特許第6805372号(P6805372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6805372液晶表示素子用シール剤、硬化物、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805372
(24)【登録日】2020年12月7日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤、硬化物、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20201214BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   C09K3/10 B
   C09K3/10 L
   C09K3/10 Q
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-568268(P2019-568268)
(86)(22)【出願日】2019年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2019046305
(87)【国際公開番号】WO2020116267
(87)【国際公開日】20200611
【審査請求日】2020年8月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-230020(P2018-230020)
(32)【優先日】2018年12月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋
【審査官】 岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4358505(JP,B2)
【文献】 特開2018−104699(JP,A)
【文献】 特開2016−135860(JP,A)
【文献】 特開2018−5251(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/047496(WO,A1)
【文献】 特開2018−163373(JP,A)
【文献】 特開2018−22192(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/124023(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/207730(WO,A1)
【文献】 特開2017−204004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶滴下工法による液晶表示素子の製造に用いられる液晶表示素子用シール剤であって、
硬化性樹脂と重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有し、
硬化物の25℃における貯蔵弾性率が0.8GPa未満であり、
硬化物のガラス転移温度が25℃以下であり、
JIS Z 0208に準拠して測定される、厚さ500μmの硬化物の60℃、90%RHの環境下における透湿度が120g/m・24hr以下である
ことを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【請求項2】
無機フィラーを含有する請求項1記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項3】
前記無機フィラーは、平均粒子径が2μm以下である請求項2記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項4】
前記硬化性樹脂は、部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂を含む請求項1、2又は3記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤の硬化物。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料。
【請求項7】
請求項1、2、3若しくは4記載の液晶表示素子用シール剤の硬化物、又は、請求項6記載の上下導通材料の硬化物を有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟応答性に優れる表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該表示素子用シール剤の硬化物、並びに、該表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を有する表示素子として、液晶表示素子や有機EL表示素子等が広く利用されている。これらの表示素子では、通常、硬化性樹脂組成物を用いてなるシール剤によって液晶や発光層等の封止が行われている。
例えば、液晶表示素子として、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような、光熱併用硬化型のシール剤を用いた液晶滴下工法によって作製された液晶表示素子が開示されている。
【0003】
従来、表示素子用基板としては、主にガラス基板が用いられていたが、近年、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、トリアセチルセルロース等を用いたフレキシブル基板が注目されている。また、近年、折り曲げることのできるディスプレイが注目されているが、従来のシール剤では、基板を曲げた際にシール部分が追従できずに割れ、表示不良が生じやすいという問題があった。そのため、シール剤には、フレキシブル基板を用いた場合の屈曲時等における応答性(柔軟応答性)が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、柔軟応答性に優れる表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該表示素子用シール剤の硬化物、並びに、該表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液晶滴下工法による液晶表示素子の製造に用いられる液晶表示素子用シール剤であって、硬化性樹脂と重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有し、硬化物の25℃における貯蔵弾性率が0.8GPa未満であり、硬化物のガラス転移温度が25℃以下であり、JIS Z 0208に準拠して測定される、厚さ500μmの硬化物の60℃、90%RHの環境下における透湿度が120g/m・24hr以下である液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者は、硬化物の25℃における貯蔵弾性率を特定値未満とし、硬化物のガラス転移温度を特定値以下となるようにし、かつ、特定の条件で測定された硬化物の透湿度を特定値以下とすることにより、柔軟応答性に優れる表示素子用シール剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の表示素子用シール剤における、柔軟応答性に優れるという効果は、本発明の表示素子用シール剤がフレキシブル基板を有する表示素子に用いられる場合に特に顕著に発揮される。
