(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示における典型的な実施形態を説明する。まず、
図1A〜
図4を参照して、第1実施形態を説明する。第1実施形態に係る光断層干渉計1(以下、「OCTデバイス1」と称す)は、被検眼Eの深さ情報を取得する眼科撮像装置である。OCTデバイス1は、例えば、フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィー(FD−OCT)であってもよいし、タイムドメインOCT(TD−OCT)であってもよい。FD−OCTとしては、スペクトルドメインOCT(SD−OCT:Spectral Domain OCT)、波長掃引式OCT(SS−OCT:Swept source-OCT)が代表的であり、勿論、それらの装置に対して本開示が適用され得る。
【0011】
図1A,
図1Bに示すOCTデバイス1は、主に、干渉光学系2(OCT光学系)と、測定光学系(導光光学系)20と、制御部70と、を備える。本第1実施形態において、OCTデバイス1は、更に、固視標投影ユニット90(第2光学系)と、記憶部(メモリ)72と、操作部74と、モニタ75と、を備える。
【0012】
まず、干渉光学系2について説明する。干渉光学系2は、光源11から発せられた光束を測定光と参照光に分割する。干渉光学系2は、測定光を被検眼Eに導くと共に、参照光を参照光学系30に導く。そして、干渉光学系2は、被検眼Eに照射された測定光と参照光との干渉を検出器(光検出器)40によって検出する。より具体的には、本実施形態では、被検眼Eで反射(又は後方散乱)された測定光と、および参照光の合成による光の干渉信号が、検出器40によって検出される。
【0013】
SD−OCTの場合、光源11として低コヒーレント光源(広帯域光源)が用いられ、検出器40には、干渉光を周波数成分に分光する分光光学系(スペクトルメータ)が設けられる。スペクトルメータは、例えば、回折格子とラインセンサからなる。
【0014】
また、SS−OCTの場合、光源11として出射波長を時間的に高速で変化させる波長走査型光源(波長可変光源)が用いられ、検出器40には、例えば、単一の受光素子が設けられる。光源11は、例えば、光源、ファイバーリング共振器、および波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたものが挙げられる。
【0015】
OCTデバイス1では、測定光学系20の光学配置が切換わる。一例として、
図1Aに示す光学配置と、
図1Bに示す光学配置とに切換わってもよい。
図1Aおよび
図1Bの光学配置では、OCTデバイス1によって断層像が撮像される部位の深度帯が互いに異なる。以下、
図1Aおよび
図1Bの光学配置を持つOCTデバイス1にSD―OCTを適用した具体例を中心として、本第1実施形態を説明する。
【0016】
図1A,
図1Bに例示する干渉光学系2は、光源11と、光ファイバ15a,15b,15c,15dと、分割器15と、参照光学系30と、検出器40と、を備える。
【0017】
光源11は、干渉光学系2の測定光および参照光として用いられる低コヒーレントの光を発する。光源11としては、例えば、SLD光源等が用いられてもよい。この場合の具体例として、光源11は、λ=800nm〜1100nmの間に中心波長を持つ光を出射してもよい。光源11からの光は、光ファイバ15aを介して、分割器15へ導かれる。
【0018】
なお、光ファイバ15a,15b,15c,15dは、内部に光を通過させることで、分割器15,光源11,測定光学系20,参照光学系30,および,検出器40等,のそれぞれとを繋ぐ。
【0019】
分割器15は、(光ファイバ15aを介して)光源11から導かれた光を、測定光と参照光とに分割する。測定光は、ファイバ15bを通って、測定光学系20へ導かれる。一方、参照光は、ファイバ15c、および、ポラライザ31を介して、参照光学系30へ導かれる。
【0020】
図1A,
図1Bの例において、分割器15は、被検眼Eへ導光された測定光の戻り光と、参照光との導光路を結合する結合部(コンバイナ)を兼用する(詳細は後述する)。このような分割器15は、例えば、ファイバーカップラーであってもよい。以下、分割器15をカップラー15と示す。
【0021】
便宜上、ここで、測定光学系20について説明する。測定光学系20は、例えば、測定光を被検眼Eに導く。一例として、
図1A,
図1Bに示す測定光学系20は、コリメータレンズ21,光束径調節部22,集光位置可変光学系(集光位置可変レンズ系)23,走査部(光スキャナー)24,ミラー25,ダイクロイックミラー26,および,対物光学系27,を有する。
【0022】
コリメータレンズ21は、光ファイバ15bの端部16bから出射される測定光を、コリメートする。
【0023】
光束径調節部22は、干渉光学系2と走査部24(つまり、光スキャナ)との間の光路中に配置されており、その光路における測定光の光束径を変更するために利用される。
図1A,
図1Bの例において、光束径調節部22は、測定光学系20におけるカップラー15と、走査部24と、の間の光路中に設けられる。光束径調節部22は、例えば、挿脱機構によって光路から挿脱可能なアパーチャ、可変ビームエクスパンダ,および,開口の径を調整可能な可変アパーチャ等の少なくともいずれかであってもよい。具体例として、
図1A,
図1Bに示す光束径調節部22は、可変ビームエクスパンダである。
図1A,
図1Bに示すように、可変ビームエクスパンダには、例えば、2つのレンズ22a,22bと、駆動部22cと、が含まれてもよい。駆動部22cは、互いのレンズ22a,22bにおける光軸方向の位置関係を、制御部70からの制御信号に基づいて変更する。これにより、測定光の光束径(およびNA)が変更される。
【0024】
集光位置可変光学系23は、測定光の集光位置を、光軸L1方向に変更するために利用される。集光位置可変光学系23は、少なくとも1つのレンズ23aを有し、レンズ23aを用いて測定光の集光位置を、光軸L1方向に関して調整する。
図1A,
