(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0031】
<基本原理>
まず、本実施形態の基本原理について説明する。
予備吐出方式は、描画データが印刷される描画エリア内に吐出する第1のドロップ方式と、描画エリア外に吐出する第2のドロップ方式に大別され得る。第1のドロップ方式の典型例は、描画エリア内にランダムに吐出するランダムドロップであり、第2のドロップ方式の典型例は、描画エリア外にライン状に吐出するラインドロップである。描画データが印刷される描画エリア内で予備吐出する場合には目視できない程度の濃度とする必要があり、目視し難くすることを目的に薄く、分散させ、ランダムに吐出させる(ランダムドロップ)。他方、描画エリア外で予備吐出する場合には目視できても構わないことと、紙間を減らす、紙間を他の用途(例えば濃度や位置合わせのためのマークを作成するエリアとして使う)ために狭い範囲にまとめて吐出すべくライン状に吐出させる(ラインドロップ)。それぞれの方式には一長一短があり、ラインドロップの利点は、ページ先頭で全ノズルを噴射することにより、後工程でカットすることで印刷物上には予備吐出部分が残らないこと、及び印刷ジョブへの影響がないことである。他方、ノズルの位置、印刷ジョブによってはページ間隔でしかノズルから噴射されないことがあるので、予備吐出をしていても詰まるノズルが発生する可能性がある。従って、写真等のイメージやグラフィックが多いページに向いている。ランダムドロップの利点は、各色の各ヘッド、各ノズル単位で制御することにより、インク消費が少ないことである。他方、各色独立に制御されるため、例えば肌色の部分にK(ブラック)のランダムドロップがのってしまう、ベタ部分の他の色が混じる等、汚れや本来の色味でなくなる可能性がある。従って、色変化が生じてないテキスト部分に向いている。
【0032】
本実施形態では、これらの特性を踏まえ、印刷ジョブの内容に応じて予備吐出方式を自動的に切替設定することで、ノズルの詰まりを抑制しつつ印刷品質を維持する。
【0033】
すなわち、本実施形態では、基本的に、処理単位毎にその構成要素がテキストであるかグラフィックであるかを判定し、テキストであれば当該処理単位の予備吐出方式としてランダムドロップを自動設定し、グラフィックであれば当該処理単位の予備吐出方式としてラインドロップを自動設定する。これにより、多様な印刷ジョブであっても、テキストとグラフィックの存在比率に応じて自動的に最適な予備吐出方式が設定され、利用者の手間とコストが軽減される。
【0034】
但し、ラインドロップを設定した場合において、例えば同じ印刷ジョブを50m/minの用紙搬送速度と、100m/minの用紙搬送速度で印刷したときでは、あるノズルに着目すると、50m/minではノズルからインクを吐出する間隔は100m/minの倍であるから、その分だけノズル詰まりが発生し易くなる。そこで、本実施形態では、ラインドロップを設定した場合において、用紙搬送速度を考慮してノズル詰まりが発生する可能性があるときに、ラインドロップとランダムドロップの混合とするか、あるいは用紙搬送速度を増大するようにアラートを通知する。これにより、ラインドロップを設定した場合におけるノズル詰まりの発生確率を減少させる。
【0035】
ラインドロップとランダムドロップの混合方式とするか、あるいはラインドロップとしつつ用紙搬送速度を増大させるべくアラートを通知するかは、例えば色味を優先させるか否かにより判別することができる。色味を優先させない場合にはラインドロップとランダムドロップの混合とし、色味を優先させる場合にはラインドロップを維持しつつ用紙搬送速度を増大させるべくアラートを通知する。色味を優先させる場合にランダムドロップを導入しないのは、ランダムドロップでは本来の色味でなくなる可能性があるからである。
【0036】
次に、本実施形態について、具体的に説明する。
【0037】
図1は、本実施形態における画像形成装置を含むシステムの機能ブロック図である。システムは、端末装置10及び画像形成装置12を備える。端末装置10と画像形成装置12は、通信手段14を介して接続される。通信手段14は、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)等のデータ通信ネットワークが用いられる。
