【文献】
WINKLER,Johannes,THER.DELIV.,2013年,Vol.4, No.7,pp.791-809
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タグ付けされたヌクレオチドであって、前記ヌクレオチドの5’位に末端リン酸を有するポリリン酸基、及び共有結合であって、前記共有結合の一部としてトリアゾール、1,2−ジアジン、ジスルフィド、第2級アミン、ヒドラゾン、チオアセトアミド、又はマレイミド−チオ付加体を含む前記共有結合によって、前記ヌクレオチドの前記末端リン酸に共有結合したタグを含み、
前記タグは、オリゴヌクレオチドを含み、
(i)前記オリゴヌクレオチドは、非天然ヌクレオチド間結合を含むか、
(ii)前記オリゴヌクレオチドの5’末端は末端リン酸と前記共有結合を介して結合し、前記オリゴヌクレオチドの3’末端は、メチルホスホネート、リン酸、又はそれをエキソヌクレアーゼ分解から保護するアルキル炭素スペーサー基を有するか、若しくは前記オリゴヌクレオチドの3’末端は、末端リン酸と前記共有結合を介して結合し、前記オリゴヌクレオチドの5’末端は、メチルホスホネート、リン酸、又はそれをエキソヌクレアーゼ分解から保護するアルキル炭素スペーサー基を有するか、
又は
(iii)前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの無塩基スペーサー(dSp)を含む、
タグ付けされたヌクレオチド。
前記ヌクレオチドの5’位にある前記ポリリン酸基は、少なくとも3つのリン酸、又は4つから6つまでのリン酸を含む請求項1又は2に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
前記タグ付けされたヌクレオチドの各々の前記ポリリン酸基におけるリン酸の数は、同じであり、前記タグ付けされたヌクレオチドの各々の種類は、他のタグ付けされたヌクレオチドの各々のタグの種類と異なり、
各ポリリン酸基は、少なくとも3つのリン酸を含むか、又は
各ポリリン酸基は、4つから6つまでのリン酸を含む
請求項9又は10の何れか1項に記載の方法。
前記4つのタグ付けされたヌクレオチドは、dA6P−Cy3−T4−FldT−T−FldT−T23−C3、dT6P−Cy3−T2−dSp8−T20−C3、dG6P−Cy3−T30−C6、及びdC6P−Cy3−T4−dSp3−T23−C3である請求項9〜14の何れか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴及び利点のよりよい理解は、その中で本発明の原理が利用される例示の実施形態を説明する以下の詳細な記載及び添付の以下の図面(“図”又は“FIGs.”とも称する)を参照することによって得られるであろう:
【
図1】
図1は、ヌクレオチドの末端リン酸に結合したタグを示す。
【
図3】
図3は、タグ付けされたヌクレオチドの一例を示す。
【
図4】
図4は、タグ付けされたヌクレオチドの一例を示す。
【
図5】
図5は、タグ付けされたヌクレオチドの構造を示す。タグ505は、末端リン酸に結合している。
【
図6】
図6は、クリックケミストリーによって結合させることができるヌクレオチド(左)とタグ(右)を示す。
【
図7】
図7は、4つの切断されたタグについてのセル電流測定値の一例を示す。
【
図8】
図8は、本明細書に記載のシークエンシング方法の操作を概略的に示す。
【
図9A】
図9Aは、ナノポア検出器の例を示し、
図9Aは、電極上に配置されたナノポアを有する。
【
図9B】
図9Bは、ナノポア検出器の例を示し、
図9Bは、ウェル上の膜に挿入されたナノポアを有する。
【
図9C】
図9Cは、ナノポア検出器の例を示し、
図9Cは、突出した電極の上にナノポアを有する。
【
図11】
図11は、タグのナノポアの通過によって生じる信号の一例を示す。
【
図12】
図12は、ナノポアを含むチップの例示的な配置を示す。
【
図14】
図14は、シーケンサーを制御するように構成されたコンピュータシステムを示す。
【
図15】
図15は、検出可能なTAG−ポリリン酸及び検出可能なTAGを示す。
【
図16】
図16は、クマリン−PEG−dG4Pでタグ付けされたヌクレオチドの合成の一例を示す。
【
図17】
図17は、MALDI−TOF MSによる解離されたタグのキャラクタリゼーションの一例を示す。
【
図19】
図19は、4つの異なるタグについて、秒単位で測定された時間に対するピコアンペアで測定された電流のプロットを示す。
【
図21】
図21は、本開示のタグ付けされたヌクレオチドを作製するのに有用な例示的なクリックケミストリー反応を示し、(A)は、トリアゾール共有結合でA−B複合体を生成するために、アジド修飾されたA化合物とアルキン修飾されたB化合物との間のクリック反応を示し、(B)は、トリアゾール共有結合でA−B複合体を生成するために、アジド修飾されたA化合物とシクロオクチン修飾されたB化合物との間のクリック反応(例えば、銅無しのクリック反応におけるように)を示し、(C)は、ジヒドロピリジン互変異性型において1,2−ジアジンの共有結合でA−B複合体を生成するために、テトラジン修飾されたA化合物とトランス−シクロオクテン修飾されたB化合物との間のクリック反応(例えば、IEDDAクリック反応)を示す。
【
図22】
図22は、dA6P−N
3とDBCO−Cy3との間のクリック反応の結果を示す。
【
図23】
図23は、アジド−ヌクレオチドの、生成物、DBCO−Cy3への変換を示すMALDI−TOF MSスペクトルを示す。
【
図24】
図24は、dT6P−Cy3−T
25タグを形成するdT6P−N3とヘキシニル−Cy3−T
25オリゴヌクレオチドとの間のクリック反応を示す。
【
図25】
図25は、2’−デオキシアデノシン−5’−六リン酸の合成及びクリックケミストリーを用いた末端リン酸へのタグの結合の例を示す。
【
図26】
図26は、dT6P−N3とオリゴアルキンとの間のクリック反応の一例を示す。
【
図27】
図27は、ヌクレオチドへのタグのチオール(ジスルフィド結合)カップリングの一例を示す;
【
図28】
図28は、タグ−ヌクレオチドdT6P−Cy3−T
25のマススペクトルと伸長反応を示す;及び
【
図29】
図29は、アミダイトケミストリーを用いてオリゴヌクレオチドに組み込むことができるモノマーの例を示す。
【
図30】
図30は、アジド−アルキンクリックケミストリーを用いて調製した、4つの異なるオリゴヌクレオチド−Cy3タグを含む4つの異なるタグ付けされたヌクレオチドを示す。
【
図31】
図31は、(A)異なるオリゴヌクレオチド−Cy3タグを含む4つの異なるタグ付けされたヌクレオチドを用いたDNAポリメラーゼ伸長反応からの試料の変性ゲル画像を示し、当該反応は、Bst2.0DNAポリメラーゼを用いて行われた;及び(B)反応に用いられた4つの異なるオリゴヌクレオチド−Cy3でタグ付けされたヌクレオチドのMALDI−TOF MS分析を示す。
【
図32】
図32は、本開示のオリゴヌクレオチドタグに使用することができる例示的なL−ヌクレオチドを示す。
【
図33】
図33は、本開示のオリゴヌクレオチドタグに使用することができる例示的なα−D−ヌクレオシド、β−D−ヌクレオシド及び2’,5−連結ヌクレオチドを示す。
【
図34】
図34は、本開示のオリゴヌクレオチドタグに使用することができる例示的な非天然ヌクレオチド間結合及び非天然の糖を示す。
【
図35】
図35は、オリゴヌクレオチドタグの3’化学修飾が、Phi29ポリメラーゼによるエキソヌクレアーゼ分解からタグを保護することができることを実証する結果を示すSDS−PAGEゲル画像を示す。
【
図36】
図36は、DNA鋳型(配列番号120)の一部をシークエンシングするためにナノポアアレイチップ、プライマー(配列番号118)及び4つの異なるオリゴヌクレオチドでタグ付けされたヌクレオチド(dT−Tag1は、dT6P−Cy3−dT
2−dSp
8−dT
20−C3であり;dC−Tag2は、dC6P−Cy3−dT
4−dSp
3−dT
23−C3であり;dG−Tag3は、dG6P−Cy3−dT
30−C6であり;dA−Tag4は、dA6P−Cy3−dT
4−FldT−dT−FldT−dT
23−C3である)を用いて僅かに異なる条件下で測定したタグの組み込み事象に対応した電流値のトレースを示す。(A)及び(B)両方に用いた条件は以下であった:150mMのKCl、20mMのHEPES、pH7.5の緩衝液;ポアのトランス側において、3.0mMのSrCl
2;160mVの電位を印加し、維持した。以下に示すポアのシス側の条件は、異なっていた:(A)シス側において、0.1mMのMnCl
2;(B)シス側において3.0mMのMgCl
2+0.7mMのSrCl
2。
【
図37】
図37は、トレースの上に示したれたダブルヘアピン鋳型の12塩基ホモポリマー領域の合成による単一分子、リアルタイムでの電子シークエンシングのために、ナノポアアレイチップ及びオリゴヌクレオチドでタグ付けされたヌクレオチドを用いて僅かに異なる条件下で測定したタグの組み込み事象に対応した電流値のトレースを示す。使用条件は、ポアのシス側において、150mMのKCl、3.0mMのMgCl
2、ポアのトランス側において3.0mMのSrCl
2、及び100mVの電位が印加され、維持された。タグ付けされたヌクレオチドは、
図36に示した。
【
図38】
図38は、ナノポアへのプライマー(配列番号121)の結合、DNAシークエンシングのための鋳型(配列番号122)、タグ付けされたヌクレオチド、及びDNAポリメラーゼの追加を示す。当該図に示されるように、電流遮断による検出のために、タグ付けされた「A」ヌクレオチドは、そのタグがナノポアに挿入するように位置するようにポリメラーゼ活性部位に結合する。
【0058】
詳細な説明
本発明の種々の実施形態が、本明細書に示され、記載されているが、それらの実施形態が単なる例として提供されることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱しないで、多数の変形、変更及び置換を当業者が思いつくであろう。本明細書に記載された本発明の実施形態の種々の代替物が採用されうることが理解されるべきである。
【0059】
本明細書で用いられる用語「ナノポア」は、一般に膜において形成、又はそうでなければ提供されるポア、チャネル又は通路をいう。膜は、脂質二重膜のような生体膜、又はポリマー材料でできた膜のような合成膜であり得る。ナノポアは、例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)又は電界効果トランジスタ(FET)回路などのセンシング回路に隣接又は近接して配置され得る。ナノポアは、0.1ナノメートル(nm)から約1000nmまでの範囲の特有の幅又は直径を有し得る。幾つかのナノポアはタンパク質である。α溶血素は、タンパク質ナノポアの一例である。
【0060】
本明細書で使用する用語「核酸」は、一般に、1つ以上のヌクレオチドサブ単位を含む分子をいう。ヌクレオチドは、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)及びウラシル(U)から選択される1つ以上のサブ単位を含み得る。幾つかの例において、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、或いはそれらの誘導体である。核酸は一本鎖又は二本鎖であり得る。
【0061】
本明細書で使用される用語「タグ」は、一般に、タグに結合されている分子複合体の検出又は同定を可能にする原子又は分子をいう。タグは、静電、電気化学的及び/又は光学的な標識(光)のような、検出可能な標識を提供し得る。
【0062】
本明細書で用いられる用語「ヌクレオチド」は、成長核酸鎖を伸長させるために、核酸ポリメラーゼの基質又は阻害剤として作用することが可能なヌクレオシド−5’−ポリリン酸化合物、又はヌクレオシド−5’−ポリリン酸の構造類似体をいう。例示的なヌクレオチドは、限定されるものではないが、ヌクレオシド−5’−三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、及びdUTP);4以上のリン酸の長さの5’−ポリリン酸鎖(例えば、5’−テトラポリリン酸、5’−ペンタポリリン酸、5’−ヘキサポリリン酸、5’−へプタポリリン酸、5’−オクタポリリン酸)を有するヌクレオシド(例えば、dA、dC、dG、dT、及びdU);及び修飾塩基(例えば、置換されたプリン又はピリミジン塩基)、修飾された糖(例えば、O−アルキル化糖)、及び/又は修飾されたポリリン酸基(例えば、リン酸間にチオリン酸、メチレン及び/又は他の結合を含むポリリン酸)を有し得るヌクレオシド−5’−三リン酸の構造類似体を含む。
【0063】
本明細書で使用される用語「タグ付けされたヌクレオチド」は、ポリリン酸基、塩基、又は糖基に結合したナノポアで検出可能なタグを有する何れかのヌクレオシド−5’−ポリリン酸をいう。ナノポアで検出可能なタグは、ナノポアに入る、ナノポア中に配置されるようになる、ナノポアに捕捉されている、ナノポアを貫通して転座する、及び/又はナノポアを横断することが可能であって、それによってポアを通過する電流における検出可能な変化をもたらす何れかの分子の群又は基(例えば、リンカー、オリゴマー、ポリマー)を含む。例示的なナノポアで検出可能なタグは、限定されないが、何れも任意に色素基、又はフルオロフォアのような化学基で修飾されるか又はそれに結合され得るポリエチレングリコール、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、炭水化物、ペプチド核酸ポリマー、ロックド核酸ポリマーのような天然又は合成ポリマーを含み、それらは検出可能なポア電流変化をもたらし得る。
【0064】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドモノマー単位のオリゴマーをいい、オリゴマーは、任意に非ヌクレオチドモノマー単位並びに/或いはオリゴマーの内部及び/又は外部の位置に結合された他の化学基を含む。オリゴマーは、天然又は合成であってよく、天然に存在するオリゴヌクレオチド、或いは非天然(若しくは修飾)塩基、糖基、ホスホジエステル類似結合及び/又は別のモノマー単位のキラリティーを含むヌクレオシド並びに異性体構造(例えば、5’−から−2’結合、L−ヌクレオシド、αアノマーヌクレオシド)を含むオリゴマーであり得る。本開示の組成物及び方法におけるナノポアで検出可能なタグとして有用な例示的なオリゴヌクレオチドは、表4に示したオリゴヌクレオチドタグの構造を含む。
【0065】
本明細書で使用すされる用語「ヌクレオチド類似体」は、ヌクレオシド−5’−三リン酸と構造的に類似しており、かつ成長核酸鎖を伸長するために、核酸ポリメラーゼの基質又は阻害剤として用いられることが可能な化学化合物をいう。ヌクレオチド類似体は、修飾塩基、例えば、置換されたプリン又はピリミジン塩基、O−アルキル化糖のような修飾された糖、及び/又は修飾されたポリリン酸基、例えば、チオホスフェート、メチレン、及び/又はリン酸間の他のブリッジを含むポリリン酸を有し得る。それは、ポリリン酸鎖中に3つ以上のリン酸を有し得、かつそれは、塩基、糖又はポリリン酸基の何れかに検出可能にタグ付けされ得る。
【0066】
本明細書には、ナノポアを用いて核酸をシークエンシングするために有用な方法、装置及びシステムが記載されている。当該方法は、核酸ポリメラーゼによる鋳型核酸鎖に相補的な成長鎖へのヌクレオチドの組み込みのような、個々のヌクレオチドの組み込み事象を正確に検出することができる。酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)は、成長するポリヌクレオチド鎖にヌクレオチドを組み込むことができ、ただし、添加されたヌクレオチドは、成長鎖にハイブリダイズされた対応する鋳型核酸鎖に対して相補的である。これらのヌクレオチドの組み込み事象は、ヌクレオチドを捕えること、ポア中の結合されたタグを読み取ること、ヌクレオチドからタグを解離することを含み、解離されたタグはその後、ナノポアを通過する。このようにして、特有のタグが最初に読み取られた後、各種類のヌクレオチド(即ち、A、C、G、T、又はU)から解離されるため、組み込まれた塩基が同定され得る(即ち、A、C、G、T、又はU)。
【0067】
ヌクレオチドの組み込み事象は、ナノポアの補助によりリアルタイムで(即ち、それらが起こった時に)、又はシークエンシング反応に続いてナノポアのデータを分析することにより検出され得る。幾つかの場合において、ナノポアに結合した又は近接した酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)は、ナノポアを通過する又は近接する核酸分子の流れを促進し、検出のために相補的なヌクレオチドのタグをナノポア内に配置し得る。従って、(タグの解離に先立って)酵素に結合している相補的なタグ付けされたヌクレオチドは、ナノポアのポア中へのタグの配置をもたらし得、それはその後、ナノポアを介した電流値の変化によって検出され得る。或いは、1つ以上のタグ分子(本明細書では「タグ」とも称する)は、タグがナノポアを通過して又は隣接して流れる際に解離した後、検出され得る。幾つかの場合においてはナノポアに結合した又は近接した酵素は、タグ又は1つ以上のヌクレオチドの組み込みによって解離される他の副産物の検出を補助し得る。例えば、それぞれが参照によってその全てが本明細書に援用される、米国特許第8,889,348号;米国特許出願公開第US2013/0264207A1号、及びPCT国際出願公開第PCT/US13/35630号及び第PCT/US13/35635号を参照のこと。
【0068】
本発明に記載の方法は、単一分子法であり得る。即ち、検出される信号は、単一の分子(例えば、単一のヌクレオチドの組み込み)から生じたものであり、複数のクローン性分子から生じたものではない。当該方法は、DNAの増幅を必要としない。
【0069】
ヌクレオチドの組み込み事象は、複数のヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP、ここで、Nは、アデノシン(A)、シチジン(C)、チミジン(T)、グアノシン(G)、又はウリジン(U)及びそれらの誘導体である))を含む混合物によって生じうる。ヌクレオチドの組み込み事象は、単一の種類のヌクレオチド(例えば、dATP)を含む溶液にからは、必ずしも生じない。ヌクレオチドの組み込み事象は、複数のヌクレオチド(例えば、dATP、続いてdCTP、続いてdGTP、続いてdTTP、続いてdATP)の交互溶液からは、必ずしも生じない。加えて、本開示全体に記載されているように、ヌクレオチドの組み込み事象は、タグ付けされたヌクレオチドの混合物にからも生じ得、タグ付けされたヌクレオチドは、4個以上のリン酸の長さの5’−ポリリン酸鎖(例えば、5’−テトラリン酸、5’−ペンタリン酸、5’−六リン酸、5’−ヘプタリン酸、5’−オクタリン酸)を含み得、かつタグ中に更なる化学基を含み得る。
【0070】
「クリックケミストリー」のような化学結合方法
本明細書には、化学結合を用いてヌクレオチドにタグを結合させるための方法が記載されている。幾つかの実施形態において、タグは、「クリックケミストリー」反応又は「クリック反応」を用いてヌクレオチドに結合されている。クリック反応は、アジド及びアルキン(若しくはシクロオクチン)、又はテトラジン及びトランス−シクロオクテンのような特定の化学基のペア間の高速の不可逆反応である。クリック反応に使用される特定の化学基のペアは、共有結合の一部としてのトリアゾール、又は1,2−ジアジン(若しくはその互変異性体、ジヒドロピリジン)のような特定の化学基を含む共有結合を提供する。
図21は、本発明に開示されたタグ付けされたヌクレオシド結合を調製するのに有用な3つの例示的なクリック反応を示す一般的な反応スキームを示す。それらの3つの例示的な反応を更に下で記載する。
【0071】
アジドとアルキンとの間の例示的なクリック反応は、アジド−アルキンヒュスゲン環化付加である。アジド−アルキンヒュスゲン環化付加は、1,2,3−トリアゾール共有結合を有する生成物化合物を得るための、アジド基を有する化合物及び末端又は内部のアルキン基を有する化合物間の1,3−双極子環化付加反応である。例示的なアジド−アルキンヒュスゲンクリック反応は、
図21の一般的なスキーム(A)に従い、更に下のスキームにおいて詳述する。
【化5】
【0072】
上記の例示的なアジド−アルキン環化付加反応のスキーム(例えば、98℃で18時間行われる)において、化合物2のアジド基は、化合物1のアルキン基と反応して、1,4−トリアゾール及び1,5−トリアゾール付加物の混合物である生成物組成物3が得られる。
【0073】
銅触媒によるアジド−アルキン環化付加反応は、共有トリアゾール結合で連結されたクリック反応生成物も提供するが、非触媒1,3−双極子環化付加と比較して約10
7倍〜10
8倍という膨大な速度促進をもって進行し。更に、この銅触媒によるクリック反応は、広い温度範囲で起こり得、水性条件及び約4から12までの範囲のpHに対して非感受性であり得、広い範囲の官能基を許容することができ、適切な条件下において、単一の異性体を得ることが可能である。例えば、参照によってその全てが本明細書に援用されるヒモ(Himo)ら(2005)を参照のこと。銅触媒による化学反応は、
図21のスキーム(A)に示す、2つの化合物(A及びB)を結合するための一般的なスキームに従い、下記のスキームにおいて更に詳述される。
【化6】
【0074】
水性条件に対する耐性故に、銅触媒によるアジド−アルキンクリック反応は、生物学的分子の共有結合のために用いられてきている。例えば、ワング(Wang)ら(2003)、プレソルスキー(Presolski)ら(2011)を参照のこと。この銅触媒によるアジド−アルキンクリック反応は、本開示の方法に従ってヌクレオチドにタグを結合するためにも用いられることができ、また、タグとヌクレオチドとの間の共有結合内にトリアゾールを含むタグ付けされたヌクレオチドを提供することができる。
【0075】
アジド修飾化合物とシクロオクチン修飾化合物(例えば、ジベンジルシクロオクチン「DBCO」で修飾)との間の、共有トリアゾール結合を含む両化合物の生成物複合体を得るための環化付加を用いる銅無しクリック反応も開発されてきている。例えば、ジェウェット(Jewett)及びベルトッツィ(Bertozzi)(2010)を参照のこと。トリアゾールによって2つの化合物A及びBを結合させるための銅無しのアジド−シクロオクチンクリック反応の使用のための一般的なスキームは、
図21の
スキーム(B)に記載されている。幾つかの実施形態において、この銅無しクリック反応は、本開示の方法に従ってヌクレオチドにタグを結合するために使用することができ、タグとヌクレオチドとの間の共有結合中にトリアゾールを含むタグ付けされたヌクレオチドを提供し得る。
【0076】
