(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】2種の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8粉体例の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【
図2】LED保全試験によって測定された、
図1の試料粉体の変換比の時間に対するプロットである。
【
図3】本開示に相応する波長変換材料の粒子を含む波長変換体の一例の一般的な構造を示す。
【
図4】本開示に相応する無機波長変換体の一般的な構造の一例を示す。
【
図5】本開示に相応する波長変換体を形成する方法の一例の作業例の流れ図である。
【
図6A】本開示に相応する照明装置の構成の一例を図解している。
【
図6B】本開示に相応する照明装置の構成のもう一つの例を図解している。
【
図7A】本開示に相応する無機波長変換体の一例の光学顕微鏡像である。
【
図7B】本開示に相応する無機波長変換体の一例の光学顕微鏡像である。
【
図8】
図7Aおよび
図7Bの無機波長変換体、ならびに赤色蛍光体の測定された発光スペクトルのプロットである。
【
図9】本開示に相応する無機波長変換体のもう一つの例の光学顕微鏡像である。
【
図10】
図9の無機波長変換体、および赤色蛍光体の測定された発光スペクトルのプロットである。
【
図11A】本開示に相応する無機波長変換体のさらなる例の光学顕微鏡像である。
【
図11B】本開示に相応する無機波長変換体のさらなる例の光学顕微鏡像である。
【
図12A】
図11Aに示される無機波長変換体のさらなる例の走査型電子顕微鏡像である。
【
図12B】
図11Bに示される無機波長変換体のさらなる例の走査型電子顕微鏡像である。
【
図13】
図12Bの無機波長変換体、赤色蛍光体、および無機マトリックス材料の測定された発光スペクトルのプロットである。
【0009】
本開示の完全な理解のために、添付の特許請求の範囲と共に前記の図面を含む以下の詳細な説明が参照されるべきである。本開示は例示的な実施形態に関して記載されているが、その開示は、本明細書に示される具体的な形態に制限されるものと解釈されない。状況的に適切であると考えられ得るか、または状況によって適切であり得る場合には、等価物の様々な省略および置き換えも考慮に入れられると解される。また、本明細書で使用される術語および用語は、説明を目的とするものと解されるべきであって、それ以外に明示的に示されていない限り、制限するものとみなされるべきではない。
【0010】
詳細な説明
本明細書で使用される場合に、数値または範囲に関して使用される場合に用語「約」および「本質的に」は、示される数値または範囲の±5%を意味する。
【0011】
時として、本開示の1つ以上の態様は、範囲を使用して記載されることがある。そのような場合においては、特段の記載が無い限り、示された範囲は、例示であると理解されるべきである。さらに、示された範囲は、示された範囲内の個々の値のすべてを、そのような値が明示的に示されているかのように含むものと理解されるべきである。さらに、前記範囲は、示された範囲内の部分範囲を、そのような部分範囲が明示的に示されているかのように含むものと理解されるべきである。例としては、1〜10の範囲は、2、3、4…等だけでなく、2〜10、3〜10、2〜8等の範囲も、そのような値および範囲が明示的に示されているかのように含むものと理解されるべきである。
【0012】
用語「粒子サイズ」は、本明細書においては、用語「結晶粒度」と対照区別して使用される。具体的には、用語「粒子サイズ」は、粉体粒子のサイズを指し、一方で、「結晶粒度」は、例えば固結(例えば焼結)物品における結晶粒のサイズを指すために使用される。
【0013】
用語「D50」は、結晶粒度または粒子サイズに関して使用される場合に、累積結晶粒度分布/累積粒子サイズ分布における中央値結晶粒度/中央値粒子サイズを意味する。つまり、D50は、試料の累積結晶粒度分布または累積粒子サイズ分布における粒子/結晶粒の50%が、それぞれより小さいまたはより大きい粒子サイズ/結晶粒度を意味する。より具体的には、用語「D50粒子サイズ」は、粉体粒子の試料の累積粒子サイズ分布の中央値を指す。それに対して、用語「D50結晶粒度」は、例えば固結(例えば焼結)物品における結晶粒の累積結晶粒度分布の中央値を指す。それに対して、用語「D10」および「D90」は、結晶粒度または粒子サイズに関して使用される場合に、試料の累積結晶粒度分布/累積粒子サイズ分布における結晶粒/粒子の10%および90%がより小さい(D
10)またはより大きい(D
90)結晶粒度/粒子サイズを指す。
【0014】
用語「粗大」は、粒子または結晶粒に関して使用される場合には、該粒子/結晶粒が、5マイクロメートル(「ミクロン」または「μm」)より大きいもしくはそれと等しい、例えば約10μmより大きいもしくはそれと等しい、約15μmより大きいもしくはそれと等しい、または約20μmより大きいもしくはそれと等しいD50を有することを意味する。それに対して、用語「微細」は、粒子または結晶粒に関して使用される場合に、該粒子/結晶粒が、5μm未満の、例えば2.5ミクロン未満の、またはそれどころか約1μm未満もしくはそれと等しいD50を有することを意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合に、用語「光学的に透過性」は、材料(例えば、マトリックスまたは充填剤)に関して使用される場合に、参照材料が、入射光の約80%より多くもしくはそれと同割合を、例えば入射光の約90%より多くもしくはそれと同割合を、約95%より多くもしくはそれと同割合を、約99%より多くもしくはそれと同割合を、またはそれどころか約100%を通すことを意味する。入射光は、特定の波長もしくは波長範囲(例えば、紫外、可視、赤外等)の光であってよく、または多重の波長範囲にまたがってもよい。制限されるものではないが、本明細書で光学的に透過性であると記載された材料は、好ましくは、電磁スペクトルの紫外領域、可視領域および赤外領域の少なくとも1つにおける光の約95%より多くまたはそれと同割合(例えば、約99%より多くもしくはそれと同割合、またはそれどころか約100%)を通す。
【0016】
本明細書で使用される場合に、用語「発光ダイオード」、「LED」および「LED光源」は互換的に使用され、あらゆる発光ダイオード、またはその他の型式の電気信号に応答して放射を生成することが可能なキャリア注入/接合ベースの装置を指す。このように、LEDという用語には、制限されるものではないが、電流に応答して光を発する様々な半導体ベースの構造、発光性ポリマー、発光性ストリップ、電子発光ストリップ、それらの組み合わせ等が含まれる。
【0017】
特に、用語「LED」は、可視スペクトル、紫外スペクトル、およびUVスペクトルの1つ以上のすべての部分または様々な部分における一次光を生成するように構成され得るあらゆる型式の発光ダイオード(半導体発光ダイオードおよび有機発光ダイオードを含む)を指す。使用することができる適切なLEDの例には、制限されるものではないが、赤外LED、紫外LED、赤色LED、緑色LED、青色LED、黄色LED、アンバー色LED、橙色LED、および白色LEDの様々な種類が含まれる。そのようなLEDは、広範なスペクトル(例えば、全可視光スペクトル)または狭いスペクトルにわたる光を発するように構成されていてよい。
【0018】
本明細書で使用される場合に、用語「改善された安定性」は、波長変換体または波長変換材料に関して使用される場合に、該波長変換体または波長変換材料が、安定性試験に供される場合に、別の材料を同じ試験に供した場合と比較して、より良好な結果を示したことを意味する。例えば、波長変換体および/または波長変換材料の相対安定性は、該波長変換体および/または波長変換材料を、LEDおよび/またはレーザーを基礎とする試験に供することによって測定することができ、その際、(LEDまたはレーザーからの)励起光は、前記波長変換体または波長変換材料において与えられる。引き続き、波長変換体および/または波長変換材料の変換比は、経時的に測定される。例えば、変換比は、リアルタイムで、規則的な時間間隔で、または実験開始時および実験完了時に測定されてよく、その際、波長変換体または波長変換材料の安定性は、所定の時間間隔の後の変換比における損失と相関している。
【0019】
これらを踏まえ、幾つかの実施形態においては、用語「高い安定性」および「高度に安定」は、波長変換体に関して使用される場合に、該波長変換体および/または波長変換材料が、そのようなLED/レーザーを基礎とする試験に供される場合に、所定の時間間隔(例えば、1000分)後にその初期変換比の約90%より高いまたはそれと等しい(例えば、≧95%、≧99%、またはそれどころか100%)変換比を有することを意味する。換言すると、幾つかの実施形態においては、高度に安定な波長変換体または波長変換材料は、LED/レーザーを基礎とする試験に供される場合に、所定の時間間隔(例えば、1000分)後にその変換効率の約10%未満またはそれと同割合(例えば、≦5%、≦1%、またはそれどころか約0%)を失う材料である。
【0020】
背景技術に示されたように、入射される一次光のすべてまたは一部を電磁スペクトルの可視領域の赤色部分の光に変換するための波長変換体において使用するために、様々な窒化物蛍光体が適していることが確認されている。そのような蛍光体は、有用であると分かっているが、それらの性能は、高温および/または高い電流強度への曝露等の様々な要因のため、時間の経過に伴い大幅に劣化することがある。
【0021】
