特許第6805321号(P6805321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6805321
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】検知器
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20201214BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G01N27/26 391Z
   G01N27/416 311Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-210087(P2019-210087)
(22)【出願日】2019年11月21日
【審査請求日】2020年7月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】石野 智敬
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/123946(WO,A1)
【文献】 特開平04−190154(JP,A)
【文献】 特開2015−206604(JP,A)
【文献】 特開昭62−116248(JP,A)
【文献】 特開2017−009303(JP,A)
【文献】 特開2010−249540(JP,A)
【文献】 特開2005−042676(JP,A)
【文献】 特開2001−066275(JP,A)
【文献】 特開平11−107830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知ガスの電気化学反応を検出するための作用電極と、前記作用電極に対する対極と、を有するセンサと、
前記センサのショート異常を判定する判定処理部と、
前記作用電極及び前記対極と接続されると共に、前記被検知ガスを検知可能な状態において前記判定処理部が前記ショート異常の発生有無を判断している状態、及び前記被検知ガスを検知可能な状態において前記判定処理部が前記ショート異常の発生有無を判断していない状態のいずれにおいても、前記作用電極の電位について前記対極の電位よりも低い電位にて前記センサを駆動するセンサ駆動回路と、を備え、
前記判定処理部は、前記センサ駆動回路の出力から、前記センサのショート異常を判定する検知器。
【請求項2】
被検知ガスの電気化学反応を検出するための作用電極と、前記作用電極に対する対極と、を有するセンサと、
前記センサのショート異常を判定する判定処理部と、
前記作用電極及び前記対極と接続されると共に、前記判定処理部が前記ショート異常の発生有無を判断している状態、及び前記判定処理部が前記ショート異常の発生有無を判断していない状態のいずれにおいても、前記作用電極の電位について前記対極の電位よりも低い電位にて前記センサを駆動するセンサ駆動回路と、を備え、
前記判定処理部は、前記センサ駆動回路の出力から、前記センサのショート異常を判定し、
前記センサ駆動回路は、前記作用電極の電位と前記対極の電位との電位差が10mV以下となるように駆動する検知器。
【請求項3】
前記センサ駆動回路は、
第1入力端が前記作用電極に接続され、第2入力端が前記対極に接続されると共に、前記作用電極の電位と前記対極の電位との電位差に基づき動作する差動回路と、
前記第2入力端と前記対極との間に接続された第1抵抗器と、
前記第2入力端と前記第1抵抗器との間に接続された配線から分岐する配線に接続された第2抵抗器と、を有することにより、前記作用電極の電位について前記対極の電位よりも低い電位にて前記センサを駆動する請求項1または2に記載の検知器。
【請求項4】
前記センサ駆動回路は、
第1入力端が前記作用電極に接続され、第2入力端が前記対極に接続されると共に、
前記作用電極の電位と前記対極の電位との電位差に基づき動作する差動回路を有し、
前記作用電極の電位と前記対極の電位との電位差が、前記差動回路のオフセット電圧より大きくなるように前記センサを駆動する請求項1または2に記載の検知器。
【請求項5】
前記センサ駆動回路は、前記センサに対して並列に接続された第3抵抗器を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の検知器。
【請求項6】
前記センサ駆動回路は、第1入力端が前記作用電極に接続され、第2入力端が前記対極に接続されると共に、前記作用電極の電位と前記対極の電位との電位差に基づき動作する差動回路を有し、
