(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る入力装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る入力装置10の構成を示す斜視図である。
図2と
図3は、
図1(a)、(b)に示す入力装置10の分解斜視図である。
図4は入力装置10の機能ブロック図である。
図5は、回転体50、第1ギヤ51、及び、第2ギヤ52を省略した斜視図である。
図6は
図5に示す状態の入力装置10の分解斜視図である。
【0014】
図2に示すように、本実施形態の入力装置10は、固定部20と、回転検出部30と、トルク付与部40と、回転体50と、第1ギヤ51と、第2ギヤ52と、ブレーキ付与部60と、フレーム80と、歪みゲージ81とを備え、
図1に示すように組み上げて使用される。入力装置10はさらに、
図4に示す制御部90を備える。
【0015】
<固定部>
固定部20は、非磁性体からなる板材である。
図2と
図3に示すように、固定部20の上には、円筒状の支持部21が設けられている。固定部20においては、支持部21の中空部分に対応する領域が上下に貫通する開口22(
図1、
図3)となっている。支持部21は、非磁性体からなり、回転体50の回転軸AX1(駆動軸)と同心状に延びるように設けられている。
【0016】
<トルク付与部>
図2に示すように、トルク付与部40は、コイル部41と、磁石部42と、コイルホルダ43a、43bとを備える。
コイル部41は、支持部21の外周面21a(
図6参照)に対して、その周方向に沿って支持部21の外側に配置された、8枚のトルク付与コイル(空心コイル41a、41b、41c、41d、41e、41f、41g、41h)を備える(
図7参照)。これら8枚の空心コイル41a〜41hは、回転軸AX1を中心とした円上に等角度間隔で配置されており、それぞれが、回転軸AX1から円周へ向かう径方向の線を中心として巻かれている。これらの空心コイル41a〜41hのそれぞれには制御部90から電流が印加される(
図4参照)。
【0017】
図7(a)〜(d)は、コイル部41の空心コイル41a〜41hと、磁石部42の磁石42a〜42fとの関係を示す平面図である。
図7(a)〜(d)は、それぞれ、空心コイル41a〜41hに対する通電を切り替えた際に磁石42a〜42fが安定する位置、すなわち最大トルクが発生している位置を示している。また、空心コイル41a〜41hに対して電流を印加したときの電流の上下方向(回転軸AX1に沿った方向)の向きを示しており、「×」は紙面下向き、「●」(黒丸)は紙面上向きを意味している。
【0018】
図1、
図5、及び
図6に示すように、8枚の空心コイル41a〜41hは、2つのコイルホルダ43a、43bによって位置決め・保持される。2つのコイルホルダ43a、43bはリング状をなしており、上下方向に所定間隔をおいて配置され、それぞれの内周面に上記空心コイル41a〜41hの上端部及び下端部がそれぞれ固定されている。下側のコイルホルダ43bは固定部20上に固定される。これによって、
図5に示すように、下側のコイルホルダ43bは、支持部21の外側に配置される。この位置は、後述のエンコーダディスク31の位置する領域の内側である。
【0019】
図7(a)〜(d)に示すように、空心コイルに対する電流の印加は、隣り合う2つの空心コイルと、これら2つの空心コイルに対して回転軸AX1に関して対称となる位置で隣り合う2つのコイルとの合計4つのコイル(1組のコイル)に対して行われる。
【0020】
図7(a)、(b)に示すように、隣り合う2つの空心コイル41b、41cと、これらに対して回転軸AX1に関して対称となる2つの空心コイル41f、41gとの1組のコイルに電流が印加される状態をA相とし、
図7(c)、(d)に示すように、A相では電流が印加されなかった、別の1組のコイル、すなわち、隣り合う2つの空心コイル41h、41aと、これらに対して回転軸AX1に関して対称となる2つの空心コイル41d、41eとに電流が印加される状態をB相とする。ここで、組をなす4つのコイルは直列に接続されている。すなわち、A相に対応する4つの空心コイル41b、41c、41f、41gが直列に接続され、B相に対応する4つの空心コイル41h、41a、41d、41eも直列に接続されている。
【0021】
