(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の固体レーザ装置1は、
図1〜
図3に示すように、筐体部11と、キャビティ部12(励起モジュール)と、上蓋13(蓋部材)などを有する。
【0010】
筐体部11は、筐体21と、ミラーホルダ22などを備えている。
【0011】
本実施形態では、筐体21は、六面体のうちの1面が開口した五面体の箱型(底面と、底面の上方の空間を囲むように設けられた4つの側面とを有する箱型)に形成されている。
図1〜
図3に示す例においては、筐体21は、直方体形状の箱型に形成されている。そして、このような筐体21は、その五面体を構成する各面を形成する、前壁31と、後壁32と、第1側壁33と、第2側壁34と、底部35(筐体位置決め部)を備えている。本実施形態の筐体21は、ステンレスにより形成されている。これにより、筐体21は、例えば、熱により膨張し難い。
【0012】
前壁31は、
図2に示すように、筐体21の長手方向、すなわち、出力ミラー41と全反射ミラー42からなる一対のミラー(以下、単に「一対のミラー」ともいう。)の光軸L方向について、レーザ光が出力される側(出力ミラー41が配置される側)の位置に形成されている。本実施形態では、この前壁31には、Qスイッチ43が取り付けられている。このQスイッチ43は、光軸L上に配置されている。
【0013】
後壁32は、
図2に示すように、光軸L方向について、レーザ光が出力される側とは反対側(全反射ミラー42が配置される側)の位置に形成されている。本実施形態では、偏光素子44が、光軸L上に配置されながら、後壁32から筐体21の内側に向かって斜めに配置されている。
【0014】
このような前壁31と後壁32は、光軸L方向について所定の間隔を持って形成されている。
【0015】
第1側壁33と第2側壁34は、
図1に示すように、筐体21の短手方向、すなわち、光軸Lに直交する方向について、両側の位置に形成されている。本実施形態では、第1側壁33と第2側壁34は、前壁31や後壁32よりも厚く形成されている。
【0016】
以上のような前壁31と後壁32と第1側壁33と第2側壁34は、底部35から筐体21の開口側に向かって形成されている。また、底部35において、溝部36が形成されている。この溝部36は、キャビティ部12における底面95側の端部97の形状(リフレクタホルダ74の形状)に合わせて形成されている。そして、キャビティ部12の端部97が、溝部36内に嵌め込まれている。
【0017】
また、本実施形態では、ミラーホルダ22として、
図2に示すように、第1ミラーホルダ22Aと第2ミラーホルダ22Bを備えている。
【0018】
第1ミラーホルダ22Aは、光軸L方向についてレーザ光が出力される側の位置に配置されている。第1ミラーホルダ22Aは、ネジ51により筐体21の前壁31に角度調整可能に取り付けられ、筐体21と一体になっている。また、第1ミラーホルダ22Aは、ミラー取り付け部61を備えている。そして、このミラー取り付け部61において、出力ミラー41が取り付けられている。このような第1ミラーホルダ22Aの位置や傾きを調整することにより、出力ミラー41の位置や角度(あおり角度)を調整することができる。
【0019】
第2ミラーホルダ22Bは、光軸L方向についてレーザ光が出力される側とは反対側の位置に配置されている。第2ミラーホルダ22Bは、ネジ51により筐体21の後壁32に角度調整可能に取り付けられ、筐体21と一体になっている。また、第2ミラーホルダ22Bは、ミラー取り付け部62を備えている。そして、このミラー取り付け部62において、全反射ミラー42が取り付けられている。このような第2ミラーホルダ22Bの位置や傾きを調整することにより、全反射ミラー42の位置や角度(あおり角度)を調整することができる。
【0020】
