特許第6805597号(P6805597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6805597-開閉部材駆動装置 図000002
  • 特許6805597-開閉部材駆動装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805597
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】開閉部材駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/695 20150101AFI20201214BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   E05F15/695
   B60J1/17 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-142685(P2016-142685)
(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公開番号】特開2018-12961(P2018-12961A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓太郎
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−145226(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1281546(KR,B1)
【文献】 米国特許第04870333(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 − 15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉部材を開閉させるためのモータと、
前記モータが駆動される毎に該モータが駆動されてからの前記開閉部材の動き始めを認識する動き始め認識部と
を備え
前記動き始め認識部は、前記モータの駆動状況に応じた駆動情報とそれ以前に設定されたしきい値とを比較して前記開閉部材の動き始めを認識することを特徴とする開閉部材駆動装置。
【請求項2】
請求項に記載の開閉部材駆動装置であって、
前記モータの回転を検出可能な回転検出センサを備え、
前記動き始め認識部は、前記駆動情報としての回転速度又はその変動量とそれ以前に設定されたしきい値とを比較して前記開閉部材の動き始めを認識することを特徴とする開閉部材駆動装置。
【請求項3】
請求項に記載の開閉部材駆動装置であって、
前記モータに流れる電流値を検出可能な電流センサを備え、
前記動き始め認識部は、前記駆動情報としての電流値又はその変動量とそれ以前に設定されたしきい値とを比較して前記開閉部材の動き始めを認識することを特徴とする開閉部材駆動装置。
【請求項4】
開閉部材を開閉させるためのモータと、
前記モータが駆動される毎に該モータが駆動されてからの前記開閉部材の動き始めを認識する動き始め認識部と、
前記モータの回転を検出可能な回転検出センサ
を備え、
前記動き始め認識部は、前記モータの駆動履歴に基づいて回転空走区間を決定して前記開閉部材の動き始めを認識することを特徴とする開閉部材駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉部材駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、開閉部材駆動装置としては、開閉部材を開閉させるモータの回転を検出可能な回転検出センサを備え、開閉部材の全閉位置(又は全開位置)を認識し、そこから回転検出センサが検出したパルス(エッジ)の数をカウントして開閉部材の位置を認識し、開閉部材の位置に応じてモータを制御するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−228254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、開閉部材駆動装置では、開閉部材とモータとがレギュレータやギヤ等を介して駆動連結され、例えば逆回転駆動する場合等、モータが回転駆動を開始してから、言い換えると回転検出センサがモータの回転を検出してから、開閉部材が動き始めるまでに差があり、モータが回転しているのに開閉部材が動いていない回転空走区間が存在する。また、この回転空走区間は、レギュレータやギヤ等の伝達部材の経年劣化(それらのたるみやがた)等により変化する。