【0008】
本発明の表示素子用シール剤は、硬化物の25℃における貯蔵弾性率が0.8GPa未満である。上記硬化物の25℃における貯蔵弾性率が0.8GPa未満であり、かつ、後述する硬化物のガラス転移温度が25℃以下であることにより、本発明の表示素子用シール剤が柔軟応答性に優れるものとなり、フレキシブル基板を有する表示素子に用いられた場合でも、屈曲時等における表示不良の発生を抑制することができるものとなる。上記硬化物の25℃における貯蔵弾性率の好ましい上限は0.7GPa、より好ましい上限は0.6GPaである。
また、被着体を貼り合わせた際の接着性等の観点から、上記硬化物の25℃における貯蔵弾性率の好ましい下限は0.05GPa、より好ましい下限は0.1GPaである。
なお、上記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて、試験片幅5mm、厚み0.35mm、掴み幅25mm、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で測定することができる。
また、貯蔵弾性率を測定する硬化物としては、シール剤にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱して硬化させたものが用いられる。
【0009】
本発明の表示素子用シール剤は、硬化物のガラス転移温度の上限が25℃である。上記硬化物のガラス転移温度が25℃以下であり、かつ、上述した硬化物の25℃における貯蔵弾性率が0.8GPa未満であることにより、本発明の表示素子用シール剤が柔軟応答性に優れるものとなり、フレキシブル基板を有する表示素子に用いられた場合でも、屈曲時等における表示不良の発生を抑制することができるものとなる。上記硬化物のガラス転移温度の好ましい上限は20℃、より好ましい上限は15℃である。
また、透湿防止性の観点から、上記硬化物のガラス転移温度の好ましい下限は−30℃、より好ましい下限は−25℃である。
なお、本明細書において上記「ガラス転移温度」は、動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)の極大のうち、ミクロブラウン運動に起因する極大が現れる温度を意味する。上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置等を用いた従来公知の方法により測定することができる。
また、上記ガラス転移温度を測定する硬化物としては、上記貯蔵弾性率を測定する硬化物と同様にしてシール剤を硬化させたものが用いられる。
【0010】
本発明の表示素子用シール剤は、JIS Z 0208に準拠して測定される、厚さ500μmの硬化物の60℃、90%RHの環境下における透湿度が120g/m・24hr以下である。上記透湿度が120g/m・24hr以下であることにより、得られる表示素子が耐湿信頼性に優れるものとなる。上記透湿度は、90g/m・24hr以下であることが好ましい。
上記透湿度を測定する硬化物としては、上記貯蔵弾性率を測定する硬化物と同様にしてシール剤を硬化させたものが用いられる。
【0011】
本発明の表示素子用シール剤において、硬化物の25℃における貯蔵弾性率、硬化物のガラス転移温度、及び、硬化物の透湿度をそれぞれ上述した範囲とする方法としては、後述する硬化性樹脂等の種類や含有割合を調整する方法が好適である。
【0012】
本発明の表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、柔軟骨格を有する硬化性樹脂を含むことが好ましい。上記硬化性樹脂が上記柔軟骨格を有する硬化性樹脂を含むことにより、硬化物の25℃における貯蔵弾性率及び硬化物のガラス転移温度をそれぞれ上述した範囲とすることが容易となる。
【0013】
上記柔軟骨格を有する硬化性樹脂の有する柔軟骨格としては、例えば、環状ラクトンの開環構造、ポリアルキレンオキサイド構造、共役ジエンに由来するゴム構造、ポリシロキサン構造等が挙げられる。なかでも、環状ラクトンの開環構造が好ましい。
上記環状ラクトンとしては、例えば、γ−ウンデカラクトン、ε−カプロラクトン、γ−デカラクトン、σ−ドデカラクトン、γ−ノナノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−バレロラクトン、σ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、σ−ヘキサノラクトン、7−ブチル−2−オキセパノン等が挙げられる。なかでも、γ−ヘプタノラクトンが好ましい。
【0014】
上記柔軟骨格を有する硬化性樹脂としては、例えば、柔軟骨格を有する(メタ)アクリル化合物、柔軟骨格を有するエポキシ化合物等が挙げられる。なかでも、柔軟骨格を有する(メタ)アクリル化合物が好ましい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0015】
上記柔軟骨格を有する硬化性樹脂としては、具体的には例えば、ラクトン変性ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ラクトン変性ビスフェノールE型エポキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールE型エポキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールE型エポキシ(メタ)アクリレート、末端アミノ基含有ブタジエン−アクリロニトリル(ATBN)変性エポキシ(メタ)アクリレート、末端カルボキシル基含有ブタジエン−アクリロニトリル(CTBN)変性エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル変性イソプレンゴム、(メタ)アクリル変性ブタジエンゴム、(メタ)アクリル変性シリコーンゴム、ラクトン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ラクトン変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ラクトン変性ビスフェノールE型エポキシ樹脂、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エチレンオキサイド変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エチレンオキサイド変性ビスフェノールE型エポキシ樹脂、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ATBN変性エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂、エポキシ変性イソプレンゴム、エポキシ変性ブタジエンゴム、エポキシ変性シリコーンゴム等が挙げられる。
【0016】
