(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2−アセチルチアゾール、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンからなる群より選択される1種以上のアセチル化合物を、
(a)2−アセチルチアゾールを、油脂含有乳風味飲食品に、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチルチアゾールの濃度が50〜800質量ppb増加するように添加する、
(c)2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンを、油脂含有乳風味飲食品に、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの濃度が0.05〜500質量ppb増加するように添加する、又は
(d)2−アセチル−1−ピロリンを、油脂含有乳風味飲食品に、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチル−1−ピロリンの濃度が0.1〜1000質量ppb増加するように添加する
ことにより、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強し、
前記油脂含有乳風味飲食品が、クリーミングパウダーを含有する油脂含有乳風味飲料であることを特徴とする、油脂含有乳風味飲食品のコク味増強方法。
前記アセチル化合物を、前記油脂含有乳風味飲食品中の2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンの総濃度が0.05〜2000質量ppbとなるように含有させる、請求項1に記載の油脂含有乳風味飲食品のコク味増強方法。
2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンを含有しており、コク味を増強するために油脂含有乳風味飲食品の原料として用いられることを特徴とする、コク味増強剤。
コク味増強剤における2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの含有量が、前記油脂含有乳風味飲食品に添加することにより、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度を0.05〜500質量ppb増加させる量である、請求項12に記載のコク味増強剤。
コク味増強剤における2−アセチル−1−ピロリンの含有量が、前記油脂含有乳風味飲料に添加することにより、当該油脂含有乳風味飲料における2−アセチル−1−ピロリン濃度を0.1〜1000質量ppb増加させる量である、請求項14又は15に記載のコク味増強剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳脂肪分を植物油脂で代替した飲食品では、コク味や濃厚感が劣るという問題がある。
本発明は、油脂や乳原料の含有量を増大させることなく、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、油脂含有乳風味飲食品に、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンからなる群より選択される1種以上のアセチル化合物を含有させることにより、コク味を増強させられることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
[1] 本発明の第一の態様に係る油脂含有乳風味飲食品のコク味増強方法は、 2−アセチルチアゾール、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンからなる群より選択される1種以上のアセチル化合物を、(a)2−アセチルチアゾールを、油脂含有乳風味飲食品に、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチルチアゾールの濃度が50〜800質量ppb増加するように添加する、(c)2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンを、油脂含有乳風味飲食品に、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの濃度が0.05〜500質量ppb増加するように添加する、又は(d)2−アセチル−1−ピロリンを、油脂含有乳風味飲食品に、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチル−1−ピロリンの濃度が0.1〜1000質量ppb増加するように添加する、ことにより、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強し、前記油脂含有乳風味飲食品が、クリーミングパウダーを含有する油脂含有乳風味飲料であることを特徴とする。
[2] 前記[1]の油脂含有乳風味飲食品のコク味増強方法においては、前記アセチル化合物を、前記油脂含有乳風味飲食品中の2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンの総濃度が0.05〜2000質量ppbとなるように含有させることが好ましい。
[3] 前記[1]又は[2]の油脂含有乳風味飲食品のコク味増強方法においては、前記油脂含有乳風味飲食品が、嗜好性飲料であることが好ましい。
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかの油脂含有乳風味飲食品のコク味増強方法においては、前記油脂含有乳風味飲食品が、高甘味度甘味料を含有する飲料であることが好ましい。
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかの油脂含有乳風味飲食品のコク味増強方法においては、前記油脂含有乳風味飲食品に、さらに、エチルマルトールを含有させることが好ましい。
[6] 前記[1]〜[5]のいずれかの油脂含有乳風味飲食品のコク味増強方法においては、前記油脂含有乳風味飲食品が、液体とインスタント飲料用組成物を混合して得られる油脂含有乳風味飲料であり、前記インスタント飲料用組成物に前記アセチル化合物を含有させることが好ましい。
[7] 本発明の第二の態様に係るインスタント飲料用組成物は、液体と混合して油脂含有乳風味飲料を調製するためのインスタント飲料用組成物であって、(a)液体と混合して得られる油脂含有乳風味飲料における2−アセチルチアゾール濃度が50〜800質量ppbである量の2−アセチルチアゾール、(c)液体と混合して得られる油脂含有乳風味飲料における2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度が0.05〜500質量ppbである量の2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び(d)液体と混合して得られる油脂含有乳風味飲料における2−アセチル−1−ピロリン濃度が0.1〜1000質量ppbである量の2−アセチル−1−ピロリンからなる群より選択される一種以上と、クリーミングパウダーと、を含有することを特徴とする。
[8] 前記[7]のインスタント飲料用組成物としては、さらに、嗜好性飲料の可溶性固形分を含有することが好ましい。
[9] 前記[7]又は[8]のインスタント飲料用組成物としては、さらに、高甘味度甘味料を含有することが好ましい。
[10] 前記[7]〜[9]のいずれかのインスタント飲料用組成物としては、さらに、エチルマルトールを含有することが好ましい。
[11] 本発明の第三の態様に係る油脂含有乳風味飲食品の製造方法は、(a)2−アセチルチアゾールを、油脂含有乳風味飲食品における2−アセチルチアゾールの濃度が50〜800質量ppb増加するように添加する、(c)2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンを、油脂含有乳風味飲食品における2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの濃度が0.05〜500質量ppb増加するように添加する、又は(d)2−アセチル−1−ピロリンを、油脂含有乳風味飲食品における2−アセチル−1−ピロリンの濃度が0.1〜1000質量ppb増加するように添加し、