このように、本実施形態では、第1ミラーホルダ22Aと第2ミラーホルダ22Bは、光軸L方向について所定の間隔を持って形成されている前壁31と後壁32に取り付けられており、筐体21と一体になっている。そのため、第1ミラーホルダ22Aと第2ミラーホルダ22Bは、光軸L方向について所定の間隔を持って配置されている。これにより、出力ミラー41と全反射ミラー42は、光軸L方向について所定の間隔を持って配置されながら、第1ミラーホルダ22Aと第2ミラーホルダ22Bを介して、筐体21に取り付けられている。
【0021】
キャビティ部12は、YAGロッド71(固体レーザ媒質)と、フラッシュランプ72(励起光源)と、リフレクタ73(反射部材)と、リフレクタホルダ74(保持部材)と、ロッドランプホルダ75などを備えている。
【0022】
YAGロッド71は、
図2に示すように、ロッドランプホルダ75により保持されており、リフレクタ73の内側にある空間部に配置されている。YAGロッド71は、円柱状に形成されている。YAGロッド71は、励起されることにより、光を放出する。
【0023】
フラッシュランプ72は、
図2に示すように、ロッドランプホルダ75により保持されており、リフレクタ73の内側にある空間部に配置されている。フラッシュランプ72は、円柱状に形成されている。フラッシュランプ72は、励起光を発する光源であり、この励起光をYAGロッド71に照射して、YAGロッド71を励起する。なお、フラッシュランプ72のケーブルは、上蓋13の穴を通って、外部の不図示の電源部に接続される。
【0024】
なお、
図1〜
図3に示す例においては、フラッシュランプ72は、YAGロッド71に対してキャビティ部12の上面96側(上蓋13側)の位置に配置されている。しかしながら、YAGロッド71とフラッシュランプ72の配置関係は、
図1〜
図3に示すような配置関係に限定されない。例えば、YAGロッド71とフラッシュランプ72は、キャビティ部12の第1側面93と第2側面94の配列方向(
図1の左右方向)に並んで配置されていてもよい。
【0025】
リフレクタ73は、
図1と
図2に示すように、YAGロッド71やフラッシュランプ72の径方向について、YAGロッド71やフラッシュランプ72の外側の位置に配置されている。本実施形態では、リフレクタ73は、長円形状(相対向する一対の直線部と、当該直線部の両端を結ぶ一対の円弧部とを有する形状)に形成されている。リフレクタ73は、その外周面に銀コート81(銀の被膜)が蒸着されており、フラッシュランプ72からの励起光をYAGロッド71に向けて反射させる。
【0026】
なお、リフレクタ73の形状は、前記のような長円形状に限定されない。リフレクタ73の形状は、例えば、円形状(例えば、真円形状)であってもよい。また、本実施形態では、リフレクタ73は、2つに分割されている。
【0027】
リフレクタホルダ74は、
図1と
図2に示すように、YAGロッド71とフラッシュランプ72の径方向について、リフレクタ73よりも外側の位置に配置されている。本実施形態では、リフレクタホルダ74の内周面は、リフレクタ73と同じ形状(長円形状)に形成されている。また、リフレクタホルダ74の外形は、
図3に示すように、直方体形状に形成されている。このようなリフレクタホルダ74は、リフレクタ73を保持している。なお、リフレクタホルダ74は、フラッシュランプ72での発熱を放熱させるため、例えば、アルミニウムにより形成されている。
【0028】
本実施形態では、リフレクタ73とリフレクタホルダ74は、接着剤により接着されている。また、リフレクタ73とリフレクタホルダ74の接着部分に、銀コート81が形成されている。詳しくは、リフレクタホルダ74は、リフレクタ73の外周面に蒸着される銀コート81の上に接着剤により接着されている。なお、本実施形態では、リフレクタホルダ74は、2つに分割されている。
【0029】
また、本実施形態では、
