(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,本発明に係る画像処理装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,バス接続先の電源から電力の供給を受けることができる装置であって,画像処理機能を備えた複合機(MFP:Multi Function Peripheral)に本発明を適用したものである。
【0014】
本形態のMFP100は,
図1に示すように,画像処理部10と,操作パネル40と,電源キー60と,USBコネクタ70と,電源プラグ90と,を備えている。画像処理部10は,画像形成部11と画像読取部12とを含む。MFP100は,電源プラグ90が商用電源を供給するソケットに差し込まれることにより,商用電源からの電力の供給を受ける。電源プラグ90は,第1受給口の一例である。
【0015】
画像形成部11は,シートに画像を印刷するための構成である。画像形成部11の画像形成方式は,電子写真方式であっても,インクジェット方式であってもよい。本形態のMFP100は,カラー画像の形成が可能な装置であってもよいし,モノクロ印刷専用の装置であってもよい。また,MFP100は,両面印刷可能な装置であってもよいし,片面印刷専用の装置であってもよい。
【0016】
画像読取部12は,原稿の画像を読み取るための構成である。読取方式は,CCD方式であってもCIS方式であってもよい。本形態のMFP100は,カラー読み取りが可能な装置であってもよいし,モノクロ読み取り専用の装置であってもよい。また,本形態のMFP100は,両面読み取り可能な装置であってもよいし,片面読み取り専用の装置であってもよい。また,本形態のMFP100は,自動原稿送り装置を備える装置であってもよいし,備えない装置であってもよい。
【0017】
操作パネル40は,
図1に示すように,液晶ディスプレイ41と,ボタン群42とを備える。MFP100は,各種の情報や装置の状態を操作パネル40の液晶ディスプレイ41に表示させる。ボタン群42には,実行ボタン,キャンセルボタン,テンキー等が設けられている。MFP100は,ボタン群42への操作によって画像処理部10の動作の指示を受け付ける。
【0018】
電源キー60は,後述するように,モーメンタリタイプのスイッチ(第5スイッチ56,
図2参照)と連動されている。つまり,電源キー60へのユーザによる操作を受けている期間中のみ,第5スイッチ56は導通状態となり,ユーザの操作を受けない期間は非導通状態となる。MFP100は,電源キー60への操作を受け付けた場合,画像処理部10への電力の供給状態を切り替える。電源キー60の詳細については後述する。
【0019】
また,USBコネクタ70は,いわゆるUSB−Bソケットであり,USB規格に準ずるUSBプラグの差し込み口である。MFP100は,USB−Bプラグを備えるUSBケーブルがUSBコネクタ70に差し込まれることで,当該USBケーブルを介して,PC等のホスト側装置に接続される。MFP100は,USBコネクタ70にホスト側装置が接続された状態では,USBケーブルを介してホスト側装置から5V程度の電力の供給を受けることができる。USBコネクタ70は,第2受給口の一例である。USBコネクタ70に接続されたホスト側装置は,バス接続先の電源の一例である。
【0020】
なお,USBコネクタ70は,USB規格に準ずるインターフェース機能を有している。MFP100は,例えば,プラグアンドプレイ(PnP)応答を行う。つまり,MFP100は,ホスト側装置から送信される応答要求信号に対応して,応答信号をホスト側装置へ送信することで,ホスト側装置と通信可能な状態となる。以下では,USBコネクタ70を介した接続を,「USB接続」とする。
【0021】
続いて,本形態のMFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,
図2に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,不揮発性メモリ34とを含むコントローラ30を備えている。また,MFP100は,画像処理部10と,操作パネル40と,電力切替部50と,を備え,これらがコントローラ30に電気的に接続されている。なお,
図2中で,太線の矢印は電力系統を,その供給の向きとともに示している。また,
図2中で,細線の矢印は信号系統を示している。
【0022】
ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは,データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。不揮発性メモリ34は,データや各種設定等を記憶する領域として利用される。不揮発性メモリ34としては,例えば,E2PROM,フラッシュメモリが使用できる。
