(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分子ふるいが、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、WENおよびこれらの組み合わせの骨格構造型から成る群より選択される、請求項15記載の排ガスシステム。
前記CHA骨格構造型分子ふるいが、アルミノケイ酸塩ゼオライト、ホウケイ酸塩、ガロケイ酸塩、SAPO、AlPO、MeAPSOおよびMeAPOから選択される、請求項19記載の排ガス処理システム。
前記CHA骨格構造型分子ふるいが、SSZ−13、SSZ−62、チャバサイト、ゼオライトK〜G、リンデD、リンデR、LZ−218、LZ−235、LZ−236、ZK−14、SAPO−34、SAPO−44、SAPO−47およびZYT−6から成る群より選択される、請求項20記載の排ガス処理システム。
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ガソリンエンジン排気後処理システムに関する。
【0002】
背景技術
ガソリンエンジンにより駆動する乗り物からの排ガスは一般的に、化学量論的な空気/燃料条件で、またはほぼ化学量論的な空気/燃料条件で稼動されるエンジンの排気中の汚染物質であるNO
x、一酸化炭素、(CO)および炭化水素(HC)を削減するのに効率的な、1つまたは複数の三元転化(TWC)自動車用触媒により処理される。化学量論的な条件をもたらす、燃料に対する空気の正確な割合は、燃料中の炭素と水素との相対的割合に伴って変化する。14.65:1の空燃比(A/F)(空気の質量:燃料の質量)は、平均式CH
l.88を有する炭化水素燃料、例えばガソリンの燃焼に相応する化学量論比である。したがって、記号λは、特定のA/F比を所定の燃料についての化学量論的なA/F比で割った結果を表すために使用され、λ=1は化学量論的混合物であり、λ>1は燃料がリーンな混合物であり、λ<1は燃料がリッチな混合物である。
【0003】
電子式燃料噴射システムを備えるガソリンエンジンは、空気−燃料混合物を常に変化させ、リーンな排気とリッチな排気の間で迅速かつ連続的に循環させる。近年では、燃費を改善するために、ガソリン燃料のエンジンは、リーン条件下で稼動するように設計されている。リーン条件とは、そのようなエンジンに供給される燃焼混合物中の空燃比が化学量論比を上回るように維持されることを表しており、そのため、発生する排ガスは「リーン」であり、つまり排ガスは、酸素含分が相対的に高い。リーンバーンガソリン直噴(GDI)エンジンは、温室効果ガスの排出削減に貢献し得る燃料効率上の利点をもたらし、燃料は過剰な空気中で燃焼される。リーン燃焼の主な副生成物はNO
xであり、その後処理が主な課題である。
【0004】
窒素酸化物(NO
x)の排出は、排出規制基準に適うように削減される必要がある。TWC触媒は、ガソリンエンジンがリーンで稼動する場合、排気中の過剰な酸素を原因として、NO
x排出量を削減するのに効率的ではない。酸素リッチな環境下でNO
xを削減するために最も有望な技術のうち2つは、尿素選択触媒還元(SCR)およびリーンNO
xトラップ(LNT)である。
【0005】
尿素SCRシステムは、噴射システムを備える第二の流体タンクを必要とし、これによって、システムがさらに複雑になる。尿素SCRに関するその他の問題は、尿素のための基本的設備、尿素溶液が凍結する可能性、および操作者が定期的に尿素溶液貯蔵器を満たす必要性である。
【0006】
ガソリンエンジンの排気は、アルカリ金属成分またはアルカリ土類金属成分(Ba、Kなど)を含有する触媒/NO
x吸着剤で処理することができ、この吸着剤は、NO
xをリーン(酸素リッチ)操作時間の間に貯蔵し、貯蔵されたNO
xをリッチ(燃料リッチ)操作時間の間に放出する。リッチ(または化学量論的)操作時間の間に、触媒/NO
x吸着剤の触媒成分は、NO
x(NO
x吸着剤から放出されたNO
xを含む)と、排気中に存在するHC、COおよび/または水素との反応によって、NO
xが窒素に還元することを促進する。しかしながら、NO
x吸収成分はまた、容易に排気中の硫黄酸化物と反応して、より安定した金属硫酸塩を生成し、したがって、NO
x貯蔵容量が減少する。高温(650℃超)の還元環境での処理は、LNT触媒から硫黄を除去し、NO
x貯蔵容量を回復するために必要とされている。
【0007】
図1は、従来技術のガソリンエンジンでしばしば使用されている、例示的なエンジン排気システムの構成を示す。
図1は特に、排気管115を介してガソリンエンジン110の下流にあるTWC触媒120、排気管125を介してTWC触媒120の下流にある任意のガソリン微粒子フィルター130、ならびに排気管135を介してTWC触媒120および任意のガソリン微粒子フィルター130の下流にあるSCR触媒物品140を有するエンジン排気システム100を示す。ガソリン微粒子フィルター130を、1種または複数の白金族金属、特にパラジウムおよびロジウムで触媒化することができる。
【0008】
現在の政府による排ガス規制に適うためには、ガソリンエンジン適用において、NO
x排出およびSCR触媒の硫黄被毒に対処する技術が必要である。
【0009】
発明の概要
本発明の第1の態様は、ガソリンエンジン排ガス流を処理するための排ガス処理システムに関する。第1の実施形態において、NO
x、微粒子状物質および硫黄を含有するガソリンエンジン排ガス流を処理するための排ガスシステムは、三元転化(TWC)触媒、リーンNO
xトラップ(LNT)および一体化されたLNT−TWCから選択される少なくとも1つの触媒物品;少なくとも1つの触媒物品の下流にある白金含有触媒物品;および白金含有触媒物品のすぐ下流にある選択触媒還元(SCR)触媒物品を有し、SCR触媒物品は分子ふるいを含む。
【0010】
第2の実施形態では、第1の実施形態の排ガスシステムを変形し、ここで少なくとも1つの触媒物品は、TWC触媒から成る。
【0011】
第3の実施形態では、第1の実施形態の排ガスシステムを変形し、ここで少なくとも1つの触媒物品は、LNTから成る。
【0012】
第4の実施形態では、第1の実施形態の排ガスシステムを変形し、ここで少なくとも1つの触媒物品は、TWC触媒およびLNTを含む。
【0013】
第5の実施形態では、第4の実施形態の排ガスシステムを変形し、ここでLNTおよびTWCは、単一の基材上で一体化されている。
【0014】
第6の実施形態では、第1から第5の実施形態のいずれかの排ガスシステムを変形し、ここで少なくとも1つの触媒物品および白金含有触媒物品は、単一の基材上にある。
【0015】
第7の実施形態では、第1から第5の実施形態のいずれかの排ガスシステムを変形し、ここで白金含有触媒は、微粒子フィルター上にある。
【0016】
第8の実施形態では、第7の実施形態の排ガスシステムを変形し、ここで微粒子フィルターは、ウォールフローフィルターである。
【0017】
第9の実施形態では、第1から第5の実施形態のいずれかの排ガスシステムを変形し、ここで白金含有触媒は、フロースルー基材上にある。
【0018】
本発明の第2の態様は、ガソリンエンジン排ガス流を処理するための排ガスシステムに向けられている。第10の実施形態では、NO
x、微粒子状物質および硫黄を含有するガソリンエンジン排ガス流を処理するための排ガスシステムは、三元転化(TWC)触媒;TWC触媒の下流にある、触媒化された白金含有煤煙フィルター;触媒化された煤煙フィルターのすぐ下流にある第一選択触媒還元(SCR)触媒物品;および第一SCR触媒物品のすぐ下流にある第二選択触媒還元触媒(SCR)を有し、ここで第一および第二SCR触媒物品はそれぞれ独立して分子ふるいを含む。
【0019】
第11の実施形態では、第1から第8の実施形態のいずれかの排ガスシステムを変形し、ここで白金含有触媒物品はさらに、Pd、Rh、Ru、IrおよびOsから選択されるさらなる白金族金属(PGM)を含み、ここで白金は、全PGMの少なくとも50質量%の量で、白金含有触媒物品中に存在する。
【0020】
第12の実施形態では、第1から第8の実施形態のいずれかの排ガスシステムを変形し、この排ガスシステムはさらに、SCR触媒物品の下流にアンモニア酸化(AMO
x)触媒を有する。
【0021】
第13の実施形態では、第1の実施形態の排ガスシステムを変形し、ここでSCR触媒物品は、吸入口および排出口を有する基材上にあり、アンモニア酸化触媒(AMO
x)を排出口に有する。
【0022】
第14の実施形態では、第1から第13の実施形態のいずれかの排ガスシステムを変形し、ここでガソリンエンジンは、リーンガソリン直噴(GDI)エンジンである。