ユーロピウム(Eu)賦活窒化ケイ素は、入射される一次光のすべてまたは一部を、電磁スペクトルの可視部分の赤色領域の光に変換するのに使用するために適していることが確認されている窒化物蛍光体の1つの重要なクラスである。そのような蛍光体のうち、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、照明用途のために、殊に波長変換体における波長変換材料として使用するために特に有用であることが確認されている。
【0022】
これらを踏まえ、本発明者らは、予想外にも、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の物理特性が、それらの組成に依存するだけでなく、それらの粒子サイズおよび/または結晶粒度にも依存することを見出した。より具体的には、そしてさらに以下で説明されるように、本発明者らは、予想外にも、1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子を含む波長変換体が、同じ組成の微細な粒子を含む波長変換体よりも大幅に良好な安定性を示すことを見出した。この考察は、1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体およびマトリックス材料の固結された粒子を含む波長変換体にまで及ぶことが見出され、その中の1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の結晶粒度は、5μmより大きいまたはそれと等しい(すなわち、固結された波長変換体は、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な結晶粒を含んでいた)。
【0023】
(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粒子を含む波長変換体の安定性に対する粒子サイズの影響を説明するために、(Ca
0.05Sr
0.43Ba
0.5)
2Si
5N
8:2%Eu蛍光体粒子を含有する第一および第二の試料粉体を調製した。第一および第二の試料粉体は、組成的に同一であるが、異なる中央値D50粒子サイズを有していた。具体的には、第一の試料粉体は、1.0μmのD50粒子サイズを有する微細な粉体であったが、第二の試料粉体は、15.9μmのD50粒子サイズを有する粗大な粉体であった。それらのD50粒子サイズは、CILAS(登録商標)粒度分析器によって測定された。第一および第二の試料粉体の走査型電子顕微鏡写真は、
図1に示されており、第二の試料粉体(D50=15.9μm)の粒子101が、第一の試料粉体(D
50=1.0μm)の粒子105より大幅に大きかったことを裏付けている。
【0024】
試験は、それらの特性の比較のために第一および第二の試料粉体に対して実施した。具体的には、それらの量子効率およびその他の特性を比較するために、第一および第二の試料粉体のそれぞれは、圧縮された粉体プラークへと形成され、蛍光試験に供された。それらの経時的な変換効率の損失を比較するために、2種の試料粉体のそれぞれの分散液をシリコーンと混合し、高出力青色LED用ダイを含む標準的LEDパッケージのキャビティ中にキャストし、そしてそれらの変換比(変換された出力の、実験開始に規格化された未変換の(一次)出力に対する比率)を、LEDが350ミリアンペアで1000分間にわたり動作されたときに測定した。第一および第二の試料粉体は、高出力レーザー試験にも供された。その試験においては、試料は、時間の経過にわたり電磁スペクトルの青色領域の強力なレーザー放射にさらされ、その間にそれらの変換比がモニタリングされる。最終的に、熱消光試験を、室温および225摂氏度(℃)で第一および第二の試料に対して実施することで、それらの発光スペクトルの積分値(相対輝度)を比較した。その試験の結果を、以下の第1表に示す。
【0025】
第1表:異なる中央値粒子径(D
50)の(Ca
0.05Sr
0.43Ba
0.5)
2Si
5N
8:2%Eu蛍光体粒子の特性比較
【表1】
【0026】
表中、QEは、量子効率であり、CIE−xおよびCIE−yは、色空間座標であり、FWHMは、半値全幅(スペクトル幅)であり、Ldomは、ドミナント波長であり、「PP」は、蛍光体プラークであり、「SG」は、単独結晶粒であり、相対輝度は、225℃での発光シグナルの光子積分値を、室温での発光シグナルの光子積分値で除算したものであり、nmは、ナノメートルであり、ΔLDomは、225℃対室温でのドミナント波長(発光スペクトルから得られる)の差であり、ΔLschwerpは、225℃対室温でのセントロイド波長(発光波長から得られる)の差であり、ΔxおよびΔyは、225℃対室温でのCIE−x座標およびCIE−y座標のそれぞれにおける差であり、FWHM(室温)は、室温でのスペクトル幅であり、かつFWHM(225℃)は、225℃でのスペクトル幅である。LED保全試験により測定された時間に対する第一および第二の試料粉体の変換比は
図2にも示されている。
【0027】
そこから明らかなように、該試験は、第二の(粗大な)試料粉体(D
50=15.9μm)は、第一の(微細な)試料粉体(D
50=1.0μm)よりも大幅により安定であったことを裏付けている。特に、LED保全試験によって測定される第一の試料粉体を含む波長変換体の変換比は、1000分で5%だけ(すなわち約95%まで)減少し、その一方で、第二の試料粉体を含む波長変換体の変換比は、同じ試験において0.5%だけ(すなわち99.5%まで)しか減少しなかった。HPLT試験結果はさらに、第二の(粗大な)試料粉体が、第一の(微細な)試料粉体よりも安定であったことを支持している。すなわち、前記試験は、第二の試料粉体が、1000分の間隔にわたりLEDおよびレーザーを基礎とする試験に供された場合に高度に安定であったことを示している。
【0028】
とりわけ、第二の試料粉体の蛍光特性および熱消光特性は、第一の試料粉体のそれと同等であった。理論に縛られることを望むものではないが、第二の試料粉体の改善された安定性は、その中の粗大な(Ca
0.05Sr
0.43Ba
0.5)
2Si
5N
8:2%Eu蛍光粒子の結晶性といった、第一の試料粉体における微細な(Ca
0.05Sr
0.43Ba
0.5)
2Si
5N
8:2%Eu蛍光粒子の結晶性よりも良好な結晶性に起因するものであると考えられる。
【0029】
したがって、本開示の一態様は、マトリックス材料中に封入された1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子および/または結晶粒を含む波長変換体に関する。以下に詳細に記載されるように、幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される波長変換体は、マトリックス材料、例えば有機マトリックス中に封入された粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粒子を含む。その他の実施形態においては、本明細書に記載される波長変換体は、1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な結晶粒を、単独で、またはマトリックス材料との組み合わせのいずれかで含む固結(例えば焼結)された物品の形である。
【0030】
図3は、本開示に相応するマトリックス材料中に封入された波長変換材料の粒子を含む波長変換体の一例の一般的な構造を示す。そこから明らかなように、波長変換体300は、マトリックス303中に封入された1種以上の波長変換材料の粗大な粒子301を含む。この関連において、粗大な粒子301およびマトリックス303は、固結(例えば焼結)ステップに供されていないと理解されるべきである。むしろ、粗大な粒子301は、マトリックス303内に単純に封入されている。そのような封入は、あらゆる適切な方式で、例えば制限されるものではないが、粗大な粒子301とマトリックス303の前駆体とを混合し、その後にマトリックス303の前駆体が硬化され得ることによって達成することができる。それに代えて、またはそれに加えて、粗大な粒子301は、後に記載されるようにその分布が制御されるようにマトリックス303の前駆体に添加され得る。
【0031】
あらゆる適切なマトリックス材料を、マトリックス303として使用することができる。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、マトリックス303は、光学的に透過性のマトリックス材料から形成されるか、または該マトリックス材料を含む。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、マトリックス300は、波長変換体300へ(例えば、外部光源から)入射する一次光および粗大な粒子301による一次光の変換により生成される二次光の約80%より多くもしくはそれと同割合を、90%より多くもしくはそれと同割合を、または約95%より多くもしくはそれと同割合を、約99%より多くもしくはそれと同割合を、またはそれどころか約100%を通すように構成されている。幾つかの実施形態においては、マトリックス303として使用される1種以上の材料は、それらが粗大な粒子301と同等であるように選択される。
【0032】
マトリックス300として使用され得る適切な材料の例には、制限されるものではないが、光学品質のシリコーン、エポキシ、アクリル(例えばポリアクリレート、ポリメタクリレート等)、ポリシラザン、ポリカーボネート、それらの組み合わせ等のポリマーが含まれる。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、マトリックス300はシリコーンである。
