特許第6805250号(P6805250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6805250蒸着法により1本または複数のヤーンをコーティングする装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805250
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】蒸着法により1本または複数のヤーンをコーティングする装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20201214BHJP
   C23C 16/54 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   C23C16/44 F
   C23C16/54
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-526055(P2018-526055)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公表番号】特表2018-534426(P2018-534426A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】FR2016053008
(87)【国際公開番号】WO2017085420
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2019年10月16日
(31)【優先権主張番号】1561150
(32)【優先日】2015年11月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516299213
【氏名又は名称】サフラン・セラミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビュエ,エミリアン
(72)【発明者】
【氏名】チボー,シモン
(72)【発明者】
【氏名】デルカン,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】デカン,セドリック
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−061270(JP,A)
【文献】 特公昭49−004137(JP,B1)
【文献】 特表2008−530370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/44
C23C 16/54
C23C 14/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着法による1本または複数のヤーン(2)をコーティングする装置(1)であって、装置は、少なくとも、
長手方向軸(X)に沿って伸び、内周壁(5)と外周壁(7)との間に位置する少なくとも1個の処理ゾーン(4a)を有する処理チャンバー(4)であって、その中で少なくとも1本のヤーン(2)が蒸着法を実施することによりコートされる処理チャンバー(4)と、
前記少なくとも1本のヤーン(2)を処理ゾーン(4a)を通って送るように構成されたコンベヤーシステム(6)と、
内周または外周壁(5または7)中に存在する少なくとも1個の入口オリフィス(7a)を通って処理気相(10a)を処理ゾーン(4a)中に注入するように構成された注入装置と、
残留気相(11a)を、内周または外周壁(5または7)中に存在する少なくとも1個の出口オリフィス(8a)を通って処理ゾーン(4a)から除去するように構成された除去装置であって、前記入口オリフィス(7a)および前記出口オリフィス(8a)が処理チャンバー(4)の長手方向軸(X)に垂直の共通の面(P)内に位置し、処理チャンバー(4)の円周方向(C)に沿ってずれている除去装置と、を含む装置(1)。
【請求項2】
複数の入口オリフィス(7a)および複数の出口オリフィス(8a)を有する、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
入口オリフィス(7a)および出口オリフィス(8a)が、それぞれの出口オリフィス(8a)が円周方向(C)に沿って、2個の入口オリフィス(7a)の間に配置されるように、ずれている、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記入口オリフィス(7a)および前記出口オリフィス(8a)が、円周方向(C)に沿って均一に分布する、請求項2または請求項3に記載の装置(1)。
【請求項5】
入口オリフィス(単一または複数)(7a)が、それぞれ内周または外周壁(5または7)中に位置し、出口オリフィス(単一または複数)(8a)が、それぞれ外周または内周壁(7または5)中に位置する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