本開示のタグ付けされたヌクレオチドを提供するために有用な他のクリックケミストリー反応は、逆電子要請型ディールス−アルダー(IEDDA)反応である。例えば、レイナー(Reiner)ら(2014)並びに米国特許出願公開第2013/0266512A1号及び第2013/0085271A1号を参照のこと。IEDDAクリック反応は、テトラジン修飾化合物とトランス−シクロオクテン修飾化合物との間の高速不可逆反応を用いて共有1,2−ジアジン結合、より具体的には、1,2−ジアジンの互変異性同等物のジヒドピリダジンを含む複合体生成物を提供する。1,2−ジアジン(ジヒドロピリダジン互変異性体)基で2つの化合物A及びBを結合するためのテトラジンとトランス−シクロオクテンとの間のIEDDAクリック反応の使用のための一般的なスキームは、
図21の
スキーム(C)に示されている。従って、幾つかの実施形態において、このIEDDAクリック反応は、本開示の方法に従ってヌクレオチドにタグを結合するためにも使用することができ、タグとヌクレオチドとの間の共有結合内に1,2−ジアジン(ジヒドロピリダジン互変異性体)を含むタグ付けされたヌクレオチドを提供し得る。
【0077】
タグへのヌクレオチドポリリン酸の結合は、ジスルフィドの形成(容易に切断可能な結合の形成)、アミドの形成、エステルの形成により、アルキル化(例えば、置換されたヨードアセトアミド試薬の使用)により、又はアルデヒドとアミン若しくはヒドラジンを用いた付加体の形成によっても達成され得る。参照によってその全てが本明細書に援用されるハーマンソン(Hermanson)(2008年5月2日)に多くの結合化学を見つけることができる。
【0078】
タグ付けされたヌクレオチド
幾つかの場合において、タグ付けされたヌクレオチドは、ポリメラーゼで触媒されたヌクレオチドの組み込み事象の間、ヌクレオチドから解離されるタグ(又は標識)を含む。タグは、ヌクレオチドの5’−リン酸又は5’−ポリリン酸鎖に結合され得る。幾つかの場合において、タグは、フルオロフォアを含まない。タグは、ナノポアによって検出されることが可能であり、その電荷、形状、サイズ、又はそれらの何れかの組み合わせによって同定(例えば、他のタグと区別)され得る。タグの例は、種々のポリマーを含む。各種類のヌクレオチド(即ち、A、C、G、T、U)は、一般的に、一意的に認識可能なタグを含む。
【0079】
本開示のタグは、静電的、電気化学的、及び/又は光学的な方法を用いて検出可能であり得る分子であり得る。幾つかの例において、タグは、所定の核酸分子(例えば、A、C、G、T、U)に独特の電子的署名を提供し得る。
【0080】
タグは、ヌクレオチド上の適切な何れかの位置に配置され得る。
図1は、可能性のあるタグ付けされたヌクレオチドを示し、ここで、R
1は、OHであり得、R
2は、H(即ち、デオキシリボヌクレオチド用)又はOH(即ち、リボヌクレオチド用)であり得るが、R
1及びR
2のための他の選択も許容できる。
図1において、Xは、何れかの適切なリンカーである。幾つかの場合において、リンカーは、切断可能である。リンカーの例は、限定されるものではないが、O、NH、S又はCH
2を含む。リンカーは、例えば、O、N、S、又はP原子も含み得る。リンカーは、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、異なる長さ及び分子量のPEG、有機又は無機色素、蛍光又は蛍光性色素、薬剤、オリゴヌクレオチド、質量タグ、化学発光タグのような直接的に又は間接的に検出可能な基であり得、援用によりその全てが本明細書に援用される、米国特許出願第13/994,431号で考察されるように正又は負の電荷を含み得る。
【0081】
幾つかの実施形態において、適切なリンカーは、Cy3及びCy3.5のような、蛍光シアニン色素(又は「CyDye」)を含む。そのような実施形態において、リンカー内のCyDye基は、タグ付けされたヌクレオチドを検出するのに用いることが可能な追加的な基を提供するために用いられるか、又はCyDye基は検出されず、リンカーに結合したタグ基を検出する能力を高める更なる構造を単に提供し得る。実際、オリゴヌクレオチドタグのリンカー部におけるCyDye基の存在は、ナノポアによるタグ付けされたヌクレオチドの補足及び検出を向上させ得る。例15は、ナノポアに結合したDNAポリメラーゼに結合した際に、リンカー部にCy3基を有するオリゴヌクレオチドタグが、タグ付けされたヌクレオチドのナノポアによる補足及び検出をどのように向上させるかを実証している。従って、幾つかの実施形態において、本開示は、タグ付けされたヌクレオチドを提供し、ここで、タグは、CyDye基を含み、幾つかの実施形態においてCyDye基は、Cy3である。タグ付けされたヌクレオチドの幾つかの実施形態において、タグは、オリゴヌクレオチド及びリンカーを含み、リンカーは、更にCyDye基を含む。
【0082】
位置Zのための適切な化学基の例は、O、S、又はBH
3を含む。塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、又はそれらの誘導体を含む、核酸に組み込まれるのに適切な何れかの塩基であり得る。ユニバーサル塩基(即ち、A、C、T、G、及びUの2つ以上と対になることが可能な塩基)も幾つかの場合(例えば、2’デオキシイノシン、ニトロインドール誘導体)において、受け入れられる。
【0083】
リン酸の数(n)は、何れかの適切な整数の値(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上)である(例えば、ポリメラーゼによって核酸分子にヌクレオチドが組み込まれ得るリン酸の数)。幾つかの場合において、全ての種類のタグ付けされたヌクレオチドは、同じ数のリン酸を有するが、これは必要とされるものではない。幾つかの応用において、各種類のヌクレオチドに対して異なるタグがあり、リン酸の数は、種々のタグを区別するために使われる必要は必ずしもない。しかしながら、幾つかの場合において、2つ以上の種類のヌクレオチド(例えば、A、C、T、G又はU)は、同じタグを有し得、1つのヌクレオチドを他と区別する能力は、リン酸の数によって(異なるnの値を有する種々の種類のヌクレオチドによって)、少なくとも部分的に決定される。幾つかの実施形態において、nの値は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上である。
【0084】
適切なタグを以下に記載する。幾つかの場合において、タグは、ヌクレオチドの残りの部分の電荷に対して逆の符号である電荷を有する。タグが結合された場合、化合物全体の電荷は、中性であり得る。タグの解離は、2つの分子、即ち、荷電タグ及び荷電ヌクレオチドを生じさせ得る。荷電タグは、幾つかの場合において、ナノポアに進入し、それによって検出される。
【0085】
適切なタグ付けされたヌクレオチドの更なる例を
図2に示す。タグは、糖基、塩基、ポリリン酸基又はそれらの何れかの組み合わせに結合され得る。
図2を参照して、Yは、タグであり、Xは、リンカー(幾つかの場合において、切断可能)である。更に、R
1は、存在する場合には、一般的に−OH、−OCH
2N
3又は−O−2−ニトロベンジルであり、R
2は、存在する場合には、一般的に−H又は−OHである。また、Zは、一般的にO、S、又はBH
3であり、nは、1、2、3、4、5、6、又は7を含む何れかの整数である。幾つかの場合において、Aは、O、S、CH
2、CHF、CFF、又はNHである。
【0086】
続けて
図2を参照して、4つの異なるタグ付けされたヌクレオチドのセットを使用することができ、これはタグ付けされたヌクレオチド上の各塩基の種類は、一般的に、他の3つのタグ付けされたヌクレオチドのそれぞれの塩基の種類と異なり、各タグ付けされたヌクレオチド上のダグの種類は、一般的に、他の3つのタグ付けされたヌクレオチドそれぞれのタグの種類と異なる。適切な塩基は、限定されるものではないが、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル又はチミン、或いはそれらそれぞれの誘導体を含む。幾つかの場合において、塩基は、7−デアザグアニン、7−デアザアデニン、又は5−メチルシトシン、或いはニトロピロール、ニトロインドール、ネブラリン、ゼブラリン、ベンゼン、若しくはそれらの誘導体のような非天然塩基(例えば、
図29参照のこと)のうちの1つである。
【0087】
R
1が−O−CH
2N
3である場合において、ヌクレオチドは、−CH
2N
3を取り除き、3’位に結合した−OH基をもたらし、それによって更なるタグ付けされたヌクレオチドの組み込みを可能とさせるために、組み込まれたタグ付けされたヌクレオチドを処理することを更に含む方法において用いることができる。
【0088】
R
1が−O−2−ニトロベンジルである場合において、タグ付けされたヌクレオチドは、−2−ニトロベンジルを取り除き、その結果として−OH基が3’位に結合し、それによって更なるタグ付けされたヌクレオチドの組み込みを生じさせるように、タグ付けされたヌクレオチドの組み込みを行うことを更に含む方法において用いられ得る。
【0089】
タグは、ナノポアの中で又はナノポアの補助によって検出されることが可能な何れかの化学基であり得る。幾つかの場合において、タグは、エチレングリコール、アミノ酸、炭水化物、ペプチド、色素、化学発光化合物、モノヌクレオチド、ジヌクレオチド、トリヌクレオチド、テトラヌクレオチド、ペンタヌクレオチド、ヘキサヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(6量体を超える長さのもの)、ポリヌクレオチド、脂肪族酸、芳香族酸、アルコール、チオール基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アジド基、又はそれらの組み合わせのうち1種以上を含む。
【0090】
化合物中のリン酸の数をバランスさせるために、タグが適切な数のリシン又はアルギニンを更に含むことも企図されている。
【0091】
幾つかの場合において、タグはポリマーである。ポリエチレングリコール(PEG)は、ポリマーの一例であり、以下の構造を有する。
【化7】
【0092】
何れかの数のエチレングリコール単位(W)を用いることができる。幾つかの場合において、Wは、0〜100の整数である。幾つかの場合において、エチレングリコール単位の数は、ヌクレオチドの各種類について異なる。一つの実施形態において、4つの種類のヌクレオチドは、16、20、24又は36個のエチレングリコール単位を有するタグを含む。幾つかの場合において、タグは、クマリン系色素のような追加の特定可能な基を更に含む。幾つかの場合において、ポリマーは荷電している。幾つかの場合において、ポリマーは荷電しておらず、タグは高濃度の塩(例えば、3〜4M)中で検出される。幾つかの場合において、ポリマーはリボヌクレオチド及び/又はデオキシリボヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドである。加えて、ポリマーはアミノ酸サブ単位を含むポリペプチドであり得る。
【0093】
幾つかの場合において、タグは、複数のPEG鎖を含む。1つの例においては、タグは、以下の構造:
【化8】
【0094】
を有し、ここで、Rは、NH
2、OH、COOH、CHO、SH、又はN
3であり、Wは、0から100までの整数である。例えば、参照によりその全てが本明細書に援用される、米国特許出願第13/994,431を参照のこと。
【0095】
上述したように、幾つかの実施形態において、タグ付けされたヌクレオチドのタグはそれ自体がオリゴヌクレオチドを含み得る。幾つかの実施形態において、オリゴヌクレオチドタグは、天然塩基(例えば、A、C、G、T)、非天然(又は修飾)ヌクレオチド塩基、又はそれらの混合物を含み得る。幾つかの例示的な非天然(又は修飾)塩基は、
図29に示され、限定されないが、ニトロピロール、ニトロインドール、ネブラリン、ゼブラリン、及びベンゼン、並びにそれらの誘導体を含む。幾つかの実施形態において、オリゴヌクレオチドタグは天然のホスホジエステルヌクレオチド間結合を含み得るか、又はリン酸トリエステル、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、又はボロノホスフェートのような非天然ヌクレオチド間結合を有し得る。幾つかの場合において、ヌクレオチド間結合は、モルホリノ基である。
【0096】
更に後述するように、オリゴヌクレオチドタグは、ナノポアにより、ナノポアに関連付けられたセンサーにおける検出可能な電流の変化を生じさせる該タグのポア中における存在によって検出され得る。しかしながら、オリゴヌクレオチドがハイブリダイズする必要はない。実際、オリゴヌクレオチドタグの鋳型配列へのハイブリダイゼーションは、ナノポアによるシークエンシングにおいて必要な適切な電流遮断信号の提供において問題を生じさせる可能性がある。従って、幾つかの実施形態において、オリゴヌクレオチドタグは、1つ以上の非天然塩基(例えば、上述したようなもの)又は非天然糖基(更に後述する)を有するヌクレオチドを含み得る。そのような非天然塩基及び糖基は、天然ヌクレオチドと水素結合を形成せず、それゆえ、シークエンシングされる核酸鋳型にハイブリダイズしない。
【0097】
加えて、幾つかの実施形態において、オリゴヌクレオチドタグは、L−ヌクレオチド(D−ヌクレオチドではなくて)を含み得る。本開示のオリゴヌクレオチドタグに用いられ得る例示的なL−ヌクレオチドは、
図32のA)に示される。L−核酸は、一般的に、一本鎖天然DNA及びRNAを識別しない(例えば、アッセリン(Asseline)ら(1991)及びガルベシ(Garbesi)ら(1993)を参照のこと)。オリゴヌクレオチドタグは、全てL−ヌクレオチドであるか、又は、L−及びD−ヌクレオチドのそれらがシークエンシングされる核酸鋳型とハイブリダイズしない割合の混合物を含み得ることが企図されている。従って、本開示は、(a)末端リン酸を有するヌクレオチドポリリン酸基、及び(b)トリアゾール、1,2−ジアジン、ジスルフィド、アミド、ヒドラゾン、チオアセトアミド、又はマレイミドチオ付加物を介して末端リン酸に直接に、又は更なるリンカー部によって共有結合しているL−ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドタグを含む、タグ付けされたヌクレオチドを提供する。
【0098】
天然ヌクレオチドは、リボースの1’位に関してのβ−D立体配置及び核酸塩基を有する。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドタグは、α−D−ヌクレオチドを含み得る(
図33(A))。オリゴヌクレオチドタグは、α−D−ヌクレオチド及びβ−D−ヌクレオチドの全て又はそれらがシークエンシングされる核酸鋳型とハイブリダイズしない割合の混合物を含み得る(
図33(B))。従って、本開示は(a)末端リン酸を有するヌクレオチドポリリン酸基、及び(b)トリアゾール、1,2−ジアジン、ジスルフィド、アミド、ヒドラゾン、チオアセトアミド、又はマレイミドチオ付加物を介して当該ヌクレオチドの末端リン酸に直接に、又は更なるリンカー部によって共有結合しているα−D−ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドタグを含む、タグ付けされたヌクレオチドを提供する。
【0099】
他の実施形態において、本開示は、キム(Kim)ら(2005)、セファー(Sefah)ら(2014)、並びにロメスバーグ(Romesberg)ら(J.Am.Chem.Soc.2014及びNucleic Acids Research 2014)に記載されている非天然合成ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドタグを提供する。これらの刊行物に記載された非天然合成ヌクレオチドは、天然ヌクレオチド(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、デアザプリン又はそれらの誘導体)とH結合を形成せず、それゆえ、天然の核酸鋳型とはハイブリダイズしない。そのような非天然合成ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドタグは、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドであり得、また、全ての非天然ヌクレオチド又は幾つかの天然ヌクレオチドを含む混合物を含み得る。
【0100】
他の側面において、本開示は、タグ付けされたヌクレオチドを提供し、ここで、タグは、タグ中のヌクレオチドの対の間に少なくとも1つの2’,5’結合を(天然3’,5’結合よりも)有するオリゴヌクレオチドを含む。
図33(B)は、2’,5’結合及び3’,5’結合ヌクレオチドを比較した図を示す。このような2’,5’結合オリゴヌクレオチドは、相補的なRNAに選択的に結合し、DNA鋳型には結合しない(ブハン(Bhan)ら(1997))。それゆえ、2’,5’結合オリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドタグは、シークエンシングされる核酸鋳型には結合しないと予想される。オリゴヌクレオチドタグは、2’,5’結合ヌクレオチドのみを含み得るか、又は2’,5’結合及び3’,5’結合ヌクレオチドの混合物を含み得ると企図される。従って、本開示は(a)末端リン酸を有するヌクレオチドポリリン酸基、及び(b)トリアゾール、1,2−ジアジン、ジスルフィド、アミド、ヒドラゾン、チオアセトアミド、又はマレイミドチオ付加物によって、ヌクレオチドの末端リン酸に直接に、又は更なるリンカー部によって共有結合している1〜100個の2’,5’結合ヌクレオチド単位の鎖を含むタグを含む、タグ付けされたヌクレオチドを提供する。
【0101】
他の側面において、本開示は、タグ付けされたヌクレオチドを提供し、ここで、タグは、少なくとも1種類の修飾された糖及び/又はリン酸基を有するオリゴヌクレオチドを含む。本開示のオリゴヌクレオチドタグに使用することができる例示的な修飾された糖及び/又はリン酸基は、
図34に示される。オリゴヌクレオチドタグは、オリゴヌクレオチドタグ中に、修飾された糖及び/又はリン酸基のみを含むか、又は修飾された糖及び/又はリン酸基並びに天然(例えば、リボース)ヌクレオチドの混合物を含み得ると企図される。従って、本開示は(a)末端リン酸を有するヌクレオチドポリリン酸基、及び(b)トリアゾール、1,2−ジアジン、ジスルフィド、アミド、ヒドラゾン、チオアセトアミド、又はマレイミドチオ付加物によってヌクレオチドの末端リン酸に直接に、又は更なるリンカー部によって共有結合している修飾された糖及び/又はリン酸基を含む1〜100個のヌクレオシド単位の鎖を含むタグを含む、タグ付けされたヌクレオチドを提供する。
【0102】
本開示によって提供されるタグ付けされたヌクレオチドの実施形態において、天然又は合成のオリゴヌクレオチドタグは、その5’又は3’末端のどちらかを介して直接に、又はリンカー部によってヌクレオチドの末端リン酸に共有結合され得ると企図される。幾つかの実施形態において、オリゴヌクレオチドタグは、その5’末端を介して直接に、又はリンカー部によってヌクレオチドの末端リン酸に共有結合されている。そのような実施形態において、オリゴヌクレオチドタグの他方の末端にある3’ヒドロキシル基は、潜在的なエキソヌクレアーゼ分解からオリゴヌクレオチドを保護するように修飾されると企図される。幾つかの実施形態において、オリゴヌクレオチドタグの3’ヒドロキシ末端は、化学的修飾によってエキソヌクレアーゼ活性から保護される。3’ヒドロキシ末端の例示的な化学的修飾は、リン酸化、又は末端ヒドロキシル基を有するC
3アルキルからC
12アルキルまでのスペーサーとの共有結合を含み得る。
【0103】
幾つかの例において、タグは、分子(dCp)m、(dGp)m、(dAp)m、及び(dTp)m、又は(dCp)、(dGp)、(dAp)、及び(dTp)の1つ以上の単位の組み合わせから選択される。
図3及び
図4は、ヌクレオチドに結合されたこれらの分子を示す。ここで、mは、独立に、0から100までの整数であり、mが0である場合、dNPPの末端リン酸は、構造の左手側に示されるヌクレオシドの3’のO原子に直接結合されている。幾つかの場合において、nの値は、各塩基の種類によって異なる。
【0104】
幾つかの場合において、タグは、アルキル、アルケニル、アルキニルのような置換又は非置換のヒドロカルビルであり、3000ダルトン以下の質量を有する。
【0105】
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有し、非置換の又は置換されていてもよい分岐鎖及び直鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基を含む。本明細書で用いられる用語「アルケニル」は、直鎖又は分岐鎖であり、少なくとも1つの炭素から炭素への二重結合を含み、可能な最大数までの非芳香族炭素−炭素二重結合が存在し得、非置換又は置換されていてもよい非芳香族炭化水素基をいう。用語「アルキニル」は、直鎖又は分岐鎖であり、少なくとも1つの炭素から炭素への三重結合を含み、可能な最大数までの非芳香族炭素−炭素三重結合が存在し得、非置換又は置換されていてもよい炭化水素基をいう。用語「置換された」は、アルキルのような上述の機能的な基、又は、ヒドロカルビルであって、それらに含まれる少なくとも1つの水素原子への結合が、通常の原子価が維持され、置換によって安定な化合物が生じるという条件の下で、非水素又は非炭素原子への結合に変えられているものをいう。置換基もまた、炭素又は水素原子への1つ以上の結合がヘテロ原子への二重又は三重結合を含む1つ以上の結合に変えられている基を含む。
【0106】
図5は、末端リン酸に結合したタグ505を有するヌクレオシドを示す。ここに示されるように、塩基は何れかの塩基(例えば、A、T、G、C、U又はそれらの誘導体)であり得、Rは、何れかの化学基(例えば、H、OH)であり得、nは、何れかの整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上)であり得、Xは、何れかの化学基(例えば、O、NH、S)であり得、Yは、Xと共有結合を形成し、かつタグに結合する何れかの機能的な基であり得る。タグの例は、限定されないが、何れかのサイズ(例えば、2〜100個の塩基、5〜50個の塩基、又は2〜40個の塩基を含む)のオリゴヌクレオチドタグを含む。幾つかの場合において、オリゴヌクレオチドタグは、ホモポリマー又はヘテロポリマーとしてのニトロピロール、ニトロインドール、ネブラリン、ゼブラリン、ベンゼン、又はそれらの誘導体を有する。幾つかの場合において、タグは、リン酸トリエステル、リン酸ジエステル、ホスホロアミド酸、ホスホロチオエート、メチルホスホネート又はボロノホスフェートのヌクレオチド間結合を有する。幾つかの場合において、ヌクレオチド間結合は、モルホリノ基である。
【0107】
幾つかの実施形態において、タグは、「クリックケミストリー」として知られるアジド−アルキンヒュスゲン環化付加を用いてヌクレオチドへ結合されている。例えば、
図6は、クリックケミストリーを用いて、6つの炭素スペーサー及び反応性アルキン基を有するタグ(右)と反応する、6個の炭素スペーサー及び反応性アジド基を末端リン酸に結合した6個のリン酸を有するヌクレオチド(左)を示す。本明細書の他の箇所に記載されるように、
図21の
