特許第6805509号(P6805509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805509
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20201214BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20201214BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G03G15/16
   G03G21/14
   G03G21/00 310
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-47417(P2016-47417)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-161785(P2017-161785A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄二郎
【審査官】 山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−037355(JP,A)
【文献】 特開2014−123075(JP,A)
【文献】 特開2012−155254(JP,A)
【文献】 特開2011−237735(JP,A)
【文献】 特開2012−198275(JP,A)
【文献】 特開2007−047550(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0169239(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101279550(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 15/00−15/01
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 29/12−29/24
B65H 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルトと、
前記ベルトの幅方向における一端部を支点として他端部を前記ベルトの回転方向に移動させて傾けることで前記ベルトの片寄りを補正するステアリング動作を行うステアリング部材と、
前記ベルトの表面に圧接して残留するトナーを清掃するクリーニング部材と、
前記ステアリング動作時における前記ステアリング部材の傾きが閾値以上になった場合であって、その後、前記ステアリング動作の終了により前記ステアリング部材が元の位置に戻ることで前記ステアリング動作時における前記ステアリング部材の傾きが閾値未満になった場合に、前記クリーニング部材にトナーを供給するトナー供給制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ステアリング部材の傾きが閾値以上になった場合、前記クリーニング部材を前記ベルトから離間させ、前記ステアリング部材の傾きが閾値未満になった場合、前記クリーニング部材を前記ベルトに圧着させ、その、前記トナー供給制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニング部材よりも前記ベルトの回転方向の上流側に設けられ、前記ベルトの表面にトナーを貯留するための貯留部材を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記閾値は、前記ベルトの移動速度が所定値以下で動作する期間における前記ステアリング部材の傾きに基づいて決定される
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ベルトに関する部品が交換された場合に前記閾値をリセットし、当該閾値が決定されるまでは前記トナー供給制御を行わない
ことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真方式を採用したプリンタや複写機等の画像形成装置が広く利用されている。画像形成装置では、感光体に担持させた静電潜像を現像した後、現像したトナー像を無端状の中間転写ベルトを介して用紙に転写し、その後、転写したトナー像を用紙に定着させる、という一連のプロセスを通じて画像形成処理を行っている。
【0003】
一般的な画像形成装置には、画像形成処理時に中間転写ベルト上に残留したトナーを清掃するためのクリーニング機構が設けられている。クリーニング機構は、弾性体からなるブレードを備えており、このブレードエッジを中間転写ベルト表面に接触させることにより中間転写ベルト上に残ったトナーの除去を実施している。