コンベヤーシステム(6)が、処理チャンバー(4)を通る前記少なくとも1本のヤーン(2)の移動速度を調節するための要素を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)を使うことにより、1本または複数のヤーン(2)を蒸着法により処理する方法であって、方法は、少なくとも、
注入装置を使用して、前記入口オリフィス(7a)を通って気相(10a)を処理ゾーン(4a)中に注入するステップと、
コンベヤーシステム(6)を使って、注入された気相(10a)から蒸着により少なくとも1本のヤーン(2)上に層を形成するように、処理ゾーン(4a)を通って、前記少なくとも1本のヤーン(2)を送るステップと、
前記出口オリフィス(8a)を通って処理ゾーン(4a)から残留気相(11a)を除去するステップと、を含む、方法。
【請求項8】
前記少なくとも1本のヤーン(2)が、処理チャンバー(4)を通ってコンベヤーシステム(6)により連続的に送られる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
層が、化学蒸着法または反応性化学蒸着法により形成される、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
層が中間相コーティング層である請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
複合材料部品を製造する方法であって、方法は、少なくとも、
少なくとも請求項10に記載の方法を実施することにより、中間相コーティングで複数のヤーン(2)をコーティングするステップと、
このようにして中間相コーティングでコートしたヤーンに対し、1つまたは複数の繊維操作を行うことにより、繊維プリホームを形成するステップと、
複合材料部品を得るために、繊維プリホームをマトリックスで高密度化するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着法により1本または複数のヤーンをコーティングする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックマトリックス複合(CMC)材料は、比較的高い動作温度で使用される。このような材料は、セラミックのヤーンまたはセラミックマトリックス内に存在する炭素材料のヤーンから構成される強化繊維を含む。
【0003】
CMCから部品を作成する間、繊維強化部品を形成する繊維織物は、最初に、例えば、3次元機織により得られる。繊維織物はその後、作製される部品の形状に近い形状を有する繊維プリホームを得るために成形される。その後プリホームは、マトリックスを形成するために高密度化され、それにより、最終部品が得られる。マトリックスは、例えば、化学蒸気浸透(CVI)法により、または溶融含浸(MI)MI法により、完全にまたは部分的に作製される。繊維成形ステップ(機織、編組、...)の前に、ヤーンは、最初にマトリックス内で開始したクラックによるヤーンの繊維の破壊を遅くするために、中間相コーティングによりコートし得る。例えば、脆化を緩和する中間相コーティングは、亀裂が中間相に到達時にクラック進行エネルギーを、亀裂が中間相内で曲げられるように、原子スケールで局在化剥離により消散させることができる層状構造の材料から作製し得る。例えば、脆化を緩和する中間相を構成する材料は、層状構造を示す熱分解カーボン(PyC)、および窒化ホウ素(BN)であってよい。例えば、中間相コーティングは、化学蒸着(CVD)、化学蒸気浸透(CVI)、または実際の液体技術により形成してよい。
【0004】
化学蒸着法により複数のヤーンを中間相で連続的にコーティングするのに好適する装置は、文献で提案されている。このような装置は、処理チャンバーを含み、これを通して、コーティングするために複数のヤーンが、プーリーシステムにより駆動されて、送られる。化学蒸着によりヤーン上に中間相コーティングを形成するために、反応性ガス混合物が入口オリフィスを介して処理チャンバー中に注入される。反応しなかった全ての反応性ガス混合物が反応副産物と一緒に、出口オリフィスを介してポンプで排出される。この出口オリフィスは、入口オリフィスから、処理チャンバーの長手方向軸に沿って、ずれている。このような装置では、注入されるガス混合物は、処理チャンバーの長手方向軸に沿って、出口オリフィスを通ってポンプにより排出されるまで流れていく。複数層中間相コーティングは、それぞれが気相を注入する装置および残留気相を除去するための装置を含む、複数のこのタイプのユニットを直列に配置することにより作製できる。
【0005】
それにもかかわらず、既知の方法の信頼性は、これらの方法で、プーリーシステムが十分なヤーン張力を維持するのが困難な場合がある限り、および比較的高いヤーンの移動速度で使用でき、これにより特定のヤーンがコンベヤープーリーの溝から外れる場合がある限り、改善できる。
【0006】
