(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような従来技術では、以下のような問題がある。
【0010】
すなわち、
図6の(a)に示す保持機構100では、プラス接続端子130は、所望の立体的な形状を有するように、予めプレス加工等により折り曲げられて(加工されて)形成されている。このようなプラス接続端子130と回路基板110とを組み立てる工程は、複雑なものとなってしまい製造コストが高くなるという問題がある。その上、このような立体形状のプラス接続端子130は、工業的に搬送するために在る程度の大きさが必要であり、そして、回路基板110も、各種配線を形成して、ある程度の大きさにて用意する必要がある。そのため、電池保持構造100電池を収容する部分が大型化してしまうという問題もある。
【0011】
また、
図6の(b)に示す圧電ブザー200では、立体的に折り曲げられた金属端子240を樹脂製外装ケース230にインサートするための金型が複雑なものとなり、製造コストが高騰したり、金属端子240のインサート位置がばらついたりするといった問題がある。さらには、製造工程において後から折り曲げ量を調整するといったことができないため、製品品質が安定しないといった問題もある。
【0012】
これらの問題に対して、立体構造をもった金属製板バネと樹脂製筐体との組み立て方法として、金属製板バネと樹脂筐体を一体成型する方法が特許文献3に開示されている。具体的には、
図6の(c)に示すように、特許文献3に開示されている板バネの固定構造300は、樹脂製筐体310の中央に設けられたボス320により金属製板バネ330を固定し、金属製板バネ330の固定されていない面は、フィルム340によって樹脂製筐体310と分離されている。これにより、板バネの固定構造300は、金属製板バネの組み付けと樹脂製筐体の成型とを同時に行えるようにし、製造コストを削減している。
【0013】
しかしながら、この方法では、ボス320の形成のために金属製板バネ330の成型金型内での位置決めを高精度に行う必要があり、またフィルム340を金属板バネ330の面に設置することのために製造工程が煩雑になり、製造コストが増加してしまうという問題がある。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、複雑な組み立て工程が不要であり、製造コストを抑制して小型化することができると共に、製造工程で板バネの折り曲げ量を調整することができる板バネの固定構造、電気接点構造、及びそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の板バネの固定構造は、導電性を有する板バネと、前記板バネの一部を固定する第1の樹脂成形体とを備え、前記板バネは、前記第1の樹脂成形体に埋設して固定された固定部と、前記第1の樹脂成形体に固定されておらずバネ性を有するバネ部と、を有しており、前記固定部は、前記第1の樹脂成形体に接触していない面を有することを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、板バネは、一部が第1の樹脂成形体に埋設されて固定されている。よって、例えば樹脂の射出成形によってこのような構造を作成することが可能であるので、立体的に折り曲げられた板バネを組み立てるための複雑な工程が不要であり、製造工程を単純化して製造コストを抑制することができる。
【0017】
また、固定部は、樹脂成形体に接触していない面を有しているので、例えばこの面に仮固定部材を仮接着した状態で射出成形を行い、その後に仮固定部材を取り外し、板バネの折り曲げ量を調整することによって上記の構造を作成することができる。よって、射出成形のための複雑な金型が不要となると共に、金型と板バネとの高精度の位置合わせ工程なども不要とすることができ、その上、製造工程で板バネの折り曲げ量を調整することができる。また、製造工程で、板バネに電気的に接続する配線を形成することもできる。
【0018】
それゆえ、在る程度の大きさが必要なプリント基板が不要であると共に、あらかじめ立体形状に形成した板バネを搬送する必要がなく、板バネの固定構造を小型化することができる。
【0019】
したがって、複雑な組み立て工程が不要であり、製造コストを抑制して小型化することができると共に、製造工程で板バネの折り曲げ量を調整することができる板バネの固定構造を提供することができる。
【0020】
本発明の板バネの固定構造は、さらに、前記固定部において、前記第1の樹脂成形体に接触していない面は、前記板バネにおける一方の板面であり、他方の板面および該板面に垂直となる側面が前記第1の樹脂成形体によって密着固定されていることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、板バネの固定部において、樹脂成形体に接触していない面に対して他方の板面および該板面に垂直となる側面が第1の樹脂成形体によって密着固定される。そのため、第1の樹脂成形体によって固定部が安定して固定される。また、固定部の一端部が第1の樹脂成形体からはみ出すことがない。そのため、固定部が第1の樹脂成形体によって保護される。その結果、板バネの固定構造の耐久性を向上させることができる。
【0022】
本発明の板バネの固定構造は、さらに、前記固定部の板面と前記バネ部の板面とが同一平面となるように弾性変形させた状態において、バネ部の板面に垂直となる側面が前記第1の樹脂成形体に接触することが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、板バネのバネ部が突出している空間には、少なくともバネ部の板厚に相当する底面が形成されている。そのため、本発明の板バネの固定構造を適用して、例えば電池を保持する保持機構とした場合、該電池の保持の安定性を向上させることができる。
