(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る血液バッグシステム10は、医療従事者等のユーザにより、
図1に示すように遠心分離移送装置12にセットされる。遠心分離移送装置12は、血液バッグシステム10の血液を遠心分離して複数種類の血液成分を生成し、生成した血液成分を適宜のバッグ20に移送して保存する。以下では、血液バッグシステム10と遠心分離移送装置12とを含む構成を遠心分離システム14という。
【0014】
血液バッグシステム10は、遠心分離前の採血に使用される図示しない前処理部と、遠心分離により血液成分を生成して個別に保存する分離処理部16と、前処理部と分離処理部16とを接続する中継チューブ18とを有する。分離処理部16は、遠心分離前に、前処理部に繋がる中継チューブ18が切断されて
図1中に示される状態となり、遠心分離移送装置12にセットされる。
【0015】
血液バッグシステム10の前処理部は、供血者から全血を採取し、また全血から白血球等の血液成分を除去する。このため前処理部は、図示しない採血針、採血バッグ、初流血バッグ、フィルタ(例えば、白血球除去フィルタ)等を有し、複数のチューブ30により各部材を接続することで構成される。具体的には、前処理部は、採血針を通して採取したドナーの全血のうち最初の血液を初流血バッグに貯留し、その後に残りの血液を採血バッグに貯留する。さらに前処理部は、採血バッグに貯留された全血をフィルタに通すことで、フィルタにおいて白血球を除去する。そして白血球除去後の血液は、中継チューブ18を介してフィルタに接続された分離処理部16に移送される。
【0016】
血液バッグシステム10の分離処理部16は、複数のバッグ20(血液バッグ22、PPPバッグ24及び薬液バッグ26)を有し、複数のチューブ30により各バッグ20を接続することで構成される。
【0017】
血液バッグ22は、血液バッグシステム10の製品提供状態で、前処理部と繋がる中継チューブ18に直接接続されている。血液バッグ22は、採血時においてフィルタを経由することで白血球が除去された血液を貯留する第1貯留空間22aを有する第1バッグである。この血液バッグ22は、遠心分離移送装置12にセットされ、遠心分離移送装置12の動作により遠心力が付与される。これにより血液バッグ22の除去血液は、比重の異なる乏血小板血漿(platelet poor plasma:PPP)、濃厚赤血球(red blood cells:RBC)等の血液成分に遠心分離される。そして、血液バッグ22は、遠心分離後に遠心分離移送装置12の動作下に、PPPが移送されることで、残留したRBCのみを貯留する。
【0018】
PPPバッグ24は、血液バッグ22からPPPが供給されることで、このPPPを第2貯留空間24aに保存する第2バッグ(血漿バッグ)である。一方、薬液バッグ26は、MAP液、SAGM液、OPTISOL等の赤血球保存液(以下、添加溶液という)を第3貯留空間26aに予め収容している第3バッグである。
【0019】
また、分離処理部16は、遠心分離移送装置12にセットされる前に、中継チューブ18が所定間隔毎にシールされてセグメントチューブ28が形成される。
【0020】
分離処理部16の複数のチューブ30は、分岐コネクタ32(Y型コネクタ:分岐部)を介して複数に分岐している。詳細には、複数のチューブ30は、血液バッグ22と分岐コネクタ32を接続する第1チューブ34、PPPバッグ24と分岐コネクタ32を接続する第2チューブ36、及び薬液バッグ26と分岐コネクタ32を接続する第3チューブ38を含む。第1チューブ34は第1流路34aを有し、第2チューブ36は第2流路36aを有し、第3チューブ38は第3流路38aを有する。
【0021】
また、分岐コネクタ32は、第1チューブ34が接続される第1ポート32a、第2チューブ36が接続される第2ポート32b、及び第3チューブ38が接続される第3ポート32cを有し、第1〜第3ポート32a〜32cが一体成形されている。第1〜第3ポート32a〜32cは、図示しない内部流路により互いに連通しており、これにより第1〜第3チューブ34、36、38の各流路を互いに連通している。
【0022】
第1チューブ34の血液バッグ22側の端部には、破断可能であり、ユーザによる破断操作に伴い内部流路が開通する封止部材40が設けられている。同様に、第3チューブ38の薬液バッグ26側の端部には、破断可能な封止部材42が設けられている。封止部材40、42は、破断操作が行われるまで第1流路34a及び第3流路38aの各々を遮断し、血液バッグ22内の血液や薬液バッグ26内の添加溶液を他のバッグ20に移送することを防止する。
【0023】
また、血液バッグシステム10は、分岐コネクタ32の近傍位置の第2チューブ36及び第3チューブ38に亘って取り付けられる1つのクランプ100を備える。クランプ100は、第2チューブ36の第2流路36aと第3チューブ38の第3流路38aを開放状態から閉塞状態に切り換え可能に構成される。このクランプ100の具体的な構成については後に詳述する。
【0024】
一方、血液バッグシステム10の分離処理部16がセットされる遠心分離移送装置12は、箱状の基体44と、基体44の上面を開閉可能な蓋46と、基体44に設けられる遠心ドラム48とを備える。また、遠心分離移送装置12の基体44には、遠心ドラム48を回転させる図示しないモータ、遠心分離移送装置12の動作を制御する制御部50、及びユーザが確認及び操作を行うための操作表示部52が設けられている。
【0025】
遠心ドラム48は、分離処理部16をセット可能な単位セットエリア54を複数(6つ)有する。1つの単位セットエリア54は、その高さがバッグ20の長手方向長さよりも長く、また遠心ドラム48の回転中心に対し60°の範囲に設定されている。つまり、6つの単位セットエリア54は、周方向に沿って隙間なく並ぶことで、環状の構造部である遠心ドラム48を構成する。
【0026】
図2に示すように、単位セットエリア54は、血液バッグ22を収容する血液バッグポケット56と、PPPバッグ24を収容するPPPバッグポケット58と、薬液バッグ26を収容する薬液バッグポケット60と、を遠心ドラム48の径方向外側位置に備える。
【0027】
血液バッグポケット56は、単位セットエリア54の周方向中央部に設けられ、PPPバッグポケット58や薬液バッグポケット60よりも大きな容積を有する。PPPバッグポケット58と薬液バッグポケット60は、血液バッグポケット56よりも径方向外側において周方向に並んで設けられる。
【0028】
また、単位セットエリア54の上面54aは、血液バッグシステム10の複数のチューブ30を配置し保持するように構成されている。上面54aにおいて血液バッグポケット56よりも径方向内側の中央領域54a1には、第1チューブ34及びセグメントチューブ28の一部分が配置される。また中央領域54a1には、血液バッグポケット56の開口を開閉する蓋体62が設けられている。さらに蓋体62に閉塞される第1チューブ34の配置位置には、封止部材40を破断する破断部64の一部、及び第1チューブ34を流動する血液の状態を検出するセンサ66が設けられている。
