特許第6805263号(P6805263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6805263画像処理用部品形状データ作成システム及び画像処理用部品形状データ作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805263
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】画像処理用部品形状データ作成システム及び画像処理用部品形状データ作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20201214BHJP
   H05K 13/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G06T7/00 Z
   H05K13/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-546963(P2018-546963)
(86)(22)【出願日】2016年10月25日
(86)【国際出願番号】JP2016081535
(87)【国際公開番号】WO2018078714
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲浦 雄哉
【審査官】 村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−135686(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/208193(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 7/00 − 7/90
G06T 11/80
H05K 13/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装機で実装する部品を画像認識する際に使用する画像処理用部品形状データを作成する画像処理用部品形状データ作成システムにおいて、
前記画像処理用部品形状データの作成対象となる部品を撮像した部品画像を表示する表示部と、
前記表示部に表示された部品画像のうちの計測対象部分を囲むためのワイヤフレームを当該部品画像に重ねて描画すると共に作業者のドラッグ操作に応じて前記ワイヤフレームの辺の位置を移動させるワイヤフレーム描画部と、
前記部品画像のうちの前記計測対象部分の端縁位置を画像処理により検出する端縁位置検出部と、
作業者がドラッグ操作する前記ワイヤフレームの辺の位置が前記端縁位置検出部で検出した前記計測対象部分の端縁位置の所定範囲内に近付いたときに当該ワイヤフレームの辺の位置を当該計測対象部分の端縁位置に自動的に合致させる自動ドラッグ部と、
前記自動ドラッグ部によって前記ワイヤフレームの4辺が前記計測対象部分の4方向の端縁位置に自動的に合致された当該ワイヤフレームで囲まれた当該計測対象部分の形状データを計測して前記画像処理用部品形状データを作成する部品形状データ作成部と
を備え
前記端縁位置検出部は、前記部品画像のドラッグ操作方向の輝度変化に基づいて前記計測対象部分の端縁位置を検出する、画像処理用部品形状データ作成システム。
【請求項2】
前記端縁位置検出部は、前記部品画像のうちの前記ワイヤフレームの各辺を通る直線間の領域の輝度をドラッグ操作方向に延びる座標軸に投影し、その投影輝度の変化率が所定範囲を超える位置を前記計測対象部分の端縁位置として検出する、請求項に記載の画像処理用部品形状データ作成システム。
【請求項3】
前記表示部に表示する部品画像の傾きを修正する部品傾き修正部を備え、
前記ワイヤフレーム描画部は、前記部品傾き修正部で傾きが修正された部品画像に対して前記ワイヤフレームを描画する、請求項1又は2に記載の画像処理用部品形状データ作成システム。
【請求項4】
前記部品実装機の外部に設けられた画像処理用部品形状データ作成システムであって、
前記部品実装機の画像処理システムは、前記部品形状データ作成部で作成した前記画像処理用部品形状データを使用して当該部品実装機で実装する部品を画像認識する、請求項1乃至のいずれかに記載の画像処理用部品形状データ作成システム。
【請求項5】
前記部品実装機に設けられた画像処理用部品形状データ作成システムであって、
