特許第6805457号(P6805457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805457
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ローションティッシュペーパー
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20201214BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   A47K10/16 Z
   D21H27/00 F
   A47K10/16 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-170302(P2016-170302)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-33751(P2018-33751A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−188291(JP,A)
【文献】 特開2013−236904(JP,A)
【文献】 特開2015−067348(JP,A)
【文献】 特開2015−034368(JP,A)
【文献】 特開2013−217004(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/080939(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/157137(WO,A1)
【文献】 特開2014−047444(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/049839(WO,A1)
【文献】 特開2016−060982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液の塗布された、2プライのシートからなるローションティッシュペーパーであって、
シート1プライあたりの坪量が10.2g/m以上17.5g/m以下であり、
紙厚が0.44mm/10枚以上0.80mm/10枚以下であり、
ティシューソフトネス測定装置TSAにより測定したとき、
TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度であるTS750が、7.0dBVrms以上13.8dBVrms以下であり
前記TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度であるTS7が、8.3dBVrms以上14.2dBVrms以下であり
前記ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した前記ティシュペーパー製品のサンプルに対し、ブレード付きロータを回転させずに100mNと600mNの押し込み圧力でそれぞれ上から押し込んだとき、
それぞれ押し込み圧力100mNと600mNの間での前記サンプルの上下方向の変形変位量で表される、剛性Dが、1.7mm/N以上4.3mm/N以下である、ローションティッシュペーパー。
【請求項2】
ローションティッシュペーパー中の油性成分の含有量が、0.03質量%以上0.50質量%以下である、請求項1に記載のローションティッシュペーパー。
【請求項3】
前記油性成分が、シリコーン油及び/又はシアバターである、請求項2に記載のローションティッシュペーパー。
【請求項4】
薬剤含有量が5質量%以上20質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のローションティッシュペーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の塗布された、2プライのシートからなるローションティッシュペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェイシャルティッシュペーパーには、触感の滑らかさ、しっとり感、柔らかさ、ボリューム感が重要であると指摘されていた。滑らかさを有するティッシュペーパー製品を製造するためには、カレンダー処理の強度の強化や、ローション薬液の塗布等の手法が採用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
一般的に、ローション薬液が塗布されたティッシュペーパーは、箱に収納されて、取り出口から引き出して使用される。ローション薬液が塗布されたティッシュペーパーは柔らかいため、取出し口から引き出す際、破れることも多い。また、ティッシュペーパーが柔らかいために、ティッシュカートンから引き出した後、次のティッシュペーパーが箱に沿って倒れてしまい、次のティッシュペーパーを取り出しにくくなる。一方、シートの強度を高くした場合、これらの問題は解決するが、ティッシュペーパーがごわごわした触感になる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−109693号公報
