(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周方向補強層は、車両装着方向外側の端部からタイヤ幅方向内側に50mmの範囲の前記コードの平均の打ち込み本数に対して前記コードの平均の打ち込み本数が多い領域である補強領域を、車両装着方向内側の端部からタイヤ幅方向内側の所定の範囲に有し、
前記補強領域は、タイヤ幅方向における幅Winが、前記周方向補強層のタイヤ幅方向における幅Wに対して0.05≦(Win/W)≦0.30の範囲内である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道線に向かう方向、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道線に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0018】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。ここで、
図1に示す空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向、つまり車両装着時の方向が規定されている。また、空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向を示す装着方向表示部(図示省略)を有する。装着方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸によって構成される。例えば、ECER30(欧州経済委員会規則第30条)が、車両装着状態にて車両装着方向外側となるサイドウォール部に装着方向表示部を設けることを義務付けている。また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、長距離輸送用のトラック、バスなどの大型の車両に装着される重荷重用空気入りタイヤになっている。
【0019】
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、子午断面図で見た場合、タイヤ径方向の最も外方側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝20が複数形成されており、周方向主溝20に交差するラグ溝(図示省略)が複数形成されている。トレッド面3には、これらの複数の周方向主溝20やラグ溝によって複数の陸部10が画成されている。
【0020】
なお、この場合における周方向主溝20は、溝幅が6mm以上14mm以下の範囲内となり、溝深さが10mm以上26mm以下の範囲内となってタイヤ周方向に延びる溝になっている。また、周方向主溝20は、厳密にタイヤ周方向に延びていなくてもよく、タイヤ周方向に延びつつ、タイヤ幅方向に湾曲したり屈曲したりしていてもよい。本実施形態では、周方向主溝20はタイヤ幅方向に間隔をあけて7本が並んで形成されており、陸部10は、周方向主溝20同士の間や、タイヤ幅方向において最も外側に位置する周方向主溝20である最外周方向主溝21のタイヤ幅方向外側に形成されている。
【0021】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端は、ショルダー部4として形成されており、ショルダー部4から、タイヤ径方向内側の所定の位置までは、サイドウォール部5が配設されている。つまり、サイドウォール部5は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。
【0022】
さらに、それぞれのサイドウォール部5のタイヤ径方向内側には、ビード部40が位置しており、ビード部40は、サイドウォール部5と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されている。即ち、ビード部40は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に一対が配設されている。一対のビード部40のそれぞれにはビードコア41が設けられており、それぞれのビードコア41のタイヤ径方向外側にはビードフィラー45が設けられている。ビードコア41は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより環状構造となって形成されている。ビードフィラー45は、後述するカーカス6のタイヤ幅方向端部がビードコア41の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
【0023】
トレッド部2のタイヤ径方向内側には、複数のベルトプライ76を備えるベルト層7が設けられている。ベルト層7は、複数のベルトプライ76を積層した多層構造をなし、各ベルトプライ76は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。また、複数のベルトプライ76は、タイヤ周方向に対するベルトコードのタイヤ幅方向の傾斜角として定義されるベルト角度が互いに異なっており、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。
【0024】