【0004】
これに対し、クリーニング機構では、ブレードエッジのダメージを抑制するために、一定量のトナーをブレードエッジに残す必要がある。そのため、従来から、スポンジローラーを用いたトナー供給制御が実施されている。図7は、スポンジローラー560を用いたトナー供給制御を説明するための図である。図7に示すように、クリーニングブレード550のベルト回転方向の上流側には、スポンジローラー560が設けられている。スポンジローラー560は、中間転写ベルト530の表面に接触して従動回転することにより、クリーニングブレード550の近傍に一定量のトナーTを溜めるように構成されている。
【0005】
また、画像形成装置には、走行中の中間転写ベルトの片寄りや蛇行を補正するためのステアリング機構が設けられている。ステアリング機構は、傾動可能なステアリングローラーを備えており、このステアリングローラーを一定量傾けることにより中間転写ベルトの片寄り等を補正できるようになっている。特許文献1には、ステアリング制御時において、クリーニングブレードに潤滑剤を供給することによりステアリングローラーの傾動の偏りを低減するようにした画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−155980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1等に記載される従来の画像形成装置では、以下のような問題がある。従来のステアリング機構では、一次転写ローラーや二次転写ローラー等の各種ローラーの離間時に、中間転写ベルトの移動速度が瞬時的に速くなるため、ステアリングローラーを大きく移動(傾動)させる必要があった。また、ベルト等が想定以上の衝撃を受けた場合に、通常よりも大きくステアリングローラーを移動させる必要があった。
【0008】
ところが、ステアリングローラーを大きく移動させると、以下のような問題があった。図8は、その問題を説明するための図である。図8に示すように、ステアリングローラー500を破線から実線方向に移動させると、中間転写ベルト530が大きく波打ち、スポンジローラー560により溜めていたトナーTが中間転写ベルト530から落ちてしまう場合があった。特許文献1の画像形成装置等では、中間転写ベルトの瞬時的な変化に対応することができず、トナーの枯渇によりクリーニングブレードにダメージを与えてしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大きなステアリング動作により発生したベルトの波打ちに対して、クリーニングブレードのトナーが枯渇した状態を未然に防止することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、無端状のベルトと、前記ベルトの幅方向における一端部を支点として他端部を前記ベルトの回転方向に移動させて傾けることで前記ベルトの片寄りを補正するステアリング動作を行うステアリング部材と、前記ベルトの表面に圧接して残留するトナーを清掃するクリーニング部材と、前記ステアリング動作時における前記ステアリング部材の傾きが閾値以上になった場合であって、その後、前記ステアリング動作の終了により前記ステアリング部材が元の位置に戻ることで前記ステアリング動作時における前記ステアリング部材の傾きが閾値未満になった場合に、前記クリーニング部材にトナーを供給するトナー供給制御を行う制御部と、を備えるものである。
【0011】
本発明においてベルトには、像担持体上に形成されたトナーが転写される中間転写ベルトや、二次転写ローラーに掛け渡される二次転写ベルト等が含まれている。
【0012】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記制御部は、前記ステアリング部材の傾きが閾値以上になった場合、前記クリーニング部材を前記ベルトから離間させ、前記ステアリング部材の傾きが閾値未満になった場合、前記クリーニング部材を前記ベルトに圧着させ、その、前記トナー供給制御を行うものである。
【0013】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記クリーニング部材よりも前記ベルトの回転方向の上流側に設けられ、前記ベルトの表面にトナーを貯留するための貯留部材を備えるものである。
【0014】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記閾値が、前記ベルトの移動速度が所定値以下で動作する期間における前記ステアリング部材の動作量に基づいて決定されるものである。
【0015】