スキーム(A)、(B)及び(C)は、2つの化合物(A及びB)を結合するための3つの例示的なクリックケミストリー反応を示す。これらの3つの例示的なクリック反応は、ヌクレオチドへのタグの結合における使用のために適用することが可能であり、それによって本開示のタグ付けされたヌクレオチドが製造される。このようなクリック反応の使用の詳細な記載は、例において提供される。
【0108】
ある側面において、タグ付けされたヌクレオチドは、末端リン酸を含むポリリン酸尾部を含むヌクレオチドの提供によって形成される。ヌクレオチドの末端リン酸は、アルキン又はアジドに類似するリンカーによって共有結合し得る。タグは、「クリック」反応を用いてヌクレオチド末端リン酸−アジドに共有結合し、トリアゾールを形成し得る。トリアゾールは、アジドとアルキンとの間の反応によって形成され得る。幾つかの実施形態において、ポリリン酸尾部は、少なくとも3つのリン酸、少なくとも4つのリン酸、少なくとも5つのリン酸、少なくとも6つのリン酸、又は少なくとも7つのリン酸を含む。幾つかの実施形態において、ポリリン酸基は、4から6個までのリン酸を含む。幾つかの実施形態において、ポリリン酸基は、少なくとも6つのリン酸を含む。タグは、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)、オリゴ糖、炭水化物、ペプチド核酸(PNA)、ビニルポリマー、他の水溶性ポリマー、ペプチド、及びそれらの何れかの組み合わせを含み得る。
【0109】
幾つかの場合において、トリアゾールは構造:
【化9】
【0110】
を有し、
R
1は、タグを含み、R
2は、ヌクレオチドを含み;或いは、R
1は、ヌクレオチドを含み、R
2は、タグを含む。
【0111】
幾つかの場合において、トリアゾールは、構造:
【化10】
【0112】
を有し、
R
1及びR
3は、結合して環状部を形成し;及び結合したR
1及びR
3は、タグを含み、R
2は、ヌクレオチドを含み;或いは、結合したR
1及びR
3は、ヌクレオチドを含み、R
2は、タグを含む。
【0113】
本明細書において、タグ付けされたヌクレオチド製造する方法も提供され、当該方法は、ポリリン酸尾部を含むヌクレオチドを提供することを含み、ポリリン酸尾部は、末端リン酸を含む。末端リン酸は、アジド基又はアルキン基のどちらかを含み得る。当該方法は、アジド基又はアルキン基のどちらかを含むタグ分子を提供することを含み、ヌクレオチド及びタグ分子は、それぞれがアジド基を含むことはなく、ヌクレオチド及びタグ分子は、それぞれがアルキン基を含むことはない。当該方法は、ヌクレオチドをタグ分子と結合させるためにアジド基をアルキン基と反応させることも含み得る。幾つかの場合において、当該反応は、銅、ルテニウム、銀、又はそれらの何れかの組み合わせの塩を含む触媒によって促進される。
【0114】
幾つかの場合において、当該反応は、触媒を必要としない。触媒は、アルキンがシクロオクチン(例えば、ジメンジルシクロオクチン)である場合必要でない可能性がある。
【0115】
幾つかの場合において、(a)環状トリメタリン酸の生成が起こる条件下でヌクレオシド三リン酸をジシクロヘキシルカルボジイミド/ジメチルホルムアミドと接触させること;(b)−OH又は−NH
2で官能化された化合物を形成するように操作(a)から生じた生成物を求核試薬と接触させること;及び(c)タグが間接的に末端リン酸に結合し、それによってタグ付けされたヌクレオチドが形成される条件下において、操作(b)の生成物をタグに結合した−COR基を有するタグと反応させることによって、タグは、末端リン酸に結合され得る。
【0116】
幾つかの場合において、求核試薬は、H
2N−R−OH、H
2N−R−NH
2、R’S−R−OH、R’S−R−NH
2、又は、
【化11】
【0117】
である。
【0118】
幾つかの場合において、当該方法は、操作(b)において、操作(a)から生じた生成物を構造:
【化12】
【0119】
を有する化合物と接触させること、及びその後又はそれと同時に、構造:
【化13】
【0120】
を有する化合物を形成させるように当該生成物をNH
4OHと接触させることを含む。
【0121】
操作(b)の生成物は、その後、タグが間接的に末端リン酸に結合し、それによって構造:
【化14】
【0122】
を有するタグ付けされたヌクレオチドが形成される条件下において、タグに結合した−COR基を有するタグと反応させられ得、
R
1は、OHであり、R
2は、H又はOHであり、塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、7−デアザプリン又は5−メチルピリミジンである。
【0123】
ヌクレオチドポリリン酸のタグへの結合は、ジスルフィドの形成(容易に切断可能な結合の形成)、アミドの形成、エステルの形成により、アルキル化(例えば、置換されたヨードアセトアミド試薬の使用)により、又は、アルデヒド及びアミン若しくはヒドラジンを用いた付加体の形成によっても達成され得る。参照によってその全てが本明細書に援用されるハーマンソン(Hermanson)(2008)に多くの結合化学を見つけることができる。
【0124】
末端リン酸又はオリゴヌクレオチドタグ上の反応性官能基及び官能基と反応することが可能な官能基を表1に提供する。それらの官能基と反応することが可能な反応性官能基は、リンカー上又はタグ上のどちらかに存在し得る。
【表1】
【0125】
本開示の他の側面において、検出用電極に隣接した膜中のナノポアの補助による核酸試料のシークエンシングのための方法を提供する。当該方法は、ナノポアを含む反応チャンバー内に、トリアゾールによって末端リン酸に結合されたタグを有するタグ付けされたヌクレオチドを提供することを含み、当該タグ付けされたヌクレオチド中の個々のタグ付けされたヌクレオチドは、ナノポアの補助によって検出可能なヌクレオチドに結合したタグを含む。ポリメラーゼ反応は、ポリメラーゼの補助によって実行され、それによって、核酸試料からの一本鎖核酸分子に相補的な成長鎖中に、タグ付けされたヌクレオチド中の個々のタグ付けされたヌクレオチドが組み込まれる。ナノポアを用いて、個々のタグ付けされたヌクレオチドに関連付けられたタグは、ポリメラーゼの活性において三重複合体を形成した状態で検出され、当該形成によって、隣接したポア内にタグが進入若しくは配置され、及び/又はその後ポリメラーゼによって成長鎖に個々のタグ付けされたヌクレオチドが組み込まれ、それによってタグがヌクレオチドから切断された際にナノポアの補助によりタグが検出される。
図7は、クリックケミストリーを用いて結合された4つの異なるタグにおけるセル電流測定値を示す。4つの異なるタグは、個別に分解し得、A残基、T残基、G残基及びC残基に対応し得る。
【0126】
分子の検出及び/又は特定のための方法
本開示は、分子の検出及び/又は特定のための方法を提供する。そのような方法は、核酸、タンパク質及び抗体などの様々な種類の生物学的なスピーシーズを検出するのに用いられ得る。幾つかの実施形態において、分子の特定のための方法が核酸分子をシークエンシングするために用いられる。
【0127】
ある例において、核酸をシークエンシングするための方法は、シークエンシングされる核酸を有する生物学的試料を回収すること、当該生物学的試料から核酸試料を抽出又はそうでなければ単離すること、及び幾つかの場合においては、シークエンシングのための核酸を調製することを含む。
【0128】
図8は、核酸試料をシークエンシングするための方法を模式的に示す。当該方法は、生物学的試料(例えば、組織試料、液体試料)から核酸分子を単離すること、及びシークエンシングのための核酸試料を調製することを含む。幾つかの場合において、核酸試料は細胞から抽出される。核酸を抽出するための幾つかの例示的な技術は、リゾチーム、超音波処理、抽出、高圧又はそれらの何れかの組み合わせの使用である。核酸は、幾つかの場合において無細胞核酸であり、核酸からの抽出は必要ではない。
【0129】
幾つかの場合において、核酸試料は、タンパク質、細胞壁破片、及び核酸試料からの他の成分の除去を含むプロセスによって、シークエンシングのために調製され得る。このことを達成するための利用可能な多くの市販品があり、それは例えば、スピンカラムなどである。エタノール沈殿及び遠心分離も用いられ得る。
【0130】
核酸試料は、複数の断片に分割(又は破断)され得、そのことは、例えば、アレイ状の複数のナノポアを含む装置の補助などによる核酸シークエンシングを容易にする。しかしながら、シークエンシングされる核酸分子の破断は、必ずしも必要ではない。
【0131】
幾つかの場合において、長い配列が決定される(即ち、「ショットガンシークエンシング」法は必要でない可能性がある)。何れかの適切な長さの核酸配列が決定され得る。例えば、少なくとも約400、約500、約600、約700、約800、約800、約1000、約1500、約2000、約2500、約3000、約3500、約4000、約4500、約5000、約6000、約7000、約8000、約9000、約10000、約20000、約40000、約60000、約80000、又は約100000等の塩基がシークエンシングされ得る。幾つかの場合において、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも800、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも3000、少なくとも3500、少なくとも4000、少なくとも4500、少なくとも5000、少なくとも6000、少なくとも7000、少なくとも8000、少なくとも9000、少なくとも10000、少なくとも20000、少なくとも40000、少なくとも60000、少なくとも80000、又は少なくとも100000等の塩基がシークエンシングされる。幾つかの例においては、シークエンシングされる塩基は、隣接している。幾つかの場合において、核酸試料はシークエンシングの前に分割され得る。
【0132】
タグは、何れかの方法によって解離され得る。タグは、ポリヌクレオチド鎖へのヌクレオチドの組み込みの間又は後に解離され得る。幾つかの場合において、タグは、ヌクレオチドのポリリン酸基に結合され(例えば、
図15)、核酸分子へのヌクレオチドの組み込みは、それに結合したタグを有するポリリン酸の解離を引き起こす(例えば、それを残りのヌクレオチド及び成長核酸鎖から離す)。当該組み込みは、ナノポアに結合することができる少なくとも1つのポリメラーゼによって触媒され得る。幾つかの場合において、少なくとも1つのホスファターゼ酵素もポアに結合されている。ホスファターゼ酵素は、解離されたポリリン酸タグからリン酸を切断し得る。幾つかの場合において、ホスファターゼ酵素は、タグがポアに入る前にポリメラーゼからのポリリン酸生成物がホスファターゼ酵素と相互作用するように配置される。
【0133】
幾つかの場合において、タグは、ポリリン酸に結合していない(例えば、
図2を参照のこと)。これらの場合、タグは、切断可能なリンカー(X)によって結合されている。切断可能にキャップされた及び/又は切断可能に結合されたヌクレオチドの製造のための方法は、参照により全てが本明細書に援用される米国特許第6,664,079号に開示されている。リンカーは、必ずしも切断可能である必要はない。
【0134】
リンカーは、何れかの適切なリンカーであり得、何れかの適切な方法によって切断され得る。リンカーは、光分解性であり得る。ある実施形態において、光化学的に切断可能なリンカー又は基を光化学的に切断するためにUVライトが用いられる。ある実施形態において、光分解性リンカーは、2−ニトロベンジル基である。
【0135】
−CH
2N
3基は、ヌクレオチドの3’−O−原子からそれを取り除き、それによって3’−OH基を形成するようにTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)で処理され得る。
【0136】
幾つかの場合において、ポリメラーゼは、複数の異なる塩基(例えば、A、C、G、T、及び/又はU)を含むタグ付けされたヌクレオチドのプールから引き込む。ポリメラーゼを、異なる塩基を個々に及び連続的に含む種々の種類のタグ付けされたヌクレオチドと接触させることも可能である。このような場合において、何れかの特定の反応の間1つのヌクレオチドのみが存在していることから、各種類のヌクレオチドが固有のタグを有する必要はない。
【0137】
図15は、核酸分子へのタグ付けされたヌクレオチドの組み込み(例えば、鋳型に対応するプライマー塩基を伸長するためにポリメラーゼを用いる)は、幾つかの実施形態において、検出可能なTAGポリリン酸を解離し得る。幾つかの場合において、TAG−ポリリン酸は、それがナノポアを通過することによって検出される。
【0138】
幾つかの場合において、当該方法は、ポリリン酸を含むリン酸の数に基づいてヌクレオチドを特定する(例えば、タグが同一である場合であっても)。それにもかかわらず、各種類のヌクレオチドは、独特なタグを有し得る。
【0139】
図15を参照して、タグがナノポアの中へ及び/又は通して通過すること及びイオン電流を計測する前に、TAG−ポリリン酸化合物は、ホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ)で処置され得る。
【0140】
タグは、それらがヌクレオチドから解離された後、ナノポアを通過し得る。幾つかの場合において、タグをナノポア中に配置する又はタグを引き入れるために電圧が印加される。解離されたタグの少なくとも約85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、少なくとも99.99%が、ナノポアに入る、中に配置される、捕えられている、貫通して転位している、及び/又は通過し得る。
【0141】
幾つかの場合において、タグは、それらが検出される時間に亘りナノポアに留まる。幾つかの場合において、ナノポア内にタグを引き入れるため、タグを検出するため、又はそれらの何れかの組み合わせのために電圧が印加される。タグは、ヌクレオチドの組み込み事象において解離され得る。
【0142】
幾つかの実施形態において、ナノポアにおける電流変化事象は、タグがタグ付けされたヌクレオチドにまだ結合している間に、タグがその後ヌクレオチドから解離され、ナノポアチャネルを通過するときよりも、モニタリングされ、検出される。そのような実施形態において、タグは、タグ付けされたヌクレオチドがポリメラーゼの活性部位においてそれに相補的な鋳型ヌクレオチドと一緒に三重複合体中にある間、即ち、ヌクレオチドの組み込み及びリン酸転位の前に検出される。そのような実施形態において、タグの長い「尾部」は、三重複合体の形成中に隣接したナノポアのポア中に配置され(又は「捕捉され」)、それによってナノポアを介した電流値の変化(即ち、電流封鎖事象)が生じる。三重複合体に結合している間のタグの検出は、ポリメラーゼの使用、及び、ヌクレオチドの組み込み速度を、ナノポアにおけるタグ補足及び電流封鎖の測定速度よりも遅くなるように遅くした反応条件(例えば、pH、金属塩等)によって促進される。加えて、適切なポリメラーゼのナノポアへの共有結合連結は、マイクロ秒の単位での急速なタグの補足を引き起こし得る。
【0143】
タグは、その電荷によってナノポアにおいて検出され得る(少なくとも部分的に)。幾つかの場合において、タグ化合物は、或いは、第1の正味電荷、及び、化学的、物理的又は生物学的反応の後、異なる第2の正味電荷を有する電荷化合物である。幾つかの場合において、タグにおける電荷の大きさは、化合物の残りの部分の電荷の大きさと同じである。ある実施形態において、タグは、正に荷電しており、タグの除去によって化合物の電荷が変化する。
【0144】
幾つかの場合において、タグは、ナノポアに入っていく、ナノポア中に配置されるようになる、ナノポアの中に入る及び/又は通過し、それが電子的変化を生じさせ得る。幾つかの場合において、電子的な変化は、電流振幅の変化、ナノポアの伝導性の変化、又はそれらの何れかの組み合わせである。
【0145】
ナノポアは、生物学的又は合成の或いは混合のナノポアであり得る。ポアは、タンパク質性であることも企図され、例えば、ポアはα溶血素タンパク質である。合成のナノポアの一例は、固体ポア又はグラフェンである。
【0146】
幾つかの場合において、ポリメラーゼ酵素及び/又はホスファターゼ酵素は、ナノポアに結合されている。融合タンパク質又はタンパク質複合体を調製するための種々の技術が採用され得る。融合タンパク質又はジスルフィド結合は、タンパク質性のナノポアに結合するための方法の例である。固体のナノポアの場合において、ナノポア付近の表面への結合は、ビオチンストレプトアビジン結合を介したものであり得る。DNAポリメラーゼは、アミノ基で官能化されたアルカンチオール自己組織化単分子層で修飾された金表面を介して固体表面に結合され、ここで、アミノ基は、DNAポリメラーゼ上のアミノ基への結合のために、NHSエステルに修飾されている。当該方法は、何れかの適した温度で行われ得る。幾つかの実施形態において、温度は、4℃〜10℃である。幾つかの実施形態において、温度は、周囲温度である。当該方法は、何れかの適切な溶液及び/又は緩衝液中で行われ得る。幾つかの場合において、緩衝液は、20mMのHEPESでpH7.0から8.0までに中和された300mMのKClである。幾つかの場合において、緩衝液は二価の陽イオンを含まない。幾つかの場合において、当該方法は、二価の陽イオンの存在によって影響を受けない。
【0147】
他の実施形態において、ナノポアタンパク質にポリメラーゼを結合するために「スパイキャッチャー(SpyCatcher)」法が用いられ得る。そのような方法において、化膿連鎖球菌フィブロネクチン結合タンパク質FbaBのコラーゲン接着ドメイン(CnaB2)の2つのフラグメントは、互いを認識し、その後、1つのフラグメント(即ち、「スパイキャッチャー」)中のリシンのε−アミノ基及び他方のフラグメント(即ち、「スパイタグ(SpyTag)」)中のアスパラギン酸のカルボキシル側基の間のペプチド結合を生じる。例えば、ザケリ(Zakeri)とハワース(Hawarth)(2010)JACS 132:4526−7を参照のこと。従って、幾つかの実施形態において、DNAポリメラーゼは、スパイタグがポアタンパク質モノマー(例えば、α溶血素)のアスパラギン酸残基へ結合すること、スパイキャッチャーがDNAポリメラーゼ(例えば、Phi29又はBst2.0DNAポリメラーゼ)のN末端へ結合すること、及びスパイタグ及びスパイキャッチャーを介して共有ペプチド結合が形成することを生じさせることによって、ナノポアに結合され得る。
【0148】
他の実施形態において、ポリメラーゼ及びナノポアタンパク質の共有結合は、参照により本明細書に援用される米国仮特許出願第62/130,326号に記載されているように、逆電子要請型ディールス−アルダー(IEDDA)反応を用いて調製され得る。そのような実施形態において、当該結合は、ナノポアを形成しているタンパク質(例えば、α溶血素)のモノマーにトランス−シクロオクテン(TCO)基を含むリンカーを結合すること、及びポリメラーゼ(例えば、Bst2.0DNAポリメラーゼ)に6−メチル−テトラジン(6−Me−TZ)基を含むリンカーを結合することによって調整される。穏やかな水性条件下で混合することによって、6−Me−TZ修飾ポリメラーゼ及びTCO修飾ナノポアは、すぐに(1h)及びほぼ定量的に共有結合を形成し、それは、ナノポア検出の応用において用いられ得るポリメラーゼ及びナノポアタンパク質の結合を提供する。
【0149】
幾つかの場合において、電流は、異なる印加電圧で測定され得る。これを達成するために、所望の電位が電極に印加され得、印加された電位は、その後、測定の間中維持され得る。ある実施において、オペアンプの積分器トポロジーは、本明細書に記載されるように、この目的のために使用され得る。積分器は容量帰還の方法により、電極における電位を維持する。
【0150】
電位「V
liquid」は、チップ上の全てのセルに共通の電位(例えば、350mV)を提供するチャンバーに適用され得る。積分回路は、電極(電気的に積分コンデンサの天板である)を共通液電位よりも大きい電位に初期化し得る。例えば、450mVでのバイアスは電極及び液体の間に100mVの正電位を与え得る。この正電位は、電極から液体チャンバー接点に流れる電流を引き起こし得る。この場合、キャリアは、(a)二重膜の電極(トランス)側から二重膜の液体リザーバ(シス)側へとポアを通して流れるK
+イオン、及び(b)以下の電気化学反応:Ag+Cl
−→AgCl+e
−に従って銀電極と反応するトランス側の塩素(Cl
−)イオンである。
【0151】
幾つかの場合において、K
+は、閉鎖的なセルの外へ流れ(二重膜のトランスからシス側へ)、一方で、Cl
−は、塩化銀に変換される。二重膜の電極側は、電流の流れの結果として、脱塩され得る。幾つかの場合において、銀/塩化銀液多孔質材料又は基質は、回路を完成するために、電気的チャンバーの接点で発生する逆反応においてCl
−イオンを供給するためのリザーバとして働き得る。
【0152】
幾つかの場合において、電子は最終的に、測定される電流を生成する積分コンデンサの上面側に流れる。電気化学反応は、銀を塩化銀に変換し、電流は、変換される利用可能な銀がある限り流れ続けるであろう。銀の限定的な供給は、幾つかの場合において、電流に依存する電極寿命につながる。幾つかの実施形態において、空乏化されない電極材料(例えば、白金)が使用される。
【0153】
分子の検出及び/又は特定のための装置及びシステム
本開示は、分子の検出及び/又は特定のためのシステムを提供する。そのようなシステムは、核酸、タンパク質及び抗体などの様々な種類の生物学的なスピーシーズを検出するのに用いられ得る。幾つかの実施形態において、分子の検出及び/又は特定のためのシステムは、核酸分子をシークエンシングするために用いられる。
【0154】
核酸をシークエンシングするためのシステムは、積分回路のような検出回路の検出電極に隣接して配置される膜中に形成された又はそうでなければ埋め込まれたナノポアを含み得る。積分回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)であり得る。幾つかの例において、積分回路は、電界効果トランジスタ又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)である。検出回路は、ナノポアを有するチップ又は他の装置の内部に、或いは、オフチップ構成におけるようにチップ又は装置と離れて位置され得る。半導体は、限定されないが、IV族(例えば、シリコン)及びIII〜V族(例えば、ヒ化ガリウム)の半導体を含む何れかの半導体であり得る。
【0155】
幾つかの場合において、核酸又はタグがナノポアを通過する又は近接すると、検出回路は、核酸又はタグに関連づいた電気的信号を検出する。核酸は、より大きな鎖のサブ単位であり得る。タグは、ヌクレオチドの組み込み事象、或いはタグ付けされたヌクレオチドと、ナノポア又は、タグがポア中に入るか又は配置されるようにタグ付けされたヌクレオチドを留めておき、その後、核酸伸長生成物へのヌクレオチドの組み込みにおいてヌクレオチドからタグを切断する酵素のようなナノポアに結合したスピーシーズとの間の他の相互作用の副生成物であり得る。検出された信号は、回収され、記憶部に蓄積され、後で核酸の配列を組み立てるのに用いられ得る。回収された信号は、エラーのような、検出された信号における何れかの異常について説明するために処理されてもよい。