【0038】
端末装置10は、通信手段14を介して画像形成装置12に接続され、利用者の指示に従い、文書の印刷命令を含む印刷ジョブを送信する。
【0039】
画像形成装置12は、ROM16、RAM18、HDD20、1つ又は複数のCPUで構成される制御部22、インタフェースI/F24、タッチパネル等の操作部26、プリント部28を備える。
【0040】
1又は複数のCPUで構成される制御部22は、ROM16に記憶された処理プログラムに従い、I/F24を介して端末装置10から印刷ジョブ命令を受け付け、PDLデータを解釈して中間データを生成し、生成した中間データからさらに描画データ(ラスターデータ)を生成する。また、制御部22は、処理プログラムに従って予備吐出の実行を制御し、印刷ジョブ及び印刷速度に応じてラインドロップとランダムドロップを適応的かつ自動的に切替設定してプリント部28を制御する。
【0041】
プリント部28は、公知のインクジェット方式の構成を備え、描画データを用紙に印刷する。プリント部28は、ノズル等から液体あるいは溶融固体インクを吐出し、紙、フィルム等に記録を行う。インクを吐出する方法には、静電誘引力を利用してインクを吐出させるドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、高熱により気泡を形成・成長させることで生じる圧力を利用してインクを吐出させる熱インクジェット方式等がある。記録ヘッドは、例えば、シアンインクを吐出するヘッド、マゼンタインクを吐出するヘッド、イエローインクを吐出するヘッド、ブラックインクを吐出するヘッドを備え、各ヘッドが用紙の幅と少なくとも同等の幅を有するラインヘッドが用いられる。記録ヘッドにより各色のインク滴を中間転写体に吐出して記録し、その後に用紙に転写して印刷する。
【0042】
なお、画像形成装置12は、機能モジュールとして、印刷ジョブ受付モジュール、解釈モジュール、描画モジュール、予備吐出設定モジュールを備える。これらの機能モジュールは、1又は複数のCPUから構成される制御部22がROM16に記憶された処理プログラムを実行することで実現される。
【0043】
印刷ジョブ受付モジュールは、端末装置10から印刷ジョブを受け付ける。印刷ジョブは、文書を印刷する旨の命令と、印刷対象の文書をページ記述言語で記述したデータを含む。ページ記述言語(PDL)は、ディスプレイ表示処理、印刷処理等を情報処理機器に実行させるためのコンピュータプログラミング言語である。ページ記述言語で記述されたデータは、印刷対象の文書を構成する文字や図形、イメージ等のオブジェクトの位置情報、書式情報及び色情報を含む。印刷ジョブ受付部は、受信した印刷ジョブに含まれるPDLデータを解釈モジュールに供給する。
【0044】
解釈モジュールは、印刷ジョブ受付モジュールから取得したPDLデータを解釈し、その解釈結果に応じて、描画データの生成の手順を表す命令を含む中間データを生成して出力する。描画データは、印刷対象の画像をプリント部28が取り扱い可能な形式で表現した印刷画像データであり、例えばラスター形式のデータである。中間データは、PDLデータと描画データの中間の粒度のデータであり、中間データ形式は、例えばPDLで記述された画像オブジェクトをさらに単純な形状の微小要素に細分化して表現したものである。中間データの一例では、オブジェクトは、バウンディングボックス指定、カラー指定、形状指定の3つのデータ項目の組で表現される。バウンディングボックス指定は、当該オブジェクトを内包する矩形を規定する情報であり、矩形の左上と右下の頂点の座標を含む。カラー指定は、当該オブジェクトの各画素のカラーを規定する情報であり、カラー形式とカラーデータの情報を含む。カラー形式は、オブジェクトの画素の色の定め方を規定する情報であり、例えば単色(全画素が同一色)、グラデーション(色が画素の配列方向に沿って連続的に変化)、ラスター(画素毎に個別に色を指定)等である。