(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エステル基を有する高分子への前記表面処理が、エクストルーダー装置による熱可塑性樹脂層積層と同時に行なうオゾン処理であることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器。
前記積層体が紙基材とシーラント層との間に中間層を有しており、この中間層が、プラスチックフィルムに無機化合物層を設けて成るガスバリア層を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の液体用紙容器。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明を実施するための形態について、図を参照しながら詳細に説明を加える。ただし、本発明はこれらの例にのみ限定されるものではない。
【0029】
図1は、本発明に係る液体用紙容器を説明するための一実施形態の斜視模式図である。ここに示した例は、ゲーベルトップ型と呼ばれる形の液体用紙容器である。
【0030】
液体用紙容器(101)は頂部(3)、胴部(2)、底部(4)からなり、トップシール部(5)を頂点として、屋根形の頂部(3)の傾斜部に口栓(1)を有している。口栓(1)は液体用紙容器(101)に充填、密閉された後、内容物を注ぎ出すために用いられる。本発明はこのような液体用紙容器を対象とする。ただし、口栓は付いていても、付いていなくてもかまわない。口栓が付いていない容器の場合には、たとえば頂部(3)の
トップシール部(5)を切り裂いて開口部として内容物を注ぎ出すことができる。
【0031】
図2は本発明に係る液体用紙容器を説明するための、一実施形態の平面展開図である。本発明による液体用紙容器は紙を基材とする積層体(102)から構成されており、ここで示した例は、その一実施形態の平面展開図である。
【0032】
積層体(102)は、刃型による打ち抜き、あるいは刃物等によるカットによって所定の外形に整えられ、さらに紙容器を立体に組み立てるための折罫線(7)を設ける。口栓を設ける場合には、口栓を装着するための口栓穴(8)を設ける。
【0033】
胴部(2)は貼着板(6)をヒートシールすることによって、折罫線(7)とともに四角柱の胴部を形成することができる。頂部(3)、底部(4)もそれぞれの折り罫線とヒートシールによって組み立てられ、内容物充填後にトップシール部(5)がヒートシールされて密封される。
【0034】
図3は本発明に係る液体用紙容器を構成する、積層体の層構成を説明するための部分断面模式図である。
積層体(102)は、紙を基材としており紙基材層(10)を有し、容器内層側にシーラント層(11)を有する。また紙基材層(10)の容器外層側には熱可塑性樹脂層(12)を設ける。容器最外層には印刷層(18)を設けることができる。
【0035】
ここに示した例は、紙基材とシーラント層との間に中間層としてガスバリア層(13)を設けた例である。紙基材層(10)は接着層(16)を介してガスバリア層(13)と貼りあわせてあり、ガスバリア層(13)はプラスチックフィルム層(14)と無機化合物層(15)とから構成される。積層体の容器内層側には接着層(17)を介してシーラント層(11)が設けられている。
【0036】
本発明においては、シーラント層として従来一般的であったポリオレフィン系樹脂に替えてポリエチレンテレフタレートフィルムをシーラント層として用いることにより、ポリオレフィン系樹脂特有の臭気の内容物への移行および内容物の成分のシーラント層による吸着が少なくすることができるため、内容物の香味成分のシーラント層による吸着などの影響を少なくすることができる。これは、ポリエチレンテレフタレートフィルムのガスバリア性が、ポリオレフィン系樹脂にくらべて、高いことによる効果である。
【0037】
図4は本発明に係る液体用紙容器を説明するための、容器胴部の水平断面模式図である。
容器胴部(2)は貼着板(6)と、
図2に示した折罫線(7)とによって、四角柱に形成される。四角柱はその断面図で見ると、貼着板(6)が胴部の他方の端部と貼着されてサイドシール部(9)を形成しており、これはヒートシールによって溶着して行なわれる。
【0038】
図5は本発明に係る液体用紙容器の、
図4に示した容器胴部のサイドシール部を詳しく説明するための部分断面模式図である。
サイドシール部(9)は貼着部(21)で、貼着板(6)と胴部のもう一方の端部がヒートシールによって溶着されている。貼着板は、スカイブ加工によって積層体がシーラント層(11)を残して削がれ、折り返され、スカイブ加工部(22)を形成している。これによって、液体用紙容器最内層は、すべてシーラント層(11)で覆われることになる。
【0039】