空心コイル41a〜41hへの通電は、操作部としての回転体50が120度回転するごとに、上記A相とB相の2相を切り替えるように制御されており、回転体50が1回転する間に、
図7(a)〜(d)に示す状態が120度ごとに3回切り替わる。
【0022】
図7(a)に示す状態においては、隣り合う2つの空心コイル41b、41cには互いに逆向きの電流が印加される。さらに、回転軸AX1に関して空心コイル41bと対称な位置にある空心コイル41fには空心コイル41bと逆向きの電流が印加され、空心コイル41cと対称な位置にある空心コイル41gには空心コイル41cと逆向きの電流が印加される。これらにより、
図7(a)において矢印で示すように、隣り合うコイルには逆向きの磁界が発生し、かつ、回転軸AX1に関して互いに対称な関係にある2つのコイルには同じ向きの磁界が発生する。
このような、空心コイルへの電流の印加及び磁界の発生の関係は、
図7(b)、(c)、(d)も同様である。
【0023】
図2、
図3、及び、
図7に示すように、磁石部42は、6枚の磁石42a、42b、42c、42d、42e、42fを備える。これらの磁石42a〜42fは、コイル部41の空心コイル41a〜41hに対して径方向に所定の間隙を有して対向配置するように、これらの空心コイル41a〜41hの外側に配置されている。これらの磁石42a〜42fは、回転軸AX1を中心とした円上に等角度間隔で配置されており、それぞれが、回転軸AX1から円周へ向かう径方向に沿って磁極が配置されている。この磁極の配置は、隣り合う磁極が互いに逆向きとなるように設定されている。
図7(a)〜(d)においては、簡略化のために外側の磁極のみを示しており、例えば磁石42aにおいては、外側がS極であり、回転軸AX1に近い内側がN極となる。
【0024】
このような構成において、
図7(a)〜
図7(d)に示す4つのパターンで各空心コイルに電流を印加することによって、固定部20に固定されたコイル部41に対して、磁石部42を、回転軸AX1を中心として相対的に回転又は回動させることができ、磁石部42が固定された回転体50も回転又は回動する。また、回転の駆動トルクの方向は、
図7(a)〜
図7(d)に示す4つのパターンで印加する電流の向きで制御される。4つのパターンで印加する電流の向きを全て逆向きにすれば、逆方向の回転の駆動トルクが発生し、回転体50は逆方向に回転又は回動する。さらに、各空心コイルに与える電流の大きさを制御部90で制御することにより、回転体50に任意の大きさの駆動トルクを付与することができる。また、空芯コイルと磁石の相対位置によって駆動トルクが変化することを抑えることができる。これによって、回転体50を操作する操作者に対して、所定の操作感触を与えることができる。
【0025】
一方、通常のモータのように磁性体のコアや磁石に対向する磁性体の凸極が配置されている場合には、磁石と磁性体との間に磁気吸引力が作用し、コイルに通電していない回転操作時であっても、磁気回路的なトルク変動であるコギングトルクを生じる。
これに対し、本実施形態では、磁性体のコアや凸極がない空心コイルが配置されていないため、コイルに通電していない状態での回転操作時にもコギングトルクは生じない。
【0026】
さらに、本実施形態においては、空心コイルを非磁性体の支持部21が保持する構成であるため、磁石と磁性体との間に生じる磁気吸引力を0にすることができる。このため、コイルに通電していない回転操作時に要求される理想状態、いわゆるトルクフリーに近づけることが可能である。
なお、コイル部41の複数の空心コイルの数と磁石部42の磁石の数の組み合わせは、本実施形態に示す組み合わせに限定されない。また、複数のトルク付与コイルは、空心コイルに限定されるものではなく、例えば非磁性体のコアを設け、そこに巻線を巻いたものであっても、磁気回路的に同じ状態であればよい。
【0027】
<回転体>
図5に示すように、支持部21の外周面21a上であって、トルク付与部40の上側のコイルホルダ43aの上側に、ベアリング53が配置され、その内周面が上記外周面21aに固定されている。一方、ベアリング53の外周面は、回転体50の内周面に接触するように配置される。このベアリング53によって、回転体50が、回転軸AX1を中心に回動自在となるように支持される。
【0028】
図1と
