(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
型締装置を構成するタイバーは、片持ち構造をなしているので、自重によって下方に撓む(垂れる)ことがある。特に、タイバーと割ナットを噛み合わせるときには、割ナットはタイバーの片持ちの自由端部に位置する。タイバーの自由端部は片持ち梁状態の最大撓み量となる位置であり、この自由端部の中心位置はタイバーの支持中心位置に対して下方に偏芯している。これに対し割ナットの中心位置は、タイバーの支持中心位置と同芯、つまり垂れのない水平方向に沿って真っ直ぐなタイバーと噛み合うように設けられているので、タイバーの撓みが大きくなると、タイバーと割ナットの噛み合いの位置がずれて噛み合わなくなることがある。
可動型盤が最も固定型盤から離れた位置に移動した際に、タイバーの垂れを防止するためにタイバーを可動型盤から抜けないように嵌挿させ、可動型盤の嵌挿部にタイバー軸芯を保持する嵌挿部材を設けることがある。この場合、嵌挿部材内径とタイバー外径の間の摩擦を抑えるために、嵌挿部材に摩擦係数の小さい摺動材を用いる。ところがこの嵌挿部材の摺動摩耗が進むと、嵌挿部材とタイバーとの間に空隙が発生しタイバーの軸芯を保持できずに下方への撓みを防止できなくなるので、噛み合い位置のずれが助長される。
以上より、本発明は、噛み合いの対象であるタイバーが撓んだとしても、タイバーと割ナットとの噛み合いを確保できる割ナット開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の割ナット開閉装置は、閉位置と開位置の間を水平方向に移動し、閉位置においてタイバーと噛み合う第一割ナット片及び第二割ナット片を有する割ナットと、第一割ナット片と第二割ナット片の一方又は双方に設けられる、第一割ナット片と第二割ナット片の閉位置への移動力を鉛直方向の上向きの力に変換してタイバーを持ち上げて調心する調心機構と、を備えることを特徴とする。
本発明の割ナット開閉装置は、タイバーを持ち上げて調心する調心機構を備えているので、タイバーに撓みが生じても、タイバーと割ナットとを噛み合わせることができる。また、本発明に係る調心機構は、第一割ナット片と第二割ナット片が動力源となってその閉位置への移動力を鉛直方向の上向きの力に変換してタイバーを持ち上げて調心するので、タイバーを持ち上げるのに新たな動力原を設けることなく、タイバーの調心を行うことができる。
【0006】
本発明における調心機構として、第一割ナット片と第二割ナット片の一方又は双方に、回転可能に設けられる転動体を用いることができる。この調心機構によれば、転動体という簡易な部材を設けるだけで、タイバーの調心を行うことができる。
本発明における転動体は、タイバーの噛み合いねじの山及び谷の一方又は双方に接触してタイバーを持ち上げることができる。転動体が噛み合いねじの山に対応する形態だと、転動体が山に接触するのが容易である。また、転動体が噛み合いねじの谷に対応する形態だと、転動体の径を大きくできるので、転動体とタイバーとの接触面圧が低下し、その結果として摩耗や陥没を低減できる。
【0007】
また、本発明における転動体は、第一転動体と、第一転動体と同軸上に設けられ、第一転動体より径の大きい第二転動体と、を備え、第一転動体が噛み合いねじの山と接触し、第二転動体が噛み合いねじの谷と接触する、ものにできる。この転動体を用いれば、タイバーの噛み合いねじの山及び谷の双方に転動体が接するので、転動体が全体として受ける荷重が分散し、転動体の摩耗を抑えることができる。
【0008】
本発明における調心機構として、第一割ナット片と第二割ナット片の開閉動作に伴って昇降運動するリンク機構と、リンク機構に支持され、タイバーを持ち上げる支持体と、を備える、ことができる。リンク機構を用いる調心機構においても、タイバーを持ち上げるのに新たな動力源を設けることなく、タイバーの調心を行うことができる。
【0009】
本発明のリンク機構として、一端側が第一割ナット片に揺動可能に固定され、他端側が支持体に揺動可能に固定される第一リンクプレート及び第二リンクプレートと、一端が第二割ナット片に揺動可能に固定され、他端が支持体に揺動可能に固定される第三リンクプレートと、を備える、ことが好ましい。
