(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明の土の品質管理方法、及び土の品質モニタリングシステムの形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0018】
1.定義
本願発明の実施形態の例を説明するにあたって、はじめにここで用いる用語の定義を示しておく。なお、本願発明ではモデル施工と本施工を行うこととしており、それぞれで同様の工程が実施されることから、それぞれで同じ名称を用いることがある。そこで、モデル施工のものと本施工のものを区別するため、「試験」という語と「現地」という語を付加して使用することとする。例えば飽和度であれば、モデル施工におけるものを「試験飽和度」、本施工におけるものを「現地飽和度」とする。また、飽和度Srや含水比wなどアルファベット等とともに表記する場合は、試験含水比w
t、現地含水比w
cのようにモデル施工のものはtを添え、本施工のものはcを添えることとする。
【0019】
(試験材料と現地材料)
本願発明は、造成盛土や道路の路床、路体、河川堤防といった土構造物に用いられる土(盛土材)の締固めの程度を管理する技術であり、締固め度に併せて飽和度をリアルタイムかつ面的に把握することを特徴としている。そして盛土材の転圧は、モデル施工でも本施工でも行われる。そこで、ここではモデル施工で試験的に転圧する対象を「試験材料」と、本施工で転圧する対象を「現地材料」ということとする。さらに、モデル施工で転圧された試験材料を「試験締固め土」と、本施工で転圧された現地材料を「現地締固め土」ということとする。なお試験材料と現地材料は、同種(ただし各物性値は異なってもよい)の盛土材が用いられる。
【0020】
(試験含水比と現地含水比)
本願発明は、試験材料の含水比wを取得するとともに、現地材料の含水比wも取得する。そこで、ここでは試験材料の含水比を「試験含水比w
t」と、現地材料の含水比を「現地含水比w
c」ということとする。
【0021】
(加速度応答値)
加速度応答値CCV(Compaction Control Value)は、先に示した特許文献1にも開示されているように、振動ローラの振動加速度の時間変化を示す加速度波形を用いて、盛土材料の締固め程度を表す値である。より詳しくは、振動ローラの振動輪に取り付けた加速度計によって地盤上で振動輪を振動させたときの加速度(振動輪加速度)を計測し、この振動輪加速度の周波数分析を行った結果得られる振動ローラの基本振動数成分とその他の成分の比によって求められる値が加速度応答値CCVである。本願発明は、モデル施工における試験締固め土の加速度応答値を取得するとともに、本施工における現地締固め土の加速度応答値を取得することから、ここでは試験締固め土のものを「試験加速度応答値CCV
t」と、現地締固め土のものを「現地加速度応答値CCV
c」ということとする。
【0022】
(試験飽和度と試験乾燥密度)
モデル施工では、試験締固め土に対して密度試験等を行い、その飽和度S
rと乾燥密度ρ
dを取得する。ここでは、試験締固め土の飽和度を「試験飽和度S
rt」と、試験締固め土の乾燥密度を「試験乾燥密度ρ
dt」ということとする。
【0023】
(飽和度換算式)
非特許文献1〜3では、締固めた地盤の剛性やその指標であるCBRは、乾燥密度と飽和度Srを変数とする関数によって求められ、含水比wがほぼ一定であれば
CBRと飽和度S
rの間には高い相関があること
を示している。このことから、加速度応答値CCVは、
締固めた地盤の剛性を反映しているので、飽和度S
rを変数とする関数で求めることができ
、含水比wがほぼ一定であれば飽和度Srとの間には高い相関があることが想定できる。ここでは、この関数(つまり加速度応答値CCVと飽和度S
rの関係を表す算式)を「飽和度換算式」ということとする。ところで、下記(式1)に示すように飽和度S
rは乾燥密度ρ
dによって求めることができる。水の密度ρ
wは既知であり、盛土材の土粒子密度ρ
s(=Gs×ρ
w)も試験等により既知とすることができることから、含水比wが既知であれば、飽和度S
rを決めると(式1)によって乾燥密度ρ
dも求められ、逆に乾燥密度ρ
dを決めると下記(式2)によって飽和度S
