特許第6805428号(P6805428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805428
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】CEACAM1に対するヒト化抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20201221BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20201221BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20201221BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20201221BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20201221BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20201221BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20201221BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   C07K16/18
   C12N15/13
   C07K16/46
   A61K39/395 N
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P17/00
   A61P1/04
   A61P13/10
   A61P11/00
   A61P1/18
   A61P15/00
   A61P13/08
   A61P5/00
   A61P19/00
   A61K47/18
   A61K47/26
   A61K45/00
   A61K38/00
   A61K39/395 D
   A61K35/17 Z
   A61P31/00
   A61K39/395 E
   A61K39/395 T
   G01N33/574 E
   !C12P21/08
   !C12N5/10
【請求項の数】19
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2016-560702(P2016-560702)
(86)(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公表番号】特表2017-522261(P2017-522261A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】IL2015050433
(87)【国際公開番号】WO2015166484
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2018年3月29日
(31)【優先権主張番号】61/984,786
(32)【優先日】2014年4月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/099,155
(32)【優先日】2015年1月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519449563
【氏名又は名称】フェイムウェイヴ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベン‐モシェ,テヒラ
(72)【発明者】
【氏名】サピア,ヤイル
(72)【発明者】
【氏名】マンデル,イラナ
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,ガル
(72)【発明者】
【氏名】シャハテル,ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】オルテンバーグ,ロナ
(72)【発明者】
【氏名】カー,フランシス ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ホルゲート,ロバート ジョージ,イー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ティモシー デイビッド
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/054331(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/054320(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
C12N 5/00
C12N 15/00
A61K 35/00
A61K 38/00
A61K 39/00
A61K 45/00
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCEACAM1を特異的に認識し、
(i)配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、
(ii)配列番号33、配列番号34及び配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、
を含む、ヒト化モノクローナル抗体(mAb)又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号32に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域配列と配列番号34に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域配列とを含む、請求項1に記載のヒト化mAb。
【請求項3】
軽鎖カッパアイソタイプと、IgG4アイソタイプ及びIgG1アイソタイプからなる群から選択される重鎖と、を含む、請求項1または2に記載のヒト化mAb。
【請求項4】
配列番号52に記載される軽鎖を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒト化mAb。
【請求項5】
配列番号53に記載される重鎖を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒト化mAb。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb又はその抗原結合断片をコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項6に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、プラスミド。
【請求項8】
治療有効量の請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項9】
CEACAMタンパク質の発現、活性化又は機能に関連する疾患又は障害の治療に使用するための、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記疾患又は障害が、細胞増殖性の疾患又は障害である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記細胞増殖性の疾患又は障害が、黒色腫、結腸直腸癌、膀胱癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、非小細胞肺腺癌(NSCLA)、消化管癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、甲状腺癌、胃癌、卵巣癌、骨髄腫及び子宮癌からなる群から選択される癌である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
(i)請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb、及び1〜10mg/mlの塩基性アミノ酸;
(ii)請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb、及び10100mg/mlの糖;
(iii)請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb、及び0.01〜1mg/mlの界面活性剤;
(iv)1〜50mg/mlの請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb、4〜6mg/mlの塩基性アミノ酸、70〜100mg/mlの糖及び0.1〜1mg/mlの非アニオン性界面活性剤;又は
(v)10mg/mlの請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb、4.65mg/mlのL−ヒスチジン、82mg/mlのスクロース、及び0.20mg/mlのポリソルベート20
を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項13】
少なくとも1種類の追加の免疫調節物質をさらに含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb又はその抗原結合断片を含む、癌の治療に使用するための医薬組成物であって、前記治療は、追加の免疫調節物質の投与を含む、医薬組成物。
【請求項15】
免疫調節物質を含む、癌の治療に使用するための医薬組成物であって、前記治療は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb又はその抗原結合断片の投与を含む、医薬組成物。
【請求項16】
前記免疫調節物質が、抗ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD−1)、PD−L1抗体及びPD−L2抗体、活性化細胞傷害性リンパ球細胞、リンパ球活性化剤、並びにRAF/MEK経路阻害剤からなる群から選択される、請求項13〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
少なくとも1種類の請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb又はその抗原結合断片を含む、診断用組成物。
【請求項18】
それを必要とする対象における癌を診断するための方法において使用するための請求項17に記載の診断用組成物であって、
前記方法は、前記対象由来の生体試料又は前記対象から得られた生体試料を前記診断用組成物と接触させることを含み、
所定の閾値を超える複合体形成が前記対象における癌の指標となる、
診断用組成物。
【請求項19】
CEACAM1の発現を決定するための方法であって、生体試料を請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化mAb又はその抗原結合断片と接触させることと、免疫複合体形成のレベルを測定することと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、ヒトCEACAM分子に特異的に結合することができるヒト化抗体に関する。より具体的には、本発明は、マウス由来のCDR並びに特定の復帰変異を有するヒト化重鎖領域及び軽鎖領域を含む、CEACAM1に対する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
分化抗原群(cluster of differentiation)66a(CD66a)としても知られている癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)は、癌胎児性抗原(CEA)遺伝子ファミリーのメンバーであり、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属する。CEACAM1は、活性化の際に、T細胞及びNK細胞において上方制御され、その同種親和性相互作用は、リンパ球の細胞毒性作用の阻害につながる。いくつかのヒト腫瘍タイプの研究は、CEACAM1経路の利用が腫瘍による免疫回避を可能にすることができることを示唆している。腫瘍の前臨床動物モデルにより、モノクローナル抗体(mAb)によるCEACAM1相互作用の阻止が腫瘍に対する免疫反応を増強できることが示された。2013年に米国内で推定1,660,290人の新しい癌の症例及び580,350人の癌関連死が見られた。
【0003】
チェックポイント免疫療法の阻止は、癌治療のエキサイティングな新しい考えであると示されている。免疫チェックポイント経路は、自己寛容を維持し、生理的条件下で免疫系による損傷から組織を保護するために、連携して動作する共刺激分子及び阻害分子の範囲からなる。腫瘍は、免疫系を回避するために、特定のチェックポイント経路を利用する。したがって、かかる経路の阻害が、有望な抗癌治療戦略として浮上している(Pardoll,D.M.,2012,Nat Rev Cancer,12,252−264)。CEACAM1阻止を介した抗腫瘍免疫療法は、原則的に任意の単一の腫瘍タイプに限定されるものではないが、いく種類かの組織学的に異なる腫瘍に対する治療的免疫反応を増強する活性を有し得る。
【0004】
抗細胞傷害性Tリンパ球4(CTLA−4)抗体のイピリムマブ(2011年に承認された)は、癌患者の治療に対する利点を示した最初の免疫療法剤であった(Robert et al.,2011,N.Engl.J.Med.,Vol.364,ページ2517−2526)。この抗体は、T細胞への抗原提示中に阻害シグナルに干渉する。抗プログラム細胞死1(PD−1)抗体ペンブロリズマブ(2014年に承認された)は、T細胞が発現するPD−1受容体の負の免疫調節シグナルを遮断する(Hamid,2013,N.Engl.J.Med.,Vol.2,ページ134−144)。PD−1/PL−L1軸の抗体を遮断することは、種々の腫瘍タイプを有する患者におけるいくつかの臨床試験で有望な結果を示している(Dolan and Gupta 2014,Cancer Control,Vol.21,ページ231−237)。追加の抗PD−1剤が、非小細胞肺癌(NSCLC)の治療のために、2014年に規制当局の承認を求めて提出された。現在、多くの他の免疫チェックポイントを検討する研究が活発に行われており、その中には、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、CD 137、OX40(CD134とも呼ばれる)、及びキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)(Gelao et al.,2014,Toxins,Vol.6,ページ914−933)がある。
【0005】
ヒト化抗体は、そのタンパク質配列が、ヒトにおいて天然に産生された抗体変異体との類似性を高めるように改変された非ヒト種の抗体(例えば、マウスの抗体)である。「ヒト化」のプロセスは、通常、ヒトへの投与のために開発されたモノクローナル抗体に適用され、特異的な抗体を開発するプロセスが非ヒト(マウスなどの)免疫系での生成を伴う場合に実行される。このようにして産生された抗体のタンパク質配列は、ヒトにおいて天然に存在する抗体とは異なり、したがって、ヒト患者に投与した場合に免疫原性である。ヒト化抗体は、ヒト抗体に類似のタンパク質配列を有するが、非ヒトタンパク質の大きなストレッチを保有するキメラ抗体とは異なると考えられている。
【0006】
キメラ中間体を作製することなく、ヒト化抗体を産生することが可能である。ヒト化抗体の直接作製は、ヒト抗体の足場に適切なCDRコードセグメント(所望の結合特性を担う)を挿入することによって達成することができ、このプロセスは、「CDR移植」として知られている。一般的に、抗体が、マウス(又は別の非ヒト動物)において所望の特性を有するように開発された後に、その抗体のCDRをコードするDNAの配列を決定することができる。所望のCDRの正確な配列が分かると、これらの配列は、ヒト抗体フレームワークのDNAを含有する構築物に挿入される。
【0007】
本発明者らのWO 2010/125571は、特定のハイブリドーマ細胞によって産生されるマウスモノクローナル抗体(MRG−1)を開示している。mAbは、CEACAM1に非常に選択的であり、CEACAMファミリーの他のメンバーと交差反応しない。本発明者らのWO 2013/054331は、CEACAM1にも非常に選択的なキメラ抗体(CM−10)を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
免疫療法の分野で進展はあるが、最終的には癌患者で持続する長期反応をもたらすために、より効果的で、より長く続き、新規標的を伴い、シグナル剤(signal agent)として、又は公知の療法と組み合わせて機能することができる新しい治療剤のニーズが絶えず存在する。より安全で、より強力であり、CEACAMタンパク質の発現又は活性化が関与する疾患の診断及び治療に使用することができる特定のCEACAMタンパク質を認識するヒト化抗体を提供するニーズは満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、CEACAM1を認識したヒト化抗体を提供する。本発明の選択されたヒト化抗体は、その可変領域配列中の多数の特異的な「復帰変異」、すなわち、ヒト化配列からマウス配列に戻された変異を含有する。これらの復帰変異は、元の抗体の立体配座及び結合親和性の維持に重要な残基中で行われ、潜在的なT細胞エピトープの発生率が最も低いので、抗体に対する有害な免疫反応のリスクを最小限に抑える。
【0010】
所望の配向及び立体配座及びヒトフレームワークで、特定のCDR配列を有するCEACAM1を認識するヒト化mAbを産生するために、本発明の発明者らは、CDR提示に影響を与える重要な残基をヒトフレームワーク内(CDR配列の外)で同定し、抗体の免疫原性を最小限に抑えながら、CDRの正確な提示を回復するように、これらの重要な残基内に一連の変異を設計した。したがって、本発明は、初めて、CEACAM1に対する高親和性、非免疫原性、高度に特異的なヒト化抗体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
一態様によれば、本発明は、ヒトCEACAM1を特異的に認識し、少なくとも抗原結合ドメインを含み、以下からなる群から選択される少なくとも1つの可変領域を含むヒト化モノクローナル抗体(mAb)又はその断片を提供する:(i)それぞれ配列番号1、配列番号2及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域;並びに(ii)それぞれ配列番号4、配列番号5及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;その中の(i)及び(ii)の少なくとも1つは、ヒト配列からマウス配列への1〜25個のアミノ酸残基の復帰変異を含有する。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、ヒトCEACAM1を特異的に認識し、以下からなる群から選択される少なくとも1つの可変領域を含むヒト化モノクローナル抗体(mAb)又はその断片を提供する:(i)配列番号1、配列番号2及び配列番号3に記載のCDR配列を含む重鎖可変領域アミノ酸配列、その中の重鎖可変領域アミノ酸配列は、フレームワーク配列中の1〜25個のアミノ酸残基が配列番号57と異なる;並びに(ii)配列番号4、配列番号5及び配列番号6に記載のCDR配列を含む軽鎖可変領域アミノ酸配列、その中の軽鎖可変領域アミノ酸配列は、フレームワーク配列中の1〜10個のアミノ酸残基が配列番号58と異なる。
【0013】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトCEACAM1を特異的に認識し、以下を含むヒト化モノクローナル抗体(mAb)又はその断片を提供する:(i)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に記載のCDR配列;(ii)3〜13個のフレームワークアミノ酸残基が配列番号57と異なる重鎖可変領域アミノ酸配列;並びに(iii)3〜5個のフレームワークアミノ酸残基が配列番号58と異なる軽鎖可変領域アミノ酸配列。
【0014】
特定の実施形態によれば、重鎖可変領域アミノ酸配列は、フレームワーク配列中の3〜13個のアミノ酸残基が配列番号57と異なる。他の実施形態によれば、軽鎖可変領域アミノ酸配列は、フレームワーク配列中の3〜5個のアミノ酸残基が配列番号58と異なる。
【0015】