【0156】
図9は、それぞれが参照によって全てが本明細書に援用される米国特許出願公開第2011/0193570A1号、第2013/0244340A1号及び第2013/0264207A1号に記載された方法に従って調製することができる、温度制御を有するナノポア検出器(又はセンサー)の例を示す。
図9Aを参照して、ナノポア検出器は、導電性溶液(例えば、塩溶液)907と接触している上部電極901を含む。底部導電性電極902は、膜905に挿入されているナノポア906に、近いか、隣接しているか、又は極めて接近している。幾つかの場合において、底部導電性電極902は、半導体903に埋め込まれており、電気回路は半導体基板904中に埋め込まれている。半導体903の表面は、疎水性となるように処理されていてもよい。検出される試料は、ナノポア906中のポアを通過する。半導体チップセンサーは、容器908内に配置され、次に、これは、温度制御素子909の近傍にある。温度制御素子909は、熱電加熱及び/又は冷却装置(例えば、ペルチェ素子)であり得る。複数のナノポア検出器が、ナノポアアレイを形成し得る。
【0157】
図9Bを参照して、同様の符号は同様の要素を表し、膜905は、ウェル910の上部に形成され得、センサー902は、ウェルの表面の一部を形成している。
図9Cは、電極902が、処理された半導体表面903から突出している一例を示す。
【0158】
幾つかの例において、膜905は、半導体903上ではなく、底部導電性電極902上に形成される。膜905は、そのような場合、底部導電性電極902と結合相互作用を形成し得る。幾つかの場合においては、しかしながら、膜905は、底部導電性電極902及び半導体903上に形成される。そうでなければ、膜905は、底部導電性電極902上ではなく、半導体903上に形成され得るが、底部導電性電極902の上部に伸びていてもよい。
【0159】
ナノポアは、幾つかの場合においては電気的検出によって、間接的に核酸分子をシークエンシングするのに用いられ得る。間接的シークエンシングは、成長鎖へ組み込まれたヌクレオチドがナノポアを通過しない何れかの方法であり得る。核酸分子は、ナノポアから何れかの適切な距離を取って及び/又はナノポアの極めて近く、幾つかの場合において、ヌクレオチドの組み込み事象から解離されたタグがナノポア中で検出されるような距離で通り得る。
【0160】
ヌクレオチドの組み込み事象の副生成物は、ナノポアによって検出され得る。「ヌクレオチドの組み込み事象」は、成長するポリヌクレオチド鎖へのヌクレオチドの組み込みである。副生成物は、特定の種類のヌクレオチドの組み込みと相関があり得る。ヌクレオチドの組み込み事象は、一般的に、DNAポリメラーゼのような酵素で触媒され、各位置で組み込みのために利用可能なヌクレオチドの中から選択するために、鋳型分子との塩基対相互作用を使用する。
【0161】
核酸試料は、タグ付けされたヌクレオチドを用いてシークエンシングされ得る。幾つかの例において、核酸分子をシークエンシングするための方法は、(a)タグ付けされたヌクレオチドを組み込むこと(例えば、重合)、ただし、個々のヌクレオチドに関連付けられたタグは、組み込みによって解離される、及び(b)組み込みプロセス中に、タグがヌクレオチド−酵素複合体に接着し結合している間又はその解離のどちらかによって、ナノポアの補助によりタグを検出することを含む。幾つかの場合において、当該方法は、ナノポアを通して、個々のヌクレオチドに結合した又は個々のヌクレオチドから解離されたタグを移動させることを更に含む。解離された又は結合されているタグは、何れかの適切な技術によって、幾つかの場合においては酵素(若しくは分子モーター)及び/又はポアを通した電圧の差の補助によって移動させられ得る。そうでなければ、解離された又は結合されているタグは、酵素の使用無しでナノポア通して移動させられ得る。例えば、タグは、本明細書に記載したようにナノポアを通した電圧の差によって移動させられ得る。
【0162】
幾つかの場合において、副生成物は、ナノポアを通過し、及び/又はナノポアにおいて検出可能な信号を生ずる。解離されたタグは、副生成物の一例である。幾つかの場合において、副生成物は、プロトン(即ち、pHの変化)である。他の場合において、副生成物はリン酸(例えば、ヌクレオチド組み込み事象で解離されたリン酸)である。例えば、異なる種類のヌクレオチドの各々は異なる数のリン酸を含み得、解離されたリン酸の検出によって、組み込まれたヌクレオチドの種類を決定することができる。
【0163】
方法の一例を
図10に示した。ここでは、核酸鎖1000はナノポア1002を通過するか又はその極めて近くを通る(しかし1001の矢印で示したようには通らない)。酵素103(例えば、DNAポリメラーゼ)は、鋳型1000として最初の核酸分子を用いて1回に1つのヌクレオチドを組み込むことによって、成長核酸鎖1004を伸長する(即ち、酵素がヌクレオチド組み込み事象を触媒する)。
【0164】
酵素1003は、ナノポア1002に結合されていてもよい。ナノポアに酵素を結合するための適切な方法は、分子内ジスルフィド結合の形成のような、又は、参照により本明細書に援用される米国仮特許出願第62/130,326号に記載されているような逆電子要請型ディールス−アルダー(IEDDA)反応のような他の共有結合反応を介した結合を含む。ナノポア及び酵素は、単一のポリペプチド鎖によってコードされた融合タンパク質であってもよい。融合タンパク質を製造するための方法は、当技術分野で知られており、当該酵素のためのコード配列をフレーム単位でナノポアのためのコード配列に隣接して融合すること(その間に終止コドンを有しない)、及び単一のプロモーターからこの融合配列を発現することを含む。幾つかの場合において、ホスファターゼ酵素もナノポアに結合される。
【0165】
一般的に、本開示の方法に用いられるポリメラーゼは、5’→3’DNAポリメラーゼ活性及び強い鎖置換活性を有するが、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠く何れかの天然又は非天然(例えば、合成された)酵素を含み得る。幾つかの場合において、DNAポリメラーゼは、9°Nポリメラーゼ又はそれらの異形、E・コーライDNAポリメラーゼI、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼ、シーケナーゼ、TaqDNAポリメラーゼ、バチル・ススアロサーモフィラスからのDNAポリメラーゼ、Bst2.0DNAポリメラーゼ、9°Nポリメラーゼ(exo−)A485L/Y409V、Phi29DNAポリメラーゼ(φ29DNAポリメラーゼ)、T7DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼII、DNAポリメラーゼIIIホロ酵素、DNAポリメラーゼIV、DNAポリメラーゼV、或いはVent
RDNAポリメラーゼである。
【0166】
一般的に、ポリメラーゼは、酵素によって伸長され、それによってシークエンシングされる鋳型DNA鎖にバイブリダイズするプライマー鎖の存在を必要とする。従って、本開示のナノポア装置の他の可能な構成において、プライマー鎖はポアタンパク質に結合され、鋳型DNA鎖はこの結合したプライマー鎖にハイブリダイズされ、ポリメラーゼは鋳型プライマー混合物に結合し、それによってナノポア装置に非共有結合される。そのような実施形態は
図38に示される。相補的なタグ付けされたヌクレオチドに結合したタグは、静磁場勾配によってナノポアの内腔に引き付けられ、それが検出され、ポアにおける電流をモニタリングすることによって特定されることができることを確かにする。
【0167】
核酸試料は、タグ付けされたヌクレオチドを用いてシークエンシングされ得る。幾つかの例において、核酸分子をシークエンシングするための方法は、(a)タグ付けされたヌクレオチドを重合すること、ただし、個々のヌクレオチドに関連付けられたタグは、重合において解離され、及び(b)ナノポアの補助により解離されたタグを検出することを含む。
【0168】
幾つかの例において、方法は、個々のヌクレオチドから解離されたタグを、ナノポアを通して移動させることを更に含む。解離されたタグは、幾つかの場合においては酵素(又は分子モーター)の補助によって、何れかの適切な技術によって、移動させられ得る。そうでなければ、解離されたタグは酵素の使用無しでナノポアを通して移動させられ得る。例えば、タグは、本明細書に記載されているように、ナノポアを通した電圧の差によって移動させられ得る。
【0169】
続けて
図10を参照して、酵素は、タグ(1005で示す白丸)に結合しているヌクレオチド(1005で示す黒丸)のプールから引き込む。各種類のヌクレオチドは、タグが解離されてナノポア1006を通過する際、それらがナノポアにおいて生じる信号に基づいて互いに差別化され得るように、異なるタグに結合され得る。
【0170】
図11は、異なるタグによって、それらがナノポアを通過した際に生じる異なる信号の例を示す。4つの異なる信号強度(1101、1102、1103及び1104)が検出される。これらは4つの異なるタグに対応する。例えば、アデノシン(A)の組み込みによって解離されたタグは、振幅1101を有する信号を生じうる。シトシン(C)の組み込みによって解離されたタグは、より高い振幅1103を有する信号を生じうる。グアノシン(G)の組み込みによって解離されたタグは、更に高い振幅1104を有する信号を生じうる。チミン(T)の組み込みによって解離されたタグは、更に高い振幅1102を有する信号を生じうる。ナノポアを通るタグがないときの期間中の信号の欠乏は、1105によって表される。
【0171】
ヌクレオチドの組み込み事象の速度は、一般的に、ヌクレオチドの組み込み事象で解離されたタグ分子が、ナノポアを通過する、及び/又はナノポアによって検出される速度よりも遅い(又は同じ)。一般的に、ヌクレオチドの組み込み事象の速度は、ヌクレオチドの組み込み事象で解離されタグ分子が、ナノポアを通過する、及び/又はナノポアによって検出される速度より早くない(即ち、そうでなければヌクレオチドの組み込み事象は正確に及び/又は正確な配列で検出されない)。
【0172】
本開示は、分子の特定及び/又は検出のための種々の装置を提供する。
図12は、核酸の配列をシークエンシングする及び/又は本明細書に記載したタグを検出するために用いられ得るナノポア装置100(又はセンサー)の模式図である。脂質二重膜を含むナノポアは、抵抗及び容量によってキャラクタリゼーションされ得る。ナノポア装置100は、導電性固体基板106の脂質二重膜互換性表面104上に形成された脂質二重膜102を含み、脂質二重膜互換性表面104は、脂質二重膜非互換性表面105によって隔離され得、導電性固体基板106は絶縁材料107によって電気的に隔離され得、ここで、脂質二重膜102は脂質二重膜非互換性表面105上に形成されたアモルファス脂質103によって取り囲まれていてもよい。脂質二重膜102は、脂質二重膜102の2つの側の間を、キャラクタリゼーションされたタグ及び/又は小イオン(例えば、Na
+、K
+、Ca
+、Cl
−)の通過のために十分に大きいナノポア110を有する単一のナノポア構造108に埋め込まれている。水分子の層114は、脂質二重膜互換性表面104上に吸着され得、かつ脂質二重膜102と脂質二重膜互換性表面104との間に挟まれていてもよい。親水性の脂質二重膜互換性表面104上に吸着されている水性膜114は、脂質分子の整列を補助し、及び脂質二重膜互換性表面104上の脂質二重膜の形成を促進し得る。核酸分子112及びタグ付けされたヌクレオチドの溶液を含む試料チャンバー116は、脂質二重膜102の上部に備えられ得る。溶液は、電解質を含む水性溶液であり得、最適なイオン濃度に中和されており、ナノポア110が開いた状態で維持される最適なpHに維持され得る。当該装置は、脂質二重膜を通過する電気刺激(例えば、電圧バイアス)を付与するため及び脂質二重膜の電気的特性(例えば、抵抗、容量及びイオン電流フロー)を検出するために可変電圧源120と接続されている、一対の電極118(負のノード118a及び正のノード118bをh含む)を含む。正電極118bの表面は、脂質二重膜互換性表面104の一部であるか、又は一部を形成している。伝導性固体基板106は、電極118のうち1つの一部と接続されているか、又は一部を形成し得る。装置100は、電気刺激を制御するため及び検出された信号を処理するための電気回路122も含み得る。幾つかの実施形態において、可変電圧源120は、電気回路122の一部として含まれる。電気回路112は、増幅器、積分器、ノイズフィルタ、フィードバック制御ロジック、及び/又は種々の他の構成要素を含み得る。電気回路122は、シリコン基板128に集積されていてもよく、メモリー126に接続されているコンピュータプロセッサ124と更に接続されていてもよい。
【0173】
脂質二重膜互換性表面104は、脂質二重膜の形成を促進するイオン伝達及びガス発生に適した種々の材料から形成され得る。幾つかの実施形態において、導電性又は反導電性の親水性の材料は、それらが脂質二重膜の電気的特性における変化の良好な検出を可能にし得ることから、用いられ得る。例示的な材料は、Ag−AgCl、Au、Pt、又はドープされたシリコン、或いは他の半導体材料を含む。幾つかの場合において電極は、犠牲電極ではない。
【0174】
脂質二重膜非互換性表面105は、脂質二重膜の形成に適していない種々の材料から形成され得、それらは、一般的に疎水性である。幾つかの実施形態において、非導電性の疎水性材料は、それが脂質二重膜領域を互いに分離することに加えて、脂質二重膜領域を電気的に絶縁するため、好ましい。例示的な脂質二重膜非互換性材料は、例えば、窒化ケイ素(例えば、Si
3N
4)及びテフロン(登録商標)を含む。
【0175】
ある例において、ナノポア装置100は、アルミニウム材料106上にを被覆する脂質二重膜互換性Pt表面104の上部に形成されたジフィタノイルホスファチジルコリン(DPhPC)脂質二重膜102に埋め込まれた単一のアルファ溶血素(αHL)タンパク質108を有するアルファ溶血素(αHL)ナノポア装置であり得る。脂質二重膜互換性Pt表面104は、脂質二重膜非互換性窒化ケイ素表面105によって隔離され、アルミニウム材料106は、窒化ケイ素材料107によって電気的に絶縁されている。アルミニウム106は、シリコン基板128に集積されている電気回路122と接続されている。チップ上に配置された又はカバー板128から下に伸びている銀−塩化銀電極は、核酸分子を含む水性溶液に接する。
【0176】
αHLナノポアは、7つの個別のペプチドの集合である。αHLナノポアの入り口又は前庭の直径は、約26オングストロームであり、それはdsDNA分子の一部を収容するのに十分に広い。前庭から、αHLナノポアは、最初は広がっており、その後約15オングストロームの直径を有するバレルまで狭まり、これは、単一のssDNA分子(又は解離されたタグ)が通過することができる程度に十分に広いが、dsDNAが通過することができるには十分に広くない。
【0177】
DPhPCに加えて、ナノポア装置の脂質二重膜は、用いられるナノポアの種類と、キャラクタリゼーションされる分子の種類と、形成される脂質二重膜の安定性及び透過性、抵抗並びに容量のような、形成される脂質二重膜の種々の物理的、化学的及び/又は電気的特性とのような種々の考慮に基づいて選択される、種々の他の適切な脂肪族の材料から構成され得る。例示的な脂肪族の材料は、パルミトイル−オレオイル−ホスファチジル−コリン(POPC)及びジオレオイル−ホスファチジル−メチルエステル(DOPME)、ジフィタノイルホスファチジルコリン(DPhPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、及びスフィンゴミエリンのような種々のリン脂質を含む。
【0178】
上記のαHLナノポアに加えて、ナノポアは、種々の他の種類のナノポアであり得る。例は、γ溶血素、ロイコシジン、メリチン、並びに種々の他の天然の、修飾された天然の、及び合成のナノポアを含む。適切なナノポアは、ナノポアのポア径に関連する分析物分子のサイズのような、分析物分子の種々の特性に基づいて選択することができる。例えば、約15オングストロームの制限されたポアサイズを有するαHLのナノポア。
【0179】
図13は、複数の核酸分子がナノポア検出器のアレイによってシークエンシングされ得ることを示す。ここでは、各ナノポア位(例えば、1301)は、幾つかの場合において、ポリメラーゼ酵素及び/又はホスファターゼ酵素が結合しているナノポアを含む。本明細書の他の箇所に記載されているように、一般的に、各アレイの位置にセンサーも存在する。
【0180】
幾つかの例において、核酸ポリメラーゼと結合しているナノポアのアレイが提供され、タグ付けされたヌクレオチドは、ポリメラーゼによって重合される。重合中に、タグは解離され、ナノポアによって検出される。ナノポアのアレイは、何れかの適切な数のナノポアを有し得る。幾つかの場合において、アレイは、約200個、約400個、約600個、約800個、約1000個、約1500個、約2000個、約3000個、約4000個、約5000個、約10000個、約15000個、約20000個、約40000個、約60000個、約80000個、約100000個、約200000個、約400000個、約600000個、約800000個、約1000000個等のナノポアを含む。幾つかの場合において、アレイは、少なくとも200個、少なくとも400個、少なくとも600個、少なくとも800個、少なくとも1000個、少なくとも1500個、少なくとも2000個、少なくとも3000個、少なくとも4000個、少なくとも5000個、少なくとも10000個、少なくとも15000個、少なくとも20000個、少なくとも40000個、少なくとも60000個、少なくとも80000個、少なくとも100000個、少なくとも200000個、少なくとも400000個、少なくとも600000個、少なくとも800000個、少なくとも1000000個等のナノポアを含む。
【0181】
幾つかの場合において、単一のタグは、単一のヌクレオチドの組み込みによって解離され、1つのナノポアによって検出される。他の場合において、複数のタグが複数のヌクレオチドの組み込みによって解離される。ナノポアに隣接しているナノポアセンサーは、個々の解離されたタグ又は複数の解離されたタグを検出し得る。複数の解離されたタグに関連した1つ以上の信号が検出され得、平均の信号が得られるように処理され得る。
【0182】
タグは、時間の関数としてセンサーによって検出され得る。時間と一緒に検出されるタグは、例えば、センサーデータを記録するようにプログラムされ、データから配列情報を作製するコンピュータシステム(例えば、
図14参照のこと)の補助などによって、核酸試料の核酸配列を決定するために用いられ得る。
【0183】
シークエンシングチップに基づくナノポアは、アレイとして配置されている自律動作される又は個別にアドレス可能な大量のセルを含み得る。例えば、100万個のセルのアレイが、1000個のセルの列によって1000個のセルの行から構成され得る。このアレイは、例えば、ヌクレオチドの組み込み事象で解離されたタグがナノポアを通過する際に、導電性の差を測定することによって、核酸分子の平行したシークエンシングを可能にする。更に、この回路の実施は、特定のタグの区別において大変価値のあり得る、ポア−分子複合体の伝導特性を決定することを可能にする。
【0184】
統合されたナノポア/二重膜電子的セル構造物は、電流測定を実行するために適切な電圧を印加し得る。例えば、(a)電極電位を制御すること、及び(b)正確に実行するために電極電流を同時にモニタリングすることの両方が必要であり得る。
【0185】
更に、セルを互いに独立に制御することが必要であり得る。セルの独立した制御は、異なる物理的状態におかれ得る大量のセルを管理するために必要であり得る。電極に印加される区分的線形電圧波形刺激の正確な制御は、セルの物理的状態間を遷移するために使用され得る。
【0186】
回路のサイズ及び複雑さを低減するために、2つの別々の電圧を印加するためのロジックが提供されることが十分であり得る。これは、セル及び対応する状態遷移刺激の2つの独立したグループ分けが適用されることを可能にする。状態の遷移は、比較的低い発生率で、本質的に確率論的である。従って、適切な制御電圧をアサートし、その後、所望の状態の遷移が発生したか否かを決定するための測定を実行することができることは、非常に有用であり得る。例えば、適切な電圧がセルに印加され、次いでポアが形成されたかどうかを決定するために電流が測定される。セルは、2つのグループに分けられる:(a)ポアの形状を有しているものであり、電圧を印加される必要がない。それらのセルは、ヌル操作(NOP)に影響を与えるために0Vのバイアスを印加され得、それは、同じ状態のままであり、及び(b)ポアの形状を有していないもの。それらのセルは、再びポア形成電圧を印加されるであろう。
【0187】
実質的な単純化及び回路サイズの縮小は、許容印加電圧を2つに拘束すること、及び物理的状態間のバッチ内へセルを反復的に移行することによって達成することができる。例えば、許容印加電圧の拘束によって、少なくとも1.1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、又は100倍の縮小が達成され得る。
【0188】
コンピュータ制御システム
本開示の核酸シークエンシングシステム及び方法は、コンピュータシステムの補助によって制御され得る。
図14は、核酸シークエンシングシステム1402と接続したコンピュータシステムを含むシステム1400を示す。コンピュータシステム1401は、1つのサーバ又は複数のサーバであり得る。コンピュータシステム1401は、試料調整及び処理、並びにシークエンシングシステム1402による核酸シークエンシングを制御するようにプログラムされ得る。シークエンシングシステム1402は、本明細書の他の箇所に記載されるように、ナノポアに基づくシークエンサー(又は検出器)であり得る。
【0189】
コンピュータシステムは、本発明の方法を実施するためにプログラムされ得る。コンピュータシステム1401は、中央処理ユニット(本明細書では、CPU、また「プロセッサ」)1405を含み、それは単一のコア又は複数のコアプロセッサ、或いは平行プロセッシングのための複数のプロセッサであり得る。コンピュータシステム1401は、メモリ1410(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶ユニット1415(例えば、ハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェース1420(例えば、ネットワークアダプタ)、並びに、キャッシュ、他のメモリ、データストレージ、及び/又は電子ディスプレイアダプタのような周辺機器1425も含む。メモリ1410、記憶ユニット1415、インターフェース1420及び周辺機器1425は、マザーボードのような通信バス(実線)を介してCPUと接続している。記憶ユニット1415は、データを保存するためのデータ記憶ユニット(又はデータレポジトリ)であり得る。コンピュータシステム1401は、通信インターフェース1420の補助により、コンピュータネットワーク(「ネットワーク」)と作動可能に接続され得る。ネットワークは、インターネット、インターネット及び/又はエクストラネット、或いはインターネットと通信しているイントラネット及び/又はエクストラネットであり得る。ネットワークは、1つ以上のコンピュータサービスを含み得、それは、コンピューティングとは区別され得る。
