特許第6805586号(P6805586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6805586ゴムシート積層体の製造装置及びゴムシート積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805586
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ゴムシート積層体の製造装置及びゴムシート積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/00 20060101AFI20201214BHJP
   B29B 13/06 20060101ALI20201214BHJP
   B29B 15/02 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B29D30/00
   B29B13/06
   B29B15/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-135391(P2016-135391)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-1709(P2018-1709A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 義隆
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−222832(JP,A)
【文献】 特開2016−030241(JP,A)
【文献】 特開2008−265293(JP,A)
【文献】 特開平08−174548(JP,A)
【文献】 特開平05−031449(JP,A)
【文献】 特開2011−235511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
B29B 13/06
B29B 15/02
B05D 1/00−7/26
B05C 1/00−3/20
F26B 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ゴムと薬品とを混練し、かつ、シート状に形成した未加硫のゴムシートを折り重ねた積層体を製造するための装置であって、
前記ゴムシート同士の粘着を防ぐ防着剤を、前記ゴムシートの表面に付着する付着手段と、
前記防着剤が付着された前記ゴムシートが折り重ねられた前記積層体を載置する載置部と、
前記付着手段から前記ゴムシートを受け取り、かつ、前記ゴムシートを冷却しながら前記載置部に搬送する搬送手段と、
高圧の流体を前記搬送手段に噴射する噴射部によって、前記搬送時に前記ゴムシートから前記搬送手段に付着した前記防着剤を除去する洗浄手段と
前記搬送手段から除去された前記防着剤を、前記流体とともに回収する回収手段とを有することを特徴とするゴムシート積層体の製造装置。
【請求項2】
前記防着剤は、粉体防着剤を液体に溶解させた溶液であり、
前記回収手段は、前記流体で薄められた前記防着剤の濃度を高める濃度調節手段と、
前記濃度が高められた前記防着剤を前記付着手段に補充する補充手段とを含む請求項1記載のゴムシート積層体の製造装置。
【請求項3】
前記洗浄手段は、前記搬送手段において、前記付着手段から前記ゴムシートを受け取る位置よりも前記付着手段側に配置される請求項1又は2に記載のゴムシート積層体の製造装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、前記付着手段と前記載置部との間で、前記ゴムシートが垂れ掛けられる搬送バーが隔設され、
前記搬送バーは、前記付着手段と前記載置部との間を周回する請求項1乃至3のいずれかに記載のゴムシート積層体の製造装置。
【請求項5】
原料ゴムと薬品とを混練し、かつ、シート状に形成した未加硫のゴムシートを折り重ねた積層体を製造するための方法であって、
前記ゴムシート同士の粘着を防ぐ防着剤を、前記ゴムシートの表面に付着する工程と、
前記ゴムシートを搬送可能な搬送手段を用いて、前記防着剤が付着した前記ゴムシートを冷却しながら搬送する工程と、
冷却された前記ゴムシートを折り重ねる工程と、