【0023】
第15の実施形態では、第1から第8の実施形態のいずれかの排ガス処理システムを変形し、ここで排ガスがリッチである場合、少なくとも1つの触媒物品は、NH
3を発生させる。
【0024】
第16の実施形態では、第11の実施形態の排ガス処理システムを変形し、ここでさらなる白金族金属は、パラジウムである。
【0025】
第17の実施形態では、第1から第10の実施形態のいずれかの排ガス処理システムを変形し、ここで分子ふるいは、二重六員環(d6r)単位を有する分子ふるいである。
【0026】
第18の実施形態では、第1から第17の実施形態のいずれかの排ガスシステムを変形し、ここで分子ふるいは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、WENおよびこれらの組み合わせの骨格構造型から成る群より選択される。
【0027】
第19の実施形態では、第1から第18の実施形態のいずれかの排ガス処理システムを変形し、ここで分子ふるいは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SATおよびSAVの骨格構造型から成る群より選択される。
【0028】
第20の実施形態では、第1から第19の実施形態のいずれかの排ガス処理システムを変形し、ここで分子ふるいは、AEI、CHAおよびAFXの骨格構造型から成る群より選択される。
【0029】
第21の実施形態では、第1から第20の実施形態のいずれかの排ガス処理システムを変形し、ここで分子ふるいは、CHA骨格構造型である。
【0030】
第22の実施形態では、第21の実施形態の排ガス処理システムを変形し、ここでCHA骨格構造型分子ふるいは、アルミノケイ酸塩ゼオライト、ホウケイ酸塩、ガロケイ酸塩、SAPO、AlPO、MeAPSOおよびMeAPOから選択される。
【0031】
第23の実施形態では、第21および第22の実施形態のどちらかの排ガス処理システムを変形し、ここでCHA骨格構造型分子ふるいは、SSZ−13、SSZ−62、チャバサイト、ゼオライトK〜G、リンデD、リンデR、LZ−218、LZ−235、LZ−236、ZK−14、SAPO−34、SAPO−44、SAPO−47およびZYT−6から成る群より選択される。
【0032】
第24の実施形態では、第1から第21の実施形態のいずれかの排ガス処理システムを変形し、ここで分子ふるいは、SSZ−13およびSSZ−62から選択される。
【0033】
第25の実施形態では、第1から第24の実施形態のいずれかの排ガス処理システムを変形し、ここで分子ふるいは、Cu、Fe、Co、Ni、La、Ce、Mn、V、Agおよびこれらの組み合わせから選択される金属によって促進される。
【0034】
第26の実施形態では、第1から第25の実施形態のいずれかの排ガス処理システムを変形し、ここで分子ふるいは、Cu、Feおよびこれらの組み合わせから選択される金属によって促進される。
【0035】
第27の実施形態では、第1から第26の実施形態のいずれかの排ガス処理システムを変形し、ここで分子ふるいは、Cuによって促進される。
【0036】
本発明の第3の態様は、リーンバーンエンジンのエンジン排ガス流を処理するための方法に向けられている。第28の実施形態では、微粒子状物質、アンモニア、NO
xおよび硫黄を含有する、リーンバーンエンジンのエンジン排ガス流を処理するための方法が提供され、ここでこの方法は、エンジン排ガス流を、三元転化(TWC)触媒、リーンNO
xトラップ(LNT)および一体化されたLNT−TWCから選択される少なくとも1つの触媒物品上に流すこと;微粒子状物質、NO
x、硫黄およびアンモニアを含有する、少なくとも1つの触媒物品から出る排ガス流を白金含有触媒物品に通すこと;および白金含有触媒物品から出る排ガスを、分子ふるいおよび促進剤金属を有する選択触媒還元(SCR)物品に通すことを含む。
【0037】
第29の実施形態では、第28の実施形態の方法を変形し、ここで少なくとも1つの触媒物品は、TWC触媒から成る。
【0038】
第30の実施形態では、第28および第29の実施形態のどちらかの方法を変形し、ここで分子ふるいは、二重六員環(d6r)単位を有するアルミノケイ酸塩ゼオライトを含む。
【0039】
第31の実施形態では、第30の実施形態の方法を変形し、ここでゼオライトは、銅で促進されたCHA骨格構造型ゼオライトである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】従来技術によるガソリンエンジンで使用される排ガスシステムの構成の図解である。
【
図2】1つまたは複数の実施形態によるガソリンエンジンで使用される例示的な排ガスシステムの構成の図解である。
【
図3】ウォールフローフィルター基材区分の断面図を示す。
【
図4】1つまたは複数の実施形態による触媒物品システムの部分的断面図を示す。
【
図5】1つまたは複数の実施形態による触媒物品システムの部分的断面図を示す。
【0041】
発明の詳細な説明
幾つかの例示的な本発明の実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明で記載される構成または方法工程の詳細に限定されないものと理解されたい。本発明は、別の実施形態であってよく、様々な手法で実践または実施することができる。
【0042】
ガソリン排気処理システム、例えば
図1に図示されているシステムでは、SCR触媒物品140の性能は、燃料の配合に依存する。ガソリンは、特にディーゼル燃料の硫黄含分に比べて多量の硫黄を含有しており、SCR触媒は、特に硫黄に対して敏感であり、このことによって、性能が制限される。硫黄によってSCR触媒が被毒し、触媒のNO
x除去性能が低下する。
【0043】
硫酸塩化されたSCR触媒の再生には、約500℃の温度が必要とされる。ガソリンエンジンに関して、そのような高い温度は、リッチサイクルでしか達成することができない。リッチサイクルによる稼動は、乗り物の燃費に不利な影響を与えるため、相手先ブランド製造(OEM)の顧客は、延長時間の間にリッチに稼動しないシステムを好む。リーンに稼動することによって、燃費が改善される。よって、硫酸塩化されたSCR触媒を熱によって再生することはしばしば、特に、約250℃の温度でしかリーンに稼動しないリーンGDIエンジンでの適用の場合、排気温度によって妨害される。したがって、経時的に、そのようなシステム内のSCR触媒のNO
x削減性能は著しく低下する。
【0044】
驚くべきことに、白金含有触媒物品を1つまたは複数の選択触媒還元(SCR)物品のすぐ上流で使用することによって、燃料および排ガス流中の硫黄の有害作用に対してSCR触媒物品が安定化され、同時に、SCR触媒物品が効率的にNO
x排出を削減することが可能になる。したがって、本発明の実施形態によると、NO
x、微粒子状物質および硫黄を含有するガソリンエンジン排ガス流を処理するための排ガスシステムが提供され、このシステムは、三元転化(TWC)触媒、リーンNO
xトラップ(LNT)および一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品;1つまたは複数の触媒物品の下流にある白金含有触媒物品;および白金含有触媒物品のすぐ下流にある1つまたは複数の選択触媒還元(SCR)触媒物品を有し、1つまたは複数のSCR触媒物品は分子ふるいを含む。
【0045】
本発明の実施形態の排ガス処理システムは、
図2〜5を参照することによってより容易に理解することができる。
図2を参照すると、例示的な実施形態であるエンジン排気システム200は、排気管215を介してガソリンエンジン210の下流にある、TWC触媒、LNTまたは一体化されたLNT−TWC触媒から選択される1つまたは複数の触媒物品220、排気管225を介して1つまたは複数の触媒物品220の下流にある白金含有触媒物品230、および排気管235を介して白金含有触媒物品230のすぐ下流にある1つまたは複数のSCR触媒物品240を有する。これより、例示的な構成および材料を含め、様々な成分の詳細をより細かく記載する。
図2が、白金含有物品230を、1つまたは複数の触媒物品220の下流にある別個の物品として示す一方で、本発明の実施形態は、白金含有触媒が同じブリック(brick)上に、および/または1つもしくは複数の触媒物品220の排出口端部の近くにあり得る実施例を含む。したがって、本明細書にあるように、「下流」とは、白金含有触媒がエンジンから、より遠くに位置しているという事実を指す。