図1Bの例において、集光位置可変光学系23は、カップラー15と、走査部24と、の間の光路中に設けられている。なお、本実施形態では、光束径調節部22と走査部24との中間に集光位置可変光学系23が配置される。しかし、光束径調節部22と集光位置可変光学系23の配置は、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、互いに置き換えられてもよい。また、両者の間にリレー光学系等が介在してもよい。レンズ23aは、光軸L1方向に関して、測定光の集光位置を定めるフォーカス光学系を構成する。フォーカス光学系は、レンズ23a単独で構成されてもよいし、レンズ23aと、それ以外の光学素子と共に構成されてもよい。集光位置可変光学系23は、例えば、レンズ23aの屈折力,対物光学系27とレンズ23aとの光軸L1方向に関する位置関係,のいずれかを調整する構成で実現される。なお、対物光学系27とレンズ23aとの位置関係の調整は、例えば、光軸L1方向に関するレンズ23aの位置,レンズ23aと対物光学系27aとの間の光路長,および,測定光路に対するレンズの挿脱,のいずれかによって実現されてもよい。この場合、レンズ23aを所期する方向に移動させる駆動部(アクチュエータ)が、制御部70によって制御される。本第1実施形態において、集光位置可変光学系23は、眼底Er等の眼内を撮影する場合において、視度を補正する視度補正光学系としても利用し得る(詳細は後述する)。
【0025】
図1A,
図1Bの例において、レンズ23aは、可変焦点レンズである。レンズ23aは、光軸L1に対して静止した状態で、焦点位置を変更可能である。レンズ23aは、制御部70によって設定される印加電圧の大きさに応じて、屈折力を変化させる。典型的な可変焦点レンズとしては、液晶レンズ等が知られている。なお、屈折力可変のレンズとしては、液晶レンズに限られるものではなく、例えば、液体レンズ、非線形光学部材、分子部材、回転非対称な光学部材等であってもよい。
【0026】
走査部24は、測定光を走査するために、前記OCT光学系からの測定光を偏向する光スキャナを有する。走査部24は、例えば、2つのガルバノミラー241,242(光スキャナの一例)を有してもよい。
図2の例において、241は、X走査用ガルバノミラーであり、242は、Y走査用ガルバノミラーである。各ガルバノミラー241,242は、それぞれ、ミラー部241a,242aと、それぞれの241a,242aを回転させる駆動部241b,242b(例えば、モーター)を含んでいてもよい。制御部70が、各々のガルバノミラー241,242の向きを独立に制御することで、測定光の進行方向を変更する。その結果、被検眼Eに対して、上下左右方向に測定光を走査することができる。なお、走査部24は、ガルバノミラー241b,242b以外の光スキャナを用いることができる。例えば、反射型のスキャナ(例えば、MEMSスキャナ、レゾナントスキャナ、ポリゴンミラー等でもよい)が用いられてもよいし、音響光学素子等が用いられてもよい。
【0027】
図1A,
図1Bの例では、走査部24によって進行方向が変えられた測定光は、各ミラー面が直角を挟んで配置されるミラー25,および,ダイクロイックミラー26,のそれぞれで反射される。これにより、測定光は、走査部24からの出射時とは反対向きに折り返される。その結果として、測定光が対物光学系27へ導かれる。
【0028】
本実施形態において、対物光学系27は、固定的に配置されている。より詳細には、対物光学系27は、測定光学系20において、走査部24と被検眼Eとの間に配置されている。対物光学系27は、光スキャナ(本実施形態では、ガルバノミラー241,242)によって偏向された測定光を、被検眼Eに導く。本実施形態において、対物光学系27は、正のパワーを持つレンズ系(対物レンズ系)として形成されている。このため、走査部24からの測定光は、対物光学系27を通過することで、光軸L1側に折れ曲がる。なお、
図1A,
図1Bでは、便宜上、対物光学系27を、2枚のレンズ27a,27bからなる光学系として示しているが、対物光学系27を構成するレンズの数は、これに限定されない。対物光学系27は、1枚のレンズに置き換えてもよいし、3枚以上のレンズに置き換えてもよい(例えば、
図4参照)。また、対物光学系27は、レンズ系に限られるものではなく、例えば、ミラー系であってもよいし、レンズとミラーとの組み合わせによる光学系であってもよいし、レンズおよびミラー以外の光学部材を含む光学系であってもよい。
【0029】
このような測定光学系20では、光ファイバ15bの端部16bから測定光が出射すると、コリメータレンズ21によって測定光がコリメートされる。その後、測定光は、光束径調節部22および集光位置可変光学系23を通過して、走査部24に達する。測定光は、走査部24に設けられた2つのガルバノミラーで反射された後、更に、ミラー25およびダイクロイックミラー26で反射される。その結果、測定光は、対物光学系27に入射する。そして、測定光は、対物光学系27を通過して、被検眼Eへ導光される。その後、測定光は、被検眼Eで反射または散乱され、その結果として、測定光学系20を逆に辿って光ファイバ15bの端部16bに入射する。端部16bに入射した測定光は、光ファイバ15bを介して、カップラー15に入射する。
【0030】
OCTデバイス1は、駆動部(アクチュエータ)を備える。駆動部は、対物光学系27に対する走査部24(つまり、光スキャナであるガルバノミラー241,242)の相対位置であって、測定光学系20の光軸L1方向に関する相対位置を変位させる。より詳細には、駆動部の駆動によって、対物光学系27の後側焦点位置(又は、その共役位置)に対する走査部24の相対位置が変更される。この相対位置の変位によって、測定光の旋回位置が光軸L1方向に関して変更される(詳細は後述する)。駆動部は、走査部24、及び、対物光学系27と走査部24との間に配置される光学部材、の少なくとも一方を移動させることで、対物光学系27に対する走査部24の相対距離を変位させてもよい。
図1A,
図1Bの例において、OCTデバイス1は、駆動部50を有する。対物光学系27と走査部24との間隔(光路長)が、駆動部50の駆動によって変更され、これにより、対物光学系27に対する走査部24の相対位置が変位される。この相対位置は、断層像が撮影される被検眼Eの深度帯と対応して変更される。
【0031】
図1A,
図1Bの例において、駆動部50は、それぞれのミラー面が直角を挟んで配置される2枚のミラー(ミラー25およびダイクロイックミラー)を、所定の方向に一体的に移動させる。本実施形態では、対物光学系27の光軸方向に移動される。その結果、走査部24から対物光学系27までの光路長が変更される(例えば、
図1A→
図1B,
図1B→
図1A)。例えば、断層像が得られる深度帯を前眼部と眼底Erとの間で切換える場合は、走査部24から対物光学系27までの光路長を比較的大きく変更する必要がある。これに対し、