このリンク機構によれば、リンクプレートが交差して設けられるリンク機構に比べて、第一リンクプレート〜第三リンクプレートの軸線方向の長さを短くできるので、第一リンクプレート〜第三リンクプレートの剛性を確保するのが容易である。また、このリンク機構は、第二リンクプレートを備えることにより、支持体が傾くのを防ぐことができる。
また、支持体のタイバーとの接触面をタイバーの円筒形状と同じ程度の大きさ又はそれ以上の大きさにすることで、接触面積を大きくすることができ、かつ、支持体はタイバーに対して滑ることなく接触するので、支持体とタイバーの接触面の摩耗を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、噛み合いの対象であるタイバーが撓んだとしても、タイバーと割ナットとの噛み合いを確保できる割ナット開閉装置を提供できる。しかも本発明の調心機構によれば、第一割ナット片と第二割ナット片が動力源となってその閉位置への移動力を鉛直方向の上向きの力に変換してタイバーを持ち上げて調心するので、タイバーを持ち上げるのに新たな動力原を設ける必要がない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、
図1〜
図7を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態に係る型締装置1は、
図1に示すように、基台10と、固定型盤11と、可動型盤12と、タイバー15と、可動型盤移動手段17と、割ナット開閉装置20とを備えている。
基台10の一端側には固定型盤11が設けられ、可動型盤12は、基台10に対して摺動可能かつ固定型盤11と対向して配置されている。
【0013】
固定型盤11には固定金型13が取付け可能とされ、可動型盤12には可動金型14が取付け可能とされ、固定金型13と可動金型14とは内部に溶融樹脂が射出されるキャビティが形成される。
固定型盤11と可動型盤12は、水平方向H及び鉛直方向Vにおいて互いに隣接する4本のタイバー15により接続されている。
4本のタイバー15は、可動型盤12の4隅を貫通して配置され、可動型盤12は、タイバー15と摺動可能とされている。タイバー15と可動型盤12の間には、両者の間の摩擦を抑えるための摺動材(嵌挿部材)を介在させることができる。またこのとき、可動型盤12が最も固定型盤11から離れた位置に移動した際に、タイバー15が可動型盤12から抜け出るようにしてもよいし、タイバー15が可動型盤12から抜けずにタイバー15と可動型盤12が嵌挿状態を維持するようにしてもよい。
【0014】
タイバー15は、固定型盤11の側に型締力発生用のピストン16が設けられ、固定型盤11の反対側の端部に周方向に連なる噛み合いねじ15Aが形成されている。この噛み合いねじ15Aは、隣接した溝あるいは山がそれぞれ一繋がりの螺旋形状でもよいし、溝あるいは山が隣接しているだけで繋がっていないリング形状が軸方向に連接している形状でもよい。
また、基台10には、例えば、電動式又は油圧式の可動型盤移動手段17が設けられ、固定型盤11に対して可動型盤12を往復移動可能とされている。
図1は、可動型盤移動手段17によって可動型盤12を固定型盤11の方向に移動させ、可動金型14を固定金型13に接触させた型閉状態を示している。
【0015】
割ナット開閉装置20は、
図1及び
図2(a)に示すように、割ナット21と、割ナット22と、ガイドボックス23と、リンクプレート25と、連結ロッド26とを備える。割ナット開閉装置20は、可動型盤12の可動金型14が設けられる側と反対側の面に、4本のタイバー15のうち、上側に二本のタイバー15,15、及び、下側の二本のタイバー15,15と対応して、上下二段に設けられている。
【0016】
割ナット21は、
図2(a)〜(c)に示すように、割ナット片(第一割ナット片)21Aと、割ナット片(第二割ナット片)21Bと、を備える。割ナット21は、割ナット片21A及び割ナット片21Bのそれぞれの噛み合いねじ21D,21D(
図1)とタイバー15の噛み合いねじ15Aが噛み合わされてタイバー15を把持する。
また、割ナット22は、