このベルト層7のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部5のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス6が連続して設けられている。このカーカス6は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア41間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス6は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部40のうち、一方のビード部40から他方のビード部40にかけて配設されており、ビードコア41及びビードフィラー45を包み込むようにビード部40でビードコア41に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。このように配設されるカーカス6のカーカスプライは、スチール材、或いは有機繊維材(例えば、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。カーカス6は、タイヤ周方向に対するカーカスコードのタイヤ幅方向の傾斜角度であるカーカス角度が、絶対値で85°以上95°以下となって形成されている。
【0025】
また、カーカス6の内側、或いは、当該カーカス6の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ8がカーカス6に沿って形成されている。
【0026】
図2は、
図1に示すベルト層の説明図である。ベルト層7は、ベルトプライ76として高角度ベルト71と、内側交差ベルト72と、外側交差ベルト73と、ベルトカバー74と、周方向補強層75とを有しており、これらをタイヤ径方向に積層することによって構成されている。このうち、高角度ベルト71は、スチール、或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するベルトコードのタイヤ幅方向の傾斜角であるベルト角度が、絶対値で45°以上70°以下のベルト角度になっている。また、高角度ベルト71は、カーカス6のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
【0027】
また、内側交差ベルト72と外側交差ベルト73とは、共にコートゴムで被覆されたスチール或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードを圧延加工して構成され、絶対値で10°以上45°以下のベルト角度を有している。また、内側交差ベルト72と外側交差ベルト73とは、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向へのベルトコードの傾斜方向が、互いに反対方向になっている。このため、内側交差ベルト72と外側交差ベルト73とは、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造になっており、ベルトコードの傾斜方向が相互に交差する一対の交差ベルトとして設けられている。これらのように一対の交差ベルトとして設けられる内側交差ベルト72と外側交差ベルト73とは、共に高角度ベルト71のタイヤ径方向外側に位置しており、内側交差ベルト72のタイヤ径方向外側に、外側交差ベルト73が位置している。なお、本実施形態では、交差ベルトとして内側交差ベルト72と外側交差ベルト73との2枚が用いられているが、交差ベルトは3枚以上が積層されていてもよい。
【0028】
また、ベルトカバー74は、スチール或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10°以上45°以下のベルト角度を有している。また、ベルトカバー74は、内側交差ベルト72及び外側交差ベルト73のタイヤ径方向外側に積層されて配置されており、具体的には、外側交差ベルト73のタイヤ径方向外側に配置されている。なお、本実施形態では、ベルト角度が外側交差ベルト73のベルト角度と同一のベルト角度になっており、ベルト層7における最外層に配置されている。
【0029】
周方向補強層75は、コートゴムで被覆されたスチール製のベルトコードであり、周方向補強層75を構成するコードである周方向補強層コード30をタイヤ周方向に対してタイヤ幅方向に±5°の範囲内で傾斜させつつ、螺旋状に巻き廻わして構成されている。このため、周方向補強層75は、空気入りタイヤ1の子午断面においては、またはタイヤ周方向における所定の範囲においては、周方向補強層コード30がタイヤ幅方向に並んで配設されている。また、周方向補強層75は、本実施形態ではタイヤ径方向における内側交差ベルト72と外側交差ベルト73との間に配設され、内側交差ベルト72と外側交差ベルト73とに挟み込まれて配置されている。
【0030】
また、周方向補強層75は、内側交差ベルト72や外側交差ベルト73よりもタイヤ幅方向における幅が狭くなっており、内側交差ベルト72や外側交差ベルト73のタイヤ幅方向における端部よりも、タイヤ幅方向内側に配置されている。内側交差ベルト72や外側交差ベルト73よりもタイヤ幅方向における幅が狭い周方向補強層75は、タイヤ幅方向における幅Wが、トレッド展開幅Tに対して0.7≦(W/T)≦0.8の範囲内になっている(
