(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、本発明の実施の形態の説明に先立って、本発明に係る光信号伝送システムの主要構成及び作用について説明する。
【0017】
(主要構成)
本発明に係る光信号伝送システムの第1の主要構成は、受信ファイバの入射端面でのコア径をΦ2en、送信ファイバの射出端面でのコア径をΦ1ex、受光素子の受光面の径をΦpdとするとき、Φ2enをΦ1ex及びΦpdよりも大きくする。また、光コネクタは、送信ファイバから射出される信号光のNAをNA1ex、受信ファイバに入射させる信号光のNAをNA2enとするとき、NA1exをNA2enよりも大きく構成する。換言すれば、受信ファイバとして、送信ファイバ及び受光素子の受光面よりもコア径の大きなものを用い、光コネクタに配置されるレンズによって、受信ファイバに入射する信号光のNA2enを、送信ファイバから射出される信号光のNA1exより小さくすることである。
【0018】
本発明に係る光信号伝送システムの第2の主要構成は、受信ファイバの入射端面でのコア径Φ2enを送信ファイバの射出端面でのコア径Φ1ex及び受光素子の受光面の径Φpdよりも大きくする。また、光レセプタクルの受光素子には、固浸レンズ(SIL : Solid Immersion Lens )を結合することにある。換言すれば、受信ファイバとして、送信ファイバ及び受光素子の受光面よりもコア径の大きなものを用い、光レセプタクルにおいて、受光素子上に固浸レンズを接合することである。
【0019】
(作用)
先ず、第1の主要構成の作用について説明する。
光コネクタにおける受信ファイバあるいは光レセプタクルにおける受光素子のような小さい面積を、レンズを介して照明する場合、照明光の光スポットを小さく絞ろうとするとNAが大きくなり、照明光のNAを小さくしようとすると光スポットが大きくなるというトレードオフがある。このトレードオフを考慮するため、本発明では「エタンデュ」の概念を導入する。
【0020】
エタンデュとは、立体角と面積とを掛け合わせた物理量である。
図1に示すように、発光面1から射出される照明光をレンズ2に集光して受光面3に入射させる場合において、発光面1あるいは受光面3の形状が直径Dの円の場合、エタンデュEは、射出あるいは入射する照明光のNAを用いて次式(1)で示すように近似することができる。なお、
図1は、直径Dの円形の発光面1から開口数NAで照明光が射出され、その照明光がレンズ2に集光されて受光面3に入射する場合を例示している。
【0022】
エタンデュを用いると、光を無駄にすることなく効率的に照明するための条件は、
発光面1のエタンデュ≦受光面3のエタンデュ
と書き表すことができる。
これを、光信号伝達システムに適用すると、損失なく信号光が伝達する条件は、
(送信ファイバのエタンデュ)≦(受信ファイバのエタンデュ)≦(受光素子のエタンデュ)
である。
【0023】
以上の考察から、光レセプタクルにおいて、受光素子に入射する信号光のNAをNApdとするとき、NApdを小さくするための条件を導くことができる。 すなわち、
図2に示すように、光レセプタクル50において、受信ファイバ40の射出端面40exから射出される信号光を、レンズ51により集光して受光素子52の受光面52aに入射させる場合、受信ファイバ40の射出端面40exでのコア径をΦ2ex、受信ファイバ40から射出される信号光のNAをNA2exとすると、レンズの結像関係から次式(2)が成り立つ。
【0025】
また、受光面52aに入射する信号光のNApdは、上式(1)のエタンデュの近似式から、次式(3)で表される。
【0027】
上式(3)から、受信ファイバ40のエタンデュEを小さくすることによって、受光面52aに入射する信号光のNApdを小さくすることができる。
【0028】
ここで、受信ファイバ40のエタンデュは、光レセプタクル50だけではなく、送信ファイバからの信号光を受信ファイバ40に中継する光コネクタも考慮して決定する必要がある。光コネクタにおいては、信号光を損失なく伝達するために、受信ファイバ40のエタンデュを送信ファイバのエタンデュより大きくとることが必要である。しかし、受信ファイバ40のエタンデュを大きくとりすぎると、前記したように受光面52aに入射する信号光のNApdが大きくなるので、受信ファイバ40のエタンデュは適切に設定することが必要となる。
【0029】
図3は、光コネクタの概略構成を示すものである。光コネクタ30は、送信ファイバ20の射出端面20exから射出される信号光を受信ファイバ40の入射端面40enに導くレンズ31を有する。
図3において、レンズ31は、互いに凸面を向き合わせて配置される2つの平凸レンズ32及び33を有してなり、例えば平凸レンズ32及び33の間で光コネクタ30が着脱自在に結合される。光コネクタ30は、送信ファイバ20の射出端面20exから射出される信号光を平凸レンズ32で平行光とし、該平行光の信号光を平凸レンズ33で集光して受信ファイバ40の入射端面40enに入射させる。
【0030】
第1の主要構成では、
図3において、送信ファイバ20から出射される信号光のエタンデュをE
0、受信ファイバ40の入射端面40enに入射する信号光の光スポットのクリアランスをδとすると、受信ファイバ40に入射する信号光のエタンデュEは、下式(4)で表される。
【0032】
上式(4)において、エタンデュE
0は、上式(1)から、送信ファイバ20の射出端面20exでのコア径Φ1ex、送信ファイバ20から射出される信号光のNA1exを用いて下式(5)で表される。
【0034】
また、上式(4)において、受信ファイバ40の入射端面40enに入射する信号光のNA2enは、光コネクタ30の結像倍率をβconとすると、下式(6)で表される。
【0036】