図2(a)〜(c)に示すように、割ナット片22Aと割ナット片22Bとを備える。割ナット22も、割ナット片22A及び割ナット片22Bのそれぞれの噛み合いねじ21D,21D(
図1)とタイバー15の噛み合いねじ15Aが噛み合わされてタイバー15を把持する。
なお、割ナット21及び割ナット22は、概ね上下対象の構造を有しており、
図2(b),(c)は、その平面及び底面の両者を示している。
【0017】
割ナット片21Aと割ナット片21B、
図1及び
図2(a),(b)に示すように、可動型盤12に設けられたガイドボックス23内に、水平方向Hに摺動可能に配置されるとともに、それぞれガイドボックス23の外方、図中では上下面で支持されたリンクプレート25を介して連結される。そして、割ナット片21Aと割ナット片21Bは、それぞれタイバー15の中心軸線C(
図1)の位置において上向き及び下向きにそれぞれ突出する支点ピン24の周りに揺動するようになっている。
図2(a),(b)に示すように、割ナット片22Aと割ナット片22Bからなる割ナット22についても同様の構成が設けられている。
その結果、割ナット片21Aと割ナット片21B、及び、割ナット片22Aと割ナット片22Bは、タイバー15に対する開閉動作が同期する。
【0018】
割ナット片21Aと割ナット片21Bの上下面には、
図2(a),(b),(c)に示すように、それぞれ支持ピン21Cが上向き及び下向きに突設されている。
また、割ナット片22Aと割ナット片22Bの上下面には、それぞれ支持ピン22Cが上向き及び下向きに突設されている。
【0019】
リンクプレート25は、中心に丸孔25Aが形成されるとともに、丸孔25Aに対して対称とされる両端部に2つの長孔25Bが形成されており、丸孔25Aには、ガイドボックス23から外方に突出する支点ピン24が挿通されている。
また、両端部の長孔25Bには、割ナット片21A、割ナット片21Bの上下の支持ピン21Cと、割ナット片22Aと割ナット片22Bの上下の支持ピン22Cがそれぞれ挿通されている。なお、本図においては、リンクプレート25はガイドボックス23の外部に備えた例を示したが、リンクプレート25を、ガイドボックス23と割ナットとの間に備える構成としてもよい。
【0020】
連結ロッド26は、
図2(a)に示すように、2本の第1連結ロッド26Aと、2本の第2連結ロッド26Bとを備える。第1連結ロッド26Aは、それぞれ割ナット片21Bを摺動可能に貫通して割ナット片21Aと割ナット片22Aとを連結する。第2連結ロッド26Bは、それぞれ割ナット片22Aを摺動可能に貫通して割ナット片21Bと割ナット片22Bを連結するように配置されている。
【0021】
なお、割ナット片21A、割ナット片22A、割ナット片21Aと割ナット片22Aを連結する2本の第1連結ロッド26Aは、割ナット片21Aと割ナット片22Aを一体に動作させる。
【0022】
また、割ナット片21B、割ナット片22B、割ナット片21Bと割ナット片22Bを連結する2本の第2連結ロッド26Bは、割ナット片21Bと割ナット片22Bを一体に動作させる。
【0023】
また、連結ロッド26の割ナット片21Bと割ナット片22Aの間には、
図1に示すように、ブラケット27が設けられ、ブラケット27にはアクチュエータとしての油圧シリンダ30が取付けられている。また、ブラケット27は、2本の第1連結ロッド26Aに固定されている。
油圧シリンダ30は、そのピストンロッド31が鉛直方向Vの揺動軸を有するクレビス32を介して割ナット片21Bに連結され、割ナット片21Bに傾きが生じた場合でも、傾きがクレビス32の回転により吸収されて、ピストンロッド31に曲げ力が生じるのを抑制するようになっている。この油圧シリンダ30を電動モータ駆動のアクチュエータに代えても支障ない。
【0024】
割ナット21の割ナット片21A及び割ナット22の割ナット片22Bは、
図2(a)、
図3に示すように、調心機構として調心ころ40を備えている。調心ころ40は、タイバー15に下方の撓みが生じたとしても、タイバー15と割ナット21、割ナット22との噛み合いを確保するために設けられる。以下、割ナット21の割ナット片21Aに設けた調心ころ40を例にして、調心ころ40を説明する。
【0025】
調心ころ40は、
図2〜