前記判定処理部は、(1)前記差動回路から出力された電圧が所定閾値未満となる回数が所定期間内において所定回数以上である場合、または、(2)前記差動回路から出力された電圧が前記所定閾値未満となる期間の長さが所定長さ以上である場合に、前記センサの前記ショート異常が発生していると判定する請求項1に記載の検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検知ガスの電気化学反応を検出するセンサの故障を判定する検知器が知られている。例えば、特許文献1には、作用電極と対極とを有する定電位電解式センサや当該センサに接続されるセンサ回路の接続不良または断線の有無を検知する動作確認装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭62−39318号公報(1987年10月7日公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている動作確認装置では、定電位電解式センサのショート異常が発生しているか否かについての当該センサの故障に係る判定を行う場合、前記センサに対する充放電を行う必要がある。充放電中は被検知ガスの検出ができないため、前記センサのショート異常が発生しているか否かについての前記センサの故障に係る判定を即座に行うことができないという問題があった。本発明の一態様は、センサのショート異常が発生しているか否かについてのセンサの故障に係る判定を即座に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る検知器は、被検知ガスの電気化学反応を検出するための作用電極と、前記作用電極に対する対極と、を有するセンサと、前記センサのショート異常を判定する判定処理部と、前記作用電極及び前記対極と接続されると共に、前記判定処理部が前記ショート異常の発生有無を判断している状態、及び前記判定処理部が前記ショート異常の発生有無を判断していない状態のいずれにおいても、前記作用電極の電位について前記対極の電位よりも低い電位にて前記センサを駆動するセンサ駆動回路と、を備え、前記判定処理部は、前記センサ駆動回路の出力から、前記センサのショート異常を判定する。
【0006】
前記構成において、センサのショート異常が発生しているか否かについてのセンサの故障に係る判定を判定処理部にて行う場合、センサに対する充放電を行わずに、センサの故障の判定を行うことができる。また、検知器によるガス検知の処理を止めずに、センサの故障の判定を行うことができる。よって、センサの故障の判定を即座に行うことができる。
【0007】
前記センサ駆動回路は、前記作用電極の電位と前記対極の電位との電位差が10mV以下となるように駆動してもよい。一般的に、被検知ガスの電気化学反応を検出するセンサは、ガス検知の精度を十分に維持するために、作用電極の電位と対極の電位との電位差が10mV以下であるように、使用されることが好ましい。このため、前記構成によれば、検知器のガス検知の精度を十分に維持することができるので、センサの故障の判定を即座に、しかも精度よく行うことができる。
【0008】
前記センサ駆動回路は、第1入力端が前記作用電極に接続され、第2入力端が前記対極に接続されると共に、前記作用電極の電位と前記対極の電位との電位差に基づき動作する差動回路と、前記第2入力端と前記対極との間に接続された第1抵抗器と、前記第2入力端と前記第1抵抗器との間に接続された配線から分岐する配線に接続された第2抵抗器と、を有することにより、前記作用電極の電位について前記対極の電位よりも低い電位にて前記センサを駆動してもよい。前記構成によれば、2つの抵抗器を用いて、作用電極の電位を対極の電位よりも低くする構成を容易に実現することができる。
【0009】
前記センサ駆動回路は、第1入力端が前記作用電極に接続され、第2入力端が前記対極に接続されると共に、前記作用電極の電位と前記対極の電位との電位差に基づき動作する差動回路を有し、前記作用電極の電位と前記対極の電位との電位差が、前記差動回路のオフセット電圧より大きくなるように前記センサを駆動してもよい。
【0010】
前記構成によれば、作用電極の電位と対極の電位との電位差が、差動回路のオフセット電圧より大きくなるように、センサ駆動回路がセンサを駆動する。したがって、作用電極の電位が対極の電位よりも常に低くなるよう、センサ駆動回路がセンサを駆動する。よって、センサの故障の判定を即座かつ確実に行うことができる。
【0011】
前記センサ駆動回路は、前記センサに対して並列に接続された第3抵抗器を有してもよい。前記構成において、検知器の電源がOFFである状態で検知器の周囲でガスが発生した場合を考える。この場合、第3抵抗器が設けられていることによって、作用電極と対極との間に生じる電位差による電流が、第3抵抗器に流れる。そして、第3抵抗器に流れた電流が熱として消費されると、作用電極と対極との間における電位差が解消される。
【0012】
よって、検知器の電源をONにしたとき、検知器が被検知ガスを検知可能なように、検知器の電源がOFFである状態で生じた、作用電極と対極との間における電位差が解消されるまで待機する必要がなくなる。したがって、検知器が被検知ガスを検知可能な状態になるまでの時間を低減することができる。
【0013】
前記センサ駆動回路は、第1入力端が前記作用電極に接続され、第2入力端が前記対極に接続されると共に、前記作用電極の電位と前記対極の電位との電位差に基づき動作する差動回路を有し、前記判定処理部は、(1)前記差動回路から出力された電圧が所定閾値未満となる回数が所定期間内において所定回数以上である場合、または、(2)前記差動回路から出力された電圧が前記所定閾値未満となる期間の長さが所定長さ以上である場合に、前記センサの前記ショート異常が発生していると判定してもよい。前記構成によれば、センサのショート異常が発生しているか否かについてのセンサの故障に係る判定の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、センサのショート異常が発生しているか否かについてのセンサの故障に係る判定を即座に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係る検知器の構成の一例を示す概略図である。