つまり、本発明に係る光信号伝送システムの第1の主要構成では、送信ファイバのコア径よりも、受信ファイバのコア径を太くするトレードオフとして、受信ファイバへの信号光の入射光束のNA2enを小さくとることによって、受信ファイバのエタンデュが大きくなり過ぎないようにしている。換言すれば、従来の光コネクタにおいては、送信ファイバと受信ファイバのレンズによる結像関係が縮小倍率になっているのに対し、第1の主要構成では拡大倍率のレンズ配置としている。これにより、受信ファイバとしてNAの小さいものを使うことが可能となり、結果として、光レセプタクルにおいて受光素子に入射する光束のNApdを小さくすることが可能となる。
【0037】
次に、上述した第2の主要構成の作用について説明する。
図28に示した光信号伝送システムでは、信号光が送信ファイバ120から受信ファイバ140を経て受光素子152に到達する順に漸次エタンデュが拡大し、最終的に光レセプタクル150のレンズ151から受光素子152に入射する光線の最大入射角が過剰に大きくなる。これは、受光素子152に大きなエタンデュを持たせる要求がある一方、受光素子152の径を小さくするトレードオフとして、NAを大きく取らざるを得ないことによる。
【0038】
そこで、本発明に係る光信号伝送システムの第2の主要構成では、固浸レンズを受光素子に接合することによって、例えば受光面を固浸レンズの媒質に埋め込む。これにより、入射する信号光の最大入射角を大きくすることなく、受光素子のNAを大きくする。換言すれば、固浸レンズは受光素子のエタンデュを拡大するように作用する。
【0039】
固浸レンズは、例えば
図4Aに示すような半球レンズ56、又は、
図4Bに示すような超半球レンズ57が使用可能である。
図4Aにおいて、半球レンズ56は、球面からの入射光を球心に集光する。したがって、受光素子52は、半球レンズ56の球心に受光面52aが位置するように、半球レンズ56の平面に接着剤等を介して接合される。また、
図4Bにおいて、超半球レンズ57は、球面に対して光束の入射点と集光点とがアプラナティック条件(球面収差及びコマ収差が生じない条件)を満たす位置関係にあり、集光点が平面に形成されている。したがって、受光素子52は、超半球レンズ57の集光点に受光面52aが位置するように、超半球レンズ57の平面に接着剤等を介して接合される。
【0040】
図4Aに示す半球レンズ56の場合、半球レンズ56の球心に向かう光線は、半球レンズ56の球面で屈折することなく、半球レンズ56の媒質中で集光する。したがって、受光素子52に入射する信号光のNApdは、空気中に対し半球レンズ56の媒質の屈折率倍になる。また、
図4Bに示す超半球レンズ57の場合、信号光は超半球レンズ57の球面で屈折して超半球レンズ57の媒質の屈折率倍の開口数で集光し、さらに超半球レンズ57の媒質中で集光する。したがって、受光素子52に入射する信号光のNApdは、空気中に対し超半球レンズ57の媒質の屈折率の2乗倍になる。
【0041】
このように、本発明に係る光信号伝送システムの第2の主要構成では、受光素子52に空気中で直接集光する場合にくらべて、固浸レンズの媒質中で集光させるほうが、NApdが大きくなるので、所望のエタンデュを得るのに、受光素子に入射する光線の最大入射角度を小さくとることができる。その結果、コア径の大きい受信ファイバの使用が可能になる。
【0042】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0043】
(第1実施の形態)
図5は、第1実施の形態に係る光信号伝送システムの要部の構成を示す図である。
図5に示す光信号伝送システムは、レーザダイオード10から発散して射出される信号光を、送信ファイバ20、光コネクタ30及び受信ファイバ40を経て光レセプタクル50に伝送するものである。
【0044】
レーザダイオード10は、送信ファイバ20の入射端面20enに結合されて、信号光を送信ファイバ20に直接入射させる。送信ファイバ20は、入射端面20enに入射される信号光を伝送して射出端面20exから光コネクタ30に射出させる。
【0045】
光コネクタ30は、
図3において説明したように、送信ファイバ20の射出端面20exから射出される信号光を受信ファイバ40の入射端面40enに導くレンズ31として、互いに凸面を向き合わせて配置される平凸レンズ32及び33を有する。平凸レンズ32は、送信ファイバ20の射出端面20exから射出される信号光を平行光として平凸レンズ33に入射させる。平凸レンズ33は、平凸レンズ32からの平行光の信号光を集光して受信ファイバ40の入射端面40enに入射させる。光コネクタ30は、平凸レンズ32と平凸レンズ33との間で着脱自在に構成される。
【0046】
受信ファイバ40は、入射端面40enに入射される信号光を伝送して射出端面40exから射出して光レセプタクル50に入射させる。光レセプタクル50は、レンズ51と受光素子52とを備え、受信ファイバ40の射出端面40exから射出される信号光を、レンズ51により集光して受光素子52に入射させる。
【0047】
本実施の形態において、送信ファイバ20は、レーザダイオード10から発散して射出される信号光を直接入射させるために、コア径をΦ1、NAをNA1とすると、Φ1及びNA1をある程度大きくとる必要がある。そのため、送信ファイバ20は、コア径Φ1が例えば50μm、NA1が0.27のマルチモードファイバで構成される。なお、送信ファイバ20は、入射端面20enでのコア径Φ1enと射出端面20exでのコア径Φ1exとが等しいコア径Φ1を有するものとする。
【0048】
受信ファイバ40は、光コネクタ30において、(送信ファイバ20のエタンデュ)≦(受信ファイバ40のエタンデュ)、を満足させる。そのため、条件1として、受信ファイバ40は、コア径をΦ2、NAをNA2とすると、50μm×0.27≦Φ2×NA2、を満たすように構成される。なお、受信ファイバ40は、入射端面40enでのコア径Φ2enと射出端面40exでのコア径Φ2exとが等しいコア径Φ2を有するものとする。
【0049】
一方、光レセプタクル50は、10Gbps〜40Gbpsの高速通信に対応させるため、受光素子52は受光面52aの口径(受光径)が例えば50μmの小口径で構成される。また、受光素子52に入射する信号光のNApdは、例えばレンズ51のNAを光学設計に無理の無い上限として例えば0.65に設定される。そのため、条件2として、光レセプタクル50は、(受信ファイバ40のエタンデュ)≦(受光素子52のエタンデュ)から、Φ2×NA2≦50μm×0.65、を満たすように構成される。