さらに、単位時間当たりに処理できるヤーンの数を増やすことを可能とする装置を提供することが望ましい場合がある。
【0007】
また、繊維のコーティング法を記載している、文献、仏国特許出願公開第1564841号明細書、米国特許出願公開第2007/0099527号明細書、西独国実用新案第9421895号明細書、欧州特許出願公開第1277874号明細書、および西独特許出願公開第3424166号明細書も既知である。また、反応性化学蒸着(CVD)法を記載している、文献、仏国特許出願公開第2727435号明細書も既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許出願公開第1564841号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0099527号明細書
【特許文献3】西独国実用新案第9421895号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1277874号明細書
【特許文献5】西独特許出願公開第3424166号明細書
【特許文献6】仏国特許出願公開第2727435号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、蒸着による1本または複数のヤーンのコーティング方法の信頼性の改善を可能とする装置を提供する必要性が存在する。
【0010】
また、単位時間当たりに処理できるヤーンの数を増やすことを可能とする装置を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、第1の態様では、本発明は、蒸着法による1本または複数のヤーンをコーティングする装置を提供し、該装置は、少なくとも、
長手方向軸に沿って伸び、内周壁と外周壁との間に位置する少なくとも1個の処理ゾーンを有する処理チャンバーであって、内部で少なくとも1本のヤーンが蒸着法を実施することによりコートされる処理チャンバーと、
前記少なくとも1本のヤーンを処理ゾーンを通って送るように構成されたコンベヤーシステムと、
内周または外周壁中に存在する少なくとも1個の入口オリフィスを通って処理気相を処理ゾーン中に注入するように構成された注入装置と、
残留気相を、内周または外周壁中に存在する少なくとも1個の出口オリフィスを通って処理ゾーンから除去するように構成された除去装置であって、前記入口オリフィスおよび前記出口オリフィスが処理チャンバーの長手方向軸に垂直の共通の面内に位置し、処理チャンバーの円周方向に沿ってずれている除去装置と、を含む。
【0012】
前記処理チャンバーの長手方向軸に垂直の平面は、入口オリフィスの一部および出口オリフィスの一部と交差する。この平面は、場合により、入口オリフィスおよび出口オリフィスとこれらオリフィスの中心で交差してよい。したがって、入口オリフィスおよび出口オリフィスを、それぞれのこれらのオリフィスの一部が長手方向軸に垂直の共通の平面中に位置する限り、処理チャンバーの長手方向軸に沿って少しずらすことが可能である。
【0013】
本発明の装置は、好都合にも、短い長さおよび小さいサイズを与える。装置の長さが短いために、本発明は、蒸着中に適切なヤーン張力を加えることをより容易にする。特に、処理チャンバーの長さが先行技術装置に比べて短いという事実が、有利にも、より遅い移動速度が使用されることを可能とするのに役立ち、しかし、ヤーン処理の持続時間を増やすことはなく、したがって、好都合にも、ヤーン(単一または複数)がコンベヤーシステムから外れるリスクを減らすのに役立つ。さらに、処理ゾーンの長さが短いことを前提とすれば、処理ゾーンでの蒸着の条件を信頼性の高い方式で制御できるのは有利である。さらに、内周壁と外周壁との間に位置する環形状の処理ゾーンの使用が、有利にも、処理用ヤーンを処理ゾーンの円周に沿って配置可能とするのに役立ち、それにより、ヤーンが処理チャンバーの直径に沿って配置される構成と比較して、単位時間に処理されるヤーンの品質を高めることを可能にする。
【0014】
装置はまた、処理ゾーンを加熱するように構成されたヒーターシステムも含む。
【0015】
ある実施形態では、装置は、複数の入口オリフィスおよび複数の出口オリフィスを有し得る。
【0016】
このような実施形態は、比較的大きな数のヤーンを均一に被覆するように有利に作用する。
【0017】
ある実施形態では、入口オリフィスおよび出口オリフィスは、それぞれの出口オリフィスが円周方向に沿って、2個の入口オリフィスの間に配置されるように、ずれて存在し得る。
【0018】
ある実施形態では、前記入口オリフィスおよび前記出口オリフィスは、円周方向に沿って均一に分布させてもよい。
【0019】
このような実施形態は、種々の処理されるヤーン上に形成されるコーティングの均一性をさらに改善するのに有利に役立つ。
【0020】