さらに、本発明に係る画像形成装置は、前記制御部が、前記ベルトに関する部品が交換された場合に前記閾値をリセットし、当該閾値が決定されるまでは前記トナー供給制御を行わないようにするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大きなステアリング動作を行った場合でもトナーの枯渇を防止できるので、クリーニング部材のダメージを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の構成例を示す図である。
図2】画像形成ユニットの構成例を示す図である。
図3】画像形成装置の機能構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の動作例を示すフローチャートである。
図5】中間転写ベルトの異常発生を示す図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置の動作例を示すフローチャートである。
図7】スポンジローラーを用いてトナー供給制御を説明するための図である。
図8】ステアリングローラーを大きく移動させた場合の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上拡張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0019】
<第1の実施の形態>
[画像形成装置100の構成例]
図1は、本発明に係る画像形成装置100の構成の一例を示している。図1に示すように、画像形成装置100は、タンデム型の画像形成装置と称されるものであり、自動原稿搬送部80と装置本体102とを備えている。自動原稿搬送部80は、装置本体102の上部に取り付けられ、搬送台上にセットされた用紙を、搬送ローラー等により装置本体102の画像読取部90に送り出す。
【0020】
装置本体102は、操作表示部70と、画像読取部90と、画像形成部10と、中間転写ベルト8と、給紙部20と、レジストローラー対32と、定着部44と、自動用紙反転搬送ユニット60(Auto Duplex Unit:以下ADUという)とを有している。
【0021】
操作表示部70は、表示部と入力部とが組み合わされたタッチパネルと、タッチパネルの周辺部に設けられたスタートキーや決定キーを含む複数の操作キーとを有している。操作表示部70は、操作画面等を画面上に表示したり、操作画面でのタッチ操作や操作キーの操作により入力された画像形成条件等の情報を受け付けたりする。
【0022】
画像読取部90は、原稿台上に載置された原稿、または自動原稿搬送部80により搬送された原稿を走査露光装置の光学系により走査露光し、走査した原稿の画像をCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサにより光電変換して画像情報信号を生成する。画像情報信号は、図示しない画像処理部によりアナログ処理、アナログ/ディジタル(以下A/Dという)変換処理、シューディング補正、画像圧縮処理等が行われた後に、画像形成部10に出力される。
【0023】
画像形成部10は、電子写真方式により画像を形成するものであり、イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成ユニット10Yと、マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成ユニット10Mと、シアン(C)色の画像を形成する画像形成ユニット10Cと、黒(K)色の画像を形成する画像形成ユニット10Kとを有している。この例では、それぞれ共通する機能名称、例えば、符号10の後ろに形成する色を示すY,M,C,Kを付して表記する。
【0024】
画像形成ユニット10Yは、感光体ドラム1Yと、その周囲に配置される帯電器2Y、露光部(光書込み部)3Y、現像器4Yおよびクリーニング部6Yを有している。画像形成ユニット10Mは、感光体ドラム1Mと、その周囲に配置される帯電器2M、露光部3M、現像器4Mおよびクリーニング部6Mを有している。画像形成ユニット10Cは、感光体ドラム1Cと、その周囲に配置される帯電器2C、露光部3C、現像器4Cおよびクリーニング部6Cを有している。画像形成ユニット10Kは、感光体ドラム1Kと、その周囲に配置される帯電器2K、露光部3K、現像器4Kおよびクリーニング部6Kを有している。
【0025】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにおけるそれぞれの感光体ドラム(像担持体)1Y,1M,1C,1K、帯電器2Y,2M,2C,2K、露光部3Y,3M,3C,3K、現像器4Y,4M,4C,4K、クリーニング部6Y,6M,6C,6K、一次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kは、それぞれ共通する内容の構成である。以下、特に、区別が必要な場合を除き、Y,M,C,Kを付さずに表記することとする。