【0050】
また、光コネクタ30は、送信ファイバ20から射出される信号光のNA1exよりも、受信ファイバ40に集光される信号光のNA2enが小さくなるように構成される。したがって、条件3として、受信ファイバ40は、NA2<0.27、を満たすように構成される。
【0051】
図6は、本実施の形態において使用可能な受信ファイバ40を説明するための図である。
図6において、縦軸はNAを示し、横軸はコア径Φを示す。実線Iは、光レセプタクル50のエタンデュから決まる受信ファイバ40のNA2の上限を示す。実線IIは、光コネクタ30のエタンデュから決まる受信ファイバ40のNA2の下限を示す。破線IIIは、送信ファイバ20のNA1(=0.27)を示す。
【0052】
本実施の形態においては、
図6にハッチングを施して示す領域が、受光ファイバ40として上記の条件1〜3を満たす使用可能領域となる。
図6から、受光ファイバ40は、コア径Φ2を大きくとった場合、反比例してNA2を小さくとればよいことが判る。本実施の形態において、受信ファイバ40は、例えばコア径Φ2が150μm、NA2が0.2のマルチモードファイバで構成される。
【0053】
なお、マルチモードファイバには、コアの屈折率が中心から外側に向かって減少する分布を持つグレーデッドインデックス型とコアの屈折率が均質なステップインデックス型とがある。グレーデッドインデックス型は、コアの中心を通る光と周辺を通る光との間で伝達時間の遅延が起こらないので信号品質が良いとされている。しかし、コアの中心から外に向かってNAが漸次小さくなるため、光コネクタの受信側に用いるとアライメント誤差が無い場合でも入射光の漏れがあって、ステップインデックス型と比べて光損失が大きくなる。そのため、屋内配線のような短距離通信の用途においては、光信号の時間遅延が殆ど問題とならないため、光損失の少ないステップインデックス型が望ましい。
【0054】
次に、光コネクタ30のレンズ構成について説明する。
【0055】
図7は、光コネクタ30の概略構成図である。光コネクタ30は、上述したように平凸レンズ32及び33を有し、平凸レンズ32と平凸レンズ33との間の平行光部分で、送信側と受信側とが着脱自在に構成される。この場合、平行光となる着脱部分において、平凸レンズ32及び33の凸面にほこり等の汚れが付着すると、信号光が遮光されて光回線が維持できなくなる。そのため、平行光の光束径は、想定される汚れの大きさよりも十分大きくする必要がある。具体的には、1mm〜3mm程度が適切である。本実施の形態では、光束径を例えば3mmとしている。
【0056】
この場合、送信ファイバ20側の平凸レンズ32は、光束半径が1.5mmで、送信ファイバ20のNA1を0.27としていることから焦点距離が5.5mmとなる。
【0057】
受信ファイバ40側の平凸レンズ33は、光束半径が1.5mmで、受信ファイバ40のNA2を0.2としていることから焦点距離7.5mmとなるが、本実施の形態ではそれよりも若干長くなっている。このように、平凸レンズ33の焦点距離を若干長くすると、受信ファイバ40に集光する光束のNA2enが、受信ファイバ40のNA2より若干小さくなるので、光コネクタ30の結合時の光軸傾き誤差による受信ファイバ40への入射光漏れを減らすことが可能となる。そこで、本実施の形態では、平凸レンズ33の焦点距離を7.5mmよりも若干長い8.0mmとしている。
【0058】
これにより、光コネクタ30は、送信ファイバ20の射出端面(コア端面)20exの像を、受信ファイバ40の入射端面(コア端面)40enに1.45倍の結像倍率βconで結像させる。したがって、受信ファイバ40のコア径150μmに対して、十分小さい72μm(=送信ファイバ20のコア径Φ1(50μm)×結像倍率βcon(1.45))の光スポット径で信号光を受信ファイバ40に入射させることができる。
【0059】
平凸レンズ32及び33は、球面レンズで構成してもよいが、本実施の形態では平凸レンズ32及び33が非球面レンズで構成される。この場合、送信ファイバ20側の平凸レンズ32を、受信ファイバ40側の平凸レンズ33と同じ非球面レンズとすることができる。しかし、平凸レンズ32を平凸レンズ33と同じ非球面レンズとすると、平凸レンズ32のNAは0.1875(=光束半径1.5mm/焦点距離8.0mm)となって、送信ファイバ20のNA1(=0.27)と、1.44倍の乖離が生ずる。
【0060】
そのため、本実施の形態では、
図7に示すように、送信ファイバ20と平凸レンズ32との間に、さらにアプラナティックレンズ34を配置してNAの整合を図っている。ここで、アプラナティックレンズ34は、収差に影響を与えることなく平凸レンズ32のNAをレンズの材質の屈折率倍に拡大する作用がある。したがって、アプラナティックレンズ34のレンズ材質として屈折率1.45の石英を用いれば、平凸レンズ32のNAと、送信ファイバ20のNA1とをほぼ合致させることが可能となる。
【0061】
このように、平凸レンズ32及び33を非球面レンズで構成すれば、収差による光スポットのボケを小さくできるので、受信ファイバ40の入射端面40enへの信号光の集光状態を向上できる。したがって、受信ファイバ40のコア径と入射光スポット径とのクリアランスを大きくできる利点がある。
【0062】
表1は、
図7に示した光コネクタ30のレンズデータを示すものである。表1において、送信側コアは送信ファイバ20の射出端面20exを表し、受信側コアは受信ファイバ40の入射端面40enを表し、屈折率は測定波長850nmでの測定値である。曲率半径及び面間隔の単位は、mmである。また、
図8に表1の面番号を示す。
【0064】
表1において、面4及び面5の非球面形状(ASP)は、zを光の進行方向を正とした光軸とし、yを光軸と直交する方向として、下式(7)で表される。ただし、式(7)において、Rは近軸曲率半径、kは円錐係数、A
