(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記個片化する工程において、少なくとも2種類のダイシングブレードを用い、個片化する際に用いる前記ダイシングブレードの幅は、他のダイシングブレードより幅が狭い、請求項11または12に記載のパッケージ用基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ、および、外部接続用部材を用いた半導体装置が、画像処理、通信、車載などのさまざま分野で用いられている。また、半導体装置の高性能化、小型軽量化が進む中で、半導体装置に用いられる半導体配線基板においても小型化、多ピン化、外部端子のファインピッチ化が求められており、高密度配線基板の要求が高まっている。
【0003】
従来のコア材料には、ガラスエポキシ樹脂に代表される有機コア材料、シリコン材料が用いられてきたが、近年ガラスが注目を浴びている。これはガラスがシリコンと同様に平坦かつ平滑な特性が有機材料よりも微細配線形成に適し、吸湿や熱時の変形が少なく、また、シリコンより電気的に優位であることが挙げられる。
【0004】
配線基板は、生産性において支持体となるコア基板に配線層と層間絶縁樹脂層40を複数回積層し大判の配線基板を形成した後、配線基板を所要寸法にダイシングして配線基板に個片化する。
【0005】
しかしながら、ガラスは寸法安定性、電気的特性には優れるものの切断面が脆弱な材料であり割れが生じやすい。
配線基板の構造上、該ガラス基板と線膨張係数の異なる樹脂層と配線層を複数回積層するため、温度変化があると線膨張係数の差により樹脂層、配線層、コア基板で線膨張係数が変わり、各層内部に内部応力が生じることとなる。内部応力は大判の配線基板では、物体の平衡状態を保つため正負の応力がつりあった状態にあるが、個片化する際に亀裂(クラック)が生じた部分があると応力集中部となりやすい。よって割れの起きやすいガラスなどの脆性材料の場合、個片化の際の衝撃によりコア基板断面に微小なクラックが生じることが知られている。このコア基板断面のクラックは、個片化後、該クラック部分をきっかけにコア基板内部に蓄積された内部応力が開放され、コア基板が裂ける方向に割れが進展する可能性がある。
【0006】
このような割れを発生させない個片化法としては、例えばコア基板のパッケージ用基板外周部にあたる部分に金属層を形成し、個片化後に露出した金属層をエッチング処理により取り除き、コア基板と絶縁層で確定される溝部を作製する。この溝部はコア基板の外周付近に応力が加わることを抑制することができる。これによりコア基板に破壊が生じることを、簡易な構成によって効果的に抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、この方法はコア基板上の金属層をダイシングブレードで切断するため、ダイシングブレードの目詰まりによる切削力の低下から、コア基板断面に多くのクラックを発生させてしまう懸念がある。また、ダイシング工程により個片化した直後にコア基板の破壊が発生する懸念がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかる配線基板とその製造方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に示す実施形態は、本発明の単なる一例であって、当業者であれば、適宜設計変更可能である。
本明細書において、「パッケージ用基板」とは、個片化された積層体をいう。また、「配線基板」とは、ダイシングにより個片化される前のパッケージ基板が連結された状態のものをいう。
【0017】
(配線基板の構成)
図1は、配線基板の一実施形態の概略構成の切断部端面を示す図である。
本実施形態における配線基板100は、コア基板10とコア基板10の厚さ方向の両面に積層された配線層30と層間絶縁樹脂層40、そして、応力緩和樹脂20を含む。
【0018】
(コア基板の加工)
コア基板10は、配線基板100および該配線基板を個片化した後のパッケージ用基板200、あるいは202の電気特性を向上させる材料であればよい。例えば、コア基板10として、ガラス基板、シリコン基板、セラミック基板、プラスチック板、プラスチックテープ等を用いることができる。好ましくはガラス基板である。例えば、ソーダライムガラスやアルミノ珪酸塩ガラスが挙げられる。本発明のコア基板10に用いるガラス基板は、表面を当分野で一般的に行われている方法により処理されたものであってもよい。例えば、表面に粗化処理を行ったものでも、フッ酸で処理したものでもよく、また、ガラス基板表面にシリコン処理を施したものでもよい。本発明の一実施形態において、コア基板10に用いるガラス基板は表面に下地層を形成してもよい。