【0029】
上面54aの左領域54a2には、中央領域54a1を通った第1チューブ34の一部分、分岐コネクタ32、第2チューブ36及び第3チューブ38の一部分が配置される。この左領域54a2には、分岐コネクタ32を保持するホルダ150、第2チューブ36の第2流路36aを開閉するPPP用クランプ70、及び第3チューブ38の第3流路38aを開閉する薬液用クランプ72が設けられている。
【0030】
上面54aの右領域54a3には、セグメントチューブ28の複数の密閉チューブ28a(
図1参照)を収容するセグメントポケット74が設けられている。
【0031】
さらに、単位セットエリア54のPPPバッグポケット58や薬液バッグポケット60よりも径方向外側には、上面54aよりも上方に突出するチューブ保持部76が設けられている。チューブ保持部76は、第2チューブ36を配置させるガイド溝部79を有する。
【0032】
また、単位セットエリア54は、遠心分離後の血液バッグ22を押圧するスライダ82を血液バッグポケット56の径方向内側に備える。スライダ82は、制御部50(
図1参照)の制御下に、遠心ドラム48の径方向に沿って進退する。
【0033】
上記の単位セットエリア54では、ユーザにより、除去血液を貯留した血液バッグ22が血液バッグポケット56に、空のPPPバッグ24がPPPバッグポケット58に、薬液を貯留した薬液バッグ26が薬液バッグポケット60にそれぞれ収容される。そして、単位セットエリア54は、遠心ドラム48の回転により血液バッグ22の除去血液を遠心分離し、遠心分離後にスライダ82を進出して血液バッグ22を押圧する。これにより、血液バッグ22内で遠心分離により生じたPPPがPPPバッグ24に移送され、PPPの移送後は血液バッグ22にRBCが残留する。PPPの移送後に、血液バッグシステム10は、ユーザにより遠心分離移送装置12から取り出される。
【0034】
次に、本実施形態に係る血液バッグシステム10のクランプ100について、
図3を参照して説明する。
【0035】
クランプ100は、上記したように、血液バッグシステム10の第2チューブ36及び第3チューブ38に亘って取り付けられ、第2流路36a及び第3流路38aを開放状態から閉塞状態に切り換え可能に構成される。さらにクランプ100は、閉塞状態の第3チューブ38がクランプ100から離脱できるように構成される。この離脱により第3チューブ38の第3流路38aが開放される。
【0036】
具体的には、クランプ100は、樹脂材料又は金属材料によって構成される板状の本体102を備える。そして、クランプ100は、本体102を貫通し第2チューブ36が配置される第1挿通孔110、及び本体102を貫通し第3チューブ38が配置される第2挿通孔120を有する。
【0037】
本体102は、チューブ30よりも高い剛性(大きな弾性率、硬質性)を有するように構成される。この本体102は、横長の長方形を呈するベース104と、このベース104の外周を周回する外周枠106と、を含み、本体102を厚み方向から見た正面視で長方形に形成されている。ベース104及び外周枠106は、同じ材料により一体成形されている。
【0038】
ベース104は、血液バッグシステム10の使用時に、第2チューブ36や第3チューブ38に直接接触して第2流路36aや第3流路38aの開放状態及び閉塞状態を切り換える部分を構成する。ベース104は、第1面と第2面とを有する平板状に形成され、第1挿通孔110及び第2挿通孔120は、第1面と第2面の間を厚み方向に貫通している。
【0039】
ベース104は、第2チューブ36の外周面及び第3チューブ38の外周面に対して面接触可能な縁部を構成するために、適宜の厚みを有する。ベース104の厚みは、特に限定されないが、例えば0.5mm〜2mm程度に設定される。
【0040】
外周枠106は、ベース104の剛性を補強するために、ベース104よりも厚みを持つように形成される。外周枠106の長手方向(矢印A方向)一端の厚み方向両側には、一対のフランジ部106aが設けられる。一対のフランジ部106aは、外周枠106の他の箇所(長手方向他端側の短辺106b、一対の長辺106c、106d)よりも本体102の厚み方向に突出する。フランジ部106aは、作業者がクランプ100を押す際に指が当てやすくなるようにするためである。
【0041】
図3及び
図4に示すように、本体102が内側に有する縁部によって、第1挿通孔110及び第2挿通孔120が形成される。第1挿通孔110及び第2挿通孔120の各々は、本体102の短手方向(上下方向:矢印B方向)中央部に並設される。第1挿通孔110の主要箇所(第2チューブ36の第2流路36aの開閉を行う第1空間111)、及び第2挿通孔120の主要箇所(第3チューブ38の第3流路38aの開閉を行う第2空間121)は、共に本体102の長手方向(水平方向)に沿って延在する。すなわち、第1空間111及び第2空間121は、互いに一列に並び、同一方向に延在している。
【0042】
第1空間111は、第2チューブ36の第2流路36aを開放状態とする第1開放部112と、第1開放部112に連なり第2チューブ36の第2流路36aを閉塞状態とする第1閉塞部114と、を含む。さらに、第1挿通孔110は、第1開放部112に連なり第2チューブ36を第1開放部112に導入可能なチューブ導入部116を有する。
【0043】
第1開放部112は、本体102の長手方向中央付近に設けられる。第1開放部112は、本体102の第1円弧縁部112eにより略正円形状の空間に形成され、第2チューブ36の外径以上の直径を有する。例えば、第1開放部112の直径は、第2チューブ36の外径の1.0〜1.5倍程度に設定される。
【0044】
第1閉塞部114は、第1開放部112から本体102のフランジ部106aがある長手方向一端側に向かって延在している。第1閉塞部114は、第2チューブ36の外径よりも狭い幅でベース104の長手方向に延在する一対の第1直線縁部114eによって横長空間に形成されている。一対の第1直線縁部114eは、第2チューブ36が第1閉塞部114に移動した際に、第2チューブ36の外周面を内方に押すことで第2チューブ36の第2流路36aを閉塞する。第2チューブ36が第1開放部112から第1閉塞部114に挿入しやすくなるように、第1挿通孔110は、第1開放部112から第1閉塞部114の奥側に向かって一対の第1直線縁部114eの幅がテーパ状に近接し合う構成でもよい。
【0045】
第1閉塞部114の長手方向一端側は、フランジ部106a付近まで延在し、半円状の第1閉塞縁部114cにより閉じられている。すなわち、第1閉塞部114において第1開放部112に連なる箇所以外は、本体102により囲われている。従って、第1挿通孔110は、第1閉塞部114から本体102の外部に、第2チューブ36が直接離脱することがないように構成される。
【0046】
また、クランプ100は、第1挿通孔110の内側に向かって突出する一対の第1突起118を第1閉塞部114に有する。一対の第1突起118は、第1開放部112の近傍位置に設けられている。なお、一対の第1突起118は、第1開放部112と第1閉塞部114の境界部に設けられてもよい。