4、A
6、A
8、A
10は、それぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。また、式(7)に基づく面4及び面5の各非球面係数を表2に示す。表2において、「E−n」(nは整数)は、「10
-n」を示している。
【0067】
上述したように、本実施の形態では、光コネクタ30において、送信ファイバ20の射出端面20exの像を、受信ファイバ40の入射端面40enに拡大して結像させるが、その拡大倍率は、市販の光ファイバの太さの組合せから4以下となる。したがって、光コネクタ30の結像倍率βconは、1.1<|βcon|<3.9、とするのがよい。
【0068】
次に、光レセプタクル50の構成について説明する。
【0069】
図9は、光レセプタクル50の光学系の構成を示す図である。
図9に示す光レセプタクル50は、受信ファイバ40の射出端面40exから射出される信号光を受光素子52の受光面52aに導くレンズ51として、受信ファイバ40側に配置されるコリメートレンズ53と、受光素子52側に配置される集光レンズ54とを有する。これにより、光レセプタクル50は、受信ファイバ40の射出端面(コア端面)40exの像を受光素子52の受光面52a上に結像倍率βrecで縮小結像する。コリメートレンズ53及び集光レンズ54は、例えば非球面レンズで構成することができる。
【0070】
表3は、
図9に示した光レセプタクル50のレンズデータを示すものである。表3において、受信側コアは受信ファイバ40の射出端面40exを表し、受光素子は受光面52aを表し、屈折率は測定波長850nmでの測定値である。曲率半径及び面間隔の単位は、mmである。また、
図10に表3の面番号を示す。
【0072】
表3において、面2の非球面形状(ASP)は、上式(7)で表される。式(7)に基づく面2の各非球面係数を表4に示す。表4から明らかなように、コリメートレンズ53は、
図7の平凸レンズ32及び33と同じである。
【0074】
また、表3において、面3の非球面形状(ASP)は、上式(7)で表される。式(7)に基づく面3の各非球面係数を表5に示す。
【0076】
図11は、
図9に示した光レセプタクル50の要部構成を示す断面図である。光レセプタクル50は、受光素子52を保持する受光素子ホルダ60と、集光レンズ54を保持する第1レンズホルダ61と、コリメートレンズ53を保持する第2レンズホルダ62と、FCレセプタクル63とを有する。受光素子ホルダ60、第1レンズホルダ61、第2レンズホルダ62及びFCレセプタクル63は、それぞれ中空状に形成される。
【0077】
受光素子52は、フランジを有するCANパッケージタイプからなり、受光面52aが露出された状態で、フランジを介して受光素子ホルダ60の一端部に装着される。第1レンズホルダ61は、集光レンズ54を保持した状態で、受光素子ホルダ60の内周面に光軸方向に位置調整可能に装着される。受光素子ホルダ60は、第1レンズホルダ61の位置調整後、コリメートレンズ53が保持された第2レンズホルダ62の一端部内周面に装着される。FCレセプタクル63は、第2レンズホルダ62の他端部外周面に光軸方向に位置調整可能に装着される。
【0078】
FCレセプタクル63には、
図11に外観図で示すように受信ファイバ40の射出端部に装着されたFCコネクタ41が着脱自在に装着される。そして、FCコネクタ41がFCレセプタクル63に装着された状態で、受信ファイバ40から信号光が射出されると、該信号光がコリメートレンズ53及び集光レンズ54を経て受光素子52の受光面52aに集光される。
【0079】
本実施の形態による光レセプタクル50によると、コリメートレンズ53の焦点距離は8.03mm、集光レンズ54の焦点距離は2.75mmとなるので、結像倍率βrecは0.34(=2.75mm/8.03mm)となる。したがって、受光面52aに形成される信号光の光スポット径は51μm(=受信ファイバ40のコア径Φ2(150μm)×結像倍率βrec(0.34))となり、受光素子52の受光面52aの受光径Φpd(=50μm)にほぼ合致させることができる。
【0080】
また、受光素子52に集光する信号光のNApdは、0.58(=受信ファイバ40のNA2(0.2)/結像倍率βrec(0.34))となり、当初の設計目標であった0.65よりも小さなNApdで信号光を受光素子52に入射させることができる。なお、この場合の光レセプタクル50における軸上の透過波面収差は、rms0.0015λ(ただし、λ=850nm)となり、収差が十分小さく、光スポットの集光状態は良好となる。
【0081】
上述したように、本実施の形態では、光レセプタクル50において、受信ファイバ40の射出端面40exの像を受光素子52の受光面52a上に縮小して結像させる。したがって、光レセプタクル50の結像倍率βrecは、0.1<βrec<1、とするとよい。
【0082】
本実施の形態に係る光信号伝送システムによると、送信ファイバ20よりも太いコア径の受信ファイバ40を用いている。これにより、光コネクタ30において、光スポットと受光ファイバ40のコアの位置ずれの許容量を
図28の構成と比較して大きくできる。したがって、光レセプタクル50においては、受光素子52に入射する信号光のNApdを一般に用いられているレンズで効率的に小さくできるので、受光素子の周波数応答速度を維持しながら信号光を小径の受光面52上に良好な集光状態で入射させることができる。
【0083】
また、光コネクタ30は、互いに凸面を向き合わせて配置される平凸レンズ32と平凸レンズ33との間で着脱自在に構成されるので、光コネクタ30が分離された状態では平凸レンズ32及び33の凸面が露出することになる。したがって、平凸レンズ32及び33の凸面に水滴等が付着しにくくなるので、信号光の伝送の障害となる汚れ等を未然に防止することが可能となる。
【0084】
(第2実施の形態)
第2実施の形態に係る光信号伝送システムは、第1実施の形態において光コネクタ30を構成する平凸レンズ32及び33が球面レンズで構成される。この場合、単に
