【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、第1の態様では、本発明は、蒸着法による1本または複数のヤーンをコーティングする装置を提供し、該装置は、少なくとも、
長手方向軸に沿って伸び、内周壁と外周壁との間に位置する少なくとも1個の処理ゾーンを有する処理チャンバーであって、内部で少なくとも1本のヤーンが蒸着法を実施することによりコートされる処理チャンバーと、
前記少なくとも1本のヤーンを処理ゾーンを通って送るように構成されたコンベヤーシステムと、
内周または外周壁中に存在する少なくとも1個の入口オリフィスを通って処理気相を処理ゾーン中に注入するように構成された注入装置と、
残留気相を、内周または外周壁中に存在する少なくとも1個の出口オリフィスを通って処理ゾーンから除去するように構成された除去装置であって、前記入口オリフィスおよび前記出口オリフィスが処理チャンバーの長手方向軸に垂直の共通の面内に位置し、処理チャンバーの円周方向に沿ってずれている除去装置と、を含む。
【0012】
前記処理チャンバーの長手方向軸に垂直の平面は、入口オリフィスの一部および出口オリフィスの一部と交差する。この平面は、場合により、入口オリフィスおよび出口オリフィスとこれらオリフィスの中心で交差してよい。したがって、入口オリフィスおよび出口オリフィスを、それぞれのこれらのオリフィスの一部が長手方向軸に垂直の共通の平面中に位置する限り、処理チャンバーの長手方向軸に沿って少しずらすことが可能である。
【0013】
本発明の装置は、好都合にも、短い長さおよび小さいサイズを与える。装置の長さが短いために、本発明は、蒸着中に適切なヤーン張力を加えることをより容易にする。特に、処理チャンバーの長さが先行技術装置に比べて短いという事実が、有利にも、より遅い移動速度が使用されることを可能とするのに役立ち、しかし、ヤーン処理の持続時間を増やすことはなく、したがって、好都合にも、ヤーン(単一または複数)がコンベヤーシステムから外れるリスクを減らすのに役立つ。さらに、処理ゾーンの長さが短いことを前提とすれば、処理ゾーンでの蒸着の条件を信頼性の高い方式で制御できるのは有利である。さらに、内周壁と外周壁との間に位置する環形状の処理ゾーンの使用が、有利にも、処理用ヤーンを処理ゾーンの円周に沿って配置可能とするのに役立ち、それにより、ヤーンが処理チャンバーの直径に沿って配置される構成と比較して、単位時間に処理されるヤーンの品質を高めることを可能にする。
【0014】
装置はまた、処理ゾーンを加熱するように構成されたヒーターシステムも含む。
【0015】
ある実施形態では、装置は、複数の入口オリフィスおよび複数の出口オリフィスを有し得る。
【0016】
このような実施形態は、比較的大きな数のヤーンを均一に被覆するように有利に作用する。
【0017】
ある実施形態では、入口オリフィスおよび出口オリフィスは、それぞれの出口オリフィスが円周方向に沿って、2個の入口オリフィスの間に配置されるように、ずれて存在し得る。
【0018】
ある実施形態では、前記入口オリフィスおよび前記出口オリフィスは、円周方向に沿って均一に分布させてもよい。
【0019】
このような実施形態は、種々の処理されるヤーン上に形成されるコーティングの均一性をさらに改善するのに有利に役立つ。
【0020】
ある実施形態では、入口オリフィス(単一または複数)は、それぞれ内周または外周壁中に位置し、出口オリフィス(単一または複数)は、それぞれ外周または内周壁中に位置してもよい。換言すれば、このような状況下では、入口オリフィスが内周壁中に位置する場合、出口オリフィスは外周壁中に位置し、また、入口オリフィスが外周壁中に位置する場合は、出口オリフィスは内周壁中に位置する。
【0021】
このような実施形態は、種々の処理されるヤーン上に形成されるコーティングの均一性をさらに改善するのに有利に役立つ。
【0022】