コア基板10の厚さh
1は、特に限定されないが、好ましくは50μm〜700μmである。
また、コア基板に貫通孔を開口し、その後、めっきや充填法などによって、電気的な接続を行ってもよい。
【0019】
(配線層の形成)
配線層30は、コア基板10の厚さ方向の表面上または層間絶縁樹脂層40の表面上に形成される。本発明の一実施形態において、少なくとも一部の配線層30はコア基板10に接するように形成される。また、本発明の他の実施形態において、配線層30はコア基板と接しなくてもよい。配線層30は一層または、複数層であってもよい。また、配線層がコア基板の表裏で電気的に接続される部分では、コア基板を貫通する形式がとられる。
配線層30は、当分野で通常用いられる導電性材料を用いて形成することができる。具体的には、配線層30は、銅、銀、すず、金、タングステン、導電性樹脂などを用いて形成することができる。好ましくは銅が用いられる。
【0020】
また、配線層30は、当分野で一般的に行われている方法により形成することができる。配線層30の形成方法は、これらに限定されないが、無電解めっき、電気めっきを用いて行うサブトラクティブ法、セミアディティブ法やインクジェット法、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷を用いることができる。好ましくはセミアディティブ法である。
セミアディティブ法では以下の方法を用いる。まずコア基板10に銅層などのシード層を形成する。次に、所望のパターンを有するレジストをシード層上に形成する。続いて、シード層の露出した開口部に電解めっき等を用いて、パターン状に形成された配線層となるめっき膜を形成する。その後、レジストを除去し、薄いシード層をエッチングして、配線層30を得る。形成される配線層30の厚さは、形成方法にもよるが、1μmから100μmである。
本発明の一実施形態では、コスト、電気特性、および、製造容易性の観点から、セミアディティブ法を用いて微細配線を形成し、金属種には銅を用いることが好ましい。
【0021】
(応力緩和樹脂パターンの形成)
本発明において、コア基板の切断面の表裏に応力緩和樹脂20を用いてパターンを形成する。形成方法については、ここに限定しないが、スクリーン印刷法、転写法、描画法などが考えられる。形成される配線幅は限定されないが、例えば250μmから400μmである。後述するダイシングブレードBの幅として150μm程度が挙げられるため、応力緩和樹脂の幅は200μm程度以上あることが好ましい。本発明の一実施形態では、コスト、および、製造容易性の観点から、スクリーン印刷法を用いて、ダイシングにより個片化するラインよりも広い幅で形成される。また、この厚さh
5に関しては、配線層30のうちコア基板に近い側から数えて1層目の高さ以上であることが好ましい。応力緩和樹脂20のパターンは配線基板100の個片化切断ラインに沿うように設けることが好ましい。
図9では、配線層30を囲むように応力緩和樹脂20を形成した状態を模式的に示している。後述するが、配線基板をダイシングした後に残る応力緩和樹脂の幅は25μm以上が好ましい。
図7や
図8に示されるように、応力緩和樹脂をダイシングするため、応力緩和樹脂はコア基板の表面端部まで形成された状態である。ダイシングの条件によっては、応力緩和樹脂が一部剥がれてコア基板の端部まで形成されていない事もあり得るが、それは本発明の範囲に含まれると言える。
【0022】
応力緩和樹脂20の線膨張係数は、1000ppm以下が好ましい。層間絶縁樹脂層40と同程度の線膨張係数を持つことがより好ましい。また、応力緩和樹脂は、層間絶縁樹脂層40より低弾性率の材料であることが好ましい。これにより、配線基板100をダイシングする際に、また半導体チップの実装時において、配線基板100あるいはパッケージ用基板200に大きな温度変化があっても、コア基板外周からの断面の割れを抑制することができる。材料としては、ウレタン樹脂などを主に含む材料が挙げられる。
【0023】
(層間絶縁樹脂層40の形成)
本発明の一実施形態において、層間絶縁樹脂層40は配線層30上に形成される。
本発明の他の実施形態において、層間絶縁樹脂層40はコア基板10上にも形成される。
層間絶縁樹脂層40は一層、また複数であってもよい。
【0024】
層間絶縁樹脂層40は、当分野で通常用いられる絶縁性材料を用いて形成することができる。具体的には、層間絶縁樹脂層40は、エポキシ樹脂系材料、エポキシアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂などを用いて形成することができる。これらの絶縁性材料は、充填剤を含んでもよい。本発明の層間絶縁樹脂層40を形成する絶縁性材料には線膨張係数が7ppm〜130ppmのエポキシ配合樹脂が一般的に入手し易く好ましい。
