特許第6805439号(P6805439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805439
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】冷暖房パネルヒータシステム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20201214BHJP
   F24F 1/0007 20190101ALI20201214BHJP
   F24D 3/16 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F24F5/00 101B
   F24F1/0007 331
   F24F5/00 K
   F24D3/16 C
   F24D3/16 K
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-78524(P2017-78524)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-162961(P2018-162961A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2020年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】510113368
【氏名又は名称】株式会社 テスク資材販売
(73)【特許権者】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 高光
(72)【発明者】
【氏名】久野 幸男
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−105782(JP,A)
【文献】 特開2008−075922(JP,A)
【文献】 特開2017−024352(JP,A)
【文献】 特開2011−226742(JP,A)
【文献】 特開2012−093050(JP,A)
【文献】 特開2010−107151(JP,A)
【文献】 特開2015−059670(JP,A)
【文献】 米国特許第04168740(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 1/0007
F24D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面から天井面に亘って立設した枠体の左右の両側柱間の空間内に、複数の細管群の上下端にヘッタ管によって連通した、同形状の、前側パネルと後側パネルとを重層した縦長タイプの柵状パネルヒータの上端を吊下げ形態で配置するものであり、前記後側パネルの下側ヘッタ管の下端に、左右小間隔で、冷温水供給口及び冷温水排出口を付設し、一方に床下空間から延出した往き側パイプを、他方に還り側パイプを連通接続したことを特徴とする、冷暖房パネルヒータシステム。
【請求項2】
前記冷温水供給口を前記後側パネルの右端細管に整合して前記下側ヘッタ管に突設し、前記冷温水排出口を前記後側パネルの右から4番目の細管に整合して前記下側ヘッタ管に突設させた、請求項1に記載の冷暖房パネルヒータシステム。
【請求項3】
前記枠体の両側柱間の長さ方向全長に亘り、縦長タイプの前記柵状パネルヒータ下方に配置するねじ固定のドレンパンは、右側の底板上に、前記柵状パネルヒータの熱伸縮によって長さ方向に伸縮する、前記往き側パイプ及び還り側パイプを貫通摺動させる2本の鞘管を起立した、請求項1又は2に記載の冷暖房パネルヒータシステム。
【請求項4】
前記冷温水供給口及び前記冷温水排出口に接続する接続金具の下端縁には、管及び被覆保温材とで成る被覆パイプの、前記往き側パイプ及び還り側パイプの上端を、管を剥き出しにした前記被覆パイプを連通接続するものであり、凸形状のゴムキャップを用いて、前記ゴムキャップの上側小径部を前記管に被着し、前記ゴムキャップの下側大径部を前記被覆パイプ及び鞘管に被着し、前記ゴムキャップの下端を前記ドレンパンの底板上に載置して配置する、請求項3に記載の冷暖房パネルヒータシステム。
【請求項5】
細長タイプの前記柵状パネルヒータの下端に接続する、前記被覆パイプの往き側パイプ及び還り側パイプを、床下空間内に下降傾斜状に配管して、前記柵状パネルヒータの熱伸縮を吸収する、請求項1から4のいずれか1項に記載の冷暖房パネルヒータシステム。
【請求項6】
前記柵状パネルヒータは、前記前側パネルの上側ヘッタ管に、右端の前記細管と右から2番目の前記細管間に整合して仕切板を配置し、前記後側パネルの上側ヘッタ管及び下側ヘッタ管に、右端の前記細管と右から2番目の前記細管間に整合して前記仕切板を配置し、流水方向を規制した、請求項1又は2に記載の冷暖房パネルヒータシステム。
【請求項7】
前記柵状パネルヒータの流水循環は、前記後側パネルの右端細管を水流上昇路として冷温水を供給し、前記前側パネルの右端細管を水流下降路とし、前記前側パネルの細管群を水流上昇路とし、前記後側パネルの細管群を下降流路として流水する、請求項6に記載の冷暖房パネルヒータシステム。
【請求項8】
前記枠体に配置する前記柵状パネルヒータは、両側端と前記柱との間隔を30〜50mm、上端と天井面との間隔を40〜60mm、後端と背面の壁との間隔を25〜40mm、下端と前記ドレンパンとの間隔を90〜110mmの位置で前記枠体の空間内に設置する、請求項1から3のいずれか1項に記載の冷暖房パネルヒータシステム。
【請求項9】
少なくとも外壁内面に配置した前記枠体の、両側柱内側面に備えた切欠間に、断熱性及び非透過性、反射性の遮熱断熱材を張設配置した、請求項8記載の冷暖房パネルヒータシステム。
【請求項10】
少なくとも前記外壁内面に配置する前記枠体は、前記両側柱と、前記ドレンパンと、仮止材と、前記遮熱断熱材とで構成し、前記枠体内に保持金具及び振止金具を用いて前記柵状パネルヒータを組込みした、請求項9記載の冷暖房パネルヒータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改修用の冷暖房システムの一部として建物内に配置される柵状の熱交換パネルである。
【背景技術】
【0002】