【0047】
一対の第1突起118は、一対の第1直線縁部114eの一方と他方にそれぞれ連設されている。一対の第1突起118は、相互に近づく方向に突出していることで第1閉塞部114の幅を狭めている。なお、第1突起118は、一対の第1直線縁部114eのいずれか一方のみに設けられるだけでもよい。
【0048】
より詳細には、各第1突起118は、第1閉塞部114の長手方向に対して傾斜する傾斜辺118aと、丸角の頂部を介して傾斜辺118aに連なり第1閉塞部114の長手方向に直交する直交辺118bとを有する略直角三角形に形成されている。そして傾斜辺118aが第1開放部112側を臨むように設けられ、直交辺118bが第1閉塞縁部114cを臨むように設けられている。このように形成された一対の第1突起118は、第1開放部112から第1閉塞部114への第2チューブ36の移動を許容する一方で、第1閉塞部114から第1開放部112への第2チューブ36の移動を抑止する。
【0049】
チューブ導入部116は、第1開放部112の縦方向(本体102の短手方向)に設けられ、本体102の外部から第2チューブ36を第1開放部112に挿入可能としている。具体的にはチューブ導入部116は、第1円弧縁部112eに連なり、第1閉塞部114の延在方向と略直交する方向に向かって延在する一対の第1直線縁部116eにより構成されている。チューブ導入部116があることで容易に第2チューブ36にクランプ100が挿入できるため、製造時の効率が向上する。なお、チューブ導入部116は設けなくてもよい。
【0050】
一対の第1直線縁部116eは、長辺106dにおいて、第1挿通孔110を本体102の外側に連通させる導入口117を形成している。一対の第1直線縁部116eの幅は、第2チューブ36の直径よりも幅狭に形成される一方で、一対の第1直線縁部114eの幅よりも幅広又は同程度の幅に設定される。
【0051】
一方、第2空間121は、第3チューブ38の第3流路38aを開放状態とする第2開放部122と、第2開放部122に連なり第3チューブ38の第3流路38aを閉塞状態とする第2閉塞部124と、を含む。さらに第2挿通孔120は、第2閉塞部124に連なり第2チューブ36を本体102から離脱可能とするチューブ離脱部126を有する。
【0052】
第2開放部122は、本体102の長手方向他端付近に設けられている。第1開放部112の中心部と第2開放部122の中心部の間隔LOは、本体102の長手方向長さの1/2の寸法で離間している。第2開放部122は、本体102の第2円弧縁部122eにより略正円形状の空間に形成されており、第3チューブ38の外径以上の直径を有する。例えば、第2開放部122の直径は、第3チューブ38の外径の1.0〜1.5倍程度に設定される。
【0053】
第2閉塞部124は、第2開放部122から本体102の長手方向中央部に向かって延在している。第2閉塞部124は、第3チューブ38の外径よりも狭い幅でベース104の長手方向に延在する一対の第2直線縁部124eによって横長空間に形成されている。本実施形態において一対の第2直線縁部124eの幅は、一対の第1直線縁部114eの幅と同一である。一対の第2直線縁部124eは、第3チューブ38が第2閉塞部124に移動した際に、第3チューブ38の外周面を内方に押すことで第3チューブ38の第3流路38aを閉塞する。第3チューブ38が第2開放部122から第2閉塞部124に挿入しやすくなるように、第2挿通孔120は、第2閉塞部124から第2閉塞部124の奥側に向かって一対の第2直線縁部124eの幅がテーパ状に近接し合う構成でもよい。
【0054】
第2閉塞部124の長手方向一端側は、本体102の長手方向中央付近においてチューブ離脱部126に連通している。第2閉塞部124の長手方向一端には、第2直線縁部124eからチューブ離脱部126に滑らかに連続するように一対の円弧曲部124cが形成されている。
【0055】
チューブ離脱部126は、第2閉塞部124の延在方向に対して異なる方向(非平行)に延在している。第2閉塞部124の延在方向に対するチューブ離脱部126の延在方向の曲がり角度θは、特に限定されないが、例えば、20°〜150°程度の範囲に設定されるとよい。仮に曲がり角度θが20°よりも小さい場合には、第3チューブ38が第2閉塞部124から取り出し難くなり、曲がり角度θが150°よりも大きい場合には、第2挿通孔120が第1挿通孔110にぶつかる可能性がある。本実施形態に係る曲がり角度θは略110°に設定している。曲がり角度θが90°〜150°の範囲であれば、第2閉塞部124から第3チューブ38を折り返すように取り出さないで済むので、第3チューブ38を円滑に離脱させることができる。
【0056】
チューブ離脱部126は、一対の第2直線縁部124eの幅と同じ幅の一対の離脱縁部126eにより形成され、本体102の外周枠106まで延在している。一対の離脱縁部126eは、長辺106dにおいて、第2挿通孔120を本体102の外側に連通させる離脱口127を形成している。一対の離脱縁部126eの幅は、一対の第2直線縁部124eの幅と同程度の幅(又は一対の第2直線縁部124eの幅よりも若干幅広)に設定される。
【0057】
また、クランプ100は、第2挿通孔120の内側に向かって突出する一対の第2突起128を第2閉塞部124に有する。一対の第2突起128は、第2開放部122の近傍位置に設けられている。なお、一対の第2突起128は、第2開放部122と第2閉塞部124の境界部に設けられてもよい。
【0058】
一対の第2突起128は、一対の第2直線縁部124eの一方と他方にそれぞれ連設されている。一対の第2突起128は、相互に近づく方向に突出していることで第2閉塞部124の幅を狭めている。第2突起128は、一対の第2直線縁部124eのいずれか一方のみに設けられるだけでもよい。各第2突起128は、第1突起118と同様に、傾斜辺128a及び直交辺128bとを有する略直角三角形に形成される。そして傾斜辺128aが第2開放部122側を臨むように設けられ、直交辺128bが円弧曲部124cを臨むように設けられる。なお、各第1突起118や各第2突起128の形状は、略直角三角形に限定されず、楔状、方形状、返しを有する等、種々の形状を採用してよい。
【0059】
さらに、クランプ100は、第2挿通孔120の内側に向かって突出する一対の離脱側突起130をチューブ離脱部126に備える。一対の離脱側突起130は、第2閉塞部124の近傍位置に設けられている。なお、一対の離脱側突起130は、第2閉塞部124とチューブ離脱部126の境界部に設けられてもよい。
【0060】
一対の離脱側突起130は、一対の離脱縁部126eの一方と他方にそれぞれ連設され、丸角の頂部を有する正三角形を呈している。一対の離脱側突起130は、相互に近づく方向に突出していることでチューブ離脱部126の幅を狭めている。これにより、一対の離脱側突起130は、第2閉塞部124とチューブ離脱部126間における第3チューブ38の不用意な移動を抑止する。なお、第2突起128は、一対の第2直線縁部124eのいずれか一方のみに設けられるだけでもよい。
