特許第6805608号(P6805608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805608
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】組み合わせ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20201214BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20201214BHJP
   F16C 33/38 20060101ALI20201214BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   F16C33/58
   F16C33/66 Z
   F16C33/38
   F16C19/18
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-147086(P2016-147086)
(22)【出願日】2016年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-17290(P2018-17290A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】戸田 拓矢
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−036799(JP,U)
【文献】 特開2009−092090(JP,A)
【文献】 特開平09−088947(JP,A)
【文献】 特開2010−007788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の転がり軸受が中心線を上下方向として重ねて設けられている組み合わせ軸受であって、
前記転がり軸受それぞれは、内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間の環状空間に設けられている複数の転動体、及び複数の前記転動体を保持する環状の保持器を有し、回転すると前記環状空間を前記外輪に沿って下から上に潤滑油を流す作用を発生させる構成を有し、
前記保持器は、前記転動体の下側の隣りに設けられ前記内輪側から前記外輪側へエアが回り込むのを阻止する下環状部、及び上側の隣りに設けられ前記内輪側から前記外輪側へエアが回り込むのを阻止する上環状部、を有しており、
最も下の前記転がり軸受が有する前記下環状部は、前記内輪の下面よりも低い位置まで下方に延びた形状を有している、組み合わせ軸受。
【請求項2】
前記外輪は、内周側に、上側に向かうにしたがって拡径する拡径面を有し、
前記保持器は、前記上環状部と前記下環状部とを繋ぐと共に上側に向かうにしたがって径方向外側に傾斜する柱部を複数有している、請求項1に記載の組み合わせ軸受。
【請求項3】
前記保持器が有する前記上環状部は、上下方向に直線状となる円筒形状を有している、請求項2に記載の組み合わせ軸受。
【請求項4】
前記保持器が有する前記上環状部は、上側に向かうにしたがって縮径するテーパ形状を有している、請求項1又は2に記載の組み合わせ軸受。
【請求項5】
前記内輪は、下側の肩部よりも外径の大きい上側の肩部を有し、
下から二番目以上の前記転がり軸受が有する前記保持器の前記下環状部は、その下に位置する前記転がり軸受が有する前記内輪の上側の前記肩部に対して、隙間をあけて軸方向に対向している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組み合わせ軸受。
【請求項6】
最も下の前記転がり軸受が有する前記下環状部は、前記内輪の下面と対向する形状を有している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組み合わせ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の転がり軸受が中心線を上下方向として重ねて設けられている組み合わせ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば散水機の回転軸は、図5に示すように、複数の転がり軸受91を上下に重ねて構成した組み合わせ軸受90によって支持されている。軸受ハウジング98の底部には潤滑油(オイル)Qが溜められており、複数の転がり軸受91のうちの一部(図5の場合、下二つ)の転がり軸受91,91が、潤滑油に浸かった状態にある。
【0003】
図5に示す各転がり軸受91はアンギュラ玉軸受であり、アンギュラ玉軸受は、回転すると、内輪92と外輪93との間の環状空間94において潤滑油を軸方向一方側から他方側に流す作用(ポンプ作用)を有している(例えば、特許文献1参照)。そこで、ポンプ作用により潤滑油が流れる方向を下から上に向かう方向となるように、複数の転がり軸受91を配置することで、軸99が回転すると、下部に溜められている潤滑油Qを上部(下から三番目及び四番目)の転がり軸受91にまで運ぶことができ、組み合わせ軸受90全体の潤滑性を確保することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−263266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