【0026】
帯電器2は、感光体ドラム1の表面をほぼ一様に帯電する。露光部3は、例えばLEDアレイと結像レンズとを有するLPH(LED Print Head)や、ポリゴンミラー方式のレーザー露光走査装置により構成され、画像情報信号に基づいて感光体ドラム1上をレーザー光により走査して静電潜像を形成する。現像器4は、感光体ドラム1上に形成された静電潜像をトナーにより現像する。これにより、感光体ドラム1上に可視画像であるトナー像が形成される。
【0027】
中間転写ベルト8は、複数のローラーにより張架されると共に回動可能に支持されている。中間転写ベルト8の回動と併せて、一次転写ローラー7と感光体ドラム1とが回転し、一次転写ローラー7と感光体ドラム1との間に所定の電圧が印加されることで、感光体ドラム1に形成されたトナー像が中間転写ベルト8上に転写される(一次転写)。
【0028】
給紙部20は、A3やA4等の用紙Pが収容された複数の給紙トレイ20A,20Bを有している。各給紙トレイ20A,20Bから搬送ローラー22,24,26,28等によって搬送された用紙Pは、レジストローラー対32に搬送される。なお、給紙トレイの数は2つに限定されるものではない。また、必要に応じて大容量の用紙Pを収容することが可能な大容量給紙装置を単数または複数連結させても良い。
【0029】
レジストローラー対32に搬送された用紙Pは、ループローラー対30によりその先端がレジストローラー対32に突き当てられることでループが形成され、用紙Pの曲り(例えば斜行)が補正される。用紙Pの曲がりが補正された用紙Pは、所定のタイミングで二次転写部(二次転写ローラー)34に搬送される。二次転写部34では、中間転写ベルト8上に転写されたY色、M色、C色、K色トナー像が、レジストローラー対32により搬送される用紙Pの表面に一括転写される(二次転写)。二次転写された用紙Pは、用紙搬送方向D1の下流側の定着部44に搬送される。
【0030】
定着部44は、加圧ローラーと加熱ローラーとを有している。定着部44は、二次転写部34でトナー像が転写された用紙Pに加圧、加熱処理を行うことにより用紙Pの表面のトナー像を用紙Pに定着させる。
【0031】
搬送路切替部48は、定着部44の用紙搬送方向D1の下流側に設けられ、選択されている印刷モード(片面印刷モード、両面印刷モード等)に基づいて搬送経路の切り替え制御を行う。片面印刷モードで片面の印刷が終了した用紙P、または、両面印刷モードで両面の印刷が終了した用紙Pは、排紙ローラー46により排紙トレイ上に排出される。
【0032】
また、両面印刷モードで、用紙Pの裏面側に画像を形成する場合、表面側に画像が形成された用紙Pは、搬送ローラー62等を介してADU60に搬送される。ADU60のスイッチバック経路では、ADUローラー64の逆回転制御により用紙Pの後端を先頭にしてUターン経路部に搬送され、Uターン経路部に設けられた搬送ローラー66,68等により表裏反転された状態で二次転写部34に再給紙される。
【0033】
[中間転写ベルト8および画像形成部10の周辺の構成例]
図2は、中間転写ベルト8および画像形成部10の周辺の構成の一例を示している。図2に示すように、中間転写ベルト8は、所定の幅を有する無端状のベルトであって、一次転写ローラー7Y,7M,7C,7K、ステアリング機構200、駆動ローラー12、二次転写対向ローラー14および従動ローラー16のそれぞれによって張架されている。
【0034】
駆動ローラー12は、中間転写ベルト8の内面に接触しており、図示しないベルト駆動部(図3参照)の駆動に基づいて回転駆動することにより、中間転写ベルト8を矢印方向(以下、ベルト回転方向という)に沿って循環走行させる。なお、中間転写ベルト8の駆動源は、駆動ローラー12以外のローラーであっても良い。
【0035】
ステアリング機構200は、中間転写ベルト8の蛇行や片寄りを補正するものであり、ステアリングローラー202を有している。ステアリングローラー202は、中間転写ベルト8の内側に接触しており、中間転写ベルト8の回転に伴って従動回転する。ステアリングローラー202は、支軸の一端部が図示しないカムやモータ等を含むステアリング駆動部(図3参照)に接続されており、この一端部の移動に伴って支軸の他端部を支点としてステアリング機構200全体が傾くように構成されている(以下、ステアリング動作という)。これにより、中間転写ベルト8の幅方向における張力分布を調整することができ、中間転写ベルト8のベルト走行位置を補正することができる。