高圧の流体を前記搬送手段に噴射して、前記搬送時に前記ゴムシートから前記搬送手段に付着した前記防着剤を除去する洗浄工程と、
前記搬送手段から除去された前記防着剤を、前記流体とともに回収する回収工程とを有することを特徴とするゴムシート積層体の製造方法。
【請求項6】
前記洗浄工程は、前記ゴムシートが前記搬送手段に供給されるのに先立って、前記搬送手段に付着した前記防着剤を除去する請求項5に記載のゴムシート積層体の製造方法。
【請求項7】
前記防着剤は、粉体防着剤を液体に溶解させた溶液であり、
前記回収工程は、前記流体で薄められた前記防着剤の濃度を高める工程と、
前記濃度が高められた前記防着剤を、前記防着剤の付着に用いられる付着手段に補充する工程とを含む請求項5又は6に記載のゴムシート積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ゴムと薬品とを混練した未加硫のゴムシートを折り重ねた積層体を製造するための装置、及び、ゴムシート積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤ等のゴム製品の製造工程では、ゴム製品の中間材料として、ミキサー等で混練された未加硫のゴムシートを折り重ねた積層体が製造されている。下記特許文献1には、ゴムシートの積層体を製造するための装置が提案されている。この製造装置は、ゴムシートの表面に防着剤を付着する付着手段と、ゴムシートを折り重ねた積層体を載置する載置部と、付着手段からゴムシートを受け取り、かつ、ゴムシートを冷却しながら載置部に搬送する搬送手段とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−030241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防着剤が付着したゴムシートを搬送する際、ゴムシートの防着剤の一部が、搬送手段に付着する。そして、ゴムシートの搬送を繰り返すことで、搬送手段への防着剤の付着量が増加し、凝固物として形成されやすい。また、凝固物は、搬送中のゴムシートとの接触等により、搬送手段から剥がれてゴムシート側に付着し、積層体に混入することがある。このような凝固物の混入により、ゴム製品にFM(Foreign Material、即ち「異物」)が発生しやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ゴム製品のFMの発生を防ぎうるゴムシート積層体の製造装置、及び、ゴムシート積層体の製造方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、原料ゴムと薬品とを混練し、かつ、シート状に形成した未加硫のゴムシートを折り重ねた積層体を製造するための装置であって、前記ゴムシート同士の粘着を防ぐ防着剤を、前記ゴムシートの表面に付着する付着手段と、前記防着剤が付着された前記ゴムシートが折り重ねられた前記積層体を載置する載置部と、前記付着手段から前記ゴムシートを受け取り、かつ、前記ゴムシートを冷却しながら前記載置部に搬送する搬送手段と、前記搬送時に前記ゴムシートから前記搬送手段に付着した前記防着剤を除去する洗浄手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記ゴムシート積層体の製造装置において、前記洗浄手段は、高圧の流体を前記搬送手段に噴射する噴射部を有するのが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記ゴムシート積層体の製造装置において、前記搬送手段から除去された前記防着剤を、前記流体とともに回収する回収手段を有するのが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記ゴムシート積層体の製造装置において、前記防着剤は、粉体防着剤を液体に溶解させた溶液であり、前記回収手段は、前記流体で薄められた前記防着剤の濃度を高める濃度調節手段と、前記濃度が高められた前記防着剤を前記付着手段に補充する補充手段とを含むのが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記ゴムシート積層体の製造装置において、前記洗浄手段は、前記搬送手段において、前記付着手段から前記ゴムシートを受け取る位置よりも前記付着手段側に配置されるのが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記ゴムシート積層体の製造装置において、前記搬送手段は、前記付着手段と前記載置部との間で、前記ゴムシートが垂れ掛けられる搬送バーが隔設され、前記搬送バーは、前記付着手段と前記載置部との間を周回するのが望ましい。