【0024】
本発明の板バネの固定構造は、さらに、前記固定部における前記第1の樹脂成形体に接触していない面を非固定面として、前記第1の樹脂成形体は、前記非固定面と前記第1の樹脂成形体の表面とが同一または略同一面上に位置するように、前記固定部を埋設していることが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、非固定面と第1の樹脂成形体の表面との間に段差がほとんど無い。そのため、第1の樹脂成形体の表面上において、板バネの非固定面と電気的に接続する配線を、インクジェットプリンタ等の装置を用いて容易に形成することができる。
【0026】
本発明の板バネの固定構造は、さらに、前記バネ部における板面の法線方向と、前記固定部における板面の法線方向とが異なっているとすることができる。
【0027】
上記の構成によれば、板バネはその長手方向の所望の箇所において折れ曲がった形状となっている。そのため、板バネの一端部が、例えば電池等の物体に圧接して、該物体を保持することができる。
【0028】
本発明の板バネの固定構造は、さらに、前記固定部は、前記第1の樹脂成形体内に突出して埋設されている突出埋設部が形成されていることが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、固定部は、突出埋設部を有している。そのため、第1の樹脂成形体によって密着固定されている固定部の表面積が増大する。その結果、第1の樹脂成形体による固定部の固定をより一層強固なものとすることができる。
【0030】
本発明の電気接点構造は、上記板バネの固定構造を備え、前記第1の樹脂成形体の表面上に、前記板バネと接続する配線回路が形成されており、前記バネ部を電気接点とすることを特徴としている。
【0031】
上記の構成によれば、板バネの固定構造を備え、第1の樹脂成形体の表面上に板バネと接続する配線回路が形成され、バネ部を電気接点とする電気接点構造とすることができる。この配線回路は、板バネの固定構造を製造した後に、第1の樹脂成形体の表面上に形成すればよい。そのため、電気接点構造は、配線回路の形成にはんだ付け工程および複雑な組み立て工程が不要であり、配線回路を容易に形成することができる。
【0032】
したがって、本発明の電気接点構造は、板バネの固定構造と同様の効果を奏し、複雑な組み立て工程が不要であり、製造コストを抑制して小型化することができると共に、製造工程で板バネの折り曲げ量を調整することができる電気接点構造を提供することができる。
【0033】
本発明の電気接点構造は、さらに、前記第1の樹脂成形体における前記固定部が埋設されている表面と、前記固定部と、前記配線回路と、を覆う第2の樹脂成形体を備え、前記第1の樹脂成形体は、前記第2の樹脂成形体が設けられている側の反対側に、前記バネ部が突出する孔部が設けられているとすることができる。
【0034】
上記の構成によれば、固定部と配線回路とは、第2の樹脂成形体によって保護されている。
【0035】
また、バネ部は、孔部の内部に突出している。そのため、孔部を形成する第2の樹脂成形体がバネ部の周りを取り囲んでいる。その結果、バネ部も第2の樹脂成形体によって保護されている。
【0036】
したがって、固定部およびバネ部が第2の樹脂成形体によって保護され、電気接点構造の耐久性が向上する。
【0037】
本発明の電気接点構造は、さらに、前記第2の樹脂成形体は、前記第1の樹脂成形体よりも前記板バネとの接着性が低い樹脂材料からなっていることが好ましい。
【0038】
上記の構成によれば、第2の樹脂成形体を樹脂成形する際に、バネ部が第2の樹脂成形体に接触するが、このとき、バネ部が第2の樹脂成形体に固定されることを防止することができる。
【0039】
本発明の電気接点構造は、さらに、前記バネ部における前記第2の樹脂成形体側の表面が、前記固定部における前記第2の樹脂成形体側の表面よりも前記第2の樹脂成形体との接着性が低くなっていることが好ましい。
【0040】
上記の構成によれば、第2の樹脂成形体を樹脂成形するに際して、バネ部が第2の樹脂成形体に固定されることを防止することができる。
【0041】
本発明の板バネの固定構造の製造方法は、仮固定部材に導電性およびバネ性を有する平板を貼り付けて仮固定する貼付仮固定工程と、前記仮固定部材を、前記平板が仮固定されたまま、金型内に設置して、前記平板を埋設するように樹脂成形する樹脂成形工程と、前記樹脂成形された第1の樹脂成形体を取り出して、前記仮固定部材を分離する第1の取り出し工程と、前記平板を折り曲げて、少なくとも一部を前記第1の樹脂成形体から分離させて板バネを形成する板バネ形成工程とを含むことを特徴としている。
【0042】
上記の構成によれば、仮固定部材に位置決めをして平板を貼り付け、そして樹脂成形することにより、樹脂成形体に接触していない面を有して平板が樹脂成形体に埋設されたものを得ることができる。その後、平板を折り曲げて、折り曲げ量を調整して板バネを形成することにより、板バネの固定構造を製造することができる。それゆえ、予め立体的に折り曲げられた板バネを組み立てるための複雑な組み立て工程が不要であり、製造工程を単純化して製造コストを抑制することができる。
【0043】
また、射出成形のための複雑な金型が不要となると共に、金型と板バネとの高精度の位置合わせ工程なども不要とすることができる。
【0044】
したがって、複雑な組み立て工程が不要であり、製造コストを抑制して小型化することができると共に、製造工程で板バネの折り曲げ量を調整することができる板バネの固定構造を製造することができる。
【0045】
