(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の熱電対のように、軸受には、その内部や近傍の温度、圧力等を計測するための検知部材が設けられることがある。軸受は、軸受面に供給される潤滑油の漏出を低減するために、各部品がケーシング等に収容される場合がある。この場合、ケーシングに形成された挿通孔に検知部材を挿通させる必要がある。
【0006】
このとき、挿通孔と検知部材との間のクリアランスを小さくしてしまうと、検知部材が拘束され、軸受性能が低下するおそれがある。例えば、上記のティルティングパッド軸受においては、シースの動きが拘束されると、パッドの動きが拘束される。その結果、パッドの温度が上昇したり、振動の抑制効果が低下したりする等、軸受性能が低下する。一方、クリアランスを大きくすると、ケーシングからの潤滑油の漏れが大きくなってしまう。
【0007】
本開示の目的は、挿通孔の少なくとも一部を覆い、挿通孔を通した潤滑油の漏れを抑制することができる軸受構造、回転機械、圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の軸受構造は、挿通部が形成された収容部材と、収容部材内に設けられた軸受部と、挿通部に挿通され、一部が収容部材内に位置する検知部材と、収容部材内で検知部材が挿通され、挿通部に対して検知部材の挿通方向に対向する対向面を有する保持部材と、を備え
、保持部材は、収容部材内で移動可能に検知部材に保持される。
【0009】
また、軸受部は、収容部材内に傾倒可能に保持されるパッドであり、検知部材は、パッドに接触する接触部を備えてもよい。
【0010】
また、収容部材は、軸受部に対して、軸受部に軸支される回転軸の軸方向に対向するサイドシールを含み、挿通部は、サイドシールに形成されてもよい。
【0011】
また、検知部材は熱電対でもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本開示の軸受構造は、回転軸が挿入される収容部と、収容部に設けられ、収容部に挿入される回転軸を支持する軸受部と、収容部に設けられ、収容部の内外を連通する挿通部と、収容部の内側にて、挿通部に設けられたシール面と、収容部内の検知部と、検知部から、挿通部を通し、収容部の外側まで延伸した検知部材と、収容部の内側にて、検知部材が挿通され、シール面と当接可能な保持部材と、を備え
、保持部材は、収容部材内で移動可能に検知部材に保持される。
【0013】
上記課題を解決するために、本開示の回転機械は、挿通部が形成された収容部材と、収容部材内に設けられた軸受部と、挿通部に挿通され、一部が収容部材内に位置する検知部材と、収容部材内で検知部材が挿通され、挿通部に対して検知部材の挿通方向に対向する対向面を有する保持部材と、を有する軸受構造を備える。
【0014】
上記課題を解決するために、本開示の圧縮機は、挿通部が形成された収容部材と、収容部材内に設けられた軸受部と、挿通部に挿通され、一部が収容部材内に位置する検知部材と、収容部材内で検知部材が挿通され、挿通部に対して検知部材の挿通方向に対向する対向面を有する保持部材と、を有する軸受構造を備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、挿通孔の少なくとも一部を覆い、挿通孔を通した潤滑油の漏れを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き限定されるものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
以下に説明する軸受構造は、圧縮機等の回転機械をはじめ、さまざまな機械、装置に適用可能である。ここでは、一例として、圧縮機に適用される軸受構造について説明する。なお、以下では、まず、圧縮機の構成について説明し、その後に、圧縮機に適用される軸受構造について説明する。
【0019】
図1は、圧縮機1の概略断面図である。圧縮機1は、不図示のモータの駆動軸に連結される入力軸2を備えている。入力軸2には、大径ギヤ3が設けられている。モータが駆動すると、入力軸2と大径ギヤ3とが一体回転する。圧縮機1は、内部にギヤ室4aが形成されたギヤケース4を備えている。大径ギヤ3は、ギヤ室4a内に配されている。また、ギヤケース4内には、入力軸2の軸方向に離隔して2つのボール軸受5が配されている。入力軸2は、これら2つのボール軸受5によって回転自在に軸支されている。また、大径ギヤ3は、これら2つのボール軸受5の間に位置している。
