特許第6805175号(P6805175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6805175巻き掛け手段および巻き掛け手段を形成するキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805175
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】巻き掛け手段および巻き掛け手段を形成するキット
(51)【国際特許分類】
   F16G 5/18 20060101AFI20201214BHJP
   F16H 9/24 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F16G5/18 C
   F16H9/24
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-559104(P2017-559104)
(86)(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公表番号】特表2018-514724(P2018-514724A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】DE2016200199
(87)【国際公開番号】WO2016180413
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】102015208640.2
(32)【優先日】2015年5月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アラー ハーマウチ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン ブラウン
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−122307(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/043209(WO,A1)
【文献】 特開2004−251454(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/068874(WO,A1)
【文献】 特開2006−77847(JP,A)
【文献】 特表2008−522111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/18
F16H 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝動機構用の巻き掛け手段であって、トルク伝達経路内で前記伝動機構の第1の円錐シーブ対と第2の円錐シーブ対との間に配置されており、
前記巻き掛け手段の走行方向に対して横方向に方向付けられるトランスミッティングメンバ(12)であって、対をなすように配置されてそれぞれ1つのジョイント(24,26)を形成するトランスミッティングメンバ(12)と、
前記走行方向に対して平行に配置されるリンクプレート(14)であって、貫通穴状の開口(16)が形成されているリンクプレート(14)と、
を備え、
前記トランスミッティングメンバ(12)は、前記リンクプレート(14)を屈曲可能に結合すべく、前記リンクプレート(14)毎に2つずつ、前記走行方向で相前後して配置されるジョイント(24,26)が生じるように、前記リンクプレート(14)の前記開口(16)内に係合し、両前記ジョイント(24,26)の各々は、両前記ジョイント(24,26)の、それぞれ外側に位置する前記トランスミッティングメンバ(12)の、2つの円弧状の外側部分(28,30)を介して、前記リンクプレート(14)の前記開口(16)の対応する周縁部分(32,34)に支持される、
巻き掛け手段において、
前記ジョイント(24,26)間の距離Iと、前記円弧状の外側部分に合わされた円(36,38)の中心(40)の、前記走行方向に対して垂直に求められる間隔aの比Vは、V=I/a≦2.4であり、かつ
前記外側に位置するトランスミッティングメンバ(12)の、前記走行方向に対して垂直に求められるトランスミッティングメンバ高さhと、前記中心(40)の、前記走行方向に対して垂直に求められる間隔aの比Vは、V=h/a≦1.7である
ことを特徴とする、巻き掛け手段。
【請求項2】
前記トランスミッティングメンバ(12)の輪郭は、凸のアールのみを有することを特徴とする、請求項1記載の巻き掛け手段。
【請求項3】
外側の前記トランスミッティングメンバ(12)からそれぞれの前記リンクプレート(14)への力導入は、前記周縁部分(32,34)の、前記リンクプレート(14)の長軸(18)に関してそれぞれ対応する前記円(36,38)の前記中心(40)より外側にあるそれぞれの領域において実施されることを特徴とする、請求項1または2記載の巻き掛け手段。
【請求項4】
両前記円弧状の外側部分(28,30)のアールは、略同じ大きさであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の巻き掛け手段。
【請求項5】