前記部品実装機で発生したエラーの原因究明時に、当該部品実装機の吸着ノズルに吸着した部品を当該部品実装機の部品認識用のカメラで撮像して、その部品画像を当該部品実装機の表示部に表示して前記画像処理用部品形状データを作成し直すことができるように構成されている、請求項1乃至のいずれかに記載の画像処理用部品形状データ作成システム。
【請求項6】
部品実装機で実装する部品を画像認識する際に使用する画像処理用部品形状データを作成する画像処理用部品形状データ作成方法において、
前記画像処理用部品形状データの作成対象となる部品を撮像した部品画像を表示する表示処理と、
前記表示処理で表示された部品画像のうちの計測対象部分を囲むためのワイヤフレームを当該部品画像に重ねて描画すると共に作業者のドラッグ操作に応じて前記ワイヤフレームの辺の位置を移動させるワイヤフレーム描画処理と、
前記部品画像のうちの前記計測対象部分の端縁位置を画像処理により検出する端縁位置検出処理と、
作業者がドラッグ操作する前記ワイヤフレームの辺の位置が前記端縁位置検出処理で検出した前記計測対象部分の端縁位置の所定範囲内に近付いたときに当該ワイヤフレームの辺の位置を当該計測対象部分の端縁位置に自動的に合致させる自動ドラッグ処理と、
前記自動ドラッグ処理によって前記ワイヤフレームの4辺が前記計測対象部分の4方向の端縁位置に自動的に合致された当該ワイヤフレームで囲まれた当該計測対象部分の形状データを計測して前記画像処理用部品形状データを作成する部品形状データ作成処理と
を含み、
前記端縁位置検出処理で、前記部品画像のドラッグ操作方向の輝度変化に基づいて前記計測対象部分の端縁位置を検出する、画像処理用部品形状データ作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品実装機で実装する部品を画像認識する際に使用する画像処理用部品形状データを作成する画像処理用部品形状データ作成システム及び画像処理用部品形状データ作成方法を開示したものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、部品実装機においては、吸着ノズルに吸着した部品をカメラで撮像して当該部品を画像認識する際に、予め作成した画像処理用部品形状データ(部品のボディ部分の寸法、リードの位置、幅、長さ、ピッチ、本数等の外観上の特徴を表すデータ)を使用して当該部品を画像認識して当該部品の吸着位置のずれ量や吸着姿勢の良否を判定するようにしている。従来より、部品実装機のユーザー側で画像処理用部品形状データを作成する場合は、部品のCADデータを利用する方法の他に、画像処理用部品形状データの作成対象となる部品をカメラで撮像して、その撮像画像を用いて画像処理用部品形状データを作成するようにしたものがある(特許文献1)。
【0003】
この種の画像処理用部品形状データ作成システムでは、カメラで撮像した部品画像のうちのどの部分を計測するかを作業者が指定する必要があり、そのために、表示装置の画面に表示された部品画像のうちの計測対象部分(例えば部品のボディ部分、リードの列等)を囲むためのワイヤフレームを当該部品画像に重ねて描画して、作業者がマウスを操作して、表示装置の画面に表示されたマウスポインタでワイヤフレームの辺の中央のサイズ変更ハンドルをクリックして、ドラッグ操作して当該ワイヤフレームの辺の位置を計測対象部分の端縁位置の方向へ移動させて両者を合致させることで当該計測対象部分の端縁位置を指定する操作を、当該ワイヤフレームの4辺について行ってから、当該ワイヤフレームの4辺で囲まれた計測対象部分の形状データ(例えば縦横の寸法等)を計測して画像処理用部品形状データを作成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−211088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、作業者がマウスのドラッグ操作でワイヤフレームの辺の位置を計測対象部分の端縁位置に正確に合致させるには、計測対象部分の端縁位置付近でマウスポインタを小刻みに動かしてワイヤフレームの辺の位置を小刻みに動かす繊細なドラッグ操作が必要となる。このような繊細なドラッグ操作は、作業者が手の疲れを感じやすく、操作性が悪いため、画像処理用部品形状データを能率良く作成できない。
【0006】