【0020】
ギヤケース4には、第1回転軸10が回転自在に軸支されている。第1回転軸10は、入力軸2と平行であり、入力軸2に対して径方向に離隔して配されている。第1回転軸10には、大径ギヤ3よりも小径の第1ギヤ11が設けられている。第1ギヤ11は、ギヤケース4内で大径ギヤ3に歯合されており、第1回転軸10と一体回転する。したがって、モータが駆動すると、入力軸2、大径ギヤ3、第1ギヤ11および第1回転軸10が一体回転することとなる。
【0021】
第1回転軸10の一端10aは、ギヤ室4aを挟んでモータと反対側に突出している。ギヤケース4の側面4bから突出する一端10aには、第1インペラ12が設けられている。ギヤケース4には、第1インペラ12の近傍に第1仕切り壁13が取り付けられている。第1仕切り壁13により、第1インペラ12の径方向外方に、環状の第1スクロール流路14が形成される。また、第1仕切り壁13と側面4bとの間に形成される隙間により、環状の第1ディフューザ15が形成される。また、第1仕切り壁13には、第1インペラ12の正面に第1吸気空間16が形成される。第1ディフューザ15は、径方向の内側において、第1インペラ12を介して第1吸気空間16に連通している。また、第1ディフューザ15の径方向の外側は、第1スクロール流路14に連通している。
【0022】
上記の第1回転軸10、第1ギヤ11、第1インペラ12、第1スクロール流路14、第1ディフューザ15、第1吸気空間16により、第一段圧縮部Aが構成されている。
【0023】
また、ギヤケース4には、第2回転軸20が回転自在に軸支されている。第2回転軸20は、入力軸2と平行であり、入力軸2に対して径方向に離隔して配されている。また、第2回転軸20は、入力軸2を中心に、第1回転軸10と180°位相をずらした位置に設けられている。第2回転軸20には、大径ギヤ3よりも小径の第2ギヤ21が設けられている。第2ギヤ21は、ギヤケース4内で大径ギヤ3に歯合されており、第2回転軸20と一体回転する。したがって、モータが駆動すると、入力軸2、大径ギヤ3、第2ギヤ21および第2回転軸20が一体回転することとなる。
【0024】
第2回転軸20の一端20aは、ギヤ室4aを挟んでモータと反対側に突出している。ギヤケース4の側面4cから突出する一端20aには、第2インペラ22が設けられている。第2インペラ22は、径方向および軸方向の寸法が第1インペラ12よりも小さい。ギヤケース4には、第2インペラ22の近傍に第2仕切り壁23が取り付けられている。第2仕切り壁23により、第2インペラ22の径方向外方に、環状の第2スクロール流路24が形成される。また、第2仕切り壁23と側面4cとの間に形成される隙間により、環状の第2ディフューザ25が形成される。
【0025】
また、第2仕切り壁23には、第2インペラ22の正面に第2吸気空間26が形成される。第2ディフューザ25は、径方向の内側において、第2インペラ22を介して第2吸気空間26に連通している。また、第2ディフューザ25の径方向の外側は、第2スクロール流路24に連通している。第2スクロール流路24および第2ディフューザ25は、それぞれ第1スクロール流路14および第1ディフューザ15よりも流路断面積が小さい。また、ギヤケース4には、第2吸気空間26を閉塞するプレート27が固定されている。
【0026】
上記の第2回転軸20、第2ギヤ21、第2インペラ22、第2スクロール流路24、第2ディフューザ25、第2吸気空間26により、第二段圧縮部Bが構成されている。
【0027】
なお、第1スクロール流路14は、不図示の通路を介して第2吸気空間26に接続されている。この第1スクロール流路14と第2吸気空間26とを接続する通路には、インタークーラが設けられている。つまり、第二段圧縮部Bは、インタークーラを介して第一段圧縮部Aに接続されている。また、第2スクロール流路24には、不図示のアフタクーラを介して、外部配管が接続される。
【0028】
次に、上記の構成からなる圧縮機1の作用を説明する。モータの駆動により入力軸2が回転すると、第1回転軸10および第2回転軸20が回転する。第1回転軸10が回転すると、第1インペラ12が回転し、第2回転軸20が回転すると、第2インペラ22が回転する。つまり、圧縮機1の稼働時には、第1インペラ12および第2インペラ22が同時に回転する。
【0029】
