特許第6805328号(P6805328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805328
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】監視システム及び監視方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/14 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
   B61L23/14 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-507493(P2019-507493)
(86)(22)【出願日】2018年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2018008014
(87)【国際公開番号】WO2018173694
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2019年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2017-57413(P2017-57413)
(32)【優先日】2017年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】丸林 功
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−042515(JP,A)
【文献】 特開2014−024400(JP,A)
【文献】 特開2006−080782(JP,A)
【文献】 特開2008−044548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の列車と監視センタとを備えた監視システムであって、
前記列車は、
車外を撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方を記録する記録装置と、
ユーザが操作する操作部と、
前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方を無線送信する無線部と、
自列車の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記操作部が操作されると、前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方と、前記位置情報取得部によって取得された位置情報とを含む撮影情報を、前記無線部から送信する第1制御部とを備え、
前記監視センタは、
前記列車の前記無線部から送信された前記撮影情報を受信する通信部と、
列車の運行情報を記憶する運行情報記憶部と、
前記運行情報記憶部に記憶された前記運行情報に基づいて、前記撮影情報を送信した列車の後続の列車に対して、前記撮影情報に含まれる位置情報に基づいて、前記後続の列車に対して撮影位置情報を含む前記撮影情報の送信指示を前記通信部から送信する第2制御部と、を備え
前記第1制御部は、前記送信指示に含まれる前記撮影位置情報に基づいて、自身の前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方を、前記無線部から送信することを特徴とする、監視システム。
【請求項2】
前記列車は、
前記無線部が前記通信部から送信された他の列車が撮影した前記撮影情報を受信すると、前記撮影情報に含まれる静止画像または映像と、位置情報とを表示する表示部を更に備えることを特徴とする、請求項1記載の監視システム。
【請求項3】
前記第1制御部は、前記位置情報に基づいて、自身の前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方を、前記無線部から送信することを特徴とする、請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
前記第1制御部は、前記操作部が操作されたときに前記カメラで撮影された静止画像を前記撮影情報に含めることを特徴とする、請求項1に記載の監視システム。
【請求項5】
前記第1制御部は、前記操作部が操作されたときから所定時間前の映像を含む映像を前記記憶装置から読み出して前記撮影情報に含めることを特徴とする、請求項1に記載の監視システム。
【請求項6】