【0012】
本発明は、原料ゴムと薬品とを混練し、かつ、シート状に形成した未加硫のゴムシートを折り重ねた積層体を製造するための方法であって、前記ゴムシート同士の粘着を防ぐ防着剤を、前記ゴムシートの表面に付着する工程と、前記ゴムシートを搬送可能な搬送手段を用いて、前記防着剤が付着した前記ゴムシートを冷却しながら搬送する工程と、冷却された前記ゴムシートを折り重ねる工程と、前記搬送時に前記ゴムシートから前記搬送手段に付着した前記防着剤を除去する洗浄工程とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る前記ゴムシート積層体の製造方法において、前記洗浄工程は、前記ゴムシートが前記搬送手段に供給されるのに先立って、前記搬送手段に付着した前記防着剤を除去するのが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記ゴムシート積層体の製造方法において、前記洗浄工程は、高圧の流体を前記搬送手段に噴射するのが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記ゴムシート積層体の製造方法において、前記搬送手段から除去された前記防着剤を、前記流体とともに回収する回収工程を含むのが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記ゴムシート積層体の製造方法において、前記防着剤は、粉体防着剤を液体に溶解させた溶液であり、前記回収工程は、前記流体で薄められた前記防着剤の濃度を高める工程と、前記濃度が高められた前記防着剤を、前記防着剤の付着に用いられる付着手段に補充する工程とを含むのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本願の第1の発明のゴムシート積層体の製造装置は、ゴムシートの表面に防着剤を付着する付着手段からゴムシートを受け取り、かつ、ゴムシートを冷却しながら載置部に搬送する搬送手段と、搬送時にゴムシートから搬送手段に付着した防着剤を除去する洗浄手段とを有している。これにより、本願の第1の発明は、防着剤の凝固物が搬送手段に形成されるのを防ぐことができる。従って、本願の第1の発明は、積層体への凝固物の混入を防ぐことができ、ゴム製品のFM(Foreign Material)の発生を防ぐことができる。
【0018】
本願の第2の発明のゴムシート積層体の製造方法は、ゴムシートを搬送可能な搬送手段を用いて、防着剤が付着したゴムシートを冷却しながら搬送する工程と、搬送時にゴムシートから搬送手段に付着した防着剤を除去する洗浄工程とを有している。これにより、本願の第2の発明は、防着剤の凝固物が搬送手段に形成されるのを防ぐことができる。従って、本願の第2の発明は、積層体への凝固物の混入を防ぐことができ、ゴム製品のFMの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ゴムシート積層体の製造装置の一例を模式的に示す図である。
図2】搬送手段の一例を示す部分断面図である。
図3図2の部分斜視図である。
図4】撹拌槽の防着剤の濃度と製造時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、ゴムシート積層体の製造装置の一例を模式的に示す図である。ゴムシート積層体の製造装置(以下、単に「製造装置」ということがある)1は、タイヤ等のゴム製品の中間材料として、未加硫のゴムシート2を折り重ねた積層体3を製造するためのものである。
【0021】
ゴムシート2は、原料ゴムと薬品(例えば、カーボン等)とが、ミキサー4等で混練された未加硫のゴムを、カレンダーロール9によってシート状に圧延することで製造される。本実施形態のゴムシート2は、例えば、幅W1(図3に示す)が500〜1000mm程度、厚さT1が4〜10mm程度に設定されている。
【0022】