図1参照)。つまり、周方向補強層75は、タイヤ幅方向における幅Wがトレッド展開幅Tに対して0.7倍以上0.8倍以下の範囲内となって形成されている。この場合におけるトレッド展開幅Tは、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みして規定内圧で空気入りタイヤ1内に空気を充填し、荷重を加えない無負荷状態のときの、トレッド部2の展開図におけるタイヤ幅方向の両端の直線距離をいう。
【0031】
なお、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。
【0032】
これらのように構成される周方向補強層75は、1本、或いは複数本の周方向補強層コード30が内側交差ベルト72の外周に螺旋状に巻き廻されることによって、周方向補強層75は形成されている。この周方向補強層75がタイヤ周方向の剛性を補強することにより、空気入りタイヤ1の耐久性能を向上させることが可能になっている。
【0033】
周方向補強層75のタイヤ幅方向外側には、ゴム材料からなるベルトエッジクッション15が配設されている(
図1参照)。ベルトエッジクッション15は、周方向補強層75よりもタイヤ幅方向外側の位置で内側交差ベルト72と外側交差ベルト73との間に配設されており、内側交差ベルト72と外側交差ベルト73とに挟み込まれている。また、ベルトエッジクッション15は、周方向補強層75におけるタイヤ幅方向の端部付近から、内側交差ベルト72や外側交差ベルト73のタイヤ幅方向における端部の位置まで延在して設けられている。
【0034】
また、ベルト層7のタイヤ幅方向における端部付近とカーカス6との間には、ベルトクッション16が配設されている(
図1参照)。詳しくは、ベルトクッション16は、内側交差ベルト72及び高角度ベルト71のタイヤ幅方向における端部付近とカーカス6との間に挟み込まれて配設されており、これらの端部のタイヤ幅方向内側の位置からタイヤ幅方向外側の位置にかけて、カーカス6に沿って配設されている。即ち、ベルトクッション16は、トレッド部2のタイヤ幅方向における両端付近の位置から、サイドウォール部5のタイヤ径方向における外端付近の位置にかけて配設されている。
【0035】
図3は、
図1のA部詳細図である。
図4は、
図3のB部詳細図である。空気入りタイヤ1のタイヤ周方向の剛性を補強する機能を有する周方向補強層75は、タイヤ幅方向における周方向補強層コード30の本数である打ち込み本数が、タイヤ赤道面CLを基準とする車両装着方向外側よりも車両装着方向内側の方が多くなっている。つまり、周方向補強層75は、周方向補強層コード30がタイヤ幅方向に並んで配設されているが、タイヤ幅方向における所定の幅あたりの周方向補強層コード30の平均の本数が、車両装着方向外側よりも車両装着方向内側の方が多くなっている。具体的には、周方向補強層75は、車両装着方向内側の周方向補強層コード30のタイヤ幅方向における所定の幅あたりの打ち込み本数の平均値Ninと車両装着方向外側の周方向補強層コード30の所定の幅あたりの打ち込み本数の平均値Noutとの関係が、1.015≦(Nin/Nout)≦1.170の範囲内になっている。例えば、タイヤ幅方向における50mmあたりの周方向補強層コード30の打ち込み本数が、車両装着方向外側の平均値Noutに対して車両装着方向内側の平均値Ninは、1.015≦(Nin/Nout)≦1.170の範囲内になっている。なお、好ましくは、車両装着方向内側の周方向補強層コード30の打ち込み本数の平均値Ninと車両装着方向外側の周方向補強層コード30の打ち込み本数の平均値Noutとの関係は、1.030≦(Nin/Nout)≦1.095の範囲内であるのが、より好ましい。
【0036】
周方向補強層75は、詳しくは、周方向補強層75のタイヤ幅方向における他の領域と比較して周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数が多い領域である補強領域35を、車両装着方向内側の端部からタイヤ幅方向内側の所定の範囲に有している。補強領域35は、例えば、車両装着方向外側の端部からタイヤ幅方向内側に50mmの範囲の領域である外側領域36における周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数に対して、周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数が多くなっている。即ち、補強領域35では、タイヤ幅方向において隣り合う周方向補強層コード30同士の間隔が、外側領域36での周方向補強層コード30同士の間隔よりも狭くなることにより、周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数が、外側領域36での周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数よりも多くなっている。
【0037】