第1インペラ12が回転すると、第1吸気空間16から空気が吸気される。第1吸気空間16から吸気された空気は、第1インペラ12の翼間を流通する過程において遠心力の作用により増速される。そして、増速された空気は、第1ディフューザ15および第1スクロール流路14で昇圧される。このように、第一段圧縮部Aで昇圧された空気は、インタークーラで冷却された後、第二段圧縮部Bの第2吸気空間26に導入される。
【0030】
第2吸気空間26に導入された空気は、第2インペラ22の翼間を流通する過程において遠心力の作用により増速される。そして、増速された空気は、第2ディフューザ25および第2スクロール流路24で昇圧される。このように、第二段圧縮部Bで昇圧された空気は、アフタクーラで冷却された後、外部配管に排出されることとなる。
【0031】
圧縮機1においては、入力軸2、第1回転軸10、第2回転軸20がギヤケース4に回転自在に軸支されている。駆動力の入力側となる入力軸2には大径ギヤ3が設けられている。一方、駆動力の出力側となる第1回転軸10、第2回転軸20には、大径ギヤ3よりも小径の第1ギヤ11、第2ギヤ21が設けられている。したがって、第1回転軸10、第2回転軸20は、入力軸2よりも高速で回転する。このように、高速で回転する第1回転軸10、第2回転軸20には、自励振動が生じるおそれがある。そこで、圧縮機1においては、第1回転軸10、第2回転軸20が、自励振動の抑制に効果的なティルティングパッド軸受Tによって軸支されている。
【0032】
図2は、ティルティングパッド軸受Tの概略図である。
図2において、(a)はティルティングパッド軸受Tの平面図を示し、(b)は(a)のb−b線断面を示している。ティルティングパッド軸受Tは、平面形状が円形のハウジング100(収容部材、収容部)を備えている。ハウジング100は、第1回転軸10または第2回転軸20(以下、単に「回転軸」という)の軸心方向に所定の厚みを有している。また、ハウジング100の中心には、回転軸が貫通する貫通孔100aが形成されている。貫通孔100aの内径は、回転軸の直径よりも大きい。
【0033】
そして、貫通孔100aの内周面には、複数(ここでは5つ)のパッド101(軸受部)が設けられている。パッド101は、貫通孔100aに収容可能な環状の部材を、回転軸の回転方向に複数に分割した形状となっている。パッド101に設けられる軸受面101aは、クリアランスを維持して回転軸に対向する。つまり、回転軸は、軸受面101aによって、回転自在に軸支される。また、パッド101には、貫通孔100aの内周面に対向する外面101bが設けられる。この外面101bは、貫通孔100aの内周面よりも僅かに曲率が大きい。そして、外面101bには支持溝101cが形成されている。支持溝101cは、外面101bのうち、回転軸の回転方向の中心、および、回転軸の軸方向の中心に位置している。ただし、支持溝101cが設けられる位置はこれに限らず、例えば、回転方向や軸方向の中心からずれて位置してもよい。
【0034】
ハウジング100には、回転軸の径方向に延在するリテイナ保持孔100bが複数(ここでは5つ)形成されている。リテイナ保持孔100bは、貫通孔100aからハウジング100の外周面まで貫通している。リテイナ保持孔100bのうち、貫通孔100a側の開口は、パッド101の支持溝101cに対向している。このリテイナ保持孔100bには、
図2の(b)においてクロスハッチングで示すリテイナピン102と、このリテイナピン102をハウジング100の中心側に付勢する付勢部材103とが収容される。リテイナピン102の先端102aは、付勢部材103の付勢力によりリテイナ保持孔100b(貫通孔100aの内周面)から突出し、パッド101の支持溝101c内に進入する。これにより、パッド101は、ハウジング100内において、リテイナピン102の先端102aを支点として傾倒可能に保持されることとなる。
【0035】
また、
図2の(a)に示すように、回転方向に隣り合うパッド101の間には隙間が保持されている。ハウジング100には、このパッド101間の隙間に開口する油入口孔100cが複数(ここでは5つ)形成されている。油入口孔100cは、貫通孔100a側の開口から径方向に延在している。油入口孔100cには潤滑油の供給源が接続される。パッド101の軸受面101aには、ハウジング100の外部から、油入口孔100cを介して潤滑油が供給される。
【0036】
また、