図1Aの例において、走査部24から出射した測定光は、2枚のミラーによって折り返されているので、2枚のミラーを移動させた場合、走査部24から対物光学系27までの光路長の変化(換言すれば、対物光学系27に対する走査部24の光軸L1方向に関する変位量)を、2枚のミラー25,26の移動量の2倍とることができる。故に、対物光学系27に対する走査部24の位置を、測定光学系20の光軸L1方向に関して変位させるために必要なスペースを抑制できる。
【0032】
また、
図1A,
図1Bに示すように、OCTデバイス1は、対物光学系27に対する走査部24の位置を検出するためのセンサ51を備えていてもよい。センサ51としては、様々なデバイスを利用可能である。例えば、ポテンションメータ等のリニア変位センサがセンサ51として適用されてもよい。
【0033】
ここで、干渉光学系2の説明に戻る。参照光学系30は、参照光を生成する。参照光は、眼底Erによって反射された測定光の反射光と合成される光である。参照光学系30は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。
図1A,
図1Bに例示する参照光学系30は、反射光学系(例えば、参照ミラー34)によって形成される。
図1A,
図1Bの例では、カップラー15からの光が、反射光学系によって反射されることで再度カップラー15に戻され、結果として、検出器40に導かれる。必ずしもこれに限られるものではなく、参照光学系30は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成されてもよい。この場合、参照光学系30は、カップラー15で分割された参照光を、カップラー15へ戻さずに、透過させることで検出器40へ導く。
【0034】
図1A,
図1Bの例において、参照光学系30は、分割器15から、参照ミラー34までの光路に、光ファイバ15c,光ファイバ15cの端部16c,コリメータレンズ33,参照ミラー34,を有している。光ファイバ15cは、参照光の偏光方向を変化させるため、駆動部32により回転移動される。すなわち、光ファイバ15cおよび駆動部32は、偏光方向を調整するためのポラライザ31として用いられる。なお、ポラライザとしては、上記構成に限定されず、測定光の光路または参照光の光路に配置されるポラライザを駆動させることにより、測定光と参照光の偏光状態を略一致させるものであればよい。例えば、1/2波長板や1/4波長板を用いることやファイバに圧力を加えて変形させることで偏光状態を変えるもの等が適用できる。
【0035】
なお、ポラライザ31(偏光コントローラ)は、測定光と参照光の偏光方向を一致させるために、測定光と参照光の少なくともいずれかの偏光方向を調整する構成であればよい。例えば、ポラライザ31は、測定光の光路に配置された構成であってもよい。
【0036】
また、参照ミラー34は、参照ミラー駆動部34aによって、光軸方向L2に関して変位する。参照ミラー34が変位することで、参照光の光路長が調整される。
【0037】
光ファイバ15cの端部16cから出射した参照光は、コリメータレンズ21で平行光束とされ、参照ミラー34で反射される。その後、参照光はコリメータレンズ21によって集光されて光ファイバ15cの端部16cに入射する。端部16cに入射した参照光は、光ファイバ15c、光ファイバ31(ポラライザ31)を介して、カップラー15に達する。
【0038】
図1A,
図1Bの例では、参照ミラー34で反射された参照光と、被検眼Eに導光された測定光の戻り光(つまり、被検眼Eで反射または散乱された測定光)とは、カップラー15によって合成されて、干渉光とされる。この干渉光は、ファイバ16dを介して、端部16dから出射される。その結果、干渉光が検出器40に導かれる。
【0039】
検出器(ここでは、スペクトロメータ部)40は、周波数(波長)毎の干渉信号を得るために、参照光と測定光による干渉光を周波数(波長)毎に分光し、分光された干渉光を受光する。
【0040】
図1A,
図1Bに示す検出器40は、例えば、コリメータレンズ、グレーティングミラー(回折格子)、集光レンズ、等の光学系(いずれも図示せず)を含んでいてもよい。検出器40の本体(受光素子部分)は、例えば、一次元受光素子(ラインセンサ)が適用されてもよい。検出器40は、光源11から出射される光の波長に対して、感度を有する。上述したように、光源11から赤外域の光が出射される場合、赤外域の感度がある検出器40を利用し得る。
【0041】
端部16bから出射された干渉光は、コリメータレンズ21によって平行光とされ、その後、グレーティングミラー42によって、周波数成分に分光される。そして、周波数成分に分光された干渉光は、集光レンズ43を介して、検出器40の受光面に集光する。これによって、検出器40上での干渉縞のスペクトル情報(スペクトル信号)が得られる。スペクトル情報は、制御部70へ入力され、制御部70において、フーリエ変換を用いて解析される。そして、解析結果として、眼の断層像(
図3参照)が形成される。また、解析結果として、被検眼Eの深さ方向における情報が計測可能となる。
【0042】
ここで、制御部70は、走査部24により測定光を被検眼Eの横断方向に走査することにで、断層像を取得できる。例えば、X方向もしくはY方向に走査することにより、被検眼眼底ErのXZ面もしくはYZ面における断層像を取得できる(なお、本第1実施形態においては、このように測定光を眼底Erに対して一次元走査し、断層像を得る方式をBスキャンとする)。なお、取得された断層像は、制御部70に接続された記憶部72に記憶される。更に、走査部24の駆動を制御して、測定光をXY方向に二次元的に走査することにより、被検者眼眼底ErのXY方向に関する二次元動画像,および,被検眼眼底Erの三次元画像を検出器40からの出力信号に基づいて形成可能である。
【0043】
次に、固視標投影ユニット90について説明する。固視標投影ユニット90は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。固視標投影ユニット90は、眼Eに呈示する固視標(固視光源91)を有する。固視標投影ユニット90は、複数の方向に眼Eを誘導する構成でもよい。ここで、ダイクロイックミラー26は、干渉光学系2の測定光として用いられる波長成分の光を透過し、固視標投影ユニット90に用いられる波長成分の光を透過する特性を有する。故に、固視標投影ユニット90から出射される固視標光束は、対物光学系27を介して被検眼Eの眼底Erに照射される。これにより、被検者は、固視が可能になる。
【0044】
<制御系>