【特許文献2】特開平9−296389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、カレンダー処理の強度を強化した場合、ティッシュペーパー製品の紙厚が薄くなり、ティッシュペーパー製品のボリューム感が劣化することがあった。また、ローション薬液の塗布量を増大させると、ティッシュペーパー製品の紙厚が薄くなり、ボリューム感が劣化するとともに、強度が低くなって、紙のしっかり感が劣化し、カートンからティッシュペーパーを取り出した際、次のティッシュペーパーが取出し口上で倒れやすくなることもある。また、ローション薬液の塗布量を増大させると、ティッシュペーパーの加工工程において、加工適性が低下し、断紙回数が増え、生産性が低下するという問題もあった。したがって、本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ、ボリューム感、しっかり感(カートンからティッシュペーパーを取り出した際の、次のティッシュペーパーの立ち具合)、加工適性がいずれも良好なローションティッシュペーパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、シート1プライあたりの坪量、紙厚、柔らかさ、滑らかさ、しっかり感を調整した、薬液の塗布された、2プライのシートからなるローションティッシュペーパーによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
(1) 本発明の第1の態様は、薬液の塗布された、2プライのシートからなるローションティッシュペーパーであって、シート1プライあたりの坪量が10.2g/m以上17.5g/m以下、紙厚が0.44mm/10枚以上0.80mm/10枚以下、ティシューソフトネス測定装置TSAにより測定したとき、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度であるTS750が、7.0dBVrms以上13.8dBVrms以下であり前記TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度であるTS7が、8.3dBVrms以上14.2dBVrms以下であり前記ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した前記ティシュペーパー製品のサンプルに対し、ブレード付きロータを回転させずに100mNと600mNの押し込み圧力でそれぞれ上から押し込んだとき、それぞれ押し込み圧力100mNと600mNの間での前記サンプルの上下方向の変形変位量で表される、剛性Dが、1.7mm/N以上4.3mm/N以下である、ローションティッシュペーパーである。
【0008】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のローションティッシュペーパーであって、ローションティッシュペーパー中の油性成分の含有量が、0.03質量%以上0.50質量%以下であることを特徴とするものである。
【0009】
(3)本発明の第3の態様は、(2)に記載のローションティッシュペーパーであって、前記油性成分が、シリコーン油及び/又はシアバターであることを特徴とするものである。
【0010】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のローションティッシュペーパーであって、薬剤含有量が5質量%以上20質量%以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シート1プライあたりの坪量、紙厚、柔らかさ、滑らかさ、しっかり感が調整され、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ、ボリューム感、しっかり感、加工適性がいずれも良好なローションティッシュペーパーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0013】
<ローションティッシュペーパー>
本発明のローションティッシュペーパーは、2プライのシートからなるものであって、原紙にカレンダー処理がなされ、薬液が塗布されているものである。そして、本発明のローションティッシュペーパーは、シート1プライあたりの坪量、紙厚、柔らかさTS7、滑らかさTS750、しっかり感Dが調整されている。
【0014】
[坪量、紙厚]
本発明のローションティッシュペーパーにおける、シート1プライあたりの坪量は、10g/m以上18g/m以下であり、11g/m以上17g/m以下であることが好ましく、12g/m以上16g/m以下であることがより好ましい。また、本発明のローションティッシュペーパーにおける、紙厚は、0.40mm/10枚以上0.80mm/10枚以下であり、0.45mm/10枚以上0.75mm/10枚以下であることが好ましく、0.50mm/10枚以上0.70mm/10枚以下であることがより好ましい。ローションティッシュペーパーのシート1プライあたりの坪量や紙厚を上記の範囲内のものとすることにより、柔らかさとボリューム感とが両立可能なものとなる。なお、上記の坪量及び紙厚は、ローションティッシュペーパー自体のものであって、薬液が塗布された状態のティッシュペーパーについての坪量及び紙厚を意味する。
【0015】
[TS750、TS7、D]
本発明のローションティッシュペーパーは、ティッシュソフトネス測定装置TSA(Tissue Softness Analyzer)により測定したときに、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)が7dBVrms以上14dBVrmsであり、8dBVrms以上13dBVrms以下であることが好ましく、9dBVrms以上12dBVrms以下であることがより好ましい。このTS750は、ローションティッシュペーパーの滑らかさの指標であり、TS750が上記の範囲内のものとなることにより、ローションティッシュペーパーの平滑さがバランスよく維持される。
【0016】
さらに、本発明のローションティッシュペーパーは、ティッシュソフトネス測定装置TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(TS7)が8dBVrms以上15dBVrms以下であり、9dBVrms以上14dBVrms以下であることが好ましく、10dBVrms以上13dBVrms以下であることがより好ましい。このTS7は、ローションティッシュペーパーの柔らかさの指標であり、TS7が上記の範囲内のものとなることにより、ローションティッシュペーパーの柔らかさがバランスよく維持される。