図2に示すように、ロッドランプホルダ75として、第1ロッドランプホルダ75Aと第2ロッドランプホルダ75Bを備えている。第1ロッドランプホルダ75Aは、光軸L方向についてレーザ光が出力される側の位置にて、リフレクタホルダ74に取り付けられている。第2ロッドランプホルダ75Bは、光軸L方向についてレーザ光が出力される側とは反対側の位置にて、リフレクタホルダ74に取り付けられている。第1ロッドランプホルダ75Aと第2ロッドランプホルダ75Bは、各々、YAGロッド71を保持するロッド保持部82と、フラッシュランプ72を保持するランプ保持部83を備えている。
【0030】
本実施形態では、キャビティ部12は、六面体に形成されている。
図1〜
図3に示す例においては、キャビティ部12は、ほぼ直方体形状に形成されている。そして、キャビティ部12は、その六面体を形成する面として、前面91と、後面92と、第1側面93と、第2側面94と、底面95(モジュール位置決め部)と、上面96を備えている。
【0031】
前面91は、
図2に示すように、キャビティ部12の長手方向、すなわち、光軸L方向について、レーザ光が出力される側の位置に形成されている。なお、前面91は、第1ロッドランプホルダ75Aの面とリフレクタホルダ74の面により形成されている。
【0032】
後面92は、
図2に示すように、光軸L方向について、レーザ光が出力される側とは反対側の位置に形成されている。なお、後面92は、第2ロッドランプホルダ75Bの面とリフレクタホルダ74の面により形成されている。
【0033】
第1側面93と第2側面94は、
図1に示すように、キャビティ部12の短手方向、すなわち、光軸Lに直交する方向について、両側の位置に形成されている。なお、第1側面93と第2側面94は、リフレクタホルダ74の面により形成されている。
【0034】
上蓋13は、
図1と
図2に示すように、筐体21の開口側(キャビティ部12に対して底面95側とは反対側)の位置にて、前壁31と後壁32と第1側壁33と第2側壁34に接するようにして配置されている。上蓋13は、ヒートシンク101を備えている。上蓋13は、フラッシュランプ72での発熱を放熱させるため、例えば、アルミニウムにより形成されている。また、本実施形態では、上蓋13は、その四隅に相当する4カ所の位置にて、筐体21にネジ(不図示)で止められている。
【0035】
以上のような構成の固体レーザ装置1においては、フラッシュランプ72からの励起光が照射されることによりYAGロッド71が励起されると、その誘導放出光が出力ミラー41と全反射ミラー42との間で共振増幅し、かつ、偏光素子44で直線偏光とされて出力ミラー41からレーザ光として出力される。なお、このとき、YAGロッド71から放出されてQスイッチ43に入射する誘導放出光のパワーがQスイッチ43における吸収飽和閾値を超えてQスイッチ43の吸収が小さくなると、YAGロッド71から放出された誘導放出光は、出力ミラー41と全反射ミラー42との間で共振増幅される。
【0036】
なお、「上蓋13」、「底部35」、「底面95」、「上面96」等の名称は便宜的なものであり、固体レーザ装置1の上下方向を厳密に規定するものではない。例えば、底部35や底面95は、固体レーザ装置1の下方に常に位置するわけではない。つまり固体レーザ装置1の上下方向は変化し得る。
【0037】
ここで、以下の説明において、便宜上、
図1〜3に示すように、互いに直交するX軸とY軸とZ軸を想定する。すなわち、X軸方向は、光軸Lに平行な方向であると定義する。また、Y軸方向は、光軸Lに直交する方向であって、筐体21における第1側壁33と第2側壁34が配列される方向(キャビティ部12における第1側面93と第2側面94が配列される方向)と定義する。さらに、Z軸方向は、光軸Lに直交する方向であって、筐体21における底部35と開口部が配列される方向(キャビティ部12における底面95と上面96が配列される方向)と定義する。
【0038】