ある実施形態では、入口オリフィス(単一または複数)は、それぞれ内周または外周壁中に位置し、出口オリフィス(単一または複数)は、それぞれ外周または内周壁中に位置してもよい。換言すれば、このような状況下では、入口オリフィスが内周壁中に位置する場合、出口オリフィスは外周壁中に位置し、また、入口オリフィスが外周壁中に位置する場合は、出口オリフィスは内周壁中に位置する。
【0021】
このような実施形態は、種々の処理されるヤーン上に形成されるコーティングの均一性をさらに改善するのに有利に役立つ。
【0022】
ある実施形態では、コンベヤーシステムは、前記少なくとも1本のヤーンが処理チャンバーを通る移動速度を調節するための要素を含み得る。
【0023】
このような特徴は、処理ゾーンを通る前記少なくとも1本のヤーンの移動速度を変更することにより、形成される層(単一または複数)の厚さを変えるのをより容易にするのに有利に役立つ。
【0024】
ある実施形態では、装置は、処理チャンバー中に存在する少なくとも一個の穿孔要素であって、前記穿孔要素と内周または外周壁との間に存在するガスケットと共に、処理ゾーンを横方向に画定する、少なくとも1個の穿孔要素を含み得る。ある実施形態では、装置は、第1と第2のこのタイプの穿孔要素を提供し、第1の穿孔要素は内周壁に対面して存在し、第2の穿孔要素は外周壁に対面して存在する。
【0025】
本発明はまた、上述の装置を使って、1本または複数のヤーンを蒸着法により処理する方法を提供し、該方法は、
注入装置を使用して、前記入口オリフィスを通って気相を処理ゾーン中に注入するステップと、
コンベヤーシステムを使って、注入された気相から蒸着により前記少なくとも1本のヤーン上に層を形成するように、処理ゾーンを通って、少なくとも1本のヤーンを送るステップと、
前記出口オリフィスを通って処理ゾーンから残留気相を除去するステップと、を少なくとも含む。
【0026】
前記層は、前記少なくとも1本のヤーンがコンベヤーシステムにより処理ゾーンを通って移動される間に堆積され得る。
【0027】
ある実施態様では、前記少なくとも1本のヤーンは、処理チャンバーを通ってコンベヤーシステムにより連続的に送られ得る。換言すれば、前記少なくとも1本のヤーンは、処理チャンバーを通過している間、停止しない。このような状況下では、その処理チャンバーを通る進路全体を通して、前記少なくとも1本のヤーンはゼロでない速度で移動している。
【0028】
ある実施態様では、前記少なくとも1本のヤーンを、処理チャンバーを1回通過させるだけでよい。
【0029】
実施される蒸着法は、化学蒸着(CVD)、反応性化学蒸着(RCVD)、または物理蒸着(PVD)であってよい。
【0030】
ある実施態様では、層は化学蒸着(ヤーンの表面上に物質を追加する)により、または反応性化学蒸着(ヤーンの表面に存在する物質の転換)により形成され得る。
【0031】
ある実施態様では、層は中間相コーティング層であり得る。
【0032】
例えば、中間相コーティング層は、熱分解カーボン(PyC)、窒化ホウ素(BN)、ホウ素ドープ炭素(BC)、シリコンナイトライド(Si)、または混合ホウ素および炭化ケイ素(Si−B−C)から作製されてよい。
【0033】
本発明は、複合材料部品を製造する方法をさらに提供し、該方法は、
少なくとも上述の方法を実施することによる中間相コーティングで複数のヤーンをコーティングするステップと、
このようにして中間相コーティングでコートしたヤーンに対し、少なくとも1つまたは複数の繊維操作を行うことにより、繊維プリホームを形成するステップと、
複合材料部品を得るために、繊維プリホームをマトリックスで高密度化するステップと、を少なくとも含む。
【0034】
繊維プリホームは、中間相コーティングによりコートされたヤーンを用いて、機織、例えば、3次元機織により、得られるのが好ましい。
【0035】
マトリックスは、炭化ケイ素などのセラミック材料を含んでもよく、または炭素から作製されてもよい。マトリックスは、任意の既知のタイプの方法、例えば、化学蒸気浸透または溶解浸潤などにより作製されてよい。
【0036】
例えば、作製される部品は、タービンエンジンブレードまたはタービンリングセクターであってよい。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、以下の非限定的例として、および添付図面に関連して提供された本発明の特定の実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の装置の処理チャンバーの長手方向軸に垂直の断面を示す線図である。
図2図1の装置の処理チャンバーの長手方向軸に沿った断面を示す図である。
図3】処理チャンバーの長手方向軸に沿った断面の図で、図1の装置の入口オリフィスをさらに詳細に示す図である。
図4】処理チャンバーの長手方向軸に沿った断面の図で、図1の装置の出口オリフィスをさらに詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、蒸着法により複数のヤーン2をコーティングするための本発明の装置1を示す。
【0040】