カラーデータは、カラー形式に応じたデータ形式で各画素のカラーを表すデータであり、例えば単色の場合にはカラーデータは1つの色をCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の基本色(プロセスカラー)の色空間での座標で表現した色値である。特色(スポットカラー)の場合には、カラーデータは特色名(その特色の名称)である。グラデーションの場合、カラーデータは色の初期値と変化率の情報を含む。ラスターの場合、カラーデータは画素毎の色値を含んだデータである。形状指定は、当該オブジェクトの形状を規定する情報である。解釈部は、このような中間データを生成して中間データバッファに供給する。中間データバッファは、解釈モジュールからの中間データを格納する。
【0045】
描画モジュールは、中間データバッファに記憶された中間データを読み出し、読み出した中間データに従って描画データ(ラスターデータ)を生成する。例えば、オブジェクトの形状データが示す範囲内の各画素の値を、そのオブジェクトのカラーデータから求め、ページメモリ上の当該画素に対応するアドレスにその画素値を書き込むことでオブジェクトの描画を行う。1ページに含まれる全オブジェクトを描画することで、そのページのラスター画像が形成される。生成された各ページの描画データは出力部バッファに格納され、順次読み出されてプリント部28に供給される。プリント部28は、出力バッファから読み出した各ページの描画データをロール等の記録媒体に対して印刷する。
【0046】
予備吐出設定モジュールは、印刷ジョブから生成された描画データ及び印刷速度を用いて、プリント部28の予備吐出方法を自動的に設定する。具体的には、描画データに含まれるテキスト/イメージ/グラフィックに応じてラインドロップとランダムドロップを切替設定するとともに、印刷速度に応じてさらにラインドロップと(ラインドロップ+ランダムドロップの混合)を切替設定する。
【0047】
次に、制御部22における予備吐出の設定処理について説明する。
【0048】
<第1の設定処理>
図2及び
図3は、制御部22における予備吐出の第1の設定処理のフローチャートを示す。
【0049】
まず、
図2において、制御部22は、端末装置10から印刷ジョブデータを入力し(S101)、中間データを生成し、さらに描画データの生成を開始する(RIP処理:ラスターイメージプロセッサ処理)(S102)。
【0050】
次に、制御部22は、生成された描画データ(ラスターデータ)からページを構成する要素(オブジェクト)を取得し(S103)、シートを作成する(S104)。例えば2アップの場合、1シートは2ページから構成される。
【0051】
シートを作成した後、制御部22は、シート単位でその構成要素がテキストであるか、イメージ/グラフィックであるかを判定する(S105)。例えば、1シートが2ページから構成されている場合、2ページ全体を対象としてテキストであるか、イメージ/グラフィックであるかを判定する。2ページに亘って全てテキストである場合にはテキストと判定し、2ページに亘って全てイメージ/グラフィックである場合にはイメージ/グラフィックと判定する。また、2ページの少なくともいずれかにイメージ/グラフィックが含まれる場合には、その他がテキストであったとしても当該イメージ/グラフィック部分を重視してイメージ/グラフィックと判定する。言い換えれば、全てテキストである場合のみテキストと判定し、イメージ/グラフィックが多少なりとも含まれる場合にはイメージ/グラフィックと判定する。但し、イメージ/グラフィックが含まれていてもシート全体におけるその割合が閾値以下である場合にテキストと判定してもよい。
【0052】
シートの構成要素をテキストと判定した場合、制御部22は、当該シートにおける予備吐出の方法としてランダムドロップを割り付けることで設定する(S106)。ランダムドロップを設定した後、UIのためのシート単位のパターンを分析し(S107)、以上の処理を全ページについて実行する(S108)。未だ残余のページがある場合にはS103以降の処理を繰り返し、全てのページについて完了すると、制御部22は、S107での分析結果を用いて1パターン分(1シート分)を端末装置10に表示して利用者に提示する(S109)。