【0061】
以上のように構成される血液バッグシステム10は、
図3に示すように、第2チューブ36、第3チューブ38に対して上記のクランプ100を取り付けた状態で、医療従事者であるユーザに提供される。或いは、クランプ100は、チューブ30に取り付けられていない状態で提供され、使用時にユーザによりチューブ30に取り付けられてもよい。
【0062】
このクランプ100は、遠心分離移送装置12に対する血液バッグシステム10のセット時に、分岐コネクタ32と共にホルダ150に固定される。このため
図3及び
図5Aに示すように、ホルダ150は、分岐コネクタ32を保持するコネクタ保持部152と、クランプ100をスライド可能に保持するクランプ保持部154とを有する。
【0063】
コネクタ保持部152は、円柱状に形成され、上端部から所定深さ切り欠いたY字状の保持用溝152aを有する。保持用溝152aの延在方向は、分岐コネクタ32の第1〜第3ポート32a〜32cに一致し、また保持用溝152aの溝幅は、第1〜第3ポート32a〜32cを外篏合可能な寸法に設定されている。コネクタ保持部152には、直線状に延在する保持用溝152aの分岐部分を構成する略三角形のチューブガイド156が連設されている。
【0064】
クランプ保持部154は、チューブガイド156の突出方向側に連設されている。クランプ保持部154は、コネクタ保持部152の下部からチューブガイド156を越えて延在する台板158と、台板158の突出端において起立した保持板160と、チューブガイド156により構成され保持板160に対向した対向壁161とを有する。保持板160及び対向壁161は、クランプ100を保持する一対の壁部を構成する。クランプ保持部154は、一対の壁部(保持板160及び対向壁161)に挟まれた配置空間162により、クランプ100を水平方向(矢印A方向)にスライド可能に支持する。
【0065】
チューブガイド156は、保持用溝152aの分岐形状に連続するように徐々に幅広に広がることで、分岐コネクタ32付近の第2チューブ36及び第3チューブ38を直線状に延在させる。対向壁161の下側161aは、保持板160に対し平行に形成されている。この対向壁161の下側161a(台板158側)は、台板158に対し垂直方向に起立する一方で、対向壁161の上側161bは、下側161aに対して配置空間162を広げるように傾斜した傾斜面に形成されている。すなわち、対向壁161の上側161bは、上方に向かって保持板160から離れるように傾斜している。
【0066】
保持板160は、対向壁161の下側161aに対し平行に形成されている。これにより、対向壁161の下側161aと保持板160との間隔(配置空間162の厚み)は、上下方向に一定となっている。配置空間162の厚みは、クランプ100の本体102の厚みに略一致している。クランプ100は、配置空間162に配置された状態でチューブガイド156及び保持板160に適度な摩擦力で挟まれる。また、保持板160の延在方向両端部は、適宜切り欠かれることで一対の段差160aを有している。各段差160aは、第2チューブ36及び第3チューブ38の各下側を支持する。
【0067】
一対の段差160aに挟まれた保持板160の突出上部の横方向長さLHは、クランプ100の第1挿通孔110の第1開放部112と、第2挿通孔120の第2開放部122と間の間隔LO(
図4参照)に略一致する。従って
図3に示すように、血液バッグシステム10のセット時状態で、クランプ100の第2開放部122と保持板160とは、第3チューブ38を挟み込む。また保持板160において第2チューブ36が配置される側の段差160aは、血液バッグシステム10のセット時状態でチューブ導入部116を閉塞する。よって、クランプ100からの第2チューブ36の抜けが防止される。
【0068】
第1実施形態に係る血液バッグシステム10及び遠心分離システム14は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その動作について説明する。
【0069】
血液バッグシステム10は、ユーザにより、
図6に示すように採血ステップ(ステップS1)、白血球除去ステップ(ステップS2)、装置セットステップ(ステップS3)、遠心分離ステップ(ステップS4)、移送ステップ(ステップS5)、クランプ閉塞ステップ(ステップS6)、装置取り出しステップ(ステップS7)、懸架ステップ(ステップS8)、添加溶液注入ステップ(ステップS9)、シール分離ステップ(ステップS10)からなる作業フローが順に実施される。
【0070】
採血ステップにおいて、ユーザは、図示しない前処理部の採血針を用いて供血者の全血を採取し採血バッグに貯留する。白血球除去ステップにおいて、ユーザは、採血バッグから血液バッグ22に全血を移動し、この際に全血がフィルタを通過することで、全血から白血球を除いた除去血液が血液バッグ22に貯留される。
【0071】
ユーザは、除去血液を遠心分離するために、装置セットステップにおいて、血液バッグシステム10の分離処理部16を前処理部から切り離して遠心分離移送装置12にセットする。クランプ100が血液バッグシステム10と別に提供されている場合、ユーザは、分岐コネクタ32の近傍の第2チューブ36及び第3チューブ38にクランプ100を取り付ける。取付において、ユーザは、クランプ100の導入口117から第2チューブ36を差し込み、チューブ導入部116を通して第1開放部112に第2チューブ36を導く。さらにユーザは、クランプ100の離脱口127から第3チューブ38を差し込み、チューブ離脱部126、第2閉塞部124を通して第2開放部122に第3チューブ38を導く。
【0072】
図2に示すように、ユーザは、血液バッグ22を単位セットエリア54の血液バッグポケット56に収容し、また単位セットエリア54の上面54aの所定の経路に沿って第1〜第3チューブ34、36、38をセットする。第1チューブ34は、中央領域54a1の所定の経路に取り回された後、左領域54a2に向かうように配置される。さらに、ユーザは、左領域54a2において第1〜第3チューブ34、36、38を取り回すと共に、分岐コネクタ32及びクランプ100をホルダ150に保持する。第2チューブ36は、分岐コネクタ32から左領域54a2を遠心方向外側に延在し、PPP用クランプ70を通るように配置される。さらに第2チューブ36は、薬液バッグポケット60の径方向外側でチューブ保持部76のガイド溝部79に収容される。第3チューブ38も、分岐コネクタ32から左領域54a2を遠心方向外側に延在し、薬液用クランプ72を通るように配置される。そして、ユーザは、第2チューブ36に繋がるPPPバッグ24をPPPバッグポケット58に収容すると共に、第3チューブ38に繋がる薬液バッグ26を薬液バッグポケット60に収容する。これにより遠心分離移送装置12への血液バッグシステム10のセットが完了する。
【0073】
またセット時に、ユーザは、クランプ100の第1開放部112に第2チューブ36を配置し、クランプ100の第2開放部122に第3チューブ38を配置した状態で、クランプ100を分岐コネクタ32の近傍位置に移動する。そして