本発明の板バネの固定構造の製造方法は、さらに、前記樹脂成形工程は、前記仮固定部材を、前記平板が仮固定されたまま、第1の下成形型の内側に貼り付けて収容する第1の成形型収容工程と、前記平板の表面の一部に当接する凸部が設けられた第1の上成形型と、前記第1の下成形型との間で、前記平板を埋設するように樹脂成形して、前記平板の上方に孔部が形成された第1の樹脂成形体を得る第1の樹脂成形工程とを含み、前記板バネ形成工程は、前記平板を前記孔部に突出するように折り曲げて、少なくとも一部を前記第1の樹脂成形体から分離させて板バネを形成するようになっているとすることができる。
【0046】
上記の構成によれば、平板を孔部に突出するようにして折り曲げて板バネを形成することができる。そのため、板バネを容易に形成することができると共に、板バネの一端部は、孔部に突出して、周囲を第1の樹脂成形体に囲まれて保護される。その結果、板バネの固定構造の耐久性が向上する。
【0047】
本発明の電気接点構造の製造方法は、本発明の板バネの固定構造の製造方法における前記第1の取り出し工程後、前記第1の樹脂成形体の表面上に、前記板バネの表面と接続する配線回路を形成する回路形成工程をさらに含むことを特徴としている。
【0048】
上記の構成によれば、本発明の板バネの固定構造の利点を有していると共に、板バネに電気的に接続する配線が設けられ、板バネの一端部を電気接点とする電気接点構造を製造することができる。
【0049】
本発明の電気接点構造の製造方法は、本発明の板バネの固定構造の製造方法における前記第1の取り出し工程後、前記第1の樹脂成形体の表面上に、前記板バネの表面と接続する配線回路を形成する回路形成工程をさらに含み、前記回路形成工程後、前記板バネの一部を固定している前記第1の樹脂成形体を、前記板バネが平板状となるように、凸部が設けられており前記第1の樹脂成形体が収容される形状の第2の上成形型の内側に貼り付けて収容する第2の成形型収容工程と、前記第2の上成形型と、第2の下成形型との間で、前記平板状の板バネと、前記配線回路とを覆うように樹脂成形する第2の樹脂成形工程と、前記第2の樹脂成形工程後、前記第1の樹脂成形体と、前記板バネと、前記配線回路と、樹脂成形された第2の樹脂成形体とを取り出す第2の取り出し工程とを含むとすることができる。
【0050】
上記の構成によれば、板バネの固定部と配線回路とが第2の樹脂成形体に覆われた形状とすることができ、耐久性が向上した電気接点構造を製造することができる。
【0051】
本発明の電気接点構造の製造方法は、さらに、前記回路形成工程を、導電インクを噴霧して配線を印刷し、配線回路を形成することにより行うことが好ましい。
【0052】
上記の構成によれば、インクジェットプリンタ等を用いて、容易に配線接続を行うことができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明は、複雑な組み立て工程が不要であり、製造コストを抑制して小型化することができると共に、製造工程で板バネの折り曲げ量を調整することができる板バネの固定構造、電気接点構造、及びそれらの製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の一実施形態について、
図1〜
図3に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0056】
本実施の形態では、本発明の板バネの固定構造および電気接点構造の一例としての、コイン型電池等を保持する保持構造への適用例について説明する。
【0057】
尚、本実施の形態では、板バネの固定構造および電気接点構造の一例としての、コイン型電池等を保持する保持構造について説明するが、本発明の板バネの固定構造および電気接点構造においては、必ずしもこれに限らない。例えば、圧電ブザー、電子部品パッケージの端子等、板バネが部分的に固定された板バネの固定構造、および該板バネに配線が電気的に接続されて板バネを電極とする電気接点構造、並びにそれらの製造方法に適用することができる。
【0058】
<本発明の一態様における保持構造の構成>
図1の(a)(b)に基づいて、本実施の形態の板バネの固定構造および電気接点構造としての、保持構造1Aの構成について説明する。
図1の(a)は、本実施の形態1における板バネの固定構造および電気接点構造としての保持構造1Aの概略的な構成を示す側面断面図である。
図1の(b)は、
図1の(a)のA−A線矢視断面図およびB−B線矢視断面図を部分的に示す上記保持構造1Aの底面図である。なお、
図1の(b)におけるC−C線矢視断面図が、
図1の(a)に示す側面断面図となっている。
【0059】
ここで、以下の説明において、保持構造1Aは、板バネと電気的に接続する配線が形成された本発明の一態様における電気接点構造となっているが、製造工程において、上記配線を形成する前の適切な段階における構成を、本実施の形態の板バネの固定構造としての保持構造1Aaまたは保持構造1Abとすることができる。この保持構造1Aaまたは保持構造1Abについて、詳しくは本実施の形態の保持構造1Aの製造方法に関する説明の中で後述する。
【0060】
図1の(a)(b)に示すように、本実施の形態の保持構造1Aは、コイン型電池等(図示せず)を収容して保持する空間としての空間部11a(孔部)を有する第1の樹脂成形体11と、第1の樹脂成形体11に一部が埋設して固定され、他の一部が空間部11aに突出する第1の板バネ12および第2の板バネ13と、を備えている。保持構造1Aは、さらに、上記第1の樹脂成形体11における空間部11aが形成されている面とは反対側の表面を覆うように形成された第2の樹脂成形体21と、第1の樹脂成形体11および第2の樹脂成形体21の間にて第1の樹脂成形体11の表面上に形成されて、第1の板バネ12または第2の板バネ13に電気的に接続された配線20と、を備えている。
【0061】