図1に特に示すように、装置1は、蒸着法を実施することによりヤーン2がコートされる第1の処理ゾーン4aを画定する処理チャンバーを含む。第1の処理ゾーン4aでコートされるヤーン2は、相互連結されていない(特に、ヤーンは、一緒に織られても、編まれても、または組まれてもいない)。ヤーン2は、いずれの繊維操作にも供されておらず、それらは繊維構造を形成していない。ヤーン2は、セラミック材料、例えば、酸化物、窒化物、または炭化ケイ素(SiC)などの炭化物材料から作製されてよい。変形形態では、ヤーンは炭素ヤーンから作製されてもよい。ある実施形態では、ヤーン2の一部がセラミック材料から作製され、ヤーン2の一部が炭素から作製される。ある実施形態では、少なくとも20本のヤーン、例えば、20から200本のヤーンを第1の処理ゾーン4a中で同時に処理し得る。第1の処理ゾーン4aは、内周壁5と、外周壁7との間に存在する。処理チャンバー4は、内周壁5および外周壁7により半径方向で画定される。第1のゾーン4aは、処理チャンバーの長手方向軸に垂直の断面で見た場合、環形状である。図1に示す例では、第1のゾーン4aは、処理チャンバーの長手方向軸に垂直の断面で見た場合、通常、円形状である。それにもかかわらず、第1ゾーンが、処理チャンバーの長手方向軸に垂直の断面として認められるいくつかの他の形状、例えば、一般的楕円形または多角形の、例えば、直線で囲まれたまたは正方形の形状を有することは、本発明の範囲を超えるものではないであろう。ヤーン2は、第1のゾーン4aで円周方向に分布する。第1のゾーン4aの円周に沿ったこのようなヤーン2の分布は、処理ゾーンの直径に沿って分布するヤーンと比べて、単位時間に処理されるヤーンの数を増やすように有利に作用する。装置1はまた、第1の処理気相10aを、内周壁5中に存在する複数の入口オリフィス7aを通って、第1のゾーン4aに注入するように構成された第1の注入装置(図示せず)を含む。示した例では、それぞれの入口オリフィス7aは、内周壁5中に存在する。装置1はまた、残留する第1の気相11aを第1のゾーン4aから外周壁7中に存在する複数の出口オリフィス8aを通って除去するように構成された第1の除去装置(図示せず)を含む。示した例では、それぞれの出口オリフィス8aは、外周壁7中に存在する。第1の除去装置は、残留する第1の気相を処理チャンバーから除去するように構成される。残留する第1の気相を除去するために、それぞれの出口オリフィス8aは、真空ポンプ(図示せず)などの吸引手段と連通している。それぞれの入口オリフィス7aおよび出口オリフィス8aは、処理チャンバーの長手方向軸に垂直の共通の平面中に位置している(この平面は、図1の断面および図2の平面Pに相当する)。さらに、入口オリフィス7aおよび出口オリフィス8aは、処理チャンバーの円周方向Cに沿ってずれている。さらに正確には、図1の例は、それぞれの出口オリフィス8aは、円周方向Cに沿った2個の連続した入口オリフィス7aの間に配置される。換言すれば、ゾーン4a通って円周方向Cに沿って移動すると、入口オリフィス7aおよび出口オリフィス8aが交替する、すなわち、入口オリフィス7aを通過し、次に出口オリフィス8aを通過し、次に入口オリフィス7a通過し、などと交互に通過する。さらに、示した例では、入口オリフィス7aおよび出口オリフィス8aは、円周方向Cに沿って均一に分布する。図1は、第1のゾーン4a中の第1の気相の進路を示す(進路Tと呼ぶ)。出口オリフィス8aを通って吸引が起こるので、第1のゾーン4aが処理チャンバーの長手方向軸に垂直の断面で眺める場合、第1の気相は、第1のゾーン4a中の環に沿って存在する。この第1の気相の進路は、第1のゾーン4aで環状に配置されたヤーンを均一に処理するように機能する。
【0041】
2個の連続した入口オリフィス7aの間の円周方向Cに沿った角度差αは、15°以上であってよい。角度差αは、90°以下であってよく、特に、この角度差は15°から90°の範囲にあってよい。示した例では、この角度差は、実質的に90°である。入口オリフィス7aの数は、4個以上であってよい。入口オリフィス7aの数は、25個以下であってよく、例えば、4から25個の範囲にあってよい。内周壁5と外周壁7との間の距離dは、0.02メートル(m)以上であってよい。距離dは、0.1m以下であってよく、例えば、0.02mから0.1mの範囲にあってよい。距離dは、処理チャンバーの長手方向軸に垂直の断面に測定される。
【0042】
2個の連続した出口オリフィス8aの間の円周方向Cに沿った角度差αは、15°以上であってよい。角度差αは、180°以下であってよく、特に、この角度差は15°から180°の範囲にあってよい。示した例では、この角度差は、実質的に90°である。出口オリフィス8aの数と、入口オリフィス7aの数との間の比率は、0.5から1の範囲にあってよい。種々の処理されるヤーン間で特に均一なコーティングを得るためには、この比率が1に等しいのが有利である。出口オリフィス8aの数は、2個以上であってよい。出口オリフィス8aの数は、25個以下であってよく、例えば、2から25個の範囲にあってよい。入口オリフィス7aと、連続した出口オリフィス8aの間の円周方向Cに沿った角度差αは、7.5°以上であってよい。角度差αは、135°以下であってよく、特に、この角度差は7.5°から135°の範囲にあってよい。それと反対の言及がない限り、2個のオリフィス間の角度差は、これら2個のオリフィスの中心間の角度差に該当する。