貼着板(6)と胴部のもう一方の端部の接触は、シーラント層/シーラント層部(23)、および熱可塑性樹脂層/シーラント層部(24)のふたつの部分からなる。本発明においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムに連続波の赤外線波長のレーザー光を照射してヒートシール性を発現させてシーラント層(11)としているために、シーラント層(11)同士が対向している、シーラント層/シーラント層部(23)において溶着可能で、ヒートシールが形成される。
【0040】
しかしながら、熱可塑性樹脂層(12)とシーラント層(11)が対向している、熱可塑性樹脂層/シーラント層部(24)においては、異なる種類の樹脂間のヒートシールとなるため、ヒートシール性が充分ではない場合には、熱可塑性樹脂層(12)に表面処理をして、ヒートシール性を補強することができる。
【0041】
図6は本発明に係る液体用紙容器の、ヒートシール部分の一実施形態を説明するための平面展開図である。 本発明者は鋭意検討の結果、ポリエチレンテレフタレートフィルムに赤外線波長のレーザー光を照射することにより、ヒートシール性が発現することを見出した。そこで本発明においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムに連続波の赤外線波長のレーザー光を照射してヒートシール性を発現させてシーラント層とするが、照射はヒートシール性が必要な部分にのみ選択的に照射することができる。照射部分にシーラントとしてのヒートシール性を付与することができるため、たとえば具体的には
図6に示した例のように、トップシール部(26)、胴部シール部(27)、底部シール部(28)に照射すればよい。
【0042】
レーザー光の照射は、連続線や断続線、あるいは点状のパターンを描画する形で照射することができる。あるいは面状の照射を行なうこともできる。このような形状はレーザー光のスポット径、スポット形状などを適宜設定して形成することができる。
【0043】
以下、本発明による液体用紙容器を構成する個々の要素について、より詳細な説明を加える。
【0044】
(シーラント層)
本発明において、シーラント層(11)にはポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる。本発明による液体用紙容器は、紙を基材とした積層体から構成されており、容器内層側にポリエチレンテレフタレートフィルムを配して、この層に連続波の赤外線波長のレーザーを照射してヒートシール性を発現させシーラント層としたものである。
【0045】
シーラント層として従来一般的であったポリオレフィン系樹脂に替えてポリエチレンテレフタレートフィルムをシーラントとして用いることにより、ポリオレフィン系樹脂特有の臭気の内容物への移行および内容物の成分のシーラントによる吸着が少なくすることができるため、内容物の香味成分のシーラント層による吸着などの影響を少なくすることができる。
【0046】
またポリエチレンテレフタレートフィルムには、フィルム強度が大きいことや加工工程での伸縮が小さいなどの点で、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをより好ましく用いることができる。
【0047】
ヒートシール性の発現は短パルスの電磁波ではなく、連続照射タイプのレーザー光を用いてヒートシール性を発現させる部分に描画、照射して行なう。レーザー光はエネルギーが効率的にポリエチレンテレフタレートフィルム層に吸収されやすい赤外線波長を有する、たとえば炭酸ガスレーザーを用いることができる。これによってエネルギー効率が高く、かつ安全性の高いシーラント層を簡易かつ安価に実現することができる。
【0048】
なお、こうしてヒートシール性を発現したポリエチレンテレフタレートフィルムの構造または特性を解析するためには著しく過大な経済的支出や時間を要するため、実際的ではない。
【0049】
また赤外線波長を有するレーザー光であればレーザー発振器は特定の形式のものに限定するものではない。レーザー光が照射された部分にはポリエチレンテレフタレートフィルムの変質によってヒートシール性が発現する。
【0050】
したがって、液体用紙容器を組み立て、また内容物充填後の密封に必要な部分に選択的にレーザー照射を行なうことによって、その部分にシーラントとしてのヒートシール性を付与することができる。
【0051】
(紙基材層)
紙基材(10)としては、特に限定をするものではないが、一般にミルクカートン原紙等の板紙が用いられる。坪量と密度は容器の容量やデザインにより適宜選定されるが、通常は坪量200〜500g/m
2の範囲で密度0.6〜1.1g/cm
3の紙が好適に用いられる。たとえば、内容量2リットルの容器の場合には、坪量400g/m
2のものが好ましく用いられる。
【0052】
(熱可塑性樹脂層)