他の実施形態によれば、本発明は、(i)それぞれ配列番号1、配列番号2及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を含み、かつ配列番号9に記載のアミノ酸配列と2〜9個のアミノ酸が異なるフレームワークアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;並びに/又は(ii)それぞれ配列番号4、配列番号5及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を含み、かつ配列番号13に記載のアミノ酸配列と2〜4個のアミノ酸が異なるフレームワークアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む非完全ヒト化モノクローナル抗体、並びにヒトCEACAM1を特異的に認識するその類似体、誘導体、及び抗原結合断片を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、該mAb配列は、マウス配列への1〜50個の復帰変異を含む。他の実施形態によれば、該mAb配列は、マウス配列への2〜30個の復帰変異を含む。さらに他の実施形態によれば、該mAb配列は、マウス配列への3〜20個の復帰変異を含む。他の実施形態によれば、該mAb配列は、マウス配列への4〜15個の復帰変異を含む。他の実施形態によれば、該mAb配列の重鎖は、マウス配列への1〜15個の復帰変異を含む。他の実施形態によれば、該mAb配列の軽鎖は、マウス配列への1〜15個の復帰変異を含む。他の実施形態によれば、該mAb配列の重鎖は、マウス配列への2〜9個の復帰変異を含み、該mAb配列の軽鎖は、マウス配列への2〜4個の復帰変異を含む。
【0017】
いくつかの具体的な実施形態によれば、該ヒト化mAbは、配列番号57に記載の重鎖配列中にヒト配列からマウス配列への1〜25個の変異を含む。いくつかの実施形態によれば、該ヒト化mAbの重鎖は、配列番号57のV11、R38、M48、V68、M70、R72、T74、S77、R85、R87、T91、Y95及びT115からなる群から選択される残基に少なくとも1つの変異を含む。いくつかの実施形態によれば、配列番号57中の少なくとも1つの復帰変異は、V11L、R38K、M48I、V68A、M70L、R72A、T74K、S77N、R85S、R87T、T91S、Y95F及びT115Sからなる群から選択される。
【0018】
他のいくつかの具体的な実施形態によれば、該ヒト化mAbは、配列番号58に記載の軽鎖配列中にヒト配列からマウス配列への1〜25個の変異を含む。いくつかの実施形態によれば、該ヒト化mAbの軽鎖は、配列番号58のP44、F71、F73、P80及びY87からなる群から選択される残基中に少なくとも1つの変異を含む。いくつかの実施形態によれば、配列番号58中の少なくとも1つの復帰変異は、P44V、F71Y、F73L、P80Q、及びY87Fからなる群から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、該ヒト化mAbの重鎖は、配列番号57のV11、R38、M48、V68、M70、R72、T74、S77、R85、R87、T91、Y95及びT115からなる群から選択される残基に少なくとも1つの変異を含み、該ヒト化mAbの軽鎖は、配列番号58のP44、F71、F73、P80、及びY87からなる群から選択される残基に少なくとも1つの変異を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、該ヒト化mAbの重鎖は、配列番号57のV68、M70、R72、T74、S77、R85、R87、T91、及びY95からなる群から選択される残基に少なくとも1つの変異を含み、該ヒト化mAbの軽鎖は、配列番号58のF71、F73、P80及びY87からなる群から選択される残基に少なくとも1つの変異を含む。それぞれの可能性は本発明の別の実施形態を表す。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、配列番号57の少なくとも1つの復帰変異は、V11L、R38K、M48I、V68A、M70L、R72A、T74K、S77N、R85S、R87T、T91S、Y95F及びT115Sからなる群から選択され、配列番号58の少なくとも1つの復帰変異は、P44V、F71Y、F73L、P80Q、及びY87Fからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、配列番号57の少なくとも1つの復帰変異は、V68A、M70L、R72A、T74K、S77N、R85S、R87T、T91S、及びY95Fからなる群から選択され、配列番号58の少なくとも1つの復帰変異は、F71Y、F73L、P80Q、及びY87Fからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0023】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号12、及び配列番号23からなる群から選択される配列に記載の少なくとも1つの重鎖フレームワーク配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21及び配列番号22からなる群から選択される配列に記載の重鎖フレームワーク配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0024】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号7又は配列番号15;配列番号16又は配列番号17;配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21又は配列番号22;及び配列番号10又は配列番号23に記載の重鎖フレームワーク配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0025】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31及び配列番号32からなる群から選択される配列に記載の重鎖可変領域配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの具体的な実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号32に記載の重鎖可変領域配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号24、配列番号25、配列番号26及び配列番号27からなる群から選択される配列に記載の軽鎖フレームワーク配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号25、配列番号26及び配列番号27からなる群から選択される配列に記載の軽鎖フレームワーク配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0028】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号11;配列番号24;配列番号25、配列番号26及び配列番号27;並びに配列番号14からなる群から選択される配列に記載の軽鎖フレームワーク配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0029】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号33、配列番号34及び配列番号35からなる群から選択される配列に記載の軽鎖可変領域配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの具体的な実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号34に記載の軽鎖可変領域配列を含む。
【0030】
特定の実施形態において、該モノクローナル抗体は、(i)配列番号7又は配列番号15;配列番号16又は配列番号17;配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21又は配列番号22;及び配列番号10又は配列番号23に記載の重鎖フレームワーク配列、並びに(ii)配列番号11;配列番号24;配列番号25、配列番号26又は配列番号27;及び配列番号14に記載の軽鎖フレームワーク配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0031】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31又は配列番号32に記載の重鎖可変領域配列;及び配列番号33、配列番号34又は配列番号35に記載の軽鎖可変領域配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号32に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号34に記載の軽鎖可変領域配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号28に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号33に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号29に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号33に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号30に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号33に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号31に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号33に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号32に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号33に記載の軽鎖可変領域配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号28に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号34に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号29に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号34に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号30に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号34に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号31に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号34に記載の軽鎖可変領域配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号28に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号35に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号29に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号35に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号30に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号35に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号31に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号35に記載の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、配列番号32に記載の重鎖可変領域配列、及び配列番号35に記載の軽鎖可変領域配列を含む。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、該ヒト化mAbの重鎖は、IgG4及びIgG1アイソタイプから選択される。いくつかの実施形態によれば、該ヒト化mAbの重鎖はIgG4アイソタイプである。いくつかの実施形態によれば、該ヒトmAbの軽鎖はカッパアイソタイプである。いくつかの具体的な実施形態によれば、該ヒト化mAbは、軽鎖カッパアイソタイプ及び重鎖IgG4アイソタイプを含む。他の具体的な実施形態によれば、該ヒト化mAbは、軽鎖カッパアイソタイプ及び重鎖IgG1アイソタイプを含む。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、該mAbは、配列番号52に記載の軽鎖を含む。いくつかの実施形態によれば、該mAbは、配列番号53又は配列番号59に記載の重鎖を含む。いくつかの実施形態によれば、該mAbは、配列番号52に記載の軽鎖及び配列番号53に記載の重鎖を含む。いくつかの実施形態によれば、該mAbは、配列番号52に記載の軽鎖及び配列番号59に記載の重鎖を含む。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、該mAbは、配列番号58に記載の軽鎖可変領域及び配列番号53に記載の重鎖を含む。いくつかの実施形態によれば、該mAbは、配列番号58に記載の軽鎖可変領域及び配列番号59に記載の重鎖を含む。いくつかの実施形態によれば、該mAbは、配列番号52に記載の軽鎖及び配列番号57に記載の重鎖可変領域を含む。
【0038】
本発明は、配列番号58に記載の軽鎖可変領域及び配列番号57に記載の重鎖可変領域を含むmAbも提供する。
【0039】
いくつかの実施形態において、該ヒト化mAb又はその抗原結合断片は、少なくとも約10−8Mの親和性でヒトCEACAM1タンパク質に結合することができる。いくつかの実施形態において、該ヒト化mAb又はその抗原結合断片は、少なくとも約5×10−7Mの親和性で、ヒトCEACAM3及びヒトCEACAM5タンパク質のうちの少なくとも1つに結合することができる。
【0040】
本発明はさらに、別の態様において、上記モノクローナル抗体の抗原結合断片と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記のモノクローナル抗体の類似体及び/又は誘導体を提供する。
【0041】
CEACAM1を認識し、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含むmAbの断片も、上記で定義されたCDR配列及びヒト配列からマウス配列への少なくとも1つの復帰変異を含む限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0042】
本発明はさらに、別の態様において、ヒトCEACAM1を特異的に認識する、上記のモノクローナル抗体をコードする単離ポリヌクレオチド又はその断片を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態において、該単離ポリヌクレオチド配列は、ヒト化mAb可変領域をコードする配列番号44〜51のいずれか1つに記載のDNA配列、又は上記配列と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体を含む。いくつかの実施形態において、該単離ポリヌクレオチド配列は、ヒト化mAbの重鎖をコードする配列番号54又は配列番号55に記載のDNA配列、又は上記配列と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体を含む。いくつかの実施形態において、該単離ポリヌクレオチド配列は、ヒト化mAbの軽鎖をコードする配列番号56に記載のDNA配列、又は上記配列と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体を含む。
【0044】
本発明はさらに、別の態様において、上記の単離ポリヌクレオチドを含むプラスミドを提供する。
【0045】
本発明はさらに、別の態様において、治療有効量の上記のモノクローナル抗体、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、1〜50mg/mlのCEACAM1に対するヒト化mAbを含む。いくつかの実施形態によれば、該該医薬組成物は、塩基性アミノ酸を含む。いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は糖を含む。いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は界面活性剤を含む。いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、塩基性アミノ酸、糖及び界面活性剤を含む。いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、(i)1〜10mg/mlの塩基性アミノ酸、(ii)10/100mg/mlの糖、(iii)0.01〜1mg/mlの界面活性剤、(iv)1〜50mg/mlのCEACAM1に対するヒト化mAb、4〜6mg/mlの塩基性アミノ酸、70〜100mg/mlの糖及び0.1〜1mg/mlの非アニオン性界面活性剤、又は(v)10mg/mlのCEACAM1に対するヒト化mAb、4.65mg/mlのL−ヒスチジン、82mg/mlのスクロース、及び0.20mg/mlのポリソルベート20を含む。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、該塩基性アミノ酸は、ヒスチジン、アルギニン、リジン及びオルニチンからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、該組成物は、1〜10、2〜9、3〜7又は4〜6mg/mlの塩基性アミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、該糖は、スクロース、トレハロース、グルコース、デキストロース及びマルトースからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、該組成物は、10〜200、10〜100、50〜150又は70〜100mg/mlの糖を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0049】
さらに他の実施形態によれば、該組成物は、マンニトール及びソルビトールを含むがこれらに限定されないポリオールを含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、該界面活性剤は非アニオン性である。いくつかの実施形態によれば、該界面活性剤は、ポリソルベート、ソルビタンエステル及びポロキサマーからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、該界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80からなる群から選択される。それぞれの可能性は本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、該組成物は、0.01〜10、0.01〜1、0.05〜5又は0.1〜1mg/mlの界面活性剤を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、4〜6mg/mlの塩基性アミノ酸、70〜100mg/mlの糖及び0.1〜1mg/mlの界面活性剤を含む。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は液体形態であり、マウス配列への少なくとも1つの復帰変異を含む、1〜50mg/mlのCEACAM1に対するヒト化mAbを含む。他の実施形態によれば、該医薬組成物が凍結乾燥される。いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、10mg/mlのCEACAM1に対するヒト化mAb、4.65mg/mlのL−ヒスチジン、82mg/mlのスクロース及び0.20mg/mlのポリソルベート20を含む。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、上記で定義された少なくとも1種類のヒト化mAbもしくは断片、及び追加の免疫調節物質又はキナーゼ阻害剤を含む。いくつかの実施形態によれば、上記で定義された少なくとも1種類のヒト化mAbもしくは断片を含む医薬組成物、及び追加の免疫調節物質又はキナーゼ阻害剤を含む医薬組成物は、別々の投与により癌の治療に使用される。