【0017】
加えて、本発明のローションティッシュペーパーは、ティッシュソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置したローションティッシュペーパーのサンプルに対し、ブレード付きロータを回転させずに100mNと600mNの押し込み圧力でそれぞれ上から押し込んだとき、それぞれ押し込み圧力100mNと600mNの間での前記サンプルの上下方向の変形変位量で表される、剛性(D)の測定値が1.5mm/N以上4.5mm/N以下であり、2.0mm/N以上4.0mm/N以下であることが好ましく、2.6mm/N以上3.4mm/N以下であることがより好ましい。このDは、ローションティッシュペーパーのしっかり感(カートンからローションティッシュペーパーを取り出した際の、次のローションティッシュペーパーの立ち具合)、しなやかさの指標であり、Dが上記の範囲内のものとなることにより、ローションティッシュのしっかり感としなやかさがバランスよく維持される。
【0018】
なお、TS750、TS7、及びDは、ローションティッシュペーパー自体のものであって、薬液が塗布された状態のティッシュペーパーについてのTS750、TS7、及びDを意味する。
【0019】
ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用したTS750、TS7、及びDの測定方法や、これに用いられる測定装置については、例えば、特開2013−236904号公報に詳細に記載されている(図3から図5も参照)。ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用した各種測定方法については、上記の特許文献を参照されたい。
【0020】
[GMT]
本発明のローションティッシュペーパーは、JIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さ(引張り速度300mm/分で測定)DMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)と、乾燥時の横方向の引張強さ(引張り速度300mm/分で測定)DCDT(Dry Cross Direction Tensile strength)の幾何平均(DMDT×DCDT)1/2で表されるDGMT(Dry Geometric Tensile strength)が120N/25mm以上250N/25mm以下であることが好ましく、140N/25mm以上240N/25mm以下であることがより好ましく、160N/25mm以上230N/25mm以下であることが更に好ましい。ローションティッシュペーパーのDGMTが上記の範囲内のものであることにより、ローションティッシュペーパーの強度や、柔らかさが、バランス良く良好に維持される。なお、一般的には、坪量を上記の範囲内のものとし、原紙の強度や薬液の塗布量を調整することにより、上記のDGMTが調整される。
【0021】
[比容積]
本発明のローションティッシュペーパーの比容積は、1組当り3.0cm/g以上6.0cm/g以下であることが好ましく、3.3cm/g以上5.5cm/g以下であることがより好ましく、3.6cm/g以上5.0cm/g以下であることが更に好ましい。ローションティッシュペーパーの比容積を上記の範囲内のものとすることにより、ふんわり感、柔らかさ、嵩高さがバランスよく維持され、滑らかさが良好なものとなる。比容積は、例えば、坪量や紙厚を調整することにより、調整することができる。
【0022】
[カートン取り出し口、スリット幅]
本発明のローションティッシュペーパーを収納するカートンの取り出し口は、長手方向の寸法が、100mm以上126mm以下であることが好ましい。また、取り出し口に貼るフィルムのスリット幅は、90mm以上114mm以下であることが好ましい。ローションティッシュペーパーを収納するカートンの取り出し口を上記範囲内とし、上記のD(剛性、しっかり感)を上記範囲内のものとすることにより、カートンから紙を取り出した際、次の紙がしっかり紙が立ち、美観性、取り出し性に優れる。例えば、取り出し口、スリット幅が上記範囲を超えて大きすぎると、次の紙が立たない、滑って下に落ちてしまう等の弊害があり、逆に小さすぎると、紙を取り出した際に破れやすい等の弊害がある。
【0023】
[ティッシュペーパー原料]
ローションティッシュペーパーを構成する2プライのシートは、パルプを主成分とするものであり、好ましくは、50質量%以上のパルプを含有する。ローションティッシュペーパーの製造に使用できるパルプとしては、木材パルプ、古紙パルプ、非木材パルプが挙げられるが、本発明のローションティッシュペーパーは、パルプとして木材パルプ100%から成るものであってもよく、木材パルプの他に、古紙パルプや非木材パルプを含んでいてもよい。パルプ以外の成分としては、填料、合成繊維、天然繊維等を挙げることができる。目標とする品質を得るためには、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)20質量%以上50質量%以下と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)50質量%以上80質量%以下とからなる木材パルプを原料とすることが好ましく、NBKP:25質量%以上45質量%以下と、LBKP:55質量%以上75質量%以下とからなる木材パルプを原料とすることがより好ましい。
【0024】