上記硬化性樹脂全体100重量部中における上記柔軟骨格を有する硬化性樹脂の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は90重量部である。上記柔軟骨格を有する硬化性樹脂の含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用シール剤の硬化物の25℃における貯蔵弾性率、及び、硬化物のガラス転移温度をそれぞれ上述した範囲とすることが容易となる。上記柔軟骨格を有する硬化性樹脂の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は80重量部である。
【0017】
上記硬化性樹脂は、得られる表示素子用シール剤の接着性を向上させる等の目的で、上記柔軟骨格を有する硬化性樹脂以外のその他の硬化性樹脂を含有することが好ましい。上記その他の硬化性樹脂としては、上記柔軟骨格を有する硬化性樹脂以外のその他のエポキシ化合物やその他の(メタ)アクリル化合物が好適に用いられる。
【0018】
上記その他のエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0019】
また、上記硬化性樹脂は、上記その他のエポキシ化合物として、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を含有してもよい。このような化合物としては、例えば、2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記硬化性樹脂は、接着性の観点から、上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0020】
上記その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記その他の(メタ)アクリル化合物は、反応性の高さから分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
【0021】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0022】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、上述したその他のエポキシ化合物と同様のものが挙げられる。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソシアネート化合物に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0027】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記三価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0029】
本発明の表示素子用シール剤は、硬化性樹脂中の(メタ)アクリロイル基とエポキシ基との含有割合((メタ)アクリロイル基:エポキシ基)をモル比で50:50〜95:5とすることが好ましい。
【0030】
本発明の表示素子用シール剤は、重合開始剤及び/又は熱硬化剤を含有する。
上記重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0031】
上記ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0032】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン、1,2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−(フェニルチオ)フェニル)−1,2−オクタンジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0033】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤が好ましい。
なお、本明細書において高分子アゾ化合物とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイルオキシ基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0034】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、硬化性樹脂へ容易に混合することができ、得られる表示素子用シール剤を液晶表示素子に用いる場合には液晶への悪影響を防止することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0035】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記高分子アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601、VPS−0501、VPS−1001(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ化合物として市販されているものとしては、例えば、V−65、V−501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0036】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0037】
上記カチオン重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤を好適に用いることができる。上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生タイプのものであってもよいし、非イオン性光酸発生タイプであってもよい。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等が挙げられる。
【0038】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−170(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
【0039】
上記重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0040】
上記重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記重合開始剤の含有量が0.1重量部以上であることにより、得られる表示素子用シール剤が硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量が30重量部以下であることにより、得られる表示素子用シール剤が保存安定性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は10重量部であり、更に好ましい上限は5重量部である。
【0041】
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、固形の有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
上記熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0042】