また、第1の板バネ12は、第1の樹脂成形体11に埋設して固定された固定部12aと、第1の樹脂成形体11に固定されておらず空間部11aに突出した、バネ性を有するバネ部12bとを有している。第2の板バネ13は、第1の樹脂成形体11に埋設して固定された固定部13aと、第1の樹脂成形体11に固定されておらず空間部11aに突出した、バネ性を有するバネ部13bとを有している。
【0062】
上記第1の樹脂成形体11における空間部11aの底面には、各板バネのバネ部12bおよびバネ部13bの板厚と同じ厚みの空間部底面11bが、第1の樹脂成形体11と一体に形成されている。
【0063】
以下、本実施の形態の保持構造1Aを構成する各部について、順に説明する。
【0064】
(第1の樹脂成形体)
第1の樹脂成形体11は、上記したように空間部11aを有している。この空間部11aの形状は、後述する保持構造1Aの製造方法において、第1の樹脂成形工程における金型の形状を変えることによって、所望のものとすることができる。保持構造1Aの用途に応じて、空間部11aの形状を適宜変更して製造すればよい。空間部11aには、例えばボタン型電池を収容することができる。この場合、該ボタン型電池に第1の板バネ12および第2の板バネ13が接触して、上記配線20を通じてボタン型電池から電力を取り出すことができる。
【0065】
第1の樹脂成形体11の材質としては、例えば、ポリカーボネイト(PC)またはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の樹脂が挙げられる。第1の樹脂成形体11の材質は、他の種類の樹脂であってもよい。また、第1の樹脂成形体11の形状は、特に限定されるものではない。
【0066】
本実施の形態の保持構造1Aは、空間部11aの底面に、上記したように空間部底面11bを有している。この空間部底面11bは、製造工程において、第1の板バネ12と第2の板バネ13とをそれぞれ、固定部12aおよびバネ部12b、ならびに固定部13aおよびバネ部13bが同一平面となっている状態で樹脂を射出成形して第1の樹脂成形体11を作製することによって形成されるものである。保持構造1Aは、空間部底面11bを有していることから、空間部11a内に電池等を収容し、安定して保持することができる。
【0067】
(板バネ)
第1の板バネ12および第2の板バネ13は、後述するように、元々1つの平板としてなっていたものを分離して形成されてもよく、或いは、それぞれ別の平板を折り曲げて形成されてもよい。第1の板バネ12および第2の板バネ13の板厚は、例えば、0.2mm〜0.3mmであるが、これに限定されない。
【0068】
第1の板バネ12は、バネ部12bにおける板面の法線方向と、固定部12aにおける板面の法線方向とが異なっている。換言すれば、第1の板バネ12は、長手方向の中ほどで折れ曲がり、バネ部12bが空間部11aの上部に向かって突出している。一方、このことは第2の板バネ13においても同様であるが、第1の板バネ12の方が第2の板バネ13よりも折れ曲がり量が大きくなっている。それゆえ、本実施の形態の保持構造1Aでは、例えば空間部11aに電池を収容した場合、該電池の側面に第1の板バネ12が圧接し、底面に第2の板バネ13が圧接して、上記電池を保持すると共に、該電池から電力を取り出すことができる。
【0069】
なお、第1の板バネ12および第2の板バネ13の上記折れ曲がり量は、特に限定されるものではない。
【0070】
また、本発明における板バネの固定構造および電気接点構造において、板バネの数は特に限定されるものではない。板バネは1つのみであってもよく、3つ以上であってもよい。用途に応じて適宜必要な数の板バネを第1の樹脂成形体11に固定して、板バネの固定構造および電気接点構造を作製すればよい。
【0071】
第1の板バネ12および第2の板バネ13の材質は、導電性を有し、かつ塑性変形が可能であって該塑性変形後にバネ性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂の表面に導電性の被膜を形成したものであってもよく、金属と他の材料との複合材料等であってもよい。
【0072】
第1の板バネ12の固定部12aは、第1の樹脂成形体11に埋設して固定されていると共に、第1の樹脂成形体11に接触していない非固定面12a1を有している。また、第2の板バネ13の固定部13aは、第1の樹脂成形体11に埋設して固定されていると共に、第1の樹脂成形体11に接触していない非固定面13a1を有している。
【0073】
また、第1の板バネ12の固定部12aにおいて、非固定面12a1の他方の板面および該板面に垂直となる側面は、第1の樹脂成形体11によって密着固定されている。第2の板バネ13の固定部13aにおいて、非固定面13a1の他方の板面および該板面に垂直となる側面は、第1の樹脂成形体11によって密着固定されている。
【0074】
第1の板バネ12および第2の板バネ13はそれぞれ、第1の樹脂成形体11または第2の樹脂成形体21と接する部分に表面加工がされていてもよい。例えば、各板バネの固定部12aおよび固定部13aは、第1の樹脂成形体11によって密着固定される面が、エッチング等によって粗面化されていてもよく、この場合、アンカー効果によって第1の樹脂成形体11に一層強固に固定される。
【0075】
(第2の樹脂成形体)
第2の樹脂成形体21の材質としては、例えば、ポリカーボネイト(PC)またはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の樹脂が挙げられる。第2の樹脂成形体の材質は、他の種類の樹脂であってもよい。また、第2の樹脂成形体21の形状は、特に限定されるものではない。
【0076】