なお、補強領域35は、定義としては周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数が、外側領域36の周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数よりも多い領域であるが、補強領域35の周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数は、外側領域36以外の領域の周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数よりも多くなっている。つまり、補強領域35は、周方向補強層75における補強領域35と外側領域36との間に位置する領域である中央領域37の周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数よりも、周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数が多くなっている。換言すると、補強領域35は、周方向補強層75における補強領域35以外の領域の周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数よりも、周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数が多くなっている。
【0038】
周方向補強層75にこのように設けられる補強領域35は、タイヤ幅方向における幅Winが、周方向補強層75のタイヤ幅方向における幅Wに対して、0.05≦(Win/W)≦0.30の範囲内になっている。つまり、補強領域35は、タイヤ幅方向における幅Winが、周方向補強層75のタイヤ幅方向における幅Wに対して、0.05倍以上0.30倍以下の範囲内となる幅で形成されている。なお、好ましくは、補強領域35のタイヤ幅方向における幅Winは、周方向補強層75のタイヤ幅方向における幅Wに対して、0.10≦(Win/W)≦0.20の範囲内であるのが好ましい。具体的には、補強領域35のタイヤ幅方向における幅Winは、30mm以上60mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0039】
本実施形態では、補強領域35は、最外周方向主溝21のタイヤ幅方向内側に隣接する陸部10のタイヤ径方向内側に設けられている。なお、補強領域35は、これ以外の領域に設けられていてもよく、例えば、最外周方向主溝21のタイヤ幅方向内側に隣接する陸部10のタイヤ径方向内側と、さらに当該陸部10のタイヤ幅方向内側に隣接する周方向主溝20を介して当該陸部10と隣り合う陸部10のタイヤ径方向内側とに亘って設けられていてもよい。
【0040】
周方向補強層75において、これらのように構成される補強領域35を有する車両装着方向内側の領域におけるタイヤ幅方向50mmあたりの周方向補強層コード30の打ち込み本数、即ち、車両装着方向内側の周方向補強層コード30の打ち込み本数の平均値Ninは、20本以上25本以下の範囲内になっている。つまり、周方向補強層75における、補強領域35を含めた車両装着方向内側の領域全体の周方向補強層コード30の平均の打ち込み本数Ninは、20[本/50mm]以上25[本/50mm]以下の範囲内になっている。
【0041】
図5は、周方向補強層コードの断面図である。周方向補強層75が有する周方向補強層コード30は、複数の線材31を撚り合せたものを複数撚り合せたコードになっており、即ち、m本の線材31を撚り合せた素線32をn本撚り合せる、m×nタイプのコードになっている。本実施形態では、スチール材からなる7本の線材31を撚り合せた素線32を3本撚り合せることにより、1本の周方向補強層コード30をスチールコードとして構成している。また、周方向補強層コード30は、高伸長特性を有するコードである、いわゆるハイエロンゲーションコードになっている。なお、線材31は、2本以上12本以下の範囲内の本数が用いられるのが好ましく、素線32は、2本以上5本以下の範囲内の本数が用いられるのが好ましい。
【0042】
図6は、周方向補強層コードの応力−ひずみ曲線についての説明図である。また、周方向補強層75が有する周方向補強層コード30は、空気入りタイヤ1の加硫前における周方向補強層コード30の応力−ひずみ曲線である加硫前曲線50において、ひずみが2.0%以上の位置に変曲点51が位置する。つまり、周方向補強層コード30は、空気入りタイヤ1を加硫する前における引張り荷重と伸びとの関係を示す加硫前曲線50での、引張り荷重の変化に対する伸びの変化の度合いが、伸びが約2.0%未満の時の変化の度合いと、約2.0%以上の時の変化の度合いとで異なっている。加硫前曲線50では、このように周方向補強層コード30に引張り荷重を付与した際における周方向補強層コード30の全長に対する周方向補強層コード30の伸びが2.0%以上の位置に、引張り荷重の変化に対する伸びの変化の度合いが変化する変曲点51が位置している。換言すると、加硫前曲線50では、周方向補強層コード30に発生する応力に対するひずみの変曲点51は、ひずみが2.0%以上となる位置になっている。
【0043】
また、周方向補強層コード30は、空気入りタイヤ1の加硫後に空気入りタイヤ1の中から取り出した周方向補強層コード30の1.0%ひずみ時の引張り弾性率が、30GPa以上になっている。つまり、空気入りタイヤ1の加硫後は、