建物内の冷暖房システムとしては、ルームエアコンなどの冷暖房装置を用いたものが代表的であるが、近年、建物内に配置された熱交換パネルに冷温水を循環供給し、熱交換パネルからの熱放射によって建物内の暖房や冷房を行う冷暖房システムが提案されている。
図8は、特許文献1として挙げた従来例1の「温水循環暖房器」であって、本出願人が特開2009‐222297号(特許第4514806号)として提案したものであり、図8(A)はパネルヒータの左側面図、図8(B)は前側パネルの正面図、図8(C)は右側面図、図8(D)は後側パネルの正面図であって、符号のf1〜f11は流水を示すものである。
【0003】
従来例1(図8)のパネルヒータは、同径同長のプラスチック製細管群を並列配置し、上端及び下端をプラスチック製ヘッタ管によって連通した2枚の放熱パネルを、スペーサパイプ及び導水パイプを介在して前後重層一体化したものであり、前側パネルの下側ヘッタ管に温水供給口を付設し、温水供給口と同位置の後側パネルの下側ヘッタ管に温水排出口を付設した、全プラスチック製パイプから成る、吊下げ支持の、横長タイプの温水循環放熱パネルで、露出した放熱部を構成する暖房器である。
【0004】
従来例1(図8)のプラスチック放熱器は、前側パネルの下側ヘッタ管に付設する供給口から温水を供給(f1)→下側ヘッタ管を横流(f2)→細管群を上昇流(f3)→上側ヘッタ管を横流(f4)→前側パネルと後側パネルを連通する導水パイプから後側パネルに流水(f5)→左端の細管を下降流(f6)→下側ヘッタ管を横流(f7)→細管群を上昇流(f8)→上側ヘッタ管を横流(f9)→右端の細管を下降流(f10)→後側パネルの下側ヘッタ管に付設する排出口から排出(f11)させるものであり、短尺の細管で形成する放熱器は熱伸縮の影響は小さい。
【0005】
図9は、特許文献2として挙げた従来例2の「冷温水循環パネルヒータ」であって、本出願人が特開2014‐19056号(特許第5732095号)として提案したものであり、図9(A)はパネルヒータの左側面図、図9(B)は前側パネルの正面図、図9(C)は右側面図、図9(D)は後側パネルの正面図であって、符号のf1〜f11は流水を示すものである。
【0006】
従来例2(図9)のパネルヒータは、従来例1と同様の構造で、同径同長のプラスチック製細管群を並列配置し、上端及び下端をプラスチック製ヘッタ管によって連通した2枚のパネルヒータを、スペーサパイプ及び導水パイプを介在して前後に重層一体化したものであり、前側パネルの上側ヘッタ管の右端上側に冷温水供給口を付設し、後側パネルの上側ヘッタ管に供給口と同位置に排出口を付設した、全プラスチック樹脂製パイプから成る、露出した放熱部を構成する吊下げ支持の、縦長のパネルヒータである。
【0007】
従来例2(図9)のパネルヒータは、前側パネルの上側ヘッタ管に付設する供給口から冷温水を供給(f1)→右端の細管を下降流(f2)→下側ヘッタ管を横流(f3)→細管群を上昇流(f4)→上側ヘッタ管を横流(f5)→前側パネルと後側パネルを連通する導水パイプから後側パネルに流水(f6)→左端の細管を下降流(f7)→下側ヘッタ管を横流(f8)→細管群を上昇流(f9)→上側ヘッタ管を横流(f10)→後側パネルの上側ヘッタ管に付設する排出口から排出させるものであり、パネルヒータは上側を固定し、供給口及び排出口は上側ヘッタ管に付設しているため、細管が熱伸縮しても支障はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4514806号 (特開2009−222297号)
【特許文献2】特許第5732095号 (特開2014−19056号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来例1(図8)のプラスチック温水循環暖房器は、前側パネルから押圧された空気や、温水内の溶存酸素が気体化して、後側パネルの大径の上側ヘッタ管に滞留し、小径の右端細管の下降流でのエアの誘導は難解であり、流水不足による放熱斑や空気滞留による流水停止が生じるため、エア抜き機構が必須となる。
また、温水循環暖房器は、温水供給時に、温水供給口上部の右端細管から遠方の左端細管に向って、細管群に下降傾斜状に温水が供給され、露出前面の前側パネルの右側の一部に熱変位が生じ、蛇行して美観上の問題がある。
【0010】
従来例2(図9)のパネルヒータは、前側パネルの上側ヘッタ管右端の供給口から、冷温水が右端細管を下降流で供給され、露出前面の前側パネルの右端細管に熱変位が生じ、蛇行して美観上の問題がある。
また、従来例1(図8)の温水循環暖房器も、従来例2(図9)のパネルヒータも、供給口及び排出口が前後同位置で近接(中心間距離:18.5mm)して配置され、パイプの接続作業、保温材の被覆作業が煩雑であり、ヘッタ管と供給口、排出口の接合部に亀裂が生じ漏水の恐れがある。
【0011】
本願発明は、これら従来例の問題点を一挙に解決又は改善した改修用の居室配置型の冷暖房パネルヒータシステムを提供するものであって、床下空間の懐(上下方向空間)の狭い鉄骨造、鉄筋コンクリート造の居室や、床下空間の懐の広い木造建物に適用でき、居室内の壁面に直交配置や、予め枠体内にパネルヒータを取付けした一体化パネルも可能であって、実用性の高い居室配置の冷暖房パネルヒータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の冷温水循環パネルヒータは、同径同長の多数のプラスチック製細管群を並列配置して、上端及び下端をプラスチック製ヘッタ管によって連通した、前側パネル及び後側パネルを、上側ヘッタ管の両端に導水パイプで通水可能に、下側ヘッタ管の両端にスペーサパイプで通水不能に接続して、前側パネルと後側パネルとを前後に重層一体化した縦長タイプの柵状パネルヒータである。
【0013】
また、後側パネルの下側ヘッタ管下端には、流路の上昇路となる右端の細管と整合して冷温水供給口を付設し、流路の下降路となる右端細管と小間隔で冷温水排出口を付設する、全プラスチック製パイプから成る冷温水循環パネルヒータであり、上側及び下側のヘッタ管の両端縁にヘッタ管と同径の小口板を配置して管を閉止し、前側パネルの上側ヘッタ管に、右端の細管及び右から2番目の細管間と同位置にヘッタ管と同径の仕切板を配置し、後側パネルの上側ヘッタ管及び下側ヘッタ管に前側パネルと同様に、右端細管及び右から2番目の細管と同位置に仕切板をおのおの配置して、パネルヒータ内の流水方向を規制する。