次に、OCTデバイス1の制御系を説明する。制御部(コントローラ)70は、OCTデバイス1の各部を制御する。例えば、制御部70は、CPU(プロセッサ)およびメモリ等を含んで構成されてもよい。また、本第1実施形態において、制御部70は、例えば、検出器40からの出力信号(つまり、干渉信号)を処理することによって、被検眼Eの深さ情報を取得する。深さ情報としては、断層像等の画像情報,被検眼Eの各部の寸法を示す寸法情報,測定光の照射部位における動き量を示す情報,偏光特性の情報を含む(複素数の)解析信号,等の少なくともいずれかであってもよい。本第1実施形態では、制御部70が、干渉信号に基づいて被検眼Eの断層像を形成する画像処理器を兼用している。また、本第1実施形態の制御部70は、断層像の形成以外にも、各種画像処理を行う。画像処理は、制御部70に設けられた専用の電子回路(例えば、図示無き画像処理IC)によって行われてもよいし、プロセッサ(例えば、CPU)によって行われてもよい。
【0045】
制御部70には、記憶部72,操作部(ユーザインターフェイス)74,および,モニタ75,が接続されている。記憶部72は、書き換え可能な非一過性の記憶媒体を含んでいてもよく、例えば、フラッシュメモリおよびハードディスク等のいずれかであってもよい。撮影および測定の結果得られた画像および測定データは、記憶部72に保存される。OCTデバイス1における撮影シーケンスを規定するプログラムおよび固定データは、この記憶部72に記憶されていてもよいし、制御部70内のROMに記憶されていてもよい。また、光源11,検出器40,および,各種駆動部22c,23a,241a,242b,32,34a,50のほか、センサ51等が接続されている。
【0046】
<撮影深度帯の切換動作>
次に、
図4A,
図4Bを参照して、上記のような構成のOCTデバイス1における、撮影深度帯の切換動作について説明する。本第1実施形態では、撮影深度帯を切換えるために、制御部70は、駆動部50を制御し、被検眼Eにおける測定光の旋回位置を光軸L1方向に関して変位させる。旋回位置は、対物光学系27に対する走査部24の相対位置に応じて変位する。つまり、本第1実施形態において、制御部70は、対物光学系27に対する走査部24の相対位置を駆動部50によって変更させ、その結果として、被検眼Eにおける測定光の旋回位置を光軸L1方向に関して調整する。その際、制御部70は、測定光の旋回位置を、少なくとも、第1位置と、第2位置との間で変更する。第1位置は、被検眼Eの第1深度帯に対応し、第2位置は、第1深度帯とは異なる被検眼Eの第2深度帯に対応する。また、第2位置は、測定光学系の光軸方向(被検眼Eの深さ方向)に関して第1位置とは異なる。
【0047】
また、第1位置と、第2位置とは、走査部24から対物光学系27における被検者側端部までの区間に形成される瞳のフーリエ変換像の数(又は、瞳像の数)が、互いに異なる旋回位置であってもよい。
図4A,
図4Bにおいて、対物光学系27における被検者側端部は、対物光学系27において、最も被検眼Eの近くに配置されるレンズ面である。なお、仮に、対物光学系27がミラー系である場合、最も被検眼Eの近くに配置されるミラー面が、被検者側端部である。第1位置と第2位置との間で旋回位置が切換わることで、上記区間における瞳のフーリエ変換像の数(又は、瞳像の数)の偶奇が切換わってもよい(詳細は後述する)。なお、このとき、瞳のフーリエ変換像の数,および瞳像の数のうち、両方における偶奇が切換わってもよいし、一方だけが切換わってもよい。第1位置と第2位置とにおいて、上記区間における瞳のフーリエ変換像の数(又は、瞳像の数)の偶奇が切換わることで、例えば、第1位置と第2位置との一方では、前眼部の断層像が良好に撮像されやすくなり、他方では、眼底Erの断層像が良好に撮像されやすくなる。なお、瞳のフーリエ変換像は、瞳から出射される平行光束が集光する位置に形成される(例えば、
図4BにおけるFrの位置)。
【0048】
ここで、
図4Aは、前眼部(本第1実施形態における第1深度帯)の撮影時における測定光学系20の各部の位置関係を示す。
図4Bは、眼底Er(本第1実施形態における第2深度帯)の撮影時における測定光学系20の各部の位置関係を示す。なお、
図4A,
図4Bでは、ミラー25およびダイクロイックミラー26の図示を省略している。なお、
図4A,
図4Bにおいて、Ffは、対物光学系27の前側焦点を示し、Frは、対物光学系27の後側焦点を示す。また、Icは、対物光学系27に関し、被検眼Eの瞳孔と共役な位置を示している。
【0049】
図4A,
図4Bの例において、制御部70は、前眼部の撮影時と,眼底Erの撮影時と,において、駆動部50を制御することで、測定光の旋回位置を光軸L1方向に関して切換える。このとき、対物光学系27と走査部24との相対位置の変更と連動して、制御部70は、参照光学系30における光路長を調整してもよい。また、このとき、制御部70は、集光位置可変光学系23を制御して、測定光の集光位置を切換えてもよい。また、更に、制御部70は、光束径調節部22を制御して、NAを調節してもよい。このような走査部24の位置変更(換言すれば、撮影深度帯の変更)は、例えば、操作部74から制御部70へ出力される切換信号に基づいて実行されてもよい。また、一連の撮影シーケンスにおいて、制御部70が自動的に切換えを行ってもよい。以下、詳細を説明する。
【0050】
<前眼部撮影>
図4Aに示すように、前眼部撮影時において、制御部70は、走査部24を眼底撮影時(
図4B参照)に対して対物光学系27に近づける。結果、測定光の旋回位置を、瞳のフーリエ変換像の数が偶数となる位置に設定する。
図4Aの例では、瞳のフーリエ変換像の数は「0」である。この場合において、制御部70は、走査部24を、対物光学系27の後側焦点位置Frに配置してもよい。例えば、制御部70は、センサ51の検出信号に基づいて、走査部24を後側焦点位置Frへ位置決めする。位置決めの際、走査部24を構成する光スキャナ(第1実施形態では、ガルバノミラー241,242)は、許容される測定精度(又は、断層像の画質)の範囲で、後側焦点位置Frの近傍に配置されることが望ましい。例えば、制御部70は、2つの光スキャナ(本第1実施形態では、ガルバノミラー241,242)の中間点Cp(
図2参照)を、後側焦点位置Frに位置させてもよいし、いずれか一方の光スキャナの反射面を、後側焦点位置Frに位置させてもよい。勿論、これら以外の配置もありうる。
【0051】