図2図1に示す検知器が備えるオペアンプから出力される電圧の波形を示すグラフである。
図3】本発明の実施形態2に係る検知器の構成の一例を示す概略図である。
図4】本発明の実施形態3に係る検知器において、センサのショート異常の判定手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態4に係る検知器において、センサのショート異常の判定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態1〕
(検知器1の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る検知器1の構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、検知器1は、センサ10と、センサ駆動回路20と、A/D(Analog/Digital)コンバータ30と、処理装置40と、を備える。検知器1は、外気中の一酸化炭素等の被検知ガスを検知するものである。
【0017】
センサ10は、被検知ガスの電気化学反応を検出するための作用電極11と、作用電極11に対する対極12と、を有する。なお、センサ10は、3つ以上の対極12を有していてもよい。作用電極11は、被検知ガスを電気化学反応させる反応極としての機能を有すると共に、被検知ガスを検知するための検知極としての機能を有する。対極12は、作用電極11に対向して配置され、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差が一定になるように制御される。
【0018】
作用電極11及び対極12は、センサ10に収容される電解質に接触するように配置されている。なお、センサ10は、作用電極11及び対極12に加えて、当該電解質に接触するように配置された参照電極(図示せず)をさらに有していてもよい。当該参照電極は、作用電極11の電位を制御するためのものであり、センサ駆動回路20と接続されている。
【0019】
センサ駆動回路20は、オペアンプ21(差動回路)と、第1抵抗器22と、第2抵抗器23と、帰還抵抗器24と、定電圧電源PSと、を有する。センサ駆動回路20は、作用電極11及び対極12と接続される。定電圧電源PSは、対極12と第1抵抗器22との間に接続されている。オペアンプ21は、第1入力端211と、第2入力端212と、出力端213と、を有する。
【0020】
第1入力端211は、作用電極11と接続されていると共に、帰還抵抗器24を介して、出力端213及びA/Dコンバータ30と接続されている。第2入力端212は、第1抵抗器22を介して対極12と接続されている。なお、第2入力端212は、第1抵抗器22を介して2つ以上の対極12と接続されていてもよい。出力端213は、A/Dコンバータ30と接続されている。オペアンプ21は、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差に基づき動作する。
【0021】
第1抵抗器22は、第2入力端212と対極12との間に接続されている。第2抵抗器23は、第2入力端212と第1抵抗器22との間に接続された配線W1から分岐する配線W2に接続されている。第1抵抗器22の抵抗値は、第2抵抗器23の抵抗値よりも小さい。
【0022】
これにより、第2入力端212の電位は、対極12の電位よりも常に低くなる。第2入力端212の電位と第1入力端211の電位とが同一であり、第1入力端211の電位と作用電極11の電位とが同一であるため、作用電極11の電位は、対極12の電位よりも常に低くなる。よって、センサ駆動回路20は、常時、作用電極11の電位について対極12の電位よりも低い電位にてセンサ10を駆動することになる。このように、2つの抵抗器を用いて、作用電極11の電位を対極12の電位よりも低くする構成を容易に実現することができる。
【0023】
例えば、第1抵抗器22の抵抗値は、1.5kΩであり、第2抵抗器23の抵抗値は、1MΩである。これにより、例えば、対極12の電位が1000mVである場合、第2入力端212の電位が約998.5mVとなり、作用電極11の電位も約998.5mVとなる。よって、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差は、約1.5mVとなる。
【0024】
第1抵抗器22及び第2抵抗器23は、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差が10mV以下となるように、採用されることが好ましい。これにより、センサ駆動回路20は、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差が10mV以下となるように駆動することができる。
【0025】