【0046】
本開示で使用される用語に関して、以下のように定義する。
【0047】
本明細書で使用されているように、「触媒」または「触媒材料(catalyst material)」または「触媒作用材料(catalytic material)」という用語は、反応を促進する材料を指す。
【0048】
本明細書で使用されているように、「触媒物品」という用語は、所望の反応を促進するために使用される要素を指す。例えば、触媒物品は、触媒種、例えば触媒組成物を含有するウォッシュコートを、基材、例えばハニカム基材上に有することができる。
【0049】
本明細書で使用されているように、「層」および「層状の」という用語は、表面、例えば基材上で支持されている構造を指す。
【0050】
本明細書で使用されているように、「ガソリンエンジン」という用語は、ガソリンで稼動するよう設計された、火花点火を備えるあらゆる内燃エンジンを指す。1つまたは複数の特定の実施形態では、エンジンはリーンガソリン直噴エンジンである。ガソリン直噴(GDI)エンジンは、リーンバーン条件および成層燃焼を有することができ、これによって、微粒子が生成する。ディーゼルリーンバーンエンジンにより生成される微粒子に比べて、GDIエンジンにより生成される微粒子は、より微細かつより少量になる傾向を示す。
【0051】
本明細書で使用されているように、「ウォッシュコート」という用語は、処理される気体流の通過を可能にするのに十分に多孔質である担体基材材料、例えばハニカム型担体部材に施与される触媒作用材料または別の材料の薄い接着性コーティングという、当技術分野において通常の意味を有する。当技術分野で理解されているように、ウォッシュコートは、スラリー中の粒子分散体から得られ、これを基材に施与し、乾燥およびか焼させると、多孔質ウォッシュコートがもたらされる。
【0052】
本明細書で使用されているように、「流」という用語は広義には、固体または液体の微粒子状物質を含有し得る流動気体のあらゆる組み合わせを指す。「気体流」または「排ガス流」という用語は、飛沫同伴する非気体状成分、例えば液滴、固体状微粒子などを含有し得る気体構成要素の流れ、例えばエンジンの排気を意味する。さらに、エンジンの排ガス流は一般的に、燃焼生成物、不完全燃焼生成物、窒素酸化物、燃焼性および/または炭素質の微粒子状物質(煤煙)、ならびに未反応の酸素および窒素を含む。
【0053】
TWC触媒、LNT、一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品:
1つまたは複数の実施形態では、排ガス処理システムは、三元転化(TWC)触媒、リーンNO
xトラップ(LNT)および一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品220(
図2中)を含む。
【0054】
1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の触媒物品はTWCから成る。TWC触媒に関して、特定の要求はない;当技術分野で公知のあらゆるTWC触媒を利用することができる。1つまたは複数の実施形態では、TWC触媒は、酸素貯蔵成分および/または耐火金属酸化物担体の上に担持されている白金族金属、ならびに任意で、第二耐火金属酸化物担体または第二酸素貯蔵成分の上に担持されているさらなる白金族金属成分を含む。
【0055】
本明細書で使用されているように、「耐火金属酸化物担体」および「担体」という用語は、上にさらなる化合物または化学元素が担持された、土台となる高表面積材料を指す。担体粒子は、20Åより大きい細孔および幅広い細孔分布を有する。本明細書で定義されるように、そのような金属酸化物担体からは、分子ふるい、特にゼオライトが除外される。特定の実施形態では、一般的に1グラムあたり60平方メートル超(「m
2/g」)、しばしば約200m
2/gまで、またはそれより高いBET表面積を示す高表面積耐火金属酸化物担体、例えばアルミナ担体材料(「γ−アルミナ」または「活性アルミナ」とも称される)を利用することができる。そのような活性アルミナは通常、アルミナのγ相およびδ相の混合物であるが、かなりの量のη−アルミナ相、κ−アルミナ相およびθ−アルミナ相を含有していてもよい。活性アルミナ以外の耐火金属酸化物を、所定の触媒中で、少なくとも幾つかの触媒成分のための担体として使用することができる。例えば、バルクセリア、ジルコニア、α−アルミナ、シリカ、チタニアおよびその他の材料が、そのような使用について知られている。
【0056】
本発明の1つまたは複数の実施形態は、アルミナ、ジルコニア、アルミナ−ジルコニア、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−ランタナ−アルミナ、バリア−ランタナ−ネオジミア−アルミナ、アルミナ−クロミア、セリア、アルミナ−セリアおよびこれらの組み合わせから成る群より選択される活性化合物を含有する耐火金属酸化物担体を含む。これらの材料の多くには、活性アルミナよりも著しく低いBET表面積を有するという欠点があるものの、この欠点は、できあがる触媒のより良好な耐久性または能力の向上によって相殺される傾向にある。本明細書で使用されているように、「BET表面積」という用語は、N
2吸着で表面積を特定するための、Brunauer、Emmett、Tellerによる方法という通常の意味を有する。細孔直径および細孔容積は、BET式のN
2吸着実験または脱着実験を利用して、特定することもできる。
【0057】
1つまたは複数の実施形態では、耐火金属酸化物担体は独立して、アルミナ、ジルコニア、アルミナ−ジルコニア、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−ランタナ−アルミナ、バリア−ランタナ−ネオジミア−アルミナ、アルミナ−クロミア、セリア、アルミナ−セリアおよびこれらの組み合わせから成る群より選択される、活性化された、安定化された、または活性化および安定化された化合物を含む。
【0058】
本明細書で使用されているように、「酸素貯蔵成分」(OSC)という用語は、多価状態を有し、還元体、例えば一酸化炭素(CO)または水素と、還元条件下で活発に反応することができ、そして酸化体、例えば酸素または亜酸化窒素と、酸化条件下で反応することができるものを指す。適切な酸素貯蔵成分の例は、希土類酸化物、特にセリアを含む。OSCは、セリアに加えて、1つまたは複数のランタナ、プラセオジミア、ネオジミア、ニオビア、ユーロピア、サマリア、イッテルビア、イットリア、ジルコニアおよびこれらの混合物を含むことができる。希土類酸化物は、バルク(例えば、微粒子状)形態であってよい。酸素貯蔵成分は、酸素貯蔵特性を示す形態の酸化セリウム(セリア、CeO
2)を含むことができる。セリアの格子酸素は、一酸化炭素、水素または炭化水素と、リッチA/F条件下で反応することができる。リーン暴露される場合、還元されたセリアは、酸素を空気および/またはNO
x種から再捕捉する能力を有しており、こうしてNO
xの転化が促進される。
【0059】
1つまたは複数の実施形態では、酸素貯蔵成分は、セリア−ジルコニア複合体、または希土類により安定化されたセリア−ジルコニアを含む。
【0060】
本明細書で使用されているように、「白金族金属」または「PGM」という用語は、元素周期表で定義されている1つまたは複数の化学元素を指し、これには、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)およびルテニウム(Ru)、ならびにこれらの混合物が含まれる。1つまたは複数の実施形態では、TWC触媒は、酸素貯蔵成分(OSC)および/または耐火金属酸化物担体の上に担持された少なくとも1種の白金族金属、および任意で、第二耐火金属酸化物担体または第二酸素貯蔵成分の上に担持されたさらなる白金族金属を有する。1つまたは複数の実施形態では、白金族金属成分は、白金、パラジウム、ロジウムまたはこれらの混合物から選択される。特定の実施形態では、白金族金属成分はパラジウムを含む。一般的に、TWC触媒のパラジウム含分に関するかぎりでは、特定の制限は存在しない。
【0061】
1つまたは複数の実施形態では、TWC触媒はさらなる白金族金属を含まない。別の実施形態では、TWC触媒はさらなる白金族金属を含む。1つまたは複数の実施形態では、さらなる白金族金属は、存在する場合、白金、ロジウムおよびこれらの混合物から選択される。特定の実施形態では、さらなる白金族金属成分はロジウムを含む。一般的に、TWC触媒のロジウム含分に関するかぎりでは、特定の制限は存在しない。1つまたは複数の特定の実施形態では、TWC触媒はパラジウムおよびロジウムの混合物を含む。別の実施形態では、TWC触媒は、白金、パラジウムおよびロジウムの混合物を含む。