【0023】
不揮発性メモリ34には,切替情報341が記憶される。切替情報341は,後述する電力の供給モードを第1モードへ切り替えるか否かを示す情報であり,「第1情報」または「第2情報」のいずれかが記憶される。つまり,切替情報341は,「第1情報」であれば電力の供給モードを第1モードへ切り替えることを示し,「第2情報」であれば電力の供給モードを第1モードへ切り替えないことを示す。切替情報341の詳細については後述する。不揮発性メモリ34は,記憶部の一例であり,切替情報341は,特定情報の一例である。なお,本形態では,製造直後のMFP100の切替情報341には,初期値として「第2情報」が記憶される。
【0024】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムに従って,その処理結果をRAM33または不揮発性メモリ34に記憶させながら,MFP100の各構成要素を制御する。CPU31は,制御部の一例である。コントローラ30が,制御部の一例であってもよい。なお,
図2中のコントローラ30は,CPU31等,MFP100の制御に利用されるハードウェアを纏めた総称であって,実際にMFP100に存在する単一のハードウェアを表すとは限らない。
【0025】
電力切替部50は,
図2に示すように,電圧変換器51と,5つのスイッチ(第1スイッチ52,第2スイッチ53,第3スイッチ54,第4スイッチ55,第5スイッチ56)を備えている。電力切替部50は,電源プラグ90を介して商用電源から供給される電力と,USBコネクタ70を介して接続されるホスト側装置から供給される電力との供給を受け,コントローラ30と,画像処理部10と,操作パネル40と,に電力を供給する。電圧変換器51は,供給を受けた電力の電圧を,それぞれの供給先にて必要な電圧に変換して出力する。
【0026】
電力切替部50の第1スイッチ52〜第4スイッチ55は,
図2に示すように,電力の供給路を開閉するオルタネートタイプのスイッチである。具体的に,第1スイッチ52は,USB接続されたホスト側装置から電圧変換器51への電力の供給路を開閉する。第2スイッチ53は,電圧変換器51からコントローラ30への電力の供給路を開閉する。第3スイッチ54は,電圧変換器51から画像処理部10への電力の供給路を開閉する。第4スイッチ55は,電圧変換器51から操作パネル40への電力の供給路を開閉する。以下では,第1スイッチ52〜第4スイッチ55について,電力の供給路を導通させて電力の供給が可能な状態を「閉」,電力の供給路を導通させず電力の供給が不可能な状態を「開」とする。
【0027】
そして,第1スイッチ52〜第4スイッチ55は,電力切替部50に電力が供給されていない状態では,開閉状態が不定となる。そして,第1スイッチ52〜第4スイッチ55は,電力切替部50に電力が供給されていない状態から供給されている状態に変化したことを契機に,開閉状態が初期状態にリセットされるように構成されている。電力切替部50に供給される電力は,電源プラグ90から供給されてもよいし,USBコネクタ70から供給されてもよい。本形態では,各スイッチの初期状態は,以下の通りである。
第1スイッチ52:「閉」
第2スイッチ53:「閉」
第3スイッチ54:「開」
第4スイッチ55:「開」
【0028】
そして,第1スイッチ52〜第4スイッチ55は,コントローラ30からの制御信号に基づいて電力切替部50にて切り替えられる。電力切替部50への電力の供給が継続されていれば,コントローラ30から再度の制御信号を受け付けるまで,第1スイッチ52〜第4スイッチ55は,切り替えられた状態を維持する。また,切り替え後,一旦,電力切替部50に電力が供給されていない状態となり,その後,供給されている状態に変化した場合には,第1スイッチ52〜第4スイッチ55は,前述した初期状態に変化する。
【0029】
第5スイッチ56は,前述したように,電源キー60によって開閉されるモーメンタリタイプのスイッチである。電源キー60が操作されている期間中は,第2スイッチ53の開閉状態に関わらず,第5スイッチ56によって,電圧変換器51からコントローラ30への電力の供給路が導通状態となる。また,電源キー60への操作を受け付けた場合,受け付けたことを示す信号が,コントローラ30に入力される。なお,
図2中の各スイッチ(第1スイッチ52〜第5スイッチ56)は,電気的接続状態を切り替える手段を分かり易く示すための模式図である。第1スイッチ52〜第5スイッチ56としては,例えば,リレーなどの機械的に設定を切り替える部品,パワーFETやパワートランジスタなどからなる半導体スイッチが適用可能である。
【0030】
続いて,MFP100における電力の供給モードについて説明する。MFP100は,電力の供給モードとして,例えば,