本実施形態では、筐体21の底部35は、一対のミラー(出力ミラー41と全反射ミラー42)との位置関係が一定に保たれている。すなわち、底部35と一対のミラーとは、固定された位置関係にある。詳しくは、筐体21とミラーホルダ22とはネジ51を介して締結されており、筐体部11内において、筐体21の底部35と、ミラーホルダ22に保持される一対のミラーとは、一体的に形成されている。そして、このようにして、筐体部11内において、筐体21の底部35と一対のミラーとは、所定の寸法で規定される位置に配置されている。
【0039】
また、キャビティ部12の底面95は、YAGロッド71との位置関係が一定に保たれている。すなわち、底面95とYAGロッド71とは、固定された位置関係にある。詳しくは、キャビティ部12内において、底面95を形成するリフレクタホルダ74とYAGロッド71を保持するロッドランプホルダ75とは、モジュール化されており、一体的に形成されている。そして、このようにして、キャビティ部12内において、底面95とYAGロッド71とは、所定の寸法で規定される位置に配置されている。
【0040】
さらに、筐体21の底部35と一対のミラーとの位置関係は、キャビティ部12の底面95とYAGロッド71との位置関係に対応して規定されている。すなわち、筐体21の底部35と一対のミラーとの間で規定される寸法は、キャビティ部12の底面95とYAGロッド71との間で規定される寸法に合わせて規定されている。
【0041】
そして、本実施形態では、このようにYAGロッド71と固定された位置関係にあるキャビティ部12の底面95と、一対のミラーと固定された位置関係にある筐体21の底部35(詳しくは、底部35の内側面35a(
図2参照))とが面接触している。そして、これにより、本実施形態では、YAGロッド71は、一対のミラーの間の光軸L上に配置されるように位置決めされている。
【0042】
ここで、「YAGロッド71は、一対のミラーの間の光軸L上に配置される」とは、YAGロッド71の中心軸と光軸Lとが一致している場合に限定されず、YAGロッド71の中心軸と光軸Lとが一致していなくてもYAGロッド71の中心軸方向の全ての位置において光軸LがYAGロッド71の内部に収まっている場合も含む意味である。すなわち、YAGロッド71の中心軸方向(X軸方向)の両端面において光軸Lが通過するような範囲内であれば、YAGロッド71の径方向(Y軸方向およびZ軸方向)について、YAGロッド71の中心軸と光軸Lとがずれていてもよいということである。
【0043】
このような本実施形態によれば、固体レーザ装置1の組み立てやメンテナンスを行う際において、筐体部11の筐体21にキャビティ部12を取り付けるときには、キャビティ部12の底面95と筐体21の底部35とを面接触させるだけで、容易に、YAGロッド71と光軸Lとを位置決めできる。すなわち、容易に、YAGロッド71を、光軸L上に配置できる。そのため、その後、一対のミラーの位置や角度(あおり角度)の調整を、微調整で済ませることができる。したがって、固体レーザ装置1の組立性やメンテナンス性が向上する。
【0044】
特に、キャビティ部12の底面95と筐体21の底部35とを接触させることにより、Z軸方向についてキャビティ部12と筐体21の位置関係が固定されるので、少なくともZ軸方向について容易に、YAGロッド71と光軸Lとを位置決めできる。
【0045】
また、キャビティ部12の底面95と筐体21の底部35とを面接触させるので、キャビティ部12と筐体21の位置関係が安定する。そのため、筐体21にキャビティ部12を取り付けた後においても、YAGロッド71と光軸Lとを位置決めした状態を維持できる。
【0046】
また、本実施形態では、
図1と
図2に示すように、キャビティ部12における底面95側の端部97が、筐体21の溝部36に嵌め込まれている。これにより、キャビティ部12は、溝部36により、Y軸方向およびX軸方向について、筐体21に対して位置決めされている。そして、これにより、Y軸方向およびX軸方向についてキャビティ部12と筐体21の位置関係が固定されるので、Y軸方向およびX軸方向について容易に、YAGロッド71と光軸Lとを位置決めできる。