図4に示すように、割ナット片21Aの一端面の内径の下端近傍に設けられている。調心ころ40は、
図4に示すように、転動体となるころ本体41と、ころ本体41と同軸上に設けられる円柱状の支持軸43とを備えており、ころ本体41と支持軸43は互いに回転可能とされている。この調心ころ40としては、カムフォロアを用いることができる。カムフォロアとは、ニードルベアリングが組み込まれた、剛性の高い支持軸43が付いた軸受をいう。ただし、カムフォロアは調心ころ40の一例であり、例えばころ本体41と支持軸43が一体で形成された調心ころ40を用い、転がり軸受、ラジアル軸受などを介して支持軸43を割ナット片21Aに回転可能に取り付けることもできる。
【0026】
調心ころ40は、支持軸43が埋め込まれることで割ナット片21Aに固定されている。したがって、調心ころ40は、
図3(a),(b)に示すように、割ナット片21Aが開閉動作をすると、割ナット片21Aと一体に動作して水平方向Hに移動する。特に、調心ころ40は、割ナット片21Aが閉動作する際に、鉛直方向Vの下向きに撓んでいるタイバー15に鉛直方向Vの下側から接触することによりタイバー15を持ち上げる。ころ本体41は支持軸43に回転可能であるから、タイバー15に接するころ本体41はタイバー15を持ち上げながら転動する。
タイバー15は鉛直方向Vと一致するように持ち上げられるのが理想的ではある。しかし、割ナット片21Aが水平方向Hに移動するので、水平方向Hの両側から対称に割ナット片21A,21Bでタイバー15を押すものの、現実には鉛直方向Vから微小量だけずれた斜め上方にタイバー15は持ち上げられる場合がある。この場合も、鉛直方向Vの上向きに持ち上げられることに変わりはない。
【0027】
次に、
図2〜
図4を参照して、割ナット開閉装置20の作用について説明する。
まず、可動型盤移動手段17によって型閉されると、タイバー15の噛み合いねじ15Aが、開位置にある割ナット21(割ナット片21A,21B)及び割ナット22(割ナット片22A,22B)の間に配置される。
【0028】
次に、油圧シリンダ30のピストンロッド31を前進させると、
図2(a)において、割ナット片21Bが図中左側に移動すると共に、反力により油圧シリンダ30が固定されているブラケット27及び2本の第1連結ロッド26Aを介して割ナット片21Aを図中右側に移動する。このとき割ナット片22Aと割ナット片21Aは、2本の第1連結ロッド26Aで連結され、割ナット片22Bと割ナット片21Bは、2本の第2連結ロッド26Bで連結されているので、割ナット片22A,22Bはそれぞれ割ナット片21A,21Bと同じ向きに移動し、タイバー15,15に近づく。
このとき、
図2(b)に示すように、割ナット21,22に接続されたリンクプレート25は、支点ピン24の周りに矢印R方向に回転して、割ナット片21A,22Aは、割ナット片21B、22Bと同期して同時にタイバー15に近づく。
【0029】
割ナット片21Aと割ナット片21B、割ナット片21A及び割ナット片21Bが、それぞれタイバー15と一体に動作してさらに近づくことで、割ナット21、22は、タイバー15と噛み合って、タイバー15を把持する。
【0030】
一方で、割ナット片21A,21Bが閉動作を開始する。この時点では、
図3(a)に示すように、タイバー15は一点鎖線で示す正規の位置より下方に撓んでおり、また、
図4(a)に示すように、調心ころ40はタイバー15の対応する山15Bから離れている。閉動作が進むと、調心ころ40が撓んでいるタイバー15に接触を開始する。この時点では、タイバー15の撓みが大きいと、割ナット片21A,21Bはタイバー15と噛み合わないこともある。ところが、割ナット片21A,21Bの閉動作が進むにつれて、タイバー15は、調心ころ40により持ち上げられ、割ナット片21A,21Bが閉位置に達すると、
図3(b),
図4(b)に示すように、割ナット片21Aがタイバー15を正規の位置に持ち上げて調心する。この正規の位置とは、撓みが生じていないタイバー15の位置をいう。
【0031】
調心ころ40は、以上の調心機能を発揮するように、その仕様及び割ナット片21Aへの取り付け位置などが考慮される。以上の実施形態では調心ころ40を片方の割ナット片21Aのみに設けてあるが、