【0025】
層間絶縁樹脂層40の形成方法としては、たとえば印刷法、真空プレス法、真空ラミネート法、ロールラミネート法、スピンコート法、ダイコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、フォトリソグラフィー法、ドクターブレード法、スクリーン印刷などの公知の方法が挙げられる。
本発明の一実施形態では、製造容易性の観点から、スピンコート法、真空ラミネート法、真空プレス法が用いられる。層間絶縁樹脂層40の厚さの合計は限定されない。形成方法によるが、例えば10μm〜90μmである。上記のように形成された層間絶縁樹脂層40は、加熱または光照射により硬化させてもよい。
【0026】
厚さh
1のコア基板上に層間絶縁樹脂層40と配線層30を形成し、個片化(ダイシング)を行った場合、コア基板10との界面付近にクラックが発生し易いことが知られている。これは、ダイシングの際に発生する衝撃によりコア基板端面に微小なクラックが発生し、これに配線層30と層間絶縁樹脂層40の複合層である配線樹脂複合層の熱応力がコア基板10に対する引っ張り応力として働き、コア基板10のクラックを拡大させるためである。
【0027】
そこで、実験では層間絶縁樹脂層40を切断面から任意の位置まで除去を行った上で、ガラスへの切削を実施する手順で個片化を行う。
【0028】
本発明の一実施形態である配線基板は、これらに限定されるものではないが、多面付けされた配線基板100の該配線基板の切削部を拡大した、
図4〜
図8に示す工程にしたがって形成することができる。
【0029】
図1は、コア基板10の厚さ方向の表面に、上述した方法を用いて、配線層30、応力緩和樹脂20、層間絶縁樹脂層40をそれぞれ形成した状態を示す。
ついで、配線基板100において所定の切削位置に、幅w
2を有するダイシングブレードA50を用いて、複数の配線用パッケージ用基板200にを個片化する。
【0030】
図4は、配線基板100の切断部端面を拡大した図である。コア基板10の両面にそれぞれ積層された配線層30と層間絶縁樹脂層40の厚みの合計は、それぞれh
2、h
3である。まず、ダイシングブレードA50でコア基板10の一方の面に積層された厚みh
5の応力緩和樹脂20と厚みの合計がh
4である層間絶縁樹脂40を切削する。厚さh
6は、コア基板10の表面と、そこから最も離れた層間絶縁樹脂層40との距離である。
図4の場合、h
4とh
5の和である。ダイシングブレードAは、配線層30同士の間、
図4ではw
1の幅がある部分を切削し、配線基板100を各パッケージ用基板200に個片化する。
ダイシングブレードAは一般的なダイシング方法に用いられる物であればよく、例えば樹脂などにダイヤモンド砥粒を埋没させたダイヤモンドブレードである。ダイシングブレードAの幅w
2は、制限はないが、好ましくは200μmである。
【0031】
切削部を拡大した
図5では、コア基板10に配線層30を積層した配線基板100の片側面から基板の厚さ方向に、深さh
8の溝を形成する。この溝が分離溝60となる。
【0032】
図5に示されるように、分離溝60の形成後、コア基板10の表層には、幅w
3の応力緩和樹脂20が厚さh
7で残存する。このため、コア基板10にダイシングブレードA50が接触することを防ぐことができる。さらに分離溝60の形成によって応力が不均衡となる配線樹脂複合層の引張応力の発現により、コア層10界面のクラックが進展することを防ぐことができる。
【0033】
図6では、配線基板100の
図5に示される分離溝60と反対側からも同様に分離溝60を形成された状態を示す。
その後、
図7に示すように、分離溝60の溝において、その幅内の中央部分の位置で、ダイシングブレードB70によって配線基板100をダイシングして個片化する。これにより、応力緩和樹脂20は段差を持った形状になる(以下、段差部22と呼ぶ)。ダイシングブレードB70の先端の幅w
4は、分離溝60の上端面幅寸法w
2よりも小さい幅寸法であり、w
1>w
2>w
4であればこの値は問わない。例えば150μmである。ダイシングブレードBと分離溝の隙間w
5は50μm以下であることが好ましい。
このときダイシングブレードB70により、コア基板10の外側面を被覆している層間絶縁樹脂層40が削りとられてしまわないようにする必要がある。
【0034】
また、他の実施形態として、
図8に示すように
図5の段階で、ダイシングブレードAを用いて、分離溝を開口する工程で、そのままコア基板への切削を行ってもよい。この場合、0μm≦w