【0190】
本発明の方法は、例えば、メモリ1410又は電子記憶ユニット1415のようなコンピュータシステム1401の電子記憶部に保存された、機械(又はコンピュータプロセッサ)で実行可能なコード(又はソフトウェア)によって実装されることができる。使用の間、コードは、プロセッサ1405によって実行され得る。幾つかの場合において、コードは、記憶ユニット1415から取り出され得、プロセッサ1405によってアクセス可能なようにメモリ1410に保存され得る。幾つかの状況において、電子記憶ユニット1415は外部であり得、機械で実行可能な命令は、メモリに保存される。
【0191】
コードは、コードを実行するために適合させたプロセッサを機械が有するような使用のために、プリコンパイル又は変更され得るか、或いは実行中にコンパイルされ得る。コードは、プリコンパイル又は実行時コンパイルされた方法において、コードを実行可能にできるように選択され得るプログラミング言語で提供され得る。
【0192】
コンピュータシステム1401は、例えば、名称、物理的アドレス、Eメールアドレス、電話番号、インスタントメッセージ(IM)名、学歴、職歴、社会的に好きなもの及び/又は嫌いなもの、並びに使用者若しくは他の使用者に潜在的に関連する他の情報のような使用者のプロファイル情報を保存するように適用され得る。そのようなプロファイル情報は、コンピュータシステム1401の記憶ユニット1415に保存され得る。
【0193】
コンピュータシステム1401のような本明細書に提供されるシステム及び方法の側面は、プログラミングにおいて実施され得る。技術の種々の側面は、例示的に、機械が読み込み可能な媒体の形式において実行又は実施される、機械(又はプロセッサ)で実行可能なコード及び/又は関連するデータの形の「商品」又は「製品」と企図され得る。機械で実行可能なコードは、メモリ(例えば、ROM、RAM)又はハードディスクのような電子記憶ユニットに保存され得る。「記憶」型の媒体は、コンピュータ、プロセッサ等の実体メモリ、又は、ソフトウェアプログラミングにおいていつでも非一過性のストレージを提供し得る、種々の半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブ等のようなそれらの関連モジュールの何れか又は全てを含み得る。全て又は一部のソフトウェアは、時々、インターネット又は種々の他の電気通信ネットワークを介して接続される。それらの通信は、例えば、1つのコンピュータ又はプロセッサから他へ、例えば、管理サーバ又はホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアの読み込みを可能にし得る。それゆえ、ソフトウェア要素を保持し得る他の形式の媒体は、有線及び光学的な地上線のネットワークを介して並びに種々のエアリンク上でローカルデバイス間の物理的インターフェースを通じて用いられるような、光学的、電気的及び電磁的波を含む。有線又は無線のリンク、光学的リンク等のような波を運ぶ物理的な要素は、ソフトウェアを保持する媒体と企図され得る。本明細書で用いられる通り、非一過性の実体のある「記憶」媒体に限定されない限り、コンピュータ又は機械で「読み込み可能な媒体」のような用語は、実行のためのプロセッサへの命令の提供に参加する何れかの媒体をいう。
【0194】
従って、コンピュータで実行可能なコードのような、機械で読み取り可能な媒体は、限定されないが、実体の記憶媒体、搬送波の媒体又は物理的伝達媒体を含む多くの形態を取り得る。非揮発性記憶媒体は、例えば、図面に示す、当該データベース等を実装するのに用いられ得るような、何れかのコンピュータ内の何れかの記憶装置等のような、光学的又は電磁的ディスクを含む。電圧記憶媒体は、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリのような、動的メモリを含む。実体の伝達媒体は、同軸ケーブル、即ち、コンピュータシステム内にバスを含むワイヤを含む導線及び光ファイバーを含む。搬送波伝達媒体は、電気的又は電磁的信号、或いは無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信中に生ずるような音響又は光波の形体を取りうる。従って、一般的なコンピュータで読み取り可能な媒体の形式は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、何れかの他の磁気的な媒体、CD−ROM、DVD又はDVD−ROM、何れかの他の光学的媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンによる何れかの他の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROM及びEPROM、FLASH−EPROM、何れかの他のメモリチップ又はカートリッジ、搬送波伝達データ又は命令、そのような搬送波を伝達するケーブル又はリンク、或いは、プログラミングコード及び/又はデータを読み込み得るコンピュータからの何れかの他の媒体を含む。これらの多くの形式のコンピュータで読み込み可能な媒体は、実行するためのプロセッサに1つ以上の命令の1つ以上の配列を運ぶことに従事し得る。
【0195】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され記載されたが、そのような実施形態が単なる例示として提供されることは、当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、及び置き換えが可能であろう。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替物が、本発明の実施において採用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物によってカバーされることが意図される。
【0196】
例
例1 クマリン−PEG−dG4Pでタグ付けされたヌクレオチドの合成
この例において、ヌクレオチドは、150x4.6mmカラム(スペルコ)での逆相HPLCによって精製され、移動相は、Aは、水(pH8.1)中の8.6mMのEt
3N/100mMの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、Bは、メタノールである。溶出は、100%のAの定組成で10分間、続いて、0%〜50%のBの直線勾配で20分間、その後50%のBの定組成で更に30分間で行った。
【0197】
クマリン−PEG
n−dG4Pの合成は、
図16のスキームに示すようなA、B及びCの3つの合成操作を含む。
【0198】
A. 2’−デオキシグアノシン−5’−テトラリン酸(dG4P)及びdG4P−NH
2の合成。最初に、2’−dG4Pの合成が、2’−dG4Pから開始されて行われる。300umolの2’−dGTP(トリエチルアンモニウム塩)を、無水ピリジン(5ml)中の1.5mmol(5eq)のトリブチルアミンを用いて、トリブチルアンモニウム塩に変換する。得られた溶液を乾燥及び無水DMF(x2)との共蒸発によって濃縮する。dGTP(トリブチルアンモニウム塩)を5mlの無水DMFに溶解し、1.5mmolの1,1−カルボニルジイミダゾールを添加する。反応物を6時間撹拌し、その後12ulのメタノールを添加し、30分間連続して撹拌する。この溶液に、1.5mmolのリン酸(DMF中のトリブチルアンモニウム塩)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を水で希釈し、0.1Mから1MまでのTEAB勾配(pH7.5)を用いてセファデックス(登録商標)A25カラム上で精製した。dG4Pを勾配の終わりで溶出した。適切な画分を併せ、更に逆相HPLCで精製し、175ummolの純粋なテトラリン酸(dG4P)を得る。
31P−NMR:δ、−10.7(d、1P、α−P)、−11.32(d、1P、δ−P)、−23.23(dd、2P、β、γ−P)、ESI−MS(−veモード):Calc.587.2;Found585.9(M−2)。
【0199】
2mlの水及び3.5mlの0.2Mの1−メチルイミダゾール−HCl(pH6)中の80μmolのdG4Pに、154mgのEDAC及び260mgのジアミノヘプタンを加える。得られた溶液のpHを、濃HClで6に調節し、室温で一晩撹拌する。この溶液を水で希釈し、セファデックス(登録商標)A25イオン交換クロマトグラフィーによって精製し、続いて逆相HPLCにより、約20μmolのdG4P−NH
2が得られる。これは、ESI−MSデータ(−veモード):calc.699;Found(698.1、M−1)によって確認される。
【0200】
B. クマリン−PFG−酸及びNHSエステルの合成。市販のアミノ−dPEG(登録商標)−酸[アミノ−d(PEG)(登録商標)16、20、24、36−酸;クワンタ・バイオデザイン(Quanta Biodesign)]を6−メトキシクマリン−NHSエステルと反応させ、対応するクマリン−(PEG)n−酸が得られる。アミノ−PEG−酸(1eq)を、炭酸−重炭酸緩衝液(pH8.6)に溶解し、続いてDMF中のクマリン−NHS(1eq)を添加し、反応混合物を一晩撹拌する。クマリン−PEG−酸を、CH
2Cl
2−MeOH(5%〜15%)混合物及び適切な併せた画分を用いて、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。これらの混合物は、
1H NMR及びMALDI−TOF MS分析によって分析される。結果を表2に示す。
【表2】
【0201】
クマリン−PEG−酸は、1.5eqの炭酸ジスクシンイミジル(DSC)及び2eqの無水DMF中のトリエチルアミンと2時間に亘り反応させることによって、対応するNHSエステルに変換される。得られたNHSエステルは、シリカゲルプレート上で酸よりもわずかに高く移動し、CH
2Cl
2−MeOH(5%〜15%)混合物を用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって精製され、次の操作で用いられる。
【0202】
クマリン−PEG
n−dG4Pを形成する、操作A及びBの生成物のカップリング。上記操作AからのdG4P−へプチル−NH
2を、0.1M炭酸−重炭酸緩衝液(pH8.6)中に取り、この撹拌された溶液(DMF中)にクマリン−PEG−NHS化合物のうち一つを加える。得られた混合物を室温で一晩撹拌し、その後シリカゲルカートリッジ上で精製する(反応しないクマリン−酸又は−NHSを取り除くためのCH
2Cl
2中の15%〜25%のMeOH、その後、6:4:1のイソプロパノール/NH
4OH/H
2O)。これを逆相HPLCによって更に2回精製し、純粋なクマリン−PEG−dG4Pを得る。構造をMALDI−TOF MSでの分析によって確認する。クマリン−PEG16−dG4Pの保持時間は、31.7分、クマリン−PEG20−dG4Pの保持時間は、32.2分、クマリン−PEG24−dG4Pの保持時間は、33.0分、クマリン−PEG36−dG4Pの保持時間は、34.3分である。結果を表3に示す。
【表3】
【0203】
例2 MALDI−TOF MSによる解離されたタグのキャラクタリゼーション
予想されるクマリン−PFG−NH
2分子は、HPLC精製の後、MALDI−TOF−MS分析によって確認される(
図17)。MALDI−TOF−MSの結果は、酸加水分解によって生成されるクマリン−PEG−NH
2タグは、アルカリホスファターゼ処理後にポリメラーゼ反応中に生成される解離されたタグと同一であることを示す。
【0204】
図17を参照して、クマリン−PEG16−NH
2が得られるクマリン−PEG16−dG4P、クマリン−PEG20−NH
2が得られるクマリン−PEG20−dG4P、クマリン−PEG24−NH
2が得られるクマリン−PEG24−dG4P、及びクマリン−PE36−NH
2が得られるクマリン−PEG36−dG4Pの酸加水分解によって生成するクマリン−PEG−NH
2タグは、MALDI−TOF−MS分析によって示されるように、アルカリホスファターゼによる処理後にポリメラーゼ伸長反応において生成される対応する解離されたタグと同一である。4つの別々に得られたMSスペクトルの合成画像を示す。クマリン−PEG−NH
2タグの構造を下に示す。
【0205】
例3 オリゴヌクレオチドタグの検出
ナノポアアレイ装置(例えば、
図12参照のこと)は、4つの異なるタグにおける4つの異なる電流値を検出するのに用いられる。
図18で見られるように、各タグは他の3つの何れと区別され得る(即ち、ヒストグラムは、対応するタグと一緒に画像にラベルされた4つの別々のピークを示す)。各タグは、約30塩基長の「T」のオリゴヌクレオチドホモポリマーであり、潜在的に修飾された鎖中の2つの領域を有する3’末端がビオチン化されている。30塩基長の分子の各々において、修飾されている領域は、3’末端から11、12、及び13の塩基位置、並びに17、18、及び19の位置である。ここにおいて用いられる「x」は、無塩基部位(塩基が無い)、「T」はチミンである。4つのタグは、
(a)「フェイクタグ−XXX_XXX」は、ストレプトアビジン−ビオチン−10T−xxx−3T−xxx−11T(配列番号1)の配列を有し、
(b)「フェイクタグ−TTT_XXX」は、ストレプトアビジン−ビオチン−10T−TTT−3T−xxx−11T(配列番号2)の配列を有し、
(c)「30T」タグは、ストレプトアビジン−ビオチン−30T(配列番号3)の配列を有し、
(d)「フェイクタグ−iFluorT」は、ストレプトアビジン−ビオチン−10T−TTT−3T−iFluorT−T−11Tの配列を有し、ここで、18位のTはフルオレセインで標識されている(配列番号4)。
【0206】
結果は、時間をかけて溶液から複数のタグ分子を補足するアレイ中の1つのポアにおけるものである。検出条件は、1MのHClで、20mMのHEPESにより中和されており、室温でpH7.5である。各分子は、電圧が印加されている間ポア中に補足又は留められている。印加電圧は+160mVまで増加され、新しい分子が捕捉され、電圧は0Vまで減少され、タグ分子はポアを抜ける。この周期がその後繰り返される。4つの異なるタグは、すぐに試料混合物内に入る。
【0207】
図18に示されるように、ランプダウン時の電流もプロットされるため、ヒストグラムにおける160mVの印加中に見られる明確なバンドは結合しているか又は少しついている。それにもかかわらず、各タグについて明確で再現性のある捕捉バンドが見られる。
【0208】
図19に示されるように、プロットの横軸は時間(秒単位で測定された)であり、対して電流(ピコアンペアの単位で測定された)が縦軸である。印加電圧波形は、示していない。印加電圧波形は、0V以下で開始し、+160mVまで急激に増加し、約2、3秒そのままである。電圧は、その後、0Vまで減少する。電流測定値は、印加電圧に従い、印加電圧が+160mVである間は、補足された分子の電流は平らであり、その後、電圧が減少するのにしたがって減少する。
【0209】
例4 結合反応の例
結合反応の例を
図20に示す。示されるように(i)アミンはNHSエステルと結合してアミドを形成し、(ii)アミンは酸ハロゲン化物と反応してアミドを形成し、(iii)アミン又はオキシアミンは、ケトンと反応してオキシムを形成し、(iv)アミンはアルデヒドと反応して還元によりシッフ塩基及びメチルアミノを形成し、及び(v)ヒドラジンは、アルデヒドと反応してヒドラジドを形成する。示されるように、チオールは、チオール、マレイミド又はハロアセトアミドと反応する。
【0210】
例5 クリックケミストリーの例
アジド、アルキン、アルケン及びテトラジンを含む官能基を有する化合物を用いたクリックケミストリーの例を
図21に示す。示されるように、結合は、トリアゾール又は1,2−ジアジン(ジヒドロピリダジン互変異性体)結合を提供するように達成され得る。アジドを含む分子Aは、アルキンを含む分子Bと反応してトリアゾールを介したA及びBの結合を形成する。また、アジドを含む分子Aは、シクロオクチンを含む分子Bと反応してシクロオクチルと融合したトリアゾールを介したA及びBの結合を形成し得る。そうでなければ、テトラジンを含む分子Aは、トランス−シクロオクテンを含む分子Bと反応し、ジヒドロピリダジンを介したA及びBの結合を形成する。
【0211】
例6 タグ付けされたヌクレオチドの例
表4は、合成され、ポリメラーゼの基質として働き得ることが見いだされたタグ付けされたヌクレオチドの例を示す。表4に示され
る例示的なタグ付けされたヌクレオチドは、5’−アジド−六リン酸−ヌクレオチド(「dN6P−N3」)及びアルキン−タグから、アジド−アルキン又はアジド−シクロオクチン「クリック」反応(例えば、
図21を参照のこと)の何れかを用いて合成され
得る。アジド−アルキン又はアジド−シクロオクチンクリック反応合成のための更なる試薬及び条件の更なる説明を以下の例7〜例11に提供する。
【0212】
表4は、天然又は非天然オリゴヌクレオチドを含む多くのタグ構造を含む。それらのオリゴヌクレオチドタグは、5’から3’の順列で示され、ホスホラミダイト合成によって調整され、インテクレーテッドDNAテクノロジーズ(Integrated DNA Technologies)(コーラルビル、アイオワ州、USA)又はトリリンクバイオテクノロジーズ(TriLink Biotechnologies)(サンディエゴ、カリフォルニア州、USA)又はグレンリサーチ(Glen Research)(スターリング、バージニア州、USA)のようなカスタムオリゴヌクレオチドの販売業者から
我々の設計に基づいて購入可能である。公開され、カスタムオリゴヌクレオチドの販売業者から購入することができ、タグとして有用なカスタム合成されたオリゴヌクレオチドに簡単に組み込むことができる何百もの非標準的なホスホアミダイトモノマー単位「ビルディングユニット」が存在する。それらの非標準的なホスホアミダイトモノマー単位の多くがスペーサー(例えば、「iSp」)、色素(例えば、「iCy3」)、及びリンカー(例えば、「ヘキシニル」)として分類される。表4の全てのオリゴヌクレオチドタグ構造は、非標準的なモノマー単位を示すために、周知のオリゴヌクレオチド合成の用語を用いて説明される。(例えば、慣習的に使用されるオリゴヌクレオチドの用語の更なる詳細については、www.idtDNA.comにあるインテクレーテッドDNAテクノロジーズのウェブサイトを参照のこと。)例えば、非標準的なモノマー単位は、ユニット間のスラッシュ「/」及びアスタリスク「*」で囲まれており、それはチオリン酸ジエステル結合を示す。それゆえ、「/5ヘキシニル//iSpC3//iCy3/T」は、5’−ヘキシン−リン酸−ジヒドロキシプロパン−リン酸−シアニン3(色素)−リン酸−チミジン-3’(OH)を示す。更に選択した略語の説明は、表4に含まれている。
【表4-1】
【0213】
【表4-2】
【0214】
【表4-3】
【0215】
【表4-4】
【0216】
【表4-5】
【0217】
例7 dT6P−DBCO−Cy3の合成
図22は、dA6P−N
3とDBCO−Cy3との間のクリック反応の結果を示す。この例において、dT6P−N
3(500nmol、100μlH
2O)及びDBCO−Cy3(700nmol、100μlDMF)を1つに混合し、室温で2時間撹拌する。
図23は、アジド−ヌクレオチドの、生成物、DBCO−Cy3−dT6Pへの変換を示すMALDI−TOF質量スペクトルを示す。生成物は、MALDI−TOF質量分析及び単一塩基伸長反応によってキャラクタリゼーションされる。MALDI−TOFによれば、分子量は、1933ダルトンである。
【0218】
例8 dT6P−Cy3−dT
25の合成
図24は、タグ付けされたヌクレオチド、dT6P−Cy3−dT
25を形成する、5’−アジド−六リン酸−ヌクレオチドのdT6P−N
3及び5’−アルキン−オリゴヌクレオチドタグである5’−ヘキシニル−Cy3−T
25間のクリック反応を示す。dT6P−N
3(750nmol)の溶液を5’−ヘキシニル−Cy3−T
25オリゴヌクレオチド(トリリンク社から得た,200μlH
2O中に500nmol)に添加し、続いて、臭化銅(50μl、3:1のDMSO/t−BuOH中の0.1Mの溶液)及びTBTA(100μl、3:1のDMSO/t−BuOH中の0.1Mの溶液)を添加する。反応混合物を40℃で16時間撹拌した。精製を、HPLCによって、0.1MのTEAC緩衝液(pH7.5)及びアセトニトリル勾配を用いて行った。タグ付けされたヌクレオチド生成物、dT6P−Cy3−dT
25をMALDI−TOF質量分析及び単一塩基伸長反応によってキャラクタリゼーションした。MALDI−TOFは、質量が9179ダルトンであることを示す。
【0219】
例9 2’−デオキシチミジン−5’−六リン酸−アジド(dT6P−N
3)の合成。
【0220】
Fmoc−6−アミノへキシル三リン酸の合成。Fmoc−6−アミノヘキサノール(1g、2.94mmol)を無水アセトニトリル(2x20ml)と共蒸発した後、リン酸トリエチル(10ml)に溶解した。オキシ塩化リン(550μl、5.88mmol)をこの溶液に添加し、一度冷却し、2時間撹拌する。反応混合物に、トリブチルアンモニウムピロリン酸(5当量、15mmol、無水DMF中の0.5M溶液)を添加し、20分間撹拌する。溶液を0.1M重炭酸トリエチルアンモニウム緩衝液(200ml、pH7.5)でクエンチし、pHを約7に調節した。
【0221】
この溶液をセファデックス(登録商標)A25カラムに充填し、0.1Mから1.0MまでのTEAB緩衝液(pH7.0)勾配を用いて精製する。適切な画分をプールし、更にHPLCで精製し、純粋な三リン酸が提供される。
31P−NMR(D
2O)σ−10.5(d、2P)、−22.84(T、1P)。
【0222】
dT6P−NH
2の合成。Fmoc−アミノへキシル三リン酸(200mg、0.35mmol)を無水アセトニトリル(2x10ml)と共蒸発した後、無水DMF(3ml)に溶解する。カルボニルジイミダゾール(CDI)(4当量、1.4mmol)を添加し、室温で4時間撹拌する。メタノール(6当量、85ml)を添加し、更に30分撹拌する。これに、DMF及びMgCl
2(10当量、3.5mmol)中の2’−デオキシチミジン−5’−三リン酸(dTTT、トリエチル又はトリブチルアンモニウム塩、0.4mmol)溶液を添加する。反応混合物を18時間撹拌し、次いで、水(25ml)中の10%トリエチルアミンを添加し、Fmoc基を加水分解する。反応混合物を更に16時間撹拌し、沈殿した固体を濾過し、溶液をエーテルで抽出する。水性の層を濃縮し、0.1MのTEAC緩衝液(pH7.5)及びアセトニトリル勾配を用いたHPLCで精製する。これは、