図6において加硫後の周方向補強層コード30の応力−ひずみ曲線である加硫後曲線55と、加硫前曲線50とで示すように、加硫前と比較して応力に対するひずみが小さくなる。周方向補強層75は、このような特性を有するスチールコードからなる周方向補強層コード30により形成されている。
【0044】
これらのように構成され、重荷重用空気入りタイヤとして用いられる本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、呼び幅が355mm以上、扁平率が55%以下、規定リムのリム径が17.5インチ以上で用いられるのが好ましい。また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、車両に装着する際に、2つの車輪を車幅方向に重ねて装着する、いわゆるダブル装着として用いるのではなく、車両の1箇所に1つの車輪を用いる、いわゆるシングル装着方式を採用する重荷重用空気入りタイヤに適用されるのが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、リムホイールにリム組みしてインフレートした状態で車両に装着する。空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両は、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。
【0046】
車両の走行時は、空気入りタイヤ1は回転をするため、空気入りタイヤ1には、タイヤ回転軸を中心とする遠心力が発生する。この遠心力は、タガ効果を発揮することによってトレッド部2の補強を行って剛性を確保したりカーカス6やトレッド部2を支持してタイヤ全体の形状を整えたりするベルト層7にも発生するが、ベルト層7は、高角度ベルト71や内側交差ベルト72、外側交差ベルト73のみでなく、周方向補強層75も有している。このため、ベルト層7は、タイヤ周方向への張力に対する強度が高くなっている。つまり、ベルト層7が有する周方向補強層75は、周方向補強層75を構成する周方向補強層コード30がタイヤ周方向に対してタイヤ幅方向に±5°の範囲内で配設されているため、タイヤ周方向に伸び難くなっており、タイヤ周方向への張力に対する剛性が確保されている。これにより、空気入りタイヤ1が回転することによってベルト層7に遠心力が発生した場合でも、タイヤ周方向の張力に対する周方向補強層75の剛性により、ベルト層7はタイヤ周方向に伸び難くなっている。
【0047】
ベルト層7は、このように周方向補強層75を有することにより、基本的にはタイヤ周方向に伸び難くなっているものの、車輪の回転時の遠心力によって僅かに伸びることもある。特に、空気入りタイヤ1を新品の状態で使用を開始してから、部材が初期伸びまで伸びたりするまでの時間が経過することにより各部材の状態が落ち着くまでは、比較的伸びが発生し易くなっている。つまり、ベルト層7は、周方向補強層75を有することによりタイヤ周方向に伸び難くなっているものの、一方で、空気入りタイヤ1を新品で使用し始めてから所定の期間が経過するまでは、タイヤ周方向に伸びることによって、径が僅かに大きくなり易くなっている。このベルト層7は、カーカス6やトレッド部2を支持してタイヤ全体の形状を整える役割も担っているため、ベルト層7に伸びが発生して径が大きくなった場合、ベルト層7に合わせてトレッド部2も径が大きくなる。即ち、ベルト層7の径が大きくなって径成長が発生した場合には、トレッド部2も径が大きくなって径成長が発生する。
【0048】
ここで、大型の車両に装着される車輪は、キャンバー角がポジティブキャンバーに設定されるものが多いため、トレッド面3における路面に対する接地圧は、車両装着方向における外側寄りの位置と内側寄りの位置とで異なっている。具体的には、車両装着方向内側のショルダー部4付近の接地圧は、車両装着方向外側のショルダー部4付近の接地圧よりも低くなり易くなっている。接地圧が高い領域は、その部分では遠心力が抑えられるため、トレッド部2やベルト層7の径成長も、遠心力が抑えられた分、抑えられる。
【0049】
このため、新品の空気入りタイヤ1の使用を開始した後の、車両装着方向外側のショルダー部4付近のトレッド部2やベルト層7の径成長は、車両装着方向内側のショルダー部4付近の径成長よりも小さくなり易くなる。つまり、車両装着方向内側のショルダー部4付近のトレッド部2やベルト層7の径成長は、車両装着方向外側のショルダー部4付近のトレッド部2やベルト層7の径成長と比較して大きくなり易くなっている。このように、車両装着方向内側のショルダー部4付近の径成長が大きくなった場合、車両装着方向内側のショルダー部4は、車両装着方向外側のショルダー部4よりも摩耗し易くなり、偏摩耗が発生する。
【0050】
これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、周方向補強層75は、車両装着方向外側よりも車両装着方向内側の方が周方向補強層コード30の打ち込み本数が多くなっている。つまり、周方向補強層75は、車両装着方向外側よりも車両装着方向内側の方が、周方向補強層コード30の密度が高くなっているため、タイヤ周方向の張力に対する剛性が高くなっている。このため、ベルト層7は、車両装着方向内側のタイヤ周方向の剛性が高くなるため、ベルト層7やトレッド部2の車両装着方向内側の部分が、車両装着方向外側の部分と比較して径成長することを抑制することができる。これにより、車両装着方向内側のショルダー部4が車両装着方向外側のショルダー部4と比較して摩耗することを抑制することができる。この結果、車両装着方向内側の偏摩耗を抑制することができる。
【0051】
また、周方向補強層75は、車両装着方向内側の周方向補強層コード30の打ち込み本数の平均値Ninと車両装着方向外側の周方向補強層コード30の打ち込み本数の平均値Noutとの関係が、1.015≦(Nin/Nout)≦1.170の範囲内であるため、車両装着方向内側以外の領域で偏摩耗が発生することを抑えつつ、車両装着方向内側の偏摩耗を抑制することができる。つまり、(Nin/Nout)<1.015である場合は、周方向補強層75における車両装着方向外側の周方向補強層コード30の打ち込み本数に対する車両装着方向内側の周方向補強層コード30の打ち込み本数の増加分が少ないため、周方向補強層75の車両装着方向内側の部分におけるタイヤ周方向の剛性を確保し難くなる可能性がある。この場合、ベルト層7やトレッド部2の車両装着方向内側の部分の径成長を適切に抑えるのが困難になり、車両装着方向内側のショルダー部4の摩耗を抑え難くなる可能性がある。また、(Nin/Nout)>1.170である場合は、周方向補強層75における車両装着方向外側の周方向補強層コード30の打ち込み本数に対する車両装着方向内側の周方向補強層コード30の打ち込み本数の増加分が多過ぎるため、周方向補強層75の車両装着方向内側の部分におけるタイヤ周方向の剛性が、必要以上に高くなる可能性がある。この場合、ベルト層7やトレッド部2の車両装着方向内側の部分の径成長を抑えるのみでなく、車両装着方向外側の部分に対してタイヤ赤道面CLの周囲の領域であるセンター部の径成長が不必要に抑えられる可能性があり、これによりセンター部で偏摩耗が発生する可能性がある。
【0052】
これに対し、NinとNoutとの関係が1.015≦(Nin/Nout)≦1.170の範囲内である場合は、センター部での径成長が不必要に抑えられることに起因して偏摩耗が発生することを抑制しつつ、車両装着方向外側のショルダー部4と比較して車両装着方向内側のショルダー部4が摩耗することを抑えることができる。この結果、センター部の偏摩耗を抑えつつ、車両装着方向内側の偏摩耗を抑制することができる。
【0053】
また、周方向補強層75は、車両装着方向内側に位置する補強領域35のタイヤ幅方向における幅Winが、周方向補強層75のタイヤ幅方向における幅Wに対して0.05≦(Win/W)≦0.30の範囲内であるため、車両装着方向内側以外の領域で偏摩耗が発生することを抑えつつ、車両装着方向内側の偏摩耗を抑制することができる。つまり、(Win/W)<0.05である場合は、補強領域35の幅Winが小さ過ぎるため、周方向補強層75の車両装着方向内側の部分におけるタイヤ周方向の剛性を確保し難くなる可能性がある。この場合、ベルト層7やトレッド部2の車両装着方向内側の部分の径成長を適切に抑え難くなるため、車両装着方向内側のショルダー部4の摩耗を抑え難くなる可能性がある。また、(Win/W)>0.30である場合は、補強領域35の幅Winが大き過ぎるため、周方向補強層75の車両装着方向内側の部分におけるタイヤ周方向の剛性が必要以上に高くなる可能性がある。この場合、ベルト層7やトレッド部2の車両装着方向内側の部分のみでなく、センター部の径成長が不必要に抑えられ、センター部で偏摩耗が発生する可能性がある。
【0054】
これに対し、周方向補強層75の補強領域35の幅Winが、周方向補強層75の幅Wに対して0.05≦(Win/W)≦0.30の範囲内である場合は、センター部で偏摩耗が発生することを抑制しつつ、車両装着方向外側のショルダー部4と比較して車両装着方向内側のショルダー部4が摩耗することを抑えることができる。この結果、センター部の偏摩耗を抑えつつ、車両装着方向内側の偏摩耗を抑制することができる。
【0055】
また、周方向補強層75は、タイヤ幅方向における幅Wがトレッド展開幅Tに対して0.7≦(W/T)≦0.8の範囲内であるため、空気入りタイヤ1の径成長をより確実に抑制することができ、また、周方向補強層75の耐久性を確保することができる。つまり、(W/T)<0.7である場合は、トレッド展開幅Tに対して周方向補強層75の幅Wが狭過ぎるため、ベルト層7の径成長を周方向補強層75によって効果的に抑えるのが困難になる可能性がある。この場合、空気入りタイヤ1に遠心力が作用した場合における空気入りタイヤ1全体の径成長をベルト層7によって抑えるのが困難になるため、トレッド部2等が遠心力によって変形し易くなり、耐久性が低下する可能性がある。また、(W/T)>0.8である場合は、トレッド展開幅Tに対して周方向補強層75の幅Wが広過ぎるため、周方向補強層75のタイヤ幅方向における端部が、トレッド部2のショルダー部4に近くなり過ぎる可能性がある。トレッド部2におけるショルダー部4付近は、車両の走行時における変形が大きいため、周方向補強層75の端部の位置がショルダー部4に近くなり過ぎた場合、トレッド部2のショルダー部4付近が大きく変形することに伴って周方向補強層75も変形し、周方向補強層コード30が折れる可能性がある。