図2に示すように、回転体50は円筒形状を有し、その下端には外向きに歯が設けられた第1ギヤ51が、回転体50と同心状に設けられて固定配置されている。回転体50は、コイル部41、磁石部42、及び支持部21と同心となり、かつ、これらを覆うように配置される。
【0029】
図1(a)、(b)に示すように、第1ギヤ51上には、回転体50の外周面に沿って第2ギヤ52が配置されている。第1ギヤ51と第2ギヤ52は、同一半径の円板に対して同一のピッチで歯が設けられている。第2ギヤ52は摺動性のよい材料、例えばポリアセタールで構成することが好ましい。
【0030】
図8は、第2ギヤ52を組み付けていない状態の平面図、
図9は、第2ギヤ52を分離して下側から見た分解斜視図である。
図8と
図9においては、ブレーキ付与部60及びフレーム80の図示を省略している。
【0031】
図8に示すように、第1ギヤ51の上面には、回転軸AX1に関して等角度間隔に、周方向に沿って延びる3つの凹部51a、51b、51cが設けられている。
図9に示すように、第2ギヤ52の下面にも、回転軸AX1に関して等角度間隔に、周方向に沿って延びる3つの凹部52a、52b、52cが設けられている。第2ギヤ52は、凹部52a、52b、52cが、第1ギヤ51の凹部51a、51b、51cとそれぞれ対応するように、第1ギヤ51上に配置される。
【0032】
第2ギヤ52を第1ギヤ51上に配置するときに、第1ギヤ51の凹部51a内には第1のばね54a(
図9)の一端が取り付けられ、この第1のばね54aの他端は第2ギヤ52の凹部52a内に取り付けられる。同様に、第1ギヤ51の凹部51b内には第2のばね54b(
図9)の一端が取り付けられ、この第2のばね54bの他端は第2ギヤ52の凹部52b内に取り付けられる。さらに、第1ギヤ51の凹部51c内には第3のばね54c(
図9)の一端が取り付けられ、この第3のばね54cの他端は第2ギヤ52の凹部52c内に取り付けられる。これらにより、3つのばね54a、54b、54cは、第1ギヤ51と第2ギヤ52との間で、回転体50の周方向50cに沿うように配置される。これらのばね54a、54b、54cは圧縮ばねであって、その弾性力(反力)によって、第2ギヤ52は回転体50の周方向50cに付勢される。
【0033】
ここで、3つのばね54a、54b、54cの圧縮量は、第1ギヤ51に対する第2ギヤ52の位置をずらすことよって容易に調整可能であるため、入力装置10の仕様に応じて任意に設定することができる。また、ばねの数は3つに限定されず、数を増減することによって、ばねによる弾性力(反力)を容易に変更することができる。
【0034】
図3に示すように、第1ギヤ51の底面には、外縁に沿って円環状の弾性プレート56が設けられるとともに、この弾性プレート56の内側に円環状のエンコーダディスク31が設けられている。弾性プレート56を設けることによって、回転体50、第1ギヤ51、及び第2ギヤ52を固定部20に組み付けたときに、固定部20と第1ギヤ51を適度に離間させることができるため、回転体50を、回転軸AX1を中心にして回転させたときの、エンコーダディスク31、第1ギヤ51、及び、固定部20の摩耗を抑えることができる。
【0035】
エンコーダディスク31は、回転体50の周方向50cに沿った円環状をなしており、その周方向に沿って、反射部と非反射部が交互に形成されている。エンコーダディスク31は、回転体50が回転軸AX1を中心にして回転すると第1ギヤ51とともに回転する。
【0036】
ここで、回転検出部30は、上記エンコーダディスク31と、固定部20上に固定された検出基板32と、検出基板32上に設けられた検出素子33とを備える(
図5、
図6参照)。
【0037】
検出素子33は発光素子と受光素子を有しており、発光素子は、固定部20に組み付けられたエンコーダディスク31上の所定範囲に対して検出光を出射する。受光素子は、エンコーダディスク31の反射部からの反射光を受光し、この受光結果に基づいて、エンコーダディスク31及び第1ギヤ51が設けられた回転体50の回転角度が検出される。この検出結果は制御部90へ出力される。
【0038】
以上の構成の回転体50、第1ギヤ51、及び、第2ギヤ52は、コイル部41、磁石部42、及び支持部21を覆うように、固定部20に対して組み付けられる。