rも求められる。すなわち飽和度換算式は、加速度応答値CCVと飽和度S
rの関係を表す関数であると同時に、加速度応答値CCVと乾燥密度ρ
dの関係を表す関数でもある。
【数1】
【数2】
【0024】
(現地飽和度と現地乾燥密度)
本願発明は、飽和度換算式に現地加速度応答値CCV
cを入力することで、現地締固め土の飽和度S
rや乾燥密度ρ
dを算出する。ここでは、試験締固め土のものと区別するため、現地締固め土の飽和度を「現地飽和度S
rc」と、現地締固め土の乾燥密度を「現地乾燥密度ρ
dc」ということとする。
【0025】
(評価基準範囲)
本願発明は、既述のとおり本施工の結果得られた現地締固め土を管理する技術であり、現地締固め土の現地飽和度S
rc及び現地乾燥密度ρ
dcを利用して締固めの程度の適否を評価する。そして、この現地飽和度S
rc及び現地乾燥密度ρ
dcと照らし合わせる基準となるものが「評価基準範囲」であり、適否を評価するためのいわば許容範囲である。すなわち、現地締固め土の特性が評価基準範囲にある(収まる)値であれば適正と評価され、評価基準範囲外の値であれば不適と評価される。この評価基準範囲は、文字どおり1点の値ではなく幅をもった値であり、すなわち下限値と上限値によって規定される。具体的には、
非特許文献1〜3で提案されている飽和度管理法に基づいて、含水比と乾燥密度の関係を表すグラフに測定値をプロットした
図1(a)に示すように、最適飽和度を中心に下限値(下限飽和度)と上限値(上限飽和度)を定め、さらに下限含水比と上限含水比を定め、これら飽和度の上限値と下限値、含水比の上限値と下限値、そして乾燥密度の下限値(目標乾燥密度)それぞれの線に囲まれた領域を評価基準範囲とすることができる。あるいは、飽和度と乾燥密度の関係を表すグラフに測定値をプロットした
図1(b)に示すように、やはり最適飽和度を中心に下限飽和度上限飽和度を定め、さらに下限含水比と上限含水比を定め、これら飽和度の上限値と下限値、含水比の上限値と下限値、そして目標乾燥密度それぞれの線に囲まれた領域を評価基準範囲とすることができる。
【0026】
(飽和度管理)
図2は、これまで主流とされてきた締固め曲線に基づく管理手法(以下、「密度管理」という。)の基礎となるグラフ図であり、
図1(a)や
図1(b)は本願発明で採用する飽和度管理の基礎となるグラフ図である。従来の密度管理では、
図2に示すように含水比の下限値(下限含水比)と上限値(上限含水比)を定めることで基準範囲(含水比基準範囲)を設定していた。したがって、
図2で網掛けした領域が含水比基準範囲となり、この領域内にある含水比と乾燥密度の組み合わせが適正と評価される。なお、含水比と乾燥密度の組み合わせがゼロ空隙曲線を超える(上方に位置する)ことはないため、含水比基準範囲は概ね台形となっている。一方、飽和度管理では、
図1(a)で網掛けした領域が評価基準範囲となる。
図1(a)と
図2を比べてみると、含水比基準範囲よりも評価基準範囲の方が斜線領域分だけ小さく(狭く)なっていることが分かる。このことは、密度管理よりも飽和度管理の方が厳密な管理であることを意味しており、すなわち飽和度管理の方が高い精度で締固め土を管理することを意味している。
【0027】
(転圧条件)
転圧を行う際の施工条件、特に転圧の起振力(締固めエネルギー)と転圧機械(振動ローラなど)の走行速度(転圧する移動速度)の組み合わせを、ここでは「転圧条件」ということとする。モデル施工において、転圧条件を変えながら締固めを行い、その都度、試験飽和度S
rtや試験加速度応答値CCV
tを取得し、さらに評価基準範囲と照らし合わせることで、転圧条件の適否を評価することができる。ここでは、試験飽和度S
rtが評価基準範囲を満足する(評価基準範囲内に収まる)転圧条件を特に「適正転圧条件」と、適正転圧条件のうち最適と判断され実際に本施工で採用する転圧条件を特に「現地転圧条件」ということとする
【0028】
2.土の品質管理方法
次に、本願発明の土の品質管理方法について
図3〜
図5を参照しながら説明する。
図3はモデル施工のうち飽和度換算式を設定するまでの主な工程の流れを示すフロー図であり、
図4はモデル施工のうち現地転圧条件を設定するまでの主な工程の流れを示すフロー図、