31P NMR及び質量分析データによってキャラクタリゼーションされる。
31P−NMR:d−10.63(bs、1P)、−11.65(bs、1P)、−23.35(bm.4P)。
【0223】
dT6P−N
3の合成。dT6P−NH
2(10μmol)を0.1M重炭酸−炭酸緩衝液(500μl、pH8.7)に溶解し、200μlのDMF中のアジド酪酸−NHS(25μmol)を添加する。反応混合物を一晩撹拌する。反応混合物を0.1MのTEAC緩衝液(pH7.5)及びアセトニトリル勾配を用いたHPLCで精製する。
【0224】
例10 2’−デオキシアデノシン−5’−六リン酸の合成及びクリックケミストリーを用いた末端リン酸へのタグの結合
この例は、アルキン−アジド環化付加クリック反応を用いてタグ付けされたヌクレオチドを作製するための一般的な合成スキームを示す。
図25は、2’−デオキシアデノシン-5’−六リン酸(「dA6P」)の合成及びアジド−アルキンクリックケミストリーを用いた末端リン酸へのタグの結合を示す。最初から最後まで反応矢印に従って、試薬は、(i)POCl
3及びピロリン酸、(ii)CDI及びDMF、(iii)dATP、(iv)トリエチルアミン及びアジド−酪酸NHS、並びに(v)TAG−アルキンを含む。
【0225】
図25に示すように、ここではタグ付けされたdATP(25)で例示的されているが、タグ付けされたヌクレオチドの合成は、6−のFmoc−アミノヘキサノール(29)で始まり、オキシ塩化リン(POCl
3)及び0℃の溶媒としてのリン酸トリエチルを有するピロリン酸と反応して、6−アミノへキシル三リン酸(30)を形成する。6−アミノヘキシル三リン酸は、N,Nカルボニルジイミダゾール(CDI)により活性化され、化合物(31)を形成し、それはdATPと反応し、各アミノヘキシル−dA6P(32)が得られる。ついで、修飾されたdA6Pを、アジド−酪酸−NHSと反応させ、アジド基を含む誘導体(33)が得られる。最後に、アジド誘導体及びヘキシン誘導体化タグ(TAG−アルキン)を、アルキン−アジド環化付加クリック反応を介して、目的のタグ付けされたヌクレオチドTAG−dA6P(25)を得るために反応させる。
【0226】
例11 dT6P−N3とオリゴアルキンとの間のクリック反応
図26は、5’−アジド六リン酸ヌクレオチドのdT6P−N
3と5’−アルキンオリゴヌクレオチドタグの5’−ヘキシン−Cy3−T
25との間のクリック反応の例を示す。反応は、dT6P−N
3で始まり、それに5’−ヘキシン−Cy3−T
25をCuBr/ TBTA及びDMSOの存在中で添加し、dT6P−Cy3−T
25が形成される。
【0227】
例12 チオール−チオール(S−S)カップリングの例
図27は、ヌクレオチドへのタグのチオール(ジスルフィド結合)カップリングの一例を示す。
【0228】
例13 タグ付けされたヌクレオチドを用いたDNAポリメラーゼプライマー伸長反応
図28は、タグ付けされたヌクレオチド六リン酸を用いたDNAポリメラーゼ伸長反応の一例を示す。伸長反応は、鋳型ループプライマーを用いて行われ、そこにおいて、鋳型上の次の相補的な塩基は、単一の相補的なヌクレオチド塩基による伸長を可能にする、A、G、C、又はTの何れかである。各伸長反応は3μM鋳型ループプライマー、2単位のターミネーター(登録商標)γDNAポリメラーゼ若しくはBst2.0DNAポリメラーゼ(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs))、及び15μMのオリゴヌクレオチドでタグ付けされたdN6Pヌクレオチドのうち1種類からなる20μlの反応物において、25分間、65℃のサーマルサイクラー中で実施される。DNA伸長生成物を、エタノールで沈殿させ、C18ZipTip(登録商標)カラム(ミリポワ(Millipore)社)を通して精製し、MALDI−TOF MS分析によってキャラクタリゼーションされる。
【0229】
図28に示されるように、dT6P−Cy3−T
25でタグ付けされたヌクレオチド(分子量8270)からの次のヌクレオチドTMPの添加による100%のプライマー(分子量7983)の伸長がある。MALDI−TOF MSにおける他の2つのピークは、無傷のタグ付けされたヌクレオチド(分子量8837)及び伸長反応から解離された生成物(分子量9142)である。
図29は、アミダイトケミストリーを用いてオリゴヌクレオチドに組み込むことができるモノマーの例を示す。
【0230】
例14 5’−オリゴヌクレオチド−Cy3でタグ付けされたヌクレオチドの合成及びキャラクタリゼーション
この例は、5’がCy3基に結合しているオリゴヌクレオチドを含み、かつ四つの異なるヌクレオチド六リン酸の末端リン酸に共有結合された、四つの異なるタグの合成、並びにポリメラーゼ伸長反応におけるこれらのタグ付けされたヌクレオチドの特徴付けを示す。
【0231】
この例において調製され、キャラクタリゼーションされる4つのタグ付けされた2’−デオキシ−5’−六リン酸ヌクレオチドは、dA6P−Cy3−T
4−FldT−T−FldT−T
23−C
3、dT6P−Cy3−T
2−dSp
8−T
20−C
3、dG6P−Cy3−T
30−C
6、及びdC6P−Cy3−T
4−dSp
3−T
23−C
3であった。
図30に示すように、各オリゴヌクレオチドタグは、約30塩基長であり、dTヌクレオチド単位並びにスペーサー及び修飾塩基の混合物を含む。オリゴヌクレオチドタグにおけるこれらの違いは、ナノポア内の狭窄部位におけるサイズ及び電荷の差を生じさせるために設計されており、それによって、ナノポアへの印加電圧の下で独特な電流遮断特性を提供する。例えば、無塩基DSP3及びdSp8スペーサー残基は、ssDNA中のヌクレオチドよりも小さい直径を有し、一方でFldT−T−FldTタグ中のチミジンに結合した蛍光は大きな直径を有する。
【0232】
オリゴヌクレオチド−Cy3でタグ付けされたヌクレオチドの合成
図25に示した一般的な反応スキームに従い、6−Fmoc−アミノヘキサノール(29、1g、2.94mmol)を無水アセトニトリル(2x20ml)で共蒸発した後、リン酸トリエチル(10ml)に溶解させた。冷却し、撹拌したこの溶液に、新鮮な蒸留オキシ塩化リン(550μL、5.88mmol)を加え、混合物を0℃で2時間攪拌した。トリブチルアンモニウムピロリン酸(5eq、15mmol、無水DMF中の0.5M溶液)及びトリブチルアミン(15mmol)を加え、混合物を20分間撹拌した。溶液を、0.1M重炭酸トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAB、200ml、pH7.5)でクエンチし、pH約7に調整した。この溶液をセファデックス(登録商標)A25カラムに充填し、0.1Mから1.0MまでのTEAB緩衝液(pH7.0)勾配を用いて溶出した。適切な画分をプールし、SUPELCOSIL(登録商標)LC−18−T(スペルコ社)3μM、15cmx4.6mmでの逆相HPLCで更に精製した。移動相は、Aは、8.6mMのEt
3N、pH8.1の水中の100mMのHFIP、Bは、100%メタノールである。100%A/0%Bから開始し、40分で0%A/100%Bへ。純粋な三リン酸、
31P−NMR(D
2O)δ:−7.68(d、1P)、−10.5(d、1P)、−22.65(t、1P)。製造されたFmoc−アミノヘキシル三リン酸(30、200mg、0.35mmol)を無水アセトニトリル(2x10ml)で共蒸発させた後、無水DMF(3mL)に溶解した。CDI(4当量、1.4mmol)を加え、溶液を4時間室温で撹拌した。メタノール(6当量、85μL)を添加し、更に撹拌を30分間行った。上記の生成物(31)に、DMF及びMgCl
2(10当量、3.5mmol)中の所望の2’−デオキシヌクレオシド−5’−三リン酸(dNTP、トリブチルアンモニウム塩、0.5mmol)の溶液を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いで水中(25ml)の10%のトリエチルアミンを添加することによって、Fmoc基を加水分解し、dN6P−NH
2(32)を得た。反応混合物を16時間更に攪拌し、沈殿した固体を濾過し、溶液をエーテルで抽出した。水性の層を濃縮し、逆相HPLCで精製した。
【0233】
生成物dN6P−NH
2は、
31P−NMR:δ−10.63(bs、1P)、−11.65(bs、1P)、−23.35(bm.4P)によってキャラクタリゼーションされる。MALDI−TOF MSデータ(図示せず):dA6P−NH
2(31);832.02(精密質量829)、dT6P−NH
2(図示せず);825.97(精密質量820)、dG6P−NH
2(図示せず);848.33(精密質量845)、dC6P−NH
2(図示せず);826.08(精密質量828.0)。
【0234】
dN6P−NH
2(32、10μmol)のアジド(33)を、32を溶解することにより調整し、0.1Mの重炭酸−炭酸緩衝液(500μl、pH8.7)及び200μlのDMF中のアジド酪酸−NHS(25μmol)を添加した。反応混合物を一晩撹拌し、0.1MTEAA緩衝液(pH7.5)及びアセトニトリルの勾配を用いてHPLCにより精製した。MALDI−TOF MSデータ(図示せず):dA6P−N3(33);963.75(Na
+塩として、精密質量963.3)、dT6P−N
3;934.58(精密質量932.3)、dG6P−N
3;960.27(精密質量957.4)、dC6P−N
3;919.09(精密質量917.4)。
【0235】
5’−ヘキシニル修飾オリゴヌクレオチドタグ(トライリンクから入手、200μlのH
2O中500nmol)に、dN6P−N
3(33)(750nmol)の溶液を加え、次いで、臭化銅(50μl、3:1のDMSO/t−BuOHの0.1Mの溶液)及びTBTA(100μl、3:1のDMSO/t−BuOH中の0.1M溶液)を加えた。反応混合物を16時間40℃で撹拌し、次いで、0.1MのTEAA緩衝液(pH7.5)及びアセトニトリルの勾配を用いたHPLC精製を行い、オリゴヌクレオチドでタグ付けされたヌクレオチド(
図30(25)−(28)を参照のこと)をMALDI−TOF MS及び伸長反応によってキャラクタリゼーションした。MALDI−TOF MSデータ(
図31(B)):dA6P−Cy3−T
4−FldT−T−FldT−T
23−C
3(25):11834(精密質量11835);dT6P−Cy3−T
2−dSp
8−T
20−C
3(26):9806(精密質量9808);dG6P−Cy3−T
30−C
6(27):10825(精密質量10826);及びdC6P−Cy3−T
4−DSP
3−T
23−C
3(28):10418(精密質量10413)。
【0236】
サンプル(25、26、27、28、32及び33)については、以下のHPLC法をSUPELCOSIL(登録商標)LC−C18−T(スペルコ社)、粒子サイズ3.0μm、15cmx4.6mm、100%A/0%Bで4分、次いで上30分間で70%A/30%Bへの直線勾配での変化、最後に、更に45分間室温で、1ml/分の流速で0%A、100%Bで行った。(移動相:Aは、0.1MのTEAA、Bは、100%のACN)。
【0237】
DNAポリメラーゼ伸長反応
基質としてのこれらの4つのオリゴdN6Psによるポリメラーゼ伸長反応活性のスクリーニングは、室温で迅速かつ正確にプライマー伸長を実施することを可能にするものとしてBst2.0DNAポリメラーゼ(Bst2.0DNAP)を特定した。更に、Bst2.0DNAPは3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠くという追加的な利点を有した。
【0238】
DNAポリメラーゼ伸長反応は、これら四つのオリゴヌクレオチド−Cy3でタグ付けされたヌクレオチド、Bst2.0DNAP、及び「シンプルベル(SimpleBell)」プライマーループ鋳型DNA(5‘−GCG CTC GAG ATC TCC TCG TAA GAG GAG ATC TCG AGC GCA CTG ACT GAC TGA CCT CAG CTG CAC GTA AGT GCA GCT GAG GTC AG−3’)(配列番号
107)を用いて行った。それぞれの反応は1.5μM鋳型ループプライマー、1X等温増幅緩衝液[20mMのトリス−HCl、10mMの(NH
4)
2SO
4、50mMのKCl、2mMのMgSO
4、0.1%のTween(登録商標)20、25℃でpH8.8]、4単位のBst2.0DNAP、2.25μMの天然のdNTP又は3.75μMのオリゴヌクレオチドでタグ付けされたヌクレオチド、1mMのMnSO
4を含んでも含まなくてもよい、からなる20μLの反応物中で30分間65℃で行った。DNA伸長生成物を、5分間95℃で変性した後、急激に4℃に冷却した。変性した伸長生成物は、25分間、250mVの下で15%TBE尿素プレキャストゲル(バイオラッド(Bio−Rad)社)で分離した。
【0239】
結果
DNAポリメラーゼ伸長生成物を変性ゲル上で分離し、ゲル画像を
図31(A)に示す。レーン1は、プライマーループ鋳型DNAのみを用いたネガティブコントロールを示し、レーン2は、4つの天然dNTPの添加後のポジティブコントロールであり、レーン3は、4つのオリゴヌクレオチド−Cy3でタグ付けされたヌクレオチドを用いた伸長反応である。レーン2及び3における同様の伸長の結果は、プライマーループ鋳型が、タグ付けされたヌクレオチド及びBst2.0DNAPのみを用いて、48塩基まで正常に伸長されることができることを実証する。反応中のオリゴヌクレオチドタグの解離は、レーン3において下側のバンドを観察することによって実証された。
【0240】
オリゴヌクレオチドでタグ付けされたdN6Psもまた精製され、MALDI−TOF MS測定され、それらの観察された分子量はそれぞれの計算された数字と相関していた(
図31(B)を参照のこと)。
【0241】
結果は、Bst2.0ポリメラーゼが、タグと末端リン酸との間のトリアゾール共有結合を生成するアジド−アルキンクリック反応を介して合成された4つのオリゴヌクレオチドでタグ付けされたヌクレオチド六リン酸基質と完全伸長反応を行うことが可能であることを示す。
【0242】
例15 3’修飾によるオリゴヌクレオチドタグのエキソヌクレアーゼ保護
この例は、本開示の実施形態においてヌクレオチドをタグ付けすることにおいて有用なオリゴヌクレオチドタグが、どのように3’−ヒドロキシルの化学修飾によってエキソヌクレアーゼ活性から保護され得るかを示す。簡潔には、様々な3’修飾を有するオリゴヌクレオチドを調製し、次いでPhi29DNAポリメラーゼ(有意なエキソヌクレアーゼ活性を有する)と共にインキュベートし、インキュベートした試料をSDS−PAGE及びHPLCで分析し、オリゴヌクレオチドのエキソヌクレアーゼ分解を検出した。
【0243】
材料及び方法。以下の表5に示すような5’−ビオチン及び種々の3’化学修飾を有するdTヌクレオチドのオリゴヌクレオチド鎖を、標準的なオリゴヌクレオチド合成技術を用いて調製した。
【表5】
【0244】
表5のオリゴヌクレオチド構造に掲げられる種々の化学修飾は、以下の表6に記載される。
【表6】
【0245】
オリゴヌクレオチド/エキソヌクレアーゼ反応の試料は、以下のように調整した。1μLのオリゴヌクレオチド(濃度200μM)、5単位のPhi29DNAポリメラーゼ(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs)、イプスウィッチ、MA、USA)、及び1μLの10XPhi29反応緩衝液(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs)、イプスウィッチ、MA、USA)(50mMのTris−HCl、pH7.5、10mMのMgCl
2、10mMの(NH
4)
2SO
4及び4mMのDTT)を体積10μLの緩衝液中で混合した。この反応試料を37℃で15分間インキュベートした。5μLのPAGEローディング色素(50%のグリセロール、50mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー)を添加することによって反応を停止させた。停止した反応試料の3μLのアリコートを、50%尿素を含有する15%ポリアクリルアミドゲルに入れ、TBE(MiniPROTEAN(登録商標)、バイオラッド(Bio−Rad)、ハーキュリーズ、CA、USA)で中和した。SybrGold(登録商標)(サーモフィッシャー(Thermo−Fisher)、USA)を用いて、オリゴヌクレオチド生成物を染色し、300nmのUV照射下で撮影した。PAGEの結果は、反応試料のHPLC分析によって確認した。
【0246】
結果
図35に示すように、3’修飾を有さないT30オリゴヌクレオチド反応試料は、これらの条件下でエキソヌクレアーゼ活性によって完全に分解された。未修飾3’末端及び内部メチル−リン酸(「Tmp」)結合を有するT30オリゴヌクレオチドも分解されたが、未修飾3’末端から最初のTmp結合へのみであった。一方、リン酸を有する3’修飾を有するオリゴヌクレオチド又はアルキル炭素スペーサー基(例えば、SpC3、SpC6又はdSp)は無傷のままであり、Phi29DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性に対するそれらの耐性を実証した。
【0247】
例15 CyDye基を含むオリゴヌクレオチドタグは、ナノポアに付着したポリメラーゼによる補足速度が改善されている
この例は、オリゴヌクレオチドでタグ付けされたヌクレオチドの、α溶血素ナノポアに結合したポリメラーゼによるヌクレオチドの捕捉を検出するための使用を示す。更に、当該例は、オリゴヌクレオチドタグとヌクレオチドとの間のリンカー中におけるシアニン色素(「CyDye」)基の含有により、ポリメラーゼ−ナノポア複合体による捕捉速度が優位に改善されることを示す。
【0248】
タンパク質α溶血素は脂質二重膜の存在中で自己集合して七量体のナノポアを形成する。 本明細書の他の箇所で考察及び参照されるように、これらのナノポアは、ポアに隣接して共有結合したDNAポリメラーゼ(ハイブリダイズしたDNAプライマー及び鋳型を含む)で修飾することができる。ナノポアは、CMOSマイクロチップ上に作製されたウェルを含む電極上に固定化された脂質二重膜中に挿入することができ、ナノポアを通した電流値の変化は、ポリメラーゼの活性部位でのタグ付けされたヌクレオチドの結合によって検出することができる。
【0249】
この例に記載の実験を実施するために、七量体のα溶血素ポア中の7つのモノマーのそれぞれのC末端付近に提示された単一のビオチン基を有するナノポアを調製した。次いで、ストレプトアビジン(ビオチン結合部位を4つ有する)及びビオチン化ヘアピンバイオシングルベル(BioSingleBell)Cプライマー/鋳型DNA(5’−AGA GGA GAT CTC GAG CGC ACT GAC TGC GTG ACC TCA GCT GCA CGT AAG TGC AGC TGA GGT CAC−3’)(配列番号
115)を添加した。ストレプトアビジンの存在によって、ポアに隣接して結合した1つ以上のヘアピンプライマー/鋳型分子を有する強い結合複合体の形成が可能となった。このナノポア複合体を精製して過剰のバイオシングルベルCDNAプライマー/鋳型を除去し、次いでDNAポリメラーゼを加え、プライマー/鋳型に少なくとも室温で30分間結合することが可能とした。得られたDNAポリメラーゼ/ナノポア/DNA複合体をゲニア(Genia)チップ上の脂質二重膜に露出し、ポアを形成させた。結合したヘアピンDNA分子は、それらの露出した3’末端が二本鎖であり、ポアに入ることができないため、ポアを通って流れるイオン電流に干渉しない。
【0250】
この例で使用した2つのタグ付けされたヌクレオチドを以下の表7に示す。
【表7】
【0251】
含まれるタグ付けされたヌクレオチドの両方は、本明細書の他の箇所に開示されるアルキン/アジド環化付加クリックケミストリー反応を用いて2’−デオキシグアノシン六リン酸ヌクレオチド(「dG6P」)から調製された。簡潔に述べると、dG6Pを、その末端リン酸を介して5’−ヘキシニル−オリゴ−dT
30又は5’−ヘキシニル−Cy3−オリゴ−dT
30の何れかに共有結合させた。両方のタグは、ヘキサノールスペーサー(略語「3C6」で示される)を有するdT
30の3’末端で修飾された。
【0252】
タグ付けされたヌクレオチド(1μM)、ポリメラーゼ、プライマー鋳型、及びSr
2+(3mM)の混合物を、上記の精製されたナノポア複合体に添加し、何れかの過剰のポアを洗い流した。Sr
2+が存在するこれらの条件下で、タグ付けされたヌクレオチドは、プライマー鋳型と共にポリメラーゼ活性部位に結合し、そのオリゴヌクレオチドタグをポアに提示するが、触媒金属イオンの存在中におけるように、プライマー鋳型鎖に対して触媒重合を起こさない。これらの非触媒的結合事象は、平均約300ミリ秒〜600ミリ秒持続するナノポアを通るイオン電流の急激な減少として容易に観察される。
【0253】
結果
リンカー中にCy3を有するオリゴヌクレオチドタグを有するタグ付けされたヌクレオチドがナノポアアレイチップに添加される際に、約12pAから約5pAまでイオン電流を減少させる有意な電流値変化又は「電流遮断」事象が、1分あたり約46の速度で検出された。各電流遮断事象は、Cy3−dT
30−C
6タグがナノポアに捕捉されていることを示した。リンカー中にCy3基が無いdG6P−dT
30−C
6でタグ付けされたヌクレオチドを続いて同じナノポアアレイチップに添加した場合、タグの捕捉を示す遮断事象の速度は実質的に毎分約13に低下した。対照として、続いてdG6P−Cy3−dT
30−C
6でタグ付けされたヌクレオチドをナノポアアレイに戻し、タグの捕捉を示す遮断事象の速度がほぼ元の値にまで増加した。
【0254】
リンカーにCy3を有しないdG6P−dT
30−C
6でタグ付けされたヌクレオチドから開始し、次に、Cy3を有するdG6P−Cy3−dT
30−C
6でタグ付けされたヌクレオチドに変え、最後にdG6P−dT
30−C
6に戻す逆実験も行った。Cy3基がタグ捕捉速度を増加させると予想されたように、ナノポアにおけるヌクレオチド捕捉の増加、数及び速度は、dG6P−Cy3−dT
30−C
6でタグ付けされたヌクレオチドが使用された場合にのみ増加し、Cy3を含まないタグ付けされたヌクレオチドを使用した場合には有意に減少した。
【0255】
表8は、結果を要約し、リンカー中にCy3の存在がある及びない、これらのタグ付けされたヌクレオチドを使用して実施されたナノポア捕捉実験からの捕捉速度、滞留時間及び待機時間の比較を示す。
【表8】
【0256】
上記のように、オリゴヌクレオチドタグの一部として存在するCy3基を有する場合、平均の電流遮断事象の速度(1分あたりの平均捕獲数として)がほぼ4倍増加した。同様に、捕獲された時間の割合も増加し、ほぼ6倍であった。他方、タグがナノポア内に留まる時間に対応する滞留時間は、わずか1.5倍増加しただけであり、これも、Cy3基の存在が、ナノポアによるタグの解離速度における有意な差の原因ではないことを示しているため有益である。