図2の(b)に示すように、ハウジング100のうち、回転軸の軸方向両側には、貫通孔100aから径方向外側に延在する固定面100dがそれぞれ設けられている。また、この固定面100dよりも径方向外側には、ハウジング100の外周面まで延在する側面100eが設けられている。固定面100dと側面100eとの間には、回転軸の軸方向に延在する段差部100fが形成されている。固定面100dは、段差部100fの高さ分だけ、側面100eよりもハウジング100の軸方向内側に位置している。
【0037】
そして、ハウジング100には、固定面100dに面接触するようにサイドシール110(収容部材)が設けられる。サイドシール110は、ハウジング100の固定面100dにネジ111によって固定される。ネジ111は、周方向に離隔して複数(ここでは6つ)設けられている。サイドシール110は、環状の板部材であり、段差部100fの高さと同程度の厚みを有する。また、サイドシール110には、回転軸が挿通される軸孔110aが形成されている。この軸孔110aの内周面は、パッド101の軸受面101aと大凡面一であるか、もしくは、軸受面101aから径方向に僅かにずれて位置している。
【0038】
したがって、軸孔110aの内径は、ハウジング100の貫通孔100aの内径よりも小さい。ここでは、サイドシール110のうち、ハウジング100の貫通孔100aよりも径方向内側に突出する部位を突出部110bと呼ぶ。突出部110bは、パッド101の側面101dに、回転軸の軸方向に対向する。このとき、突出部110bと側面101dとの間には、パッド101の傾倒動作を阻害しないように、僅かな間隙が設けられている。以上のように、パッド101は、サイドシール110によってハウジング100内に保持される。また、サイドシール110は、パッド101の軸受面101aに供給された潤滑油の外部への漏れを抑制する機能を担っている。
【0039】
上記のティルティングパッド軸受Tによれば、パッド101が傾倒することで、回転軸との間の隙間量が可変となり、自励振動が抑制される。ただし、圧縮機1が稼働すると、ティルティングパッド軸受T、より厳密には、パッド101の温度が上昇する。パッド101の過度な温度上昇は、回転軸の焼き付きや、ティルティングパッド軸受Tの損耗をもたらす。そこで、ティルティングパッド軸受Tには、温度を監視するべく、
図2の(b)に示すように、検知部材150が設けられている。ここでは、検知部材150として、熱電対が設けられている。
【0040】
なお、
図1に示すように、ティルティングパッド軸受Tは、第1回転軸10および第2回転軸20に、それぞれ2つずつ設けられている。検知部材150は、ティルティングパッド軸受Tごとに設けてもよいが、ここでは、検知部材150が、第1回転軸10に1つ、第2回転軸20に1つ設けられることとする。また、検知部材150は、1つのティルティングパッド軸受Tにおいて、複数のパッド101のうちの1つに設けられる。以下に、検知部材150が設けられるティルティングパッド軸受Tを備える軸受構造200について説明する。
【0041】
図3は、
図2(b)における一点鎖線の囲み部分を拡大して示す図である。この軸受構造200では、パッド101の側面101dに、挿入穴101eが形成されている。この挿入穴101eは、パッド101の側面101dのうち、軸受面101a側に設けられている。サイドシール110の突出部110bと、パッド101の側面101dとの間には間隙が設けられる。この突出部110bには、挿入穴101eに対向する挿通孔110c(挿通部)が形成されている。挿通孔110cは、挿入穴101eよりも径が大きい。
【0042】
熱電対からなる検知部材150は、シース150aを備えている。このシース150aは、サイドシール110の挿通孔110cに挿通されている。また、シース150aの先端には、挿入穴101eに挿入される接触部150b(検知部)が設けられている。接触部150bが挿入穴101eに挿入されることで、シース150aがパッド101に取り付けられる。すなわち、検知部材150は、パッド101に取り付けられている。また、検知部材150は、シース150aの先端が挿入穴101eへの挿入方向に押圧された状態で、ギヤケース4に固定されている。
【0043】
ここで、挿通孔110cの内径は、シース150aの直径よりも大きく形成されている。したがって、シース150aと挿通孔110cとの間には隙間が形成される。シース150aは作動するが、挿通孔110cの内径は、シース150aが最大に作動した場合にも接触することがない寸法となっている。