しかも、作業者によってはドラッグ操作が大雑把で、ワイヤフレームの辺の位置が計測対象部分の端縁位置から微小にずれたままドラッグ操作を完了して、当該ワイヤフレームで囲まれた領域を計測対象部分とみなして計測対象部分の形状データを計測してしまうことがあり、これが計測対象部分の形状データの計測精度を低下させて画像処理用部品形状データの作成精度を低下させる原因となっていた。この画像処理用部品形状データの作成精度低下は、部品実装機の稼働中に部品の画像認識精度を低下させて部品実装精度を低下させる原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、部品実装機で実装する部品を画像認識する際に使用する画像処理用部品形状データを作成する画像処理用部品形状データ作成システムにおいて、前記画像処理用部品形状データの作成対象となる部品を撮像した部品画像を表示する表示部と、前記表示部に表示された部品画像のうちの計測対象部分を囲むためのワイヤフレームを当該部品画像に重ねて描画すると共に作業者のドラッグ操作に応じて前記ワイヤフレームの辺の位置を移動させるワイヤフレーム描画部と、前記部品画像のうちの前記計測対象部分の端縁位置を画像処理により検出する端縁位置検出部と、作業者がドラッグ操作する前記ワイヤフレームの辺の位置が前記端縁位置検出部で検出した前記計測対象部分の端縁位置の所定範囲内に近付いたときに当該ワイヤフレームの辺の位置を当該計測対象部分の端縁位置に自動的に合致させる自動ドラッグ部と、前記自動ドラッグ部によって前記ワイヤフレームの4辺が前記計測対象部分の4方向の端縁位置に自動的に合致された当該ワイヤフレームで囲まれた当該計測対象部分の形状データを計測して前記画像処理用部品形状データを作成する部品形状データ作成部とを備え、前記端縁位置検出部は、前記部品画像のドラッグ操作方向の輝度変化に基づいて前記計測対象部分の端縁位置を検出するようにしたのである。
【0008】
この構成では、部品画像のうちの計測対象部分の端縁位置を画像処理により検出し、作業者がドラッグ操作するワイヤフレームの辺の位置が前記端縁位置検出部で検出した計測対象部分の端縁位置の所定範囲内に近付いたときに、自動ドラッグ部によってワイヤフレームの辺の位置を当該計測対象部分の端縁位置に自動的に合致させるようにしているため、作業者が比較的大雑把にドラッグ操作しても、ワイヤフレームの辺の位置を計測対象部分の端縁位置に正確に合致させることができる。これにより、作業者のドラッグ操作の操作性を改善できて、画像処理用部品形状データを能率良く作成できると共に、ワイヤフレームを用いた計測対象部分の形状データの計測精度を向上させることができて、画像処理用部品形状データの作成精度を向上させることができる。
【0009】
この場合、前記端縁位置検出部は、部品画像のドラッグ操作方向の輝度変化を検出して、その輝度変化が大きい位置を前記計測対象部分の端縁位置として検出するようにしても良く、具体的には、部品画像のうちのワイヤフレームの各辺を通る直線間の矩形領域の輝度をドラッグ操作方向に延びる座標軸に投影し、その投影輝度の変化率が所定範囲を超える位置を前記計測対象部分の端縁位置として検出するようにしても良い。このようにすれば、例えば、部品のボディ部分の端縁位置を検出する場合に、そのボディ部分に文字や記号が付されていても、その文字や記号をボディ部分の端縁と誤認することを防止できる。
【0010】
ところで、表示部に部品画像が傾きなく表示されるとは限らず、部品画像が傾いて表示される可能性もあるが、部品画像が傾いた状態では、ワイヤフレームの4辺を部品画像の計測対象部分の4方向の端縁に正確に合致させることができず、計測対象部分の形状データの計測精度が低下する。
【0011】
この対策として、表示部に表示する部品画像の傾きを修正する部品傾き修正部を備え、前記ワイヤフレーム描画部は、前記部品傾き修正部で傾きが修正された部品画像に対してワイヤフレームを描画するようにすると良い。このようにすれば、表示部に表示する部品画像に傾きがある場合でも、その傾きを修正して、ワイヤフレームの4辺を計測対象部分の4方向の端縁位置に正確に合致させることができ、計測対象部分の形状データを精度良く計測できる。
【0012】
この画像処理用部品形状データ作成システムは、部品実装機の外部に設けても良いし、部品実装機に搭載しても良い。
【0013】
この画像処理用部品形状データ作成システムを部品実装機の外部に設ける場合は、部品実装機の画像処理システムは、前記部品形状データ作成部で作成した画像処理用部品形状データを使用して当該部品実装機で実装する部品を画像認識するようにすれば良い。
【0014】