【0043】
図示していない変形形態では、入口オリフィスが、外周壁中に存在し、出口オリフィスが、内周壁中に存在してもよい。特に入口オリフィスおよび出口オリフィスの相対的配置の観点、および角度差の観点から、上述の性質は、この実施形態にも同様に適用可能である。図示していない変形形態では、単一の入口オリフィスおよび例えば、入口オリフィスの位置の反対側の位置に配置された単一の出口オリフィスを備えることが可能である。
【0044】
処理チャンバー4は、第1の入口端部15aと第2の入口端部15bとの間で、長手方向軸Xに沿って伸びる(図2参照)。図2はまた、長手方向軸Xに垂直な平面Pを示し、この平面内に、入口および出口オリフィス7aおよび8aが位置する。
【0045】
例えば、処理チャンバー4は、0.5m以上の長さのlとしてよく、例えば、0.5mから5mの範囲にある。処理チャンバー4の長さlは、長手方向軸Xに沿って測定した、入口端部15aと出口端部15bとの間の距離に一致する。第1の処理ゾーン4aは、長手方向軸Xに沿って測定した長さlであってよく、これは、0.01m以上であり、例えば、0.01mから0.2mの範囲にある。
【0046】
さらに、装置1は、コンベヤーシステム6を含む。これは、示した例では、複数のプーリー6aおよび6bを含む。第1セットのプーリー6aは、入口端部15aに対面する位置にあり、第2セットのプーリー6bは、出口端部15bに対面する位置にある。第1と第2の一連のプーリー6aおよび6bは、長手方向軸Xに沿って環状に配置される。ヤーン2は、プーリー6aと6bとの間で張力をかけられ、そのヤーンは、入口および出口端部15aと15bとの間で張力をかけられる。コンベヤーシステム6は、コンベヤー軸Yに沿って第1のゾーン4aを通りヤーン2を処理チャンバー4に送るように構成される。示した例では、コンベヤー軸Yは、長手方向軸Xに平行である。図2の例では、コンベヤー軸Yは、直線として示されている。コンベヤーシステム6は、処理チャンバー4の全長lを通りヤーン2を送るように構成される。内周および外周壁5および7は両方共処理チャンバー4の長手方向軸Xに沿って伸びる。コンベヤーシステム6は、ヤーン2を、内周壁5と外周壁7との間を通って送るように構成される。
【0047】
処理チャンバー4はまた、図2に示すように、第1の処理ゾーン4aから長手方向軸Xに沿って、およびコンベヤー軸Yに沿って、ずれている第2の処理ゾーン4bを画定し得る。第2の処理ゾーン4bは、入口オリフィス(単一または複数)および出口オリフィス(単一または複数)8bの位置設定の観点から、第1の処理ゾーン4aと同じ特性を示す。この第2の処理ゾーン4bの存在は任意である。チャンバー4が第2の処理ゾーン4bを画定する場合、装置1はまた、第2の処理気相を少なくとも1個の入口オリフィスを通って第2の処理ゾーン4bに注入するように構成された第2の注入装置を備え得る。この場合、第2の処理気相は、第1の処理気相とは異なる。さらに、この構成では、装置1はまた、少なくとも1個の第2の出口オリフィス8bを通って残留する第2の気相11bを第2のゾーン4bから除去するように構成された第2の除去装置も含む。第2のゾーン4bに開口している入口オリフィス(単一または複数)および出口オリフィス(単一または複数)は、長手方向軸Xに垂直の共通の平面中に位置し、それらは処理チャンバーの円周方向に沿ってずれている。コンベヤーシステム6により送られる際に、ヤーン2は第1のゾーン4aを通過し、その後、第2のゾーン4bを通過する。第2の処理ゾーン4bは、長手方向軸Xに沿って測定した長さlで存在してよく、これは、0.01m以上であり、例えば、0.01mから0.2mの範囲にある。
【0048】
図2で示した例では、処理チャンバー4はまた、コンベヤー軸Yに沿って第1と第2のゾーン4aと4bとの間に位置するバリヤーゾーン4cを画定する。コンベヤーシステム6により送られる間に、ヤーン2はバリヤーゾーン4cを通過する。図2示す例では、ヤーン2がコンベヤーシステム6により送られる間に、それらのヤーンは、第1のゾーン4a、次にバリヤーゾーン4c、その後、第2のゾーン4bを次々に通過する。バリヤーゾーン4cの存在は任意である。示した例では、装置1はまた、気相10cをバリヤーゾーン4cに注入するように構成された、不活性気相(図示せず)を注入するための注入装置を含む。不活性気相10cは、少なくとも1個の不活性気相入口オリフィスを通って注入される。不活性気相10cは、少なくとも1個の不活性気相除去オリフィス8cを通って不活性気相除去装置(図示せず)を介してバリヤーゾーン4cから、および処理チャンバー4から除去される。不活性気相入口および出口オリフィスの配置は、第1と第2のゾーンでの入口および出口オリフィスの配置と同じであってよい。例えば、不活性気相は、N2および/またはアルゴン(Ar)を含んでよい。バリヤーゾーン中に存在する不活性気相は、「ガスカーテン」として機能し、第1と第2との気相の間の混合を減らすまたは回避する(これが望ましい場合)役割をする。