【0053】
他方、シートの構成要素をイメージ/グラフィックと判定した場合、
図3の処理に移行する。
【0054】
図3において、制御部22は、当該シートにおける予備吐出の方法としてラインドロップのドロップパターンを割り付けることで設定する(S110)。イメージ/グラフィックの場合、ランダムドロップとするとイメージ/グラフィック部分の色味が変化し得るため、シートの先頭部分において予備吐出を行うのが望ましいからである。
【0055】
当該シートについてラインドロップを設定した後、制御部22は、さらに、プリント部28における用紙搬送速度を取得し(S111)、用紙搬送速度を用いてCMYKの各版(プレーン)毎の最長噴射間隔を算出する(S112)。例えば、C版について、あるシートの先頭部分で予備吐出を行い、当該シートのオブジェクトを印刷してから次のシートの先頭部分で予備吐出を行うまでの噴射間隔を用紙搬送速度から算出する。当該シートでC版のオブジェクトが存在しない場合、最長噴射間隔は、シートの長さLを用紙搬送速度Vで除算した値に等しい。各プレーンの最長噴射間隔は、そのプレーンにおける不吐出時間を意味することになる。制御部22は、各プレーン毎の不吐出時間をそれぞれ閾値と大小比較し、ノズル詰まりとなる閾値を超えるか否かを判定する(S113)。
【0056】
いずれかのプレーンの不吐出時間が閾値を超える場合、制御部22は、さらに、色味優先モードが設定されているか否かを判定する(S114)。不吐出時間が閾値を超える場合には、当該プレーンにおいてノズル詰まりが発生する可能性が高いため、当該プレーンについてはラインドロップ単独ではなくラインドロップにランダムドロップを加えたラインドロップとランダムドロップの混合方式とすることが好適であるが、他方で、ランダムドロップを加えると既述したようにイメージ/グラフィックの色味が変化し得る。そこで、制御部22は、色味優先モードが設定されているか否かを判定する。
【0057】
利用者は、予め端末装置10で色味優先モードを設定することができ、色味優先モードが設定されていない場合には、制御部22は、当該プレーンの予備吐出の方式としてラインドロップとランダムドロップの混合方式を設定する(S116)。例えば、CMYKの各プレーンのうち、MYKのプレーンは閾値を超えないが、Cについては閾値を超える場合には、Cプレーンについてラインドロップとランダムドロップの混合方式を設定し、他のプレーンについてはラインドロップのままとする。また、色味優先モードが設定されている場合には、ランダムドロップを付加すると色味が変化し得るためこれを採用せず、当該プレーンについてもS110で設定したラインドロップをそのまま維持しつつ、ノズル詰まりが発生するおそれがあることを利用者に通知すべくアラートを操作部26に表示する(S115)。このとき、用紙搬送速度、つまり印刷速度の変更フラグを設定する。その後は、
図2におけるS107以降の処理に移行する。
【0058】
図4は、S109で端末装置10に表示される画面例を示す。制御部22は、シート単位で予備吐出方式を設定するため、シート単位で設定された予備吐出方式が示される。例えば、ジョブプロパティとして、シート100,101が表示され、シート100,101毎に予備吐出方式が図示される。図において、シート100についてはイメージ/グラフィックと判定されてラインドロップ102が設定され、シート101についてはテキストと判定されてランダムドロップ104が設定されたことを示す。
【0059】
図5は、S115で操作部26に表示されるアラート例を示す。「現在の用紙搬送速度では印字品質に問題が発生する可能性があります。用紙搬送速度を上げて下さい」旨のメッセージがアラートとして表示される。利用者は、このアラートを視認することで用紙搬送速度を上げる操作を行う。制御部22は、利用者が用紙搬送速度を上げる操作を行った場合には、S115で設定した印刷速度の変更フラグをクリアし、増大変更された印刷速度で印刷(ラインドロップ方式の予備吐出を実行)する。
【0060】
<第2の設定処理>
