特許第6805563号(P6805563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805563
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】蓄電装置用外装材
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20201214BHJP
   B32B 15/085 20060101ALI20201214BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20201214BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20201214BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   B32B15/085 A
   B32B27/32 Z
   H01G11/78
   B65D65/40 D
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-118944(P2016-118944)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-224485(P2017-224485A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】今元 惇哉
(72)【発明者】
【氏名】荻原 悠
(72)【発明者】
【氏名】鈴田 昌由
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−222555(JP,A)
【文献】 特開平11−007921(JP,A)
【文献】 特開平11−086808(JP,A)
【文献】 特開2015−144122(JP,A)
【文献】 特開2017−076510(JP,A)
【文献】 特開2007−211184(JP,A)
【文献】 特開2010−234794(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/152397(WO,A1)
【文献】 特開2015−35325(JP,A)
【文献】 特開2008−277274(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/050182(WO,A1)
【文献】 特開2007−76127(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/175364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
B32B 15/085
B32B 27/32
B65D 65/40
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層、第1の接着剤層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、
前記シーラント層は、ポリオレフィンを含む樹脂組成物により形成された層であり、
前記シーラント層は、100〜120℃の温度範囲において少なくとも一つの結晶化温度ピークを有し、
前記樹脂組成物は、前記樹脂組成物の質量を基準として結晶核剤を0.005〜10質量%含み、
前記シーラント層が複数の層からなり、そのうちの前記金属箔層から最も近い層が、酸変性ポリプロピレンと、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体と、を含む、蓄電装置用外装材。
【請求項2】
少なくとも基材層、第1の接着剤層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、
前記シーラント層は、ポリオレフィンを含む樹脂組成物により形成された層であり、
前記シーラント層は、100〜120℃の温度範囲において少なくとも一つの結晶化温度ピークを有し、
前記シーラント層は、耐衝撃改質剤を含む、蓄電装置用外装材。
【請求項3】
前記耐衝撃改質剤は、プロピレン−エチレンランダム共重合体に相溶するエラストマーであるプロピレン−ブテン−1ランダム共重合体、及び、プロピレン−エチレンランダム共重合体に非相溶のエラストマーであるエチレン−ブテン−1ランダム共重合体を含む、請求項2記載の蓄電装置用外装材。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、前記樹脂組成物の質量を基準として結晶核剤を0.005〜10質量%含む、請求項2又は3記載の蓄電装置用外装材。
【請求項5】
前記シーラント層が複数の層からなり、そのうちの前記金属箔層から最も近い層が、酸変性ポリプロピレンと、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体と、を含む、請求項4記載の蓄電装置用外装材。
【請求項6】
前記シーラント層が複数の層からなり、そのうちの少なくとも一つの層が、前記結晶核剤を含む前記樹脂組成物により形成された層である、請求項1又は4記載の蓄電装置用外装材。
【請求項7】
前記シーラント層が複数の層からなり、そのうちの前記金属箔層から最も遠い層が、前記結晶核剤を含む前記樹脂組成物により形成された層である、請求項1又は4記載の蓄電装置用外装材。
【請求項8】
前記シーラント層が有する全ての結晶化温度ピークが120℃以下である、請求項1〜7のいずれか一項記載の蓄電装置用外装材。
【請求項9】
前記シーラント層の主成分が、プロピレン−エチレンランダム共重合体である、請求項1〜のいずれか一項記載の蓄電装置用外装材。
【請求項10】
前記金属箔層と前記シーラント層との間に第2の接着剤層を備え、
前記第2の接着剤層は、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、及び、オキサゾリン基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも一種の硬化剤と、を含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の蓄電装置用外装材。
【請求項11】
前記腐食防止処理層は、酸化セリウムと、前記酸化セリウム100質量部に対して1〜100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の蓄電装置用外装材。
【請求項12】
前記腐食防止処理層は、前記金属箔層に化成処理を施して形成されたものである、又は、前記金属箔層に化成処理を施して形成され、且つ、カチオン性ポリマーを含むものである、請求項1〜11のいずれか一項記載の蓄電装置用外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置用外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置としては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電装置のさらなる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。
【0003】
リチウムイオン電池に用いられる外装材としては、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルム(例えば、基材層/金属箔層/シーラント層のような構成)が用いられるようになっている。
【0004】
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池では、内部への水分の浸入を防止するため、金属箔層としてアルミニウム箔層を含む外装材により電池内容物を覆う構成が採用されている。このような構成を採用したリチウムイオン電池は、アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池と呼ばれている。リチウムイオン電池の電池内容物には、正極、負極及びセパレータとともに、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルなどの浸透力を有する非プロトン性の溶媒に、電解質としてリチウム塩を溶解した電解液、もしくはその電解液を含浸させたポリマーゲルからなる電解質層が含まれる。
【0005】
アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止したエンボスタイプのリチウムイオン電池が知られている。このようなリチウムイオン電池を構成する外装材には、ヒートシールによって安定した密封性を示すとともに、電池内容物の電解液によりアルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度の低下が生じにくいことが求められている。
【0006】
また、蓄電装置の小型化に伴い、蓄電装置用外装材の基材層、金属箔層及びシーラント層の薄膜化が進んでいるところ、ここではシーラント層が薄膜化されることによる絶縁性の低下が問題となっている。
【0007】
絶縁性の低下は種々の現象によって引き起こされ得る。例えば、ヒートシール等の熱の影響によるタブリードと金属箔層の接触、成型・折り曲げ等によるシーラント層へのクラックの発生、ヒートシールに時に本来融着すべきではない部分が融着してしまうこと(以下「過着」と呼ぶ。)、デガッシングヒートシールによるシーラント層の破壊、が挙げられる。
【0008】
そこで、例えば特許文献1には、絶縁性を改善させ、更に安定した密封性、耐熱性及び成形性を示す外装材として、融点150℃以上の高融点ポリプロピレン層とプロピレン−エチレンランダムコポリマ層とからなるヒートシール層(シーラント層)を備えた外装材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−273398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載されたような従来の外装材では、タブリードと金属箔層が接触したり、折り曲げ等によってシーラント層へクラックが発生したりすることによる絶縁性の低下への対策がなされている。しかしながら、本発明者らのこれまでの検証により絶縁性の改善に対して最も対策が重要であると考える、過着やデガッシングヒートシールによるシーラント層の破壊に対する検討はなされていない。
【0011】
過着による絶縁性の低下は、過着部が不均一な結晶状態となっているため応力が掛かったときにクラックが形成されることに起因していると本発明者らは推察している。また、デガッシングヒートシールでは、前述した電解液を噛み込みながらヒートシールするため、電解液が発泡し、シーラント層が破壊されることに起因していると推察される。これらにより発生したクラックや破壊されたシーラント層部分から、電解液が入り込み金属層に接触することで、絶縁性が低下すると考えられる。
【0012】
更に、前記記載の過着によるクラックの形成およびデガッシングヒートシールによるシーラント層の破壊に起因して発生する絶縁性の低下は、シーラント層の薄膜化の影響を受けやすいため、絶縁性改善の中でも今後特に対策が必要となる。
【0013】
そこで本発明は、シーラント層が薄膜化した場合でもデガッシングヒートシール強度を含む様々なシール特性を満足しながら、成型後の絶縁性も十分に維持することができる蓄電装置用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも基材層、第1の接着剤層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、シーラント層は、ポリオレフィンを含む樹脂組成物により形成された層であり、シーラント層は、100〜120℃の温度範囲において少なくとも一つの結晶化温度ピークを有する、蓄電装置用外装材を提供する。
【0015】
本発明では、シーラント層が100〜120℃の温度範囲において少なくとも一つの結晶化温度ピークを有することから、ヒートシール時にシール部周辺の樹脂が溶融したとしても早急に結晶化するので、過着が生じにくくなる。また、過着が生じた場合でもシーラント層が早急に結晶化するので、過着部が不均一な結晶状態となりにくく、絶縁性低下の原因となるクラックの発生を抑制することができる。また、従来のシーラント層は、ヒートシール時に電解液が発泡するとき、まだ溶融状態にあって発泡によって破壊されていたが、本発明におけるシーラント層は、少なくとも一つの結晶化温度ピークが100〜120℃の温度範囲にあることで、電解液が発泡する前にシーラント層が結晶化するので、シーラント層が破壊されることを防止することができる。
【0016】
また、本発明において、シール強度を一層向上させる観点から、シーラント層が有する全ての結晶化温度ピークが120℃以下であることが好ましい。
【0017】