前記油脂含有乳風味飲食品が、クリーミングパウダーを含有する油脂含有乳風味飲料であることを特徴とする。
[
12] 本発明の第
四の態様に係るコク味増強剤は、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンを含有しており、コク味を増強するために油脂含有乳風味飲食品の原料として用いられることを特徴とする。
[
13] 前記[
12]のコク味増強剤としては、コク味増強剤における2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの含有量が、前記油脂含有乳風味飲食品に添加することにより、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの濃度を0.05〜500質量ppb増加させる量であることが好ましい。
[
14] 本発明の第
五の態様に係るコク味増強剤は、2−アセチル−1−ピロリンを含有しており、コク味を増強するために油脂含有乳風味飲料の原料として用いられることを特徴とする。
[
15] 前記[
14]のコク味増強剤としては、前記油脂含有乳風味飲料が、液体とインスタント飲料用組成物を混合して得られる油脂含有乳風味飲料であり、
前記インスタント飲料用組成物に2−アセチル−1−ピロリンを含有させることが好ましい。
[
16] 前記[
14]又は[
15]のコク味増強剤としては、コク味増強剤における2−アセチル−1−ピロリンの含有量が、前記油脂含有乳風味飲料に添加することにより、当該油脂含有乳風味飲料における2−アセチル−1−ピロリン濃度を0.1〜1000質量ppb増加させる量であることが好ましい。
[
17] 前記[
12]〜[
16]のいずれかのコク味増強剤としては、さらに、エチルマルトールを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、油脂や乳原料の含有量を増大させることなく、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る油脂含有乳風味飲食品のコク味増強方法(以下、「本発明に係るコク味増強方法」ということがある。)は、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンからなる群より選択される1種以上のアセチル化合物を含有させることにより、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強することを特徴とする。これらのアセチル化合物を適切な量含有させることにより、乳風味を有する油脂含有飲食品のコク味や濃厚感を増強させることができる。このため、本発明に係るコク味増強方法により、油脂や乳原料の含有量を増大させることなく、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強させることができ、また、油脂含有乳風味飲食品のコク味を低下させることなく、油脂や乳原料の含有量を減少させることもできる。
【0010】
本発明に係るコク味増強方法において、コク味を増強させるために含有させるアセチル化合物は、前記4種のアセチル化合物のうち、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、コク味を増強させるために含有させるアセチル化合物の量は、アセチル化合物の種類、添加する油脂含有乳風味飲食品の種類等を考慮して適宜決定することができる。
【0011】
また、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンからなる群より選択される1種以上のアセチル化合物を含有しており、コク味を増強するために油脂含有乳風味飲食品の原料として用いられるものを、本発明に係るコク味増強剤という。本発明に係るコク味増強剤を、油脂含有乳風味飲食品に添加することにより、コク味を増強させることができる。
【0012】
本発明に係るコク味増強剤としては、前記4種のアセチル化合物のうち、1種類のみを含有していてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、油脂含有乳風味飲食品に添加した場合のコク味増強効果を損なわない限り、その他の香料を含有していてもよい。
【0013】
本発明に係るコク味増強剤における前記アセチル化合物の含有量は、当該コク味増強剤を添加することにより、油脂含有乳風味飲食品中の前記4種のアセチル化合物の総濃度を、
0.05質量ppb以上増加させる量であることが好ましく、1質量ppb以上増加させる量であることがより好ましく、10質量ppb以上増加させる量であることがさらに好ましく、50質量ppb以上増加させる量であることがよりさらに好ましい。前記4種のアセチル化合物の総濃度を0.05質量ppb以上増加させることにより、油脂含有乳風味飲食品のコク味を充分に増強させることができる。また、コク味増強剤の添加によって増加させる前記4種のアセチル化合物の総濃度は、2000質量ppb以下であることが好ましく、1500質量ppb以下であることがより好ましい。増加させる濃度を2000質量ppb以下とすることにより、添加されるアセチル化合物に由来する香味によって乳風味を過度に損なうことなく、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強させることができる。
【0014】
本発明に係るコク味増強剤が、前記アセチル化合物として2−アセチルチアゾールを含有する場合、当該コク味増強剤における2−アセチルチアゾールの含有量は、油脂含有乳風味飲食品に添加することにより、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチルチアゾール濃度を5質量ppb以上増加させる量であることが好ましく、20質量ppb以上増加させる量であることがより好ましく、50質量ppb以上増加させる量であることがさらに好ましく、100質量ppb以上増加させる量であることがよりさらに好ましく、200質量ppb以上増加させる量であることが特に好ましい。2−アセチルチアゾール濃度を5質量ppb以上増加させることにより、油脂含有乳風味飲食品のコク味を充分に増強させることができる。また、コク味増強剤の添加によって増加させる2−アセチルチアゾールの濃度は、1500質量ppb以下であることが好ましく、1000質量ppb以下であることがより好ましく、800質量ppb以下であることがさらに好ましく、600質量ppb以下であることがよりさらに好ましい。増加させる2−アセチルチアゾール濃度を1500質量ppb以下とすることにより、2−アセチルチアゾールに由来する香味によって乳風味を過度に損なうことなく、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強させることができる。
【0015】
本発明に係るコク味増強剤が、前記アセチル化合物として2−アセチルピリジンを含有する場合、当該コク味増強剤における2−アセチルピリジンの含有量は、油脂含有乳風味飲食品に添加することにより、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチルピリジン濃度を10質量ppb以上増加させる量であることが好ましく、50質量ppb以上増加させる量であることがより好ましく、100質量ppb以上増加させる量であることがさらに好ましく、200質量ppb以上増加させる量であることがよりさらに好ましく、400質量ppb以上増加させる量であることが特に好ましい。2−アセチルピリジン濃度を10質量ppb以上増加させることにより、油脂含有乳風味飲食品のコク味を充分に増強させることができる。また、コク味増強剤の添加によって増加させる2−アセチルピリジンの濃度は、2000質量ppb以下であることが好ましく、1800質量ppb以下であることがより好ましく、1500質量ppb以下であることがさらに好ましく、1000質量ppb以下であることがよりさらに好ましく、800質量ppb以下であることが特に好ましい。増加させる2−アセチルピリジン濃度を2000質量ppb以下とすることにより、2−アセチルピリジンに由来する香味によって乳風味を過度に損なうことなく、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強させることができる。