前記リンクプレート(14)の配置は、2リンクプレート型編成または3リンクプレート型編成で実施されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の巻き掛け手段。
【請求項6】
前記トランスミッティングメンバ(12)および/または前記リンクプレート(14)の紛失防止用の少なくとも1つのリテーニング装置を特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の巻き掛け手段。
【請求項7】
複数のリンクプレート(14)と複数のトランスミッティングメンバ(12)とを備える、巻き掛け手段を形成するキットであって、前記リンクプレート(14)および前記トランスミッティングメンバ(12)は、請求項1から6までのいずれか1項記載の前記巻き掛け手段を形成するように構成されていることを特徴とする、キット。
【請求項8】
第1の円錐シーブ対と、第2の円錐シーブ対と、トルク伝達経路内で前記第1の円錐シーブ対と前記第2の円錐シーブ対との間に配置されている巻き掛け手段と、を備える、自動車用の無段調整可能な伝動機構であって、前記巻き掛け手段は、請求項1から6までのいずれか1項にしたがって形成されていることを特徴とする、伝動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き掛け手段、特に自動車の無段調整可能な伝動機構用の巻き掛け手段であって、トルク伝達経路内で伝動機構の第1の円錐シーブ対と第2の円錐シーブ対との間に配置されており、(i)巻き掛け手段の走行方向に対して横方向に方向付けられるトランスミッティングメンバ(Druckstueck)であって、対をなすように配置されてそれぞれ1つのジョイントを形成するトランスミッティングメンバと、(ii)走行方向に対して平行に配置されるリンクプレートであって、貫通穴状の開口が形成されているリンクプレートと、を備え、トランスミッティングメンバは、リンクプレートを屈曲可能に結合すべく、リンクプレート毎に2つずつ、走行方向で相前後して配置されるジョイントが生じるように、リンクプレートの開口内に係合し、両ジョイントの各々は、両ジョイントの、それぞれ外側に位置するトランスミッティングメンバの、2つの円弧状の外側部分を介して、リンクプレートの開口の対応する周縁部分に支持される、巻き掛け手段に関する。さらに本発明は、多数の相応のリンクプレートと多数の相応のトランスミッティングメンバとを備える、このような巻き掛け手段を形成するキット(Bausatz/Kit)に関する。
【背景技術】
【0002】
このような巻き掛け手段は、独国特許出願公開第102007023064号明細書(DE 10 2007 023 064 A1)においてリンクプレートチェーンとして公知である。このリンクプレートチェーンは、走行方向に対して横方向に方向付けられるトランスミッティングメンバであって、対をなすように配置されてそれぞれ1つのジョイントを形成するトランスミッティングメンバと、走行方向に対して平行に配置されるリンクプレートであって、貫通穴状の開口が形成されているリンクプレートと、を備える。その際、トランスミッティングメンバは、リンクプレートを屈曲可能に結合すべく、リンクプレート毎に2つずつ、走行方向で相前後して配置されるジョイントが生じるように、リンクプレートの開口内に係合し、両ジョイントの各々は、両ジョイントの、それぞれ外側に位置するトランスミッティングメンバの、2つの円弧状の外側部分を介して、リンクプレートの開口の対応する周縁部分に支持される。
【0003】
刊行物としての独国特許出願公開第102006046600号明細書には、同じくリンクプレートチェーンと称される巻き掛け手段が記載されている。このリンクプレートチェーンは、巻き掛け手段の走行方向に対して横方向に方向付けられるクレードルメンバ(Wiegestueck)であって、対をなすように配置されてそれぞれ1つのジョイントを形成するクレードルメンバと、走行方向に対して平行に配置されるリンクプレートであって、貫通穴状の開口が形成されているリンクプレートと、を備える。クレードルメンバは、リンクプレートを屈曲可能に結合すべく、リンクプレート毎に2つずつ、走行方向で相前後して配置されるジョイントが生じるように、リンクプレートの開口内に係合し、両ジョイントの各々は、両ジョイントの、それぞれ外側に位置するトランスミッティングメンバの、2つの円弧状の外側部分を介して、リンクプレートの開口の、相応の曲率半径を有する対応する周縁部分に支持される。この刊行物は、クレードルメンバの他に、トランスミッティングメンバについても記載しており、リンクプレートおよびクレードルメンバあるいはトランスミッティングメンバを特徴付ける種々のパラメータ、例えばリンクプレート厚さd、ウェブ幅s、ピッチ(Pitch)Iと称される、1つのリンクプレートの少なくとも1つの開口内に設けられた2つのジョイント間の距離、トランスミッティングメンバ幅w、トランスミッティングメンバ高さh、内部ウェブ幅b等を示している。さらにこの刊行物は、これらのパラメータのうちの幾つかのパラメータとリンクプレート厚さdの比の、特に有利な値を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、巻き掛け手段が運転中に受ける負荷が低く、ひいてはより長寿命な巻き掛け手段、およびこのような巻き掛け手段を製造するキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、本発明により、独立請求項に記載の特徴によって解決される。本発明の有利な構成は、従属請求項に記載されており、それぞれ単独でも、任意の組み合わせでも、本発明の一態様をなし得る。