【0033】
粗大な粒子301は、1種以上の波長変換材料の粗大な粒子である。それに関して、前記粗大な粒子301は、該粗大な粒子301のD50粒子サイズが5μmより大きいまたはそれと等しい限りは、あらゆる適切な波長変換材料または波長材料の組み合わせから形成されてよい。幾つかの実施形態においては、粗大な粒子301は、第一の波長または波長範囲の入射一次光(例えば入射青色光)を、第二の波長または波長範囲の二次光(例えば赤色光)へと変換するために適切な波長変換材料の粗大な粒子である。より具体的には、幾つかの実施形態においては、該粗大な粒子301は、赤色窒化物蛍光体の粗大な粒子である。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、粗大な粒子301は、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体または2種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の混合物の粗大な粒子である。なおもさらなる実施形態においては、粗大な粒子301は、1種以上の高度に安定な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子である。
【0034】
粗大な粒子301が(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体を含む場合においては、そのような蛍光体におけるカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)の相対量、およびユーロピウム(Eu)の濃度が、それらの発光色に影響を及ぼし得るだけでなく、熱消光および安定性等のその他の特性に影響を及ぼし得ることに留意されたい。したがって、所望の特性を達成するために粗大な粒子301として、または粗大な粒子301中で使用される(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体におけるCa、Sr、BaおよびEuの量を選択することが望ましい場合がある。
【0035】
それに関して、幾つかの実施形態においては、粗大な粒子301は、一般式(Ca
x,Sr
y,Ba
z)
2Si
5N
8[式中、x、yおよびzは、それぞれCa、SrおよびBaの原子パーセントでの量であり、dは、Euの原子パーセントでの量であり、かつ以下の関係が満たされる:0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1、および0<d<10]の1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子を含む、または該粗大な粒子である。さらなる実施形態においては、制限されるものではないが、粗大な粒子301は、前記式で示され、その式中、以下の関係:0<x≦0.2、0<y≦0.6、0<z<1、x+y+z=1、および0.5≦d≦8が満たされる1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子を含む、または該粗大な粒子である。なおもさらなる実施形態においては、制限されるものではないが、粗大な粒子301は、前記式で示され、その式中、以下の関係:0<x≦0.1、0<y≦0.5、0<z<1、x+y+z=1、および1≦d≦6が満たされる1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子を含む、または該粗大な粒子である。なおもさらなる実施形態においては、制限されるものではないが、粗大な粒子301は、前記式で示され、その式中、以下の関係:0.03<x≦0.07、0.4<y≦0.5、0<z<1、x+y+z=1、および1.5≦d≦5が満たされる1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子を含む、または該粗大な粒子である。
【0036】
粗大な粒子301およびマトリックス303の相対量は、用途および所望の特性に応じて広く変動し得る。例えば、粗大な粒子301の量は、波長変換体300により二次光に変換される一次光の量に影響を及ぼし得る。さらに、粗大な粒子301の量は、波長変換体300の前駆体の粘度に影響を及ぼし得るだけでなく、波長変換体300の熱伝導性にも影響を及ぼし得る。したがって、粗大な粒子301およびマトリックス303の相対量を選択することで、所望の特性を獲得することが望ましい場合がある。
【0037】
幾つかの実施形態においては、粗大な粒子301は、波長変換体300の全質量に対して、0質量%超から約30質量%までの範囲、例えば0質量%超から約20質量%までの範囲、またはそれどころか0質量%超から約15質量%までの範囲の量で存在する。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、粗大な粒子301は、1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子であり、かつ波長変換体300の全質量に対して約10質量%から約15質量%までの範囲の量で存在する。
【0038】
同様に、マトリックス303の量は、かなり変動することができ、あらゆる適切な量のマトリックス303を使用することができる。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、マトリックス303は、波長変換体300の全質量に対して、100質量%未満から約70質量%超までの範囲、例えば100質量%未満から約80質量%超までの範囲、またはそれどころか100質量%未満から約85質量%超までの範囲の量で存在する。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、マトリックス303は、波長変換体300の全質量に対して約80質量%から約85質量%までの量で存在する。
【0039】
さらなる実施形態においては、制限されるものではないが、波長変換体300は、約10質量%〜約15質量%の粗大な粒子301、および約80質量%〜約85質量%のマトリックス303を含み、ここで、前記粗大な粒子301は、1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子であり、かつ前記マトリックス303は、光学等級のシリコーンである。なおもさらなる実施形態においては、制限されるものではないが、波長変換体300は、約15質量%の粗大な粒子301、および約85質量%のマトリックス303を含み、ここで、前記粗大な粒子301は、1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子であり、かつ前記マトリックス303は、光学等級のシリコーンである。
【0040】
前述のように、本発明者らは、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粒子の粒子サイズが、LED保全試験および高出力レーザー試験等の様々な試験に供された場合に、それらの安定性に影響を及ぼすことを確認した。より具体的には、本発明者らは、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の中央値(D
50)粒子サイズが5ミクロンより大きく高められた場合に、該蛍光体粒子の安定性も、そのような試験に供された場合に、同じ蛍光体組成の微細な結晶粒の粒子に対して高まることを確認した。
【0041】
それらを踏まえ、幾つかの実施形態においては、幾つかの実施形態の粗大な粒子301は、5μmより大きいまたはそれと等しい中央値(D50)粒子サイズを有する粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粒子である。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、粗大な粒子301は、約7μmより大きいもしくはそれと等しい、約12μmより大きいもしくはそれと等しい、約15μmより大きいもしくはそれと等しい、またはそれどころか約20μmより大きいもしくはそれと等しい中央値(D50)粒子サイズを有する粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粒子である。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、粗大な粒子301は、上述の式(例えば、式中、0.03<x≦0.07、0.4<y≦0.5、0<z<1、x+y+z=1、および1.5≦d≦5)の1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な粒子であり、約15μmより大きいまたはそれと等しい中央値(D50)粒子サイズを有する。
【0042】
マトリックス303内での粗大な粒子301の分布は、かなり変動してもよく、波長変換体300の性能に影響を及ぼすことがある。したがって、
図3は、粗大な粒子301がマトリックス303内に均質に分布されている波長変換体300の一例を示すが、そのような図解は、例示を目的とするものであり、粗大な粒子301の分布は、図解された分布とは異なることがあると理解されるべきである。それどころか、本開示は、粗大な粒子301が、均質に、不均質に、無作為に、規定の分布で、および/またはあるパターンにおいて、マトリックス303内に分布している実施形態を想定している。
【0043】