【0053】
いくつかの具体的な実施形態によれば、該追加の免疫調節物質は、抗ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD−1)、PD−L1及びPD−L2の抗体、活性化細胞傷害性リンパ球細胞、リンパ球活性化剤、並びにRAF/MEK経路阻害剤からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの具体的な実施形態によれば、該追加の免疫調節物質は、PD−1に対するmAb、PD−L1に対するmAb、PD−L2に対するmAb、インターロイキン2(IL−2)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞からなる群から選択される。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、別々の投与による癌の治療に使用するための、上記で定義された復帰変異を含有するヒト化mAb又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、並びにヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD−1)、PD−L1及びPD−L2のうちの少なくとも1つに対するmAb又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供する。
【0055】
他の実施形態によれば、上記で定義したCEACAMに対するヒト化mAb又はその抗原結合断片、及び活性化細胞傷害性リンパ球細胞を含む医薬組成物が提供される。特定の実施形態において、該活性化細胞傷害性リンパ球細胞は、LAK細胞、CIK細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。特定の実施形態において、該活性化細胞傷害性リンパ球細胞は、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞である。
【0056】
他の実施形態において、該医薬組成物は、CEACAM1に対するヒト化mAb又はその抗原結合断片、及びリンパ球活性化剤又はその断片、類似体もしくは融合タンパク質を含む。特定の実施形態において、該リンパ球活性化剤は、IL−2、IFNγ、抗CD3抗体及びその断片、類似体又は融合タンパク質からなる群から選択される。特定の実施形態において、該リンパ球活性化剤は、IL−2又はその断片、類似体もしくは融合タンパク質である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0057】
さらに他の実施形態において、該医薬組成物は、B−Rafキナーゼ変異体、MEK1キナーゼ及びMEK2キナーゼ、並びに上記で定義されたヒトCEACAM1に対するヒト化mAb又はその抗原結合断片からなる群から選択されるキナーゼの阻害剤を含む。
【0058】
いくつかの具体的な実施形態によれば、B−Rafキナーゼ阻害剤は、B−Rafキナーゼ変異体によるMEK1もしくはMEK2のリン酸化を減弱するか、又は阻止する。特定の実施形態において、B−Rafキナーゼ阻害剤は、B−Rafキナーゼ変異体の二量体化を減弱するか、又は阻止する。特定の実施形態において、MEK1キナーゼ阻害剤は、MEK1キナーゼによるMAPKのリン酸化を減弱するか、又は阻止する。特定の実施形態において、MEK2キナーゼ阻害剤は、MEK2キナーゼによるMAPKのリン酸化を減弱するか、又は阻止する。
【0059】
本発明はさらに、他の実施形態によれば、癌の治療に使用するためのB−Rafキナーゼ変異体、MEK1キナーゼ及びMEK2キナーゼからなる群から選択されるキナーゼの阻害剤、並びにヒトCEACAM1に対するヒト化mAb又はその抗原結合断片を提供する。2種類の活性成分は、1種類の医薬組成物、又は同時もしくは別々の投与によって投与することができる別々の医薬組成物の一部であり得る。
【0060】
本発明のCEACAM1に対するヒト化mAb及び追加の免疫調節物質は、1種類の医薬組成物、又は同時もしくは別々の投与用の別々の組成物中に含有され得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、該医薬組成物は、CEACAM1を含むがこれに限定されない、CEACAMタンパク質ファミリーメンバーの発現、活性化又は機能に関連する疾患又は障害の治療のためのものである。それぞれの可能性は本発明の別の実施形態を表す。
【0062】
いくつかの実施形態において、該医薬組成物は、CEACAM1の発現、活性化もしくは機能に関連する疾患又は障害の治療のためのものである。いくつかの実施形態において、この疾患又は障害は、細胞増殖性の疾患又は障害である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、この細胞増殖性の疾患又は障害は、癌である。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、癌は、黒色腫、結腸直腸癌、膀胱癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、非小細胞肺腺癌(NSCLA)、消化管癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、甲状腺癌、胃癌、卵巣癌、骨髄腫及び子宮癌からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0064】
本発明はさらに、別の態様において、上記のように、ヒトCEACAM1を特異的に認識する少なくとも1種類のヒト化mAb又はその断片を含む診断用組成物を提供する。
【0065】
本発明はさらに、別の態様において、CEACAM1タンパク質の発現、活性化もしくは機能に関連する疾患又は障害を防止するか、減弱するか、又は治療する方法であって、上記の治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態において、この疾患又は障害は癌である。いくつかの実施形態において、この疾患又は障害は、感染症、例えば、ウイルス感染症である。
【0067】
いくつかの実施形態において、該医薬組成物中に含有される単離抗体は、細胞傷害性部分に結合される。
【0068】
特定の実施形態において、上記の方法は、0.01mg/kg〜10mg/kg体重の範囲のCEACAM1に対するヒト化mAbの少なくとも1用量を対象に投与することを含む。特定の実施形態において、上記の方法は、(i)同一又は異なる複数用量のヒト化mAb、(ii)複数の漸増用量;又は(iii)該医薬組成物を、週に1回、2週に1回、3週に1回、4週に1回、又は5週に1回投与することを含む。特定の実施形態において、上記の方法は、1〜10回の投与サイクルを含み、各サイクルは、1〜4週ごとに2〜5回のヒト化mAbの注入を含み、各サイクルの間に2〜8週の間隔があく。
【0069】
特定の実施形態において、上記の方法はさらに、1つのリンパ球細胞又は複数のリンパ球細胞の投与を含む。いくつかの実施形態において、上記の方法はさらに、CEACAM1発現リンパ球を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、リンパ球は、T細胞、NK細胞又は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、リンパ球細胞はCEACAM1、PD−1、又はその両方を発現する。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。特定のこのような実施形態において、リンパ球細胞はCEACAM1及びPD−1を発現する。いくつかの実施形態において、リンパ球細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、サイトカイン誘発性キラー(CIK)細胞、T細胞、B細胞、NK細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。特定のこのような実施形態において、リンパ球細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞からなる群から選択される。特定のこのような実施形態において、リンパ球細胞は、1個の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞又は複数のTIL細胞である。特定のこのような実施形態において、リンパ球細胞は、1個のリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞又は複数のLAK細胞である。特定の実施形態において、リンパ球細胞は活性化される。いくつかの実施形態において、リンパ球細胞は、癌細胞に対して細胞傷害性である。いくつかの実施形態において、癌細胞は、CEACAM1、PD−L1、PD−L2、又はそれらの任意の組み合わせを発現する。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、癌細胞はCEACAM1、PD−L1、又はその両方を発現する。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、癌細胞は、CEACAM1、PD−L2、又はその両方を発現する。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。特定のこのような実施形態において、癌細胞は、CEACAM1及びPD−L1並びにPD−L2を発現する。
【0070】
特定の実施形態において、上記の方法はさらに、リンパ球活性化剤を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、リンパ球活性化剤は、IL−2、IFNγ、及び抗CD3抗体からなる群から選択される。特定の実施形態において、上記の方法はさらに、追加の抗癌組成物を対象に投与することを含む。
【0071】
本発明はさらに、別の態様において、免疫調節の方法であって、上記の抗体又はその断片とCEACAM1発現リンパ球とを接触させることを含む方法を提供する。
【0072】
本発明はさらに、別の態様において、CEACAM1発現腫瘍細胞の遊走を阻害する方法であって、上記の抗体又はその断片と上記CEACAM1発現腫瘍細胞とを接触させ、それによって上記CEACAM1発現腫瘍細胞の遊走を阻害することを含む方法を提供する。
【0073】
本発明はさらに、別の態様において、CEACAM1の同型又は異型タンパク質間相互作用を阻害する方法であって、上記の抗体又はその断片とCEACAM1発現リンパ球とを接触させ、それによってCEACAM1の同型又は異型タンパク質間相互作用を阻害することを含む方法を提供する。
【0074】
本発明はさらに、別の態様において、癌を有する対象の反応もしくは生存の期間又は進行を増加させる方法であって、上記のモノクローナル抗体を含む有効量の組成物、及び抗腫瘍組成物を該対象に投与することを含み、上記抗腫瘍組成物は少なくとも1種類の化学療法剤を含み、それによって該抗体及び該抗腫瘍組成物の同時投与が、生存の期間又は進行を効率的に増加させることを含む方法を提供する。
【0075】
本発明の方法は、追加の抗癌組成物と共に上記で定義した医薬組成物を投与することを含み得る。特定の実施形態によれば、該抗癌組成物は、少なくとも1つの化学療法剤を含む。他の特定の実施形態によれば、該抗癌組成物は免疫調節剤を含む。本発明の抗体と共に又は別々に投与することができる抗癌剤は、抗癌活性を示す、当該技術分野で公知の任意のかかる薬剤を含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、癌を治療する方法であって、CEACAM1を認識し、マウス配列への復帰変異を含むヒト化抗体を含む医薬組成物、及び追加の免疫調節物質又はキナーゼ阻害剤を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法が提供される。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、該免疫調節物質は、PD−1に対するmAb、PD−L1に対するmAb、PD−L2に対するmAb、インターロイキン2(IL−2)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞からなる群から選択され、該キナーゼ阻害剤は、B−Raf/MEK阻害剤である。
【0078】
いくつかの実施形態において、本方法は、2種類以上の医薬組成物の投与を含む。いくつかの実施形態において、該医薬組成物の2種類以上の投与は同時に行われる。本方法のいくつかの実施形態において、該医薬組成物の2種類以上の投与は順次行われる。本方法のいくつかの実施形態において、追加の免疫調節物質は、ヒトCEACAM1に対するヒト化mAb又はその抗原結合断片の前に投与される。本方法のいくつかの実施形態において、該免疫調節物質は、ヒトCEACAM1に対するmAb又はその抗原結合断片と同時に投与される。本方法のいくつかの実施形態において、該免疫調節物質は、ヒトCEACAM1に対するヒト化mAb又はその抗原結合断片の後に投与される。
【0079】
いくつかの実施形態において、本方法は、ヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、及びヒトPD−1に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を上記患者に投与することを含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0080】
さらに他の実施形態によれば、癌を有する患者を治療する上記の方法は、B−Rafキナーゼ変異体、MEK1キナーゼ及びMEK2キナーゼからなる群から選択されるキナーゼの阻害剤を含む医薬組成物、並びにヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を該患者に投与し、その癌細胞がB−Rafキナーゼ変異体を発現することによって、癌を治療する工程を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、癌を治療するための上記の方法は、さらに、リンパ球細胞を含む医薬組成物を上記患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、リンパ球細胞を含む医薬組成物の投与は、抗体を含む医薬組成物のうちの少なくとも1種類と同時に行われる。本方法のいくつかの実施形態において、2種類以上の医薬組成物の投与は、順次行われる。
【0082】
いくつかの実施形態において、リンパ球細胞は、ヒトCEACAM1に対するヒト化mAbと、その抗原結合断片と、又は追加の免疫調節物質と予めインキュベートされる。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0083】
本発明の医薬組成物は、鼻腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、関節内投与、病巣内投与、経口投与、又は局所投与などの任意の適切な手段によって投与され得る。いくつかの実施形態によれば、該医薬組成物は、非経口投与される。いくつかの具体的な実施形態によれば、静脈内(iv)投与が利用される。
【0084】
癌又は他のCEACAM1関連疾患又は障害を治療する本発明の方法は、いくつかの実施形態によれば、0.01mg/kg〜10mg/kg体重の範囲のCEACAM1に対するヒト化mAbの少なくとも1用量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、この少なくとも1用量は、0.01〜0.1mg/kg、0.1〜1mg/kg;1〜10mg/kg;及び10〜50mg/kgからなる群から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、本方法はヒト化mAbの複数用量の投与を含み、この複数用量は同一又は異なる。いくつかの実施形態によれば、本方法は、複数の漸増用量を投与することを含む。いくつかの実施形態によれば、本方法は、少なくとも12週間の投与の少なくとも1サイクルを含む。
【0087】
他の実施形態によれば、治療期間は12〜50週間である。いくつかの具体的な実施形態によれば、治療期間は、12〜20週、20〜30週及び30〜50週からなる群から選択される。さらに他の実施形態によれば、治療レジメンは、それぞれ少なくとも12週間にいくつかの投与サイクルを含む。
【0088】
いくつかの実施形態によれば、該治療レジメンは、1〜8サイクルを含み、各サイクルは、少なくとも4週間にヒト化抗CEACAMのmAbの4回の注入を含む。いくつかの実施形態によれば、該治療レジメンは、2〜6サイクルを含む。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、投与は、週に1回、2週に1回、3週に1回、4週に1回、又は5週に1回である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、治療レジメンは、1〜10サイクルを含み、各サイクルは、1〜4週ごとに2〜5回の本発明のヒト化mAbの注入を含み、各サイクルの間に2〜8週の間隔があく。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、0.01mg/kgから始めて、0.03mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、及び10mg/kgと続く投与を含む用量漸増レジメンが提供される。さらに他の実施形態によれば、該治療レジメンは、それぞれ2週間ごとに投与される4回の注入の6サイクルを含む。
【0092】
本発明はさらに、別の態様において、それを必要とする対象の癌を診断する方法であって、上記対象由来の、又は上記対象から得られた生体試料と上記の診断用組成物とを接触させることを含み、所定の閾値を超える複合体形成が上記対象の癌の指標となる方法を提供する。
【0093】
本発明はさらに、別の態様において、CEACAM1の発現を決定する方法であって、上記の抗体又はその断片と生体試料とを接触させ、免疫複合体形成のレベルを測定することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、本方法は、既知量のCEACAM1から得られた標準曲線と上記免疫複合体のレベルを比較することを含む。
【0094】
本発明はさらに、別の態様において、CEACAMタンパク質発現に関連する疾患又は障害を診断する方法であって、上記のようにモノクローナル抗体と生体試料をインキュベートする工程;検出可能なプローブを使用して結合したCEACAMタンパク質を検出する工程;既知量のCEACAMタンパク質を含有する参照試料から得られた標準曲線と結合CEACAMタンパク質の量を比較する工程;その標準曲線から生体試料中のCEACAMタンパク質の量を計算する工程;かつ通常のCEACAMタンパク質の量とCEACAMタンパク質の量を比較する工程を含む方法を提供する。
【0095】
いくつかの実施形態によれば、本発明のヒト化mAbは、治療前の腫瘍標本中のCEACAM1の発現レベルに基づいて、抗CEACAM1治療と関連する予測バイオマーカーとして使用される。CEACAM1レベルの発現は、本発明のヒト化mAbを利用する、当技術分野で公知の方法を用いて決定される。
【0096】
本発明はさらに、一態様において、細胞増殖もしくは血管新生に関連する疾患もしくは障害もしくは感染の診断、予防又は治療のための、上記のモノクローナル抗体の使用を提供する。
【0097】
本発明はさらに、一態様において、CEACAMタンパク質の発現又は活性に関連する障害又は疾患の治療用の医薬の製造のための、上記のモノクローナル抗体の使用を提供する。
【0098】
本発明はさらに、一態様において、細胞増殖もしくは血管新生に関連する疾患又は障害又は感染の診断用の診断用組成物の調製のための、上記のモノクローナル抗体の使用を提供する。
【0099】