【0014】
柵状パネルヒータの取付けは、パネルヒータの両側に間隔を設けて立設する枠体の柱内面上側に、両端を屈曲した金属製の受金具を配置し、受金具の左右方向中央の上側に穿設する嵌合溝に板状の金属製支持バーを差し渡し状に嵌入配置し、上視コ字形状の下側に嵌合溝を備えた支承金具を支持バー両端に取付け、後側パネルの隣接する2本の細管を嵌合する形態で当接し、支承金具にパネルヒータの上側ヘッタ管を載置してパネルヒータを吊下げ配置するものであり、パネルヒータの下側はクランク形状の金属製の振止金具を、両端の細管及び両端から2番目の細管間に先端突出辺を挿入し両側の柱に配置して、パネルヒータ下側の前後動、左右動を阻止する。
【0015】
また、柵状パネルヒータの上下適所に間隔配置して、パネルヒータの前側パネル及び後側パネルの全細管を、パネルヒータの全幅に亘って拘束し、全細管相互の位置関係を確保する、開口を備えた円弧弾性クリップ群を穿設したプラスチック製連結具を配置して、パネルヒータの剛性を付与する。
【0016】
パネルヒータ内の冷温水の水流循環は、後側パネルの下側ヘッタ管下端に付設する冷温水供給口からの流入(f1)が右端細管の上昇流(f2)→後側パネルから右端導水パイプを流水(f3)して前側パネルへ→前側パネルの右端細管の下降流(f4)→下側ヘッタ管内の横流(f5)→細管群の上昇流(f6)→右側ヘッタ管内の横流(f7)→前側パネルから左端導水パイプを流水(f8)して後側パネルへ→後側パネルの上側ヘッタ管内の横流(f9)→細管群の下降流(f10)→下側ヘッタ管内の横流(f11)→後側パネルの下側ヘッタ管下端に付設する排出口からの排出(f12)と循環し、後側パネルの下側右端の供給口から、供給口と間隔(標準中心間距離:60mm)を設けて下側ヘッタ管の下端に付設した冷温水排出口に循環流水する。
【0017】
この場合、高温水が流水する後側パネルの右端の細管を前側パネルの複数の細管群で目隠しさせて、右端の細管の熱変形を隠蔽形態とするのが美観上好ましい。
また、冷温水循環パネルヒータ内の空気や冷温水内の溶存酸素の気体は、前側パネルの細管群の上昇流水(f6)によって上側ヘッタ管に押圧し、後側パネルの細管群の下降流水(f10)して下側ヘッタ管下面に付設する排出口からパネルヒータ外に排出することで、エア抜き機構を不要として冷温水の均斉な流量を確保し、パネルヒータから均質な熱放射を行う。
【0018】
吊下げ支持のプラスチックパネルヒータは、薄肉の細管の自然表面温度と暖房時の表面温度の差によって細管の伸縮が発生し、例えば暖房前の細管温度が0℃、暖房時の表面温度が40℃、細管の上下長さが2000mmの場合、細管は下方に12mm(線膨張率:1.5×10−4m°C)伸長するため、パネルヒータの下方に配置して結露水を処理するためのドレンパンの底板上に、供給口及び排出口の位置に整合させて、保温材被覆パイプの往き側パイプ及び還り側パイプがおのおの貫通摺動する鞘管を立設して、縦長タイプのパネルヒータの伸縮を自由形態とするのが好ましい。
【0019】
また、懐(上下方向空間)の小さな床下空間に、被覆パイプの往き側パイプ及び還り側パイプを配管する場合、両被覆パイプを鉄筋コンクリート製床スラブの構造床面に敷設し、枠体のドレンパンの略同位置の床面にドレンパンより小形状の切欠孔を穿設して、枠体下側の床下空間内で上昇傾斜状に屈曲させ、冷温水供給口及び冷温水排出口に整合して起立させてパネルヒータに接続すれば、パネルヒータの熱伸縮に伴なう被覆パイプの伸縮は傾斜配管部で吸収させることができ、全ての配管終了後にドレンパン前端下側の、両側柱間の全長に亘って板状の幕板を配置して配管を隠蔽し、美観を維持する。
【0020】
そして、ドレンパン上部の金属製接続金具下側の、往き側パイプ及び還り側パイプの上端は、予め被覆保温材を除去して管を剥き出しにし、慣用の凸形状のゴムキャップを、下端をドレンパンの底板上に載置し、小径部を管に、大径部を被覆保温材及び鞘管に被着することで、被覆パイプの伸縮にも追随し、パネルヒータ及び接続金具からの結露水は、鞘管内に流入することなく、確実にドレンパン内に誘導流水させるのが好ましい。
【0021】
パネルヒータを配置する枠体は、両側の柱の幅(奥行き)寸法(標準幅:120mm)中央にパネルヒータを配置することで、間仕切り壁の表面結露を阻止する離隔寸法(標準:30mm)を確保し、パネルヒータ側端と柱との間隔(標準:40mm)を保持すれば、パネルヒータを支承する保持金具の支持バー両端や受金具、柱が結露することがなく、従って、枠体の両側の柱は、鋼製やアルミニウム製などの角パイプ、木材で良く、典型的には取付け利便性が高い木製柱を採用するのが良い。
【0022】
また、屋外の熱影響を受けやすく、壁の内部結露や壁前面の表面結露が生じやすい外壁内面にパネルヒータを配置する場合、枠体の両側柱は幅広(標準幅:150mm)とし、両側の柱内面の後端に、アルミシート及び断熱板とから成る遮熱断熱材(標準厚さ:30mm)を配置し、断熱性によって、屋外から外壁内面への熱負荷を抑制し、非透湿性によって、外壁内の湿潤作用によるダニ、カビの発生を抑止し、反射性によって、パネルヒータから遮熱断熱材への熱放射を反射し、居室内の熱環境を向上させるのが好ましい。
【0023】
本発明の冷温水循環パネルヒータは、パネルヒータ下端の供給口に連通する往き側パイプ、排出口に連通する還り側パイプ、及びドレンパンに連通する排水管を、懐(上下方向空間)が狭く(最小有効空間の高さ:40mm)、凹凸がなく配管自由性が高い鉄筋コンクリート床スラブの構造床面に布設し、居室の既存床部を撤去することなく床下空間内に配管することができる。
【0024】
また、軽量の、例えば幅(左右長さ)が510mm、高さ(上下長さ)が2050mm、厚さが58.5mmのパネルヒータは重量が6.9kgと軽く、両側の柱と、ドレンパンと、仮止材とから成る枠体内に、予め保持金具、振止金具を用いて取付けして設置場所に搬送すれば、作業日程の短縮が可能で、熱伸縮を吸収し、インテリアへの影響が小さく、耐震性に優れた縦長タイプのパネルヒータは改修用に好適である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のパネルヒータは、冷温水の供給、排出を後側パネルの下側から実施しながら、後側パネルの上側ヘッタ管に滞留しやすい軽量の空気を、水流方向を規制してパネルヒータの下側から排出し、温度斑のない均質の冷却加熱面を提供する。