図3(c)に示すように、割ナット片21Aに加えて、割ナット片21Aに対向する割ナット片21Bの線対称の位置に調心ころ40を設けることが好ましい。これによりタイバー15は水平方向Hの両側から押されて鉛直方向Vの上向きに持ち上げられるので、タイバー15が水平方向Hに揺動して衝突音や偏摩耗などを発生させることなく安定して動作させることができる。
【0032】
以上のように、調心ころ40は、第一割ナット片21Aと第二割ナット片21Bの閉位置への移動力を鉛直方向Vの上向きの力に変換してタイバー15を持ち上げる調心機構として機能する。
【0033】
次に、割ナット開閉装置20が奏する効果を説明する。
以上説明したように、割ナット開閉装置20は、割ナット片21A及び割ナット片22Bに調心ころ40を備えており、割ナット21及び割ナット22が閉位置に達すると、撓んでいるタイバー15を正規の位置に調心できるので、割ナット21,22とタイバー15との噛み合いを確保できる。
【0034】
また、割ナット開閉装置20は、調心ころ40が割ナット片21A及び割ナット片22Bに設けられており、調心ころ40が割ナット21及び割ナット22の閉動作と一体に動く。つまり、割ナット開閉装置20は、割ナット片21A及び割ナット片22Bが動力源となるので、新たな動力源を設けることなく、撓んでいるタイバー15を正規の位置に調心できる。
【0035】
また、割ナット開閉装置20は、タイバー15を持ち上げる調心ころ40のころ本体41がタイバー15と接触すると転動するので、ころ本体41とタイバー15の間の摩耗を抑えることができる。
【0036】
以上説明した第1実施形態による割ナット開閉装置20は、割ナット片21Aの下側に調心ころ40を設けているので、タイバー15を鉛直方向Vの上向きに変位させるだけでなく、タイバー15を水平方向H、
図3の例では右向きに変位させる。そこで、
図5(a),(b)に示すように、割ナット片21Aに対向する割ナット片21Bに、調心ころ45を設けることができる。調心ころ45は、調心ころ40と点対象の位置に設けられている。こうすることにより、調心ころ40に接すると上向きかつ右向きの力を受けるタイバー15は、調心ころ45に接すると下向きかつ左向きの力を受けるので、両方の力が相殺されることによって、より正確な調心を実現できる。割ナット片22Aと割ナット片22Bについても同様である。
【0037】
また、第1実施形態による割ナット開閉装置20は、調心ころ40がタイバー15の噛み合いねじ15Aの山15Bの部分に接するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、
図6に示すように、調心ころ40がタイバー15の噛み合いねじ15Aの谷15Cの部分に接することができる。調心ころ40がタイバー15の山15Bに接するのと谷15Cに接するのとを比べると、山15Bはタイバー15の最外周に位置するので、調心ころ40が接するのが容易である。一方、谷15Cに接するものとすれば、調心ころ40の径を大きくできるので、調心ころ40とタイバー15との接触面圧が低下し、その結果として摩耗や陥没を低減できる利点がある。
【0038】
また、例えば、
図7に示すように、タイバー15の噛み合いねじ15Aの隣接する山15B及び谷15Cの両方に接する調心ころ50を用いることもできる。
この調心ころ50は、
図7及び
図8に示すように、第一ころ(第一転動体)51と、第一ころ51より径の大きな第二ころ(第二転動体)55と、を備えている。第一ころ51と第二ころ55は同軸上に設けられ、第一ころ51が噛み合いねじ15Aの山15Bに接触し、第二ころ55が噛み合いねじ15Aの谷15Cに接触する。
【0039】
第一ころ51及び第二ころ55は、それぞれ調心ころ40と同様にカムフォロアで構成されている。
第一ころ51は、ころ本体52と、ころ本体52と同軸上に設けられる円柱状の第一支持体53と、ころ本体52と同軸上に設けられる四角柱状の第二支持体54と、を備えている。第一ころ51は、ころ本体52が第一支持体53と回転可能に支持されているが、第一支持体53と第二支持体54は回転不能に連結されている。
【0040】