本発明はさらに、一態様において、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21もしくは配列番号22に記載のフレームワークアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、又は配列番号25、配列番号26もしくは配列番号27に記載のフレームワークアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、部分的ヒト化モノクローナル抗体を提供する。
【0100】
本発明のさらなる実施形態及び適用性の完全な範囲は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の趣旨及び範囲内の種々の変更並びに改変が、発明を実施するための形態から当業者に明らかになるので、本発明の好ましい実施形態を示す発明を実施するための形態及び実施例は、単なる例示として与えられると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
図1A】タンパク質構造ホモロジーモデリングプログラムSwiss PDBによって生成された上面図(A)及び立体側面図(B)のキメラ抗CEACAM−1抗体(CM−10)V領域の構造モデルである。
図1B】タンパク質構造ホモロジーモデリングプログラムSwiss PDBによって生成された上面図(A)及び立体側面図(B)のキメラ抗CEACAM−1抗体(CM−10)V領域の構造モデルである。
図2】プロテインA精製抗体のクーマシーブルー染色SDS−PAGEゲルである。約2μgの各試料をNuPAGE 4〜12%Bis−Trisゲル(Invitrogen社のカタログ番号NP0322BOX)にロードし、40分間、200Vで泳動した。(A)IgG1のCDR移植変異体;(B)IgG4(S241P)CDR移植変異体。Fermentas社製Pageruler Plus(SM1811)を、分子量標準(10、25、及び70kDaの基準バンドを含有する)として使用した。試料を以下のように番号付けした:
【表1】
図3】組換えヒトCEACAM−1の競合結合ELISAアッセイの結果のグラフ図である。種々の濃度の精製ヒト化IgG抗体変異体は、一定の濃度のビオチン化抗CEACAM−1 IgG(キメラCM−10 IgG1)と競合した:(A)IgG1変異体;及び(B)IgG4(S241P)変異体。結合したビオチン化キメラCM−10をストレプトアビジンHRP及びTMB基質を用いて検出した。
図4】ヒト黒色腫細胞に対するヒトTIL細胞の細胞傷害性に対する抗CEACAM1及び抗PD−1抗体の相乗効果を表す。TIL細胞を、種々の濃度のヒトCEACAM1に対するヒト化mAb(黒い破線、球のマーカー)、ヒトPD−1に対するmAb(灰色の実線、長方形のマーカー)又は両方の抗体の組み合わせ(黒の実線、三角形のマーカー)とインキュベートした。IFN−γで処理した黒色腫細胞を、一晩のインキュベーションの間添加した。結果は、処理あたり3連のウェルから古典的LDH放出アッセイによって決定した時の%細胞傷害性の平均±標準誤差を表す。* P<0.05、ヒトCEACAM1単独に対するモノクローナル抗体と比較した対応のあるT検定。
図5A】抗CEACAM1抗体の添加前に抗PD−1抗体を添加した時の、グランザイムBレベルに対する抗CEACAM1及び抗PD−1抗体の相乗効果並びにヒト黒色腫細胞に対するヒトTIL細胞の細胞傷害性。ヒト黒色腫細胞を、PD−L1発現を誘導するIFN−αの存在下で増殖させた。ヒトTIL細胞を、培地のみ(黒)、非特異的IgG抗体(白)、種々の濃度のヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体(垂直線)、ヒトPD−1に対するモノクローナル抗体(水平ライン)又は両方の抗体の組み合わせ(ドット)とともにインキュベートした。(A)結果は、処理あたり3連のウェルから古典的LDH放出アッセイによって決定した時の%細胞傷害性の平均±標準誤差を表す。* P≦0.05、a−PD−1単独と比較した対応のあるT検定。(B)結果は、処理あたり3連のウェルから市販のグランザイムB ELISAキットによって決定した時のグランザイムBレベル±標準誤差を表す。
図5B】抗CEACAM1抗体の添加前に抗PD−1抗体を添加した時の、グランザイムBレベルに対する抗CEACAM1及び抗PD−1抗体の相乗効果並びにヒト黒色腫細胞に対するヒトTIL細胞の細胞傷害性。ヒト黒色腫細胞を、PD−L1発現を誘導するIFN−αの存在下で増殖させた。ヒトTIL細胞を、培地のみ(黒)、非特異的IgG抗体(白)、種々の濃度のヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体(垂直線)、ヒトPD−1に対するモノクローナル抗体(水平ライン)又は両方の抗体の組み合わせ(ドット)とともにインキュベートした。(A)結果は、処理あたり3連のウェルから古典的LDH放出アッセイによって決定した時の%細胞傷害性の平均±標準誤差を表す。* P≦0.05、a−PD−1単独と比較した対応のあるT検定。(B)結果は、処理あたり3連のウェルから市販のグランザイムB ELISAキットによって決定した時のグランザイムBレベル±標準誤差を表す。
図6】抗CEACAM1抗体の添加前に抗PD−1抗体を添加した時の、ヒト黒色腫細胞に対するヒトLAK細胞の細胞傷害性に対する抗CEACAM1及び抗PD−1抗体の相乗効果。ヒト黒色腫細胞を、PD−L1発現を誘導するIFN−αの存在下で増殖させた。健康なヒトドナーからのPBMCのIL−2での活性化によって作製されたヒトLAK細胞を、培地のみ(白)、非特異的IgG抗体(黒)、種々の濃度のヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体(垂直線)、ヒトPD−L1に対するモノクローナル抗体(水平線)、又は両方の抗体の組み合わせ(ドット)とインキュベートした。結果は、処理あたり3連のウェルから古典的LDH放出アッセイによって決定した時の%細胞傷害性の平均±標準誤差を表す。* P≦0.05、a−PD−L1単独と比較した対応のあるT検定。上記のように組み合わせ指数を計算した。
図7】抗CEACAM1抗体での処理は、標的癌細胞上でのPD−L1発現を増加させる。NK細胞(NK92MI)を、CM−24(10μg/ml)を含む場合と、含まない場合でインキュベートし、その後、ヒト黒色腫細胞(SKMEL28)添加した。これらの細胞を24時間、48時間及び72時間インキュベートし、PD−L1レベルを、FACS分析により各時点で測定した。異なる時点で示した処理に適切なアイソタイプ対照と比較した抗PD−L1の平均の比率。
図8】免疫コンピテントマウス(immuno−competent mice)の腫瘍進行に対する抗CEACAM1及び抗PD−1抗体の相乗効果。マウスリンパ腫細胞を、BALB/Cマウス(1日目)の腹部に皮下移植した。10日、15日及び20日目に、マウスに、PBS(黒い破線、白丸)、抗マウスCEACAM1抗体(灰色の実線、灰色の長方形)、抗マウスPD−1抗体(灰色の実線、灰色の三角)又は両方の抗体の組み合わせ(黒の実線、黒球)のいずれかを静脈内投与した。
図9】抗CEACAM1抗体は、ヒト黒色腫細胞に対するヒトLAK細胞の細胞傷害性を増加させる。ヒトLAK細胞を37℃で30分間、異なる濃度のCM−24とインキュベートした。ヒト黒色腫癌細胞(SKMEL28)を、24時間のインキュベーションの間添加した。結果は、処理あたり3連のウェルから古典的LDH放出アッセイによって決定した時の%細胞傷害性の平均±標準誤差を表す。* P≦0.05、培地のみを有するエフェクター+標的細胞と比較した対応のあるT検定。
図10】抗CEACAM1抗体は、ヒト膵臓癌細胞T3M4に対するヒトLAK細胞の細胞傷害性を増加させる。ヒトLAK細胞を37℃で30分間、異なる濃度のCM−24とインキュベートした。ヒト膵臓癌細胞T3M4を、24時間のインキュベーションの間添加した。結果は、処理あたり3連のウェルから古典的LDH放出アッセイによって決定した時の%細胞傷害性の平均±標準誤差を表す。* P<0.05、培地のみを有するエフェクター+標的細胞と比較した対応のあるT検定。
図11A】抗CEACAM1抗体は、ヒト癌細胞の存在下で、ヒトLAK細胞のIFN−γ分泌を増強する。ヒトLAK細胞を37℃で30分間、異なる濃度のCM−24とインキュベートした。ヒト肺癌細胞H358(11A)又はH460(11B)を、24時間のインキュベーションの間添加した。IFN−γ分泌をELISAによって測定した。結果は、処理あたり3回の反復のグランザイムBの放出値の平均+標準誤差を表す。* P<0.05、培地のみを有するエフェクター+標的細胞と比較した対応のあるT検定。
図11B】抗CEACAM1抗体は、ヒト癌細胞の存在下で、ヒトLAK細胞のIFN−γ分泌を増強する。ヒトLAK細胞を37℃で30分間、異なる濃度のCM−24とインキュベートした。ヒト肺癌細胞H358(11A)又はH460(11B)を、24時間のインキュベーションの間添加した。IFN−γ分泌をELISAによって測定した。結果は、処理あたり3回の反復のグランザイムBの放出値の平均+標準誤差を表す。* P<0.05、培地のみを有するエフェクター+標的細胞と比較した対応のあるT検定。
図12A】癌細胞におけるCEACAM1の種類のCEACAM1−ロング(A)とCEACAM1−ショート(B)の発現間の相関関係、及びB−Raf変異体の阻害剤に対する耐性を示す。
図12B】癌細胞におけるCEACAM1の種類のCEACAM1−ロング(A)とCEACAM1−ショート(B)の発現間の相関関係、及びB−Raf変異体の阻害剤に対する耐性を示す。
図13A図13Aは、黒色腫細胞を移植し、図中に示した治療グループに応じて処置したマウスから摘出した肺のピクトグラムを示し;図13Bは、各治療グループの平均腫瘍重量を示し;図13Cは、各治療グループのマウスあたりの病変数を示す。
図13B図13Aは、黒色腫細胞を移植し、図中に示した治療グループに応じて処置したマウスから摘出した肺のピクトグラムを示し;図13Bは、各治療グループの平均腫瘍重量を示し;図13Cは、各治療グループのマウスあたりの病変数を示す。
図13C図13Aは、黒色腫細胞を移植し、図中に示した治療グループに応じて処置したマウスから摘出した肺のピクトグラムを示し;図13Bは、各治療グループの平均腫瘍重量を示し;図13Cは、各治療グループのマウスあたりの病変数を示す。
図14】肺病変モデルから単離したTIL細胞中のCEACAM1受容体占有率のパーセンテージを示す棒ヒストグラムである。
図15A図15A及び図15Bは、現在臨床試験中のCM−24と命名された、復帰変異ヒト化抗CEACAM1 mAbの軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を表す。図15Aは、軽鎖配列(配列番号52)を含有し、アミノ酸残基1〜107はCDRを含む可変領域であり、アミノ酸残基108〜214(太字)はκ軽鎖定常領域である。図15Bは、重鎖配列(配列番号53)を表し、アミノ酸残基1〜120は可変領域であり、アミノ酸残基121〜447(太字)はIgG4重鎖定常領域であり、予測されるN−グリコシル化部位(アスパラギン297)に下線が引かれている。図15Cは、重鎖配列(配列番号59)を表し、アミノ酸残基1〜121は可変領域であり、アミノ酸残基122〜450(太字)はIgG1重鎖定常領域であり、予測されるN−グリコシル化部位(アスパラギン300)に下線が引かれている。
図15B図15A及び図15Bは、現在臨床試験中のCM−24と命名された、復帰変異ヒト化抗CEACAM1 mAbの軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を表す。図15Aは、軽鎖配列(配列番号52)を含有し、アミノ酸残基1〜107はCDRを含む可変領域であり、アミノ酸残基108〜214(太字)はκ軽鎖定常領域である。図15Bは、重鎖配列(配列番号53)を表し、アミノ酸残基1〜120は可変領域であり、アミノ酸残基121〜447(太字)はIgG4重鎖定常領域であり、予測されるN−グリコシル化部位(アスパラギン297)に下線が引かれている。図15Cは、重鎖配列(配列番号59)を表し、アミノ酸残基1〜121は可変領域であり、アミノ酸残基122〜450(太字)はIgG1重鎖定常領域であり、予測されるN−グリコシル化部位(アスパラギン300)に下線が引かれている。
図15C図15A及び図15Bは、現在臨床試験中のCM−24と命名された、復帰変異ヒト化抗CEACAM1 mAbの軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を表す。図15Aは、軽鎖配列(配列番号52)を含有し、アミノ酸残基1〜107はCDRを含む可変領域であり、アミノ酸残基108〜214(太字)はκ軽鎖定常領域である。図15Bは、重鎖配列(配列番号53)を表し、アミノ酸残基1〜120は可変領域であり、アミノ酸残基121〜447(太字)はIgG4重鎖定常領域であり、予測されるN−グリコシル化部位(アスパラギン297)に下線が引かれている。図15Cは、重鎖配列(配列番号59)を表し、アミノ酸残基1〜121は可変領域であり、アミノ酸残基122〜450(太字)はIgG1重鎖定常領域であり、予測されるN−グリコシル化部位(アスパラギン300)に下線が引かれている。
【発明を実施するための形態】
【0102】
本発明は、CEACAM1を認識する非完全ヒト化モノクローナル抗体を開示する。有利なことに、本発明の抗体は、ほとんど完全にヒト化されているので、該抗体に対する有害な免疫反応のリスクを回避し、したがって、ヒトでのインビボ使用に安全である。本発明の抗体は、特有のCDR配列並びに新規な非完全ヒト化フレームワーク配列及び設計を有することを特徴とする。本発明のモノクローナル抗体の特有の性質は、さらなる種類の悪性腫瘍及び種々の感染症の治療並びに診断に関するそれらの治療的有用性を広げる。より具体的には、本発明により提供されるモノクローナル抗体は、CDRと非完全ヒト化フレームワーク配列の特定の組み合わせを有し、既知の非ヒト抗CEACAM1抗体を上回る特有の性質並びに改善された安全性及び効力を有する。
【0103】
他の非ヒト抗体が、その非ヒト抗体自体に対する免疫原性反応を誘発する恐れから投与できない場合に、本発明によって提供される抗体の特有の性質は、特に、長期投与又は反復投与を必要とする用途において、ヒトにおけるこれらの抗体の使用にいくつかの利点を付与する。治療される人が、患者の健康のさらなる悪化が回避されるべき疾患に罹患している患者である場合に、かかる免疫反応を回避することがより重要になる。本発明はその上さらに、別の態様において、(i)それぞれ配列番号1、配列番号2及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を含み、かつ配列番号9に記載のアミノ酸配列と2〜9個のアミノ酸が異なる非CDR(フレームワーク)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域;並びに/又は(ii)それぞれ配列番号4、配列番号5及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を含み、かつ配列番号13に記載のアミノ酸配列と2〜4個のアミノ酸が異なる非CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む非完全ヒト化モノクローナル抗体;並びにヒトCEACAM1を特異的に認識するその類似体、誘導体及び抗原結合断片を提供する。
【0104】
明瞭にするために、本発明によって提供される抗体の可変領域は、(a)本発明の発明者らにより以前に説明されたCDR配列、及び(b)本明細書で非CDR配列とも命名されたフレームワーク配列を含み、そのうちの少なくとも1つは、対応する完全ヒトフレームワーク配列と少なくとも1つの残基が異なることが強調されるべきである。
【0105】
特定の実施形態において、本明細書で使用する「別の配列と異なる配列」という語句は、それぞれの配列と比較して少なくとも1個のアミノ酸の置換、少なくとも1個のアミノ酸の挿入、少なくとも1個のアミノ酸の欠失、又はそれらの任意の組み合わせを含有する配列を意味する。特定の実施形態において、本明細書で使用する「別の配列と異なる配列」という語句は、それぞれ配列と比較して少なくとも1個のアミノ酸の置換を含有する配列を意味する。本明細書で使用する「非CDR配列」という用語は、本発明によって同定されたCDR配列ではないフレームワーク配列、すなわち、抗体の可変領域に含まれる任意のアミノ酸配列を指す。非CDR配列の例として、CDR1に先行するか又は隣接する配列、CDR1とCDR2の間の配列、CDR2とCDR3の間の配列、及びCDR3に続くか又は隣接する配列が挙げられる。
【0106】
本発明によって提供される抗体の可変領域は、完全ヒト抗体の可変領域と少なくとも1個のアミノ酸が異なるので、それらは、「非完全ヒト化」及び「非完全ヒト」抗体とも標識される。
【0107】
「CEACAM1」という用語は、CEACAM1遺伝子のタンパク質産物、例えば、NP_001020083.1、NP_001703.2を指すために使用される。ヒトでは、11種の異なるCEACAM1スプライス変異体がこれまでに検出されている。個々のCEACAM1アイソフォームは、細胞外免疫グロブリン様ドメインの数(例えば、4つの細胞外免疫グロブリン様ドメインを有するCEACAM1はCEACAM1−4として知られる)、膜足場及び/又はそれらの細胞質テールの長さ(例えば、長い細胞質テールを有するCEACAM1−4はCEACAM1−4Lとして知られ、短い細胞質テールを有するCEACAM1−4はCEACAM1−4Sとして知られる)に関して異なる。CEACAM1のN末端ドメインは、シグナルペプチドの直後から始まり、その構造はIgV型とみなされる。例えば、CEACAM1注釈P13688において、N末端のIgV型ドメインは、アミノ酸35〜142番目の108個のアミノ酸で構成されている。このドメインは、同種親和性結合活性に関与するものとして同定された(Watt et al.,2001,Blood.98,1469−79)。これらのスプライスバリアントを含む全ての変異体は、「CEACAM1」という用語の中に含まれる。
【0108】
「抗CEACAM1抗体」、「CEACAM1を認識する抗体」、「CEACAM1に対する抗体(antibody against CEACAM1)」及び「CEACAM1に対する抗体(antibody to CEACAM1)」という用語は交換可能であり、十分な親和性及び特異性でCEACAM1タンパク質に結合する抗体を指すために本明細書で使用される。
【0109】
本明細書で使用する「抗原」という用語は、抗体形成を誘発し、抗体が結合することができる分子又は分子の部分を指す。抗原は、1つ又は2つ以上のエピトープを有し得る。上記で言及した特異的反応は、抗原が、その対応する抗体と高度に選択的な様式で反応し、他の抗原によって誘発され得る他の多数の抗体とは反応しないことを示すことを意味する。本発明の抗原は、CEACAM1タンパク質又はその断片である。
【0110】
本明細書で使用する「抗原決定基」又は「エピトープ」という用語は、特定の抗体と特異的に反応する抗原分子の領域を指す。エピトープ由来のペプチド配列は、動物を免疫し、追加のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を産生するために、当技術分野で公知の方法を適用して、単独で、又は担体部分と組み合わせて使用することができる。エピトープ由来の単離ペプチドは、抗体を検出するための診断方法において使用し、かつ上記抗体の阻害が必要とされる場合に治療剤として使用することができる。
【0111】
抗体又は免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって共に連結された2つの重鎖及び2つの軽鎖を含み、各軽鎖は、「Y」字形状でジスルフィド結合によってそれぞれの重鎖に連結されている。抗体のタンパク質分解による消化により、FV(Fragment variable(可変断片))及びFC(Fragment crystalline(結晶性断片))ドメインが生成される。抗原結合ドメインのFabは、ポリペプチド配列が変化する領域を含む。F(ab’)という用語は、ジスルフィド結合によって共に連結された2つのFab’アームを表す。抗体の中心軸は、Fc断片と呼ばれる。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、その後にいくつかの定常ドメイン(C)が続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)及びその他端に定常ドメイン(C)を有し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと一列に並んでおり、軽鎖定常ドメインは第1の重鎖の定常ドメイン(CH1)と一列に並んでいる。軽鎖及び重鎖の各対の可変ドメインは、抗原結合部位を形成する。軽鎖及び重鎖上のドメインは同じ一般構造を有し、各ドメインは、配列が比較的保存されており、相補性決定領域(CDR 1〜3)として知られる3つの超可変ドメインによって結合されている4つのフレームワーク領域を含む。これらのドメインは、抗原結合部位の特異性及び親和性に寄与する。重鎖のアイソタイプ(ガンマ、アルファ、デルタ、イプシロン又はミュー)は、免疫グロブリンクラス(それぞれ、IgG、IgA、IgD、IgE又はIgM)を決定する。軽鎖は、全ての抗体クラスで見られる2つのアイソタイプ(カッパ、κ又はラムダ、λ)のいずれかである。