本実施形態の製造装置は、付着手段5と、搬送手段6と、載置部7とを含んで構成されている。
【0023】
付着手段5は、ゴムシート2同士の粘着を防ぐ防着剤14を、ゴムシート2の表面に付着するためのものである。本実施形態の付着手段5は、上記特許文献1の防着剤塗布装置と同様に、撹拌槽11、供給ポンプ12、及び、付着ロール13を含んでいる。
【0024】
本実施形態の防着剤14は、粉体防着剤(図示省略)を、液体に溶解させた溶液として構成されている。粉体防着剤については、従来と同様のものが採用される。液体としては、例えば、水等が用いられる。本実施形態の防着剤14の濃度は、一定の範囲(例えば、1.1〜1.6%)に調整されている。
【0025】
撹拌槽11は、粉体防着剤(図示省略)と、粉体防着剤を溶解させる液体とを撹拌するためのものである。撹拌槽11には、粉体防着剤が一定間隔で供給される。他方、液体は、防着剤14の凝固を防ぐために、粉体防着剤よりも短い間隔で供給されている。このため、防着剤14は、粉体防着剤が供給されるまでの間、濃度が徐々に低下する。また、撹拌槽11内に蓄えられた防着剤14は、供給ポンプ12の作動によって、第1供給管15を介して付着ロール13に供給される。
【0026】
付着ロール13は、ゴムシート2の表面に、防着剤14を付着(塗布)するためのものである。付着ロール13は、円筒状に形成されており、ゴムシート2の表面を回転可能に支持されている。付着ロール13の外周面には、撹拌槽11から供給された防着剤14を排出する複数の排出孔(図示省略)が設けられている。このような付着ロール13は、ゴムシート2が連続供給されることにより、ゴムシート2の表面を転動しつつ、ゴムシート2の表面に防着剤14を付着することができる。
【0027】
本実施形態の付着ロール13は、第1付着ロール13aと、第2付着ロール13bとを含んで構成されている。第1付着ロール13aは、図において、ゴムシート2の上面に当接している。第2付着ロール13bは、図において、ゴムシート2の下面に当接している。このような第1付着ロール13a及び第2付着ロール13bは、ゴムシート2の上面及び下面に、防着剤14を付着することができる。また、第1付着ロール13a及び第2付着ロール13bは、上下方向の高さがそれぞれ異なっている。このような第1付着ロール13a及び第2付着ロール13bは、ゴムシート2の弛みを防ぐことができるため、ゴムシート2の上面及び下面に、防着剤14を万遍なく付着させることができる。
【0028】
付着ロール13の下方には、垂れ落ちた防着剤14を受けるための貯留槽16が設けられることが望ましい。貯留槽16に溜まった防着剤14は、撹拌槽11に供給されて再利用されるのが望ましい。
【0029】
図2は、搬送手段6の一例を示す部分断面図である。図3は、図2の部分斜視図である。図1に示されるように、搬送手段6は、付着手段5からゴムシート2を受け取り、かつ、ゴムシート2を冷却しながら載置部7に搬送するためのものである。図2及び図3に示されるように、本実施形態の搬送手段6は、クローラ19、及び、搬送バー20を含んで構成されている。
【0030】
本実施形態のクローラ19は、図1に示した付着手段5と載置部7との間で周回可能な無端帯状に形成されている。クローラ19は、複数の板部19aによって構成されている。これらの板部19aは、周方向に屈曲自在に連結されている。クローラ19は、駆動スプロケット21と従動プロケット22との間に架け渡されている。
【0031】
駆動スプロケット21は、例えば、モータ等の駆動手段(図示省略)によって、水平軸回りに回転可能に支持されている。従動プロケット22は、駆動スプロケット21に対して反対側(本実施形態では、付着手段5側)に設けられている。従動プロケット22は、クローラ19の周回移動に伴い、従動的に回転する。このようなクローラ19は、駆動手段の駆動によって、付着手段5から載置部7に向かう往路R1と、載置部7から付着手段5に向かう復路R2との間を周回することができる。
【0032】
搬送バー20は、付着手段5と載置部7との間で隔設されている。各搬送バー20は、その軸心が水平方向にのびている。各搬送バー20の両端は、クローラ19の板部19aから外側(クローラ19の周方向に対して直交する方向)にのびる一対の支持部23、23の外端に固定されている。これにより、搬送バー20は、周回するクローラ19とともに、付着手段5と載置部7との間で周回しうる。なお、図1では、クローラ19及び支持部23を省略して表示している。