【0056】
これに対し、周方向補強層75のタイヤ幅方向における幅Wが、トレッド展開幅Tに対して0.7≦(W/T)≦0.8の範囲内である場合は、周方向補強層75の耐久性を確保しつつ、周方向補強層75によって空気入りタイヤ1全体の径成長を抑えることができる。この結果、空気入りタイヤ1の耐久性を向上させることができる。
【0057】
また、周方向補強層75は、車両装着方向内側の領域におけるタイヤ幅方向50mmあたりの周方向補強層コード30の打ち込み本数が20本以上25本以下の範囲内であるため、周方向補強層75の耐久性を確保しつつ、周方向補強層75の車両装着方向内側の領域の径成長を、より確実に抑制することができる。つまり、周方向補強層75の車両装着方向内側の領域における周方向補強層コード30の打ち込み本数が20本/50mm未満である場合には、周方向補強層75における車両装着方向内側の領域の径成長を効果的に抑制することが困難になる可能性がある。この場合、車両装着方向内側のショルダー部4が車両装着方向外側のショルダー部4と比較して摩耗し易くなることを抑制し難くなったり、トレッド部2が径成長することによって耐久性が低下したりする可能性がある。また、周方向補強層75の車両装着方向内側の領域における周方向補強層コード30の打ち込み本数が25本/50mmより多い場合には、周方向補強層コード30の密度が高過ぎて周方向補強層コード30同士が接触し易くなり、コード切れが発生する可能性がある。
【0058】
これに対し、周方向補強層75の車両装着方向内側における周方向補強層コード30の打ち込み本数を20本以上25本以下の範囲内にした場合には、周方向補強層コード30のコード切れを発生させることなく、周方向補強層75における車両装着方向内側の領域の径成長をより確実に抑制することができる。この結果、周方向補強層75の耐久性を確保しつつ、車両装着方向内側の偏摩耗を、より確実に抑制することができる。
【0059】
また、周方向補強層75が有する周方向補強層コード30は、複数の線材31を撚り合せた素線32を複数撚り合せた高伸長特性を有するコードであるため、周方向補強層75のタイヤ周方向の剛性は確保しつつ、適切な範囲でタイヤ周方向に伸びることにより、空気入りタイヤ1の製造のし易さを確保することができる。この結果、より確実に、且つ、容易に、車両装着方向内側の偏摩耗を抑制することができる。
【0060】
また、周方向補強層75が有する周方向補強層コード30は、空気入りタイヤ1の加硫前の応力−ひずみ曲線においてひずみが2.0%以上の位置に変曲点51が位置し、且つ、加硫後の1.0%ひずみ時の引張り弾性率が30GPa以上であるスチールコードであるため、加硫時の周方向補強層75の膨径のし易さと、加硫後の径成長のし難さを両立することができる。つまり、周方向補強層75は、周方向補強層コード30の応力とひずみとの関係を加硫前曲線50で示した際に、ひずみが2.0%未満の位置に変曲点51が位置する場合は、空気入りタイヤ1の加硫時に金型内で膨径させる際に、膨径に追従し難くなり、製造性が低下する可能性がある。また、周方向補強層75は、空気入りタイヤ1の加硫後に、空気入りタイヤ1の中から取り出した周方向補強層コード30の1.0%ひずみ時の引張り弾性率が30GPa未満である場合には、周方向補強層コード30の引張り強度が不足し、周方向補強層75のタイヤ周方向の適切な剛性を確保するのが困難になる可能性がある。この場合、ベルト層7の径成長を周方向補強層75で抑制するのが困難になり、空気入りタイヤ1全体の径成長を適切に抑えるのが困難になる可能性がある。
【0061】
これに対し、周方向補強層75の周方向補強層コード30が、加硫前曲線50でひずみが2.0%以上の位置に変曲点51が位置し、且つ、加硫後の1.0%ひずみ時の引張り弾性率が30GPa以上である場合は、加硫時における周方向補強層75の膨径のし易さと、加硫後の径成長のし難さを両立することができる。この結果、より確実に、空気入りタイヤ1の製造性を確保しつつ、耐久性を確保することができる。
【0062】
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、周方向補強層75の補強領域35は、車両装着方向内側の端部から所定の範囲に設けられているが、補強領域35は、より広い範囲に設けられていてもよい。
図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、補強領域が車両装着方向内側全体に設けられる場合の説明図である。周方向補強層75の補強領域35は、例えば、
図7に示すように、周方向補強層75においてタイヤ赤道面CLよりも車両装置方向内側に位置する領域である車両装着内側領域38全体に設けられていてもよい。補強領域35を、車両装着内側領域38全体に設けた場合でも、周方向補強層75は、タイヤ赤道面CLより車両装着方向外側に位置する領域よりも、車両装着方向内側に位置する領域の周方向補強層75のタイヤ周方向における剛性を確保することができる。これにより、ベルト層7やトレッド部2の車両装着方向内側の部分が、車両装着方向外側の部分と比較して径成長することを抑制でき、車両装着方向内側のショルダー部4が車両装着方向外側のショルダー部4と比較して摩耗することを抑制することができる。この結果、車両装着方向内側の偏摩耗を抑制することができる。