【0112】
「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(完全長又はインタクトなモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を示すのに十分な長さの抗体断片を含む。
【0113】
本発明の抗体は、少なくとも抗体の抗原結合部分を含む分子である。本発明の1つの抗体又は複数の抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体(mAb)などのインタクトな抗体、及びFab又はF(ab’)断片などのそのタンパク質分解断片を含む。一本鎖抗体もまた、本発明の範囲内に入る。
【0114】
「抗体断片」は、一般に、インタクトな抗体の抗原結合部位を含み、したがって、抗原に結合する能力を保持するインタクトな抗体の一部のみを含む。本発明の定義によって包含される抗体断片の例としては、(i)VL、CL、VH及びCH1ドメインを有するFab断片;(ii)CH1ドメインのC末端に1以上のシステイン残基を有するFab断片であるFab’断片;(iii)VH及びCH1ドメインを有するFd断片;(iv)CH1ドメインのC末端にVHドメイン及びCH1ドメイン並びに1以上のシステイン残基を有するFd’断片;(v)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインを有するFv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,Nature 1989,341,544−546);(vii)単離されたCDR領域;(viii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab’断片を含む二価断片であるF(ab’)断片;(ix)一本鎖抗体分子(例えば、一本鎖Fv;scFv)(Bird et al.,Science 1988,242,423−426;及びHuston et al.,PNAS(USA)1988,85,5879−5883);(x)同じポリペプチド鎖内に軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原結合部位を有する「ダイアボディ」(例えば、EP 404,097;WO 93/11161;及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1993,90,6444−6448を参照されたい);(xi)相補性軽鎖ポリペプチドと共に、1対の抗原結合領域を形成する、1対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む「直鎖状抗体」(Zapata et al.Protein Eng.,1995,8,1057−1062;及び米国特許第5,641,870号)が挙げられる。
【0115】
一本鎖抗体は、抗原結合能力を有し、かつ免疫グロブリン軽鎖及び重鎖の可変領域に相同な又は類似のアミノ酸配列を含む一本鎖複合ポリペプチド、すなわち、連結されたV−V又は一本鎖FSC)であり得る。
【0116】
本明細書で使用する「中和抗体」という用語は、仕様に従ってインビボ又はインビトロアッセイによって決定されるように、活性又は受容体を介したシグナル伝達を低減するか又は阻害(ブロッキング)することができる特異的受容体又はリガンド標的への抗原結合部位を有する分子を指す。
【0117】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る天然変異の可能性を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原に対して作製されている。さらに、典型的に異なる決定基(エピトープ)に対して作製された異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して作製されている。「モノクローナル」という修飾語は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。モノクローナルAbは、当業者に公知の方法によって得ることができる。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler et al.,Nature 1975,256,495によって記載されたハイブリドーマ法によって作製するか、又は、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作製してよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,Nature 1991,352,624−628又はMarks et al.,J.Mol.Biol.,1991,222:581−597に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0118】
本発明のmAbは、IgG、IgM、IgE、又はIgAを含む任意の免疫グロブリンクラスのものであり得る。mAbを産生するハイブリドーマは、インビトロ又はインビボで培養され得る。高力価のmAbはインビボ産生によって得ることができ、個々のハイブリドーマからの細胞をプリスティン刺激した(pristine−primed)Balb/cマウスに腹腔内注射すると、高濃度の所望のmAbを含有する腹水液を産生する。アイソタイプIgM又はIgGのモノクローナルAbは、当業者に周知のカラムクロマトグラフィー法を用いて、かかる腹水液から、又は培養上清から精製することができる。
【0119】
本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有し、かつ/又は本明細書に開示されるヒト抗体を作製する技術のいずれかを使用して作製された抗体を指す。このヒト抗体の定義は、特に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、当技術分野で公知の種々の技術を用いて産生することができる。
【0120】
本明細書で使用する「抗体の抗原結合部分を有する分子」及び「抗原結合断片」という用語は、任意の動物細胞株又は微生物によって生成された任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリン分子だけでなく、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、その重鎖及び/又は軽鎖の可変部分、Fabミニ抗体(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、WO 93/15210、米国特許出願08/256,790、WO 96/13583、米国特許出願08/817,788、WO 96/37621、米国特許出願08/999,554を参照されたい)、二量体の二重特異性ミニ抗体(Mullerら、1998を参照されたい)を含むが、これらに限定されないその抗原結合反応性部分並びにかかる反応性部分を組み入れた一本鎖抗体、及びかかる抗体反応性部分が物理的に挿入された任意の他の種類の分子も含むことが意図される。かかる分子は、酵素的切断、ペプチド合成又は組換え技術を含むがこれらに限定されない、任意の公知の技術によって提供されてよい。
【0121】
本発明は、本発明の抗体分子の保存的アミノ酸変異体も提供する。コードタンパク質の全体的な分子構造を保存する、本発明の変異体も作製され得る。開示されたタンパク質産物を含む個々のアミノ酸の性質を考慮すると、いくつかの合理的な置換が当業者によって認識されるであろう。アミノ酸置換、すなわち、「保存的置換」は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質における類似性に基づいて行われ得る。本明細書で使用する「抗体類似体」という用語は、1以上の保存的アミノ酸置換による別の抗体由来の抗体を指す。
【0122】
本明細書で使用する「抗体変異体」という用語は、本発明の抗体を含む任意の分子を指す。例えば、抗体又はその抗原結合断片が別の化学実体に連結された融合タンパク質は、抗体変異体とみなされる。
【0123】
本明細書で使用する「非完全ヒト化モノクローナル抗体」という用語は、CDRに隣接するか、かつ/又はCDRのすぐ隣のアミノ酸配列が完全なヒトではない、すなわち、天然ヒト抗体から取った任意の既知の相同配列もしくは対応する配列と同一ではない重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインを有するモノクローナル抗体を指す。
【0124】
医薬品及び医薬製剤において、活性剤は、好ましくは、1以上の薬学的に許容される担体(複数可)及び必要に応じて、任意の他の治療成分と共に利用される。担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに対して過度に有害でないという意味で、薬学的に許容されなければならない。活性剤は、上記のように、所望の薬理学的効果を達成するのに有効な量で、かつ所望の日用量を達成するのに適切な量で提供される。
【0125】
典型的には、抗体の抗原結合部分を含むか、又はペプチド模倣物を含む別のポリペプチドを含む本発明の分子は、治療用途のために滅菌生理食塩水に懸濁される。該医薬組成物は、代替的に、活性成分(抗体の抗原結合部分を含む分子)の放出を制御するように、又は患者のシステムにおけるその存在を延長するように製剤化され得る。多数の適切な薬物送達システムが知られており、例えば、移植可能な薬物放出システム、ヒドロゲル、ヒドロキシメチルセルロース、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロエマルジョン、及び微小球などを含む。放出制御製剤は、複合体へのポリマーの使用を通じて調製されるか、又は本発明の分子を吸着することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)のマトリックス及びステアリン酸二量体とセバシン酸のポリ無水物コポリマーのマトリックスが挙げられる。本発明の分子、すなわち、抗体又は抗体断片のかかるマトリックスからの放出速度は、分子の分子量、そのマトリックス内の分子の量、及び分散粒子のサイズに依存する。
【0126】
本発明の医薬組成物は、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、関節内投与、病巣内投与、非経口投与などの任意の適切な手段によって投与され得る。通常は、静脈内(i.v.)投与が使用される。
【0127】
本発明の分子の治療有効量は、とりわけ、投与スケジュール、投与される分子の単位用量、その分子が他の治療剤と組み合わせて投与されるか否か、患者の免疫状態及び健康状態、投与される分子の治療活性及び治療する医師の判断に依存することは当業者には明らかである。本明細書で使用する「治療有効量」は、ある期間にわたって治療される障害に関連する1以上の症状を軽減するのに必要な分子の量を指す。
【0128】
「治療有効量」という用語は、哺乳動物における疾患又は障害を治療するのに有効な薬物の量を指す。癌の場合、治療有効量の薬物は、癌細胞の数を減少させる;腫瘍サイズを減少させる;末梢器官への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度まで減速させ、好ましくは停止させる);腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度まで減速させ、好ましくは停止させる);腫瘍増殖をある程度まで阻害する;かつ/又は障害に関連する症状の1以上をある程度まで軽減することができる。薬物が増殖を防止するか、かつ/又は既存の癌細胞を殺すことができる程度まで、その薬物は細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性であり得る。癌療法については、インビボでの有効性は、例えば、生存期間、疾患進行までの時間(TTP)、反応速度(RR)、奏効期間、及び/又は生活の質を評価することによって測定することができる。
【0129】
「糖」という用語は、単糖類、二糖類、及び多糖類を指す。糖の例としては、スクロース、トレハロース、及びデキストロースなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
活性成分としての本発明の分子は、周知のとおり、薬学的に許容され、活性成分と適合性のある賦形剤に溶解されるか、分散されるか又は混合される。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、デキストロース、グリセロール、又はエタノールなど及びそれらの組み合わせである。他の適切な担体は、当業者によく知られている。加えて、所望の場合、該組成物は、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤などの少量の補助物質を含有することができる。
【0131】
本発明の医薬組成物は、抗腫瘍組成物と共に投与されてよい。具体的な実施形態によれば、抗腫瘍組成物は、少なくとも1種類の化学療法剤を含む。本発明の抗体と共に投与するか、又は別々に投与することができる化学療法剤は、以下のものを含むが、これらに限定されない抗癌活性を示す、当技術分野で公知の任意のかかる薬剤を含んでよい:ミトキサントロン、トポイソメラーゼ阻害剤、紡錘体毒ビンカ:ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン(タキソール)、パクリタキセル、ドセタキセル;アルキル化剤:メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド;メトトレキサート;6−メルカプトプリン;5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン;ポドフィロトキシン:エトポシド、イリノテカン、トポテカン、ダカルバジン;抗生物質:ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ブレオマイシン、マイトマイシン;ニトロソウレア:カルムスチン(BCNU)、ロムスチン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン;無機イオン:シスプラチン、カルボプラチン;インターフェロン、アスパラギナーゼ;ホルモン類:タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、及び酢酸メゲストロール。
【0132】
特定の実施形態によれば、該化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体及び関連阻害薬、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、L−スパラギナーゼ、トポイソメラーゼ阻害剤、インターフェロン、白金配位錯体、アントラセンジオン置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アドレノコルチコステロイド類、プロゲスチン類、エストロゲン類、抗エストロゲン、アンドロゲン類、抗アンドロゲン、及びゴナドトロピン放出ホルモン類似体からなる群から選択される。別の実施形態によれば、該化学療法剤は、5−フルオロウラシル(5−FU)、ロイコボリン(LV)、イリノテカン、オキサリプラチン、カペシタビン、パクリタキセル及びドキセタキセルからなる群から選択される。2以上の化学療法剤は、抗CEACAM1抗体の投与と組み合わせて投与するためのカクテルで使用することができる。
【0133】
本明細書で使用する「治療」という用語は、治療的処置及び防止的又は予防的手段の両方を指す。治療を必要とするものには、すでに障害を有するもの及び障害が予防されるべきものが含まれる。
【0134】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には無秩序な細胞増殖によって特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態を指すか、又は説明する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。かかる癌のより特定の例としては、黒色腫、肺癌、甲状腺癌、乳癌、結腸癌、前立腺癌、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、子宮頸癌、膵臓癌、白血病、リンパ腫、骨髄癌、卵巣癌、子宮癌、肉腫、胆管癌、又は子宮内膜癌が挙げられる。
【0135】
「抗腫瘍組成物」という用語は、腫瘍の増殖もしくは機能を阻害するかもしくは防止し、かつ/又は腫瘍細胞の破壊を引き起こすことができる少なくとも1種類の活性治療剤を含む、癌の治療に有用な組成物を指す。抗腫瘍組成物中の癌を治療するのに適する治療剤には、化学療法剤、放射性同位体、毒素、インターフェロンなどのサイトカイン類、及び腫瘍細胞に関連するサイトカイン類、サイトカイン受容体又は抗原を標的にする拮抗薬が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、該治療剤は、化学療法剤である。
【0136】
本明細書で使用する「診断する」という用語は、病状の有無を決定すること、病状又は症状を分類すること、病状の重症度を決定すること、病状の進行を監視すること、病状の結果及び/又は回復の見通しを予測することを指す。
【0137】
本明細書で使用する「アミノ酸残基の変異」という用語は、単一アミノ酸残基の置換、挿入、又は欠失を指す。本明細書で使用する「アミノ酸残基の復帰変異」という用語は、マウス抗体のフレームワークに見られる対応するアミノ酸残基へのヒト抗体フレームワークに見られる単一アミノ酸残基の置換を指す。
【0138】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をより完全に例示するために提示される。しかし、それらは、決して、本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0139】
実施例
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0140】
復帰変異が導入される参照完全ヒト化重鎖配列(配列番号57)は、以下のもので構成されている:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAS(配列番号7)−GYAFTNNLIE(配列番号1)−WVRQAPGQGLEWMG(配列番号8)−VINPGSGDTNYNEKFKG(配列番号2)−RVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCAR(配列番号9)−GDYYGGFAVDY(配列番号3)−WGQGTTVTVSS(配列番号10)。
【0141】
復帰変異が導入される参照完全ヒト化軽鎖配列(配列番号58)は、以下のもので構成されている:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号11)−RTSQDIGNYLN(配列番号4)−WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号12)−YTSRLHS(配列番号5)−GVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYC(配列番号13)−QQGKSLPRT(配列番号6)−FGGGTKVEIK(配列番号14)。
【0142】
実施例1.CDR移植抗体可変領域配列の設計
抗体の結合特性に重要であり得るV領域フレームワーク中のアミノ酸を同定するために、キメラ抗CEACAM−1抗体V領域の構造モデルを、Swiss PDBを用いて作製し、分析した(図1)。これらのアミノ酸は、1以上の変異体CDR移植抗体に組み込むために認められた。CM−10のV及びVκ配列の両方は、典型的なフレームワーク残基を含有し、CDR1、2及び3のモチーフは多くのマウス抗体と同等である。これらのCDRはマウス配列から直接取得した。次いで、Swiss PDBモデルを、CDRの提示に潜在的に影響を与える可能性があるフレームワーク領域及び個々の残基を強調するために、重要な位置でのマウス/ヒト相同性と共に分析した。