【0016】
本発明に係るコク味増強剤が、前記アセチル化合物として2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンを含有する場合、当該コク味増強剤における2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの含有量は、油脂含有乳風味飲食品に添加することにより、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度を0.05質量ppb以上増加させる量であることが好ましく、1質量ppb以上増加させる量であることがより好ましく、5質量ppb以上増加させる量であることがさらに好ましく、10質量ppb以上増加させる量であることがよりさらに好ましく、50質量ppb以上増加させる量であることが特に好ましい。2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度を0.05質量ppb以上増加させることにより、油脂含有乳風味飲食品のコク味を充分に増強させることができる。また、コク味増強剤の添加によって増加させる2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの濃度は、500質量ppb以下であることが好ましく、300質量ppb以下であることがより好ましく、200質量ppb以下であることがさらに好ましく、100質量ppb以下であることがよりさらに好ましい。増加させる2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度を500質量ppb以下とすることにより、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンに由来する香味によって乳風味を過度に損なうことなく、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強させることができる。
【0017】
本発明に係るコク味増強剤が、前記アセチル化合物として2−アセチル−1−ピロリンを含有する場合、当該コク味増強剤における2−アセチル−1−ピロリンの含有量は、油脂含有乳風味飲食品に添加することにより、当該油脂含有乳風味飲食品における2−アセチル−1−ピロリン濃度を0.1質量ppb以上増加させる量であることが好ましく、5質量ppb以上増加させる量であることがより好ましく、10質量ppb以上増加させる量であることがさらに好ましく、20質量ppb以上増加させる量であることがよりさらに好ましく、100質量ppb以上増加させる量であることが特に好ましい。2−アセチル−1−ピロリン濃度を0.1質量ppb以上増加させることにより、油脂含有乳風味飲食品のコク味を充分に増強させることができる。また、コク味増強剤の添加によって増加させる2−アセチル−1−ピロリンの濃度は、1000質量ppb以下であることが好ましく、600質量ppb以下であることがより好ましく、500質量ppb以下であることがさらに好ましく、400質量ppb以下であることが特に好ましい。増加させる2−アセチル−1−ピロリン濃度を1000質量ppb以下とすることにより、2−アセチル−1−ピロリンに由来する香味によって乳風味を過度に損なうことなく、油脂含有乳風味飲食品のコク味を増強させることができる。
【0018】
油脂含有乳風味飲食品が、前記コク味増強剤以外の原料に由来する2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンを含有する場合、本発明に係るコク味増強方法においては、油脂含有乳風味飲食品中の前記4種のアセチル化合物の総濃度が0.05〜2000質量ppbとなるようにすることが好ましく、10〜1000質量ppbとなるようにすることがより好ましい。
【0019】
本発明に係るコク味増強剤は、原料とするアセチル化合物を粉末に固定した固形状の香料組成物であってもよく、原料とするアセチル化合物がアルコール類等の可食性の有機溶媒に溶解している液状の香料組成物であってもよい。当該粉末は、デキストリン等の澱粉分解物、麦芽糖、トレハロース等の糖類、及び難消化性デキストリン等の食物繊維から選択される。必要に応じてカゼイン等のタンパク質をさらに添加してもよい。
【0020】
本発明に係るコク味増強方法を油脂含有乳風味飲食品に対して行うことにより、すなわち、本発明に係るコク味増強剤を原料として添加することにより、当該コク味増強剤を添加しなかった場合よりもコク味が強い油脂含有乳風味飲食品を製造することができる。
【0021】
本発明及び本願明細書において、「油脂含有乳風味飲食品」とは、植物油脂を含有し、かつ乳風味を有する飲食品を意味する。本発明に係るコク味増強方法によってコク味が増強される油脂含有乳風味飲食品としては、食品であってもよく、飲料であってもよい。
【0022】
油脂含有乳風味飲食品が含有する植物油脂としては、食用油であれば特に限定されず、天然油であってもよく、加工油であってもよく、合成油であってもよい。当該食用油としては、例えば、パーム油、パーム核油、水添パーム核油、ヤシ油(ココナッツオイル)、硬化ヤシ油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油、大豆油、こめ油、サフラワー油(ベニバナ油)、綿実油、ひまわり油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。これらの植物油脂のうち、特にパーム油、パーム核油、水添パーム核油、ヤシ油、硬化ヤシ油、菜種油、又は中鎖脂肪酸トリグリセリドが好ましく用いられる。また、油脂含有乳風味飲食品が含有する植物油脂としては、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。本発明に係るコク味増強方法によってコク味が増強される油脂含有乳風味飲食品としては、油脂そのものを原料とするものであってもよく、クリーミングパウダー(クリームの代用として、コーヒーや紅茶、ココア等の嗜好性飲料に添加される粉末)のように植物油脂を含む加工品を原料とするものであってもよい。
【0023】
本発明に係るコク味増強方法によってコク味が増強される油脂含有乳風味飲食品としては、特に、強い乳風味が好ましいとされる乳製品や乳製品を原料とする飲食品が好ましい。当該飲食品としては、例えば、乳原料及びクリーミングパウダーからなる群より選択される1種以上を原料として含有する飲食品が挙げられる。
【0024】
乳原料としては、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、牛乳、低脂肪乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、乳糖、生クリーム、バター、クリームチーズ等が挙げられる。なお、全粉乳及び脱脂粉乳は、それぞれ、牛乳(全脂乳)又は脱脂乳を、スプレードライ等により水分を除去して乾燥し粉末化したものである。
【0025】
クリーミングパウダーは、ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、コーン油、綿実油、ナタネ油、乳脂、牛脂、豚脂等の食用油脂;ショ糖、グルコース、澱粉加水分解物等の糖質;カゼインナトリウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、脱脂粉乳、乳化剤等のその他の原料等を、望まれる品質特性に応じて選択し、水に分散し、均質化し、乾燥することによって製造できる。本発明に係るコク味増強方法によってコク味が増強される油脂含有乳風味飲食品が含有するクリーミングパウダーとしては、植物性油脂と、コーンシロップ等の澱粉加水分解物と、乳タンパク質とを少なくとも含むものが好ましく、乳脂肪分と乳タンパク質とを少なくとも含むものであってもよい。