また、最初に温水が供給され、熱変形が発生しやすい右端細管を後側パネルに配置し、前側パネルの複数の細管群で目隠しし見苦しい部位を隠蔽形態として、美観を保持することができる。
【0026】
パネルヒータの熱伸縮は、保温材を被覆した被覆パイプの往き側パイプ及び還り側パイプをドレンパンの底板上に立設した2本の鞘管内を、自由に上下移動を可能に貫通させ、往き側パイプ及び還り側パイプの屈曲傾斜部で吸収させれば、パネルヒータは循環水の温度に拘束されずに伸縮可能となり、屈曲変位を阻止して美観を維持することができる。
【0027】
また、金属製のドレンパン上部に位置する接続金具下側の、往き側パイプ及び還り側パイプの上端は、予め被覆保温材を除去して管を剥き出しにし、慣用の凸形状のゴムキャップを、下端をドレンパンの底板上に載置し、小径部を管に、大径部を被覆保温材及び鞘管に被着することで、被覆パイプの伸縮に追随し、パネルヒータ及び接続金具からの結露水は、鞘管内に流水することなく、ドレンパンに確実に流水するものであり、鞘管内面は、被覆パイプの被覆保温材の介在で結露の発生はなく、ドレンパンもパネルヒータからの離隔間隔(標準寸法:100mm)の保持で、ドレンパン自体の結露はなく接続金具の保温材の被覆が不要であり、美観上、保守性に優れるパネルヒータシステムの構築が成る。
【0028】
パネルヒータの冷温水供給口及び排出口は、後側パネルの下側ヘッタ管に間隔(標準中心間間隔:60mm)を設けて並設し、供給口及び排出口と往き側パイプ及び還り側パイプとは接続金具を介在して連通接続するものであり、間隔を設けた接続作業は容易で、下側ヘッタ管と供給口、排出口との接続部の亀裂を阻止する。
また、懐(上下方向空間)の狭い床下空間の上下方向有効寸法は、保温材を被覆した排水管の外径以上(標準:40mm)あればよく、懐の狭い鉄骨造や鉄筋コンクリート造の二重床の空間に配管が可能で、改修用にも好適な冷暖房パネルヒータを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例図であって、(A)は接続配管を露出形態とした一部切欠正面図、(B)は一部切欠縦断側面図、(C)は横断面図である。
図2】本発明のパネルヒータの説明図であって、(A)は横断面図、(B)は左側面図、(C)は前側パネルの正面図、(D)は後側パネルの前側パネルからの正面図、(E)は右側面図である。
図3】パネルヒータの流水説明図であって、(A)は左側面図、(B)は前側パネルの正面図、(C)は右側面図、(D)は後側パネルの前側パネルからの正面図である。
図4】パネルヒータの保持手段説明図であって、(A)は保持金具の斜視図、(B)は使用状態縦断側面図、(C)は振止金具の使用状態部分横断面図、(D)は使用状態部分側面図である。
図5】細管群の連結手段説明図であって、(A)は連結具の使用状態縦断側面図、(B)は平面図である。
図6】ドレンパンの説明図であって、(A)は一部切欠斜視図、(B)は側面図、(C)は使用状態部分正面図、(D)は還り側パイプとの関係を示す縦断側面図である。
図7】枠体の説明図であって、(A)は間仕切壁への使用状態横断面図、(B)は外壁内面への使用状態横断面図、(C)は(A)の部分斜視図、(D)は(B)の部分斜視図である。
図8】従来例1のパネルヒータ説明図であって、(A)は左側面図、(B)は前側パネルの正面図、(C)は右側面図、(D)は前側パネルからの後側パネルの正面図である。
図9】従来例2のパネルヒータ説明図であって、(A)は左側面図、(B)は前側パネルの正面図、(C)は右側面図、(D)は前側パネルからの後側パネルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[冷暖房パネルヒータシステムの全体構成(図1)]
本発明を室内の間仕切壁75前面に、両側の柱61は、下端の所定間隔はドレンパン2で確保し、上端の所定間隔は仮止材63で所定寸法を確保して、立設固定し、放熱パネルヒータシステムを構築した。
図1は本発明システムの全体構成を示す説明図であって、図1(A)は接続配管を露出形態とした正面図、図1(B)は縦断側面図、図1(C)は横断面図である。
本発明の全体構成は、図1に示すように、所定位置に、両側柱61の内側間寸法が430mmで、床面71から天井面74までの寸法が2300mmの占有空間に、厚さが30mmの2本の柱61間に、放熱パネルヒータシステムを組み込んだものである。
【0031】
柵状放熱パネルヒータ1は、上側ヘッタ管13と下側ヘッタ管13間に多数の細管14群を並列密集配置した、保形性の乏しいパネルヒータ1の2枚を重層一体化した、薄型で、発熱効率の高い全プラスチック樹脂製パネルヒータ1を用い、該パネルヒータ1の上部部位には、両側の柱61間に差し渡し固定した保持金具4で、前後左右動を規制して吊下げ支持し、放熱パネル1の下方では、両側の柱61に取付けたドレンパン2を、放熱パネル1とドレンパン2とには、空気流通間隔及び接続金具53の取付け間隔を保ち、ドレンパン2底面と居室の床面71とには、往き側パイプ51及び還り側パイプ52の配管作業間隔を保って配置した。
【0032】
そして、吊下げたパネルヒータ1に対し、保形性を向上させるために、連結具31によって前後2枚の放熱パネル11、12の、全縦パネル14の相互関係を拘束するとともに、パネルヒータ1の下方部位では前側パネル11、及び後側パネル12間に、両側柱61に固定した振止金具32を差し込み、前後左右動を規制してパネルヒータ1の剛性を高めた。
【0033】
[柵状パネルヒータ(図2)]
パネルヒータ1は、床下空間73内に配管した往き側パイプ51からの冷温水の供給循環、還り側パイプ52への排出循環によって、室内に熱放射するものであって、同寸の2枚のパネルを前後に配置するものであり、図2(A)は横断面図、図2(B)は前側パネル11と後側パネル12とを一体した左側面図、図2(C)は前側パネル11の正面図、図2(D)は後側パネル12の前側パネル11から正面図、図2(E)は右側面図である。
【0034】