ここで、上記樹脂組成物は、樹脂組成物の質量を基準として結晶核剤を0.005〜10質量%含むことが好ましい。結晶核剤をこの含有量で含むことで、より早急に結晶化し、更に微小で均一な球晶が形成されるため、過着防止効果が向上する。また、過着が生じた場合でも、結晶核剤がこの含有量で含まれていると、過着部がより早急に結晶化し、更に微小で均一な球晶が形成されるので、不均一な結晶状態となりにくい。
【0018】
また、上記樹脂組成物が結晶核剤をこの含有量で含むことで、より早急に結晶化が進行するため、ヒートシール時の電解液の発泡による破壊を抑制することができる。更に、微小で均一な球晶が形成されるため、外装材を冷間成型する際に発生するシーラント層における微小なクラック(以下「白化現象」と呼ぶ。)及び電解液の膨潤を抑制することができる。
【0019】
本発明の蓄電装置用外装材において、シーラント層が複数の層からなり、そのうちの少なくとも一つの層が、結晶核剤を含む樹脂組成物により形成された層であることが好ましい。そして、そのうちの金属箔層から最も遠い層が、結晶核剤を含む樹脂組成物により形成された層であることが好ましい。複数のシーラント層のうち、金属箔層から最も遠い層が蓄電装置としての最内層に相当し、ヒートシールされる部分であるので、当該層に結晶核剤を含むことで過着防止効果が一層高まる。
【0020】
本発明の蓄電装置用外装材において、シーラント層が複数の層からなり、そのうちの金属箔層から最も近い層が、酸変性ポリプロピレンと、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体と、を含むことが好ましい。これらの樹脂は接着性を有しているので、特に熱ラミネートによって蓄電装置用外装材を製造するのに適している。これらの樹脂によれば、電解液ラミネート強度の低下や絶縁性の低下を一層抑制することができる。
【0021】
シーラント層の主成分は、プロピレン−エチレンランダム共重合体であることが好ましい。プロピレンのホモポリマー(ホモプロピレン)が主成分である場合と比べても、融点が低いために流動性が高く、圧着時に溢れた部分(いわゆる「ポリ玉」)が形成されてシール強度が向上する。
【0022】
シーラント層は、耐衝撃改質剤を含むことが好ましい。これによれば、良好な絶縁性を保持しながらも、蓄電装置用外装材に必要な柔軟性、耐衝撃性、白化抑制性、耐寒性を付与することができる。
【0023】
耐衝撃改質剤は、プロピレン−エチレンランダム共重合体に相溶するエラストマーであるプロピレン−ブテン−1ランダム共重合体、及び、プロピレン−エチレンランダム共重合体に非相溶のエラストマーであるエチレン−ブテン−1ランダム共重合体を含むことが好ましい。これによれば、電解液耐性を保持しつつ、シーラント層に白化抑制性、耐衝撃性等を付与することができるので、蓄電装置用外装材の機能性が一層向上する。
【0024】
本発明の蓄電装置用外装材は、金属箔層とシーラント層との間に第2の接着剤層を備えていてもよく、第2の接着剤層は、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、及び、オキサゾリン基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも一種の硬化剤と、を含むことが好ましい。第2の接着剤層を備える構成は、特にドライラミネートによって蓄電装置用外装材を製造するのに適している。第2の接着剤層が上記樹脂を含んでいると、電解液ラミネート強度の低下や絶縁性の低下を一層抑制することができる。
【0025】
腐食防止処理層は、酸化セリウムと、酸化セリウム100質量部に対して1〜100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含むことが好ましい。これによれば、電解液ラミネート強度の低下や絶縁性の低下を一層抑制することができる。
【0026】
腐食防止処理層は、金属箔層に化成処理を施して形成されたものであることが好ましい。また、腐食防止処理層は、金属箔層に化成処理を施して形成され、且つ、カチオン性ポリマーを含むものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、シーラント層が薄膜化した場合でもデガッシングヒートシール強度を含む様々なシール特性を満足しながら、成型後の絶縁性も十分に維持することができる蓄電装置用外装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。
図3】実施例における評価サンプルの作製方法を説明する模式図である。
図4】実施例における評価サンプルの作製方法を説明する模式図である。
図5】実施例における評価サンプルの作製方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
[蓄電装置用外装材]
図1は、本発明の蓄電装置用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電装置用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面上に形成された第1の接着剤層12と、該第1の接着剤層12の基材層11とは反対の面上に形成された金属箔層13と、該金属箔層13の第1の接着剤層12とは反対の面上に形成された腐食防止処理層14と、該腐食防止処理層14の金属箔層13とは反対の面上に形成されたシーラント層16と、が順次積層された積層体である。外装材10は、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置の外部側、シーラント層16を蓄電装置の内部側に向けて使用される。以下、各層について説明する。
【0031】
<基材層11>
基材層11は、蓄電装置製造時のシール工程における耐熱性付与、加工や流通の際に起こりうるピンホール対策という目的で設けるものであり、絶縁性を有する樹脂層を用いるのが好ましい。そのような樹脂層としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸または未延伸フィルムを、単層または2層以上積層した多層フィルムとして使用することができる。ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)とナイロンフィルム(Ny)とを接着性樹脂を用いて共押出後に、延伸処理を施した共押し出し多層延伸フィルムを用いることも可能である。
【0032】
基材層11の厚さは、6〜40μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。基材層11の厚さが6μm以上であることにより、蓄電装置用外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。一方、基材層11の厚さが40μm以下であることにより、蓄電装置用外装材10の深絞り成型性をより向上できる傾向がある。
【0033】
<第1の接着剤層12>
第1の接着剤層12は、基材層11と金属箔層13とを接着する層である。第1の接着剤層12を構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0034】
上述した各種ポリオールは、外装材に求められる機能や性能に応じて、単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0035】
また、接着剤に求められる性能に応じて、上述したポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
【0036】
第1の接着剤層12の厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
【0037】
<金属箔層13>
金属箔層13は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、金属箔層13は、深絞り成形をするために延展性を有する。金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属箔を使用することができ、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、アルミニウム箔が好ましい。
【0038】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成形時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。
【0039】
金属箔層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9〜200μmとすることが好ましく、15〜100μmとすることがより好ましい。
【0040】
金属箔層13にアルミニウム箔を用いる場合、アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐電解液性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いるのが好ましい。
【0041】
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。
【0042】
陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
【0043】
化成処理としては、浸漬型、塗工型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗工型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤を金属箔層13上に塗工する方法が挙げられる。
【0044】
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、金属箔層13として脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14の形成において改めて脱脂処理する必要なはい。
【0045】
塗工型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
【0046】
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理は、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いた金属箔層13から腐食防止処理層14まで共連続構造を形成した形態になるので、化成処理の定義に包含されるが、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14を形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、かつ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素系酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
【0047】
上記希土類元素系酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。なかでも、水系のゾルが好ましい。
【0048】
上記希土類元素系酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸またはその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用した金属箔層13との密着性の向上、(3)フッ酸の影響で溶出したアルミニウムイオンを捕獲(不動態形成)することよる電解液耐性の付与、(4)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層14(酸化物層)の凝集力の向上、などが期待される。
【0049】
上記リン酸またはその塩としては、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、またはこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。なかでも、外装材10における機能発現には、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ウルトラメタリン酸などの縮合リン酸、またはこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が好ましい。また、上記希土類酸化物のゾルを用いて、各種コーティング法により希土類酸化物からなる腐食防止処理層14を形成させる時の乾燥造膜性(乾燥能力、熱量)を考慮すると、低温での脱水縮合性に優れる点から、ナトリウム塩がより好ましい。リン酸塩としては、水溶性の塩が好ましい。
【0050】