走査部24が対物光学系27の後側焦点位置Frに配置された結果、対物光学系27の物体側(被検眼側)において、測定光の主光線がテレセントリック(又は、略テレセントリック)となる。つまり、本第1実施形態では、走査部24と対物光学系27からなる光学系(便宜上、スキャン光学系という)が、物体側テレセントリック光学系として形成される。この場合、被検眼Eにおける測定光の旋回位置(第1実施形態における第1位置)は、光軸L1上の無限遠点であるものと、考えることができる。また、この場合、対物光学系27の前面(つまり、最も被検眼側に配置されるレンズ面)から、被検眼Eの瞳孔面に照射される測定光の主光線は、走査部24で反射される測定光の向きに関わらず、光軸L1と平行(略平行)となる。これにより、被検眼Eの位置の変化による撮影画像の倍率変化を低減させることができる。結果、撮影された前眼部断層像から、精度よく距離計測が行える。また、前眼撮影時にテレセントリックな測定光を照射することによって、被検眼Eの作動距離方向の位置ずれに起因する断層像の歪みが生じにくくなる。これによって、検者は、歪みの少ない断層像を観察することができ、断層像による診断を行い易くなる。更に、前眼部撮影時にテレセントリックな測定光を照射することによって、被測定部からの戻り光(反射光または後方散乱光)の回収効率が向上するため、画像の周辺部が暗くなることを低減できる。
【0052】
なお、
図4Aの例では、テレセントリックな測定光を照射するために、駆動部50の制御によって、走査部24が対物光学系27の後側焦点位置Frに配置される場合を例示したが、後側焦点位置Frとレンズ系等を関して共役な位置に走査部24が配置されるように、駆動部50が制御されてもよい。なお、本開示において、「共役」は、必ずしも光学的に完全な共役関係に限定されるものではない。本開示において、「共役」な関係は、完全な共役関係のほか、許容される測定精度(又は、断層像の画質)の範囲で完全な共役関係からずれた位置関係であってもよい。
【0053】
また、本第1実施形態では、制御部70は、前眼部撮影時において、参照光学系30の光路長を、前眼部から眼底Erまでの測定光の光路長に応じて、眼底撮影時に対して短く設定する。より詳細には、前眼部からの測定光の戻り光の光路長と、参照光学系30の光路長とが同じになるように、参照光学系30の光路長は調整される。これによって、測定光の戻り光と参照光とが良好に干渉した干渉信号が、検出器40で良好に得られる。この干渉信号に基づいて制御部70が画像を形成することによって、前眼部画像の断層像W2が得られる(
図3参照)。
【0054】
また、
図4Aに示すように、制御部70は、前眼部撮影時において、集光位置可変光学系23を制御して、前眼部に測定光の集光位置を設定する。この場合、制御部70は、レンズ23aから走査部24へ入射する測定光が、若干拡散されるように、集光位置可変光学系23を制御してもよい。具体例としては、制御部70が、可変焦点レンズ(レンズ23a)の屈折力を、負の値に設定してもよい。これにより、集光位置が、角膜前面と水晶体後面との中間(より好ましくは、水晶体前面と、水晶体後面の中間)に設定されることが好ましい。この場合、角膜面上に集光位置を設定する場合と比べて、断層像において比較的高い分解能を持つ領域が、より広くなる。
【0055】
また、
図4Aに示すように、制御部70は、前眼部撮影時において、光束径調節部22を制御して、干渉光学系2と走査部24(つまり、光スキャナ)との間の光路における測定光の光束径を、眼底撮影時に対して細くする。これにより、被検眼Eに入射する光束のNAが小さくなる。つまり、対物光学系27に関しての焦点深度が眼底撮影時に比べて増大される。結果、被検眼Eの深さ方向に関し、検出器40からの干渉信号が良好に得られる範囲が広がる。よって、光干渉断層計1によって、前眼部の広範囲(例えば、角膜前面から水晶体後面まで)を良好に撮像しやすくなる。
【0056】
<眼底撮影>
一方、
図4Bに示すように、眼底撮影時において、制御部70は、前眼部眼底撮影時(
図4A参照)に対して、走査部24を対物光学系27から遠ざける。その結果、測定光の旋回位置を、瞳のフーリエ変換像の数が奇数となる位置に設定する。
図4Bの例では、瞳のフーリエ変換像の数は「1」である。この場合において、制御部70は、走査部24を、対物光学系27に関して、被検眼Eの瞳孔と共役な位置Icに配置してもよい。例えば、制御部70は、センサ51の検出信号に基づいて、走査部24を瞳孔共役位置Icへ位置決めする。例えば、走査部24を構成する2つの光スキャナ(本第1実施形態では、ガルバノミラー)の中間点Cp(
図2参照)が対物光学系27に関して瞳孔共役となるように、走査部24は配置されてもよい。勿論、これ以外の配置もありうる。走査部24が、瞳孔共役位置Icに配置されることによって、走査部24の駆動に伴い、対物光学系27の前面(最も被検眼側のレンズ面)から出た測定光が、瞳孔位置を中心(旋回点)として旋回する。つまり、この場合、被検眼Eにおける測定光の旋回位置(第1実施形態における第2位置)は、瞳孔位置に設定される。これにより、測定光のケラレを抑制しつつ、測定光を眼底Erで走査できるようになる。その結果、眼底Erの断層像を、眼底Erの広範囲において撮影可能となる。なお本実施形態において、眼底撮影時においては、走査部24を瞳孔共役位置Icに配置する場合について説明したが、前眼部の所定部位と略共役な位置であればよく、例えば、角膜共役であってもよい。
【0057】
また、本第1実施形態において、制御部70は、眼底撮影時において、参照光学系30の光路長を、前眼部から眼底Erまでの測定光の光路長に応じて、前眼部撮影時に対して長く設定する。より詳細には、眼底Erからの測定光の戻り光の光路長と、参照光学系30の光路長とが同じになるように、参照光学系30の光路長は調整される。これによって、眼底Erからの測定光の戻り光と参照光とが良好に干渉した干渉信号が、検出器40から良好に得られるようになる。この干渉信号に基づいて制御部70が画像を形成することによって、眼底画像の断層像W1が得られる(
図3参照)。
【0058】
図4Bに示すように、制御部70は、眼底撮影時において、集光位置可変光学系23を制御して、眼底Erに測定光の集光位置を設定する。この場合、制御部70は、対物光学系27における後ろ側焦点位置Frにおいて、測定光が一旦集光するように、集光位置可変光学系23を制御してもよい。例えば、制御部70は、可変焦点レンズ(レンズ23a)の屈折力を正の既定値に調整する。結果、測定光は、対物光学系27によってコリメートされるので、屈折誤差がない被検眼Eであれば、眼底上で測定光が集光される。被検眼Eに屈折誤差がある場合は、その分だけ、制御部70は集光位置をオフセットさせてもよい。結果として、眼底Erの断層像が、良好に取得されやすくなる。
【0059】