図3に示すように,少なくとも以下の3種類のモードを有している。なお,
図3では,電力の供給を行う場合に「○」,電力の供給を行わない場合に「×」で示している。
第1モード:コントローラ30と画像処理部10とのどちらにも電力を供給しない。
第2モード:コントローラ30へは電力を供給し,画像処理部10へは電力を供給しない。
第3モード:コントローラ30と画像処理部10との両方へ電力を供給する。
【0031】
第1モードは,第2スイッチ53と第3スイッチ54とをともに「開」とした状態での供給モードである。第2モードは,第2スイッチ53を「閉」,第3スイッチ54を「開」とした状態での供給モードである。第3モードは,第2スイッチ53と第3スイッチ54とをともに「閉」とした状態での供給モードである。
【0032】
なお,MFP100は,第3モードでは,第4スイッチ55を「閉」として,操作パネル40へも電力を供給する。第1モードと第2モードには,第4スイッチ55を「閉」として操作パネル40へ電力を供給するモードと,第4スイッチ55を「開」として操作パネル40へ電力を供給しないモードとがあってもよい。
【0033】
本形態のMFP100は,画像処理部10へ電力を供給する場合には操作パネル40へも電力を供給し,画像処理部10へ電力を供給しない場合には操作パネル40へも電力を供給しないものとしている。つまり,本形態では,第4スイッチ55は常に,第3スイッチ54と同じ開閉状態となる。なお,電力の供給先は,コントローラ30と画像処理部10と操作パネル40に限らず,さらに他の供給先が有ってもよい。その場合には,他の供給先への電力の供給路にもさらにスイッチが有ってもよい。
【0034】
そして,MFP100では,
図4に示すように,電力の供給モードは,条件に応じて異なるモードに移行する。
図4は,電力の供給モードの移行手順と,各スイッチ52〜55の状態とを示す説明図である。MFP100は,電源プラグ90とUSBコネクタ70とのいずれからも電力の供給を受けていない状態では,
図4中の左端の「状態1」に示すように,各スイッチ52〜55の状態は不定であり,供給モードも定まっていない。ただし,外部からの電力の供給を受けていないので,MFP100は,装置内のいずれの箇所へも電力を供給することはない。
【0035】
「状態1」から,電源プラグ90がソケットに差し込まれた場合には,MFP100の電力切替部50は,商用電源から電力の供給を受ける。また,「状態1」から,USBコネクタ70にホスト側装置が接続された場合,MFP100の電力切替部50は,ホスト側装置から電力の供給を受ける。
【0036】
電源プラグ90またはUSBコネクタ70のいずれかから電力の供給を受けたことを契機に,前述したように,各スイッチの開閉状態がリセットされ,
図4中の「状態2」に移行する。「状態2」では,第1スイッチ52と第2スイッチ53とが「閉」であり,第3スイッチ54と第4スイッチ55とが「開」である。そして,第2スイッチ53が「閉」であることから,電力切替部50は,コントローラ30へ電力を供給する。一方,第3スイッチ54と第4スイッチ55が「開」であることから,電力切替部50は,画像処理部10と操作パネル40とへは電力を供給しない。すなわち,電力切替部50は,電力の供給を受けていない状態から電力の供給を受けることにより,第2モードでの電力の供給を開始する。
【0037】
そして,電力の供給を受けていない状態から第2モードでの電力の供給を開始し,コントローラ30へ電力が供給されることにより,CPU31が起動される。CPU31は,起動時に実行するように設定された処理であるモード移行処理の実行を開始する。モード移行処理では,CPU31は,商用電源から電力の供給を受けているか否かの第1の判断と,切替情報341が「第1情報」であるか否かの第2の判断とを実行する。さらに,CPU31は,第1の判断と第2の判断との判断結果に基づいて,
図4に示すように,電力の供給モードを切り替える。モード移行処理の詳細については,後述する。
【0038】
そして,CPU31は,第1の判断にて,商用電源からの電力の供給が有ると判断した場合,
図4中の「状態3」に示すように,電力の供給モードを第3モードに切り替える。具体的に,CPU31は,第1スイッチ52を「開」,第3スイッチ54と第4スイッチ55とを「閉」に切り替える信号を,電力切替部50に送信する。これにより,電力切替部50は,商用電源から供給を受ける電力を,コントローラ30と画像処理部10と操作パネル40とへ供給する。そして,MFP100は,商用電源からの電力の供給を受けている場合,ホスト側装置からの電力の供給を受けない。
【0039】
また,CPU31は,第1の判断にて,商用電源からの電力の供給が無いと判断し,かつ,第2の判断にて,切替情報341が「第1情報」であると判断した場合,