希土類元素酸化物に対するリン酸(あるいはその塩)の配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して、1〜100質量部が好ましい。上記配合比が希土類元素酸化物100質量部に対して1質量部以上であれば、希土類元素酸化物ゾルがより安定になり、外装材10の機能がより良好になる。上記配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して5質量部以上がより好ましい。また、上記配合比が希土類元素酸化物100質量部に対して100質量部以下であれば、希土類元素酸化物ゾルの機能が高まり、電解液の浸食を防止する性能に優れる。上記配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して、50質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0051】
上記希土類酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14は、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14は、凝集力を補うために、下記アニオン性ポリマー、またはカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
【0052】
アニオン性ポリマーとしては、カルボキシ基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸(あるいはその塩)、あるいはポリ(メタ)アクリル酸を主成分として共重合した共重合体が挙げられる。この共重合体の共重合成分としては、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基など。);(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基など。)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基など。)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシランなどのシラン含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。
【0053】
これらアニオン性ポリマーは、希土類元素酸化物ゾルを用いて得られた腐食防止処理層14(酸化物層)の安定性を向上させる役割を果たす。これは、硬くて脆い酸化物層をアクリル系樹脂成分で保護する効果、および、希土類酸化物ゾルに含まれるリン酸塩由来のイオンコンタミ(特にナトリウムイオン)を捕捉する(カチオンキャッチャー)効果によって達成される。つまり、希土類元素酸化物ゾルを用いて得られた腐食防止処理層14中に、特にナトリウムなどのアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンが含まれると、このイオンを含む場所を起点にして腐食防止処理層14が劣化しやすくなる。そのため、アニオン性ポリマーによって希土類酸化物ゾルに含まれるナトリウムイオンなどを固定化することで、腐食防止処理層14の耐性が向上する。
【0054】
アニオン性ポリマーと希土類元素酸化物ゾルを組み合わせた腐食防止処理層14は、アルミニウム箔にクロメート処理を施して形成した腐食防止処理層14と同等の腐食防止性能を有する。アニオン性ポリマーは、本質的に水溶性であるポリアニオン性ポリマーが架橋された構造であることが好ましい。この構造の形成に用いる架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシ基、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。
【0055】
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートあるいはその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネートあるいはその水素添加物、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート類;あるいはこれらのイソシアネート類を、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたアダクト体、水と反応させることで得られたビューレット体、あるいは三量体であるイソシアヌレート体などのポリイソシアネート類;あるいはこれらのポリイソシアネート類をアルコール類、ラクタム類、オキシム類などでブロック化したブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0056】
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類と、エピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類と、エピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸などのジカルボン酸と、エピクロルヒドリンとを作用させたエポキシ化合物などが挙げられる。
【0057】
カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、各種脂肪族あるいは芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ(土類)金属塩を用いてもよい。
【0058】
オキサゾリン基を有する化合物としては、例えば、オキサゾリンユニットを2つ以上有する低分子化合物、あるいはイソプロペニルオキサゾリンのような重合性モノマーを用いる場合には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどのアクリル系モノマーを共重合させたものが挙げられる。
【0059】
また、アニオン性ポリマーには、シランカップリング剤のように、アミンと官能基を選択的に反応させ、架橋点をシロキサン結合にさせてもよい。この場合、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランなどが使用できる。なかでも、特にアニオン性ポリマーあるいはその共重合物との反応性を考慮すると、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシランが好ましい。
【0060】
アニオン性ポリマーに対するこれらの架橋剤の比率は、アニオン性ポリマー100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。架橋剤の比率がアニオン性ポリマー100質量部に対して1質量部以上であれば、架橋構造が充分に形成されやすい。架橋剤の比率がアニオン性ポリマー100質量部に対して50質量部以下であれば、塗液のポットライフが向上する。
【0061】
アニオン性ポリマーを架橋する方法は、上記架橋剤に限らず、チタニウム、ジルコニウム化合物を用いてイオン架橋を形成する方法などであってもよい。
【0062】
カチオン性ポリマーとしては、アミンを有するポリマーが挙げられ、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンあるいはこれらの誘導体、アミノフェノールなどのカチオン性のポリマーが挙げられる。
【0063】
カチオン性ポリマーは、カルボキシ基やグリシジル基などのアミン/イミンと反応が可能な官能基を有する架橋剤と併用することが好ましい。カチオン性ポリマーと併用する架橋剤としては、ポリエチレンイミンとイオン高分子錯体を形成するカルボン酸を有するポリマーも使用でき、例えば、ポリアクリル酸あるいはそのイオン塩などのポリカルボン酸(塩)、あるいはこれにコモノマーを導入した共重合体、カルボキシメチルセルロースあるいはそのイオン塩などのカルボキシ基を有する多糖類などが挙げられる。ポリアリルアミンとしては、例えば、アリルアミン、アリルアミンアミド硫酸塩、ジアリルアミン、ジメチルアリルアミンなどの単独重合体あるいは共重合体などが挙げられる。これらのアミンは、フリーのアミンであってもよく、酢酸あるいは塩酸による安定化物であってもよい。また、共重合体成分として、マレイン酸、二酸化硫黄などを使用してもよい。さらに、1級アミンを部分メトキシ化させることで熱架橋性を付与したタイプも使用でき、また、アミノフェノールも使用できる。特に、アリルアミンあるいはその誘導体が好ましい。
【0064】
本実施形態では、カチオン性ポリマーも腐食防止処理層14を構成する一構成要素として記載している。その理由は、蓄電装置用外装材で要求される電解液耐性、フッ酸耐性を付与するべく様々な化合物を用い鋭意検討を行った結果、カチオン性ポリマー自体も、電解液耐性、耐フッ酸性を付与することが可能な化合物であることが判明したためである。この要因は、フッ素イオンをカチオン性基で補足する(アニオンキャッチャー)ことで、アルミニウム箔が損傷することを抑制しているためであると推測される。
【0065】
カチオン性ポリマーは、接着性の向上という点でより好ましい材料である。また、カチオン性ポリマーも、上記アニオン性ポリマーと同様に、水溶性であることから、架橋構造を形成させて耐水性を付与することがより好ましい。カチオン性ポリマーに架橋構造を形成する際の架橋剤は、アニオン性ポリマーの項で説明した架橋剤を使用できる。腐食防止処理層14として希土類酸化物ゾルを用いた場合、その保護層として上記アニオン性ポリマーを用いる代わりに、カチオン性ポリマーを用いてもよい。
【0066】
クロメート処理に代表される化成処理による腐食防止処理層は、アルミニウム箔との傾斜構造を形成させるため、特にフッ酸、塩酸、硝酸、硫酸あるいはこれらの塩を配合した化成処理剤を用いてアルミニウム箔に処理を施し、次いでクロムやノンクロム系の化合物を作用させて化成処理層をアルミニウム箔に形成させるものである。しかしながら、上記化成処理は、化成処理剤に酸を用いていることから、作業環境の悪化やコーティング装置の腐食を伴う。一方、前述したコーティングタイプの腐食防止処理層14は、クロメート処理に代表される化成処理とは異なり、アルミニウム箔を用いた金属箔層13に対して傾斜構造を形成させる必要がない。そのため、コーティング剤の性状は、酸性、アルカリ性、中性などの制約を受けることがなく、良好な作業環境を実現できる。加えて、クロム化合物を用いるクロメート処理は、環境衛生上、代替案が求められている点からも、コーティングタイプの腐食防止処理層14が好ましい。
【0067】
以上の内容から、上述したコーティングタイプの腐食防止処理の組み合わせの事例として、(1)希土類酸化物ゾルのみ、(2)アニオン性ポリマーのみ、(3)カチオン性ポリマーのみ、(4)希土類酸化物ゾル+アニオン性ポリマー(積層複合化)、(5)希土類酸化物ゾル+カチオン性ポリマー(積層複合化)、(6)(希土類酸化物ゾル+アニオン性ポリマー:積層複合化)/カチオン性ポリマー(多層化)、(7)(希土類酸化物ゾル+カチオン性ポリマー:積層複合化)/アニオン性ポリマー(多層化)、等が挙げられる。中でも(1)及び(4)〜(7)が好ましく、(4)〜(7)が特に好ましい。ただし、本実施形態は、上記組み合せに限られるわけではない。たとえば腐食防止処理の選択の事例として、カチオン性ポリマーは、後述するシーラント接着層(接着性樹脂層又は第2の接着剤層)の説明で挙げる変性ポリオレフィン樹脂との接着性が良好であるという点でも非常に好ましい材料であることから、シーラント接着層が変性ポリオレフィン樹脂で構成される場合においては、シーラント接着層に接する面にカチオン性ポリマーを設ける(例えば、構成(5)及び(6)などの構成)といった設計が可能である。
【0068】
また、腐食防止処理層14は、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
【0069】
腐食防止処理層14の単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005〜0.200g/mが好ましく、0.010〜0.100g/mがより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m以上であれば、金属箔層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/mを超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不充分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14の厚みについては、その比重から換算できる。
【0070】
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層であって、ポリオレフィンを含む樹脂組成物により形成された層である。
【0071】