なお、第2の樹脂成形体21は、第1の板バネ12および第2の板バネ13との接着性が第1の樹脂成形体11よりも低い樹脂材料からなっていることが好ましい。このことによれば、後述する保持構造1Aの製造工程において、第2の樹脂成形体21を樹脂成形する際に、各板バネのバネ部12bおよびバネ部13bは第2の樹脂成形体21に接触するが、このとき、バネ部12bおよびバネ部13bが第2の樹脂成形体21に接着して固定されることを防止することができる。例えば、金属との接着性の悪い樹脂材料の一例として、ABSに10〜30%のガラスフィラーを添加したものが挙げられる。
【0077】
(配線)
配線20は、各板バネの固定部12aおよび固定部13aが埋設された第1の樹脂成形体11の表面上において、各板バネの非固定面12a1および非固定面13a1と電気的に接続され、第1の樹脂成形体11の外部に引き出されるように形成されている。これにより、第1の板バネ12および第2の板バネ13を電気接点とすることができる。
【0078】
ここで、本実施の形態の保持構造1Aにおいて、各板バネの非固定面12a1および非固定面13a1は、いずれも第1の樹脂成形体11の表面と同一または略同一面上にあるように第1の樹脂成形体11に埋設されている。そのため、配線20は、インクジェットプリンタを用いて銀(Ag)インクを噴霧して配線したものとすることができ、配線20を容易に形成することができる。なお、配線20は、Ag以外の材質からなっていてもよいし、他の方法で形成されてもよく、配線の太さ等は特に限定されるものではない。
【0079】
なお、同一または略同一面上にあるとは、各板バネの非固定面12a1および非固定面13a1と、第1の樹脂成形体11の表面との間の段差が、インクジェットプリンタ等の装置によるプリント印刷によって配線20を形成することが可能である程度に小さい(平坦である)ことを意味する。
【0080】
<本発明の一態様における保持構造の製造方法>
図2の(a)(b)(c)(d)(e)(f)に基づいて、本実施の形態の保持構造1Aの製造方法について説明すれば、以下のとおりである。
図2の(a)(b)(c)(d)(e)(f)は、本実施の形態の保持構造1Aの製造方法の一例を説明する側面断面図である。
【0081】
(貼付仮固定工程)
図2の(a)に示すように、本実施の形態の保持構造1Aの製造方法は、先ず、リン青銅またはステンレス製の平板30の一方の板面を、接着剤41により仮固定フィルム40(仮固定部材)に貼り付けて仮固定する(貼付仮固定工程)。
【0082】
平板30は、その板面の所望の位置に、ハーフカット部31が形成されている。これにより、後の工程にて、この平板30を破断および変形させて第1の板バネ12および第2の板バネ13を容易に形成することができる。ただし、このハーフカット部31は必須の構成ではない。
【0083】
なお、上記平板30の材質は、第1の板バネ12および第2の板バネ13として所望の性質を満たすように選択される。
【0084】
上記仮固定フィルム40の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いることができる。仮固定フィルム40は、後述する理由により、紫外線を透過し、かつ柔軟性を有している材料からなっていることが好ましい。
【0085】
また、仮固定フィルム40は、キャリアテープやガラスエポキシ基板等であってもよい。上記平板30を仮固定することが可能であり、保持構造1Aを製造した後に剥がすことが可能であれば、仮固定フィルム40の材質は特に限定されるものではない。
【0086】
上記仮固定は、例えば、仮固定フィルム40の片方の面に塗布した、例えば紫外線硬化型の接着剤41を用いて行うことができる。具体的には、例えば、膜厚50μmのPET製の仮固定フィルム40に、上記接着剤41としての(有)グルーラボ製GL−3005Hを2〜3μmの厚さで塗布する。この塗布は、インクジェット印刷法を用いて行ってもよい。その後、平板30の位置を決定して設置して、例えば3000mJ/cm
2の強度の紫外線を照射することにより、上記接着剤を硬化して、平板30を仮固定フィルム40に仮固定する。
【0087】
本実施の形態の保持構造1Aの貼付仮固定工程は、平板30が立体的形状を有さないため、例えば工業的にエアチャック等を用いて平板30を搬送して、仮固定フィルム40に平板30を位置決めして貼り付けて行うことができる。そのため、貼付仮固定工程を比較的容易に実行することができる。
【0088】
(樹脂成形工程)
本実施の形態の保持構造1Aの製造方法における樹脂成形工程は、第1の成形型収容工程と第1の樹脂成形工程とを含む。
【0089】
図2の(b)に示すように、上記貼付仮固定工程の後、平板30が仮固定された仮固定フィルム40を、平板30が搭載されていない面が接するように下金型42(第1の下成形型)内に貼り付けて設置する(第1の成形型収容工程)。そして、平板30の表面の一部に当接する凸部43aが設けられた上金型43(第1の上成形型)と下金型42との間の金型キャビティ44内に樹脂材を射出して、仮固定された平板30が第1の樹脂成形体11に埋設されるように樹脂の射出成形を行う(第1の樹脂成形工程)。
【0090】
本実施の形態では、上記凸部43aは円柱形状にてなっているが、凸部43aの形状はこれに限定されない。凸部43aの形状は、第1の樹脂成形体11が有する空間部11aの形状を決定する。
【0091】
射出成形を行う条件は、第1の樹脂成形体11を構成する樹脂に応じて適宜選択されればよく、例えば、ポリカーボネート(PC)を用いる場合には、射出樹脂温度270℃、射出圧力100MPaで射出成形を行う。或いは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)を用いる場合には、射出樹脂温度180℃、射出圧力20kgf/cm
2で射出成形を行う。
【0092】
第1の樹脂成形体11を構成する樹脂は、多様な樹脂材料を採用することができる。また、射出成形を行う条件は、特に限定されるものではない。
【0093】
(第1の取り出し工程)
