒に曝されても保持され、一方3次元折り畳みから形成されるエピトープは、変性溶媒での処理により一般に失われる。エピトープは、一般に独特の空間的立体構造の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸を含む。どのエピトープがある抗体により結合されるかを決定する方法(すなわち、エピトープマッピング)は当分野で周知であり、例えば、免疫ブロット法および免疫沈降アッセイを含み、ここで、重複または隣接ペプチド(例えば、CD73から)は、ある抗体(例えば、抗CD73抗体)との反応性について試験される。エピトープの空間的立体構造を決定する方法は、文献におけるおよびここに記載する技術、例えば、x線結晶学、2次元核磁気共鳴およびHDX−MSを含む(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed. (1996)参照)。
【0160】
用語“エピトープマッピング”は、抗体−抗原認識に関与する抗原の分子決定基を同定する工程をいう。
【0161】
2以上の抗体に関する“同一エピトープに結合する”なる用語は、これら抗体が、ある方法により決定して、アミノ酸残基の同一セグメントに結合することを意味する。抗体がここに記載する抗体と“CD73上の同一エピトープ”に結合するか否かを決定する技術は、例えば、エピトープおよび水素/重水素交換マススペクトロメトリー(HDX−MS)の原子分解能を提供する、抗原:抗体複合体の結晶のx線分析のようなエピトープマッピング法を含む。他の方法は、抗原フラグメント(例えばタンパク分解性フラグメント)へのまたは変異させた種々の抗原への抗体の結合をモニターし、ここで、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾による結合の消失がしばしばエピトープ構成成分と考えられる(例えばアラニンスキャニング変異誘発 − Cunningham & Wells (1985) Science 244:1081)。さらに、コンピューターによるエピトープマッピングのためのコンビナトリアル法も使用できる。これらの方法は、目的の抗体が、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから特異的短ペプチドを親和性単離する能力を利用する。
【0162】
“標的への結合について他の抗体と競合する”抗体は、標的への他方の抗体の結合を(部分的にまたは完全に)阻害する抗体をいう。2抗体が標的への結合について互いに競合するか、すなわち、ある抗体が他方の抗体の標的への結合を阻害するか否かかつどの程度阻害するかは、例えば、実施例に記載するような既知競合実験を使用して決定し得る。ある態様において、抗体は、他方の抗体の標的への結合と少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%競合し、阻害する。阻害または競合のレベルは、どの抗体が“遮断抗体”(すなわち、標的と最初にインキュベートする冷抗体)であるかにより変わり得る。競合アッセイは、例えば、Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harb Protoc; 2006; doi:10.1101/pdb.prot4277またはChapter 11 of “Using Antibodies” by Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA 1999に記載のように実施できる。競合抗体は、同一エピトープ、重複エピトープまたは隣接エピトープ(例えば、立体障害により証明されるように)に結合する。
【0163】
他の競合的結合アッセイは、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接エンザイムイムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242 (1983)参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614 (1986)参照);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988)参照);I−125標識を使用する固相直接標識RIA(Morel et al., Mol. Immunol. 25(1):7 (1988)参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176:546 (1990));および直接標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77 (1990))を含む。
【0164】
ここで使用する用語“特異的結合”、“選択的結合”、“選択的に結合する”および“特異的に結合する”は、所定の抗原上のエピトープに結合するが、他の抗原には結合しない抗体をいう。一般に、抗体は、(i)例えば、所定の抗原、例えば、組み換えヒトCD73を検体として、かつ抗体をリガンドとして使用するBIACORE
(登録商標)2000表面プラズモン共鳴装置における表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジーでまたは抗体の抗原陽性細胞への結合のスキャッチャード分析により決定して、約10
−7M未満、例えば、約10
−8M、10
−9Mまたは10
−10M未満またはそれより小さい平衡解離定数(K
D)で結合するおよび(ii)所定の抗原に、所定の抗原または密接に関係する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合について親和性より少なくとも2倍大きい親和性で結合する。したがって、特に断らない限り、“ヒトCD73に特異的に結合する”抗体は、10
−7M以下、例えば、約10
−8M、10
−9Mまたは10
−10M未満またはそれより小さいK
Dで可溶性または細胞結合型ヒトCD73に結合する抗体をいう。“カニクイザルCD73と交差反応する”抗体は、10
−7M以下、10
−8M、10
−9Mまたは10
−10M未満またはそれより小さいK
DでカニクイザルCD73と結合する抗体をいう。ある態様において、非ヒト種由来のCD73と交差反応しない抗体は、標準結合アッセイにおいて、これらのタンパク質に対して本質的に検出不可能な結合を示す。
【0165】
ここで使用する用語“k
assoc”または“k
a”は、特定の抗体−抗原相互作用の結合速度定数をいうことを意図し、一方ここで使用する用語“k
dis”または“k
d”は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度定数をいうことを意図する。ここで使用する用語“K
D”は、平衡解離定数をいうことを意図し、これはk
d対k
a比(すなわちk
d/k
a)から得られ、モル濃度(M)により表される。抗体のK
D値は、当分野で十分に確立されている方法を使用して決定できる。抗体のK
Dを決定するための好ましい方法は、好ましくはBiacore(登録商標)表面プラズモン共鳴システムまたはフローサイトメトリーのようなバイオセンサーシステムを使用する、表面プラズモン共鳴およびスキャッチャード分析による。
【0166】
抗体またはその抗原結合フラグメントを使用するインビトロまたはインビボアッセイの文脈における用語“EC
50”は、最大応答の50%、すなわち、最大応答とベースラインの真ん中の応答を誘発する、抗体またはその抗原結合部分の濃度をいう。
【0167】
抗体、例えば、抗CD73抗体が介在する、抗体または受容体、例えば、CD73の“内在化の速度”は、例えば、実施例に示すように、例えば、内在化のT
1/2により表され得る。抗CD73抗体の内在化の速度は、少なくとも10%、30%、50%、75%、2倍、3倍、5倍以上増強または増大され得て、抗体の重鎖定常領域の修飾重鎖定常領域、例えば、IgG2ヒンジおよびIgG2 CH1ドメインを含むものへの変更により、T
1/2の少なくとも10%、30%、50%、75%、2倍、3倍、5倍以上の低減をもたらす。例えば、10分のT
1/2を有する代わりに、修飾重鎖定常領域は内在化の速度を増大し、それゆえにT
1/2を5分に減少し得る(すなわち、内在化の速度の2倍増加またはT
1/2の2倍減少)。“T
1/2”は、抗体を細胞に添加してから測定して、最大内在化の半分が達成される時間として定義される。内在化の最大レベルは、抗体濃度に対してプロットした内在化を表すグラフでプラトーである内在化レベルであり得る。修飾重鎖定常領域は、抗体の内在化の最大レベルを、少なくとも10%、30%、50%、75%、2倍、3倍、5倍以上高め得る。修飾重鎖定常領域を伴う抗体と伴わない同一抗体のような異なる抗体の内在化有効性を比較する他の方法は、ある抗体濃度(例えば、100nM)またはある時間(例えば、2分、5分、10分または30分)での内在化レベルの比較である。内在化レベルの比較はまた、内在化のEC
50レベル比較によっても実施できる。ある抗体の内在化のレベルを、ある(対照)抗体、例えば、ここに記載する抗体、例えば、11F11またはCD73.4−IgG2CS−IgG1またはCD73.4−IgG2CS−IgG1.1fに対して定義でき、当該(対照)抗体により得られた値のパーセンテージとして示し得る。内在化の程度は、これらの方法のいずれかにより比較して、少なくとも10%、30%、50%、75%、2倍、3倍、5倍以上増強され得る。
【0168】
物体に対して適用するここで使用する用語“天然に存在する”は、物体が天然に見ることができるという事実をいう。例えば、天然源から単離でき、実験室で人間により意図的に修飾されていない生物(ウイルスを含む)に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0169】
“ポリペプチド”は、少なくとも2個の連続的に連結されたアミノ酸残基を含む鎖をいい、鎖の長さの上限はない。タンパク質の1以上のアミノ酸残基は、グリコシル化、リン酸化またはジスルフィド結合のような、しかし、これらに限定されない修飾を含んでよい。“タンパク質”は、1以上のポリペプチドを含み得る。
【0170】
ここで使用する用語“核酸分子は、DNA分子およびRNA分子を含むことを意図する。核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもよく、そしてcDNAであり得る。
【0171】
また提供されるのは、ここに記載する配列番号で示す配列の“保存的配列修飾”、すなわち、該ヌクレオチド配列によりコードされるまたは該アミノ酸配列を含む抗体の抗原への結合を消失させないヌクレオチドおよびアミノ酸配列修飾である。このような保存的配列修飾は、保存的ヌクレオチドおよびアミノ酸置換、ならびに、ヌクレオチドおよびアミノ酸付加および欠失を含む。例えば、修飾は、ここに記載する配列番号に、部位特異的変異誘発およびPCR介在変異誘発のような当分野で知られる標準技術により導入され得る。保存的配列修飾は、アミノ酸残基が類似側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられる保存的アミノ酸置換を含む。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。それゆえに、抗CD73抗体の予想される非必須アミノ酸残基を、好ましくは同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基に置き換える。抗原結合を排除しないヌクレオチドおよびアミノ酸保存的置換を同定する方法は、当分野で周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32:1180-1187 (1993); Kobayashi et al., Protein Eng, 12(10):879-884 (1999); およびBurks et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:412-417 (1997)参照)。
【0172】
あるいは、他の態様において、変異を、飽和変異誘発によるような、抗CD73抗体コード化配列のすべてまたは一部に添って導入でき、得られた修飾抗CD73抗体を、結合活性の改善についてスクリーニングし得る。
【0173】
核酸について、用語“実質的相同性”は、2個の核酸またはその指定配列が、最適にアラインし、比較したとき、適切なヌクレオチド挿入または欠失を伴い、ヌクレオチドの少なくとも約80%、通常ヌクレオチドの少なくとも約90%〜95%以上、好ましくは少なくとも約98%〜99.5%が同一であることを示す。あるいは、セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で、鎖の相補体とハイブリダイズするとき、実質的相同性が存在する。
【0174】
ポリペプチドに関して、用語“実質的相同性”は、2個のポリペプチドまたはその指定配列が、最適にアラインし、比較したとき、適切なアミノ酸挿入または欠失を伴い、アミノ酸の少なくとも約80%、通常アミノ酸少なくとも約90%〜95%以上、好ましくは少なくとも約98%〜99.5%が同一であることを示す。
【0175】
2配列間の同一性パーセントは、配列を最適にアラインしたとき、これら配列により共有される同一位置の関数であり(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数×100)、最適アラインメントは、2配列の最適アラインメントのために導入することが必要であったギャップ数および各ギャップの長さを考慮して決定する。配列の比較および2配列間の同一性パーセントの決定は、下の非限定的例に記載するような、数学的アルゴリズムを使用して達成できる。
【0176】
2ヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comから入手可能)におけるGAPプログラムを使用して、NWSgapdna.CMPマトリクスおよびギャップ荷重40、50、60、70または80および長さ荷重1、2、3、4、5または6を使用して決定できる。2ヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントはまた、ALIGNプログラム(version 2.0)に取り込まれているE. Meyers and W. Miller (CABIOS, 4:11-17 (1989))のアルゴリズムを使用して、PAM120荷重残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用して、決定できる。さらに、2アミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comから入手可能)におけるGAPプログラムに取り込まれているNeedleman and Wunsch (J. Mol. Biol. (48):444-453 (1970))アルゴリズムを使用して、Blossum 62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれかおよびギャップ荷重16、14、12、10、8、6または4および長さ荷重1、2、3、4、5または6を使用して決定できる。
【0177】
ここに記載する核酸およびタンパク質配列を、さらに“クエリー配列”として使用して、例えば、関連配列を同定するために公的データベースに対して検索を実施できる。このような検索は、Altschul, et al., (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)を使用して実施できる。BLASTヌクレオチド検索は、ここに記載する核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、単語長=12で実施できる。BLASTタンパク質検索は、ここに記載するタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、単語長=3で実施できる。比較目的でギャップ付アラインメントを得るために、ギャップ付BLASTを、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載のように実施できる。BLASTおよびギャップ付BLASTプログラムを使用するとき、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用できる。www.ncbi.nlm.nih.gov参照。
【0178】
核酸は細胞全体、細胞ライセートまたは一部精製したまたは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当分野で周知のその他を含む標準技術により、他の細胞成分または他の汚染物、例えば、他の細胞核酸(例えば、他の部分の染色体)またはタンパク質から精製されたとき、“単離された”または“実質的に純粋にされた”。F. Ausubel, et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)参照。
【0179】
核酸、例えば、cDNAを、遺伝子配列を提供するために、標準技術により変異させ得る。コード化配列について、これらの変異は、所望によりアミノ酸配列に影響し得る。特に、天然V、D、J、定常、スイッチおよびここに記載する他のこのような配列と実質的に相同であるまたはそれに由来するDNA配列が企図される。
【0180】
ここで使用する用語“ベクター”は、それが連結している他の核酸の輸送が可能である核酸分子をいうことを意図する。ベクターの1タイプは“プラスミド”であり、これは、さらなるDNAセグメントをライゲートし得る環状二本鎖DNAループをいう。他のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。あるベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自律増殖が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入により宿主細胞のゲノムに統合され得て、それゆえに宿主ゲノムと共に増殖される。さらに、あるベクターは、操作可能に連結している遺伝子の発現の指示が可能である。このようなベクターは、ここでは“組み換え発現ベクター”(または単に“発現ベクター”)を呼ぶ。一般に、組み換えDNA技術に有用である発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形である。本明細書において、“プラスミド”および“ベクター”は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、相互交換可能に使用され得る。しかしながら、また包含されるのは、等価な機能を提供するウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような他の形態の発現ベクターである。
【0181】
ここで使用する用語“組み換え宿主細胞”(または単に“宿主細胞”)は、細胞に天然では存在しない核酸を含む細胞およびおそらく組み換え発現ベクターが導入されている細胞をいうことを意図する。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫もいうことを意図することは理解すべきである。ある修飾が変異または環境の影響により次世代に生じ得ないため、このような子孫は、実際、親細胞と同一ではないかもしれないが、なお、ここで使用する用語“宿主細胞”の範囲内に包含される。
【0182】
ここで使用する用語“抗原”は、タンパク質、ペプチドまたはハプテンのようなあらゆる天然または合成免疫原性物質をいう。抗原は、CD73またはそのフラグメントであり得る。
【0183】
“免疫応答”は、外来因子に対する脊椎動物内の生物学的応答をいい、該応答は、生物をこれらの因子およびそれが原因の疾患から守る。免疫応答は、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞または好中球)およびこれらの細胞のいずれかまたは肝臓により産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用が介在し、侵入病原体、病原体に感染された細胞または組織、癌性のまたは他の異常細胞、または、自己免疫または病理学的炎症の場合、正常ヒト細胞または組織を選択的ターゲティングし、結合し、損傷し、破壊しおよび/または脊椎動物体内から排除する。免疫応答または反応は、例えば、T細胞、例えば、CD4
+またはCD8
+ T細胞のようなエフェクターT細胞またはTh細胞の活性化または阻害またはT
reg細胞の阻害を含む。
【0184】
“免疫調節剤”または“免疫調整剤”は、免疫応答の調節、制御または修飾に関与し得る、因子、例えば、シグナル伝達経路の成分をいう。免疫応答の“調節”、“制御”または“修飾”は、免疫系の細胞またはこのような細胞(例えば、エフェクターT細胞)の活性の何らかの変更をいう。このような調節は、種々の細胞型の数の増減、これらの細胞の活性の増減または免疫系内で生じ得る何らかの他の変化により顕在化し得る、免疫系の刺激または抑制を含む。阻害性および刺激性免疫調節剤の両者が同定されており、そのいくつかは、腫瘍微小環境において増強された機能を有し得る。免疫調節剤は、T細胞の表面に位置し得る。“免疫調節性標的”または“免疫調整性標的”は、物質、薬剤、成分、化合物または分子による結合のために標的化され、その活性が該結合により改変される、免疫調節剤である。免疫調節性標的は、例えば、細胞表面の受容体(“免疫調節性受容体”)および受容体リガンド(“免疫調節性リガンド”)を含む。
【0185】
免疫応答または免疫系を刺激する能力の増加は、T細胞共刺激性受容体のアゴニスト活性増強および/または阻害性受容体のアンタゴニスト活性増強に由来し得る。免疫応答または免疫系を刺激する能力の増加は、免疫応答を測定するアッセイ、例えば、サイトカインまたはケモカイン放出、細胞溶解性活性(標的細胞で直接的にまたはCD107aもしくはグランザイムの検出により間接的に決定)および増殖の変化を測定するアッセイにおける、EC
50または最大レベルの活性の増加倍率により反映され得る。免疫応答または免疫系活性を刺激する能力は、少なくとも10%、30%、50%、75%、2倍、3倍、5倍以上増強され得る。
【0186】
“免疫療法”は、免疫応答を誘発、増強、抑制または他に修飾することを含む方法による、疾患を有するまたはそれに罹患するもしくは再発するリスクのある対象の処置をいう。
【0187】
“免疫刺激療法”または“免疫刺激性療法”は、例えば、癌を処置するための、対象における免疫応答の増加(誘発または増強)を引き起こす治療をいう。
【0188】
“内在性免疫応答の増強”は、対象における既存の免疫応答の有効性または効力の増大を意味する。有効性および効力のこの増大は、例えば、内在性宿主免疫応答を抑制する機能を克服することによりまたは内在性宿主免疫応答を増強する機構を刺激することにより達成され得る。
【0189】
“Tエフェクター”(“T
eff”)細胞は、細胞溶解性活性を伴うT細胞(例えば、CD4
+およびCD8
+ T細胞)ならびにサイトカインを分泌し、他の免疫細胞を活性化および指示するTヘルパー(Th)細胞をいうが、制御性T細胞(T
reg細胞)は含まない。
【0190】
ここで使用する用語“連結”は、2以上の分子の結合をいう。結合は共有結合でも非共有結合でもよい。結合は、また遺伝子的(すなわち、組換え融合)であり得る。このような結合は、化学的結合および組み換えタンパク質生産のような多種多様な当分野で認識される技術を使用して達成できる。
【0191】
ここで使用する“投与する”は、当業者に知られる種々の方法および送達系のいずれかを使用した、治療剤を含む組成物の対象への物理的導入をいう。ここに記載する抗体のための好ましい投与経路は、例えば注射または点滴による、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄または他の非経腸投与経路を含む。ここで使用する用語“非経腸投与”は、経腸および局所投与以外の、通常注射による、投与方式をいい、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および点滴、ならびにインビボエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない。あるいは、ここに記載する抗体は、局所、上皮または粘膜投与経路のような非経腸ではない経路、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下にまたは局所的に投与され得る。投与はまた、例えば、1回、複数回および/または1回以上の長期にわたり実施してもよい。
【0192】
ここで使用する用語“T細胞介在応答”は、エフェクターT細胞(例えば、CD8
+細胞)およびヘルパーT細胞(例えば、CD4
+細胞)を含む、T細胞が介在する応答をいう。T細胞介在応答は、例えば、T細胞−細胞毒性および増殖を含む。
【0193】
ここで使用する用語“細胞毒性Tリンパ球(CTL)応答”は、細胞毒性T細胞により誘発される免疫応答をいう。CTL応答は、主にCD8
+ T細胞により介在される。
【0194】
ここで使用する用語“阻害”または“遮断”(例えば、CD73結合または活性の阻害/遮断参照)は、相互交換可能に使用され、部分的および完全阻害/遮断の両者を含む。
【0195】
ここで使用する“癌”は、体内の異常細胞の無制御の増殖により特徴付けられる広い疾患群をいう。無制御の細胞分裂は、隣接組織に浸潤し、リンパ系または血流を介して体の離れた部分に転移し得る、悪性腫瘍または細胞の形成を引き起こし得る。
【0196】
ここで使用する用語“処置”および“処置する”は、症状、合併症、状態または疾患と関係する生化学的兆候の進行、進展、重症度または再発を逆転させる、軽減する、寛解させる、阻止するまたは減速させるまたは予防する目的で、対象に実施されるあらゆるタイプの介入または過程または活性剤の投与をいう。予防は、疾患が生じるのを予防する、または生じてもその影響を最小限にするための、疾患を有していない対象への投与をいう。
【0197】
“造血器腫瘍”は、リンパ腫、白血病、骨髄腫またはリンパ系悪性腫瘍ならびに脾臓およびリンパ節の癌を含む。リンパ腫の例は、B細胞リンパ腫およびT細胞リンパ腫の両者を含む。B細胞リンパ腫は、ホジキンリンパ腫および大部分非ホジキンリンパ腫の両者を含む。B細胞リンパ腫の非限定的例は、汎発性大B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小細胞リンパ性リンパ腫(慢性リンパ性白血病と重複)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、バーキットリンパ腫、縦隔大B細胞リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫、血管内大B細胞リンパ腫、原発性体液性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症を含む。T細胞リンパ腫の非限定的例は、節外性T細胞リンパ腫、皮膚性T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫および血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫を含む。血液系腫瘍は、また、二次性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病のような、しかし、これらに限定されない白血病も含む。血液系腫瘍は、さらに、多発性骨髄腫およびくすぶり型多発性骨髄腫のような、しかし、これらに限定されない骨髄腫を含む。他の血液学的および/またはB細胞またはT細胞関連癌は、用語造血器腫瘍により包含される。
【0198】
用語“有効量”または“有効用量”は、所望の効果を達成するまたは少なくとも部分的に達成するのに十分な量として定義される。薬物または治療剤の“治療有効量”または“治療有効用量”は、単独でまたは他の治療剤と組み合わせて使用したとき、疾患症状の重症度の軽減、無疾患症状期間の頻度および期間の増大または疾患罹患による機能障害もしくは身体障害の予防により証明される疾患退縮を促す、薬物の量である。薬物の“予防有効量”または“予防有効用量”は、疾患を発症するまたは疾患を再発するリスクのある対象に単独でまたは他の治療剤と組み合わせて投与したとき、疾患の発症または再発を阻止する、薬物の量である。治療剤または予防剤が疾患退縮を促すまたは疾患の発症または再発を阻止する能力は、臨床試験中ヒト対象において、ヒトでの有効性を予測する動物モデルシステムにおいてまたはインビトロアッセイにおける薬剤の活性のアッセイによるような、当業者に知られる多様な方法を使用して評価できる。
【0199】
例として、抗癌剤は、対象における癌進行を遅延させるまたは癌退縮を促す薬物である。好ましい態様において、薬物の治療有効量は、癌を排除するところまで、癌退縮を促す。“癌退縮を促す”は、薬物有効量の、単独または抗新生物剤と組み合わせた投与が、患者において、腫瘍増殖またはサイズの低減、腫瘍の壊死、少なくとも一つの疾患症状の重症度の低減、無疾患症状期間の頻度および期間の増大、疾患罹患による機能障害もしくは身体障害の予防または疾患症状の他の改善をもたらすことを意味する。薬理学的有効性は、薬物が患者における癌退縮を促す能力である。生理学的安全性は、薬物投与に起因する、細胞、臓器および/または生物レベルでの容認できる低レベルの毒性または他の有害生理作用(有害作用)をいう。
【0200】
腫瘍処置に関する例として、治療有効量または用量の薬物は、好ましくは細胞増殖または腫瘍増殖を、未処置対象と比較して少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、よりさらに好ましくは少なくとも約60%、なお好ましくは少なくとも約80%阻害する。最も好ましい態様において、治療有効量または用量の薬物は、細胞増殖または腫瘍増殖を完全に阻害する、すなわち、好ましくは細胞増殖または腫瘍増殖を100%阻害する。化合物が腫瘍増殖を阻害する能力は、下記アッセイを使用して評価できる。あるいは、組成物のこの性質を、化合物が細胞増殖を阻害する能力を試験することにより評価でき、このような阻害は、当業者に知られるアッセイによりインビトロで測定できる。ここに記載する他の好ましい態様において、腫瘍退縮が観察でき、少なくとも約20日、より好ましくは少なくとも約40日またはよりさらに好ましくは少なくとも約60日の期間継続し得る。
【0201】
用語“患者”および“対象”は、予防的または治療的処置を受けるあらゆるヒトまたは非ヒト動物をいう。例えば、ここに記載する方法および組成物を、癌を有する対象の処置に使用できる。用語“非ヒト動物”は、全脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などのような、哺乳動物および非哺乳動物を含む。
【0202】
ここに記載する種々の面を、次のサブセクションにおいてさらに詳細に記載する。
【0203】
I. 抗CD73抗体
ここに記載するのは、特定の機能的特徴または性質により特徴付けられる抗体、例えば、完全ヒト抗体である。例えば、抗体は、ヒトCD73に特異的に結合する。さらに、抗体は、カニクイザルCD73のような1以上の非ヒト霊長類からのCD73と交差反応し得る。
【0204】
可溶性および/または膜結合型ヒトCD73への特異的結合に加えて、ここに記載する抗体は、次の機能的性質の1以上を示す:
(a)産生されるアデノシンを減少させる、CD73酵素活性の阻害;
(b)cyno CD73への結合;
(c)細胞、例えば、腫瘍細胞への抗体介在CD73内在化;および
(d)ヒトCD73のアミノ酸65〜83および157〜172を含む立体エピトープへの結合。
【0205】
好ましくは、抗CD73抗体は、ヒトCD73(単量体または二量体;アイソフォーム1または2)に、高親和性で、例えば、10
−7M以下、10
−8M以下、10
−9M以下、10
−10M以下、10
−11M以下、10
−12M以下、10
−12M〜10
−7M、10
−11M〜10
−7M、10
−10M〜10
−7M、10
−9M〜10
−7Mまたは10
−10M〜10
−8MのK
Dで結合する。ある態様において、抗CD73抗体は、可溶性ヒトCD73に、例えば、BIACORE
(登録商標)SPR分析により決定して、10
−7M以下、10
−8M以下、10
−9M(1nM)以下、10
−10M以下、10
−12M〜10
−7M、10
−11M〜10
−7M、10
−10M〜10
−7M、10
−9M〜10
−7M、10
−8M〜10
−7Mまたは10
−10M〜10
−8MのK
Dで結合する。ある態様において、抗CD73抗体は、結合型(例えば、細胞膜結合型、例えば、Calu6細胞)ヒトCD73に、例えば、ここにさらに記載するように決定して、1nM未満のEC
50で結合する。ある態様において、抗CD73抗体は、結合型ヒトCD73、例えば、細胞膜結合型ヒトCD73に、例えば、フローサイトメトリーおよびスキャッチャードプロットで決定して、10
−7M以下、10
−8M以下、10
−9M(1nM)以下、10
−10M以下、10
−12M〜10
−7M、10
−11M〜10
−8M、10
−10M〜10
−8M、10
−9M〜10
−8M、10
−11M〜10
−9M、10
−10M〜10
−8Mまたは10
−10M〜10
−9MのK
Dで結合する。ある態様において、抗CD73抗体は、可溶性ヒトCD73に、10
−7M以下、10
−8M以下、10
−9M(1nM)以下、10
−10M以下、10
−12M〜10
−7M、10
−11M〜10
−7M、10
−10M〜10
−7M、10
−9M〜10
−7M、10
−10M〜10
−8Mまたは10
−8M〜10
−7MのK
Dでおよび結合型ヒトCD73、例えば、細胞膜結合型ヒトCD73に10
−7M以下、10
−8M以下、10
−9M(1nM)以下、10
−10M以下、10
−12M〜10
−7M、10
−11M〜10
−8M、10
−10M〜10
−8M、10
−9M〜10
−8M、10
−11M〜10
−9Mまたは10
−10M〜10
−9MのK
DまたはEC
50で結合する。
【0206】
ある態様において、抗CD73抗体は、cyno CD73に高親和性で結合し、例えば、cyno CD73を発現するCHO細胞に、例えば、さらにここに記載するように決定して、0.1nM〜10nMのEC
50で、例えば、1nM未満のEC
50で結合する。
【0207】
ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体はまたカニクイザルCD73に結合し、例えば、膜結合型カニクイザルCD73に、例えば、cyno CD73を発現するCHO細胞に、例えば、実施例におけるように測定して、100nM以下、10nM以下、1nM以下、100nM〜0.01nM、100nM〜0.1nM、100nM〜1nMまたは10nM〜0.1nMのEC
50で結合する。
【0208】
ある態様において、抗CD73抗体は、例えば、SECにより決定して、少なくとも90%、95%、98%または99%単量体である。抗CD73抗体はまた、ここに記載する抗体に類似するまたはその範囲内である、生物物理学的特徴も有し得る。
【0209】
ある態様において、抗CD73抗体は、例えば、実施例においてさらに記載するように、例えば、CD73ビーズ結合アッセイで決定してまたは細胞、例えば、Calu6、SKMEL24もしくはH292細胞で決定してまたはインビボアッセイ、例えば、異種移植腫瘍モデルで決定して、ヒトおよび/またはcyno CD73の酵素活性を阻害する。抗CD73抗体は、ここに記載する抗体と少なくとも類似するまたはその範囲である阻害性活性を有し得る。例えば、抗CD73抗体は、ヒトCD73(例えば、固体に結合したCD73)酵素活性(アデノシン産生)を、10nM未満または5nM未満または1〜10nMまたは5〜10nMの範囲のEC
50で阻害し得る。抗CD73抗体は、細胞、例えば、Calu6細胞に対するヒトCD73の活性を、10nM未満または1nM未満または0.1〜10nM、0.1〜1nMまたは0.1〜0.5nMの範囲のEC
50で阻害する。
【0210】
ある態様において、抗CD73抗体は、実施例においてさらに記載するように、例えば、高容量内在化アッセイまたはFACSまたはフローサイトメトリーで決定して、それが結合する細胞により内在化される(そしてCD73内在化に介在する)。抗CD73抗体は、実施例に記載する抗体と少なくとも類似するまたはその範囲内にある内在化特徴(EC
50、T
1/2およびY
max)およびプラトーまでの時間を有し得る。ある態様において、抗CD73抗体は、例えば、高容量内在化アッセイ(実施例6Aに記載)により決定して、1以上の細胞株、例えば、実施例で示すものにおいて、1時間未満、例えば、30分未満、15分未満、12分未満、10分未満、7分未満またはさらに5分未満である内在化のT
1/2を有する。ある態様において、抗CD73抗体は、例えば実施例6Aに記載する、高容量内在化アッセイを使用してまたは、例えば実施例6Bに記載する、フローサイトメトリーを使用して、例えば、決定して、最大抗CD73抗体介在内在化に、10時間以下、6時間以下、5時間以下、4時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、例えば、10分〜10時間、10分〜6時間、1時間〜10時間または1時間〜6時間の範囲で到達する。CD73の抗CD73抗体介在内在化の最大レベルは、細胞型により、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%以上であり得る。例えば、Calu6細胞におけるCD73の抗CD73抗体介在内在化のEC
50は、実施例に記載する高容量内在化アッセイで測定して、10nM未満、例えば、0.1〜10nMまたは1〜10nMまたは1〜5nMであり、少なくとも90%または少なくとも95%のY
maxであり得る。
【0211】
抗CD73抗体、例えば、IgG2ヒンジ、IgG2 CH1ドメインまたはIgG2ヒンジおよびIgG2 CH1ドメインを有する抗体は、例えば、実施例6Aに記載する、高容量内在化アッセイで測定して、次のCD73内在化特徴に介在する:
− 10nM以下、5nM以下、1nM以下または0.1〜10nMまたは0.1〜1nMのEC
50;Calu6細胞における少なくとも90%、95%または98%のY
max(内在化の最大パーセンテージ)およびCalu6細胞における30分未満または10分未満のT
1/2;
− ヒト細胞、例えば、Calu6細胞、HCC44細胞、H2030細胞、H2228細胞、HCC15細胞、SKLU1細胞、SKMES1細胞またはSW900細胞における30分未満または10分未満のT
1/2。
【0212】
抗CD73抗体、例えば、IgG2ヒンジ、IgG2 CH1ドメインまたはIgG2ヒンジおよびIgG2 CH1ドメインを有する抗体は、例えば、実施例6Bに記載する、フローサイトメトリーにより測定して、次のCD73内在化特徴に介在する:
− Calu6細胞における1時間以下のT
1/2および少なくとも70%のY
max;
− NCI−H292細胞における30分以下のT
1/2および少なくとも70%のY
max;
− SNUC1細胞における2時間以下のT
1/2および少なくとも30%のY
max;および/または
− NCI−H1437細胞における30分以下のT
1/2および少なくとも60%のY
max。
【0213】
ある態様において、抗CD73抗体は、ビン1抗体であり、すなわち、ヒトCD73への結合について11F11と競合するが、4C3とはしない。
【0214】
ある態様において、抗CD73抗体は、実施例においてさらに記載するように、例えば、HDX−MSにより決定して、ヒトCD73のN末端部分におけるエピトープ、例えば、立体エピトープ、例えば、ヒトCD73のアミノ酸65〜83内に位置するエピトープ(配列番号96)と結合する。ある態様において、抗CD73抗体は、例えば、HDX−MSにより決定して、ヒトCD73のアミノ酸157〜172(配列番号97)またはヒトCD73のアミノ酸157〜172内に位置するエピトープ(配列番号97)に結合する。あるいは、抗CD73抗体は、例えば、HDX−MSにより決定して、ヒトCD73のN末端部分におけるエピトープ、例えば、不連続エピトープと結合する。
【0215】
ある態様において、抗CD73抗体は、例えば、HDX−MSにより決定して、ヒトCD73のアミノ酸65〜83およびアミノ酸157〜172またはヒトCD73アイソフォーム1または2のアミノ酸65〜83およびアミノ酸157〜172内のエピトープ、すなわち、アミノ酸配列FTKVQQIRRAEPNVLLLDA(配列番号96)およびLYLPYKVLPVGDEVVG(配列番号97)と結合する。ある態様において、抗CD73抗体は、例えば、HDX−MSにより決定して、ヒトCD73のアミノ酸65〜83およびアミノ酸157〜172の全てまたは一部と結合する。ある態様において、抗CD73抗体は、グリコシル化および非グリコシル化両者のヒトCD73に結合する。ある態様において、抗CD73抗体はグリコシル化CD73にのみ結合し、非グリコシル化CD73に結合しない。
【0216】
抗CD73抗体は、ここに記載するCDRまたは可変領域、例えば、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11のものを含む抗CD73抗体と、CD73への結合について競合し得る(または結合を阻害する)。ある態様において、抗CD73抗体は、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11、4C3、4D4、10D2、11A6、24H2、5F8、6E11および/または7A11のヒトCD73への結合を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害する。ある態様において、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11は、抗CD73抗体のヒトCD73への結合を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害する。ある態様において、抗CD73抗体は、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11のヒトCD73への結合を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害し、かつCD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11は、抗CD73抗体のヒトCD73への結合を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害する(例えば、両方向での競合)。競合実験は、例えば、ここに、例えば、実施例にさらに記載するように、実施できる。
【0217】
ある態様において、抗CD73抗体は、例えば、FcR結合の必要性の欠如により決定して、多価架橋を必要とすることなく、CD73酵素活性を阻害するおよび/または細胞に内在化する。
【0218】
ある態様において、抗CD73抗体は、表3に挙げる特徴の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11を有する。
【0219】
表3:抗CD73抗体の可能性のある特徴
(1)例えば、BIACORE
(登録商標)SPR分析により測定して、例えば、10nM以下(例えば、0.01nM〜10nM)のK
Dで、ヒトCD73、例えば、ビーズ結合ヒト単量体および二量体ヒトCD73アイソフォーム1および2に結合する;
(2)例えば、1nM以下(例えば、0.01nM〜1nM)のEC
50で、膜結合型ヒトCD73に結合する;
(3)例えば、10nM以下(例えば、0.01nM〜10nM)のEC
50で、カニクイザルCD73に結合する、例えば、膜結合型カニクイザルCD73に結合する;
(4)例えば、10nM以下のEC
50で、ヒトCD73酵素活性を阻害する;
(5)例えば、10nM以下のEC
50で、cyno CD73酵素活性を阻害する;
(6)Calu6細胞における内在性(細胞性)ヒトCD73酵素活性を、10nM以下のEC
50で阻害する;
(7)インビボでヒトCD73酵素活性を阻害する;
(8)例えば、1時間未満、30分未満または10分未満のT
1/2および/または少なくとも70%、80%または90%のY
maxで、細胞に内在化、例えば、抗体介在(または依存的)CD73内在化する;
(9)ヒトCD73上の立体エピトープ、例えば、アミノ酸残基FTKVQQIRRAEPNVLLLDA(配列番号96)および/またはLYLPYKVLPVGDEVVG(配列番号97)の全てまたは一部を含むアミノ酸配列(配列番号1)内の不連続エピトープに結合する;
(10)ヒトCD73への結合について、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11といずれかの方向でまたは両方向で競合する;および
(11)X線結晶学により決定して、CD73.4と類似するパターンでヒトCD73と相互作用する。
【0220】
当分野で知られるおよびここに記載する方法により決定して、これらの機能的性質(例えば、生化学的、免疫化学的、細胞学的、生理学的または他の生物学的活性など)の1以上を示す抗体活性は、抗体の非存在下(例えばまたは無関係の特異性の対照抗体が存在するとき)で見られるものに対して、特定の活性における統計学的に有意な差異と関係すると理解される。ある態様において、ここに開示する抗CD73抗体は、測定されたパラメータ(例えば、腫瘍体積、腫瘍転移、アデノシンレベル、cAMPレベル)を、測定されたパラメータの少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%、ある好ましい態様において、92%、94%、95%、97%、98%または99%を超えて減少させる。逆に、ここに開示する抗CD73抗体は、測定されたパラメータを、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%(すなわち2倍)、3倍、5倍または10倍増加させる。
【0221】
種々の種のCD73に対する抗体の結合能を評価する標準アッセイは当分野で知られ、例えば、ELISA、ウェスタンブロットおよびRIAを含む。適当なアッセイは、実施例に詳細に記載する。抗体の結合動態(例えば、結合親和性)も、BIACORE
(登録商標)SPR分析のような、当分野で知られる標準アッセイにより評価できる。CD73の機能的性質(例えば、アデノシン産生、腫瘍増殖および転移、T細胞阻害)に対する抗体の効果を評価するアッセイは、下におよび実施例にさらに詳細に記載する。
【0222】
ある態様において、抗CD73抗体は、天然抗体ではないかまたは天然に存在する抗体ではない。例えば、抗CD73抗体は、翻訳後修飾が多い、少ないまたはタイプが異なるような、天然に存在する抗体と異なる翻訳後修飾を有する。
【0223】
ある態様において、抗CD73抗体は、例えば、CD73をT細胞表面から除去するおよび/またはその酵素活性を阻害することにより、T
eff(Tエフェクター)機能を刺激するおよび/またはT
reg機能を低減する。
【0224】
ある態様において、抗CD3抗体は、少なくともIgG2ヒンジおよび所望によりまたIgG2 CH1ドメインまたはフラグメントまたはヒンジおよび/またはCH1ドメインの誘導体を含み、抗体は形態Aである(例えば、Allen et al., (2009) Biochemistry 48:3755参照)。ある態様において、抗CD3抗体は、少なくともIgG2ヒンジおよび所望によりまたIgG2 CH1ドメインまたはヒンジおよび/またはCH1ドメインのフラグメントもしくは誘導体を有し、抗体は、形態Bを採っている(例えば、Allen et al., (2009) Biochemistry 48:3755参照)。ある態様において、組成物は、形態Aの抗CD73抗体と形態Bの抗CD73抗体の混合物を含む。
【0225】
ここに提供されるのは、(i)11F11により結合されるのに類似するヒトCD73上の領域に結合するが、4C3により結合されるのに類似する領域に結合しない、可変領域を含む(すなわち、ビン1抗体である);(ii)単量体および二量体ヒトCD73に10nM以下のK
Dで結合する;(iii)例えば、細胞、例えば、Calu6細胞における、ヒトCD73の酵素活性(AMPからアデノシンへの変換)を、10nM未満のEC
50で阻害する;そして(iv)ヒト細胞、例えば、Calu6細胞、H2228細胞、HCC15細胞、H2030細胞、SNUC1細胞において、例えば、1時間以下(または30分以下または10分以下)のT
1/2、50%以上(または60%以上、70%以上、80%以上または90%以上)のY
maxで細胞への抗体依存的CD73内在化を仲介する、抗ヒトCD73抗体である。ある態様において、抗体は、IgG2ヒンジまたはIgG2ヒンジおよびIgG2 CH1ドメインを含む。ここに提供されるのは、(i)11F11により結合されるのに類似するヒトCD73上の領域に結合するが、4C3により結合されるのに類似する領域に結合しない、可変領域を含む(すなわち、ビン1抗体である);(ii)SPR(Biacore)により決定して、単量体および二量体ヒトCD73に10nM以下のK
Dで結合する;(iii)例えば、細胞、例えば、Calu6細胞における、ヒトCD73の酵素活性(AMPからアデノシンへの変換)を、10nM未満のEC
50で阻害する;そして(iv)実施例6Aに記載する高容量内在化アッセイを使用して決定して、ヒトCalu6、H2228、HCC15またはH2030細胞において、例えば、30分以下のT
1/2、80%以上のY
maxで細胞への抗体依存的CD73内在化を仲介する、抗ヒトCD73抗体である。
【0226】
好ましい態様において、ここに記載する抗CD73抗体は、顕著に毒性ではない。例えば、抗CD73抗体は、例えば、臨床試験で決定して、ヒトの臓器、例えば、肝臓、腎臓、脳、肺および心臓の1以上に顕著に毒性ではない。ある態様において、抗CD73抗体は、望ましくない免疫応答、例えば、自己免疫または炎症を顕著に惹起しない。
【0227】
II. 抗CD73抗体の例
抗CD73抗体の可変領域
ここに記載する特定の抗体は、抗体11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11、7A11、CD73.3−1、−2または−3、CD73.4−1および−2、CD73.4−2、CD73.5−1および−2、CD73.6−1および−2、CD73.7−1および−2、CD73.8−1および−2、CD73.9−1および−2、CD73.10−1および−2およびCD73.11のCDRおよび/または可変領域配列を有する抗体、例えば、モノクローナル抗体ならびにこれらの可変領域またはCDR配列と少なくとも80%同一性(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一性)を有する抗体である。表4は、各抗体のV
HおよびV
L領域のCDRのならびにV
HおよびV
L領域の配列番号を示す。実施例においてさらに記載するように、ある重鎖は1を超える軽鎖と共に存在でき、また軽鎖の配列番号も下記表に提供する。
【0228】
【表3】
[この文献は図面を表示できません]
【0229】
ここに提供されるのは、重鎖および軽鎖可変領域を含む単離抗体またはその抗原結合部分であり、ここで、重鎖可変領域は、配列番号4、16、32、40、52、60、68、80、88、135および170〜177からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0230】
また提供されるのは、重鎖および軽鎖可変領域を含む単離抗体またはその抗原結合部分であり、ここで、軽鎖可変領域は、配列番号8、12、20、24、28、36、44、48、56、64、72、76、84、92および238からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0231】
ここに提供されるのは、
(a)それぞれ配列番号135および8を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(b)それぞれ配列番号135および12を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(c)それぞれ配列番号4および8を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(d)それぞれ配列番号4および12を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(e)それぞれ配列番号16および20を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(f)それぞれ配列番号16および24を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(g)それぞれ配列番号16および28を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(h)それぞれ配列番号32および36を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(i)それぞれ配列番号40および44を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(j)それぞれ配列番号40および48を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(k)それぞれ配列番号52および56を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(l)それぞれ配列番号60および64を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(m)それぞれ配列番号68および72を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(n)それぞれ配列番号68および76を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(o)それぞれ配列番号68および238を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(p)それぞれ配列番号80および84を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(q)それぞれ配列番号88および92を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(r)それぞれ配列番号170および20を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(s)それぞれ配列番号170および24を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(t)それぞれ配列番号170および28を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(u)それぞれ配列番号171および8を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(v)それぞれ配列番号171および12を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(w)それぞれ配列番号172および8を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(x)それぞれ配列番号172および12を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(y)それぞれ配列番号173および8を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(z)それぞれ配列番号173および12を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(a2)それぞれ配列番号174および8を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(b2)それぞれ配列番号174および12を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(c2)それぞれ配列番号175および8を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(d2)それぞれ配列番号175および12を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(e2)それぞれ配列番号176および8を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;
(f2)それぞれ配列番号176および12を含む重鎖および軽鎖可変領域配列;または
(g2)それぞれ配列番号177と36を含む重鎖および軽鎖可変領域配列
を含む、単離抗体またはその抗原結合部分である。
【0232】
抗CD73抗体は、ここに記載する抗CD73抗体、例えば、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、11F11、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、5F8−3、6E11および7A11またはこれらの組み合わせの重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含み得る。
【0233】
これらの抗体の各々がCD73に結合し、この抗原結合特異性が主にCDR1、2および3領域により提供されることに鑑みて、V
H CDR1、2および3配列およびV
L CDR1、2および3配列を、“混合および整合”(すなわち、各抗体はV
H CDR1、2および3およびV
L CDR1、2および3を含まなければならないが、異なる抗体からのCDRを混合および整合できる)して、ここに記載する他の抗CD73結合分子を創出できる。このような“混合および整合”抗体のCD73結合を、上におよび実施例(例えば、ELISA)に記載する結合アッセイを使用して、試験できる。好ましくは、V
H CDR配列を混合および整合するとき、特定のV
H配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列と置き換える。同様に、V
L CDR配列を混合および整合するとき、好ましくは特定のV
L配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列と置き換える。新規V
HおよびV
L配列を、1以上のV
Hおよび/またはV