前記第2制御部は、前記撮影情報に含まれる位置情報または列車識別情報に基づいて、前記後続の列車を決定することを特徴とする、請求項1に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システム及び監視方法に関し、特に、列車運行における被監視対象の共有に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、運転士が運転中に目視した危険状況は、列車無線を用いて会話で指令センターに伝え、更に必要に応じて指令センターから後続列車の運転士に列車無線を用いて会話で状況を伝えるという音声伝言方式である。
会話の伝言であるため、内容を正確に把握するには情報量が少ない。そのため危険を判断すべき指令センター、更にはその危険を後続列車運転士に正確に伝える事が十分でない可能性がある。
【0003】
ここで、列車の運行上の危険事象とは、例えば、落石、土砂崩れ、倒木、深雪、増水(河川、橋梁)、視界不良(野火、霧、雨)、進入(人、動物)、インフラ設備の不良等々である。
なお、従来はインフラ設備等の状態を知るためには、例えば特許文献1のように、専用の検測車両を走らせる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−006940号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行列車が危険事象を発見した際の指令センターへの音声無線通信だけでは、十分な情報伝達ができない可能性があり、後続列車の運行への影響も想定される。
また、専用の検測車両は列車運行時以外に検査を行うものであるため、運行中に発生した危険に対応することはできない。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情を鑑みて為されたものであり、運転士が見つけた危険を正確に共有できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る監視システムは、複数の列車と監視センタとを備えた監視システムであって、前記列車は、車外を撮影するカメラと、前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方を記録する記録装置と、ユーザが操作する操作部と、前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方を無線送信する無線部と、自列車の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記操作部が操作されると、前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方と、前記位置情報取得部によって取得された位置情報とを含む撮影情報を、前記無線部から送信する第1制御部とを備え、前記監視センタは、前記列車の前記無線部から送信された前記撮影情報を受信する通信部と、列車の運行情報を記憶する運行情報記憶部と、前記運行情報記憶部に記憶された前記運行情報に基づいて、前記撮影情報を送信した列車の後続の列車に対して、前記通信部から前記撮影情報を送信する第2制御部と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転士が見つけた危険を正確に共有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る監視システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る監視システムの列車の構成例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る監視システムの監視センタの構成例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る監視システムの動作を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る監視システムの構成例を示す図である。図1の監視システムは、鉄道監視システムであり、線路を走行する列車10−1、10−2(列車を区別しない場合には符号10で説明する。)と、監視センタ20と、基地局30−1、30−2(基地局を区別しない場合には符号20で説明する。)と、ネットワーク40とを備えている。
【0011】
本監視システムは、列車10のカメラが撮影した車外の静止画像や映像(動画)を、監視センタ20や他の列車10で共有して、主に鉄道システムの災害情報やインフラ設備情報に係わる列車の運行上の危険事象を検出、判断するものである。列車10で撮影された静止画像や映像は、列車10から無線で基地局30に送信され、ネットワーク40を介して監視センタ20に送信される。また、列車10−1で撮影された静止画像や映像は、基地局30−2を介して他の列車10−2に送信される。
【0012】
列車10は、1又は複数の車両で構成されている。図1では列車10−1、10−2の2つの列車が存在する場合を例示しているが、本監視システムにおいて列車10の数は限定されるものではない。