図3に示すように、ユーザは、ホルダ150のコネクタ保持部152に分岐コネクタ32を装着し、これと同時にホルダ150のチューブガイド156と保持板160の間の配置空間162に、クランプ100を挿入する。
【0074】
クランプ100は、装置セットステップ時において、第2チューブ36を第1開放部112に配置している一方で、第3チューブ38を第2開放部122に配置している。従って、第2チューブ36の第2流路36a及び第3チューブ38の第3流路38aは開放されている。また第2チューブ36と第3チューブ38は、相互間に保持板160の突出上部が配置されつつ、一対の段差160aに支持されることで、互いに直線状且つ離れる方向に延在している。
【0075】
その後、遠心分離ステップにおいて、遠心分離移送装置12は、制御部50の制御下に遠心ドラム48を回転させることで、血液バッグ22の除去血液を、比重が異なるPPP、RBC等の血液成分に遠心分離する。遠心分離時に、第2及び第3チューブ36、38は、PPP用クランプ70及び薬液用クランプ72により閉塞されており、血液成分の流動が抑制される。
【0076】
また移送ステップにおいて、遠心分離移送装置12は、PPP用クランプ70(
図2参照)のみを開放して、スライダ82により血液バッグ22を押圧する。これにより、血液バッグ22のPPPが、第1チューブ34、分岐コネクタ32、第2チューブ36を順に流動してPPPバッグ24に流入する。
【0077】
移送ステップの後、ユーザは、クランプ100により第2チューブ36及び第3チューブ38を閉塞するクランプ閉塞ステップを行う。この際ユーザは、各単位セットエリア54の上面54aにアクセスして、
図7Aに示すように、ホルダ150に対してクランプ100を長手方向他端側にスライドさせる。このスライド時に、第2チューブ36は、保持板160に接触することで、クランプ100と共にスライドしない。また第3チューブ38は、分岐コネクタ32を介して第2チューブ36に連なっていることで、段差160a上に固定されて、やはりクランプ100と共にスライドしない。
【0078】
よってスライド時に、第2チューブ36に対して第1挿通孔110が相対移動し、第2チューブ36は、一対の第1突起118を乗り越えて第1閉塞部114に移行する。これにより第1閉塞部114が第2チューブ36の第2流路36aを閉塞する。同様にスライド時に、第3チューブ38に対して第2挿通孔120が相対移動し、第3チューブ38は、一対の第2突起128を乗り越えて第2閉塞部124に移行する。これにより第2閉塞部124が第3チューブ38の第3流路38aを閉塞する。
【0079】
また
図5B及び
図5Cに示すように、クランプ100は、スライド時に、フランジ部106aがホルダ150の保持板160に接触した段階で、それ以上のスライドが規制される。この段階では、第2チューブ36が第1閉塞部114に確実に移動すると共に、第3チューブ38が第2閉塞部124に確実に移動した状態となる。
【0080】
次に装置取り出しステップにおいて、遠心分離移送装置12は、スライダ82を後退させ、また薬液用クランプ72(
図2参照)を開放することで、血液バッグシステム10を遠心分離移送装置12から離脱可能とし、ユーザは、血液バッグシステム10を取り出す。この際、チューブガイド156の突出端部の上側161bが傾斜面となっていることで、ユーザは、ホルダ150に保持されているクランプ100に容易にアクセスして、クランプ100を取り外すことができる。そしてユーザは、懸架ステップにおいて、薬液バッグ26を図示しないスタンドに吊り下げ、さらに薬液バッグ26よりも重力方向下側に血液バッグ22を配置する。
【0081】
また、装置取り出しステップ及び懸架ステップにおいて、各第1突起118は、第1閉塞部114から第1開放部112への第2チューブ36の移動を抑止し、各第2突起128は、第2閉塞部124から第2開放部122への第3チューブ38の移動を抑止する。さらに装置取り出しステップ及び懸架ステップにおいて、各離脱側突起130は、第2閉塞部124からチューブ離脱部126に第3チューブ38が不用意に移動することを規制する。
【0082】
添加溶液注入ステップにおいて、ユーザは、クランプ100から第3チューブ38を離脱させると共に、封止部材42を破断することで、薬液バッグ26の添加溶液を血液バッグ22に供給する。第3チューブ38の離脱前において、クランプ100は、第2チューブ36を閉塞している第1閉塞部114が本体102により閉じている一方で、第3チューブ38を閉塞している第2閉塞部124がチューブ離脱部126に直接連通している。このため
図7Bに示すように、ユーザは、第2チューブ36と第3チューブ38の誤認を回避して、チューブ離脱部126に第3チューブ38を容易に移動して本体102の離脱口127から離脱させることができる。特に、チューブ離脱部126は、第2閉塞部124の延在方向に対して異なる方向に延在している。このためユーザが離脱時にクランプ100や第3チューブ38にかける力の方向に対して、第2チューブ36が殆ど影響を受けない。結果的に、クランプ100は、第1閉塞部114から第1開放部112に第2チューブ36が移動することを抑止しつつ、第3チューブ38を離脱させることができる。
【0083】
添加溶液注入ステップ後のシール分離ステップにおいて、ユーザは、第1チューブ34の適宜の位置をシール及び切断する。これにより、血液バッグ22は、添加溶液を含むRBCが貯留された状態で血液バッグシステム10から分離する。同様に、ユーザは、第2チューブ36においてクランプ100よりもPPPバッグ24側をシール及び切断する。これによりPPPバッグ24は、PPPが貯留された状態で血液バッグシステム10から分離する。残された血液バッグシステム10は適宜廃棄される。この際、クランプ100は、血液バッグシステム10から取り出され、他の血液バッグシステム10の使用時に再利用してもよい。
【0084】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、クランプ100は、第1挿通孔110にチューブ導入部116を備えずに、第1挿通孔110全体が非開口の(本体102により閉じた)構成でもよい。これにより、クランプ100からの第2チューブ36の離脱を阻止することができる。この場合、血液バッグシステム10の製造では、第1挿通孔110及び第2挿通孔120を有する本体102を成形した後、先に第2チューブ36を第1挿通孔110に通し、その後に第2チューブ36と分岐コネクタ32の固着を行えばよい。
【0085】
また、クランプ100の本体102には、
図8に示すようなチューブ離脱部140を有する第2挿通孔120が形成されていてもよい。すなわち、チューブ離脱部140は、第2開放部122から延在する第2閉塞部124の延在方向に対して折り返す方向(鋭角をなす方向:20°〜89°の曲がり角度θ)に延在している。チューブ離脱部140は、第2閉塞部124の下側に離脱口141を有し、また折り返し点の幅Wが一対の第2直線縁部124eの幅より狭く形成されている。このように形成されたチューブ離脱部140は、第2閉塞部124に移動した第3チューブ38をチューブ離脱部140に簡単に移動させることがなく、第3チューブ38の不用意な離脱を効果的に抑制できる。