図4中の「状態4」に示すように,電力の供給モードを第1モードに切り替える。具体的に,CPU31は,第1スイッチ52を「開」に切り替える信号を,電力切替部50に送信する。これにより,電力切替部50は,商用電源からもホスト側装置からも電力の供給を受けないので,コントローラ30へも画像処理部10へも電力を供給できない。
【0040】
また,CPU31は,第1の判断にて,商用電源からの電力の供給が無いと判断し,かつ,第2の判断にて,切替情報341が「第1情報」ではなく「第2情報」であると判断した場合,
図4中の「状態5」に示すように,電力の供給モードを第2モードのままとする。具体的に,CPU31は,スイッチを切り替える信号を送信しない。これにより,電力切替部50は,ホスト側装置から電力の供給を受けて,コントローラ30へは電力を供給し,画像処理部10へは電力を供給しない。なお,「状態5」で動作中にUSBコネクタ70からUSBプラグが抜かれると,MFP100は,電力の供給を受けない状態となり,コントローラ30への電力の供給は停止される。
【0041】
続いて,本形態のMFP100にて,上述した電力供給モードの切り替え動作を実現するモード移行処理の手順について,
図5のフローチャートを参照して説明する。このモード移行処理は,MFP100が電力の供給を受けていない状態から,電力の供給を受けたことを契機に,つまり,コントローラ30へ電力が供給され,CPU31が起動されたことを契機に,CPU31にて実行される。このモード移行処理の開始時には,電力の供給モードは第2モードであり,コントローラ30には電力が供給されており,画像処理部10には電力が供給されていない。
【0042】
モード移行処理では,CPU31は,まず,商用電源から電力の供給を受けているか否かを判断するために,電力切替部50の電圧変換器51から波形信号を受信する(S101)。電圧変換器51は,供給を受けている電力に基づいて,例えば,交流電圧の絶対値がゼロとなるタイミングであるゼロクロスポイントを検出するための波形信号を生成する構成を含んでいる。CPU31は,電圧変換器51から受信した波形信号に基づいて,ゼロクロスポイントを検出する。
【0043】
電力切替部50に商用電源から交流の電力が入力されていれば,受信した波形信号から複数のゼロクロスポイントが検出される。そして,電力切替部50にて商用電源からの電力の供給を受けていれば,波形信号から単位時間あたりに検出されるゼロクロスポイントの数は,所定値よりも大きい。そこで,CPU31は,所定時間内に受信した波形信号に基づいて,ゼロクロスポイントを検出し,単位時間あたりのゼロクロスポイントの数が所定値よりも大きければ,商用電源から電力の供給を受けていると判断する。所定時間は例えば100msであり,所定値は例えば5である。
【0044】
そして,CPU31は,波形信号から単位時間あたりに検出されるゼロクロスポイントの数が所定値を超えているか否かを判断する(S102)。S102は,第1判断処理の一例である。ゼロクロスポイントの数が所定値以下であると判断した場合(S102:NO),CPU31は,所定時間が経過したか否かを判断する(S103)。所定時間が経過していないと判断した場合(S103:NO),さらに継続して波形信号を受信する。
【0045】
ゼロクロスポイントの数が所定値より大きくないままで所定時間が経過したと判断した場合(S103:YES),CPU31は,不揮発性メモリ34の切替情報341が「第1情報」であるか否かを判断する(S104)。S104は,第2判断処理の一例である。所定時間が経過してもゼロクロスポイントの数が所定値を超えない場合には,CPU31は,商用電源から電力の供給を受けていないと判断する。つまり,本処理の契機となった電力の供給は,ホスト側装置からの供給であり,MFP100は,ホスト側装置からの電力のみの供給を受けている状態である。そこで,CPU31は,ホスト側装置からの電力のみによる動作が許容されているか否かを判断する。
【0046】
なお,ホスト側装置からのみ電力の供給を受けて,CPU31を起動させる場合,消費電力は,ホスト側装置がUSBバス経由で供給できる電力の上限である2.5W以下であることが望ましい。そのため,コントローラ30は,モード移行処理の実行開始時には,画像処理部10への供給電力を抑える他,操作パネル40やネットワークインターフェースやSDRAMへの供給電力を抑える,複数のCPUを備えている場合には全部のCPUを起動しないで一部のCPUだけを起動する,等とするとよい。このようにすれば,供給されている電力がホスト側装置からの電力のみであっても,CPU31は,安定して起動され,モード移行処理を実行できる。
【0047】
そして,CPU31は,切替情報341が「第1情報」であると判断した場合(S104:YES),CPU31は,電力の供給モードを第2モードから第1モードへ移行させ(S106),このモード移行処理を終了する。具体的には,