図6は、制御部22における予備吐出の第2の設定処理のフローチャートを示す。
【0061】
まず、制御部22は、端末装置10から印刷ジョブデータを入力し(S301)、中間データを生成し、さらに描画データの生成を開始する(RIP処理:ラスターイメージプロセッサ処理)(S302)。
【0062】
次に、制御部22は、生成された描画データ(ラスターデータ)からページを構成する要素(オブジェクト)を取得し(S303)、シートを作成する(S304)。
【0063】
シートを作成した後、制御部22は、シートを構成する論理ページ毎にその構成要素がテキストであるか、イメージ/グラフィックであるかを確認し、その確認結果に応じて当該シートがテキストであるか、イメージであるかを判定する(S306)。例えば、1シートが2ページから構成されている場合、2ページそれぞれについてテキストであるか、イメージ/グラフィックであるかを判定する。2ページが全てテキストである場合には当該シートをテキストと判定し、2ページが全てイメージ/グラフィックである場合には当該シートをイメージ/グラフィックと判定する。また、2ページの少なくともいずれかのページがイメージ/グラフィックである場合には、イメージ/グラフィックと判定する。第1の設定処理では、シートを構成する複数ページを対象として判定しているのに対し、第2の設定処理ではシートを構成する複数ページの各ページを対象として判定し、その判定結果に応じてシートを対象としてテキストであるか、イメージ/グラフィックであるかを判定している点に留意されたい。
【0064】
シートの構成要素をテキストと判定した場合、制御部22は、当該シートにおける予備吐出の方法としてランダムドロップを割り付けることで設定する(S307)。ランダムドロップを設定した後、1シートのパターンを分析し(S308)、以上の処理を全ページについて実行する(S309)。未だ残余のページがある場合にはS303以降の処理を繰り返し、全てのページについて完了すると、制御部22は、1パターン分(1シート分)を端末装置10に表示して利用者に提示する(S310)。
【0065】
他方、シートの構成要素をイメージ/グラフィックと判定した場合、既述した
図3の処理に移行する。
【0066】
<第3の設定処理>
第1及び第2の決定処理では、シート単位でテキスト、あるいはイメージ/グラフィックを判定してシート単位で予備吐出方式としてラインドロップ、ランダムドロップ、あるいはラインドロップとランダムドロップの混合を切替設定しているが、第3の決定処理では、必要に応じて適宜、論理ページ単位でテキスト、あるいはイメージ/グラフィックを判定して論理ページ単位で予備吐出方式を切替設定する。
【0067】
図7及び
図8は、制御部22における予備吐出の第3の設定処理のフローチャートを示す。
【0068】
まず、
図7において、制御部22は、端末装置10から印刷ジョブデータを入力し(S401)、中間データを生成し、さらに描画データの生成を開始する(RIP処理:ラスターイメージプロセッサ処理)(S402)。
【0069】
次に、制御部22は、生成された描画データ(ラスターデータ)からページを構成する要素(オブジェクト)を取得し(S403)、シートを作成する(S404)。
【0070】
シートを作成した後、制御部22は、1シートを構成する論理ページのタイプが同一であるか否かを判定する(S405)。
【0071】
論理ページのタイプが同一である場合、シート単位で予備吐出を設定することが好適であることから、シート単位でテキストか、あるいはイメージ/グラフィックであるかを判定する(S406)。以降の処理は、
図2のS106以降の処理と同様である(S407〜S410)。
【0072】
他方、論理ページのタイプが同一でない場合、つまり、2ページのうちの1ページがテキストタイプであり、残りの1ページがイメージ/グラフィックタイプの場合には、
図8の処理に移行する。
【0073】