容器外層側の熱可塑性樹脂層(12)に用いる樹脂には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)のほか、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などの、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチレン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどの、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化合物、カルボン酸部位をナトリウムイオンあるいは亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元重合体に代表される酸無水変性ポリオレフィン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上の混合物などの熱可塑性樹脂を好ましく使用することができる。熱可塑性樹脂層(12)の形成はこれらの熱可塑性樹脂を用いて、たとえば紙基材の外面に押出しラミネーションにより設けることができる。この層の外面に印刷を施す場合には、表面処理を行なうことが好ましい。
【0053】
熱可塑性樹脂層(12)に、ポリエチレン樹脂を用いて、その表面にコロナ放電処理を行なうことができる。これは、コロナ放電が生ずる電界内にポリエチレン樹脂フィルムもしくはポリエチレン樹脂を積層した積層体を通過させ、樹脂表面の分子の改質により、濡れ性や接着性が改善し、ヒートシール性も向上する効果がある。
【0054】
あるいは熱可塑性樹脂層(12)に、ポリエチレン樹脂を用いて、その表面にフレーム処理を行なうことができる。これは表面を炎で炙ることによって、樹脂表面の分子の改質を図ることにより濡れ性や接着性が改善し、ヒートシール性も向上する効果がある。
【0055】
あるいは熱可塑性樹脂層(12)に、ポリエチレン樹脂を用いて、その積層をエクストルーダー装置を用いて行なうと同時にその表面にオゾン処理を行なうことができる。この方法によっても樹脂表面の分子の改質を図ることにより濡れ性や接着性が改善し、ヒートシール性も向上する効果がある。
【0056】
あるいは熱可塑性樹脂層(12)にエステル基を有する高分子を用いることができる。本発明によるシーラントが、ポリエチレンテレフタレートフィルムに連続波の赤外線波長のレーザー光を照射してヒートシール性を発現させてシーラント層としているため、ヒートシールに際して、エステル基を有する高分子、たとえばエチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−メタアクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン−酢酸
ビニル共重合体(EVA)などを使用することができる。これによって本発明によるシーラントを用いてヒートシールを行なう際にも十分なヒートシール性を確保することができる。
【0057】
熱可塑性樹脂層(12)にエステル基を有する高分子を用いる場合においても、コロナ放電処理やフレーム処理、オゾン処理などの表面処理を行なうことができる。
【0058】
熱可塑性樹脂層(12)の形成はこれらの熱可塑性樹脂を用いて、たとえば紙基材の外面に押出しラミネーションにより設けることができる。厚さは5〜40μmの範囲がよく、10〜20μmの範囲がより好ましい。この層の外面に印刷を施す場合には、コロナ放電処理などの表面処理を行なうことが好ましい。
【0059】
(ガスバリア層)
内容物の保存性を向上させることを目的として、積層体中に着色フィルムなど紫外線を遮蔽する不透明層を設けることができる。あるいは、積層体中にガスバリア層(13)を設けることができる。
【0060】
ガスバリア層(13)には、アルミニウム箔などの金属箔、あるいはプラスチックフィルムに金属、無機化合物の蒸着層を設けてガスバリア層として用いることができる。無機化合物には、たとえばSiOやAlOなどの無機化合物がある。ガスバリア層は接着剤を用いて、たとえばドライラミネーション法を用いて積層することもでき、あるいは押出機を用いて熱可塑性樹脂を押し出して積層することもできる。
【0061】
ガスバリア層(13)にガスバリアフィルムを用いる場合、プラスチックフィルムに無機化合物の蒸着層、コーティングによる無機化合物層を設けて構成することができ、プラスチックフィルムにアンカーコートを設けた後、蒸着層、コーティングによる無機化合物層を順次設けることができる。
【0062】
ガスバリア層(13)に用いるプラスチックフィルム層(14)は、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレンなどのフィルムを用いることができる。特に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、蒸着加工時や貼り合わせ加工時に、伸縮が少ないので好ましく用いられる。厚さは、6〜25μmのものが好ましく用いられる。
【0063】
ガスバリア層(13)のアンカーコート層には、例えばウレタンアクリレートを用いることができる。アンカーコート層の形成には、樹脂を溶媒に溶解した塗料をグラビアコーティングなど印刷手法を応用したコーティング方法を用いるほか、一般に知られているコーティング方法を用いて塗膜を形成することができる。