【0006】
本発明に係る巻き掛け手段において、ピッチIとして公知の、両ジョイント間の距離と、円弧状の外側部分に合わされた円の中心の、走行方向に対して垂直に求められる間隔aの比Vは、V=I/a≦2.4であり、かつ外側に位置するトランスミッティングメンバの、走行方向に対して垂直に求められるトランスミッティングメンバ高さhと、上述の中心の、走行方向に対して垂直に求められる間隔aの比Vは、V=h/a≦1.7である。ここで重要なことは、新しいパラメータaを導入したことである。有限要素法(Finite−Elemente−Methode:FEM)による構成部材計算により、意想外なことに、特に低負荷の巻き掛け手段が、公知のパラメータであるピッチIおよびトランスミッティングメンバ高さhの、新たに導入されたパラメータaとのそれぞれの比により特徴付けられることが判った。
【0007】
この比は、より高い断面係数と、改善された接触面(リンクプレートとトランスミッティングメンバとの間の接触面)とを有するリンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリのプロファイルを特徴付ける。
【0008】
本発明の好ましい一形態において、トランスミッティングメンバの輪郭は、凸のアールのみを有する。
【0009】
本発明の別の好ましい一形態において、ジョイントの外側のトランスミッティングメンバからそれぞれのリンクプレートへの力導入は、周縁部分の、リンクプレートの長軸に関してそれぞれ対応する円の中心より外側にあるそれぞれの領域において実施される。つまり、リンクプレートへの力導入は、できる限り外側に離れたところで実施される。
【0010】
本発明のさらに別の好ましい一実施の形態において、両円弧状の外側部分のアールは、略同じ大きさである。
【0011】
さらに有利には、リンクプレートの配置は、2リンクプレート型編成(Zweilaschenverband)または3リンクプレート型編成(Dreilaschenverband)で実施される。
【0012】
本発明のさらに別の好ましい一実施の形態において、巻き掛け手段は、トランスミッティングメンバおよび/またはリンクプレートの紛失防止用の少なくとも1つのリテーニング装置を備える。大抵の場合、このような安全装置が複数設けられる。この安全装置は、例えばトランスミッティングメンバの端部領域に溶接されるピンからなることができる。
【0013】
複数のリンクプレートと複数のトランスミッティングメンバとを備える、巻き掛け手段を形成する本発明に係るキットにおいて、リンクプレートおよびトランスミッティングメンバは、上述の巻き掛け手段を形成するように構成されている。リンクプレート内には、貫通穴状の開口が形成されており、開口は、トランスミッティングメンバが、リンクプレートを屈曲可能に結合すべく、リンクプレートの開口内に係合可能であり、リンクプレート毎に2つずつ、走行方向で相前後して配置されるジョイントが生じるように構成されている。さらにリンクプレートおよびトランスミッティングメンバは、こうして構成された両ジョイントの各々が、両ジョイントの、それぞれ外側に位置するトランスミッティングメンバの、2つの円弧状の外側部分を介して、複数あるリンクプレートの1つのリンクプレートの開口の対応する周縁部分に支持され得るように構成されている。
【0014】
さらに本発明は、第1の円錐シーブ対と、第2の円錐シーブ対と、トルク伝達経路内で第1の円錐シーブ対と第2の円錐シーブ対との間に配置されている巻き掛け手段と、を備える、自動車用の無段調整可能な伝動機構に関する。巻き掛け手段は、上述の巻き掛け手段として形成されている。
【0015】
以下に、本発明について添付図面を参照しながら、好ましい一実施例を基に例示説明する。以下に示す特徴は、それぞれ単独でも、任意の組み合わせでも、本発明の一態様をなし得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好ましい一実施の形態による、チェーンリンクプレートとして形成される巻き掛け手段のリンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリの断面図である。
図2】このリンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリにおけるリンクプレートおよびトランスミッティングメンバの他のリンクプレートパラメータおよびトランスミッティングメンバパラメータを示す図である。