また、第二ころ55は、ころ本体56と、ころ本体56と同軸上に設けられる円柱状の第一支持体57と、ころ本体56と同軸上に設けられる四角柱状の第二支持体58と、を備えている。第一ころ55は、ころ本体56が第一支持体57と回転可能に支持されているが、第一支持体57と第二支持体58は回転不能に連結されている。
第二ころ55は、第一支持体57に第一ころ51の第二支持体54を収容して保持する保持孔59が形成されている。
【0041】
調心ころ50は、第二ころ55の第二支持体58が割ナット片21Aに形成された保持孔21Hに保持され、第一ころ51の第二支持体54が第二ころ55の保持孔59に保持される。保持孔21Hの内部において、第二支持体58は弾性体Eを介して支持され、保持孔59において、第二支持体54は弾性体Eを介して支持される。このとき、第一支持体57あるいは第二支持体54または第一支持体57あるいは第二支持体54の両方が高弾性材を加工して成されていることで弾性体Eの機能を有してもよい。
【0042】
調心ころ50は、第一ころ51が噛み合いねじ15Aの山15Bに接触し、加えて第二ころ55が噛み合いねじ15Aの谷15Cに接触する。したがって、山15B又は谷15Cだけで接触するのに比べて、タイバー15から受ける荷重を受ける面が第一ころ51と第二ころ55に分担されるので、第一ころ51と第二ころ55のそれぞれにおけるタイバー15との接触による摩耗を抑えることができる。
【0043】
また、調心ころ50は、弾性体Eにより支持されているので、第一ころ51が山15Bと、第二ころ55が谷15Cと確実に接触させることができる。
【0044】
なお、図示を省略するが、一つのころを複数、例えば二つの山15Bに接するように調心ころを構成することができるし、複数、例えば二つの山15Bにそれぞれ独立のころを接するように調心ころを構成することができる。あるいは、複数、例えば二つの谷15Cに接するように二つの調心ころを構成することができるし、複数、例えば二つの谷15Cにそれぞれ独立して接するように調心ころを構成することもできる。
【0045】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る割ナット開閉装置60を説明する。
第2実施形態に係る割ナット開閉装置60は、割ナット片21Aと割ナット片21Bの間に設けられるリンクリフト機構70によりタイバー15を持ち上げる。ここでは、一方の割ナット21に設けられるリンクリフト機構70について説明するが、他方の割ナット21及び割ナット22についてもリンクリフト機構70が同様に設けられる。
リンクリフト機構70は、
図9に示すように、支持体71と、支持体71を昇降運動させる第一リンクプレート73、第二リンクプレート74、第三リンクプレート75と、を備える。リンクリフト機構70は、割ナット片21A及び割ナット片21Bの閉動作に伴ってタイバー15を持ち上げる。
【0046】
支持体71は、
図9(a),(b)に示すように、正面視した形状が概ね矩形をなしているが、タイバー15と接する部分はタイバー15の外周の曲率に合わせた円弧状の支持面72を備えている。割ナット21の閉動作に伴って支持体71が上昇すると、撓んでいるタイバー15に支持面72が接触し、閉動作の進行に伴ってタイバー15を持ち上げる。なお、
図9において、撓みのない正規の位置のタイバー15を一点鎖線で示し、撓んでいる15を二点鎖線で示している。
【0047】
割ナット片21Aと割ナット片21Bには、支持体71を収容する可動スペース21S,21Sが設けられる。可動スペース21S,21Sは、割ナット片21A及び割ナット片21Bの互いに対向する部分を切り欠いて形成される。支持体71は、可動スペース21S,21Sに亘って配置される。
【0048】
次に、第一リンクプレート73及び第二リンクプレート74は、上端の一端側が支持体71に揺動可能に固定され、下端の他端側が割ナット片21Aに揺動可能に固定される。第一リンクプレート73及び第二リンクプレート74は、
図9(a)に示すように、割ナット21が開位置にあるときに、下端よりも上端がタイバー15の中心軸線Cに近くなるように傾いている。第三リンクプレート75とは、この傾きの向きが逆である。この傾きの向きは、割ナット21が閉位置に達したときにも維持される。
【0049】