【0064】
蒸着層を形成する方法としては,たとえばSiOやAlOなどの無機化合物を真空蒸着法を用いて、アンカーコート層を設けた基材フィルム上に無機化合物層を形成することができる。さらにコーティングによる無機化合物層を重ねることもできる。
【0065】
コーティングによる無機化合物層を形成する方法としては、水溶性高分子と、(a)一種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の、少なくともいずれかひとつを含む水溶液あるいは水/アルコール混合水溶液を主剤とするコーティング剤をフィルム上に塗布し、加熱乾燥してコーティング法による無機化合物層を形成しコーティング層とすることができる。このときコーティング剤にはシランモノマーを添加しておくことによってアンカーコート層との密着の向上を図ることができる。
【0066】
無機化合物層はプラスチックフィルム上に真空蒸着法による蒸着層のみでもガスバリア
性を有するが、コーティング法による無機化合物層を真空蒸着法による無機化合物層である蒸着層に重ねて形成し、ガスバリア層(13)とすることができる。
【0067】
これら2層の複合により、真空蒸着法による無機化合物層とコーティング法による無機化合物層との界面に両層の反応層を生じるか、或いはコーティング法による無機化合物層が真空蒸着法による無機化合物層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成されるため、高いガスバリア性、耐湿性、耐水性を実現するとともに、変形に耐えられる可撓性を有するため、包装材料としての適性も具備することができる。
【0068】
また無機化合物層としてSiOを用いる場合には、金属箔をガスバリア層として用いる場合と異なり、検査機としての金属探知機などの使用も可能である。これらは、包装袋の用途、要求品質によって適宜選択し、使い分けをすればよい。
【0069】
ガスバリア層(13)は、積層体(102)において紙基材(10)側がプラスチックフィルム層(14)であっても、無機化合物層(15)であってもかまわない。
【0070】
(接着層)
図3中に示した接着層(17)に関して、シーラント層(11)とガスバリア層(13)、あるいはガスバリア層を設けない場合にはシーラント層(11)と紙基材層(10)との間に接着層(17)を設けることができる。接着層は、押し出し樹脂層であってもよく、また、ラミネート用接着剤との組み合わせであってもよい。
【0071】
押し出し樹脂層に用いる樹脂としては、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、そのほかアイオノマーや変性ポリエチレンなどを用いることができる。とくに密度0.920以下の直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。また厚みは5μmから20μmの範囲が通常用いられる。特に10μmとすることが好ましい。
【0072】
また、ラミネート用接着剤を用いる場合には、ウレタン系2液硬化型のドライラミネート用接着剤(無溶剤型接着剤を含む)を用いることができる。乾燥塗布量は、0.5〜7.0g/m
2が好ましい。
【0073】
またガスバリア層と押し出しポリエチレン層の接着においては、アンカー層を設けることができる。その場合でも、ガスバリア層側のポリエチレンテレフタレートフィルムにコロナ処理を施すことでアンカー層を省くことも可能であり、とくにエクストルーダーによる押し出しラミネート工程においてインライン加工することが好ましい。このときの層構成はたとえば下記のような構成が可能である。
【0074】
ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物層)/ドライラミネート/ポリエチレンフィルム/ドライラミネート/シーラント層(2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)。
【0075】
あるいは、
ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物層)/アンカーコート層/接着層(押し出しポリエチレン)/アンカーコート層/シーラント層(2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)。
【0076】
もしくは、
ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物層)/アンカーコート
層/接着層(押し出しポリエチレン)/ポリエチレンフィルム/ドライラミネート/シーラント層(2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)、
といった層構成が可能である。
【0077】
(接着層)