図2の(c)に示すように、上記樹脂成形工程の後、金型キャビティ44から平板30が埋設された第1の樹脂成形体11を取り出して、第1の樹脂成形体11の表面から仮固定フィルム40を分離する(第1の取り出し工程)。これにより、平板30における第1の樹脂成形体11に接触していない面が露出する。
【0094】
仮固定フィルム40が例えばPETフィルムである場合、PETフィルムは、上記樹脂成形工程時の熱変化によって大きく変形して第1の樹脂成形体11から剥離した状態になっており、第1の樹脂成形体11から容易に分離することができる。
【0095】
第1の取り出し工程後の、この平板30が第1の樹脂成形体11に埋設された構成は、本実施の形態の板バネの固定構造としての保持構造1Aaとすることができる。ここで、平板30は、まだ板バネの形状となってはいないが、次の板バネ形成工程において、平板30を押し曲げることによって容易に板バネとすることができることから、平板30は実質的に板バネとみなすことができる。このように、本実施の形態の製造方法によれば、複雑な組み立て工程が不要であり、製造コストを抑制して小型化することができると共に、製造工程で板バネの折り曲げ量を調整することができる保持構造1Aaとしての板バネの固定構造を提供することができる。
【0096】
(板バネ形成工程)
図2の(d)に示すように、上記第1の取り出し工程の後、平板30を図中の矢印F1およびF2方向に押して平板30を変形させ、第1の板バネ12および第2の板バネ13を形成する(板バネ形成工程)。より詳しくは、平板30のハーフカット部31を境にしてハーフカット部31から所定の距離の部分を、前記空間部11aの方向に押し込み、平板30がハーフカット部にて破断して折れ曲がり、第1の板バネ12および第2の板バネ13が形成する。これにより、バネ部12bとバネ部13bとが、空間部11a内に突出する。
【0097】
ここで、矢印F1およびF2にて押し込む力は、平板30を構成する材質に応じて適宜選択されればよく、例えば、平板30としてリン青銅を用いる場合には、応力400N/mm2で所定の量に折り曲げを行う。或いは、平板30としてステンレスを用いる場合には、200N/mm2で所定の量に折り曲げを行う。
【0098】
平板30を構成する材質は、多様な材料を採用することができる。また、折り曲げを行う条件は、特に限定されるものではない。
【0099】
第1の取り出し工程後の、第1の板バネ12および第2の板バネ13が第1の樹脂成形体11に埋設された構成は、本実施の形態の板バネの固定構造としての保持構造1Abとすることができる。
【0100】
なお、平板30にハーフカット部31が設けられていない場合、平板30を破断させる前にレーザ等によって切れ目を作製すればよい。
【0101】
また、平板30を押し曲げるのではなく、引っ張り起こすようにして第1の板バネ12および第2の板バネ13を形成してもよい。この場合、例えば、平板30に適切な溝等を形成しておき、該溝を引っ掛けて平板30に力を加えて破断させ、板バネを形成することができる。
【0102】
(回路形成工程)
図2の(d)に示すように、上記板バネ形成工程の後、空間部11aが形成されている側とは反対側の、第1の樹脂成形体11の表面上に、各板バネの固定部12aおよび固定部13aに接続する配線20(配線回路)を形成する(回路形成工程)。
【0103】
配線20は、インクジェット印刷法等によって導電材料(例えば、銀インク等)を噴霧する方法、エアロゾルを用いる方法、またはディスペンサを用いる方法等を用いて形成することができる。導電インクを噴霧して配線を印刷し、配線回路を形成することが好ましい。
【0104】
このような、第1の板バネ12および第2の板バネ13が電気的に配線されて、各板バネのバネ部12bおよびバネ部13bが空間部11aに突出した構成は、本実施の形態の電気接点構造としての保持構造1Acとすることができる。保持構造1Acは、第1の板バネ12および第2の板バネ13を端子として、成型部品としての使用が可能である。
【0105】
なお、上記板バネ形成工程および回路形成工程は、どちらを先に行っても構わない。それゆえ、平板30が電気的に配線された、本実施の形態の電気接点構造としての保持構造1Adとすることもできる。しかしながら、配線20が断線する虞を低減するという観点からは、先に板バネ形成工程を行い、その後回路形成工程を行うことが好ましい。
【0106】
(第2の成形型収容工程)
図2の(e)に示すように、上記板バネ形成工程および回路形成工程の両方が完了した後、配線20が形成され、第1の板バネ12および第2の板バネ13を埋設して固定した第1の樹脂成形体11を上金型43(第2の上成形型)に収容する(第2の成形型収容工程)。ここで、第1の樹脂成形体11は、上記第1の樹脂成形工程の際よりも熱収縮しているため、上金型43との間に少し隙間ができるように、上金型43に容易に収容できる。或いは、上記第1の成形型収容工程に用いた上成形型と、この第2の成形型収容工程に用いる上成形型とは、別のものであってもよい。
【0107】
このとき、上金型43の凸部43aによって、第1の板バネ12のバネ部12bは固定部12aと同一平面となるように弾性変形され、第2の板バネ13のバネ部13bは固定部13aと同一平面となるように弾性変形される。
【0108】
(第2の樹脂成形工程・第2の取り出し工程)
上記第2の成形型収容工程の後、上金型43と、第2の樹脂成形体21の形状に対応する凹部を有する下金型45(第2の下成形型)との間の金型キャビティ46内に樹脂材を射出して、各板バネの固定部12aおよび固定部13aと、配線20と、配線20が形成された第1の樹脂成形体11の表面とを覆うように樹脂の射出成形を行う(第2の樹脂成形工程)。
【0109】