【0062】
1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の触媒物品220(
図2中)はLNTから成る。LNTに関して、特定の条件は存在しない;当技術分野で公知のあらゆるLNTを利用することができる。還元環境において、リーンNO
xトラップ(LNT)は、炭化水素の水蒸気改質反応および水性ガスシフト(WGS)反応を促進することよって、反応を活性化し、NO
xを削減する還元体としてのH
2をもたらす。水性ガスシフト反応は、一酸化炭素が水蒸気と反応して二酸化炭素および水素を形成する化学反応である。セリアがLNT中に存在することによって、WGS反応に触媒作用が及ぼされ、SO
2による失活に対するLNTの耐性が改善され、PGMが安定化される。アルカリ土類金属酸化物、例えばMg、Ca、SrおよびBaの酸化物、アルカリ金属酸化物、例えばLi、Na、K、RbおよびCsの酸化物、および希土類金属酸化物、例えばCe、La、PrおよびNdの酸化物を含むNO
x貯蔵(吸着剤)成分を、白金族金属触媒、例えばアルミナ担体上に分散された白金と組み合わせて、内燃エンジンからの排ガスの浄化に使用することができる。NO
x貯蔵にとって通常は、酸化バリウムが好ましい。なぜなら、酸化バリウムは、リーンエンジンの運転で硝酸塩を形成し、リッチ条件下で比較的容易に硝酸塩を放出するからである。
【0063】
1つまたは複数の実施形態では、LNTは、少なくとも1種の白金族金属成分、および希土類酸化物上に担持されているアルカリ土類金属を含む。1つまたは複数の実施形態では、希土類酸化物は、Ce、Pr、Nd、Eu、Sm、YbおよびLa、ならびにこれらの混合物から選択される希土類金属の酸化物少なくとも1種から選択される。幾つかの実施形態では、希土類酸化物を、1つまたは複数のその他の成分、例えば、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ニオブ、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ニッケル、マンガン、鉄、銅、銀、金、ガドリニウムおよびこれらの組み合わせと混合することができる。
【0064】
1つまたは複数の実施形態では、LNTは、少なくとも1種の白金族金属、および高表面積耐火金属上に担持されたアルカリ土類金属を含む。1つまたは複数の実施形態では、高表面積耐火金属酸化物は、当技術分野で公知のあらゆる高表面積耐火金属酸化物を含む。例えば、高表面積耐火金属酸化物は、1つまたは複数のアルミナ、ジルコニア、アルミナ−ジルコニア、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−ランタナ−アルミナ、バリア−ランタナ−ネオジミア−アルミナ、アルミナ−クロミア、セリアおよびアルミナ−セリアを含むことができる。
【0065】
1つまたは複数の特定の実施形態では、LNTは、希土類酸化物−高表面積耐火金属酸化物上に担持された、少なくとも1種の白金族金属を有する。1つまたは複数の実施形態では、希土類酸化物−高表面積耐火金属酸化物はセリア−アルミナを含む。
【0066】
1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の触媒物品220(
図2中)は、TWC触媒およびLNTの両方を含む。そのような実施形態では、TWC触媒がLNTの上流にあってよく、または別の実施形態では、LNTがTWCの上流にあってよい。1つまたは複数の特定の実施形態では、LNTはTWC触媒の上流にある。
【0067】
本明細書で使用されているように、「上流」および「下流」という用語は、エンジンからテールパイプへのエンジン排ガス流の流れに従う相対的方向を指し、エンジンは上流に位置しており、テールパイプおよびあらゆる汚染物削減物品、例えばフィルターおよび触媒は、エンジンの下流にある。触媒または触媒帯域が、別の触媒または帯域の「下流」または「上流」にある場合、これは異なる基材もしくはブリックの上、または同じ基材もしくはブリックの異なる領域上にあってよい。
【0068】
1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の触媒物品220(
図2中)は、一体化されたLNT−TWCを含む。1つまたは複数の実施形態によると、一体化されたLNT−TWCは、TWC活性とLNT機能の間でバランスをとる層状の触媒複合体である。リーン運転では、一体化されたLNT−TWC触媒複合体によって、一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC)の転化、ならびにNO
xの貯蔵が可能になる。リッチ運転では、一体化されたLNT−TWC触媒複合体は、COおよびHCを転化すること、ならびにNO
xを放出および削減することに対して効果的である。化学量論的運転では、一体化されたLNT−TWC触媒複合体によって、CO、HCおよびNO
xの同時転化が可能になる。
【0069】
1つまたは複数の実施形態では、排ガスがリッチである場合、TWC触媒、LNT、または一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品220(
図2中)が、アンモニア(NH
3)を発生させる。
【0070】
白金含有触媒物品:
図2を参照すると、1つまたは複数の実施形態では、排ガスシステムは、白金含有触媒物品230を、1つまたは複数の触媒物品220の下流に、かつ1つまたは複数の選択触媒還元物品240のすぐ上流に有する。理論に結びつけるつもりはないが、白金含有触媒物品を、1つまたは複数のTWC触媒、LNT、または一体化されたLNT−TWCの下流に、かつ1つまたは複数のSCR触媒物品のすぐ上流に置くことによって、NO
2の量が制限され、ガソリン中の硫黄に対してより安定なシステムが提供されるであろうと考えられている。白金含有触媒物品によって、1つまたは複数のSCR触媒物品のNO
x削減能力の低下が防止され、したがって、SCR触媒物品が効率的にNO
x排出を減らすことができると考えられている。
【0071】
本明細書で使用されているように、「すぐ上流」という用語は、エンジンからテールパイプへのエンジン排ガス流の流れに従う相対的方向を指す。すぐ下流とは、白金含有触媒物品と1つまたは複数のSCR触媒物品との間に別の触媒作用材料がないことを意味する。
【0072】
1つまたは複数の実施形態では、白金含有触媒物品230(
図2中)は、高表面積耐火金属酸化物担体上に分散された白金を含む。1つまたは複数の実施形態では、高表面積耐火金属酸化物担体は、当技術分野で公知のあらゆる高表面積耐火金属酸化物担体を含む。例えば、高表面積耐火金属酸化物担体は、1つまたは複数のアルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、シリカ−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、チタニア−アルミナ、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−ランタナ−アルミナ、バリア−ランタナ−ネオジミア−アルミナ、ジルコニア−シリカ、チタニア−シリカ、またはジルコニア−チタニア、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0073】
一般的に、白金含有触媒物品の白金含分に関するかぎりでは、特定の制限は存在しない。1つまたは複数の実施形態では、白金担持量は、約1g/ft
3〜約100g/ft
3の範囲にある。
【0074】
1つまたは複数の実施形態では、白金含有触媒物品230(
図2中)はさらに、Pd、Rh、Ru、IrおよびOsから選択されるさらなる白金族金属(PGM)を含む。さらなるPGMが存在するそのような実施形態では、白金は、合計PGMの少なくとも50質量%の量で白金含有触媒物品中に存在しており、この量には、少なくとも55質量%、少なくとも60質量%、少なくとも65質量%、少なくとも70質量%、少なくとも75質量%、少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、少なくとも90質量%および少なくとも95質量%(例えば、約50質量%および約95質量%)が包含される。
【0075】