図7に示した構成において、アプラナティックレンズ34を省略して、平凸レンズ32及び33を球面レンズで構成すると、設計によっては収差により受光ファイバ40の入射端面40enに形成される信号光の光スポットがぼける場合がある。この収差を低減するためには、送受信の光ファイバのNAを小さくすること(例えば、NAが0.15以下)が必要であるが、マルチモードファイバは、光を入射しやすくする都合からコア径及びNAが大きいのが通常である。
【0085】
本実施の形態においては、光コネクタ30が
図12に示すように構成される。
図12に示す光コネクタ30は、送信ファイバ20の射出端面20exから射出される信号光を受信ファイバ40の入射端面40enに導くレンズ31として、球面レンズからなる平凸レンズ32及び33の他に、送信ファイバ20の射出端面20exに接合した固浸レンズ35と、受信ファイバ40の入射端面40enに接合した固浸レンズ36とを有する。すなわち、本実施の形態においては、送信ファイバ20に固浸レンズ35を、受信ファイバ40に固浸レンズ36をそれぞれ接合することにより、送信ファイバ20及び受信ファイバ40の見かけのNAを小さくしている。
【0086】
送信ファイバ20及び受信ファイバ40は、例えばガラス製の光ファイバからなる。この場合、コアは一般に石英で形成される。したがって、
図13Aに示すように、ガラス製の光ファイバ80のコア80aを伝送した光線は、光ファイバ80の端面から屈折して射出される。この場合の光ファイバ80のNAを、便宜上、NA
0とする。
【0087】
これに対し、
図13Bに示すように、光ファイバ80の射出端面に、固浸レンズとして例えばコア80aと同じ材質の屈折率nからなる半球レンズ81を接合すると、コア80aを伝送した光線は、屈折せずに空中に射出されて、光ファイバ80の見掛けのNAは1/nと小さくなる。また、
図13Cに示すように、光ファイバ80の射出端面に、固浸レンズとして例えばコア80aと同じ材質の屈折率nからなる超半球レンズ82を接合すると、光ファイバ80の見掛けのNAは1/n
2とさらに小さくなる。
【0088】
本実施の形態では、送信ファイバ20のNA1が0.27、受信ファイバ40のNA2が0.2である。そのため、NAが大きい送信ファイバ20の射出端面20exに接合する固浸レンズ35は超半球レンズで構成され、NAが小さい受信ファイバ40の入射端面40enに接合する固浸レンズ36は半球レンズで構成される。
【0089】
したがって、固浸レンズ35及び36を例えばBK7で構成すると、BK7の測定波長850nmでの屈折率は1.509であるから、送信ファイバ20の見かけのNAは0.12となる。また、受信ファイバ40の見かけのNAは0.13となる。これにより、送信ファイバ20及び受信ファイバ40の見かけ上のNAをそれぞれ小さくできると同時に、ほぼ同じにできる。
【0090】
その結果、平凸レンズ32及び33が球面レンズで構成されても、収差を十分小さくできるので、送信ファイバ20の射出端面20exから射出される信号光を、受光ファイバ40の入射端面40enにボケのない光スポットとして集光することができる。また、送信ファイバ20及び受信ファイバ40の見かけ上のNAをほぼ同じにできることから、平凸レンズ32及び33として同じレンズを使用することができる。
【0091】
本実施の形態では、平凸レンズ32及び33として、焦点距離が8.13mmの同じ平凸レンズが使用される。また、超半球の固浸レンズ35及び半球の固浸レンズ36は、それぞれの球面の曲率半径が同じである。固浸レンズは、ボールレンズの一部を平面に加工することで製作されることから、このように固浸レンズ35及び36の球面の曲率半径を同じとすることで、固浸レンズ35及び36の素材となるボールレンズを共通とすることができ、コストダウンが図れる利点がある。
【0092】
表6は、
図12に示した光コネクタ30のレンズデータを示すものである。表6において、送信側コアは送信ファイバ20の射出端面20exを表し、受信側コアは受信ファイバ40の入射端面40enを表し、屈折率は測定波長850nmでの測定値である。曲率半径及び面間隔の単位は、mmである。また、
図14に表6の面番号を示す。
【0094】
図12に示した光コネクタ30によると、光コネクタ30にける軸上の透過波面収差は、rms0.049λ(ただし、λ=850nm)となる。この数値は”Marechalのcriterion(rms0.07λ以下を良好と見なす収差の評価基準)”を下回る。したがって、送信ファイバ20の射出端面20exから射出される信号光を、受光ファイバ40の入射端面40enに収差が十分に小さく良好な集光状態で集光することができる。
【0095】
また、受信ファイバ40側の平凸レンズ33は、第1実施の形態における非球面レンズからなる平凸レンズ33とほぼ同じ焦点距離を有するが、半球の固浸レンズ36との合成焦点距離は、5.3mm(=8.13mm/1.509)となるので、第1実施の形態の場合と比べて短くなる。したがって、
図15に示すように、光コネクタ30の結合時における送信側と受信側との光軸傾き誤差θ(°)に対して、受信ファイバ40の入射端面40enでの光スポットの位置ずれを小さくできる。
【0096】
これにより、光コネクタ30において、
図16に示すような光軸傾き誤差θ(°)に対する送受信のスループット特性を得ることができる。
図16から明らかなように、
図12に示した光コネクタ30によると、光軸傾き誤差0.5°以内であれば80%以上のスループットを得ることが可能となり、第1実施の形態の場合の光コネクタ30と比較して光軸傾き誤差を1.5倍許容することができる。
【0097】
本実施の形態に係る光信号伝送システムによると、第1実施の形態の効果に加えて、光コネクタ30のレンズ構成が、研磨にて製造可能な球面レンズで構成されるので、レンズ制作に共通部品の使用が可能となり、量産性を向上することが可能となる。また、光コネクタ30における送受信側の光軸傾き誤差に対しても耐性を有し、光軸傾き誤差によるスループットの低下を低減することが可能となる。