これらのことから、開閉部材の位置を高精度に認識することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、長期間、開閉部材の位置を高精度に認識することができる開閉部材駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する開閉部材駆動装置は、開閉部材を開閉させるためのモータと、前記モータが駆動される毎に該モータが駆動されてからの前記開閉部材の動き始めを認識する動き始め認識部とを備え、前記動き始め認識部は、前記モータの駆動状況に応じた駆動情報とそれ以前に設定されたしきい値とを比較して前記開閉部材の動き始めを認識する
【0007】
同構成によれば、モータが駆動される毎に該モータが駆動されてからの開閉部材の動き始めを認識する動き始め認識部を備えるため、例えば、開閉部材とモータとを駆動連結するレギュレータやギヤ等の伝達部材が経年劣化しても、駆動される毎に開閉部材の位置を高精度に認識することができる。よって、長期間、開閉部材の位置を高精度に認識しながら、開閉部材を駆動制御することができる。
【0009】
同構成によれば、動き始め認識部は、モータの駆動状況に応じた駆動情報とそれ以前に設定されたしきい値とを比較して開閉部材の動き始めを認識するため、モータが駆動されて開閉部材が動き始めると同時に高精度に開閉部材の動き始めを認識することができる。
【0010】
上記開閉部材駆動装置であって、前記モータの回転を検出可能な回転検出センサを備え、前記動き始め認識部は、前記駆動情報としての回転速度又はその変動量とそれ以前に設定されたしきい値とを比較して前記開閉部材の動き始めを認識することが好ましい。
【0011】
同構成によれば、モータの回転を検出可能な回転検出センサを備え、動き始め認識部は、駆動情報としての回転速度又はその変動量とそれ以前に設定されたしきい値とを比較して開閉部材の動き始めを認識するため、例えば、回転検出センサを備えた開閉部材駆動装置に新たなセンサを追加することなく、開閉部材の動き始めを認識することができる。
【0012】
上記開閉部材駆動装置であって、前記モータに流れる電流値を検出可能な電流センサを備え、前記動き始め認識部は、前記駆動情報としての電流値又はその変動量とそれ以前に設定されたしきい値とを比較して前記開閉部材の動き始めを認識することが好ましい。
【0013】
同構成によれば、モータに流れる電流値を検出可能な電流センサを備え、動き始め認識部は、駆動情報としての電流値又はその変動量とそれ以前に設定されたしきい値とを比較して開閉部材の動き始めを認識するため、例えば、電流センサを備えた開閉部材駆動装置に新たなセンサを追加することなく、開閉部材の動き始めを認識することができる。
【0014】
上記課題を解決する開閉部材駆動装置開閉部材を開閉させるためのモータと、前記モータが駆動される毎に該モータが駆動されてからの前記開閉部材の動き始めを認識する動き始め認識部と、前記モータの回転を検出可能な回転検出センサを備え、前記動き始め認識部は、前記モータの駆動履歴に基づいて回転空走区間を決定して前記開閉部材の動き始めを認識する。
同構成によれば、モータが駆動される毎に該モータが駆動されてからの開閉部材の動き始めを認識する動き始め認識部を備えるため、例えば、開閉部材とモータとを駆動連結するレギュレータやギヤ等の伝達部材が経年劣化しても、駆動される毎に開閉部材の位置を高精度に認識することができる。よって、長期間、開閉部材の位置を高精度に認識しながら、開閉部材を駆動制御することができる。
【0015】
同構成によれば、モータの回転を検出可能な回転検出センサを備え、動き始め認識部は、モータの駆動履歴に基づいて回転空走区間を決定して開閉部材の動き始めを認識するため、例えば、回転検出センサを備えた開閉部材駆動装置に新たなセンサを追加することなく、モータの駆動履歴が考慮された精度で開閉部材の動き始めを認識することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の開閉部材駆動装置では、長期間、開閉部材の位置を高精度に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態におけるパワーウィンドウ装置の概略構成図。
図2】一実施形態における動き始め認識部の動作を説明するための波形図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、パワーウィンドウ装置の一実施形態を図1及び図2に従って説明する。