図4中の「状態4」に示したように,CPU31は,電力切替部50に,第1スイッチ52を「閉」から「開」に切り替える指示を送信する。電力切替部50によって第1スイッチ52が「開」とされると,コントローラ30への電力の供給が無くなり,CPU31は処理の実行ができなくなる。そのため,モード移行処理は,終了される。
【0048】
一方,切替情報341が「第1情報」ではなく「第2情報」であると判断した場合(S104:NO),CPU31は,電力の供給モードを切り替えない。つまり,CPU31は,第1スイッチ52〜第4スイッチ55を切り替える指示を送信しない。そして,CPU31は,ホスト側装置から供給を受ける電力によって動作を継続し,第2モードでの動作時の処理である第2モード処理を実行する(S108)。S106およびS108は,電源制御処理の一例である。
【0049】
次に,第2モードでの電力の供給を受けている場合のCPU31の処理である第2モード処理の手順について,
図6のフローチャートを参照して説明する。第2モード処理は,商用電源からの電力の供給を受けていない状態で,USBコネクタ70に接続されたホスト側装置から供給される電力をコントローラ30へ供給し,画像処理部10へは供給しないモードにおいて,CPU31にて実行される処理である。
【0050】
第2モード処理では,CPU31は,まず,USB接続されているPC等のホスト側装置から送信される応答要求信号に応答して,応答信号を送信する(S201)。CPU31は,USBコネクタ70を介して,例えば,PnP応答を行う。これにより,MFP100は,USB接続されたホスト側装置との通信が可能となる。なお,USB接続されたホスト側装置からは,USB接続された直後から,応答要求信号が送信されている場合がある。しかし,MFP100は,第2モードでの電力の供給を継続すると決定されるまでは,応答信号を送信しない。これにより,第2モードでの電力の供給を継続すると決定されるまでは,ホスト側装置はMFP100を認識できない。従って,第2モードを継続しない場合に,ホスト側装置のディスプレイにUSB機器が接続されたことを示すポップアップ画面が表示されることは抑制される。
【0051】
次に,CPU31は,ホスト側装置から,コマンド等の情報を受信したか否かを判断する(S202)。コマンド等の情報を受信していないと判断した場合(S202:NO),CPU31は,受信していない状態が一定時間以上継続し,タイムアウトとなったか否かを判断する(S203)。タイムアウトとなっていないと判断した場合(S203:NO),CPU31は,さらにコマンドの受信を待つ。
【0052】
一方,タイムアウトとなったと判断した場合(S203:YES),CPU31は,電力の供給モードを第2モードから第1モードへ移行させ(S204),第2モード処理を終了する。具体的には,モード移行処理のS106と同様に,電力切替部50に,第1スイッチ52を「閉」から「開」に切り替える指示を送信する。これにより,CPU31は電力の供給を受けなくなるので,第2モード処理は終了される。
【0053】
第2モードのままコマンドの受信を長時間待機すると,消費電力量が大きくなる可能性が高い。ホスト側装置からのみ電力の供給を受けている状態では,消費電力量が大きくなることは好ましくないので,MFP100は,タイムアウトとなったと判断したら,自動的にUSB接続されているホスト側装置からの電力の供給も切断して,それ以上の電力消費を抑える。
【0054】
タイムアウトとなる前にホスト側装置からコマンドを受信したと判断した場合(S202:YES),CPU31は,受信したコマンドが切替情報341の設定コマンドであるか否かを判断する(S206)。切替情報341の設定コマンドであると判断した場合(S206:YES),CPU31は,設定コマンドの指定に従って,不揮発性メモリ34の切替情報341に「第1情報」または「第2情報」を記憶させる(S207)。
【0055】
第2モードで動作中に,切替情報341を「第1情報」とさせるコマンドを受け付けることで,MFP100は,次回以降の起動時には,第2モードでの動作を継続せず,第1モードへ移行するように設定できる。例えば,製造後で出荷前にファームウェア等を書き換えた場合,書き換え後に切替情報341を「第1情報」とすることで,それ以後は,ホスト側装置が接続されてもファームウェア等の書き換えを受け付けないようにすることができる。また,出荷前に切替情報341を「第1情報」とすれば,ユーザ環境での第2モードの動作機会を低減できる。
【0056】