上記固形の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の有機酸ヒドラジド、日本ファインケム社製の有機酸ヒドラジド、味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
上記大塚化学社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記日本ファインケム社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、MDH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH−J、アミキュアUDH等が挙げられる。
【0043】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量が1重量部以上であることにより、得られる表示素子用シール剤が熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量が50重量部以下であることにより、得られる表示素子用シール剤が塗布性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0044】
本発明の表示素子用シール剤は、無機フィラーを含有することが好ましい。
硬化物の25℃における貯蔵弾性率及び硬化物のガラス転移温度をそれぞれ上述した範囲とした場合、得られる表示素子用シール剤が透湿防止性に劣るものとなることがある。そこで、上記無機フィラーを含有することにより、本発明の表示素子用シール剤は、透湿防止性にも優れるものとなる。
【0045】
上記無機フィラーとしては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、シリカが好ましい。
上記無機フィラーは、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0046】
上記無機フィラーの平均粒子径の好ましい上限は2μmである。上記無機フィラーの平均粒子径が2μm以下であることにより、得られる表示素子用シール剤が柔軟応答性と透湿防止性とを両立する効果により優れるものとなる。上記無機フィラーの平均粒子径のより好ましい上限は1.5μmである。
また、塗布性等の観点から、上記無機フィラーの平均粒子径の好ましい下限は0.1μm、より好ましい下限は0.2μmである。
なお、本明細書において上記無機フィラーの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いて、5000倍の倍率で観察した10個の粒子の粒子径(長径)の平均値を意味する。
【0047】
本発明の表示素子用シール剤100重量部中における上記無機フィラーの含有量の好ましい下限は5重量部である。上記無機フィラーの含有量が5重量部以上であることにより、得られる表示素子用シール剤が柔軟応答性と透湿防止性とを両立する効果により優れるものとなる。上記無機フィラーの含有量のより好ましい下限は10重量部である。
また、塗布性等の観点から、上記無機フィラーの含有量の好ましい上限は70重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0048】
本発明の表示素子用シール剤は、有機フィラーを含有してもよい。
上記有機フィラーとしては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
【0049】
本発明の表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0050】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が好適に用いられる。これらのシランカップリング剤は、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、得られる表示素子用シール剤を液晶表示素子に用いる場合には液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができる。
上記シランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0051】
本発明の表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用シール剤が接着性により優れるものとなり、得られる表示素子用シール剤を液晶表示素子に用いる場合には液晶汚染の発生を抑制できるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0052】
本発明の表示素子用シール剤は、上記遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0053】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
上記遮光剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0054】
上記チタンブラックは、波長300nm以上800nm以下の光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370nm以上450nm以下の光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。本発明の表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
【0055】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを含有する本発明の表示素子用シール剤を用いて製造した表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する表示素子を実現することができる。
【0056】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、三菱マテリアル社製のチタンブラック、赤穂化成社製のチタンブラック等が挙げられる。
上記三菱マテリアル社製のチタンブラックとしては、例えば、12S、13M、13M−C、13R−N、14M−C等が挙げられる。
上記赤穂化成社製のチタンブラックとしては、例えば、ティラックD等が挙げられる。
【0057】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0058】
上記遮光剤の一次粒子径は、表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる表示素子用シール剤の描画性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0059】
本発明の表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用シール剤の接着性、硬化後の強度、及び、描画性の悪化を抑制しつつ、遮光性を向上させる効果により優れるものとなる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0060】