柵状パネルヒータ1の全体形状は、図2に示すように、高さ(上下長さ)が2000mm、幅(左右長さ)が350mm、前後厚さが58.5mm、上側ヘッタ管13と下側ヘッタ管13との間に、多数の細管14群を差し渡し状に連通した、使用全パイプがプラスチック樹脂パイプから成る前側パネル11と、前側パネル11と同一構造の後側パネル12とを、前後に、前側パネル11のヘッタ管13と後側ヘッタ管13とを対向間隔4.5mmを保って、一体化したものである。
また、形状寸法は、パネルヒータ1を配置する居室の熱負荷などで決定すれば良い。
【0035】
柵状パネルヒータ1のヘッタ管13は、外径27mm、肉厚5mmであり、細管14は外径13mm、肉厚1.6mmであり、共に、ポリプロピレン・ランダム・コポリマー樹脂(PPR樹脂)であって、表面が0.2mm厚の高機能塗膜層となるように、二層押出成形して定寸に切断準備する。
そして、各細管14群を、上側ヘッタ管13と下側ヘッタ管13とに細管14群を中心間距離20mmで融着接合して、上側ヘッタ13の上端面から下側ヘッタ13間の寸法、即ちパネルヒータ1の高さが2000mmの、同一形状の前側パネル11及び後側パネル12を準備する。
【0036】
柵状パネルヒータ1には、図2(C)及び(D)に示すように、上側ヘッタ管13及び下側ヘッタ管13の左右端には小口板15を配置し、後側パネル12の下側ヘッタ管13下端に、細管14材を切断したパイプ片を、右端の細管と整合して冷温水供給用の供給口Sを下方に突設し、パネルヒータ1の左右長さ(幅)に限らず右から4番目の細管と整合して冷温水排出用の排出口Rを下方に小間隔(中心間距離:60mm)で突設するものであり、前側パネル11及び後側パネル12の上側ヘッタ管13右端、及び後側パネル12の下側ヘッタ管13の右端とには、右端の細管と右から2番目の細管の連通を遮断する仕切板16をおのおの配置する。
【0037】
そして、2枚の放熱パネルを、上側ヘッタ管13相互の間隔4.5mmを保って、2枚のパネル11、12を、上側ヘッタ管13間の両隅を導水パイプ17で連通可能に接続し、下側ヘッタ管13間の両隅を流水停止のスペーサパイプ18で連結すれば、2枚重ねで、後側パネル12の供給口Sと排出口とが間隔(中心間距離:60mm)を保って突設したパネルヒータ1が得られる。
【0038】
得られたパネルヒータ1は、各細管14間の隙間の間隔は7mmで、細管14群の対向間隔が18.5mm、高さ2000mm、厚さが58.5mmの全プラスチック樹脂パネルヒータ1となる。
そして、PPR樹脂製の細管14群は、人体に良いとされる8μm〜14μmの波長の輻射波を高い放射率(平均0.95)で熱放射するため、高性能輻射冷暖房放熱器となる。
【0039】
[柵状パネルヒータの水流(図3)]
図3(A)は前側パネル11と後側パネル12とを一体化したパネルヒータ1の左側面図、図3(B)は前側パネル11の正面図、図3(C)はパネルヒータ11の側面図、図3(D)は後側パネル12の正面図である。
図3に示すように、後側パネル12の下側ヘッタ管の右側下端の冷温水供給用の供給口Sから流入し、パネルヒータ1内を流水して、供給口Sに近接する下側ヘッタ管の排水口Rから排出させるものである。
【0040】
パネルヒータ内の水流循環は、図3に示すように、後側パネル12の右側下端の供給口Sから流入(f1)する冷温水は、右端の細管14内を上昇流水(f2)→上端の導水パイプ17内の後側パネル12から前側パネル11への流水(f3)→前側パネル11の右端の細管14内の下降流水(f4)→下側ヘッタ管13内の横方向流水(f5)→細管14群の上昇流水(f6)→上側ヘッタ管13内の横方向流水(f7)→左端導水パイプ17内の前側パネル11から後側パネル12への流水(f8)→上側ヘッタ管13内の横方向流水(f9)→細管14群の下降流水(f10)→下側ヘッタ管13内の横方向流水(f11)→後側パネル12の右側下端の排出口Rから流出(f12)し、後側パネル12の下側右端の供給口Sから供給口Sとの間隔(標準中心間距離:60mm)を設けて配置した排出口Rへと循環流水する。
【0041】
また、冷温水内の溶存酸素やパネルヒータ1内の空気は、前側パネル11の細管14群内を上昇流水(f6)で押圧して、後側パネル12に誘導し、空気が滞留しやすい後側パネル12の上側ヘッタ管13からは、細管14群内を下降水流(f10)の落水圧によって排出口Rから流出され、パネルヒータ1は、エア抜き機構を付設しなくても冷温水の水流により排出されるため、露出放熱部の細管14群は適正な流量を確保し、均質な熱放射が奏功する。
【0042】
この場合、後側パネル12の右端細管14は、流水の温度によって熱変形を生じるが、前側パネル11の細管14群が目隠しとなり美観を維持することができる。また、後側パネル12の右から2番目及び3番目の両細管14は、下側ヘッタ管13の左右両側の流水によって流速が低下するが、放熱が低下しやすい後側パネル12への配置でもあり、パネルヒータ1自体の放熱量に支障はない。
【0043】
[枠体(図7)]
枠体6は、室内空間の適宜位置での、床面71から天井面74に亘って、柱61、62を突っ張り形態で立設した左右一対の柱側枠であって、室内に配置するパネルヒータ機構の配置スペースの、前後幅、左右幅、上下高さを規定する枠である。
図7は枠体6の説明図であって、図7(A)は間仕切壁75前面の横断面図、図7(B)は外壁76内面の横断面図、図7(C)は間仕切壁75前面に配置する枠体6の斜視図、図7(D)は外壁76内面に配置する枠体6の斜視図である。
【0044】
間仕切壁75前面に配置する枠体6は、図7(A)及び(C)に示すように、両側の柱61と、金属製のドレンパン2と、上側の仮止材63とで構成し、両側の側枠としての各柱61は、厚さが30mm、幅が120mm、上下長さが天井高さと同一の2300mmの断面矩形状で、アルミやステンレス、鋼のパイプや木製でよく、典型的には立設作業性に優れる木製であって、出隅部には慣用の面取りを施すのが良く、ドレンパン2の代用として木製の上側仮止材63と同様の仮止材を両側の柱61下側に用いても良く、仮止材63はパネルヒータ1取付け後に撤去するものである。
【0045】