図3】リンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリについて得られた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、複数のトランスミッティングメンバ12と1つの(結合)リンクプレート14とからなるリンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリ10を示している。このアッセンブリ10は、しばしばリンクプレートチェーンと称される巻き掛け手段(図示せず)の一部をなす。その際、巻き掛け手段は、多数のトランスミッティングメンバ12とリンクプレート14とを有し、リンクプレート14は、往々にして2リンクプレート型編成または3リンクプレート型編成で配置されている。
【0018】
リンクプレート14は、トランスミッティングメンバ12が係合する貫通穴状の開口16を有する。リンクプレート14、あるいはリンクプレート14のそれぞれの長軸18が、巻き掛け手段の走行方向に沿って方向付けられている一方、トランスミッティングメンバ12は、この走行方向あるいは長軸18に対して横方向、特に垂直に方向付けられている。開口16は、長穴状に形成されており、それぞれのリンクプレート14の長軸18に対して略同軸または少なくとも平行に延びる長軸を有する。その際、リンクプレート14毎に2つのリンクプレート長辺20,22が残され、リンクプレート長辺20,22は、対応する開口16の両側で長軸18に対して平行に延在している。
【0019】
トランスミッティングメンバ12は、クレードルトランスミッティングメンバ(Wiegedruckstueck、略してWDS)もしくはロッカーピンとして形成されており、対をなしてリンクプレート12の開口16内に係合し、これにより、ジョイント24,26を形成することができる。このとき、巻き掛け手段の走行方向に対して横方向でのリンクプレート12のパターンは、好適に繰り返されることができ、その結果、相応のリンクプレート配列が生じる。各2つの(クレードル)トランスミッティングメンバ12から形成されるジョイント24,26は、しばしばロッカージョイント(Wiegegelenk)とも称される。リンクプレート14のリンクプレートアッセンブリは、既に上述したように、例えば2リンクプレート型編成とするか、または3リンクプレート型編成とするか、選択可能である。
【0020】
ジョイント24,26の各々の、対をなすように配置される(クレードル)トランスミッティングメンバ12は、向かい合った面を有し、向かい合った面において互いに転動可能または互いに滑動可能であり、その結果、リンクプレート14は、このように形成されたトランスミッティングメンバ12により屈曲可能あるいは関節運動可能に互いに結合される。その際、トランスミッティングメンバ12は、リンクプレート14のこの屈曲可能な結合のために、このリンクプレート14の開口16内に係合し、リンクプレート14毎に2つずつ、リンクプレート14の長手方向18(ここでは巻き掛け手段の走行方向に相当)で相前後して配置され、それぞれ2つのトランスミッティングメンバ12を有するジョイント24,26が生じるようになっている。図1に示した両ジョイント24,26の各々から、図示したのは、それぞれ、外側のトランスミッティングメンバ12のみである。両ジョイント24,26の各々は、巻き掛け手段の(ドライビング)運転中、ジョイント24,26の、それぞれ外側に位置するトランスミッティングメンバ12の、各2つの円弧状の外側部分28,30を介して、対応するリンクプレート14の開口16の対応する周縁部分32,34に支持される。トランスミッティングメンバ12の輪郭は、専ら凸のアールを有する、つまり凹の湾曲を有しない。
【0021】
長軸18に沿って相前後して配置される両ジョイント24,26間の距離は、大抵、ピッチIと称され、リンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリ10を特徴付ける公知のパラメータである。この距離あるいはピッチIは、図1で見て、両外側のトランスミッティングメンバ12間の間隙として得られる。(外側に位置する)トランスミッティングメンバ12の、走行方向/長軸18に対して垂直に測定されるトランスミッティングメンバ高さhも、リンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリ10を特徴付けるものとして十分に公知である。
【0022】
さらに図1は、トランスミッティングメンバ12毎に2つの、円弧状の外側部分28,30に合わされた(仮想の)円36,38を示している。(仮想の)円36,38は、それぞれ中心40を有する。両ジョイント24,26の各々の外側のトランスミッティングメンバ12について、円弧状の外側部分28,30に合わされた2つの円36,38の中心40の、走行方向あるいは長軸18に対して垂直に求められる間隔aが生じる。
【0023】
ピッチIとして公知の、相前後して配置される両ジョイント24,26間の距離と、円弧状の外側部分に合わされた円の中心40の、長軸に対して垂直に求められる間隔aの比Vは、V=I/a≦2.4であり、(外側に位置する)トランスミッティングメンバ12の、走行方向に対して垂直に求められるトランスミッティングメンバ高さhと、中心40の、走行方向に対して垂直に求められる間隔aの比Vは、V=h/a≦1.7である。
【0024】