【0257】
例16 ナノポア−ポリメラーゼ複合体における異なる電流遮断信号による4つの異なるタグ付けされたヌクレオチドの同定
この例は、ナノポアに結合したBst2.0DNAポリメラーゼの活性部位で相補的なプライマー−鋳型DNA鎖に結合したときに、それぞれが提供する別個の電流遮断信号に基づいて4つの異なるタグ付けされたヌクレオチドを同定するためのナノポアアレイチップの使用を示す。この例で使用した4つの異なるタグ付けされたヌクレオチドは、dT6P−Cy3−T2−dSp
8−T
20−C
3、dC6P−Cy3−T
4−dSp
3−T
23−C
3、dG6P−Cy3−T
30−C
6、dA6P−Cy3−T
4−FldT−T−FldT−T
23−C
3であった。Bst2.0−α−HLナノポア複合体は、6−メチル−テトラジン(6−Me−TZ)試薬に対してトランス−シクロオクテン(TCO)及びIEDDAクリック反応を用いて調製され、米国仮特許出願第62/130,326号に記載の膜に挿入された。
【0258】
簡潔には、Bst2.0DNAポリメラーゼ−ナノポア複合体は、タグ付けされたヌクレオチドに結合して、自己プライミング鋳型を有するポリメラーゼ活性部位において複合体を形成する。同時に、印加電圧下で、タグ基の「尾部」は、隣接するα溶血素ナノポアのポア内に配置される。ナノポア内へのタグの配置は、開いた状態のナノポア電流と比較して電流減少(又は「電流遮断」)を引き起こす。例えば、dG6P−Cy3−T
30−C
6でタグ付けされたヌクレオチドは、ナノポア結合Bst2.0ポリメラーゼによって捕捉された場合、ミリ秒の範囲における電流遮断の継続を伴った、約15pAの開いた状態のポア電流から約7pAまでの一定した電流遮断を生じることが見いだされた。
【0259】
ナノポア−ポリメラーゼ複合体の一般的な調製方法は、α溶血素(「α−HL」)の七量体複合体を調製する工程を含み、ここで、7つの単量体単位のうちの1つは、α−HL−C46変異体である。α−HL−C46は、精製のためにシステインで置換された46位の天然に存在するリジン及びN末端6−Hisタグを有する。このα−HL−C46変異体モノマー単位中のシステインの存在は、複合体への単一のTCO−マレイミドリンカー試薬の結合を可能にする。次いで、このTCO基は、IEDDAクリック反応を介して、修飾DNAポリメラーゼ上のTZ基と結合することができる。この例では、DNAポリメラーゼBst2.0の単一の天然システイン残基を、6−Me−TZ−マレイミド試薬で修飾した。次いで、この6−Me−TZ−Bst2.0付加物をTCO−α−HL付加物と10:1の比で混合して、ポリメラーゼBst2.0酵素と結合したα−HL七量体複合体が提供された。マレイミドリンカー試薬によるα−HL−C46修飾のための材料及び方法、及びα−HL−C46を組み込んだ七量体α溶血素ポアの形成もまた、例えば、バレーバ(Valeva)ら(2001)及びそこに引用されている参考文献に記載されている。
【0260】
6:1のα−HL:α−HL−C46ナノポアの調製。標準的なタンパク質工学技術を用いて、6−Hisタグ(「α−HL−C46」)を有するスタフィロコッカス・アウレウスα−HLモノマーのK46C(システインで置換された46位のリジン)突然変異体を調製した(例えば、バレーバ(Valeva)ら(2001)及びパルマー(Palmer)ら(1993)を参照のこと)。「プレップイース(PrepEase)(登録商標)」Hisでタグ付けされたタンパク質精製キット(USB−アフィメトリックス(Affymetrix)、USA)のプロトコールに記載されているように、α−HL−C46を精製し、1.0mg/mLのタンパク質濃度でpH7.2の1mMのトリスカルボキシエチルホスフィン(TCEP)を含む1XPBSに交換した。この精製されたα−HL−C46を、脂質の存在中で野生型α−HLと混合し、以下のように七量体を形成した。
【0261】
α−HL−C46変異体モノマーに対する天然のα−HLモノマーの、最適な6:1比を得るために、11:1比のものをオリゴマー化に使用した。脂質(1,2−ジフタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、粉末、アバンティポーラリピッド)を、50mMのトリス、200mMのNaCl、pH8.0中、40℃で30分間、5mg/mLの最終濃度まで添加した。5%オクチル−ベータ−グルコシド(β−OG)をポップ小胞に添加し、透明化によって評価して、タンパク質を可溶化した。次いで、試料を100KのMWCOフィルターを用いて濃縮し、24000RPMで30分間回転させて、沈殿したタンパク質をペレット化した。30mMのβOG、75mMのKCl、pH7.5の20mMHEPESでサイズ排除カラムを平衡化した後、500μLの濃縮サンプルを低圧で充填して、モノマーから七量体6:1α−HLナノポア複合体を分離した。2つの連続したサイズ排除カラムで5mLに濃縮した後、試料をMonoS5/50GLカラム(GEヘルスケア、ニュージャージー州、USA)に充填した。異なるサブユニット化学量論(例えば、7:0,5:2)を含むものから6:1のα−HL:α−HL−C46ナノポアを分離するために、更に、FPLCを用いた。移動相は、Aとして、ランニング緩衝液:20mMの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、0.1%のTween(登録商標)20、pH5、Bとして、溶出緩衝液:2MのNaCl、20mMのMES、0.1%Tween(登録商標)20、pH5、からなる。精製は、21分間の100%A定組成から、続いて0%〜100%Bの直線勾配で20分間、次いで、100%B定組成で更に2分間で行った。流速は1ml/分であった。純粋な天然の7:0α−HLポアが最初に溶出し、6:1のα−HL:α−HL−C46ポア複合体が約24.5分から約25.5分までの保持時間で溶出した。
【0262】
TCO−PEG
3−α−HL試薬の調製。6:1α−HLポア複合体の溶液をリン酸反応緩衝液(100mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7.2)に交換し、100Kカットオフ脱塩スピンカラムを用いて、約100μL容量中に、約300μgの6:1α−HLポア複合体となるまで濃縮した。50mMのTCO−PEG3−マレイミド(イエナバイオサイエンス(Jena Bioscience GmbH)、イエナ、ドイツ)原溶液をDMSO中で調製した。TCO−PEG3−マレイミド原液を6:1のα−HLポア溶液(上記)に添加して、100倍モル過剰のマレイミド試薬を有する反応混合物を得た。この混合物を4℃で一晩回転させて反応させた。得られたTCO−PEG3−α−HL試薬をセファデックス(登録商標)G−50で精製し、下記のように調製した6−Me−TZ−PEG
4−Bst2.0ポリメラーゼ試薬とのIEDDAクリック反応で使用した。
【0263】
6−Me−TZ−PEG
4−Bst2.0試薬の調製。リン酸反応緩衝液(100mMリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7.2)中のDNAポリメラーゼBst2.0(ニューイングランドバイオラッド(New England Biolabs)、マサチューセッツ州、USA)を、10Kカットオフ脱塩スピンカラムを用いて約100μL容量中約580μgまで濃縮した。DMSO中の6−Me−TZ−PEG
4−マレイミド(イエナバイオサイエンス(Jena Bioscience GmbH)、イエナ、ドイツ)の50mMのストック溶液を調製した。6−Me−TZ−PEG
4−マレイミドストック溶液をBst2.0溶液に添加して、100倍の過剰のマレイミド試薬を有する反応混合物を得た。ローター上で4℃で一晩インキュベートした後、1MのDTTを5mMの最終濃度まで添加し、インキュベーションを室温で実施して反応を停止させた。得られた6−Me−TZ−PEG
4−Bst2.0試薬をセファデックス(登録商標)G−50で精製し、下記のようにTCO−PEG
3−α−HL試薬とのIEDDAクリック反応で使用した。
【0264】
6−Me−TZ及びTCOの複合体のIEDDAクリック反応。TCO−PEG
3−α−HL及び6−Me−TZ−PEG
4−Bst2.0間のIEDDAクリック反応は、5:1のモル過剰の6−Me−TZ−PEG
4−Bst2.0試薬対TCO−PEG
3−α−HL試薬を用いて行われた。一般に、所望の5:1のモル過剰を提供するために、1XPBS、5mMのEDTA、pH7.0において、大量のTCO−PEG
3−α−HL溶液に6Me−TZ−PEG
4−Bst2.0溶液を混合しながら添加した。混合物を室温で1時間回転させて反応させた。次いで、反応混合物からの試料を、スピンフィルター(100K)によって、SDS−PAGE及びバイオアナライザー(アジレント(Agilent))分析のために調製し、続いてセファデックス(登録商標)200ゲル濾過カラムによって精製した。熱変性した試料を、95℃で5分間加熱することによって調製した。複合体の更なる精製は、Ni
2+カラム(プレップイース(PrepEase)ヒスチジンでタグ付けされたタンパク質精製ミニキット高収率カラム、アフィメトリックス(Affymetrix)、CA、USA)を用いることによって、α−HL−C46上のHisタグを用いて行った。Ni
2+カラムは、製造業者のプロトコールに従って行った。α−HLナノポア−BST2.0複合体生成物を、ナノポアアレイの調製における更なる使用の前に、1XPBS緩衝液中に4℃で保存した。
【0265】
264ウェルナノポアアレイマイクロチップ。ナノポア電流遮断測定は、浅いウェル(ゲニアテクノロジー(Genia Technologies)、マウンテンビュー、CA、USA製のチップ)内に264個の銀電極(直径5μm)のアレイを有する約1x1mmのCMOSマイクロチップを用いて行った。このようなナノポアアレイマイクロチップを製造し、使用する方法はまた、米国特許出願公開第2013/0244340A1号及び米国特許出願公開第2013/0264207A1号に見出すことができ、その各々は、参照により本明細書に組み込まれる。アレイ内の各ウェルは、生物学的試薬及び導電性塩との絶え間のない接触を可能にする表面修飾を有する標準的なCMOSプロセスを用いて製造される。各ウェルは、そこに埋め込まれたナノポア複合体を有するリン脂質二重膜膜を支持することができ、コンピュータインターフェースによって個々にアドレス可能である。使用される全ての試薬は、コンピュータ制御のシリンジポンプを用いてチップの上方の単純なフローセルに導入される。このチップはアナログからデジタルへの変換をサポートし、全ての電極からの電気測定値を毎秒1000ポイント以上の速度で独立して報告する。電流遮断測定は、アレイ内の264個のアドレス指定可能なナノポアを含む膜の各々において、ミリ秒(msec)毎に少なくとも1回、非同調的に行われ、インターフェースされたコンピュータ上に記録することができる。
【0266】
チップ上の脂質二重膜の形成。チップ上のリン脂質二重膜膜は、1,2−ジフタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))を用いて調製した。脂質粉末をデカン中に15mMで溶解し、次いでチップ上の264個のウェルを横切る層に塗布した。次いで、ウェルのシス側に空気を入れることにより薄化プロセスを開始し、これにより多層の脂質膜を減少させ単一の二重層とした。二重層形成を、0mVから1000mVまでの傾斜電圧を用いて試験した。例示的な単一二重層は、300mVから500mVまでの印加電圧で一時的に開く。
【0267】
膜におけるナノポア結合体の挿入。チップの256個のウェルに脂質二重膜を形成した後に、0.05μgのBst2.0−α−HLナノポア複合体(上述した)を含む溶液(150mMのKCl、3mMのSrCl
2、20mMのHEPES、pH7.5、25℃)、3μMの所望の「シンプルベル」DNA鋳型、及び30μMの1種類以上の4つのタグ付けされたヌクレオチドをチップのシス側に添加した。混合物中のBst2.0−α−HLナノポア複合体は、脂質二重膜中に自発的に挿入される。この実験において、Sr
2+は、存在する唯一の金属イオンであるため、DNAポリメラーゼでの三重複合体は活性部位に形成されることができたが、ヌクレオチドは組み込まれず、5’−リン酸結合タグは解離されなかった。
【0268】
シンプルベルDNA鋳型は、配列5’−GCG CTC GAG ATC TCC TCG TAA GAG GAG ATC TCG AGC GCA CTG ACT GXC TGA CCT CAG CTG CAC GTA AGT GCA GCT GAG GTC AG−3’(配列番号
116)を有する83量体の自己プライミング一本鎖であり、ここで、Xは鋳型上の最初の開放位置であり、4つの塩基A、C、G、又はTの何れか1つであり得る。これらのナノポアの実験で使用される4つのシンプルベルDNA鋳型は、相補的なヌクレオチドへの結合及びポリメラーゼによる組み込みのための鋳型上の最初の利用可能な位置のみが異なっている。
【0269】
ナノポアの実験で使用した4つの異なるタグ付けされたヌクレオチドは、dT6P−Cy3−T
2−dSp
8−T
20−C
3、dC6P−Cy3−T
4−dSp
3−T
23−C
3、dG6P−Cy3−T
30−C
6、dA6P−Cy3−T
4−FldT−T−FldT−T
23−C
3である(上述の表4も参照のこと)。4つのタグ付けされたヌクレオチドの各々は、dTヌクレオチド、フルオロ修飾塩基dTヌクレオチド(FldT)、無塩基スペーサー(dSp)及び3’エキソヌクレアーゼ保護基を含む様々な30量体の配列からなるオリゴヌクレオチドタグに連結されたCy3基を有していた。
【0270】
ナノポア電流値測定。ナノポア複合体及びDNA鋳型(150mMのKCl、3mMのSrCl
2、20mM のHEPES、pH7.5、25℃)を挿入ために使用したものと同じ溶液もまた、ナノポア電流遮断測定のための電解質溶液として使用した。100mV(シス対トランス)電圧を、膜及びポアに片方ずつ配置された2つのAg/AgCl電極間のチップボードを通るように印加した。ポアを通した電圧の印加により、異なるタグ付けされたヌクレオチドの各々について多数の電流遮断事象がプロットされた。プロットは、観察された2つのタイプの電流遮断事象に基づいて記録され、(1)ポア電流I
0の割合としての遮断振幅I及び(2)ミリ秒での平均滞留時間。それぞれの異なるタグ付けされたヌクレオチドについて観察された電流遮断事象の滞留時間のヒストグラムは、指数関数y=Ae
−Bx、及び算出された平均滞留時間として使用される定数Bの逆数に適合された。10msより長い平均滞留時間及び0.6から0.2までの遮断振幅を有する電流遮断事象は、ナノポアに結合したBst2.0ポリメラーゼによるタグ付けされたヌクレオチドの生産的な捕捉を示すと考えられた(即ち、ポリメラーゼ活性部位における相補的な鋳型塩基及び隣接するポア内に位置するタグ付けされたヌクレオチドの「尾部」を有するタグ付けされたヌクレオチドの結合)。
【0271】
実験を行い、ここで、4つの異なるタグ付けされたヌクレオチドのそれぞれの電流遮断値を、アレイ上の膜に埋め込まれたナノポア−ポリメラーゼ複合体に結合した、それに相補的なシンプルベルDNA鋳型のアレイに露出した場合で測定した。結果は、それぞれの異なるタグ付けされたヌクレオチドに関連する、明確で好ましい電流遮断信号について分析された。
【0272】
更に、シンプルベルDNA鋳型に相補的でなく、タグ付けされたヌクレオチドのみがナノポアアレイに露出された溶液中に含まれている「ミスマッチ」対照実験を行った。具体的には、アレイ上で使用されるシンプルベル鋳型は、鋳型上の次の位置にアデニンを有し、適用された3つのミスマッチでタグ付けされたヌクレオチドは、dA6P−Cy3−T
4−FldT−T−FldT−T
23−C
3、dG6P−Cy3−T
30−C
6、及びdC6P−Cy3−T
4−dSp
3−T
23−C
3である。ミスマッチ実験に用いた条件は、相補的なタグ付けされたヌクレオチドについての電流遮断信号を検出するための上記の通りのものであった。
【0273】
結果
以下の表9に示すように、4つの異なるオリゴヌクレオチドでタグ付けされたヌクレオチドは、それぞれ、明確な遮断振幅及び平均滞留時間を示した。
【表9】
【0274】
しかしながら、ミスマッチタグ付けされたヌクレオチドについてのナノポアの電流値の変化は、相補的なタグ付けされたヌクレオチドについて測定された遮断事象と有意に異なった。ミスマッチ電流値の変化のプロットは、電流遮断を示す大きな変化をほとんど示さず、ミスマッチ「事象」の大部分は、オープン状態のポア電流値に非常に近いものであった。更に、測定された電流値の変化においてミスマッチ滞留時間のヒストグラムは、事象の大部分が、相補的なタグ付けされたヌクレオチドのバックグラウンド信号の範囲に対応して、20ミリ秒よりも短いことを示した。検出された総量1041個のミスマッチ「事象」うち、ミスマッチヌクレオチドの34.9%の事象しか通常の電流遮断の範囲になく、19.8%しか電流遮断の例示的な滞留時間を示さなかった。これらの結果に基づいて、タグ付けされたヌクレオチドのミスマッチによる全体的なエラー率は6.9%と推定された。
【0275】
例17 4つの異なるタグ付けされたクレオチドを用いたナノポアアレイチップ上でのシークエンシング
この例は、DNA鋳型の配列を検出するために、ナノポアアレイチップ上での4つの異なるタグ付けされたヌクレオチドの使用を示す。4つの異なるタグ付けされたヌクレオチド(dT6P−Cy3−T
2−dSp
8−T
20−C
3、dC6P−Cy3−T
4−dSp
3−T
23−C
3、dG6P−Cy3−T
30−C
6及びdA6P−Cy3−T
4−FldT−T−FldT−T
23−C
3)、ナノポアタンパク質(α溶血素)、DNA鋳型(シンプルベル83量体)及び使用されたナノポアアレイチップ(即ち、浅いウェル中の直径5μmの銀電極の264個のアレイを有する約1x1mmのCMOSマイクロチップ、ゲニアテクノロジー(Genia Technologies)製、マウンテンビュー、CA、USA製)は、例16で用いたものと同じである。しかしながら、この例において使用されたDNAポリメラーゼは、Phi29ポリメラーゼであり、ザケリ(Zakeri)及びホワース(Howarth)(2010)に記載されたスパイキャッチャー法を用いてα溶血素ナノポアに付着された。
【0276】
更に、このシークエンシングの例は、4つの異なるタグ付けされたヌクレオチド及び触媒金属イオン塩MgCl
2の存在を含み、完全なポリメラーゼ反応が、相補的なタグ付けされたヌクレオチドの伸長プライマー鎖への組み込み及びタグの解離によって起こることを可能にした。
【0277】
α−HL−Phi29複合体の調製。この方法では、プトレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)フィブロネクチン結合タンパク質FbaBのコラーゲン接着ドメイン(CnaB2)の2つのフラグメントが互いを認識し、続いて、1つのフラグメント(即ち、「スパイキャッチャー」)中のリジンのε−アミノ基及び他のフラグメント(即ち、「スパイタグ」)中のアスパラギン酸のカルボキシル側基間にペプチド結合を生成する。本例において、スパイタグフラグメントを短いペプチドリンカーを介してα−HLモノマーのN末端に結合させ、スパイキャッチャーフラグメントを同様の短いペプチドリンカーを介してPhi29DNAポリメラーゼのN末端に結合させた。スパイタグを含む及び含まないα−HLモノマーを混合して七量体ナノポアの集合を可能にし、スパイタグ修飾α−HLモノマーを1つだけ有するそれらの七量体ナノポアをクロマトグラフィーにより精製し、所望の6:1のα−HLナノポアを得た。次いで、6:1のα−HLナノポア溶液をスパイキャッチャー修飾Phi29DNAポリメラーゼと併せて6:1α−HL−Phi29複合体を形成させた。
【0278】
ナノポアアレイチップの調製。例16に記載されているように、脂質二重膜を264ウェルCMOSチップアレイ上に調製し、6:1α−HL−Phi29複合体を、150mMのKCl、3mMのSrCl
2、20mMのHEPES(pH7.5、25℃)の緩衝溶液中のDNA鋳型とともに二重膜中に挿入した。2つの異なるDNA鋳型を本例に記載のシークエンシング反応に用いた。最初の2つの反応(
図36の(A)及び(B)を参照のこと)において、鋳型は、例16で使用された83量体自己プライミング一本鎖シンプルベルDNA鋳型であり、X位置で選択されたAヌクレオチドは、自己プライミング領域:5’−GCG CTC GAG ATC TCC TCG TAA GAG GAG ATC TCG AGC GCA CTG ACT GAC TGA CCT CAG CTG CAC GTA AGT GCA GCT GAG GTC AG−3’(配列番号
116)の始まりの開始を示す。第3のシークエンシング反応(
図37参照)において、ホモポリマー領域を有する自己プライミング一本鎖DNA鋳型:5’−GCA CAC AAG CTT ACC TTT TGG TAA GCT TGT GTC GAA AAT TTT CCC CTA GTA GAA GCA AGT GTT TTC ACT TGC TTC TAC TAG GGG AAA ATT TT−3’(配列番号
117)を使用した。
【0279】
ナノポアアレイチップを用いたシークエンシング。アレイ上の脂質二重膜中の自己プライミングDNA鋳型を有する6:1α−HL−Phi29複合体の挿入後、SrCl
2金属イオン塩のみを含む膜のシス側の緩衝溶液を、150mMのKCl、3mMのMgCl
2、3mMのSrCl
2、20mMのHEPES、25℃、pH7.5、及び0.1mMのMnCl
2(
図36の(A)の電流トレースを参照のこと)か、3.0mMのMgCl
2と0.7mMのSrCl
2との混合物(
図36の(B)の電流トレースを参照のこと)か、又は3.0mMのMgCl
2(
図37の電流トレースを参照のこと)のいずれかを含む緩衝液を含む緩衝溶液で置き換えた。シス側の触媒二価Mn
2+又はMg
2+イオンの存在は、Phi29DNAポリメラーゼの触媒作用の開始をもたらした。ポアを通過して印加された電位も変化した。
図36の(A)及び(B)の実験においては、160mVの電位が印加され、維持され、一方で、
図37の実験においては、100mVの電位が印加され、維持された。膜のシス及び/又はトランス側の種々の量の非触媒性Sr
2+もまた、ポリメラーゼの作用及び得られたイオン電流値のトレースに影響を及ぼした(
図36の(A)、(B)及び
図37に示すように)。アレイ中のナノポアを通したイオン電流値の変化を3分〜10分間測定した。
【0280】
結果
図36に示すように、オープン状態の電流値よりも低い4つの異なる電流値が一時的に観察され、4つの異なるヌクレオチドのそれぞれに関する、4つの異なるタグのナノポアによる捕捉を示している。存在する4つのタグ付けされたヌクレオチドの全てによるこのシークエンシング実験中に観察された相対的電流値の変化は、単一のタグ及び非触媒Sr
2+二価金属イオンのみ存在するナノポアアレイ測定の間に観察されたものと一致した(例えば例16参照のこと)。予想されたように、4つの異なるタグ付けされたヌクレオチドについて観察された最低から最高への残留電流(I/I