一方、この画像処理用部品形状データ作成システムを部品実装機に搭載する場合は、部品実装機で発生したエラーの原因究明時に、当該部品実装機の吸着ノズルに吸着した部品を当該部品実装機の部品認識用のカメラで撮像して、その部品画像を当該部品実装機の表示部に表示して前記画像処理用部品形状データを作成し直すようにしても良い。このようにすれば、部品実装機で発生したエラーの原因が画像処理用部品形状データのミスマッチである場合に、当該部品実装機の画像処理システムに適合した画像処理用部品形状データに修正することができ、部品実装機のエラーの発生頻度を低減できると共に、部品の画像認識精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は一実施例の画像処理用部品形状データ作成システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は部品画像とワイヤフレームの表示例を示す図である。
図3図3は部品画像のうちのワイヤフレームの上下2辺を通る直線間の矩形領域の輝度をX座標軸に投影して求めた投影輝度の変化例を示すグラフである。
図4図4はX座標軸上の投影輝度の変化率の一例を示すグラフである。
図5図5は画像処理用部品形状データ作成プログラムの前半部の処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は画像処理用部品形状データ作成プログラムの後半部の処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は計測対象部分端縁位置検出プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施例を説明する。
図1に示すように、画像処理用部品形状データ作成システムは、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ11と、画像処理用部品形状データの作成対象となる部品を撮像するカメラ12と、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置13と、液晶ディスプレイ、CRT等の表示装置14(表示部)と、後述する画像処理用部品形状データを作成する際に実行する図5乃至図7の各プログラム及び作成した画像処理用部品形状データ等の各種データを記憶する記憶装置15とを備えた構成となっている。この記憶装置15は、電源オフ時でも記憶データを保持する書き換え可能な不揮発性の記憶媒体(例えばハードディスク装置等)を用いて構成されている。
【0017】
本実施例の画像処理用部品形状データ作成システムのコンピュータ11は、図示はしないが、部品実装機の外部(部品実装ラインの外部)に設けられ、ネットワークを介して部品実装ラインの生産管理コンピュータや各部品実装機に対して通信可能に接続されている。
【0018】
コンピュータ11は、後述する図5及び図6の画像処理用部品形状データ作成プログラムを実行することで、表示装置14に表示する部品画像の傾きを修正する「部品傾き修正部」として機能すると共に、表示装置14に表示された部品画像のうちの計測対象部分Pを囲むためのワイヤフレームW(図2参照)を当該部品画像に重ねて描画し且つ作業者のドラッグ操作に応じてワイヤフレームWの辺の位置を移動させる「ワイヤフレーム描画部」としても機能する。
【0019】
更に、コンピュータ11は、後述する図7の計測対象部分端縁位置検出プログラムを実行することで、部品画像のうちの計測対象部分Pの端縁位置を画像処理により検出する「端縁位置検出部」として機能する。更に、コンピュータ11は、後述する図5及び図6の画像処理用部品形状データ作成プログラムによって、作業者がドラッグ操作するワイヤフレームWの辺の位置が画像処理により検出した計測対象部分Pの端縁位置の所定範囲内に近付いたときに当該ワイヤフレームWの辺の位置を当該計測対象部分Pの端縁位置に自動的に合致させる「自動ドラッグ部」として機能すると共に、この自動ドラッグ処理によりワイヤフレームWの4辺が計測対象部分Pの4方向の端縁位置に自動的に合致された当該ワイヤフレームWで囲まれた当該計測対象部分Pの形状データを計測して画像処理用部品形状データを作成する「部品形状データ作成部」としても機能する。
【0020】
以下、コンピュータ11が後述する図5乃至図7の各プログラムを実行することで実現される各機能(1)〜(5)について説明する。
【0021】
(1)部品傾き修正部としての機能
画像処理用部品形状データの作成対象となる部品の画像を表示装置14に表示する際に、部品画像が傾きなく表示されるとは限らず、部品画像が傾いて表示される可能性もあるが、部品画像が傾いた状態では、表示画面のX座標軸とY座標軸に平行に表示される長方形のワイヤフレームWの4辺を部品画像の計測対象部分P(図2の表示例ではボディ部分)の4方向の端縁に正確に合致させることができず、計測対象部分Pの形状データの計測精度が低下する。