図8において、論理ページ毎にタイプを確認し(S501)、テキストであるか、あるいはイメージ/グラフィックであるかを判定する(S502)。テキストであれば、当該論路ページに予備吐出方式としてランダムドロップを割り付けて設定し(S503)、イメージ/グラフィックであれば当該論理ページに予備吐出方式としてラインドロップを割り付けて設定する(S504)。以上の処理を全てのページについて繰り返し実行する(S505)。
【0074】
要約すると、第3の設定処理では、まずシートを構成する論理ページのタイプが一致するか否かを確認し、一致する場合にはシート単位で予備吐出方式を設定し、一致しない場合には論理ページ単位で予備吐出方式を設定する。印刷ジョブにテキストとイメージ/グラフィックが混在し、論理ページ毎にテキストとイメージ/グラフィックが変化するような場合に、第3の設定処理は特に好適である。第3の設定処理では、シート単位で予備吐出方式が設定される場合と、論理ページ単位で予備吐出方式が設定される場合とが混在する点に留意されたい。論理ページ単位では、一例として、イメージ/グラフィックが多いページはラインドロップに設定され、テキストが多いページはランダムドロップに設定され、イメージが複数存在するページはラインドロップが設定され、ほぼ白紙のページはランダムドロップに設定される。
【0075】
図9は、S410で端末装置10に表示されるパターンの一例を示す。シートを構成する論理ページでタイプが異なるため、論理ページ単位で予備吐出方式が設定された場合である。シート100を構成する2つの論理ページのうち、一方はラインドロップ102が設定され、他方はランダムドロップ104が設定される。利用者は、この画面を視認することで、論理ページ毎に予備吐出方式が切り替わること、どのページにどのような予備吐出が行われるかを容易に確認できる。
【0076】
<第4の設定処理>
第1〜第3の設定処理では、ラインドロップを設定した場合に、さらに用紙搬送速度を用いてプレーン毎に最長噴射間隔を算出し、ノズル詰まりが生じる閾値と大小比較し、いずれかのプレーンが閾値を超えている場合には、当該プレーンのみをラインドロップからラインドロップとランダムドロップの混合に切り替えて設定しているが、CMYKの各プレーンのうち、特にKプレーンは色味に大きな影響を与え得るので、最長噴射間隔が閾値を超えるプレーンがKプレーンである場合にのみ、ラインドロップからラインドロップとランダムドロップの混合方式への切替設定を抑制し、用紙搬送速度の増大を促すアラートを表示してもよい。
【0077】
図10は、第4の設定処理のフローチャートを示す。第1の設定処理における
図3の処理フローチャートに対応するものである。
【0078】
図10において、制御部22は、当該シートにおける予備吐出の方法としてラインドロップのドロップパターンを割り付けることで設定する(S601)。
【0079】
当該シートについてラインドロップを設定した後、制御部22は、さらに、プリント部28における用紙搬送速度を取得し(S602)、用紙搬送速度を用いてCMYKの各版(プレーン)毎の最長噴射間隔を算出する(S603)。各プレーンの最長噴射間隔は、そのプレーンにおける不吐出時間を意味することになる。制御部22は、各プレーンの不吐出時間をそれぞれ閾値と大小比較し、ノズル詰まりとなる閾値を超えるか否かを判定する(S604)。
【0080】
いずれかのプレーンの不吐出時間が閾値を超える場合、制御部22は、さらに、色味優先モードが設定されているか否かを判定する(S605)。色味優先モードが設定されていない場合には、制御部22は、当該プレーンの予備吐出の方式としてラインドロップとランダムドロップの混合方式を設定する(S608)。
【0081】
色味優先モードが設定されている場合には、さらに、閾値を超えたプレーンがKブレーンであるか否かを判定する(S606)。Kプレーンでなければ、ランダムドロップによる色味への影響が相対的に少ないとして、ラインドロップとランダムドロップの混合方式とする(S608)。他方、閾値を超えたプレーンがKプレーンであれば、ランダムドロップによる色味への影響が相対的に大きいとして、S601で設定したラインドロップをそのまま維持しつつ、ノズル詰まりが発生するおそれがあることを利用者に通知すべくアラートを操作部26に表示する(S607)。このとき、用紙搬送速度、つまり印刷速度の変更フラグを設定する。その後は、