【0086】
〔第2実施形態〕
次に
図9〜
図11Bを参照して、第2実施形態に係る血液バッグシステム10Aについて説明する。血液バッグシステム10Aのクランプ200は、第1開放部212及び第1閉塞部214が並ぶ第1挿通孔210の第1空間211の延在方向と、第2開放部222及び第2閉塞部224が並ぶ第2挿通孔220の第2空間221の延在方向と、が本体202の短手方向に沿っている点で、血液バッグシステム10のクランプ100と異なる。なお、以降の説明において、上記の実施形態と同じ構成(クランプ200以外の構成)又は同じ機能を有する要素には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0087】
具体的には、クランプ200の本体202は、横長の長方形を呈するベース204と、このベース204の短手方向一辺において当該ベース204から突出した一対のフランジ部206と、を含み、正面視で長方形に形成されている。ベース204及びフランジ部206は、同じ材料により一体成形されている。
【0088】
そして、ベース204が内側に有する縁部によって、第1挿通孔210及び第2挿通孔220が形成される。第1挿通孔210の第1空間211と第2挿通孔220の第2空間221とは、互いにベース204の長手方向に並び、且つ平行に延在している。
【0089】
第1空間211は、第1開放部212と、第1閉塞部214とを含み、また全体が非開口の(本体202により閉じられた)構成となっている。なお第1挿通孔210は、第1実施形態の第1挿通孔110と同様に、チューブ導入部116を有する構成でもよい。
【0090】
第1開放部212は、略正円形状に形成され、第2チューブ36の第2流路36aを開放状態で配置する。第1開放部212は、本体202においてフランジ部206と反対側の長辺寄りに設けられている。
【0091】
第1閉塞部214は、第2チューブ36の外周面を内方に押圧することで第2流路36aを閉塞状態とする。第1閉塞部214は、第1開放部212から本体202のフランジ部206側に向かって直線状に延在する縦長空間に形成される。また第1閉塞部214は、第1開放部212の近傍位置に一対の第1突起218を有する。
【0092】
第2空間221は、第2開放部222と、第2閉塞部224とを含む。さらに第2挿通孔220は、第2閉塞部224に連なり第2チューブ36を本体202から離脱可能とするチューブ離脱部226を有する。
【0093】
第2開放部222は、略正円形状に形成され、第3チューブ38の第3流路38aを開放状態で配置する。第2開放部222は、本体202において第1開放部212と同じ短手方向位置(フランジ部206と反対側の長辺寄り)に設けられている。
【0094】
第2閉塞部224は、第3チューブ38の外周面を内方に押圧することで第3流路38aを閉塞状態とする。第2閉塞部224は、第2開放部222から本体202のフランジ部206側に向かって直線状に延在する縦長空間に形成される。第2閉塞部224のフランジ部206側は、チューブ離脱部226に滑らかに連続する湾曲通路225に形成されている。また第2閉塞部224は、第2開放部222の近傍位置に一対の第2突起228を有する。
【0095】
チューブ離脱部226は、第2閉塞部224の延在方向に対し直交する本体202の長手方向に延在する。つまり第2実施形態において、第2閉塞部224の延在方向に対するチューブ離脱部226の延在方向の曲がり角度θは、90°に設定している。
【0096】
チューブ離脱部226は、第2閉塞部224の幅と同じ幅に形成され、ベース204の所定(第2空間221に近い側)の短辺まで延在している。チューブ離脱部226は、この短辺において第2挿通孔220を本体202の外側に連通させる離脱口227を有する。またチューブ離脱部226は、第2閉塞部224の湾曲通路225の近傍位置に一対の離脱側突起230を備える。
【0097】
以上のクランプ200を有する血液バッグシステム10Aをセットするため、遠心分離移送装置12Aもクランプ200に対応したホルダ250を有する。ホルダ250のコネクタ保持部252及びクランプ保持部254は、単位セットエリア54の上下方向(矢印B方向)に沿って長く突出形成される。また、コネクタ保持部252の保持用溝252aは浅く形成される一方で、クランプ保持部254のチューブガイド256及び保持板260の間に形成される配置空間262は、保持用溝252aよりも深く形成されている。
【0098】
第2実施形態に係る血液バッグシステム10A、遠心分離システム14A及びクランプ200は、以上のように構成され、第1実施形態の遠心分離システム14と同じ使用時の作業フローが行われる。ただし、装置セットステップにおいて分岐コネクタ32及びクランプ200をホルダ250に保持した状態では、
図9に示すように、クランプ200がホルダ250に対して上方向に突出した形態を呈する。これにより第2チューブ36が第1挿通孔210の第1開放部212に配置され、第3チューブ38が第2挿通孔220の第2開放部222に配置された状態となり、遠心分離ステップ及び移送ステップが実施される。
【0099】
そして、クランプ閉塞ステップでは、
図11Aに示すように、ユーザがクランプ200を下方向にスライドさせる。このスライド時に、分岐コネクタ32がホルダ250に保持されていることから、第2チューブ36及び第3チューブ38はスライドしない。このため、第2チューブ36は第1閉塞部214に移行して、第1閉塞部214により第2流路36aが閉塞する。同様に、第3チューブ38は、第2閉塞部224に移行して、第2閉塞部224により第3流路38aが閉塞する。
【0100】
さらに
図11Bに示すように、添加溶液注入ステップにおいて、ユーザは、クランプ200から第3チューブ38を離脱させる。チューブ離脱部226の延在方向(ユーザが離脱時にクランプ200や第3チューブ38にかける力の方向)は、第1挿通孔210の延在方向と異なる。このため、ユーザは、クランプ200から第3チューブ38を円滑に離脱させることができる。
【0101】
なお、クランプ200も、種々の改変が可能であり、例えば、第1開放部212と第1閉塞部214が並ぶ方向、及び第2開放部222と第2閉塞部224が並ぶ方向が、フランジ部206からその反対の長辺に向かう方向でもよい。この場合、チューブ離脱部226は第2閉塞部224の延在端部(第2開放部222と反対側の端部)に連続するように適宜設けられればよい。
【0102】
上記の実施形態から把握し得る技術的思想及び効果について以下に記載する。
【0103】