上記LBKPの材種としては、ユーカリ属グランディス及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属から製造されるパルプが好ましい。また、上記のパルプ比率の木材パルプ100質量部に対し、古紙パルプを50質量部程度まで含有させてもよい。古紙パルプは品質のバラツキが大きく、配合割合が増えると製品の品質、特に柔らかさに大きく影響するため、木材パルプに対する配合量を20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下とすることがより好ましく、5質量部以下とすることが更に好ましく、古紙パルプを配合しないことが最も好ましい。
【0025】
なお、ローションティッシュペーパーに適正な強度を確保するため、通常の手段で原料配合した後、パルプ繊維の叩解処理にて強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解処理としては、市販のバージンパルプに対して、JIS P 8121で測定されるフリーネス(カナダ標準ろ水度)の変化量ΔFで20mL以上200mL以下、より好ましくは50mL以上120mL以下となるよう、ろ水度を低減させることが好ましい。なお、乾燥紙力増強剤を使用してもよく、湿潤紙力増強剤を使用することが好ましい。
【0026】
[薬液]
本発明のローションティッシュペーパーは、薬液を含有している。薬液としては、水性成分と油性成分とを含むものであり、さらに、水を含んでいることが好ましい。
【0027】
(水性成分)
水性成分としては、多価アルコール(2価以上の水酸基を有するアルコール)を挙げることができる。より具体的には、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等を挙げることができる。薬液中の多価アルコールの有効成分の割合は、72質量%以上92質量%以下であることが好ましく、76質量%以上87質量%以下であることがより好ましく、79質量%以上84質量%以下であることが更に好ましい。薬液中の多価アルコールの含有量を調整することにより、ローションティッシュペーパーのしっとり感が良好なものとなる。なお、上記の多価アルコールは、1種類を配合しても、2種類以上配合してもよい。薬液中の多価アルコールとしては、風合いに優れるグリセリンの含有量(水分を除く)が、薬液全体に対して50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
【0028】
(油性成分)
油性成分としては、各種シリコーン油、流動パラフィン、鉱物油、ワックス等を挙げることができる。これらの成分は、1種類を配合しても、2種類以上配合してもよい。本発明においては、ローションティッシュペーパー中の油性成分の含有量が0.03質量%以上0.50質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上0.32質量%以下であることがより好ましく、0.19質量%以上0.28質量%以下であることが更に好ましい。これにより、ローションティッシュペーパーの滑らかさを効果的に向上させつつ、滑らかさを向上させすぎることによる加工適性の低下も効果的に防止することができる。本発明においては、特に、この油性成分がシリコーン油及び/又はシアバターであることが好ましく、シリコーン油であることがより好ましく、アミノ変性シリコーン油であることが更に好ましい。この場合、ローションティッシュ中の、このシリコーン油(アミノ変性シリコーン油)及び/又はシアバターの含有量が、上記の含有量であることが好ましい。薬液中のシリコーン油及び/又はシアバターの配合量は、0.3質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以上2.5質量%以下であることがより好ましく、0.9質量%以上2.0質量%以下であることが更に好ましい。これにより、薬液の特性を劣化させることなく、ローションティッシュの滑らかさを効果的に向上させることができる。
【0029】
(薬液の粘度)
薬液の粘度は、塗布ムラや塗布ロールへのウェブの付着などのトラブルを避ける観点から、回転数60rpmにおけるB型粘度が10mPa・s以上100mPa・s以下となることが好ましく、15mPa・s以上60mPa・s以下となることがより好ましく、20mPa・s以上40mPa・s以下となることが更に好ましい。なお、B型粘度は、東機産業社製粘度計を用いて液温が40℃の条件下で測定する。B型粘度が上記の範囲内のものであることにより、薬液の塗布量のコントロールを良好なものとすることができるとともに、操業性も良好に維持される。
【0030】
(薬剤含有量)
本発明のローションティッシュペーパー中の薬剤含有量は、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、7質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、9質量%以上16質量%以下であることが更に好ましい。ここで、「薬液」は水分を含むため、「薬剤含有量」は薬液中の水分を除く成分の、ローションティッシュペーパー中の含有量に相当する。
【0031】
薬剤含有量は、JIS P 8111(1998)条件下において調湿させた所定質量のティッシュペーパー製品を分母(A)(g)とし、所定質量のティッシュペーパー製品中に含まれる薬液中の水分を除いた質量(B)(g)を分子として、(B)を(A)で除した比率を(%)で表す。なお、(B)の算出は、例えばローションティッシュペーパーをアセトン/エタノール抽出することにより、定量することができる。
(薬剤含有量)=(B)÷(A)×100(%)
【0032】