L CDR領域配列を、モノクローナル抗体CD73.4−1、CD73.4−2、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11についてここに開示するCDR配列からの構造的に類似する配列と置換することにより、創出できることは、当業者には容易に明らかである。ここに開示する特定の抗体と同等なまたはそれより優れた結合親和性、生理活性および/または他の性質を有する“混合および整合”抗体本発明の方法において使用するために選択し得る。
【0234】
ここに提供されるのは、
(a)配列番号5、17、33、41、53、61、69、81および89からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号6、18、34、42、54、62、70、82および90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号、7、19、35、43、55、63、71、83および91からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号9、13、21、25、29、37、45、49、57、65、73、77、85および93からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号10、14、22、26、30、38、46、50、58、66、74、78、86および94からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号11、15、23、27、31、39、47、51、59、67、75、79、87および95からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3;
を含む単離抗体またはその抗原結合部分であり、ここで、該抗体は、ヒトCD73に特異的に結合する。
【0235】
ある態様において、抗体は、重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3領域は配列番号5〜7;17〜19;33〜35;41〜43;53〜55;61〜63;69〜71;81〜83;または89〜91を含み、ここで、該抗体は、ヒトCD73に特異的に結合する。
【0236】
ある態様において、抗体は、重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3領域は
配列番号9〜11;13〜15;21〜23;25〜27;29〜31;37〜39;45〜47;49〜51;57〜59;65〜67;73〜75;77〜79;85〜87;または93〜95を含み、ここで、該抗体は、ヒトCD73に特異的に結合する。
【0237】
ある態様において、抗体は、重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで、
(a)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号5〜7を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号9〜11を含むか;
(b)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号5〜7を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号13〜15を含むか;
(c)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号17〜19を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号21〜23を含むか;
(d)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号17〜19を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号25〜27を含むか;
(e)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号17〜19を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号29〜31を含むか;
(f)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号33〜35を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号37〜39を含むか;
(g)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号41〜43を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号45〜47を含むか;
(h)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号41〜43を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号49〜51を含むか;
(i)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号53〜55を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号57〜59を含むか;
(j)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号61〜63を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号65〜67を含むか;
(k)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号69〜71を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号73〜75を含むか;
(l)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号69〜71を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号77〜79を含むか;
(m)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号81〜83を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号85〜87を含むか;または
(n)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号89〜91を含み、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号93〜95を含み;
ここで、該抗体はヒトCD73に特異的に結合し、所望により表3に挙げる特徴の1以上、例えば、AMPの脱リン酸化を阻害するおよび受容体依存的CD73内在化に介在する能力を有する。
【0238】
ある態様において、抗体は、重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで、
(a)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号5〜7からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号9〜11からなるか;
(b)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号5〜7からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号13〜15からなるか;
(c)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号17〜19からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号21〜23からなるか;
(d)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号17〜19からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号25〜27からなるか;
(e)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号17〜19からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号29〜31からなるか;
(f)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号33〜35からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号37〜39からなるか;
(g)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号41〜43からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号45〜47からなるか;
(h)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号41〜43からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号49〜51からなるか;
(i)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号53〜55からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号57〜59からなるか;
(j)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号61〜63からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号65〜67からなるか;
(k)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号69〜71からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号73〜75からなるか;
(l)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号69〜71からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号77〜79からなるか;
(m)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号81〜83からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号85〜87からなるか;または
(n)重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号89〜91からなり、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3はそれぞれ配列番号93〜95からなり;
ここで、該抗体はヒトCD73に特異的に結合し、所望により表3に挙げる特徴の1以上、例えば、AMPの脱リン酸化を阻害するおよび受容体依存的CD73内在化に介在する能力を有する。
【0239】
抗CD73抗体の重鎖定常ドメイン
ここに記載する抗CD73抗体の重鎖定常領域は、アイソタイプのいずれか、例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4またはこれらの組み合わせおよび/またはその修飾体であり売る。抗CD73抗体は、エフェクター機能を有しても、エフェクター機能が低減されていても失われていてもよい。ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体は、抗体の性質を増強させる修飾重鎖定常領域を含む。実施例に示すように、11F11抗体の可変領域を有するもののような、IgG2ヒンジおよび所望によりIgG2 CH1ドメインを有する抗CD73抗体は、同一の可変領域を有するが、非IgG2ヒンジまたはCH1を有する抗体、例えば、IgG1ヒンジまたはIgG1ヒンジおよびIgG1 CH1を有する抗体と比べて、良好にかつ速く内在化される。例えば11F11抗体の可変領域を含み、IgG2ヒンジおよび所望によりIgG2 CH1およびIgG1 CH2およびIgG1 CH3ドメインを含み、エフェクター機能を有するかまたは有さないいずれかである抗体は、IgG1ヒンジまたはIgG1ヒンジおよびIgG1 CH1ドメインを有する以外同一の抗体と比較して、細胞膜上のCD73への結合により、細胞により効率的に内在化される。ここでさらに示すように、IgG2ヒンジを有し、抗体の残りがIgG1アイソタイプであるCD73抗体は、ヒンジがIgG1アイソタイプである同一抗体より効率的に内在化される。IgG2ヒンジに加えて、IgG2 CH1ドメインを有する抗体は、CH1ドメインがIgG1 CH1ドメインである同一抗体よりもさらに効率的に内在化される。ここでさらに示すように、IgG2ヒンジおよび所望によりIgG2 CH1を有する抗CD73抗体は、IgG1ヒンジまたはIgG1ヒンジおよびIgG1 CH1を有する抗体よりも大きな抗体/抗原複合体も形成する。内在化増加は、抗体/抗原複合体サイズの増加と相関するように見える。実施例においてさらに記載するように、内在化増強は、抗体の親和性の高低と関係しないように見える。したがって、ここに提供されるのは、抗体介在CD73内在化に介在する修飾重鎖定常領域を有する抗CD73抗体であり、ここで、該修飾重鎖定常領域を有する抗体は、異なる重鎖定常領域を有する以外、同一抗体と類似する親和性でCD73と結合する。
【0240】
ある態様において、CD73抗体は、IgG2アイソタイプのヒンジ(“IgG2ヒンジ”)およびCH1、CH2およびCH3ドメインを含む修飾重鎖定常領域を含む。ある態様において、修飾重鎖定常領域はIgG2ヒンジおよびCH1、CH2およびCH3ドメインを含み、ここで、CH1、CH2およびCH3ドメインの少なくとも一つはIgG2アイソタイプのものではない。ある態様において、修飾重鎖定常領域は、IgG2アイソタイプのヒンジ、IgG2アイソタイプのCH1を含み、ここで、CH2およびCH3ドメインの少なくとも一つはIgG2アイソタイプのものではない。IgG2ヒンジは、野生型IgG2ヒンジ、例えば、野生型ヒトIgG2ヒンジ(例えば、配列番号136を有する)またはそのバリアントであってよいが、ただし、IgG2ヒンジは、非IgG2ヒンジおよび所望により非IgG2 CH1ドメインを含む同一抗体と比較して、抗体の活性を増強させる能力(例えば、増加した細胞による内在化;増強された酵素活性阻害;増加したアンタゴニストまたは遮断活性;大きな抗体/抗原架橋複合体を形成する能力;免疫応答を刺激または増強する高い能力;および/または増加した抗増殖性または抗腫瘍効果)を保持する。ある態様において、IgG2ヒンジバリアントは、野生型IgG2ヒンジと類似する強剛性または剛性を保持する。ヒンジまたは抗体の強剛性は、該ヒンジを含む抗体の旋回の半径を測定または比較するための、例えば、コンピューターモデリング、電子顕微鏡法、核磁気共鳴(NMR)のようなスペクトロスコピー、X線結晶学(温度因子)または超遠心沈降速度法(AUC)により決定できる。ヒンジまたは抗体は、該ヒンジを含む抗体から先の文章において記載した試験の一つで得られた値が、異なるヒンジ、例えば、IgG1ヒンジを有する同一抗体と5%、10%、25%、50%、75%または100%未満異なるならば、他のヒンジと比較して、同等のまたは高い強剛性を有し得る。当業者は、ヒンジまたは抗体が、それぞれ他のヒンジまたは抗体と少なくとも類似する強剛性を有するか否かを、これらの試験結果を解釈することにより決定することができる。ヒトIgG2ヒンジバリアントの例は、4システイン残基(すなわち、C219、C220、C226およびC229)の1以上の他のアミノ酸への置換を含むIgG2ヒンジである。システインはセリンで置き換えてよい。IgG2ヒンジの例は、C219X変異またはC220X変異を含むヒトIgG2ヒンジであり、ここで、Xはセリン以外の任意のアミノ酸である。ある態様において、IgG2ヒンジは、C219XおよびC220X置換のいずれも含まない。ある態様において、IgG2ヒンジはC219SまたはC220Sを含むが、C219SおよびC220Sの両者は含まない。使用し得る他のIgG2ヒンジバリアントは、C220、C226および/またはC229置換、例えば、C220S、C226SまたはC229S変異を含むヒトIgG2ヒンジを含む(これは、C219S変異と組み合わせてよい)。IgG2ヒンジはまた、ヒンジの一部が他のアイソタイプのものであるIgG2ヒンジ(すなわち、キメラまたはハイブリッドヒンジである)を含んでもよいが、ただし、該キメラヒンジの強剛性は、野生型IgG2ヒンジと少なくとも類似する。例えば、IgG2ヒンジは、下部ヒンジ(表2に定義)がIgG1アイソタイプのものであり、例えば、野生型IgG1下部ヒンジである、IgG2ヒンジであり得る。
【0241】
“ハイブリッド”または“キメラ”ヒンジは、ヒンジの連続アミノ酸の半分以上が、特定のアイソタイプ由来であるならば、そのアイソタイプのものと称する。例えば、IgG2の上部および中間部ヒンジおよびIgG1の下部ヒンジを有するヒンジは、IgG2ハイブリッドヒンジとして考える。
【0242】
ある態様において、CD73抗体は、次のヒンジの一つを含むIgG2ヒンジを含む、修飾重鎖定常領域を含む:
ERKCCVECPPCPAPPVAG(配列番号348);
ERKSCVECPPCPAPPVAG(配列番号349);
ERKCSVECPPCPAPPVAG(配列番号350);
ERKXCVECPPCPAPPVAG(配列番号351);
ERKCXVECPPCPAPPVAG(配列番号352);
ERKCCVECPPCPAPPVAGX(配列番号353);
ERKSCVECPPCPAPPVAGX(配列番号354);
ERKCSVECPPCPAPPVAGX(配列番号355);
ERKXCVECPPCPAPPVAGX(配列番号356);
ERKCXVECPPCPAPPVAGX(配列番号357);
ERKCCVECPPCPAPELLGG(配列番号358);
ERKSCVECPPCPAPELLGG(配列番号359);
ERKCCSVECPPCPAPELLGG(配列番号360);
ERKXCVECPPCPAPELLGG(配列番号361);
ERKCXVECPPCPAPELLGG(配列番号362);
ERKCCVECPPCPAPELLG(配列番号363);
ERKSCVECPPCPAPELLG(配列番号364);
ERKCCSVECPPCPAPELLG(配列番号365);
ERKXCVECPPCPAPELLG(配列番号366);
ERKCXVECPPCPAPELLG(配列番号367);
ERKCCVECPPCPAP(配列番号368);
ERKSCVECPPCPAP(配列番号369);
ERKCSVECPPCPAP(配列番号370);
ERKXCVECPPCPAP(配列番号371);または
ERKCXVECPPCPAP(配列番号372)
(ここで、Xはシステイン以外の任意のアミノ酸である)
または、アミノ酸残基CVEとCPPの間に1〜5、1〜3、1〜2または1アミノ酸が挿入されている、上記配列のいずれか。ある態様において、THTまたはGGGが挿入される。
【0243】
ある態様において、ヒンジは配列番号348、349、350、351または352を含み、ここで、アミノ酸P233、V234、A235およびG237の1個、2個、3個または全4個(C末端4アミノ酸“PVAG”(配列番号373)に対応する)が、欠失しているか、他のアミノ酸、例えば、IgG1ヒンジのC末端のアミノ酸(ELLG(配列番号374)またはELLGG(配列番号375))で置換されている。ある態様において、ヒンジは配列番号348、349、350、351または352を含み、ここで、V234、A235およびG237は欠失しているか、他のアミノ酸で置換されている。ある態様において、ヒンジは配列番号348、349、350、351または352を含み、ここで、A235およびG237は欠失しているか、他のアミノ酸で置換されている。ある態様において、ヒンジは配列番号348、349、350、351または352を含み、ここで、G237は欠失しているか、他のアミノ酸で置換されている。ある態様において、ヒンジは配列番号348、349、350、351または352を含み、ここで、V234およびA235は欠失しているか、他のアミノ酸で置換されている。例えば、上記の、ハイブリッドヒンジを得るための、IgG2におけるPVAG(配列番号373)の、IgG1ヒンジの対応するアミノ酸、すなわち、(ELLG(配列番号374)またはELLGG(配列番号375))での置換は、IgG2ヒンジの利点とIgG1ヒンジのエフェクター機能を有するヒンジを提供する。
【0244】
ある態様において、修飾重鎖定常領域は、上記配列の一つ、例えば、配列番号348〜372のいずれか一つからなるまたは本質的にそれからなるヒンジを含み、例えば、さらなるヒンジアミノ酸残基を含まない。
【0245】
ある態様において、1または1〜2または1〜3アミノ酸がヒンジとCH2ドメインの間に挿入され、例えば、さらなるグリシンが付加され得る。
【0246】
ある態様において、抗CD73抗体はIgG1またはIgG2定常領域を含む修飾重鎖定常領域を含み、ここで、ヒンジは、1〜10アミノ酸の欠失を含む。実施例に示すように、アミノ酸残基SCDKTHT(S219、C220、D221、K222、T223、H224およびT225;配列番号376)を欠くIgG1抗体は、抗体介在CD73内在化が、野生型IgG1定常領域を有する同一抗体より効率的であった。同様に、IgG2抗体の状況において、アミノ酸残基CCVE(C219、C220、V222およびE224;配列番号377)を欠くIgG2抗体は、抗体介在CD73内在化が、野生型IgG1定常領域を有する同一抗体より効率的であった。したがって、ここに提供されるのは、ヒンジが、IgG1抗体について残基S219、C220、D221、K222、T223、H224およびT225およびIgG2抗体について残基C219、C220、V222およびE224から選択される1、2、3、4、5、6または7アミノ酸残基の欠失を含む、修飾重鎖定常領域である。
【0247】
ある態様において、修飾重鎖定常領域は、IgG1またはIgG2アイソタイプの野生型CH1ドメイン(それぞれ“IgG1 CH1ドメイン”または“IgG2 CH1ドメイン”)である、CH1ドメインを含む。アイソタイプIgG3およびIgG4のCH1ドメイン(それぞれ“IgG3 CH1ドメインおよび“IgG2 CH1ドメイン”)も使用し得る。CH1ドメインはまた、野生型CH1ドメインのバリアント、例えば、野生型IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 CH1ドメインのバリアントでもあり得る。CH1ドメインのバリアントの例は、A114C、T173Cおよび/またはC131、例えば、C131Sを含む。
【0248】
CH1ドメイン、例えば、IgG2 CH1ドメインは置換C131Sを含んでよく、この置換は、IgG2抗体またはIgG2 CH1およびヒンジを含む抗体を、B形態(または立体構造)とする。
【0249】
ある態様において、修飾重鎖定常領域は、IgG2アイソタイプのものであるCH1ドメインを含む。ある態様において、CH1ドメインは、例えば、アミノ酸配列
【化1】
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を有する、野生型IgG2 CH1ドメインである。ある態様において、CH1ドメインは、配列番号378のバリアントであり、配列番号378に対して、1〜10、1〜5、1〜2または1アミノ酸置換または欠失を含む。実施例においてさらに記載するように、IgG2 CH1ドメインまたはそのバリアントが、IgG1抗体に比して抗CD73抗体の内在化性質を増強または改変させ、抗体がIgG2ヒンジも含むとき、内在化がさらに増強または改変されることが示されている。ある態様において、IgG2 CH1バリアントは、次のアミノ酸残基C131、R133、E137およびS138の1以上にアミノ酸置換または欠失を含まず、このアミノ酸残基は、上に示す配列番号378において太字および下線で示される。例えば、修飾重鎖定常領域は、R133、E137およびS138のいずれも他のアミノ酸で置換されていないまたは欠失されていないまたはC131、R133、E137およびS138のいずれも他のアミノ酸で置換されていないまたは欠失されていない、IgG2 CH1ドメインを含み得る。ある態様において、C131は、他のアミノ酸で置換され、例えば、C131Sであり、この置換は、抗体が立体構造Bを採ることを誘発する。修飾重鎖定常領域を有する立体構造Aおよび立体構造B両者の抗体は、IgG1定常領域を有する同一抗体に比して、活性が増強していることがここで示されている。
【0250】
ある態様において、N192および/またはF193(上記配列番号378において斜体および下線を引いた残基として示す)を、他のアミノ酸、例えば、IgG1における対応するアミノ酸、すなわち、N192Sおよび/またはF193Lで置換する。
【0251】
ある態様において、IgG2 CH1ドメインの1以上のアミノ酸残基を、IgG4における対応するアミノ酸残基で置換する。例えば、N192はN192Sであってよく;F193はF193Lであってよく;C131はC131Kであってよく;および/またはT214はT214Rであってよい。
【0252】
抗体は、IgG2 CH1ドメインまたはそのバリアントおよびIgG2ヒンジまたはそのバリアントを含む修飾重鎖定常領域を含み得る。ヒンジおよびCH1ドメインは、ここに記載する任意のIgG2ヒンジおよびIgG2 CH1ドメインの組み合わせであり得る。ある態様において、IgG2 CH1およびヒンジは、次のアミノ酸配列
【化2】
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またはそれから最大1〜10アミノ酸異なるアミノ酸配列を含み得る。アミノ酸バリアントは、ヒンジおよびCH1ドメインについて上記したとおりである。
【0253】
ある態様において、抗体は、少なくともIgG2ヒンジおよび所望によりまたIgG2 CH1ドメインまたはヒンジおよび/またはCH1ドメインのフラグメントもしくは誘導体を含み、該抗体は、(立体構造の)形態Aを取っている(例えば、Allen et al., (2009) Biochemistry 48:3755参照)。ある態様において、抗CD73抗体は、少なくともIgG2ヒンジおよび所望によりまたIgG2 CH1ドメインまたはヒンジおよび/またはCH1ドメインのフラグメントもしくは誘導体を含み、該抗体は、形態Bを取っている(例えば、Allen et al., (2009) Biochemistry 48:3755参照)。
【0254】
ある態様において、修飾重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの野生型CH2ドメイン(それぞれ“IgG1 CH2ドメイン”、“IgG2 CH2ドメイン”、“IgG3 CH2ドメイン”または“IgG4 CH2ドメイン”)である、CH2ドメインを含む。CH2ドメインはまた野生型CH2ドメインのバリアント、例えば、野生型IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 CH2ドメインのバリアントであり得る。CH2ドメインのバリアントの例は、ADCCまたはCDCのような抗体のFc領域の生物学的活性を調節するまたは抗体の半減期またはその安定性を調節するバリアントを含む。ある態様において、CH2ドメインは、A330SおよびP331S変異を有するヒトIgG1 CH2ドメインであり、ここで、CH2ドメインは、変異がない同一CH2変異と比較して、エフェクター機能が軽減している。CH2ドメインは、増強されたエフェクター機能を有し得る。CH2ドメインは、次の変異E(S267E)、SELF(S267E/L328F)、SDIE(S239D/I332E)、SEFFおよびGASDALIE(G236A/S239D/A330L/I332E)の1以上および/または次のアミノ酸E233、G237、P238、H268、P271、L328およびA330に1以上の変異を含み得る。他の変異は、本明細書の他の箇所にさらに示す。
【0255】
ある態様において、修飾重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの野生型CH3ドメイン(それぞれ“IgG1 CH3ドメイン”、“IgG2 CH3ドメイン”、“IgG3 CH3ドメイン”または“IgG4 CH3ドメイン”)である、CH3ドメインを含む。CH3ドメインは、野生型CH3ドメインのバリアント、例えば、野生型IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 CH3ドメインのバリアントであり得る。CH3ドメインのバリアントの例は、ADCCまたはCDCのような抗体のFc領域の生物学的活性を調節するまたは抗体の半減期またはその安定性を調節するバリアントを含む。
【0256】
ある態様において、修飾重鎖定常領域は、IgG2アイソタイプのヒンジおよびIgG2アイソタイプのCH1領域を含む。IgG2ヒンジおよびCH1は、野生型IgG2ヒンジおよびCH1またはそのバリアントであってよいが、ただし、それらは所望の生物学的活性を有する。ある態様において、修飾重鎖定常領域は、C219S変異を含むIgG2ヒンジおよび野生型でも、最大1〜10、1〜5、1〜3、1〜2または1アミノ酸置換、欠失または付加を含んでもよいIgG2 CH1を含む。修飾重鎖定常領域は、さらに野生型または変異CH2およびCH3ドメインを含み得る。例えば、CD73抗体は、IgG2 CH1ドメイン、C219Sを含んでよいIgG2ヒンジならびにIgG1 CH2およびCH3ドメインを含む重鎖定常ドメインを含んでよく、ここで、CH2およびCH3ドメインは、変異A330SおよびP331Sを含むような、エフェクターレスであり得る。
【0257】
一般に、CH1、ヒンジ、CH2またはCH3ドメインのバリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の変異および/または最大10、9、8、7、6、5、4、3、2または1変異また1〜10または1〜5変異を含んでよく、または特定のバリアントを含む重鎖定常領域が必要な生物学的活性を保持する限り、対応する野生型ドメインと少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列(それぞれCH1、ヒンジ、CH2またはCH3ドメイン)を含む。
【0258】
表5は、ヒトCH1、ヒンジ、CH2および/またはCH3ドメインを含むヒト重鎖定常領域の例を示し、ここで、各ドメインは、所望の生物学的活性を重鎖定常領域に提供する野生型ドメインまたはそのバリアントである。表5における空欄は、ドメインが存在するかまたは存在せず、存在するならば、あらゆるアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4であり得ることを示す。例えば、表5における重鎖定常領域1を含む抗体は、少なくともIgG2ヒンジを含む重鎖定常領域を含む抗体であり、これはまたCH1、CH2および/またはCH3ドメインを含んでよく、存在するならば、このCH1、CH2および/またはCH3ドメインは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプのものである。表5の理解を深めるための他の例として、重鎖定常領域8を含む抗体は、IgG1 CH1ドメインおよびIgG2ヒンジ、IgG1 CH2ドメインを含む重鎖定常領域を含む抗体であり、これは、CH3ドメインを含んでも含まなくてもよく、これは、存在するならば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプのものであり得る。
【0259】
【表4】
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* 修飾重鎖定常領域
【0260】
ある態様において、表5に示す重鎖定常領域を含む抗体は、特定の重鎖定常領域を含まない重鎖定常領域を含む同一抗体と比較してまたはIgG1定常領域を含む同一抗体と比較して、生物学的活性が増強されている。
【0261】
ある態様において、非IgG2ヒンジおよび/または非IgG2 CH1ドメインを含むCD73抗体の生物学的活性を改善する方法は、非IgG2ヒンジおよび/または非IgG2 CH1ドメインを含む抗CD73抗体を提供し、該非IgG2ヒンジおよび該非IgG2 CH1ドメインを、それぞれ、IgG2ヒンジおよびIgG2 CH1ドメインに置き換えることを含む。修飾重鎖定常領域を含まないCD73抗体の生物学的活性を改善する方法は、修飾重鎖定常領域を含まない抗CD73抗体を提供し、その重鎖定常領域を修飾重鎖定常領域に置き換えることを含み得る。
【0262】
抗CD73可変領域、例えば、ここに記載のものと連結し得る修飾重鎖定常領域の例を表6に提供し、これは、ドメインの各々の身元を示す。
【表5】
[この文献は図面を表示できません]
【0263】
ある態様において、抗体は、配列番号123、136、178、179または348〜372を含む修飾IgG2ヒンジまたは(i)配列番号123、136、178、179または348〜372と1、2、3、4または5アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(ii)配列番号123、136、178、179または348〜372と最大5、4、3、2または1アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(iii)配列番号123、136、178、179または348〜372と1〜5、1〜3、1〜2、2〜5または3〜5アミノ酸置換、付加または欠失で異なるおよび/または(iv)配列番号123、136、178、179または348〜372と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含むIgG2ヒンジのようなそのバリアントを含む重鎖定常領域を含み、ここで、(i)〜(iv)のいずれかにおいて、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換でも非保存的アミノ酸置換でもよく、修飾重鎖定常領域は、他の重鎖定常領域、例えば、非IgG2ヒンジを含む重鎖定常領域と比較してまたは非IgG2ヒンジを含む同一修飾重鎖定常領域と比較して、生物学的活性が増強されている。例えば、ヒンジは野生型でも、C219S、C220SまたはC219SおよびC220S置換を含んでもよい。
【0264】
ある態様において、抗体は、配列番号98を含むIgG1 CH1ドメインまたは配列番号124を含むIgG2 CH1ドメインまたは配列番号98または124のバリアントを含む修飾重鎖定常領域を含み、このバリアントは、(i)配列番号98または124と1、2、3、4または5アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(ii)配列番号98または124を最大5、4、3、2または1アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(iii)配列番号98または124と1〜5、1〜3、1〜2、2〜5または3〜5アミノ酸置換、付加または欠失で異なるおよび/または(iv)配列番号98または124と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、(i)〜(iv)のいずれかにおいて、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換でも非保存的アミノ酸置換でもよく、修飾重鎖定常領域は、他の重鎖定常領域、例えば、非IgG2ヒンジまたは非IgG2ヒンジおよびCH1ドメインを含む重鎖定常領域と比較してまたは非IgG2ヒンジまたは非IgG2ヒンジおよびCH1ドメインを含む同一修飾重鎖定常領域と比較して、生物学的活性が増強されている。IgG2 CH1ドメインは、IgG2ヒンジおよびCH1を含む抗体に、A形態またはB形態を採らせる、C131Sまたは他の変異を含んでよい。
【0265】
ある態様において、抗体は、配列番号137または125または配列番号137または125のバリアントを含むIgG1 CH2ドメインを含む修飾重鎖定常領域を含み、このバリアントは、(i)配列番号137または125と1、2、3、4または5アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(ii)配列番号137または125を最大5、4、3、2または1アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(iii)配列番号137または125と1〜5、1〜3、1〜2、2〜5または3〜5アミノ酸置換、付加または欠失で異なるおよび/または(iv)配列番号137または125と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、(i)〜(iv)のいずれかにおいて、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換でも非保存的アミノ酸置換でもよく、修飾重鎖定常領域は、他の重鎖定常領域、例えば、非IgG2ヒンジを含む重鎖定常領域と比較してまたは非IgG2ヒンジを含む同一修飾重鎖定常領域と比較して、生物学的活性が増強されている。
【0266】
ある態様において、抗体は、配列番号138または配列番号138のバリアントを含むIgG1 CH3ドメインを含む修飾重鎖定常領域を含み、このバリアントは、(i)配列番号138と1、2、3、4または5アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(ii)配列番号138を最大5、4、3、2または1アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(iii)配列番号138と1〜5、1〜3、1〜2、2〜5または3〜5アミノ酸置換、付加または欠失で異なるおよび/または(iv)配列番号138と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、(i)〜(iv)のいずれかにおいて、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換でも非保存的アミノ酸置換でもよく、修飾重鎖定常領域は、他の重鎖定常領域、例えば、非IgG2ヒンジを含む重鎖定常領域と比較してまたは非IgG2ヒンジを含む同一修飾重鎖定常領域と比較して、生物学的活性が増強されている。
【0267】
修飾重鎖定常領域はまた上記CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインの組み合わせも含み得る。
【0268】
ある態様において、CD73抗体は、配列番号162〜169、180〜183、267〜282および300〜347のいずれか一つまたは配列番号162〜169、180〜183、267〜282および300〜347のいずれか一つのバリアントを含む修飾重鎖定常領域を含み、このバリアントは、(i)配列番号162〜169、180〜183、267〜282および300〜347と1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(ii)配列番号162〜169、180〜183、267〜282および300〜347と最大10、9、8、7、6,5、4、3、2または1アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(iii)配列番号162〜169、180〜183、267〜282および300〜347と1〜5、1〜3、1〜2、2〜5、3〜5、1〜10または5〜10アミノ酸置換、付加または欠失で異なるおよび/または(iv)配列番号162〜169、180〜183、267〜282および300〜347のいずれか一つと少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、(i)〜(iv)のいずれかにおいて、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換でも非保存的アミノ酸置換でもよく、修飾重鎖定常領域は、他の重鎖定常領域、例えば、非IgG2ヒンジまたは非IgG2 CH1ドメインを含む重鎖定常領域と比較してまたは非IgG2ヒンジおよび/または非IgG2 CH1ドメインを含む同一修飾重鎖定常領域と比較して、生物学的活性が増強されている。
【0269】
修飾重鎖定常領域は、(i)野生型重鎖定常領域と比較して、類似する、低減したまたは増加したエフェクター機能(例えば、FcγR、例えば、FcγRIIBへの結合)および/または(ii)野生型重鎖定常領域と比較して、類似する、短いまたは長い半減期(またはFcRn受容体への結合)を有し得る。
【0270】
ここに記載する抗CD73抗体のV
Hドメインは、ここに記載する重鎖定常領域に連結し得る。例えば、
図18は、重鎖定常領域IgG2CS−IgG1.1fに連結した抗体CD73.4のアミノ酸配列(配列番号133または169)を示す。またここに包含されるのは、CD73.4−IgG2CS−IgG1.1f(配列番号133または189)と最大1〜30、1〜25、1〜20、1〜15、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2または1アミノ酸(置換、付加または欠失により)異なるおよび/またはCD73.4−IgG2CS−IgG1.1f重鎖の(配列番号133または189)のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む、重鎖を含む、抗体である。例えば、CD73.4−IgG2CS−IgG1.1fの重鎖(配列番号133または189)を含み、C末端KまたはGKまたはPGKが欠失しているかまたは存在する抗体が包含される。CD73.4−IgG2CS−IgG1.1f(配列番号133または189)の他のバリアントは、異なるアロタイプのものであり、例えば、アミノ酸356および358がそれぞれDおよびLである重鎖を有するものを含む。バリアントは、IgG2ヒンジに付加的システイン変異、例えば、C220を有する(またはC219SではなくC220Sを有する)ものおよび変異A330Sおよび/またはP331Sを有しないものを含む。CD73.4−IgG2CS−IgG1.1f(配列番号133または189)のバリアントは、CD73.4−IgG2CS−IgG1.1f(配列番号133または189)と比較して、好ましくは少なくとも類似生化学的性質および/または生物学的活性、例えば、内在化の効率、CD73酵素活性の阻害、ヒトCD73に対する親和性および同一または類似するエピトープへの結合を有する。
【0271】
ある態様において、抗CD73抗体またはその抗原結合部分は、ここに記載する定常領域のいずれか一つ、例えば、配列番号126、127、129、130、162〜169、180〜183、267〜282および300〜347に示すアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
【0272】
抗CD73抗体の軽鎖は、配列番号131または配列番号131のバリアントを含む軽鎖定常領域を含んでよく、このバリアントは、(i)配列番号131と1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(ii)配列番号131と最大10、9、8、7、6,5、4、3、2または1アミノ酸置換、付加または欠失で異なる;(iii)配列番号131と1〜5、1〜3、1〜2、2〜5、3〜5、1〜10または5〜10アミノ酸置換、付加または欠失で異なるおよび/または(iv)配列番号131と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、(i)〜(iv)のいずれかにおいて、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換でも非保存的アミノ酸置換でもよい。CL変異の例は、C124Sを含む。
【0273】
ここに詳述するように、表35に示す重鎖または軽鎖のいずれかと少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%または70%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖(またはその可変領域)を、所望の特徴、例えば、ここにさらに記載するものを有する抗ヒトCD73抗体の形成に使用し得る。バリアントの例は、例えば、定常ドメインに、アロタイプ変異を含むものである。ここに記載するように、表35に示す重鎖または軽鎖のいずれかと最大1〜30、1〜25、1〜20、1〜15、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2または1アミノ酸(置換、付加または欠失により)異なるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖(またはその可変領域)を、所望の特徴、例えば、ここにさらに記載するものを有する抗ヒトCD73抗体の形成に使用し得る。
【0274】
種々の態様において、上記抗体は、表3に挙げた機能的性質の1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10または全てを示す。
【0275】
このような抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体を含む。
【0276】
ある態様において、ここに記載する抗CD73抗は、グリコシル化(例えば、N結合またはO結合グリコシル化)および非グリコシル化の両者のヒトCD73に結合する。ある抗CD73抗体はグリコシル化に結合するが、非グリコシル化CD73には結合せずまたは非グリコシル化には結合するが、グリコシル化CD73には結合しないことがある。
【0277】
ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体は、立体エピトープに結合する。
【0278】
ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体は、ヒトCD73の次の領域
FTKVQQIRRAEPNVLLLDA(配列番号96)
内のアミノ酸残基に結合し、例えば、HDX−MSにより決定して、ヒトCD73(配列番号1または2)のアミノ酸残基65〜83に対応する。
【0279】
ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体は、ヒトCD73における次のアミノ酸残基
FTKVQQIRRAEPNVLLLDA(配列番号96)
の全てまたは部分と結合し、これは、例えば、HDX−MSにより決定して、ヒトCD73(配列番号1または2)のアミノ酸残基65〜83に対応する。
【0280】
ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体は、ヒトCD73の次の領域
LYLPYKVLPVGDEVVG(配列番号97)
内のアミノ酸残基に結合し、例えば、HDX−MSにより決定して、ヒトCD73(配列番号1または2)のアミノ酸残基157〜172に対応する。
【0281】
ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体は、ヒトCD73における次のアミノ酸残基
LYLPYKVLPVGDEVVG(配列番号97)
の全てまたは部分と結合し、これは、例えば、HDX−MSにより決定して、ヒトCD73(配列番号1または2)のアミノ酸残基157〜172に対応する。
【0282】
ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体は、ヒトCD73(配列番号1または2)の次の領域
FTKVQQIRRAEPNVLLLDA(配列番号96)およびLYLPYKVLPVGDEVVG(配列番号97)
内の不連続アミノ酸残基と結合する。
【0283】
ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体は、ヒトCD73(配列番号1または2)の次の領域
FTKVQQIRRAEPNVLLLDA(配列番号96)およびLYLPYKVLPVGDEVVG(配列番号97)
内の不連続アミノ酸残基の全てまたは部分と結合し、これは、例えば、HDX−MSにより決定して、ヒトCD73(配列番号1または2)のアミノ酸残基65〜83および157〜172に対応する。
【0284】
ある態様において、抗CD73抗体は、X線結晶学で決定して、表30に示すものに対応するヒトCD73と相互作用を有する。抗体は、表30に示すヒトCD73と相互作用の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%を共有し得る。
【0285】
III. 特定の生殖系列配列を有する抗体
ある態様において、抗CD73抗体は、特定の生殖系列重鎖免疫グロブリン遺伝子からの重鎖可変領域および/または特定の生殖系列軽鎖免疫グロブリン遺伝子からの軽鎖可変領域を含む。
【0286】
ここに示すように、ヒト生殖系列V
H 3−33遺伝子、V
H 3−10遺伝子、V
H 3−15遺伝子、V
H 3−16、JH6b遺伝子、V
H 6−19遺伝子、V
H 4−34遺伝子および/またはJH3b遺伝子の産物であるまたはそれ由来である重鎖可変領域を含む、CD73に特異的なヒト抗体が産生されている。したがって、ここに提供されるのは、V
H 3−33、V
H 3−10、V
H 3−15、V
H 3−16、V
H 6−19およびV
H 4−34からなる群から選択されるヒトV
H 生殖系列遺伝子の産物であるまたはそれ由来である重鎖可変領域を含む、ヒトCD73に特異的な単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分である。
【0287】
ヒト生殖系列VK L6遺伝子、VK L18遺伝子、VK L15遺伝子、VK L20遺伝子、VK A27遺伝子、JK5遺伝子、JK4遺伝子、JK2遺伝子およびJK1遺伝子の産物であるまたはそれ由来である軽鎖可変領域を含む、CD73に特異的なヒト抗体は産生されている。したがって、ここに提供されるのは、VK L6、VK L18、VK L15、VK L20およびVK A27からなる群から選択されるヒトVK 生殖系列遺伝子の産物であるまたはそれ由来である軽鎖可変領域を含む、ヒトCD73に特異的な単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分である。
【0288】
ここに記載する好ましい抗体は、上記ヒト生殖系列V
H 遺伝子の一つの産物であるまたはそれ由来である重鎖可変領域を含み、また上記ヒト生殖系列VK 遺伝子の一つの産物であるまたはそれ由来である軽鎖可変領域も含むものである。
【0289】
ここで使用するヒト抗体は、抗体の可変領域が、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を使用するシステムにより得られるならば、特定の生殖系列配列“の産物である”または“それに由来する”重鎖または軽鎖可変領域を含む。このようなシステムは、ヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスを目的の抗原で免疫化するまたはファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを目的の抗原でスクリーニングすることを含む。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列“の産物である”または“それに由来する”ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、ヒト抗体の配列と配列が最も近い(すなわち、最大%同一性)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択することなどにより、同定できる。特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列“の産物である”または“それに由来する”ヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞性変異または部位特異的変異の意図的導入により、生殖系列配列と比較して、アミノ酸差異を含み得る。しかしながら、選択ヒト抗体は、一般にヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列が少なくとも90%同一であり、他の種の生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖系列配列)と比較して、ヒト抗体をヒトとして特定するアミノ酸残基を含む。ある場合、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列が少なくとも95%またはさらに少なくとも96%、97%、98%または99%同一であり得る。一般に、特定のヒト生殖系列配列由来のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と10を超えるアミノ酸差異を示さない。ある場合、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と5を超えないまたはさらには4、3、2または1を超えないアミノ酸差異を示し得る。
【0290】
IV. 相同抗体
ここに記載する好ましい抗体のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を有する抗体が包含され、ここで、抗体は、ここに記載する抗CD73抗体の所望の機能的性質を保持する。
【0291】
例えば、単離抗CD73抗体またはその抗原結合部分は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでよく、ここで、
(a)重鎖可変領域は配列番号4、16、32、40、52、60、68、80、88、135および170〜177からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号4、16、32、40、52、60、68、80、88、135および170〜177からなる群から選択されるアミノ酸配列に対してそれぞれ1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4、1〜5、1〜10、1〜15、1〜20、1〜25または1〜50アミノ酸変化(すなわち、アミノ酸置換、付加または欠失)を含む;
(b)軽鎖可変領域は配列番号8、12、20、24、28、36、44、48、56、64、72、76、84、92および138からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号8、12、20、24、28、36、44、48、56、64、72、76、84、92および238からなる群から選択されるアミノ酸配列に対してそれぞれ1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4、1〜5、1〜10、1〜15、1〜20、1〜25または1〜50アミノ酸変化(すなわち、アミノ酸置換、付加または欠失)を含む;
(c)抗体はCD73に特異的に結合する、かつ
(d)抗体は、表3に挙げた機能的性質の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または全てを示す。
【0292】
ある態様において、抗CD73抗体は、上(すなわち、(a)〜(d))に記載した同一性パーセントおよび/またはアミノ酸変化および機能を含み、ここで、重鎖可変領域のCDR3は、配列番号7、19、35、43、55、63、71、83および91からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により重鎖可変領域のCDR1は配列番号5、17、33、41、53、61、69、81および89からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により重鎖可変領域のCDR2は、配列番号6、18、34、42、54、62、70、82および90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0293】
ある態様において、抗CD73抗体は、上(すなわち、(a)〜(d))に記載した同一性パーセントおよび/またはアミノ酸変化および機能を含み、ここで、軽鎖可変領域のCDR3は配列番号11、15、23、27、31、39、47、51、59、67、75、79、87、95および241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により軽鎖可変領域のCDR1は、配列番号9、13、21、25、29、37、45、49、57、65、73、77、85、93および239からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により軽鎖可変領域のCDR2は、配列番号10、14、22、26、30、38、46、50、58、66、74、78、86、94および240からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0294】
ある態様において、抗CD73抗体は、上(すなわち、(a)〜(d))に記載した同一性パーセントおよび/またはアミノ酸変化および機能を含み、ここで、重鎖可変領域のCDR3は、配列番号7、19、35、43、55、63、71、83および91からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により重鎖可変領域のCDR1は配列番号5、17、33、41、53、61、69、81および89からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により重鎖可変領域のCDR2は、配列番号6、18、34、42、54、62、70、82および90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで、軽鎖可変領域のCDR3は配列番号11、15、23、27、31、39、47、51、59、67、75、79、87、95および241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により軽鎖可変領域のCDR1は、配列番号9、13、21、25、29、37、45、49、57、65、73、77、85、93および239からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により軽鎖可変領域のCDR2は、配列番号10、14、22、26、30、38、46、50、58、66、74、78、86、94および240からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0295】