3<100μmが好ましく、より好ましくは25μm<w
3≦50μmである。また、この場合は応力緩和樹脂20に段差は形成されず、配線層30あるいは層間絶縁樹脂30を被覆した状態となる。以下、この応力緩和樹脂20を被覆部と呼ぶことがある。
【0035】
図2に示されるパッケージ用基板200、
図3に示される、個片化方法を変えたパッケージ用基板202において、これらの切断面の一部が応力緩和樹脂20からなる。
図5では段差部22、
図8では被覆部24として示される。段差部22と被覆部24は、配線層30との界面からそれぞれw
3+w
5、w
3の幅で形成される。また段差部22において厚さが薄い部分、被覆部24はそれぞれ厚さh
7である。厚さh
2、h
3の厚さを持つ配線樹脂混合層とコア基板10の熱膨張の違いからくる熱応力の差を低減する構造としていることで、コア基板10を切削する際、また個片化後にかかる熱時にその切削界面に生じる配線層30と層間絶縁樹脂層40からなる配線樹脂混合層h
2、h
3の積層体の引張応力を緩和することができる。
【0036】
本発明の一実施形態は、配線基板を個片化する工程において、応力緩和樹脂を切断するように配線基板を個片化するパッケージ用基板の製造方法である。
【0037】
さらに、この個片化する工程において、少なくとも2種類のダイシングブレードを用い、個片化する際に用いるダイシングブレードの幅は、他のダイシングブレードより幅が狭い、パッケージ用基板の製造方法であることが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を用いた実施例について詳細に説明する。
【0039】
(実施例1)
コア基板10(アルミノ珪酸塩ガラス)の板厚寸法を300μmとした。
コア基板10の厚さ方向の表面に銅めっきにより4.5μmの厚さの配線層30をセミアディティブ法により形成した。300μmの幅の応力緩和樹脂20を印刷法で幅w
1を300μm、4.5μm厚で配線層30を囲むように形成した。応力緩和樹脂20として、ウレタン樹脂(日立化成株式会社製、電子・電気部品注型用ウレタン樹脂KU−7002)を用いた。応力緩和樹脂20の線膨張係数は150ppm、25℃におけるヤング率は0.07MPa、25℃における引っ張り強さは0.08MPaだった。配線層30を形成後、表裏面に線膨張係数が34ppmのエポキシ配合樹脂である絶縁性材料を真空ラミネートすることにより積層し、層間絶縁樹脂層40を形成した。配線層の形成と層間絶縁樹脂層の形成を繰り返すことで、配線基板100を得た。
【0040】
次に、
図5に示すように、あとでパッケージ用基板200に個片化すべき所定の位置で、ダイシングブレードA50により、この配線基板100の片側面から板厚方向において、200μm幅、深さ25μmの分離溝60を設けた。また、
図6に示すように、この配線基板100のもう一方の面からも、250μm幅、深さ25μmの分離溝60を設けた。
分離溝60の作製後、
図7に示すように分離溝60の溝幅内の中央部分の位置で、ダイシングブレードB70によって配線基板100をダイシングしてパッケージ用基板200を得た。ダイシングブレードB70の先端の幅は、150μmとした。
実施例1によるパッケージ用基板10個に対し、125℃から−55℃の温度変化を与える試験MIL−STD−883Hを1000サイクル行った。その結果、コア基板の割れなど信頼性の低下は起きなかった。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同様に配線基板100を作製し、その後、250μmの幅のダイシングブレードA50で配線基板100を
図3に示すように、配線基板100の厚さ方向に切削し個片化を行った。
実施例1と同様に10個の配線基板で125℃から−55℃の温度変化を与える試験を行った。その結果、コア基板の割れなど信頼性の低下は起きなかった。
【0042】
(比較例1)
比較例として用いる配線基板は、実施例1、実施例2と違い、コア基板10上に応力緩和樹脂層を形成しなかった。比較例1による配線基板は、3日常温で放置した所、10個の内7個コア基板の割れが起きた。
【0043】
以上のように、パッケージ用基板200の側面において、応力緩和樹脂20の一部を除去した形状である本実施例であるパッケージ用基板200は、ダイシング段階での配線樹脂混合層h
2、h
5の応力不均衡を応力緩和層20で分散し、コア基板10の割れにつながる微小なクラックの発生を低減し、さらに個片化後に応力緩和樹脂20が残存することによって厚みがそれぞれh
2、h
5である配線樹脂混合層とコア基板10の線膨張係数の差より生じる応力によるクラック進展を抑制できたと考えられる。