【0026】
クリーミングパウダーは、例えば、食用油脂をはじめとする原料を水中で混合し、次いで乳化機等で水中油型乳化液(O/Wエマルション)とした後、水分を除去することによって製造することができる。水分を除去する方法としては、噴霧乾燥、噴霧凍結、凍結乾燥、凍結粉砕、押し出し造粒法等、任意の方法を選択して行うことができる。得られたクリーミングパウダーは、必要に応じて、分級、造粒及び粉砕等を行ってもよい。
【0027】
具体的には、油脂含有乳風味食品としては、マーガリン、ファットスプレッド等が挙げられる。また、油脂含有乳風味飲料としては、乳原料やクリーミングパウダーを含有する嗜好性飲料や果汁飲料等が挙げられる。なお、「嗜好性飲料」とは、紅茶、緑茶、ウーロン茶、ほうじ茶等の茶飲料、ハーブティー、コーヒー、ココア、又はこれらの混合飲料を意味する。ハーブティーの原料としては、ハイビスカス、ローズヒップ、ペパーミント、カモミール、レモングラス、レモンバーム、ラベンダー等が挙げられる。本発明においては、油脂含有乳風味飲食品が、嗜好性飲料であることが好ましく、乳原料やクリーミングパウダーを含有する嗜好性飲料であることがより好ましく、クリーミングパウダーを含有する嗜好性飲料であることがさらに好ましい。当該嗜好性飲料としては、コーヒー飲料、紅茶飲料、ココア飲料、又は抹茶飲料であることが好ましい。
【0028】
前記アセチル化合物によるコク味増強効果が発揮されやすいことから、本発明に係るコク味増強方法によってコク味が増強される油脂含有乳風味飲食品としては、高甘味度甘味料を含有する飲食品が好ましい。高甘味度甘味料は、甘味は強いものの、甘味以外の呈味は非常に弱い。このため、高甘味度甘味料を用いた飲食品は、同じ甘味度の砂糖を用いた飲食品よりもコク味が弱い傾向にある。本発明に係るコク味増強方法を、高甘味度甘味料を含有する油脂含有乳風味飲食品に対して行うことにより、甘味と乳風味を損なうことなく、当該飲食品のコク味と濃厚感を充分に増強することができる。
【0029】
高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、アドバンテーム、サッカリン、ステビア、カンゾウ抽出物等が挙げられる。
【0030】
本発明に係るコク味増強方法は、液体とインスタント飲料用組成物を混合して得られる油脂含有乳風味飲料の製造にも好適に用いられる。具体的には、本発明に係るコク味増強剤を、液体と混合する前のインスタント飲料用組成物に含有させる。本発明に係るコク味増強剤を含有するインスタント飲料用組成物を液体と混合することにより、前記4種のアセチル化合物の少なくとも1種以上によってコク味が増強された油脂含有乳風味飲料が製造できる。
【0031】
本発明及び本願明細書において、「インスタント飲料用組成物」とは、水や牛乳等の液体に溶解又は希釈させることによって嗜好性飲料を調製し得る組成物を意味する。本発明に係るインスタント飲料用組成物は、液体に溶解又は希釈させることによって、植物油脂を含有し、かつ乳風味を有する嗜好性飲料が製造されるものである。
【0032】
本発明及び本願明細書において、「粉末」とは粉粒体(異なる大きさの分布をもつ多くの固体粒子からなり,個々の粒子間に,何らかの相互作用が働いているもの)を意味する。また、「顆粒」は粉末から造粒された粒子(顆粒状造粒物)の集合体である。粉末には、顆粒も含まれる。
【0033】
本発明に係るインスタント飲料用組成物は、本発明に係るコク味増強剤に加えて、植物油脂を含有し、かつ乳風味を有する嗜好性飲料を製造するために必要な他の成分を含有する。当該他の成分としては、例えば、嗜好性飲料の可溶性固形分、乳原料、クリーミングパウダー、甘味料、香料(但し、前記4種のアセチル化合物は除く。)、賦形剤、結合剤、流動性改良剤(固結防止剤)、酸化防止剤、pH調整剤、乳化剤等のインスタント嗜好性飲料に配合可能な粉末が挙げられる。当該インスタント飲料用組成物が、牛乳等の乳原料を含有する液体に溶解又は希釈させるものである場合、乳原料やクリーミングパウダーは必ずしも含有している必要はない。乳原料及びクリーミングパウダーとしては、前記油脂含有乳風味食品が含有していてもよいものとして挙げられたものを用いることができる。
【0034】
嗜好性飲料の可溶性固形分は、茶葉やコーヒー豆等の嗜好性原料から抽出された可溶性の固形分であり、粉末であってもよく、水溶液であってもよい。保存安定性が良好であるため、本発明に係るインスタント飲料用組成物としては、粉末の可溶性固形分を原料とすることが好ましい。粉末の可溶性固形分としては、具体的には、インスタント紅茶粉末、インスタント緑茶粉末、インスタントウーロン茶粉末、インスタントほうじ茶粉末、インスタントハーブティー粉末、インスタントコーヒー粉末、ココアパウダー、及びこれらのうちの2種類以上の混合粉末等が挙げられる。
【0035】
粉末又は水溶系である嗜好性飲料の可溶性固形分は、常法により製造することができ、また、市販されているものを用いてもよい。例えば、茶飲料の粉末状の可溶性固形分は、紅茶葉、緑茶葉(生茶葉)、ウーロン茶葉等の茶葉から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。また、インスタントコーヒー粉末は、焙煎したコーヒー豆から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。インスタントハーブティー粉末は、ハーブの原料から熱水を用いて可溶性の固形分を抽出し、得られた抽出物を乾燥することにより得られる。茶葉やコーヒー豆等の嗜好性飲料の原料としては、一般的に嗜好性飲料に使用されているものを用いることができる。得られた抽出物の乾燥方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥等が挙げられる。また、茶葉やコーヒー豆からの抽出物は、乾燥前に、必要に応じて濃縮してもよい。当該濃縮方法としては、熱濃縮方法、冷凍濃縮方法、逆浸透膜や限外濾過膜等を用いた膜濃縮方法等の汎用されている濃縮方法により行うことができる。
【0036】
甘味料としては、低甘味度甘味料であってもよく、高甘味度甘味料であってもよく、両者を併用してもよい。低甘味度甘味料としては、砂糖、ショ糖、オリゴ糖、ブドウ糖、果糖等の糖類、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、還元水あめ等の糖アルコール等が挙げられる。砂糖としては、グラニュー糖であってもよく、粉糖であってもよい。高甘味度甘味料としては、前述のものが挙げられる。
【0037】
賦形剤や結合剤としては、デキストリン等の澱粉分解物、麦芽糖、トレハロース等の糖類、難消化性デキストリン等の食物繊維、カゼイン等のタンパク質等が挙げられる。中でも、インスタント紅茶用組成物やインスタントコーヒー用組成物に汎用されているデキストリンが好ましい。なお、賦形剤や結合剤は、造粒時の担体としても用いられる。
流動性改良剤としては、微粒酸化ケイ素、第三リン酸カルシウム等の加工用製剤が用いられてもよい。
【0038】
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン等が挙げられる。
【0039】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の有機酸や、リン酸等の無機酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、二酸化炭素等が挙げられる。
【0040】
乳化剤としては、例えば、モノグリセライド、ジグリセライド、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリンエステル等のグリセリン脂肪酸エステル系乳化剤;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル系乳化剤;プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールオレエート等のプロピレングリコール脂肪酸エステル系乳化剤;ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等のシュガーエステル系乳化剤;レシチン、レシチン酵素分解物等のレシチン系乳化剤等が挙げられる。