【0063】
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ベルト層7がエッジカバーを有してもよい(図示省略)。一般に、エッジカバーは、スチール或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向へのベルトコードの傾斜角度であるベルト角度が、絶対値で0°以上5°以下になる。また、エッジカバーは、外側交差ベルト73、或いは内側交差ベルト72のタイヤ幅方向における端部のタイヤ径方向外側にそれぞれ配置される。エッジカバーは、ベルト層7のタガ効果を高めることができるため、トレッド部2におけるセンター部付近の領域とショルダー部4付近の領域との径成長差を緩和することができ、耐偏摩耗性を向上させることができる。
【0064】
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1は、周方向補強層75は内側交差ベルト72と外側交差ベルト73との間に挟み込まれているが、周方向補強層75は、これ以外の位置に配設されていてもよい。周方向補強層75は、例えば、内側交差ベルト72のタイヤ径方向内側に配設されていてもよく、または、外側交差ベルト73のタイヤ径方向外側に配設されていてもよい。周方向補強層75が内側交差ベルト72のタイヤ径方向内側に配設される場合は、内側交差ベルト72と高角度ベルト71との間に配設されてもよく、高角度ベルト71とカーカス6との間に配設されてもよい。周方向補強層75は、配設される位置に関わらず、周方向補強層コード30の打ち込み本数がタイヤ赤道面CLを基準とする車両装着方向外側よりも車両装着方向内側の方が多くなって形成されていればよい。これにより、周方向補強層75は、トレッド部2の車両装着方向内側の径成長を抑えることができ、車両装着方向内側のショルダー部4の摩耗量が車両装着方向外側のショルダー部4の摩耗量と比較して多くなり、偏摩耗が発生することを抑制することができる。
【0065】
〔実施例〕
図8A〜
図8Cは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、ショルダー摩耗についての試験を行った。
【0066】
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが445/50R22.5サイズの空気入りタイヤ1を22.5×14.00サイズのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みし、空気圧をJATMAで規定される最大空気圧(830kPa)に調整し、2軸トレーラーの試験車両に装着してJATMAで規定される最大荷重を加えた状態でテスト走行をすることにより行った。
【0067】
ショルダー摩耗についての評価方法は、試験車両で10万km走行した後の車両装着方向外側のショルダー部4の摩耗に対する車両装着方向内側のショルダー部4の摩耗の度合いを測定することにより行った。ショルダー摩耗の評価は、後述する従来例の空気入りタイヤ1における、車両装着方向外側のショルダー部4の摩耗に対する車両装着方向内側のショルダー部4の摩耗の度合いを100とする指数を算出することにより評価した。数値が大きいほどショルダー摩耗について優れていることを示しており、具体的には、評価結果の数値が大きいほど、車両装着方向外側のショルダー部4の摩耗と車両装着方向内側のショルダー部4の摩耗との差が小さいことを示している。
【0068】
評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例
2〜
5、7〜20
と、参考例1、6との21種類の空気入りタイヤ1について行った。これらの空気入りタイヤ1は、全て周方向補強層75が設けられている。このうち、従来例の空気入りタイヤは、周方向補強層75に補強領域35が設けられていない。これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例
2〜
5、7〜20は、全て周方向補強層75に補強領域35が設けられている。さらに、実施例
2〜
5、7〜20に係る空気入りタイヤ1は、車両装着方向外側の周方向補強層コード30の打ち込み本数の平均値Noutに対する車両装着方向内側の周方向補強層コード30の打ち込み本数の平均値Nin、周方向補強層75の幅Wに対する補強領域35の幅Win、トレッド展開幅Tに対する周方向補強層75の幅W、車両装着方向内側の周方向補強層コード30の打ち込み本数の平均値Ninが、それぞれ異なっている。
【0069】
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、
図8A〜
図8Cに示すように、実施例
2〜
5、7〜20に係る空気入りタイヤ1は、従来例に対して、車両装着方向外側のショルダー部4の摩耗と車両装着方向内側のショルダー部4の摩耗との差が小さくなることが分かった。つまり、実施例
2〜
5、7〜20に係る空気入りタイヤ1は、車両装着方向内側の偏摩耗を抑制することができる。