第三リンクプレート75は、上端側の一端が支持体71に揺動可能に固定され、下端側の一端が割ナット片21Aに揺動可能に固定される。第三リンクプレート75は、
図9(a)に示すように、割ナット21が開位置にあるときに、下端よりも上端がタイバー15の中心軸線Cに近くなるように傾いている。この傾きの向きは、割ナット21が閉位置に達したときにも維持される。
【0050】
リンクリフト機構70は、支持体71がタイバー15の中心軸線Cの向きに傾くのを防ぐ倒れ防止部材77を備える。倒れ防止部材77は、基端部が割ナット片21A及び割ナット片21Bに埋め込まれる。割ナット21の閉動作時には、割ナット片21Aと割ナット片21Bから突出する部分が支持体71に係止される。
図9(c)では倒れ防止部材77は支持体71の背面に当接して支持体71の倒れを防止しているが、支持体71に倒れ防止部材77が嵌挿可能な図示しない支持孔を設けて、割ナット21の閉動作時に倒れ防止部材77がこの支持孔に嵌挿することで、支持体71の倒れを防止してもよい。
【0051】
リンクリフト機構70は、以下のように動作する。
図9(a)に示される割ナット21の開位置から閉動作に入って割ナット片21Aと割ナット片21Bが互いに近づくと、第一リンクプレート73、第二リンクプレート74及び第三リンクプレート75は、水平方向Hに対する傾斜角が大きくなる。この動作に伴って支持体71は水平な状態を維持したままで当初の位置よりも上昇し、支持面72が撓んでいるタイバー15に接触する。さらに閉動作が進んで
図9(b)に示すように割ナット21が閉位置に達すると、タイバー15は正規の位置に調心される。
【0052】
以上説明したように、第2実施形態に係る割ナット開閉装置60は、割ナット21,22にリンクリフト機構70を備えており、割ナット片21A,21B,22A,22Bが閉位置に達すると、撓んでいるタイバー15を正規の位置に調心できるので、割ナット21,22とタイバー15とを確実に噛み合わせることができる。
【0053】
また、割ナット開閉装置60は、リンクリフト機構70が割ナット片21Aと割ナット片21Bの間に設けられており、割ナット21の閉動作に伴って動くので、新たな動力源を要することなく、撓んでいるタイバー15を正規の位置に調心できる。
【0054】
ここで、リンクリフト機構70において、支持体71を昇降するだけであれば、第一リンクプレート73と第三リンクプレート75の二つのリンク部材を備えていれば足りる。しかるに、二つのリンク部材だけでは支持体71を水平方向Hに平行に支持できずに傾くおそれがあるのに対して、リンクリフト機構70は、第二リンクプレート74を備えているので、支持体71を水平方向Hに平行に支持できる。
【0055】
また、リンクリフト機構70は、倒れ防止部材77を備えており、支持体71がタイバー15の軸線方向に傾くのを防ぐことができるので、タイバー15と割ナット21,22の噛み合いをより確実に確保できる。
【0056】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、第1実施形態において、転動体としての調心ころ40のころ本体41は外周の形状が円形をなしているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものでない。例えば、多角形状の外周形状を有する転動体、楕円形の外周形状を有する転動体であっても、あるいは支持軸43をころ本体41の中心から偏芯した位置に設けた構造であっても、本発明の効果を享受できる。
【0057】
また、第2実施形態におけるリンクリフト機構として、二つのリンクプレートが交差する機構を採用することもできる。このリンク機構によれば、第2実施形態の第二リンクプレート74に相当するリンクプレートを設けなくても、支持体71の姿勢を水平に保つことができる。ただし、二つのリンクプレートが交差するリンク機構は、二つのリンクプレートの軸線方向の寸法が大きくなるので、タイバー15を持ち上げるのに必要な剛性を確保する必要がある。このことは、第一リンクプレート73〜第三リンクプレート75という三つのリンクプレートを用いる第2実施形態は、第一リンクプレート73〜第三リンクプレート75の軸線方向の寸法が小さいく、剛性の確保が容易であることを示唆している。