図1(a)、(b)に示すように、組み付けられた回転体50には、周方向50cにおいて等角度間隔で配置された3つのねじ55が径方向に挿通され、その先端が磁石部42の外側面に螺合される。これによって回転体50と磁石部42が互いに固定され、回転体50を、回転軸AX1を中心に回転させると、これにしたがって磁石部42も一体となって回転し、コイル部41の各空心コイルに電流を印加することによって磁石部42を回転させると、その回転力が回転体50に伝達され、駆動トルクが付与される。
【0039】
図1(a)に示すように、3つのねじ55は、上下方向において第2ギヤ52の内周部の上面52dに接する位置に配置されている。これにより、上下方向における、第2ギヤ52の位置が規制され、かつ、上述の3つのばね54a〜54cの弾性力に抗して、第2ギヤ52が周方向50cに沿って回動可能となる。
【0040】
<ブレーキ付与部>
図10は、ブレーキ付与部60の回転軸AX2に沿った断面図であって、フレーム80とともに表示している。
図11は
図10の一部拡大図である。
図12は、ブレーキ付与部60とフレーム80の関係を示す一部分解斜視図である。
図13は、伝達ギヤ63と、第1ギヤ51及び第2ギヤ52との噛み合い状態を示す斜視図である。
図13は、第3ヨーク66c、磁気粘性流体64、及び、フレーム80を省略して表示している。
【0041】
図10に示すように、ブレーキ付与部60は、保持部(ハウジング)と可動部(可動部材)とを備える。
【0042】
可動部は、軸部62と、伝達ギヤ63と、回転板65とを含み、ブレーキ付与部60の回転軸AX2を中心として回転自在に構成される。
図13に示すように、可動部における伝達ギヤ63が第1ギヤ51と第2ギヤ52に噛み合うことによって、伝達ギヤ63の回転に基づくブレーキ力が回転体50側へ付与される。ブレーキ付与部60の回転軸AX2は、ブレーキ付与部60を、フレーム80を介して固定部20へ組み付けたときに、回転体50の回転軸AX1と平行となり、上下方向に延びる。また、
図1に示すように、ブレーキ付与部60を固定部20へ組み付けたときに、軸部62を含むブレーキ付与部60は、回転体50の径方向50rにおいて、回転体50の外側に位置する。このように、ブレーキ力を付与するブレーキ付与部60が、上下方向に沿って見た平面視において、回転体50やトルク付与部40といった回転機構よりも外側に配置されるため、上記回転機構の内部にブレーキ付与部60に関わる配線を設ける必要がなくなる。したがって、回転機構を簡単な構成とすることができ、かつ、駆動軸である回転軸AX1方向における小型化を図ることができる。
【0043】
可動部は、軸部62と、伝達ギヤ63と、軸部62に対して同心状に接続された回転板65とを含み、これらが一体となって回転軸AX2を中心として回転するように互いに連結される。
図10に示すように、可動部は、支持部材70、ラジアル軸受72、73、及び、プッシャ71を介して、回転可能な状態で保持部に支持される。軸部62は、ラジアル軸受73を介してフレーム80に支持され、そのフレーム80は、
図1などに示すように、接着等によって固定部20に固定される。また、回転板65が配置される隙間67には、磁気粘性流体64が満たされている。
【0044】
保持部は、3つのヨーク66a、66b、66cと、ブレーキ付与コイル61と、スペーサ69とを備える。
図1と
図12に示すように、第3ヨーク66cがフレーム80に固定され、これによって、ブレーキ付与部60はフレーム80に固定される。
【0045】
図10に示すように、回転軸AX2に沿った上下方向において、回転板65を挟む一方に第1ヨーク66a、他方に第2ヨーク66bが配置され、さらに、回転板65の外側に第3ヨーク66cが配置されている。第3ヨーク66cは、非磁性材料で構成されるオーリング74を介して、第2ヨーク66bの外側に配置されるとともに、リング状のスペーサ69を介して第1ヨーク66aの外側に配置されている。このスペーサ69は、非磁性材料で構成され、ブレーキ付与コイル61の上に重なるように配置される。これによって上下方向におけるブレーキ付与コイル61の位置が定められる。3つのヨーク66a、66b、66cは、回転軸AX2に関して同心状に配置され、かつ、ブレーキ付与コイル61を囲むように設けられている。
図10に示すように、第2ヨーク66bと第3ヨーク66cは径方向において互いに接続され、また、第3ヨーク66cは第1ヨーク66aに対して上下方向において互いに接続されており、これらによってブレーキ付与コイル61を囲む磁路が形成される。