【0036】
クリーニング装置220は、中間転写ベルト8上に残留したトナーを除去するものであり、クリーニングブレード222を有している。クリーニングブレード222は、平板状の部材であって、駆動ローラー12とは中間転写ベルト8を挟んで対向して配置されると共に、その先端部が中間転写ベルト8の外側表面に対して圧接および離間可能に構成されている。
【0037】
貯留機構230は、クリーニングブレード222の近傍にトナーを貯留するためのものであり、貯留ローラー232を有している。貯留ローラー232は、例えばスポンジ等の材料から構成され、クリーニングブレード222よりもベルト回転方向の上流側に配置されると共に中間転写ベルト8の外側表面に接触している。貯留ローラー232は、例えば中間転写ベルト8の回転速度よりも若干遅い回転速度にて回転しており、クリーニングブレード222と貯留ローラー232との間の中間転写ベルト8上に残留トナーを溜める(図7参照)。もちろん、他のパラメータによっては、貯留ローラー232を中間転写ベルト8の回転速度以上で回転させることもできる。
【0038】
[画像形成装置100のブロック構成例]
図3は、画像形成装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、画像形成装置100は、装置全体を制御するための制御部50を備えている。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)52と、ROM(Read Only Memory)54と、RAM(Random Access Memory)56とを有している。CPU52は、ROM54から読み出したソフトウェア(プログラム)を実行することにより、画像形成装置100の各部を制御し、ステアリング動作を含む画像形成処理を実行する。
【0039】
制御部50には、画像形成部10と、ステアリング駆動部204と、ベルト駆動部210と、クリーニング駆動部224と、貯留ローラー駆動部234と、ベルト端部検知センサ240とがそれぞれ接続されている。画像形成部10は、制御部50から供給される制御信号に基づいて帯電、露光、現像等の画像形成処理を実行する。
【0040】
ステアリング駆動部204は、ステアリング機構200の一部であり、例えばステッピングモータから構成されている。ステアリング駆動部204は、制御部50から供給される駆動信号に基づいて駆動することにより、中間転写ベルト8の寄り状態に応じてステアリングローラー202を傾動させる。
【0041】
ベルト駆動部210は、例えばステッピングモータ等から構成され、制御部50から供給される駆動信号に基づいて駆動することにより駆動ローラー12を回転駆動して中間転写ベルト8をベルト回転方向に沿って回動させる。
【0042】
クリーニング駆動部224は、クリーニング装置220の一部であり、例えばステッピングモータから構成されている。クリーニング駆動部224は、制御部50から供給される駆動信号に基づいて駆動することにより、クリーニングブレード222を中間転写ベルト8に対して圧着または離間する方向に移動させる。
【0043】
貯留ローラー駆動部234は、貯留機構230の一部であり、例えばステッピングモータから構成されている。貯留ローラー駆動部234は、制御部50から供給される駆動信号に基づいて駆動することにより貯留ローラー232を回転駆動する。
【0044】
ベルト端部検知センサ240は、例えば透過型や反射型の光センサから構成され、中間転写ベルト8の幅方向における一端側に配置されている。ベルト端部検知センサ240は、回転走行中の中間転写ベルト8の端部位置を検知して検知情報を制御部50に供給する。
【0045】
[画像形成装置100の動作例]
図4は、第1の実施の形態に係るジョブ実行時における画像形成装置100の動作の一例を示すフローチャートである。制御部50のCPU52は、ROM54から読み出したソフトウェアを実行することにより、図4のフローチャートに示す処理を実現する。
【0046】
図4に示すように、ステップS100において、制御部50は、ジョブを実行するタイミングであるか否かを判断する。ジョブの実行タイミングであるか否は、例えば、ネットワークを介して接続されるコンピュータ等からジョブが送信されたか否かに基づいて判断できる。制御部50は、ジョブを実行するタイミングでないと判断した場合、ジョブが送信されるまで待機する。
【0047】
一方、ステップS100において、制御部50は、ジョブを実行するタイミングであると判断した場合、ステップS110に進む。ジョブの実行に伴い、中間転写ベルト8の走行が開始される。また、ベルト端部検知センサ240は、走行する中間転写ベルト8の端部位置を検知する。制御部50は、ベルト端部検知センサ240により検知された中間転写ベルト8の端部位置情報を取得し、取得した端部位置情報に基づいてステアリング機構200の傾きを演算する。