【0022】
そこで、表示装置14に部品画像が傾いて表示されている場合は、作業者がキーボード、マウス等の入力装置13を操作して、エディタ(画像編集ソフト)の傾き修正機能を使用して、部品画像のボディ部分Pの上下両辺と左右両辺がそれぞれX座標軸とY座標軸と平行になるように部品画像の傾きを修正して傾き角度を0°とする。
【0023】
尚、表示装置14に表示する部品画像は、カメラ12で撮像した部品画像のみに限定されず、別の場所で撮像した部品画像のファイルをコンピュータ11を取り込んで表示装置14に表示するようにしても良い。
【0024】
(2)ワイヤフレーム描画部としての機能
図2に示すように、表示装置14に表示された部品画像のうちの計測対象部分Pを囲むためのワイヤフレームWを当該部品画像に重ねて描画する。そして、作業者がマウス等の入力装置13を操作して、ワイヤフレームWの辺の中央のサイズ変更ハンドルHをマウスポインタMでクリックして掴み、その状態でマウスポインタMを計測対象部分Pの端縁位置に近付ける方向(図2の表示例では左方向)に移動させるドラッグ操作を行う。これにより、作業者のドラッグ操作に応じてワイヤフレームWの当該辺の位置を計測対象部分Pの端縁位置に近付ける方向に移動させる。作業者は、このドラッグ操作をワイヤフレームWの4辺について1辺ずつ行うことで、ワイヤフレームWのサイズと位置を調整する。
【0025】
(3)端縁位置検出部としての機能
部品画像のうちの計測対象部分Pの端縁位置を検出するために、部品画像のドラッグ操作方向の輝度変化を検出して、その輝度変化が大きい位置を計測対象部分Pの端縁位置として検出する。例えば、計測対象部分Pの色が「黒」でその周囲の背景色が「白」である場合(又はその逆の場合)には、ドラッグ操作方向の黒色と白色の境界線を輝度変化により検出して計測対象部分Pの端縁位置を検出する。
【0026】
本実施例では、計測対象部分Pの端縁位置の検出精度を向上させるために、部品画像のうちのワイヤフレームWの各辺を通る直線間の矩形領域の輝度をドラッグ操作方向に延びる座標軸に投影する。図2の表示例では、ドラッグ操作方向がX方向(左右方向)であるため、ワイヤフレームWの上下2辺を通る直線間の矩形領域の輝度をX座標軸に投影して、図3に示すようなX方向の投影輝度の変化を求める。ここで、「矩形領域の輝度をX座標軸に投影する」とは、「矩形領域の各画素の輝度をX座標毎に積算する」の意味である。
【0027】
ドラッグ操作方向がY方向(上下方向)である場合は、ワイヤフレームWの左右2辺を通る直線間の矩形領域の輝度をY座標軸に投影して(矩形領域の各画素の輝度をY座標毎に積算して)、Y方向の投影輝度の変化を求める。
【0028】
このように、ワイヤフレームWの各辺を通る直線間の矩形領域の輝度をドラッグ操作方向に延びる座標軸に投影すれば、例えば、部品のボディ部分Pの端縁位置を検出する場合に、そのボディ部分Pに文字や記号が付されていても、その文字や記号をボディ部分Pの端縁と誤認することを防止できる。
【0029】
更に、本実施例では、X,Y座標軸上の投影輝度の変化が大きい位置を検出しやすくするために、図4に示すように、X座標軸上の投影輝度の変化率(=投影輝度/ΔX)を算出して、X座標軸上の投影輝度の変化率が所定範囲を超える位置(ピーク位置)を記計測対象部分PのX方向の端縁位置として検出する。同様に、Y座標軸上の投影輝度の変化率(=投影輝度/ΔY)を算出して、Y座標軸上の投影輝度の変化率が所定範囲を超える位置(ピーク位置)を記計測対象部分PのY方向の端縁位置として検出する。
【0030】
尚、計測対象部分Pの端縁位置の検出は、上述した方法に限定されず、画像処理により端縁位置を検出する様々な方法を使用することが可能である。
【0031】
(4)自動ドラッグ部としての機能
作業者がドラッグ操作するワイヤフレームWの辺の位置が、投影輝度の変化率のピーク位置により検出した計測対象部分Pの端縁位置の所定範囲内に近付いたときに、当該ワイヤフレームWの辺の位置を当該計測対象部分Pの端縁位置に自動的に合致させる。ここで、「検出した計測対象部分Pの端縁位置の所定範囲内」とは、具体的には、「投影輝度の変化率のピーク位置に対して±所定画素数の範囲内」の意味である。
【0032】
これにより、作業者は、ドラッグ操作によりワイヤフレームWの辺の位置を計測対象部分Pの端縁位置の所定範囲内まで移動させるだけで、ワイヤフレームWの辺の位置を当該計測対象部分Pの端縁位置に自動的に合致させることができ、ドラッグ操作が簡単になる。