また、少なくとも外壁76内面に配置する枠体6は、図7(B)及び(D)に示すように、後端内面に切欠64を備えた両側の柱62と、金属製のドレンパン2と、上側の仮止材63と、外壁内面用として用いる遮熱断熱材65とで構成し、両側の側枠としての各柱62は、厚さが30mm、幅が150mm、上下長さが2300mmの断面矩形状で、後端内面の切欠64間には、アルミシートと成形断熱板とから成る厚さが30mm(標準厚さ)の遮熱断熱材65を配置し、断熱性によって、屋外から外壁76内面への熱負荷を抑制し、非透湿性によって外壁76内の湿潤作用によるダニ、カビの発生を抑止し、反射性によって、パネルヒータ1から遮熱断熱材65への熱放射を反射し、居室内の熱環境を向上させるのが好ましい。
【0046】
[ドレンパン機構(図6)]
ドレンパン機構は、冷暖房パネルヒータシステムで生ずる結露水を支障なく処理する手段であって、両側柱61の対向内側面にドレンパン2を差し渡し状に配置し、底面中央から突設したドレン管24を慣用のドレン処理手段によって連通させるものであり、図6(A)はドレンパン2の斜視図、図6(B)は側面図、図6(C)は使用状態切欠正面図、図6(D)は図6(C)の要部拡大図である。
【0047】
3mm厚のアルミ製ドレンパン2の全体形状は、幅が100mm、高さが50mm、長さが430mmで、底板20から両側板21が起立する断面矩形であって、両端はねじ挿入用孔H1を備えた端板22で閉止し、底板20中央から、肉厚が1mm、径が18mm、長さ30mmのドレン管24を突出し、底板20右端から肉厚1.5mm、径が32mm、長さ30mmの往き側パイプ51及び還り側パイプ52用の鞘管23が、右端板22から55mm、中心間距離60mmの、後側板21から34mmの位置に2本の丸パイプとして起立する。
【0048】
[保持金具(図4(A)及び(B))]
保持金具4は、枠体6の柱61に取付けて柵状パネルヒータ1を吊下げ支承するものであって、両側柱61の内側対向内面に取付ける一対の受金具41と、両側受金具41間に差し渡す1本の長尺の支持バー42と、支持バー42上に摺動自在に嵌合する、複数の支承金具43とからなるものであって、図4(A)は保持金具4の全体斜視図であり、図4(B)は使用状態の縦断側面図である。
【0049】
受金具41は、図4(A)に示すように、縦長孔のねじ孔H2を備えた両側の当接辺411から屈曲突出する両側辺412によって支持辺413を突出形成した、1.5mm厚のステンレス鋼板の屈曲加工物であって、幅が15mm、高さが40mm、長さが60mmである。
【0050】
支持バー42は、厚さ3mm、上下幅が25mmで長さが425mmのステンレス鋼板である。
また、支承金具43は、1.5mm厚のステンレス鋼板の屈曲加工品であって、図4(A)に示すように、幅が40mmで中央垂直片431の両側から長さが34mmの側辺432を前方に突出した、上面視コ字形状であって、図4(B)のように、側辺432が2本の細管14を介在して突出するもので、高さが23mmのものである。
【0051】
そして、両側辺432の上端には、前端fから中間部位にかけて、下底bPが13mm、上底tPが8mm、高さが8mmの台形突起433を備え、両側辺432の下端には、台形突起433の中央に整合して幅3.2mm、深さ13mmの嵌合溝434を垂直に備え、両側辺432の下端の、嵌合溝434と中央垂直片431との間には山形切欠435を備え、中央垂直片431の下縁からは、下方に2個の山形突起436を細管14への当接用に備えたものである。
【0052】
従って、本実施例の保持金具4にあっては、受金具41は、両側柱61の内面に、上下位置調整の下にねじb2固定でき、長尺の支持バー42は、両側の受金具41の嵌合溝414に嵌合して両側受金具41間に差し渡しして保持でき、支承金具43は両側辺432の嵌合溝434で支持バー42の上端に嵌合して、支持バー42上に、適宜間隔で適数個(標準:2個)配置して、図4(B)に示すように、両側辺432を、細管14の2本を介在して細管14間に挿入すれば、側辺432の上端の台形突起433が前後対称の斜辺で、前側パネル11の上側ヘッタ管13と後側パネル12の上側ヘッタ管13とを支承できるものである。
【0053】
[振止金具(図4(C)及び(D))]
振止金具32は、パネルヒータ1の下部を、前後動及び左右動を抑制して保持するものであり、図4(C)は振止金具32の使用状態横断面図であり、図4(D)は使用状態正面図である。
振止金具32は、図4(C)に示すように、1.5mm厚のステンレス鋼板製のクランク金具であり、上下高さが20mm、幅が25mmの取付辺321と、取付辺321の一側縁から、高さが12mmの突出辺323を直交延出し、取付辺321の中央部にねじ孔H3を備えたものである。
【0054】
図4(C)に示す振止金具32は、前側パネル11及び後側パネル12の前後細管14間の対向間隔g6(18.5mm)から、後側パネル12の右端細管14と右から2番目の細管14間の隙間に突出辺323を挿入し、取付辺321を両側の柱61の内面にねじ孔H3を介してねじb3で固定すれば、外端の細管14は前後動が中間片322の当接規制で抑制でき、突出辺323が外方への動きを規制して、パネルヒータ1の下部での前後動及び左右動を抑制する。
【0055】
[連結具(図5)]
連結具31は、パネルヒータ1の上下適所に間隔(標準:600mm)配置して、パネルヒータ1の前側パネル11及び後側パネル12の全細管14を、パネルヒータ1の全幅横断形式で拘束して、全細管14相互の位置関係を確保し、パネルヒータに剛性を付与するものであり、図5(A)は連結具31の使用状態の縦断側面図であり、図5(B)は連結具31の平面図である。
【0056】
連結具31は、耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性に優れたABS樹脂の射出成型品であって、総高さ7.5mm、幅が41.5mm、長さが200mmの断面山形状で、肉厚5mmの中央頂部311から肉厚2.5mmの両側縁へ、上面312も下面313も下降傾斜の水勾配を備え、両側縁には、図5(B)に示すように、開口314を備えた円弧弾性クリップ315群を、パネルヒータ1の細管14群に対応配置したものである。
【0057】
そして、円弧弾性クリップ315の開口314は円弧突片316で形成し、各円弧突片316間には切開二股317を配置して、各円弧突片316の弾撥性の均斉を図り、直径14mmの円弧内面318には、細管14の外周への当接応力増大のための係止用突条319を、2条、間隔(標準:80°)配置したもので、1本の長さ200mmとし、長手方向の、前端の嵌合孔chと後端の嵌合用突起cPとにより、長さ方向に複数本嵌合して所要長とするものであって、パネルヒータ1への嵌合は、図5(B)に示すように、細管14の外表面が円弧弾性クリップ315の最外面よりも外方に突出した位置に占める寸法関係としたものである。