列車10は、例えば図2に示すように構成されており、前方監視カメラ11、HUB12、映像記録装置13、操作部14a、マイク/スピーカ14b、無線部15、運行管理サーバ16、GPS(Global Positioning System)受信部17、モニタ18、制御部19を備えている。
【0013】
前方監視カメラ(以下単にカメラという)11は、列車10の車外を撮影するものであり、列車の走行方向前方、側方、後方を撮影するカメラである。本実施例ではカメラ11は前方を撮影している。カメラ11は、予め定められた視野(画角)内をそれぞれ所定の撮像フレームレートで撮像する。また、カメラ11は、撮像した映像(ライブ映像)をH.264/MPEG4/JPEG等の形式で圧縮し、HUB12とネットワークケーブルを経由して映像記録装置13やモニタ18に送信する。
【0014】
HUB12は、カメラ11、映像記録装置13、マイク/スピーカ14b、モニタ18、制御部19を接続している。
映像記録装置13は、カメラ11が撮影した映像または静止画像を記録するものであり、入力されたカメラ映像を、その映像を撮像したカメラ11及び撮像時刻と関連付けて常時記録している。
【0015】
操作部14aは列車10の運転士などのユーザが操作するものであり、例えばボタン、スイッチである。
マイク/スピーカ14bはユーザの通話を録音、送信するためのマイクと、受信した音声等を報知するスピーカで構成される。
【0016】
無線部15は基地局30と無線通信を行うものであり、無線アンテナ15aを備えている。無線部15の無線方式は本発明において限定されるものではなく、LTE(Long Term Evolution)、WiMAX、無線LANなど映像が送信できる無線回線が適宜採用される。なお、これら無線回線は公衆網であっても自営網であってもよい。
【0017】
運行管理サーバ16は、少なくとも列車10の運行情報を保持するものであり、列車10の他システムとも接続されている。列車10の運行情報には、例えば列車速度情報、列車位置情報(キョリ程)、乗降ドア開閉情報(乗降用のドアが開いているか、閉じているかの情報)、運行ルート情報、停車駅情報、運行時間情報、次に停車する駅若しくは現在停車中の駅のプラットフォームにおける乗降口情報(例えば、左側のドアが乗降口であるか、右側のドアが乗降口であるかの情報)、車両数、列車進行方向情報などが含まれる。
【0018】
GPS受信部17は、GPSアンテナ17aを備え、列車10の位置情報を取得するものである。
モニタ18は、列車10の情報や、無線部15が受信した情報を表示する。
制御部19は、列車10の機器全体を制御するものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)で実現される。
【0019】
監視センタ20は、例えば図3のように構成されており、通信部21、運行管理部22、操作部23、モニタ24、制御部25を備えている。
通信部21は、基地局30とネットワーク40とを介して列車10と情報を送受信するものである。
運行管理部22は、沿線全体の列車10の運行情報を管理するものであり、運行情報を保持する運行情報保持部22aを備えている。運行管理部22は各列車10の現在の位置情報を通信部21を介して取得するものであってもよい。また、運行情報保持部22aが保持する運行情報には、沿線全体の列車10を特定する識別情報に紐づけて、運行ルート情報、停車駅情報、運行時間情報、車両数、列車進行方向情報、列車位置情報(キョリ程情報)などが含まれる。
【0020】
操作部23は、監視センタ20の職員等のユーザが操作するものである。
モニタ24は、例えば通信部21が受信した列車10のカメラ11の静止画像や動画映像を表示するものである。
制御部25は監視センタ20全体を制御するものであり、例えばCPUにより実現される。
【0021】
次に、図4を参照しながら本監視システムの動作と、上記各構成の具体的な処理内容を説明する。
図1に示すように、先行する列車10−1が通常運行中に、運転士(ユーザ)が危険と感じる危険事象(例えば河川の増水や橋梁の不具合)を発見すると、ユーザが操作部14aを操作する(S10)。ここで、操作部14aはボタンであり、ユーザは危険事象を見つけると操作部14aを操作することがマニュアル化されている。
【0022】
そして、操作部14aが操作されると、制御部19は、カメラ11が撮影し映像記録装置13に記録された映像から、静止画像及び映像を取得する(ステップS11)。ここで、制御部19は、操作部14aが操作された時点の撮影映像から静止画像を生成する。この静止画像には当該静止画像を撮影した時刻情報も含まれる。また、制御部19は、映像として、操作部14aが操作された時点から一定時間経過後までの映像、あるいは、操作部14aが操作された時点の所定時間以前から一定時間経過後までの映像を映像記録装置13から読み出す。