【0047】
そのため、筐体部11の筐体21にキャビティ部12を取り付けるときに、キャビティ部12における底面95側の端部97を筐体21の溝部36に嵌め込むだけで、容易に、YAGロッド71と光軸Lとを位置決めできる。したがって、その後、一対のミラーの位置や角度(あおり角度)の調整を、微調整で済ませることができる。ゆえに、固体レーザ装置1の組立性やメンテナンス性が向上する。
【0048】
なお、変形例として、X軸方向について、筐体21の溝部36を、キャビティ部12における底面95側の端部97よりも長く形成することにより、キャビティ部12は、溝部36により、Y軸方向についてのみ、筐体21に対して位置決めされるとしてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、
図1と
図2に示すように、キャビティ部12と筐体21は、ネジ52により締結されている。これにより、X軸方向とY軸方向とZ軸方向について、YAGロッド71と光軸Lとを位置決めした状態を維持できる。
【0050】
以上のように、固体レーザ装置1の組み立てやメンテナンスを行う際に、筐体部11の筐体21にキャビティ部12を取り付けるときには、まず、キャビティ部12の底面95と筐体21の底部35とを面接触させて、筐体21の内部にキャビティ部12を配置させる。これにより、少なくともZ軸方向について、YAGロッド71を一対のミラーの光軸L上に配置されるように位置決めさせることができる。
【0051】
また、このとき、キャビティ部12における底面95側の端部97を、筐体21の溝部36に嵌め込むことにより、X軸方向とY軸方向について、YAGロッド71を一対のミラーの光軸L上に配置されるように位置決めさせることができる。
【0052】
そして、その後、キャビティ部12と筐体21とをネジ52により締結させることにより、X軸方向とY軸方向とZ軸方向について、さらに、YAGロッド71を一対のミラーの光軸L上に配置されるように位置決めできる。
【0053】
そのため、その後、一対のミラーの位置や角度(あおり角度)の調整を、微調整で済ませることができる。したがって、固体レーザ装置1の組立性やメンテナンス性が向上する。
【0054】
また、本実施形態では、筐体21は、箱型に形成されている。そして、筐体21の前壁31と後壁32と第1側壁33と第2側壁34は、底部35側から筐体21の開口側に向かってキャビティ部12の上面96よりも突出するように形成されている。
【0055】
このようにして、筐体21は、高い壁部を備える箱型に形成されているので、強度が向上している。そのため、上蓋13が膨張または収縮(例えば、熱による膨張または収縮)して変形したとしても、筐体21は、上蓋13に引き摺られて変形し難い。また、固体レーザ装置1を他の装置(例えば、手術装置)に取り付けたときにひずみ難い。したがって、ミラーホルダ22を介して筐体21に取り付けられている一対のミラーの位置や角度が安定する。
【0056】
また、筐体21は、高い壁部を備える箱型に形成されており、筐体21の底部35は、上蓋13から離れた位置に配置されている。そのため、上蓋13が膨張または収縮して変形したとしても、筐体21の底部35は、その影響を受け難く、変形し難い。したがって、キャビティ部12の底面95と筐体21の底部35とが面接触した状態が維持されるので、YAGロッド71と光軸Lとが位置決めされた状態が維持される。
【0057】
また、キャビティ部12と筐体21とを面接触させるので、キャビティ部12内のフラッシュランプ72からの発熱を筐体21を介して放出し易くなる。そのため、放熱性が向上する。
【0058】
ここで、フラッシュランプからの発熱を水により冷却する水冷式の装置の場合には、筒状の筐体の中心軸方向の端面においてOリングなどでシールしながら蓋で密閉して水密性を保ちながら、筐体の中心軸方向の位置に一対のミラーを配置することが考えられる。そうすると、例えばYAGロッドやフラッシュランプを筐体に脱着させるときには、ミラーと蓋を外して、筐体の軸方向(一対のミラーの光軸方向)からYAGロッドやフラッシュランプを脱着させる必要がある。そのため、一対のミラーの位置や角度(あおり角度)の調整に手間がかかってしまう。