【0046】
なお、これら3つのヨーク66a、66b、66cは、それぞれ別々に加工されて形成されるが、いずれか2つ以上が組み合わされて一体に形成されていてもよい。
【0047】
磁界発生部としてのブレーキ付与コイル61は円環状をなしている(
図10、
図13参照)。ブレーキ付与コイル61は、回転軸AX2の周りを回るように巻き付けられた導線を含むコイルである。ブレーキ付与コイル61には、図示しない接続部材を介して、制御部90(制御回路)(
図4)から電流が供給される。ブレーキ付与コイル61に電流が供給されると磁界が発生する。供給される電流は、検出素子33による検出結果に基づいて制御部90において制御される。
【0048】
図10に示すように、第2ヨーク66bの径方向の中央には、上下方向に延びる支持部材70が挿入されている。この支持部材70によって、軸部62の先端部62aが回転自在に支持される。
【0049】
図10と
図11に示すように、ブレーキ付与部60においては隙間67が形成されている。この隙間67は、上下方向では、第2ヨーク66bの下面と、第1ヨーク66a及びスペーサ69の上面に挟まれ、径方向においては、第3ヨーク66c及び軸部62によって囲まれて形成される。この隙間67の中には、回転軸AX2に直交する径方向に沿って延びるように回転板65が配置されるとともに、回転板65と第2ヨーク66bの下面の間、及び回転板65と第1ヨーク66aの上面の間に介在するように磁気粘性流体64が満たされている。回転板65は、回転軸AX2に沿った上下方向において、ブレーキ付与コイル61と互いに重複するように配置される。
【0050】
ここで、磁気粘性流体64は、磁界が印加されると粘度が変化する物質であり、例えば、非磁性の液体(溶媒)中に磁性材料からなる粒子(磁性粒子)が分散された流体である。磁気粘性流体64に含まれる磁性粒子としては、例えば、カーボンを含有した鉄系の粒子やフェライト粒子が好ましい。カーボンを含有した鉄系の粒子としては、例えば、カーボン含有量が0.15%以上であることが好ましい。磁性粒子の直径は、例えば0.5μm以上が好ましく、さらには1μm以上が好ましい。磁気粘性流体64は、磁性粒子が重力で沈殿しにくくなるように、溶媒と磁性粒子を選定することが望ましい。さらに、磁気粘性流体64は、磁性粒子の沈殿を防ぐカップリング材を含むことが望ましい。
【0051】
上述のように、ブレーキ付与コイル61を囲むように、3つのヨーク66a、66b、66cが接続され、また、回転板65を挟んで互いに対向するように、第1ヨーク66aと第2ヨーク66bが配置されている。これによって、ブレーキ付与コイル61が発生する磁界をヨーク66a、66b、66cに誘導し、閉ループにする磁路(磁気回路)が形成される。この構成において、ブレーキ付与コイル61に電流を印加すると、磁束がブレーキ付与コイル61の周りを通るような磁界が形成され、ブレーキ付与コイル61に対して逆向きに電流を印加すると、逆向きの流れの磁界が形成される。例えば、回転軸AX2の方向に沿って、第1ヨーク66a側から第2ヨーク66b側へ向かう磁束が、隙間67内の回転板65を通る。すなわち、回転板65の一方の面(下面65a)から、他方の面(上面65b)へ磁束(磁界)が通過する。この磁束は主に第2ヨーク66bでは主に回転軸AX2から遠ざかる方向へ進み第3ヨーク66cに至る。さらに、この磁束は、ブレーキ付与コイル61の径方向外側において、回転軸AX2の方向に沿って上から下へ進む。
【0052】
ここで、
図12に示すように、第2ヨーク66bは略矩形の平面形状を有しているため、特に、前記平面の角部においては、ブレーキ付与コイル61の外側に大きな空間が形成される。これにより、回転軸AX2の方向に沿って上から下へ進む磁路が広く確保される。また、第2ヨーク66bが略矩形の平面形状を有しているため、ブレーキ付与部60の組み立て性の向上に寄与している。
【0053】
さらに、ブレーキ付与コイル61の径方向外側において回転軸AX2の方向に沿って上から下へ進んだ磁束は、第3ヨーク66cに至り、第3ヨーク66c内において回転軸AX2に近づく方向に進み、ブレーキ付与コイル61の内側に対応する領域で、下から上へ、第1ヨーク66a内を進み、再び回転板65を通って第2ヨーク66bに至る。ここで第1ヨーク66a及び第3ヨーク66cの外形は略矩形の平面形状を有しているため、特に、前記平面の角部においては、ブレーキ付与コイル61の外側に大きな空間が形成される。これにより、回転軸AX2の方向に沿って下から上へ進む磁路が広く確保される。