【0058】
従って、連結具31は、図5(A)に示すように、パネルヒータ1の前側パネル11と後側パネル12の対向面間隔g6(18.5mm)内に挿入して、一側縁の円弧弾性クリップ315群を他方の放熱パネルの細管14群に、他側縁の円弧弾性クリップ315群を他方の放熱パネルの細管14群に弾撥嵌合すれば、1本の連結具31が、その嵌合位置で全細管14の相互位置関係を拘束し、連結具31の結露水は上下の水勾配によって側方へ誘導して細管14の外周から下方に導水できるものである。
尚、円弧弾性クリップ315が細管14を弾撥把持した際に、小突条319が円弧内面318と細管14外周面との小隙間を形成するが、該隙間は結露水の流下を促進する。
【0059】
[冷暖房パネルヒータシステムの構築(図1)]
冷暖房パネルヒータシステムの構築は、左右一対の柱61を備えた枠体6を立設固定して、左右方向は、両側の柱61の対向内面間、上下方向は、床面71から天井面74、前後幅は、対向柱61の前後幅間の、冷暖房パネルヒータシステムの配置空間の形成施工と、ドレンパン機構の上部へのパネルヒータ1の配置施工と、床下空間73配管のパネルヒータ1への接続施工とで実施するものである。
【0060】
[配管空間の形成施工(図7)]
間仕切壁75前面に冷暖房パネルヒータシステムを設置するための配置空間は、図7(A)及び(C)に示すように、前後幅が120mm、左右幅が30mm、長さが2400mmの断面矩形の両側柱61の、対向内面間の、下部にドレンパン機構の、幅が100mm、高さが50mm、長さ430mmの金属製ドレンパン2をねじb1で固定し、両側柱61の上部適所に木材の仮止材63を仮止し、上端間及び下端間の間隔寸法を確保した枠体6を間仕切壁75に密接し床面71に起立して、例えば慣用のアングル片を両側柱61の外側面上下端に固定し、下端のアングル片を床面71と、上端のアングル片を天井野縁とに固定して、枠体6を床面71と天井74面間に立設固定すれば、冷暖房パネルヒータシステムの配置空間が形成できる。
そして、枠体6が間仕切壁75前面に密接して床面から天井面に亘って強固に立設固定できた段階で、柱61間に配置した仮止材63を除去すれば、間仕切壁75前面用の配置空間形成が完了する。
【0061】
また、外壁76内面に冷暖房パネルヒータシステムを設置するための配置空間は、図7(B)及び(D)に示すように、前後幅が150mm、左右幅が30mm、長さが2400mmの断面矩形の両側柱62の、対向内面間の、下部にドレンパン機構の、幅が100mm、高さが50mm、長さが430mmの金属製ドレンパン2をねじb1で固定し、両側柱62の上部適所に木材の仮止材63を仮止めし、上端間及び下端間の間隔寸法を確保して、両側柱62の後部切欠64間にアルミシートの遮熱材と断熱板とから成る厚さ30mmの遮熱断熱材65の成形板を、両側柱62間に亘って配置した枠体6を外壁76内面に密接し床面71に起立して、間仕切壁75用と同様に、慣用のアングル片を両側柱61の外側面上下端に固定し、下端のアングル片を床面71と、上端のアングル片を天井野縁とに固定し、枠体6を床面71と天井面74間に立設固定すれば、冷暖房パネルヒータシステムの配置空間が形成できる。
そして、間仕切壁用と同様に仮止材63を除去すれば、外壁76内面用の配置空間形成が完了する。
【0062】
この場合、両側柱61が間仕切壁75前面に、両側柱62が外壁76内面におのおの枠体6を密着配置することで、両側柱61、62が居室内の高温高湿空気のパネルヒータ1裏側への回り込みを低減し、パネルヒータ1裏側の、間仕切壁75前面、外壁内面用の成形遮熱断熱材65表面の結露水発生を抑制する。
【0063】
そして、成形遮熱断熱材65を備えた外壁内面用の枠体6は、外壁76の断熱性能に依存せずに、断熱板が外壁からの熱伝導を阻止し、遮熱材がパネルヒータ1から成形遮熱断熱材65への熱放射を反射し、遮熱材及び断熱板とが湿気の透過を阻止し外壁内の湿潤作用によるダニ、カビの発生を抑制して、室内空間の温熱環境、健康性を保持する。
【0064】
[柵状パネルヒータの配置(図1図4)]
柵状パネルヒータ1は、下端を下方のドレンパン2上面から間隔g3(標準:100mm)を保持した状態となるように、且つ両端が柱61の内面と間隔g1(標準:40mm)を、上端が天井面74と間隔g4(標準:50mm)をおのおの保持して、柱61の前後幅中央に配置するもので、図4(B)に示すように、支承金具43の両側辺432を2本の細管14を介入した形態で、細管14間に後側から挿入し、台形突起433を両上側ヘッタ管13間に下方から挿入し、支承金具43を嵌合した支持バー42の両端を、柱61の内面に固定した受金具41の嵌合溝414に嵌入して支承する。
【0065】
この場合、パネルヒータ1の、上下位置の微調整は、受金具41の、柱61内面への、縦長孔H2を介したねじn2での上下位置調整取付けで、左右位置の微調整は、支持バー42の受金具41に対する嵌合摺動で実施する。
また、パネルヒータ1の下方部位では、図4(C)に示すように、左右一対の、柱61にねじb3で固定した振止金具32の取付辺321の前後位置調整の下に、後側パネル12の両端の細管14及び左右から2番目の細管14間に突出辺323を挿入して実施される。
【0066】
そして、支持バー42両端の結露防止対策として、支持バー42下端から間隔50mm以上、且つ600mm以下を保持した下方位置で、最上の連結具31を前側パネル11と後側パネル12間に挿入して、連結具31を600mmの上下間隔を保ってパネルヒータ1に嵌合係止する。
【0067】
従って、柵状パネルヒータ1の配置は、パネルヒータ1両側端と柱61との間隔g1(標準:40mm)を保持すれば、支持バー両端及び振止金具32に結露の発生を阻止し、パネルヒータ1後端と背面の間仕切壁75との間隔g2(標準:30mm)を保てば、間仕切壁75の結露の発生を阻止し、パネルヒータ1下端とドレンパン2上面との間隔g3(標準:100mm)を保持することで、金属製ドレンパン2自体の外面に断熱材を被覆することなく、パネルヒータ1のパイプ接続作業が容易となり、パネルヒータ1上端と天井面74との間隔g4(標準:50mm)を確保すれば、天井面74への湿気の影響がなくダニ、カビの発生を阻止することができ、そして、床面71とドレンパン2との間隔g5(標準:100mm)を保持すれば、往き側パイプ51及び還り側パイプ52の配管接続作業が容易となる。