S207の後,または,切替情報341の設定コマンドではないと判断した場合(S206:NO),CPU31は,受信したコマンドが設定情報やファームウェアの書換指示であるか否かを判断する(S208)。設定情報やファームウェアの書換指示であると判断した場合(S208:YES),CPU31は,受信したコマンドに基づいて,指示された動作を実行する(S209)。例えば,コマンドがファームウェアの書換指示であれば,CPU31は,書換対象の情報を書き換える。つまり,CPU31は,ROM32または不揮発性メモリ34に記憶されている情報を,コマンドの指示に基づいて書き換える。
【0057】
S209の後,または,設定情報やファームウェアの書換指示ではないと判断した場合(S208:NO),CPU31は,受信したコマンドが画像処理を含むジョブであるか否かを判断する(S210)。画像処理を含むジョブであると判断した場合(S210:YES),CPU31は,受信したデータを読み捨てる(S211)。第2モードでは,供給されている電力が小さく,画像処理を実行できない可能性が高い。そのため,第2モードで画像処理を含むジョブを受信した場合には,データを読み捨てる方がRAM33の負荷が少ない。なおCPU31は,ジョブを実行しないことを報知する信号を,接続されているホスト側装置に送信させてもよい。
【0058】
S211の後,または,画像処理を含むジョブではないと判断した場合(S210:NO),CPU31は,S202に戻って,ホスト側装置からのコマンドをさらに受け付ける。そして,S203にてタイムアウトと判断されるまで,コマンドの受付を行う。なお,CPU31は,ホスト側装置から,
図6に示した以外にさらに他の種類の指示やコマンドを受け付けてもよい。例えば,第2モード処理を終了する指示を受け付けてもよい。
【0059】
なお,第2モード処理の実行中に,USBコネクタ70へのホスト側装置からの電力の供給が失われた場合,つまり,USBコネクタ70からUSBプラグが抜かれた場合やホスト側装置の電源機能が停止された場合には,CPU31による処理の実行ができなくなる。この場合にも,第2モード処理は終了される。
【0060】
図5のモード移行処理の説明に戻り,S103にて所定時間が経過したと判断する前に,ゼロクロスポイントの数が所定値を超えたと判断した場合(S102:YES),CPU31は,商用電力処理を実行する(S109)。CPU31は,波形信号から単位時間あたりに検出されるゼロクロスポイントの数が所定値より大きい場合に,商用電源からの電力の供給を受けていると判断する。つまり,商用電力処理は,少なくとも商用電源から電力の供給を受けている場合の処理である。
【0061】
次に,商用電力処理の手順について,
図7のフローチャートを参照して説明する。商用電力処理では,CPU31は,まず,不揮発性メモリ34の切替情報341が「第1情報」であるか否かを判断する(S301)。そして,「第1情報」ではないと判断した場合(S301:NO),CPU31は,切替情報341に「第1情報」を記憶させる(S302)。つまり,CPU31は,不揮発性メモリ34に,第1モードへ切り替えることを示す情報を記憶させる。なお,S301の判断を省略して,切替情報341に「第1情報」を上書きして記憶させるとしてもよい。
【0062】
切替情報341が「第1情報」であれば,前述したように,USB接続されたホスト側装置から供給を受ける電力のみによるコントローラ30の動作は制限される。MFP100は,1回でも商用電源を用いてコントローラ30を起動した場合や,ホスト側装置からのコマンドによる指示を受け付けた場合に,切替情報341に「第1情報」を記憶させる。例えば,商用電源から電力が供給された場合には,MFP100がユーザ環境にある可能性が高い。そのため,切替情報341を「第1情報」に設定して,以後の第2モードでの動作を制限する。なお,MFP100は,操作パネル40からの入力によっても,切替情報341を「第1情報」とする指示を受け付けてもよい。
【0063】
S302の後,または,切替情報341が「第1情報」となっていると判断した場合(S301:YES),CPU31は,USB接続されているホスト側装置が有るか否かを判断する(S306)。USBコネクタ70にホスト側装置が接続されている状態では,ホスト側装置から電力切替部50へ,電圧信号が入力される。CPU31は,電力切替部50に入力されている電圧信号の有無に基づいて,USB接続されたホスト側装置の有無を判断する。
【0064】
そして,USB接続されているホスト側装置が有ると判断した場合(S306:YES),CPU31は,ホスト側装置からの電力の供給を停止させる(S307)。具体的には,CPU31は,電力切替部50に,第1スイッチ52を「閉」から「開」に切り替えさせる信号を送信する。第1スイッチ52が「開」となることで,USB接続されているホスト側装置からの電力の供給が停止される。
【0065】