薬剤含有量を上記の範囲内のものとすることにより、ローションティッシュペーパーの柔らかさ、滑らかさ及びしっとり感が良好なものとなるとともに、シワの発生や、ロータリー式インターフォルダ、マルチスタンド式インターフォルダ内での断紙等が防止されて、加工適性が良好に維持される。
【0033】
<ローションティッシュの製造方法>
2プライのシートからなるローションティッシュを製造する場合、抄紙機から得られる原紙ロールをプライマシンにより2プライに積層して巻き取り、その後、巻き取った2プライ原紙ロールに対して薬液をオフラインの薬液塗布装置により塗布することができる。なお、カレンダー処理はプライマシンで2プライに積層後に施すことが好ましい。薬液が塗布された原紙ロールは公知のインターファルダにより、各シートを中央でV字折りし、それぞれの側端部を掛け合わせながら交互に積層してポップアップ式に取出し可能なティッシュペーパー積層体を構成することができ、ポップアップ式に取出し可能であれば他の公知の折り方(例えばZ字折り)としてもよい。
【0034】
ティッシュペーパー積層体を構成するために用いるインターフォルダとしては、マルチスタンド式インターフォルダ、ロータリー式インターフォルダ、が例示できる。
【0035】
なお、カレンダー処理の前後での原紙の紙厚の変化量Δtは、0.08mm/10枚以上0.25mm/10枚以下であることが好ましく、0.10mm/10枚以上0.22mm/10枚以下であることがより好ましい。Δtの値を調整することにより、カレンダー処理後の紙厚及び製品の紙厚を良好に調整することができるとともに、柔らかさやボリューム感が良好に保たれる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
<実施例1から13、比較例1から8>
木材パルプとして、表1及び表2に示すパルプ組成(質量%)の、NBKPとLBKPから、表1及び表2に示す特性を有する原紙を抄紙した。この原紙を紙厚の変化量Δtが、実施例については、0.10から0.22mm/10枚以下、比較例については、0.08mm/10枚以上0.25mm/10枚以下となるように、カレンダー処理を施した。カレンダー処理後の原紙の特性を表3及び表4に示す。次に、この原紙に対して、表3及び表4に示すローション薬液をグラビア塗布装置にてオフライン塗布し、次いでマルチスタンド式インターフォルダにて、ローションティッシュペーパーの積層体を形成した。なお、表3及び表4中、多価アルコールはグリセリンであり、油性成分は、アミノ変性シリコーン油とシアバターの混合物である。得られたローションティッシュペーパーについて、TS7、TS750、D、紙中の油性成分の含有量、紙中の薬液含有量を計測するとともに、使用感、ボリューム感、しっとり感、柔らかさ、加工適性(断紙)、滑らかさ、加工適性(すべり)、しっかり感(カートンからローションティッシュペーパーを取り出した際の、次のローションティッシュペーパーの立ち具合)について5段階評価を行った。
【0038】
シートの坪量:JIS P 8124に基づいて測定し、シート1枚当たりに換算した。
紙厚:シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重250gf、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm 以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、1回の測定は試料を10枚重ねて行い、測定を10回繰り返して測定結果を平均した。
なお、坪量、紙厚の測定は、JIS P 8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持した後に行った。また、表1及び表2の坪量及び紙厚は、カレンダー処理前後の原紙のものであり、表3及び表4の坪量及び紙厚は、薬液を塗布したものである。
【0039】
モニター20人による以下の官能評価を行った。
使用感:カートンから取り出したティシュペーパーを展開して使用(鼻をかむ、汚れをふき取る等)した時の、使用感(紙のごわつき、水分の浸透等)を総合的に評価した。
ボリューム感:カートンから取り出したティッシュペーパーを展開して手に持ったときのボリューム感、及び、製品の紙厚を評価した。
しっとり感:カートンから取り出したティッシュペーパーを展開して手に持ったときのしっとり感を評価した。
柔らかさ:カートンから取り出したティッシュペーパーを展開して手に持ったときの柔らかさを評価した。
加工適性(断紙):薬液塗布したティシュペーパーを、マルチスタンド式インターフォルダで加工する際の、断紙による、生産性の低下度合を評価した。
滑らかさ:カートンから取り出したティシュペーパーを展開して使用(鼻をかむ)した時の、ティシュが肌に触れる滑らかさを評価した。
加工適性(すべり):薬液塗布したティシュペーパーを、マルチスタンド式インターフォルダで加工する際の、ティッシュクリップ(ティッシュ連続積層体)の生産ラインからの滑りズレ等による、生産性の低下度合を評価した。
しっかり感:カートンからティッシュペーパーを取り出した際の、次のティッシュペーパーの立ち具合を評価した。
評価は、従来品と同等なものを「3」とし、これよりやや優れているを「4」、優れているを「5」とした。同様に、「3」より劣っているを「2」、著しく劣っているを「1」とした。評価が3から5であれば問題ない。
【0040】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0041】
表3及び表4より、本発明によれば、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ、ボリューム感、しっかり感、加工適性がいずれも良好なローションティッシュペーパーが得られたことが分かる。