【0098】
さらに、光コネクタ30において、送信ファイバ20の射出端面20exに固浸レンズ35が接合され、受信ファイバ40の入射端面40enに固浸レンズ36が接合されることから、それぞれのファイバのコアを保護できる利点がある。このように、ファイバのコアを保護すれば、光回線が途切れるのを未然に防止することができ、劣悪な環境下でも安定して使用することが可能となる。したがって、通信機器において重要な信頼性をより向上することが可能となる。すなわち、ファイバのコア径は極めて小さいため、空気中に露出していると水蒸気の水滴やほこりが1つ付着しただけでも、信号光が遮光されて光回線が維持できなくなる。これに対し、本実施の形態におけるように、光コネクタ30において送信ファイバ20及び受信ファイバ40の端面に固浸レンズ35及び36がそれぞれ接合されれば、固浸レンズ35及び36がそれぞれカバーガラスの役割も果たすので、上述した効果が得られることになる。
【0099】
また、一般に、光ファイバの端面には、表面反射による光損失を低減するため、真空蒸着プロセスにて反射防止膜を施すことが行われる。しかし、光ファイバはかさばるため、あまり多くの本数を真空蒸着槽にいれることができない。そのため、蒸着処理にかかる単価は、レンズの場合に比べると割高になる。その点、本実施の形態における光コネクタ30においては、送信ファイバ20及び受信ファイバ40の端面の代わりに、固浸レンズ35及び36の球面にそれぞれ反射防止膜を施せばよいので、低コストで表面反射による光損失を低減することが可能となる。
【0100】
(第3実施の形態)
第1実施の形態で説明したように、光レセプタクル50において、受光素子52に入射する光線の最大入射角が大きくなりすぎないためには、受信ファイバ40のコア径Φ2とNA2との組合せが、
図6の使用可能領域内にあることが必要である。そのため、第1実施の形態では、例えば受信ファイバ40のコア径Φ2を150μm、NA2を0.2としている。
【0101】
第3実施の形態に係る光信号伝送システムは、第1実施の形態の構成において、受信ファイバ40が第1実施の形態の場合よりも太く、例えばコア径Φ2が200μm、NA2が0.2として構成される。それに伴って、光レセプタクル50の構成も異なる。以下、第1実施の形態と異なる点について説明する。
【0102】
受信ファイバ40のコア径Φ2を大きくすると、光コネクタ30は、第2実施の形態で説明したように光軸傾き誤差に対してさらに耐性が増すが、受信ファイバ40としては
図6の使用可能領域から外れることになる。そのため、光レセプタクル50において受光素子52に入射する信号光の最大入射角が大きくなる。具体的には、受信ファイバ40のコア径200μmを、受光素子52の受光径50μmに縮小結像するためには、縮小倍率が1/4となり、集光レンズ54のNAは0.8(=受信ファイバ40のNA2(0.2)×4)となる。
【0103】
しかし、このように大きなNAの集光レンズは一般的でなく、また、レンズ製造・組立に高精度が要求されることになる。また、この場合、受光素子52に入射する信号光の最大入射角は、53°(=sin
-10.8)となり、受光面52aに反射防止膜を施しても広角の反射防止が不十分となり戻り光が生じることになる。
【0104】
例えば、受光素子52の受光面52aが一般的な半導体であるシリコン(Si:屈折率3.6)で構成される場合、
図17に破線で示すように、入射角に対する平均反射率はほぼ30%である。また、この受光面52a上にMgO(屈折率1.7)からなる単層の反射防止膜を光路長λ/4の厚さで施しても、
図17に実線で示すように、入射角40°以上で反射率の上昇がみられ、入射角53°で5%程度の反射率になる。なお、
図17は、λが850nmの場合の反射率特性を示す。
【0105】
このような事情から、第1実施の形態における光レセプタクル50の設計指針として、受光素子52に入射する信号光のNApdを0.65以下に制限したのは妥当である。なぜなら、反射率が上昇し始める入射角40°は、NApdが0.64(=sin40°)に相当するからである。
【0106】
本実施の形態では、受信ファイバのコア径を太くしたことによって生ずる上記の課題を、光レセプタクル50において改善するものである。
【0107】
図18は、本実施の形態における光レセプタクル50の光学系の構成を示す図である。
図18に示す光レセプタクル50は、レンズ51を構成するコリメートレンズ53及び集光レンズ54の他に、受光素子52に結合して配置された固浸レンズ55を備える。受光素子52は、
図19に要部断面を示すように、受光面52a上に積層された単層の反射防止膜58を有する。反射防止膜58は、例えばTiO
2(屈折率2.3)を光路長λ/4(λ=850nm)の厚さで構成される。
【0108】
固浸レンズ55は、受光面52a上に接着剤59を介して接合される。接着剤59は、使用波長光に対して透明で屈折率が例えば1.56程度のものが使用可能である。固浸レンズ55は、
図4Aに示した半球レンズ56でもよいし、
図4Bに示した超半球レンズ57でもよいが、
図18は超半球レンズの場合を例示している。
【0109】
表7は、
図18に示した光レセプタクル50のレンズデータを示すものである。表3において、受信側コアは受信ファイバ40の射出端面40exを表し、受光素子は受光面52aを表し、屈折率は測定波長850nmでの測定値である。曲率半径及び面間隔の単位は、mmである。また、
図20に表7の面番号を示す。
【0111】
表7において、面2及び面3の非球面形状(ASP)は、上式(7)で表される。式(7)に基づく面2の各非球面係数を表8に示し、面3の各非球面係数を表9に示す。
【0114】
図21は、
図18に示した光レセプタクル50の要部の構成を示す断面図である。
図21に示す光レセプタクル50は、
図11に示した光レセプタクル50において受光素子52の構成が異なるものである。以下、異なる点について説明する。すなわち、受光素子52は、面実装基板タイプのもので、例えばフレキシブル基板70上にバンプ71を介してフリップチップ実装されている。受光素子52は、受光面52a上に反射防止膜58及び接着剤59を介して固浸レンズ55が接合された状態で、受光素子ホルダ60内に位置するように、フレキシブル基板70を介して受光素子ホルダ60の一端部に装着される。