図3中に示した、接着層(16)は、ガスバリアフィルムを積層体中に含める場合に、紙基材層(10)とガスバリア層(13)を接着させるための接着層である。たとえばポリオレフィン系樹脂を用いてサンドイッチラミネーションで積層してもよい。この場合には厚みは10μmから60μmの範囲が通常用いられる。10μm未満では十分な接着強度が得られない。
【0078】
具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレン系樹脂やポリプロピレン、あるいは、エチレン・アクリル酸共重合体やエチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)などのエチレン・α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチルやエチレン・アクリル酸エチルやエチレン・メタクリル酸メチルやエチレン・メタクリル酸エチルなどのエチレン・α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、あるいは、亜鉛イオンで架橋した、エチレン・α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン・無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体、あるいは、これらから選ばれる2種以上の混合物などにより設けられる。
【0079】
接着強度を高めるために、紙基材層やガスバリア層の接着面に、コロナ処理、オゾン処理、アンカーコートなどの易接着処理を行うことができる。
【0080】
(印刷層)
熱可塑性樹脂層の外側の面に印刷層(18)を設けることができる。印刷は内容物に関する情報のほかロゴマークなどを表示し、また内容物に関してのイメージや用途例、バーコードなどを文字や画像で表示することができる。
【0081】
印刷方法については限定するものではないが、たとえばグラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の方法を用いることができる。
【0082】
印刷用インキについても限定をするものではなく、印刷方法との適合性や被印刷体との密着性、あるいは内容物が食品である場合などの安全性などに配慮して適宜選択することができる。また熱可塑性樹脂層の表面にはコロナ処理などの易接着処理を行って、印刷層との接着性を高めることが好ましい。印刷層上には耐摩耗性向上の為にオーバーコート層を設けても良いが、ヒートシール部分を避けて設けることが好ましい。
【0083】
このように本発明によれば、液体用紙容器において、内容物の香味成分の吸着が少なく、かつ安価な液体用紙容器を提供することが可能である。以下実施例にもとづいて、本発明をさらに具体的に説明する、ただし、本発明はこれらの例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0084】
<実施例1>
下記の材料構成で積層体を作成し、それを用いて液体用紙容器を作成した。
構成は容器外層側から、
熱過可塑性樹脂層:低密度ポリエチレン(LDPE)厚さ20μm/紙基材(400g/
m
2)/EMAA(厚さ20μm)/シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/ドライラミネート/直鎖状低密度ポリエチレン(厚さ40μm)/ドライラミネーション/シーラント層:2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)
容量:85mm角、2リットル
容器内層側となる面からヒートシール部にレーザー照射を行なった。レーザー照射は
図6に示した位置に実施した。
レーザー照射条件:炭酸ガスレーザー、出力20W、描画速度3000mm/秒
熱過可塑性樹脂層には、フレーム処理を実施。
紙容器の製作は、既存の紙容器生産の工程を使用した。
【0085】
<実施例2>
下記の材料構成で積層体を作成し、それを用いて液体用紙容器を作成した。
構成は容器外層側から、
熱過可塑性樹脂層:エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)厚さ20μm/紙基材(400g/m
2)/EMAA(厚さ20μm)/シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/ドライラミネート/直鎖状低密度ポリエチレン(厚さ40μm)/ドライラミネーション/シーラント層:2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)
ここで、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の酢酸ビニル量は10%である。
熱過可塑性樹脂層には、表面処理を実施しない。
上記以外は、実施例1と同様である。
【0086】
<実施例3>
下記の材料構成で積層体を作成し、それを用いて液体用紙容器を作成した。
構成は容器外層側から、