【0048】
ステップS110において、制御部50は、ステアリング機構200の傾きが予め設定された閾値以上であるか否かを判断する。ここで、閾値とは、中間転写ベルト8の移動速度が安定した状態(中間転写ベルト8がステアリングローラー202等に均一に当たっている状態)で回転走行している際の移動速度以下である場合における、ステアリングローラー202の傾きに基づいて算出される値である。なお、閾値は、中間転写ベルト8の走行が不安定となっている場合に設定されるステアリング機構200の傾きを基準として決定することもできる。制御部50は、ステアリング機構200の傾きが閾値未満であると判断した場合、ステアリング機構200の傾きを継続して監視する。一方、ステップS110において、制御部50は、ステアリング機構200の傾きが閾値以上であると判断した場合、ステップS120に進む。
【0049】
ステップS120において、制御部50は、ベルト端部検知センサ240から取得した中間転写ベルト8の端部位置情報に基づいてステアリング機構200の傾きを再度演算し、演算により得られたステアリング機構200の傾きが予め設定された閾値未満になったか否かを判断する。これは、一般にステアリング動作が終了すると、中間転写ベルト8の片寄り等が収まり、ステアリングローラー202を元の位置に戻すからである。ステップS120で用いる閾値は、ステップS110で用いた閾値と同様のものを用いても良いし、別に設定した閾値を用いても良い。制御部50は、ステアリング機構200の傾きが閾値未満になっていないと判断した場合には、ステアリング機構200のステアリング機構200の傾きを継続して監視する。
【0050】
一方、ステップS120において、制御部50は、ステアリング機構200の傾きが閾値未満になったと判断した場合、ステップS130に進む。ステップS130において、制御部50は、画像形成部10等を制御してジョブに基づくプリント動作を一旦停止させる。このとき、中間転写ベルト8は、継続して走行させることが好ましいが、停止させることもできる。ステップS130が終了したら、ステップS140に進む。
【0051】
ステップS140において、制御部50は、ジョブを一旦停止させたら、画像形成部10等を制御して中間転写ベルト8に貯留用のトナーを供給(転写)する。貯留用のトナーは、例えばY,M,C,Kの各パターンを順番に中間転写ベルト8上に形成したものである。各パターンは、中間転写ベルト8の幅方向の長さを有する矩形状のパターンにより構成できる。これにより、中間転写ベルト8で生じた波打ちにより落下したトナーをクリーニングブレード222に再度補給することができる。ステップS140が終了したら、ステップS150に進む。
【0052】
ステップS150において、制御部50は、貯留用のトナーの中間転写ベルト8への供給が終了したら、画像形成部10等を制御して停止していたジョブに基づくプリントを再開させる。ステップS150が終了したら、ステップS160に進む。
【0053】
ステップS160において、制御部50は、ジョブが終了したか否かを判断する。制御部50は、ジョブが終了していないと判断した場合にはステップS110に戻り、上述したステップS110からS150までの処理を繰り返して実行する。一方、制御部50は、ジョブが終了したと判断した場合、一連の画像形成処理を終了する。
【0054】
なお、制御部50は、中間転写ベルト8に関連する部品、例えばステアリングローラー202や駆動ローラー12、一次転写ローラー7等が交換された場合、閾値をリセットし、新たな閾値が決定されるまでトナー供給制御を行わないようにする。これは、中間転写ベルト8に関連する部品が変わると、中間転写ベルト8との間での当接状態も変化し、中間転写ベルト8の片寄りや蛇行、移動速度も変動し、その結果、設定した閾値も変動するからである。
【0055】
[ステアリング機構200の異常検知シーケンス]
図5は、ステアリング機構200の異常の有無を検知する場合における画像形成装置100の動作の一例を示すフローチャートである。制御部50のCPU52は、ROM54から読み出したソフトウェアを実行することにより、図5のフローチャートに示す処理を実現する。なお、以下で説明する処理は、図4で説明した処理とは別のシーケンスにより常時実行することもできる。
【0056】
図5に示すように、ステップS200において、制御部50は、ジョブを実行するタイミングであるか否かを判断する。制御部50は、ジョブを実行するタイミングでないと判断した場合、ジョブが送信されるまで待機する。一方、制御部50は、ジョブを実行するタイミングであると判断した場合、ステップS210に進む。