図5は本施工の主な工程の流れを示すフロー図である。なおこれらのフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。
【0029】
(モデル施工)
図3に示すようにまずは試験材料の試験含水比w
tを取得する(Step101)。試験含水比w
tを取得するにあたっては、サンプリングの炉乾燥(あるいは電子レンジ乾燥)法で測定したり、RI(Radio Isotope)計器を用いて計測したり、従来利用されている種々の計測手法を採用することができる。なお、試験材料の土粒子密度ρ
s(あるいは土粒子の比重Gs)もあらかじめ把握しておく。
【0030】
試験材料を用いて実験フィールドに試験盛土体を構築し、振動ローラ等の転圧機械によって転圧を行いながら転圧中の試験加速度応答値を取得し(Step102)、転圧の結果得られた試験締固め土に対して密度試験等を行うことで、試験飽和度S
rtと試験乾燥密度ρ
dtを取得する(Step103)。そして転圧回数を変えながら、試験加速度応答値取得工程(Step102)〜試験物性値の取得工程(Step103)を複数回実施して、複数組の物性値(試験加速度応答値CCV
t、試験飽和度S
rt、試験乾燥密度ρ
dt)を取得する。
【0031】
試験含水比w
tを取得し、複数組の物性値(試験加速度応答値CCV
t、試験飽和度S
rt、試験乾燥密度ρ
dt)を取得すると、飽和度換算式を設定する(Step104)。例えば、横軸を試験飽和度S
rt(又は試験乾燥密度ρ
dt)、縦軸を試験加速度応答値CCV
tとした座標系に、複数組の物性値をプロットし、これに基づいて求められる回帰曲線(あるいは回帰直線)を、飽和度換算式とすることができる。あるいは、既述したとおり
加速度応答値と飽和度の関係を利用すると、より再現性が高い飽和度換算式を設定することができる。
【0032】
発明者らは実験を繰り返した結果、
非特許文献1〜3で提案されている締固め土のCBRや剛性の経験式と同様に、(式3)に示すように飽和度換算式が乾燥密度のみを変数とする関数(以下、「第1関数f
1」という。)と、飽和度のみを変数とする関数(以下、「第2関数f
2」という。)によって構成されることを解明した。
【数3】
【0033】
また、第1関数f
1が(式4)に示す算式で表すことができ、第2関数f
2が(式5)に示す2次式(3以上のn次式でもよい)で表すことができることを確認しており、したがって(式3)は、(式4)と(式5)から(式6)で表すことができる。なお、a〜eは定数である。
【数4】
【数5】
【数6】
【0034】
以下、
図6を参照しながら、(式3)に示す飽和度換算式を設定するまでの処理の流れを説明する。大まかな手順としては、まず第2関数f
2を定数として扱うことで試験加速度応答値CCV
tと試験乾燥密度ρ
dtの関係を作り、その関係から第1関数f
1を定めるとともに第2関数f
2の値(以下、「第2関数値」という。)を求め、次に第2関数値と試験飽和度S
rtの関係から第2関数f
2を定め、第1関数f
1と第2関数fから飽和度換算式を設定する。
【0035】
図6に示すように、転圧を行って得られた試験材料(つまり試験締固め土)の試験飽和度S
rtと試験乾燥密度ρ
dt、試験加速度応答値CCV
tといった物性値を取得する。そして、転圧回数を変えながら(あるいは、転圧回数及び含水比wを変えながら)試験締固め土の物性値(試験飽和度S
rtと試験乾燥密度ρ
dt、試験加速度応答値CCV
t)を繰り返し取得する。この結果得られた複数組(図ではn組)の物性値のうち試験飽和度S
rtの値が同等である組み合わせを抽出し、試験乾燥密度ρ
dtと試験加速度応答値CCV
tをグラフ上にプロットする。
図7は、試験飽和度S
rtの値が同等である試験乾燥密度ρ
dtと試験加速度応答値CCV
tの関係を示したグラフ(以下、「CCV−ρ
dグラフ」という。)であり、試験飽和度S
rtの値が70〜80%であるケースを実線で示し、試験飽和度S
rtの値が60〜70%であるケースを破線で示している。
【0036】
図7に示すように、試験飽和度S
rtの値が同等である試験乾燥密度ρ
dtと試験加速度応答値CCV
tの間には相当の関係が見られる。したがって、回帰曲線(あるいは回帰直線)を求めることによって