種々の態様において、抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0296】
単離抗CD73抗体またはその抗原結合部分は、重鎖および軽鎖を含んでよく、ここで、
(a)重鎖は配列番号100、103、107、109、112、114、116、119、121、133、184〜210からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号100、103、107、109、112、114、116、119、121、133および184〜210からなる群から選択されるアミノ酸配列に対してそれぞれ1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4、1〜5、1〜10、1〜15、1〜20、1〜25または1〜50アミノ酸変化(すなわち、アミノ酸置換、付加または欠失)を含む;
(b)軽鎖は配列番号101、102、104、105、106、108、110、111、113、115、117、118、120および122からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含むかまたは配列番号101、102、104、105、106、108、110、111、113、115、117、118、120および122からなる群から選択されるアミノ酸配列に対してそれぞれ1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4、1〜5、1〜10、1〜15、1〜20、1〜25または1〜50アミノ酸変化(すなわち、アミノ酸置換、付加または欠失)を含む;
(c)抗体はCD73に特異的に結合する、かつ
(d)抗体は、表3に挙げた機能的性質の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または全てを示す。
【0297】
ある態様において、抗CD73抗体上(すなわち、(a)〜(d))に記載した同一性パーセントおよび/またはアミノ酸変化および機能を有する重鎖および軽鎖を含み、ここで、重鎖可変領域のCDR3は、配列番号7、19、35、43、55、63、71、83および91からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により重鎖可変領域のCDR1は配列番号5、17、33、41、53、61、69、81および89からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により重鎖可変領域のCDR2は、配列番号6、18、34、42、54、62、70、82および90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0298】
ある態様において、抗CD73抗体上(すなわち、(a)〜(d))に記載した同一性パーセントおよび/またはアミノ酸変化および機能を有する重鎖および軽鎖を含み、ここで、軽鎖可変領域のCDR3は配列番号11、15、23、27、31、39、47、51、59、67、75、79、87、95および241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により軽鎖可変領域のCDR1は、配列番号9、13、21、25、29、37、45、49、57、65、73、77、85、93および239からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により軽鎖可変領域のCDR2は、配列番号10、14、22、26、30、38、46、50、58、66、74、78、86、94および240からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0299】
ある態様において、抗CD73抗体上(すなわち、(a)〜(d))に記載した同一性パーセントおよび/またはアミノ酸変化および機能を有する重鎖および軽鎖を含み、ここで、重鎖可変領域のCDR3は、配列番号7、19、35、43、55、63、71、83および91からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により重鎖可変領域のCDR1は配列番号5、17、33、41、53、61、69、81および89からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により重鎖可変領域のCDR2は、配列番号6、18、34、42、54、62、70、82および90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで、軽鎖可変領域のCDR3は配列番号11、15、23、27、31、39、47、51、59、67、75、79、87、95および241からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により軽鎖可変領域のCDR1は、配列番号9、13、21、25、29、37、45、49、57、65、73、77、85、93および239からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、所望により軽鎖可変領域のCDR2は、配列番号10、14、22、26、30、38、46、50、58、66、74、78、86、94および240からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0300】
また提供されるのは、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11の対応するCDRと1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4または1〜5アミノ酸変化(すなわち、アミノ酸置換、付加または欠失)で異なる、V
HCDR1、V
HCDR2、V
HCDR3、V
LCDR1、V
LCDR2および/またはV
LCDR3を含む、抗CD73抗体である。ある態様において、抗CD73抗体は、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、11F11、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11における対応する配列と比較して、1個、2個、3個、4個、5個または6個のCDR各々に1〜5アミノ酸変化を含む。ある態様において、抗CD73抗体は、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11におけるCDRと比較して、全CDRにわたり、計1〜5アミノ酸変化を含む。
【0301】
ある態様において、抗CD73抗体は、CD73.4−1またはCD73.4−2のものからなるV
HおよびV
L CDRを含み、ここで、1以上のCDRにおけるアミノ酸の1以上は、他のここに開示する抗CD73抗体の一つのものである。
【0302】
抗CD73抗体の可変領域配列に付し得る変異(例えば、置換、付加、欠失)は、次のものに基づき決定できる:(i)実施例に記載するように、抗体に導入された変異;および(ii)ここに記載する抗CD73抗体の可変ドメインにおける各位置でのアミノ酸残基の比較(表35および
図35参照):抗CD73抗体におけるある位置の異なるアミノ酸は、その位置のアミノ酸残基が抗体の活性に顕著に影響することなく他のアミノ酸残基に変更できることを示し得る;一方、同一アミノ酸残基が、抗CD73抗体のいくつかまたは全ての同一位置で見られるならば、これは、この特定のアミノ酸を保持すべきであり、他の残基に変えるべきではないことを示唆し得る。例示的態様を下に提供する。
【0303】
ある態様において、フレームワーク置換を、ここに記載する抗CD73抗体の重鎖可変領域(例えば、SまたはAへの、例えば、保存的置換)を25位
【化3】
[この文献は図面を表示できません]
に導入し得る。例えば、この位置のアミノ酸がTであるならば、AまたはSへの置換が導入できる;この位置のアミノ酸がAであるならば、SまたはTへの置換が導入できる;およびこの位置のアミノ酸がSであるならば、TまたはAへの置換が導入できる。抗体24H2、4D4、10D2、6E11、7A11、11A6および4C3はこの位置にAを有し、11F11はこの位置にTを有し、73.5、73.7および73.9はこの位置にSを有する。
【0304】
同様に、ある態様において、フレームワーク置換を、重鎖可変領域(例えば、VからLまたはLからV)の94位
【化4】
[この文献は図面を表示できません]
のアミノ酸に導入し得る。例えば、抗体11F11、73.3−73.10、24H2、4D4、5F8および10D2はこの位置にVを有し、6E11、7A11、11A6および4C3はこの位置にLを有する。
【0305】
ある態様において、アミノ酸置換を、ここに開示する抗CD73抗体の重鎖可変領域CDR2に対してなし得る。例えば、52位
【化5】
[この文献は図面を表示できません]
のアミノ酸をWに置換でき、またはこの位置のアミノ酸がWであるならば、該アミノ酸をLで置換できる(抗体11F11および73.4−73.7はこの位置にLを有し、抗体73.8−73.10、24H2および4D4はこの位置にWを有する)。
【0306】
同様に、ある態様において、54位
【化6】
[この文献は図面を表示できません]
のアミノ酸をSまたはEで置換でき、またはこの位置のアミノ酸がSであるならば、アミノ酸をEで置換できる。抗体11F11、73.4、73.5、24H2、10D2および5F8はこの位置にGを有し、抗体73.6−73.9、6E11、7A11、4C3および73.3はこの位置にSを有し、抗体73.10および4D4はこの位置にEを有する。
【0307】
可変領域における他の許容できる置換は、上記に準ずる原理を使用して、
図35における重鎖および軽鎖可変領域配列のアラインメントに基づき、決定できる。
【0308】
CD73.3、CD73.4、CD73.5、CD73.6、CD73.7、CD73.8、CD73.9、CD73.10、CD73.11、11F11、4C3、4D4、10D2、11A6、24H2、5F8、6E11および/または7A11のものと相同性を有する配列、例えば、それぞれ配列番号4、16、32、40、52、60、68、80、88、135、170〜177および配列番号8、12、20、24、28、36、44、48、56、64、72、76、84、92のV
HおよびV
L領域またはそれぞれ配列番号100、103、107、109、112、114、116、119、121、133および184〜210および配列番号101、102、104、105、106、108、110、111、113、115、117、118、120および122の重鎖および軽鎖またはCDRを有する抗体を、核酸分子、例えば、配列番号139、142、146、148、151、153、155、158、160、237および/または配列番号140、141、143、144、145、147、149、150、152、154、156、157、159、161または配列番号134、243、246、250、252、255、257、259、262、264および/または配列番号244、245、247、248、249、251、253、254、256、258、260、261、263、265、266の変異誘発(例えば、部位特異的またはPCR介在変異誘発)と、続くここに記載する機能的アッセイを使用するコードされた改変抗体の機能保持に関する試験により得ることができる。
【0309】
V. 保存的修飾を有する抗体
抗CD73抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含んでよく、ここで、これらのCDR配列の1以上は、ここに記載する好ましい抗体、例えば、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11またはその保存的修飾に基づいて特定されたアミノ酸配列を含み、抗体は、ここに記載する抗CD73抗体の所望の機能的性質を保持する。したがって、単離抗CD73抗体またはその抗原結合部分は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含んでよく、ここで、
(a)重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号7、19、35、43、55、63、71、83および91およびその保存的修飾、例えば、1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4または1〜5保存的アミノ酸置換のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(b)軽鎖可変領域CDR3配列は、配列番号11、15、23、27、31、39、47、51、59、67、75、79、87および95およびその保存的修飾、例えば、1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4または1〜5保存的アミノ酸置換のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;
(c)抗体はCD73に特異的に結合する、かつ
(d)抗体は、表3に挙げた機能的性質の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または全てを示す。
【0310】
好ましい態様において、重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号6、18、34、42、54、62、70、82および90およびその保存的修飾、例えば、1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4または1〜5保存的アミノ酸置換のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;そして軽鎖可変領域CDR2配列は、配列番号10、14、22、26、30、38、46、50、58、66、74、78、86および94およびその保存的修飾、例えば、1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4または1〜5保存的アミノ酸置換のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。他の好ましい態様において、重鎖可変領域CDR1配列は、配列番号5、17、33、41、53、61、69、81および89およびその保存的修飾、例えば、1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4または1〜5保存的アミノ酸置換のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;そして軽鎖可変領域CDR1配列は、配列番号9、13、21、25、29、37、45、49、57、65、73、77、85および93およびその保存的修飾、例えば、1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4または1〜5保存的アミノ酸置換のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0311】
種々の態様において、抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0312】
保存的アミノ酸置換は、抗体のCDR以外の部分またはCDRに加えて他の部分にも実施されてよい。例えば、保存的アミノ酸修飾は、フレームワーク領域または定常領域、例えば、Fc領域で実施されてよい。ここに記載する置換のいずれも保存的置換であり得る。可変領域または重鎖または軽鎖は、ここに提供する抗CD73抗体配列と比較して、1、2、3、4、5、1〜2、1〜3、1〜4、1〜5、1〜10、1〜15、1〜20、1〜25または1〜50保存的アミノ酸置換を含み得る。ある態様において、抗CD73抗体は、保存的および非保存的アミノ酸修飾の組み合わせを含む。
【0313】
VI. ここに記載する抗体とCD73上の同一エピトープに結合するまたはCD73の結合について競合する抗体
また提供されるのは、特定のここに記載する抗CD73抗体(例えば、抗体CD73.4、CD73.3、11F11、4C3、4D4、10D2、11A6、24H2、5F8、6E11および7A11)とCD73の結合について競合する抗体である。このような競合抗体は、標準CD73結合アッセイにおいてモノクローナル抗体11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11、7A11および/またはCD73.3またはCD73.4(これらの抗体についてここに記載したあらゆる定常領域および軽鎖を有する)の1以上のCD73の結合について競合的に阻害する能力に基づき、同定され得る。例えば、組み換えヒトCD73タンパク質をプレートに固定し、種々の濃度の非標識第一抗体を添加し、プレートを洗浄し、標識第二抗体を添加し、洗浄し、結合標識の量を測定する、標準ELISAアッセイまたは競合的ELISAアッセイを使用できる。非標識(第一)抗体(“遮断抗体”とも称する)の濃度の増加により、標識(第二)抗体の結合が阻害されるならば、第一抗体は、プレート上の標的への第二抗体の結合を阻害するまたは第二抗体の結合と競合すると言える。これに加えてまたはこれとは別に、BIACORE
(登録商標)SPR分析を、抗体が競合する能力の評価に使用できる。試験抗体がここに記載する抗CD73抗体のCD73への結合を阻害する能力は、試験抗体が、CD73への結合について該抗体と競合できることを示す。
【0314】
またここに提供されるのは、例えば、上の段落に記載したアッセイを使用するような、ELISAまたはFACSにより測定して、細胞、例えば、腫瘍細胞上のCD73へのここに記載する抗CD73抗体の結合を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%阻害する抗CD73抗体および/またはその細胞、例えば、腫瘍細胞上のCD73への結合が少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%阻害される抗CD73抗体である。
【0315】
ここに記載する抗CD73抗体と結合について競合する抗体を、当分野で知られる方法を使用して同定できる。例えば、マウスをここに記載するヒトCD73で免疫化し、ハイブリドーマを産生し、得られたモノクローナル抗体を、CD73への結合についてここに記載する抗体と競合する能力をスクリーニングし得る。また、マウスを、抗体が結合するエピトープを含むCD73の小フラグメントで免疫化し得る。エピトープまたはエピトープを含む領域を、例えば、CD73にわたる一連の重複ペプチドへの結合についてスクリーニングすることにより、同定できる。あるいは、Jespers et al., Biotechnology 12:899, 1994の方法を、ここに記載する抗CD73抗体と同一エピトープを、それゆえに類似性質を有する抗体を選択する手引きとして使用し得る。ファージディスプレイを使用して、まず、抗CD73抗体の重鎖を、(好ましくはヒト)軽鎖のレパートリーと対形成させてCD73結合抗体を選択し、次いで新規軽鎖を、(好ましくはヒト)重鎖のレパートリーと対形成させて、ここに記載する抗CD73抗体と同一エピトープまたはエピトープ領域を有する(好ましくはヒト)CD73結合抗体を選択する。あるいはここに記載する抗体のバリアントを、抗体の重鎖および軽鎖をコードするcDNAの変異誘発により得ることができる。
【0316】
ここに記載する抗体と“CD73上の同一エピトープ”に結合する抗体を決定する技術は、例えば、エピトープの原子分解を提供する抗原:抗体複合体の結晶のx線分析のような、エピトープマッピング法を含む。他の方法は、抗体の抗原フラグメントまたは抗原の変異された変種への結合をモニターし、ここで、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾による結合の喪失は、しばしば、エピトープ構成成分の指標と考えられる。さらに、コンピューターによるエピトープマッピングのためのコンビナトリアル法も使用できる。方法は、また、目的の抗体が、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから、特異的短ペプチド(天然三次元形態または変性形態のいずれか)を親和性単離する能力も利用し得る。こうしてペプチドは、ペプチドライブラリーのスクリーニングに使用する抗体に対応するエピトープの定義のためのリードとして考慮される。エピトープマッピングについて、立体構造的不連続エピトープのマップを示しているコンピューターによるアルゴリズムも開発されている。
【0317】
Cunningham and Wells (1989) Science 244: 1081-1085により記載されるアラニンスキャニング変異誘発またはCD73におけるアミノ酸残基の点変異誘発のある他の形態も抗CD73抗体の機能的エピトープの決定に使用できる。しかしながら、変異誘発試験は、CD73の全体的3次元構造には重要であるが、抗体−抗原接触に直接的は関与していないアミノ酸残基も露出させることがあり、それゆえに、この方法を使用して決定した機能的エピトープの確認に、他の方法が必要である可能性がある。
【0318】
特定の抗体により結合されるエピトープまたはエピトープ領域(“エピトープ領域”はエピトープを含むまたはエピトープと重複する領域である)はまたCD73のフラグメント、例えば、非変性または変性フラグメントを含むペプチドへの抗体の結合によっても決定し得る。CD73(例えば、ヒトCD73)の配列を含む一連の重複ペプチドを合成し、例えば直接ELISA、競合的ELISA(ペプチドが、マイクロタイタープレートのウェルに結合したCD73への抗体の結合を阻止する能力を評価する)またはチップ上で、結合についてスクリーニングし得る。このようなペプチドスクリーニング法は、ある不連続機能的エピトープ、すなわちCD73ポリペプチド鎖の一次配列に添って隣接していないアミノ酸残基を含む機能的エピトープを検出することはできないことがあり得る。
【0319】
エピトープはまた水素/重水素交換マススペクトロメトリー(HDX−MS)およびタンパク質の急速光化学酸化(FPOP)のようなMSベースのタンパク質フットプリント法によっても同定され得る。HDX−MSは、例えば、実施例においておよびWei et al., (2014) Drug Discovery Today 19:95(その方法は、引用によりここに具体的に包含させる)にさらに記載されているように実施し得る。FPOPは、例えば、Hambley and Gross (2005) J. American Soc. Mass Spectrometry 16:2057(その方法は、引用によりここに具体的に包含させる)に記載されているように実施し得る。
【0320】
抗CD73抗体によるエピトープ結合はまた、CD73における不安定アミド水素の、遊離時および目的の抗体との複合体で結合時のH−D交換率のNMR決定を含む、X線結晶構造決定(例えば、WO2005/044853)、分子モデリングおよび核磁気共鳴(NMR)スペクトロスコピーのような構造的方法によっても決定し得る(Zinn-Justin et al., (1992) Biochemistry 31, 11335-11347; Zinn-Justin et al., (1993) Biochemistry 32, 6884-6891)。
【0321】
X線結晶学に関して、結晶化は、マイクロバッチ(例えばChayen (1997) Structure 5:1269-1274)、ハンギングドロップ蒸気拡散(例えばMcPherson (1976) J. Biol. Chem. 251:6300-6303)、種晶添加および透析を含む、当分野で知られる方法のいずれかを使用して達成し得る(例えばGiege et al., (1994) Acta Crystallogr. D50:339-350; McPherson (1990) Eur. J. Biochem. 189:1-23)。少なくとも約1mg/mL、好ましくは約10mg/mL〜約20mg/mLの濃度を有するタンパク質調製物の使用が望ましい。結晶化は、約10%〜約30%(w/v)の濃度範囲で、ポリエチレングリコール1000〜20,000(PEG;約1000〜約20,000Da範囲の平均分子量)、好ましくは約5000〜約7000Da、より好ましくは約6000Daを含む沈殿剤溶液を用いて最良に達成され得る。タンパク質安定化剤、例えばグリセロールを、約0.5%〜約20%の濃度範囲で含むことが望ましいこともある。塩化ナトリウム、塩化リチウムまたはクエン酸ナトリウムのような適当な塩も、沈殿剤溶液に望ましいことがあり、好ましくは約1mM〜約1000mMの濃度である。沈殿剤は、好ましくは約3.0〜約5.0、好ましくは約4.0のpHに緩衝化される。沈殿剤溶液において有用な特定の緩衝液は変わり得て、当分野で周知である(Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Third ed., (1994) Springer-Verlag, New York)。有用な緩衝液の例は、HEPES、Tris、MESおよび酢酸を含むが、これらに限定されない。結晶は、2℃、4℃、8℃および26℃を含む広範な温度で成長し得る。
【0322】
抗体:抗原結晶は、周知のX線回折技術を使用して検討でき、X−PLOR(Yale University, 1992, distributed by Molecular Simulations, Inc.;例えばBlundell & Johnson (1985) Meth. Enzymol. 114 & 115, H. W. Wyckoff et al., eds., Academic Press;米国特許出願公開2004/0014194参照)およびBUSTER(Bricogne(1993) Acta Cryst, D49:37-60; Bricogne (1997) Meth. Enzymol. 276A:361-423, Carter & Sweet, eds.; Roversi et al., (2000) Acta Cryst, D56:1313-1323)のようなコンピュータソフトウェアを使用して緻密化でる。これら文献の記載を引用によりその全体を本明細書に包含させる。
【0323】
抗CD73抗体は、ここに記載する技術、すなわちエピトープマッピング技術により、ここに記載するアミノ酸配列を有する抗CD73抗体のいずれかと同一エピトープに結合できることが確認できる。抗CD73抗体はまたヒトCD73と類似する相互作用も有しており、例えば、表30に示す相互作用の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%以上を有することがX線結晶学で確認できる。
【0324】
VII. 改変および修飾抗体
V
HおよびV
L領域
また提供されるのは、修飾抗体を作製するための出発物質としてここに開示するV
HおよびV
L配列の1以上を有する抗体を使用して製造できる、改変され、修飾された抗体であり、この修飾抗体は、出発抗体とは異なる性質を有し得る。抗体は、一方または両方の可変領域内(すなわち、V
Hおよび/またはV
L)、例えば1以上のCDR領域内および/または1以上のフレームワーク領域内の1以上の残基の修飾により改変され得る。これに加えてまたはこれとは別に、抗体は、例えば、抗体のエフェクター機能を改変するために、定常領域内の残基の修飾により改変され得る。
【0325】
実施し得る可変領域エンジニアリングの1タイプは、CDR移植である。抗体は、主に6重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも、抗体毎に多様性に富む。CDR配列が大部分の抗体−抗原相互作用を担うため、異なる性質を有する異なる抗体からのフレームワーク配列に移植された特定の参照抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の参照抗体の性質を模倣する組み換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann, L. et al., (1998) Nature
332:323-327; Jones, P. et al., (1986) Nature
321:522-525; Queen, C. et al., (1989) Proc. Natl. Acad. See, U.S.A,
86:10029-10033;米国特許5,225,539(Winter)および米国特許5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370(Queen et al.)参照)。
【0326】
したがって、ここに記載する他の態様は、それぞれ配列番号5、17、33、41、53、61、69、81および89、配列番号6、18、34、42、54、62、70、82および90ならびに配列番号7、19、35、43、55、63、71、83および91からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域と、それぞれ配列番号9、13、21、25、29、37、45、49、57、65、73、77、85および93、配列番号10、14、22、26、30、38、46、50、58、66、74、78、86および94ならびに配列番号11、15、23、27、31、39、47、51、59、67、75、79、87および95からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関する。それゆえに、このような抗体は、モノクローナル抗体CD73.4−1、CD73.4−2、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および7A11のV
HおよびV
L CDR配列を含み、さらにこれらの抗体の異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0327】
このようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公的DNAデータベースまたは公開された参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子に関する生殖系列DNA配列は、“VBase”ヒト生殖系列配列データベース(www.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseでインターネット上で入手可能)ならびにKabat, E. A., et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al., (1992) “The Repertoire of Human Germline V
H Sequences Reveals about Fifty Groups of V
H Segments with Different Hypervariable Loops” J. Mol. Biol.
227:776-798; およびCox, J, P, L, et al., (1994) “A Directory of Human Germ-line V
H Segments Reveals a Strong Bias in their Usage” Eur. J. Immunol.
24:827-836に見ることができ;この各々の内容は、引用により明示的に本明細書に包含させる。
【0328】
ここに記載する抗体で使用するための好ましいフレームワーク配列は、ここに記載する抗体により使用されるフレームワーク配列と構造的に類似するものである。V
H CDR1、2および3配列およびV
L CDR1、2および3配列を、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子に見られるのと同一配列を有するフレームワーク領域に移植できまたはCDR配列を、生殖系列配列と比較して20までの、好ましくは保存的な、アミノ酸置換を含むフレームワーク領域に移植できる。例えば、ある例において、抗体の抗原結合能を維持または増強するために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが判明している(例えば、米国特許5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370(Queen et al.)参照)。
【0329】
ここに記載する改変抗体は、例えば、抗体の性質を改善するために、V
Hおよび/またはV
L内のフレームワーク残基に修飾がなされているものを含む。一般に、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性の低減のために行う。例えば、一つの試みは、1以上のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列に“復帰変異”させることである。より具体的に、体細胞性変異を受けている抗体は、抗体が由来した生殖系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、抗体フレームワーク配列と、抗体が由来した生殖系列配列を比較することにより同定できる。フレームワーク領域配列を生殖系列配置に戻すことにより、体細胞性変異は、例えば、部位特異的変異誘発またはPCR介在変異誘発により、生殖系列配列に“復帰変異”される。このような“復帰変異”抗体も、包含されると意図される。
【0330】
他のタイプのフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それゆえに抗体の可能性のある免疫原性を軽減するために、フレームワーク領域または1以上のCDR領域内内の1以上の残基を変異することを含む。この試みは、“脱免疫化”とも称され、米国特許公報20030153043(Carr et al.)に詳細に記載されている。
【0331】
他のタイプの可変領域修飾は、目的の抗体の1以上の結合性(例えば、親和性)を改善するための、CDR領域内のアミノ酸残基の変異である。部位特異的変異誘発またはPCR介在変異誘発を、変異の導入に使用でき、抗体結合または他の目的の機能的性質に対する効果を、実施例に提供するようなインビトロまたはインビボアッセイで評価できる。好ましくは保存的修飾(上記のとおり)を導入する。変異は、アミノ酸付加でも、欠失でも、好ましくは置換でもよい。さらに、一般にCDR領域内は、1個、2個、3個、4個または5個を超える残基を改変させない。
【0332】
したがって、また提供されるのは、(a)配列番号5、17、33、41、53、61、69、81および89からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号5、17、33、41、53、61、69、81および89と比較して、1、2、3、4または5アミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
H CDR1領域;(b)配列番号6、18、34、42、54、62、70、82および90からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号6、18、34、42、54、62、70、82および90と比較して、1、2、3、4または5アミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
H CDR2領域;(c)配列番号7、19、35、43、55、63、71、83および91からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号7、19、35、43、55、63、71、83および91と比較して、1、2、3、4または5アミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
H CDR3領域;(d)配列番号9、13、21、25、29、37、45、49、57、65、73、77、85および93からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号9、13、21、25、29、37、45、49、57、65、73、77、85および93と比較して、1、2、3、4または5アミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
L CDR1領域;(e)配列番号10、14、22、26、30、38、46、50、58、66、74、78、86および94からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号10、14、22、26、30、38、46、50、58、66、74、78、86および94と比較して、1、2、3、4または5アミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
L CDR2領域;および(f)配列番号11、15、23、27、31、39、47、51、59、67、75、79、87および95からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号11、15、23、27、31、39、47、51、59、67、75、79、87および95と比較して、1、2、3、4または5アミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
L CDR3領域を含む、重鎖可変領域を含む、単離抗CD73モノクローナル抗体またはその抗原結合部分である。
【0333】
抗体のCDRにおけるメチオニン残基は、酸化され、化学分解の可能性とその後の抗体の効力の低減が起こり得る。したがって、重鎖および/または軽鎖CDRにおける1以上のメチオニン残基が、酸化的分解を受けないアミノ酸残基で置換されている抗CD73抗体も提供される。
【0334】
同様に、特にCDRにおける、脱アミド化部位を抗CD73抗体から除き得る。
【0335】
抗原結合ドメイン内のグリコシル化の可能性のある部位は、好ましくは抗原結合を妨害し得るグリコシル化を阻止するために排除する。例えば、米国特許5,714,350参照。
【0336】
標的化抗原結合
種々の態様において、本発明の抗体を、抗原結合が有害であろう組織および環境における抗原結合を選択的に遮断するが、有益であろう場所で抗原結合を可能とするよう、修飾する。ある態様において、抗体の抗原結合表面に異的に結合し、抗原結合を妨害する遮断ペプチド“マスク”が産生され、このマスクを、ペプチダーゼ開裂可能リンカーにより抗体の結合アームの各々に連結させる。例えば、米国特許8,518,404(CytomX)参照。このような構築物は、非腫瘍組織と比較して腫瘍微小環境においてプロテアーゼレベルが高度に上昇している癌の処置に有用である。腫瘍微小環境における開裂可能リンカーの選択的開裂は、抗原結合が望まない副作用を起こす末梢組織ではなく、腫瘍において選択的にマスキング/遮断ペプチドを解離させ、抗原結合させる。
【0337】
あるいは、関連する態様において、(二価)抗体の両抗原結合表面に結合し、抗原結合を妨害する2個の抗原結合ドメインを含む二価結合化合物(“マスキングリガンド”)が開発され、こいおで、2個の結合ドメインマスクは、例えばペプチダーゼにより開裂可能な、開裂可能リンカーで互いに(抗体ではない)連結されている。例えば、国際特許出願公開WO2010/077643(Tegopharm Corp.)参照。マスキングリガンドは、抗体による結合が意図される抗原を含んでも、それ由来でもよくまたは独立して産生されてもよい。このようなマスキングリガンドは、非腫瘍組織と比較して、腫瘍微小環境においてプロテアーゼレベルが高度に上昇している癌の処置に有用である。腫瘍微小環境における開裂可能リンカーの選択的開裂は、2個の結合ドメインのお互いからの解離を可能にし、抗体の抗原結合表面に対するアビディティーを低減させる。マスキングリガンドの抗体からの結果的な解離は、抗原結合が望まない副作用を起こす末梢組織ではなく、腫瘍において選択的な抗原結合を可能とする。
【0338】
Fcおよび修飾Fc
抗原結合ドメインの抗原への結合に起因する治療抗体の活性(例えばアンタゴニスト抗体の場合同族リガンドもしくは受容体タンパク質のまたはアゴニスト抗体の場合誘発シグナル伝達の遮断)に加えて、抗体のFc部分は、多数の生物学的効果を惹起するために、一般に複雑な方法で免疫系と相互作用する。免疫グロブリンのFc領域は、抗原依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞食作用(ADCP)のようなエフェクター機能のような多くの重要な抗体機能を担い、機能の違いはあれど、標的細胞を殺す。
【0339】
抗CD73抗体は、ここに記載する抗体の可変ドメインと、意図する使用のために抗体の生物学的活性(もしあれば)に基づき選択した種々のFc領域を含む定常ドメインを含む。Salfeld (2007) Nat. Biotechnol. 25:1369。ヒトIgGは、例えば、4サブクラス、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に分類され、これらの各々が、Fcγ受容体(活性化受容体FcγRI(CD64)、FcγRIIA、FcγRIIC(CD32);FcγRIIIAおよびFcγRIIIB(CD16)および抑制性受容体FcγRIIB)の1以上との結合についておよび補体の第1成分(C1q)について独特のプロファイルを有するFc領域を含む。ヒトIgG1およびIgG3は、全Fcγ受容体に結合する;IgG2はFcγRIIA
H131に、および親和性は低いがFcγRIIA
R131 FcγRIIIA
V158に結合する;IgG4はFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIICおよびFcγRIIIA
V158に結合する;そして阻害性受容体FcγRIIBは、IgG1、IgG2およびIgG3に他の全Fcγ受容体より低い親和性を有する。Bruhns et al., (2009) Blood 113:3716。FcγRIがIgG2に結合せず、FcγRIIIBがIgG2またはIgG4に結合しないことを示す研究がある。Id。一般に、ADCC活性に関して、ヒトIgG1≧IgG3>>IgG4≧IgG2である。その結果、例えば、IgG2またはIgG4ではなく、IgG1定常ドメインが、ADCCが望まれるとき、薬物における使用のために選択されるはずである;FcγRIIIA発現NK細胞、単球またはマクロファージの活性化が望まれるならば、IgG3が選択されるはずである;そして抗体がアレルギー患者の脱感作に使用されるならば、IgG4が選択されるはずである。抗体が全エフェクター機能を欠くことが望ましいならば、IgG4がまた選択され得る。
【0340】
したがって、ここに記載する抗CD73可変領域は、Fc、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fcに連結(例えば、共有結合性に連結または融合)してよくく、これは、あらゆるアロタイプまたはイソアロタイプでよく、例えば、IgG1に関して、:G1m、G1m1(a)、G1m2(x)、G1m3(f)、G1m17(z);IgG2に関して:G2m、G2m23(n);IgG3に関して:G3m、G3m21(g1)、G3m28(g5)、G3m11(b0)、G3m5(b1)、G3m13(b3)、G3m14(b4)、G3m10(b5)、G3m15(s)、G3m16(t)、G3m6(c3)、G3m24(c5)、G3m26(u)、G3m27(v)であってよい(例えば、Jefferis et al., (2009) mAbs 1:1参照)。アロタイプの選択は、例えば抗薬物抗体の形成を最小とするための、可能性のある免疫原性の懸念により影響され得る。
【0341】
ここに記載する可変領域は、一般に、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合および/または抗体依存性細胞傷害のような、抗体の機能的性質の1以上を改変するための、1以上の修飾を含むFcに連結され得る。さらに、ここに記載する抗体は、化学的に修飾されてよく(例えば、1以上の化学基を抗体に結合できる)またはグリコシル化を変えるために修飾して、抗体の機能的性質の1以上を変えるために修飾してもよい。これらの態様の各々を下にさらに詳述する。Fc領域における残基のナンバリングは、KabatのEU指数のものである。ここに開示する配列バリアントは、所望によりその位置にに天然に存在する残基が前にあり、残基番号とその後の天然に存在するアミノ酸の代わりに置換されるアミノ酸を参照して提供される。複数アミノ酸がある位置に存在し得るならば、例えば配列が天然に存在するアイソタイプ間で異なるならばまたは複数の変異がその位置で置換され得るならば、スラッシュで分ける(例えば“X/Y/Z”)。
【0342】
例えば、親Fcと比較して、(a)増加したまたは低減した抗体依存性細胞介在細胞毒性(ADCC)、(b)増加したまたは低減した補体依存性細胞傷害(CDC)、(c)増加したまたは低減したC1qに対する親和性および/または(d)増加したまたは低減したFc受容体に対する親和性を有するFcバリアントを産生するために、Fc領域に修飾を付し得る。このようなFc領域バリアントは、一般にFc領域に少なくとも1アミノ酸修飾を含む。アミノ酸修飾組み合わせは、特に望ましいと考えられる。例えば、バリアントFc領域は、例えばここに同定する特定のFc領域位置の、2、3、4、5等の置換をその中に含む。例示的Fc配列バリアントはここに開示され、米国特許5,624,821;6,277,375;6,737,056;6,194,551;7,317,091;8,101,720;PCT特許公開WO00/42072;WO01/58957;WO04/016750;WO04/029207;WO04/035752;WO04/074455;WO04/099249;WO04/063351;WO05/070963;WO05/040217、WO05/092925およびWO06/020114に提供される。
【0343】
エフェクター機能低減
ADCC活性を、Fc領域の修飾により低減し得る。ある態様において、Fc受容体への結合に影響する部位、好ましくはサルベージ受容体結合部位以外の部位を除去してよい。他の態様において、Fc領域を修飾して、ADCC部位を除去し得る。ADCC部位は当分野で知られる;例えば、IgG1におけるADCC部位に関して、Sarmay et al., (1992) Molec. Immunol. 29 (5): 633-9参照。ある態様において、ヒトIgG1のG236RおよびL328Rバリアントは、効率的にFcγR結合を排除する。Horton et al., (2011) J. Immunol. 186:4223およびChu et al., (2008) Mol. Immunol. 45:3926。他の態様において、FcγRへの結合が低減したFcは、アミノ酸置換L234A、L235EおよびG237Aを含む。Gross et al., (2001) Immunity 15:289。
【0344】
CDC活性もまたFc領域の修飾により低減され得る。IgG1位置D270、K322、P329およびP331での変異、特にアラニン変異D270A、K322A、P329AおよびP331Aは、対応する抗体がC1qと結合し、補体を活性化する能力を顕著に低減させる。Idusogie et al., (2000) J. Immunol. 164:4178;WO99/51642。IgG1の331位の修飾(例えばP331S)は、補体結合を低減することが示されている。Tao et al., (1993) J. Exp. Med. 178:661およびCanfield &Morrison (1991) J. Exp. Med. 173:1483。他の例において、アミノ酸231〜239位内の1以上のアミノ酸残基を変え、それにより抗体が補体を固定する能力を低減する。WO94/29351。
【0345】
ある態様において、補体固定が低減したFcは、アミノ酸置換A330SおよびP331Sを有する。Gross et al., (2001) Immunity 15:289。
【0346】
エフェクター機能を完全に避けるべきであるとき、例えば抗原結合のみが、所望の治療利益を得るのみ十分であり、エフェクター機能は望まない副作用を誘発する(またはリスクを増やす)だけであるときの使用のために、IgG4抗体を使用してよくまたは抗体またはFc領域またはその実質的部分を欠くフラグメントを誘導体化できまたはFcを完全にグリコシル化を排除するように変異させ得る(例えばN297A)。あるいは、エフェクター機能を欠き、FcγRへの結合能を欠き(IgG2のように)、補体を活性化できない(IgG4のように)、ヒトIgG2(C
H1ドメインおよびヒンジ領域)およびヒトIgG4(C
H2およびC
H3ドメイン)のハイブリッド構築物が産生されている。Rother et al., (2007) Nat. Biotechnol. 25:1256。Mueller et al., (1997) Mol. Immunol. 34:441; Labrijn et al., (2008) Curr. Op. Immunol. 20:479もまた参照(一般にエフェクター機能を低減させるためのFc修飾が記載)。
【0347】
他の態様において、Fc領域を、少なくとも1アミノ酸残基を異なるアミノ酸残基に置換することにより置き換え、抗体の全エフェクター機能を低減する。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1以上のアミノ酸を、抗体のエフェクターリガンドに対する親和性が減少するが、親抗体の抗原結合能を保持するように、異なるアミノ酸残基で置き換え得る。親和性を変え得るエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体(残基234、235、236、237、297)または補体のC1構成成分(残基297、318、320、322)である。米国特許5,624,821および5,648,260(両者ともWinter et al.)。
【0348】
WO88/007089は、ADCCを低減するためのFcγRIへの結合を低減するため(234A;235E;236A;G237A)またはCDCを排除するための補体構成成分C1qへの結合を遮断するため(E318AまたはV/K320AおよびK322A/Q)のIgG Fc領域における修飾を提案している。Duncan & Winter (1988) Nature 332:563; Chappel et al., (1991) Proc. Nat'l Acad. Sci. (USA) 88:9036;およびSondermann et al., (2000) Nature 406:267を参照のこと(FcγRIII結合におけるこれらの変異の効果を記載)。
【0349】
エフェクター機能を低減するFc修飾は、234G、235G、236R、237K、267R、269R、325Lおよび328Rのような234位、235位、236位、237位、267位、269位、325位および328位での置換、挿入および欠失を含む。Fcバリアントは、236R/328Rを含み得る。FcyRおよび補体相互作用を低減するための他の修飾は、置換297A、234A、235A、237A、318A、228P、236E、268Q、309L、330S、331S、220S、226S、229S、238S、233Pおよび234Vを含む。これらおよび他の修飾は、Strohl (2009) Current Opinion in Biotechnology 20:685-691にレビューされている。IgG1におけるE233P、L234V、L235A、所望によりG236Δ、A327G、A330SおよびP331S;IgG4におけるE233P、F234V、L235A、所望によりG236Δ;およびIgG2におkるA330SおよびP331Sのような233〜236位および327〜331位の1以上のIgG残基の変異により、新生児FcR結合(半減期を維持)を維持しながら、エフェクター機能(ADCCおよび補体活性化の両者)を低減できる。Armour et al., (1999) Eur. J. Immunol. 29:2613;WO99/58572参照。エフェクター機能を低減させる他の変異は、IgG1におけるL234AおよびL235A(Alegre et al., (1994) Transplantation 57:1537);IgG2におけるV234AおよびG237A(Cole et al., (1997) J. Immunol. 159:3613;米国特許5,834,597も参照);およびIgG4のS228PおよびL235E(Reddy et al., (2000) J. Immunol. 164:1925)を含む。ヒトIgG1におけるエフェクター機能を低減するための変異の他の組み合わせは、L234F、L235EおよびP331Sを含む。Oganesyan et al., (2008) Acta Crystallogr. D. Biol. Crystallogr. 64:700。一般にLabrijn et al., (2008) Curr. Op. Immunol. 20:479参照。Fc(IgG1)融合タンパク質(アバタセプト)においてエフェクター機能を低減することが判明したさらなる変異は、C226S、C229SおよびP238Sである(EU残基ナンバリング)。Davis et al., (2007) J. Immunol. 34:2204。
【0350】
ADCCおよび/またはCDCが低減した他のFcバリアントは、Glaesner et al., (2010) Diabetes Metab. Res. Rev. 26:287(ADCCおよびADCPを低減するためのIgG4におけるF234AおよびL235A);Hutchins et al., (1995) Proc. Nat'l Acad. Sci, (USA) 92:11980(IgG4におけるF234A、G237AおよびE318A);An et al., (2009) MAbs 1:572および米国特許出願公開2007/0148167(IgG2におけるH268Q、V309L、A330SおよびP331S);McEarchern et al., (2007) Blood 109:1185(IgG1におけるC226S、C229S、E233P、L234V、L235A);Vafa et al., (2014) Methods 65:114(IgG2におけるV234V、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、P331S)に開示されている。
【0351】
ある態様において、本質的にエフェクター機能を有しない、すなわち、FcγRへの結合が減少し、かつ補体固定が減少したFcを選択する。エフェクターレスであるFc、例えば、IgG1 Fcの例は、次の5変異を含む:L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331S。Gross et al., (2001) Immunity 15:289。これらの変異wお含む重鎖の例は、表35に詳述するように、配列表に示す。これらの5置換をN297Aと組み合わせて、同様にグリコシル化を排除し得る。
【0352】
エフェクター機能増強
あるいは、ADCC活性を、Fc領域の修飾により増強させ得る。ADCC活性に関して、ヒトIgG1≧IgG3>>IgG4≧IgG2であり、ゆえにIgG2またはIgG4ではなく、IgG1定常ドメインを、ADCCが望ましいときの薬物における使用に選択すべきである。あるいは、次の位置の1以上のアミノ酸の修飾によりFc領域を修飾して、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を増加および/またはFcγ受容体に対する親和性を増加し得る:234、235、236、238、239、240、241、243、244、245、247、248、249、252、254、255、256、258、262、263、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、299、301、303、305、307、309、312、313、315、320、322、324、325、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、433、434、435、436、437、438または439。WO2012/142515参照;またWO00/42072参照。置換の例は、236A、239D、239E、268D、267E、268E、268F、324T、332Dおよび332Eを含む。バリアントの例は、239D/332E、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324Tおよび267E/268F/324Tを含む。例えば、所望によりI332Eと組み合わせ得るG236Aバリアントを含むヒトIgG1Fcは、FcγIIA/FcγIIB結合親和性比の約15倍の増加を示す。Richards et al., (2008) Mol. Cancer Therap. 7:2517; Moore et al., (2010) mAbs 2:181。FcyRおよび補体相互作用を増強する他の修飾は、置換298A、333A、334A、326A、247I、339D、339Q、280H、290S、298D、298V、243L、292P、300L、396L、305Iおよび396Lを含むが、これらに限定されない。これらおよび他の修飾は、Strohl (2009) Current Opinion in Biotechnology 20:685-691にレビューされている。特に、ADCCおよびCDCの両者を、IgG1のE333位の変化、例えばE333Aにより増強し得る。Shields et al., (2001) J. Biol. Chem. 276:6591。IgG1におけるエフェクター機能を増強するためのP247IおよびA339D/Q変異の使用はWO2006/020114に開示され、D280H、K290S±S298D/VはWO2004/074455。K326A/Wに記載され、ヒトIgG1におけるE333A/Sバリアント、IgG2におけるE333Sは、エフェクター機能を増加することが示されている。Idusogie et al., (2001) J. Immunol. 166:2571。
【0353】
特に、FcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対するヒトIgG1の結合部位はマッピングされており、結合が改善したバリアントが記載されている。Shields et al., (2001) J. Biol. Chem.