【0054】
このような磁路において、非磁性材料で構成されるスペーサ69とオーリング74がブレーキ付与コイル61の上方に配置され、これによって磁気ギャップが設けられる。この磁気ギャップの近傍では、ブレーキ付与コイル61が発生する磁界の磁束は、回転軸AX2に直交する径方向に沿って進行することが規制される。したがって、ブレーキ付与コイル61の内側を下から上へ通過した磁束は、確実に回転板65を通過して第2ヨーク66bの上部へ進行し、また、ブレーキ付与コイル61の外側では、確実に第3ヨーク66c内を上から下へ磁束が通過する。
【0055】
次に、可動部の構造について説明する。
図10に示すように、軸部62は、回転軸AX2の方向に沿って延びる棒状材である。回転板65は、回転軸AX2の方向に直交するように配置される円形平面を有する円板状をなし、磁性材料で構成される。回転板65は軸部62に対して固定される。
【0056】
図10に示すように、軸部62は、ラジアル軸受72、73によって回転自在に支持され、上側の先端部62aが支持部材70によってピボット支持される。上側のラジアル軸受72は、プッシャ71によって下方向に付勢され、プッシャ71は、軸部62の外周面と第1ヨーク66aの内周面との間において上下位置が維持されるように配置されたオーリング75によって支持されている。これによってラジアル軸受72は、回転軸AX2の方向の所定位置で支持される。また、軸部62の下部は、フレーム80に固定されたラジアル軸受73によって回転可能に支持される。
【0057】
ブレーキ付与コイル61に対して制御部90から電流が印加されると、上述したような磁界が発生し、回転板65においては上下方向に沿った方向の磁束が通る。回転板65の内部では、径方向に沿った磁束密度はわずかである。
【0058】
磁気粘性流体64においては、ブレーキ付与コイル61による磁界が生じていないときには、磁性粒子は溶媒内で分散されている。したがって、回転板65に制動トルクがはたらかず、軸部62に連結して設けられた伝達ギヤ63と噛み合った第1ギヤ51と第2ギヤ52に対してブレーキ力はほとんど与えられない。よって、操作者は、ブレーキ付与部60から大きなブレーキ力を受けずに、回転体50を回転操作することができる。
【0059】
一方、ブレーキ付与コイル61に電流を印加して磁界を発生させると、磁気粘性流体64には上下方向に沿った磁界が与えられる。この磁界により、磁気粘性流体64中で分散していた磁性粒子は磁力線に沿って集まり、上下方向に沿って並んだ磁性粒子が磁気的に互いに連結される。この状態において、連結された磁性粒子による抵抗力(制動トルク)が回転板65にはたらくため、軸部62に連結された伝達ギヤ63から、これに噛み合う第1ギヤ51と第2ギヤ52にブレーキ力が与えられる。よって、回転体50を回転操作すると、磁界を発生させていない状態と比べて操作者に抵抗力を感じさせることができる。磁界の強度を変化させるようにブレーキ付与コイル61に印加する電流を制御すると、制動トルクの増減に伴って操作者の感じる抵抗力を増減させることができ、操作感触を変化させることができる。これにより、トルク付与部40の与える駆動トルクの可変制御に加えて、ブレーキ付与部60の制動トルクによって所望の大きさのブレーキ力を自在に可変制御することが可能となるため、回転体50を操作する操作者に対して多様な操作感触を与えることができる。
【0060】
制御部90においては、検出素子33によって検出された回転角度が、予め設定した所定角度に至ったときにブレーキ付与コイル61に対して所定の電流を印加する。これによって生じる制動トルクによって、伝達ギヤ63から、これに噛み合う第1ギヤ51と第2ギヤ52に対して強いブレーキ力が与えられ、回転体50の操作者には仮想的な壁に当たって停まったような操作感触を与えられる(エンドストップ状態)。
【0061】