【0059】
これに対し、本実施形態の固体レーザ装置1は、フラッシュランプ72からの発熱を空気により冷却する空冷式の装置である。そのため、水冷式の装置のように水密性を保つ必要はないので、筐体21は、その形状の自由度が高く、一対のミラーの光軸Lに直交する方向に開口した形状にすることができる。したがって、YAGロッド71やフラッシュランプ72を備えるキャビティ部12を筐体21に脱着させるときには、ミラーを外さずに、光軸Lに直交する方向からキャビティ部12を脱着させることができる。ゆえに、一対のミラーの位置や角度の調整を、微調整で済ませることができる。
【0060】
そこで、本実施形態では、前記のように、筐体21は開口した箱型に形成されているので、筐体21に対してキャビティ部12を脱着させるときに、筐体21の開口側からキャビティ部12を脱着させることできる。そのため、一対のミラーが保持されているミラーホルダ22や、Qスイッチ43や、偏光素子44などを筐体21から外さなくても、筐体21に対してキャビティ部12を脱着させることができる。したがって、筐体21に対してキャビティ部12を脱着させたときに、一対のミラーの光軸Lのズレを抑制でき、ミラーホルダ22の位置や傾きの調整、すなわち、一対のミラーの位置や角度の調整を、微調整で済ませることができる。
【0061】
また、本実施形態の固体レーザ装置1は、空冷式の装置であって、比較的に小型化された装置となっている。しかしながら、本実施形態では、前記のように、筐体21の開口側からキャビティ部12を脱着させることできるので、小型化された固体レーザ装置1であっても、筐体21に対してキャビティ部12を脱着させ易い。したがって、固体レーザ装置1の組立性やメンテナンス性が向上する。
【0062】
また、本実施形態では、
図1と
図2に示すように、上蓋13とキャビティ部12の上面96との間には隙間δが形成されている。すなわち、ヒートシンク101を備える上蓋13と、フラッシュランプ72の近くに配置されるリフレクタホルダ74とが、接触していない。これにより、キャビティ部12のフラッシュランプ72からの発熱は上蓋13のヒートシンク101から放熱されるが、キャビティ部12の上面96とヒートシンク101とが分離されているので、隙間δが形成されている空間部分が空気の断熱層となって、ヒートシンク101からの過度の放熱が抑制される。
【0063】
ここで、上蓋13とキャビティ部12の上面96との間に隙間δが形成されておらず、上蓋13とキャビティ部12の上面96とが接した比較例を想定する。すると、この比較例においては、フラッシュランプ72からの発熱は、リフレクタ73とリフレクタホルダ74を介して上蓋13に伝達して、ヒートシンク101から過度に放熱され易いと考えられる。そうすると、固体レーザ装置1におけるレーザ光の出射時において、光量が変化するフラッシュランプ72からの発熱量の変化により、リフレクタ73とリフレクタホルダ74との間の接着部分における接着剤の膨張と収縮が繰り返され易いと考えられる。そのため、フラッシュランプ72に近い側のリフレクタ73に蒸着される銀コート81が接着剤により引っ張られ、リフレクタ73への銀コート81の蒸着状態が不安定になり易いと考えられる。したがって、銀コート81における励起光の反射機能が低下するおそれがある。
【0064】