【0023】
さらに、制御部19は、ユーザによって操作部14aが操作された時間の列車10−1の位置情報を運行管理サーバ16またはGPS受信部17から取得する(ステップS12)。つまり、運行管理サーバ16とGPS受信部17は、列車10の位置情報を取得する位置情報取得部として機能する。
【0024】
また、操作部14aがユーザによって操作されると、ユーザはマイク14bを使用して、危険事象の説明を録音する。音声は図示しない記憶部に記憶される。あるいは、ユーザが操作部14aを操作した後に、さらに操作部14aの別のボタンやスイッチを操作して、危険事象の種類(例えば、自然災害、視界不良、侵入、インフラ不良)や危険レベル(例えば、高、中、低)を入力して図示しない記憶部に記憶させる(ステップS13)。
【0025】
本実施形態では、上述した、録音された音声、危険事象の種類情報、危険レベル情報の少なくとも一つが危険事象情報として制御部19によって送信される。
なお、上述したステップS11〜S13の処理の順序は本発明において限定されるものではなく、同時でも良いし、入れ替わってもよい。
【0026】
そして、ステップS11〜S13が完了すると、制御部19は、列車10−1を識別するための列車識別情報と、映像記録装置13から読み出した静止画像及び/または映像と、取得した位置情報と、危険事象情報と含む撮影情報を、無線部15から基地局30を介して監視センタ20に送信する。なお、列車識別情報は、図示しない記憶部に保存されていてもよいし、静止画像や映像や位置情報や危険事象情報に付加された情報であってもよい。ここでは、制御部19は運行管理サーバ16が保持する列車識別情報を撮影情報に含めて送信する。
【0027】
監視センタ20では、通信部21が基地局30とネットワーク40とを介して、列車10−1から撮影情報を受信する(ステップS20)。
次に、制御部25は、受信した撮影情報に含まれる列車識別情報に基づいて列車10−1を特定して送信元列車を判別する(ステップS21)。
【0028】
なお、制御部25は、撮影情報を受信すると、モニタ24に静止画像または映像を映し出すとともに、音声が付加されていればその音声をスピーカ(図示せず)から出力する。このとき、制御部25は、モニタ24に列車10−1を特定する情報、位置情報、危険事象情報もあわせて表示することが好ましい。これにより、監視者は迅速、且つ、正確に危険事象を把握することができる。
【0029】
そして、制御部25は、受信した撮影情報を他の列車10−2に配信するか否かの配信判定を行う(ステップS22)。制御部25による配信判定は、撮影情報に含まれる危険事象情報に基づいて自動的に行う場合と、監視者(ユーザ)による操作部23の操作に基づいて行う場合と、受信したすべての撮影情報を配信すると判定する場合とのいずれの方式を採用してもよい。
【0030】
危険事象情報に基づいて自動判定する場合は、制御部25は、危険事象情報の危険レベルが所定レベル以上、例えば高、または、中である場合は配信すると判定し、所定レベルより低ければ(危険レベルが低の場合は)、配信不要と判定する。
また、ユーザによる操作に基づく場合、ユーザはモニタ24に表示された情報を確認して、他列車に配信すべきと判断すると操作部において所定の操作を行い、制御部25はその所定の操作を受けて配信すると判定する。
【0031】
なお、制御部25が配信不要と判断した場合には、後述する処理は行わない。
制御部25が配信すると判定した場合、続いて制御部25はどの列車に撮影情報を送信するかを、運行情報、及び/または、位置情報に基づいて決定する。
制御部25は運行情報に基づいて決定する場合、運行管理部22の運行情報保持部22aが保持する運行情報から、撮影情報を送信してきた列車10−1の後続列車を抽出する。運行情報には、少なくとも列車ごとに始発駅、終着駅、停車駅、運行ルート、運行ダイヤ(運行時刻情報)が含まれており、制御部25は列車10−1に基づいて、列車10−1の後続列車を特定する。
【0032】
なお、制御部25は、後続列車すべてを撮影情報の送信先としてもよいし、後続の所定台数、あるいは、所定時間以内に列車10−1の撮影場所(ここでは、操作部14aが操作された場所)を通過する列車を送信先に決定する。
また、監視センタ20の運行管理部22が沿線上を走行しているすべての列車の位置を把握している列車運行システムである場合、制御部25は、運行管理部22が保持する列車位置に基づいて、列車10−1よりも後方に存在する後続列車を特定する。なお、列車の進行方向を考慮する必要がある場合には、位置情報に加えて運行情報保持部22aが保持する進行方向や運行ルートの運行情報を考慮して後続の列車を特定する。
【0033】