276:6591-6604。256位、290位、298位、333位、334位および339位での特異的変異は、組み合わせ変異体T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334Aを含むFcγRIIIへの結合を改善することが示されている(増強されたFcγRIIIa結合およびADCC活性を有する)。FcγRIIIaへの結合が強く増強された他のIgG1バリアントが同定されており、FcγRIIIaへの親和性における最大増加、FcγRIIb結合減少およびカニクイザルサルにおける強力な細胞毒性活性を示す、S239D/I332EおよびS239D/I332E/A330L変異を有するバリアントを含む。Lazar et al.(2006) Proc. Nat'l Acad Sci. (USA) 103:4005; Awan et al., (2010) Blood 115:1204; Desjarlais & Lazar (2011) Exp. Cell Res. 317:1278。アレムツズマブ(CD52特異的)、トラスツズマブ(HER2/neu特異的)、リツキシマブ(CD20特異的)およびセツキシマブ(EGFR特異的)のような抗体への三重変異導入は、インビトロでのADCC活性の高度な増強に置き換えられ、S239D/I332Eバリアントは、サルにおけるB細胞を枯渇する能力の増強を示した。Lazar et al. (2006) Proc. Nat'l Acad Sci. (USA) 103:4005。さらに、B細胞悪性腫瘍および乳癌のモデルにおけるヒトFcγRIIIaを発現するトランスジェニックマウスにおいて、FcγRIIIaへの結合増強と同時にADCC活性増強を示す、L235V、F243L、R292P、Y300L、V305IおよびP396L変異を含むIgG1変異体が同定されている。Stavenhagen et al., (2007) Cancer Res. 67:8882;米国特許8,652,466;Nordstrom et al., (2011) Breast Cancer Res. 13:R123。
【0354】
種々のIgGアイソタイプは、区別的なCDC活性(IgG3>IgG1>>IgG2≒IgG4)を示す。Dangl et al., (1988) EMBO J. 7:1989。CDCの増強が望ましい使用について、C1qへの結合を増加する変異の導入も可能である。補体を補充する能力(CDC)は、IgG2におけるK326W(ADCC活性を低減させる)およびE333SのようなK326および/またはE333の変異により増強でき、補体カスケードの第1成分であるC1qへの結合を増加させる。Idusogie et al., (2001) J. Immunol. 166:2571。S267E/H268F/S324T(単独でまたは任意の組み合わせで)のヒトIgG1への導入は、C1q結合を増強させる。Moore et al., (2010) mAbs 2:181。Natsume et al., (2008) Cancer Res. 68:3863IgG1/IgG3ハイブリッドアイソタイプ抗体“113F”のFc領域(その中の
図1)もCDCの増強を提供する。Michaelsen et al., (2009) Scand. J. Immunol. 70:553およびRedpath et al., (1998) Immunology 93:595も参照のこと。
【0355】
eエフェクター機能を増強または低減し得るさらなる変異は、Dall'Acqua et al., (2006) J. Immunol. 177:1129に開示されている。Carter (2006) Nat. Rev. Immunol. 6:343; Presta (2008) Curr. Op. Immunol. 20:460も参照のこと。
【0356】
阻害性受容体FcyRIIbへの親和性を増強するFcバリアントも、例えばアポトーシス誘発またはアジュバント活性の増強のために、使用できる。Li & Ravetch (2011) Science 333:1030; Li & Ravetch (2012) Proc. Nat'l Acad. Sci (USA) 109:10966;米国特許出願公開2014/0010812。このようなバリアントは、例えばB細胞および単球を含む、FcyRllb
+細胞と関係する免疫調節性活性を有する抗体を提供し得る。ある態様において、Fcバリアントは、1以上の活性化受容体に比して、FcyRllbへの親和性の選択的増強を提供する。FcyRllbへの結合改変のための修飾は、EU指数により234、235、236、237、239、266、267、268、325、326、327、328および332からなる群から選択される位置での1以上の修飾を含む。FcyRllb親和性増強のための置換の例は、234D、234E、234F、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Yおよび332Eを含むが、これらに限定されない。置換の例は、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328Wおよび328Yを含む。FcyRllbへの結合を増強するための他のFcバリアントは、235Y/267E、236D/267E、239D/268D、239D/267E、267E/268D、267E/268Eおよび267E/328Fを含む。特に、ヒトIgG1のS267E+L328Fダブルバリアントを含むS267E、G236D、S239D、L328FおよびI332Eバリアントは、阻害性FcyRllb受容体への親和性の特異的増強に特に価値がある。Chu et al., (2008) Mol. Immunol. 45:3926;米国特許出願公開2006/024298;WO2012/087928。FcγRIIbへの増強された特異性(FcγRIIa
R131と区別して)は、P238D置換の付加により得ることができる。Mimoto et al., (2013) Protein. Eng. Des. & Selection 26:589;WO2012/115241。
【0357】
ある態様において、抗体を修飾して、その生物学的半減期を延長させる。種々の試みが可能である。例えば、これは、Fc領域のFcRnへの結合親和性を高めることにより行い得る。ある態様において、米国特許5,869,046および6,121,022(Presta et al.)に記載のように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2ループから採ったサルベージ受容体結合エピトープを含むように、抗体をCH1またはCL領域内で改変する。FcRnへの結合が増加したおよび/または薬物動態性質が改善した他のFcバリアント例は、例えば259I、308F、428L、428M、434S、434H、434F、434Yおよび434Mを含む、259位、308位および434位の置換を含む。FcRnへのFc結合が増加した他のバリアントは、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al., 2004, J. Biol. Chem. 279(8): 6213-6216, Hinton et al., 2006 Journal of Immunology 176:346-356)、256A、272A、305A、307A、311A、312A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al., Journal of Biological Chemistry, 2001, 276(9):6591-6604)、252F、252Y、252W、254T、256Q、256E、256D、433R、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H(Dall Acqua et al., Journal of Immunology, 2002, 169:5171-5180, Dall'Acqua et al., 2006, Journal of Biological Chemistry 281:23514-23524)を含む。米国特許8,367,805参照。
【0358】
N434Aバリアント(Yeung et al., (2009) J. Immunol. 182:7663)のような、IgG Fcにおけるある保存的残基(I253/H310/Q311/H433/N434)の修飾が、FcRn親和性を増加し、そうして循環における抗体半減期を延長する手段として提案されている。WO98/023289。M428LおよびN434Sを含む組み合わせFcバリアントは、最大5倍のFcRn結合増加および血清半減期延長が示されている。Zalevsky et al., (2010) Nat. Biotechnol. 28:157。T307A、E380AおよびN434A修飾を含む組み合わせFcバリアントも、IgG1抗体の半減期が延長する。Petkova et al., (2006) Int. Immunol. 18:1759。さらに、M252Y/M428L、M428L/N434H、M428L/N434F、M428L/N434Y、M428L/N434A、M428L/N434MおよびM428L/N434Sバリアントを含む組み合わせFcバリアントの半減期を延長することが示されている。WO2009/086320。
【0359】
さらに、M252Y、S254TおよびT256Eを含む組み合わせFcバリアントは、半減期を延長する − 約4倍。Dall'Acqua et al., (2006) J. Biol. Chem. 281:23514。FcRn親和性を増加させるが、pH依存性は低減する関連IgG1修飾(M252Y/S254T/T256E/H433K/N434F)が、FcRnへの他の抗体のt結合を阻止するためのコンペティターとして使用するIgG1構築物(“MST−HN Abdeg”)の創出に使用されており、内在性IgG(例えば自己免疫性増強)または他の外来性(治療)mAbのいずれかにおいて当該他の抗体のクリアランスの増加を生じる。Vaccaro et al., (2005) Nat. Biotechnol. 23:1283;WO2006/130834。
【0360】
FcRn結合を増加させる他の修飾は、Yeung et al., (2010) J. Immunol. 182:7663-7671;6,277,375;6,821,505;WO97/34631;WO2002/060919に記載されている。
【0361】
ある態様において、ハイブリッドIgGアイソタイプを使用してFcRn結合を増加させ、おそらく半減期を延長させ得る。例えば、IgG1/IgG3ハイブリッドバリアントを、CH2および/またはCH3領域におけるIgG1位置を、IgG3からのアミノ酸で、これら2アイソタイプが異なる位置において置き換えることにより、構築し得る。それゆえに、1以上の置換、例えば、274Q、276K、300F、339T、356E、358M、384S、392N、397M、422I、435Rおよび436Fを含むハイブリッドバリアントIgG抗体を構築し得る。ここに記載する他の態様において、IgG1/IgG2ハイブリッドバリアントを、CH2および/またはCH3領域におけるIgG2位置を、IgG1からのアミノ酸で、これら2アイソタイプが異なる位置において置き換えることにより、構築し得る。それゆえに、1以上の置換、例えば、次のアミノ酸置換233E、234L、235L、−236G(236位へのグリシン挿入をいう)および327Aの1以上を含むハイブリッドバリアントIgG抗体を構築し得る。米国特許8,629,113参照。意図的に血清半減期延長および発現改善がされたIgG1/IgG2/IgG4配列のハイブリッドが産生されている。米国特許7,867,491(その中の配列番号18)。
【0362】
本発明の抗体の血清半減期はまたペグ化により延長できる。抗体をペグ化して、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を延長できる。抗体をペグ化するために、抗体またはそのフラグメントを、一般にポリエチレングリコール(PEG)試薬、例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と、1以上のPEG基が抗体または抗体フラグメントと結合するようになる条件下で反応させる。好ましくは、ペグ化を反応性PEG分子(または類似反応性水可溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応により実施する。ここで使用する用語“ポリエチレングリコール”は、モノ(C1−C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドのような他のタンパク質の誘導体化に使用されているPEGのあらゆる形態を含むことを意図する。ある態様において、ペグ化する抗体はグリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化する方法は当分野で知られ、ここに記載する抗体に適用できる。例えば、EP0154316(Nishimura et al.)およびEP0401384(Ishikawa et al.)参照。
【0363】
あるいは、ある状況下では、本発明の抗体の半減期を、延長させるのではなく、短縮することが望ましいことがある。ヒトIgG1のFcにおけるI253A(Hornick et al., (2000) J. Nucl. Med. 41:355)およびH435A/R I253AまたはH310A(Kim et al., (2000) Eur. J. Immunol. 29:2819)のような修飾は、医療造影のような迅速なクリアランスが好ましい状況において使用するために、FcRn結合を低減し、それゆえに半減期を延長し得る(クリアランス増加)。Kenanova et al., (2005) Cancer Res. 65:622もまた参照。クリアランスを増強する他の手段は、FabフラグメントのようなFcRnを結合する能力を欠く抗体フラグメントとして、本発明の抗原結合ドメインを形成することを含む。このような修飾は、抗体の循環半減期を、数週間からほんの数時間に減少できる。次いで、抗体フラグメントの選択的ペグ化を使用して、必要に応じて、抗体フラグメントの半減期を微調整(延長)できる。Chapman et al., (1999) Nat. Biotechnol. 17:780。抗体フラグメントをまた半減期を延長させるために、例えば、融合タンパク質構築物において、ヒト血清アルブミンと融合させ得る。Yeh et al., (1992) Proc. Nat'l Acad. Sci. 89:1904。あるいは、二特異性抗体を、本発明の第一抗原結合ドメインおよびヒト血清アルブミン(HSA)に結合する第二抗原結合ドメインで構築し得る。国際特許出願公開WO2009/127691およびその中に引用された特許参考文献参照。あるいは、特殊化されたポリペプチド配列、例えば“XTEN”ポリペプチド配列を抗体フラグメントに付加して、半減期を延長できる。Schellenberger et al., (2009) Nat. Biotechnol. 27:1186;国際特許出願公開WO2010/091122。
【0364】
さらなるFcバリアント
IgG4定常ドメインを使用するとき、置換228Pを包含させることが通常好ましく、これは、IgG1におけるヒンジ配列を模倣し、それゆえに、IgG4分子を安定化し、例えば治療抗体と処置患者における内在性IgG4の間のFabアーム交換を減少させる。Labrijn et al., (2009) Nat. Biotechnol. 27:767; Reddy et al., (2000) J. Immunol. 164:1925。
【0365】
IgG1構築物のヒンジにおけるプロテアーゼ開裂部位の可能性を、D221GおよびK222S修飾により排除し、抗体の安定性を増加させ得る。WO2014/043344。
【0366】
Fcバリアントのそのリガンド(Fc受容体)に対する親和性および結合性質を、平衡方法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA))または動態(例えば、BIACORE
(登録商標)SPR分析)および間接的結合アッセイ、競合的阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)のような他の方法を含むが、これらに限定されない、当分野で知られる多様なインビトロアッセイ法(生化学的または免疫学的ベースのアッセイ)により決定できる。これらおよび他の方法は、試験する構成成分の1以上の標識および/または発色標識、蛍光標識、発光標識または同位体標識を含むが、これらに限定されない多様な検出方法を用いることができる。結合親和性および動態の詳細な記載は、抗体−免疫原相互作用に焦点を絞る、Paul, W. E., ed., Fundamental Immunology, 4th Ed., Lippincott-Raven, Philadelphia (1999)に見ることができる。
【0367】
さらに他の態様において、抗体のグリコシル化を、エフェクター機能の増強または低減のために修飾する。例えば、297位の保存的アスパラギン残基の変異(例えばN297A)により、全エフェクター機能を欠き、ゆえに、補体およびFcγRI結合が消失された非グリコシル化抗体を製造できる。Bolt et al., (1993) Eur. J. Immunol. 23:403。Tao & Morrison (1989) J. Immunol. 143:2595も参照(297位のグリコシル化排除のためにIgG1におけるN297Q使用)。
【0368】
非グリコシル化抗体は、一般にエフェクター機能を欠くが、その機能を保持させる変異が導入できる。非グリコシル化抗体、例えばN297A/C/D/またはH変異由来またはタンパク質をグリコシル化しないシステム(例えば大腸菌)で産生させたものを、さらに変異、例えばS298Gおよび/またはT299A/G/またはH(WO2009/079242)またはE382VおよびM428I(Jung et al., (2010) Proc. Nat'l Acad. Sci (USA) 107:604)させて、FcγR結合を保持し得る。
【0369】
さらに、ADCCが増強された抗体は、グリコシル化の改変により製造できる。例えば、重鎖Asn297結合オリゴ糖からのフコース除去は、FcγRIIIaへの結合の改善に基づき、ADCCを増強することが示されている。Shields et al., (2002) JBC 277:26733; Niwa et al., (2005) J. Immunol. Methods 306: 151; Cardarelli et al., (2009) Clin. Cancer Res. 15:3376 (MDX-1401); Cardarelli et al., (2010) Cancer Immunol. Immunotherap. 59:257 (MDX-1342)。このような低フコース抗体は、例えば、フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)を欠くノックアウトチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞Yamane-Ohnuki et al., (2004) Biotechnol. Bioeng. 87:614)またはフコシル化抗体を産生する他の細胞で産生され得る(例えば、Zhang et al., (2011) mAbs 3:289およびLi et al., (2006) Nat. Biotechnol. 24:210(両者とも糖改変ピキア・パストリスにおける抗体産生を記載する);Mossner et al., (2010) Blood 115:4393; Shields et al., (2002) J. Biol. Chem. 277:26733; Shinkawa et al., (2003) J. Biol. Chem. 278:3466;EP1176195B1。ADCCはまた、PCT公開WO03/035835に記載のように増強でき、これは、同様に宿主細胞で発現される抗体の低フコシル化をもたらす、フコースのAsn(297)結合炭水化物への結合能が減少したバリアントCHO細胞株、Lec13を使用する(Shields, R.L. et al., (2002) J. Biol. Chem.
277:26733-26740も参照)。あるいは、フコースアナログを、抗体の炭水化物へのフコース取り込みを阻害するために、抗体産生中培養培地に添加し得る。WO2009/135181。
【0370】
抗体結合オリゴ糖における二分したGlcNac構造の増加も、ADCCを増強させる。PCT公開WO99/54342(Umana et al.)は、改変細胞株で発現された抗体が、抗体のADCC活性を増加させる二分したGlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように改変した細胞株を記載する(Umana et al., (1999) Nat. Biotech.
17:176-180も参照)。
【0371】
ADCCおよびADCPの増強を示すがCDCは減少されるガラクトース、シアル酸、フコースおよびキシロース残基を欠く(いわゆるGNGN糖形態)、ならびにADCC、ADCPおよびCDCの増強を示すシアル酸、フコースおよびキシロースを欠くその他(いわゆるG1/G2糖形態)、さらなるグリコシル化バリアントが開発されている。米国特許出願公開2013/0149300。これらのグリコシル化パターンを有する抗体は、内在性キシロシルおよびフコシルトランスフェラーゼ遺伝子がノックアウトされている、遺伝子修飾されたベンサミアナタバコ植物において最適に産生される。
【0372】
糖エンジニアリングを使用して、Fc領域のAsn297に結合した炭水化物鎖のα2,6シアリル含量の変化により、IgG構築物の抗炎症性性質も修飾でき、ここで、α2,6シアル酸付加形態増加が抗炎症性効果増強に至る。Nimmerjahn et al., (2008) Ann. Rev. Immunol. 26:513参照。逆に、α2,6シアル酸付加炭水化物を有する抗体の割合の減少が、抗炎症性性質が望まれない場合に有用であり得る。例えばα2,6シアル酸付加形態の選択的精製または酵素修飾により、抗体のα2,6シアル酸付加含量を修飾する方法が、米国特許出願公開2008/0206246に提供される。他の態様において、Fc領域のアミノ酸配列を修飾して、例えば、F241A修飾の導入により、α2,6シアル酸付加の効果を模倣し得る。WO2013/095966。
【0373】
VIII. 抗体物理的性質
ここに記載する抗体は、軽鎖または重鎖可変領域のいずれかに1以上のグリコシル化部位を含み得る。このようなグリコシル化部位は、抗原結合の改変により、抗体の免疫原性増加または抗体のpKの改変にいたり得る(Marshall et al (1972) Annu Rev Biochem 41:673-702; Gala and Morrison (2004) J. Immunol 172:5489-94; Wallick et al (1988) J Exp Med 168:1099-109; Spiro (2002) Glycobiology 12:43R-56R; Parekh et al (1985) Nature 316:452-7; Mimura et al., (2000) Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N−X−S/T配列を含むモチーフで生じることが知られている。ある状況において、可変領域グリコシル化を含まない抗CD73抗体を有することが好ましい。これは、可変領域にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択するか、グリコシル化領域内の残基を変異させることにより、達成できる。
【0374】
ある態様において、ここに記載する抗体は、アスパラギン異性部位を含まない。アスパラギンの脱アミド化はN−GまたはD−G配列で生じ得て、ポリペプチド鎖にねじれを導入し、安定性を低減し得るイソアスパラギン酸残基(イソアスパラギン酸効果)の創出に至り得る。例えば、アミノ酸配列Asp−Glyが抗体の重鎖および/または軽鎖CDR配列に存在するならば、配列を、異性化を受けないアミノ酸配列に置換する。ある態様において、抗体は、配列番号6に示すが、Asp−Gly配列
【化7】
[この文献は図面を表示できません]
におけるAspまたはGlyが、異性化を受けないアミノ酸配列、例えば、Asp−SerまたはSer−Gly配列に置き換えられている、重鎖可変領域CDR2配列を含む。
【0375】
各抗体は、独特の等電点(pI)を有し、これは、一般に6〜9.5のpH範囲に入る。IgG1抗体のpIは、一般に7〜9.5のpH範囲に入り、IgG4抗体のpIは、一般に6〜8のpH範囲に入る。正常範囲外のpIを有する抗体は、若干変性しており、インビボ条件下で不安定であり得ると推測される。それゆえに、正常範囲に入るpI値を含む抗CD73抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲のpIを有する抗体の選択または荷電表面残基の変異により達成される。
【0376】
各抗体は、特徴的融解温度を有し、高い融解温度は、インビボでの高い全体的安定性を示す(Krishnamurthy R and Manning M C (2002) Curr Pharm Biotechnol 3:361-71)。一般に、T
M1(最初の変性温度)が60℃より高いのが好ましく、好ましくは65℃より高い、よりさらに好ましくは70℃より高い。抗体の融点は、示差走査熱量測定(Chen et al (2003) Pharm Res 20:1952-60; Ghirlando et al (1999) Immunol Lett 68:47-52)または円二色性(Murray et al., (2002) J. Chromatogr Sci 40:343-9)を使用して、測定できる。
【0377】
好ましい態様において、急速に分解しない抗体を選択する。抗体の分解は、キャピラリー電気泳動(CE)およびMALDI−MSを使用して、測定できる(Alexander A JおよびHughes D E (1995) Anal Chem 67:3626-32)。
【0378】
他の好ましい態様において、最小凝集効果を有する抗体を選択し、凝集効果は、望まない免疫応答の惹起および/または改変されたまたは不都合な薬物動態性質に至り得る。一般に、25%以下、好ましくは20%以下、よりさらに好ましくは15%以下、よりさらに好ましくは10%以下およびよりさらに好ましくは5%以下の凝集の抗体が許容される。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および光散乱を含む、いくつかの技術により測定できる。
【0379】
IX. 抗体をエンジニアリングする方法
上記のように、ここに開示するV
HおよびV
L配列を有する抗CD73抗体を使用して、V
HおよびV
L配列またはそれに結合した定常領域の修飾により、新規抗CD73抗体を創出できる。それゆえに、ここに記載する他の面において、ここに記載する抗CD73抗体、例えばCD73.4、11F11、4C3、4D4、10D2、11A6、24H2、5F8、6E11および/または7A11の構造的特徴を使用して、ヒトCD73およびカニクイザルCD73への結合のような、ここに記載する抗体の機能的性質の少なくとも一つを保持する構造的に関連する抗CD73抗体を創出する。例えば、11F11、4C3、4D4、10D2、11A6、24H2、5F8、6E11および/または7A11の1以上のCDR領域またはその変異を、既知フレームワーク領域および/または他のCDRと遺伝子組み換え的に組み合わせて、上記のように、さらなる、組み換えによりエンジニアリングされた、ここに記載する抗CD73抗体を創出できる。他のタイプの修飾は、先のセクションに記載したものを含む。改変法のための出発物質は、1以上のここに提供するV
HおよびV
L配列または1以上のそのCDR領域である。改変抗体を創出するために、ここに提供するV
HおよびV
L配列または1以上のそのCDR領域の1以上を有する抗体を実際に製造する(すなわち、タンパク質を発現する)必要はない。むしろ、配列に含まれる情報を、元の配列に由来する“第二世代”配列の創出のための出発物質として使用し、次いで、“第二世代”配列を製造し、タンパク質として発現させる。
【0380】
したがって、ここに提供されるのは、抗CD73抗体を製造する方法であって:
(a)(i)配列番号5、17、33、41、53、61、69、81および89からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号6、18、34、42、54、62、70、82および90からなる群から選択されるCDR2配列および/または配列番号7、19、35、43、55、63、71、83および91からなる群から選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域抗体配列;および(ii)配列番号9、13、21、25、29、37、45、49、57、65、73、77、85および93からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号10、14、22、26、30、38、46、50、58、66、74、78、86および94からなる群から選択されるCDR2配列および/または配列番号11、15、23、27、31、39、47、51、59、67、75、79、87および95からなる群から選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域抗体配列を提供し;
(b)重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1アミノ酸残基を改変して、少なくとも一つの改変抗体配列を創出し;そして
(c)改変抗体配列をタンパク質として発現させる
ことを含む、方法である。
【0381】
標準分子生物学技術を、改変抗体配列の製造および発現に使用できる。
好ましくは、改変抗体配列によりコードされる抗体は、表3に挙げるものを含むここに記載する抗CD73抗体の機能的性質の1個、数個または全てを保持する。
【0382】
改変抗体は、ここに記載する機能的アッセイを使用して、機能的性質の1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10または全てを示し得る。改変抗体の機能的性質を、当分野で利用可能なおよび/または実施例に示すもののようなここに記載する標準アッセイ(例えば、ELISA、FACS)を使用して、評価できる。
【0383】
ここに記載する抗体をエンジニアリングする方法のある態様において、抗CD73抗体コード化配列の全てまたは一部に添って、無作為にまたは選択的に変異が導入でき、得られた修飾抗CD73抗体を、ここに記載するように、結合活性および/または他の機能的性質についてスクリーニングできる。変異的方法は、文献に記載されている。例えば、PCT公開WO02/092780(Short)は、飽和変異誘発、合成ライゲーションアッセンブリまたはこれらの組み合わせを使用する、抗体変異を創出およびスクリーニングする方法を記載する。あるいは、PCT公開WO03/074679(Lazar et al.)は、抗体の生理化学的性質を最適化するための、コンピューターによるスクリーニング法を使用する方法を記載する。
【0384】
X. 核酸分子
ここに記載する他の面は、ここに記載する抗体をコードする核酸分子である。核酸は、細胞全体、細胞ライセートまたは一部精製したまたは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、他の細胞成分または他の汚染物、例えば、他の細胞核酸(例えば、他の染色体DNA、例えば、天然で単離されたDNAと連結している染色体DNA)またはタンパク質から、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、制限酵素、アガロースゲル電気泳動および当分野で周知のその他を含む標準技術により精製されたとき、“単離”されまたは“実質的に純粋”である。F. Ausubel, et al., ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York参照。ここに記載する核酸は、例えば、DNAでもRNAでもよく、イントロン配列を含んでも、含んでいなくてもよい。ある態様において、核酸はcDNA分子である。
【0385】
ここに記載する核酸を、標準分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、さらに下に記載するような、ヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスから調製したハイブリドーマ)により発現される抗体に関して、ハイブリドーマにより産生された抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準PCR増幅またはcDNAクローニング技術により得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ技術を使用)から得られた抗体に関して、抗体をコードする核酸をライブラリーから回収できる。
【0386】
ここに記載する好ましい核酸分子は、ここに記載する抗CD73抗体、例えば、CD73.4 11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11、7A11、CD73.3および/またはCD73.4モノクローナル抗体のV
HおよびV
L配列をコードするものである。CD73.4(CD73.4−1およびCD73.4−2)、11F11(11F11−1および11F11−2)、4C3(4C3−1、4C3−2および4C3−3)、4D4、10D2(10D2−1および10D2−2)、11A6、24H2、5F8(5F8−1および5F8−2)、6E11、7A11、CD73.3およびCD73.4のV
H配列をコードするDNA配列は、それぞれ、配列番号4、16、32、40、52、60、68、80、88、135および170に示される。11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11、7A11、CD73.3および/またはCD73.4のV
L配列をコードするDNA配列は、それぞれ配列番号8、12、20、24、28、36、44、48、56、64、72、76、84および92に示される。
【0387】
V
HおよびV
LセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたら、これらのDNAフラグメントを、例えば可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子に、Fabフラグメント遺伝子にまたはscFv遺伝子に変換するために、標準組み換えDNA技術によりさらにエンジニアリングし得る。これらのエンジニアリング、V
LまたはV
Hコード化DNAフラグメントは、抗体定常領域または可動性リンカーのような他のタンパク質をコードする他のDNAフラグメントに操作可能に連結される。この文脈で使用する用語“操作可能に連結”は、2DNAフラグメントが、該2DNAフラグメントによりコードされるアミノ酸配列がフレーム内のままであるように連結されることを意味することを意図する。
【0388】
V
H領域をコードする単離DNAを、V
Hコード化DNAを、重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2および/またはCH3)をコードする他のDNA分子と操作可能に連結することにより、完全長重鎖遺伝子に変換できる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で知られ(例えば、Kabat, E. A., el al, (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準PCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域、例えば、IgG1領域であり得る。Fabフラグメント重鎖遺伝子に関して、V
Hコード化DNAを、重鎖CH1定常領域のみをコードする他のDNA分子に操作可能に連結できる。
【0389】
V
L領域をコードする単離DNAは、軽鎖定常領域、CLをコードする他のDNA分子にV
Lコード化DNAを操作可能に連結することにより、完全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換できる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で知られ(例えば、Kabat, E. A., et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準PCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であり得る。
【0390】
scFv遺伝子を創出するために、V
HおよびV
Lコード化DNAフラグメントを、可動性リンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly
4−Ser)
3をコードする他のフラグメントと、V
HおよびV
L配列が隣接一本鎖タンパク質として発現でき、V
L領域とV
H領域が可動性リンカーにより連結しているように、操作可能に連結される(例えば、Bird et al., (1988) Science
242:423-426; Huston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
85:5879-5883; McCafferty et al., (1990) Nature
348:552-554参照)。
【0391】
ここに提供されるのはまた、ここに記載する抗体、例えば、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11、7A11、CD73.3および/またはCD73.4モノクローナル抗体のものと相同であるV
HおよびV
L配列または完全長重鎖および軽鎖をコードする、核酸分子である。例示的核酸分子は、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11、7A11、CD73.3および/またはCD73.4モノクローナル抗体のV
HおよびV
L配列または完全長重鎖および軽鎖、例えば、表35に示す配列をコードする核酸分子と、少なくとも70%同一、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一であるV
HおよびV
L配列をコードする。例えば、ここに提供されるのは、配列番号139および配列番号140または141;配列番号237および配列番号140または141;配列番号142および配列番号143、144または145;配列番号146および配列番号147;配列番号148および配列番号149または150;配列番号151および配列番号152;配列番号153および配列番号154;配列番号155および配列番号156または157または242;配列番号158および配列番号159;配列番号160および配列番号161と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるヌクレオチド配列によりコードされる、V
H鎖およびV
L鎖を含む抗CD73抗体である。また提供されるのは、配列番号134、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、243、266(重鎖)および配列番号244または245(軽鎖);配列番号211、212、213または246および配列番号247、248または249;配列番号235、236または250および251;配列番号252および配列番号253または254;配列番号255および配列番号256;配列番号257および配列番号258;配列番号259および配列番号260または261;配列番号262および配列番号263;配列番号264および配列番号265と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、ヌクレオチド配列によりコードされる重鎖および軽鎖を含む、抗CD73抗体である。またここに提供されるのは、例えば、コドン最適化のために、サイレント変異(すなわち、核酸分子の翻訳により得られたアミノ酸配列を変えない塩基変化)を有する核酸分子である。
【0392】
XI. 抗体産生
多様な本発明の抗体、例えばここに開示する抗ヒトCD73抗体と競合するまたは同一エピトープに結合するものは、Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)により記載された標準体細胞ハイブリダイゼーション技術のような、多様な既知技術を使用して、産生できる。体細胞ハイブリダイゼーション法が好ましいが、原則として、例えば、Bリンパ球のウイルス性または発癌性形質転換、ヒト抗体遺伝子のライブラリーを使用するファージディスプレイ技術のような、モノクローナル抗体を産生する他の技術も使用できる。
【0393】
ハイブリドーマを産生する好ましい動物システムは、マウスシステムである。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、高度に確立されている方法である。融合のための免疫化プロトコールおよび免疫化脾細胞の単離のための技術は当分野で知られる。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合法も知られている。
【0394】
ここに記載するキメラまたはヒト化抗体を、上記のように製造したマウスモノクローナル抗体の配列に基づき、製造できる。標準分子生物学技術を使用して、重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAを、目的のマウスハイブリドーマから得て、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように改変できる。例えば、キメラ抗体を創出するために、マウス可変領域を当分野で知られる方法を使用してヒト定常領域に連結できる(例えば、米国特許4,816,567(Cabilly et al.)参照)。ヒト化抗体を創出するために、マウスCDR領域を、当分野で知られる方法を使用してヒトフレームワークに挿入できる(例えば、米国特許5,225,539(Winter)および米国特許5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370(Queen et al.)参照)。
【0395】
ある態様において、ここに記載する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このようなCD73に対するヒトモノクローナル抗体は、マウスシステムではなく、むしろヒト免疫系の一部を担持する、トランスジェニックまたは染色体導入マウスを使用して産生できる。これらのトランスジェニックおよび染色体導入マウスは、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、ここでは、集合的に“ヒトIgマウス”と称する。
【0396】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex, Inc.)は、非再配列ヒト重(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を、内在性μおよびκ鎖遺伝子座を不活化する標的化変異と共に含む(例えば、Lonberg, et al., (1994) Nature 368(6474): 856-859参照)。したがって、マウスは、マウスIgMまたはκの発現が減少し、免疫化に応答して、導入ヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチングおよび体細胞性変異を受けて、高親和性ヒトIgGκモノクローナルを産生する(Lonberg, N. et al., (1994), supra; Lonberg, N. (1994) Handbook of Experimental Pharmacology
113:49-101; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol.
13: 65-93およびHarding, F. and Lonberg, N. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci.
764:536-546にレビュー)。HuMabマウスの調製および使用ならびにこのようなマウスで実施するゲノム修飾は、さらにTaylor, L. et al., (1992) Nucleic Acids Research
20:6287-6295; Chen, J. et al., (1993) International Immunology
5: 647-656; Tuaillon et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
90:3720-3724; Choi et al., (1993) Nature Genetics
4:117-123; Chen, J. et al., (1993) EMBO J.
12: 821-830; Tuaillon et al., (1994) J. Immunol.
152:2912-2920; Taylor, L. et al., (1994) International Immunology
6: 579-591;およびFishwild, D. et al., (1996) Nature Biotechnology
14: 845-851により記載され、これら全ての内容を、その全体を引用により本明細書に特に包含させる。さらに、米国特許5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,789,650;5,877,397;5,661,016;5,814,318;5,874,299;および5,770,429(全てLonbergおよびKay);米国特許5,545,807(Surani et al.);PCT公開WO92/03918、WO93/12227、WO94/25585、WO97/13852、WO98/24884およびWO99/45962(全てLonbergおよびKay);およびPCT公開WO01/14424(Korman et al.)も参照のこと。
【0397】
ある態様において、ここに記載する抗体を、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を担持するマウスのような、導入遺伝子および導入染色体にヒト免疫グロブリン配列を担持するマウスを使用して産生させる。このようなマウスは、ここでは“KMマウス”と称し、PCT公開WO02/43478(Ishida et al.)に詳述されている。
【0398】
なおさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替トランスジェニック動物システムが当分野で利用可能であり、ここに記載する抗CD73抗体の産生に使用できる。例えば、XenoMouse(Abgenix, Inc.)と称する代替トランスジェニックシステムを使用でき、このようなマウスは、例えば、米国特許5,939,598;6,075,181;6,114,598;6、150,584および6,162,963(Kucherlapati et al.)に開示されている。
【0399】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替染色体導入動物システムが当分野で利用可能であり、ここに記載する抗CD73抗体の産生に使用できる。例えば、“TCマウス”と称するヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体の両者を担持するマウスを使用でき、このようなマウスは、Tomizuka et al., (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
97:722-727に記載されている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖導入染色体を担持するウシが文献に記載されており(Kuroiwa et al., (2002) Nature Biotechnology
20:889-894)、ここに記載する抗CD73抗体の産生に使用できる。
【0400】
ヒト抗体、例えば、ヒト抗CD73抗体を産生するための、文献に記載されるさらなるマウスシステムは、(i)キメラ抗体(ヒトV/マウスC)がマウスにおいて産生され、続いて標準組み換えDNA技術を使用して完全ヒト抗体に変換されるように、内在性マウス重鎖および軽鎖可変領域が、相同組換えにより、内在性マウス定常領域に操作可能に連結した、ヒト重鎖および軽鎖可変領域に置き換えられている、VelocImmune(登録商標)マウス(Regeneron Pharmaceuticals, Inc.);および(ii)マウスが非再配列ヒト重鎖可変領域だけでなく、単一再配列ヒト共通軽鎖可変領域を含む、MeMo(登録商標)マウス(Merus Biopharmaceuticals, Inc.)を含む。このようなマウスおよび抗体産生のためのその使用は、例えば、WO2009/15777、US2010/0069614、WO2011/072204、WO2011/097603、WO2011/163311、WO2011/163314、WO2012/148873、US2012/0070861およびUS2012/0073004に記載される。
【0401】
ここに記載するヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を使用しても製造できる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ法は当分野において確立されている。例えば、米国特許5,223,409;5,403,484;および5,571,698(Ladner et al.);米国特許5,427,908および5,580,717(Dower et al.);米国特許5,969,108および6,172,197(McCafferty et al.);および米国特許5,885,793;6,521,404;6,544,731;6,555,313;6,582,915および6,593,081(Griffiths et al.)参照。
【0402】
ここに記載するヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫細胞が免疫化によりヒト抗体応答が産生されるように再構成されている、SCIDマウスを使用しても製造できる。このようなマウスは、例えば、米国特許5,476,996および5,698,767(Wilson et al.)に記載されている。
【0403】
免疫化
CD73への完全ヒト抗体を産生するために、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含むトランスジェニックまたは染色体導入マウス(例えば、HCo12、HCo7またはKMマウス)を、例えば、Lonberg et al., (1994) Nature 368(6474): 856859; Fishwild et al., (1996) Nature Biotechnology 14: 845-851およびWO98/24884により、他の抗原について記載されているように、CD73抗原の精製または富化調製物および/またはCD73を発現する細胞で免疫化できる。あるいは、マウスを、ヒトCD73をコードするDNAで免疫化できる。好ましくは、マウスは、最初の注入時6〜16週齢である。例えば、組み換えCD73抗原の精製または富化調製物(5〜50μg)を、腹腔内でのHuMAbマウスの免疫化に使用できる。CD73抗原の精製または富化調製物を使用する免疫化が抗体を生じない場合、マウスを、CD73を発現する細胞、例えば、細胞株で免疫化して、免疫応答を促進し得る。細胞株の例は、CD73過発現安定CHOおよびRaji細胞株を含む。
【0404】
多様な抗原での経験の蓄積により、最初にRibiのアジュバント中の抗原で腹腔内(IP)または皮下(SC)的に免疫化し、続いて、Ribiのアジュバント中の抗原で隔週でIP/SC免疫化したとき(計10回まで)、HuMAbトランスジェニックマウスが最良に応答することが示されている。免疫応答を、免疫化プロトコールの進行中、後眼窩採血により得た血漿サンプルでモニターできる。血漿をELISAおよびFACS(下記のとおり)でスクリーニングし、十分な力価の抗CD73ヒト免疫グロブリンを有するマウスを融合に使用できる。マウスを、抗原の静脈内投与によりブーストし、3日後屠殺し、脾臓およびリンパ節を摘出し得る。各免疫化について2〜3融合を実施する必要があると予測される。6〜24匹のマウスを、一般に各抗原に対する免疫化に使用する。通常、HCo7、HCo12およびKM系統を使用する。さらに、HCo7およびHCo12導入遺伝子の両者を、2個の異なるヒト重鎖導入遺伝子(HCo7/HCo12)を有する単一マウスで共に繁殖させ得る。
【0405】
CD73に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの産生
ここに記載するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを産生するために、免疫化マウスからの脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株のような適切な不死化細胞株に融合し得る。得られたハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングできる。例えば、免疫化マウスからの脾臓リンパ球の単一細胞懸濁液を、Sp2/0非分泌性マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1581)に50%PEGを用いて融合させ得る。細胞を、平底マイクロタイタープレートに約2×10
5で播種し、続いて10%FetalClone血清、18%“653”順化培地、5%origen(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、50単位/ml ペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/ml ゲンタマイシンおよび1X HAT(Sigma)含有選択培地で2週間インキュベーションする。約2週間後、細胞を、HATがHTに置き換わった培地で培養できる。次いで、個々のウェルを、ヒトモノクローナルIgMおよびIgG抗体についてELISAでスクリーニングできる。広範なハイブリドーマ増殖が生じたら、培地を、通常10〜14日後に得てよい。抗体分泌ハイブリドーマを再播種し、再スクリーニングし、なおヒトIgGに陽性であるならば、該モノクローナル抗体を、少なくとも2回、限界希釈によりサブクローン化する。次いで、安定なサブクローンをインビトロで培養して、特徴付けのために、組織培養培地で少量の抗体を産生させ得る。
【0406】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択ハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製用2リットルスピナーフラスコで増殖できる。上清を濾過し、濃縮し、その後プロテインA−セファロースを使用する親和性クロマトグラフィー(Pharmacia, Piscataway, N.J.)に付し得る。溶出IgGを、純度確認のためゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーで確認できる。緩衝液をPBSに交換してよく、濃度を、1.43消衰係数を使用してOD
280により決定できる。モノクローナル抗体を小分けし、−80℃で保存してよい。
【0407】
XII. 抗体製造
CD73に対するモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの産生
配列が提供されている特定の抗体および他の関連抗CD73抗体の両者を含む本発明の抗体を、当分野で周知のように、例えば、組み換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生させ得る(Morrison, S. (1985) Science 229:1202)。
【0408】
例えば、抗体またはその抗体フラグメントを発現させるために、軽鎖および重鎖の一部または完全長をコードするDNAを、標準分子生物学技術(例えば、目的の抗体を発現するハイブリドーマを使用するPCR増幅またはcDNAクローニング)により得ることができ、DNAを、該遺伝子が転写および翻訳制御配列に操作可能に連結するように、発現ベクターに挿入できる。この文脈において、用語“操作可能に連結”は、抗体遺伝子が、ベクター内での転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を制御する意図する機能を発揮するように、ベクターにライゲートされることを意味することを意図する。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用する発現宿主細胞と適合するように選択する。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子を、別々のベクターに挿入しても、両遺伝子同一発現ベクターに挿入してもよい。抗体遺伝子は、標準方法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクター上の相補性制限部位のライゲーションまたは制限部位が存在しないならば平滑末端ライゲーション)により発現ベクターに挿入される。ここに記載する抗体の軽鎖および重鎖可変領域を使用して、V
Hセグメントがベクター内のC
Hセグメントに操作可能に連結し、V
Lセグメントがベクター内のC
Lセグメントに操作可能に連結するように、所望のアイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターにそれらを挿入することにより、あらゆる抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を創出できる。これに加えてまたはこれとは別に、組み換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子を、シグナルペプチドが、抗体鎖遺伝子のアミノ末端にフレーム内で連結されるように、ベクターにクローン化できる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0409】
抗体鎖遺伝子に加えて、組み換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する制御配列を担持し得る。用語“制御配列”は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。このような制御配列は、例えば、Goeddel (Gene Expression Technology, Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990))に記載される。制御配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換する宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような因子により得ることは、当業者には認識される。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい制御配列は、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーのような、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を支持するウイルス要素を含む。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはβ−グロビンプロモーターのような非ウイルス制御配列を使用し得る。なおさらに、SV40早期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の末端反復配列からの配列を含む、SRαプロモーターシステムのような異なる源からの配列からなる制御要素を使用し得る(Takebe, Y. et al., (1988) Mol. Cell. Biol.