一般的に、被検知ガスの電気化学反応を検出するセンサ10は、ガス検知の精度を十分に維持するために、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差が10mV以下であるように、使用されることが好ましい。このため、前記構成によれば、検知器1のガス検知の精度を十分に維持することができるので、センサ10の故障の判定を即座に、しかも精度よく行うことができる。
【0026】
また、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差が10mV以下であれば、センサ10の検知性能に影響はないが、当該電位差はより小さい方が好ましい。このため、検知器1が使用される環境等の他の影響を考慮し、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差を約1.5mVに設定した。
【0027】
さらに、第1抵抗器22及び第2抵抗器23は、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差が、オペアンプ21のオフセット電圧より大きくなるように、採用されることが好ましい。これにより、センサ駆動回路20は、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差が、オペアンプ21のオフセット電圧より大きくなるようにセンサ10を駆動することができる。
【0028】
前記構成によれば、作用電極11の電位と対極12の電位との電位差が、オペアンプ21のオフセット電圧より大きくなるように、センサ駆動回路20がセンサ10を駆動する。したがって、作用電極11の電位が対極12の電位よりも常に低くなるよう、センサ駆動回路20がセンサ10を駆動する。よって、センサ10の故障の判定を即座かつ確実に行うことができる。
【0029】
作用電極11の電位が対極12の電位よりも常に低いことにより、センサ10がショート異常の場合に対極12から作用電極11の方向に電流が流れ、センサ10のショート異常の判定を確実に行うことができる。一方、センサ10が正常かつ検知器1の周囲に被検知ガスが存在しない場合では、センサ10に電流が流れず、ショート異常と判別することができる。
【0030】
帰還抵抗器24の一端は、作用電極11及び第1入力端211と接続されており、帰還抵抗器24の他端は、出力端213及びA/Dコンバータ30と接続されている。センサ10に流れる電流が、帰還抵抗器24に流れることにより、センサ10に流れる電流が、電圧として出力端213から出力される。A/Dコンバータ30は、出力端213から出力された電圧をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号をセンサ出力として処理装置40に提供する。なお、センサ10に流れる電流とは、対極12から作用電極11へ流れる電流である。
【0031】
処理装置40は、計測処理部41と、比較処理部42と、カウント処理部43と、判定処理部44と、を有してもよい。処理装置40は、A/Dコンバータ30から提供されたセンサ出力に基づいて、外気中の被検知ガスを検知すると共に、センサ10のショート異常の発生有無を判断する装置である。ここでは、処理装置40による被検知ガスを検知する処理については、公知であるため説明を省略し、センサ10のショート異常の発生有無を判断する処理について説明する。
【0032】
計測処理部41は、経過時間を計測する。比較処理部42は、オペアンプ21の出力端213から出力された電圧と所定閾値とを比較する。カウント処理部43は、所定のカウント処理を行う。判定処理部44は、センサ駆動回路20の出力から、センサ10のショート異常を判定する。
【0033】
(センサ10のショート異常の判定)
図2は、図1に示す検知器1が備えるオペアンプ21から出力される電圧の波形を示すグラフである。また、図2は、センサ10のショート異常が発生している場合の電圧の波形を示している。図2において、横軸は、時間T1[s]を示しており、縦軸は、オペアンプ21から出力された電圧V1[mV]と、増幅後の電圧Va[mV]と、を示している。時間T1が0sである時点は、検知器1の電源がONになった時点である。
【0034】
図2に示すように、センサ10のショート異常が発生している場合、電圧V1は、小さくなっていき、第1所定閾値Vth1より小さくなる。比較処理部42は、電圧V1と第1所定閾値Vth1とを比較する。判定処理部44は、比較処理部42による比較結果を参照し、電圧V1が第1所定閾値Vth1以上である場合、センサ10のショート異常が発生していないと判定する。一方、判定処理部44は、比較処理部42による比較結果を参照し、電圧V1が第1所定閾値Vth1未満である場合、センサ10のショート異常が発生していると判定する。
【0035】
このように、判定処理部44は、センサ駆動回路20の出力として、オペアンプ21から出力された電圧V1から、センサ10のショート異常を判定する。また、検知器1の動作状態には、センサ10のショート異常の発生有無を判断している状態と、センサ10のショート異常の発生有無を判断していない状態と、がある。
【0036】