また、
図4Bに示すように、制御部70は、眼底撮影時において、干渉光学系2と走査部24(つまり、光スキャナ)との間の光路における測定光の光束径を、前眼部撮影時に対して太くする。結果、対物光学系27に入射する測定光のNAが大きくなるので、高解像の眼底断層像が得られやすくなる。なお、焦点深度は、前眼撮影時と比べて狭くなる。
【0060】
このように、
図4A,
図4Bの例において、制御部70は、被検眼Eにおける測定光の旋回位置が第1位置に変位される場合、検出器40からの出力信号に基づいて前眼部の断層像W2を生成する。また、測定光の旋回位置が第2位置に変位される場合、検出器40からの出力信号に基づいて、制御部70は、眼底Erの断層像W1を生成する。
【0061】
前眼部の断層像W2と、眼底Erの断層像W1とが生成された場合において、制御部70は、各断層像W1,W2を、各断層像と対応する深度帯同士の距離(つまり、前眼部(第1深度帯)と眼底Er(第2深度帯)との距離)を示す距離情報に基づいて合成して、合成画像W3を生成してもよい(
図3参照)。距離情報は、例えば、人眼における平均値,標準値等の固定値であってもよいし、眼軸長測定装置等の眼寸法測定装置によって得られた被検眼Eにおける実測値であってもよい。また、OCTデバイス1における検出器40からの出力信号に基づいて距離情報を取得し、制御部70が、この距離情報を用いて合成画像W3を生成してもよい。また、
図3において、合成画像W3は、それぞれの断層像W1,W2の全体を含む画像として示しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、それぞれの断層像W1,W2の一部同士を合成した画像であってもよい。また、合成画像W3は、眼球を模した眼球モデル画像上に、各断層像W1,W2が重畳された画像であってもよい。
【0062】
また、本第1実施形態では、対物レンズ系27に対する走査部24の相対位置が瞳共役位置Icに設定されることで、眼底Erの断層像W1が撮像可能となる。そこから、対物レンズ系27の位置を固定したまま、走査部24を対物光学系27の後側焦点Frに設定すると、走査部24と対物光学系27からなるスキャン光学系が、物体側テレセントリック光学系となり、前眼部の断層像W2が撮像可能となる。このように、OCTデバイス1は、ワーキングディスタンス(例えば、被検眼Eの角膜Ecから対物光学系27における被検者側端部までの距離)を変えずに、前眼部の断層像W2と、眼底Erの断層像W1とを得ることができる。
【0063】
また、本第1実施形態では、制御部70が集光位置可変光学系23を制御することで、対物光学系27に対する走査部24の相対位置の変更と連動して測定光の集光位置を光軸L1方向に関して変更する。より詳細には、制御部70は、測定光の集光位置を走査部24の位置に対応する撮影深度帯に設定するように、集光位置可変光学系23を制御する。即ち、制御部70は、旋回位置が前眼部と対応する位置に変位される場合には、前眼部において測定光が集光するように、また、旋回位置が眼底Erと対応する位置に変位される場合には、眼底Erにおいて測定光が集光するように、対物光学系27に対する走査部24の相対位置と連動して集光位置可変光学系23を制御する。その結果、各深度帯における断層像W1,W2を、良好に得ることができる。
【0064】
また、本第1実施形態のOCTデバイス1は、対物光学系27に対する走査部24の相対位置の変更と連動して、制御部70は、光束径調節部22の駆動部50(アジャスター)を制御する。これにより、干渉光学系2と走査部24(つまり、光スキャナ)との間の光路における測定光の光束径が、走査部27の位置に応じて調整される。その結果、前述したように、本第1実施形態では、撮影深度帯に応じた焦点深度が設定される。結果、断層像W1,W2毎に、良好な解像度が得られる領域が深さ方向に関して適正に設定される。
【0065】
<第2実施形態>
次に、
図5を参照して、本開示における第2実施形態を説明する。ここでは、第1実施形態との相違点を中心に説明する。また、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0066】
まず、第2実施形態に係るOCTデバイス1の光学系について説明する。第2実施形態に係るOCTデバイス1は、参照光学系30の光学構成が、第1実施形態とは異なる。第2実施形態における参照光学系30は、第1参照光路13aと、第1参照光路130aとは光路長が異なる第2参照光路130bを有する。例えば、
図5に示すように、参照光学系30の光路を、光分岐部材131(例えば、ハーフミラー等)によって、第1参照光路130aと、第2参照光路130bとの2つに分岐する。また、第1参照光路130aと、第2参照光路130bとの、それぞれには、参照ミラー134,135がそれぞれ配置される。また、
図5に示すように、参照光学系30は、第1参照光路130aと、第2参照光路130bとの光路長を、それぞれ独立に調整するために、各参照ミラー134,135の位置、光軸方向に沿って変位させる駆動部134a,135aを備えてもよい。
【0067】
参照光学系30は、第1参照光路130aを経た第1参照光と、第2参照光路を経た第2参照光とを、同時に検出器40に導く。
図5の例において、第1参照光は、カップラー15で分割された後、第1参照光路130aを経た参照光であり、第2参照光は、カップラー15で分割された後、第2参照光路130bを経た参照光である。第1参照光および第2参照光を生成する際、制御部70は、駆動部134aを制御して、一方の参照ミラー134を、前眼部に対応する光路長の位置に配置する。より詳細には、第1参照光路130aの光路長が、前眼部からの測定光の戻り光における光路長と等しくなる位置に、参照ミラー134は配置される。その結果、前眼部からの戻り光と第1参照光路130aで生成される第1参照光との干渉光が、検出器40で受光される。また、制御部70は、駆動部135aを制御して、他方の参照ミラー135を、眼底Erに対応する光路長の位置に配置する。より詳細には、第2参照光路130bの光路長が、眼底Erからの測定光の戻り光における光路長と等しくなる位置に、参照ミラー135は配置される。その結果、眼底Erからの戻り光と第2参照光路130bで生成される第2参照光との干渉光が、検出器40で受光される。第1参照光と第2参照光とが同時に生成される場合における、第1参照光路130aと第2参照光路130bとの光路長差は、眼底Erと前眼部との間隔に応じた長さとなる。本実施形態において、第1参照光路130aと第2参照光路130bとの光路長差を示す距離情報は、制御部70によって、記憶部72に記憶される。