【0049】
図2に示す装置1の例は、2個の処理ゾーン4aおよび4bを画定する処理チャンバー4を備え、ゾーン4aと4bのそれぞれにおいて蒸着法により別々の層が形成される。このような装置1は、蒸着によりヤーン2上に2層コーティングを形成する役割をする。バリヤーゾーン4cの存在は、第1と第2の気相の混合を完全に回避する役割をし、それにより、第1と第2のゾーン4aと4bで形成される2つの層の間の明確な境界面を得ることを可能とする。
【0050】
図示していない変形形態では、処理チャンバーは、蒸着によりヤーン上に単層コーティングを形成する働きをする装置の場合のような、単一の処理ゾーンを画定する。さらなる変形形態では、処理チャンバーは、少なくとも3層からなるコーティングを行う場合のように、少なくとも3個の処理ゾーンを画定し得る。図示していない別の形態では、バリヤーゾーン4cの存在を除くことが可能である。
【0051】
図3および4は、第1の処理ゾーン4aに関連する図1および2に示す装置1の詳細を示す。また、第2の処理ゾーン4bのようなゾーンが存在する場合、同じ構造がこのゾーンにおいても存在すると理解される。図3は、装置1の、入口オリフィス7aを通る長手方向断面の部分図であり、図4は、装置1の、出口オリフィス8aを通る長手方向断面の部分図である。装置1は、蒸着を実施するための、第1の処理ゾーン4aを加熱するように構成されたヒーターシステムを備える。より正確には、ヒーターシステムはサセプター20および誘導コイル13を備える。示した例では、サセプター20は、処理チャンバー4の外側に存在し、第1のゾーン4aを取り囲む。示した例では、サセプター20は、蒸着を実施するために、第1のゾーン4aを加熱するように処理チャンバー4を画定する外周壁7を加熱する。また、内周壁5(この追加のシステムは図3と4には示していないが、このシステムは抵抗または誘導加熱を含んでもよい)に対面する追加のヒーターシステムを設置することも可能である。サセプター20は、同様に処理チャンバー4の外側に位置する誘導コイル13と誘導結合される。第1と第2の穿孔グリッド17および17’が処理チャンバー4中に存在し、それぞれのグリッドは、それぞれ複数の貫通穿孔17aおよび17’aを提供する。第1の穿孔グリッド17は、入口オリフィス7aに対面して存在し(図3参照)、第2の穿孔グリッド17’は、出口オリフィス8aに対面して存在する(図4参照)。それぞれのこれらのグリッド17および17’は、長手方向軸Xに垂直の断面で見ると環形状である。第1の穿孔グリッド17は、入口オリフィス7aと処理ゾーン4aとの間の流体流連通を可能とする役割を果たす。第2の穿孔グリッド17’は、処理ゾーン4aと出口オリフィス8aとの間の流体流連通を可能とする役割を果たす。したがって、第1の処理ゾーン4aは、第1の穿孔グリッド17により、および第2の穿孔グリッド17’により半径方向に画定される。第1のゾーン4aは、第1と第2の穿孔グリッド17と17’との間に位置する。第1の上流および下流ガスケット16aおよび16bは、第1の穿孔グリッド17と内周壁5との間に存在する。第2の上流および下流ガスケット16’aおよび16’bは、第2の穿孔グリッド17’と外周壁7との間に存在する。第1のガスケット16aおよび16bは、第1の気相10aを第1のゾーン4aの方に導く役割をする。第2のガスケット16’aおよび16’bは、残留する第1の気相11aを出口オリフィス8aの方に導く役割をする。
【0052】
蒸着コーティング法を実施する際に、第1の気相10aは、入口オリフィス7aを通って注入され、その後、蒸着が起こる第1のゾーン4a中に入るために、第1の穿孔グリッド17の穿孔17aを通って流れる。前述のように、第1のゾーン4a中に入れば、第1の気相はそのゾーン4a中の環に沿って存在する。その後、第1の気相11aは、第2の穿孔グリッド17’の穿孔17’を通って、除去されるように出口オリフィス8aの方に流れる。第1のゾーン4aは、コンベヤー軸Yに沿って第1の上流および下流ガスケット16aおよび16bにより画定される。換言すれば、第1のゾーン4aの長さlは第1の上流ガスケット16aと第1の下流ガスケット16bとの間の距離d以下であり、lと距離dは、コンベヤー軸Yに沿って測定される。
【0053】
図示していない変形形態では、サセプターは、処理チャンバー4中に存在し、第1のゾーンを横方向に画定する。このような状況下では、サセプターは複数の貫通穿孔を提供し、例えば、第2の穿孔グリッドの位置を占める。
【0054】