8:466-472)。
【0410】
抗体鎖遺伝子および制御配列に加えて、組み換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列(例えば、複製起点)および選択可能マーカー遺伝子のようなさらなる配列を担持し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許4,399,216、4,634,665および5,179,017(全てAxel et al.)参照)。例えば、一般に、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートのような薬物に対する耐性を付与する。好ましい選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr
−宿主細胞とメトトレキサート選択/増幅を使用するために)およびneo遺伝子(G418選択のために)を含む。
【0411】
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを、標準技術により宿主細胞に遺伝子導入する。用語“トランスフェクション”の種々形態は、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどの、原核または真核宿主細胞に外来性DNAを導入するのに一般に使用される多種多様な技術を含むことを意図する。ここに記載する抗体を原核または真核宿主細胞で発現させることが理論的には可能であるが、真核細胞および最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が、このような真核細胞および特に哺乳動物細胞が原核細胞よりも適切に折りたたまれ、免疫学的に活性な抗体を構築し、分泌する可能性が高いため、最も好ましい。抗体遺伝子の原核細胞発現は、活性抗体の高収率での産生に無効であることが報告されている(Boss, M. A. and Wood, C. R. (1985) Immunology Today
6:12-13)。本発明の抗体はまた、酵母ピキア・パストリスの糖改変下部でも産生され得る。Li et al., (2006) Nat. Biotechnol. 24:210。
【0412】
ここに記載する組み換え抗体の発現に好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621に記載のようにDHFR選択可能マーカーと共に使用する、Urlaub and Chasin. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
77:4216-4220において記載のdhfr
− CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む。特に、NSO骨髄腫細胞と使用するために、他の好ましい発現システムは、WO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に開示のGS遺伝子発現システムである。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されたとき、抗体は、宿主細胞における抗体の発現または、より好ましくは、宿主細胞が増殖している培養培地への抗体の分泌を可能とするのに十分な時間宿主細胞を培養することにより生産される。抗体を、標準タンパク質精製法を使用して、培養培地から回収できる。
【0413】
本発明の抗体ポリペプチド鎖のNおよびC末端は、一般に観察される翻訳後修飾により、予想される配列と異なるかもしれない。例えば、C末端リシン残基は、しばしば抗体重鎖から欠失する。Dick et al., (2008) Biotechnol. Bioeng. 100:1132。N末端グルタミン残基および程度は少ないがグルタミン酸残基は、しばしば治療抗体の軽鎖および重鎖の両者でピログルタミン酸残基に変換される。Dick et al., (2007) Biotechnol. Bioeng. 97:544; Liu et al., (2011) JBC 28611211; Liu et al., (2011) J. Biol. Chem. 286:11211。
【0414】
XIII. アッセイ
ここに記載する抗体を、例えば、標準ELISAにより、CD73への結合について試験できる。簡潔にいうと、マイクロタイタープレートを、PBS中1〜2μg/mlの精製CD73でコーティングし、次いでPBS中5%ウシ血清アルブミンで遮断する。抗体の希釈物(例えば、CD73免疫化マウスの血漿の希釈物)を各ウェルに添加し、1〜2時間、37℃でインキュベートする。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした二次試薬(例えば、ヒト抗体について、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬)と、1時間、37℃でインキュベートする。洗浄後、プレートをABTS基質(Moss Inc.、製品: ABTS-1000)で展開し、分光光度計でOD415〜495で分析する。免疫化マウスからの血清を、次いで、ヒトCD73を発現する細胞株に結合するが、CD73を発現しない対照細胞株に結合しないことについて、フローサイトメトリーによりさらにスクリーニングする。簡潔にいうと、抗CD73抗体の結合を、CD73発現CHO細胞と、抗CD73抗体を、1:20希釈でインキュベートすることにより評価する。細胞を洗浄し、結合を、PE標識抗ヒトIgG Abを使用して検出する。フローサイトメトリー分析を、FACScanフローサイトメトリー(Becton Dickinson, San Jose, CA)を使用して行う。好ましくは、最高力価を発生させるマウスを、融合に使用する。
【0415】
上記のようなELISAアッセイを使用して抗体を、それゆえに、CD73免疫原と陽性反応性を示す抗体を生産するハイブリドーマをスクリーニングできる。好ましくは高親和性で、CD73に結合する抗体を生産するハイブリドーマを、次いでサブクローン化し、さらに特徴付けし得る。親細胞の反応性を保持する(ELISAによる)各ハイブリドーマからの1クローンを、次いで細胞バンクの製造および抗体精製のために選択できる。
【0416】
抗CD73抗体を精製するために、選択ハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製のために2リットルスピナーフラスコで増殖できる。上清を濾過し、濃縮して、その後プロテインA−セファロースを用いる親和性クロマトグラフィー(Pharmacia, Piscataway, NJ)に付し得る。溶出IgGを、純度確認のためゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーで確認できる。緩衝液PBSに交換してよく、濃度を、1.43消衰係数を使用してOD
280により決定できる。モノクローナル抗体を小分けし、−80℃で保存してよい。
【0417】
選択抗CD73モノクローナル抗体が独特なエピトープに結合するかを決定するために、各抗体を、市販試薬(Pierce, Rockford, IL)を使用してビオチニル化できる。ビオチニル化mAb結合を、ストレプトアビジン標識プローブで検出できる。非標識モノクローナル抗体およびビオチニル化モノクローナル抗体を使用する競合試験を、上記のようにCD73被覆ELISAプレートを使用して、実施できる。
【0418】
精製抗体のアイソタイプを決定するために、アイソタイプELISAを、特定のアイソタイプの抗体に特異的な試薬を使用して、実施できおる。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイタープレートのウェルを、1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンで、一夜、4℃で被覆できる。1%BSAで遮断後、プレートを1μg/ml以下の試験モノクローナル抗体または精製アイソタイプ対照と、環境温度で1〜2時間反応させる。次いで、ウェルをヒトIgG1またはヒトIgM特異的アルカリホスファターゼコンジュゲートプローブと反応させる。プレートを、上記のように展開し、分析する。
【0419】
CD73を発現する生存細胞へのモノクローナル抗体の結合を試験するために、フローサイトメトリーを、実施例に記載するように使用できる。簡潔にいうと、膜結合CD73を発現する細胞株(標準増殖条件下で増殖)を、0.1%BSA含有PBS中、種々の濃度のモノクローナル抗体と4℃で1時間混合する。洗浄後、細胞を、一次抗体染色と同一条件下、フルオレセイン標識抗IgG抗体と反応させる。サンプルを、単一細胞をゲーティングする光および側方散乱性質を使用するFACScan装置により分析し、標識抗体の結合を決定する。蛍光顕微鏡を使用する代替アッセイを、フローサイトメトリーアッセイに加えてまたは代わりに使用し得る。細胞をまさに上記のように染色し、蛍光顕微鏡で試験できる。この方法は、個々の細胞の可視化を可能にするが、抗原の密度により感受性が低下し得る。
【0420】
抗CD73抗体を、ウェスタンブロッティングによりCD73抗原との反応性についてさらに試験し得る。簡潔にいうと、CD73発現細胞からの細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し得る。電気泳動後、分離した抗原をニトロセルロース膜に移し、20%マウス血清で遮断し、試験するモノクローナル抗体でプローブする。IgG結合を抗IgGアルカリホスファターゼを使用して検出し、BCIP/NBT基質錠剤(Sigma Chem, Co., St. Louis, MO)で発色できる。
【0421】
多様な抗CD73抗体の結合親和性、交差反応性および結合動態を分析する方法は、当分野で知られる標準アッセイ、例えば、BIACORE
(登録商標)2000 SPR装置(Biacore AB, Uppsala, Sweden)を使用する、BIACORE
(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析を含む。
【0422】
XIV. 免疫複合体および抗体誘導体
ここに記載する抗体を、サンプル試験およびインビボ造影を含む診断目的で使用でき、この目的で、抗体(またはその結合フラグメント)を、適切な検出可能剤とコンジュゲートして、免疫複合体を形成できる。診断目的で、適切な薬剤は、全身造影のための放射性同位体ならびにサンプル試験のための放射性同位体、酵素、蛍光標識および他の適当な抗体標識を含む、検出可能標識である。
【0423】
検出可能標識は、金コロイドのような金属ゾル、例えばN
2S
2、N
3SまたはN
4タイプのペプチドキレート剤と提供されるI
125またはTc
99のような同位体、蛍光マーカー、ビオチン、発光マーカー、燐光マーカーなどを含む発色団を含む粒子標識、ならびにある基質を検出可能マーカーに変換する酵素標識およびポリメラーゼ鎖反応のような増幅後に露出されるポリヌクレオチド標識を含む、インビトロ診断分野で現在使用されている種々のタイプのいずれでもよい。次いで、ビオチニル化抗体は、アビジンまたはストレプトアビジン結合により検出可能である。適当な酵素標識は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどを含む。例えば、標識は、アダマンチルメトキシホスホリルオキシフェニルジオキセタン(AMPPD)、ジナトリウム3−(4−(メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ{3.3.1.1
3,7}デカン}−4−イル)フェニルホスフェート(CSPD)のような1,2−ジオキセタン基質の変換後の化学発光の存在または形成の測定により検出する酵素アルカリホスファターゼならびにCDPおよびCDP−star(登録商標)または当分野で周知の他の発光基質、例えばテルビウム(III)およびユウロピウム(III)のような適当なランタナイドのキレートであり得る。検出手段は、選択した標識により決定される。標識またはその反応産物の出現は、標識が粒子であり、適切なレベルで蓄積する場合は裸眼で、または分光光度計、ルミノメーター、フルオロメーターなどのような装置を使用して達成でき、全て、標準実務による。
【0424】
好ましくは、コンジュゲーション法は、実質的に(またはほぼ)非免疫原性の、例えば、ペプチド−(すなわちアミド−)、スルフィド−、(立体障害された)ジスルフィド−、ヒドラゾン−およびエーテル結合である結合を生じる。これらの結合はほぼ非免疫原性であり、血清内で合理的な安定性を示す(例えばSenter, P. D., Curr. Opin. Chem. Biol. 13 (2009) 235-244;WO2009/059278;WO95/17886参照)。
【0425】
成分および抗体の生化学的性質により、種々のコンジュゲーション戦略を用い得る。成分が50〜500アミノ酸の天然に存在するまたは組み換えポリペプチドであるとき、タンパク質コンジュゲートの合成の化学を記載する教科書に標準法があり、当業者は容易にこれに従い得る(例えばHackenberger, C. P. R. and Schwarzer, D., Angew. Chem. Int. Ed. Engl, 47 (2008) 10030-10074)。ある態様において、抗体または成分内のシステイン残基を有するマレインイミド基の反応を使用する。これは、抗体の例えばFabまたはFab’フラグメントを使用する場合、特に適当なカップリング化学である。あるいはある態様において、抗体または成分のC末端へのカップリングを実施する。タンパク質、例えばFabフラグメントのC末端修飾を、記載のように実施できる(Sunbul, M. and Yin, J., Org. Biomol. Chem. 7 (2009) 3361-3371)。
【0426】
一般に部位特異的反応および共有結合性カップリングは、天然アミノ酸の、存在する他の官能基の反応性と直交性である反応性を有するアミノ酸への変換に基づく。例えば、稀な配列構成内の特異的システインを、アルデヒドに酵素変換できる(Frese, M. A. and Dierks, T., ChemBioChem. 10 (2009) 425-427)。ある配列構成における天然アミノ酸とのある酵素の特異的酵素反応性を利用して、所望のアミノ酸修飾を得ることも可能である(例えば、Taki, M. et al., Prot. Eng. Des. Sel. 17 (2004) 119-126; Gautier, A. et al., Chem. Biol. 15 (2008) 128-136参照)。C−N結合のプロテアーゼ触媒による形成は、Bordusa, F., Highlights in Bioorganic Chemistry (2004) 389-403に記載されている。
【0427】
部位特異的反応および共有結合性カップリングは、末端アミノ酸と適切な修飾剤の選択的反応によっても達成できる。N末端システインとベンゾニトリルの反応性(Ren, H. et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 48 (2009) 9658-9662参照)を使用して、部位特異的共有結合性カップリングを達成できる。天然化学ライゲーションは、C末端システイン残基も利用する(Taylor, E, Vogel; Imperiali, B, Nucleic Acids and Molecular Biology (2009), 22 (Protein Engineering), 65-96)。EP1074563は、陽性荷電アミノ酸のストレッチに位置するシステインよりも、陰性荷電アミノ酸のストレッチに位置するシステインの反応が速いことに基づくコンジュゲーション法を記載する。
【0428】
成分はまた合成ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。ポリペプチドが化学的に合成される場合、直交性化学反応性を有するアミノ酸を、このような合成中に取り込み得る(例えばde Graaf, A. J. et al., Bioconjug. Chem. 20 (2009) 1281-1295参照)。広範にわたる直交性官能基が問題となり、合成ペプチドに導入され得るため、このようなペプチドのリンカーへのコンジュゲーションは、標準化学である。
【0429】
一標識ポリペプチドを得るために、1:1化学量論を有するコンジュゲートを、クロマトグラフィーにより、他のコンジュゲーション副産物から分離できる。この工程は、色素標識結合対メンバーおよび荷電リンカーの使用により促進され得る。この種の標識および高度に陰性に荷電した結合対メンバーの使用により、モノコンジュゲートポリペプチドを、荷電および分子量差異を分離に使用できるため、非標識ポリペプチドおよび1個を超えるリンカーを有するポリペプチドから分離できる。蛍光色素は、標識一価結合剤のように、非結合構成成分から複合体を精製するのに有用であり得る。
【0430】
ある態様において、抗CD73抗体に結合した成分を、結合成分、標識成分および生物学的活性成分からなる群から選択する。
【0431】
ここに記載する抗体を、抗体−薬物コンジュゲート(ADC)のような免疫複合体を形成するように、治療剤とコンジュゲートしてもよい。適当な治療剤は、代謝拮抗剤、アルキル化剤、DNA副溝結合剤、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核輸出阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤、ヒートショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質および抗有糸分裂剤を含む。ADCにおいて、抗体および治療剤は、好ましくはペプチジル、ジスルフィドまたはヒドラゾンリンカーのような開裂可能リンカーによりコンジュゲートする。より好ましくは、リンカーは、Val−Cit、Ala−Val、Val−Ala−Val、Lys−Lys、Pro−Val−Gly−Val−Val(配列番号219)、Ala−Asn−Val、Val−Leu−Lys、Ala−Ala−Asn、Cit−Cit、Val−Lys、Lys、Cit、SerまたはGluのようなペプチジルリンカーである。ADCを、米国特許7,087,600;6,989,452;および7,129,261;PCT公開WO02/096910;WO07/038658;WO07/051081;WO07/059404;WO08/083312;およびWO08/103693;米国特許公開20060024317;20060004081;および20060247295に開示のように製造でき;これらの内容を、引用により本明細書に包含させる。
【0432】
例えば、単剤療法としてのような抗CD73抗体の他の使用は、本明細書の他の場所に、例えば、組み合わせ処置に関する部分に提供される。
【0433】
より具体的に、ADCにおいて、抗体を薬物とコンジュゲートさせ、ADCを、癌細胞のようなその抗原を発現する標的細胞に指向させるためのターゲティング剤として機能する抗体を用いる。好ましくは、抗原は、腫瘍関連抗原、すなわち、癌細胞により独特に発現されるまたは過発現されるものである。到達したら、薬物が、治療剤として働くために、標的細胞内またはその近位で放出されたる。癌治療におけるADCの作用機序および使用のレビューのために、Schrama et al., Nature Rev. Drug Disc. 2006, 5, 147参照。
【0434】
癌処置のために、薬物は、好ましくは標的化癌細胞を死滅させる、細胞毒性剤である。ADCにおいて使用できる細胞毒性剤は、次のタイプの化合物およびそのアナログおよび誘導体を含む:
(a)カリチアマイシン(例えば、Lee et al., J. Am. Chem. Soc. 1987, 109, 3464および3466参照)およびウンシアラマイシン(例えば、Davies et al.、WO2007/038868A2(2007)およびChowdari et al., US8,709,431 B2 (2012)参照)のようなエンジイン類;
(b)ツブリシン類(例えば、Domling et al., US7,778,814 B2 (2010); Cheng et al.、US8,394,922B2(2013);およびCong et al.、US2014/0227295A1参照);
(c)CC−1065およびデュオカルマイシン(例えば、Boger、US6,5458,530B1(2003);Sufi et al.、US8,461,117B2(2013);およびZhang et al.、US2012/0301490A1(2012)参照);
(d)エポチロン類(例えば、Vite et al.、US2007/0275904A1(2007)およびUSRE42930E(2011)参照);
(e)オーリスタチン類(例えば、Senter et al.、US6,844,869B2(2005)およびDoronina et al.、US7,498,298B2(2009)参照);
(f)ピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体(例えば、Howard et al.、US2013/0059800A1(2013);US2013/0028919A1(2013);およびWO2013/041606A1(2013)参照);および
(g)DM1およびDM4のようなマイタンシノイド類(例えば、Chari et al.、US5,208,020(1993)およびAmphlett et al.、US7,374,762B2(2008)参照)。
【0435】
XV. 二重特異性分子
ここに記載する抗体を、二重特異性分子の形成に使用し得る。抗CD73抗体またはその抗原結合部分を、他の官能性分子、例えば、他のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体に対する他の抗体またはリガンド)で誘導体化または連結して、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を産生できる。ここに記載する抗体は、実際1個を超える他の官能性分子で誘導体化または連結して、2つを超える異なる結合部位および/または標的分子と結合する多特異的分子を産生できる;このような多特異的分子も、ここで使用する用語“二重特異性分子”に包含されることを意図する。ここに記載する二重特異性分子を創出するために、ここに記載する抗体を、二重特異性分子が生じるように、他の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合模倣剤のような1以上の他の結合分子と機能的に連結できる(例えば、化学カップリング、遺伝的融合、非共有結合的結合またはその他)。
【0436】
したがって、ここに提供されるのは、CD73に対する少なくとも1個の第一結合特異性および第二の標的エピトープに対する第二結合特異性を含む、二重特異性分子である。二重特異性分子が多特異的であるここに記載する態様において、分子は、さらに第三結合特異性を含み得る。
【0437】
ある態様において、ここに記載する二重特異性分子は、結合特異性として、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fvまたは単鎖Fvを含む、少なくとも1抗体または抗体そのフラグメントを含む。抗体はまた軽鎖または重鎖二量体または何らかのその最小フラグメント、例えば、Ladner et al., 米国特許4,946,778(その内容を引用により明示的に本明細書に包含させる)に記載のようなFvまたは単鎖構築物でもあり得る。
【0438】
二重特異性分子のその特異的標的への結合は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)またはウェスタンブロットアッセイのような当分野で認識される方法を使用して確認できる。これらのアッセイの各々は、一般に目的の複合体に特異的な標識剤(例えば、抗体)を用いることにより、特に興味深いタンパク質−抗体複合体の存在を検出する。
【0439】
XVI. 組成物
さらに薬学的に許容される担体と共に製剤された、ここに記載する抗CD73抗体またはその抗原結合部分の1個または組み合わせを含む、組成物、例えば、医薬組成物が提供される。このような組成物は、ここに記載する抗体または免疫複合体または二重特異性分子の1個または組み合わせ(例えば、2以上の異なる)を含み得る。例えば、ここに記載する医薬組成物は、標的抗原の異なるエピトープに結合するまたは相補性活性を有する抗体の組み合わせ(または免疫複合体または二特異性)を含み得る。
【0440】
ある態様において、組成物は、抗CD73抗体を少なくとも1mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、50mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/ml、1〜300mg/mlまたは100〜300mg/mlの濃度で含む。
【0441】
ここに記載する医薬組成物は、組み合わせ治療で、すなわち、他の薬剤と組み合わせて投与もできる。例えば、組み合わせ治療では、少なくとも一つの他の抗癌および/またはT細胞刺激(例えば、活性化)剤と組み合わせて、ここに記載する抗CD73抗体を含み得る。組み合わせ治療で使用できる治療剤の例を、ここに記載する抗体の使用に関する下記の部分でより詳細に記載する。
【0442】
ある態様において、ここに開示する治療組成物は、癌の処置に使用する他の化合物、薬物および/または薬剤を含み得る。このような化合物、薬物および/または薬剤は、例えば、ある癌に対する免疫応答を刺激する化学療法剤、小分子薬物または抗体を含み得る。ある状況において、治療組成物は、例えば、組み合わせ治療に関する部分に挙げる薬剤の1以上を含み得る。
【0443】
ここで使用する“薬学的に許容される担体”は、生理学的に適合性である、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば、注射または点滴による)に適する。投与経路により、活性化合物、すなわち、抗体、免疫複合体または二重特異性分子を、該化合物を不活化し得る酸および他の天然条件から該化合物を保護する物質でコートし得る。
【0444】
ここに記載する医薬化合物は、1以上の薬学的に許容される塩を含み得る。“薬学的に許容される塩”は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望まない毒性効果を何ら付与しない塩をいう(例えば、Berge, S.M., et al., (1977) J. Pharm. Sci.
66:1-19)。このような塩の例は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、亜リン酸塩などのような非毒性無機酸ならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などのような非毒性有機酸由来のものを含む。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのようなアルカリ土類金属ならびにN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどのような非毒性有機アミン由来のものを含む。
【0445】
ここに記載する医薬組成物はまた薬学的に許容される抗酸化剤も含み得る。薬学的に許容される抗酸化剤の例は、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどのような水可溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどのような油可溶性抗酸化剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などのような金属キレート剤を含む。
【0446】
ここに記載する医薬組成物で使用し得る適当な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)および適当なこれらの混合物、オリーブ油のような植物油およびオレイン酸エチルのような注射用有機エステルを含む。適切な流動性を、例えば、レシチンのようなコーティング物質の使用により、分散製剤の場合必要な粒子径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持できる。
【0447】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントも含み得る。微生物の存在の予防は、上記の滅菌法および種々の抗細菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含ませることの両者により確実にできる。組成物に糖、塩化ナトリウムなどのような等張剤を含ませることも望ましいことがある。さらに、注射用医薬形態の持続吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる薬剤を含ませることにより達成し得る。
【0448】
薬学的に許容される担体は、無菌水溶液または分散液および無菌注射用溶液または分散液の即座の調製のための無菌粉末を含む。薬学的に活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は当分野で知られる。ある慣用の媒体または薬剤が活性化合物と非適合性ではない限り、ここに記載する医薬組成物におけるその使用が意図される。補足的活性化合物も組成物に包含させ得る。
【0449】
治療組成物は、一般に製造および保存条件下で、無菌かつ安定でなければならない。組成物を溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは他の高薬物濃度に適する規則的構造として製剤できる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)および適当なこれらの混合物を含む、溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性を、例えば、レシチンのようなコーティング物質の使用により、分散製剤の場合必要な粒子径の維持によりおよび界面活性剤の使用により維持できる。多くの場合、組成物に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコールまたは塩化ナトリウムを包含させることが好ましい。注射用医薬形態の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンの包含により達成し得る。
【0450】
無菌注射用溶液を、必要な量の活性化合物を、適切な溶媒に、必要に応じて上記成分の1個または組み合わせと共に取り込み、続いて微粒子濾過により滅菌することにより製造できる。一般に、分散剤は、活性化合物を、塩基性分散媒体および上記のものからの必要な他の成分を含む、無菌媒体に取り込むことにより製造する。無菌注射用溶液を製造するための無菌粉末の場合、好ましい製造法は、予め無菌濾過した溶液からの活性成分とさらなる所望の成分の粉末を生産する、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0451】
単一用量形態を生産するために担体物質と組み合わせ得る活性成分の量は、処置する対象および特定の投与方法により変わる。単一用量形態を生産するために担体物質と組み合わせ得る活性成分の量は、一般に治療効果を生じる組成物の量である。一般に、100%中、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせた約0.01パーセント〜約99パーセントの活性成分、好ましくは約0.1パーセント〜約70パーセント、最も好ましくは約1パーセント〜約30パーセントの活性成分の範囲である。
【0452】
用量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)が提供されるように調節する。例えば、1回ボーラスを投与してよく、数分割用量を長い期間をかけて投与してよくまたは治療状況の緊急度により示されるように、用量を徐々に減らしても増やしてもよい。投与の容易さおよび用量の均一さのために、非経腸組成物を用量単位形態に製剤するのが特に有利である。ここで使用する用量単位形態は、処置する対象のための単位用量として適する物理的に分かれた単位であり、各単位は、必要な医薬担体と共に、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を含む。ここに記載する用量単位形態の仕様は、(a)活性化合物の独特な特徴および達成すべき特定の治療効果および(b)個々の感受性に対するこのような活性化合物の製造における当分野に固有の制限、によって定められ、直接的に依存する。
【0453】
抗体投与用の用量は、約0.0001〜100mg/宿主体重kgであり、より一般には0.01〜5mg/宿主体重kgの範囲である。例えば用量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重または1〜10mg/kgの範囲内である。例示的処置レジメは、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、3ヶ月に1回または3〜6ヶ月に1回の投与を必要とする。
【0454】
ある方法において、異なる結合特異性を有する2以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、この場合、投与する各抗体の用量は、示された範囲内に入る。抗体は、通常複数回投与する。一用量の間の間隔は、例えば、週、月、3ヶ月または年であり得る。患者における標的抗原に対する抗体の血中レベルの測定により指示されるように、間隔は不規則でもよい。ある方法において、用量を、約1〜1000μg/ml、ある方法において約25〜300μg/mlの血漿抗体濃度となるよう調節する。
【0455】
抗体を、持続放出製剤として製剤でき、この場合、必要な投与頻度は少ない。用量および頻度は、患者における抗体の半減期により変わる。一般に、ヒト抗体は、最長半減期を示し、続いてヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体である。投与用量および頻度は、処置が予防的であるかまたは治療的であるかにより変わり得る。予防適用において、長期間にわたり、比較的低用量を、比較的低頻度の間隔で投与する。ある患者は、死ぬまで処置を受け続ける。治療適用において、比較的短い間隔で比較的高用量が、疾患の進行が低減するか停止するまで、好ましくは患者が疾患症の部分的なまたは完全な改善を示すまで、時には必要である。その後、患者に予防レジメで投与し得る。
【0456】
ここに記載する医薬組成物における活性成分の実際の用量レベルは、患者に毒性ではなく、特定の患者、組成物および投与方法で所望の治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るように、変えてよい。選択用量レベルは、用いるここに記載する特定の組成物またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排泄速度、処置の期間、他の薬物、用いる特定の組成物と組み合わせて使用する他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、全般的体調および先の薬歴および医薬分野で周知の類似因子を含む、多様な薬物動態因子により変わる。
【0457】
ここに記載する抗CD73抗体の“治療有効用量”は、好ましくは疾患症状の重症度の軽減、無疾患症状期間の頻度および期間の増大または疾患罹患による機能障害もしくは身体障害の予防をもたらす。癌の状況において、治療的有効用量は、好ましくは癌と関連する身体的症状のさらなる悪化を予防する。癌の症状は当分野で周知であり、例えば、異常な黒子特徴、非対称、境界、色および/または直径を含む黒子の見かけの変化、新たに着色された皮膚領域、異常黒子、爪の下の黒ずんだ領域、乳房腫瘤、乳頭変化、乳房嚢胞、乳房痛、死亡、体重減少、弱化、過度の疲労、摂食困難、食欲減退、慢性咳嗽、息切れ悪化、喀血、血尿、血便、悪心、嘔吐、肝臓転移、肺転移、骨転移、腹部膨満、鼓腸、腹水、膣出血、便秘、腹部膨張、結腸穿孔、急性腹膜炎(感染、発熱、疼痛)、疼痛、吐血、重度発汗、発熱、高血圧、貧血、下痢、黄疸、めまい、悪寒、筋肉痙攣、結腸転移、肺転移、膀胱転移、肝臓転移、骨転移、腎臓転移および膵臓転移、嚥下困難などを含む。
【0458】
治療的有効用量は、癌の発症を、該疾患の早期または先行徴候が存在するときに望まれるように、予防または遅延し得る。癌の診断に利用する臨床検査は、化学(CD73レベル測定を含む)、血液学、血清学および放射線学を含む。したがって、前記のいずれかをモニターするあらゆる臨床的または生化学的アッセイを、特定の処置が、癌処置に治療的有効用量であるか否かを決定するために使用し得る。当業者は、対象の体格、対象の症状の重症度および選択した特定の組成物または投与経路のような因子に基づき、このような量を決定できる。
【0459】
ここに記載する組成物を、当分野で知られる1以上の多様な方法を使用して、1以上の投与経路で投与できる。当業者には明らかなとおり、投与経路および/または方法は、所望の結果による。ここに記載する抗体の好ましい投与経路は、例えば注射または点滴による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経腸投与経路を含む。ここで使用する用語“非経腸投与”は、通常注射による、経腸および局所投与以外の投与方式をいい、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および点滴を含むが、これらに限定されない。
【0460】
あるいは、ここに記載する抗体を、局所、上皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下または局所的のような非経腸ではない経路で投与できる。
【0461】
活性化合物を、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む、制御放出製剤のような、急速な放出から化合物を保護する担体と製造できる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生分解性、生体適合性ポリマーを使用できる。このような製剤の製造のための多くの方法が特許されまたは当業者に一般に知られる。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978参照。
【0462】
治療組成物を、当分野で知られる医療器具を用いて投与できる。例えば、好ましい態様において、ここに記載する治療組成物を、米国特許5,399,163;5,383,851;5,312,335;5,064,413;4,941,880;4,790,824;または4,596,556に開示のデバイスのような無針皮下組織注射器で投与できる。ここに記載する抗CD73抗体で使用するための周知のインプラントおよびモジュールの例は、米国特許4,487,603(制御された速度で薬を分配するためのインプラント可能微量注入ポンプを記載);米国特許4,486,194(皮膚から薬を投与するための治療デバイスを記載);米国特許4,447,233(正確な注入速度で薬を送達するための投薬注入ポンプを記載);米国特許4,447,224(連続的薬物送達のための可変流動インプラント可能注入装置を記載);米国特許4,439,196(多チャンバー区画を有する浸透圧性薬物送達系を記載);および米国特許4,475,196(浸透圧性薬物送達系を記載)を含む。これらの特許を、引用によりここに包含させる。多くの他のこのようなインプラント、送達系およびモジュールが当業者に知られる。
【0463】
ある態様において、ここに記載する抗CD73抗体を、インビボでの適切な分布を確実にするように製剤できる。例えば、血液−脳関門(BBB)は、多くの高度に親水性の化合物を排除する。ここに記載する治療化合物がBBBを通過することを確実にするために(望むのであれば)、例えば、リポソームに製剤できる。リポソームを製造する方法について、例えば、米国特許4,522,811;5,374,548;および5,399,331を参照のこと。リポソームは、特定の細胞または臓器に選択的に輸送され、そうして標的化薬物送達を増強する1以上の成分を含み得る(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685参照)。例示的ターゲティング成分は、葉酸またはビオチン(例えば、米国特許5,416,016(Low et al.)参照);マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al., (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al., (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoe et al., (1995) Am. J. Physiol. 1233:134);p120(Schreier et al., (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)を含む;K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照のこと。
【0464】
XVII. 使用および方法
ここに記載する抗体、抗体組成物および方法は、例えば、アデノシンシグナル伝達減少またはCD73検出により、多くのインビトロおよびインビボ適用、例えば、腫瘍増殖阻止、腫瘍転移阻止、免疫応答増強を有する。好ましい態様において、ここに記載する抗体はヒト抗体である。例えば、ここに記載する抗CD73抗体を、培養中の細胞に、インビトロまたはエクスビボでまたはヒト対象に、例えば、インビボで投与し、腫瘍細胞増殖を阻害できる。したがって、ここに提供されるのは、対象に、対象における腫瘍増殖が低減するように、ここに記載する抗体またはその抗原結合部分を投与することを含む、対象における腫瘍増殖を修飾する方法である。
【0465】
特定の態様において、方法は、インビボ癌処置に特に適する。腫瘍増殖の抗原特異的阻止を達成するために、ここに記載する抗CD73抗体を、目的の抗原または処置対象(例えば、腫瘍担持対象)に既に存在し得る抗原と共に糖衣よできる。CD73に対する抗体を他の薬剤と投与するとき、2剤を別々に投与しても、一緒に投与してもよい。
【0466】
サンプルおよび対照サンプルと、ヒトCD73に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を、抗体またはその一部とヒトCD73の複合体の形成を可能にする条件下摂食させることを含む、サンプルにおけるヒトCD73抗原の存在を検出するまたはヒトCD73抗原の量を測定する方法も包含される。次いで、複合体の形成を検出し、ここで、対照サンプルと比較したサンプルとの間の複合体形成の差異が、サンプルにおけるヒトCD73抗原の存在の指標である。さらに、ここに記載する抗CD73抗体を、免疫親和性精製によるヒトCD73精製に使用できる。
【0467】
さらに対象における免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)が刺激されるように、対象にここに記載する抗CD73抗体を投与することを含む、対象における免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)を刺激する方法が包含される。好ましい態様において、対象は腫瘍担持対象であり、腫瘍に対する免疫応答が刺激される。腫瘍は、固形腫瘍または液体腫瘍、例えば、造血器腫瘍であり得る。ある態様において、腫瘍は、免疫原性腫瘍である。ある態様において、腫瘍は、非免疫原性である。
【0468】
ここに記載するこれらおよび他の方法を、下にさらに詳細に記載する。
【0469】
癌
抗CD73抗体によるCD73の阻害は、患者における腫瘍増殖および転移を低減する。抗CD73抗体によるCD73の阻害は、患者における癌性細胞に対する免疫応答も増強し得る。ここに提供されるのは、対象が処置されるように、例えば、癌性腫瘍の増殖が阻止または低減するおよび/また腫瘍が退行するように、対象にここに記載する抗CD73抗体を投与することを含む、癌を有する対象を処置する方法である。抗CD73抗体を、癌性腫瘍の増殖阻止に単独で使用できる。あるいは、抗CD73抗体を、下記のように、他の薬剤、例えば、他の免疫原性薬剤、標準癌処置または他の抗体と組み合わせて使用できる。
【0470】
したがって、ここに提供されるのは、対象にここに記載する抗CD73抗体またはその抗原結合部分の有効量を投与することを含む、対象における、例えば、腫瘍細胞の増殖阻止による、癌を処置する方法である。抗体はヒト抗CD73抗体であり得る(例えばここに記載するヒト抗ヒトCD73抗体のいずれか)。これに加えてまたはこれとは別に、抗体は、キメラまたはヒト化抗CD73抗体、例えば、ここに記載する抗CD73抗体またはその抗原結合部分を含むキメラまたはヒト化抗CD73抗体であり得る。
【0471】
本発明の抗体を使用して増殖が阻害され得る癌は、一般に免疫療法に応答性の癌を含む。処置のための癌の非限定的例は、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞性肺癌、扁平上皮非小細胞性肺癌(NSCLC)、非NSCLC、神経膠腫、消化器癌、腎臓癌(例えば明細胞癌)、卵巣癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌(例えば、腎細胞癌(RCC))、前立腺癌(例えばホルモン難治性前立腺腺癌)、甲状腺癌、神経芽腫、膵臓癌、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫)、頸部癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌および頭頸部癌(または癌腫)、胃癌、胚細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば、皮膚または眼内悪性黒色腫のような転移悪性黒色腫)、骨癌、皮膚癌、子宮癌、肛門周辺癌、精巣癌、ファロピウス管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、輸尿管癌、腎盂癌、中枢神経系の新生物(CNS)、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管形成、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮細胞癌、T細胞リンパ腫、アスベストにより誘発されるものを含む環境誘発癌、ウイルス関連癌(例えば、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)関連腫瘍)および2つの主要な血液細胞系統、すなわち、骨髄細胞株(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージおよび肥満細胞を産生する)またはリンパ系細胞株(B、T、NKおよび形質細胞を産生する)のいずれか由来の血液系腫瘍、例えば、全タイプの白血病、リンパ腫および骨髄腫、例えば、急性、慢性、リンパ性および/または骨髄性白血病、例えば急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)および慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML (M0)、骨髄芽球性白血病(M1)、骨髄芽球性白血病(M2;細胞成熟を伴う)、前骨髄球性白血病(M3またはM3バリアント[M3V])、骨髄単球性白血病(M4または好酸球増加症を伴うM4バリアント[M4E])、単球性白血病(M5)、赤白血病(M6)、巨核芽球性白血病(M7)、孤立性顆粒球性肉腫および緑色腫;リンパ腫、例えばホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ系組織(MALT)リンパ腫、未分化(例えば、Ki 1+)大細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸T細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、前駆体Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性;およびリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、真性組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性体液性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ系造血性腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、汎発性大B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、汎発性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆体Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚性T細胞リンパ腫(CTLC)(菌状息肉症またはセザリー症候群とも呼ばれる)およびワルデンシュトレーム高ガンマグロブリン血症を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL);骨髄腫、例えば、IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌型骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(緩徐進行性骨髄腫とも呼ばれる)、孤立性形質細胞腫および多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞リンパ腫;骨髄系造血性腫瘍、線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉性起源の腫瘍;星状細胞腫、シュワン腫を含む、精上皮腫、奇形癌、中枢および末梢神経の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む、間葉性起源の腫瘍;および小細胞および大脳様細胞型を含むT前リンパ性白血病(T−PLL)のようなT細胞障害を含むが、これに限定されない、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞性癌および奇形癌、リンパ系造血性腫瘍、例えばT細胞およびB細胞腫瘍を含む、他の腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒リンパ球白血病(LGL);a/d T−NHL肝脾リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性および免疫芽球性サブタイプ);血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;頭頚部癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌;急性骨髄リンパ腫、ならびに該癌のあらゆる組み合わせを含む。ここに記載する方法は、転移癌、難治性癌(例えば、例えば、遮断CTLA−4またはPD−1またはPD−L1抗体での先の免疫療法に難治性の癌)および再発性癌の処置にも使用し得る。
【0472】
本方法は、CD73陽性であるまたは高レベルのCD73を発現する腫瘍または癌の処置に使用し得る。方法は、まず腫瘍または腫瘍細胞におけるCD73のレベルを決定し、腫瘍または細胞がCD73、例えば、高レベルのCD73を発現するならば、例えば、ここに記載する、抗CD73抗体で処置することを含み得る。
【0473】
抗CD73抗体を、単剤療法としてまたは唯一の免疫刺激療法として投与し得る。CD73に対する抗体、例えば、ここに記載する抗CD73抗体を、癌性細胞、精製腫瘍抗原(組み換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子を遺伝子導入された細胞のような免疫原性薬剤と組み合わせてもよい(He et al (2004) J. Immunol. 173:4919-28)。使用できる腫瘍ワクチンの非限定的例は、gp100、MAGE抗原、Trp−2、MART1および/またはチロシナーゼのペプチドのような黒色腫抗原のペプチドまたはサイトカインGM−CSFを発現するように遺伝子導入された腫瘍細胞を含む(下にさらに記載)。
【0474】
ヒトにおいて、黒色腫のようなある腫瘍は免疫原性であることが示されている。CD73阻害によりT細胞活性化の閾値を低下させることにより、宿主における腫瘍応答が活性化され、非免疫原性腫瘍または免疫原性が限定的であるものの処置を可能にすることができる。
【0475】
抗CD73抗体、例えば、ここに記載する抗CD73抗体を、ワクチン接種プロトコールと組み合わせ得る。腫瘍に対するワクチン接種のための多くの実験的戦略が考案されている(Rosenberg, S., 2000, Development of Cancer Vaccines, ASCO Educational Book Spring: 60-62; Logothetis, C., 2000, ASCO Educational Book Spring: 300-302; Khayat, D. 2000, ASCO Educational Book Spring: 414-428; Foon, K. 2000, ASCO Educational Book Spring: 730-738参照; Restifo, N. and Sznol, M., Cancer Vaccines, Ch, 61, pp, 3023-3043 in DeVita et al., (eds.), 1997, Cancer: Principles and Practice of Oncology, Fifth Editionもまた参照のこと)。これらの戦略の一つにおいて、ワクチンは、自己または同種腫瘍細胞を使用して調製されている。これらの細胞ワクチンは、腫瘍細胞がGM−CSFを発現するように形質導入されたとき、最も有効であることが示されている。GM−CSFは、腫瘍ワクチン接種のための抗原提示の強力なアクティベーターであることが示されている(Dranoff et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A, 90: 3539-43)。
【0476】
多様な腫瘍における遺伝子発現および大規模遺伝子発現パターンの研究により、いわゆる腫瘍特異的抗原の定義が導かれている(Rosenberg, S A (1999) Immunity 10: 281-7)。多くの場合、これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍および腫瘍が発生した細胞において発現される分化抗原、例えばメラノサイト抗原gp100、MAGE抗原およびTrp−2である。より重要なことに、これらの抗原の多くは、宿主に見られる腫瘍特異的T細胞の標的であることが示されている。CD73阻害を、腫瘍において発現される組み換えタンパク質および/またはペプチドのコレクションと共に、これらのタンパク質に対する免疫応答を産生するために使用してよい。これらのタンパク質は、通常免疫系により自己抗原と見なされ、それゆえにそれらに対して耐容性である。腫瘍抗原は、染色体のテロメアの合成に必要であり、85%を超えるヒト癌で発現され、体細胞性組織では数が限定されている、タンパク質テロメラーゼを含み得る(Kim et al., (1994) Science 266: 2011-2013)。腫瘍抗原はまた、タンパク質配列を変えるまたは2つの無関係配列の融合タンパク質(すなわち、フィラデルフィア染色体におけるbcr−abl)を創出する体細胞性変異のため、癌細胞において発現される“ネオ抗原”またはB細胞腫瘍からのイディオタイプでもあり得る。
【0477】
他の腫瘍ワクチンは、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBVおよびHCV)およびカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)のようなヒト癌と関与するウイルスからのタンパク質を含み得る。CD73阻害と組み合わせて使用できる腫瘍特異的抗原の多の形態は、腫瘍組織自体から単離された精製ヒートショックタンパク質(HSP)である。これらのヒートショックタンパク質は、腫瘍細胞からのタンパク質のフラグメントを含み、これらのHSPは、腫瘍免疫の惹起のための抗原提示細胞の送達に極めて有効である(Suot & Srivastava (1995) Science 269:1585-1588; Tamura et al., (1997) Science 278:117-120)。