シーラント層16は、単層でもよいが、二層や三層等、複数の層から構成されていることがより好ましい。三層構成を例にすると、図1に示されているとおり、金属箔層13に最も近い層(以下、「最外層16a」と呼ぶ。)、最外層16aに積層された層(以下、「中間層16b」と呼ぶ)、及び、中間層16bに積層された層(以下、「最内層16c」と呼ぶ。)の態様となる。ここで「最内層」の語句は、外装材10の積層構造における「内部」及び「外部」の関係から名付けたものではなく、外装材10を蓄電装置に成型したときに内側となってヒートシールされる層を指している。以下、それぞれの層について説明する。
【0072】
〔最外層16a〕
最外層16aは、シーラント層16を構成する他の層を金属箔層13に接着させる働きを担う層である。最外層16aは、主成分となる接着性樹脂組成物と、必要に応じて添加剤成分とを含んで概略構成されている。接着性樹脂組成物は、特に制限されないが、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分と、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分とを含有することが好ましい。また、添加剤成分は、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(c)を含むことが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0073】
(変性ポリオレフィン樹脂(a))
変性ポリオレフィン樹脂(a)は、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分が、ポリオレフィン樹脂にグラフト変性された樹脂であることが好ましい。すなわち、変性ポリオレフィン樹脂は、酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。
【0074】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック、あるいはランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0075】
これらのポリオレフィン樹脂をグラフト変性する際に用いる化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分が挙げられる。
【0076】
具体的には、不飽和カルボン酸として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0077】
不飽和カルボン酸の酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸の酸無水物などが挙げられる。
【0078】
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0079】
変性ポリオレフィン樹脂(a)は、ベースとなるポリオレフィン樹脂100質量部に対し、上述した不飽和カルボン酸誘導体成分0.2〜100質量部をラジカル開始剤の存在下、グラフト重合(グラフト変性)することで製造することができる。グラフト変性の反応温度は、50〜250℃が好ましく、60〜200℃がより好ましい。また、反応時間は、製造方法に応じて適宜設定されるが、例えば二軸押出機による溶融グラフト重合の場合、押出機の滞留時間内、具体的には2〜30分が好ましく、5〜10分がより好ましい。なお、グラフト変性は、常圧、加圧のいずれの条件下においても実施できる。
【0080】
グラフト変性に用いられるラジカル開始剤としては、アルキルパーオキサイド、アリールパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシカーボネート、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0081】
これらの有機過酸化物は、上述した反応温度や反応時間の条件によって適宜選択して用いることができる。例えば、二軸押出機による溶融グラフト重合の場合、アルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステルが好ましく、具体的にはジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシ−ヘキシン−3、ジクミルペルオキシドなどが好ましい。
【0082】
変性ポリオレフィン樹脂(a)としては、無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂が好ましく、例えば、三井化学社製の「アドマー」、三菱化学社製の「モディック」などが適している。このような変性ポリオレフィン樹脂(a)成分は、各種金属や各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して最外層16aに密着性を付与することができ、耐電解液性を向上することができる。
【0083】
(マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b))
マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)は、変性ポリオレフィン樹脂(a)に対し、分散相サイズが200nmを超え、50μm以下の範囲でマクロ相分離構造を形成するものである。
【0084】
接着性樹脂組成物が、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分を含有することにより、最外層16aを構成する主成分となる変性ポリオレフィン樹脂(a)成分等をラミネートする際に発生する残留応力を開放することができ、粘弾性的な接着性を最外層16aに付与することができる。従って、最外層16aの密着性がより向上して、耐電解液性により優れた外装材10が得られる。
【0085】
マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)は、変性ポリオレフィン樹脂(a)上で海島状に存在するが、分散相サイズが200nm以下であると、粘弾性的な接着性の改善を付与させることが困難になる。一方、分散相サイズが50μmを超えると、変性ポリオレフィン樹脂(a)とマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)とは本質的に非相溶性であるため、ラミネート適正(加工性)が著しく低下すると共に、最外層16aの物理的強度が低下しやすくなる。以上より、分散相サイズは、500nm〜10μmであることが好ましい。
【0086】
このようなマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)としては、例えば、エチレンおよび/またはプロピレンに、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンから選ばれるα−オレフィンを共重合させたポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0087】
また、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分としては、市販品を使用することができ、例えば、三井化学社製の「タフマー」、三菱化学社製の「ゼラス」、モンテル社製の「キャタロイ」などが適している。
【0088】
最外層16aにおいて、接着性樹脂組成物中の変性ポリオレフィン樹脂(a)成分に対するマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分の含有量は、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分100質量部に対して、1〜40質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。ここで、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分の含有量が1質量部未満であると、接着性樹脂層の密着性の向上が期待できない。一方、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分の含有量が40質量部を越えると、本来、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分とマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分とは相溶性が低いために加工性が著しく低下しやすくなる。また、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分は接着性を示す樹脂ではないため、シーラント層16を構成する他の層や腐食防止処理層14等の他の層に対する最外層16aの密着性が低下しやすくなる。
【0089】
(アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(c))
最外層16aは、添加剤成分として、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(以下、単に、「成分(c)」と称する)を含むことが好ましい。ここで、成分(c)は、完全非晶性の樹脂成分である。
【0090】
以下、最外層16aにおいて、主成分となる接着性樹脂組成物に添加剤成分(c)を添加する効果について説明する。
【0091】
成分(c)は、最外層16aが溶融状態においては接着性樹脂組成物中の変性ポリオレフィン樹脂(a)成分と相溶であるが、冷却に伴う結晶化の際に結晶外へ排出され、球晶周辺に均一分散される。これにより、成分(c)は、主成分である接着性樹脂組成物中の変性ポリオレフィン樹脂(a)成分の結晶化度を阻害しない。また、最外層16a中に成分(c)を添加することで、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分の濃度が成分(c)によって希釈されて結晶成長が抑制されるため、ベース樹脂の接着成分(すなわち、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分)の結晶サイズ(球晶サイズ)を小さくすることが可能となる。また、結晶外に排出された成分(c)は、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分の微小球晶の周辺に、均一に分散する。また、上記のような成分(c)の効果により、白化現象を抑制することができる。
【0092】
最外層16a中の、成分(c)の割合は、下限値が2.5質量%であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。一方、上限値は、60質量%であることが好ましい。ここで、最外層16a中の、成分(c)の割合が2.5質量%未満であると、上述したような成分(c)を添加することによる効果が十分に得られない傾向がある。一方、60質量%を超えると(すなわち、接着性樹脂組成物の割合が40質量%未満であると)、シーラント層16や腐食防止処理層14などの他の層に対する最外層16aの密着性が低下しやすくなる傾向がある。
【0093】
(アイソタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(d))
最外層16aは、添加剤成分として、上述した成分(c)に加えて、アイソタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(以下、単に「成分(d)」と称する)をさらに含むことが好ましい。
【0094】
ここで、成分(d)は、最外層16aの主成分である接着性樹脂成分において、変性ポリオレフィン樹脂(a)が特にポリプロピレン系の接着性樹脂の場合に相溶ゴム成分として作用する。
【0095】
すなわち、最外層16aの主成分である接着性樹脂成分に、添加剤成分としてさらに成分(d)を添加することにより、応力を緩和するための柔軟性が付与できるため、電解液ラミネート強度の低下を抑制しつつ、ヒートシール強度(特に耐電解液)の改善、デガッシングシール強度の改善が可能となる。また、添加剤成分として、成分(c)と成分(d)とを組み合わせることで、白化現象や耐屈曲絶縁性をより改善することができる。
【0096】
最外層16a中の、添加剤成分(すなわち、成分(c)と成分(d)との総量)の割合は、5〜60質量%であることが好ましい。ここで、最外層16a中の、添加剤成分の割合が5質量%未満であると(すなわち、接着性樹脂組成物の割合が95質量%を超えると)、上述したような添加剤を添加することによる効果が十分に得られない傾向がある。一方、60質量%を超えると(すなわち、接着性樹脂組成物の割合が40質量%未満であると)、シーラント層16や腐食防止処理層14などの他の層に対する最外層16aの密着性が低下しやすくなる傾向がある。
【0097】
なお、最外層16a中の、添加剤成分である成分(c)の分析方法としては、例えば、核磁気共鳴分光法(NMR)による立体規則性評価によって定量することが可能である。