熱過可塑性樹脂層:エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)厚さ20μm/紙基材(400g/m
2)/EMAA(厚さ20μm)/シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/ドライラミネート/直鎖状低密度ポリエチレン(厚さ40μm)/ドライラミネーション/シーラント層:2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)
ここで、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の酢酸ビニル量は10%である。
熱過可塑性樹脂層には、コロナ放電処理を実施した。
上記以外は、実施例2と同様である。
【0087】
<比較例1>
下記の材料構成で積層体を作成し、それを用いて液体用紙容器を作成した。
構成は容器外層側から、
熱過可塑性樹脂層:低密度ポリエチレン(厚さ20μm)/紙基材(400g/m
2)/EMAA(厚さ20μm)/シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/ドライラミネート/シーラント層:直鎖状低密度ポリエチレン(厚さ60μm)熱過可塑性樹脂層には、表面処理は実施しない。
上記以外は実施例1と同様である。
【0088】
<比較例2>
下記の材料構成で積層体を作成し、それを用いて液体用紙容器を作成した。
構成は容器外層側から、
熱過可塑性樹脂層:低密度ポリエチレン(厚さ20μm)/紙基材(400g/m
2)/EMAA(厚さ20μm)/シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/ドライラミネート/直鎖状低密度ポリエチレン(厚さ40μm)/シーラント層
:2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)
容器内層側となる面へのレーザー照射は行なわない。
熱過可塑性樹脂層にコロナ放電処理を実施した。
上記以外は実施例1と同様である。
【0089】
<比較例3>
下記の材料構成で積層体を作成し、それを用いて液体用紙容器を作成した。
構成は容器外層側から、
熱過可塑性樹脂層:低密度ポリエチレン(LDPE)厚さ20μm/紙基材(400g/m
2)/EMAA(厚さ20μm)/シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/ドライラミネート/直鎖状低密度ポリエチレン(厚さ40μm)/ドライラミネーション/シーラント層:2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)
熱過可塑性樹脂層には、表面処理は実施しない。
上記以外は実施例1と同様である。
【0090】
<評価項目>
(シール強度)
表層と最内層のシール強度を測定した。
試験片は15mm幅、引っ張り速度は300mm/分である。
(落下試験)
水を充填した液体用紙容器を使用して、落下試験を実施した。
液体用紙容器が破壊されて、液漏れが発生するまでの回数をカウントする。
落下高さは80cmである。
(味覚)
官能評価による。
清酒を充填した液体用紙容器を30℃環境で3ヶ月保管した後、常温に戻してパネラー10名による官能評価を実施した。
評価基準は、
比較例1と比べて良好である:○
比較例1と比べて劣悪である:×
とした。
【0091】
<評価結果>
評価結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
比較例1の(味覚)は、比較のためのリファレンスであるが、レベルは不可のレベルである。
比較例2の(味覚)は、内容物充填後の密封ができないため、評価不能(NA)である。
【0094】
表1に示されたとおり、本発明による実施例1〜実施例3はいずれの評価項目においても良好な結果となっている。
【0095】
比較例1においては、シーラント層にポリエチレン樹脂を用いた従来形の液体用紙容器の仕様であり、内容物の香味成分の吸収があり不可の評価である。
【0096】
また比較例2においては、シーラント層へのレーザー光照射が実施されていないことにより、ヒートシール性が発現せず、シール強度が低く、落下試験でも劣った結果となっている。したがって液体容器として実用は困難であり、レーザー光照射は本発明において必
須であることがわかる。
【0097】
比較例3においては、熱可塑性樹脂層(低密度ポリエチレン)への表面処理(コロナ放電処理)が実施されていないために、シール強度が低く、落下試験でも劣った結果となっている。シーラント層は本発明によるポリエチレンテレフタレートフィルムであるため味覚評価においては、香味成分の吸着がしにくい結果となっているは液体容器として実用は困難である。
【0098】
このように本発明によれば、液体用紙容器において、内容物の香味成分の吸着が少なく、かつ安価な液体用紙容器を提供することが可能である。