1つまたは複数の実施形態では、さらなるPGMはパラジウムを含む。そのような実施形態では、白金は、白金およびパラジウムの合計量の少なくとも50質量%の量で白金含有触媒物品中に存在しており、この量には、少なくとも55質量%、少なくとも60質量%、少なくとも65質量%、少なくとも70質量%、少なくとも75質量%、少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、少なくとも90質量%および少なくとも95質量%(例えば、約55質量%〜約95質量%)が包含される。1つまたは複数の実施形態では、白金含有触媒物品におけるPt:Pdの比が、約100:1〜約1:0の範囲にあり、この範囲には、約50:1〜約5:1の範囲および約20:1〜約2:1の範囲が包含される。特定の実施形態では、白金含有触媒物品におけるPt:Pdの比は、約10:1である。
【0076】
1つまたは複数の実施形態では、白金含有触媒物品230(
図2中)は、フロースルー基材上にある。別の実施形態では、白金含有触媒物品230(
図2中)は、微粒子フィルター上に被覆されている。微粒子フィルターは、ガソリン微粒子フィルターまたは煤煙フィルターから選択することができる。本明細書で使用されているように、「微粒子フィルター」または「煤煙フィルター」という用語は、微粒子状物質を排ガス流、例えば煤煙から除去するように設計されたフィルターを指す。微粒子フィルターは、ハニカムウォールフローフィルター、部分濾過フィルター、ワイヤーメッシュフィルター、巻取り繊維フィルター、焼結金属フィルターおよび発泡フィルターを含むが、これらに限定されることはない。
【0077】
特定の実施形態では、微粒子フィルターは、白金を含有する、触媒化された煤煙フィルター(CSF)である。白金含有CSFは、捕捉された煤煙を焼失させるために、および/またはNO
2を酸化するために、白金含有ウォッシュコート層で被覆された基材を有する。白金含有CSFは、燃やされていない炭化水素およびある程度の微粒子状物質を燃焼させるために、白金および1つまたは複数の高表面積耐火金属酸化物担体(例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、ジルコニアアルミナおよびセリア−ジルコニア)で被覆される。
【0078】
白金含有CSF組成物を担持するのに有利なウォールフロー基材は、基材の長手軸に沿って広がる、複数の微細な、実質的に平行な気体流路を有する。一般的に、流路はそれぞれ、基材本体の片端において塞がれており、反対の端面では、一つおきに流路が塞がれている。そのようなモノリス基材は、断面1平方インチあたり、約900個までまたはそれより多くの流路(または「セル」)を有することができるが、さらに少ない流路を使用してよい。例えば、基材は、平方インチ(「cpsi」)あたり、約7個〜600個、より一般的には約100個〜400個のセルを有することができる。本発明の実施形態で使用される多孔質ウォールフローフィルターは、前記要素の壁が、白金、例えば本明細書で上述した白金含有CSF触媒組成物を、その上に有するか、またはその中に含有するように触媒化することができる。白金含有触媒作用材料は、要素の壁の吸入口側だけに、排出口側だけに、吸入口側および排出口側の両方に存在してよく、または壁自体が、全てまたは部分的に、白金含有触媒作用材料から成っていてよい。別の実施形態において、本発明は、要素の吸入口壁および/または排出口壁上における、1つまたは複数の白金含有触媒作用材料ウォッシュコート層および1つまたは複数の白金含有触媒作用材料ウォッシュコート層の組み合わせの使用を含み得る。
【0079】
図3は、複数の流路52を有するウォールフローフィルター基材50を図示する。これらの流路は、フィルター基材のチャネル壁53によって管状に囲まれている。この基材は、吸入口端部54および排出口端部56を有する。吸入口端部では吸入口栓58によって、排出口端部では排出口栓60によって、交互に流路に栓をして、吸入口端部54および排出口端部56において対向するチェッカー盤柄を形成する。気体流62は、栓をはずしたチャネルを通って吸入口64に入り、排出口栓60によって止められ、チャネル壁53(細孔質である)を通って排出口側66へと拡散する。この気体は、吸入口栓58のために、壁の吸入口側に戻ることはできない。
【0080】
図2を参照すると、1つまたは複数の実施形態では、TWC触媒、LNTおよび一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品220、ならびに白金含有触媒物品230は、別個の基材上にある。1つまたは複数の触媒物品220および白金含有触媒物品230が別個の基材上にある実施形態は、より具体的には
図4に図示されている。
図4を参照すると、示されている排ガスシステム300の一部は、軸方向に区分された配列であり、ここで、TWC触媒、LNTまたは一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品320は、白金含有触媒物品330の上流に位置しており、触媒物品320および白金含有触媒物品330は、別個の基材、つまり第一基材305および第二基材315上にある。TWC触媒、LNTまたは一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品320は、第一基材305上に配置されており、白金含有触媒物品330は、別個の第二基材315上に配置されている。第一基材305および第二基材315は、同じ材料または異なる材料で構成されていてよい。第一基材305は、吸入口端部325および排出口端部330を有しており、これらによって、軸長L1が定められる。第二基材315は、吸入口端部335および排出口端部340を有しており、これらによって、軸長L2が定められる。1つまたは複数の実施形態では、第一基材305および第二基材315は一般的に、ハニカム基材のチャネル350を複数有しており、これらのうち、明確化のために、チャネルを1つだけ断面図に示す。TWC触媒、LNTまたは一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品320は、第一基材305の吸入口端部325から、第一基材305の全軸長L1を通って、排出口端部325にまで広がる。1つまたは複数の触媒物品320の長さは、
図4において、第一帯域長305aとして表される。白金含有触媒物品330は、第二基材315の排出口端部335から、第二基材315の全軸長L2を通って、吸入口端部340にまで広がる。
図4では、白金含有触媒物品330によって、第二帯域長315aが定められる。基材305aの長さおよび基材315aの長さは変更可能であると理解される。
【0081】
図2を参照すると、1つまたは複数の実施形態では、TWC触媒、LNTおよび一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品220、ならびに白金含有触媒物品230は、単一の基材上にある。単一の基材上において、これらの設計は、区分された層状の系を含むことができる。1つまたは複数の触媒物品220および白金含有触媒物品230が層状の関係で単一の基材上にある実施形態では、白金含有触媒物品を基材上に被覆して、第一層(またはボトムコート)を形成し、1つまたは複数の触媒物品220を第一層の上にウォッシュコーティングして、第二層(またはトップコート)を形成する。1つまたは複数の触媒物品のトップコート/第二層は、白金含有触媒物品のボトムコート/第一層の上流にあると、当業者によって理解されるだろう。
【0082】
1つまたは複数の実施形態では、基材はフロースルーハニカムモノリスであり、触媒作用材料は基材にウォッシュコートとして適用される。本明細書で使用されているように、「基材」という用語は、一般的にウォッシュコートの形態にある触媒材料が置かれているモノリス材料を指す。ウォッシュコートは、特定の固体含分(例えば、約30〜90質量%)の触媒を液状ビークル中に含有するスラリーを調製することによって形成され、そしてこれを基材上に被覆し、乾燥させると、ウォッシュコート層が得られる。本明細書で使用されているように、「ウォッシュコート」という用語は、処理される気体流の通過を可能にするのに十分に多孔質である基材材料、例えばハニカム型担体部材に施与される触媒作用材料または別の材料の薄い接着性コーティングという、当技術分野において通常の意味を有する。
【0083】