【0033】
図2及び図3に示されるように、搬送手段6は、付着手段5から受け取ったゴムシート2を、隣り合う搬送バー20、20間で弛みが形成されるように、搬送バー20に垂れ掛けられる。そして、搬送手段6は、周回するクローラ19とともに各搬送バー20を周回させることにより、ゴムシート2を載置部7に搬送することができる。これにより、搬送手段6は、ゴムシート2を冷却しつつ、ゴムシート2に付着した防着剤14を乾燥させることができる。
【0034】
搬送バー20の合計本数については、適宜設定される。本実施形態の搬送バー20の合計本数は、例えば、200〜400本程度に設定される。また、隣り合う搬送バー20、20の間隔L2aについては、例えば、ゴムシート2の厚さT1等に応じて適宜設定することができる。ゴムシート2の冷却及び乾燥を効果的に行うために、間隔L2aは、100〜200mmに設定されるのが望ましい。なお、間隔L2aは、クローラ19が水平の状態(即ち、搬送バー20、20が水平に隣り合っている状態)において、測定されるものとする。同様に、クローラ19と搬送バー20との間の距離L2bは、200〜400mmに設定されるのが望ましい。
【0035】
図1に示されるように、載置部7は、防着剤14が付着したゴムシート2を折り重ねた積層体3を載置するためのものである。載置部7は、例えば、板状のパレットとして形成されている。積層体3は、既知の折畳み手段24によって折り重ねられることで形成される。載置部7は、予め定められた大きさ(量)の積層体3が形成された後、既知の搬送装置(図示省略)によって、積層体3とともに次の工程に搬送される。
【0036】
ところで、防着剤14が付着したゴムシート2を搬送する際、ゴムシート2の防着剤14の一部が、搬送手段6の搬送バー20に付着する。そして、ゴムシート2の搬送が繰り返されることで、搬送バー20への防着剤14の付着量が増加し、凝固物(図示省略)として形成されやすい。このような凝固物は、搬送バー20の軸方向の両端側20t、20t(図3に示す)に多く形成される傾向がある。
【0037】
また、防着剤14の凝固物(図示省略)は、搬送中のゴムシート2との接触等により、搬送バー20から剥がれてゴムシート2側に付着し、積層体3に混入することがある。このような凝固物の混入により、積層体3を用いて製造されたゴム製品(図示省略)に、FM(即ち、異物)が発生しやすくなる。
【0038】
本実施形態の製造装置1には、搬送時にゴムシート2から搬送手段6に付着した防着剤14を除去する洗浄手段8をさらに含んでいる。本実施形態の洗浄手段8は、噴射部26を含んで構成されている。
【0039】
噴射部26は、高圧の流体27を搬送手段6に噴射するためのものである。本実施形態の噴射部26は、ノズルとして形成されており、高圧の流体27を生成可能な加圧ポンプ(図示省略)等に接続されている。噴射部26の先端は、搬送バー20に向けて配置されている。また、流体27としては、粉体防着剤を溶解させる液体(本実施形態では、水)と同様のものが採用されるのが望ましい。
【0040】
このような洗浄手段8は、高圧の流体27を搬送手段6の搬送バー20に向けて噴射することにより、搬送バー20に付着した防着剤14や、防着剤14の凝固物(図示省略)を吹き飛ばして除去することができる。これにより、本実施形態の製造装置1は、搬送手段6の搬送バー20に、凝固物が形成されるのを防ぐことができる。従って、本実施形態の製造装置1は、積層体3への凝固物の混入を防ぐことができ、ゴム製品のFMの発生を防ぐことができる。
【0041】
このような作用を効果的に発揮させるために、本実施形態の洗浄手段8は、搬送手段6において、付着手段5からゴムシート2を受け取る位置P1よりも付着手段5側に配置されるのが望ましい。これにより、ゴムシート2の受け取りに先立って、搬送手段6の搬送バー20に付着した防着剤14や、防着剤14の凝固物(図示省略)を除去できるため、積層体3への凝固物の混入を効果的に防ぐことができる。
【0042】
また、噴射部26は、搬送バー20の両端側20t、20t(図3に示す)にそれぞれ配置されるのが望ましい。これにより、洗浄手段8は、防着剤14が多く付着しやすい搬送バー20の両端に、高圧の流体27を直接噴射することができるため、防着剤14を効果的に除去することができる。