【0044】
ここで、パッド101の軸受面101aには、油入口孔100cから潤滑油が供給される。挿通孔110cの内径を大きくすると、ティルティングパッド軸受T、さらには、ギヤケース4からの潤滑油の漏出が多くなってしまう。
【0045】
そこで、軸受構造200においては、サイドシール110の内側に保持部材201が設けられている。換言すれば、保持部材201は、ハウジング100およびサイドシール110からなる収容部材内に設けられている。保持部材201は、サイドシール110よりも厚みが小さい薄板形状の部材である。また、保持部材201は、突出部110bに対向する対向面201aを備えている。すなわち、保持部材201は、挿通孔110cの外周に設けられたシール面に当接可能である。この対向面201aは、挿通孔110cの開口面積よりも大きい。なお、保持部材201の平面形状は特に限定されるものではなく、円形であっても矩形であってもよい。ただし、保持部材201は、パッド101(検知部材150)が最大に作動した場合にも、対向面201aが挿通孔110cを完全に被覆する寸法であることが望ましい。すなわち、保持部材201は、挿通されたシース150aを中心として、挿通孔110cの半径と、シース150aの半径との差以上の広がりを備えることが望ましい。ただし、挿通孔110cが完全に被覆されておらず、一部のみが被覆されている場合でも、潤滑油の漏出を抑える効果はある。
【0046】
そして、保持部材201は、収容部材内、すなわち、パッド101とサイドシール110との隙間において、検知部材150に保持される。より詳細には、保持部材201には、保持孔201bが形成されている。保持部材201は、保持孔201bに検知部材150(シース150a)が挿通されることで、検知部材150に保持される。保持孔201bの内径は、シース150aの直径とほぼ等しい。したがって、保持孔201bとシース150aとの間には、圧入力があまり作用しておらず、かつ、隙間が殆ど介在していない。すなわち、検知部材150には、保持部材201が移動可能に挿通されている。
【0047】
そして、保持部材201には、ティルティングパッド軸受T内の潤滑油の内圧が作用する。この内圧により、保持部材201はサイドシール110に押圧される。その結果、保持部材201の対向面201aが、サイドシール110の突出部110bに面接触し、挿通孔110cの外周のシール面と当接する。
【0048】
このように、軸受構造200によれば、挿通孔110cの内径がシース150aの直径よりも大きく形成されている。したがって、パッド101の傾倒動作が拘束されることはない。また、挿通孔110cは保持部材201によって塞がれるため、外部への潤滑油の漏れを抑制することができる。
【0049】
図4は、軸受構造200の作用を説明する図である。パッド101は、リテイナピン102の先端102aを支点として、図中両矢印で示す方向に傾倒する。そのため、パッド101のうち、回転軸の回転方向(図中矢印で示す)の中心側は作動範囲が狭く、中心側から遠くなるほど、作動範囲が広くなる。また、パッド101の軸受面101aは、回転軸の回転方向前方側の方が、回転方向後方側よりも高温になることが知られている。したがって、ティルティングパッド軸受Tの温度を適切に監視するためには、
図4のa点に検知部材150を設けることが望ましい。
【0050】
しかしながら、従来の軸受構造では、潤滑油の漏出を防止するべく、挿通孔110cの内径が小さく形成されている。そのため、従来の軸受構造では、挿通孔110cが検知部材150に干渉してしまう。したがって、従来の軸受構造では、
図4のb点に示すように、軸受面101aのうち、回転軸の回転方向中心側に検知部材150を設けるのが一般的である。つまり、従来の軸受構造では、検知部材150を設ける位置が制約されるため、適切な温度の監視が困難となっていた。
【0051】
一方で、上記の軸受構造200によれば、挿通孔110cが検知部材150に干渉しない。そのため、検知部材150を設ける位置が制約されることがない。したがって、検知部材150を、回転軸の回転方向前方側に設けることも可能となり、従来に比して、温度の監視精度を向上することができる。
【0052】