図7に示す関係をCCV−ρ
dグラフで表すことができ、関数(以下、「CCV−ρ
d関数」という。)で表すことができるわけである。ところで、このCCV−ρ
dグラフは試験飽和度S
rtの値が同等であるため、飽和度のみを変数とする第2関数値も変化することなく一定の値となる。つまりこの場合、(式3)における第2関数値(f
2(S
r))は定数(係数)として扱うことができる。故に、CCV−ρ
d関数と、(式3)及び(式4)を照らし合わせることで、第1関数f
1を定める(つまり定数d、eを決定する)ことができ、同時に第2関数値も定めることができるわけである。
【0037】
1種類のCCV−ρ
d関数が得られ、第1関数f
1と第2関数値を定めることができると、同等となる試験飽和度S
rtの値を変えて改めて物性値の組み合わせを抽出し、再度第1関数の設定を行う。そして同等となる試験飽和度S
rtの値を変えながら繰り返し(
図7ではk回)第1関数の設定を行い、複数種類(k種類)のCCV−ρ
dグラフ(CCV−ρ
d関数)を取得する。例えば
図8では3種類のCCV−ρ
dグラフを取得した例を示しており、(a)は試験飽和度S
rtが40%であるケースのCCV−ρ
dグラフを示し、(b)は試験飽和度S
rtが50%であるケースのCCV−ρ
dグラフ、(c)は試験飽和度S
rtが60%であるケースのCCV−ρ
dグラフを示している。なお、
図8は便宜上3種類のCCV−ρ
dグラフを示しているが、もちろん4種類以上のCCV−ρ
dグラフを求めることもできる。
【0038】
ここまでの処理で、複数種類のCCV−Sr関数が得られ、複数の第2関数値を得ることができる。複数の第2関数値を得ることは、すなわち複数組(
図8では3組)の試験飽和度S
rtと第2関数値を得ることにほかならない。そして、複数組の試験飽和度S
rtと第2関数値を用いることで、(式5)に示す第2関数f
2を定める(つまり定数a〜cを決定する)ことができる。あるいは
図8(d)に示すように、横軸を試験飽和度S
rt、縦軸を第2関数値とした座標系に、複数組の(試験飽和度S
rt,第2関数値)をプロットし、これを基に設定される回帰曲線(あるいは回帰直線)を第2関数f
2とすることもできる。
【0039】
以上説明した手順で第1関数f
1と第2関数f
2が設定できると、(式3)にしたがって飽和度換算式を設定することができる。また既述したとおり飽和度換算式は、加速度応答値CCVと飽和度S
rの関係を表す関数であると同時に、加速度応答値CCVと乾燥密度ρ
dの関係を表す関数でもある。(式7)は、加速度応答値CCVを飽和度S
rで表した飽和度換算式であり、(式8)は、加速度応答値CCVを乾燥密度ρ
dで表した飽和度換算式である。
【数7】
【数8】
【0040】
本施工を行うに当たって、
図4に示すようにあらかじめ現地転圧条件を設定することもできる。既述のとおり転圧条件は、転圧の起振力(締固めエネルギー)と転圧機械の走行速度の組み合わせであり、当然ながら
図9に示すように転圧条件によって締固めの程度は大きく異なる。
図9は、転圧条件を変えて締固めを行った結果を示すグラフであり、(a)は起振力fを一定とし走行速度を変えた2ケースを比較するものであり、(b)は走行速度を一定とし起振力fを変えた2ケースを比較するものである。なお、このグラフの縦軸は、当初から増加した分の密度を示している。
【0041】
以下、
図4を参照しながら現地転圧条件を設定するまでの工程の流れを説明する。まず、最初の転圧条件を設定し(Step105)、その転圧条件のもと試験材料を転圧し、転圧中の試験加速度応答値CCV
tを取得する。そして、ここまでに取得した試験含水比w
tや土粒子密度ρ
s、試験加速度応答値CCV
tを、飽和度換算式に入力して試験飽和度S
rtと試験乾燥密度ρ
dtを算出する(Step106)。
【0042】
試験飽和度S
rtが、
図1(b)に示す評価基準範囲に収まっていれば、その試験締固め土は適正と評価され、すなわちその試験締固め土を形成した転圧条件は適正転圧条件として評価される(Step107)。
【0043】