0)のランク付けは、例16のナノポアアレイチップを用いたこれらのタグ付けされたヌクレオチドについて観察された相対的残留電流と一致した:dA6P−Cy3−T
4−FldT−T−FldT−T
23−C
3(〜0.15)、<dG6P−Cy3−T
30−C
6(〜0.25)、<dC6P−Cy3−T
4−dSp
3−T
23−C
3(〜0.42)、<dT6P−Cy3−T
2−dSp
8−T
20−C
3(〜0.50)。更に、電流値変化のトレースは、
図36の上部に示される「伸長プライマー」配列、5’―――TCAGTCAGTGCGCTCGAGAT―――3'(配列番号
118)である自己プライミングシンプルベルDNA鋳型の相補的な配列に基づく正確なヌクレオチド配列の組み込みに対応するタグ捕捉事象を示す。
【0281】
図37に示すように、ナノポアアレイチップを用いてタグ付けされたヌクレオチドの署名電流値の変化を検出することにより、ホモポリマー鋳型領域、5’―――GGGGAAAATTTT―――3’(配列番号
119)をシークエンシングすることができた。電流の急激な減少は、ポア内へのタグ捕捉、マークされた4つのタグの異なる構造のたわみ特性の深さを示すものであり、非常に小さな(<2ms)バックグラウンドのたわみは無視した。
図37の電流トレースは、後の処理又はノイズ減少のない生のデータ出力である。
【0282】
特定の例が示され記載されているが、それに対する様々な変更をすることが可能であり、本明細書で検討されることは前述から理解されるべきである。また、本発明は、本明細書中に提供される特定の例によって限定されることを意図していない。本発明を、前述の明細書を参照して説明してきたが、本明細書の好ましい実施形態の説明及び図解は、限定的な意味で解釈されることを意味するものではない。更に、本発明の全ての側面は、様々な条件及び変数に依存する本明細書に記載の特定の描写、構成又は相対的な比率に限定されないことを理解されたい。本発明の実施形態の形態及び詳細における様々な変更は、当業者には明らかであろう。従って、本発明は、そのような修正、変形及び等価物のいずれもカバーするものと考えられる。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義するものであり、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにその均等物は、それによってカバーされるものと考えられる。
【0283】
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【0300】
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【0301】
2003年12月16日に発行されたジュらの米国特許第6,664,079号。
【0302】
2014年11月18日に発行されたジュらの米国特許第8,889,348号。
【0303】
2012年12月4日に発行されたチェンらの米国特許第8,324,914号。
【0304】
2013年4月4日に公開されたワイスラーらの米国特許出願公開第2013/0085271A1号。
【0305】
2013年9月19日に公開されたデイビスらの米国特許出願公開第2013/0244340A1号。
【0306】
2013年10月10日に公開されたフォックスらの米国特許出願公開第2013/0266512A1号。
【0307】
2013年10月10日に公開されたジュらの米国特許出願公開第2013/0264207A1号。
【0308】
2015年3月9日に出願されたジュらの米国仮特許出願第62/130,326号。
【0309】
2013年4月8日に出願されたジュールらのPCT国際出願公開第PCT/US13/35630号。
【0310】
2013年4月8日に出願されたジュらのPCT国際出願公開第PCT/US13/35635号。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
タグ付けされたヌクレオチドであって、末端リン酸を有するポリリン酸基、及びトリアゾール、1,2−ジアジン、ジスルフィド、第2級アミン、ヒドラゾン、チオアセトアミド、又はマレイミド−チオ付加体によって、前記ヌクレオチドの前記末端リン酸に共有結合したタグを含む、タグ付けされたヌクレオチド。
[2]
前記タグは、トリアゾールによって前記末端リン酸に共有結合されている[1]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[3]
前記トリアゾールは、構造:
【化15】
を有し、
R1は、前記タグを含み、R2は、前記ヌクレオチドを含み、或いは、
R1は、前記ヌクレオチドを含み、R2は、前記タグを含む
[2]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[4]
前記トリアゾールは、構造:
【化16】
を有し、
R1及びR3は、結合して環状部を形成し、及び
結合したR1及びR3は、前記タグを含み、R2は、前記ヌクレオチドを含み、或いは、
結合したR1及びR3は、前記ヌクレオチドを含み、R2は、前記タグを含む
[2]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[5]
前記タグは、1,2−ジアジンによって前記末端リン酸に共有結合されている[1]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[6]
前記ポリリン酸基は、前記ヌクレオチドの5’位にある[1]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[7]
前記ポリリン酸基は、少なくとも3つのリン酸、又は4つから6つまでのリン酸を含む[1]〜[6]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[8]
前記タグは、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)、オリゴ糖、炭水化物、ペプチド核酸(PNA)、ビニルポリマー、他の水溶性ポリマー、又はそれらの何れかの組み合わせを含む[1]〜[7]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[9]
前記タグは、オリゴヌクレオチドを含む[8]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[10]
前記タグの前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも7個のモノマー単位、又は少なくとも30個のモノマー単位を含む[9]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[11]
前記オリゴヌクレオチドは、非天然のヌクレオチドを含む[9]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[12]
前記非天然のヌクレオチドは、L−ヌクレオチド、2’,5’結合、α−D−ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド間結合、非天然塩基、非天然糖基、及びそれらの何れかの組み合わせからなる群から選択される基を含み、或いは、前記非天然のヌクレオチドは、二トロピロール、ニトロインドール、ネブラリン、ゼブラリン、ベンゼン及びベンゼン誘導体からなる群から選択される非天然塩基を含み、或いは、前記非天然のヌクレオチドは、リン酸トリエステル、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ボロノリン酸、ホスホロアミド酸及びモルホリノ基からなる群から選択される非天然ヌクレオチド間結合を含む[11]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[13]
前記オリゴヌクレオチドの5’末端は、ポリリン酸基の前記末端リン酸と共有結合している[9]〜[12]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[14]
前記オリゴヌクレオチドは、それをエキソヌクレアーゼ分解から保護する、その3’末端の化学修飾を含む[13]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[15]
前記3’末端の化学修飾は、リン酸化、及びC3アルキルからC12アルキルまでのスペーサーとの共有結合から選択される[14]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[16]
前記オリゴヌクレオチドの3’末端は、ポリリン酸基の前記末端リン酸に共有結合している[9]〜[12]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[17]
前記オリゴヌクレオチドは、それをエキソヌクレアーゼ分解から保護する、その5’末端の化学修飾を含む[16]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[18]
前記5’末端の化学修飾は、リン酸化、及びC3アルキルからC12アルキルまでのスペーサーとの共有結合から選択される[14のタグ付けされたヌクレオチド。
[19]
前記オリゴヌクレオチドは、シアニン色素基、又はCy3基であるシアニン色素基を含むリンカーを含む[9]〜[18]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[20]
前記オリゴヌクレオチド及び/又は前記リンカーは、少なくとも2個の炭素から約12個の炭素までのアルキル基を含むスペーサー基を含む[9]〜[19]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[21]
[1]〜[20]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチドを含む、核酸をシークエンシングするためのキット。
[22]
タグ付けされたヌクレオチドを作製するためのプロセスであって、
(a)(i)末端リン酸を有するポリリン酸基を含むヌクレオチド、ここで、前記末端リン酸は第1の反応性官能基を含むリンカーと結合しており、及び(ii)第2の反応性官能基を含むタグを提供すること、
ただし、
(1)前記第1の反応性官能基は、チオール、イミダゾール、アミン、アルキン及びジエンからなる群から選択され、前記第2の反応性官能基は、マレイミド、ハロアセトアミド、アルデヒド、エステル、イソチオシアネート、イソシアネート、ビニルスルホン、アジド及びテトラジンからなる群から選択され、或いは、
(2)前記第1の反応性官能基は、マレイミド、ハロアセトアミド、アルデヒド、エステル、イソチオシアネート、イソシアネート、ビニルスルホン、アジド及びテトラジンからなる群から選択され、前記第2の反応性官能基は、チオール、イミダゾール、アミン、アルキン及びジエンからなる群から選択され、及び
(b)前記タグに前記ヌクレオチドを結合させるために、前記第1の反応性官能基を前記第2の反応性官能基と反応させること
を含むプロセス。
[23]
前記第1の反応性官能基は、チオール、イミダゾール、アミン、アルキン及びジエンからなる群から選択され、前記第2の反応性官能基は、マレイミド、ハロアセトアミド、アルデヒド、エステル、イソチオシアネート、イソシアネート、ビニルスルホン、アジド及びテトラジンからなる群から選択される[22]に記載のプロセス。
[24]
前記第1の反応性官能基は、アルキンであり、前記第2の反応性官能基は、アジドであるか、又は前記第1の反応性官能基は、アジドであり、前記第2の反応性官能基は、アルキンである[22]に記載のプロセス。
[25]
前記アルキンは、シクロオクチンである[24]に記載のプロセス。
[26]
前記第1の反応性官能基は、マレイミド、ハロアセトアミド、アルデヒド、イソチオシアネート、イソシアネート、ビニルスルホン、アジド及びテトラジンからなる群から選択され、前記第2の反応性官能基は、チオール、イミダゾール、アミン、アルキン及びジエンからなる群から選択される[22]に記載のプロセス。
[27]
前記工程(b)は、銅、ルテニウム、銀、又はそれらの何れかの組合せを含む不均一触媒によって促進される[22]〜[26]の何れか1項に記載のプロセス。
[28]
前記工程(b)は、不均一触媒によって促進されない[22]〜[26]の何れか1項に記載のプロセス。
[29]
前記タグは、表4に掲げられたタグからなる群から選択される[1]〜[7]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチド又は[22]〜[28]の何れか1項に記載のプロセス。
[30]
前記タグ付けされたヌクレオチドは、表4に掲げられたタグ付けされたヌクレオチドからなる群から選択される[1]〜[7]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチド又は[22]〜[28]の何れか1項に記載のプロセス。
[31]
前記タグは、表5に掲げられたタグからなる群から選択される[1]〜[7]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチド又は[22]〜[28]の何れか1項に記載のプロセス。
[32]
前記タグは、表6に掲げられた化学修飾からなる群から選択される化学修飾を含む[1]〜[7]の何れか1項に記載のタグ付けされたヌクレオチド又は[22]〜[28]の何れか1項に記載のプロセス。
[33]
前記タグ付けされたヌクレオチドは、ポリメラーゼによる改善された補足速度を有する[19]に記載のタグ付けされたヌクレオチド。
[34]
一本鎖核酸のヌクレオチド配列を決定するための方法であって、
(a)膜中のナノポアと接触している電解質溶液中にあり、かつ一部にハイブリダイズしたプライマーを有する一本鎖核酸を、核酸ポリメラーゼと少なくとも4つのタグ付けされたヌクレオチドとに、それが、前記プライマーの3’末端ヌクレオチド残基にハイブリダイズした前記一本鎖核酸のヌクレオチド残基に対し直近の5’である前記一本鎖核酸のヌクレオチド残基に相補的である場合、前記核酸ポリメラーゼに前記プライマーへの前記タグ付けされたヌクレオチドの一つの組み込みを触媒させることを許容する条件のもとで、核酸伸長生成物を形成させるために、接触させること、
ただし、前記少なくとも4つのタグ付けされたヌクレオチドの各々は、末端リン酸、アデニン、グアニン、シトシン、チミン若しくはウラシルである塩基、又はそれらそれぞれの誘導体、及びトリアゾール、1,2−ジアジン、ジスルフィド、第2級アミン、ヒドラゾン、チオアセトアミド、又はマレイミド−チオ付加体によって前記ヌクレオチドの前記末端リン酸に共有結合したタグを有するポリリン酸基を含み、ただし、(i)各タグ付けされたヌクレオチド中の塩基の種類は、他の3つのタグ付けされた前記ヌクレオチドの各々中の塩基の種類と異なっており、及び(ii)各タグ付けされたヌクレオチドの前記ポリリン酸基中のリン酸の数は、前記他の3つのタグ付けされたヌクレオチドの前記ポリリン酸基中のリン酸の数と異なっているか、或いは、各タグ付けされたヌクレオチドの前記ポリリン酸基中のリン酸の数は、同じであり、かつ各タグ付けされたヌクレオチド上のタグの種類は、前記他の3つのタグ付けされたヌクレオチドの各々のタグの種類とは異なっており、
ただし、前記タグ付けされたヌクレオチドの組み込みは、前記タグが結合したリン酸の解離をもたらし、
(b)前記膜を通して電圧を印加し、及び前記ナノポアに入っていく、前記ナノポア中に位置するようになる、及び/又は前記ナノポアを通り抜けて転座する、工程(a)において生成した、前記タグが結合した前記ポリリン酸に起因する、前記ナノポアを通した電子的変化を測定することによって、前記工程(a)における核酸伸長生成物を形成するために、どのタグ付けされたヌクレオチドが前記プライマーに組み込まれたかを決定すること、ただし、前記電子的変化は、前記ポリリン酸基中のリン酸の各異なる数、若しくは前記タグの各異なる種類のうち、適切な方について異なり、それによって前記組み込まれたタグ付けされたヌクレオチドに相補的な前記一本鎖核酸中のヌクレオチド残基を特定し、
(c)シークエンシングされている前記一本鎖核酸の各核酸残基について、前記工程(a)及び(b)を反復して繰り返すこと、ただし、前記工程(a)の各反復において、前記タグ付けされたヌクレオチドは、それが、前記核酸伸長生成物の3’末端ヌクレオチド残基にハイブリダイズした前記一本鎖核酸のヌクレオチド残基に対し直近の5’である前記一本鎖核酸のヌクレオチド残基に相補的である場合、前記工程(a)の先行の反復に起因する前記核酸伸長生成物中に組み込まれ、
それによって、前記一本鎖核酸の配列を決定すること
を含む方法。
[35]
一本鎖核酸のヌクレオチド配列を決定するための方法であって、
(a)膜中のナノポアと接触している電解質溶液中にあり、かつ一部にハイブリダイズしたプライマーを有する一本鎖核酸を、核酸ポリメラーゼとタグ付けされたヌクレオチドとに、それが、前記プライマーの3’末端ヌクレオチド残基にハイブリダイズした前記一本鎖核酸のヌクレオチド残基に対し直近の5’である前記一本鎖核酸のヌクレオチド残基に相補的である場合、前記核酸ポリメラーゼに前記プライマーへのタグ付けされたヌクレオチドの一つの組み込みを触媒させることを許容する条件のもとで、DNA伸長生成物を形成させるために、接触させること、ただし、前記タグ付けされたヌクレオチドは、末端リン酸、アデニン、グアニン、シトシン、チミン若しくはウラシルである塩、又はそれらそれぞれの誘導体、及びトリアゾール、1,2−ジアジン、ジスルフィド、第2級アミン、ヒドラゾン、チオアセトアミド、又はマレイミド−チオ付加体によって前記ヌクレオチドの前記末端リン酸に共有結合したタグを有するポリリン酸基を含み、
ただし、タグ付けされたヌクレオチドの組み込みは、結合しているタグを有するポリリン酸の解離をもたらし、タグ付けされたヌクレオチドが組み込まれない場合、タグ付けされたヌクレオチドが組み込まれるまで、異なるタグ付けされたヌクレオチドを接触させることを反復して繰り返し、ただし、(1)各タグ付けされたヌクレオチド中の塩基の種類は、他の3つのタグ付けされたヌクレオチドの各々の塩基の種類と異なっており、及び(2)各タグ付けされたヌクレオチドの前記ポリリン酸基中のリン酸の数は、他の3つのタグ付けされたヌクレオチドの前記ポリリン酸基中のリン酸の数と異なっているか、或いは、各タグ付けされたヌクレオチドの前記ポリリン酸基中のリン酸の数は、同じであり、各タグ付けされたヌクレオチド上のタグの種類は、他の3つのタグ付けされたヌクレオチドの各々のタグの種類とは異なっており、
(b)前記膜を通して電圧を印加し、及び前記ナノポアに入っていく、前記ナノポア中に位置するようになる、及び/又は前記ナノポアを通り抜けて転座する、工程(a)において生成された、前記タグが結合した前記ポリリン酸に起因する、前記ナノポアを通した電子的変化を測定することによって、前記工程(a)における核酸伸長生成物を形成するために、タグ付けされたヌクレオチドがプライマーに組み込まれたかどうかを決定すること、ただし、前記電子的変化は、nの各値、又はタグの各異なる種類のうちの適切な方について異なり、それによって前記組み込まれたタグ付けされたヌクレオチドに相補的な前記一本鎖核酸中のヌクレオチド残基を特定すること;
(c)シークエンシングされている前記一本鎖核酸の各核酸残基について、工程(a)及び(b)を反復して繰り返すこと、ただし、前記工程(a)の各反復において、前記タグ付けされたヌクレオチドは、それが、前記核酸伸長生成物の3’末端ヌクレオチド残基にハイブリダイズした前記一本鎖核酸のヌクレオチド残基に対し直近の5’である前記一本鎖核酸のヌクレオチド残基に相補的である場合、前記工程(a)の先行の反復に起因する前記核酸伸長生成物中に組み込まれ、
それによって、前記一本鎖核酸のヌクレオチド配列を決定すること
を含む方法。
[36]
前記核酸は、DNAであり、前記核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼであるか、又は前記核酸は、RNAであり、前記核酸ポリメラーゼは、逆転写酵素である[34]又は[35]に記載の方法。
[37]
前記タグ付けされたヌクレオチドの各々の前記ポリリン酸基におけるリン酸の数は、同じであり、前記タグ付けされたヌクレオチドの各々の種類は、他の3種類のタグ付けされたヌクレオチドの各々のタグの種類と異なる[34]又は[35]に記載の方法。
[38]
前記各タグは、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)、オリゴ糖、炭水化物、ペプチド核酸(PNA)、ビニルポリマー、他の水溶性ポリマー、又はそれらの何れかの組み合わせを含む[34]〜[37]の何れか1項に記載の方法。
[39]
前記各タグは、チアゾール、又は1,2−ジアジンによって前記末端リン酸に共有結合している[34]〜[38]の何れか1項に記載の方法。
[40]
各ポリリン酸基は、少なくとも3つのリン酸を含む[34]〜[39]の何れか1項に記載の方法。
[41]
前記各ポリリン酸基は、4つから6つまでのリン酸を含む[34]〜[39]の何れか1項に記載の方法。
[42]
前記各タグは、前記トリアゾールによって前記末端リン酸に共有結合されており、前記各トリアゾールは、アジドとアルキンとの間の反応によって形成される[39]に記載の方法。
[43]
前記各トリアゾールは、構造:
【化17】
を有し、
R1は、前記タグを含み、R2は、前記ヌクレオチドを含み;又は、
R1は、前記ヌクレオチドを含み、R2は、前記タグを含む
[39]又は[42]に記載の方法。
[44]
前記各トリアゾールは、構造:
【化18】
を有し、
R1及びR3は、結合して環状部を形成し;及び
結合したR1及びR3は、前記タグを含み、R2は、前記ヌクレオチドを含み;或いは、
結合したR1及びR3は、前記ヌクレオチドを含み、R2は、前記タグを含む
[39]又は[42]に記載の方法。
[45]
前記各タグは、表4又は5に掲げられているタグの群から選択されるか、或いは、前記各タグは、表6に掲げられている化学修飾からなる群から選択される化学修飾を含むか、或いは、前記各タグ付けされたヌクレオチドは、表4に掲げられているタグ付けされたヌクレオチドの群から選択される[34]〜[44]の何れか1項に記載の方法。
[46]
前記各タグ付けされたヌクレオチドは、前記タグを前記ヌクレオチドに連結しているリンカー内のシアニン色素基を含み、かつ前記タグ付けされたヌクレオチドは、シアニン色素基を含まないタグ付けされたヌクレオチドと比較して、ポリメラーゼによる改善された補足速度を有する[34]〜[44]の何れか1項に記載の方法。
[47]
前記4つのタグ付けされたヌクレオチドは、dA6P−Cy3−T4−FldT−T−FldT−T23−C3、dT6P−Cy3−T2−dSp8−T20−C3、dG6P−Cy3−T30−C6、及びdC6P−Cy3−T4−dSp3−T23−C3である[34]又は[35]に記載の方法。