【0057】
ステップS210において、制御部50は、ベルト端部検知センサ240により検知される中間転写ベルト8の端部位置情報を取得し、取得した端部位置情報に基づいて演算したステアリング機構200の傾きが予め設定された閾値以上であるか否かを判断する。例えば、ステアリング機構200の傾きを大きく切った場合において一定時間以上、ステアリング機構200がその状態から戻らない場合(閾値未満にならない場合)や、ステアリング機構200が通常では想定できない傾きとなった場合等が含まれる。ステップS210が終了したら、ステップS220に進む。
【0058】
ステップS220において、制御部50は、ステアリング機構200が破損や故障している可能性があるため、中間転写ベルト8の走行を停止させる。ステップS220が終了したら、ステップS230に進む。
【0059】
また、ステップS230において、制御部50は、ステアリング機構200の修理や交換をユーザーに促すため、操作表示部70の操作画面上にサービスコールの表示を行う。ステップS230が終了したら、ステップS240に進む。
【0060】
ステップS240において、制御部50は、ジョブが終了したか否かを判断する。制御部50は、ジョブが終了していないと判断した場合にはステップS210に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。一方、制御部50は、ジョブが終了したと判断した場合、一連のステアリング機構200の異常検知シーケンスを終了する。
【0061】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、ステアリングローラー202の傾きからクリーニングブレード222のエッジにおけるトナーの枯渇状態を判断するため、適切なタイミングで貯留用トナーをクリーニングブレード222に供給することができる。これにより、クリーニングブレード222のトナーのすり抜けや、クリーニングブレード222のエッジへのダメージを未然に防止することができる。
【0062】
また、第1の実施の形態によれば、ステアリングローラー202の状態を常時監視するので、ステアリングローラー202の異常を迅速かつ正確に検知することができる。
【0063】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、ステアリング機構200の傾きに応じてクリーニングブレード222の圧着状態を調整する点において上記第1の実施の形態と相違している。なお、その他の画像形成装置100の構成や動作は、上記第2の実施の形態と同様であるため、共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0064】
[画像形成装置100の動作例]
図6は、第2の実施の形態に係るジョブ実行時における画像形成装置100の動作の一例を示すフローチャートである。制御部50のCPU52は、ROM54から読み出したソフトウェアを実行することにより、図6のフローチャートに示す処理を実現する。
【0065】
図6に示すように、ステップS300において、制御部50は、ジョブを実行するタイミングであるか否かを判断する。制御部50は、ジョブを実行するタイミングでないと判断した場合、ジョブが送信されるまで待機する。
【0066】
一方、ステップS300において、制御部50は、ジョブを実行するタイミングであると判断した場合、ステップS310に進む。ジョブの実行に伴い、中間転写ベルト8の走行が開始される。また、ベルト端部検知センサ240は、走行する中間転写ベルト8の端部位置情報を検知する。制御部50は、ベルト端部検知センサ240により検知された中間転写ベルト8の端部位置情報を取得し、取得した端部位置情報に基づいてステアリング機構200の傾きを演算する。
【0067】
ステップS310において、制御部50は、演算したステアリング機構200の傾きが予め設定された閾値以上であるか否かを判断する。制御部50は、ステアリング機構200の傾きが閾値未満であると判断した場合、演算により得られるステアリング機構200の傾きを継続して監視する。一方、制御部50は、ステアリング機構200の傾きが閾値以上であると判断した場合、ステップS320に進む。
【0068】
ステップS320において、制御部50は、画像形成部10等の動作を制御してジョブに基づくプリント動作を一旦停止させる。これは、ステアリング機構200の傾きが閾値以上である場合には、中間転写ベルト8に波打ちが発生し、貯留トナーが落ちて枯渇してしまうからである。なお、このとき、中間転写ベルト8は、継続して走行させる。ステップS320が終了したら、ステップS330に進む。