【0143】
変異体の設計
V領域フレームワークとして使用するための最高の相同性を有する重鎖及び軽鎖ヒト配列を同定するために、重鎖及び軽鎖V領域アミノ酸配列をヒト生殖細胞系V領域配列のデータベースと比較した。次いで、フレームワーク上にCDRを移植することによって、必要に応じて、キメラ抗体結合効率の回復に潜在的に重要であると上記で同定された残基のマウス配列への復帰変異によって、一連の重鎖及び軽鎖V領域を設計した。少数のマウス残基が各変異体に保持される必要があると考えられた。次いで、Antitope社製のインシリコ技術であるiTope(商標)及びTCED(商標)(T細胞エピトープデータベース)(Perryら2008、Brysonら2010)の適用によって決定されるように、潜在的なT細胞エピトープの発生率が最も低い変異体配列を選択した。復帰変異の数を、出発マウス配列によって決定した。構造解析から、構造的に重要であり得る残基として、V中に最大13か所を同定し、Vκ中に5か所を同定した。これらに優先順位をつけ、これらの数を変えて組み込む変異体を設計した。復帰変異の数に理論上の制限はないが、組み込まれる復帰変異が多いほど、ヒト配列は少なくなり得る。配列番号28〜35に記載の配列を用いて、5つのV鎖及び3つのVκ鎖を設計した。
【0144】
iTope(商標)及びTCED(商標)
iTope(商標)ソフトウェアは、34個のヒトMHCクラスIIアレルの結合溝内に、ペプチドのアミノ酸側鎖と特異的結合ポケット(特に、ポケット位置;p1、p4、p6、p7及びp9)の間の良好な相互作用を予測する。重要な結合残基の位置は、試験タンパク質配列にまたがる1個のアミノ酸によって重複する9マーのペプチドのインシリコ生成によって達成される。物理的MHCクラスII結合実験とのインハウス比較により、iTope(商標)を用いて、MHCクラスII分子に結合するペプチドと結合しないペプチドの十分な区別を高精度に行うことができることが示された。しかし、これらの結果は、MHCクラスII結合の全ての予測方法が、タンパク質/ペプチドのプロセシング、T細胞受容体による認識又はペプチドに対するT細胞寛容などの、抗原提示中の他の重要なプロセスを可能にしないので、T細胞エピトープの数を本質的に過剰予測(over−predict)するという事実に照らして評価されるべきである。
【0145】
TCED(商標)は、EpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングアッセイにおいて以前にスクリーニングされた全てのペプチド配列を含有する。TCED(商標)は、T細胞反応を刺激しないことが以前に示されたセグメントを特異的に選択するために、BLAST検索によるペプチドの大規模(>10,000ペプチド)データベースに対して任意の試験配列を検索するために使用される。加えて、データベース内のT細胞エピトープと顕著な相同性を有する任意の領域を排除した。
【0146】
CDR移植変異体の構築
CM−10の全ての変異体のCDR移植V領域及びVκ領域の遺伝子は、一連の重複オリゴヌクレオチドを用い、それらをアニーリング、ライゲーション及びPCR増幅して合成され、完全長の合成V領域を得た。次いで、構築した変異体を、IgG1及びIgG4(S241P)の両方のV鎖並びにVκ鎖のための発現ベクター系に直接クローニングした。全ての構築物を配列決定により確認した。
【0147】
抗体の構築、発現及び精製
キメラ抗体遺伝子並びにCDR移植したV鎖及びVκ鎖の全ての組み合わせ(すなわち、IgG1及びIgG4(S241P)のそれぞれについて合計15ペア)を、HEK293−EBNA(ATCCカタログ番号CRL−10852)細胞にリン酸カルシウムを用いて一過的にトランスフェクトした。上清の収集前に、一過性トランスフェクションを最大5日間インキュベートした。
【0148】
キメラ抗体及びCM−10のCDR移植変異体を、プロテインAセファロースカラム(GE Healthcareのカタログ番号110034−93)上で、一過的細胞培養上清から精製し、1×PBS pH7.4に緩衝液交換し、予測されたアミノ酸配列に基づく吸光係数を用いて、OD280nmによって定量化した(CM−10キメラ抗体及び変異体のEC(0.1%)=約1.37〜1.40)。キメラ抗体及び主要ヒト化変異体を還元SDS−PAGEにより分析した。V鎖及びVκ鎖の予想サイズに対応するバンドが認められ、いかなる汚染の証拠も認められなかった(図2)。
【0149】
実施例2.ヒトCEACAM−1への精製抗体の競合結合
キメラ抗体及びCDR移植変異体のそれぞれと共に精製キメラCM−10抗体の組換えヒトCEACAM−1への結合を、競合ELISAで評価した。キメラ又はヒト化抗体の20μg/mlから0.009μg/mlの希釈系列(3倍)を一定濃度のビオチン化キメラCM−10(0.005μg/ml、最終濃度)と予備混合し、その後、1×PBS pH7.4で希釈した0.5μg/mlの組換えヒトCEACAM−1(R&D Systemsのカタログ番号2244−CM−050)でプレコーティングしたNunc Immuno MaxiSorp96ウェル平底マイクロタイタープレート(Fisherのカタログ番号DIS−971−030J)上で、室温で1時間インキュベートした。ビオチン化抗体の結合を、ストレプトアビジン−HRP(Sigmaのカタログ番号S5512)及びTMB基質(Invitrogenのカタログ番号00−2023)で検出した。反応を3M HClで停止し、Dynex Technologies MRX TC IIプレートリーダー上で、450nmで吸光度を読み取り、結合曲線をプロットした。
【0150】
全てのヒト化変異体は、図3に示す結合曲線と同様のキメラCM−10への結合プロファイルを与えた。これらのデータを用いて、各抗体のIC50値を計算し、各ELISAに含まれるキメラCM−10のIC50に対して正規化し、表6及び表7に示した。
【0151】

【表7】
【表8】
【0152】
正規化したIC50データは、試験した全ての変異体について0.84〜1.56の範囲を示し、ヒトCEACAM−1に対する全てのCDR移植抗体の結合効率が、キメラCM−10結合効率と同等であることを示した。
【0153】
実施例3.CEACAM1に対するヒト化mAbと抗PD−1/PD−L抗体の組合せ
A.ヒト黒色腫細胞に対するヒトTIL細胞の細胞傷害性に対する抗CEACAM1と抗PD−1抗体の相乗効果を実証した。ヒト黒色腫癌細胞(MALME 3M)をIFN−αの存在下で増殖させ、PD−L1発現を誘導した。ヒトTIL細胞(TIL14)をヒトCEACAM1(CM−24)(0.01μg/ml、0.05μg/ml、0.1μg/ml、0.5μg/ml)に対するモノクローナル抗体、ヒトPD−1に対するモノクローナル抗体(クローンE12.2H7)又はその両方の抗体の組み合わせ(各抗体0.005、0.025、0.05及び0.25μg/ml)と37℃で30分間インキュベートした。細胞傷害性評価の前に、IFN−α処理したヒト黒色腫癌細胞を、一晩のインキュベーションの間添加した。図4は、抗CEACAM1抗体及び抗PD−1抗体の両方が、TIL細胞などのヒトリンパ球上のそれらのそれぞれの標的に結合することができたこと、かつこの結合がヒト癌細胞に対するヒトTIL細胞の毒性を、単独の各単剤療法を上回って顕著に増強させたことを示す。したがって、標的癌細胞からの免疫抑制シグナルからリンパ球を保護すると、これらの癌細胞に対する実質的な細胞傷害性がもたらされると結論付けた。
【0154】
B.抗PD−1抗体を抗CEACAM1抗体の添加前に添加した時の、グランザイムBレベル及びヒト黒色腫細胞に対するヒトTIL細胞の細胞傷害性に対する抗CEACAM1と抗PD−1抗体の相乗効果も示された:ヒト黒色腫癌細胞(MALME 3M)をIFN−αの存在下で増殖させ、PD−L1の発現を誘導した。ヒトTIL細胞(TIL14)を、培地のみ(黒)、非特異的IgG抗体(0.8μg/ml、白)、種々の濃度(0.05μg/ml、0.1μg/ml、0.2μg/ml、0.4μg/ml、0.8μg/ml)のCM−24、ヒトPD−1(クローンE12.2H7)に対するmAb又は両方の抗体の組み合わせ(それぞれ0.05μg/ml、それぞれ0.1μg/ml、それぞれ0.2μg/ml、それぞれ0.4μg/ml、それぞれ0.8μg/ml)とインキュベートした。ヒトPD−1に対するモノクローナル抗体を、最初に37℃で30分間添加し、その後、ヒトCEACAM1に対するmAbを添加した。細胞傷害性評価前に、IFN−α処理したヒト黒色腫癌細胞を一晩のインキュベーションの間添加した。組み合わせ指数(CI)は、0.15であると計算された。同じアッセイにおいて、細胞傷害性細胞の活性化時に分泌される細胞傷害性タンパク質グランザイムBのレベルを、市販のグランザイムB ELISAキットにより評価した。図5は、抗CEACAM1抗体及び抗PD−1抗体がTIL細胞などのヒトリンパ球上のそれらのそれぞれの標的に結合することができること、かつこの結合がグランザイムB分泌及びヒト癌細胞に対するヒトTIL細胞の毒性を増強させることを示す。図5は、標的癌細胞からの免疫抑制シグナルからリンパ球を保護すると、標的癌細胞に対する実質的な細胞傷害性がもたらされることを再び示し、併用療法においてタイミングが重要な因子であり得ることを示唆する。
【0155】
C.抗PD−1抗体を抗CEACAM1抗体の添加前に添加した時の、グランザイムBレベル及びヒト黒色腫細胞に対するヒトTIL細胞の細胞傷害性に対する抗CEACAM1と抗PD−L1抗体の相乗効果(データ示さず)。ヒト黒色腫細胞(MALME 3M)をIFN−αの存在下で増殖させ、PD−L1の発現を誘導した。ヒトTIL細胞(TIL14)を、培地のみ(黒)、非特異的IgG抗体(0.8μg/ml、白)、種々の濃度(0.05μg/ml、0.1μg/ml、0.2μg/ml、0.4μg/ml、0.8μg/ml)のヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体(CM−24)、ヒトPD−L1に対するモノクローナル抗体(クローン29E.2A3)又は両方の抗体の組み合わせ(それぞれ0.05μg/ml、それぞれ0.1μg/ml、それぞれ0.2μg/ml、それぞれ0.4μg/ml、それぞれ0.8μg/ml)とインキュベートした。抗PD−L1抗体を、最初に37℃で30分間添加し、その後、ヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体を添加した。細胞傷害性評価前に、IFN−α処理したヒト黒色腫癌細胞を一晩のインキュベーションの間添加した。組み合わせ指数(CI)は、0.67であると計算された。結果は、処理あたり3連のウェルから古典的LDH放出アッセイによって決定した時の%細胞傷害性の平均±標準誤差を表す。*P≦0.05、a−PD−L1のみと比較した対応のあるT検定。同じアッセイにおいて、細胞傷害性細胞の活性化時に分泌される細胞傷害性タンパク質グランザイムBのレベルを、市販のグランザイムB ELISAキットにより評価した。結果は、処理あたり3連のウェルからの平均グランザイムBレベルを表す。これらの結果は、抗CEACAM1抗体及び抗PD−L1の抗体が、(TIL細胞などの)ヒトリンパ球及び(黒色腫細胞などの)ヒト癌細胞上のそれらのそれぞれの標的に結合することができること、かつこの結合がグランザイムB分泌及びヒト癌細胞に対するヒトTIL細胞の毒性を増強させることを示す。さらに、PD−1/PD−L1とCEACAM1/CEACAM1の相互作用を阻止すると、相乗効果がもたらされ得ること、かつPD−1リンパ球/PD−リガンド癌細胞の免疫抑制シグナルからリンパ球を保護すると、抗原標的化したPD−1、PD−L1又はPD−L2のいずれかに関わらず、これらの癌細胞に対する実質的な細胞傷害性がもたらされることが実証された。
【0156】
D.抗PD−1抗体を抗CEACAM1抗体の添加前に添加した時の、ヒト黒色腫細胞に対するヒトLAK細胞の細胞傷害性に対する抗CEACAM1と抗PD−1抗体の相乗効果。ヒト黒色腫細胞(SKMEL28、CEACAM1陽性、PD−L1陽性)をIFN−αの存在下で増殖させ、PD−L1の発現を誘導した。健康なヒトドナーからのPBMCのIL−2(500ユニット/ml)による7日間の活性化によって作製したヒトLAK(リンホカイン活性化キラー)細胞を培地のみ(白)、非特異的IgG抗体(0.8μg/ml、黒)、種々の濃度(0.1μg/ml、0.2μg/ml、0.4μg/ml、0.8μg/ml)のヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体(CM−24)、ヒトPD−1に対するモノクローナル抗体(クローンE12.2H7)又は両方の抗体の組み合わせ(それぞれ0.1μg/ml、それぞれ0.2μg/ml、それぞれ0.4μg/ml、それぞれ0.8μg/ml)とインキュベートした。ヒトPD−1に対するモノクローナル抗体を、最初に37℃で30分間添加し、その後、ヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体を添加した。細胞傷害性評価前に、IFN−α処理したヒト黒色腫細胞を24時間のインキュベーションの間添加した。図6は、抗CEACAM1抗体及び抗PD−1抗体がLAK細胞などの活性化ヒトリンパ球上のそれらのそれぞれの標的に結合することができること、かつこの結合がヒト癌細胞に対するヒトLAK細胞の毒性を増強させることを示す。組み合わせ指数(CI)は、0.8未満であると計算された。図6は、さらに、LAK細胞へのこれらの抗体の結合が、幾分か相互関係し、その結合メカニズムのさらなる研究を正当化すること、かつこの機構が種々の活性化リンパ球に存在することを示す。
【0157】
E.抗CEACAM1抗体による治療は、標的癌細胞上のPD−L1の発現を増加させる。ヒトNK細胞(NK92MI)を、ヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体(10μg/mlのCM−24)と共に、又は含めないでインキュベートし、その後、ヒト黒色腫癌細胞(SKMEL28)を添加した。これらの細胞を24時間、48時間及び72時間インキュベートし、PD−L1レベルを、FACS分析により各時点で測定した。異なる時点で示した処理について適切なアイソタイプ対照と比較した抗PD−L1の平均比率レベルを、癌細胞上のCEACAM1及びPD−L1の発現が実際に相互に関係していることを示す図7に示す。抗CEACAM1抗体の添加は、生存癌細胞上でのPD−L1の発現を増加させ、したがって、両方の薬剤による併用治療に追加的サポートを提供する。癌細胞上のPD−L1タンパク質の数は、比較的高いままであり、これらの細胞を抗PD−1/PD−L1の抗体治療により感受性にさせるので、抗CEACAM1抗体を最初に投与し、次いで、さらに、抗PD−L1及び/又は抗PD−L2抗体を投与することによって癌を治療することは有益であり得、併用療法が臨床転帰を改善することができることを意味する。同時よりもむしろ、別々の時間での異なる抗体の投与は、癌細胞に対するリンパ球の細胞傷害性効果を最大にする。いかなる理論又は機構に縛られることなく、この知見は、抗CEACAM1抗体による治療により、標的癌細胞上のPD−L1発現を増加させることにしたがって、本発明の別の驚くべき知見と関係し得る。仮に、これは、細胞傷害性リンパ球のための改善された効力を得るために、複数の抗体の必要性を支持する。抗PD−1抗体の投与が、最初にリンパ球上のPD−1分子を阻止し、その後の抗CEACAM1抗体の投与が、リンパ球及び/又は標的癌細胞上のCEACAM1分子を阻止し、標的癌細胞上のPD−1リガンドの発現を増加させることが想定され得る。しかし、リンパ球上のPD−1分子は既に阻止されているので、標的癌細胞上のPD−1リガンドの発現レベルの上昇は、リンパ球が完全な細胞傷害能を効率的に発揮するのを妨げない。
【0158】
F.免疫コンピテントマウスにおける腫瘍進行に対する抗CEACAM1と抗PD−1抗体の相乗効果。マウスリンパ腫細胞(5×10、A20)を、1日目に皮下注射によりBalb/Cマウスの腹部に同種移植した。10日目に、腫瘍の平均体積は45mmに達し、マウスを別々の4グループに無作為化し(1グループあたり11〜12匹)、PBS、CC−1(抗マウスCEACAM1抗体、6mg/kg)、PRM−1(抗マウスPD−1抗体、6mg/kg)又はCC−1とPRM−1の組み合わせ(それぞれ6mg/kg)のいずれかを静脈内投与した。処置を15日目及び20日目に繰り返した。ヒトCEACAM1に対するモノクローナル抗体単独の効果、ヒトPD−1に対するモノクローナル抗体単独の効果、腫瘍増殖阻害に対する両方の抗体の組み合わせの効果を観察した。インタクトな免疫系を有するマウスにおける抗マウスCEACAM1及び抗マウスPD−1抗体の生物学的活性の評価を可能にし、かつマウス癌細胞に対する免疫系反応全体を評価するこの実験のために、免疫コンピテントBalb/Cマウスを選択した。全体として、このモデルは、癌患者が抗ヒトCEACAM1及び抗ヒトPD−1/PD−L1/PD−L2抗体の組合せを受けとる、ヒトにおける治療をシミュレートする。いかなる理論又は機構にも束縛されないが、抗CEACAM1及び抗PD−1/PD−L1/PD−L2抗体の組合せは、癌細胞が患者の免疫系の活性化及び細胞傷害性を回避するのを禁止するので、顕著な抗癌反応をもたらすと仮定される。図8は、抗CEACAM1抗体及び抗PD−1/PD−L1/PD−L2抗体が、腫瘍細胞及び/又は免疫細胞上でそれらのそれぞれの標的にインビボで結合することができ、この組み合わされた結合が、各単剤療法と比較して顕著に腫瘍進行を減弱させることを示す。確立された腫瘍を有する患者が治療されている臨床設定を模倣する、かなりの体積の確立された腫瘍内で抗CEACAM1と抗PD−1/PD−L1/PD−L2の組み合わせの有効性及び使用の可能性も証明するので、この結果は非常に重要である。
【0159】
実施例4.CEACAM1及びLAK細胞に対するヒト化mAbでの併用治療。
A.抗CEACAM1抗体は、ヒト黒色腫細胞に対するヒトLAK細胞の細胞障害性を増加させる:PBMC細胞を健康なドナーから単離し、その後、3日間、IL−2(500又は1000ユニット/ml)で活性化し、ヒトLAK細胞集団を作製した。次いで、ヒトLAK細胞を、0.1μg/ml、0.5μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml又は10μg/mlの抗CEACAM1抗体(CM−24)と共に、37℃で30分間インキュベートした。ヒト黒色腫細胞(SKMEL28)を24時間のインキュベーションの間添加し、その後、細胞傷害性を決定した。図9は、ヒトLAK細胞がそれ自体でヒト黒色腫癌細胞に対して細胞傷害性であるが(例えば、左の2つのバーと比較して)、抗CEACAM1抗体の添加がこれらのヒト黒色腫癌細胞に対する細胞傷害性を用量依存的に顕著に増強させることを示す。
【0160】
B.抗CEACAM1抗体は、多様なヒト膵臓癌細胞及び肺癌細胞に対するヒトLAK細胞の細胞傷害性を増強させる。PBMC細胞を健康なドナーから単離し、その後、7日間、IL−2(500ユニット/ml)で活性化し、ヒトLAK細胞集団を作製した。次いで、ヒトLAK細胞を、示したように0.1μg/ml〜10μg/mlの抗CEACAM1抗体(CM−24)と共に37℃で30分間インキュベートした。3種類の異なるヒト膵臓癌細胞のT3M4、SU8686及びPANC2、並びに2種類の異なるヒト肺癌細胞のH358及びH460を、24時間のインキュベーションの間添加した。図10は、ヒトLAK細胞がそれ自体でヒト膵臓T3M4癌細胞に対して細胞傷害性であるが、抗CEACAM1抗体の添加がこれらのヒト癌細胞に対する細胞傷害性を用量依存的に顕著に増強させることを示す。同様の結果が、他の膵臓癌細胞及び肺癌細胞について得られた。
【0161】
C.抗CEACAM1抗体は、ヒト膵臓癌細胞及び肺癌細胞の存在下で、ヒトLAK細胞のグランザイムB分泌を促進する。ヒトLAK細胞を、異なる濃度で抗CEACAM−1抗体(CM−24)と共に37℃で30分間インキュベートした。次いで、ヒト膵臓癌細胞T3M4(A)又はヒト肺癌細胞H358(B)を、24時間のインキュベーションの間添加した。グランザイムB分泌をELISAによって測定した。結果は、ヒトLAK細胞がそれ自体で高レベルのグランザイムBを産生するが、抗CEACAM1抗体の添加はグランザイムBレベルを用量依存的に顕著に増加させることを示す。
【0162】
D.抗CEACAM1抗体は、ヒト癌細胞の存在下で、ヒトLAK細胞のIFN−γ分泌を促進する。ヒトLAK細胞を、異なる濃度で抗CEACAM−1抗体(CM−24)と共に37℃で30分間インキュベートした。次いで、ヒト肺癌細胞H358又はH460を、24時間のインキュベーションの間添加した。IFN−γ分泌をELISAによって測定した。図11は、ヒトLAK細胞がそれ自体で高レベルのIFN−γを産生するが、抗CEACAM1抗体の添加はIFN−γレベルを用量依存的に顕著に増加させることを示す。