第2の樹脂成形工程にて射出成形される樹脂は、第1の樹脂成形体11と同一の樹脂であってもよいし、別の樹脂であってもよい。第2の樹脂成形工程は、例えば、ABSに10〜30%のガラスフィラーを添加した樹脂材を射出樹脂温度180℃、射出圧力200Mpa等で用いて行ってよい。
【0110】
そして、
図2の(f)に示すように、上記第2の樹脂成形工程の後、金型キャビティ46から成形品を取り出して、本発明の一態様における電気接点構造としての保持構造1Aを完成させる(第2の取り出し工程)。
【0111】
このとき、上金型43の凸部43aで抑え込まれていた第1の板バネ12のバネ部12bおよび第2の板バネ13のバネ部13bは、上記板バネ形成工程時に加工された形状に、自らのばね弾性の特性により復帰する。その際、第2の樹脂成形体21の樹脂材として、ガラスフィラー添加品等の金属との接着性が悪いものを使用すれば、この復帰がより良好に行われる。
【0112】
また、上記第2の樹脂成形工程において、第1の板バネ12および第2の板バネ13は、第2の樹脂成形体21に覆われる側の表面が、予め表面加工されていることが好ましい。このことについて、
図3の(a)(b)に基づいて以下に説明する。
図3の(a)は、保持構造1Aが備える2つの板バネの一方(第1の板バネ12)を示す側面断面図である。
図3の(b)は他方の板バネ(第2の板バネ13)を示す側面断面図である。
【0113】
図3の(a)に示すように、第1の板バネ12は、前述した非固定面12a1と、バネ部12bの第2の樹脂成形体側の板面である表面加工板面12b1を備えている。同様に、
図3の(b)に示すように、第2の板バネ13は、前述した非固定面13a1と、バネ部13bの第2の樹脂成形体側の板面である表面加工板面13b1を備えている。
【0114】
上記第2の樹脂成形工程においては、各板バネの表面加工板面12b1および表面加工板面13b1が第2の樹脂成形体21に接触した状態になっており、第2の取り出し工程後、表面加工板面12b1および表面加工板面13b1は第2の樹脂成形体21から分離する必要が有る。そこで、表面加工板面12b1および表面加工板面13b1はそれぞれ、非固定面12a1および非固定面13a1よりも第2の樹脂成形体21との接着性が低くなっていることが好ましい。例えば、表面加工板面12b1および表面加工板面13b1は、シリコン等が予め塗布されている。
【0115】
なお、本実施の形態の製造方法では、貼付仮固定工程にて1つの平板30を仮固定フィルム40に貼り付けていたが、第1の板バネ12および第2の板バネ13にそれぞれ対応する2つの平板を並べて仮固定フィルム40に貼り付けてもよい。この場合には、平板30が初めから分離されていることになる。また、このとき上記2つの平板は、仮固定フィルム40に、2つの平板の間に隙間なく並べて貼り付けられてもよく、少し隙間を空けて並べて貼り付けてられてもよい。
【0116】
以上のように構成された本実施の形態の保持構造1Aによれば、導電性を有する第1の板バネ12および第2の板バネ13と、これらの各板バネの一部を固定する第1の樹脂成形体11とを備えている。第1の板バネ12は、第1の樹脂成形体11に埋設して固定された固定部12aと、第1の樹脂成形体11に固定されておらずバネ性を有するバネ部12bと、を有しており、このことは第2の板バネ13においても同様である。固定部12aおよび固定部13aはいずれも、第1の樹脂成形体11に接触していない面を有している。
【0117】
このような構成の保持構造1Aでは、例えば樹脂の射出成形によって作製することが可能であるので、立体的に折り曲げられた板バネを組み立てるための複雑な工程が不要であり、製造工程を単純化して製造コストを抑制することができる。
【0118】
また、固定部12aは、第1の樹脂成形体11に接触していない面を有しているので、例えばこの面に仮固定部材を仮接着した状態で射出成形を行い、その後に仮固定部材を取り外し、板バネの折り曲げ量を調整することによって上記の構造を作成することができる。よって、射出成形のための複雑な金型が不要となると共に、金型と板バネとの高精度の位置合わせ工程なども不要とすることができ、その上、製造工程で板バネの折り曲げ量を調整することができる。また、製造工程で、板バネに電気的に接続する配線を形成することもできる。
【0119】
それゆえ、在る程度の大きさが必要なプリント基板が不要であると共に、あらかじめ立体形状に形成した板バネを搬送する必要がなく、板バネの固定構造を小型化することができる。
【0120】
したがって、複雑な組み立て工程が不要であり、製造コストを抑制して小型化することができると共に、製造工程で板バネの折り曲げ量を調整することができる板バネの固定構造を提供することができる。
【0121】
〔実施の形態2〕
図4に基づいて、本発明の他の実施の形態について説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0122】
前記実施の形態1では、本発明の板バネの固定構造および電気接点構造の一例として、空間部11aを有する第1の樹脂成形体11に、第1の板バネ12および第2の板バネ13が空間部11aに突出するように埋設して固定された、コイン型電池等を保持する保持構造1Aについて説明した。これに対して、本実施の形態では、本発明の板ばねの固定構造および電気接点構造の他の一例として、空間部11aを有しない直方体形状の第1の樹脂成形体51の表面に第1の板バネ12および第2の板バネ13がそれぞれ埋設して固定された板バネの固定構造1Bおよび電気接点構造1Cについて説明する。
【0123】
前記実施の形態1における保持構造1Aでは、空間部11aの形状によって、電池または他の組み付け部品のサイズが制限されてしまう。これに対して、本実施の形態の板バネの固定構造1Bおよび電気接点構造1Cによれば、第1の樹脂成形体51の表面上に各板バネのバネ部12bおよびバネ部13bのみが突出した形状とすることができ、そのような制約が生じることがない。