【0098】
一方、成分(d)の分析としては、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)を用いて、α−オレフィンの分岐に帰属される吸収体と、変性ポリオレフィン樹脂(a)の特性吸収体に帰属される吸収体とで検量線を作成することで、配合比を確認することができる。
【0099】
最外層16aは、接着性樹脂組成物(すなわち、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分ならびにマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分)および添加剤成分(すなわち、成分(c)ならびに成分(d))の他に、必要に応じて各種添加剤、例えば難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤などを含有してもよい。
【0100】
最外層16aの厚さは、特に限定されるものではないが、応力緩和や水分・電解液透過の観点から、シーラント層16と同じもしくはそれ以下であることが好ましい。
【0101】
〔中間層16b〕
中間層16bは、次に述べる最内層16cと同様の構成とすることができる。
【0102】
〔最内層16c〕
最内層16cは、(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体を主成分とする樹脂組成物により形成された層である。この樹脂組成物は、(B)ブテン−1をコモノマーとするポリオレフィン系エラストマーやその他のエラストマー(耐衝撃改質剤)を含むことが好ましい。以下、これらの成分について説明する。
【0103】
((A)プロピレン−エチレンランダム共重合体)
(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体は、プロピレン−エチレンブロック共重合体及びプロピレン単独重合体と比較して低温でのヒートシール性に優れており、電解液が関与するシール特性を向上させることができる。また、樹脂組成物が(B)ポリオレフィン系エラストマーを含む場合は、過着が発生することを抑制することができる。
【0104】
(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体において、エチレン含有量は0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜7質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることが更に好ましい。エチレン含有量が0.1質量%以上であると、エチレンを共重合させることによる融点低下効果が十分に得られ、電解液が関与するシール特性をより一層向上できる傾向がある。エチレン含有量が10質量%以下であると、融点が下がりすぎることを抑制でき、過着の発生をより十分に抑制できる傾向がある。なお、エチレン含有量は、重合時のモノマーの混合比率から算出することができる。
【0105】
(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体の融点は、120〜145℃であることが好ましく、125〜140℃であることがより好ましい。融点が120℃以上であると、過着の発生をより十分に抑制できる傾向がある。融点が145℃以下であると、電解液が関与するシール特性をより一層向上できる傾向がある。
【0106】
(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体の重量平均分子量は、融点が上記範囲内となるように適宜調整することが好ましいが、好ましくは10,000〜500,000であり、より好ましくは100,000〜500,000である。
【0107】
(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体は、酸変性されたものであってもよく、例えば、無水マレイン酸をグラフト変性させた酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体であってもよい。酸変性プロピレン−エチレンランダム共重合体を用いることにより、タブシーラントがなくてもタブリードとの密着性を保つことができる。
【0108】
(A)プロピレン−エチレンランダム共重合体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
最内層16c形成用の樹脂組成物において、(A)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として60〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましく、60〜85質量%であることが更に好ましい。(A)成分の含有量が60質量%以上であると、(A)成分を用いること自体の効果により、電解液が関与するシール特性を一層向上させることができる。また、(A)成分の含有量が60質量%以上であると、他の成分、例えば(B)成分が過剰に存在することを防げるため、最内層16cの耐熱性の低下を抑制でき、且つ、過着の発生を抑制することができる。一方、(A)成分の含有量が95質量%以下であると、他の成分、例えば(B)成分を5質量%以上含有させることができるため、(B)成分によるデガッシングヒートシール強度の改善効果を十分に得ることができる。
【0110】
((B)ブテン−1をコモノマーとするポリオレフィン系エラストマー)
(B)ブテン−1をコモノマーとするポリオレフィン系エラストマーは、デガッシングヒートシール強度を含む電解液が関与するシール特性の向上に寄与するとともに、成型白化の発生の抑制に寄与し、耐衝撃性の機能も付与することができる(耐衝撃改質剤としての機能)。
【0111】
(B)ポリオレフィン系エラストマーは、(A)成分に対して相溶性を有するものであっても、相溶性を有しないものであってもよいが、相溶性を有する(B−1)相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、相溶性を有しない(B−2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーの両方を含むことが好ましい。ここで、(A)成分に対して相溶性を有する(相溶系)とは、(A)成分を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂中に分散相サイズ1nm以上500nm未満で分散することを意味する。相溶性を有しない(非相溶系)とは、(A)成分を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。
【0112】
(B−1)相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、プロピレン−ブテン−1ランダム共重合体が挙げられる。
【0113】
(B−2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体が挙げられる。
【0114】
(B)ポリオレフィン系エラストマーの融点は、150℃以下であることが好ましい。過着の抑制、成型白化の抑制及び電解液が関与するシール特性の向上の観点から、当該融点は60〜120℃であることがより好ましく、65〜90℃であることが更に好ましい。融点が150℃以下であることにより、電解液が関与するシール特性、特にデガッシングヒートシール強度を一層改善することができる。また、融点が60℃以上であると、過着の発生を抑制する観点で有利である。
【0115】
(B)ポリオレフィン系エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
最内層16c形成用の樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として5〜40質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることが更に好ましい。(B)成分の含有量が5質量%以上であることにより、電解液が関与するシール特性、特にデガッシングヒートシール強度の改善効果を一層十分に得ることができる。一方、(B)成分の含有量を40質量%以下とすることにより、最内層16cの耐熱性の低下を一層抑制でき、且つ、過着の発生を一層抑制することができる。
【0117】
(B)成分が(B−1)相溶系ポリオレフィン系エラストマーと(B−2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーとを含む場合、両者の含有量比((B−1)相溶系ポリオレフィン系エラストマー/(B−2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマー)は、質量比で0.5〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。含有量比を上記範囲とすることにより、耐成型白化性及び電解液が関与するシール特性をバランスよく向上させることができる。
【0118】
最内層16cにおいて、ブテン−1の存在は、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)により帰属することで確認可能である。また、ブテン−1の含有量は、既知量のブテン−1を含むエラストマーを既知量配合した樹脂組成物を用いて、(A)成分と(B)成分の特性吸収帯の透過度あるいは吸光度にて検量線を作成することで確認することが可能である。更に、(B−1)相溶系ポリオレフィン系エラストマー、及び、(B−2)非相溶系ポリオレフィン系エラストマーのそれぞれのブテン−1含有量についても、同様にFT−IRの特性吸収帯にてイメージングを行い、顕微FT−IR(透過法)でブテン−1起因の吸収帯でマッピングすることにより確認可能である。なお、FT−IR以外にも、最内層16cを溶媒で溶解させてNMRで測定することでブテン−1の存在及び含有量を確認することも可能である。
【0119】
なお、最内層16c形成用の樹脂組成物は、上述した(A)成分及び(B)成分以外の他の成分を更に含んでいてもよい。(A)成分及び(B)成分以外の他の成分としては、例えば引取性、加工性を向上させるためにLDEP(低密度ポリエチレン)などの他の樹脂を添加してもよい。添加する他の樹脂成分の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として10質量%以下であることが好ましい。また、樹脂以外の成分として、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。これら樹脂以外の他の成分の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として5質量%以下であることが好ましい。
【0120】
〔シーラント層16全体としての構成及び特性〕
シーラント層16全体としては、主成分がプロピレン−エチレンランダム共重合体であることが好ましい。ここで「主成分」とは、シーラント層16を構成する材料の50質量%以上を占めていることをいう。
【0121】
シーラント層16は、100〜200℃の温度範囲において結晶化温度ピークを有する。結晶化温度ピークを複数有する場合は、少なくとも一つのピークが100〜120℃の温度範囲に入っていることが好ましく、全ての結晶化温度ピークが120℃以下であることがより好ましい。また、シーラント層16の結晶化温度ピークのうち少なくとも一つが100〜120℃の温度範囲に入っており、全ての結晶化温度ピークが120℃以下であることが好ましい。
【0122】
シーラント層16の結晶化温度ピークは、JIS K 7121に準拠し、DSC(示差走査熱量測定)により求めることができる。
【0123】
このようなシーラント層16を備える外装材10は、ヒートシール時にシール部周辺の樹脂が溶融したとしても早急に結晶化するので、過着が生じにくくなる。また、過着が生じた場合でもシーラント層16が早急に結晶化するので、過着部が不均一な結晶状態となりにくい。また、従来のシーラント層は、ヒートシール時に電解液が発泡するとき、まだ溶融状態にあって発泡によって破壊されていたが、本実施形態におけるシーラント層16は、少なくとも一つの結晶化温度ピークが100〜120℃の温度範囲にあることで、電解液が発泡する前にシーラント層16が結晶化するので、シーラント層16が破壊されることを防止することができる。
【0124】
シーラント層16の結晶化温度は、結晶核剤の添加によって調製することができる。すなわちシーラント層16は、結晶核剤を含んでいてもよい。シーラント層16が上記のように複数の層からなる場合、少なくとも一つの層に結晶核剤を含んでいてもよく、特に、最内層16cに含まれていることが好ましい。
【0125】
結晶核剤としては、糖類(ソルビトール、ノニトール等)、リン酸エステル、カルボン酸の金属塩、無機化合物等が挙げられる。