本発明の表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、反応性希釈剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他のカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0061】
本発明の表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、無機フィラーやシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0062】
本発明の表示素子用シール剤は、液晶表示素子用シール剤として好適に用いることができる。
【0063】
本発明の表示素子用シール剤は、光照射及び/又は加熱により硬化させることができる。本発明の表示素子用シール剤の硬化物もまた、本発明の1つである。
【0064】
本発明の表示素子用シール剤に導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0065】
上記導電性微粒子は特に限定されず、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0066】
本発明の表示素子用シール剤の硬化物、又は、本発明の上下導通材料の硬化物を有する表示素子もまた、本発明の1つである。本発明の表示素子としては、液晶表示素子が好適である。
本発明の表示素子用シール剤を用いて液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられ、具体的には例えば、以下の各工程を有する方法等が挙げられる。
まず、ITO薄膜等の電極を有する2枚の透明基板の一方に、本発明の表示素子用シール剤をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布して枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下塗布し、真空下で他方の透明基板を重ね合わせる工程を行う。その後、シールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程、及び、仮硬化させたシール剤を加熱して本硬化させる工程を行う方法により、液晶表示素子を得ることができる。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、柔軟応答性に優れる表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該表示素子用シール剤の硬化物、並びに、該表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0069】
(柔軟骨格を有する樹脂Aの合成)
反応フラスコに2−ヒドロキシエチルアクリレート100重量部とγ−ヘプタノラクトン550重量部とを入れ、重合禁止剤としてハイドロキノン0.5重量部を加え、マントルヒーターで80℃に加熱して10時間撹拌した。撹拌生成物に無水フタル酸125重量部を加えて更に5時間撹拌した。
続いて、ビスフェノールFジグリシジルエーテル140重量部を加え、80℃で5時間撹拌することで柔軟骨格を有する樹脂Aを得た。
なお、H−NMR、及び、FT−IR分析により、柔軟骨格を有する樹脂Aは、両末端にアクリロイル基を有し、かつ、主鎖に柔軟骨格としてγ−ヘプタノラクトンの開環構造を有することを確認した。
【0070】
(実施例1〜7、比較例1、2)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌機を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1〜7、比較例1、2の表示素子用シール剤を調製した。上記遊星式撹拌機としては、あわとり練太郎(シンキー社製)を用いた。
得られた各表示素子用シール剤について、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、120℃で1時間加熱することにより硬化物を得た。
得られた硬化物について、動的粘弾性測定装置を用いて、試験片幅5mm、厚み0.35mm、掴み幅25mm、昇温速度10℃/分、周波数5Hzの条件で25℃における貯蔵弾性率を測定した。また、損失正接(tanδ)の極大値の温度をガラス転移温度として求めた。上記動的粘弾性測定装置としては、DVA−200(IT計測制御社製)を用いた。貯蔵弾性率及びガラス転移温度の測定結果を表1に示した。
また、実施例及び比較例で得られた各表示素子用シール剤を、平滑な離型フィルム上にコーターを用いて塗布した。次いで、塗布したシール剤にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、120℃で1時間加熱することによって透湿度測定用フィルム(厚さ500μm)を得た。JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じた方法で透湿度試験用カップを作製し、得られた透湿度測定用フィルムを取り付け、60℃、90%RHの恒温恒湿オーブンに投入して透湿度を測定した。透湿度の測定結果を表1に示した。
【0071】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0072】
(柔軟応答性)
実施例及び比較例で得られた各表示素子用シール剤にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、120℃で1時間加熱して厚さ300μmのフィルムを作製し、試験片とした。20枚の試験片について、試験片の長辺の約10倍の直径を有するロールの円弧に沿って90度屈曲させた後平坦状に戻し、次に反対方向に90度屈曲させた後平坦状に戻す操作を毎分20回の速度で10分間行った後、各試験片の状態を目視にて観察した。
その結果、全ての試験片に変形が確認されなかった場合を「◎」、1〜2枚の試験片に変形が確認された場合を「○」、3〜5枚の試験片に変形が確認された場合を「△」、6枚以上の試験片に変形が確認された場合を「×」として評価した。
【0073】
(接着性)
25mm×60mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、実施例及び比較例で得られた各表示素子用シール剤を10mmの幅で、厚み40μmとなるように塗布した。次いで、塗布したシール剤にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、120℃で1時間加熱することによって試験片を作製した。得られた試験片について、引張試験機(島津製作所社製、「EZ Graph」)を用いて、25℃、剥離速度300mm/minの条件で180度剥離強度を測定した。
【0074】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、柔軟応答性に優れる表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該表示素子用シール剤の硬化物、並びに、該表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び表示素子を提供することができる。