【0041】
香料としては、一般的に飲食品に添加される香料であればよく、目的の製品品質に合わせて適宜選択して用いることができる。本発明に係るインスタント飲料用組成物が含有する香料としては、エチルマルトール、ミルク香料、コーヒー香料等が挙げられる。なかでも、高甘味度甘味料を含有する油脂含有乳風味飲料において、前記4種のアセチル化合物によるコク味増強効果をより高められることから、本発明に係るインスタント飲料用組成物には、エチルマルトールを含有させることが好ましい。
【0042】
さらに、必要に応じて着色料を添加して色調を調整することもできる。また、必要に応じて、茶類やハーブ、コーヒー等を抽出することなく微粉砕したものを混ぜてもよい。
【0043】
本発明に係るインスタント飲料用組成物は、本発明に係るコク味増強剤と、嗜好性飲料の可溶性固形分と、必要に応じて乳原料、クリーミングパウダー、甘味料等のその他の原料とを、混合することによって製造される。混合の順番は特に限定されるものではなく、全ての原料を同時に混合してもよく、順次混合させてもよい。
全ての原料が粉末の場合には、全ての原料をそのまま混合することによって、粉末のインスタント飲料用組成物が製造される。
【0044】
原料とする本発明に係るコク味増強剤が、アルコール類等の可食性の有機溶媒に溶解している溶液である場合、粉末の嗜好性飲料の可溶性固形分に当該溶液を噴霧して乾燥させることによって前記アセチル化合物で表面の一部が被覆された嗜好性飲料の可溶性固形分を調製し、これにその他の原料を添加して混合させてもよい。また、粉末の原料を全て予め混合し、得られた混合粉末に、溶液状の本発明に係るコク味増強剤を噴霧して乾燥させてもよい。その他、溶液状の本発明に係るコク味増強剤を、噴霧乾燥等をする前の嗜好性飲料の可溶性固形分に混合し、得られた混合物に対して噴霧乾燥、凍結乾燥等を行うことによって本発明に係るコク味増強剤を含む嗜好性飲料の可溶性固形分を調製し、これにその他の原料を混合することによっても、粉末のインスタント飲料用組成物が製造される。溶液状の本発明に係るコク味増強剤を、噴霧乾燥等をする前のクリーミングパウダーに混合し、得られた混合物に対して噴霧乾燥、凍結乾燥等を行うことによって、本発明に係るコク味増強剤を含むクリーミングパウダーを調製し、これに嗜好性飲料の可溶性固形分等のその他の原料を混合してもよい。
【0045】
嗜好性飲料の可溶性固形分が液体(水溶液)である場合には、嗜好性飲料の可溶性固形分にその他の原料を添加し、溶解させることによって、液体のインスタント飲料用組成物が製造される。また、粉末のインスタント飲料用組成物を製造した後、水や牛乳等に溶解させることによっても、液体のインスタント飲料用組成物が製造される。
【0046】
本発明に係るインスタント飲料用組成物は、飲用1杯分を小パウチなどに個包装したり、使用時に容器から振り出したりスプーンで取り出したりして使用するように瓶などの容器に数杯分をまとめて包装して商品として供給することもできる。
【0047】
個包装タイプとは、スティック状アルミパウチ、ワンポーションカップなどにコーヒー飲料1杯分の中身を充填包装するものであり、容器を開けて指で押し出すなどの方法で中身を取り出すことができる。個包装タイプは、1杯分が密閉包装されているので取り扱いも簡単で、衛生的であるという利点を有する。
【実施例】
【0048】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、特に記載がない限り、「%」は「質量%」、「ppb」は「質量ppb」を意味する。
【0049】
また、以降の実施例等において、官能評価は、特に記載のない限り、十分に訓練された3名の専門パネルにより、飲料のコク・ボディ感(コク味と同意)の強さと風味の好ましさを総合的に評価した。3名のパネルが、コントロールを5点として10点評価(10点が最も高評価であり、1点が最も低い評価である。)し、3名の評点の平均値を各飲料の評価とした。
【0050】
[実施例1]
表1に示す処方で、ミルクコーヒー飲料を調製した。具体的には、水以外の固形分を全て混合した粉末組成物(インスタント飲料用組成物)を調製し、これに表1に記載の量のお湯を注いで溶解させることによりミルクコーヒー飲料を調製した。表1中、インスタントコーヒー粉末は市販品(商品名:〈ブレンディ〉、味の素ゼネラルフーヅ(株)製)であり、クリーミングパウダーは市販品(商品名:〈マリーム〉、味の素ゼネラルフーヅ(株)製)である。また、表1中、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
各ミルクコーヒー飲料の官能評価を行い、結果を表2及び3に示した。この結果、2−アセチルチアゾールを添加した試験例1−1〜1−12のミルクコーヒー飲料では、いずれもコントロール(試験例1−0)に比べて、コク・ボディ感が改善していた。なかでも、2−アセチルチアゾールの濃度が5〜1500ppbである試験例1−2〜1−11では、苦味や2−アセチルチアゾール独特の風味が抑えられている上にコク・ボディ感が強く、非常に良好であった。特に、100〜600ppbではコク・ボディ感が非常に強く、全体的な風味も良好であった。ミルクコーヒー飲料中の2−アセチルチアゾールの濃度が1800ppbの試験例1−12では、コク・ボディ感は向上していたものの、苦味が非常に強く、2−アセチルチアゾール特有の風味がミルクコーヒー飲料の風味を損ねていた。
【0055】
同様に、2−アセチルピリジンを添加した試験例1−13〜1−25のミルクコーヒー飲料では、いずれもコントロール(試験例1−0)に比べて、コク・ボディ感が改善していた。なかでも、2−アセチルピリジンの濃度が10〜2000ppbである試験例1−14〜24では、苦味や2−アセチルピリジン独特の風味が抑えられている上にコク・ボディ感が強く、非常に良好であった。特に、200〜1000ppbではコク・ボディ感が非常に強く、全体的な風味も良好であった。ミルクコーヒー飲料中の2−アセチルピリジンの濃度が2500ppbの試験例1−25では、コク・ボディ感は向上していたものの、苦味が非常に強く、2−アセチルピリジン特有の風味がミルクコーヒー飲料の風味を損ねていた。
【0056】
同様に、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンを添加した試験例1−26〜1−39のミルクコーヒー飲料では、いずれもコントロール(試験例1−0)に比べて、コク・ボディ感が改善していた。なかでも、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの濃度が0.05〜500ppbである試験例1−27〜1−38では、苦味や2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン独特の風味が抑えられている上にコク・ボディ感が強く、非常に良好であった。特に、10〜200ppbではコク・ボディ感が非常に強く、全体的な風味も良好であった。ミルクコーヒー飲料中の2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの濃度が600ppbの試験例1−39では、コク・ボディ感は向上していたものの、苦味が非常に強く、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン特有の風味がミルクコーヒー飲料の風味を損ねていた。
【0057】