【0043】
洗浄手段8の噴射圧力については、例えば、防着剤14の種類等に応じて、適宜設定することができる。搬送バー20に付着した防着剤14や凝固物(図示省略)を効果的に除去するために、洗浄手段8の噴射圧力は、4〜14MPaに設定されるのが望ましい。同様に、搬送バー20と噴射部26との距離L3(図2に示す)は、200〜600mmに設定されるのが望ましい。
【0044】
図1に示されるように、搬送手段6から除去された防着剤14は、付着手段5で用いられる防着剤14として再利用されるのが望ましい。このため、本実施形態の製造装置1は、搬送手段6から除去された防着剤14を、流体27とともに回収する回収手段30をさらに含んで構成されている。本実施形態の回収手段30は、案内手段31と、濃度調節手段32と、補充手段33とを有している。
【0045】
案内手段31は、搬送手段6から除去された防着剤14、及び、洗浄手段8から噴射された流体27を、貯留槽16に案内するためのものである。案内手段31は、洗浄手段8が設置される位置(即ち、防着剤14及び流体27が垂れ落ちる位置)から貯留槽16に向かって、下方に傾斜する傾斜面を有している。このような案内手段31は、搬送手段6から垂れ落ちた防着剤14及び流体27を、貯留槽16に円滑に案内することができる。
【0046】
濃度調節手段32は、流体27で薄められた防着剤14の濃度を高めるためのものである。本実施形態の濃度調節手段32は、貯留槽16に溜められた防着剤14及び流体27の混合物38を撹拌する撹拌手段36と、混合物38に粉体防着剤(図示省略)を供給する供給手段(図示省略)とを含んでいる。このような濃度調節手段32は、混合物38に粉体防着剤を供給した後に、混合物38を撹拌することで、流体27で薄められた防着剤14の濃度(混合物38の濃度)を高めることができる。
【0047】
補充手段33は、濃度が高められた防着剤14を、付着手段5に補充するためのものである。補充手段33は、貯留槽16と撹拌槽11との間をのびる第2供給管35と、供給ポンプ37とを含んで構成されている。このような補充手段33は、供給ポンプ37の作動により、濃度が高められた防着剤14を、第2供給管35を介して、撹拌槽11に補充することができる。
【0048】
このような回収手段30により、搬送手段6から除去された防着剤14を再利用することができるため、粉体防着剤(図示省略)の供給量を抑えることができ、防着剤14のコストの増大(防着剤14のロス)を抑制しうる。また、撹拌槽11に粉体防着剤が再度供給されるまでの間に、防着剤14の濃度低下を抑制しうる。
【0049】
次に、本実施形態のゴムシート積層体の製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある。)について説明する。本実施形態の製造方法は、図1図3に示した製造装置1が用いられる。本実施形態の製造方法は、付着工程S1、搬送工程S2、積層工程S3、及び、洗浄工程S4を含んでいる。これらの工程S1〜S4は、カレンダーロール9からのゴムシート2の供給によって、順次実施される。また、工程S1〜S4は、図示しない制御手段によって、自動的に実施されるのが望ましい。
【0050】
付着工程S1は、ゴムシート同士の粘着を防ぐ防着剤14を、ゴムシート2の表面に付着する。付着工程S1では、付着手段5が用いられる。本実施形態の付着工程S1では、先ず、供給ポンプ12を作動させて、撹拌槽11内の防着剤14を、第1供給管15を介して、付着ロール13に供給する。次に、付着工程S1では、第1付着ロール13aと第2付着ロール13bとの間にゴムシート2を配置する。そして、ゴムシート2が連続供給されることにより、ゴムシート2の表面に各付着ロール13a、13bを転動させつつ、防着剤14を付着(塗布)することができる。
【0051】
本実施形態の付着工程S1では、第1付着ロール13a及び第2付着ロール13bの上下方向の高さがそれぞれ異なっているため、ゴムシート2の弛みを防ぐことができる。このため、ゴムシート2の上面及び下面に、防着剤14を万遍なく付着させることができる。
【0052】