図2におけるS107以降、あるいは
図6におけるS308以降の処理、あるいは
図7におけるS408以降の処理に移行する。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0083】
例えば、本実施形態では、
図2のS105で構成要素がテキストであるか、あるいはイメージ/グラフィックであるかを判定しているが、イメージとグラフィックを纏めて、単にテキストであるかグラフィックであるかを判定してもよい。この場合、イメージはグラフィックの一部に含まれる。
【0084】
構成要素がテキストであるかグラフィックであるかを判定する際の判定基準を例示すると以下の通りである。
【0085】
<シート単位の場合>
・シート内の全てがテキストの場合はテキストとする
・シート内の全てがグラフィックの場合はグラフィックとする
・シート内の閾値以上の比率がテキストの場合はテキストとする。閾値は、50%、70%、90%等の一定値とする。
・シート内の閾値以上の比率がグラフィックの場合はグラフィックとする。閾値は、10%、30%等の一定値とする。
【0086】
<論理ページ単位の場合>
・論理ページ内の全てがテキストの場合はテキストとする
・論理ページ内の全てがグラフィックの場合はグラフィックとする
・論理ページ内の閾値以上の比率がテキストの場合はテキストとする。
・論理ページ内の閾値以上の比率がグラフィックの場合はグラフィックとする。
【0087】
これらの判定基準は適宜組み合わせて用いることができる。例えば、シート内のテキストの比率が80%と閾値以上であり、かつ、グラフィックの比率が20%と閾値以上である場合には、グラフィックの比率が閾値以上であることを優先させてグラフィックとする等である。
【0088】
これらの判定基準と、予備吐出方式の組合せをシート単位で例示すると以下の通りであるが、必ずしもこれに限定されない。
【0089】
・シート内の全てがテキストの場合はランダムドロップとする
・シート内の閾値以上の比率がテキストの場合はランダムドロップとする
・シート内の全てがグラフィックの場合はラインドロップとする
・シート内の全てがグラフィックであって全てのノズルの最長噴射間隔が閾値を超えないときにラインドロップとする
・シート内の全てがグラフィックであっていずれかのノズルの最長噴射間隔が閾値を超えるときにラインドロップとランダムドロップの混合とする
・シート内の全てがグラフィックであって黒のノズルの最長噴射間隔が閾値を超えるときにラインドロップとする
・シート内の全てがグラフィックであっていずれかのノズルの最長噴射間隔が閾値を超え、かる色味優先モードのときにラインドロップとする
・シート内の閾値以上の比率がグラフィックであっていずれかのノズルの最長噴射間隔が閾値を超えるときにラインドロップとランダムドロップの混合とする
【0090】
また、本実施形態では、構成要素がグラフィックであってラインドロップを割り付けた場合に、用紙搬送速度、つまり各ノズルの最長噴射間隔を考慮してラインドロップとするかラインドロップとランダムドロップの混合とするかを切り替えているが、用紙搬送速度が十分に大きく、ノズル詰まりが生じる可能性が少ない場合には、用紙搬送速度、つまり各ノズルの最長噴射間隔を考慮することなく、ラインドロップを割り付けて予備吐出を実行してもよい。
【0091】
また、本実施形態では、色味優先モードの場合にアラート表示し、色味優先モードでない場合にラインドロップとランダムドロップの混合としているが、色味優先モードか否か不明な場合(そのようなモード設定が存在しない場合を含む)には、ノズル詰まりの防止を優先してラインドロップとランダムドロップの混合としてもよい。
【0092】
また、本実施形態において、色味優先モードか否かを判定する際に、シート単位あるいは論理ページ単位におけるグラフィックの比率に応じて判定してもよい。すなわち、グラフィックと判定された場合でも、グラフィックの比率が相対的に小さい場合には、全体に対する色味変化の影響が少ないとして色味優先モードであってもラインドロップとランダムドロップの混合とする等である。