1つまたは複数の実施形態では、基材は、ハニカム構造を有するセラミックまたは金属である。あらゆる適切な基材、例えば、流路に流れる液体流に対して流路が開放されるように、基材の吸入口端面または排出口端面から基材を通って広がる、微細で平行な気体流路を有する種類のモノリス基材を用いることができる。液体吸入口から液体排出口まで基本的に直線な通路である流路は、触媒作用材料がウォッシュコートとして被覆されている壁によって定められ、このことによって、これらの流路を流れる気体は、触媒作用材料に接触する。モノリス基材の流路は薄壁チャネルであり、これらのチャネルは、あらゆる適切な断面形状およびサイズ、例えば、台形、長方形、正方形、正弦、六角形、楕円形、円形などであってよい。そのような構造は、断面1平方インチあたり、約60個〜約900個またはそれより多くの気体吸入口開口部(つまりセル)を有することができる。
【0084】
金属基材は、あらゆる金属基材、例えば開口部または「打抜き」を有するものをチャネル壁内に含むことができる。
【0085】
セラミック基材は、あらゆる適切な耐火材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト−α−アルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト(zircon mullite)、リシア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α−アルミナ、アルミノケイ酸塩などから製造することができる。
【0086】
本発明の実施形態の触媒材料にとって有利な基材はまた、基本的に金属であってもよく、1つもしくは複数の金属または金属合金から成っていてもよい。金属基材は、様々な形状、例えば、ペレット、波板またはモノリスの形態で用いることができる。金属基材の特定の例は、耐熱卑金属合金、特に、鉄が実質的または主要な成分であるものを含む。そのような合金は、1つまたは複数のニッケル、クロムおよびアルミニウムを含有することができ、これらの金属の合計は有利には、合金を少なくとも約15質量%、例えば、クロムを約10〜25質量%、アルミニウムを約1〜8質量%およびニッケルを約0〜20質量%含むことができる。
【0087】
1つまたは複数の実施形態では、TWC触媒、LNTおよび一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品、ならびに白金含有触媒物品を、軸方向に区分された構成で配置する。本明細書で使用されているように、「軸方向に区分された」という用語は、互いに相対的に、上流帯域および下流帯域に位置することを指す。軸方向とは、横並びであることを意味し、そのため、上流帯域および下流帯域は、互いに並んで位置している。
【0088】
図2を参照すると、1つまたは複数の実施形態では、TWC触媒、LNTおよび一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品220、ならびに白金含有触媒物品230は、共通の基材上に、軸方向に区分された構成で存在し、ここで1つまたは複数の触媒物品220は、白金含有触媒物品230の上流にある。そのような実施形態は、
図5を参照することでより容易に理解することができる。
図5を参照すると、軸方向に区分されたシステム400の例示的な実施形態が示されている。TWC触媒、LNTおよび一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品420は、共通の基材405上で、白金含有触媒物品430の上流にある。基材405は、吸入口端部425および排出口端部435を有しており、これらによって、軸長Lが定められる。1つまたは複数の実施形態では、基材405は一般的に、ハニカム基材のチャネル450を複数有しており、これらのうち、明確化のために、チャネルを1つだけ断面図に示す。TWC触媒、LNTおよび一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたは複数の触媒物品420は、基材405の吸入口端部425から、基材405の全軸長L未満を通って広がる。1つまたは複数の触媒物品420の長さは、第一帯域長420aとして
図5に表される。白金含有触媒物品430は、基材405の排出口端部435から、基材405の全軸長L未満を通って広がる。白金含有触媒物品430の長さは、第二帯域長430aとして
図5に表される。
【0089】
1つまたは複数の実施形態では、
図5に図示されているように、1つまたは複数の触媒物品420は、直接的に白金含有触媒物品430に接する。さらなる実施形態では、1つまたは複数の触媒物品420と白金含有触媒物品430の間に隙間があり得る(図示せず)。1つまたは複数の触媒物品420および白金含有触媒物品430は、少なくとも部分的に重なっていてよいと、当業者によって理解されるだろう(図示せず)。1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数の触媒物品420は、白金含有触媒物品430に少なくとも部分的に重なっている。別の実施形態では、白金含有触媒物品430は、1つまたは複数の触媒物品420に少なくとも部分的に重なっている。
【0090】
選択触媒還元(SCR)触媒物品:
1つまたは複数の実施形態では、排ガスシステムは、1つまたは複数の選択触媒還元(SCR)触媒物品240(
図2中)を、白金含有触媒物品230のすぐ下流に有しており、1つまたは複数のSCR触媒物品240は分子ふるいを含む。
【0091】
本明細書で使用されているように、「選択触媒還元」(SCR)とは、窒素還元剤を使用して、窒素酸化物を二窒素(N
2)へと還元する触媒プロセスを指す。本明細書で使用されているように、「窒素酸化物」および「NO
x」という用語は、窒素の酸化物、特に一酸化二窒素(N
2O)、一酸化窒素(NO)、三酸化二窒素(N
2O
3)、二酸化窒素(NO
2)、四酸化二窒素(N
2O
4)、五酸化二窒素(N
2O
5)および三酸化窒素(NO
3)を示す。
【0092】
本明細書で使用されているように、「すぐ下流」という用語は、エンジンからテールパイプへのエンジン排ガス流の流れに従う相対的方向を指す。すぐ下流とは、白金含有触媒物品と1つまたは複数のSCR触媒物品との間にその他の触媒作用材料がないことを意味する。
【0093】
本明細書で使用されているように、「分子ふるい」という表現は、骨格構造材料、例えばゼオライト、およびその他の骨格構造材料(例えば同形置換材料)を指し、これらの材料は、微粒子形態で1つまたは複数の促進剤金属と組み合わせて、触媒として使用することができる。分子ふるいは、広範囲の酸素イオン三次元網目構造に基づく材料であり、一般的に、四面体型サイトを含有し、実質的に均一な細孔分布を有し、平均細孔サイズは20Å以下である。細孔サイズは環サイズによって定められる。本明細書で使用されているように、「ゼオライト」という用語は、ケイ素原子およびアルミニウム原子を含有する分子ふるいの特定の例を指す。1つまたは複数の実施形態によると、その骨格構造型によって分子ふるいを定めることで、その骨格構造型およびあらゆる全ての同形骨格構造材料、例えば、同じ骨格構造型を有するSAPO、ALPOおよびMeAPO材料をゼオライト材料として含むことが意図されると理解されるだろう。
【0094】
より特定された実施形態では、アルミノケイ酸塩ゼオライト骨格構造型を参照することによって、材料が、骨格構造中で置換されたリンまたはその他の金属を含まない分子ふるいに限定される。しかしながら明確化のために、本明細書で使用されているように、「アルミノケイ酸塩ゼオライト」からは、アルミノリン酸塩材料、例えば、SAPO、ALPOおよびMeAPO材料が除外され、上位語である「ゼオライト」は、アルミノケイ酸塩およびアルミノリン酸塩を含むことを意図する。ゼオライトは、ゼオライトの種類、ならびにゼオライト格子中に含まれるカチオンの種類および量に応じて、直径約3Å〜10Åの範囲にあるかなり均一な細孔サイズを有する結晶質材料である。ゼオライトは一般的に、2またはそれより大きい、アルミナに対するシリカのモル比率(SAR)を有する。
【0095】
「アルミノリン酸塩」という用語は、アルミニウム原子およびリン原子を含有する分子ふるいの別の特定の例を指す。アルミノリン酸塩は、かなり均一な細孔サイズを有する結晶質材料である。
【0096】
一般的に、分子ふるい、例えばゼオライトは、頂点共有型TO
4四面体から構成される開放された三次元骨格構造を有するアルミノケイ酸塩として定義され、ここでTは、AlまたはSiまたは任意でPである。アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格酸素との結びつきが緩く、残りの細孔容積は、水分子で満たされる。非骨格カチオンは一般的に、交換可能であり、水分子は除去可能である。