ここで、上述のように、第2ギヤ52においては、ばね54a、54b、54cの弾性力によって、回転体50の周方向50cに付勢されている。伝達ギヤ63と噛み合う第1ギヤ51との間、及び、伝達ギヤ63と噛み合う第2ギヤ52との間には、それぞれ噛み合いのための遊びがあるが、第1ギヤ51と第2ギヤ52の歯は周方向50cにピッチずれした状態で伝達ギヤ63と噛み合っている。エンドストップ状態で回転体50を同方向に回転させようすると、第1ギヤ51と第2ギヤ52に対して強いブレーキ力がかかっているため、第1ギヤ51と第2ギヤ52の歯のピッチずれは小さく、又は、なくなっている。エンドストップ状態を解除する方向に回転体50を回転操作するか、または回転体50を操作する力を弱めたときには、ばね54a、54b、54cの弾性力によって、ピッチずれが回復する。このため、バックラッシュを抑えることが可能となる。
【0062】
エンドストップ状態の解除は、フレーム80に設けた歪みゲージ81による検出結果に基づいて行う。
図1に示すように、歪みゲージ81は、ブレーキ付与部60が固定されたフレーム80において上下に延びる一対の側壁80aの一方に設けられており、フレーム80に生じた歪みを検出し、検出結果は制御部90へ出力される。上述のようにフレーム80は固定部20に固定されており、エンドストップ状態において強いブレーキ力がかかったときに回転体50を同方向に回転させようとすると、第1ギヤ51と第2ギヤ52から伝達ギヤ63を通じてフレーム80に対して力が加えられ、フレーム80に歪みが生ずる。一方、エンドストップ状態において回転体50を操作する力を弱めたときには、フレーム80に生じていた歪みが回復する。回転体50を逆方向に操作すると、フレーム80に生じていた歪みが解消し、もしエンドストップ解除されない場合には再びフレーム80に逆向きの歪みが生ずる。このとき、制御部90では、歪みゲージ81からの検出結果が所定値を超えたときに、ブレーキ付与コイル61に与えていた電流を減少させて、エンドストップ状態を解除させる。したがって、回転体50の操作者に対して引っかかり感を与えることがなくなる。
なお、本実施形態では、歪みゲージ81を1つだけ設けていたが、2つ以上設けることによってフレーム80に生じた歪みをより精密に検出することもできる。
【0063】
以上のように構成されたことから、上記実施形態によれば、次の効果を奏する。
(1)回転体50やトルク付与部40といった回転機構内に配線を設けることがなくなるため、回転機構を簡単な構成とすることができ、これによって、回転体50の駆動軸たる回転軸AX1の方向において小型化が可能な入力装置を実現できる。
【0064】
(2)コイル部41の各空心コイルに与える電流を制御することによって、回転体に回転の駆動トルクを付与することができる。また、非磁性体の支持部が空心コイルを保持する構成であるため、磁石の相対位置によって磁気吸引力が変化することを抑えることができる。
【0065】
(3)上記ブレーキ付与部60の構成により、トルク付与部40の与える駆動トルクの可変制御に加えて、制動トルクによって所望の大きさのブレーキ力を自在に可変制御することが可能となるため、回転体50を操作する操作者に対して多様な操作感触を与えることができる。
【0066】
(4)第1ギヤ51と第2ギヤ52が同一のピッチで歯が設けられ、且つ、ピッチズレするように周方向に付勢されているため、回転体50へのブレーキ力の付与の解除時などにおいてバックラッシュを抑えることが可能となる。
【0067】
(5)固定部20とブレーキ付与部60とを互いに接続するフレーム80に、フレーム80の歪みを検出する歪みゲージ81を設けているため、歪みゲージ81による検出結果に基づいて、回転体50に対して与えるブレーキ力を解除することができる。歪みゲージ81をフレーム80の外面に対して、接着等によって貼り付けるだけであるので容易に製造でき、また、歪みゲージ81からの配線の引き回しが簡素にできるため、回転軸AX2方向のサイズを抑えることが可能となる。
【0068】
(6)操作部としての回転体50をダイレクトにトルク制御することができるため、操作感触に優れた入力装置を実現できる。
(7)回転体50、トルク付与部40、支持部21、及び、固定部20の開口22が上下方向に沿って連なった中空の空間を形成しているため、この空間に光を与えるような機能部品を配置できる。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的又は本発明の思想の範囲内において改良又は変更が可能である。