【0068】
次に、本第2実施形態におけるOCTデバイス1の動作を説明する。
【0069】
第2実施形態に係るOCTデバイス1は、対物光学系27に対する走査部24の相対位置を一定に維持した状態における検出器40からの出力信号を処理することで、制御部7が、2つの深度帯における断層像を同時に生成してもよい。また、このときの出力信号を処理することで、制御部70は、2つ以上の深度帯にまたがる被検眼Eの寸法に関する情報(寸法情報と称する)を取得してもよい。この場合、寸法情報の一例として、眼軸長情報が取得可能である。例えば、制御部70は、駆動部50を制御することによって、走査部24を対物光学系27の後側焦点位置Frに配置してもよい。この状態で検出器40から出力される干渉信号を、制御部70は、フーリエ変換する。フーリエ変換後の干渉信号の強度分布を、
図6に示す。
【0070】
図6に示す強度分布において、ACは、角膜前面からの戻り光による干渉信号である。PCは、眼底Erからの戻り光による干渉信号である。制御部70は、干渉信号AC,および,干渉信号PRがそれぞれ示す位置情報の差分と、第1参照光路130aおよび第2参照光路130bとの光路長差の値とから、被検眼Eの眼軸長値を求める。例えば、制御部70は、干渉信号ACから干渉信号PRまでの深さ方向の寸法L1を求める。そして、記憶部72に予め記憶されている第1参照光路130aおよび第2参照光路130bとの光路長差L2を、寸法L1に加える。これにより、被検眼Eの眼軸長を得ることができる(眼軸長=L1+L2)。
【0071】
また、角膜前面と眼底Er以外の位置からの反射による干渉信号(ピーク)が得られる。制御部70がこれを処理することで、深さ方向に関する寸法情報を求めてもよい。
【0072】
<第3実施形態>
次に、本開示における第3実施形態を説明する。ここでは、第1実施形態、および第2実施形態の相違点を中心に説明する。また、第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。第3実施形態に係るOCTデバイス1は、SS−OCT光学系を持つ。つまり、干渉光学系2が、出射波長を時間的に掃引させる波長掃引光源を備えるSS−OCT光学系に置き換えられる。また、光源11が、波長掃引式の光源に置き換えられる。更に、検出器40が、受光素子からなる平衡検出器に置き換えられてもよい。受光素子には、例えば、受光部が一つからなるポイントセンサを用いてもよい。受光素子としては、アパランシェフォトダイオード等を用いてもよい。この場合、制御部70は、波長掃引光源による出射波長の変化に応じて測定光と参照光との干渉信号をサンプリングし、サンプリングによって得られた各波長での干渉信号に基づいて被検物の断層像を得る。より詳細なSS−OCTでの干渉信号の処理手法、および深さ情報の取得手法については、例えば、特開2015−068775号公報等を参照されたい。
【0073】
SS−OCTの場合、SD−OCTと比して、深部での感度低下が少ない。このため、サンプリングの結果として、幅広い深度帯(例えば、前眼部から眼底Erまで)からの戻り光による干渉信号が取得されやすい。このため、参照光学系30の光路長を変化させなくても、また、参照光学系30によって、位相の異なる2種類以上の参照光(例えば、第1参照光と第2参照光)を生成させなくても、幅広い深度帯からの戻り光による干渉信号を得ることができる。なお、この場合、参照光学系30の光路長は、例えば、前眼部からの戻り光の光路長と、眼底Erからの戻り光の光路長と、の中間的な長さとすることが好ましい。この場合において、第3実施形態に係るOCTデバイス1は、第2実施形態と同様、走査部24を一定にした状態でサンプリングされる干渉信号に基づいて、被検眼Eの寸法情報を取得してもよい。但し、第3実施形態では、参照光の光路長は一定なので、眼底Erと前眼部との間の寸法情報(典型的には、眼軸長)は、角膜前面からの戻り光による干渉信号から、眼底Erからの戻り光による干渉信号までの深さ方向の寸法を、寸法情報として得ることができる。
【0074】
なお、本第2実施形態,および第3実施形態のOCTデバイス1は、第1実施形態と同様に、測定光の旋回位置を光軸L1方向に関して変位させ、旋回位置毎に、異なる深度帯の断層像を得てもよい。また、その際、第1実施形態において説明したように、干渉光学系2と走査部24(つまり、光スキャナ)との間の光路における測定光の光束径、および、測定光の集光位置の少なくとも一方が、走査部24の位置切換と連動して調整されてもよい。
<変容例>
以上、実施形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態を種々に変形した実施例にも及ぶ。また、上記各実施形態および実施例は、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0075】
例えば、上記各実施形態では、対物光学系27に対する走査部24の相対位置であって、光軸L1方向に関する相対位置を切換える構成の具体例として、対物光学系27と走査部24との光路長を変更する構成を示した。但し、必ずしもこれに限られるものではない。
【0076】
例えば、
図7に示すように、制御部70による駆動部50の駆動制御によって、少なくとも走査部24(つまり、光スキャナ)を光軸L1方向に関して変位させることで、対物光学系27に対する走査部24の相対位置を変位してもよい。
図7の例において、駆動部50は、ファイバ15bの端部16bから走査部24までを、
図7の紙面の左右方向に移動させる。なお、走査部24を移動させて、相対位置を変位させる構成は、これに限られるものではなく、例えば、走査部24およびミラー25を、レンズ23aからの測定光の光軸方向(例えば、
図1Aの紙面上下方向)に一体的に移動させる機構を、駆動部50として備えてもよい。
【0077】
また、対物光学系27に対する走査部24の光軸方向に関する相対位置を変更する構成は、対物光学系27と光スキャナ24との間の光路を切換える構成であってもよい。例えば、
図8A,
図8Bの例では、レンズ23aの出射側に、モータ224a(駆動部の一部)の駆動によって、光軸周りに回転するミラー224が設けられている。このミラー224は、測定光の入射光軸に対して傾いて配置される。また、ミラー224の反射方向に走査部24を配置するための図示無きアクチュエータ(駆動部の一部)が設けられており、ミラー224の回動に連動して走査部24全体が移動する。ミラー224と走査部24とが連動して動くことで、対物光学系27と走査部24との間の光路は、ダイクロイックミラー26,レンズ227を含む第1光路(