図4に示すように転圧条件を変えながら、複数の試験締固め土に対して適否判定を行い、1又は2以上の適正転圧条件を得る。そして、複数の適正転圧条件が得られた場合は、そのうち最も適したものを現地転圧条件として設定する(Step108)。この場合、転圧条件のうちの転圧の起振力(締固めエネルギー)を重視して現地転圧条件を設定することもできるが、転圧機械の走行速度(転圧する移動速度)を重視して現地転圧条件を設定する方が、全体工期が短縮されるため好適となる。
【0044】
(本施工)
図5に示すように、本施工でもモデル施工同様に現地材料の現地含水比w
cを取得する(Step201)。現地含水比w
cを取得するにあたっては、サンプリングの炉乾燥(あるいは電子レンジ乾燥)法で測定したり、RI計器を用いて計測したり、従来利用されている種々の計測手法を採用することができる。なお、現地材料は試験材料と同種のものを使用するため、土粒子密度ρ
sに関しては試験材料の値をそのまま用いることもできるし、ここで改めて試験等により土粒子密度ρ
s(あるいは土粒子の比重Gs)を取得してもよい。
【0045】
本施工では、使用する材料(つまり現地材料)の目標含水比wがあらかじめ設定されていることもある。この場合、現地含水比w
cが目標値から大きく外れているときは現地材料の現地含水比w
cを調整したうえで施工するとよい。例えば、現地含水比w
cが目標含水比wよりも高いときは、天日乾燥と攪拌を繰返すことで現地材料を乾燥させ、あるいは強制曝気設備(キルン)を利用することで現地含水比w
cを下げるとよい。一方、現地含水比w
cが目標含水比wよりも低いときは、散水により含水比を調整するとよい。
【0046】
現地材料の状態が把握できると、設計仕様や施工計画等にしたがって撒出し〜転圧を行う。そして転圧を行いながら振動輪を振動させたときの振動輪加速度を計測し、この振動輪加速度の周波数分析を行うことで、現地締固め土の現地加速度応答値CCV
cを取得する(Step202)。
【0047】
現地加速度応答値CCV
cを取得すると、モデル施工の結果得られた飽和度換算式を利用して現地飽和度S
rcと現地乾燥密度ρ
dcがリアルタイムに算出できる。(Step203)。具体的には、現地含水比w
cや土粒子密度ρ
s、現地加速度応答値CCV
cを、飽和度換算式(例えば(式7)や(式8))に入力入することで現地飽和度S
rcと現地乾燥密度ρ
dcを算出し、パーソナルコンピュータ(PC)やデータベースサーバ等に記憶させる。このとき、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)などを利用して、現地加速度応答値CCV
cを計測した位置(以下、「CCV計測位置」という。)の位置情報を取得し、その位置情報とともに(関連付けて)現地加速度応答値CCV
cと現地飽和度S
rc、現地乾燥密度ρ
dcを記憶させるとよい。
【0048】
事前に測定した含水比wと盛土材の土粒子密度ρ
s、転圧作業中にリアルタイムに得られる現地加速度応答値CCV
cから、現地飽和度S
rcと現地乾燥密度ρ
dcを算定する。具体的には、(式7)によって現地飽和度S
rcを算定し、(式8)によって現地乾燥密度ρ
dcを算定する。そして、これらの結果を
図1(a)や
図1(b)に示すグラフにプロットし、現地飽和度S
rcと現地乾燥密度ρ
dcが評価基準範囲(
図1(a)、
図1(b))に収まれば当該施工範囲の締固めの程度(つまり現地締固め土)は適正と評価される(Step205)。このように本願発明では、(式7)や(式8)といった飽和度換算式を用いることで現地飽和度S
rcと現地乾燥密度ρ
dcを容易かつリアルタイムに算定することができ、この結果、従来の現地乾燥密度ρ
dcのみによる評価に加え現地乾燥密度ρ
dcによる評価を行うことができ、すなわち従来よりも高い精度の評価を容易かつリアルタイムに行うことができるわけである。なお現地乾燥密度ρ
dcが評価基準範囲外にプロットされる場合、飽和度下限値以下では再転圧を行い、飽和度上限値以上ではその部分の盛土材を除去して再度敷均し〜転圧作業を行う。
【0049】
施工範囲の締固めの程度(つまり現地締固め土)がすべて適正と評価されると、次のブロック(施工範囲)に移るか、次のブロックがない場合はそのまま施工を完了する。なお締固めは通常、あらかじめ計画した回数だけ返し行われる。そこで、1回の締固めが終わるたびに現地締固め土の評価(Step205)を行いすべて適正とされた段階で当該範囲の完了とすることもできるし、