これに加えて、作用電極11の電位が対極12の電位よりも常に低くなることから、センサ駆動回路20は、下記の第1状態及び第2状態のいずれにおいても、作用電極11の電位について対極12の電位よりも低い電位にてセンサ10を駆動する。前記第1状態は、判定処理部44がセンサ10のショート異常の発生有無を判断している状態であり、前記第2状態は、判定処理部44がセンサ10のショート異常の発生有無を判断していない状態である。
【0037】
前記構成において、センサ10のショート異常が発生しているか否かについてのセンサ10の故障に係る判定を判定処理部44にて行う場合、センサ10に対する充放電を行わずに、センサ10の故障の判定を行うことができる。また、検知器1によるガス検知の処理を止めずに、センサ10の故障の判定を行うことができる。よって、センサ10の故障の判定を即座に行うことができる。
【0038】
(変形例)
センサ駆動回路20は、増幅回路(図示せず)をさらに有していてもよい。この場合、当該増幅回路は、図1において、オペアンプ21の出力端213とA/Dコンバータ30との間に接続されている。具体的には、出力端213から伸びる配線と、帰還抵抗器24から伸びる配線と、の接続部分C1について、前記増幅回路は、接続部分C1とA/Dコンバータ30との間に接続されている。前記増幅回路は、例えば、オペアンプである。
【0039】
前記増幅回路は、オペアンプ21から出力された電圧V1を増幅することにより、増幅後の電圧VaをA/Dコンバータ30に出力する。A/Dコンバータ30は、前記増幅回路から出力された電圧Vaをデジタル信号に変換し、当該デジタル信号をセンサ出力として処理装置40に提供する。
【0040】
図2に示すように、センサ10のショート異常が発生している場合、電圧Vaは、小さくなっていき、第2所定閾値Vth2より小さくなる。比較処理部42は、電圧Vaと第2所定閾値Vth2とを比較する。判定処理部44は、比較処理部42による比較結果を参照し、電圧Vaが第2所定閾値Vth2以上である場合、センサ10のショート異常が発生していないと判定する。
【0041】
一方、判定処理部44は、比較処理部42による比較結果を参照し、電圧Vaが第2所定閾値Vth2未満である場合、センサ10のショート異常が発生していると判定する。このように、判定処理部44は、センサ駆動回路20の出力として、前記増幅回路から出力された電圧Vaから、センサ10のショート異常を判定する。
【0042】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、図3に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図3は、本発明の実施形態2に係る検知器1Aの構成の一例を示す概略図である。図3に示すように、検知器1Aは、検知器1と比べて、センサ駆動回路20がセンサ駆動回路20Aに変更されている点が異なる。
【0043】
センサ駆動回路20Aは、センサ駆動回路20と比べて、第3抵抗器25を有する点が異なる。第3抵抗器25は、センサ10に対して並列に接続されている。具体的には、第3抵抗器25の一端は、作用電極11と接続されており、第3抵抗器25の他端は、対極12と接続されている。第3抵抗器25は、検知器1Aの電源がOFFである状態で、センサ10に分極が発生することを防止する機能を有する。
【0044】
前記構成において、検知器1Aの電源がOFFである状態で検知器1Aの周囲でガスが発生した場合を考える。この場合、第3抵抗器25が設けられていることによって、作用電極11と対極12との間に生じる電位差による電流が、第3抵抗器25に流れる。そして、第3抵抗器25に流れた電流が熱として消費されると、作用電極11と対極12との間における電位差が解消される。
【0045】
よって、検知器1Aの電源をONにしたとき、検知器1Aが被検知ガスを検知可能なように、検知器1Aの電源がOFFである状態で生じた、作用電極11と対極12との間における電位差が解消されるまで待機する必要がなくなる。したがって、検知器1Aが被検知ガスを検知可能な状態になるまでの時間を低減することができる。
【0046】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、図1及び図4に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図4は、本発明の実施形態3に係る検知器1において、センサ10のショート異常の判定手順を示すフローチャートである。
【0047】
図4に示すように、まず、検知器1の電源がONになると、計測処理部41は、経過時間を計測する(S1)。計測処理部41が経過時間の計測を開始した後、比較処理部42は、オペアンプ21から出力された電圧V1と第1所定閾値Vth1とを比較する(S2)。比較処理部42が比較処理を行っている間、カウント処理部43は、オペアンプ21から出力された電圧V1が第1所定閾値Vth1未満となる回数をカウントする(S3)。
【0048】
計測処理部41は、計測している経過時間が所定期間の長さに達したか否かを判断する(S4)。経過時間が所定期間の長さに達していない場合(S4にてNO)、カウント処理部43は、ステップS3の処理を続行する。経過時間が所定期間の長さに達した場合(S4にてYES)、判定処理部44は、カウント処理部43によってカウントされた回数が所定回数以上であるか否かを判断する(S5)。
【0049】