【0097】
1つまたは複数の実施形態によると、分子ふるい材料は独立して、SiO
4/AlO
4四面体を含み、共通の酸素原子によって結合され、三次元網目構造を形成する。別の実施形態では、分子ふるい材料はSiO
4/AlO
4/PO
4四面体を含む。1つまたは複数の実施形態の分子ふるい材料は主に、(SiO
4)/AlO
4四面体またはSiO
4/AlO
4/PO
4四面体の強固な網目構造によって形成される空洞の形状によって区別することができる。空洞への入口は、入口開口部を形成する原子について、6個、8個、10個または12個の環原子から形成される。1つまたは複数の実施形態では、分子ふるい材料は、12個以下の環サイズを有しており、これには、6個、8個、10個および12個が含まれる。
【0098】
1つまたは複数の実施形態では、分子ふるい材料は骨格トポロジーに基づいていてよく、この骨格トポロジーによって、構造が同定される。一般的には、あらゆる骨格構造型のゼオライト、例えば、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZONまたはこれらの組み合わせの骨格構造型を使用することができる。
【0099】
1つまたは複数の実施形態では、分子ふるい材料は、八員環の小細孔アルミノケイ酸塩ゼオライトを有する。本明細書で使用されているように、「小細孔」という用語は、約5Åよりも小さな細孔開口部、例えば約3.8Åほどのオーダーのものを指す。「八員環の」ゼオライトという表現は、八員環の細孔開口部および二重六員環第二構造単位を有し、四員環による二重六員環構造単位の結合から生じるかご状構造を有するゼオライトを指す。ゼオライトは、第二構造単位(SBU)および複合体構造単位(CBU)から構成され、多くの異なる骨格構造で現れる。第二構造単位は、16個までの四面体原子を含有しており、非キラルである。複合体構造単位は、アキラルである必要はなく、必ずしも骨格全体を構築するために使用されなくてよい。例えば、ゼオライトの群は、単一四員環(s4r)複合体構造単位をその骨格構造中に有する。四員環において、「四」とは、四面体のケイ素原子およびアルミニウム原子の位置を示し、酸素原子は、四面体原子の間に位置している。その他の複合体構造単位は例えば、単一六員環(s6r)単位、二重四員環(d4r)単位および二重六員環(d6r)単位を含む。d4r単位は、2つのs4r単位を繋げることで作製される。d6r単位は、2つのs6r単位を繋げることで作製される。d6r単位中には、12個の四面体原子がある。d6r第二構造単位を有するゼオライト骨格構造型は、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSCおよびWENを含む。
【0100】
1つまたは複数の実施形態では、分子ふるい材料はd6r単位を含む。したがって、1つまたは複数の実施形態では、分子ふるい材料は、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、WENおよびこれらの組み合わせから選択される骨格構造型を有する。別の特定の実施形態では、分子ふるい材料は、CHA、AEI、AFX、ERI、KFI、LEVおよびこれらの組み合わせから成る群より選択される骨格構造型を有する。さらなる特定された実施形態では、分子ふるい材料は、CHA、AEIおよびAFXから選択される骨格構造型を有する。1つまたは複数の非常に特定された実施形態では、分子ふるい材料はCHA骨格構造型を有する。
【0101】
ゼオライトCHA骨格構造型分子ふるいは、以下の近似式を有するゼオライト群の天然に産生するテクトケイ酸塩鉱物を含む:(Ca、Na
2、K
2、Mg)Al
2Si
4O
12・6H
2O(例えば、水素化されたカルシウムアルミニウムケイ酸塩)。ゼオライトCHA骨格構造型分子ふるいのうち3つの合成形態は、D.W.Breck著「Zeolite Molecular Sieves,」、1973年John Wiley&Sons刊行に記載されており、本明細書では、これを参照によって組み込む。Breckにより報告されたこれら3つの合成形態は、ゼオライトK〜G(Barrerら著J.Chem.Soc.、p.2822(1956)に記載);ゼオライトD(英国特許出願公開第868846号明細書(British Patent No.868,846)(1961)に記載);およびゼオライトR(米国特許第3030181号明細書(U.S.Patent No.3,030,181))であり、本明細書では、これらを参照によって組み込む。ゼオライトCHA骨格構造型の別の合成形態(SSZ−13)の合成は、米国特許第4544538号明細書(U.S.Pat.No.4,544,538)に記載されており、本明細書では、これを参照によって組み込む。CHA骨格構造型を有する分子ふるいの合成形態(シリコアルミノリン酸塩34(SAPO−34))の合成は、米国特許第4440871号明細書および第7264789号明細書(U.S.Patent4,440,871 and No.7,264,789)に記載されており、本明細書では、これらを参照によって組み込む。CHA骨格構造型を有するさらなる合成分子ふるい(SAPO−44)の製造方法は、米国特許第6162415号明細書(U.S.Patent No.6,162,415)に記載されており、本明細書では、これを参照として組み込む。
【0102】
1つまたは複数の実施形態では、分子ふるい材料は、あらゆるアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ガロケイ酸塩、MeAPSOおよびMeAPOの組成物を含むことができる。これらは、SSZ−13、SSZ−62、天然チャバサイト、ゼオライトK〜G、リンデD、リンデR、LZ−218、LZ−235、LZ−236、ZK−14、SAPO−34、SAPO−44、SAPO−47、ZYT−6、CuSAPO−34、CuSAPO−44およびCuSAPO−47を含むが、これらに限定されることはない。
【0103】
アルミノケイ酸塩分子ふるい成分における、アルミナに対するシリカの比率は、幅広い範囲にわたって変化し得る。1つまたは複数の実施形態では、分子ふるい材料は、アルミナに対するシリカのモル比率(SAR)が2〜300の範囲にあり、これには、5〜250;5〜200;5〜100;および5〜50が含まれる。1つまたは複数の特定の実施形態では、分子ふるい材料は、アルミナに対するシリカのモル比率(SAR)が、10〜200、10〜100、10〜75、10〜60および10〜50;15〜100、15〜75、15〜60および15〜50;20〜100、20〜75、20〜60および20〜50の範囲にある。
【0104】
本明細書で使用されているように、「促進される」という用語は、分子ふるいに内在する不純物とは反対に、意図的に分子ふるい材料に添加される成分を指す。したがって、促進剤は、意図的に添加される促進剤を有しない触媒に比べて触媒の活性を向上させるために、意図的に添加される。窒素酸化物のSCRを促進するために、1つまたは複数の実施形態では、適切な金属が独立して交換され、分子ふるいに入る。1つまたは複数の実施形態によると、分子ふるいは1つまたは複数の銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)または銀(Ag)により促進される。特定の実施形態では、分子ふるいは、1つまたは複数の銅(Cu)または鉄(Fe)により促進される。非常に特定された実施形態では、分子ふるいはCuにより促進される。
【0105】
触媒の促進剤金属含分(酸化物として計算)は、1つまたは複数の実施形態において、揮発物不含系のものについて報告されたところでは、少なくとも約0.1質量%である。特定の実施形態において、促進剤金属含分(酸化物として計算)は、揮発物不含系のものについて報告されたところでは、それぞれの場合に、か焼分子ふるいの合計質量を基準として、約0.1質量%〜約10質量%までの範囲にあり、これには、9質量%、8質量%、7質量%、6質量%、5質量%、4質量%、3質量%、2質量%、1質量%、0.5質量%、0.25質量%および0.1質量%が含まれる。
【0106】