例えば、幾つかの実施形態においては、粗大な粒子は、波長変換体300の第一の側面310、波長変換体300の第二の側面320、または波長変換体300の第一および第二の側面310、320の両方にまたはその近くに集中していてよい。それに代えて、またはそれに加えて、粗大な粒子301の濃度は、波長変換体300の厚さにわたって変動しても、または一定に保たれていてもよい。例えば、粗大な粒子301の濃度は、波長変換体の第一の側面310の近くで比較的高くてよく、第一の側面310から第二の側面320に向けて移動するにつれ徐々に減少してもよい(例えば勾配において)。あるいは粗大な粒子301の濃度は、波長変換体300の中央部325の近くで比較的高くてよく、かつその第一および第二の側面310、320の近くで比較的低くてよい。そのような場合において、幾つかの実施形態における粗大な粒子301の濃度は、中央部325から第一および第二の側面310、320までに勾配で減少してよい。またさらに、幾つかの実施形態においては、粗大な粒子301の濃度は、第一および第二の側面310、320の近くで比較的高くてよく、かつ第一および第二の側面310、320から中央部325に向かって勾配で減少してよい。
【0044】
前記の波長変換体が有用であり、かつその粗大な蛍光体粒子の使用により改善された安定性を示し得るが、シリコーンまたはエポキシ等のポリマーマトリックスの使用は、特定の状況に限定するものであってよい。例えば、そのような波長変換体が高温(例えば約90℃〜約200℃)へ曝露されることは、波長変換型LED用途においてはよくあることであるが、それは、マトリックス材料の分解を引き起こすことがある。したがって、波長変換体300(またはより具体的にはマトリックス303)の温度が許容限界内に留まることを保証するように、LEDチップの光出力を人為的に制限する必要がある場合がある。マトリックス303の許容範囲内の波長変換体300の温度を維持することができないと、マトリックス303の熱的および/または酸化的な分解が引き起こされることがあり、こうして波長変換体300が含まれているLEDまたはその他の光源の早期故障が引き起こされる可能性がある。その一方で、この問題点は、無機波長変換体の使用によって対処することができる。
【0045】
したがって、本開示のもう一つの態様は、1種以上の粗大な結晶粒の波長変換材料を含む無機波長変換体に関する。本明細書で使用される場合に、用語「無機波長変換体」は、マトリックス300として使用するために適している上述のポリマーマトリックス材料のような有機マトリックス材料を含まない波長変換体を意味する。それどころか、本明細書に記載される無機波長変換体は、無機マトリックス、および1種以上の粗大な結晶粒の(無機)波長変換材料を含む。より具体的には、本明細書に記載される無機波長変換体は、無機マトリックス材料の粒子および無機波長変換材料の粒子から形成される固結(例えば焼結、またはそれ以外の熱的加工された)物品である。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される無機波長変換体は、完全に無機である、すなわち無機波長変換体は、一切有機材料を含まない。
【0046】
したがって、本開示に相応する無機波長変換体400の一例の一般的な構造を示す
図4が参照される。そこから明らかなように、無機波長変換体400は、無機マトリックス403内に波長変換材料の粗大な結晶粒401を含む。
【0047】
波長変換材料の結晶粒401の機能および組成は、前記の粗大な粒子301のそれと同じであり、したがって簡略にするために改めて詳細には記載しない。一つの注目に値する例外は、粗大な粒子301(マトリックス303によって封入されている)とは異なって、該粗大な結晶粒401は、波長変換材料の粗大な結晶粒であり、その少なくとも一部が、焼結、焼成、またはその他の熱処理によってマトリックス403に結合されていることである。
【0048】
幾つかの実施形態においては、粗大な結晶粒401は、第一の波長または波長範囲の入射一次光(例えば青色一次光)を、第二の波長または波長範囲の二次光(例えば赤色光)へと変換するために適切な蛍光体材料の粗大な結晶粒である。幾つかの場合においては、粗大な結晶粒401は、赤色窒化物蛍光体、例えば制限されるものではないが、前記組成の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な結晶粒である。そのような場合においては、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体結晶粒の組成は、粗大な粒子301として使用するために適している前記の組成と同じであってよい。
【0049】
それらを踏まえ、幾つかの実施形態においては、幾つかの実施形態の粗大な結晶粒401は、5μmより大きいまたはそれと等しい中央値(D50)結晶粒度を有する粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体結晶粒である。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、粗大な結晶粒401は、約7μmより大きいもしくはそれと等しい、約12μmより大きいもしくはそれと等しい、約15μmより大きいもしくはそれと等しい、またはそれどころか約20μmより大きいもしくはそれと等しい中央値(D50)結晶粒度を有する粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体結晶粒である。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、粗大な結晶粒401は、上述の式(例えば、式中、0.03<x≦0.07、0.4<y≦0.5、0<z<1、x+y+z=1、および1.5≦d≦5)の1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な結晶粒であり、約15μmより大きいまたはそれと等しい中央値(D50)結晶粒度を有する。
【0050】
無機マトリックス403として広く様々な材料が使用され得るが、ただし、該材料は、有機物(例えばポリマー材料)を含まないものとする。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、無機マトリックス403は、光学的に透過性の無機材料、すなわち(例えば、外部光源からの)入射一次光および/または粗大な結晶粒401によって生成される二次光の約80%より多くまたはそれと同割合(例えば、約90%、95%、99%より多くもしくはそれと同割合、またはそれどころか100%)を通す無機材料である。それに代えて、またはそれに加えて、無機マトリックス403は、粗大な結晶粒401と適合性の材料から形成される。
【0051】
無機マトリックス403として使用することができる適切な材料の例には、制限されるものではないが、光学的に透過性の金属窒化物(例えば、窒化アルミニウム(AlN))、金属オキシ窒化物(例えば、オキシ窒化アルミニウム(AlON)、Ca−SiAlON)、金属酸化物(例えば、サファイア(Al
2O
3)、金属賦活剤の濃度が2%未満である金属賦活化窒化ケイ素(例えば、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu、式中、Euの濃度は1.5原子%未満、約1.0原子%未満もしくはそれと等しい、約0.5原子%未満もしくはそれと等しい、または約0.25原子%未満もしくはそれと等しい)、非ドープの窒化ケイ素、例えば(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8(すなわち、金属賦活剤の濃度は、0原子%であるか、またはほぼ0原子%である)、ガラス、ニトリド−アルミノ−シリケート(例えば、(Ca,Sr)AlSiN
3:Eu)、それらの組み合わせ等が含まれる。
【0052】
制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、無機マトリックス403は、AlN、Ca−SiAlON、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(式中、Euの濃度は、1.5原子%未満である)、または(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8(すなわち、Euの濃度は0である)から形成されるか、またはそれを含む。具体的な実施形態においては、制限されるものではないが、無機マトリックス403は、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8から形成され、粗大な結晶粒401は、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Euから形成され、ここで、無機マトリックス403および粗大な結晶粒403中のCa、SrおよびBaの比率は、同じであるか、または本質的に同じである。
【0053】
粗大な結晶粒401および無機マトリックス403の相対量は、用途および所望の特性に応じて広く変動し得る。例えば、粗大な結晶粒401の量は、無機波長変換体400により二次光に変換される一次光の量に影響を及ぼし得る。さらに、粗大な結晶粒401の量は、無機波長変換体400の熱伝導性に影響を及ぼし得る。したがって、粗大な結晶粒401およびマトリックス403の相対量を選択することで、所望の特性を獲得することが望ましい場合がある。
【0054】