ヤーン2を中間相コーティングでコートするために、次の方法を実施することが可能である。ヤーン2は最初に、第1のゾーン4aを通って送られる。第1の気相10aは、第1の注入装置により最初の入口オリフィス7aを通って注入され、一方、ヤーン2は第1のゾーン4aを通って連続的に送られる。第1の気相10aによる処理は、化学蒸着により第1の気相からヤーン2上に第1の中間相コーティング層を形成する役割をし、同時に、それらのヤーンは第1のゾーン4aを通って送られる。第1の中間相コーティング層をコートされたヤーンは、その後、バリヤーゾーン4cを通過した後、コンベヤーシステム6により第2の処理ゾーン4bに送られる。この第2のゾーン4bでは、化学蒸着により第2の気相から既に第1の層をコートされたヤーン上に第2の中間相コーティング層を形成するために、第2の処理気相10bが、第2の注入装置により入口オリフィスを通って注入される。化学蒸着を実施するための気相は、形成される層のための1つまたは複数の前駆物質を含む。気相は単一ガスまたはガス混合物を含んでよい。炭素中間相コーティングが形成される場合には、気相は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタンから選択される1つまたは複数のガス状炭化水素を含んでもよい。変形形態では、気相は、セラミック材料用の気体プリカーサー、例えば、メチルトリクロロシラン(MTS)を含んでよい。所定の堆積を得るために、処理チャンバー4で加えられる圧力および温度条件と共に使用されるプリカーサー(単一または複数)の選択は、当業者の一般知識の一部である。ヤーン2は、コンベヤーシステム6により処理チャンバー4の入口の第1の端部15aと出口の第2の端部15bとの間で連続的に送られる。さらに、示した例では、ヤーン2は、処理チャンバー4を1回のみ通過する(ヤーンが第2の端部15bに達すると、第1の端部15aの方に戻ることはない)。例えば、処理チャンバー4を通るヤーンの進路の全体を通してまたは一部でヤーン2に加えられる移動速度は、毎分0.01メートル(m/分)以上であってよい。処理チャンバー4を通るヤーンの進路の全体を通してまたは一部でヤーン2に加えられる移動速度は、2m/分以下であってよく、例えば、0.01m/分から2m/分の範囲であってよい。前述のように、コンベヤーシステム6が、処理チャンバー4を通るヤーン2の移動速度を調節するための要素を含み得るのは有利である。ヤーン2の移動速度を変えることにより、使用者は、ヤーンの処理ゾーン(単一または複数)中の通過時間を調節でき、その結果、ヤーン上に形成された層(単一または複数)の厚さを調節できる。移動速度が設定されると、当業者なら、一般知識を用いて、目的の蒸着を得るために使用する気相の流速値を決定できる。例えば、第1の注入気相の流速および/または第2の注入気相の流速は、毎分0.01リットル(L/分)以上、例えば、0.01L/分から50L/分の範囲にある。
【0055】
(例)
窒化ホウ素(BN)の中間相コーティングを、図1に示すタイプの処理チャンバーの処理ゾーンを移動する複数のヤーン上に蒸着法により堆積させた。ヤーンは、炭素ヤーンまたはセラミック材料から作製されたヤーン((SiC)またはSi−C−Oヤーン、例えば、供給業者Nippon CarbonによるNicalon(登録商標)、Hi−Nicalon(登録商標)またはHi−Nicalon(登録商標)タイプSヤーン)とした。処理気相を入口オリフィス7aを通して処理ゾーンに注入し、残留気相を出口オリフィス8aを通して前記ゾーンから除去した。角度差αおよびαは36°、角度差αは18°であった。したがって、10個の入口オリフィスおよび10個の出口オリフィスが存在した。円周方向に沿った2個の連続した入口オリフィスの間の円弧の長さは、0.15mであった。外周壁7の直径は0.5m、内周壁5の直径は0.45mであった。処理ゾーンを通るヤーンの移動速度値は、毎分50ミリメートル(mm/分)とした。加熱長さ(すなわち、サセプターの長さ)は、220ミリメートル(mm)、サセプターの直径は、550mmであった。蒸着を実施するために、以下のパラメーターとした:
温度:1100℃;
α係数(NHの体積流量をBClの体積流量で除算した比率に相当):1.3;
β係数(Nの流量を、(BCl+NH)の体積流量で除算した比率に相当):1;
合計圧力:0.2キロパスカル(kPa);
通過時間 87ミリ秒(ms);および
処理持続時間:300分。
【0056】
より正確には、次の処理気相の流量とした(これらの流量は、10個全ての入口オリフィスに供給するために与えられる):
:2.02L/分;
NH:1.14L/分;
BCl:0.88L/分;
合計:4.03L/分。
【0057】
これらの処理条件は、堆積物の厚さおよびの長さの観点から見て、高度に結晶質で均一な300ナノメートル(nm)の厚さを有し、同心状の窒化ホウ素中間相コーティングを得ることを可能にした。
【0058】
用語の「...から...の範囲にある」は、上下限値を含むものと理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4