ある実施形態では、コンベヤーシステムは、前記少なくとも1本のヤーンが処理チャンバーを通る移動速度を調節するための要素を含み得る。
【0023】
このような特徴は、処理ゾーンを通る前記少なくとも1本のヤーンの移動速度を変更することにより、形成される層(単一または複数)の厚さを変えるのをより容易にするのに有利に役立つ。
【0024】
ある実施形態では、装置は、処理チャンバー中に存在する少なくとも一個の穿孔要素であって、前記穿孔要素と内周または外周壁との間に存在するガスケットと共に、処理ゾーンを横方向に画定する、少なくとも1個の穿孔要素を含み得る。ある実施形態では、装置は、第1と第2のこのタイプの穿孔要素を提供し、第1の穿孔要素は内周壁に対面して存在し、第2の穿孔要素は外周壁に対面して存在する。
【0025】
本発明はまた、上述の装置を使って、1本または複数のヤーンを蒸着法により処理する方法を提供し、該方法は、
注入装置を使用して、前記入口オリフィスを通って気相を処理ゾーン中に注入するステップと、
コンベヤーシステムを使って、注入された気相から蒸着により前記少なくとも1本のヤーン上に層を形成するように、処理ゾーンを通って、少なくとも1本のヤーンを送るステップと、
前記出口オリフィスを通って処理ゾーンから残留気相を除去するステップと、を少なくとも含む。
【0026】
前記層は、前記少なくとも1本のヤーンがコンベヤーシステムにより処理ゾーンを通って移動される間に堆積され得る。
【0027】
ある実施態様では、前記少なくとも1本のヤーンは、処理チャンバーを通ってコンベヤーシステムにより連続的に送られ得る。換言すれば、前記少なくとも1本のヤーンは、処理チャンバーを通過している間、停止しない。このような状況下では、その処理チャンバーを通る進路全体を通して、前記少なくとも1本のヤーンはゼロでない速度で移動している。
【0028】
ある実施態様では、前記少なくとも1本のヤーンを、処理チャンバーを1回通過させるだけでよい。
【0029】
実施される蒸着法は、化学蒸着(CVD)、反応性化学蒸着(RCVD)、または物理蒸着(PVD)であってよい。
【0030】
ある実施態様では、層は化学蒸着(ヤーンの表面上に物質を追加する)により、または反応性化学蒸着(ヤーンの表面に存在する物質の転換)により形成され得る。
【0031】
ある実施態様では、層は中間相コーティング層であり得る。
【0032】
例えば、中間相コーティング層は、熱分解カーボン(PyC)、窒化ホウ素(BN)、ホウ素ドープ炭素(BC)、シリコンナイトライド(Si
3N
4)、または混合ホウ素および炭化ケイ素(Si−B−C)から作製されてよい。
【0033】
本発明は、複合材料部品を製造する方法をさらに提供し、該方法は、
少なくとも上述の方法を実施することによる中間相コーティングで複数のヤーンをコーティングするステップと、
このようにして中間相コーティングでコートしたヤーンに対し、少なくとも1つまたは複数の繊維操作を行うことにより、繊維プリホームを形成するステップと、
複合材料部品を得るために、繊維プリホームをマトリックスで高密度化するステップと、を少なくとも含む。
【0034】
繊維プリホームは、中間相コーティングによりコートされたヤーンを用いて、機織、例えば、3次元機織により、得られるのが好ましい。
【0035】
マトリックスは、炭化ケイ素などのセラミック材料を含んでもよく、または炭素から作製されてもよい。マトリックスは、任意の既知のタイプの方法、例えば、化学蒸気浸透または溶解浸潤などにより作製されてよい。
【0036】
例えば、作製される部品は、タービンエンジンブレードまたはタービンリングセクターであってよい。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、以下の非限定的例として、および添付図面に関連して提供された本発明の特定の実施形態の説明から明らかになる。