ここでは、制御部25は、後続列車10−2を送信先列車として決定する(ステップS23)と、制御部25は、列車10−1から受信した撮影情報に、撮影指示情報を含めた配信情報を通信部21から後続列車10−2に送信する(ステップS24)。
ネットワーク40及び基地局30−2を介して配信情報が後続列車10−2に無線送信され、後続列車10−2の無線部15が配信情報を受信すると(ステップS30)、制御部19は、配信情報に含まれる撮影情報をモニタ18に表示する。ここでの表示は監視センタ20におけるモニタ24での表示等と同様であることが好ましい。これにより、後続列車10−2の運転士は、自身がこれから走行する場所に注意すべき危険な事象が発生していることを事前に正確に知ることができる。
【0034】
そして、制御部25は、配信情報に含まれる撮影指示情報に基づいて、当該撮影指示情報に含まれた位置情報、もしくは、撮影情報に含まれた位置情報に基づいて、その位置における静止画像及び映像を映像記録装置13から取得する(ステップS32)。このとき、制御部25は、配信情報に含まれる位置情報と、運行管理サーバ16あるいはGPS受信部17で取得する位置情報とを対比して、撮影(映像取得)すべき位置に到達しているか否かを判断する。
【0035】
次に、制御部25は、取得した静止画像及び映像に、列車識別情報と位置情報とを付加して撮影情報として、無線部15から監視センタ20に送信する(ステップS33)。
なお、後続列車10−2が撮影情報を送信する際も、ユーザの操作部14aの操作によって危険事象情報を撮影情報に付加してもよい。
【0036】
そして、監視センタ20の通信部21が撮影情報を受信すると(ステップS25)、制御部25はモニタ24に撮影情報を表示し、危険事象情報として音声が付加されている場合にはスピーカから再生出力する(ステップS26)。このとき、モニタ24には、先行列車10−1から取得した静止画像もしくは映像と、後続列車10−2から取得した静止画像もしくは映像とが並べて表示されることが好ましい。これにより、監視者は危険事象の変化を容易に認識することができる。
なお、監視センタ20の制御部25は、後続列車10−2から撮影情報を受信すると、上述したステップS20〜S24の処理を再度実行してもよい。
【0037】
このように、本発明の一実施形態としての監視システムによれば、運行中の列車10の運転士が運転中に危険事象を発見した場合に、操作部14の操作に基づいて、その危険事象を撮影した静止画像または映像を監視センタ20に送信するので、運転士が見つけた危険を正確に共有することができる。このとき、撮影情報には位置情報を付加しているので、危険事象の場所を把握することができる。
【0038】
また、運転士の音声や、危険種別、危険レベルを撮影情報に付加することで、危険事象をより正確に共有することができる。
さらに、監視センタ20は、受信した撮影情報を後続の列車10に送信するので、危険事象が存在する地点を後に通過する列車10の運転士にも危険事象を確実に知らせることができる。
【0039】
なお、監視センタ20は後続の列車10に対して撮影指示を送信することにより、危険事象の継時的な変化を確認することができ、列車運行に影響があるか否かをリアルタイムに判定することができる。これにより、列車10の事故など大惨事を未然に防止することができる。
また、後続の列車10では、制御部19が撮影指示に基づいて自動的に静止画像や映像を映像記録装置13から取得するので、運転士の負担を軽減することができる。
【0040】
さらに、列車10では、ユーザにより操作部14aが操作されたことをトリガに映像記録装置から操作部14aが操作された時点より前の時点からの映像を制御部19が取得して送信するので、運転士は危険事象を発見して操作部14aを推し遅れても、危険事象をとらえた映像をシステム内で共有することができ、ユーザ利便性が向上するとともに、危険事象の共有がより確実になる。
【0041】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。例えば、上述した実施形態では、無線部15が走行中に基地局30と無線通信を行い、撮影情報を送信する場合を説明した。しかし、走行中ではなく、駅停車時に列車10−1が無線部15から駅に設置された基地局(親局)30と無線通信を行って撮影情報を送信してもよい。
【0042】
これにより、リアルタイム性は損なわれるが、駅停車時なので、より高速大容量の無線回線(例えばミリ波通信回線)を容易に用意でき、情報送信の確実性を向上することができる。この場合、監視センタ20から後続列車10−2への撮影情報の送信は、上述した実施形態通りでも良いし、駅停止時でも良い。なお、どちらにするかを危険レベルに応じて変更しても良く、危険レベルが高い、すなわち、緊急性があれば上述した実施形態通りに基地局30から走行列車に送信し、危険レベルが低ければ駅停止時に送信することが好ましい。なお、どの駅にどの列車が停止するかは、通常、運行管理部22が管理している。