図1に示すように、車両ドアDには、開閉部材としてのウィンドウガラスWGが上下動可能に設けられ、該ウィンドウガラスWGには伝達部材としてのループ状のワイヤ(レギュレータ)W等を介して開閉部材駆動装置としてのパワーウィンドウ装置1におけるモータMが駆動連結されている。
【0019】
パワーウィンドウ装置1は、モータMの回転を検出するホールIC等の回転検出センサ2と、該回転検出センサ2からの信号及び操作スイッチ3からの信号等に基づいてバッテリ4の電源をモータMに供給する制御部5とを備える。即ち、回転検出センサ2は、モータMの回転(駆動量)に応じたパルス信号を制御部5に出力する。そして、制御部5は、マイコンや駆動回路等からなり、入力されるパルス信号によりウィンドウガラスWGの位置や速度を把握しながら種々の制御を行い、モータMを駆動制御する。
【0020】
詳述すると、制御部5は、車両ドアDに設けられた操作スイッチ3が操作されると、その操作に応じてウィンドウガラスWGを開閉駆動(上下動)させるべくモータMを駆動制御する。
【0021】
また、本実施形態の制御部5は、モータMが駆動される毎に該モータMが駆動されてからのウィンドウガラスWGの動き始めを認識する動き始め認識部6を備える。
動き始め認識部6は、モータMの駆動状況を示す回転検出センサ2からのパルス信号に応じた駆動情報としての回転速度とそれ以前に設定されたしきい値とを比較してウィンドウガラスWGの動き始めを認識する。
【0022】
具体的には、図2の特性X1に示すように、例えば、全開位置から全閉位置にウィンドウガラスWGを駆動させるときの初期の段階では、モータMの回転速度は、一旦大きく上昇して、その後、ウィンドウガラスWGが動き出す際に下降することになる。これは、モータMとウィンドウガラスWGとを駆動連結するワイヤWのたるみやギヤのがた等が影響して回転空走区間(モータMが回転しているのにウィンドウガラスWGが動いていない区間)が存在し、回転空走区間では無負荷になる(ウィンドウガラスWGが負荷にならない)ためである。そして、動き始め認識部6は、回転速度がしきい値Th1を下回ると、ウィンドウガラスWGの動き始めを認識する。言い換えると、動き始め認識部6は、回転速度がしきい値Th1を下回るまでを回転空走区間と認識する。この例(図2参照)では、しきい値Th1が「100rps」に設定され、動き始め認識部6は、パルスエッジ数が「50」のときにウィンドウガラスWGの動き始めを認識する。なお、モータMの駆動開始直後も回転速度はしきい値Th1を下回っているが、動き始め認識部6は、モータMの駆動開始直後(例えば、パルスエッジ数が「20」になるまで)はマスク処理によって動き始めを認識する対象から除外する。また、前記しきい値Th1(100rps)は、回転空走区間とウィンドウガラスWGが負荷となっている区間との境目の回転速度であって、実験結果等から予め設定された値である。
【0023】
そして、制御部5は、動き始め認識部6がウィンドウガラスWGの動き始めを認識したパルスエッジ数からパルスエッジ数をカウントしてウィンドウガラスWGの位置を認識し、その位置に応じてモータM(ウィンドウガラスWG)を制御する。例えば、制御部5は、ウィンドウガラスWGが全閉位置に近い予め設定された位置となると、モータMの回転速度が小さくなるように制御して、ウィンドウガラスWGをスローストップさせる。
【0024】
次に、上記のように構成されたパワーウィンドウ装置1の作用について説明する。
例えば、ウィンドウガラスWGが全開位置にある状態で、ウィンドウガラスWGをオートで(一回の操作で)全閉状態とすべく操作スイッチ3が操作されると、制御部5によってモータMが駆動され、動き始め認識部6によってモータMが駆動されてからのウィンドウガラスWGの動き始めが認識される。そして、制御部5によって動き始めを認識してからパルスエッジ数がカウントされ、ウィンドウガラスWGが全閉位置に近い予め設定された位置となると、モータMの回転速度が小さくなるように制御され、ウィンドウガラスWGがスローストップされる。これにより、ウィンドウガラスWGが高速で全閉位置に到達することが防止され、例えば、ウィンドウガラスWGが窓枠に当接する際の衝撃音やモータM等に掛かる衝撃が抑えられる。
【0025】
次に、上記実施形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)モータMが駆動される毎に該モータMが駆動されてからのウィンドウガラスWGの動き始めを認識する動き始め認識部6を備えるため、例えば、ウィンドウガラスWGとモータMとを駆動連結するワイヤWやギヤ等の伝達部材が経年劣化しても、駆動される毎にウィンドウガラスWGの位置を高精度に認識することができる。よって、長期間、ウィンドウガラスWGの位置を高精度に認識しながら、ウィンドウガラスWGを駆動制御することができる。その結果、例えば、長期間、本実施形態のようにスローストップ開始位置をほぼ一定の位置とすることができる。