同様に、2−アセチル−1−ピロリンを添加した試験例1−40〜1−54のミルクコーヒー飲料では、いずれもコントロール(試験例1−0)に比べて、コク・ボディ感が改善していた。なかでも、2−アセチル−1−ピロリンの濃度が0.1〜1000ppbである試験例1−41〜1−53では、苦味や2−アセチル−1−ピロリン独特の風味が抑えられている上にコク・ボディ感が強く、非常に良好であった。特に、20〜400ppbではコク・ボディ感が非常に強く、全体的な風味も良好であった。ミルクコーヒー飲料中の2−アセチル−1−ピロリンの濃度が1500ppbの試験例1−54では、コク・ボディ感は向上していたものの、苦味が非常に強く、2−アセチル−1−ピロリン特有の風味がミルクコーヒー飲料の風味を損ねていた。
【0058】
また、2−アセチルチアゾールのみを添加したミルクコーヒー飲料のうち最も評価の高かった試験例1−7の半分量、2−アセチルピリジンのみを添加したミルクコーヒー飲料のうち最も評価の高かった試験例1−19の半分量、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンのみを添加したミルクコーヒー飲料のうち最も評価の高かった試験例1−34の半分量、及び2−アセチル−1−ピロリンのみを添加したミルクコーヒー飲料のうち最も評価の高かった試験例1−48の半分量のうちの2種を組み合わせて含有させた試験例1−55〜1−60のミルクコーヒー飲料では、試験例1−7等のミルクコーヒー飲料とほぼ同等の高いコク・ボディ感改善効果が得られた。また、試験例1−7の3分の1量の2−アセチルチアゾール、試験例1−19の3分の1量の2−アセチルピリジン、試験例1−34の3分の1量の2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び試験例1−48の3分の1量の2−アセチル−1−ピロリンのうちの3種を組み合わせて含有させた試験例1−61〜1−63のミルクコーヒー飲料と、試験例1−7の4分の1量の2−アセチルチアゾール、試験例1−19の4分の1量の2−アセチルピリジン、試験例1−34の4分の1量の2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び試験例1−48の4分の1量の2−アセチル−1−ピロリンを組み合わせて含有させた試験例1−64のミルクコーヒー飲料も、試験例1−7等のミルクコーヒー飲料とほぼ同等の高いコク・ボディ感改善効果が得られた。
【0059】
一方で、コントロールのミルクコーヒー飲料に、5−アセチル−2、4−ジメチルチアゾールを、飲料中の濃度が1、10、50、100、300、500、1000、又は2000ppbとなるように添加したミルクコーヒー飲料を調製したところ、1〜1000ppbを添加した飲料の官能評価は5点であり、2000ppbを添加した飲料の官能評価は4点であった。つまり、5−アセチル−2、4−ジメチルチアゾールは、2−アセチルチアゾール等との構造類似のアセチル化合物であるが、ミルクコーヒー飲料等の油脂含有乳風味飲食品に添加しても、コク味増強効果は全くなかった。
【0060】
[比較例1]
乳原料に代えて豆乳を含有させた、豆乳由来の植物油脂以外を含有せず、乳風味も有していない豆乳コーヒー飲料について、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンによるコク味増強効果を調べた。具体的には、表4に示す処方で、豆乳コーヒー飲料を調製した。官能評価のコントロールとして、実施例1の試験例1−0と同じ処方のミルクコーヒー飲料(試験例2−0)も製造した。表4中、インスタントコーヒー粉末及びクリーミングパウダーは表1と同じであり、豆乳は市販品(商品名:〈毎日おいしい無調整豆乳〉、マルサンアイ(株)製)である。また、表4中、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
各ミルクコーヒー飲料の官能評価を行い、結果を表5に示した。この結果、クリーミングパウダーと脱脂粉乳に代えて豆乳を入れた試験例2−1は、コントロール(試験例1−0)に比べて、コク・ボディ感が若干改善されていたが、さらに2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンを添加した試験例2−2〜2−13では、いずれもコク・ボディ感の増強は見られなかった。それどころか、2−アセチルチアゾール等の添加量が高くなるほど、苦味と独特の風味により、豆乳飲料の風味が損なわれてしまっていた。これらの結果から、豆乳を含有する飲料においては、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンによるコク味増強効果は期待できないことがわかった。
【0064】
[実施例2]
乳原料の使用量を減らした場合の、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンによるコク味増強効果について調べた。具体的には、表6に示す処方で、ミルクコーヒー飲料を調製した。表6中、インスタントコーヒー粉末及びクリーミングパウダーは表1と同じであり、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0065】
【表6】
【0066】
各ミルクコーヒー飲料の官能評価を行い、結果を表6に示した。この結果、コントロール(試験例3−0)から脱脂粉乳を除いた試験例3−1のミルクコーヒー飲料では、コク・ボディ感が顕著に低下したが、400ppbの2−アセチルチアゾールを入れた試験例3−2、600ppbの2−アセチルピリジンを入れた試験例3−3、100ppbの2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンを入れた試験例3−4、及び200ppbの2−アセチル−1−ピロリンを入れた試験例3−5では、コントロール以上にコク・ボディ感が強くなっていた。すなわち、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンを添加することにより、乳原料の使用量を低減させることによるコク・ボディ感の低下を十分に補填できていた。
【0067】
[実施例3]
植物油脂の使用量を減らした場合の、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンによるコク味増強効果について調べた。具体的には、表7及び8に示す処方で、ミルクコーヒー飲料を調製した。表7及び8中、インスタントコーヒー粉末及びクリーミングパウダー(脂肪分32%)は表1と同じであり、クリーミングパウダー(脂肪分16%)は市販品(商品名:〈マリーム ローファット〉、味の素ゼネラルフーヅ(株)製)である。また、表7及び8中、単位が記載されていない数値は「%」を示す。また、表7及び8には、飲料中の脂肪分(質量%)及び固形分(質量%)も示した。
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
各ミルクコーヒー飲料の官能評価を行い、結果を表7及び8に示した。この結果、コントロール(試験例4−0)からクリーミングパウダーを半分量除いた試験例4−1のミルクコーヒー飲料では、コク・ボディ感の大幅な低下が見られ、クリーミングパウダーを脂肪分16%のものに置換した試験例4−2のミルクコーヒー飲料でも、試験例4−1ほどではないものの、コク・ボディ感の低下が見られた。
【0071】
一方で、試験例4−1のミルクコーヒー飲料に2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンを入れた試験例4−3〜4−6では、コントロールと同等程度にまでコク・ボディ感が補填されており、脂肪分及び固形分の減少によるコク・ボディ感の低下を補填できていた。また、試験例4−2のミルクコーヒー飲料に2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンを入れた試験例4−7〜4−10では、コントロール以上にコク・ボディ感が強くなっており、脂肪分低下によるコク・ボディ感の低下を十分に補填できていた。
【0072】
[実施例4]
高甘味度甘味料を用いた場合の、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンによるコク味増強効果について調べた。具体的には、表9に示す処方で、ミルクコーヒー飲料を調製した。表9中、インスタントコーヒー粉末及びクリーミングパウダーは表1と同じであり、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0073】