しかしながら、本実施形態では、前記のように、上蓋13とキャビティ部12の上面96との間には隙間δが形成されており、隙間δが形成されている空間部分が空気の断熱層となって、ヒートシンク101からの過度の放熱が抑制されている。そのため、リフレクタ73とリフレクタホルダ74との間の接着部分の接着剤が保温され易いと考えられる。したがって、固体レーザ装置1におけるレーザ光の出射時において、光量が変化するフラッシュランプ72からの発熱量の変化により、リフレクタ73とリフレクタホルダ74との間の接着部分の接着剤の膨張と収縮が繰り返され難いと考えられる。したがって、フラッシュランプ72に近い側のリフレクタ73に蒸着される銀コート81が接着剤により引っ張られ難くなり、リフレクタ73への銀コート81の蒸着状態が安定し易いと考えられる。ゆえに、銀コート81が保護されて、銀コート81における励起光の反射機能が維持され易いと考えられる。
【0065】
以上のように、本実施形態では、キャビティ部12の底面95と筐体21の底部35とを面接触させることにより、YAGロッド71が一対のミラーの間の光軸L上に配置されるように位置決めされている。
【0066】
これにより、筐体21にキャビティ部12を取り付けるときには、キャビティ部12の底面95と筐体21の底部35とを面接触させるだけで、容易に、YAGロッド71と光軸Lとを位置決めできる。すなわち、容易に、YAGロッド71を、光軸L上に配置できる。そのため、固体レーザ装置1の組み立て性やメンテナンス性が向上する。
【0067】
また、本実施形態では、筐体21は、1つの面が開口した箱型に形成され、筐体21の壁はキャビティ部12の上面96よりも突出するように形成されている。これにより、筐体21の強度が向上するので、筐体21は変形し難い。そのため、ミラーホルダ22を介して筐体21に取り付けられている一対のミラーの位置や角度が安定する。
【0068】
また、本実施形態では、筐体21は1つの面が開口した箱型に形成されているので、筐体21の開口側からキャビティ部12を脱着させることできる。そのため、ミラーホルダ22などを筐体21から外さなくても、筐体21に対してキャビティ部12を脱着させることができる。したがって、筐体21に対してキャビティ部12を脱着させたときに、一対のミラーの位置や角度の調整を、微調整で済ませることができる。
【0069】
また、本実施形態では、筐体21は、底部35にて、キャビティ部12における底面95側の端部97が嵌め込まれる溝部36を備えている。これにより、筐体21にキャビティ部12を取り付けるときには、キャビティ部12における底面95側の端部97を筐体21の溝部36に嵌め込むだけで、容易に、YAGロッド71と光軸Lとを位置決めできる。したがって、固体レーザ装置1の組み立て性やメンテナンス性が向上する。
【0070】
また、本実施形態では、上蓋13とキャビティ部12の上面96との間には隙間δが形成されている。これにより、隙間δが形成されている空間部分が空気の断熱層となって、リフレクタ73とリフレクタホルダ74との間の接着部分の接着剤が保温されるので、接着剤の膨張と収縮が繰り返されることが抑制される。そのため、リフレクタ73への銀コート81の蒸着状態が安定する。したがって、銀コート81が保護される。
【0071】
また、本実施形態では、筐体21は、上蓋13を形成する材質(例えば、アルミニウム)よりも熱膨張率の小さい材質(例えば、ステンレス)で形成されている。これにより、筐体21の強度が向上するので、筐体21の底部35と一対のミラーとの位置関係は、一定に保たれた状態が維持される。そのため、YAGロッド71と光軸Lとが位置決めされた状態が維持される。
【0072】
本開示の固体レーザ装置1は、眼科用レーザ治療装置のレーザ光源部に使用できる。なお、レーザ光源部に本実施形態の固体レーザ装置1を用いた眼科用レーザ治療装置は、ヤグレーザ手術装置と呼ばれることがある。ヤグレーザ手術装置は、例えば、後発白内障の手術等に用いることができる。なお、上蓋13は、筐体21と熱膨張率が等しい材質で形成されていてもよく、例えば、ステンレスにより形成されていてもよい。また、筐体21は、溝部36の代わりに、または、溝部36とともに、キャビティ部12の位置決めが可能なピンを備えていてもよい。
【0073】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。