【0478】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答の誘発に使用できる強力な抗原提示細胞である。DCは、エクスビボで産生され、多様なタンパク質およびペプチド抗原ならびに腫瘍細胞抽出物を用いて充填される(Nestle et al., (1998) Nature Medicine 4: 328-332)。DCはまた同様にこれらの腫瘍抗原を発現する遺伝的手段により形質導入もできる。DCはまた免疫化の目的で腫瘍細胞に直接的に融合されている(Kugler et al., (2000) Nature Medicine 6:332-336)。ワクチン接種の方法として、DC免疫化を、CD73阻害と効率的に組み合わせて、より強力な抗腫瘍応答を活性化できる。
【0479】
CD73阻害をまた標準癌処置と組み合わせ得る(例えば、手術、放射線および化学療法)。CD73阻害を、化学療法レジメと効率的に組泡es得る。これらの例において、投与する化学療法剤の用量を低減することが可能であり得る(Mokyr et al., (1998) Cancer Research 58: 5301-5304)。このような組み合わせの例は、黒色腫の処置のためのダカルバジンと組み合わせた抗CD73抗体である。このような組み合わせの他の例は、黒色腫の処置のためのインターロイキン−2(IL−2)と組み合わせた抗CD73抗体である。CD73阻害と化学療法の組み合わせの裏にある科学的原理は、大部分の化学療法化合物の細胞毒性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原レベルを増加させることにある。細胞死によりCD73阻害との相乗性をもたらし得る他の組み合わせ治療は、放射線、手術およびホルモン除去である。これらのプロトコールの各々は、宿主における腫瘍抗原の源を創出する。血管形成阻害剤も、CD73阻害と組み合わせ得る。血管形成の阻害は、腫瘍細胞死をもたらし、これが宿主抗原提示経路に腫瘍抗原を供給し得る。
【0480】
このような組み合わせのさらに他の例は、抗CD39、抗A2ARまたは化学阻害剤または抗A2BR抗体または化学阻害剤と組み合わせた抗CD73抗体である。CD73阻害とCD39、A2ARまたはA2BRの阻害の組み合わせの裏にある科学的根拠は、これらのタンパク質がCD73生物学的機能およびシグナル伝達とも連結していることである。特に、CD39は、ATPまたはADPからAMPへの変換を触媒し、そうして、CD73酵素活性(すなわちAMPからアデノシンへの変換)の基質(AMP)を提供する。さらに、アデノシンは、A1R、A2AR、A2BRおよびA3を含む、4既知受容体のリガンドである。A2ARおよびA2BRは、cAMPシグナル伝達により、腫瘍環境における腫瘍細胞増殖、増殖、遊走および転移ならびにT細胞活性化を制御することが示されている。
【0481】
ここに記載する抗CD73抗体をまたFcαまたはFcγ受容体発現エフェクター細胞を腫瘍細胞に標的化させる二特異性抗体とも組み合わせても使用し得る(例えば、米国特許5,922,845および5,837,243参照)。二特異性抗体を、2個の別々の抗原を標的化するために使用できる。例えば抗Fc受容体/抗腫瘍抗原(例えば、Her−2/neu)二特異性抗体は、マクロファージを腫瘍部位に標的化させるために使用されている。このターゲティングは、腫瘍特異的応答を効率的に活性化し得る。あるいは、抗原を、腫瘍抗原および樹状細胞特異的細胞表面マーカーに結合する二特異性抗体の使用により、DCに直接的に送達させ得る。
【0482】
腫瘍は、多種多様な機構により宿主免疫監視を逃れる。これらの機構の多くが、腫瘍により発現され、免疫抑制性であるタンパク質の不活性化により克服され得る。これらは、とりわけTGF−β(Kehrl et al., (1986) J. Exp. Med. 163: 1037-1050)、IL−10(Howard & O'Garra (1992) Immunology Today 13: 198-200)およびFasリガンド(Hahne et al., (1996) Science 274: 1363-1365)を含む。これらの各々に対する抗体を、抗CD73抗体と組み合わせて使用して、免疫抑制剤の作用を逆転し、宿主による腫瘍免疫応答を支持し得る。
【0483】
宿主免疫応答性を活性化する他の抗体を、抗CD73抗体と組み合わせて使用しできる。これらは、DC機能および抗原提示を活性化する樹状細胞の表面上の分子を含む。抗CD40抗体はまた、T細胞ヘルパー活性に効率的に置き換わり(Ridge et al., (1998) Nature 393: 474-478)、抗CD73抗体と組み合わせて使用できる。OX−40(Weinberg et al., (2000) Immunol 164: 2160-2169)、4−1BB(Melero et al., (1997) Nature Medicine 3: 682-685 (1997))およびICOS(Hutloff et al., (1999) Nature 397: 262-26)のようなT細胞共刺激性分子に対する活性化抗体も、T細胞活性化のレベル増加のために提供し得る。PD1、PD−L1またはCTLA−4の阻害剤(例えば、米国特許5,811,097)もCD73抗体と組み合わせて使用し得る。
【0484】
他のここに記載する方法は、特定の毒素または病原体に曝されている患者の処置に使用される。したがって、ここに記載する他の面は、対象が感染性疾患について処置されるように、対象に抗CD73抗体またはその抗原結合部分を投与することを含む、対象における感染性疾患を処置する方法である。これに加えてまたはこれとは別に、抗体はキメラまたはヒト化抗体であり得る。
【0485】
上記方法の全てにおいて、CD73阻害を、腫瘍抗原に対する提示を増強する、サイトカイン処置(例えば、インターフェロンs、GM−CSF、G−CSF、IL−2)または二特異性抗体治療のような免疫療法の他の形態と組み合わせ得る(例えば、Holliger (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak (1994) Structure 2:1121-1123参照)。
【0486】
組み合わせ治療
上記組み合わせ治療に加えて、ここに記載する抗CD73抗体は、下記のように、例えば、癌の処置のために、組み合わせ治療でも用い得る。
【0487】
さらにここに提供されるのは、抗CD73抗体を、免疫応答の刺激に有効であり、それゆえに対象における免疫応答をさらに増強、刺激または上方制御する1以上のさらなる薬剤、例えば、抗体と共投与する、組み合わせ治療の方法である。
【0488】
一般に、ここに記載する抗CD73抗体を、(i)共刺激性受容体のアゴニストおよび/または(ii)T細胞上の阻害性シグナルのアンタゴニストと組み合わせることができ、この両者とも、抗原特異的T細胞応答をもたらす(免疫チェックポイントレギュレーター)。共刺激性および共阻害性分子の大部分は、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーであり、ここに記載する抗CD73抗体を、免疫応答増加のために、IgSFファミリーのメンバーを標的とする薬剤と投与してよい。共刺激性または共阻害性受容体に結合する膜結合リガンドの一つの重要なファミリーは、B7−1、B7−2、B7−H1(PD−L1)、B7−DC(PD−L2)、B7−H2(ICOS−L)、B7−H3、B7−H4、B7−H5(VISTA)およびB7−H6を含むB7ファミリーである。共刺激性または共阻害性受容体に結合する膜結合リガンドの他のファミリーは、同族TNF受容体ファミリーメンバーに結合する分子のTNFファミリーであり、これは、CD40およびCD40L、OX−40、OX−40L、CD70、CD27L、CD30、CD30L、4−1BBL、CD137、GITR、TRAIL/Apo2−L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fn14、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR、TACI、APRIL、BCMA、LTβR、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TL1A、TRAMP/DR3、EDAR、EDA1、XEDAR、EDA2、TNFR1、リンホトキシンα/TNFβ、TNFR2、TNFα、LTβR、リンホトキシンα 1β2、FAS、FASL、RELT、DR6、TROY、NGFRを含む(例えば、Tansey (2009) Drug Discovery Today 00:1参照)。T細胞活性化は、可溶性サイトカインによっても制御される。それゆえに、抗CD73抗体を、例えば、癌のような増殖性疾患の処置のための、免疫応答刺激のために、(i)IgSFファミリーまたはB7ファミリーまたはT細胞活性化を阻害するTNFファミリーのタンパク質のアンタゴニスト(または阻害剤または遮断剤)またはT細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えば、IL−6、IL−10、TGF−β、VEGF;“免疫抑制性サイトカイン”)のアンタゴニストおよび/または(ii)IgSFファミリー、B7ファミリーまたはTNFファミリーの刺激性受容体またはT細胞活性化を刺激するサイトカインのアゴニストと組み合わせでしよい得できる。
【0489】
例えば、T細胞応答は、ここに記載する抗CD73抗体、例えば、CD73.4−IgG2CS−IgG1.1fおよび次の薬剤の1以上の組み合わせにより刺激され得る:
(1)上記のようなCTLA−4、PD−1、PD−L1、PD−L2およびLAG−3ならびに次のタンパク質のいずれか:TIM−3、ガレクチン9、CEACAM−1、BTLA、CD69、ガレクチン−1、TIGIT、CD113、GPR56、VISTA、2B4、CD48、GARP、CD73、PD1H、LAIR1、TIM−1、TIM−4、CD39のような、T細胞活性化)を阻害するタンパク質(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)のアンタゴニスト(阻害剤または遮断剤)。
(2)B7−1、B7−2、CD28、4−1BB(CD137)、4−1BBL、GITR、GITRL、ICOS、ICOS−L、OX40、OX40L、CD70、CD27、CD40、DR3およびCD28HのようなT細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニスト。
【0490】
上記タンパク質の一つを調節し、癌の処置のために、アンタゴニスト抗CD73抗体、例えば、ここに記載のものと組み合わせ得る薬剤の例は、ヤーボイ
TM(イピリムマブに対する)またはトレメリムマブ(CTLA−4に対する)、ガリキシマブ(B7.1に対する)、BMS−936558(PD−1に対する)、CT−011(PD−1に対する)、MK−3475(PD−1に対する)、AMP224(B7DCに対する)、BMS−936559(B7−H1に対する)、MPDL3280A(B7−H1に対する)、MEDI−570(ICOSに対する)、AMG557(B7H2に対する)、MGA271(B7H3に対する)、IMP321(LAG−3に対する)、BMS−663513(CD137に対する)、PF−05082566(CD137に対する)、CDX−1127(CD27に対する)、抗OX40(Providence Health Services)、huMAbOX40L(OX40Lに対する)、アタシセプト(TACIに対する)、CP−870893(CD40に対する)、ルカツムマブ(CD40に対する)、ダセツズマブ(CD40に対する)、ムロモナブ−CD3(CD3に対する)、イピリムマブ(CTLA−4に対する)を含む。
【0491】
癌の処置のために、アンタゴニスト抗CD73抗体と組み合わせ得る他の分子は、NK細胞上の阻害性受容体のアンタゴニストまたはNK細胞上の活性化受容体のアゴニストを含む。例えば、抗CD73アンタゴニスト抗体を、KIRのアンタゴニスト(例えば、リリルマブ)と組み合わせ得る。
【0492】
T細胞活性化はまた可溶性サイトカインにより制御され、抗CD73抗体を、例えば、癌を有する、対象に、T細胞活性化を阻害するサイトカインのアンタゴニストまたはT細胞活性化を刺激するサイトカインのアゴニストと投与し得る。
【0493】
ある態様において、抗CD73抗体を、例えば、癌のような増殖性疾患の処置のために、免疫応答を刺激するために、(i)T細胞活性化を阻害するIgSFファミリーまたはB7ファミリーまたはTNFファミリーのタンパク質のアンタゴニスト(または阻害剤または遮断剤)またはT細胞活性化を阻害するサイトカインのアンタゴニスト(例えば、IL−6、IL−10、TGF−β、VEGF;“免疫抑制性サイトカイン”)および/または(ii)IgSFファミリー、B7ファミリーまたはTNFファミリーの刺激性受容体またはT細胞活性化を刺激するサイトカインのアゴニストと組み合わせて使用できる。
【0494】
組み合わせ治療のためのさらに他の薬剤は、RG7155(WO11/70024、WO11/107553、WO11/131407、WO13/87699、WO13/119716、WO13/132044)またはFPA−008(WO11/140249;WO13169264;WO14/036357)のようなCSF−1Rアンタゴニストを含むCSF−1Rアンタゴニスト抗体を含むが、これらに限定されない、マクロファージまたは単球を阻害または枯渇する薬剤を含む。
【0495】
抗CD73抗体を、TGF−βシグナル伝達を阻害する薬剤とも投与し得る。
抗CD73抗体と組み合わせ得るさらなる薬剤は、腫瘍抗原提示を増強する薬剤、例えば、樹状細胞ワクチン、GM−CSF分泌性細胞ワクチン、CpGオリゴヌクレオチドおよびイミキモドまたは腫瘍細胞の免疫原性を増強する治療(例えば、アントラサイクリン)を含む。
【0496】
抗CD73抗体と組み合わせ得る他の治療は、T
reg細胞を枯渇または遮断する治療、例えば、CD25に特異的に結合する薬剤を含む。
【0497】
抗CD73抗体と組み合わせ得る他の治療は、インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼまたは一酸化窒素合成酵素のような代謝酵素を阻害する治療である。
【0498】
抗CD73抗体と使用し得る他のクラスの薬剤は、アデノシンの形成を阻害するまたはアデノシンA2A受容体を阻害する薬剤を含む。
【0499】
癌の処置のために抗CD73抗体と組み合わせ得る他の治療は、T細胞アネルギーまたは消耗を回復/予防する治療および腫瘍部位の自然免疫活性化および/または炎症を誘発する治療を含む。
【0500】
抗CD73抗体を1を超える免疫腫瘍学的薬剤と組み合わせてよく、例えば、次の1以上のような免疫経路の複数の要素を標的とするコンビナトリアルアプローチと組み合わせ得る:腫瘍抗原提示を増強する治療(例えば、樹状細胞ワクチン、GM−CSF分泌性細胞ワクチン、CpGオリゴヌクレオチド、イミキモド);例えば、CTLA−4および/またはPD1/PD−L1/PD−L2経路阻害および/またはT
regまたは他の免疫抑制細胞の枯渇または遮断により、陰性免疫制御を阻害する治療;例えば、CD−137、OX−40および/またはGITR経路を刺激するおよび/またはT細胞エフェクター機能を刺激するアゴニストでの、陽性免疫制御を刺激する治療;抗腫瘍T細胞の頻度を全身性に高める治療;例えば、CD25のアンタゴニスト(例えば、ダクリズマブ)またはエクスビボ抗CD25ビーズ枯渇を使用する、腫瘍におけるT
regのようなT
regを枯渇または阻害する治療;腫瘍におけるサプレッサー骨髄細胞の機能に影響する治療;腫瘍細胞の免疫原性を増強する治療(例えば、アントラサイクリン);例えば、キメラ抗原受容体による細胞修飾のような、遺伝子修飾された細胞を含む、養子T細胞またはNK細胞導入(CAR−T治療);インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼまたは一酸化窒素合成酵素のような代謝酵素を阻害する治療;T細胞アネルギーまたは消耗を回復/予防する治療;腫瘍部位の自然免疫活性化および/または炎症を誘発する治療;免疫刺激性サイトカインの投与;または免疫抑制性サイトカインの遮断。
【0501】
一般に、ここに記載する抗CD73抗体を、陽性共刺激性受容体を連結するアゴニスト薬剤、阻害性受容体を介するシグナル伝達を減弱する遮断剤、アンタゴニストおよび1以上の抗腫瘍T細胞の頻度を全身性に高める薬剤、腫瘍微小環境内の多様な免疫抑制経路に打ち勝つ薬剤(例えば、阻害性受容体結合遮断(例えば、PD−L1/PD−1相互作用)、T
reg枯渇または阻害(例えば、抗CD25モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)またはエクスビボ抗CD25ビーズ枯渇の使用)、IDOのような代謝酵素阻害またはT細胞アネルギーまたは消耗の回復/予防)および腫瘍部位で自然免疫活性化および/または炎症を誘発する薬剤の1以上と使用し得る。阻害性受容体の内在化の増加は、潜在的阻害剤のレベル低下に反映され得る(シグナル伝達が後続しないと仮定)。
【0502】
ある態様において、抗CD73抗体を、対象がBRAF V600変異陽性であれば、BRAF阻害剤と共に対象に投与する。
【0503】
ここに提供されるのは、例えば、腫瘍増殖阻害または抗ウイルス応答刺激のために、対象における免疫応答が刺激されるように、対象にアンタゴニスト抗CD73分子、例えば、抗体および1以上のさらなる免疫刺激性抗体、例えば、抗PD−1アンタゴニスト、例えば、アンタゴニスト抗体、抗PD−L1アンタゴニスト、例えば、アンタゴニスト抗体、アンタゴニスト抗CTLA−4アンタゴニスト、例えば、アンタゴニスト抗体および/または抗LAG3アンタゴニスト、例えば、アンタゴニスト抗体を投与することを含む、対象における免疫応答を刺激する方法である。ある態様において、対象に、アンタゴニスト抗CD73抗体およびアンタゴニスト抗PD−1抗体を投与する。ある態様において、対象に、アンタゴニスト抗CD73抗体およびアンタゴニスト抗PD−L1抗体を投与する。ある態様において、対象に、アンタゴニスト抗CD73抗体およびアンタゴニスト抗CTLA−4抗体を投与する。ある態様において、抗CD73抗体は、ここに記載する抗体のようなヒト抗体である。あるいは、抗CD73抗体は、さらにここに記載するもののような、例えば、キメラまたはヒト化抗体(例えば、マウス抗CD73 mAbから製造)である。ある態様において、少なくとも一つのさらなる免疫刺激性抗体(例えば、アンタゴニスト抗PD−1、アンタゴニスト抗PD−L1、アンタゴニスト抗CTLA−4および/またはアンタゴニスト抗LAG3抗体)はヒト抗体である。あるいは、少なくとも一つのさらなる免疫刺激性抗体は、例えば、キメラまたはヒト化抗体(例えば、マウス抗PD−1、抗PD−L1、抗CTLA−4および/または抗LAG3抗体から製造)であり得る。
【0504】
ここに提供されるのは、対象にアンタゴニスト抗CD73抗体およびアンタゴニストPD−1抗体を投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置する方法である。ある態様において、抗CD73抗体は治療量以下の用量で投与され、抗PD−1抗体は治療量以下の用量で投与されまたは両者は治療量以下の用量で投与される。またここに提供されるのは、対象に抗CD73抗体および治療量以下の抗PD−1抗体を投与することを含む、過増殖性疾患の免疫刺激剤での処置に関連する有害事象を変える方法である。ある態様において、対象はヒトである。ある態様において、抗PD−1抗体は、ここに記載する11F11、4C3、4D4、10D2、11A6、24H2、5F8、6E11、7A11、CD73.3、CD73.4、CD73.5、CD73.6、CD73.7、CD73.8、CD73.9、CD73.10またはCD73.11のCDRまたは可変領域を含む抗体またはここに記載する他のアンタゴニスト抗CD73抗体のような、ヒト配列モノクローナル抗体であり、抗CD73抗体はヒト配列モノクローナル抗体である。
【0505】
ここに記載する方法において使用するための適当なPD−1アンタゴニストは、リガンド、抗体(例えば、モノクローナル抗体および二特異性抗体)および多価薬剤を含むが、これらに限定されない。ある態様において、PD−1アンタゴニストは、融合タンパク質、例えば、AMP−244のようなFc融合タンパク質である。ある態様において、PD−1アンタゴニストは、抗PD−1または抗PD−L1抗体である。
【0506】
抗PD−1抗体の例は、ニボルマブ(BMS−936558)またはWO2006/121168に記載する抗体17D8、2D3、4H1、5C4、7D3、5F4および4A11のCDRまたは可変領域を含む抗体である。ある態様において、抗PD1抗体は、WO2012/145493に記載のMK−3475(ランブロリズマブ);WO2012/145493に記載のAMP−514;およびCT−011(ピディリズマブ;以前は、CT−AcTibodyまたはBAT;例えば、Rosenblatt et al., (2011) J. Immunotherapy 34:409参照)である。さらに既知PD−1抗体および他のPD−1阻害剤は、WO2009/014708、WO03/099196、WO2009/114335、WO2011/066389、WO2011/161699、WO2012/145493、米国特許7,635,757および8,217,149および米国特許公報2009/0317368に記載のものを含む。WO2013/173223に開示される抗PD−1抗体のいずれも使用し得る。これらの抗体のいずれかと、PD−1と結合について競合するおよび/または同一エピトープに結合する抗PD−1抗体も組み合わせ処置に使用し得る。
【0507】
ある態様において、抗PD−1抗体は、ヒトPD−1に5×10
-8M以下のK
Dで結合する、ヒトPD−1に1×10
-8M以下のK
Dで結合する、ヒトPD−1に5×10
-9M以下のK
Dで結合するまたはヒトPD−1に1×10
-8M〜1×10
-10M以下のK
Dで結合する。
【0508】
ここに提供されるのは、対象にアンタゴニスト抗CD73抗体およびアンタゴニストPD−L1抗体を投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置する方法である。ある態様において、抗CD73抗体は治療量以下の用量で投与され、抗PD−L1抗体は治療量以下の用量で投与されまたは両者は治療量以下の用量で投与される。ここに提供されるのは、対象に抗CD73抗体および治療量以下の抗PD−L1抗体を投与することを含む、過増殖性疾患の免疫刺激剤での処置と関連する有害事象を変える方法である。ある態様において、対象はヒトである。ある態様において、抗PD−L1抗体は、ここに記載する11F11、4C3、4D4、10D2、11A6、24H2、5F8、6E11、7A11、CD73.3、CD73.4、CD73.5、CD73.6、CD73.7、CD73.8、CD73.9、CD73.10またはCD73.11のCDRまたは可変領域を含む抗体またはここに記載する他のアンタゴニスト抗CD73抗体のような、ヒト配列モノクローナル抗体であり、抗CD73抗体はヒト配列モノクローナル抗体である。
【0509】
ある態様において、抗PD−L1抗体は、BMS−936559(WO2007/005874およびUS特許7,943,743で12A4と称される)またはPCT公開WO07/005874およびUS特許7,943,743に記載される、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4のCDRまたは可変領域を含む抗体である。ある態様において、抗PD−L1抗体はMEDI4736(別名抗B7−H1)またはMPDL3280A(別名RG7446)である。WO2013/173223、WO2011/066389、WO2012/145493、米国特許7,635,757および8,217,149および米国公報2009/145493に開示の抗PD−L1抗体のいずれも使用し得る。これらの抗体のいずれかと競合するおよび/または同一エピトープに結合する抗PD−L1抗体も組み合わせ処置に使用し得る。
【0510】
ある態様において、抗PD−L1抗体は、ヒトPD−L1に5×10
-8M以下のK
Dで結合する、ヒトPD−L1に1×10
-8M以下のK
Dで結合する、ヒトPD−L1に5×10
-9M以下のK
Dで結合するまたはヒトPD−L1に1×10
-8M〜1×10
-10M以下のK
Dで結合する。
【0511】
ここに提供されるのは、対象にここに記載する抗CD73抗体およびCTLA−4アンタゴニスト抗体を投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置する方法である。ある態様において、抗CD73抗体は治療量以下の用量で投与され、抗CTLA−4抗体は治療量以下の用量で投与されまたは両者は治療量以下の用量で投与される。ここに提供されるのは、対象に抗CD73抗体および治療量以下の抗CTLA−4抗体を投与することを含む、過増殖性疾患の免疫刺激剤での処置と関連する有害事象を変える方法である。ある態様において、対象はヒトである。ある態様において、抗CTLA−4抗体は、ヤーボイ
TM(イピリムマブまたはPCT公開WO01/14424に記載の抗体10D1)、トレメリムマブ(以前はチシリムマブ、CP−675,206)、次の文献のWO98/42752;WO00/37504;米国特許6,207,156;Hurwitz et al., (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(17):10067-10071; Camacho et al., (2004) J. Clin. Oncology 22(145): Abstract No. 2505(抗体CP−675206);およびMokyr et al., (1998) Cancer Res. 58:5301-5304いずれかに記載のモノクローナルまたは抗CTLA−4抗体からなる群から選択される抗体である。WO2013/173223に開示の抗CTLA−4抗体のいずれも使用し得る。
【0512】
ある態様において、抗CTLA−4抗体は、ヒトCTLA−4に5×10
-8M以下のK
Dで結合する、ヒトCTLA−4に1×10
-8M以下のK
Dで結合する、ヒトCTLA−4に5×10
-9M以下のK
Dで結合するまたはヒトCTLA−4に1×10
-8M〜1×10
-10M以下のK
Dで結合する。
【0513】
ここに提供されるのは、対象に抗CD73抗体および抗LAG−3抗体を投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置する方法である。さらなる態様において、抗CD73抗体は治療量以下の用量で投与され、抗LAG−3抗体は治療量以下の用量で投与されまたは両者は治療量以下の用量で投与される。ここに提供するのは、対象に抗CD73抗体および治療量以下の抗LAG−3抗体を投与することを含む、過増殖性疾患の免疫刺激剤での処置と関連する有害事象を変える方法である。ある態様において、対象はヒトである。ある態様において、抗PD−L1抗体は、11F11、4C3、4D4、10D2、11A6、24H2、5F8、6E11、7A11、CD73.3、CD73.4、CD73.5、CD73.6、CD73.7、CD73.8、CD73.9、CD73.10またはCD73.11またはここに記載する他のアンタゴニスト抗CD73抗体のCDRまたは可変領域を含む抗体のような、ヒト配列モノクローナル抗体であり、抗CD73抗体はヒト配列モノクローナル抗体である。抗LAG3抗体の例は、米国特許公報US2011/0150892およびWO2014/008218に記載される、抗体25F7、26H10、25E3、8B7、11F2または17E5のCDRまたは可変領域を含む抗体を含む。ある態様において、抗LAG−3抗体はBMS−986016である。使用できる他の当分野で認識される抗LAG−3抗体は、US2011/007023に記載のIMP731を含む。IMP−321も使用し得る。これらの抗体のいずれかと競合するおよび/または同一エピトープに結合する抗LAG−3抗体も、組み合わせ処置において使用し得る。
【0514】
ある態様において、抗LAG−3抗体は、ヒトLAG−3に5×10
-8M以下のK
Dで結合する、ヒトLAG−3に1×10
-8M以下のK
Dで結合する、ヒトLAG−3に5×10
-9M以下のK
Dで結合するまたはヒトLAG−3に1×10
-8M〜1×10
-10M以下のK
Dで結合する。
【0515】
ある態様において、抗CD73抗体を、抗GITRアゴニスト抗体、例えば、6C8のCDR配列を有する抗体、例えば、WO2006/105021に記載のような、例えば、6C8のCDRを有するヒト化抗体;WO2011/028683に記載の抗GITR抗体のCDRを有する抗体;JP2008278814に記載の抗GITR抗体のCDRを有する抗体;またはPCT/US2015/033991に記載の抗GITR抗体のCDRを有する抗体と共に投与する。
【0516】
ここに記載する抗CD73抗体およびLAG−3および/またはCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1のような第二標的抗原の1以上に対するアンタゴニスト、例えば、アンタゴニスト抗体の投与は、患者における癌性細胞に対する免疫応答を増強できる。本発明の抗体を使用して増殖を阻害し得る癌は、一般に免疫療法に応答する癌を含む。本発明の組み合わせ治療で処置する癌の代表例は、抗CD73抗体での単剤療法の上での記載で特に挙げた癌を含む。
【0517】
ある態様において、ここに記載する治療抗体の組み合わせを、薬学的に許容される担体中の単一組成物として同時にまたは薬学的に許容される担体中の各抗体を用いる別々の組成物として逐次的に投与してよい。他の態様において、治療抗体の組み合わせを逐次的に投与し得る。例えば、抗CTLA−4抗体を最初に投与し、抗CD73抗体を次にまたは抗CD73抗体を最初に投与し、抗CTLA−4抗体を次にのように、抗CTLA−4抗体および抗CD73抗体を逐次的に投与し得る。これに加えてまたはこれとは別に、抗PD−1抗体を最初に投与し、抗CD73抗体を次にまたは抗CD73抗体を最初に投与し、抗PD−1抗体を次にのように、抗PD−1抗体および抗CD73抗体を逐次的に投与し得る。これに加えてまたはこれとは別に、抗PD−L1抗体を最初に投与し、抗CD73抗体を次にまたは抗CD73抗体を最初に投与し、抗PD−L1抗体を次にのように、抗PD−L1抗体および抗CD73抗体を逐次的に投与し得る。これに加えてまたはこれとは別に、抗LAG−3抗体を最初に投与し、抗CD73抗体を次にまたは抗CD73抗体を最初に投与し、抗LAG−3抗体を次にのように、抗LAG−3抗体および抗CD73抗体を逐次的に投与し得る。
【0518】
さらに、組み合わせ治療の1回を超える用量を逐次的に投与するならば、逐次投与の順番は、各投与時に逆になっても同じ順番のままでもよく、逐次投与を、同時投与または任意のこれらの組み合わせと組み合わせ得る。例えば、組み合わせ抗CTLA−4抗体および抗CD73抗体の最初の投与は同時であってよく、二回目の投与は、抗CTLA−4抗体が先で、抗CD73抗体がその次、三回目の投与は、抗CD73抗体が先で、抗CTLA−4抗体がその次などであり得る。これに加えてまたはこれとは別に、組み合わせ抗PD−1抗体および抗CD73抗体の最初の投与は同時であってよく、二回目の投与は、抗PD−1抗体が最初で、抗CD73抗体が次、三回目の投与は、抗CD73抗体が最初で、抗PD−1抗体が次などであり得る。これに加えてまたはこれとは別に、組み合わせ抗PD−L1抗体および抗CD73抗体の最初の投与は同時であってよく、二回目の投与は、抗PD−L1抗体が先で、抗CD73抗体がその次、三回目の投与は、抗CD73抗体が先で、抗PD−L1抗体がその次などであり得る。これに加えてまたはこれとは別に、組み合わせ抗LAG−3抗体および抗CD73抗体の最初の投与は同時であってよく、二回目の投与は、抗LAG−3抗体が先で、抗CD73抗体がその次、三回目の投与は、抗CD73抗体が先で、抗LAG−3抗体がその次などであり得る。他の代表的投薬スキームは、先ず抗CD73投与し、次いで抗CTLA−4抗体(および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体および/または抗LAG−3抗体)の逐次の最初の投与を含み、その後の投与は同時であり得る。
【0519】
ある態様において、免疫系の刺激により利益を受け得る疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象を、対象に免疫腫瘍学的薬剤および抗CD73抗体を投与することにより処置し、ここで、免疫腫瘍学的薬剤はCD137(4−1BB)アゴニスト、例えばアゴニストCD137抗体である。適当なCD137抗体は、例えば、ウレルマブまたはPF−05082566(WO12/32433)を含む。
【0520】
ある態様において、免疫系の刺激により利益を受け得る疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象を、対象に免疫腫瘍学的薬剤および抗CD73抗体を投与することにより処置し、ここで、免疫腫瘍学的薬剤は、OX40アゴニスト、例えばアゴニストOX40抗体である。適当なOX40抗体は、例えば、MEDI−6383、MEDI−6469またはMOXR0916(RG7888;WO06/029879)を含む。
【0521】
ある態様において、免疫系の刺激により利益を受け得る疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象を、対象に免疫腫瘍学的薬剤および抗CD73抗体を投与することにより処置し、ここで、免疫腫瘍学的薬剤はCD40アゴニスト、例えばアゴニストCD40抗体である。ある態様において、免疫腫瘍学的薬剤はCD40アンタゴニスト、例えばアンタゴニストCD40抗体である。適当なCD40抗体は、例えば、ルカツムマブ(HCD122)、ダセツズマブ(SGN−40)、CP−870,893またはChi Lob 7/4を含む。
【0522】
ある態様において、免疫系の刺激により利益を受け得る疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象を、対象に免疫腫瘍学的薬剤および抗CD73抗体を投与することにより処置し、ここで、免疫腫瘍学的薬剤はCD27アゴニスト、例えばアゴニストCD27抗体である。適当なCD27抗体は、例えば、バルリルマブ(CDX−1127)を含む。
【0523】
ある態様において、免疫系の刺激により利益を受け得る疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象を、対象に免疫腫瘍学的薬剤および抗CD73抗体を投与することにより処置し、ここで、免疫腫瘍学的薬剤はMGA271(B7H3に対する)(WO11/109400)。
【0524】
ある態様において、免疫系の刺激により利益を受け得る疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象を、対象に免疫腫瘍学的薬剤および抗CD73抗体を投与することにより処置し、ここで、免疫腫瘍学的薬剤はKIRアンタゴニスト、例えばリリルマブである。
【0525】
ある態様において、免疫系の刺激により利益を受け得る疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象を、対象に免疫腫瘍学的薬剤および抗CD73抗体を投与することにより処置し、ここで、免疫腫瘍学的薬剤は、IDOアンタゴニストである。適当なIDOアンタゴニストは、例えば、INCB−024360(WO2006/122150、WO07/75598、WO08/36653、WO08/36642)、インドキシモド、NLG−919(WO09/73620、WO09/1156652、WO11/56652、WO12/142237)またはF001287を含む。
【0526】
ある態様において、免疫系の刺激により利益を受け得る疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象を、対象に免疫腫瘍学的薬剤および抗CD73抗体を投与することにより処置し、ここで、免疫腫瘍学的薬剤はトール様受容体アゴニスト、例えば、TLR2/4アゴニスト(例えば、カルメット・ゲラン桿菌);TLR7アゴニスト(例えば、Hiltonolまたはイミキモド);TLR7/8アゴニスト(例えば、レシキモド);またはTLR9アゴニスト(例えば、CpG7909)である。
【0527】
ある態様において、免疫系の刺激により利益を受け得る疾患、例えば、癌または感染性疾患を有する対象を、免疫腫瘍学的薬剤および抗CD73抗体を対象に投与することにより処置し、ここで、免疫腫瘍学的薬剤はTGF−β阻害剤、例えば、GC1008、LY2157299、TEW7197またはIMC−TR1である。
【0528】
ある面において、抗CD73抗体を、第二剤、例えば、免疫腫瘍学的薬剤投与の前に逐次的に投与する。ある面において、抗CD73抗体を、第二剤、例えば、免疫腫瘍学的薬剤と同時に投与する。さらにある面において、抗CD73抗体を、第二剤の投与の後に逐次的に投与する。2剤の投与は、例えば、30分、60分、90分、120分、3時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、3日、5日、7日または1週間以上離れて開始してよくまたは第二剤の投与は、第一剤が投与された後、例えば、30分、60分、90分、120分、3時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、3日、5日、7日または1週間以上後に開始してよい。
【0529】
ある面において、抗CD73抗体および第二剤、例えば、免疫腫瘍学的薬剤を同時に投与し、例えば、患者に、例えば、30分または60分かけて同時に点滴する。抗CD73抗体を、第二剤、例えば、免疫腫瘍学的薬剤と共製剤し得る。
【0530】
所望により、唯一の免疫治療剤としての抗CD73または抗CD73抗体と1以上のさらなる免疫治療抗体(例えば、抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3遮断)の組み合わせを、さらに癌性細胞、精製腫瘍抗原(組み換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子を遺伝子導入された細胞のような免疫原性剤と組み合わせ得る(He et al., (2004) J. Immunol. 173:4919-28)。使用できる腫瘍ワクチンの非限定的例は、gp100、MAGE抗原、Trp−2、MART1および/またはチロシナーゼのペプチドのような黒色腫抗原のペプチドまたはサイトカインGM−CSFを発現するように遺伝子導入された腫瘍細胞(下にさらに記載)を含む。組み合わせたCD73阻害および1以上のさらなる抗体(例えば、CTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断)を、さらに標準癌処置と組み合わせてもよい。例えば、組み合わせたCD73阻害および1以上のさらなる抗体(例えば、CTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断)を、化学療法レジメと効率的に組み合わせ得る。これらの例において、本開示の組み合わせと投与する他の化学療法剤の用量を低減することが可能である(Mokyr et al., (1998) Cancer Research 58: 5301-5304)。このような組み合わせの例は、抗CD73アンタゴニスト抗体と、抗CTLA−4抗体および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体および/または抗LAG−3抗体のようなさらなる抗体を伴うかまたは伴わず、さらに黒色腫の処置のためのダカルバジンとの組み合わせを含む組み合わせである。他の例は、黒色腫の処置のための、抗CD73抗体と、抗CTLA−4抗体および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体および/またはLAG−3抗体を伴うかまたは伴わず、さらにインターロイキン−2(IL−2)との組み合わせである。CD73阻害およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断と化学療法の組み合わせ使用が依拠する科学的根拠は、大部分の化学療法化合物の細胞毒性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原レベルを増加させることにある。細胞死によりCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断を伴いまたは伴わない組み合わせCD73阻害との相乗性をもたらし得る他の組み合わせ治療は、放射線、手術またはホルモン遮断を含む。これらのプロトコールの各々は、宿主における腫瘍抗原の源を創出する。血管形成阻害剤も、組み合わせCD73阻害およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断と組み合わせ得る。血管形成の阻害、腫瘍細胞死をもたらし、これが宿主抗原提示経路に腫瘍抗原を供給し得る。
【0531】
唯一の免疫治療剤としての抗CD73アンタゴニスト抗体またはCD73アンタゴニストおよびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断抗体の組み合わせをまたFcαまたはFcγ受容体発現エフェクター細胞を腫瘍細胞に標的化させる二特異性抗体とも組み合わせても使用し得る(例えば、米国特許5,922,845および5,837,243参照)。二特異性抗体を、2個の別々の抗原を標的化するために使用できる。これらの応答のT細胞アームは、組み合わせCD73阻害およびCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断の使用により増強され得る。
【0532】
他の例において、唯一の免疫治療剤としての抗CD73アンタゴニスト抗体または抗CD73抗体およびさらなる免疫刺激剤、例えば、抗CTLA−4抗体および/または抗PD−1抗体および/または抗PD−L1抗体および/またはLAG−3剤、例えば、抗体の組み合わせを、リツキサン(登録商標)(リツキシマブ)、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、ベキサール(登録商標)(トシツモマブ)、ゼヴァリン(登録商標)(イブリツモマブ)、キャンパス(登録商標)(アレムツズマブ)、Lymphocide(登録商標)(エプラツズマブ)、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)およびタルセバ(登録商標)(エルロチニブ)などのような抗新生物抗体と組み合わせて使用できる。例として、理論に縛られることを望まないが、抗癌抗体または毒素にコンジュゲートした抗癌抗体での処置は癌細胞死(例えば、腫瘍細胞)を起こすことができ、これが、免疫刺激剤、例えば、CD73、CTLA−4、PD−1、PD−L1またはLAG−3剤、例えば、抗体が介在する免疫応答を増強する。例示的態様において、過増殖性疾患(例えば、癌腫瘍)の処置は、同時または逐次的または任意のこれらの組み合わせでの、抗癌剤、例えば、抗体と抗CD73および所望により付加的免疫刺激剤、例えば、抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3剤、例えば、抗体の組み合わせを含んでよく、これは、宿主による抗腫瘍免疫応答を増強する。
【0533】
腫瘍は、多種多様な機構により宿主免疫監視を逃れる。これらの機構の多くが、腫瘍により発現され、免疫抑制性であるタンパク質の不活性化により克服され得る。これらは、とりわけTGF−β(Kehrl et al., (1986) J. Exp. Med. 163: 1037-1050)、IL−10(Howard & O'Garra (1992) Immunology Today 13: 198-200)およびFasリガンド(Hahne et al., (1996) Science 274: 1363-1365)を含む。これらの各々に対する抗体を、さらに抗体のような付加的免疫刺激剤、例えば、抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3剤を伴いまたは伴わずに、抗CD73抗体と組み合わせて使用して、免疫抑制剤の作用を逆転し、宿主による腫瘍免疫応答を支持し得る。
【0534】
宿主免疫応答性を活性可できる他の薬剤、例えば、抗体を、さらに抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3抗体のような付加的免疫刺激剤を伴いまたは伴わずに、抗CD73抗体と組み合わせて使用できる。これらは、DC機能および抗原提示を活性化する樹状細胞の表面上の分子を含む。抗CD40抗体(Ridge et al., supra)を、抗CD73抗体および所望により付加的免疫刺激剤、例えば、抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3剤、例えば、抗体と共に使用できる。T細胞共刺激性分子に対する他の活性化抗体(Weinberg et al., supra, Melero et al., supra, Hutloff et al., supra)も、T細胞活性化のレベルを高めるために提供し得る。
【0535】
上記のように、骨髄移植が、造血起源の多様な腫瘍の処置に現在使用されている。抗CD73免疫療法単独またはCTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断との組み合わせを、ドナーに移植した腫瘍特異的T細胞の有効性を高めるために使用できる。
【0536】
いくつかの実験的処置プロトコールは、腫瘍に対する抗原特異的T細胞のために、エクスビボ活性化および抗原特異的T細胞の拡張およびこれらの細胞のレシピエントへの養子移入を含む(Greenberg & Riddell, supra)。これらの方法はまた、CMVのような感染因子に対するT細胞応答の活性化にも使用できる。付加的免疫刺激療法、例えば、抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3抗体を伴うまたは伴わない抗CD73存在下のエクスビボ活性化は、養子移入T細胞の頻度および活性を増加することが期待され得る。
【0537】
ここに提供されるのは、対象に、抗CD73抗体を治療量以下の抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3剤、例えば、抗体を伴いまたは伴わずに投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)の免疫刺激剤での処置に関連する有害事象を変える方法である。例えば、ここに記載する方法は、患者への非吸収性ステロイドの投与による、免疫刺激性治療抗体誘発大腸炎または下痢の事象を低減する方法を提供する。ここで使用する“非吸収性ステロイド”は、肝臓での代謝後のバイオアベイラビリティが低いステロイド、すなわち、約20%未満であるような、強い初回通過代謝を示すグルココルチコイドである。ここに記載するある態様において、非吸収性ステロイドはブデソニドである。ブデソニドは、局所作用性グルココルチコステロイドであり、これは、経口投与後、主に肝臓で強く代謝される。エントコートEC(登録商標)(Astra-Zeneca)は、回腸へのおよび結腸中の薬物送達を最適化するために開発された、ブデソニドのpHおよび時間依存的経口製剤である。エントコートEC(登録商標)は、回腸および/または上行結腸が関与する軽度〜中程度クローン病の処置に米国で承認されている。クローン病処置のためのエントコートEC(登録商標)の通常の経口用量は6〜9mg/日である。エントコートEC(登録商標)は、吸収される前に腸で放出され、腸粘膜に保持される。腸粘膜標的組織を通過すると、エントコートEC(登録商標)は肝臓のシトクロムP450システムで広く代謝されて、無視できるグルココルチコイド活性を有する代謝物となる。それゆえに、バイオアベイラビリティは低い(約10%)。ブデソニドの低バイオアベイラビリティは、初回通過代謝があまり強くない他のグルココルチコイドと比較して、治療比を改善させる。ブデソニドは、全身作用性コルチコステロイドより、低視床下部視床下部−下垂体抑制を含む、有害作用が少ない。しかしながら、エントコートEC(登録商標)の慢性投与は、副腎皮質機能亢進および副腎抑制のような全身性グルココルチコイド効果をもたらし得る。PDR 58
th ed. 2004; 608-610参照。
【0538】
なおさらなる態様において、非吸収性ステロイドと組み合わせた、CTLA−4および/またはPD−1および/またはPD−L1および/またはLAG−3遮断(すなわち、免疫刺激性治療抗体抗CD73および所望により抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3抗体)を伴うまたは伴わないCD73阻害を、サリチレートとさらに組み合わせ得る。サリチレートは、例えば:スルファサラジン(アザルフィジン(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);オルサラジン(DIPENTUM(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);バルサラジド(COLAZAL(登録商標)、Salix Pharmaceuticals, Inc.);およびメサラミン(アサコール(登録商標)、Procter & Gamble Pharmaceuticals;ペンタサ(登録商標)、Shire US;CANASA(登録商標)、Axcan Scandipharm, Inc.;ROWASA(登録商標)、Solvay)のような5−ASA剤を含む。
【0539】
ここに記載する方法によって、抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/またはLAG−3抗体および非吸収性ステロイドを伴うまたは伴わない抗CD73と組み合わせて投与されるサリチレートは、免疫刺激性抗体により誘発される大腸炎の発生を減少させる目的で、サリチレートおよび非吸収性ステロイドのあらゆる重複または逐次投与を含み得る。それゆえに、サリチレートおよび非吸収性ステロイドを同時にまたは逐次的に(例えば、サリチレートを非吸収性ステロイドの6時間後に投与する)または任意のこれらの組み合わせで投与することを包含する、例えば、ここに記載する免疫刺激性抗体により誘発される大腸炎の発生を減少させる方法に関する。さらに、サリチレートおよび非吸収性ステロイドを、同一の経路(例えば、両者とも経口投与)または異なる経路(例えば、サリチレートを経口投与および非吸収性ステロイドを直腸内投与)で投与してよく、これは、抗CD73および抗CTLA−4および/または抗PD−1および/または抗PD−L1および/または抗LAG−3抗体の投与に使用する経路と異なってよい。
【0540】
ここに記載する抗CD73抗体および組み合わせ抗体治療を、処置する適応症(例えば、癌)に対する特定の有用性について選択される他の周知治療と組み合わせても使用できる。ここに記載する抗CD73抗体の組み合わせを、既知の薬学的に許容される薬剤と逐次的に使用できる。
【0541】
例えば、ここに記載する抗CD73抗体および組み合わせ抗体治療を、照射、化学療法(例えば、カンプトテシン(CPT−11)、5−フルオロウラシル(5−FU)、シスプラチン、ドキソルビシン、イリノテカン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチン−パクリタキセル(タキソール)、ドキソルビシン、5−fuまたはカンプトテシン+apo2l/TRAIL(6Xコンボ)を使用)、1以上のプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブまたはMG132)、1以上のBcl−2阻害剤(例えば、BH3I−2’(bcl−xl阻害剤)、インドールアミンジオキシゲナーゼ−1(IDO1)阻害剤(例えば、INCB24360)、AT−101(R−(−)−ゴシポール誘導体)、ABT−263(小分子)、GX−15−070(オバトクラックス)またはMCL−1(骨髄白血病細胞分化タンパク質−1)アンタゴニスト)、iAP(アポトーシスタンパク質阻害因子)アンタゴニスト(例えば、smac7、smac4、小分子smac模倣剤、合成smacペプチド(Fulda et al., Nat Med 2002;8:808-15参照)、ISIS23722(LY2181308)またはAEG−35156(GEM−640))、HDAC(ヒストンデアセチラーゼ)阻害剤、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、血管形成阻害剤(例えば、ベバシズマブ)、抗血管形成因子ターゲティングVEGFおよびVEGFR(例えば、アバスチン)、合成トリテルペノイド(Hyer et al., Cancer Research 2005;65:4799-808参照)、c−FLIP(細胞FLICE−阻害性タンパク質)モジュレーター(例えば、PPARγ(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ)の天然および合成リガンド、5809354または5569100)、キナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ)、トラスツズマブ、セツキシマブ、テムシロリムス、ラパマイシンおよびテムシロリムスのようなmTOR阻害剤、ボルテゾミブ、JAK2阻害剤、HSP90阻害剤、PI3K−AKT阻害剤、レナリドミド、GSK3β阻害剤、IAP阻害剤および/または遺伝毒性薬物のような付加的処置と組み合わせて(例えば、同時にまたは別々に)使用できる。
【0542】
ここに記載する抗CD73抗体および組み合わせ抗体治療を、さらに1以上の抗増殖性細胞毒性薬剤と組み合わせて使用できる。抗増殖性細胞毒性薬剤として使用し得る化合群は、次のものを含むが、これらに限定されない:
アルキル化剤(窒素マスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレア類およびトリアゼンを含むが、これらに限定されない):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(シトキサン
TM)、フォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホrアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジンおよびテモゾロミド。
代謝拮抗剤(葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログおよびアデノシンデアミナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない):メトトレキサート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビンホスフェート、ペントスタチンおよびゲムシタビン。
【0543】
アンタゴニスト抗CD73抗体との組み合わせに適当な抗増殖性薬剤は、タキサン類、パクリタキセル(パクリタキセルはタキソール
TMとして市販)、ドセタキセル、ディスコデルモライド(DDM)、ジクチオスタチン(DCT)、ペロルシドA、エポチロン類、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、エポチロンF、フラノエポチロンD、デスオキシエポチロンBl、[17]−デヒドロデスオキシエポチロンB、[18]デヒドロデスオキシエポチロンB、C12,13−シクロプロピル−エポチロンA、C6−C8架橋エポチロンA、trans−9,10−デヒドロエポチロンD、cis−9,10−デヒドロエポチロンD、16−デスメチルエポチロンB、エポチロンB10、ディスコデルモライド、パツピロン(EPO−906)、KOS−862、KOS−1584、ZK−EPO、ABJ−789、XAA296A(ディスコデルモライド)、TZT−1027(ソブリドチン)、ILX−651(塩酸タシドチン)、ハリコンドリンB、メシル酸エリブリン(E−7389)、ヘミアステリン(HTI−286)、E−7974、クリプトフィシン、LY−355703、マイタンシノイド免疫複合体(DM−1)、MKC−1、ABT−751、T1−38067、T−900607、SB−715992(イスピネシブ)、SB−743921、MK−0731、STA−5312、エリュテロビン、17ベータ−アセトキシ−2−エトキシ−6−オキソ−B−ホモ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール、シクロストレプチン、イソラウリマライド、ラウリマライド、4−エピ−7−デヒドロキシ−14,16−ジデメチル−(+)−ディスコデルモライドおよびクリプトチロン1と、さらに当分野で知られる他の微小管安定化剤であり、これらに限定されない。
【0544】
ここに記載する抗CD73抗体の処置と組み合わせてまたはその前に異常に増殖性の細胞を静止状態にすることが望ましいとき、17a−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチル−テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、リュープロリド、フルタミド、トレミフェン、ゾラデックス