幾つかの実施形態においては、粗大な結晶粒401は、無機波長変換体400の全質量に対して、0質量%超から約30質量%までの範囲、例えば0質量%超から約20質量%までの範囲、またはそれどころか0質量%超から約15質量%までの範囲の量で存在する。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、粗大な結晶粒401は、1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な結晶粒であり、かつ無機波長変換体400の全質量に対して約10質量%から約15質量%までの範囲の量で存在する。
【0055】
同様に、無機マトリックス403の量は、かなり変動してもよく、あらゆる適切な量の無機マトリックス403を使用することができる。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、無機マトリックス403は、無機波長変換体400の全質量に対して、100質量%未満から約70質量%超までの範囲、例えば100質量%未満から約80質量%超までの範囲、またはそれどころか100質量%未満から約85質量%超までの範囲の量で存在する。制限されるものではないが、幾つかの実施形態においては、無機マトリックス403は、無機波長変換体400の全質量に対して約80質量%から約85質量%までの量で存在する。
【0056】
さらなる実施形態においては、制限されるものではないが、無機波長変換体400は、約10質量%〜約15質量%の粗大な結晶粒401、および約80質量%〜約85質量%の無機マトリックス403を含み、ここで、粗大な結晶粒401は、前記式の1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な結晶粒であり、かつ前記無機マトリックス403は、AlN、AlON、Ca−SiAlON、または(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(式中、Euの濃度は、2%未満である)、もしくは(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8(すなわち、Euの濃度は0である)である。なおもさらなる実施形態においては、制限されるものではないが、無機波長変換体400は、約15質量%の粗大な結晶粒401、および約85質量%の無機マトリックス403を含み、ここで、粗大な結晶粒401は、前記式の1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な結晶粒であり、かつ前記無機マトリックス403は、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8(すなわち、Euの濃度は0である)である。
【0057】
本開示のもう一つの態様は、本開示に相応する波長変換体を形成する方法に関する。それに関して、本開示に相応する波長変換体を形成する方法の一例の作業例の流れ図である
図5が参照される。そこから明らかなように、方法500は、ブロック501から始まる。任意のブロック503に従って、波長変換材料は任意に準備される。形成されるべき波長変換体が有機マトリックスが使用される波長変換体である場合においては、任意のブロック503に従って準備される波長変換材料は、波長変換材料の粗大な粒子、例えば制限されるものではないが、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粒子の粗大な粒子の形であってよい。
【0058】
形成されるべき波長変換体が無機波長変換体である場合においては、任意のブロック503に従って準備される波長変換材料は、波長変換材料の粗大な結晶粒の前駆体の形であってよい。幾つかの実施形態における粗大な結晶粒の前駆体は、有機マトリックスを含む波長変換体の製造に関して上述した波長変換材料の粗大な粒子であってよい。それに代えて、またはそれに加えて、幾つかの実施形態においては、波長変換材料の粗大な結晶粒の前駆体は、熱処理(例えば焼結、焼成等)に供した場合に、波長変換材料の粗大な結晶粒の形成をもたらす波長変換材料の粒子であってよい。
【0059】
ともかく、波長変換材料が任意のブロック503に従って準備される場合(またはそのような波長変換材料の準備が必要とされない場合に)、該方法は任意のブロック505に進むことができ、それに従ってマトリックス前駆体が任意に準備される。有機マトリックスが使用されるべき場合においては、マトリックス前駆体は、有機マトリックスの前駆体、例えばプレポリマーであるか、またはマトリックス303として、硬化および/もしくは重合することで有機マトリックスを形成することができるプレポリマーを使用するために適している上述の有機マトリックス材料のその他の前駆体であってよい。あるいは無機マトリックスが使用されるべき場合においては、マトリックス前駆体は、無機材料の微細な粒子、例えば無機マトリックス403として使用するために適している上述の無機材料の微細な粒子の形であってよい。あるいは無機マトリックスのマトリックス前駆体は、有機バインダー中に無機マトリックス材料の微細な粒子を含んでよく、ここで、前記有機バインダーは、マトリックス前駆体および粗大な結晶粒の前駆体が熱処理(例えば焼結)に供されたときに除去される(例えば熱分解によって)。
【0060】
任意のブロック505の後に(または任意のブロック505が必要とされない場合に)、該方法はブロック507に進んでよく、それに従って波長変換材料およびマトリックス前駆体が合される。有機マトリックスが使用されるべき場合においては、ブロック507の操作は、波長変換材料(例えば、1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粒子の粗大な粒子)とマトリックス前駆体とを混合すること、またはその他にそれらを合することを含み得る。それに代えて、またはそれに加えて、前記マトリックス前駆体が1層として(例えば基材上に)堆積されてよく、その後に、波長変換材料の粒子が、例えばその1つ以上の側面に加えられてよい。
【0061】
無機波長変換体が形成される場合においては、前記マトリックス前駆体は、マトリックス材料の無機粒子(任意に有機バインダー中に分散されている)の形であってよい。そのような場合においては、ブロック507の操作は、無機マトリックス材料の粒子と波長変換材料の(例えば粗大な)粒子とを合することを含み得る。このことは、例えば無機マトリックス材料の粒子および波長変換材料の粒子を一緒に混合することで、マトリックス材料の粒子と波長変換材料の粒子を互いに本質的に混合することによって達成することができる。あるいは無機マトリックス前駆体がバインダーを含む場合においては、波長変換材料の(粗大な)粒子は、バインダー内に分散されてよく、かつ/またはバインダーの表面上に被覆されてよい。
【0062】
制限されるものではないが、ブロック503およびブロック505に従って準備される前駆体は、幾つかの実施形態においては、波長変換材料の粗大な粒子/結晶粒(503)、および無機マトリックスの前駆体の微細な粒子(505)の形である。粗大な粒子/結晶粒の波長変換材料を微細なマトリックス前駆体粒子と組み合わせて使用するための一つの理由は、該材料を有用な波長変換体へと熱処理することを容易にするからである。それに関して、波長変換材料の(例えば、前記の)粗大な結晶粒は、バルクセラミックへと焼結することが実際には困難である場合があることに留意されたい。それに対して、微細なマトリックス前駆体粒子は、波長変換材料の粗大な粒子よりも容易に焼結する材料から選択され得る。結果として、微細なマトリックス前駆体粒子と波長変換材料の粗大な粒子/結晶粒とを合することで、波長変換材料単独の粒子/結晶粒よりも容易にバルクセラミック物品へと焼結し得る混合物がもたらされ得る。
【0063】
ブロック507の操作に引き続き、該方法はブロック509に進むことができ、それに従って加工を実施することで、本開示に相応する波長変換体を製造することができる。有機マトリックス材料が使用される場合においては、ブロック509による操作は、マトリックス前駆体材料を硬化させることで、波長変換材料の粗大な粒子を封入する有機マトリックスであって、波長変換材料の粒子が所望の分布で存在する有機マトリックスを形成することを含み得る。
【0064】
無機波長変換体が形成されるべき場合においては、しかしながら、ブロック509の操作は、その他の操作を含んでよい。例えば、無機波長変換体は、ブロック507に従って製造された波長変換材料およびマトリックス前駆体の粒子/結晶粒の組み合わせを熱処理(例えば焼結、焼成等)に供することで、固結された(例えばバルクセラミック)物品の形の無機波長変換体を得ることによって形成され得る。
【0065】
例としては、無機波長変換体は、ブロック507およびブロック509に従って無機マトリックスの前駆体粒子と(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の前駆体粒子とを合し、得られた混合物をディスクまたはその他の形状等の物品へと形成し(例えば混合物をダイ内で圧縮することによって)、そして該物品を焼結(例えば放電プラズマ焼結)に供することで、固結された無機波長変換体を形成することによって形成され得る。一例としては、制限されるものではないが、無機波長変換体は、適切な量の微細なマトリックス前駆体粒子および波長変換材料(例えば、1種以上の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体)の粗大な粒子を合し、得られた混合物をダイ内に入れ、そして該混合物を放電プラズマ焼結または別の適切な焼結法を介して焼結することによって形成され得る。もちろん、そのような方法は、例示目的で導き出されたにすぎず、その他の方法を使用して、本明細書に記載される無機波長変換体を形成することができる。