【0163】
実施例5.CEACAM1発現は癌細胞におけるB−Raf変異の存在と相関する。
A.CEACAM1発現レベル及びBRAF遺伝子型について、24人の黒色腫癌患者からの生検試料を評価することにより、B−Raf V600E変異とCEACAM1発現との間に統計的に有意な相関関係があることが明らかになった。より具体的には、野生型B−Rafを有する、すなわち、600位がバリンである黒色腫細胞のわずか50%(3/6)が検出可能なレベルのCEACAM1を発現し(36以下のCt)、変異B−Rafを有する、すなわち、600位がグルタミン酸である黒色腫細胞の100%(18/18)が検出可能なレベルのCEACAM1を発現した(36以下のCt)。
【0164】
B.B−Raf又はMEK阻害剤で処理した癌細胞のCEACAM1細胞外染色。1.0×10個の細胞のB−Raf W.T.細胞試料(076mel)及び2種類のB−Raf V600E細胞試料(526mel、624mel)を、異なる濃度のベムラフェニブ又はセルメチニブ(0.1μM又は1μM)と2〜48時間インキュベートした。各時点で、これらの細胞上でのCEACAM1発現をFACSにより決定した。等量のDMSO(ビヒクル)を対照として使用した。結果は、0.1μM及び1μMのベムラフェニブがW.T. B−Raf(076mel)を有する細胞上でのCEACAM1発現レベルに影響を及ぼさなかったが、0.1μM及び1μMのベムラフェニブは、変異B−Raf(526mel、624mel)を有する細胞上でのCEACAM1発現レベルに用量依存的な効果を有していたことを示した。結果はさらに、セルメチニブが変異B−Raf(526mel、624mel)を有する細胞上でベムラフェニブと同様の効果を有していたが、1μMのセルメチニブは、W.T. B−Rafを有するがN−Rasが変異している(sk−mel−2)細胞上でのCEACAM1発現レベルを顕著に減少させ、1μMのベムラフェニブは、CEACAM1発現レベルに影響を及ぼさなかったことを示す。これらの結果は、さらに、この場合では、変異N−Rasでは促進されるが、変異B−Rafでは促進されない構成的活性化MAPK経路を介したCEACAM1の調節を支持する。
【0165】
C.阻害剤耐性癌細胞は、CEACAM1発現の増加及びMAPK経路の活性の回復を示す。2種類のベムラフェニブ感受性B−Raf V600E細胞試料(526mel、624mel)及びそれ由来のベムラフェニブ耐性細胞株を、1μMのベムラフェニブと共に2日間インキュベートした。次いで、上記のように、細胞を、FACSによってCEACAM1タンパク質発現について分析した。ベムラフェニブ耐性細胞株を、培養液中の阻害剤の濃度を0.32μMまで徐々に増加させることによって作製した。ベムラフェニブ耐性細胞株が、ベムラフェニブ感受性細胞株よりも高いレベルのCEACAM1を発現することが示された。MAPK活性を、160nMのベムラフェニブへの曝露の24時間後のリン酸化ERK1/2(pERK、Thr202/Tyr204)、全ERK1/2及びアクチンについて免疫ブロット法により、ベムラフェニブ感受性及びベムラフェニブ耐性B−Raf V600E(624mel)細胞試料中で測定した。ベムラフェニブ感受性B−Raf V600E細胞において、ベムラフェニブはERK1/2のリン酸化をほぼ完全に廃止し、その際、MAPK活性は、ベムラフェニブ耐性B−Raf V600E細胞においてベムラフェニブによって実質的に中断されなかった。
【0166】
D.阻害剤耐性癌細胞はCEACAM1発現を上方制御する。B−Raf V600E 526mel黒色腫細胞を、1μMのベムラフェニブの存在下で培養した。培養を、1mMのピルビン酸Na、1mMのPen−Strep、1mMのL−グルタミン、1mMの非必須アミノ酸、及び10%熱不活性化ウシ胎児血清を補充したRPMI 1640中で行った。ベムラフェニブの初期濃度は、決定したIC50(0.64nM)の0.01であった。各週、この濃度を5倍のIC50(320nM)まで2倍にし、ベムラフェニブ耐性黒色腫細胞を作製した。次いで、上記のように、フローサイトメトリーでMRG1(ヒトCEACAM1に対するマウス抗体)を用いて、細胞をCEACAM1発現について試験した。一般的なプロトコルに従って、トータルRNAをトリゾールで抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを作製した。ベムラフェニブは、B−Raf V600E黒色腫細胞におけるCEACAM1発現を下方制御するが、これらの細胞はベムラフェニブに対する耐性を獲得する際にCEACAM1発現レベルを上方制御する。ベムラフェニブに対する耐性を獲得した後のB−Raf V600E黒色腫細胞におけるCEACAM1レベルは、未処理(ベムラフェニブナイーブ)B−Raf V600E黒色腫細胞におけるCEACAM1レベルよりも高いことに留意することが重要である。
【0167】
E.阻害剤耐性癌細胞は両方の種類のCEACAM1発現を上方制御する。上記のベムラフェニブ感受性及びベムラフェニブ耐性B−Raf V600E 526mel黒色腫細胞を、ベムラフェニブに対する耐性を獲得する際に過剰発現したCEACAM1の種類についてqPCRにより試験した。図12A及び図12Bに示すデータは、CEACAM1の両方の種類のCEACAM1−ロング(12A)及びCEACAM1−ショート(12B)の発現が、ベムラフェニブ感受性細胞と比較して、ベムラフェニブ耐性細胞において約3倍上方制御することを示す。
【0168】
F.B−Raf/MEK阻害剤は、T細胞に誘導される細胞傷害性を増加させる。2種類のベムラフェニブ感受性B−Raf V600E細胞試料(526mel、624mel)を、細胞傷害性T細胞の存在下で1μMのベムラフェニブを含む場合又は含まない場合の生存率について試験した。黒色腫細胞を、1μMのベムラフェニブと予めインキュベートし、次いで、エフェクター−標的の比率を5:1で、HLA−A2整合抗原整合T細胞と一晩共培養した。細胞の死滅をLDH放出によって決定した。ベムラフェニブが、細胞傷害性T細胞に対する黒色腫細胞を顕著に感作することが示された。B−Raf/MEK阻害剤及びCEACAM1に対する抗体は、癌細胞に対するT細胞誘導性の細胞傷害性をインビトロで増加させる。
【0169】
実施例6.異なる用量でのCM−24のインビボ抗癌効果
図13に示した治療グループに応じて、SCID−NODマウスに5×10個の黒色腫細胞(細胞株MEL526)をIV移植し、44日間治療した。抗体を、IV注入により週に2回投与し、10×10個のTILを10日ごとにIV投与した。49日目にマウスを屠殺し、肺を摘出し、撮影し(図13A)、秤量し(図13B)、病変を計数した(図13C)。図13A−摘出直後のマウスの肺のデジタル写真。図13B−腫瘍重量を、異なる治療グループの平均肺重量から未治療マウスの肺重量を差し引くことにより計算した。結果は、治療グループあたり7〜8匹のマウスの腫瘍重量の平均±標準誤差を表す。図13C−種々のグループの個々のマウスにおける肺病変の数;黒い線は、グループの中央値を表す;無数の病変を有する肺を100としてスコア化した。対応のあるT検定を用いて、グループ間の統計的有意性を計算した。*P<0.05、**P<0.025。
【0170】
肺の形態(図13A)、腫瘍重量(図13B)及び肺病変の数(図13C)によって理解できるように、TILの存在下でのCM−24による治療はロバストな腫瘍増殖阻害をもたらしたが、IgG対照で治療したマウスは、広範囲の腫瘍量及び多数の肺黒色腫病変を示した。中程度の腫瘍成長阻害(TGI 47%)のみが、対照抗体(TIL+IgG)と共に黒色腫に対するヒト反応性T細胞を投与したグループで観察されたが、CM−24を添加した場合、試験した全ての用量で実質的かつ用量依存的な抗癌活性(それぞれ、1、3、6及び10mg/kgの用量で、84%、87%、90%及び93%のTGI)が示され、6及び10mg/kgの用量で統計的有意性があった(図13B)。アッセイの終了日の肺のデジタル写真記録(図13A)は、TILの存在下で、CM−24で治療したマウスにおいてほぼ正常な肺の形態を示したので、TILの存在下でのCM−24は、ほぼ完全に悪性細胞を排除することが示された。
【0171】
TIL及びIgG対照を投与したグループでは、予想されたとおり、ある程度の抗腫瘍効果も観察された。しかし、TGI、肺病変及び肺形態の数の点からその効果をCM−24治療マウスと比較した場合に、かなりの違いが観察された。
【0172】
肺病変の数の評価により、TIL及び種々の用量のCM−24で治療した全マウスにおいて非常に少ない数の肺病変が明らかになり、これらの肺のいずれも10個以上の病変を示さなかった。一方、IgGグループ又はTIL+IgGグループにおいて、何匹かの動物は高い数の病変(>100)を示し、これらのグループの中央値はCM−24治療マウスよりもかなり高かった(図13C)(CM−24治療グループの5、6、3及び2と比較して、IgGグループ及びTIL+IgGグループでは100及び45;P<0.025)。
【0173】
これらの効果は、1mg/mlほどの低い濃度で観察されたが、6及び10mg/kgのCM−24濃度では肺重量の点で統計的に有意であった。
【0174】
特記事項:IgGグループの1匹のマウスは、四肢麻痺を含む重篤な罹患性を示し、33日目に屠殺した(肺に広範囲の腫瘍量が検出された);TIL+IgGグループの1匹のマウスは、罹患性の兆候を示し、49日目のアッセイ終了日に死亡した(いくつかの病変が検出された);TIL+CM−24グループの1匹のマウスは、重度の罹患性及び体重減少を示し、39日目に屠殺した(病変の証拠は検出されなかった);PBSグループの3匹のマウスは、実験中に重度の罹患性を示し、42日目に屠殺し、他の2匹のマウスは48日目に屠殺した(多数の肺病変を含む広範囲の腫瘍量が全マウスで検出された)。
【0175】
終了日に、治療マウスの肺から単離したヒトTILにおけるCM−24によるCEACAM1受容体占有率を決定するために、QuantiBriteキットと組み合わせたフローサイトメトリーベースアッセイを用いた。種々のCM−24用量で治療したマウスにおける受容体占有率(RO)値は、50%のROが1mg/kg(血液中のCM−24血清レベル)の濃度に起因し得、90%超のROは3、6及び10mg/kg(それぞれのCM−24血清レベル0.3、48.5及び111μg/ml)の用量で示されたことを示した(図14)。CEACAM1 RO値の検査は、PE結合CM−24抗体及びQuantiBriteキット(BD)を用いるフローサイトメトリーベースアッセイを用いて行った。結果は、治療グループあたり8〜9匹のマウスの肺から単離したTILにおけるRO値の平均±標準誤差を表す。データはカルツァ(Kaluza)ソフトウェアを用いて分析した。
【0176】
上記のデータから、実質的な腫瘍成長阻害が、CM−24で治療したマウスにおいて、悪性細胞のほぼ完全な排除をもたらすTILの存在下で観察されたことは明らかである。全てのCM−24の用量が有効な抗癌反応を示したが、漸増用量は、より高い値の腫瘍増殖阻害(それぞれ1、3、6及び10mg/kgの用量に相当する84、87、90及び93のTGI)との相関を示し、これも統計的に有意であった。生体外でのRO結果は、3、6及び10mg/kgの用量でRO>90%を示し(それぞれのCM−24血清レベル0.3、48.5及び111μg/ml)、50%のROが1mg/kgの用量で検出された。1mg/kgの用量で、CM−24で治療したマウスからのROデータを評価した場合、CM−24の血清濃度は非常に低いが、ROデータはCM−24がまだ肺でTILに結合していることを示し、CM−24が、腫瘍微小環境においてインビボで長く続く効果を媒介することができることを示唆する。
【0177】
これらの結果は、悪性細胞に対するエフェクター細胞の細胞傷害活性のエンハンサーとして、CM−24の作用モードを支持し、CM−24が強力な抗癌剤であることを示す。
【0178】
実施例7.プレ臨床データのまとめ
CM−24は、CEACAM1のN末端ドメインに結合するヒト化IgG4抗ヒトCEACAM1モノクローナル抗体であり、活性化リンパ球と腫瘍細胞との間の細胞間CEACAM1相互作用を阻止する;したがって、CM−24によるCEACAM1相互作用の阻止は、リンパ球の殺傷活性を増強すると想定され、癌の免疫療法の追求のための有望な手段である。
【0179】
CM−24は、活性化リンパ球又は腫瘍細胞が発現するヒトCEACAM1への高親和性で、選択的な結合を示す。インビトロ免疫調節モデルのデータは、CM−24が、細胞間CEACAM1−CEACAM1相互作用の強力なブロッカーであり、CEACAM1陽性NK細胞及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞並びに腫瘍浸潤リンパ球(TIL)による種々のヒトCEACAM1陽性腫瘍細胞の細胞傷害性死滅を増強することができることを実証した。種々のモデルで実証されたように、CM−24によって誘導される殺傷活性の増強は、グランザイムB及びIFNγ分泌によって媒介され得る。
【0180】
CM−24は、CEACAM1陽性腫瘍細胞の存在下で、かつ特定のヒト白血球抗原(HLA)によって制限されるT細胞反応との関連で、エフェクター細胞の細胞傷害活性を増強する。CM−24は、CEACAM1陽性非標的細胞(ヒト正常細胞)に対するエフェクターリンパ球の細胞傷害活性を増強しない。加えて、このデータは、CM−24がリガンド様アゴニスト効果、Fc関連エフェクター機能又は直接的な効果を有していないことを示す。CEACAM1に対するCM−24の結合は、アゴニスト活性を誘導せず、インビトロ機能アッセイで示されるように、標的細胞の非存在下では、エフェクター細胞上でのCM−24の効果は観察できなかった。IgG4は補体成分C1q及びADCCメディエーター−Fcγ−RIIIaと結合できず、CEACAM1陽性初代細胞(リンパ球、上皮細胞及び内皮細胞)の増殖率又は生存率に直接影響を及ぼさないので、CM−24も、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)又は補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導しないことが期待されている。
【0181】
種々のインビボ腫瘍異種移植片モデルは、CM−24が、腫瘍内のT細胞の免疫学的活性の増強を伴う明確な抗癌活性を有することを示す。
【0182】
CEACAM1阻止は、腫瘍微小環境内でCEACAM1陽性癌細胞に遭遇するCEACAM1陽性腫瘍浸潤リンパ球のCEACAM1媒介性阻害を軽減する。免疫学的効果は、腫瘍細胞に対する局所免疫反応の増強であると期待され、腫瘍細胞の除去及びその後の臨床的退行をもたらすことが期待される。
【0183】
CM−24の安全性の前臨床評価には、T細胞増殖及び炎症促進性サイトカイン分泌に対するCM−24の効果の評価が含まれた。10人の健康なドナーからのヒト末梢血単核細胞(PBMC)及び全血を評価し、該抗体は可溶性形態及び固定化形態の両方で提供された。可溶性形式又はドライコーティングされた固定化刺激形式で、明白なCM−24誘導性増殖及び顕著な炎症促進性サイトカイン分泌はなかった。
【0184】
6週間の反復投与試験をアカゲザルで行い、CM−24の毒性及び毒物動態を評価した。CM−24を、ヒトで計画される最大用量(10mg/kg)の2.5倍(25mg/kg)及び10倍(100mg/kg)を表す用量で、合計4用量(腫瘍患者における意図された治療サイクルを模倣する)を2週間に1回静脈内(IV)注射(意図される臨床の投与経路)を介して投与した。治療に関連する明らかな副作用も、肉眼又は顕微鏡での病理所見も、死亡も観察されなかった。検眼鏡検査及び心電図は、治療に関連する所見を示さなかった。加えて、全血検査及び尿検査は、アカゲザルの正常範囲内であることが判明した。まとめると、アカゲザルにおける重要なGLP反復投与毒性試験は、全ての用量レベルでいかなる治療関連毒性も示さず、無影響量(NOEL)は100mg/kgであると決定された。IV注入による投与の場合に、毒物動態評価は、CM−24曝露に、用量比例的な増加を示した(Cmax、AUC)。0日目と比較して、42日目のCmax及びAUCのわずかな増加は、mAbがこれらの用量レベルでこのROA及び投与レジメンによって投与される場合に、ある程度のCM−24蓄積の可能性を示唆しているかもしれない。グループ2(25mg/kg)の中で1匹の動物だけが陽性の抗CM−24抗体反応を示したことから、ADA反応が薬物動態又は毒性試験のいずれにも影響を及ぼさない可能性が最も高いことが示唆された。この結果は、CM−24の結果と反復投与に対する強い免疫原性反応を表すものではない。
【0185】
マウス腫瘍異種移植モデルの結果においてインビボ実験から決定した、MABELに基づくCM−24についての安全な臨床開始用量は、10倍の安全率を含む、0.2〜1mg/kgの範囲である。アカゲザルにおける重要なGLP反復投与毒性試験は、全ての用量レベルでいかなる治療関連毒性も示さず、無影響量(NOEL)は100mg/kg(重量対重量ベースで100mg/kgのヒト等価用量(HED))であると決定され、MABEL評価によって決定される範囲を明らかに支持する。インビトロ/エクスビボでのPBMC増殖及び炎症促進性サイトカイン産生のアッセイ結果は、T細胞の増殖及び炎症促進性サイトカイン産生の実質的なCM−24関連誘導を示さなかった。
【0186】
実施例8.選択された進行性又は再発性の悪性腫瘍を有する対象におけるCM−24のフェーズ1、非盲検、多施設、複数用量漸増試験
6種類の腫瘍タイプ−黒色腫、非小細胞肺腺癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌及び卵巣癌−これらは、新しい治療法の医学的必要性が高く、他の免疫療法に対する臨床反応の先例があり、CEACAM1経路が腫瘍進行に重要であることを示唆する支持的相関病理学的データがある腫瘍の代表的なものであるので、本治験のために選択された。
【0187】
本治験は、2つのフェーズ:用量漸増部分及び拡大コホート部分を含む。用量漸増部分は、各対象について4回の注入(サイクル1)から始まって、少なくとも12週続く。その他の点では臨床的に安定しているが、用量制限毒性(DLT)がなく、臨床的有益性の証拠を示す対象(完全奏効−CR、部分奏効−PR、安定疾患−SD)及び画像診断評価において進行性疾患−PRDを有する対象を、最高で38回の追加の治療週間及び少なくとも25週間の経過観察(合計75週間/約15ヶ月)にわたる、最高で合計5回の追加サイクルの間治療した(継続治療期間)。拡大部分は、皮膚黒色腫対象において最高46週間の治療週間及び少なくとも25週間の経過観察(合計71週間/約14ヶ月にわたる。
【0188】
主要目的:
黒色腫、非小細胞肺腺癌、及び胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌及び卵巣癌を含む進行性又は再発性の悪性腫瘍を有する対象における、
1.CM−24(静脈内投与)の漸増複数用量の安全性及び忍容性の評価、並びに
2.CM−24の推奨されるフェーズ2用量の決定
【0189】
副次的目的に含まれるもの:
1.CM−24の複数用量の薬物動態プロファイルの特徴づけ。
2.CM−24の免疫原性の特徴づけ。
3.CM−24で治療した対象における客観的な腫瘍反応及び奏効期間に基づく予備的有効性の評価。
【0190】
探索的目的に含まれるもの:
1.治療前の腫瘍標本におけるCEACAM1の発現レベルに基づくCM−24臨床活性に関連する潜在的な予測バイオマーカーの探索。
2.腫瘍及び末梢血中の選択された免疫細胞集団及び可溶性因子におけるCM−24の免疫調節活性の調査。
3.CM−24で治療した対象の全生存期間の評価。
【0191】
用量漸増部分:試験薬投薬は、0.01mg/kgから始まり、0.03mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、及び10mg/kgへと続くシフト形式で投与されるように予定される。対象は、試験参加の順で用量レベルに割り当てられる。最初の2つの用量レベル(0.01mg/kg及び0.03mg/kg)については、各コホートに1人の患者が加速設計で登録され、その中で、単一のグレード2薬物関連毒性は、その用量及び以降の全ての用量で3+3設計へと拡大する。より低い2つのコホート(0.01mg/kg及び0.03mg/kg)の対象については、第1の患者の単一低用量コホート(0.01mg/kg)から次のコホート(0.03mg/kg)、及び第2の単一用量コホート(0.03mg/kg)から次のコホート(0.1mg/kg)への用量漸増は、グレード2以上の毒性が発生していない場合、6週間のDLTウィンドウ後に始まる。0.1mg/kg及びそれを上回る用量レベルについては、DLTが発生しない限りは、コホートあたり少なくとも3人の患者が標準的な3+3設計に登録され、その場合には、そのコホートは6人の患者に拡大される。次のコホートへの漸増は、各コホートの第1の対象の最初の試験薬投与から始まって、8週間のDLTウィンドウ後にのみ始まる。