次に、搬送工程S2は、防着剤14が付着したゴムシート2を、冷却しながら搬送する。搬送工程S2では、ゴムシート2を搬送可能な搬送手段6が用いられる。図1図3に示されるように、本実施形態の搬送工程S2では、先ず、隣り合う搬送バー20、20間で弛みが形成されるように、防着剤14が付着したゴムシート2を搬送バー20に垂れ掛ける。また、搬送工程S2では、駆動手段(図示省略)の駆動により、付着手段5と載置部7との間で、クローラ19(図2に示す)を周回させる。これにより、搬送工程S2では、付着手段5と載置部7との間で、搬送バー20を周回させることができる。これにより、搬送工程S2では、付着手段5から受け取ったゴムシート2を、冷却しながら載置部7に搬送することができる。
【0053】
本実施形態の搬送工程S2では、隣り合う搬送バー20、20間で、ゴムシート2を弛ませているため、ゴムシート2を効果的に冷却しつつ、ゴムシート2に付着した防着剤14を短時間で乾燥させることができる。なお、ゴムシート2に弛みを確実に形成するために、クローラ19の周回速度V1(図2に示す)は、付着手段5から供給されるゴムシート2の供給速度V2(図2に示す)よりも小さく設定されるのが望ましい。
【0054】
図1に示されるように、積層工程S3は、冷却されたゴムシート2を折り重ねる。積層工程S3では、載置部7が用いられる。本実施形態の積層工程S3では、搬送工程S2で搬送されてきたゴムシート2を、既知の折畳み手段24を用いて、載置部7に折り重ねている。なお、本実施形態のゴムシート2の表面には、防着剤14が予め付着されているため、積層体3を構成するゴムシート同士が粘着するのを抑制しうる。
【0055】
また、積層工程S3では、予め定められた大きさ(量)の積層体3が形成された後、積層体3が載せられた載置部7を次の工程に搬送する。そして、新たな載置部7が、ゴムシート2を載置させる位置に配置される。これにより、積層工程S3では、積層体3を連続して製造することができる。
【0056】
洗浄工程S4は、搬送時にゴムシート2から搬送手段6に付着した防着剤14を除去する。洗浄工程S4では、洗浄手段8が用いられる。本実施形態の洗浄工程S4では、防着剤14が付着した搬送手段6の搬送バー20に、高圧の流体27を噴射している。これにより、洗浄工程S4では、搬送バー20に付着した防着剤14や、防着剤14の凝固物(図示省略)を吹き飛ばしながら除去することができる。従って、本実施形態の製造装置1は、搬送手段6の搬送バー20に、凝固物が形成されるのを防ぐことができるため、ゴム製品のFMの発生を防ぐことができる。
【0057】
本実施形態の洗浄手段8は、図1及び図2に示されるように、搬送手段6において、付着手段5からゴムシート2を受け取る位置P1よりも付着手段5側に配置されている。これにより、本実施形態の洗浄工程S4は、ゴムシート2が搬送手段6に供給されるのに先立って、搬送手段6に付着した防着剤14や、防着剤14の凝固物(図示省略)を除去することができるため、積層体3への凝固物の混入を効果的に防ぐことができる。
【0058】
本実施形態の洗浄工程S4では、防着剤14が多く付着しやすい搬送バー20の両端側20t、20t(図3に示す)に、高圧の流体27を噴射するのが望ましい。これにより、洗浄工程S4では、搬送バー20の両端側20t、20tに多く付着しやすい防着剤14や凝固物(図示省略)を、効果的に除去することができる。
【0059】
高圧の流体27の噴射時間については、適宜設定することができる。搬送バー20に付着した防着剤14及び凝固物(図示省略)を効果的に除去するために、高圧の流体27は、一本の搬送バー20において、5〜20秒の間、噴射されるのが望ましい。
【0060】
洗浄工程S4では、洗浄手段8を通過する搬送バー20を逐次洗浄してもよい。なお、防着剤14の付着量が少ない場合には、例えば、搬送手段6が1周する毎に、予め定められた本数の搬送バー20が交代で洗浄されてもよい。この洗浄工程の具体例としては、先ず、搬送手段6(搬送バー20)の1周目に予め定められた本数の搬送バー20のみを洗浄し、2周目以降に異なる搬送バー20を洗浄する。これにより、搬送手段6が複数周回することで、全ての搬送バー20が洗浄される。これにより、防着剤14の付着量が少ないうちに、搬送バー20が洗浄されるのを防ぐことができるため、洗浄コストの増大を抑制しうる。このような作用を効果的に発揮させるために、搬送手段6が1周する毎に、3〜10本の搬送バー20が洗浄されるのが望ましい。