【0033】
(5)部品形状データ作成部としての機能
上記自動ドラッグ処理によりワイヤフレームWの4辺が計測対象部分Pの4方向の端縁位置に自動的に合致された当該ワイヤフレームWで囲まれた当該計測対象部分Pの形状データ(例えばX方向寸法とY方向寸法等)を計測して、その形状データの計測値に基づいて画像処理用部品形状データを作成する。
【0034】
尚、計測対象部分は、ボディ部分に限定されず、例えば、リード、バンプ等の電極であっても良い。
【0035】
例えば、リードを計測対象部分とする場合は、部品の計測対象サイドのリードの列をワイヤフレームWで囲んで、各リードの長さを計測すると共に、ワイヤフレームWの辺(リード列の端)からリードピッチ分だけ離れたリード側縁をマウスポインタMで指定することで、リードピッチを計測し、更に、ワイヤフレームWの両辺間の寸法(リード列の長さ)をリードピッチで割り算することでリードの本数を求めると共に、ワイヤフレームWの位置(リード列の位置)とリードの本数とから各リードの位置を計算する。リードの幅の計測は、ワイヤフレームWの辺(リード列の端)からリードの幅分だけ離れたリード側縁をマウスポインタMで指定することで、リードの幅を計測しても良いし、ワイヤフレームWで1本のリードを囲ってリードの幅を計測しても良い。
【0036】
部品下面のバンプを計測対象部分とする場合は、バンプの形成パターン領域全体をワイヤフレームWで囲んで、上述したリードの形状データの計測と同様の方法で、バンプのピッチ、バンプ径、各バンプの位置を計測すれば良い。
【0037】
以上説明した各機能(1)〜(5)は、コンピュータ11によって図5乃至図7の各プログラムを実行することで実現される。尚、図5乃至図7の各プログラムの一部の処理をハードウエアで処理するようにしても良い。以下、図5乃至図7の各プログラムの処理を説明する。
【0038】
[画像処理用部品形状データ作成プログラム]
図5及び図6の画像処理用部品形状データ作成プログラムが起動されると、まず、ステップ101で、画像処理用部品形状データの作成対象となる部品がカメラ12の視野範囲内の撮像位置にセットされるまで待機する。その後、部品が撮像位置にセットされた時点で、ステップ102に進み、カメラ12で部品を撮像して、次のステップ103で、表示装置14に部品画像を表示する。
【0039】
この後、ステップ104に進み、表示装置14に表示した部品画像が傾いているか否かを判定して、部品画像が傾いていなければ、ステップ106へ進むが、部品画像が傾いていれば、ステップ105に進み、作業者に部品画像の傾きを修正させてから、次のステップ106へ進む。上記ステップ105の処理が部品傾き修正部としての役割を果たす。
【0040】
次のステップ106で、表示装置14に表示された部品画像のうちの計測対象部分Pを囲むためのワイヤフレームWを当該部品画像に重ねて描画する。この後、ステップ107に進み、後述する図7の計測対象部分端縁位置検出プログラムを実行することで、部品画像のうちの計測対象部分Pの端縁位置を検出する。
【0041】
この後、図6のステップ108に進み、作業者がドラッグ操作を行うまで待機する。その後、作業者がドラッグ操作を行った時点で、ステップ109に進み、作業者のドラッグ操作に応じてワイヤフレームWの辺の位置をドラッグ操作方向に移動させる。上記ステップ106及び108〜109の処理がワイヤフレーム描画部としての役割を果たす。
【0042】
そして、次のステップ110で、作業者がドラッグ操作するワイヤフレームWの辺の位置が、投影輝度の変化率のピーク位置により検出した計測対象部分Pの端縁位置の所定範囲内に近付いたか否かを判定し、ワイヤフレームWの辺の位置が計測対象部分Pの端縁位置の所定範囲内に近付いていなければ、上述したステップ108〜110の処理を繰り返す。その後、ワイヤフレームWの辺の位置が計測対象部分Pの端縁位置の所定範囲内に近付いた時点で、ステップ111に進み、当該ワイヤフレームWの辺の位置を当該計測対象部分Pの端縁位置に自動的に合致させる。上記ステップ110及び111の処理が自動ドラッグ部としての役割を果たす。
【0043】