【0126】
結晶核剤の含有量は、シーラント層16を構成する樹脂組成物の質量を基準として0.005〜10質量%であることが好ましい。シーラント層16に含まれている結晶核剤の同定及び定量は、有機系材料の場合は溶媒で抽出した後にIR、GC、GCMS等にて行うことができ、無機系材料の場合はシーラント層16を燃焼させた後に残渣成分の分析にて行うことができる。
【0127】
結晶核剤をこの含有量で含むことで、シーラント層の少なくとも一つ以上の結晶化温度が100〜120℃となることに寄与する。更に均一な球晶が形成されるため、過着防止効果が向上する。また、過着が生じた場合でも、結晶核剤がこの含有量で含まれていると、過着部が早急に結晶化し、更に微小で均一な球晶が形成されるので、不均一な結晶状態となりにくい。
【0128】
また、シーラント層16を構成する樹脂組成物が結晶核剤をこの含有量で含むことが、シーラント層の少なくとも一つの結晶化温度ピークが100〜120℃の範囲となることに寄与し、ヒートシール時の電解液の発泡による破壊を抑制することができる。また、球晶の大きさが小さくなり密になることで、非晶部の割合が小さくなり、電解液の膨潤が抑制される。
【0129】
また、シーラント層16の結晶化温度を調整する他の方法として、一般に共重合体よりも結晶化温度が高い傾向のあるホモポリマーを添加することが挙げられる。例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体を主成分とするシーラント層16に対して、ホモポリプロピレンを添加することができる。添加量としては、添加対象である最外層16a、中間層16b、最内層16cのいずれかの樹脂組成物の全量を基準として1〜10質量%であることが好ましい。
【0130】
シーラント層16の厚さは、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、5〜100μmの範囲であることが好ましく、薄膜化の観点から10〜35μmの範囲であってもよい。シーラント層がこのように薄い場合であっても、上記構成を備えるシーラント層16によれば、絶縁性を確保することができる。
【0131】
以上、本発明の蓄電装置用外装材の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0132】
例えば、図1では、腐食防止処理層14が金属箔層13のシーラント層16側の面に形成されている場合を示したが、腐食防止処理層14は金属箔層13の第1の接着剤層12側の面に形成されていてもよく、金属箔層13の両面に形成されていてもよい。金属箔層13の両面に腐食防止処理層14が形成されている場合、金属箔層13の第1の接着剤層12側に形成される腐食防止処理層14の構成と、金属箔層13のシーラント層16側に形成される腐食防止処理層14の構成とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0133】
また、図1では、シーラント層16が、その最外層16aが有する接着性を利用して金属箔層13に積層されている態様を示したが、図2に示す蓄電装置用外装材20のように、第2の接着剤層17を用いて金属箔層13とシーラント層16Aとが積層されていてもよい。この場合、最外層16aを形成してもよいし、省略してもよい。以下、第2の接着剤層17について説明する。
【0134】
<第2の接着剤層17>
第2の接着剤層17は、腐食防止処理層14が形成された金属箔層13とシーラント層16Aとを接着する層である。第2の接着剤層17には、金属箔層13とシーラント層16Aとを接着するための一般的な接着剤を用いることができる。
【0135】
腐食防止処理層14が上述したカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む層を有する場合、第2の接着剤層17は、腐食防止処理層14に含まれる上記ポリマーと反応性を有する化合物(以下、「反応性化合物」とも言う)を含む層であることが好ましい。
【0136】
例えば、腐食防止処理層14がカチオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層17はカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。腐食防止処理層14がアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層17はアニオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。また、腐食防止処理層14がカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層17はカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物と、アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物とを含む。ただし、第2の接着剤層17は必ずしも上記2種類の化合物を含む必要はなく、カチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマーの両方と反応性を有する化合物を含んでいてもよい。ここで、「反応性を有する」とは、カチオン性ポリマーまたはアニオン性ポリマーと共有結合を形成することである。また、第2の接着剤層17は、酸変性ポリオレフィン樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0137】
カチオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0138】
これら多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示した多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、カチオン性ポリマーとの反応性が高く、架橋構造を形成しやすい点で、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0139】
アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、グリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示したグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。
【0140】
第2の接着剤層17が酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、反応性化合物は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基とも反応性を有する(すなわち、酸性基と共有結合を形成する)ことが好ましい。これにより、腐食防止処理層14との接着性がより高まる。加えて、酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋構造となり、外装材10の耐溶剤性がより向上する。
【0141】
反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基に対し、等量から10倍等量であることが好ましい。等量以上であれば、反応性化合物が酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基と十分に反応する。一方、10倍等量を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂との架橋構造が不十分となり、上述した耐溶剤性などの物性の低下が懸念される。
【0142】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸性基をポリオレフィン樹脂に導入したものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基などが挙げられ、カルボキシ基が特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、最外層16aに用いる変性ポリオレフィン樹脂(a)として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0143】
第2の接着剤層17には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0144】
第2の接着剤層17の厚さは、3〜50μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。第2の接着剤層17の厚さが下限値以上であれば、優れた接着性が得られやすい。第2の接着剤層17の厚さが上限値以下であれば、外装材20の側端面から透過する水分量が低減される。
【0145】
第2の接着剤層17以外の蓄電装置用外装材20の構成は、蓄電装置用外装材10と同様である。なお、蓄電装置用外装材20におけるシーラント層16Aの厚さは、第2の接着剤層17の厚さに応じて調整する。蓄電装置用外装材20におけるシーラント層16Aの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5〜100μmの範囲であることが好ましく、薄膜化の観点から10〜35μmの範囲であってもよい。
【0146】
[外装材の製造方法]
次に、図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0147】
本実施形態の外装材10の製造方法は、金属箔層13に腐食防止処理層14を積層する工程と、基材層11と金属箔層13とを貼り合わせる工程と、シーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。
【0148】
(金属箔層13への腐食防止処理層14の積層工程)
本工程は、金属箔層13に対して、腐食防止処理層14を形成する工程である。その方法としては、上述したように、金属箔層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗工したりする方法などが挙げられる。
【0149】
また、腐食防止処理層14が多層の場合は、例えば、下層側(金属箔層13側)の腐食防止処理層を構成する塗工液(コーティング剤)を金属箔層13に塗工し、焼き付けて第1層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗工液(コーティング剤)を第1層に塗工し、焼き付けて第2層を形成すればよい。また、第2層は、後述するシーラント層16の積層工程において形成することもできる。
【0150】
脱脂処理についてはスプレー法または浸漬法にて、熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて、化成処理については化成処理のタイプに応じ浸漬法、スプレー法、コート法などを適宜選択して行えばよい。
【0151】
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
【0152】
上述したように、各種処理は金属箔の両面または片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面はシーラント層16が積層される側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してもよい。
【0153】
また、第1層及び第2層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005〜0.200g/mが好ましく、0.010〜0.100g/mがより好ましい。
【0154】
また、乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層14の乾燥条件に応じて、母材温度として60〜300℃の範囲で行うことができる。
【0155】
(基材層11と金属箔層13との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14を設けた金属箔層13と、基材層11とを、第1の接着剤層12を介して貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した第1の接着剤層12を構成する材料にて両者を貼り合わせる。第1の接着剤層12は、ドライ塗布量として1〜10g/mの範囲、より好ましくは3〜7g/mの範囲で設ける。
【0156】
(シーラント層16の積層工程)