図2は、リンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリ10のトランスミッティングメンバ12およびリンクプレート14の他のパラメータを示している。特に力導入(矢印42)がリンクプレート14内の、長軸18に関して外側に大きく離れたところで実施されることが示されている。導入点と、リンクプレート長辺20,22の対応する中心軸線44との間の比較的小さい距離X1およびX2が生じる。中心軸線44は、概ねリンクプレート長辺20,22のそれぞれの中立軸と合致する。
【0025】
有限要素法(FEM)による構成部材計算により、こうして構成されたトランスミッティングメンバ12の曲げ荷重が、断面係数の高まりに基づいて減じられることが判った。その際、トランスミッティングメンバ高さhと、両円弧状の外側部分28,30の接触半径の中心座標の間隔aとは、それぞれ基準としてのピッチIに関して、これらのパラメータの公知の値と比較して、比VおよびVについて上述の条件が生じるように高められる。この上昇は、リンクプレート14に生じるてこ腕を小さくすると同時に、図2に示すように、リンクプレート長辺20,22内の曲げモーメントを減じる。それゆえ、ピッチIと、両接触半径の中心座標の鉛直方向の間隔aとの間の比Vは、2.4以下であり、この鉛直方向の間隔と、トランスミッティングメンバの高さhとの間の比Vは、1.7以下であることが望ましい。
【0026】
図3は、リンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリ10についてのさらなる結果、すなわち、リンクプレート14内でのトランスミッティングメンバ12の、得られた回り止めを示している。公知のリンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリ10の場合、回り止めは、トランスミッティングメンバ12のプロファイルおよびリンクプレート内側輪郭にS字カーブ(凸−凹の移行)を設けることで保証されていた(図示せず)。トランスミッティングメンバ12およびリンクプレート14を構成するにあたり、このS字カーブを省略した。回り止めは、接触面28,32;30,34を介して保証される。トランスミッティングメンバプロファイルにおけるS字カーブの省略と、トランスミッティングメンバ12の円弧状の外側部分28,30およびリンクプレート14の対応する周縁部分32,34における接触半径の増大とにより、FEM計算によれば、リンクプレート14内の応力分布が低下する。
【0027】
回り止め用のS字カーブの省略により、トランスミッティングメンバ12を凸のアールだけ有するように設計することが可能である。これにより、以下の利点が生じる:
・凸のアールのみによる少ないノッチ半径、リンクプレート内のより良好な応力分布;
・簡単な製造;
・簡単な加工;
・トランスミッティングメンバ12およびリンクプレート14におけるより大きな接触半径による、リンクプレート14内のより良好な応力分布;および
・トランスミッティングメンバ12のより高い断面係数。
【0028】
さらに、結果として生じる巻き掛け手段の以下のさらなる特性が生じる:
巻き掛け手段の、トランスミッティングメンバ12の長手方向で互いに反対側に位置する長手方向側面において、トランスミッティングメンバ12は、それぞれ、端部部分でもってリンクプレート14のアッセンブリから突出している。これらの端部部分に、巻き掛け手段は、リンクプレート14および/またはトランスミッティングメンバ12の紛失防止用のリテーニング装置(図示せず)を有する。
【0029】
結果として生じる巻き掛け手段は、力およびトルクを円錐プーリ巻き掛け伝動機構(図示せず)内で伝達するように構成されており、このような円錐プーリ巻き掛け伝動機構は、例えば自動車のパワートレーン内で駆動機械と被駆動車軸との間に配置される。この無段調整可能な伝動機構は、伝動機構変速比をその都度の走行状況および駆動機械の運転条件に、あるいは例えばアクセルペダル操作に基づく、駆動機械に対する運転者の要求に適合させる。
【0030】
巻き掛け手段は、円錐プーリ巻き掛け伝動機構内において、2つの円錐シーブ対または円錐シーブセット(円錐プーリ)を力伝達経路またはトルク伝達経路内で結合し、それぞれの円錐シーブ対の軸線に関する巻き掛け手段の走行半径を変更することによって、変速比の変更が実現可能であり、好適に制御可能である。これは、制御ユニットにより好適に制御可能である。伝動機構の一方の円錐シーブ対は、少なくとも伝動機構入力軸に結合されており、あるいは結合可能であり、他方の円錐シーブ対は、伝動機構の被動軸に結合されている、あるいは結合可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 リンクプレート−トランスミッティングメンバ−アッセンブリ
12 トランスミッティングメンバ
14 リンクプレート
16 開口
18 長軸(リンクプレート)
20 リンクプレート長辺
22 リンクプレート長辺
24 ジョイント
26 ジョイント
28 外側部分、円弧状
30 外側部分、円弧状
32 周縁部分
34 周縁部分
36 円
38 円
40 中心
42 矢印
44 中心軸線(リンクプレート長辺)
I ピッチ
a 間隔
h トランスミッティングメンバ高さ
x1 距離
x2 距離
図1
図2
図3