つまり,MFP100では,商用電源から電力が供給されている場合には,ホスト側装置からの電力供給を制限して,商用電源からの電力のみを使用する。これにより,例えば,商用電源からの電力供給が突然切断された場合でも,ホスト側装置に過電流が流れる可能性を低減できる。なお,MFP100は,ホスト側装置からの電力供給を制限した状態でも,USBコネクタ70に差し込まれているUSBプラグの有無を検知できる。
【0066】
さらに,CPU31は,ホスト側装置から送信される応答要求信号に応答する応答信号を送信する(S308)。S308は,第2モード処理のS201と同様の処理である。つまり,MFP100は,商用電源から電力が供給されている場合には,ホスト側装置からの電力供給を制限するが,ホスト側装置との信号の通信は制限しない。なお,S307とS308とは,逆順でもよいし,同時でもよい。
【0067】
そして,S308の後,または,USB接続されているホスト側装置が無いと判断した場合(S306:NO),CPU31は,電力の供給モードを第2モードから第3モードへ移行させる(S310)。具体的には,CPU31は,
図4中の「状態3」に示したように,電力切替部50に,第1スイッチ52を「閉」から「開」に切り替える指示と,第3スイッチ54を「開」から「閉」に切り替える指示と,第4スイッチ55を「開」から「閉」に切り替える指示とを送信する。
【0068】
これにより,MFP100は,画像処理部10を含む各部への電力の供給を制限しない第3モードとなり,ユーザの指示を受け付けた場合には,その指示に基づいて通常の動作を実行する。通常の動作としては,画像処理を含む動作であってもよく,例えば,印刷,コピー,スキャンが該当する。また,通常の動作には,操作パネル40を介した各種の入力に対する処理,USB接続先からのデータの受信,USB接続先へのデータの送信も含まれる。
【0069】
そして,CPU31は,電源キー60への操作を受け付けたか否かを判断する(S312)。電源キー60への操作を受け付けると,前述したように,電力切替部50の第5スイッチ56(
図2参照)が「閉」となるとともに,操作を受け付けたことを示す信号がコントローラ30へ入力される。電源キー60への操作を受け付けていないと判断した場合(S312:NO),CPU31は,第3モードでの動作を継続する。
【0070】
一方,電源キー60への操作を受け付けたと判断した場合(S312:YES),CPU31は,電力の供給モードを第3モードから第1モードへ移行させ(S305),商用電力処理を終了する。具体的に,CPU31は,電力切替部50に,第2スイッチ53と第3スイッチ54と第4スイッチ55とを「閉」から「開」に切り替える指示を送信する。これにより,コントローラ30への電力の供給が絶たれ,CPU31は処理の実行ができなくなる。そのため,商用電力処理は,終了される。
【0071】
なお,商用電源から電力が供給されている場合であって,電源キー60への操作によって第1モードへ移行した後,再び電源キー60への操作を受け付けた場合,電源キー60への操作によって第5スイッチ56が「閉」となり,コントローラ30への電力の供給が開始される。そして,CPU31が起動され,CPU31は,モード移行処理の実行を開始する。この場合には,CPU31は,商用電源からの電力の供給を受けていると判断するので,電力の供給モードを第3モードへ移行させる。具体的に,CPU31は,電力切替部50に,第2スイッチ53と第3スイッチ54と第4スイッチ55とを「開」から「閉」に切り替える指示を送信する。
【0072】
また,
図6の第2モード処理と,
図7の商用電力処理では,終端として「戻る」を示しているが,これらの処理はいずれも,第1モードへの移行,または,MFP100への電力の供給の停止,によって終了する。つまり,CPU31への電力の供給が遮断されることにより実行を停止するので,実際には,モード移行処理に戻ることはない。そして,CPU31への電力の供給が再開されれば,CPU31は,モード移行処理の実行を開始する。
【0073】
なお,前述した第2モード処理の実行中には,CPU31は,電源キー60への操作を受け付けても,電力の供給モードを変更しない。例えば,USB接続されているホスト側装置からのみ電力が供給されている状態では,電源キー60への操作を受け付けたことを示す信号がコントローラ30へ入力されないように構成されていてもよい。あるいは,第2モード処理の実行中には,CPU31は,電源キー60への操作を受け付けたことを示す信号が入力されても何もしないとしてもよい。これにより,例えば,梱包済みのMFP100にて第2モードにて動作中に電源キー60が押されてしまったとしても,CPU31は,第2モード処理を継続して実行できる。
【0074】