【0115】
本実施の形態による光レセプタクル50によると、超半球の固浸レンズ55は、材質の屈折率をnとすると、集光レンズ54のNAをn
2倍に拡大する作用がある。本実施の形態においては、表7に示したように、固浸レンズ55の硝材がBK7で、屈折率が1.509であるから、NAの拡大率は2.27倍(=1.509
2)である。したがって、集光レンズ54のNAは、0.35(=0.8/2.27)でよいことになる。このようなNAのレンズは一般的であり、コリメートレンズ53とともに市販の非球面レンズで構成することが可能となる。
【0116】
また、光レセプタクル50の結像倍率βrecは、0.245となるので、受信ファイバ40のコア径200μmから射出される信号光を、49μm(=200μm×0.245)の光スポット径で受光径50μmの受光面52aに集光させることが可能となる。この場合の光レセプタクル50における光学系の軸上透過波面収差は、rms0.00058λ(ただし、λ=850nm)となり、収差が十分小さく、光スポットの集光状態は良好となる。
【0117】
また、受光面52aに入射する信号光の入射角度は、固浸レンズ55の材質の屈折率分だけ入射角が軽減されることから、軸上で最大33°(≒sin
-1(0.8/1.509))となる。そして、固浸レンズ55と受光面52aとの間に介在している接着剤59及び反射防止膜58の薄膜は、固浸レンズ55の媒質の屈折率と受光面52を形成する媒質の屈折率との中間の屈折率を有するので、媒質の屈折率差が小さい。したがって、入射角が軽減されることと相まって、反射防止膜58での反射率は、
図22に示すように0°〜33°の全入射角度に亘って0.5%以下と極めて小さくなる。その結果、光レセプタクル50での戻り光を極めて少なくすることが可能となる。
【0118】
さらに、本実施の形態において、光レセプタクル50は、受光素子52に固浸レンズ55を結合することにより、受光素子52にNAが0.8という高NAで信号光が入射しているにもかかわらず、受光素子52の位置変化に対して、光スポットの受光面52aに対する変位を小さくできる。例えば、偏心に対しては、光スポットの位置ずれ量は、固浸レンズ55の材質の屈折率をnとすると、固浸レンズ55がない場合に比べて1/n
2≒1/2でしかない。また、集光レンズ54の焦点深度は、NA
2に反比例するので、固浸レンズ55がない場合に比べてn
4≒5倍に拡大される。したがって、デフォーカスによる光スポットのボケも少なくなるので、光レセプタクル50の組立時の光学調整作業が容易になるとともに、組立後の経時変化の影響も少なくできる。
【0119】
このようにしてコア径200μmの太い受信ファイバ40を使えるようにした結果、光コネクタ30において、
図23に示すような光軸傾き誤差θ(°)に対する送受信のスループット特性を得ることができる。
図23から明らかなように、光軸傾き誤差0.8°以内であれば80%以上のスループットを得ることが可能となり、第2実施の形態の場合よりも光軸傾き誤差の耐性を向上できる。
【0120】
なお、
図18では、固浸レンズ55として超半球レンズを例示したが、半球レンズであってもよい。また、固浸レンズ55は、ガラスに限らず、例えば樹脂であってもよい。この場合は、接着剤を介することなくポッティング等によって受光素子52を樹脂に直接埋め込んでもよい。ここで、固浸レンズ55は、屈折率が例えば1.45〜2の材質で構成される。したがって、固浸レンズ55は、受光素子52のエタンデュを効果的に拡大するためには、凸のレンズ面の曲率半径をR、当該凸のレンズ面の面頂から受光素子52の受光面52aまでの距離をDとするとき、0.4<R/D<0.9、を満たすとよい。
【0121】
また、
図21に示したように、受光素子52は、面実装基板タイプのものをフレキシブル基板70上にフリップチップ実装している。したがって、例えば固浸レンズ55を受光素子52の受光面52a上に位置合わせして接合する際に、ワイヤ等の障害物がないので、組立作業が容易になる。
【0122】
本実施の形態に係る光信号伝送システムによると、コア径の大きい受信ファイバ40を使用できるので、光コネクタ30において、受信ファイバ40のコアと該コアに入射する光スポットとの位置ずれをより多く許容できる。その結果、受光素子52の周波数応答速度を維持しながら光回線を安定して維持することができ、システムの信頼性を向上することが可能となる。
【0123】
(第4実施の形態)
図24は、第4実施の形態に係る光信号伝送システムの要部の構成を示す図である。
図24に示す光信号伝送システムは、内視鏡システムに適用したものである。内視鏡システム91は、被検体内に導入され、被検体の体内を撮像して被検体内の画像信号を生成する内視鏡92と、内視鏡92が撮像した画像信号に所定の画像処理を施すとともに内視鏡システム91の各部を制御する情報処理装置93と、内視鏡92の照明光を生成する光源装置94と、情報処理装置93による画像処理後の画像信号を画像表示する表示装置95と、を備える。
【0124】
内視鏡92は、被検体内に挿入される挿入部96と、挿入部96の基端部側であって術者が把持して操作する操作部97と、操作部97より延伸する可撓性のユニバーサルコード98と、を備える。内視鏡92には、挿入部96及びユニバーサルコード98の内部に延在して照明ファイバ、電気ケーブル及び送信ファイバ等が配置される。送信ファイバは、上記実施の形態で説明した送信ファイバ20と同様に構成される。
【0125】
挿入部96は、先端部96aと、複数の湾曲駒によって構成された湾曲自在な湾曲部96bと、湾曲部96bの基端部側に設けられた可撓性を有する可撓管部96cと、を有する。先端部96aには、照明レンズを介して被検体内を照明する照明部、被検体内を撮像する観察部、処理具用チャンネルに連通する開口部96d及び送気・送水用ノズルが設けられている。