【0124】
図4の(a)(b)(c)(d)に基づいて、本実施の形態の板バネの固定構造1Bおよび電気接点構造1Cの製造方法について説明すれば、以下のとおりである。
図4の(a)(b)(c)(d)は、本実施の形態の板バネの固定構造1Bおよび電気接点構造1Cの製造方法の一例を説明する側面断面図である。
【0125】
図4の(a)に示すように、本実施の形態の板バネの固定構造1Bおよび電気接点構造1Cの製造方法は、先ず、前記実施の形態1と同様に貼付仮固定工程を行う。
【0126】
次に、
図4の(b)に示すように、上記貼付仮固定工程の後、前記実施の形態1と同様に第1の成形型収容工程を行う。そして、第1の樹脂成形体51の形状に対応する凹部を有する上金型47と下金型42との間の金型キャビティ48内に樹脂材を射出して、仮固定された平板30が第1の樹脂成形体51に埋設されるように樹脂の射出成形を行う(第1の樹脂成形工程)。
【0127】
続いて、
図4の(c)に示すように、上記第1の樹脂成形工程の後、金型キャビティ48から平板30が埋設された第1の樹脂成形体51を取り出して、第1の樹脂成形体51の表面から仮固定フィルム40を分離する(第1の取り出し工程)。これにより、平板30における第1の樹脂成形体51に接触していない面が露出する。
【0128】
第1の取り出し工程後の、この平板30が第1の樹脂成形体51に埋設された構成は、本実施の形態の板バネの固定構造1Baとすることができる。
【0129】
そして、第1の取り出し工程の後、回路形成工程および板バネ形成工程を行う。ここで、回路形成工程および板バネ形成工程は、どちらを先に行ってもよい。また、回路形成工程は、前記実施の形態1と同様に行うことができる。
【0130】
板バネ形成工程においては、
図4の(d)に示すように、平板30上の2カ所を図中の矢印F3およびF4方向に引っ張ることによって、平板30を破断および変形させ、第1の板バネ12および第2の板バネ13を形成する。これにより、第1の樹脂成形体51の表面上に各板バネのバネ部12bおよびバネ部13bが突出する構成の板バネの固定構造1Bbまたは電気接点構造1Cとすることができる。板バネの固定構造1Bbと電気接点構造1Cとの違いは、配線20が形成されている(回路形成工程が行われている)か否かである。換言すれば、板バネの固定構造1Bbに配線20が形成されたものが、本実施の形態の電気接点構造1Cである。
【0131】
ここで、前記実施の形態1では、矢印F1およびF2方向の荷重は、空間部11aへと押し込むことによって平板30に容易に負荷することができた。これに対して、本実施の形態では、平板30は、押し込む空間が存在しないため、
図4の(d)に示す矢印F3およびF4のように引っ張り起こす力を平板30に負荷する必要がある。
【0132】
これは、平板30に引っ掛けることのできる引掛け部を予め設けておき、該引掛け部を用いて荷重を負荷するとすることができる。ただし、このような荷重の負荷においては、荷重を負荷し易い状態にすることが好ましい。
【0133】
そこで、各板バネの固定部12aおよび固定部13aは、第1の樹脂成形体51と強く密着固定されるように、例えば、固定部12aおよび固定部13aの第1の樹脂成形体51と接する側の面が、エッチング等によって粗面化されていることが好ましい。
【0134】
また、各板バネのバネ部12bおよびバネ部13bは、第1の樹脂成形体51との接着性が悪くなるように、例えば、バネ部12bおよびバネ部13bの第1の樹脂成形体51と接する側の面に、シリコン等が塗布されていることが好ましい。
【0135】
(変形例)
本実施の形態の変形例について、
図5の(a)(b)に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、説明の便宜上、前記実施の形態2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0136】
図5の(a)は、本実施の形態の変形例としての板バネの固定構造1Bおよび電気接点構造1Cを示す側面断面図である。
図5の(b)は、上記板バネの固定構造1Bおよび電気接点構造1Cの板バネ(第1の板バネ52)における固定部52aを、
図5の(a)の図中に示す矢印A1方向から見た形状を示す図である。
【0137】
本変形例の板バネの固定構造1Bおよび電気接点構造1Cは、各板バネの固定部に、第1の樹脂成形体内に突出して埋設される突出埋設部を備えている点が、前記実施の形態2と異なっている。
【0138】
図5の(a)に示すように、本変形例の電気接点構造1Cは、第1の樹脂成形体51に埋設された第1の板バネ52と、第2の板バネ53とを備えている。第1の板バネ52は、第1の樹脂成形体51に埋設して固定された固定部52aと、第1の樹脂成形体51に固定されておらず第1の樹脂成形体51の表面上に突出した、バネ性を有するバネ部52bとを有している。第2の板バネ53は、第1の樹脂成形体51に埋設して固定された固定部53aと、第1の樹脂成形体51に固定されておらず第1の樹脂成形体51の表面上に突出した、バネ性を有するバネ部53bとを有している。
【0139】
図5の(b)に示すように、第1の板バネ52の固定部52aは、突出埋設部52cを備えている。図示しないが、第2の板バネ53の固定部53aも同様に、突出埋設部53cが設けられている。突出埋設部52cおよび突出埋設部53cにより、第1の樹脂成形体51によって密着固定されている固定部52aおよび固定部53aの表面積が増大する。その結果、第1の樹脂成形体51による固定部52aおよび固定部53aの固定をより一層強固なものとすることができる。
【0140】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。