カウント処理部43によってカウントされた回数が所定回数以上である場合(S5にてYES)、判定処理部44は、センサ10のショート異常が発生していると判定する(S6)。カウント処理部43によってカウントされた回数が所定回数未満である場合(S5にてNO)、判定処理部44は、センサ10のショート異常が発生していないと判定する(S7)。また、ステップS7の処理が完了した後、ステップS1の処理から再開される。
【0050】
以上により、判定処理部44は、オペアンプ21から出力された電圧V1が第1所定閾値Vth1未満となる回数が所定期間内において所定回数以上である場合に、センサ10のショート異常が発生していると判定する。前記構成によれば、センサ10のショート異常が発生しているか否かについてのセンサ10の故障に係る判定の精度を向上させることができる。
【0051】
なお、検知器1において、センサ10が水素に反応すると、オペアンプ21から出力された電圧V1が上昇した後に低下する。この場合、電圧V1が第1所定閾値Vth1未満になったとしても、電圧V1が第1所定閾値Vth1未満となる回数は、所定期間内において1回だけである。よって、センサ10が水素に反応した場合と、センサ10のショート異常が発生した場合と、を区別することができる。
【0052】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4について、図1及び図5に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図5は、本発明の実施形態4に係る検知器1において、センサ10のショート異常の判定手順を示すフローチャートである。
【0053】
図5に示すように、まず、検知器1の電源がONになると、比較処理部42は、オペアンプ21から出力された電圧V1と第1所定閾値Vth1とを比較する(S11)。また、比較処理部42は、オペアンプ21から出力された電圧V1が第1所定閾値Vth1未満であるか否かを判断する(S12)。
【0054】
オペアンプ21から出力された電圧V1が第1所定閾値Vth1以上である場合(S12にてNO)、比較処理部42は、ステップS11の処理を続行する。オペアンプ21から出力された電圧V1が第1所定閾値Vth1未満である場合(S12にてYES)、計測処理部41は、電圧V1が第1所定閾値Vth1未満である時間(経過時間)を計測する(S13)。
【0055】
計測処理部41は、計測している経過時間が所定長さ以上であるか否かを判断する(S14)。経過時間が所定長さ以上である場合(S14にてYES)、判定処理部44は、センサ10のショート異常が発生していると判定する(S15)。経過時間が所定長さ未満である場合(S14にてNO)、判定処理部44は、センサ10のショート異常が発生していないと判定する(S16)。また、ステップS16の処理が完了した後、ステップS11の処理から再開される。
【0056】
以上により、判定処理部44は、オペアンプ21から出力された電圧V1が第1所定閾値Vth1未満となる期間の長さが所定長さ以上である場合に、センサ10のショート異常が発生していると判定する。前記構成によれば、センサ10のショート異常が発生しているか否かについてのセンサ10の故障に係る判定の精度を向上させることができる。
【0057】
つまり、実施形態3及び実施形態4の構成から、判定処理部44は、下記の(1)または(2)の場合に、センサ10のショート異常が発生していると判定する。(1)オペアンプ21から出力された電圧V1が第1所定閾値Vth1未満となる回数が所定期間内において所定回数以上である場合。(2)オペアンプ21から出力された電圧V1が第1所定閾値Vth1未満となる期間の長さが所定長さ以上である場合。
【0058】
〔ソフトウェアによる実現例〕
処理装置40の制御ブロック(特に計測処理部41、比較処理部42、カウント処理部43及び判定処理部44)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0059】
後者の場合、処理装置40は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0060】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1、1A 検知器
10 センサ
11 作用電極
12 対極
20、20A センサ駆動回路
21 オペアンプ(差動回路)
22 第1抵抗器
23 第2抵抗器
25 第3抵抗器
44 判定処理部
211 第1入力端
212 第2入力端
W1、W2 配線
【要約】
【課題】センサのショート異常が発生しているか否かについてのセンサの故障に係る判定を即座に行う。
【解決手段】検知器(1)は、センサ(10)と、センサ(10)のショート異常を判定する判定処理部(44)と、判定処理部(44)がショート異常の発生有無を判断している状態、及び判定処理部(44)がショート異常の発生有無を判断していない状態のいずれにおいても、作用電極(11)の電位について対極(12)の電位よりも低い電位にてセンサ(10)を駆動するセンサ駆動回路(20)と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5