【0061】
また、搬送手段6から除去された防着剤14は、再利用されるのが望ましい。このため、本実施形態の製造方法では、流体27とともに防着剤14を回収する回収工程S5をさらに含んでいる。本実施形態の回収工程S5では、回収手段30が用いられる。
【0062】
本実施形態の回収工程S5では、先ず、搬送手段6から除去された防着剤14を、流体27とともに回収する工程S51が行われる。工程S51では、図1に示されるように、搬送手段6から除去された防着剤14及び流体27を、案内手段31を介して、貯留槽16に回収する。さらに、本実施形態の工程S51では、付着ロール13から垂れ落ちた防着剤14も、貯留槽16に回収する。
【0063】
次に、本実施形態の回収工程S5は、流体27で薄められた防着剤14の濃度を高める工程S52が行われる。工程S52では、先ず、貯留槽16に溜められた防着剤14及び流体27の混合物38に、粉体防着剤(図示省略)が供給される。そして、工程S52では、濃度調節手段32の撹拌手段36によって、混合物38及び粉体防着剤が撹拌される。これにより、工程S52では、流体27で薄められた防着剤14(即ち、混合物38)の濃度を高めることができる。なお、工程S52では、貯留槽16内の防着剤14の濃度が、撹拌槽11の防着剤14の濃度と同一になるように調整されるのが望ましい。
【0064】
次に、回収工程S5は、濃度が高められた防着剤14を、付着手段5に補充する工程S53が行われる。工程S53では、供給ポンプ37の作動により、濃度が高められた防着剤14を、第2供給管35を介して、撹拌槽11に補充している。これにより、本実施形態の回収工程S5は、搬送手段6から除去された防着剤14を再利用することができるため、防着剤14の濃度低下を抑制しつつ、防着剤14のコストの増大(防着剤14のロス)を抑制しうる。
【0065】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0066】
原料ゴムと薬品とを混練し、かつ、シート状に形成した未加硫のゴムシートを折り重ねた積層体が製造された(実施例1、実施例2、及び、比較例)。
【0067】
実施例1、2は、図1に示したゴムシート積層体の製造装置が用いられた。実施例1、2は、ゴムシートの表面に防着剤を付着する付着工程と、防着剤が付着したゴムシートを冷却しながら搬送する搬送工程と、冷却されたゴムシートを折り重ねる積層工程と、搬送手段に付着した防着剤を除去する洗浄工程とが実施された。
【0068】
さらに、実施例2は、搬送手段から除去された防着剤を、流体とともに回収する回収工程が実施された。回収工程では、流体で薄められた防着剤の濃度を高める工程と、濃度が高められた防着剤を撹拌槽に補充する工程が実施された。
【0069】
比較例では、付着工程、搬送工程、及び、積層工程が実施されたが、洗浄工程及び回収工程については実施されなかった。
【0070】
そして、実施例1、2及び比較例において、積層体を1ヶ月間製造し、FMが発生したゴム製品(タイヤ)の本数が記録された。共通仕様は、次のとおりである。
ゴムシート:
幅W1:700〜800mm
厚さT1:6〜8mm
搬送手段:
搬送バーの合計本数:300本
搬送バーの間隔L2a:150mm
クローラと搬送バーとの間の距離L2b:300mm
洗浄手段:
噴射圧力:6〜10MPa
搬送バーと噴射部との距離L3:300〜500mm
搬送バー1本あたりの噴射時間:5〜10秒
搬送手段が1周する毎に洗浄される搬送バーの本数:5〜7本
粉体防着剤の供給タイミング:8時間/回
テストの結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
テストの結果、実施例1、2では、比較例に比べて、FMが発生したゴム製品(タイヤ)の本数を大幅に少なくすることができた。図4は、撹拌槽の防着剤の濃度と製造時間との関係を示すグラフである。図4に示されるように、実施例2では、回収工程が実施されたため、実施例1に比べて、撹拌槽内の防着剤の濃度を高く維持することができた。従って、実施例2では、粉体防着剤の供給量を抑えることができるため、防着剤のコストの増大(防着剤のロス)を抑制できた。
【符号の説明】
【0073】
2 ゴムシート
3 積層体
5 付着手段
6 搬送手段
7 載置部
8 洗浄手段
図1
図2
図3
図4