【0043】
また、上述した実施形態では、制御部25が列車識別情報に基づいて列車を判別したが、制御部25は、各列車の運行情報(ルートとダイヤ情報など)と位置情報とに基づいて列車を判別してもよい。
さらに、上述した実施形態では、監視センタ20が後続列車10−2に撮影指示を送信する場合を例に挙げたが、撮影指示は送信しない構成としてもよい。なお、危険事象の種類や危険レベルに応じて、危険性や緊急性が高い場合にのみ後続列車10−2に撮影指示を送信してもよい。これにより、必要な場合にだけ無線回線を使用するので使用効率が向上する。
【0044】
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
一例として、モニタの表示を制御する表示制御部は、モニタやサーバのコンピュータ上で所定のプログラムを実行することにより実現されてもよい。すなわち、例えば、表示制御部を構成するコンピュータのプロセッサが、ハードディスクやフラッシュメモリ等のデータ記憶装置に記憶されているプログラムをメモリ上に読み出して実行することで、表示制御部を実現してもよい。
【0045】
なお、上述の通り、本発明の監視システムは例えば以下のように構成されている。
複数の列車と監視センタとを備えた監視システムであって、
前記列車は、
車外を撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方を記録する記録装置と、
ユーザが操作する操作部と、
前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方を無線送信する無線部と、
自列車の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記操作部が操作されると、前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方と、前記位置情報取得部によって取得された位置情報とを含む撮影情報を、前記無線部から送信する第1制御部とを備え、
前記監視センタは、
前記列車の前記無線部から送信された前記撮影情報を受信する通信部と、
列車の運行情報を記憶する運行情報記憶部と、
前記運行情報記憶部に記憶された前記運行情報に基づいて、前記撮影情報を送信した列車の後続の列車に対して、前記通信部から前記撮影情報を送信する第2制御部と、を備えることを特徴とする、監視システム。
【0046】
前記列車は、
前記無線部が前記通信部から送信された他の列車が撮影した前記撮影情報を受信すると、前記撮影情報に含まれる静止画像または映像と、位置情報とを表示する表示部を更に備えることを特徴とする、上記監視システム。
前記第1制御部は、前記位置情報に基づいて、自身の前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方を、前記無線部から送信することを特徴とする、上記監視システム。
【0047】
前記第2制御部は、前記撮影情報に含まれる位置情報に基づいて、前記後続の列車に対して撮影位置情報を含む前記撮影情報の送信指示を前記通信部から送信し、
前記第1制御部は、前記送信指示に含まれる前記撮影位置情報に基づいて、自身の前記カメラが撮影した静止画像と映像との少なくとも一方を、前記無線部から送信することを特徴とする、上記監視システム。
【0048】
前記第1制御部は、前記操作部が操作されたときに前記カメラで撮影された静止画像を前記撮影情報に含めることを特徴とする、上記監視システム。
【0049】
前記第1制御部は、前記操作部が操作されたときから所定時間前の映像を含む映像を前記記憶装置から読み出して前記撮影情報に含めることを特徴とする、上記監視システム。
【0050】
前記第2制御部は、前記撮影情報に含まれる位置情報または列車識別情報に基づいて、前記後続の列車を決定することを特徴とする、上記監視システム。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、列車が車外を撮影した情報を共有する監視システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10、10−1、10−2 列車
11 カメラ
12 HUB
13 映像記録装置
14a、23 操作部
14b マイク/スピーカ
15 無線部
15a 無線アンテナ
16 運行管理サーバ
17 GPS受信部
17a GPSアンテナ
18、24 モニタ
19、25 制御部
20 監視センタ
21 通信部
22 運行管理部
22a 運行情報保持部
30、30−1、30−2 基地局
40 ネットワーク
図1
図2
図3
図4