【0066】
本開示のもう一つの態様は、本明細書に記載される波長変換体の少なくとも1種を含む照明装置に関する。
図6Aは、そのような照明装置の構成の一例を図解している。示されるように、装置600は、光源604と、ハウジング608内に配置された本開示に相応する波長変換体601とを含む。この実施形態においては、波長変換体601は、リフレクター602中のスルーホール内に配置されている。波長変換体601の下面が
図6Aに示されており、それは、光源604の発光(上向き)表面とほぼ平行に配向されている。しかしながら、そのような配向は必要ではなく、光源604および波長変換体601は、任意の適切な様式で配向されてよい。さらに、光源604および波長変換体601が、それぞれ平滑な上面および下面を有するように示されているが、そのような表面は、所望の光取り出し型および光取り込み型に応じて、粗面化、構造化等がなされてよいと理解されるべきである。
【0067】
光源604は、一次光の放出が可能であるあらゆる光源であってよい。そのような光源の例には、制限されるものではないが、固体光源、例えばLED(例えば、III−V族窒化物LED、例えばInGaN型LED)およびレーザーダイオードが含まれる。ともかく、本明細書に記載される照明装置で使用される1個以上の光源を、光導体(例えば、ライトパイプ)に結合させて、面発光体を形成してよい。さらに、装置600は単独の光源604を含むものとして示されているが、本明細書に記載される照明装置は、複数の光源のアレイを含んでよいと理解されるべきである。
【0068】
動作中に、光源604は、ピーク波長またはドミナント波長、色座標、強度等のような多くのパラメーターによって説明され得る一次光605を放出することができる。その一次光605は、波長変換体601の下面に入射し得る。波長変換体601は一次光を吸収し、そしてより高いエネルギー状態に励起させることができる。励起された波長変換体601がより低いエネルギー状態に戻るときに、該波長変換体は二次光606を放出し得る。このように、波長変換体601に入射する一次光605は、二次光606へと変換され得る。
【0069】
波長変換体601は、所望の変換レベルを有するように、すなわち所望の入射一次光の量を二次光に変換するように構成されてよい。幾つかの実施形態においては、波長変換体601は、50%より大きいまたはそれと等しい、例えば約50%〜約100%の、約60%〜約99%の、約70%〜約98%の、約80%〜約97%の、またはそれどころか約85%〜約96%の変換率を示す。好ましくは、波長変換体601の変換率は、95%より大きい。
【0070】
リフレクター602は、入射一次光および/または二次光を反射するために機能し得る。前者に関しては、リフレクター602は、入射一次光を、それが波長変換体601に入射し、かつ/または該波長変換体601を通過するように反射し得る。そのようにして、リフレクター602は、波長変換体601が一次光を吸収して二次光へと変換する機会を増やすことができ、こうして変換効率が高められる。
【0071】
波長変換体601により放出される二次光は、常にハウジング608の開口部に向かって放出され得るわけではない。例えば、二次光は、波長変換体601のいずれかの側面に放出され得るか、または光源604に戻る方向に放出される(後方散乱)。そのような側方散乱および後方散乱された光が該開口部に向かって向きを変えないと、その光は吸収されるか、またはさもなくば失われ、こうして装置600からの光出力の損失がもたらされることがある。その問題に対処するために、リフレクター602は、光源604によって放出される一次光および波長変換体601によって放出される二次光に関して高い反射率を有するように構成され得る。
図6Aに示される実施形態においては、例えば、リフレクター602は、波長変換体601の1つ以上の周辺部を囲って配置されている。結果として、リフレクター602は、変換体601によって放出される側方散乱された二次光を反射することができ、こうしてそのような光が装置600から放出される機会が増える。
【0072】
図6Bは、本開示による照明装置の構成のもう一つの例を図解している。波長変換体601および光源604の位置を除いて、
図6Bにおける装置650の部材は、
図6Aに示されるものと同一である。したがって、そのような共通の部材の性質および機能は繰り返さない。もちろん、この説明は例示にすぎず、光源604および波長変換体601は、任意の所望の様式で配向されていてよい。
【0073】
図6Bにおいては、波長変換体601は、リフレクター602中の凹部内に配置されている。したがって、波長変換体601の一方の表面だけが露出されている。この実施形態においては、波長変換体601の露出した表面は、光源604の発光面と向かい合うように配向されている。結果として、波長変換体601によって放出される二次光は、装置650の開口部610の方向とは異なる方向に、例えば光源604に向かって放出され得る。
【0074】
装置600、650は、ハウジング608と一体であるか、またはそれとは別個のものであってよいリフレクター612をさらに含んでもよい。このように、例えばリフレクター612は、ハウジング608の内表面上に配置された1つ以上のコーティングの形を取り得る。一般的に、リフレクター612は、ダウンライト、フラッドライト等のような所望の照明パターンが、装置600、650から放出され得るように反射する構成であってよい。リフレクター612は、後方散乱された一次光および/または二次光を所望の様式で向きを変えるように構成されていてもよい。例えば、リフレクター612は、後方散乱された一次光および/または二次光に対して高い反射性を有する表面を有してよい。
【0075】
図6Aおよび
図6Bは波長変換体601が光源604の表面とは反対側に配置されている照明装置600、650を説明しているが、そのような構成は必要とされない。例えば、幾つかの実施形態においては、波長変換体601は、光源604の発光表面上に直接的に、または1層以上の介在(例えば接着剤)層を介するかのいずれかにおいて配置されている。そのような場合において、波長変換体601は、光源604とは別個に形成されてよく、かつ公知のようにして、光源604から放出される一次光が波長変換体601と相互作用し得るように光源604に結合されていてよい。
【0076】
波長変換体601が光源604と間隔を空けて配置されている場合に(
図6Aおよび
図6Bに示されるように)、波長変換体はハウジング608内に、ハウジング608の一部からの支持材を含むあらゆる手段によって支持されていてよい。理解できるように、波長変換体601を光源604と間隔を空けて配置することにより、波長変換体601を、光源604の表面とは異なる形状に形成することが可能となる場合がある。例えば、波長変換体601は、プレート形、ドーム形、またはシェル形であってよい。ともかく、波長変換体601の表面は、平坦形状、凹形状、凸形状、楕円形状、不規則形状、それ以外の形状、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0077】
簡潔にするために、装置600および650は、
図6Aおよび
図6Bにおいては、比較的少ない部材しか含まないように示されている。しかしながら、本開示の照明装置は、LEDランプ等の固体照明装置において通常見られるその他の部品および電子機器を含んでもよい。例としては、装置600、650は、波長変換体601によって放出される二次光だけでなく、未変換の一次光をも散乱させるように作用し得るディフューザー614を含むものとして示される。
【0078】
実施例
無機波長変換体に関しての蛍光体の粒子サイズ/結晶粒度の安定性に対する影響を調査するために、以下の実施例3〜5で後述されるように様々な無機波長変換体を調製および試験した。
【0079】
実施例3
この実施例においては、43μmのD50粒子サイズを有する粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粉体を、無機マトリックス前駆体の微細な粒子と合した。特に、粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu粒子を、1.99μmのD50を有する微細な非ドープのCa−SiAlON粒子の形のマトリックス前駆体と合した。得られた粉体混合物は、15質量%の粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu粒子、および85質量%の微細な非ドープのCa−SiAlON粒子を含有していた。無機波長変換体を製造するために、1.6グラムの前記粉体混合物を20mmの直径を有するグラファイトダイに入れ、1550℃で50メガパスカル(MPa)の圧力下で10分間にわたり放電プラズマ焼結(SPS)を行った。得られた焼結された波長変換性セラミックディスクを研削して、光学的測定のために約120μmの厚さまで薄くした。薄くしたディスクの光学顕微鏡像は、
図7Aおよび
図7Bに示されており、それは、非ドープのCa−SiAlONマトリックス703中に(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な結晶粒701を示している。
【0080】
青色(448nm)のLED光を、その薄くしたディスクに当て、その発光スペクトル801を測定し、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の発光スペクトル803と比較した。測定された発光スペクトル801、803は、