図5に示すように計画した回数だけ転圧が繰り返されたタイミングで(Step204)、現地締固め土を評価する(Step205)こともできる。また施工を完了する前に、本願発明による管理手法の妥当性を確認する目的で、現地締固め土に対して現場密度試験を行ってもよい(Step206)。
【0050】
3.土の品質モニタリングシステム
続いて、本願発明の土の品質モニタリングシステム100について図を参照しながら説明する。
図10は、土の品質モニタリングシステム100を搭載した振動ローラVRを模式的に示す側面図であり、
図11は、土の品質モニタリングシステム100の主な構成を示すブロック図である。なお、土の品質モニタリングシステム100は、ここまで説明した土の品質管理方法に使用する装置であり、したがって土の品質管理方法で説明した内容と重複する説明は避け、土の品質モニタリングシステム100に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、土の品質管理方法で説明したものと同様である。
【0051】
図11に示すように土の品質モニタリングシステム100は、加速度応答値計測手段101と、測位手段102、飽和度算出手段103、計測情報記憶手段104、出力手段105を含んで構成され、その他、飽和度換算式記憶手段106やマップ情報記憶手段107を含んで構成することもできる。
【0052】
加速度応答値計測手段101は、
図10に示すように振動ローラVRの振動輪に取り付けられ、振動輪を振動させたときの振動輪加速度を計測するとともに、この振動輪加速度の周波数分析を行って締固め土の加速度応答値CCVを算出するものである。なお加速度応答値計測手段101は、振動輪加速度を計測する機能を持つものと、周波数分析を行って加速度応答値CCVを算出する機能を持つものを別体として構成してもよいし、これらを一体として構成することもできる。
【0053】
測位手段102は、全球測位衛星システムGNSSなどを利用して現在位置の座標を取得するものである。具体的には、
図10に示すように衛星STからの信号を受信する受信機RMを振動ローラVRに設置し、その受信機RMが受信した信号情報を空間演算することによって振動ローラVRの位置(つまりCCV計測位置)を算出するものである。
【0054】
飽和度算出手段103は、飽和度換算式記憶手段106に記憶された飽和度換算式を読み出すとともに、この飽和度換算式と、現地含水比w
cと、加速度応答値計測手段101で取得した現地加速度応答値CCV
cによって、現地飽和度S
rcと現地乾燥密度ρ
dcを算出するものである。この飽和度算出手段103は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。
【0055】
計測情報記憶手段104は、飽和度算出手段103で求めた現地飽和度S
rc及び現地乾燥密度ρ
dcと、測位手段102で測位した位置情報を組み合わせて(関連付けて)記憶するものである。なお、現地飽和度S
rcと現地乾燥密度ρ
dcに加えて、加速度応答値計測手段101で取得した現地加速度応答値CCV
cも位置情報と関連付けて記憶することもできる。この計測情報記憶手段104は、単独のデータベースサーバとして構築することもできるし、インターネット経由で保存するクラウドサーバとして構築することもできる。
【0056】
出力手段105は、計測情報記憶手段104で記憶した現地飽和度S
rcや現地乾燥密度ρ
dcと位置情報の組み合わせに基づいて、現地飽和度S
rcや現地乾燥密度ρ
dcをマップ表示するものである。このとき、現地飽和度S
rc及び現地乾燥密度ρ
dcと評価基準範囲を比較した結果を反映させて(例えば、適否評価に応じた色とともに)表示することもできる。なおマップ表示するに当たっては、施工範囲の平面図(地図)と、この平面図の位置(座標)情報、施工範囲を複数に分割したメッシュ情報(座標や識別子)をマップ情報記憶手段107から読み出し、平面図とともにメッシュごとの現地飽和度S
rcや現地乾燥密度ρ
dcを表示するとよい。