【0068】
[配管接続施工(図1(A)、(B)及び図6(C)、(D))]
床下空間73内の配管は、図1(A)に示すように、径9.6mm、肉厚0.8mmの銅製の管54に保温材55を被覆した、径が28mmの慣用の被覆パイプを往き側パイプ51又は還り側パイプ52として準備し、枠体6のドレンパン2の略同位置の床面71にドレンパン2より小形状の切欠孔H4を穿設し、該切込孔H4から慣用のスチールワイヤを挿入し、先端に被覆パイプを緊縛して引込み、枠体6下側で構造床面72上の被覆パイプを上昇傾斜状に屈曲し、冷温水供給口S又は冷温水排出口Rに整合して起立させ、ドレンパン2の内径29mmの鞘管23に下側から挿通し、供給口S又は排出口Rに被着した接続金具53に連通接続する。
【0069】
この場合、供給口Sと排出口Rとは、左右に分離形態(中心間距離:60mm)として後側パネル12下端から垂下しているため、往き側パイプ51又は還り側パイプの接続作業は容易に実施できる。
全ての配管接続作業の終了後に、ドレンパン2の前端下側の、両側柱61間の全長に亘って上下幅100mm(g5)の板状幕板27を配置して、配管を隠蔽し美観を維持する。
【0070】
また、図6(C)に示すように、床下空間73の懐(上下方向空間)が広い場合、各配管は、例えば床面71下側から慣用手法の吊ボルトを介して吊下げ形態で支持するものであり、枠体6のドレンパン2の略同位置の床面71にドレンパン2より小形状の切欠孔H5を穿設し、枠体6下側の床下空間73内で上昇傾斜状に屈曲させ、冷温水供給口S又は冷温水供給口Rに整合して被覆パイプを起立し、ドレンパン2の内径29mmの鞘管23に下側から挿通させて、供給口S又は排出口Rに被着した接続金具53に連通するものであり、全ての配管終了後に切欠孔H5を慣用の手法で閉止し、ドレンパン2の前端下側の、両側柱61間の全長に亘って上下幅100mm(g5)の木製板状材の幕板27を配置して、配管を隠蔽し美観を維持する。
【0071】
そして、ドレンパン2の上部に配置する金属製の接続金具53の下側は、図6(D)に示すように、往き側パイプ51及び還り側パイプ52の被覆パイプ上端は、予め被覆保温材55を除去して管54を剥き出しにし、凸形状のゴムキャップ26を被着し、接続金具53に被覆パイプを接続後、管54にゴムキャップ26の小径部を、鞘管23及び被覆パイプに大径部を被着し、ゴムキャップ26の下側をドレンパン2の底板20上に載着して配置するものであり、パネルヒータ1の供給口S及び排出口Rを伝い流下する結露水や、接続金具53に発生した結露水は、鞘管23内に浸入することなくドレンパン2内に確実に落下誘導される。
【0072】
また、排水管25の配管施工は、図1(A)に示すように、ドレンパン2の中央から下方に突設した径18mmのドレン管24に、径26mm、肉厚2.7mmの塩化ビニル管に保温材を被覆した外径34mmの排水管25を被着接続するものであり、往き側パイプ51及び還り側パイプ52と同様に、枠体6のドレンパン2と略同位置の床面71に切欠孔H4を突設し、該切欠孔H4から慣用のスチールワイヤを挿入して、排水管25のL字形状に折曲した先端に緊縛して引込み、枠体6下側で構造床面72上の排水管25を上昇傾斜状に持上げて先端を起立し、ドレンパン2下端のドレン管24に排水管25を被着接続し、全ての配管終了後にドレンパン2前端下側の、両側柱61間の全長に亘って上下幅100mm(g5)の木製板状材の幕板27を配置して、配管を隠蔽し美観を保持する。
【0073】
そして、枠体6に、保持金具4や振止金具32を用いて、予め柵状パネルヒータ1を配置し一体化枠体として、取付場所に搬送、立設すれば、往き側パイプ51、還り側パイプ52及び排水管25の接続施工を実施することで、短期間に設置可能となり、居住者が住んだまま作業を行うことができ、好適な改修用の冷暖房パネルヒータシステムを構築する。
【0074】
本発明の冷暖房パネルヒータシステムは、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の床下空間の懐(上下方向空間)の狭い(標準有効空間寸法:40mm)居室や懐の広い木造建物にも適用でき、間仕切壁の前面や熱影響を受けて内部結露が発生しやすい外壁の内面にも、両側の柱61、62が固定枠として立設固定できる位置であれば自在に配置でき、目隠し仕切りとしても機能する、実用性が高く、居室のインテリアへの支障が少ない、耐震性に優れた縦長タイプの柵状パネルヒータであって、改修用として最適な冷暖房システムを提供する。
【符号の説明】
【0075】
1 :パネルヒータ
2 :ドレンパン
3 :補強具
4 :保持金具
5 :給排出管
6 :枠体
11 :前側パネル
12 :後側パネル
13 :ヘッタ管
14 :細管
15 :小口板
16 :仕切板
17 :導水パイプ
18 :スペーサパイプ
20 :底板
21 :側板
22 :端板
23 :鞘管
24 :ドレン管
25 :排水管
26 :ゴムキャップ
27 :幕板
31 :連結具
32 :振止金具
41 :受金具
42 :支持バー
43 :支承金具
51 :往き側パイプ
52 :還り側パイプ
53 :接続金具
54 :管
55 :被覆保温材
61、62:柱
63 :仮止材
64 :切欠
65 :遮熱断熱材
71 :床面
72 :構造床面
73 :床下空間
74 :天井面
75 :間仕切壁
76 :外壁
311:中央頂部
312:上面
313:下面
314:開口
315:円弧弾性クリップ
316:円弧突片
317:切開二股
318:円弧内面
319:係止用突条
411:当接辺
412、432:側辺
413:支持辺
414、434:嵌合溝
431:中央垂直辺
433:台形突起
435:山形切欠
436:山形突起
H1、H2、H3:ねじ孔
H4、H5:切欠孔
R :排出口
S :供給口
bP :下底
b1、b2、b3:ねじ
ch :嵌合孔
cP :嵌合用突起
f :前端
g1、g2、g3、g4、g5、g6:間隔
tP :上底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9