先の工程により形成された腐食防止処理層14上に、シーラント層16を形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて最外層16aと中間層16b及び最内層16cとを押出すタンデムラミネート法及び共押出法が挙げられる。この場合、シーラント層形成用の樹脂組成物として上述した材料配合組成になるようにドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により積層させてもよいし、あるいは事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を、押出ラミネート機で最外層16aと中間層16b及び最内層16cとを押出すタンデムラミネート法又は共押出法で積層させてもよい。
【0157】
本工程により、図1に示すような、基材層11/第1の接着剤層12/金属箔層13/腐食防止処理層14/シーラント層16の順で各層が積層された積層体が得られる。
【0158】
また、多層の腐食防止処理層14を形成する場合、押出ラミネート機にアンカーコート層を塗工することが可能なユニットを備えていれば、該ユニットにて腐食防止処理層14の第2層を塗工してもよい。
【0159】
(熱処理工程)
本工程は、積層体を熱処理する工程である。積層体を熱処理することで、金属箔層13/腐食防止処理層14/シーラント層16間での密着性を向上させ、より優れた耐電解液性や耐フッ酸性を付与することができる。熱処理の温度は、シーラント層16を構成する材料の種類などに依存するが、目安としては、積層体の最高到達温度が、シーラント層16の融点よりも20〜100℃高くなるように熱処理するのが好ましく、シーラント層16の融点よりも20〜60℃高くなるように熱処理するのがより好ましい。積層体の最高到達温度がこの範囲未満であると、金属箔層13/腐食防止処理層14/シーラント層16間での密着性が十分でない可能性がある。一方、積層体の最高到達温度がこの範囲を超えると、例えば、金属箔の熱膨張や、貼り合せ後の基材層の熱収縮が発生し、加工性や特性を低下させる可能性がある。そのため、熱処理時間は、処理温度に依存するが、短時間(例えば30秒未満)で行うのが望ましい。
【0160】
このようにして、図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
【0161】
次に、図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0162】
本実施形態の外装材20の製造方法は、金属箔層13に腐食防止処理層14を積層する工程と、基材層11と金属箔層13とを貼り合わせる工程と、第2の接着剤層17を介してシーラント層16Aをさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。なお、基材層11と金属箔層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
【0163】
(第2の接着剤層17及びシーラント層16Aの積層工程)
本工程は、金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2の接着剤層17を介してシーラント層16Aを貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットプロセスが挙げられる。
【0164】
ウェットプロセスの場合は、第2の接着剤層17を構成する接着剤の溶液又は分散液を、腐食防止処理層14上に塗工し、所定の温度(接着剤が酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合は、その融点以上の温度)で溶媒を飛ばし、乾燥造膜、又は乾燥造膜後に必要に応じて焼き付け処理を行う。その後、シーラント層16Aを積層し、外装材20を製造する。塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。
【0165】
なお、第2の接着剤層17及びシーラント層16Aは、腐食防止処理層14上に塗工した溶液タイプの接着剤を一旦乾燥させるドライラミネーション法により積層してもよい。
【0166】
(エージング処理工程)
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、金属箔層13/腐食防止処理層14/第2の接着剤層17/シーラント層16A間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温〜100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1〜10日である。
【0167】
このようにして、図2に示すような、本実施形態の外装材20を製造することができる。
【0168】
以上、本発明の蓄電装置用外装材及びその製造方法の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。なお、基材層11及び第1の接着剤層12の代わりに被覆層を備える蓄電装置用外装材を製造する場合は、上述のように、被覆層となる樹脂材料を金属箔層13上に塗布または塗工することにより被覆層を形成することができる。
【0169】
本発明の蓄電装置用外装材は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタなどの蓄電装置用の外装材として好適に用いることができる。中でも、本発明の蓄電装置用外装材は、リチウムイオン電池用の外装材として好適である。
【実施例】
【0170】
以下、参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0171】
[使用材料]
参考例、実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
<基材層(厚さ12μm)>
ナイロンフィルム(Ny)(東洋紡社製)を用いた。
【0172】
<第1の接着剤層(厚さ4μm)>
ポリエステルポリオール系主剤に対して、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤を配合したポリウレタン系接着剤(東洋インキ社製)を用いた。
【0173】
<第1の腐食防止処理層(基材層側)>
・(CL−1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」を用いた。なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
・(CL−2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度5質量%に調整した「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物を用いた。
・(CL−3):溶媒として1質量%濃度のリン酸水溶液を用い、固形分濃度1質量%に調整した水溶性フェノール樹脂(住友ベークライト社製)に対し、フッ化クロム(CrF3)を最終乾燥皮膜中に存在するCr量として10mg/mとなるように濃度を調整した化成処理剤を用いた。
【0174】
<金属箔層(厚さ35μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
【0175】
<第2の腐食防止処理層(シーラント層側)>
上記「第1の腐食防止処理層(基材層側)」と同一構成とした。
【0176】
<第2の接着剤層(厚さ3μm)>
第2の接着剤層形成用接着剤として、下記接着剤A、Bを準備した。
・(接着剤A)トルエンに溶解させた無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、イソシアヌレート構造のポリイソシアネート化合物を10質量部(固形分比)で配合した接着剤。
・(接着剤B):水添ダイマー脂肪酸およびジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとのモル比(NCO/OH)が2になるように配合したポリウレタン系接着剤。
【0177】
<シーラント層>
最外層、中間層、及び最内層として、以下のいずれかの材料を単独で、又は混合して組成物として用いた。
・(AR−1):非相容系ゴムとしてエチレン−プロピレンゴムを配合したランダムポリプロピレン(PP)ベースの酸変性ポリプロピレン樹脂組成物(三井化学社製、アドマー)。
・(AR−2):アタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(住友化学社製、「タフセレンH」)。
・(ランダムPP):融点140℃のプロピレン−エチレンランダム共重合体(プライムポリマー社製、「プライムポリプロ」)。
・(ブロックPP):ブロックポリプロピレン(プロピレン−エチレンブロック共重合体)
・(ホモPP):ホモプロピレン(プロピレンの重合体)
【0178】
また、場合によりシーラント層に下記添加剤を添加した。
・(AD−1):耐衝撃改質剤。ランダムPPに対して相溶性を有する、融点85℃のプロピレン−ブテン−1ランダム共重合体エラストマー(三井化学社製、「タフマーXM」)と、ランダムPPに対して相溶性を有しない、融点75℃のエチレン−ブテン−1ランダム共重合体エラストマー(住友化学社製、「エクセレン」)との重量比2:1の混合物。
・(AD−2):耐衝撃改質剤。スチレン系ゴム。
・(AD−3):結晶核剤。ノニトール系化合物。
【0179】
参考例1]
まず、金属箔層に、第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、金属箔層の両方の面に(CL−1)を、ドライ塗布量として70mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗工し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL−2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗工することで、(CL−1)と(CL−2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL−1)と(CL−2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
【0180】
次に、第1及び第2の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。
【0181】
別途、二軸押出機を用いて、シーラント層としての最外層及び最内層の各種材料のコンパウンドを作製した。そして、水冷・ペレタイズした。ここで、最外層として用いた材料は(AR−1):(AR−2)=3:1(重量比)の組成物であり、最内層として用いた材料は(ホモPP)である。
【0182】
次に、上記金属箔層、腐食防止処理層、基材層を備えるシートを押出ラミネート機の巻出部にセットし、その第2の腐食防止処理層上に290℃、100m/分の加工条件でシーラント層の材料を共押出しすることで、シーラント層として金属箔側の層(最外層)(厚さ10μm)及び最内層(厚さ20μm)をこの順で積層した。
【0183】
このようにして得られた積層体を、該積層体の最高到達温度が190℃になるように、熱処理を施して、参考例1の外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/金属箔層/第2の腐食防止処理層/最外層/最内層、の積層体)を製造した。
【0184】
上記で形成されたシーラント層は、100〜120℃の範囲に結晶化温度ピークが存在し、120℃を超える範囲には結晶化温度ピークが存在しなかった。ここで結晶化温度の測定は、JIS K 7121に準拠してDSCにより行った。
【0185】
参考例2]
最内層を構成する材料を(ブロックPP)に変更したこと以外は参考例1と同様にして、外装材を製造した。
【0186】
[実施例3]
最内層を構成する材料として(ランダムPP):(AD−1)=7:3(重量比)の組成物を用いたこと、及び、最内層に対して(ホモPP)を、最内層の質量を基準として10質量%配合したこと以外は参考例1と同様にして、外装材を製造した。
【0187】
[実施例4]
最内層ではなく最外層に対して(ホモPP)を、最外層の質量を基準として10質量%配合したこと以外は実施例3と同様にして、外装材を製造した。
【0188】
[実施例5]
最内層と最外層の両方に対して(ホモPP)を、それぞれの層の質量を基準として10質量%配合したこと以外は実施例3と同様にして、外装材を製造した。
【0189】
[実施例6]
最内層の厚さを半分(10μm)にしたこと、及び、最内層と同一構成の層を中間層として設け、最内層ではなく中間層に対して(ホモPP)を、中間層の質量を基準として10質量%配合したこと以外は実施例3と同様にして、外装材を製造した。
【0190】
[実施例7]
最内層に対して(AD−3)を、シーラント層全体の質量を基準として0.005質量%配合したこと以外は参考例1と同様にして、外装材を製造した。この場合において、形成されたシーラント層は、結晶化温度ピークが100〜120℃の範囲に存在するだけでなく、120℃を超える範囲にも存在した。
【0191】
[実施例8]