図8に示されており、それは、薄くしたディスクおよび(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の測定された相対発光強度を、波長(nm)に対してプロットしたものである。示されるように、スペクトル801は、スペクトル803と比べて赤方偏移され、かつより広く、それは、Ca−SiAlONマトリックスと(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体との間に何らかの反応が起こっただけでなく、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体に何らかの損傷が生じたことを示している。該ディスクの変換効率は、4.3%であった。理論に縛られることを望むものではないが、低い変換効率は、焼結過程の間に蛍光体に損傷が生じた結果であると考えられる。
【0081】
実施例4
この実施例においては、43μmのD50粒子サイズを有する粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粉体を、マトリックス前駆体の微細な粒子と合した。この場合には、約1.0μmのD50を有する微細な窒化アルミニウム(AlN)粒子を、マトリックス前駆体として使用した。得られた粉体混合物は、15質量%の粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu粒子、および85質量%の微細なAlN粒子を含有していた。無機波長変換体を製造するために、1.5グラムの前記粉体混合物を20mm直径を有するグラファイトダイに入れ、1650℃で50MPaの圧力下で10分間にわたり放電プラズマ焼結を行った。得られた焼結された波長変換性セラミックディスクを研削して、光学的測定のために約120μmの厚さまで薄くした。
図9は、薄くしたディスクの光学顕微鏡画像であり、AlNマトリックス中に蛍光体の粗大な結晶粒を示している。
【0082】
薄くしたディスクおよび(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の発光スペクトル1001、1003を、実施例3に記載される発光スペクトル801、803と同様にして測定した。測定された発光スペクトル1001、1003は、
図10に示されており、それは、薄くしたディスクおよび(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の測定された相対発光強度を、波長(nm)に対してプロットしたものである。示されるように、スペクトル1001は、スペクトル1003と比べて赤方偏移され、かつより広く、それは、AlNマトリックスと(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体との間に何らかの反応が起こっただけでなく、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体に何らかの損傷が生じたことを示している。該ディスクの変換効率は、7.6%であった。実施例4と同様に、低い変換効率は、焼結過程の間に蛍光体に損傷が生じた結果であると考えられる。
【0083】
実施例5
この実施例においては、43μmのD50粒子サイズおよび4%のEu濃度を有する粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粉体を、マトリックス前駆体の微細な粒子と合した。この場合においては、マトリックス前駆体の粒子は、≦0.5%のEu濃度および1.44μmのD50を有する(Sr,Ba)
2Si
5N
8:Euの微細な粒子であった。得られた粉体混合物は、15質量%の粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(4%)粒子、および85質量%の微細なマトリックス前駆体粒子を含有していた。2種類の二(2)グラムの粉体混合物の試料を測定し、20mmの直径を有するグラファイトダイに入れ、そして50MPaの圧力下でそれぞれ1625℃および1580℃で10分間にわたり放電プラズマ焼結させ、第一および第二の焼結された波長変換性セラミックディスクを製造した。第一および第二の焼結されたディスクをそれぞれ研削して、光学的測定のために約120μmの厚さまで薄くした。
図11Aおよび
図11Bは、それぞれ第一および第二の薄くしたディスクの光学顕微鏡画像であり、(Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(≦0.5%)のマトリックス中の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(≧5%)蛍光体の粗大な結晶粒を示している。
【0084】
第一および第二の薄くしたディスクの走査型電子顕微鏡像は、
図12Aおよび
図12Bにそれぞれ示されており、それらの像は、(Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(≦0.5%)の微細な結晶粒のマトリックス1203内に、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(4%)蛍光体の粗大な結晶粒1201が存在することを示している。
図12Aに示される濃い領域は、(Sr,Ba)
2Si
5N
8マトリックス中のBaSi
7N
10相である。
【0085】
第二の薄くしたディスク(1301)、粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(4%)蛍光体(1303)、および微細な(Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(≦0.5%)マトリックスの発光スペクトルを、実施例3に記載される発光スペクトル801、803と同様にして測定した。測定された発光スペクトル1301、1303、および1305は、
図13に示されており、それは、薄くしたディスク、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(4%)蛍光体、および微細な(Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(≦0.5%)の測定された相対発光強度を、波長(nm)に対してプロットしたものである。示されるように、スペクトル1201は、スペクトル1203、1205の間にあった。2種の薄くしたディスクの様々な光学的特性も測定し、それらを以下の第2表で報告する。
【0086】
第2表
【表2】
【0087】
表中、CxおよびCyは、励起光有りの場合と無しの場合のそれぞれの試料ディスクの測定された発光スペクトルから得られる色座標であり、CEは、試料を励起光源(この場合には青色LED)上に置くことによって測定された変換効率(Lm/W)であって、試料の上で測定されるルーメン(lm)を測定して、励起光源の光出力(ワット、W)で除算したものであり、Conv.Eff.は、変換効率(変換された蛍光体発光からの光出力の、該蛍光体によって吸収された励起出力に対する比率)であり、Ldom(nm)は、ナノメートルでのドミナント波長であり、LERは、放射の発光効率(すなわち、ルーメンの、ワットにおける放射束に対する比率、すなわちlm/W)であり、かつSPS条件は、ディスクの形成に使用される放電プラズマ焼結の温度、時間および圧力を、それぞれ℃、分、およびMPaで示している。示されるように、2種のディスクの変換効率は、それぞれ33.5%および33.0%であった。
【0088】
それらの結果は、微細な結晶粒の(Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(≦0.5%)マトリックスは、放電プラズマ焼結のための安定な大きな結晶粒の蛍光体である(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(≧5%)蛍光体と適合可能であることを裏付けている。また存在する2種の試料ディスクも、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu(≧5%)蛍光体の大きな結晶粒を含み、すべては良好な変換効率を有している。より好ましい一実施形態においては、大きな結晶粒の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粉体は、非ドープの(Sr,Ba)
2Si
5N
8微細粉体と混合される。
【0089】
実施例6
もう一つの例示的な実施形態においては、粗大な(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粒子は、非ドープの(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8の微細な粒子の形のマトリックス前駆体と混合され得る。この場合に、非ドープの(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Euマトリックス前駆体粒子におけるCa、SrおよびBaの比率は、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粒子におけるCa、SrおよびBaの比率と同じであるか、または本質的に同じである。得られた混合物は、実施例3〜5で先述されたようにダイ内に入れ、放電プラズマ焼結を行うことができる。非ドープの(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8は、この適用の時点で試験するためには利用できなかったが、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体粒子のそれらと化学的に近いので、非ドープの(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8は、そのような粒子と適合可能であろうと考えられる。さらに、先の実施例から、そのような混合物の放電プラズマ焼結で得られたものは、微細な結晶粒の(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8マトリックス中に(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体の粗大な結晶粒を含む波長変換体であろうと考えられる。