特定の実施形態において、促進剤金属はCuを含み、このCu含分(CuOとして計算)は、揮発物不含系のものについて報告されたところでは、それぞれの場合に、か焼分子ふるいの合計質量を基準として、約0.1質量%〜約5質量%までの範囲にあり、これには、5質量%、4質量%、3質量%、2質量%、1質量%、0.5質量%、0.25質量%および0.1質量%が含まれる。特定の実施形態では、分子ふるいのCu含分(CuOとして計算)は、約2質量%〜約5質量%の範囲にある。
【0107】
1つまたは複数の実施形態では、排ガスシステムはさらに、アンモニア酸化(AMO
x)触媒を、1つまたは複数のSCR触媒物品240の下流に有する(
図2中)。アンモニア酸化触媒を、スリップしたあらゆるアンモニアを排ガス処理システムから除去するために、1つまたは複数のSCR触媒物品240の下流に備えることができる。1つまたは複数の実施形態では、1つまたは複数のSCR触媒物品は、吸入口および排出口を有する基材上にあり、アンモニア酸化(AMO
x)触媒を排出口において有する。特定の実施形態では、AMO
x触媒は、白金族金属、例えば、白金、パラジウム、ロジウムまたはこれらの組み合わせを含む。1つまたは複数の実施形態では、AMO
x触媒は、PGMを有するボトムコートおよびSCR機能を有するトップコートを含むことができる。
【0108】
そのようなAMO
x触媒は、SCR触媒を含む排ガス処理システムにおいて有用である。本願の譲受人に譲渡された米国特許第5516497号明細書(United States Patent No.5,516,497、その内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる)で論じられたように、酸素含有気体流、窒素酸化物およびアンモニアを順次、第一触媒および第二触媒に通過させることができ、第一触媒は窒素酸化物の削減にとって好ましく、第二触媒は過剰なアンモニアの酸化または分解にとって好ましい。したがって、第一触媒はSCR触媒物品であってよく、第二触媒はAMO
x触媒および/またはSCR+AMO
x一体化触媒であってよく、これらは任意で、ゼオライトを含む。
【0109】
1つまたは複数のAMO
x触媒組成物は、フロースルーフィルターまたはウォールフローフィルターの上に被覆することができる。ウォールフロー基材が利用される場合、できあがるシステムは、気体状汚染物質とともに微粒子状物質を除去することができるだろう。ウォールフローフィルター基材は、当技術分野で一般的に知られている材料、例えば、コーディエライト、チタン酸アルミニウムまたは炭化ケイ素から製造されていてよい。ウォールフロー基材上での触媒組成物の担持量は、基材特性、例えば気孔率および壁厚に依存し、一般的にフロースルー基材上での担持量よりも低くなるだろうと理解される。
【0110】
よって、1つまたは複数の特定の実施形態では、NO
x、微粒子状物質および硫黄を含有するガソリンエンジン排ガス流を処理するための排ガスシステムが提供され、このシステムは、三元転化(TWC)触媒;三元触媒の下流にある、白金を含有する触媒化された煤煙フィルター;触媒化された煤煙フィルターのすぐ下流にある第一選択触媒還元(SCR)触媒物品;および触媒化された煤煙フィルターのすぐ下流にある、第二選択触媒還元触媒(SCR)を含み、ここで第一SCR触媒物品および第二SCR触媒物品は独立して分子ふるいを含む。1つまたは複数の実施形態では、排ガスシステムはさらに、LNTをTWCの上流に有することができる。別の実施形態では、排ガスシステムはさらに、LNTをTWCの下流に有することができる。
【0111】
エンジン排気の処理法:
本発明の別の態様は、エンジンの排ガス流の処理法に向けられている。1つまたは複数の実施形態では、微粒子状物質、アンモニア、NO
xおよび硫黄を含有するガソリンエンジンのエンジン排ガス流の処理法は、エンジン排ガス流を、三元転化(TWC)触媒、リーンNO
xトラップ(LNT)および一体化されたLNT−TWCから選択される1つまたはそれより多くの触媒物品上に流すこと;微粒子状物質、NO
x、硫黄およびアンモニアを含有する排ガス流を白金含有触媒物品に通すこと;および白金含有触媒物品を通過した排ガスを、分子ふるいおよび促進剤金属を含む、1つまたはそれより多くの選択触媒還元物品に通すことを含む。
【0112】
これより本発明を、以下の実施例を参照して説明する。本発明の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明で記載される構成または方法工程の詳細に限定されないものと理解されたい。本発明は、別の実施形態であってよく、様々な手法で実践または実施することができる。
【0113】
実施例
実施例1−白金含有CSFの製造
白金を有する触媒化された煤煙フィルターを、吸入口コートおよび排出口コートを使用して製造した。白金含有触媒作用材料は、白金およびパラジウムを10:1の比および25g/ft
3の合計白金族金属担持量で含有していた。
【0114】
実施例2−SCR触媒
2つのSCR触媒を獲得した。第一SCR触媒は、市販で入手可能な、フロースルー基材上の新品のCuCHAのSCR触媒であった。第二SCR触媒は第一SCR触媒と同じであったが、ただしこの触媒は、基材の質量を含めて約1質量%のSO
3の硫黄負荷によって硫酸塩化させた。
【0115】
実施例3−新品のSCR触媒を有する排ガスシステムの試験
フロースルー基材上のPd単独三元触媒を、フロースルー基材上のPd−RhTWC触媒の上流に置き、これらのTWC触媒を実施例2の触媒の上流に置いた。新品のCuCHAのSCR触媒を実施例1の触媒の下流に置いた。これは、Federal Test Protocol 72に従って、ガソリンエンジンシミュレーター上で試験されたシステムであった。
【0116】
実施例4−硫酸塩化させたSCR触媒を有する排ガスシステムの試験
フロースルー基材上のPd単独三元触媒を、フロースルー基材上のPd−Rh系TWC触媒の上流に置き、これらのTWC触媒を実施例2の触媒の上流に置いた。硫酸塩化させたCuCHAのSCR触媒を実施例1の触媒の下流に置いた。これは、Federal Test Protocol 72に従って、ガソリンエンジンシミュレーター上で試験されたシステムであった。
【0117】
比較例5−白金含有触媒を有さず、新品のSCR触媒を有する排ガスシステムの試験
実施例3を繰り返したが、ただし、実施例2の触媒を、剥き出しの触媒化されていないフィルターと取り替えた。これは、Federal Test Protocol 72に従って、ガソリンエンジンシミュレーター上で試験されたシステムであった。
【0118】
比較例6−白金含有触媒を有さず、硫酸塩化させたSCR触媒を有する排ガスシステムの試験
実施例4を繰り返したが、ただし、実施例2の触媒を、剥き出しの触媒化されていないフィルターと取り替えた。これは、Federal Test Protocol 72に従って、ガソリンエンジンシミュレーター上で試験されたシステムであった。
【0119】
システム全体に関するNO
x転化率のデータを獲得した。以下の表1は、例3〜6についての結果を示す。以下の表1に示されているように、硫酸塩化させたSCR触媒の上流に白金含有触媒を有するシステムは、最も良好なNO
x転化能力を有する。しかしながら、例5および6(これらは白金含有触媒を含まない)は、例6のNO
x転化能力が、例5と比較した場合に、低下していることを示す。
【表1】
【0120】
本明細書を通して「一実施形態」、「幾つかの実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」または「実施形態」と述べることは、その実施形態との関わりで記載されている特定の特徴、構造、材料または特性が、少なくとも1つの本発明の実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所に見られる表現、例えば、「1つまたは複数の実施形態では」、「幾つかの実施形態では」、「一実施形態では」または「実施形態では」は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料または特性は、1つまたは複数の実施形態において、あらゆる適切なやり方で組み合わせることができる。
【0121】
本明細書において本発明を、特定の実施形態を参照して記載してきたが、これらの実施形態は単に、本発明の原則および適用を説明するものであると理解されたい。当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置に様々な変形および変更を行うことが可能であると明らかだろう。したがって、本発明が、添付のクレームおよびそれらの等価物の範囲内における変形および変更を含むことが意図される。