この後、ステップ112に進み、ワイヤフレームWの4辺が全て計測対象部分Pの4方向の端縁位置に合致されたか否かを判定し、まだ、計測対象部分Pの端縁位置に合致されていないワイヤフレームWの辺が残っていれば、上記ステップ108〜112の処理を繰り返す。これにより、ワイヤフレームWの4辺が全て計測対象部分Pの4方向の端縁位置に合致された時点で、ステップ113に進み、ワイヤフレームWで囲まれた計測対象部分Pの形状データ(例えばX方向寸法とY方向寸法等)を計測して、次のステップ114で、その形状データの計測値に基づいて画像処理用部品形状データを作成して記憶装置15に記憶して、本プログラムを終了する。上記ステップ113及び114の処理が部品形状データ作成部としての役割を果たす。
【0044】
[計測対象部分端縁位置検出プログラム]
図7の計測対象部分端縁位置検出プログラムは、上述した図5及び図6の画像処理用部品形状データ作成プログラムのステップ107で実行されるサブルーチンであり、端縁位置検出部としての役割を果たす。図7のフローチャートは、計測対象部分P(ボディ部分)の4方向の端縁位置を検出する場合の処理を示している。
【0045】
本プログラムが起動されると、まず、ステップ201で、部品画像のうちのワイヤフレームWの上下2辺を通る直線間の矩形領域の輝度をX座標軸に投影して、次のステップ202で、X座標軸上の投影輝度の変化率(=投影輝度/ΔX)を算出する。この後、ステップ203に進み、X座標軸上の投影輝度の変化率が所定範囲を超える2箇所のピーク位置のX座標を計測対象部分Pの左右両側の端縁位置のX座標として検出する。
【0046】
この後、ステップ204に進み、部品画像のうちのワイヤフレームWの左右2辺を通る直線間の矩形領域の輝度をY座標軸に投影して、次のステップ205で、Y座標軸上の投影輝度の変化率(=投影輝度/ΔY)を算出する。この後、ステップ206に進み、Y座標軸上の投影輝度の変化率が所定範囲を超える2箇所のピーク位置のY座標を計測対象部分Pの上下両側の端縁位置のY座標として検出して、本プログラムを終了する。尚、ステップ201〜203の処理とステップ204〜206の処理を実行する順序は、逆であっても良い。
【0047】
本実施例の画像処理用部品形状データ作成システムで作成した画像処理用部品形状データは、部品実装ラインの生産管理コンピュータへ転送される。生産管理コンピュータは、各部品実装機で実装する部品の画像認識に使用する画像処理用部品形状データを各部品実装機に転送する。これにより、各部品実装機は、受信した画像処理用部品形状データを使用して、吸着ノズルに吸着した部品を画像認識する。
【0048】
以上説明した本実施例によれば、表示装置14に表示された部品画像のうちの計測対象部分Pの端縁位置を端縁位置検出処理により検出し、作業者がドラッグ操作するワイヤフレームWの辺の位置が端縁位置検出処理で検出した計測対象部分Pの端縁位置の所定範囲内に近付いたときに、自動ドラッグ処理によってワイヤフレームWの辺の位置を当該計測対象部分Pの端縁位置に自動的に合致させるようにしたので、作業者が比較的大雑把にドラッグ操作しても、ワイヤフレームWの辺の位置を計測対象部分Pの端縁位置に正確に合致させることができる。これにより、作業者のドラッグ操作の操作性を改善できて、画像処理用部品形状データを能率良く作成できると共に、ワイヤフレームWを用いた計測対象部分Pの形状データの計測精度を向上させることができて、画像処理用部品形状データPの作成精度を向上させることができる。
【0049】
本発明の画像処理用部品形状データ作成システムは、上記実施例に限定されず、部品実装機に搭載しても良い。この場合、部品実装機で発生したエラーの原因究明時に、当該部品実装機の吸着ノズルに吸着した部品を当該部品実装機の部品認識用のカメラで撮像して、その部品画像を当該部品実装機の表示部に表示して画像処理用部品形状データを作成し直すようにしても良い。このようにすれば、部品実装機で発生したエラーの原因が画像処理用部品形状データのミスマッチである場合に、当該部品実装機の画像処理システムに適合した画像処理用部品形状データに修正することができ、部品実装機のエラーの発生頻度を低減できると共に、部品の画像認識精度を向上できる。
【0050】
その他、本発明は、上記実施例に限定されず、例えば、計測対象部分Pの端縁位置を検出する処理(部品画像のドラッグ操作方向の輝度変化が大きい位置を検出する処理)を変更したり、ワイヤフレームWの辺のドラッグ操作方法を変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
11…コンピュータ(部品傾き修正部,ワイヤフレーム描画部,端縁位置検出部,自動ドラッグ部,部品形状データ作成部)、12…カメラ、13…入力装置、14…表示装置(表示部)
図1
図2
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図7