【0090】
実施形態
以下の実施形態は、本開示の追加の実施形態であって、それらに制限されるものではない。
【0091】
実施形態1: この実施形態によれば、マトリックスと、該マトリックス内の波長変換材料とを含む波長変換体であって、該波長変換材料は、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体を含み、かつ該(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、5ミクロンより大きいまたはそれと等しいD50結晶粒度またはD50粒子サイズを有する波長変換体が提供される。
【0092】
実施形態2: この実施形態は、実施形態1の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、10ミクロンより大きいまたはそれと等しいD50結晶粒度またはD50粒子サイズを有する。
【0093】
実施形態3: この実施形態は、実施形態1の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、15ミクロン以上のD50結晶粒度またはD50粒子サイズを有する。
【0094】
実施形態4: この実施形態は、実施形態1の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記マトリックスは、有機マトリックスであり、かつ前記(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、5μm以上のD50粒子サイズを有する。
【0095】
実施形態5: この実施形態は、実施形態4の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記有機マトリックスは、シリコーン、エポキシ、アクリル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーである。
【0096】
実施形態6: この実施形態は、実施形態5の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、波長変換体の全質量に対して、0質量%超から約30質量%までの範囲の量で存在する。
【0097】
実施形態7: この実施形態は、実施形態6の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、波長変換体の全質量に対して、0質量%超から約15質量%までの範囲の量で存在する。
【0098】
実施形態8: この実施形態は、実施形態4の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、式(Ca
x,Sr
y,Ba
z)
2Si
5N
8:d%Eu[式中、x、yおよびzは、それぞれCa、SrおよびBaの原子パーセントでの量であり、dは、Euの原子パーセントでの量であり、かつ以下の関係が満たされる:0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1、および0<d<10]の1種以上の蛍光体である。
【0099】
実施形態9: この実施形態は、実施形態8の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、0.03<x≦0.07、0.4<y≦0.5、0<z<1、x+y+z=1、および1.5≦d≦5である。
【0100】
実施形態10: この実施形態は、実施形態1の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記マトリックスは、無機マトリックスであり、かつ前記(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、5μm以上のD50結晶粒度を有する。
【0101】
実施形態11: この実施形態は、実施形態10の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記マトリックスは、5μm未満のD50結晶粒度を有する。
【0102】
実施形態12: この実施形態は、実施形態11の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記マトリックスは、1μm未満のD50結晶粒度を有する。
【0103】
実施形態13: この実施形態は、実施形態10の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記無機マトリックスは、光学的に透過性の金属窒化物、金属オキシ窒化物、金属酸化物、金属賦活剤の濃度が0原子%より大きいが2原子%未満である金属賦活化窒化ケイ素の蛍光体、および非ドープの窒化ケイ素の蛍光体からなる群から選択される。
【0104】
実施形態14: この実施形態は、実施形態13の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記無機マトリックスは、窒化アルミニウム、Ca−SiAlON、0原子%より大きいが2原子%未満を含む(Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体、および非ドープの(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8蛍光体からなる群から選択される。
【0105】
実施形態15: この実施形態は、実施形態14の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記無機マトリックスは、非ドープの(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8蛍光体であり、かつ該非ドープの(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8蛍光体におけるCa、SrおよびBaの比率は、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体におけるCa、SrおよびBaの比率と同じであるか、または本質的に同じである。
【0106】
実施形態16: この実施形態は、実施形態10の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、式(Ca
x,Sr
y,Ba
z)
2Si
5N
8:d%Eu[式中、x、yおよびzは、それぞれCa、SrおよびBaの原子パーセントでの量であり、dは、Euの原子パーセントでの量であり、かつ以下の関係が満たされる:0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1、および0<d<10]の1種以上の蛍光体である。
【0107】
実施形態17: この実施形態は、実施形態16の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、0.03<x≦0.07、0.4<y≦0.5、0<z<1、x+y+z=1、および1.5≦d≦5である。
【0108】
実施形態18: この実施形態は、実施形態11の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、15μm以上のD50結晶粒度を有する。
【0109】
実施形態19: この実施形態は、実施形態12の特徴のいずれかまたはすべてを含み、その際、前記(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍光体は、15μm以上のD50結晶粒度を有する。
【0110】
実施形態20: この実施形態によれば、実施形態1から19までのいずれかの波長変換体を含む照明装置が提供される。
【0111】
以下の表は、図中の参照番号とそれらの各々の要素との対応を示している。
【0112】
【表3】
【0113】
本開示の原理は本明細書において記載されているが、当業者によれば、この記載は例としてみなされたものにすぎず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲のように制限するものではないものと解釈されるべきである。本明細書で開示された特定の実施形態に関して記載された特徴および態様は、本明細書に記載される様々なその他の実施形態と組み合わせ、かつ/または一緒に使用することが可能である。そのような記載された特徴および態様をそのようなその他の実施形態とそのように組み合わせ、かつ/または一緒に使用することは、本明細書において考慮されている。本明細書においては変更およびその他の実施形態は考慮されており、それらは本開示の範囲内である。