最内層を構成する材料として(ランダムPP):(AD−1)=7:3(重量比)の組成物を用いたこと以外は実施例7と同様にして、外装材を製造した。この場合において、形成されたシーラント層は、100〜120℃の範囲に結晶化温度ピークが存在し、120℃を超える範囲には結晶化温度ピークが存在しなかった。
【0192】
[実施例9]
結晶核剤の配合量を0.05質量%に変更したこと以外は実施例8と同様にして、外装材を製造した。
【0193】
[実施例10]
結晶核剤の配合量を0.5質量%に変更したこと以外は実施例8と同様にして、外装材を製造した。
【0194】
[実施例11]
結晶核剤の配合量を1質量%に変更したこと以外は実施例8と同様にして、外装材を製造した。
【0195】
[実施例12]
結晶核剤の配合量を5質量%に変更したこと以外は実施例8と同様にして、外装材を製造した。
【0196】
[実施例13]
結晶核剤の配合量を10質量%に変更したこと以外は実施例8と同様にして、外装材を製造した。
【0197】
[実施例14]
最内層ではなく最外層に対して結晶核剤を配合したこと以外は実施例10と同様にして、外装材を製造した。
【0198】
[実施例15]
最内層と最外層の両方に対して結晶核剤を配合したこと以外は実施例10と同様にして、外装材を製造した。
【0199】
[実施例16]
最内層の厚さを半分(10μm)にしたこと、及び、最内層と同一構成の層を中間層として設け、最内層ではなく中間層に対して結晶核剤を配合したこと以外は実施例10と同様にして、外装材を製造した。
【0200】
[実施例17]
最内層を構成する材料として(ランダムPP):(AD−2)=7:3(重量比)の組成物を用いたこと以外は実施例10と同様にして、外装材を製造した。
【0201】
[実施例18]
最内層を構成する材料として(ランダムPP)のみを用いたこと以外は実施例10と同様にして、外装材を製造した。
【0202】
[実施例19]
結晶核剤の配合量を0.001質量%に変更したこと以外は実施例8と同様にして、外装材を製造した。
【0203】
[実施例20]
結晶核剤の配合量を20質量%に変更したこと以外は実施例8と同様にして、外装材を製造した。
【0204】
[実施例21]
最外層を構成する材料として(AR−1)のみを用いたこと以外は実施例10と同様にして、外装材を製造した。
【0205】
[実施例22]
腐食防止処理層を形成する手段として(CL−1)と(CL−2)との組み合わせから(CL−3)と(CL−2)の組み合わせに変更したこと以外は実施例10と同様にして、外装材を製造した。すなわち、腐食防止処理層の形成においては、金属箔層の両方の面に(CL−3)を、ドライ塗布量として30mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗工し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL−2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗工することで、(CL−3)と(CL−2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL−3)と(CL−2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
【0206】
[実施例23]
腐食防止処理層を形成する手段として(CL−1)と(CL−2)との組み合わせから(CL−3)のみに変更したこと以外は実施例10と同様にして、外装材を製造した。すなわち、腐食防止処理層の形成においては、金属箔層の両方の面に(CL−3)を、ドライ塗布量として30mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗工し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施すことで、第1及び第2の腐食防止処理層を形成した。
【0207】
[実施例24]
最外層の代わりに第2の接着剤層を形成したこと以外は実施例10と同様にして、外装材を製造した。すなわち、第2の接着剤の形成においては、第1及び第2の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。次いで、第1及び第2の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第2の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、これを接着剤A(第2の接着剤層)を用いて、シーラント層の最内層として準備した層(厚さ20μm)に貼り付けた。
【0208】
このようにして得られた積層体を、40℃で4日間のエージング処理を施して、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/金属箔層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/最内層、の積層体)を製造した。
【0209】
[実施例25]
第2の接着剤層を構成する材料を接着剤Bに変更したこと以外は実施例24と同様にして、外装材を製造した。
【0210】
[比較例1]
結晶核剤の配合量を0.5質量%に変更したこと以外は実施例7と同様にして、外装材を製造した。この場合において、形成されたシーラント層は、結晶化温度ピークが100〜120℃の範囲には存在せず、120℃を超える範囲に存在した(125℃)。
【0211】
[比較例2]
最内層を構成する材料として(ランダムPP):(AD−1)=7:3(重量比)の組成物を用いたこと以外は参考例1と同様にして、外装材を製造した。この場合において、形成されたシーラント層は、結晶化温度ピークが100〜120℃の範囲に存在しなかった(98℃)。
【0212】
<評価>
参考例、実施例及び比較例で得られた外装材に対し、以下の評価試験を行った。
【0213】
(電解液ラミネート強度)
エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPFを1Mになるように加えた電解液をテフロン(登録商標)容器に充填し、その中に外装材を15mm×100mmにカットしたサンプルを入れ、密栓後85℃、24時間で保管した。その後、共洗し、金属箔層/シーラント層間又は金属箔層/第2の接着剤層間のラミネート強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/minで行った。その結果に基づき、以下の基準で評価した。
A:ラミネート強度が9N/15mm超
B:ラミネート強度が7N/15mm以上、9N/15mm以下
C:ラミネート強度が5N/15mm以上、7N/15mm未満
D:ラミネート強度が5N/15mm未満
【0214】
(電解液ヒートシール強度)
外装材を60mm×120mmにカットしたサンプルを2つに折り畳み、1辺を10mm幅のシールバーで190℃、0.5MPa、3secで熱封緘した。その後、残りの2辺も熱封緘し袋状になった外装材に、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPFを1Mになるように加えた電解液を2ml注入したパウチを60℃で24時間保管後、熱封緘1辺目を15mm幅にカットし(図3を参照)、シール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。試験は、JIS K6854に準じ、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/minで行った。その結果に基づき、以下の基準で評価した。
A:シール強度が80N/15mm以上、バースト幅が5mm超
B:シール強度が80N/15mm以上、バースト幅が3〜5mm
C:シール強度が60N/15mm以上、80N/15mm未満
D:シール強度が60N/15mm未満
【0215】
(デガッシングヒートシール強度)
外装材を75mm×150mmにカットしたサンプルを37.5mm×150mmに2つ折りにした後(図4(a)を参照)、150mm辺と37.5mm辺の一方をヒートシールし、製袋する。その後、パウチ内に、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPFを1Mになるように加えた電解液を5ml注液し、37.5mm辺の他方をヒートシールして、シール部S1により密封されたパウチを得た。次いで、このパウチを60℃で24時間保管した後、電解液を含んだ状態でパウチ中央部を190℃、0.3MPa、2secでヒートシールした(デガッシングシール部S2、図4(b)を参照)。シール部を安定化させるため、常温で24時間保管後、デガッシングシール部S2を含む領域を15mm幅にカットし(図4(c)を参照)、ヒートシール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/minで行った。その結果に基づき、以下の基準で評価した。
A:シール強度が60N/15mm以上
B:シール強度が40N/15mm以上、60N/15mm未満
C:シール強度が30N/15mm以上、40N/15mm未満
D:シール強度が30N/15mm未満
【0216】
(成型後の白化)
外装材の常態のサンプル及び60℃で1週間保管したサンプルを、120mm×200mmにカットし、シーラント層が成型機の凸部に接するように冷間成型用金型にセットし、成型速度5mm/secで2mmの深絞りを行った。その後、最も延伸が厳しいフィルム押さえ部側の辺の白化を観察した。金型には、成型エリアが80mm×70mm(角筒型)、パンチコーナーラジアス(RCP)が1.0mmのものを用いた。その結果に基づき、以下の基準で評価した。なお、評価がC以上であれば実用上問題ないと言える。
A:常態のサンプル及び60℃1週間保管のサンプル共に白化なし
B:常態のサンプルで白化なし、60℃1週間保管のサンプルで薄く白化
C:常態のサンプルで薄く白化、60℃1週間保管のサンプルで白化
D:常態のサンプルで白化
【0217】
(成型後の絶縁性)
外装材を120mm×200mmにカットしたサンプル40を、シーラント層が成型機の凸部に接するように冷間成型用金型にセットし、成型速度15mm/secで2.0mmの深絞りを行って深絞り部41を形成した後、120mm×100mmに2つ折りにした(図5(a)を参照)。次いで、タブ42とタブシーラント43とを間に挟んだ状態で100mmの上辺部44をヒートシールした後(図5(b)を参照)、120mmの側辺部45をヒートシールして製袋した(図5(c)を参照)。その後、電極を接触させるために、サンプル40の外層の一部を削って金属箔層の露出部46を形成した(図5(d)を参照)。次いで、パウチ内に、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPFを1Mになるように加えた電解液を5ml注液し、100mmの下辺部47をヒートシールにて封止した(図5(e)を参照)。次いで、60℃のオーブンに1週間保管した後、タブ42と金属箔層の露出部46に電極48a,48bをそれぞれ接続し、耐電圧・絶縁抵抗試験器(KIKUSUI製、「TOS9201」)を用いて25Vを印加し、そのときの抵抗値を測定した(図5(f)を参照)。金型には、成型エリアが80mm×70mm(角筒型)、パンチコーナーラジアス(RCP)が1.0mmのものを用いた。その結果に基づき、以下の基準で評価した。
A:抵抗値が200MΩ超
B:抵抗値が100MΩ以上200MΩ以下
C:抵抗値が30MΩ以上100MΩ未満
D:抵抗値が30MΩ未満
【0218】
(総合品質)
参考例、実施例及び比較例の層構成と、上記各評価の結果を表1及び表2に示す。表中、各評価結果にD評価がないものは、総合的な品質が優れていると言える。
【表1】

【表2】
【0219】
表1及び2に示した結果から明らかなように、参考例1〜2、実施例〜25の外装材は、成型後の絶縁性に優れることが確認された。また、参考例1〜2、実施例25の外装材は、電解液ラミネート強度、電解液ヒートシール強度、デガッシングヒートシール強度、成型白化においても十分な性能を有していることが確認された。これに対し、比較例1の外装材は電解液ヒートシール強度及びデガッシングヒートシール強度が劣り、比較例2の外装材は成型後の絶縁性が劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明は、蓄電装置の外装材として有用である。
【符号の説明】
【0221】
10,20…蓄電装置用外装材、11…基材層、12…第1の接着剤層、13…金属箔層、14…腐食防止処理層、16,16A…シーラント層、16a…最外層、16b…中間層、16c…最内層、17…第2の接着剤層、40…サンプル、41…深絞り部、42…タブ、43…タブシーラント、44…上辺部、45…側辺部、46…金属箔層の露出部、47…下辺部、48a,48b…電極、S1…シール部、S2…デガッシングシール部。
図1
図2
図3
図4
図5