【0026】
(2)動き始め認識部6は、モータMの駆動状況に応じた駆動情報とそれ以前に設定されたしきい値とを比較してウィンドウガラスWGの動き始めを認識するため、モータMが駆動されてウィンドウガラスWGが動き始めると同時に高精度にウィンドウガラスWGの動き始めを認識することができる。また、本実施形態では、モータMの回転を検出可能な回転検出センサ2を備え、動き始め認識部6は、駆動情報としての回転速度とそれ以前に設定されたしきい値とを比較してウィンドウガラスWGの動き始めを認識する。よって、例えば、回転検出センサ2を備えたパワーウィンドウ装置1に新たなセンサを追加することなく、ウィンドウガラスWGの動き始めを認識することができる。
【0027】
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、動き始め認識部6は、回転速度とそれ以前に設定されたしきい値とを比較してウィンドウガラスWGの動き始めを認識するとしたが、これに限定されず、例えば、駆動情報としての回転速度の(単位時間当たりの)変動量とそれ以前に設定されたしきい値とを比較してウィンドウガラスWGの動き始めを認識するようにしてもよい。
【0028】
また、例えば、モータMに流れる電流値を検出可能な電流センサを備え、動き始め認識部6は、駆動情報としての電流値又はその(単位時間当たりの)変動量とそれ以前に設定されたしきい値とを比較してウィンドウガラスWGの動き始めを認識するようにしてもよい。具体的には、図2の特性X2に示すように、例えば、全開位置から全閉位置にウィンドウガラスWGを駆動させるとき、モータMに流れる電流の電流値は、一旦大きく下降して、その後、ウィンドウガラスWGが動き出す際に上昇することになる。そして、動き始め認識部6は、回転速度がしきい値Th2を上回ると、ウィンドウガラスWGの動き始めを認識するようにしてもよい。このようにすると、例えば、電流センサを備えたパワーウィンドウ装置に新たなセンサを追加することなく、ウィンドウガラスWGの動き始めを認識することができる。
【0029】
・上記実施形態では、動き始め認識部6は、モータMの駆動状況に応じた駆動情報(回転速度)とそれ以前に設定されたしきい値とを比較してウィンドウガラスWGの動き始めを認識するとしたが、モータMが駆動される毎に該モータMが駆動されてからのウィンドウガラスWGの動き始めを認識することができれば、他の動き始め認識部としてもよい。
【0030】
例えば、モータMの駆動履歴(モータMの累計駆動回数や累計駆動量(累計パルスエッジ数)等)に基づいて回転空走区間を決定してウィンドウガラスWGの動き始めを認識する動き始め認識部としてもよい。即ち、回転空走区間は、ウィンドウガラスWGとモータMとを駆動連結するワイヤWやギヤ等が経年劣化するほど大きくなることから、駆動履歴(モータMの累計駆動回数や累計駆動量(累計パルスエッジ数)等)に対する回転空走区間を予め記憶させておき、駆動履歴に基づいて回転空走区間を決定するようにしてもよい。具体的には、例えば、動き始め認識部は、累計駆動回数が5000回まではパルスエッジ数が「35」となるまでを、累計駆動回数が5001回から30000回まではパルスエッジ数が「50」となるまでを、累計駆動回数が30001回以上はパルスエッジ数が「65」となるまでを回転空走区間として決定するようにしてもよい。このようにすると、例えば、回転検出センサ2を備えたパワーウィンドウ装置1に新たなセンサを追加することなく、モータMの駆動履歴(それに伴う劣化)が考慮された精度でウィンドウガラスWGの動き始めを認識することができる。
【0031】
・上記実施形態では、制御部5は、閉動作時にウィンドウガラスWGが全閉位置に近い予め設定された位置となると、モータMの回転速度が小さくなるように制御して、ウィンドウガラスWGをスローストップさせるとしたが、これに限定されず、ウィンドウガラスWGの位置に応じて他の制御を行うものとしてもよい。
【0032】
・上記実施形態では、開閉部材駆動装置としてのパワーウィンドウ装置1に具体化したが、これに限定されず、ウィンドウガラスWG以外の開閉部材を駆動制御する開閉部材駆動装置としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…パワーウィンドウ装置(開閉部材駆動装置)、2…回転検出センサ、6…動き始め認識部、M…モータ、Th1,Th2…しきい値、WG…ウィンドウガラス(開閉部材)。
図1
図2