本発明の第1の態様は、血液を収容するための第1バッグ(血液バッグ22)と、第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容するための第2バッグ(PPPバッグ24)と、添加溶液が収容された第3バッグ(薬液バッグ26)と、第1バッグに接続される第1チューブ34と、第2バッグに接続される第2チューブ36と、第3バッグに接続される第3チューブ38と、を備え、分岐部(分岐コネクタ32)を介して第1チューブ34、第2チューブ36及び第3チューブ38を連結した血液バッグシステム10、10Aであって、第2チューブ36及び第3チューブ38に亘って取り付けられる1つのクランプ100、200を備え、クランプ100、200は、本体102、202と、本体102、202を貫通し、第2チューブ36が配置される第1挿通孔110、210と、本体102を貫通し、第3チューブ38が配置される第2挿通孔120、220と、を有し、第1挿通孔110、210は、第2チューブ36の流路(第2流路36a)を開放状態とする第1開放部112、212と、第1開放部112、212に連なり第2チューブ36の流路を閉塞状態とする第1閉塞部114、214と、を有し、第1閉塞部114、214において第1開放部112、212に連なる箇所以外が本体102、202により閉じられており、第2挿通孔120、220は、第3チューブ38の流路(第3流路38a)を開放状態とする第2開放部122、222と、第2開放部122、222に連なり第3チューブ38の流路を閉塞状態とする第2閉塞部124、224と、第2閉塞部124、224に連なり第3チューブ38を本体102、202から離脱可能とするチューブ離脱部126、226と、を有する。
【0104】
上記によれば、血液バッグシステム10、10Aは、1つのクランプ100、200によって2つのチューブ30の流路を効率的に閉塞すると共に、チューブ30(第3チューブ38)の流路の誤った開放を防止することができる。すなわち、クランプ100、200の第1挿通孔110、210は、第1閉塞部114、214から第2チューブ36が離脱しない。これに対し、第2挿通孔120、220は、第2閉塞部124、224に連なるチューブ離脱部126、226から第3チューブ38を容易に離脱させることができる。従って、ユーザは、流路を開放すべきチューブ30の誤認が回避される。その結果、血液バッグシステム10、10Aは、遠心分離後のシステムの取り扱いミスを減らし、血液製剤を精度よく得ることができる。
【0105】
また、第1閉塞部114、214及び第2閉塞部124、224は、第1開放部112、212及び第2開放部122、222から互いに同一方向に延在しており、チューブ離脱部126、226は、第2閉塞部124、224の延在方向に対して異なる方向に延在している。これにより、ユーザがクランプ100、200から第3チューブ38を離脱する作業において、クランプ100、200は、第2チューブ36が第1開放部112、212に移動することを抑制することができる。
【0106】
また、チューブ離脱部126、226の延在方向は、第2閉塞部124、224の延在方向に対して20°〜150°の角度で曲がっている。これにより、ユーザは、チューブ30の誤認を防ぎつつ、第2閉塞部124、224からチューブ離脱部126、226へ第3チューブ38をスムーズに移動することができる。
【0107】
また、第1開放部112、212は、第2チューブ36の外径以上の直径の円形状に形成され、第1閉塞部114、214は、第2チューブ36の外周面を内方に押すことで第2チューブ36の流路(第2流路36a)を閉塞可能な直線状の空間に形成され、第2開放部122、222は、第3チューブ38の外径以上の直径の円形状に形成され、第2閉塞部124、224は、第3チューブ38の外周面を内方に押すことで第3チューブ38の流路(第3流路38a)を閉塞可能な直線状の空間に形成される。これにより、クランプ100、200は、第1開放部112、212から第1閉塞部114、214への第2チューブ36の移動、及び第2開放部122、222から第2閉塞部124、224への第3チューブ38の移動を一層容易に行うことができる。
【0108】
また、チューブ離脱部126、226は、第2閉塞部124、224の幅と同じ幅に形成されている。これによりクランプ100、200のユーザは、第2閉塞部124、224からチューブ離脱部126、226への第3チューブ38の移動を簡単に操作することができる。
【0109】
また、本体102は、正面視で長方形を呈する板状に形成され、第1挿通孔110及び第2挿通孔120は、本体102の長手方向に並び、第1開放部112及び第1閉塞部114からなる第1空間111の延在方向と、第2開放部122及び第2閉塞部124からなる第2空間121の延在方向と、が本体102の長手方向に沿っている。これにより、ユーザは、クランプ100を本体102の長手方向に沿ってスライドすることで、第1開放部112から第1閉塞部114への第2チューブ36の移動と、第2開放部122から第2閉塞部124への第3チューブ38の移動とを同時に行うことができる。
【0110】
また、本体202は、板状に形成され、第1挿通孔210及び第2挿通孔220は、本体202の厚み方向と直交する第1方向に並び、第1開放部212及び第1閉塞部214からなる第1空間211の延在方向と、第2開放部222及び第2閉塞部224からなる第2空間221の延在方向と、が前記厚み方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿っている。これにより、ユーザは、クランプ200を本体202の第2方向に沿ってスライドすることで、第1開放部212から第1閉塞部214への第2チューブ36の移動と、第2開放部222から第2閉塞部224への第3チューブ38の移動とを同時に行うことができる。
【0111】
また、第1開放部112、212と第1閉塞部114、214との境界部、又は第1閉塞部114、214には、第1挿通孔110、210の内側に向かって突出し、第1閉塞部114、214から第1開放部112、212への第2チューブ36の移動を抑止する第1突起118、218が設けられ、第2開放部122、222と第2閉塞部124、224との境界部、又は第2閉塞部124、224には、第2挿通孔120、220の内側に向かって突出し、第2閉塞部124、224から第2開放部122、222への第3チューブ38の移動を抑止する第2突起128、228が設けられる。これにより、クランプ100、200は、第1閉塞部114、214から第1開放部112、212への第2チューブ36の不用意な移動、及び第2閉塞部124、224から第2開放部122、222への第3チューブ38の不用意な移動を抑制することができる。
【0112】
また、第2閉塞部124、224とチューブ離脱部126、226との境界部、又はチューブ離脱部126、226には、第2挿通孔120、220の内側に向かって突出する離脱側突起130、230が設けられる。これにより、クランプ100、200は、第2閉塞部124、224からチューブ離脱部126、226に第3チューブ38が不用意に移動することを抑制することができる。
【0113】
また、第1挿通孔110は、第1開放部112に連なり第2チューブ36を第1開放部112に導入可能なチューブ導入部116を有する。これにより、血液バッグシステム10は、第2チューブ36、第3チューブ38と分岐コネクタ32とが接続した形態であってもクランプ100を後付けすることができる。