TMのようなホルモンおよびステロイド(合成アナログを含む)も患者に投与し得る。ここに記載する方法または組成物を使用するとき、抗模倣藥(antimimetics)のような臨床現場で腫瘍増殖または転移の制御に使用される他の薬剤も、所望により投与してよい。
【0545】
化学療法剤の安全かつ有効な投与の方法は当業者に知られる。さらに、その投与は、標準的文献に記載されている。例えば、化学療法剤の多くの投与は、Physicians' Desk Reference(PDR)、例えば、1996年版(Medical Economics Company, Montvale, N.J. 07645-1742, USA)に記載され、その開示を引用により本明細書に包含させる。
【0546】
化学療法剤および/または放射線治療を、当分野で周知の治療プロトコールにより適用できる。化学療法剤および/または放射線治療の適用が、処置する疾患および該疾患に対する化学療法剤および/または放射線治療の既知効果により変わり得ることは当業者には明らかである。また、熟練した臨床医の知識により、治療プロトコール(例えば、投与用量および投与回数)は、患者における投与治療剤で観察される効果の観点および投与治療剤に対する疾患の観察される応答の観点により変わり得る。
【0547】
例示的態様
1. ヒト表面抗原分類73(CD73)に結合し、次の性質の1以上を示す、単離ヒト抗体またはその抗原結合部分:
(a)CD73酵素活性阻害;
(b)腫瘍細胞への内在化または
(c)ヒトCD73のアミノ酸65〜83および157〜172を含む立体構造エピトープに結合。
【0548】
2. 抗体が、パルス・チェイスで測定して、腫瘍細胞に10分を超えないT
1/2で内在化する、態様1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0549】
3. 抗体が、BIACORE
(登録商標)SPR分析により測定して、約0.1〜10nM以下のK
Dで可溶性ヒトCD73に結合する、態様1または2に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0550】
4. 抗体が、FACSで測定して、0.1〜10nM以下のEC
50でヒトCD73に結合する、前記の態様のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0551】
5. 抗体が、FACSで測定して、0.1〜10nM以下のEC
50でカニクイザルCD73に結合する、前記の態様のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0552】
6. 抗体がヒトCD73(配列番号1)上のアミノ酸残基FTKVQQIRRAEPNVLLLDA(配列番号96)および/またはLYLPYKVLPVGDEVVG(配列番号97)を含むエピトープに結合する、前記の態様のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0553】
7. エピトープがアミノ酸残基FTKVQQIRRAEPNVLLLDA(配列番号96)および/またはLYLPYKVLPVGDEVVG(配列番号97)に及ぶまたは重複する、態様6に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0554】
8. 抗体がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそのバリアントからなる群から選択される、前記の態様のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0555】
9. ヒトCD73に結合し、それぞれ次のものからなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域対である3重鎖可変領域CDRおよび3軽鎖可変領域CDRを含む、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分:
(a)配列番号4と8
(b)配列番号4と12;
(c)配列番号16と20;
(d)配列番号16と24;
(e)配列番号16と28;
(f)配列番号32と36;
(g)配列番号40と44;
(h)配列番号40と48;
(i)配列番号52と56;
(j)配列番号60と64;
(k)配列番号68と72;
(l)配列番号68と76;
(m)配列番号80と84;
(n)配列番号88と92;
(o)配列番号135と8;および
(p)配列番号135と12。
【0556】
10. 次のものを含む、ヒトCD73に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分:
(a)それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号9、10および11を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(b)それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号13、14および15を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(c)それぞれ配列番号17、18および19を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号21、22および23を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(d)それぞれ配列番号17、18および19を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号25、26および27を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(e)それぞれ配列番号17、18および19を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号29、30および31を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(f)それぞれ配列番号33、34および35を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号37、38および39を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(g)それぞれ配列番号41、42および43を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号45、46および47を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(h)それぞれ配列番号41、42および43を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号49、50および51を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(i)それぞれ配列番号53、54および55を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号57、58および59を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(j)それぞれ配列番号61、62および63を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号65、66および67を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(k)それぞれ配列番号69、70および71を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号73、74および75を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(l)それぞれ配列番号69、70および71を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号77、78および79を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;
(m)それぞれ配列番号81、82および83を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号85、86および87を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;または
(n)それぞれ配列番号89、90および91を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号93、94および95を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列。
【0557】
11. 抗体がそれぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号9、10および11を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、態様10に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0558】
12. 抗体がそれぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列および/またはそれぞれ配列番号13、14および15を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、態様11に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0559】
13. ヒトCD73と結合し、重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域が配列番号4、16、32、40、52、60、68、80、88および135からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【0560】
14. ヒトCD73と結合し、重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで、軽鎖可変領域が配列番号8、12、20、24、28、36、44、48、56、64、72、76、84および92からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【0561】
15. ヒトCD73に結合し、次のものからなる群からそれぞれ選択される重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%同一である重鎖および軽鎖可変領域を含む、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分:
(a)配列番号4と8
(b)配列番号4と12;
(c)配列番号16と20;
(d)配列番号16と24;
(e)配列番号16と28;
(f)配列番号32と36;
(g)配列番号40と44;
(h)配列番号40と48;
(i)配列番号52と56;
(j)配列番号60と64;
(k)配列番号68と72;
(l)配列番号68と76;
(m)配列番号80と84;
(n)配列番号88と92;
(o)配列番号135と8;および
(p)配列番号135と12。
【0562】
16. 重鎖および軽鎖可変領域がそれぞれ(a)〜(p)からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、態様15に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0563】
17. 重鎖および軽鎖可変領域がそれぞれ(a)〜(p)からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、態様16に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0564】
18. 重鎖および軽鎖可変領域がそれぞれ(a)〜(p)からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域を含む、態様17に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0565】
19. 配列番号135に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号8に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、態様18に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0566】
20. 配列番号135に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号12に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、態様18に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0567】
21. 態様1〜20のいずれかの抗体とCD73上の同一エピトープに結合する、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【0568】
22. 次の性質のいずれか一つを示す、態様9〜21のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分:
(1)可溶性ヒトCD73に、例えば、BIACORE
(登録商標)SPR分析で測定して、例えば、10nM以下(例えば、0.01nM〜10nM)のK
Dで結合;
(2)膜結合型ヒトCD73に、例えば、1nM以下(例えば、0.01nM〜1nM)のEC
50で結合;
(3)カニクイザルCD73に結合、例えば、膜結合型カニクイザルCD73に、例えば、10nM以下(例えば、0.01nM〜10nM)のEC
50で結合;
(4)ヒトCD73酵素活性を、例えば、10nM以下のEC
50で阻害;
(5)cyno CD73酵素活性を、例えば、10nM以下のEC
50で阻害;
(6)インビボでヒトCD73酵素活性の阻害;
多価架橋を必要とすることなくT細胞活性化誘発または増強;
(7)例えば、10分未満のT
1/2で細胞に内在化;
(8)ヒトCD73の立体エピトープ、例えば、アミノ酸残基FTKVQQIRRAEPNVLLLDA(配列番号96)および/またはLYLPYKVLPVGDEVVG(配列番号97)を含むアミノ酸配列(配列番号1)内の不連続エピトープに結合;
(9)非グリコシル化ヒトCD73ではなく、グリコシル化ヒトCD73に結合;および
(10)ヒトCD73への結合について、CD73.4−1、CD73.4−2、CD73.3、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4、10D2−1、10D2−2、11A6、24H2、5F8−1、5F8−2、6E11および/または7A11といずれかの方向でまたは両方向で競合。
【0569】
23. CD73に結合し、次のものからなる群から選択される重鎖および軽鎖配列のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である重鎖および軽鎖配列を含む、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分:
(a)それぞれ配列番号100と101;
(b)それぞれ配列番号100と102;
(c)それぞれ配列番号103と104;
(d)それぞれ配列番号103と105;
(e)それぞれ配列番号103と106;
(f)それぞれ配列番号107と108;
(g)それぞれ配列番号109と110;
(h)それぞれ配列番号109と111;
(i)それぞれ配列番号112と113;
(j)それぞれ配列番号114と115;
(k)それぞれ配列番号116と117;
(l)それぞれ配列番号116と118;
(m)それぞれ配列番号119と120;
(n)それぞれ配列番号121と122;
(o)それぞれ配列番号133と101;および
(p)それぞれ配列番号133と102。
【0570】
24. 重鎖および軽鎖が(a)〜(p)からなる群から選択される重鎖および軽鎖を含む、態様23に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0571】
25. 抗体が配列番号135に示すアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号101に示すアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、態様24に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0572】
26. 抗体が配列番号135に示すアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号102に示すアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、態様24に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0573】
27. 次の性質のいずれか一つを示す、態様23〜26のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分:
(a)CD73酵素活性阻害;
(b)腫瘍細胞への内在化または
(c)ヒトCD73のアミノ酸65〜83および157〜172を含む立体構造エピトープに結合。
【0574】
28. カニクイザルCD73に結合する、前記の態様のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0575】
29. エフェクターレスFcを含む、態様10〜22のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0576】
30. 抗体がNからC末端方向の順にヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジドメイン、ヒトCH2ドメインおよびヒトCH3ドメインを含む修飾重鎖定常領域を含む、態様1〜7および9〜22のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0577】
31. 修飾定常領域がIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなるアイソタイプ群から選択される異なるアイソタイプの少なくとも2ドメインを含む、態様30に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0578】
32. 修飾定常領域がヒトIgG2 CH1ドメインを含み、CH2、CH3およびヒンジドメインの少なくとも一つがIgG2アイソタイプではない、態様30または31に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0579】
33. IgG2 CH1ドメインがアミノ酸配列ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTV(配列番号124)を含む、態様32に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0580】
34. 修飾定常領域がシステイン結合における異種性を低減したヒトIgG2ヒンジドメインを含む、態様30〜33のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0581】
35. ヒンジドメインが野生型ヒトIgG2ヒンジドメイン(配列番号136)に対してアミノ酸置換C219を含む、態様34に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0582】
36. ヒンジドメインがアミノ酸配列ERKSCVECPPCPAPPVAG(配列番号123)を含む、態様35に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0583】
37. 修飾定常領域がエフェクター機能を低減または排除したヒトIgG1 CH2ドメインを含む、態様30〜36のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0584】
38. CH2ドメインが野生型ヒトIgG1 CH2ドメイン(配列番号137)に対してアミノ酸置換A330SおよびP331Sを含む、態様37に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0585】
39. CH2ドメインがアミノ酸配列APPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPSSIEKTISKAK(配列番号125)を含む、態様38に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0586】
40. 修飾定常領域がヒトIgG1 CH3ドメインを含む、態様30〜39のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0587】
41. CH3ドメインがアミノ酸配列GQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号128)を含む、態様40に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0588】
42. ヒトまたはヒト化抗体である、態様9〜29のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0589】
43. CDR領域におけるメチオニン残基が酸化を受けないアミノ酸残基に置き換えられている、態様1〜8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【0590】
44. 第二の結合特異性を有する分子に連結した前記の態様のいずれかの抗体を含む、二重特異性分子。
【0591】
45. 異なる薬剤に連結した態様1〜43のいずれかの抗体を含む、免疫複合体。
【0592】
46. 態様1〜43のいずれかの重鎖および/または軽鎖抗体の可変領域またはその抗原結合部分をコードする、単離核酸分子。
【0593】
47. 態様46の核酸分子を含む、発現ベクター。
【0594】
48. 態様47の発現ベクターで形質転換した、細胞。
【0595】
49. 態様1〜45のいずれかの抗体またはその抗原結合部分、二重特異性分子または免疫複合体および担体を含む、組成物。
【0596】
50. 態様1〜45のいずれかの抗体またはその抗原結合部分または二重特異性分子または免疫複合体および使用指示を含む、キット。
【0597】
51. 態様48の細胞で抗体またはその抗原結合部分を発現させ、該細胞から抗体またはその抗原結合部分を単離することを含む、抗CD73抗体またはその抗原結合部分を製造する方法。
【0598】
52. 細胞と態様1〜45のいずれかの抗体、その抗原結合部分、二重特異性分子または免疫複合体を、アデノシンレベルが低減するように接触させることを含む、CD73を発現する腫瘍細胞におけるアデノシンレベルを低減する方法。
【0599】
53. 態様1〜45のいずれかの抗体またはその抗原結合部分、二重特異性分子または免疫複合体の有効量を、T細胞応答が腫瘍細胞に対して刺激されるように投与することを含む、処置を必要とする対象における、CD73を発現する腫瘍細胞に対してT細胞応答を刺激する方法。
【0600】
54. 態様1〜45のいずれかの抗体またはその抗原結合部分、二重特異性分子または免疫複合体を、対象における免疫応答が刺激されるように、対象に投与することを含む、対象における免疫応答を刺激する方法。
【0601】
55. 対象がCD73を発現する腫瘍細胞を有し、腫瘍に対する免疫応答細胞が刺激される、態様54に記載の方法。
【0602】
56. 態様1〜45のいずれかの抗体またはその抗原結合部分、二重特異性分子または免疫複合体を、対象における腫瘍の増殖が阻害されるように、対象に投与することを含む、対象におけるCD73を発現する腫瘍細胞の増殖を阻止する方法。
【0603】
57. 態様1〜45のいずれかの抗体またはその抗原結合部分、二重特異性分子または免疫複合体の治療有効量を、癌を処置するために処置を必要とする対象に投与することを含む、癌を処置する方法。
【0604】
58. 癌が膀胱癌、乳癌、子宮/子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、食道癌、消化器癌、膵臓癌、結腸直腸癌、結腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、胃癌、胚細胞癌、骨癌、肝臓癌、甲状腺癌、皮膚癌、中枢神経系の新生物、リンパ腫、白血病、骨髄腫、肉腫およびウイルス関連癌からなる群から選択される、態様57に記載の方法。
【0605】
59. 癌が転移癌、難治性癌または再発性癌である、態様57または58に記載の方法。
【0606】
60. 1以上のさらなる治療剤を投与することをさらに含む、態様53〜59のいずれかに記載の方法。
【0607】
61. さらなる治療剤が免疫増強分子(例えば、PD−1アンタゴニスト、CTLA−4アンタゴニスト、LAG−3アンタゴニスト)、抗CD39抗体または抗A2AR抗体である、態様60に記載の方法。
【0608】
62. サンプルと態様1〜45のいずれかの抗体またはその抗原結合部分を、抗体またはその抗原結合部分とCD73の間の複合体の形成を可能にする条件下で接触させ、複合体の形成を検出することを含む、サンプルにおけるヒトCD73の存在を検出する方法。
【0609】
本発明を、さらなる限定として解釈してはならない、次の実施例によりさらに説明する。本明細書において引用している全ての図および全ての引用文献、Genbank配列、特許および公開特許出願は、引用により明示的に本明細書に包含させる。特に、PCT公開WO09/045957、WO09/073533、WO09/073546、WO09/054863およびPCT/US2013/072918および米国特許公報2011/0150892の開示を、明示的に引用により本明細書に包含させる。
【実施例】
【0610】
実施例1:ヒト抗CD73抗体の産生
ヒト抗ヒトCD73モノクローナル抗体を、HμMAb(登録商標)トランスジェニックマウス(“HμMAb”は、Medarex, Inc., Princeton, New Jerseyの商標である)のHco7、Hco27、Hco20、Hco12、Hco17およびHc2系統ならびにKMマウス(KMマウス
(登録商標)系統は、PCT公開WO02/43478に記載のようにSC20導入染色体を含む)において産生した。HC2/KCo27 HμMAbマウスおよびKMマウスを米国特許5,770,429および5,545,806に記載のように産生し、それらの開示全体を、引用により本明細書に包含させる。
種々の遺伝子型のトランスジェニックマウス(例えばKM、Hco7、Hco27、Hco20、Hco12、Hco17およびHc2)を含むマウスを、種々の免疫化戦略(種々の抗原、種々の用量、期間、投与経路(足蹠(fp)、腹腔内(ip)および皮下(sc)およびアジュバント(CFA/IFA、Ribiおよび抗体)など)で免疫化した。マウスからの融合を実施し、スクリーニングし、抗体をこれらの融合体から同定した。さらに特徴付けにより、11F11−1、11F11−2、4C3−1、4C3−2、4C3−3、4D4−1、10D2−1、10D2−2、11A6−1、24H2−1、5F8−1、5F8−2、6E11−1および7A11−1と命名した抗体を含む、特に興味深い抗体の単離に至った。表7(下記)は、各抗体についての重鎖のIgGアイソタイプおよびアロタイプならびに軽鎖のタイプを提供する。軽鎖のみ異なる抗体は、ダッシュ記号の後の数字を変えることにより表す。例えば、11F11−1は、11F11−2と同一重鎖を有するが、11F11−1は軽鎖VK1を有し、一方11F11−2は軽鎖VK2を有する。特に断らない限り、表における抗体のV
H領域に基づく組み換え抗体を、優勢な軽鎖と共に製造した。
【0611】
【表6】
[この文献は図面を表示できません]
各抗体の重鎖および軽鎖、V
HおよびV
LドメインおよびCDRの完全長配列のアミノ酸およびヌクレオチド配列は配列表および表35に提供する。V
HおよびV
Lアミノ酸配列を、
図1A〜17Bにも示し、多様な抗体のV
HおよびV
Lアミノ酸配列のアライメントを
図35に提供する(CDR配列は太字)。
【0612】
実施例2:可変領域およびアイソタイプ差異におけるアミノ酸置換
抗体11F11のV
H領域のフレームワーク領域を、次のアミノ酸残基の変異の1以上の導入により変異させた(周辺のアミノ酸を示し、変異アミノ酸には下線を引く):T25(フレームワーク変異;… RLSCA
TSGFTF…)、L52(CDR2変異;…WVAVI
LYDGSN…)、G54(CDR2変異;…VILYD
GSNKYY…)およびV94(フレームワーク変異;…AEDTA
VYYCAR…)。構築物の名称およびそれらの各々の置換を表8に示す。
【表7】
[この文献は図面を表示できません]
* CD73.11は4D4であり、これらのアミノ酸残基を単離時に含んだ。比較目的でこの表に挙げる。
【0613】
抗体11F11および4D4の定常領域も、C219S置換を有するIgG2定常領域(CH1、ヒンジ、CH2およびCH3)(“IgG2CS”;配列番号267)、置換L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sを有するエフェクターレスIgG1定常領域(“IgG1.1f”;配列番号268)またはIgG2からのCH1およびヒンジ(C219Sを有する)ならびにIgG1のCH2およびCH3(A330S/P331Sを有する)を含むエフェクターレスIgG1/IgG2ハイブリッド定常領域(“IgG2CS−IgG1.1f”または“IgG2C219S−IgG1.1f”;配列番号169)にスイッチングすることにより、修飾した。製造した構築物を表9に挙げる。
【表8】
[この文献は図面を表示できません]
CD73.4−IgG2CS IgG1.1fのアミノ酸配列は
図18(配列番号189)に示す。
【0614】
抗体CD73.3〜CD73.11を次のように製造した。軽鎖VK2(配列番号102)を、11F11由来抗体のために使用した(CD73.4、CD73.6、CD73.8およびCD73.10)。重鎖および軽鎖をHEK293−6E細胞で発現させ、培養培地をトランスフェクション5日後に採取した。
構築物のヒトFcγRへの結合をSPRで測定した。IgG1.1分子およびIgG2分子のhCD64およびhCD32a−H131結合データは、異なるFcについて予測した値に一致した。IgG1.1fは、最も不活性なFcである。IgG2およびIgG2−C219Sは、IgG2に典型的FcR結合を示した。予想通り、IgG2−C219S−G1.1fのデータは、野生型IgG1またはIgG2より結合が有意に弱いが、IgG1.1fと比較して結合が増加していることを示した。IgG2−C219S−G1.1fは弱いhCD32a−H131結合(2.3μMのK
D)を有し、他の全FcγRに対する結合親和性は5μMより低かった。cyno FcγRに対するIgG2−C219S−G1.1fの結合親和性は、5μMより低かった。ヒトFcRnに対するIgG2−C219S−G1.1f結合のSPR分析は、pH依存性結合を示した(pH6で強く、pH7.4で急速な解離を伴い弱い結合)。
組み換え調製物は、しばしば重鎖のC末端Lys欠失が判明した。例えば、Ab CD73.4.IgG2−C219S−G1.1fの重鎖の97%がC末端リシンを欠失した。ある調製物は、重鎖のN末端Q(グルタミン)にピロ−Qを有した。例えば、Ab CD73.4.IgG2−C219S−G1.1fの重鎖のN末端グルタミンの94%はピロ−Qであった。
【0615】
実施例3:抗CD73抗体の結合特徴
A.
表面プラズモン共鳴(SPR)
CD73結合動態および親和性を、Biacore T100装置(GE Healthcare)を25℃で使用する表面プラズモン共鳴(SPR)により試験した。
hCD73のN末端ドメイン(ヒトCD73の残基26〜336からなる;N−hCD73と呼ぶ)の抗体への結合を試験した一つの実験形式は、固定化プロテインA表面への捕捉であった。これらの実験のために、プロテインA(Pierce)を、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%v/v tween 20のランニング緩衝液中、エタノールアミン遮断を用いて、標準エチル(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)/N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)化学を使用するCM5センサーチップ(GE Healthcare)のフローセル1〜4上に3000〜4000RUの密度で固定化した。動態実験を、まず、10μl/分で30秒接触時間を使用して、抗体(5〜10μg/ml)をプロテインA表面に捕捉させ、600nM、200nM、66.7nM、22.2nM、7.4nMおよび2.5nM N−hCD73−hisの結合を、30μl/分の流速で、180秒結合時間および360秒解離時間を使用して実施した。動態実験のためのランニング緩衝液は、10mM リン酸ナトリウム、130mM 塩化ナトリウム、0.05%tween 20、pH7.1であった。表面を、各サイクル後、30μl/分の流速で10mM グリシンpH1.5の2回の30秒パルスを使用して、再生させた。Sensogramデータを二重参照し、次いでBiacore T100評価ソフトウェアv2.0.4を使用して1:1ラングミュアモデルに適合させて、結合速度定数(k
a)、解離速度定数(k
d)および平衡解離定数(K
D)を決定した。
結果を表10に示す。本表は、種々の実験からのデータを編集している。2以上のセット数が示されている抗体について、各セットは、別々の実験で出たデータに対応する。
【表9】
[この文献は図面を表示できません]
表のK
Dは一価K
Dであり、すなわち、一価である、ヒトCD73のN末端部分への抗体の結合のK
Dである。
【0616】
G54S変異は耐容性であり、親和性をわずかに増加させるように見え、同時予想されるDG異性化部位を除去する。L52W変異は、親和性の約10倍の低下を起こすように見える。4D4バリアントは、独特なCDR3配列を有し、動態が異なる(11F11分子と比較して遅い結合)。
CD73.4−IgG2−C219S−IgG1.1fの10実験の平均K
Dは1.1±0.4nMである。11F11と比較したT25A変異は、親和性に影響しない。
結果は、全抗CD73抗体がヒトCD73に良好な親和性で結合し、解離速度が遅いことを示す。
結合試験の結果、結合活性は、11F11、4C3または4D4への変異導入またはアイソタイプスイッチ後維持されたが、いくつかの抗体では、元の抗体(すなわち、11F11、4C3または4D4)と比較して親和性が低下したことを示す。特に、CD73.10(T25A、L52W、G54E)は、CD73.4(T25A)またはCD73.11(4D4)より速い解離速度を有する。全IgG2分子の比較は、11F11およびCD73.4(11F11−T25A)が、最高の一価CD73親和性(K
D=1.1nM±0.4nM)を有することを示す。CD73.10(11F11−T25A、L52W、G54E)は、11F11またはCD73.4より約10倍低いCD73親和性を有した。これは、L52WまたはG54Eまたは両変異が、他の11F11配列と組み合わせたとき、CD73親和性を低下させることを示唆する。4D4およびCD73.11は、CD73.10と同等の親和性(K
D約5nM)を有したが、動態は異なった。4C3エピトープは、CD73のNおよびCドメインの領域を含むと考えられ、それゆえに測定した単離Nドメインに対するK
Dは弱い(K
D=100〜200nM)。
【0617】
CD73.4−IgG2−C219S−IgG1.1fのcyno CD73への結合も試験した。カニクイザルサルCD73結合についてのCD73.4−IgG2−C219S−IgG1.1fの特異性は、25℃でBiacore T100装置(GE Healthcare)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)で、ヒトCD73に対する結合と同等であった。ヒトCD73(Hisタグに連結したヒトCD73の残基27〜547からなる、hCD73−hisと呼ぶ)またはカニクイザルCD73(Hisタグに連結したカニクイザルCD73の残基27〜547からなる、cy−CD73−hisと呼ぶ)の完全長細胞外ドメインを、固定化プロテインA表面に捕捉された抗体への結合について試験した。これらの実験のために、プロテインA(Pierce)を、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%v/v tween 20のランニング緩衝液中、エタノールアミン遮断を用いて、標準エチル(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)/N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)化学を使用するCM5センサーチップ(GE Healthcare)のフローセル1〜4上に3000〜4000RUの密度で固定化した。実験をまず、抗体(5〜10μg/ml)を、10μl/分で30秒接触時間を使用してプロテインA表面に捕捉させ、600nM、200nM、66.7nM、22.2nM、7.4nMおよび2.5nM hCD73−hisまたはcyno−CD73−hisの結合を、30μl/分の流速で、180秒結合時間および360秒解離時間を使用して実施した。これらの実験のランニング緩衝液は、10mM リン酸ナトリウム、130mM 塩化ナトリウム、0.05%tween 20、pH7.1であった。表面を、各サイクル後、30μl/分の流速で10mM グリシンpH1.5の2回の30秒パルスを使用して、再生させた。
図19に示す結果は、CD73.4−IgG2−C219S−IgG1.1fが、類似する親和性および動態でcynoおよびヒトCD73に結合することを示す。CD73.4−IgG2−C219S−IgG1.1fは、完全長ヒトおよびcyno CD73二量体に、1nM未満のK
Dで結合する。CD73.4−IgG2−C219S−IgG1.1f toマウスまたはラットCD73への顕著な交差反応性は観察されなかった。
【0618】
11F11抗体から単離したFabフラグメントの動態および親和性もSPRにより評価した。これらの実験において、マウス抗6xHis抗体からのFabドメインを、約3000RUの密度で、EDC/NHSを使用してCM5センサーチップ上に固定化した。完全長hCD73−his、10μl/分での30秒接触時間を使用してFc2(1μg/ml hCD73−his)に10RU密度、Fc3(5μg/ml hCD73−his)に40RU密度およびFc4(20μg/ml hCD73−his)に160RU密度で捕捉した。次に、11F11 Fabフラグメント(ペプシン開裂L−システイン還元11F11抗体から精製)を、10mM リン酸ナトリウム、130mM 塩化ナトリウム、0.05%tween 20、pH7.1のランニング緩衝液中、30μl/分で、180秒結合時間、600秒解離時間を使用して、400nM、135nM、44.4nM、14.8nM、4,9nM、1.7nM、0.55nMでの結合について試験した。表面を、30μl/分の流速で、10mM グリシンpH2.0の2回の15秒パルスを使用して、再生させた。Sensogramデータを二重参照し、次いでBiacore T100評価ソフトウェアv2.0.4を使用して1:1ラングミュアモデルに適合させて、結合速度定数(k
a)、解離速度定数(k
d)および平衡解離定数(K
D)を決定した。結果を下の表11に示す。
【表10】
[この文献は図面を表示できません]
それゆえに、結果は、11F11 Fabフラグメントが、hCD73に高親和性を有することを示す(K
D約0.74nM)。
【0619】
B.
CD73抗体陽性細胞へのCD73の結合
タイトレーション結合曲線を、Calu6細胞(CD73内在性発現体;ヒト肺腺癌細胞株)、DMS114細胞(CD73陰性;ヒト小細胞肺癌細胞株)、CHO−cynoCD73細胞(cynoCD73遺伝子導入)およびCHO−K1細胞(cynoCD73陰性)上のCD73抗体で、Alexa Fluor(登録商標)647ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Invitrogen Cat#A-21445)を二次抗体として使用して、次の方法を使用して作成した。
100000細胞を、ウェルあたり100μL PBS+2%FBS中で播種し、20分遮断した。U底96深ウェルプレートを使用して、抗体およびPBS+2%FBSの体積を、下の表12に示すように組み合わせた。
【表11】
[この文献は図面を表示できません]
【0620】
8点連続希釈を、体積の1/6(90μL)を450μL PBS+2%FBSで希釈することにより実施した。細胞プレートを、5分、1500rpmで遠沈させた。100μLの希釈抗体を、プレートのウェルあたりに添加した。100μL PBS+2%FBSを、全ての他のウェルに添加した。プレートを、氷上で45分染色し、1500rpmで5分遠沈し、ウェルあたり200μL PBS+2%FBSで2回洗浄した。非コンジュゲート抗体を入れたウェルと細胞株あたり1非染色ウェルを、100μL APC抗ヒト二次抗体(20μg/mL)に再懸濁した。100μL PBS+2%FBSを他の全てのウェルに添加し、氷上で45分染色した。プレートを1500rpmで5分遠沈し、ウェルあたり200μL PBS+2%FBSで洗浄した。プレートを再び洗浄し、ウェルあたり200μL 2%FBSのPBS溶液に再懸濁し、サンプルを流した。
図20A1、20A2、20B1、20B2、20C1、20C2、20D1、20D2および表13に示す結果は、CD73抗体全てが、CD73を自然に発現する細胞(Calu6細胞)およびcyno CD73を発現するように遺伝子導入したCHO細胞に結合するが、これらの抗体は、CD73を発現しない細胞(DMS114およびCHO−K1)には結合しないことを示す。各抗体で得られた結合のEC
50を表13に示す。
【表12】
[この文献は図面を表示できません]
ヒト腫瘍細胞株へのCD73.4−IgG2−IgG1.1fの結合のEC
50は0.5nMであった(0.3〜0.67nM範囲)。CD73.4−IgG2−IgG1.1fのcyno CD73遺伝子導入CHO細胞への結合のEC
50は、0.3nMであった(0.1〜0.5nM範囲)。
【0621】
CD73.4抗体のヒトB細胞およびT細胞への結合も決定した。2ドナー、D316およびD329からのヒト血液を、Immunsciences, BMSから得た。末梢血液単核細胞(PBMC)を、Lympholyte-H細胞分離勾配媒体で単離した。PBMCを、連続希釈したFITC標識CD73.4−IgG2、CD73.4−IgG2−IgG1.1fまたはCD73.4−IgG1.1f抗体とインキュベートし、T細胞およびB細胞を、CD3およびCD20に対する蛍光色素標識抗体で同定した。両ドナーからの細胞を、非染色およびFMO(Fluorescence minus one)対照サンプルのためにプールした。
図20EおよびFおよび表14に示す結果は、抗体が特異的にヒトB細胞およびT細胞に結合することを示す。
【表13】
[この文献は図面を表示できません]
【0622】
実施例4:生物物理学的特徴of抗CD73抗体
A.
直列マルチアングル光散乱検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−MALS)
CD73 mAbのオリゴマー状態を、直列マルチアングル光散乱検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−MALS)により試験した。定組成分離を、Prominence Shimadzu UFLCに連結したShodex PROTEIN KW-803カラムで、0.02%Naアジド(0.1μm濾過)含有200mM K
2HPO
4、150mM NaCl、pH6.8を含む緩衝液中、0.5mL/分で流して実施した。サンプルを、SIL-20AC Prominence Shimadzuオートサンプラーを使用してカラムに注入し、データを、連続的にProminence SPD-20ADダイオードアレイUV/vis分光光度計、続いてWyatt miniDAWN
TM TREOSマルチアングル光散乱検出器、次いでWyatt Optilab T-rEX屈折率検出器に連結した3オンライン検出器から得た。データ(下の表15に示す)を、Astra(Wyatt)およびLabsolutions(Shimadzu)ソフトウェアを使用して採取し、分析した。結果を表15に示す。
【0623】
B.
示差走査熱量測定(DSC)
CD73 mAbの熱安定性を、MicroCal Capillary DSC装置(GE Healthcare)を使用して決定した。抗体PBS pH7.1中、0.5〜0.75mg/mlの濃度で分析した。DSC装置ベースラインを安定させ、一貫した熱履歴を得るために、サンプルおよび対照細胞両者で緩衝液単独の複数スキャンを、サンプル分析前に記録した。サンプルスキャンは、サンプル細胞にmAbおよび対照細胞にPBS pH7.1を含んだ。全スキャンを、10〜110℃で、60°/時間のスキャン速度で5分プレサイクルサーモスタット時間および無ポストサイクルサーモスタット時間で実施した。データ(下記表15に示す)を、MicroCal Origin Cap DSC分析ソフトウェアを使用して分析した。適切な緩衝液−緩衝液ブランクスキャンをサンプル−緩衝液データから減じ、転移中点温度(Tm)値を、データをnon-2-stateモデルに適合させて決定した。結果を表15に示す。Tm1、Tm2およびTm3は、抗体の異なるドメインのTmである。
【表14】
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結果は、全抗体が大部分単量体であり、安定であることを示す。
【0624】
実施例5:抗CD73 Abによる酵素活性の阻害
A.
ビーズ結合CD73酵素活性の阻害
抗CD73抗体によるビーズ結合CD73酵素活性阻害を評価するために、次の材料および方法を使用した。
材料
TM緩衝液:25mM Tris、5mM MgCl
2の水溶液
0.5mM リン酸ナトリウム緩衝液、pH8.0
洗浄緩衝液(10mL 0.5mM リン酸ナトリウム、pH8.0;10mL 5M NaCl;34mL 水;10μL Tween−20)
アデノシン5’−一リン酸二ナトリウム塩、Sigma Cat#01930-%G、TM緩衝液中300mM
アデノシン5’−三リン酸二ナトリウム塩水和物、Sigma Cat#A6419-1G、TM緩衝液中100mM
rhCD73、0.781mg/mL
cyno CD73、Ino Biological Inc Cat#90192-C08H
磁気hisタグビーズ、Invitrogen Cat# 10103D
CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay, Promega Cat#G7572
mAbO、CD73に結合しない無関係の抗体
【0625】
方法
表16に記載する抗CD73抗体の6点連続希釈(最高濃度10μg/mL)を、表16に示す体積の組み合わせにより実施し、3倍希釈した(225μLを450μL TM緩衝液に移した)。IgG2ヒンジを有する全抗体はC219S変異を含んだ。
【表15】
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【0626】
磁気ビーズ(2μlビーズ/サンプル)を、微小遠心管中、1mL リン酸ナトリウム緩衝液で洗浄した。ビーズを磁石で引き下ろし、400μL TM緩衝液に再懸濁した。CD73の各種について:別のチューブで、CD73(75ng/サンプル)をTMと組み合わせて、体積を最大400μLとした。第三チューブをブランクビーズ(無CD73)のために調製した。ビーズ懸濁液をrhCD73溶液と組み合わせ、シェーカーで5分、室温で混合した。ビーズを磁石で引き下ろし、ビーズを1mL 洗浄緩衝液で洗浄した。ビーズを磁石で引き下ろし、TM緩衝液(40μL/サンプル)に再懸濁した。ビーズをPCR 96ウェルプレートに移した(40μL/ウェル)。ウェルあたり200μLの連続希釈したCD73 HμMabをプレートに添加し、ウェルを混合した。プレートを、30分、室温でインキュベートした。各700μLの400μM ATP(8X)および1.2mM AMP(8X)を調製した。各650μLを組み合わせて、4X AMP/ATPストックミックスを調製した。ビーズを引き下ろし、ウェルあたり200μL TM緩衝液で2回洗浄した。ビーズを再び引き下ろし、30μL TM緩衝液に再懸濁した。30μLビーズを、96ウェル黒色プレートに移した。AMP/ATPの4xストック溶液の10μL(最終濃度150μM AMP/50μM ATP)を添加し、混合した。40μL体積の対照ウェル(最終濃度150μM AMPおよび/または50μM ATP)を添加した。プレートを、15分、37℃でインキュベートした。
【0627】
結果を
図21A1、21A2、21B1および21B2および表17に示す。
【表16】
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【0628】
cyno CD73の酵素阻害の結果を表18に示す。
【表17】
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結果は、抗体がヒトCD73の酵素活性を用量依存的に阻害することを示す。CD73.4.IgG2−C219S−IgG1.1fは、組み換えヒトCD73酵素阻害アッセイで2.97(2.9〜3.1nM範囲)のEC
50を有する。CD73.4.IgG2−C219S−IgG1.1fは、組み換えcyno CD73酵素阻害アッセイで3.7(1.6〜12.6nM範囲)のEC
50を有する。それゆえに、試験した全てのCD73に対する抗体は、ビーズ結合ヒトおよびcyno CD73酵素活性を阻害した。
【0629】
B.
Calu6細胞におけるCD73酵素活性の阻害
本実施例は、抗CD73抗体で処理後のAMPのCD73脱リン酸化に対するCalu6(CD73陽性)およびDMS−114(CD73陰性)細胞の評価を記載する。
材料:
CD73抗体;下記参照
MabO対照抗体、5.38mg/mL
TM緩衝液:25mM Tris、5mM MgCl
2の水溶液
アデノシン5’−一リン酸二ナトリウム塩、Sigma Cat#01930-5G、TM緩衝液中300mM
アデノシン5’−三リン酸二ナトリウム塩水和物、Sigma Cat#A6419-1G、TM緩衝液中100mM rhCD73、0.781mg/mL
CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay, Promega Cat#G7572
【0630】
方法:
抗体を、下の表19に示すように、U底96ウェルプレートで精製抗体およびPBSの体積を合わせることにより連続希釈した。抗体(最高濃度25μg/mL、300μL)および60μLを240μL PBSに移した5倍希釈の6点連続希釈を実施した。IgG2ヒンジを有する全抗体はC219S変異を含んだ。
【表18】
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【0631】
細胞をVerseneで採取し、計数した。プレートに播種し、1500rpmで5分遠沈し、100μL連続希釈抗体に再懸濁した。他の全ウェルを、100μL PBSに再懸濁させた。インキュベーションは37℃で20分であった。AMPの15mLの180μMストックをTM緩衝液で調製した。
プレートを1500rpmで5分遠沈し、200μL PBS/ウェルで1回洗浄した。プレートを再び遠沈し、100μL AMPに再懸濁した。他の全ウェルを、100μL TM緩衝液に再懸濁させた。細胞を、AMPと60分、37℃でインキュベートした。ATPのTM緩衝液中の7.5mLの60μMストックを調製した。プレートを、1500rpmで5分遠沈し、50μLの上清を黒色96ウェルプレートに移した。50μLのATPを添加した。rhCD73を、陽性対照として、ウェルあたり75ngであるウェルに添加した。rhCD73を受けていないウェルをTM緩衝液で100μLとした。最終濃度は90μM AMP:30μM ATPであった。インキュベーションは37℃で15分であった。CellTiterGloアッセイ(ATPを検出する)に関して、100μLをウェルあたりに添加し、プレートを読んだ。
【0632】
図22A1、22A2、22B1、22B2および表20に示す結果は、抗CD73抗体がヒトCD73陽性Calu6細胞におけるAMPの脱リン酸化を阻害する(またはAMP処理を減らす)が、CD73陰性DMS114細胞には何ら影響がないことを示す。ヒト腫瘍細胞株Calu6におけるCD73.4−IgG2S−IgG1.1f抗体の内因性細胞CD73遮断のEC
50は0.39nM(範囲0.31〜0.48nM)である。これらの実験をNCI−H292(粘膜表皮性癌細胞株)およびSK−MEL−24(ヒト黒色腫細胞株)細胞で繰り返し、結果は類似した(表20)。
【表19】
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1内在性CD73発現を有するCalu6細胞での結合タイトレーション。抗体を2〜6回の独立した実験で試験しており、平均値を示す。
2本実施例のセクションAからのデータ。抗体を1〜5回の独立した実験で試験しており、平均値を示す。
3記載した細胞株における細胞CD73活性の阻害。抗体を2〜4回の独立した実験で試験しており、平均値を示す。
【0633】
C.
デュアル細胞株cAMPアッセイにおけるCD73酵素活性の阻害
均一性時間分解蛍光(HTRF)cAMPアッセイ
CD73抗体を、0.2%BSA含有PBS緩衝液で連続希釈し、384ウェル白色底プロキシプレート(PerkinElmer, Waltham, MA)で5μl/ウェルで播種した。Calu−6細胞を採取し、0.2%BSA含有PBSに再懸濁し、次いで5μlの細胞(300細胞/ウェル)をプレートに添加した。細胞を、抗体と10分、37℃、5%CO
2および95%湿度でインキュベートし、続いて5μl/ウェル80mM AMPを添加した。細胞をさらにAMPと30分、37℃でインキュベートした。この間、HEK293/A2AR細胞を採取し、0.2%BSA含有PBS中40万/mlに希釈した。それらを、アッセイプレートに5μl/ウェルで添加し、37℃で1時間インキュベートを続けた。HRTFアッセイを、製造業者の指示に従い、溶解緩衝液に10μl/ウェルcAMPコンジュゲートd2および10μl/ウェルユウロピウムクリプテートコンジュゲート抗cAMP抗体を添加することにより、均一性時間分解蛍光(HTRF)HiRange cAMP検出キット(Cisbio, Bedford, MA)を使用して実施した。プレートを、室温で60分インキュベートし、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)シグナル(665および615nM)をEnVisionプレートリーダー(PerkinElmer, Waltham, MA)を使用して読んだ。FRETシグナルを、665nm(アクセプター)および615nm(ドナー)チャネルからのシグナルの比として計算し、10,000倍した。IC
50およびY
maxを測定した。Y
maxを、内部最大としての100nM用量の11F11との比較により決定した。すべての計算を、100%としたこの対照と比較した阻害のパーセンテージとして決定した。
【0634】
表21に示す結果は、抗CD73 mAbが、細胞株共培養システムを使用するこのcAMPアッセイで種々の有効性および抗力を示したことを示す。全Abは、アデノシン産生のいくぶんかの減少を示し、阻害の程度は、スクリーニングした大部分のAbで類似した。最大阻害は、11F11、11A6、4C3および5F8で見られた。
【表20】
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【0635】
酵素阻害アッセイを、11F11 FabおよびF(ab’)
2でも実施した。
図22Cに示す結果は、F(ab’)
2フラグメントで酵素阻害が生じるが、Fabフラグメントでは生じないことを示した。それゆえに、Fc領域は11F11酵素阻害には必要ではないが、二価性は必要である。
Calu6細胞における酵素阻害も、上記cAMPアッセイを使用する、表26に示す多様な重鎖定常領域を含むCD73.4抗体についても決定した。EC
50および阻害レベル対背景(“S:B”)の観点での結果を、表28の右端の2列に示す。結果は、全CD73.4抗体がCalu6細胞においてヒトCD73酵素活性を阻害することを示す。
【0636】
D.