【0069】
ステップS330において、制御部50は、クリーニング駆動部224の動作を制御してクリーニングブレード222の中間転写ベルト8に対する圧着を解除する。これにより、貯留トナーが枯渇した状態でのクリーニングブレード222の中間転写ベルト8に対する圧接状態を回避できる。ステップS330が終了したら、ステップS340に進む。
【0070】
ステップS340において、制御部50は、ステアリング機構200のステアリング動作を実行する。具体的には、制御部50は、演算により得られたステアリング機構200の傾きに基づいてステアリングローラー202を傾動させることにより、中間転写ベルト8の片寄りや蛇行等を補正する。ステップS340が終了したら、ステップS350に進む。
【0071】
ステップS350において、制御部50は、ベルト端部検知センサ240から取得した中間転写ベルト8の端部位置情報に基づいてステアリング機構200の傾きを演算し、演算により得られたステアリング機構200の傾きが予め設定された閾値未満になったか否かを判断する。ステップS350で用いる閾値は、ステップS310で用いた閾値と同様のものを用いても良いし、別に設定した閾値を用いても良い。制御部50は、ステアリング機構200の傾きが閾値未満になっていないと判断した場合には、ステアリング機構200の傾きを継続して監視する。
【0072】
ステップS360において、制御部50は、クリーニング駆動部224の動作を制御してクリーニングブレード222を中間転写ベルト8に再度圧着させる。これは、ステアリング機構200の傾きが閾値未満となり、中間転写ベルト8で波打ちが発生する可能性が低くなり、クリーニングブレード222へのダメージを回避できるからである。ステップS360が終了したら、ステップS370に進む。
【0073】
ステップS370において、制御部50は、ジョブを一旦停止させたら、画像形成部10等を制御して中間転写ベルト8に貯留用のトナーを供給(転写)する。これにより、中間転写ベルト8で生じた波打ちにより損失したトナーをクリーニングブレード222に再度補給することができる。なお、貯留用のトナーパターンの中間転写ベルト8への書き込みタイミングは、少なくともクリーニングブレード222の中間転写ベルト8への圧着タイミングより前とし、クリーニングブレード222の圧着時に貯留用のトナーがクリーニングブレード222のエッジに供給されることが好ましい。ステップS370が終了したら、ステップS380に進む。
【0074】
ステップS380において、制御部50は、貯留用のトナーの中間転写ベルト8への供給が終了したら、画像形成部10等を制御して停止していたジョブに基づくプリントを再開させる。ステップS380が終了したら、ステップS390に進む。
【0075】
ステップS390において、制御部50は、ジョブが終了したか否かを判断する。制御部50は、ジョブが終了していないと判断した場合にはステップS310に戻り、上述したステップS310からS380までの処理を繰り返して実行する。一方、制御部50は、ジョブが終了したと判断した場合、一連の画像形成処理を終了する。
【0076】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態の作用効果に加え、以下の効果を奏することができる。具体的には、ステアリング機構200の傾きが閾値以上となった場合に、中間転写ベルト8の波打ちによりトナー枯渇が発生することを未然に検知してクリーニングブレード222の圧着を解除するので、トナー枯渇によるクリーニングブレード222の損失を確実に防止することができる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を構成することができる。
【0078】
例えば、上述した実施の形態では、無端状のベルトの例として中間転写ベルト8について説明したが、これに限定されることはない。例えば、二次転写部34を、二次転写ローラー、二次転写ベルト、ステアリングローラーおよびクリーニングブレードを用いたベルト方式で構成した場合にも、本発明のトナー供給制御を適用することができる。
【0079】
また、上述した第1の実施の形態の図4のステップS110や第3の実施の形態の図6のステップS310等で説明した中間転写ベルト8の端部位置を検知する手段としては、ベルト端部検知センサ240に限定されず、他の別のセンサを用いることもできる。
【符号の説明】
【0080】
8 ベルト(中間転写ベルト)
50 制御部
100 画像形成装置
202 ステアリングローラー(ステアリング部材)
222 クリーニングブレード(クリーニング部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8