【表9】
【0074】
【表10】
【0075】
【表11】
【0076】
【表12】
【0077】
各ミルクコーヒー飲料の官能評価を行い、結果を表10〜12に示した。この結果、コントロール(試験例5−0)から砂糖(グラニュー糖)を半分量除いた試験例5−1のミルクコーヒー飲料では、甘味だけでなく、コク・ボディ感の大幅な低下が見られた。コントロールの砂糖半分量(2%)の代わりに、アスパルテーム及び/又はアセスルファムカリウムの合計濃度を、置き換える砂糖の200分の1量(100ppm)となるように添加した試験例5−2〜5−4のミルクコーヒー飲料では、アスパルテームとアセスルファムカリウムの配合比にかかわらず甘味は補填されたが、コク・ボディ感についてはあまり補填されず、コントロールには及ばなかった。コントロールの砂糖半分量(2%)の代わりに、アスパルテーム及び/又はアセスルファムカリウムの合計濃度を、置き換える砂糖の800分の1量(25ppm)〜50分の1量(400ppm)となるように添加した試験例5−5〜5−10のミルクコーヒー飲料では、アスパルテームとアセスルファムカリウムの添加量に応じて甘味は補填されたが、コク・ボディ感はいずれも不充分であった。詳細には、試験例5−7(400分の1量)と試験例5−8(150分の1量)では試験例5−2〜5−4(200分の1量)と同等の効果が見られ、試験例5−6(600分の1量)では甘味とコク・ボディ感が試験例5−2〜5−4より僅かに弱く、試験例5−9(100分の1量)ではコク・ボディ感は試験例5−2〜5−4と同定であるものの甘味が強く感じられ、試験例5−5(800分の1量)では甘味とコク・ボディ感が試験例5−2〜5−4よりいずれも弱く、試験例5−10(50分の1量)では甘味が強すぎることから風味のバランスが崩れていた。
【0078】
また、試験例5−11〜5−14では、試験例5−1よりもコク・ボディ感が強く、コントロールと同等程度にまでコク・ボディ感が補填された。ただし、砂糖の甘味を補填することはできず、コントロールに比べて風味のバランスが悪かった。試験例5−15〜5−18では、試験例5−2及びコントロールと比べて、コク・ボディ感が強くなっており、アスパルテームによって甘味も補填されたことにより、風味のバランスも非常に良好であった。試験例5−19〜5−26においても、試験例5−3、5−4、及びコントロールと比べてコク・ボディ感が強くなっており、アスパルテーム及び/又はアセスルファムカリウムによって甘味も補填されたことにより、風味のバランスも非常に良好であった。
【0079】
試験例5−27〜5−30では、試験例5−5よりもコク・ボディ感が強く、コントロールと同等程度にまでコク・ボディ感が補填された。ただし、砂糖の甘味を補填するにはアスパルテーム及びアセスルファムカリウムの濃度が不足しており、コントロールに比べて風味のバランスが僅かに悪かった。試験例5−31〜5−34では、試験例5−6よりもコク・ボディ感が強く、試験例5−19〜5−22に比べると僅かに効果が低く感じられたものの、コントロールと同等程度にまでコク・ボディ感が補填された。加えて、アスパルテーム及びアセスルファムカリウムによって甘味もある程度補填されたことにより風味のバランスは良好であった。
【0080】
試験例5−35〜5−42では、試験例5−7、5−8、及びコントロールと比べて、コク・ボディ感は強くなっており、試験例5−15〜5−26と同程度の効果が得られた。試験例5−43〜5−46では、試験例5−9及びコントロールと比べてコク・ボディ感は強くなっていた。ただし、アスパルテーム及びアセスルファムカリウムによる甘味が僅かに強く感じられ、風味のバランスの面で試験例5−15〜5−26、5−35〜5−42と同程度の効果は得られなかった。
【0081】
試験例5−47〜5−50では、試験例5−10及びコントロールと比べて、コク・ボディ感は強くなっていた。ただし、アスパルテーム及びアセスルファムカリウムによる甘味が非常に強く感じられ、風味のバランスが崩れる結果となった。
【0082】
これらの結果から、砂糖低減によるコク・ボディ感の低減は、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンを添加することによって補填することができることがわかった。また、砂糖をアスパルテーム及び/又はアセスルファムカリウムで置き換える場合には、甘味とのバランスから、アスパルテーム及び/又はアセスルファムカリウムの合計量を置き換える砂糖量の600分の1〜100分の1量にすることが好ましく置き換える砂糖量の400分の1〜150分の1量にすることがより好ましいことも示された。
【0083】
[実施例5]
エチルアルコールを併用した場合の、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンによるコク味増強効果について調べた。具体的には、表13に示す処方で、ミルクコーヒー飲料を調製した。表13中、インスタントコーヒー粉末及びクリーミングパウダーは表1と同じであり、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0084】
【表13】
【0085】
【表14】
【0086】
各ミルクコーヒー飲料の官能評価を行い、結果を表14に示した。この結果、400ppbの2−アセチルチアゾールを添加した試験例6−2のミルクコーヒー飲料に対してエチルマルトールを50ppbとなるように添加した試験例6−3のミルクコーヒー飲料では、試験例6−2と同程度の2−アセチルチアゾールによるコク・ボディ感の補填効果(コク味増強効果)が得られた。試験例6−2のミルクコーヒー飲料に対してエチルマルトールを100〜400ppb添加した試験例6−4〜6−10のミルクコーヒー飲料では、2−アセチルチアゾールの添加量は同じであるが、試験例6−2よりもより高いコク・ボディ感の補填効果が得られた。特に、エチルマルトールを150〜300ppbとなるように添加した試験例6−4〜6−8では、エチルマルトールによってコク・ボディ感の補填効果が明らかに増していると感じられ、風味のバランスも非常によく感じられた。エチルマルトールを350〜400ppbとなるように添加した試験例6−9及び6−10では、エチルマルトールによってコク・ボディ感の補填効果が明らかに増していたが、エチルマルトールに由来する甘い香りが、試験例6−9では僅かに強く、試験例6−10では非常に強く感じられ、風味のバランスが崩れる結果となった。
【0087】
また、600ppbの2−アセチルピリジンを添加した試験例6−11のミルクコーヒー飲料に対してエチルマルトールを100〜350ppbとなるように添加した試験例6−12〜6−14のミルクコーヒー飲料では、2−アセチルピリジンの添加量は同じであるが、試験例6−11よりもより高いコク・ボディ感の補填効果が得られた。同様に、100ppbの2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンを添加した試験例6−15のミルクコーヒー飲料に対してエチルマルトールを100〜350ppbとなるように添加した試験例6−15〜6−18のミルクコーヒー飲料では、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジンの添加量は同じであるが、試験例6−15よりもより高いコク・ボディ感の補填効果が得られた。200ppbの2−アセチル−1−ピロリンを添加した試験例6−19のミルクコーヒー飲料に対してエチルマルトールを100〜350ppbとなるように添加した試験例6−20〜6−22のミルクコーヒー飲料では、2−アセチル−1−ピロリンの添加量は同じであるが、試験例6−19よりもより高いコク・ボディ感の補填効果が得られた。
【0088】