CD73酵素活性阻害の経時変化
酵素活性の阻害を、LC/MS/MSによるアデノシン産生の評価により、経時的にも評価した。Calu6細胞を、50μM AMP添加後、11F11または4C3と30分、2時間または4時間インキュベーションし、標準方法を使用するLC/MS/MSによりアデノシン産生を評価した。
【0637】
マススペクトロメトリー条件(Xevo TQ-S):
装置:Xevo TQ-S(Waters 2777Cと共に)
【表21】
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図22Dに示す結果は、インキュベーション時間は、30分時点で差異を生じ、11F11による阻害が4C3より速く生じることを示す。両抗体が後の時点では同等な阻害を達成するが、11F11抗体は、細胞においてCD73酵素活性をより速く阻害する。
【0638】
実施例6:CD73の抗体介在内在化
CD73の抗CD73抗体介在内在化を、2つの異なるアッセイで測定した。
【0639】
A.
高容量内在化アッセイ(2時間固定時間アッセイ)
抗CD73抗体を、抗体インキュベーション2時間後の細胞発現を評価することにより、Calu6細胞における抗CD73抗体依存性CD73内在化を試験した。20μlの完全培地(10%熱不活化ウシ胎児血清含有Gibco RPMI Media 1640)中の細胞(2,000細胞/ウェル)を、384ウエルBD Falconプレートに播種し、一夜、37℃、5%CO
2および95%湿度で増殖させた。抗CD73抗体を0.2%BSA含有PBS緩衝液で連続希釈し、細胞プレートに5μl/ウェルで添加した。細胞を、抗体と2時間、37℃、5%CO
2および95%湿度でインキュベートし、続いてPBS緩衝液で1回洗浄した。ホルムアルデヒド(最終PBS中4%)を、細胞プレートに20μl/ウェルで添加し、プレートを室温で10分インキュベートした。その後、全液体を吸引し、細胞を30μl PBSで洗浄した。検出抗体(2.5μg/ウェルの抗CD73 Ab CD73.10.IgG2C219S)を、固定細胞プレートに15μg/ウェルで添加した。細胞を4℃で一夜インキュベートした。翌日、プレートをPBS緩衝液で2回洗浄し、続いてAlexa-488ヤギ抗ヒトおよびDAPIを含む二次抗体を添加し、1時間、室温で染色した。PBS緩衝液で3回洗浄後、プレートをArrayscan Vti(Cellomics, Pittsburgh, PA)で洗浄した。IC
50およびY
maxを測定した。Y
maxは、内部最大としての100nM用量の11F11との比較により決定した。全ての計算を、100%としたこの対照と比較した内在化パーセンテージとして決定した。
【0640】
結果を表22に提供する。
【表22】
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ND=検出されず
NA=適用せず
【0641】
それゆえに、結果は、ヒトCD73発現細胞株Calu6におけるCD73.4.IgG2−C219S−IgG1.1fが介在するCD73内在化のEC
50が1.2nMであり、該細胞株の内在化の最大レベルが97.5%であることを示した。
内在化アッセイを11F11 FabおよびF(ab’)
2でも実施した。
図22Cに示す結果は、F(ab’)
2フラグメントで内在化が起こるが、Fabフラグメントでは起こらないことを示した。それゆえに、Fc領域は、11F11内在化に必要ではない。
【0642】
動的内在化試験を実施して、内在化の速度を評価した。20μlの完全培地(10%熱不活化ウシ胎児血清含有Gibco RPMI Media 1640)中の細胞(2,000細胞/ウェル)を、384 BD Falconプレートに播種し、一夜、37℃、5%CO
2および95%湿度で増殖させた。CD73抗体を、0.2%BSA含有PBS緩衝液で10μg/mlまで希釈し、細胞プレートに5μl/ウェルで添加した。細胞を、抗体と、0〜2時間タイムコースで37℃でインキュベートし、次いでPBS緩衝液で1回洗浄した。続いて、細胞をホルムアルデヒド(最終PBS中4%)で、室温で10分固定し、次いで30μl PBSで1回洗浄した。検出抗体(2.5μg/ウェル抗CD73 Ab CD73.10.IgG2C219S)を0.2%BSA含有PBS緩衝液で希釈し、固定細胞プレートに15μl/ウェルで添加した。プレートを、4℃で一夜インキュベートした。翌日、PBS緩衝液で3回洗浄後、二次抗体Alexa488−ヤギ抗ヒトとDAPIを添加した。細胞を60分、室温で染色し、3回洗浄後、Arrayscan Vti(Cellomics, Pittsburgh, PA)を使用して画像を得た。結果を
図23A〜23Dおよび表23および24に示す。表24の値は、
図23A〜Dに示すデータに由来する。
【表23】
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【0643】
【表24】
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【0644】
結果は、ビン1抗体(11F11およびその誘導体CD73.4およびCD73.10)が良好な内在化EC
50および最大値(97.5%)を示すが、ある抗体は、他者より内在化されることを示した。11F11は、最も活性であり、数分以内で内在化し、プラトーに30分で達し、一方6E11(ビン1抗体である、IgG1)は、ゆっくり内在化し、プラトーに約1時間で到達した(
図23A〜D)。ビン2抗体(5F8および4C3)は顕著な内在化はなかった。さらに、IgG2ヒンジおよびCH1ドメインの存在は内在化の速度および程度を高めた。この傾向は、数細胞株(
図23A〜Dおよび表24)で見られた。
【0645】
B.
フローサイトメトリーにより測定した内在化
CD73の抗CD73抗体介在内在化を、フローサイトメトリーでも試験した。記載する細胞を、10μg/mLの標記抗体と30分、氷上でインキュベートし、数回洗浄し、記載する時間、37℃に移した。細胞を、示すインキュベーション時間後、同一時間で採取した。細胞を、一次抗体(最初のインキュベーションに使用したのと同じ抗体)で再び、続いて抗ヒト二次抗体で染色した。細胞を、次いで、CD73の発現についてフローサイトメトリーでアッセイした。
図23Eおよび表25に示す結果は、上記内在化アッセイで得られたものに一致し、IgG2ヒンジおよびCH1を有する全抗体が迅速かつ完全な内在化を誘発したことを示す。CD73レベルは、洗い流した22時間後低いままであり、内在化が持続性であることを示す。
【0646】
図23Fおよび表25に示すのと類似する結果がNCI−H292細胞株で得られ、この抗体は、インキュベーション時間の間培養において維持した(洗い流しなし)。再び、これらのデータは、迅速かつ顕著な内在化および内在性CD73の下方制御の維持を示す。
内在化アッセイをヒトSNU−C1(結腸癌細胞株)およびNCI−H1437(非小細胞肺癌細胞株)細胞でも実施した。
図23IおよびJおよび表25に示す結果は、迅速なな内在化を示し、最大レベルに5時間いないに到達し、内在化の最大レベルはCD73.4.IgG2−C219S−IgG1.1fについてSNU−C1で約50%およびNCI−H1437細胞で60%であった。
図23GおよびHは、Calu6およびNCI−H292細胞におけるCD73.4.IgG2−C219S−IgG1.1fの内在化の類似する動態を示した。CD73内在化%を示すグラフについて、この数値は次のようにして得た:
【数1】
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ここで、各抗体、MFI
t=xは、ある時点のMFIであり、MFI
t=0はt=0の最大蛍光であり、MFI
背景は二次性AbのみのMFIである。
【0647】
【表25】
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【0648】
さらなる内在化アッセイをCalu6およびH292細胞で行い、さらに内在化に対するアイソタイプの役割を区別した。内在化アッセイを上記のように実施し(抗体の洗い流し工程を含まないプロトコール)、表26に示す種々のハイブリッドアイソタイプの抗体を、インキュベーション中培養において10μg/mLに維持した。フローサイトメトリー実験のために、実施例6Bの方法を96ウェルプレート(48ウェルプレートではない)およびウェルあたり50,000細胞のハイスループット分析に適合させた。
【表26】
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【0649】
FcγR結合は、予想通り各構築物について見られ、すなわち、FcγR結合は下部ヒンジ/CH2領域により駆動された。
結果を
図23K、L、Mおよび表27および28に示す。表27に示すデータは、実施例6Bに記載するのと同一のプロトコールを使用して作成した。表28に示すデータは、実施例6Aに記載するのと同一のプロトコールを使用して作成した。
【表27】
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【0650】
【表28】
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【0651】
図23K、LおよびMおよび表27および28は、IgG2アイソタイプのヒンジおよびCH1ドメインを有する抗体がCD73内在化駆動に最も有効であり、一方IgG1ヒンジおよびCH1ドメインを有する抗体は、図の低い曲線に対応し、すなわち、内在化の程度が低い。さらに、IgG2からのヒンジのみを有する抗体は、ヒトIgG1ヒンジと比較して内在化が増加している。それゆえに、IgG2アイソタイプのヒンジおよびCH1ドメインを有する抗体は、IgG1アイソタイプの抗体と比較して、優れた内在化特徴を有する。
それゆえに、抗CD73抗体mAb−CD73.4−IgG2CS−IgG1.1fは、試験した細胞株より迅速な内在化を誘発する。内在化のT
1/2は、数分から1時間以内である。大部分の試験した細胞株は、10分以内のT
1/2を有する。ほぼ完全な内在化がある細胞株で誘発され、試験した全て、表面CD73発現が少なくとも50%低下し、これは、一般に5時間までに到達される最大レベルであり、いくつかの例では遙かに短かった。
SEC−MALSおよびDLSデータは、IgG1ヒンジおよびCH1領域(IgG1.1f)を含むものと比較して、大きな複合体がhCD73−hisと、IgG2ヒンジおよびCH1領域(IgG2−C219SまたはIgG2−C219S−IgG1.1f)を含むmAbで形成されることを示す。
【0652】
実施例7:異種移植動物モデルにおける腫瘍のCD73酵素阻害
皮下ヒトCalu6腫瘍を担持するマウスを、7日飼育後、CD73.10−IgG1.1、CD73.10−IgG2CSまたはCD73.10−IgG2CS−IgG1.1で処置した。抗体を10mg/kg IPで投与した。腫瘍を、抗体投与1日目、2日目、3日目および7日目に摘出し、OCTに包埋し、冷イソペンタンで急速凍結した。OCT包埋腫瘍を5〜6μm切片に切り、一夜、RTで乾燥させた。腫瘍切片を、2.5分、冷10%リン酸緩衝化ホルマリンおよびアセトンの1:1混合物で固定し、1時間、RTで2mM CaCl
2および0.25Mスクロース含有50mM Tris−マレイン酸緩衝液、pH7.4でプレインキュベートした。1時間後、プレインキュベーション緩衝液を除き、5mM MnCl
2、2mM Pb(NO
3)
2、2.5%デキストランT200、2.5mM レバミソールおよび1mM AMPを添加した同一緩衝液に置き換えた。酵素反応を、1時間、37℃で実施した。DI水で濯いだ後、切片を正確に1分、1%(NH
4)
2Sとインキュベートし、DI水ですぐに濯いだ。切片を、ヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、キシレンベースのマウンティング培地にマウントとした。褐色は活性CD73の存在を示し、一方褐色がないことは、CD73酵素活性が抗体により阻害されたことを示した。
結果は、CD73.10−IgG1.1、CD73.10−IgG2CSおよびCD73.10−IgG2CS−IgG1.1がインビボでCD73酵素活性を阻害することを示す。CD73.10−IgG2CS−IgG1.1抗体で処置したマウスからの腫瘍の代表的染色切片を
図24A〜Eに示す。他の2抗体で処置したマウスからの腫瘍の染色切片は類似であった。CD73の阻害の程度は、抗体の血清レベルと相関した。それゆえに、3日目例で観察されたCD73活性のわずかに高いレベルは、7日目例より低い抗体血清レベルと相関した。
【0653】
上記と類似する実験を、皮下ヒトSNUC1結腸腺癌由来異種移植腫瘍を担持マウスで実施し、抗CD73抗体CD73.4IgG2CS−IgG1.1fで処置した。SNUC1腫瘍を有するマウスを、CD73.4IgG2CS−IgG1.1fで、0日目に1mg/kg、3mg/kgおよび10mg/kg IPで処置した。腫瘍を、投薬24時間、48時間、72時間、96時間および168時間後に採取した。CD73酵素阻害アッセイを上記のように実施した。褐色染色の定量を、Image Pro Premierソフトウェア(Media Cybernetics)で実施した。
図24Fのグラフに示す結果は、対照抗体処置マウスと比較したとき、抗CD73抗体投与動物でCD73活性が顕著に低下し、全3濃度での抗体による強いCD73酵素阻害を示した。それゆえに、抗CD73抗体CD73.4CS−IgG1.1fは、インビボで効率的にCD73酵素活性を阻害する。抗CD73抗体によるCD73阻害の動態も、4T1同系腫瘍モデルで。TY/23(rat抗マウスCD73抗体)またはラットIgG対照(10mg/kg)を、4T1腫瘍細胞注射7日後に注射した。腫瘍、脾臓、全血および血清を、Ab処置1日、2日、3日、6日および7日後に採取した。CD73活性の阻害を、上のセクションに記載のように、記載する日に測定した。代表的腫瘍切片を
図25AおよびBに示す。データは、TY/23がCD73活性をインビボで阻害することを示す。
【0654】
実施例8:エピトープビニングおよびフローサイトメトリベースの交差遮断
エピトープビニング試験を、Biolayer Interferometry(BLI) using an Octet RED装置(Pall Fortebio)で、25℃で実施した。これらの試験のために、20〜30μg/ml hCD73−hisを、90〜180秒ローディング相を使用して抗ペンタ−hisセンサー上に捕捉した。抗体競合を、ある抗体(mAb1)をhCD73−his表面に180秒結合させ、直ぐに第二の抗体溶液(mAb2)に180秒曝すことにより評価した。mAb1の前結合後のmAb2の結合シグナルを、競合非存在下でのmAb2と比較し、mAb1およびmAb2が、hCD73−his表面への結合について競合するか否かを決定した。これらの実験を、競合プロファイルおよびエピトープビンを確率するために、両方向(mAb1、次いでmAb2およびmAb2、次いでmAb1)で多数のmAb対で実施した(下記表29に要約のとおり)。
【0655】
表29に示すように、エピトープビニング分析は、2エピトープビンを確認した。
【表29】
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【0656】
抗体を、フローサイトメトリベースの交差遮断にも付した。実験を、1セットの標識蛍光標識抗体および第二セットの非標識抗体を使用して、次のとおり実施した:ウェルあたり100000 NCI−H292細胞を播種した。プレートを遠沈し、細胞を、ウェルあたり、100μL 2%FBSのPBS溶液に再懸濁した。細胞を、氷上で20分遮断した。示すように、2%FBSのPBS溶液中の非標識抗体を、各ウェルに添加した。プレートを遠沈し、細胞を、ウェルあたり100μLの、FITCにコンジュゲートした、希釈、標識抗体(10μg/mL)、すなわち、4C3または11F11に再懸濁した。細胞の6ウェルを抗体非存在下でインキュベートし、100μL 2%FBSのPBS溶液のみに再懸濁した(対照として)。次いで、細胞を氷上で30分インキュベートした。細胞を、2%FBSのPBS溶液で2回洗浄し、サンプルを140μL 2%FBSのPBS溶液に再懸濁し、FacsCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)で分析した。
図26AおよびBに示すフローサイトメトリーベースの交差遮断の結果は、上に示すSPRエピトープビニングデータを確認する。例えば、7A11は11F11と競合するが、4C3はしない。
【0657】
実施例9:HDXによるエピトープマッピング
本実施例は、CD73.4−IgG2CS−IgG1.1fが結合するヒトCD73上のエピトープの同定のためのHDX−MSを記載する。
水素/重水素交換マススペクトロメトリー(HDX−MS)法は、タンパク質主鎖アミド水素原子(プロリン以外)の重水素交換の速度および程度をモニタリングすることにより、溶液中のタンパク質立体構造および立体構造的力学を探索する。HDXの交換レベルは、タンパク質溶媒近接性および水素結合により、HDXによるタンパク質質量増加は、MSにより正確に測定できる。この技術を酵素消化と組み合わせたとき、ペプチドレベルでの構造特徴を解析でき、表面に露出しているペプチドを、内部に折りたたまれているものから区別することが可能となる。エピトープマッピング実験において、重水素標識および続く停止実験を、抗原および抗原/mAb複合体で平行して実施し、続いてオンライン消化消化、ペプチド分離およびMS分析を行う。
HDX−MSによるCD73におけるCD73.4−IgG2−CS−IgG1.1fのエピトープマッピング前に、非重水素化実験を実施して、組み換えヒト完全長ECD二量体CD73(12μM)および組み換えヒトCD73とCD73 mAbのタンパク質複合体(1:1モル比、CD73 mAbについて12μM)の共通消化性ペプチドの一覧を作成し、完全長ECD CD73の88%の配列カバー率を達成した。HDX−MS実験において、5μLのCD73(配列番号99)またはCD73とCD73.4−IgG2−CS−IgG1.1f mAbを、55μLのD
2O緩衝液(10mM リン酸緩衝液、D
2O、pD7.0)で希釈し、室温で標識反応を開始させた。使用したCD73タンパク質は、配列番号99を有するグリコシル化完全長二量体hCD73であった(また下にも示す)。反応を種々の時間実施した:20秒、1分、10分および240分。各標識反応時間の最後に、反応を停止緩衝液(100mM リン酸緩衝液と4M GdnClおよび0.4M TCEP、pH2.5、1:1、v/v)の添加により停止させ、50μLの停止サンプを、分析のためにWaters HDX-MSシステムに注入した。共通消化性ペプチドの重水素取り込みレベルを、CD73 mAb非存在下/存在下でモニターした。
【0658】
使用したCD73タンパク質は、配列番号99を有するアミノ酸配列を有した。
CD73におけるCD73 mAbのHDX−MS測定は、CD73.4−IgG2−CS−IgG1.1f mAbが、CD73のN末端領域における2ペプチド領域からなる不連続エピトープを認識することを示す:
ペプチド領域1(65−83):FTKVQQIRRAEPNVLLLDA(配列番号96)
ペプチド領域2(157−172):LYLPYKVLPVGDEVVG(配列番号97)
相互作用の3次元図(
図27B)は、これら2領域が幾何的に近いことを示す。相互作用の詳細な地図を
図27Aに示す。
【0659】
実施例10:CD73に結合する11F11の結晶構造
この実施例は、CD73(26−336)Hisに結合する11F11のFab’の結晶構造を記載する。
CD73(26−336)Hisを、標準プロトコールを使用して一過性に遺伝子導入したHEK−293 E細胞から精製し、そのまままたはPNGase F処理により脱グリコシル化し、1.2mg/mlに濃縮した。抗体11F11 Fab’を、標準プロトコールを使用する11F11のペプシン消化により調製し、1.1mg/mlに濃縮した。
複合体を、等体積の脱グリコシル化hCD73(26−336)Hisおよび11F11 Fab’と一夜、4℃でインキュベートすることにより形成させ、GE Superdex 200 26/60カラムを使用して精製し、10kMWCOスピンコンセントレータを使用して9.5mg/mlに濃縮した。
結晶を、蒸気拡散実験のシッティング・ドロップで成長させ、液滴は、0.25μLリザーバー溶液と混合した0.25μLタンパク質であった。7100を超える結晶化実験を設定した。最初の結晶リードは約10μmほど小さかった。最適化結晶は、200〜300μmサイズであった。結晶化最適化は、添加物、界面活性剤、沈殿剤、pH、温度および緩衝液タイプのスクリーニングを含んだ。結晶形成を可能にした条件は、次のとおりであった:34%ポリプロピレングリコールP400、0.1M Na/K PO
4 pH6.5および15μM CYMAL−7からなるリザーバー溶液;結晶化実験を室温で設定し、次いでインキュベートのために4℃に移した;そして4℃で7日インキュベーションした。結晶形成は、グリコシル化CD73タンパク質でのみ観察された。
結晶を、結晶化滴から直接採取し、直接液体N
2に入れた。100を超える結晶を、社内回折でスクリーニングした。
【0660】
データを、Rayonix MX-33HS高速CCD検出器を伴うSER-CATビームライン22IDでの小さなビーム、微小の衰弱およびヘリカルデータコレクションを使用して採取した。データセットを4.1Å、3.8Å、3.5Å、そして最後に3.05Åで採取した。ルーチンHKL2000(Otwinowski Z., Minor W., Methods in Enzymology 276, 307-326 (1997))を使用して処理し、スケール調整したデータは、3.04Å解像度に96%完了した。
BLAST(Altschul et al. (1990) “Basic local alignment search tool.” J. Mol. Biol. 215:403-410)サーチに使用して、分子置換サーチに使用するRCSBタンパク質データバンクにおけるCD73 N末端ドメインおよびFcおよびFvドメインと最も近いモデルを発見した:CD73モデルは、PDBエントリー4H1Sからであった(Heuts et al. Chembiochem. 2012 Nov 5;13(16):2384-91)。
これらを、PHASER(McCoy et al. J. Appl. Cryst. (2007). 40, 658-674)分子置換サーチの出発モデルとして使用した。CD73サーチは、非対称単位に5分子を発見した。CD73固定を維持して、重鎖サーチモデルは、非対称単位に2分子を発見した。CD73および重鎖固定を維持して、軽鎖での第三のPHASERサーチもまた、非対称単位に2分子を発見した。5個の完全複合体の混成モデルを、5CD73を重層し、重鎖および軽鎖を合わせることにより、部分溶液から製造した。これを、BUSTER(Bricogne et al. (2011) BUSTER version 2.11.6. Cambridge, United Kingdom: Global Phasing Ltd)改良の出発モデルとして使用した。
モデルは、改装され、アミノ酸は、11F11配列を反映するように帰られた。モデルは広範な手動モデル構築および改良に付された。計5個のBUSTER改良サイクルを、改良を完了するために行った。27,484タンパク質原子および24溶媒分子について、最終R−因子は20.59%(R−free=24.58%)であった。
【0661】
複合体の結晶構造を
図28A〜Dに示す。
結晶構造は1個以外の全相互作用がCDR領域における残基由来であり、相互作用の大部分がV
Hドメイン由来で、V
Lドメインからのさらなる2つの相互作用を伴うことを示す(
図28A)。ヒトCD73および11F11 Fab’の相互作用残基を表30に示す。
【表30】
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【表31】
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【0662】
CD73二量体(PDBエントリー4H1S)に重ね合わせた2個のCD73(NDT)/11F11複合体の複合構造に基づくモデルは、11F11が二量体境界面から離れたCD73上の表面に結合することを示唆し、Fabが二量体形成を妨害しないことを示唆する。
e CD73/11F11複合体のHDX−MSマッピングおよびX線結果の比較は、CD73(65〜83および157〜172)上の類似エピトープを示すという基本的一致があることを示す。しかしながら、X線構造は、Met−105〜Asp−111(H−結合〜Arg−109およびTyr−110を含む)、Lys−135〜Pro−139およびAsp−317〜Ile−320(H−結合〜Ser−319を含む)の領域におけるさらなる相互作用(6Å未満)を示す。
【0663】
実施例11:抗体/CD73複合体のサイズに対する種々のヒンジ/Fcの影響
上記実施例に示すように、IgG2ヒンジおよびCH1を有する抗CD73抗体は、細胞上のCD73酵素活性の良好な阻害剤であり、IgG1ヒンジを有する同一抗体より良好に内在化する。この観察およびIgG2ヒンジがIgG1ヒンジより堅いとの事実に基づき、抗原とIgG2ヒンジを有する抗体の間で、IgG1ヒンジを有する抗体に比して大きな複合体が形成されるとの仮説が立てられる。次の実験を、この仮説を分析するために実施した。
溶液中のCD73/抗体複合体の構造およびオリゴマー状態を、SEC−MALSおよびDLSにより試験した。これらの実験に関して、IgG1またはIgG2定常領域を含む抗体を、種々のモル比で、C末端ポリヒスチジンタグを含むヒト−CD73の完全長細胞外ドメイン(ヒト−CD73のアミノ酸残基26〜546、“hCD73−his”と称す)またはヒト−CD73のN末端ドメインに対応するフラグメント(アミノ酸残基26〜336、“N−hCD73−his”と賞する)を含む組み換えタンパク質と混合した。
CD73/抗体複合体のオリゴマー状態を、直列マルチアングル光散乱検出器と連結したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−MALS)により試験した。定組成分離を、Prominence Shimadzu UFLCに連結したShodex PROTEIN KW-803カラムで、0.02%Naアジド(0.1μm濾過)を含む200mM K
2HPO
4、150mM NaCl、pH6.8を含む緩衝液中、0.5mL/分で流して実施した。サンプルを、SIL-20AC Prominence Shimadzuオートサンプラーを使用してカラムに注入し、データを、連続的にProminence SPD-20ADダイオードアレイUV/vis分光光度計、続いてWyatt miniDAWN
TM TREOSマルチアングル光散乱検出器、次いでWyatt Optilab T-rEX屈折率検出器に連結した3オンライン検出器から得た。データを、Astra(Wyatt)およびLabsolutions(Shimadzu)ソフトウェアを使用して採取し、分析した。
動的光散乱(DLS)試験を、Wyatt DynaProプレートリーダーで、384ウェルプレート中、25℃で実施した。実験パラメータは、測定あたり各5秒の20取得であり、測定値を4つ記録し、平均および標準偏差を報告する。強度自動補正機能を、力学ソフトウェア(Wyatt Technologies)における“正則化”アルゴリズムを使用して適合させた。
【0664】
SEC−MALSおよびDLSの概要を
図29AおよびBに示す。抗体単独の分析は、単量体モノクローナル抗体に典型的である、保持時間(約16〜17分)、質量(140〜150kDa)および流体力学的半径(5.0〜5.4nm)を各抗体について示した。hCD73−hisタンパク質のデータは、溶液で予想される二量体構造を採るタンパク質と一致する;特に、SEC−MALSデータ(120kDa)から決定された質量は、CD73−his二量体(117kDa)で予測されたものに一致し、hCD73−hisモノマー(58.5kDa)で予測されたものとは不一致である。N−hCD73のデータは、溶液で単量体である組み換えNドメインタンパク質と一致し(SEC−MALS測定質量=38kDa、それに対する予測単量体質量=35.0kDa)、これは、タンパク質の二量体化を担う完全長CD73細胞外ドメインの領域がC末端ドメイン内に含まれ、Nドメイン残基の寄与が無いことから予測される。
ある抗体とN−hCD73−hisの等モル量混合物は、SECで単一種として溶出され、抗体またはN−hCD73−his単独よりも短い保持時間ならびにDLSによる大きな流体力学的半径(Rh)を融資、これは、複合体の形成と一致する。MALSデータは、これらの複合体の質量を約210kDaと示す。これは、1N−hCD73−his分子がある抗体の2Fabドメインの各々に結合し、1:2抗体:N−hCD73−his複合体を形成することと一致する。
【0665】
抗CD73抗体とhCD73−his二量体の混合物のSEC−MALSデータは、混合物がhCD73−hisまたは抗体単独より早く溶出し、複合体が形成されることを示唆する。同一可変領域を含むが、定常ドメインが異なるmAbのデータの比較は、hCD73−hisとIgG2定常ドメインを含むmAb(IgG2−C219S、IgG2−C219S−IgG1.1f)の複合体の溶出時間が、hCD73−hisとIgG1.1f定常ドメインを含むmAbの複合体より速いことを示す。さらに、hCD73−hisとIgG2定常ドメインを含むmAbの複合体のMALS決定質量は、hCD73−hisとIgG1定常ドメインを含むmAbの複合体より大きい。DLSデータは、さらにhCD73−hisとIgG2定常ドメインを含むmAbの複合体の流体力学的半径が、hCD73−hisとIgG1定常ドメインを含むmAbの複合体より大きいことを示す。例えば、3個の異なる定常領域(IgG2−C219S、IgG2−C219S−IgG1.1fまたはIgG1.1f)を有するCD73.4のSEC−MALSおよびDLSデータを
図30に示す。hCD73−hisとIgG2定常ドメインを含むCD73.4の複合体が、hCD73−hisとCD73.4−IgG1.1fの複合体と比較して、短い保持時間(
図30A)、大きな流体力学的半径(
図30B)および大きなMALS決定質量(
図30C)を有することを示すことを見ることができる。MALS質量に基づき、hCD73−hisとび抗体の間の複合体の構造および化学量論の図式モデルを
図30Dに示し、ここで、CD73.4−IgG1.1fを含む複合体が、小さな2:2(ピーク1=〜550kDa)または4:4 mAb/CD73二量体複合体(ピーク2=〜1300kDa)を主に形成し、一方CD73.4−IgG2−C219SまたはCD73.4−IgG2−C219S−IgG1.1fは、はるかに大きな複合体(>3000kDa)をhCD73−hisと形成しており、その厳密な構造および化学量論の信頼できるモデルはできなかった。
【0666】
表26に示す重鎖定常領域を有するCD73.4抗体もまた形成複合体のサイズについて試験した。
図30Dに示すように、結果は、IgG1 CH1ドメインを有するものよりも、IgG2 CH1ドメインを有する抗体と高次複合体が形成されることを示す。
SEC−MALSおよびDLSデータをまとめると、IgG1ヒンジおよびCH1領域(IgG1.1f)を含むものと比較して、hCD73−hisと、IgG2ヒンジおよびCH1領域(IgG2−C219SまたはIgG2−C219S−IgG1.1f)を含むmAbの間で大きな複合体が形成されることを示す。さらに、IgG2 CH1ドメインを有する抗体は、IgG1 CH1ドメインより大きな複合体を形成する。
【0667】
実施例12:抗体介在CD73内在化の改善におけるIgG2 CH1およびヒンジにおけるあるアミノ酸残基の関連性
表31に示す重鎖定常領域を有する抗CD73抗体(CD73.4)を製造し、上記抗体介在CD73内在化アッセイにおけるように試験した。
【表32】
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【表33】
[この文献は図面を表示できません]
【0668】
図31に示す結果は、CD73内在化に関して次の情報を提供する:
● CH2ドメインは、
○ a) 形式“KH”(ERKCCVECPPCPAP
ELLGG(配列番号22))と比較して、形式“AY”(IgG2ヒンジERKCCVECPPCPAP
PVAG(配列番号8)を有する)を有する修飾重鎖定常領域を含む抗体で観察される内在化能の差異は微小であった(セット5、6および7);
○ b) CH2交換は、野生型G1またはG2で同等である(セット5および6);および
○ c)残基237は内在化に影響しない:IgG2ヒンジへの“G”残基付加もIgG1ヒンジにおけるC末端“G”の欠失も、内在化に影響しない(セット9)
ことにより示されるように、影響を有しないように見える。
【0669】
これは、CH2ドメインは、内在化に影響しないことを示唆する(すなわち、CH2ドメインは、IgG1由来でもIgG2由来でもよい);
● IgG1におけるセット3(KRGEGSSNLF;KRGEGS;SNLF;ITNDRTPRおよびSNLFPR)に示されるCH1領域のIgG2のものへの交換はほとんど利益を提供しない、すなわち、内在化は、IgG1のものと類似のままである(セット3参照);
● IgG2におけるセット4(RKEGSGNSFL;RKEGSG;NSFL;TIDNTRRPおよびNSFLRP)に示されるCH1領域のIgG1への交換の影響は、種々である:NSFLの交換は影響せず、一方他の2領域(RKEGSG&RP)は、難解である(セット4参照)。セット3および4の結果に基づき、CH1領域とヒンジの間に相互作用があるように見栄、RKEGSGおよびRP領域がNSFL領域よりも重要である;
● ヒンジ領域は内在化に影響する、すなわち、IgG2のヒンジは、IgG1のヒンジと比較して、良好な内在化を提供する(セット7および8参照)。さらに、欠失を有するIgG1(G1−デルタ−ヒンジ)は、IgG1より内在化が改善される。欠失を有するIgG2(G2−デルタ−ヒンジ)は、IgG2ヒンジと類似するレベルの内在化を提供する。これは、ヒンジ領域が内在化に影響し、この効果は、IgG2 CH1により増強されることを示唆する(G2−G1−G2−G2−AYはG1−G2−G1−G1−AYと同等である);
● IgG2.4(C220S)は、IgG2.3(C219S)と比較して、内在化が類似するか、減少する。IgG2.3/4(C219S/C220S)は、IgG2.3またはIgG2.4単独と比較して、内在化がはるかに減少する(セット10参照)。これは、IgG2ヒンジおよびC219Sを有する抗体の内在化が、C220Sを有するIgG2ヒンジのものとほぼ同一であり、この両者が、C219SおよびC220Sの両者を有するIgG2ヒンジよりはるかに良好であることを示唆する;
● IgG2.5(C131S変異)は、C131を有する構築物と比較して、内在化が減少している(セット1、6および7参照)。
【0670】
それゆえに、これらの結果は、CH1ドメインおよびヒンジが、両者とも抗体介在CD73内在化に関係し、これらのドメインからのIgG2配列を有する抗体が、IgG1からのこれらの領域を有する抗体と比較して、良好な有効性で内在化する。
【0671】
実施例13:高分子量複合体からのIgG2ヒンジを有する抗体および/またはCH1ドメイン
表26に示す重鎖定常領域を有するCD73.4抗体も、実施例11に記載のように、SEC−MALSおよびDLS実験により高分子量複合体の形成を試験した。
本研究における16抗体中CD73.4−IgG1.1f、CD73.4−IgG2−C219S(CD73.4−IgG2.3とも称す)およびCD73.4−IgG2−C219S−IgG1.1f(CD73.4−IgG2.3G1.1f−KHとも称す)の3個は先に試験されていた。抗体単独のSEC−MALSおよびDLSデータは、単量体モノクローナル抗体で典型的な保持時間、質量および流体力学的半径を各抗体について示した。各抗体(5.5μM)とhCD73−his(5.5μM)の等モル量複合体は、抗体またはhCD73−his単独と比較して、全複合体で遅い保持時間を示し、複合体の形成を示す。16複合体の各々のSECクロマトグラムデータの重層を、
図32Aに示す。クロマトグラムデータを4つの別々のピークに分けることができ、これらを
図32Bに示す。ピーク1は、4:4 hCD73−his:mAb複合体より大きな質量当量を有する複合体を示唆するMALS決定質量を有する、最大種を示す。ピーク2は、約2:2 hCD73−his:mAb複合体の複合体を示唆するMALS決定質量をを有する、種を含む。ピーク3は、約1:1 hCD73−his:mAb複合体を示唆する低シグナルおよびMALS決定質量を有する小さい種である。ピーク4は、遊離抗体に一致するMALS決定質量を有するmAb単独の溶出に対応する。各種の相対的量を定量するために、各クロマトグラムの4ピークをピーク1(<12.9分)、ピーク2(12.9〜15.1分)、ピーク3(15.1〜16.7分)、ピーク4(16.7〜19.3分)として統合した。組込みはまた、あらゆる低分子量種を説明するために、ピーク5(>19.3分)と称する付加的な統合範囲も含み、これは、無視できることが判明した(全複合体の<3.5%)。この組込みからの各種のパーセンテージを表32にようやくする。全ての複合体は、類似する小さなパーセンテージのピーク3(約6〜9%)を含んだが、他のピークの量は種々であった。最も顕著なことは、hCD73−hisとhIgG1からのCH1ドメインを含む抗体の間の複合体が、小さな複合体(ピーク2)の顕著に大きなパーセンテージを占め、一方hIgG2からのCH1ドメインを含むものは、大きな複合体(ピーク1)の大きなパーセンテージを占めることである(表32および
図32C)。これは、高次複合体形成における、ヒンジ領域だけでなく、またCH1ドメインの重要な役割を示唆する。
【0672】
【表34】
[この文献は図面を表示できません]
【表35】
[この文献は図面を表示できません]
【0673】
実施例14:改変定常ドメインを有する抗体に対するFc受容体結合
本実施例は、CH1およびIgG2のヒンジを含む修飾重鎖定常領域を有する抗体が、IgG1のCH2およびCH3ドメインを含むとき、FcγRに結合することを示す。
可変ドメインによる抗原結合に加えて、抗体は、Fcガンマ受容体(FcgR)に、定常ドメインとの相互作用を介して結合できる。これらの相互作用は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および抗体依存性細胞貪食(ADCP)のようなエフェクター機能に介在できる。エフェクター機能活性はIgG1アイソタイプで高いが、IgG2およびIgG4については、これらのアイソタイプがFcgRに親和性が低いため、エフェクター機能活性はきわめて低いかまたはない。さらに、IgG1のエフェクター機能は、FcgR親和性および選択性を変えるために、定常領域内のアミノ酸残基の変異を介して修飾され得る。
Fcガンマ受容体(FcγRまたはFcgR)への抗体の結合を、Biacore表面プラズモン共鳴(SPR)およびFortebio Biolayer Interferometry(BLI)を含む、バイオセンサー技術を使用して試験した。SPR試験を、Biacore T100装置(GE Healthcare)で25℃で実施した。マウス抗6xHis抗体からのFabフラグメントを、約3000RUの密度で、EDC/NHSを使用してCM5センサーチップ上に固定化した。種々のhisタグ付FcgR(7μg/ml)を、10μl/分で30秒の接触時間を使用してC末端hisタグにより捕捉し、1.0μM抗体の結合を、10mM NaPO
4、130mM NaCl、0.05%p20(PBS−T)、pH7.1のランニング緩衝液で評価した。これらの実験のために使用したFcgRは、CD64(FcgRI)、CD32a−H131(FcgRIIa−H131)、CD32a−R131(FcgRIIa−R131)、CD32b(FcgRIIb)、CD16a−V158(FcgRIIIa−V158)、CD16b−NA1(FcgRIIIb−NA1)およびCD16B−NA2(FcgRIIIb−NA2)を含む。BLI実験を、Fortebio Octet RED装置(Pall, Fortebio)で、25℃で、10mM NaPO
4、130mM NaCl、0.05%p20(PBS−T)、pH7.1中実施した。抗体を、プロテインA被覆センサー上の非希釈発現上清から捕捉し、続いて1μM hCD32a−H131、hCD32a−R131、hCD32b、hCD16a−V158または0.1μM hCD64検体を結合した。
【0674】
まず、置換267E(SE)およびS267E/L328F(SELF)、ならびにV4、V7、V8、V9およびV12と称する変異P238D、P271G、H268D、A330R、G237D、E233Dの種々の組み合わせを含む、修飾IgG1 Fcドメインを含む抗体を製造した。これらの抗体の結合を、IgG1f、IgG2.3(IgG2−C219S)およびIgG4.1(IgG4−S228P)抗体ならびに全てのFcgRへの結合を低減するように改変されているIgG1.1f抗体との比較で、Biacore SPRにより試験した。
図33に示す結果は、IgG1f、IgG2.3およびIgG4.1および変異IgG1抗体の、SEおよびSELFへのCD32a−H131、CD32a−R131およびCD32b結合増加、ならびにCD32a−H131およびCD32a−R131を超えるCD32bへのV4、V7、V8、V9およびV12変異体の増加した選択性を含む、予想されるFcgR結合性質を示す(
図33)。
次セットの構築物を、エフェクター機能を、そうしなければエフェクター機能が陰性であるIgG2アイソタイプに操作するために使用した。この研究のために、上記変異を、IgG2.3定常領域またはIgG2.3G1−AYと呼ばれるIgG2.3/IgG1fハイブリッドにおいて導入した(表33)。抗体を、上清として小規模で発現させ、Fortebio Octet BioLayer Interferometryバイオセンサーテクノロジーを使用して、FcgRへの結合について試験した。抗体が上清に低濃度で存在するため、実験を、プロテインA被覆センサーを使用して上清から抗体を補足し、続いて溶液中のFcgR検体を結合させることにより実施した。野生型IgG1、SE、P238D、V4およびV12抗体を含む精製および上清対照IgG1fも比較のために入れ、これらの対照抗体の各々は、予想されるFcgR結合性質を示した(
図34)。IgG2.3抗体も予想される結合プロファイルを示し、CD32a−H131にのみ明らかな結合を有した。しかしながら、IgG2.3にS267E、L328F、P238D、P271G、H268D、A330R、G237DまたはE233D変異を導入するための全変異は、対応する改変IgG1 mAbのFcgR親和性を反復できなかった(
図34)。対照的に、IgG2.3G1−AY構築物は、IgG2.3のCH1およびヒンジ領域を保持しながら、野生型IgG1のFcgR結合性質を完全に保存できた。さらに、S267E、L328F、P238D、P271G、H268D、A330R、G237DおよびE233Dを含む全IgG2.3G1−AY変異体は、同一変異を含むIgG1版のmAbと同等なFcgR結合性質を示した(
図34)。これは、IgG2のCH1およびヒンジ領域を、野生型または変異体IgG1のエフェクター機能と組み合わせて有する抗体のエンジニアリングが成功したことを示す。
【0675】
【表36】
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【0676】
このエンジニアリング戦略を、IgG2.3G1−AY、IgG2.3G1−AY−S267E(IgG2.3G1−AY−V27)、ならびにIgG2−B形態バリアント(IgG2.5G1−AYおよびIgG2.5G1−AY−V27)およびIgG1およびIgG2定常ドメインの種々の組み合わせを含む他のハイブリッド抗体で形式を合わせた他の抗体を産生し、Biacore SPRテクノロジーを使用してこれらの抗体の抗his Fab捕捉hisタグ付FcgRへの結合を試験することにより、さらに探索した。Octet上清データに一致して、SPRデータは、IgG2.3G1−AYおよびIgG2.3G1−AY−V27抗体が、A形態IgG2抗体(IgG2.3)のCH1およびヒンジ領域を含むにもかかわらず、それぞれIgG1fおよびIgG1f−S267Eと同等なFcgR結合性質を有することを示した(表34)。同様のデータが、IgG2.5G1−AYおよびIgG2.5G1−AY−V27抗体を使用しても得られ、IgG1fまたは修飾IgG1f様エフェクター機能を有する、B形態IgG2抗体(C131S変異含有、IgG2.5と称す)のエンジニアリングに成功したことを示した。IgG2.3G1−AY、IgG2.3G1−AY−V27、IgG2.5G1−AYまたはIgG2.5G1−AY−V27定常領域を有するが、可変領域が異なる他のいくつかの抗体のデータは、このエンジニアリング戦略が、可変ドメインと無関係に広く他の抗体に適用可能であることを示した(表34)。IgG1f様FcgR結合性質を示す他の構築物はIgG1−G2.3G1−AYおよびIgG1デルタTHTを含み、一方、IgG2.3G1−KH、IgG2.5G1−KH、IgG2.3+THT、IgG2.5+THTおよびIgG2.3+GGG構築物を含む修飾定常領域構築物のいくつかは、IgG1f様FcgR結合性質を保持することができなかった(表34)。
【0677】
【表37】
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【表38】
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【0678】
まとめて、これらのデータは、ヒンジ領域における保存的CPPCPAP(配列番号380)モチーフの直接的C末端のIgG1における配列が、FcgR介在エフェクター機能に寄与し、一方、IgG1および修飾IgG1のエフェクター機能と、IgG2 CH1および/またはヒンジ領域を含む抗体の優れた内在化またはシグナル伝達性質を組み合わせることを可能とするために、抗体のCH1およびヒンジの上部部分は、IgG2または修飾IgG2配列で置き換えてよい。
【0679】
均等物
当業者は、せいぜい日常的な実験を使用して、ここに記載の具体的態様の多くの均等物を認識し、または確認できる。このような均等物は、添付する特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0680】
【表39】
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【表40】
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【0681】
【表41】
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【表42】
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【0682】
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【0683】
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【表103】
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【表104】
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【表105】
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【0713】
配列表は、成熟可変領域および重鎖および軽鎖の配列を提供する(すなわち、配列はシグナルペプチドを含まない)。