【0192】
投薬期間には、3期:スクリーニング、投薬及び経過観察が含まれる:1)最初のサイクルを含み、その後、6週間の観察期間が続く4回の反復用量)、2)継続治療期間(サイクル2〜6)及び3)全生存期間の評価を含む経過観察期間。各治療サイクルは、2週間ごとの4用量の試験薬投与で構成されている。コホートあたり少なくとも3人の対象は、標準的な3+3設計に登録されている。この部分に登録された対象の最小計画数は、17人であるが、用量制限毒性(DLT)が発生した場合には増やすことができる。DLTが一定の用量レベルで発生した場合には、この用量レベルは6人の対象に拡大され、したがって、用量漸増部分の対象の最大人数は42人である。
【0193】
登録された対象は、2週間に1回(サイクル1)4回の治療を受け、その後、6週間の観察ウィンドウが続き;その時に、適切な対象が継続治療期間に入って、追加のサイクル(2〜6)を受ける。この継続治療期間中、対象は、身体検査(体重、バイタルサイン及び酸素飽和度)、薬物動態及び薬力学、サイトカイン収集だけでなく、安全実験室試験及び免疫安全アッセイを含む臨床評価並びに実験室評価を受け、ECGが記録される。全対象は、画像診断評価及び臨床評価に基づいて、サイクル1後に1週間及び5週間の反応評価を受ける。試験を継続する資格が得られたら、次のサイクルの開始直前に、追加の反応評価が行われる。最後の継続治療サイクル後に、対象は、安全性、有効性及び生存について観察される。
【0194】
拡大部分:最大20人の転移性皮膚黒色腫対象を登録し、推奨されるフェーズ2用量(RP2D)で治療される。これには、3期:スクリーニング、投薬及び経過観察が含まれる。投薬期間は、それぞれ2週間ごとに投与される4回の治療の6サイクルからなる。経過観察期間には、全生存期間を評価することが含まれる。
【0195】
登録された対象は、各サイクルで、2週間ごとに推奨されるフェーズ2用量を受け取る。4回の治療が施され、該対象は6サイクルまで治療を続ける。上記で詳述したように、投薬期間中、対象は、臨床評価及び実験室評価を受ける。
【0196】
対象は、最初の試験薬投与前の少なくとも4週間の、以前の全ての化学療法剤及び免疫調節物質(例えば、限定されないが、:抗CTLA4抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−1抗体、IL−2)を除く実験用薬剤からの「ウォッシュアウト」期間を有する必要があり、最初の試験薬投与前の少なくとも6週間の「ウォッシュアウト」期間を有する必要があり、かつ全ての有害事象は、ベースラインに戻るか又はグレード1以下で安定していた。
【0197】
B−Raf V600E又はV600K変異陽性黒色腫を有する黒色腫対象は、B−Raf阻害剤療法及び/又はMEK阻害剤療法において進展していなければならないか、又はそれらに不耐性であった。
【0198】
用量漸増部分
サイクル1は、6週間の反復投薬期間(4用量、それぞれ2週間間隔をあける)及び6週間の観察期間からなる。
【0199】
用量コホート内の任意の対象の最初の治療とその用量コホート内のその後の対象のための最初の治療との間に、最低限1週間は経過しなければならない。
【0200】
対象は、12週間の初期試験期間中に入念に観察される。全対象は、臨床的有益性の証拠及び確認についてサイクル1の終了後1週間及び5週間の反応評価を受け、12週までに安定疾患(SD)、部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)として定義される。インフォームドコンセントフォーム(ICF)で再び同意が得られた後、7週目又は11週目のいずれかの画像診断において進行性疾患(PRD)の証拠を有していた対象は、臨床悪化セクションの停止規則に基づき臨床的に保証されると研究者が考える場合には、試験参加を継続し、CM−24治療を継続することができ、さらに15週目に評価された。15週目の経過観察の画像診断がPRDを認める場合には、その対象は、確認された疾患進行により治療は継続されない。
【0201】
遅延DLTを含むDLTを有する全対象は、CM−24でのさらなる投薬は中止されるが、試験は中止されない。
【0202】
初期試験期間(サイクル1)に最初の3回の試験薬投与が完了する前に試験を中止されている対象は、置き換えられる。同意の撤回以外の他の任意の理由で中止されている対象は、6ヶ月の期間、4回を超える経過観察訪問で観察される。
【0203】
サイクル2〜6は、継続治療期間と呼ばれる。初期試験期間後に、変更されたRECIST 1.1基準に従ってSD、PR又はCRとして定義された臨床的利点の証拠を有し、かつ12週までに用量制限毒性(DLT)の証拠がない対象は、5回の追加の治療サイクルの間に、初期試験期間中に受け取ったのと同一の用量レベルでのCM−24治療を継続することができる。確認されているが、悪化していないPRD、かつそうでなければ安定又は改善された臨床状態を有する対象は、さらなる進行又は臨床症状の悪化があるまで、試験薬での治療を継続すべきである。
【0204】
継続治療期間の各完全治療サイクルは、1日目、15日目、29日目、及び43日目に、2週間間隔をあけて投与される試験薬の4用量を含む。反応評価は、各治療サイクルの52日目と56日目の間に行われる。次のサイクルの最初の用量が投与される前に、反応評価を完了しなければならない。
【0205】
継続治療期間中は、確認されているが、悪化していないPRDを有する対象、かつそうでなければ臨床状態が安定しているか又は改善している対象は、さらなる進行又は臨床症状の悪化があるまで、試験薬での治療を継続すべきである。
【0206】
継続治療期間中のCM−24の最後の投与後、各対象は、6ヶ月の期間、4回を超える経過観察訪問で観察される。
【0207】
遅延DLTを含むDLTを有する全対象は、CM−24のさらなる投薬を中止したが、試験は中止されてはいない。
【0208】
全対象は、生存について無期限に観察される。
【0209】
コホートの拡大
最初の2用量レベル(0.01mg/kg及び0.03mg/kg)については、各コホートに1人の患者が加速設計に登録され、その中で、単一のグレード2薬物関連毒性は、その用量及びそれ以後の全ての用量で3+3設計に拡大される。より低い2つのコホート(0.01mg/kg及び0.03mg/kg)の対象については、グレード2以上の毒性が発生しない場合に、患者の最初の単一低用量コホート(0.01mg/kg)から次のコホート(0.03mg/kg)、及び第2の単一用量コホート(0.03mg/kg)から次のコホート(0.1mg/kg)の用量漸増が、6週間のDLTウィンドウ後に始まる。0.1mg/kg及びそれ以上の用量レベルについては、DLTが発生しない限り、コホートあたり少なくとも3人の患者が標準的な3+3設計に登録され、その場合、そのコホートは6人の患者に拡大される。次のコホートへの漸増は、各コホートの第1の対象の最初の試験薬投与から始まって、8週間のDLTウィンドウ後にのみ始まる。
【0210】
6人の対象のコホートにおける追加の対象がDLTを有していない場合、安全委員会による全対象の安全性データの審査後に、用量漸増を進めることができる。
【0211】
3人又は6人の対象用量コホートにおいて2人以上の対象がDLTを発症する場合には、用量漸増は停止され、かつ:
前の用量レベルのコホートがすでに6人の対象に拡大されていなかった場合には、6人の対象に拡大し、
前の用量レベルのコホートがすでに6人の対象に拡大されていた場合には、安全委員会は、これまでの全安全性データの審査後に、
(前の)用量レベルを推奨されるフェーズ2用量(RP2D)とみなすか、又は
中間用量で新しいコホートの評価を推奨することができる。
【0212】
推奨されるフェーズ2用量(RP2D)は、6人の対象のうち1人以下がDLTを経験する最高用量レベルとして定義される。
【0213】
用量漸増
いずれのDLTも、より低い2つのコホートについては6週間のDLTウィンドウに、かつ残りのコホートについては8週間のDLTウィンドウに遭遇していない場合は、次のコホートが開始され、同じパターンが繰り返される。各コホートの用量レベル内の対象の登録の間に1週間の待機期間がある。用量漸増前に、現在のコホートを含む、これまでの試験で治療された全対象の利用可能な安全性データは、安全委員会によって評価される。
【0214】
前の用量コホートの全対象についての反復投薬(サイクル1)が完了した後にのみ、次の用量コホートの投薬(サイクル1)が開始される。安全委員会の審査のタイミングは、他の免疫調節物質で治療された患者においてirAEが、投与後の5〜10週間以内に起こることを示唆するデータに基づく。DLTが生じ、治療用量コホートの6人の対象への拡大が必要となった場合に、DLTウィンドウは全6人の対象の完全反復投薬(サイクル1)を包含するように拡大される。
【0215】
用量漸増後に、2以上の遅延DLTがより低い用量で生じ、かつAEがCM−24に関連する可能性のある遅延DLTであり得る場合に、自然増加は一時的に中断され、安全委員会は24時間以内に通知される。安全委員会は、速やかにPKデータを含む事象及び関連情報を評価し、用量及び/又は用量漸増方式で任意の必要な調整を行う。2以上の遅延DLTが以前に試験した6人の対象の拡大コホート内で生じた場合に、同じ手順が行われる。
【0216】
遅延DLTは、ガイドラインに従って安全委員会によって審査され、ケースバイケースで決定が行われる。このような行動には、検査されている用量関連事象が用量漸増を停止するのに十分深刻でなく、現在の投薬が対象へのリスクになるとみなされない場合に、標準的なDLT漸増ルールを適用すること、より低い用量もしくは中間用量に戻すこと、又は何の行動も取らないことが含まれ得る。
【0217】
拡大部分
この試験の拡大部分には、進行性皮膚黒色腫を有する最大20人の対象の登録が可能である。初期の有効性シグナルがこれを保証するものであれば、治験の用量漸増部分中に前もって調べられた適応症において、最大20人の対象の他の拡大アームが展開され、プロトコルは改正されてよい。登録された対象は、最大6サイクルの間にRP2Dで治療され、1日目、15日目、29日目及び43日目に治療が施される。反応評価は52日目〜56日目の間に行われる。この反応評価は、次のサイクルの最初の用量投与前に完了しなければならない。
【0218】
DLT率が33%以上の場合に、登録は拡大部分で保持されてもよい。試験薬に忍容性を示す対象は、安全委員会が審査するまで継続投与から自動的に除外されず、安全審査の結果として特に指示がない限り、忍容される限り、投薬を継続することが可能である。安全解析後、登録を再開し、現在の用量で投薬を継続するか、又はより低い用量で、さらなる対象の登録を継続するか否かの判定が行われる。DLTの場合は、登録は安全委員会の審査に従って行われるか、かつ/又は再開される。
【0219】
治療決定ガイドライン
腫瘍反応は、固形腫瘍における反応評価基準(RECIST 1.1)を用いて評価される。全対象のサイクル腫瘍反応評価の終了は、各治療サイクルの52〜56日以内に生じる(評価の結果は次のサイクルの最初の投薬前に審査され、文書化されなければならない)。対象が、さらなる治療を妨げるグレード3以上の(CTCAE)有害事象又はCM−24に関連する他の有害事象を発症しない限り、各(継続又は拡大)治療サイクル後に、CM−24の追加サイクルで対象を治療する決定は腫瘍評価に基づく。以下に記載するように、完全奏効(CR)又は確認された後にさらに進行する進行性疾患(PRD)が確認されるまで、対象は治療される。確認されたが、悪化していないPRDを有する対象、及びそうでなければ、臨床状態が安定しているか又は改善された(すなわち、ECOG全身状態において低減がない)対象は、以下にさらに詳しく述べるとおり、さらなる進行又は臨床症状の悪化があるまで、試験薬での治療を継続すべきである。
【0220】
CR、PR又はSDの最良総合効果(BOR)を有する対象は、以下のいずれかが最初に生じるまでCM−24治療を受け続ける:
確認されたCRの達成;
治療からのさらなる利点が得られそうにないことを示唆する臨床症状の悪化;
試験治療の中止(DLT)もしくは治療に対する他の不耐性の基準を満たすこと;又は
最大数のサイクルを受けること。
【0221】
経過観察期間
対象は、最後の治療注入から始まる少なくとも6ヶ月の期間観察される。第1の経過観察訪問は、最後のイメージングスキャンの7日以内に行われる。第2〜第4の経過観察訪問は、56日の間隔で行われる。加えて、生存状況は、治療の完了又は中止後、かつ試験の経過観察中に電話コール又は対面接触のいずれかによって、約3ヶ月ごとに、無期限に評価される。死亡の日付は、亡くなった全対象について報告される。全生存期間の評価は、スポンサーによる試験の完了又は終了まで行われる。生存以外の他のデータ(例えば、その後の治療、全身状態など)は、これらのコール又は訪問時に収集されない。
【0222】
対象が試験薬治療を中止すると、試験薬中止の日付及び理由は、原文書に文書化されるべきであり、対象は経過観察期間に入るべきである。対象が試験を中止されると(治療又は経過観察期間中に)、その試験訪問に関連する全評価が行われ、試験中止の日付及び理由が原文書に文書化されることを確実にするために、全努力がなされるべきである。
【0223】
治療及び経過観察期間の完了後、全ての生存対象は3ヶ月ごとに生存状況について無期限に観察される。
【0224】
試験薬の物理的特性
CM−24は、使い捨ての10mLバイアル中に供給される。各バイアルは、100mgと同等のCM−24の濃縮液(10mg/mL)を含有する。
【0225】
CM−24は、プロトコル指定の用量で、0.2ミクロンのインラインフィルターを用いて静脈内注入として投与される。
【0226】
異なる用量の調製のための指示:
0.1mg/kg、0.3mg/kg及び1.0mg/kgの用量を受け取る対象については、50mLの0.9%塩化ナトリウムIVバッグが調製のために使用される。注入は、1.0mL/分の速度で進めるべきである。用量調製中のラウンディングは、どうしても必要なときだけに行われるべきであり、0.25mg/mLの最小濃度を維持することが可能となる方法でのみ行われるべきである。
【0227】
3mg/kgの用量を受け取る対象については、100mLの0.9%塩化ナトリウムIVバッグが調製のために使用される。注入は2.0mL/分の速度で進めるべきである。用量調製中のラウンディングは、どうしても必要なときだけに行われるべきである。
【0228】
10mg/kgの用量を受け取る対象については、250mLの0.9%塩化ナトリウムIVバッグが調製のために使用される。注入は3.0mL/分の速度で進めるべきである。用量調製中のラウンディングは、どうしても必要なときだけに行われるべきである。
【0229】
薬力学的(PD)マーカー
血液試料は、以下の時点:第1の試験薬投与の投薬前、サイクル1の試験薬投与の第1及び第4の投薬後48時間、各完全サイクル(用量漸増のサイクル2〜6、及び拡大コホートの全サイクル)の第4(最後)の投薬の投薬前、第2〜第4の経過観察訪問時に採取され、免疫アッセイ及び他の評価について試験され、それには以下のものが含まれる:
・蛍光活性化細胞選別(FACS)による活性化マーカー(CD69、CD107a及びHLA−DR)と組み合わせたリンパ球サブタイプ(CD4、CD8及びCD56)、調節性T細胞
・リンパ球サブタイプ中のCEACAM1発現
・血清中の可溶性CEACAM1及びグランザイムB
・CM−24によるCEACAM1受容体占有率
・骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC)(CD14+、HLADR低、CD11b+)
・免疫チェックポイントタンパク質、例えば、PD−1、TIM−3、LAG、Vista
【0230】
薬物動態(PK)
薬物動態は、最初の注入(サイクル1の最初の投薬)中及び第4の注入(サイクル1の最後の投薬)中の用量漸増部分中に最初に試験される。投薬前レベルも、第1のサイクル中の各治療前に測定される。追加の用量拡大対象(最大6人)は、CM−24のより強固なPK特性評価が正当と認められる場合に、予備RP2DでPK評価について試験され得る。
【0231】
血漿中のCM−24のPKプロファイルは、最初の投薬については投薬後15日目までに、かつ第4の投薬については注入後36日目に評価される。以下のPKパラメータ:Cmax、t1/2、Tmax、AUC0−t、及びAUC0−∞は、時間プロフィールに対する血漿濃度から導出される。
【0232】
試料は、第1及び第4の注入時、以下の時点:注入前(ベースライン);注入の終了時及び注入後1時間、4時間、8時間、24時間に採取される。第1及び第4の投薬のみについては、3日目、5日目、8日目、15日目(又は次の治療の投薬前)、並びに第4の投薬については、さらに注入後22日目及び36日目。投薬前レベルは、第1サイクル中の各治療前に測定される。試料収集及び試料出荷のさらなる詳細については、イベントのスケジュール及び実験マニュアルを参照されたい。
【0233】
新鮮な腫瘍生検
腫瘍試料は、以下のこと:CD4、CD8、CD56、FOXp3、CEACAM1、グランザイムB、CM−24、CM−24によるCEACAM1受容体占有率について評価される。
【0234】
用量漸増部分:対象は、ベースライン及び第1のサイクルの第2の治療後1週間の時点で、任意の新鮮な生検組織(又は過去6ヶ月以内に採取された場合は記録される)試料を提供することを求められる。
【0235】
拡大部分:2つの新鮮な腫瘍試料が、スクリーニング時及び第1のサイクルの第2の投薬後1週間の時点で採取される。加えて、対象は、第1のサイクルの第4の治療後1週間の時点で追加の生検を提供するように促されるが、提供する必要はない。
【0236】
有効性エンドポイント
以下のエンドポイントは、予備的有効性を評価するために使用され、変更されたRECIST 1.1基準から導出される:
・客観的奏効率(ORR)
・奏効期間(DOR)
・腫瘍反応状態
・病勢制御率(DCR)
・持続性反応(Durable Response (DR))
・最良総合効果(BOR)−完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定疾患(SD)及び進行性疾患(PRD)
・無増悪生存期間(PFS)
・反応までの時間(TTR)
・全生存期間(OS)
・CT又はMRIによって評価される腫瘍量変化率(PCTB)。
【0237】
上に列挙した有効性エンドポイントは、以下の点で評価される:
用量漸増コホート:
・7週目、第1のサイクルの第4の投薬後1週間投与された。
・11週目、第1のサイクルの第4の投薬後5週間投与された。
・追加の5サイクル後18〜19週、26〜27週、34〜35週、42〜43週、48〜49週及び50〜51週目、プラスの第2〜第4の経過観察訪問。
用量拡大コホート:
・7〜8週、14〜15週、22〜23週、30〜31週、38〜39週、46〜47週目、プラスの第2〜第4の経過観察訪問。
【0238】
免疫関連有効性エンドポイント
追加の予備的有効性評価は、RECIST 1.1(irRECISTとも呼ばれる)への変更に基づく免疫関連反応基準(irRC)の適用を含み、以下のエンドポイントを含み得る:
・反応カテゴリirCR、irPR、irSD、irPDでの免疫関連最良総合効果(irBOR)
・全試験期間中の客観的免疫関連奏効率(irORR)
・ir−反応を有するそれらの対象のir奏効期間(DOirR)
・任意の数のサイクル中のirBOR結果に基づくirORRも導出され得る。
【0239】
薬物動態(PK)エンドポイント
薬物動態は、以下のPK時点の間の用量漸増部分中で試験される:試料は、第1、並びに第4の注入時、以下の時点:注入前(ベースライン);注入の終了時及び注入後1、4、8、24時間に採取される。第1及び第4の投薬については、3日目、5日目、8日目、15日目(次の治療の投薬前)、並びに第4の投薬については、さらに注入後22日目及び36日目。投薬前レベルは、第1のサイクル中の各治療前に測定される。
【0240】
追加の用量拡大対象(最大6人)は、CM−24のより強固なPK特性評価が正当と認められる場合に、予備RP2DでPK評価について試験され得る。
【0241】
実施例7.製剤
本発明のヒト化mAbの典型的な製剤は、以下のものを含む:
【表9】
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A-1】
図3A-2】
図3B-1】
図3B-2】
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図15C
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]