【0114】
また、本発明の第2の態様は、血液を収容するための第1バッグ(血液バッグ22)と、第1バッグ内の血液を遠心分離して得られた血液成分を収容するための第2バッグ(PPPバッグ24)と、添加溶液が収容された第3バッグ(薬液バッグ26)と、第1バッグに接続される第1チューブ34と、第2バッグに接続される第2チューブ36と、第3バッグに接続される第3チューブ38と、を備え、分岐部(分岐コネクタ32)を介して第1チューブ34、第2チューブ36及び第3チューブ38を連結した血液バッグシステム10、10A、及び血液バッグシステム10、10Aがセットされ第1バッグの血液を遠心分離して血液成分を第2バッグに移送する遠心分離移送装置12、12Aを有する遠心分離システム14、14Aであって、血液バッグシステム10、10Aは、第2チューブ36及び第3チューブ38に亘って取り付けられる1つのクランプ100、200を備え、クランプ100、200は、本体102、202と、本体102、202を貫通し、第2チューブ36が配置される第1挿通孔110、210と、本体102、202を貫通し、第3チューブ38が配置される第2挿通孔120、220と、を有し、第1挿通孔110、210は、第2チューブ36の流路(第2流路36a)を開放状態とする第1開放部112、212と、第1開放部112、212に連なり第2チューブ36の流路を閉塞状態とする第1閉塞部114、214と、を有し、第1閉塞部114、214において第1開放部112、212に連なる箇所以外が本体102、202により閉じられており、第2挿通孔120、220は、第3チューブ38の流路(第3流路38a)を開放状態とする第2開放部122、222と、第2開放部122、222に連なり第3チューブ38の流路を閉塞状態とする第2閉塞部124、224と、第2閉塞部124、224に連なり第3チューブ38を本体102、202から離脱可能とするチューブ離脱部126、140、226と、を有し、遠心分離移送装置12は、分岐部及びクランプ100、200を保持するホルダ150、250を備える。これにより、遠心分離システム14、14Aは、ホルダ150、250に配置したクランプ100、200によって、2つのチューブ30の流路を効率的に閉塞すると共に、チューブ30(第3チューブ38)の流路の誤った開放を防止することができる。
【0115】
また、ホルダ150、250は、分岐部(分岐コネクタ32)を保持する分岐部保持部(コネクタ保持部152、252)と、分岐部保持部の隣接位置においてクランプ100、200をスライド可能に挟んで保持するクランプ保持部154、254とを有する。これにより、遠心分離システム14、14Aは、分岐部の隣接位置においてクランプ100、200を安定的にスライド操作させることができる。
【0116】
また、クランプ保持部154、254は、クランプ100、200を挟む一対の壁部(保持板160、対向壁161)を有し、一対の壁部のうち一方の壁部(対向壁161)の上部には、上方に向かって他方の壁部(保持板160)から離れる方向に傾斜する傾斜面(161b)が設けられる。これにより、ユーザは、配置空間162、262からクランプ100、200を容易に取り出すことができる。
【0117】
また、本体102は、正面視で長方形を呈する板状に形成され、第1挿通孔110及び第2挿通孔120は、本体102の長手方向に並び、第1開放部112及び第1閉塞部114からなる第1空間111の延在方向と、第2開放部122及び第2閉塞部124からなる第2空間121の延在方向と、が本体102の長手方向に沿っており、クランプ保持部154は、クランプ100を水平方向にスライド可能に支持し、クランプ100がクランプ保持部154に対して第1位置から第2位置へと水平方向にスライドさせられた際、クランプ100は、第1閉塞部114及び第2閉塞部124により第2チューブ36及び第3チューブ38をそれぞれ閉塞する。これにより、ユーザは、クランプ100を水平方向にスライド操作することで、第2チューブ36及び第3チューブ38を円滑に閉塞することができる。
【0118】
また、本体202は、板状に形成され、第1挿通孔210及び第2挿通孔220は、本体202の厚み方向と直交する第1方向に並び、第1開放部212及び第1閉塞部214からなる第1空間211の延在方向と、第2開放部222及び第2閉塞部224からなる第2空間221の延在方向と、が厚み方向及び第1方向に直交する第2方向に沿っており、クランプ保持部254は、第2方向を上下方向に向けた状態のクランプ200を上下方向にスライド可能に支持し、クランプ200がクランプ保持部254に対して第1高さから第2高さへとスライドさせられた際、クランプ200は、第1閉塞部214及び第2閉塞部224により第2チューブ36及び第3チューブ38をそれぞれ閉塞する。これにより、ユーザは、クランプ200を上方向又は下方向にスライド操作することで、第2チューブ36及び第3チューブ38を円滑に閉塞することができる。
【0119】
また、本発明の第3の態様は、2つのチューブ30に亘って取り付けられるクランプ100、200であって、本体102、202と、本体102、202を貫通し、2つのチューブ30のうち一方のチューブ30が配置される第1挿通孔110、210と、本体102、202を貫通し、2つのチューブ30のうち他方のチューブ30が配置される第2挿通孔120、220と、を有し、第1挿通孔110、210は、一方のチューブ30の流路を開放状態とする第1開放部112、212と、第1開放部112、212に連なり一方のチューブ30の流路を閉塞状態とする第1閉塞部114、214と、を有し、第1閉塞部114、214において第1開放部112、212に連なる箇所以外が本体102、202により閉じられており、第2挿通孔120、220は、他方のチューブ30の流路を開放状態とする第2開放部122、222と、第2開放部122、222に連なり他方のチューブ30の流路を閉塞状態とする第2閉塞部124、224と、第2閉塞部124、224に連なり他方のチューブ30を本体102、202から離脱可能とするチューブ離脱部126、140、226と、を有する。これによりクランプ100、200は、2つのチューブ30の流路を効率的に閉塞すると共に、チューブ30の流路の誤った開放を防止することができる。
【課題】1つのクランプによって2つのチューブの流路を効率的に閉塞すると共に、チューブの流路の誤った開放を防止することができる血液バッグシステム、遠心分離システム及びクランプを提供する。
【解決手段】遠心分離システム14は、血液バッグシステム10及び遠心分離移送装置12を有する。血液バッグシステム10は、第2チューブ36及び第3チューブ38に亘って取り付けられる1つのクランプ100を備える。クランプ100の第1挿通孔110は、第1閉塞部114において第1開放部112に連なる箇所以外が本体102により閉じられている。一方、クランプ100の第2挿通孔120は、第2閉塞部124に連なり第3チューブ38を本体102から離脱可能とするチューブ離脱部126を有する。