以上,詳細に説明したように,本形態のMFP100は,商用電源からの電力の供給とUSB接続されたホスト側装置からの電力の供給とを受け,画像処理部10とコントローラ30とへの電力の供給を行う。商用電源からもホスト側装置からも電力の供給を受けていない状態から,少なくとも一方から電力の供給を受けている状態に変化した場合,MFP100は,まず,コントローラ30には電力を供給し,画像処理部10には電力を供給しない第2モードでの電力の供給を開始する。これにより,CPU31が起動され,商用電源からの電力の供給を受けておらず,かつ,切替情報341が「第1情報」である場合には,電力の供給モードを第2モードから第1モードへ切り替える。第2モードでの動作は,画像処理を行わない一方で電力を消費するため,ユーザ環境では電力の無駄が大きい。MFP100では,切替情報341が「第1情報」であれば,第2モードでの動作が制限されるので,第2モードでの動作の機会が少ない。従って,例えば,ユーザ環境でも第2モードの利用を制限しない場合と比較して,第2モードで動作する機会の低減が図られ,結果として電力の無駄の軽減が期待できる。
【0075】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,複合機に限らず,複写機,プリンタ,スキャナ,FAX装置など,画像処理機能を備え,商用電源からとUSB接続先の電源からとのいずれからも電力の供給を受けることのできる装置であれば適用可能である。
【0076】
また,第2モードは,画像処理部10に電力を供給しないモードであればよい。第2モードでの電力の供給先は,コントローラ30全体に限らず,例えば,コントローラ30のうちの一部のみとしてもよいし,操作パネル40の一部等のコントローラ30以外の箇所にも供給してもよい。
【0077】
また,第2モード処理のS203におけるタイムアウトは,無くてもよい。つまり,USBコネクタ70からプラグが抜かれるまで,コマンドの送信を待ち続けてもよい。ただし,タイムアウトの判断を行った方が,省電力となる可能性が高いので好ましい。さらに,タイムアウトとなるまでの一定時間は,固定時間でも可変時間でもよい。
【0078】
また,第2モード処理では,各種のコマンドの受信の有無の判断の順序は,例示したものに限らない。つまり,第2モード処理のS206,S208,S210の実行順は,どの順であってもよい。また,第2モード処理では,画像処理を伴うジョブを受け付けた場合,ジョブを読み捨てるとしたが,受け付けたジョブをRAM33に記憶させてもよい。
【0079】
また,第2モード処理の実行中にも,ゼロクロスポイントを検出するための波形信号を受信してもよい。そして,第2モード処理の実行中に,商用電源からの電力の供給が開始されたと判断した場合,第2モード処理の実行を中断して,商用電力処理の実行を開始してもよい。
【0080】
また,商用電力処理では,切替情報341を自動的に「第1情報」とするとしたが,しなくてもよい。つまり,S301とS302は,無くてもよい。例えば,切替情報341の変更は,PC等からのコマンドの送信のみによってもよい。ただし,商用電源からの電力の供給により自動的に変更すれば,ユーザ環境での第2モードでの動作機会を減らす上では好ましい。
【0081】
また,切替情報341として確保された領域の記憶内容を変更する処理に代えて,例えば,予め領域を確保せず,第2モードでの電力の供給を行わずに第1モードへ切り替えると決定した場合に,決定したことを示す情報を新たに記憶するとしてもよい。この場合は,当該情報が記憶されているか否かに基づいて,第1モードへ切り替えるか,第2モードでの電力の供給を行うか,を判断できる。また,第1モードへ切り替えずに第2モードでの電力の供給を行うと決定した場合に,その情報を記憶するとしてもよい。
【0082】
また,実施の形態では,コントローラ30のCPU31にて,交流電力の波形信号に基づいて,商用電源から電力の供給の有無を判断するとしたが,波形信号に限らず,例えば,電圧値や電流値を検出して,商用電源からの電力の供給の有無を判断してもよい。
【0083】
また,電源キー60は,モーメンタリタイプに限らず,オルタネートタイプのスイッチであってもよい。例えば,機械的に変位する切り替えスイッチであってもよい。そして,商用電源からの電力の供給を受けていると判断した場合,電源キー60の位置に基づいて,第3モードとするか第1モードとするかを決定してもよい。また,実施の形態では,第1モードでは,電源キー60の操作のみを受け付けるとしているが,操作パネル40の操作も受け付けてもよい。
【0084】
また,本形態に開示されている処理は,単一のCPU,複数のCPU,ASICなどのハードウェア,またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また,実施の形態に開示されている処理は,その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体,または方法等の種々の態様で実現することができる。