【0126】
先端部96aの観察部には、集光用の光学系の結像位置に設けられ、光学系が結像した被検体内の像を光電変換する等の所定の信号処理を施す撮像素子と、撮像素子から出力される画像情報を含む電気信号を光信号に変換する発光素子を有する送信モジュールと、が配置される。送信モジュールは、発光素子から射出される信号光を上記の送信ファイバ20の入射端面に入射させる。
【0127】
操作部97は、湾曲部96bを上下方向及び左右方向に湾曲させる湾曲ノブ97aと、被検体の体腔内に生体鉗子、レーザメス等の処置具が挿入される処置具挿入部97bと、情報処理装置93、光源装置94、送気装置、送水装置及び送ガス装置等の周辺機器の操作を行う複数のスイッチ部97cと、を有する。処置具挿入部97bから挿入された処置具は、内部に設けられた処置具用チャンネルを経て挿入部96先端の開口部96dから表出される。
【0128】
ユニバーサルコード98は、基端部が第1のコネクタ98aと照明コネクタ98bとに分岐されている。第1のコネクタ98aは、情報処理装置93の第2のコネクタ98cに対して着脱自在である。照明コネクタ98bは、光源装置94に対して着脱自在である。第1のコネクタ98a及び第2のコネクタ98cには光コネクタが内蔵される。光コネクタは、上記実施の形態で説明した光コネクタ30と同様に構成されて、第1のコネクタ98a及び第2のコネクタ98cによって着脱自在に構成される。したがって、送信ファイバは、内視鏡92の先端部96aから第1のコネクタ98aまで挿入部96及びユニバーサルコード98の内部に延在して配設される。
【0129】
情報処理装置93は、第2のコネクタ98cに内蔵された光コネクタを経て入射される信号光を伝送する受信ファイバと、受信ファイバを経て伝送される信号光を光電変換する受光素子を含む光レセプタクルとを有し、受光素子の出力信号に対して所定の画像処理を施す。受信ファイバ及び光レセプタクルは、それぞれ上記実施の形態で説明した受信ファイバ40及び光レセプタクル50と同様に構成される。情報処理装置93は、ユニバーサルコード98を介して内視鏡92の操作部97におけるスイッチ部97cから送信された各種の指示信号に基づいて、内視鏡システム91の各部を制御する。
【0130】
光源装置94は、光を発する光源や、集光レンズ等を用いて構成される。光源装置94は、情報処理装置93の制御のもと、光源から光を発する。光源から発した光は、照明コネクタ98b及び照明ファイバを経て内視鏡92の先端部96aの照明部から射出されて被検体内を照明する。
【0131】
表示装置95は、液晶又は有機EL(Electro Luminescence)を用いた表示ディスプレイ等を用いて構成される。表示装置95は、映像ケーブル95aを介して情報処理装置93によって所定の画像処理が施された画像を含む各種情報を表示する。これにより、術者は、表示装置95が表示する画像(体内画像)を見ながら内視鏡92を操作することにより、被検体内の所望の位置の観察及び性状を判定することができる。
【0132】
本実施の形態に係る内視鏡システム91によると、上記実施の形態と同様の効果が得られる。特に、本実施の形態によると、内視鏡92の挿入部96内に配設される送信ファイバのコア径を小さくできることから、挿入部96の細径化が可能となる。したがって、挿入部96を体腔内に挿入する場合、被検者の苦痛を軽減することができる。また、受信ファイバとして、送信ファイバよりもコア径の大きいものを用いることができることから、光コネクタを構成する第1のコネクタ98aと第2のコネクタ98cとに多少の嵌合ずれが生じたり、光コネクタを構成する光学素子に多少の汚れやゴミ等が付着したりしても、信号光を殆ど減衰させることなく伝送することが可能となる。したがって、内視鏡システム91の信頼性を向上することが可能となる。
【0133】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形又は変更が可能である。例えば、第1実施の形態において、光コネクタ30は、
図7に示した構成において、送信ファイバ20の射出端面20ex及び受信ファイバ40の入射端面40enに、
図25に示すように、使用波長に対して透明なカバーガラス37及び38を接合して、それぞれの端面を保護してもよい。このようにすれば、第2実施の形態で説明したと同様の効果が得られる。また、光コネクタ30は、
図25に示す構成からアプラナティックレンズ34を省略して、
図26に示すように構成してもよい。
【0134】
さらに、第2実施の形態において、光コネクタ30は、
図12に示した構成において、送信ファイバ20の射出端面20ex及び受信ファイバ40の入射端面40enから固浸レンズ35及び36をそれぞれ離間させて、射出端面20ex及び入射端面40enに、
図27に示すように、カバーガラス37及び38を接合してそれぞれの端面を保護してもよい。
【0135】
また、本発明に係る光信号伝送システムは、上記実施の形態に示した光信号伝送システムや内視鏡システムに限らず、各種信号を信号処理部へ伝送する伝送システムに広く適用可能である。同様に、本発明に係る光レセプタクルは、上記実施の形態に示した光信号伝送システムや内視鏡システムに限らず、各種信号の受光装置として広く利用可能である。
【0136】
また、送信ファイバ及び受信ファイバは、シングルコアファイバに限らず、マルチコアファイバであってもよい。
また、光コネクタは、石英やガラスなどの無機材料のレンズを含めることで、温度や湿度の変化による光学特性の変化を小さくしてもよい。
同様に、光レセプタクルも、無機材料のレンズを含めることで、温度や湿度の変化による光学特性の変化を小さくしてもよい。
また、光コネクタに用いるレンズや光レセプタクルに用いるレンズは、屈折率が1.5以上のレンズを含めることで、球面収差の低減に有利としてもよい。
また、以下の条件式のいずれか1つもしくは複数を満たすことで本発明の効果をより確実にしてもよい。
Φ2en/Φ1ex>2
Φpd/Φ2en<0.5
NA1ex/NA2en>1.2
(Φ2en×NA2en)/(Φ1ex×NA1ex)>1.5