図5は、変形例の軸受構造300を説明する図である。上記の軸受構造200は、パッド101に検知部材150を1つのみ設けることとした。しかしながら、1つのパッド101に複数の検知部材150を設けてもよい。例えば、軸受構造300では、パッド101の側面101dに、検知部材150が挿入される挿入穴101e(
図5においては不図示)が3つ、周方向に離隔して形成されているとする。この場合、サイドシール310には、周方向に延在する挿通孔310c(挿通部)が形成される。この挿通孔310cは、パッド101に形成された3つの挿入穴101eに対向している。そして、軸受構造300は、挿通孔310cに対向する対向面301aを有する保持部材301を備える。保持部材301には、検知部材150が挿通される保持孔301bが3つ形成されている。このように、軸受構造300によれば、検知部材150が複数設けられる場合であっても、上記の軸受構造200と同様の作用効果を実現可能である。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0054】
上記実施形態では、ハウジング100に固定されるサイドシール110に挿通孔110cが形成されている。しかしながら、ハウジング100に挿通孔110cを形成してもよい。また、上記実施形態では、検知部材150が挿通される挿通部として、挿通孔110cが設けられている。しかしながら、挿通部は検知部材150が挿通されればよく、例えば、溝や切り欠きで構成してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、挿通孔110cの外周にシール面を備えている。しかしながら、例えば、挿通孔110cがハウジング100内側に向かい拡大するテーパ形状であれば、挿通孔110cの内周にシール面を構成することも可能である。この場合、保持部材201は、ハウジング100内側における、挿通孔110cの開口より面積が小さくなる。あるいは、保持部材201の挿通孔110cと対向する部分が,挿通孔110cに向かい縮小していれば、挿通孔110cの開口の周縁がシール面にもなりうる。
【0056】
また、上記実施形態では、軸受構造200に含まれる軸受を、ティルティングパッド軸受Tで構成することとした。しかしながら、軸受構造に含まれる軸受はティルティングパッド軸受Tに限定されない。例えば、軸受面を有する軸受部が作動しない所謂セミフローティング軸受やボール軸受でもよい。さらには、軸受構成部材として、軸受部とオイルフィルムダンパとを備える軸受構造において、検知部材150をオイルフィルムダンパに取り付けることも可能である。一般的に、軸受部を含む軸受構成部材には、回転軸の回転により振動が発生する。振動が発生した場合に、検知部材150が挿通部によって拘束されていると、軸受性能が低下するおそれがある。そのため、挿通部を大きくする場合がある。この場合においても、上記した軸受構造を採用することで、潤滑油の漏れを抑制することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、軸受部に対して回転軸の軸心方向に検知部材150が取り付けられている。しかしながら、検知部材150は、軸受部に対して回転軸の径方向に取り付けられてもよい。
【0058】
いずれにしても、軸受構造は、挿通部が形成された収容部材と、収容部材内に設けられた軸受部と、挿通部に挿通され、一部が収容部材内に位置する検知部材と、収容部材内で検知部材に保持され、挿通部に対して検知部材の挿通方向に対向する対向面を有する保持部材と、を備えればよい。
【0059】
また、上記実施形態では、検知部材150が熱電対であることとした。しかしながら、検知部材は熱電対に限らず、収容部材内の圧力、変位等を検知するものであってもよい。いずれにしても、検知部材は、収容部材内の状態を信号として外部に出力するものを広く含む。
【0060】
また、上記実施形態では、潤滑油の内圧により、保持部材201の対向面201aが、挿通孔110cの外周のシール面と当接する場合について説明した。しかしながら、保持部材201は、シール面に完全に当接せずとも、抵抗により、潤滑油の漏れを抑制することができる。ただし、保持部材201が内圧でシール面に当接することにより、潤滑油の漏れをより効果的に抑制することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、圧縮機1に軸受構造200を適用する場合について説明した。しかしながら、軸受構造200は、圧縮機に限らず、例えば増速機や減速機等、回転軸を備えるあらゆる回転機械に適用可能である。