これらの結果から、砂糖低減によるコク・ボディ感の低下を、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンを添加することによって補填する場合に、同時にエチルマルトールを併用することによってコク・ボディ感の補填効果がさらに増強されること、高甘味度甘味料とエチルマルトールを併用する場合には、飲料中のエチルマルトール濃度が100〜350ppbとなるように含有させることが好ましく、150〜300ppbとなるように含有させることがより好ましい。
【0089】
[実施例6]
エチルアルコールを併用した場合の、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンによるコク味増強効果について調べた。具体的には、表15に示す処方で、ミルクコーヒー飲料を調製した。表15中、インスタントコーヒー粉末及びクリーミングパウダーは表1と同じであり、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0090】
【表15】
【0091】
【表16】
【0092】
各ミルクコーヒー飲料の官能評価を行い、結果を、各飲料の脂肪分(質量%)及び固形分(%)と共に表16に示した。比較のため、実施例2の試験例3−1〜3−5及び実施例3の試験例4−1、4−3〜4−6の結果も並べて示した。この結果、試験例3−2〜3−5のミルクコーヒー飲料に対して、エチルマルトールを250ppbとなるように添加した試験例7−1〜7−4のミルクコーヒー飲料では、試験例3−2〜3−5よりも強いコク味増強効果が得られており、風味のバランスも非常に良かった。同様に、エチルマルトールを250ppbとなるように添加した試験例7−5〜7−8のミルクコーヒー飲料では、試験例4−3〜4−6よりも強いコク味増強効果が得られており、風味のバランスも非常に良かった。つまり、エチルマルトールによってコク・ボディ感の補填効果が明らかに増強されていた。これらの結果から、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンとエチルマルトールとを併用することにより、乳原料、脂肪分及び固形分の減少によるコク・ボディ感の低下を効果的に補填し、コク味を増強することができることが示された。
【0093】
[実施例7]
表17〜19に示す処方で、乳原料とクリーミングパウダーを含有するココア飲料、紅茶飲料、抹茶飲料、及びほうじ茶飲料を調製した。具体的には、水以外の固形分を全て混合した粉末組成物(インスタント飲料用組成物)を調製し、これに表17〜19に記載の量のお湯を注いで溶解させることにより飲料を調製した。表17〜19中、クリーミングパウダーは表1と同じであり、ココア粉末は、市販品(商品名:〈純ココア〉、森永製菓(株)製)であり、抹茶粉末は、市販品(商品名:〈宇治抹茶〉、共栄製茶(株)製)である。また、紅茶(Brix)は、市販品(商品名:〈リプトン イエローラベル ティーバッグ〉、ユニリーバ・ジャパン(株)製)のティーバッグ10個(茶葉20g相当)に95℃以上の湯を500mL注ぎ、5分間抽出し、Brix分を固形分として調整したものである。ほうじ茶(Brix)は、市販品(商品名:〈お〜い お茶 一番茶入りほうじ茶〉、伊藤園(株)製)の茶葉30gに95℃以上の湯を500mL注ぎ、5分間抽出し、Brix分を固形分として調整したものである。表17〜19中、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0094】
【表17】
【0095】
【表18】
【0096】
【表19】
【0097】
各嗜好性飲料の官能評価を行い、結果を表17〜19に示した。この結果、官能評価のコントロールとした試験例8−1〜8−4に比べて、400ppbの2−アセチルチアゾール、600ppbの2−アセチルピリジン、100ppbの2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は200ppbの2−アセチル−1−ピロリンを添加した試験例8−5〜8−20は、いずれもコク・ボディ感が増強されており、全体的な風味も良好であった。
【0098】
[実施例8]
表20〜24に示す処方で、脂肪分としてココナッツオイルのみを含有するコーヒー飲料、ココア飲料、紅茶飲料、抹茶飲料、及びほうじ茶飲料を調製した。表20〜24中、インスタントコーヒー粉末は表1と同じであり、ココア粉末、抹茶粉末、紅茶(Brix)、及びほうじ茶(Brix)は表17と同じであり、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0099】
【表20】
【0100】
【表21】
【0101】
【表22】
【0102】
【表23】
【0103】
【表24】
【0104】
各嗜好性飲料の官能評価を行い、結果を表20〜24に示した。この結果、官能評価のコントロールとした試験例9−1〜9−5に比べて、400ppbの2−アセチルチアゾール、600ppbの2−アセチルピリジン、100ppbの2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は200ppbの2−アセチル−1−ピロリンを添加した試験例9−6〜9−25は、いずれもコク・ボディ感が増強されており、全体的な風味も良好であった。
【0105】
[実施例9]
表25〜27に示す処方で、脂肪分として硬化ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、又は水添パーム核油のみを含有するミルクコーヒー飲料を調製した。表25〜27中、インスタントコーヒー粉末は表1と同じであり、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0106】
【表25】
【0107】
【表26】
【0108】
【表27】
【0109】
各嗜好性飲料の官能評価を行い、結果を表25〜27に示した。この結果、官能評価のコントロールとしたココナッツオイルを含有させた試験例10−1のミルクコーヒー飲料に対して、硬化ヤシ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、及び水添パーム核油を含有させた試験例10−2〜10−4のミルクコーヒー飲料のコク・ボディ感は、添加した植物油脂の種類によって多少の違いはあれど、大きな差はなかった。また、試験例10−1〜10−4のミルクコーヒー飲料に比べて、400ppbの2−アセチルチアゾール、600ppbの2−アセチルピリジン、100ppbの2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は200ppbの2−アセチル−1−ピロリンを添加した試験例10−5〜10−16のミルクコーヒー飲料は、いずれもコク・ボディ感が増強されており、全体的な風味も良好であった。
【0110】
[比較例2]
植物油脂を含有せず、乳風味も有していないコーヒー飲料及びココア飲料について、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、及び2−アセチル−1−ピロリンによるコク味増強効果を調べた。具体的には、表28に示す処方で、コーヒー飲料又はココア飲料を調製した。表28中、インスタントコーヒー粉末は表1と同じであり、ココア粉末は表17と同じである。また、表28中、単位が記載されていない数値は「%」を示す。
【0111】
【表28】
【0112】
【表29】
【0113】
各嗜好性飲料の官能評価を行い、結果を表29に示した。この結果、官能評価のコントロールとした試験例11−1及び11−2に比べて、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンを添加した試験例11−3〜11−26では、いずれもコク・ボディ感の増強は見られなかった。それどころか、2−アセチルチアゾール等の添加量が高くなるほど、苦味と独特の風味により、各嗜好飲料の風味が損なわれてしまっていた。これらの結果から、油脂を含有せず、かつ乳風味も有していない嗜好性飲料においては、2−アセチルチアゾール、2−アセチルピリジン、2−アセチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン、又は2−アセチル−1−ピロリンによるコク味増強効果は期待できないことがわかった。