図8A参照)と、ハーフミラー27を含む第2光路(
図8B参照)と、に切り替えられる。例えば、このような光路の切替によって、対物光学系27に対する走査部24の光軸方向に関する相対位置が変更されてもよい。なお、
図8A,
図8Bの例においては、対物光学系27との相対位置が固定されたレンズ227が設けられており、レンズ227が含まれる第1光路を介して測定光が照射される場合は、被検眼Eにおける測定光の旋回位置は、瞳孔共役位置に設定される。一方、レンズ227が含まれない第2光路を介して測定光が照射される場合は、被検眼Eにおける測定光の旋回位置は、無限遠点に設定される。第1光路と、第2光路との一方のみに含まれる光学部材は、レンズに限られるものではなく、ビームエキスパンダ等であってもよいし、それ以外でもよい。対物光学系27と光スキャナ24との間の光路を切換える構成は、
図8A,
図8Bに示したものに限定されるものではない。例えば、走査部24における測定光の振り角を切換えることで、異なる光路に測定光を導く構成であってもよい。
【0078】
また、例えば、対物光学系27と走査部24との間の光路において、挿脱機構(駆動部の一例)によって挿脱可能な光学部材(例えば、レンズ,および,ミラーのいずれか等)を有し、制御部70が挿脱機構を駆動制御して、光学部材が光路に挿入されている状態と、光学部材が光路に挿入されていない状態とを切換えることで、対物光学系27に対する走査部24の相対位置を切換える構成であってもよい。例えば、
図9A,
図9Bの例では、走査部24と対物光学系27との間の相対位置が、ミラー302の挿脱によって切換えられる。なお、
図9A,
図9Bにおいて、ミラー302の挿脱機構の図示は、省略されている。例えば、ミラー302は、
図9A,
図9Bの紙面に対して垂直な方向に移動することで、測定光の光路に対する挿脱が行われてもよい。
図9Bに示すように、ミラー302が測定光の光路上から退避された状態では、走査部24からの測定光は、ミラー303,304とを介して対物光学系27に導かれる。一方、
図9Aに示すように、ミラー302が測定光の光路上に挿入された状態では、
図9Bに対して、ミラー303,304での反射が省略されて、走査部24からの測定光が対物光学系27に導かれる。つまり、ミラー302の挿脱によって、走査部24と対物光学系27との間における測定光の光路長が切換えられる。
【0079】
また、上記各実施形態では、第1深度帯を前眼部,第2深度帯を眼底Erとし、それらの各深度帯における断層像を得る場合について説明した。しかし、第1深度帯、および第2深度帯は、被検眼Eの深さ方向に関して互いに異なる領域であればよく、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1深度帯は前眼部の前部、また、第2深度帯は前眼部の後部であってもよい。前眼部の前部における断層像を撮像する場合、制御部70は、例えば、対物光学系27に対する走査部24の相対位置を、対物光学系27の後側焦点位置Frに変位させてもよい(このとき、走査部24よりも被検眼側に形成される測定光の旋回位置は、無限遠点として考えられる)。この場合、制御部70は、前眼部の前部における断層像を検出器40からの出力信号に基づいて生成してもよい。また、前眼部の後部における断層像を撮像する場合、制御部70は、対物光学系27に対する走査部24の相対位置を、対物光学系27の後側焦点位置Fr(および、後側焦点位置Frの共役位置)から離れた位置に形成してもよい。これにより、例えば、旋回位置を、被検眼内に変位させてもよい。この場合、制御部70は、前眼部の後部における断層像を光検出器40からの出力信号に基づいて生成してもよい。
【0080】
また、上記各実施形態では、対物光学系27に対して走査部24を2つの位置で切換えることによって、2つの深度帯(前眼部と眼底Er)における断層像をそれぞれの位置で得る場合について説明した。しかし、OCTデバイス1は、走査部24の位置を3つ以上の位置で切換えることで、3つ以上の深度帯における断層像を、各位置での干渉信号に基づいて得る構成であってもよい。また、集光位置可変光学系23,または,光束径調節部22,或いはその両方によって、走査部24の位置毎に、測定光の集光位置、または、OCT光学系2から走査部24までの間における光束径、或いは、その両方が調整されるようにしてよい。
【0081】
また、制御部70は、測定光のスキャン位置に応じて集光位置可変光学系23によって設定される集光位置を変化させてもよい。例えば、制御部70は、前眼部の形状に応じてレンズ23aの屈折力を変化させてもよい。例えば、前眼部は対物レンズ側に凸な曲面であるので、角膜の周辺部を走査する場合は、角膜の中心部を走査する場合に比べて測定光を対物レンズから離れた位置に集光させるようにしてもよい。例えば、制御部70は、屈折力可変ユニットの屈折力を小さくすることで、測定光を対物レンズから離れた位置に集光させるようにしてもよい。このように、測定光のスキャン位置に応じて、測定光の集光位置を調整することによって、測定光が前眼部により精度の良い断層像を取得することができる。
【0082】
また、本開示の実施形態は、以下の第1および第2の眼科撮像装置であってもよい。
【0083】
第1の眼科撮像装置は、被検眼の断層像を撮影するための眼科撮像装置であって、被検眼に照射された測定光と参照光との干渉を光検出器によって検出するOCT光学系と、前記測定光を走査するために、前記OCT光学系からの前記測定光を偏向する光スキャナ、および、前記光スキャナと前記被検眼の間に配置されており、前記光スキャナによって偏向された測定光を被検眼に導く対物光学系、を含む測定光学系と、前記断層像が撮像される被検眼の深度帯を第1深度帯と、第2深度帯との間で少なくとも変更するために、前記測定光学系に含まれる光学部材を駆動させる駆動部と、前記OCT光学系と前記光スキャナとの間の光路中において、前記光路における測定光の光束径を変更するための光束径調節部と、前記光束径調節部と前記駆動部とを制御することによって、前記光束径を、前記内部情報が得られる深度帯に応じて調整する制御手段と、を備える。
【0084】
第2の眼科撮像装置は、第1の眼科撮像装置において、前記第1深度帯が前眼部であり、前記第2深度帯が眼底である場合において、前記制御手段は、前記第1位置に前記光スキャナを配置する場合は、前記光束径を第1光束径に調整し、前記第2位置に前記光スキャナを配置する場合は、前記光束径を前記第1光束径よりも大きな第2光束径に調整する。