転がり軸受91が回転すると、環状空間94の潤滑油は遠心力により外輪93側に移動し、ポンプ作用によって潤滑油は外輪93の内周面に沿って下から上に流れる。これにより、回転が停止した状態では潤滑油に浸されていた下から二番目の転がり軸受91、更に最も下の転がり軸受91において、内輪92と保持器96との間の内側空間95の潤滑油の油面が低下し、その代わりに、これら転がり軸受91の上部側から前記内側空間95にエアが入り込む。この状態で更に回転が継続すると、潤滑油よりもエアの方が流動性が高いことから、例えば最も下の転がり軸受91において、前記内側空間95に入り込んだエアが、図5の矢印Xに示すように、外輪93の内周側に回り込み、上に向かおうとする潤滑油Qにエアが混入する。混入するエアが多くなるとポンプ作用が弱まってしまい、上部(最も上、及びその下)の転がり軸受91に潤滑油Qが届かなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、複数の転がり軸受を上下に重ねて構成した組み合わせ軸受において、各転がり軸受が回転することで下から上に潤滑油を流す作用(ポンプ作用)が弱まるのを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の転がり軸受が中心線を上下方向として重ねて設けられている組み合わせ軸受であって、前記転がり軸受それぞれは、内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間の環状空間に設けられている複数の転動体、及び複数の前記転動体を保持する環状の保持器を有し、回転すると前記環状空間を前記外輪に沿って下から上に潤滑油を流す作用を発生させる構成を有し、前記保持器は、前記転動体の下側の隣りに設けられ前記内輪側から前記外輪側へエアが回り込むのを阻止する下環状部、及び上側の隣りに設けられ前記内輪側から前記外輪側へエアが回り込むのを阻止する上環状部、を有しており、最も下の前記転がり軸受が有する前記下環状部は、前記内輪の下面よりも低い位置まで下方に延びた形状を有している
【0008】
この組み合わせ軸受によれば、各転がり軸受において、回転によるポンプ作用を発生させることで、下部に溜められている潤滑油を上部の転がり軸受にも供給することが可能となる。また、ポンプ作用により下から上へと外輪に沿って潤滑油が流れると、内輪と保持器との間の内側空間では油面が低下すると共にエアが上から下へと流れ込み、やがてそのエアが外輪側へ回り込もうとするが、保持器の上環状部と下環状部がこれを阻止するので、エアによってポンプ作用が弱まるのを防ぐことが可能となる。
【0009】
また、この構成によれば、最も下の転がり軸受において、内輪と保持器との間の内側空間における油面が低下しても、エアが内輪側から外輪側へ回り込むのを下環状部が抑制し、ポンプ作用が弱まるのを防ぐことが可能となる。
【0010】
また、前記外輪は、内周側に、上側に向かうにしたがって拡径する拡径面を有し、前記保持器は、前記上環状部と前記下環状部とを繋ぐと共に上側に向かうにしたがって径方向外側に傾斜する柱部を複数有しているのが好ましい。
この構成によれば、外輪と保持器との間の外側空間が狭くなるのを防ぎ、ポンプ作用を効果的に得ることが可能となる。
更に、この組み合わせ軸受において、前記保持器が有する前記上環状部は、上下方向に直線状となる円筒形状を有している構成とすることができる。
または、前記組み合わせ軸受において、前記保持器が有する前記上環状部は、上側に向かうにしたがって縮径するテーパ形状を有しているのが好ましい。
このような、上環状部が有する前記各構成によれば、下の転がり軸受の保持器と、その上の転がり軸受の保持器との間に、連続性を持たせることができる。つまり、内輪側の内側空間と、外輪側の外側空間とを保持器によって区画するような構成が得られ、上下二つの転がり軸受の間においても、エアが内輪側から外輪側へ回り込むのを抑制し、ポンプ作用が弱まるのを防ぐことが可能となる。
【0011】
また、前記内輪は、下側の肩部よりも外径の大きい上側の肩部を有し、下から二番目以上の前記転がり軸受が有する前記保持器の前記下環状部は、その下に位置する前記転がり軸受が有する前記内輪の上側の前記肩部に対して、隙間をあけて軸方向に対向しているのが好ましい。
この構成によれば、保持器と、その下隣りに位置する内輪との間の流路が狭くなり、内輪側においてエアが通過しにくくなる。このため、内輪側にエアが入りにくく、この結果、エアが内輪側から外輪側へ回り込むのを抑制し、ポンプ作用が弱まるのを防ぐことが可能となる。
【0012】
また、最も下の前記転がり軸受が有する前記下環状部は、前記内輪の下面と対向する形状を有しているのが好ましい。
この構成によれば、前記のとおり、ポンプ作用により下から上へと外輪に沿って潤滑油が流れると、前記内側空間では油面が低下すると共にエアが上から下へと流れ、やがて、最も下の転がり軸受において、そのエアが外輪側へ回り込もうとするが、保持器の下環状部がこれを阻止するので、エアによってポンプ作用が弱まるのを防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の組み合わせ軸受によれば、各転がり軸受が回転することで外輪に沿って下から上に潤滑油を流す作用(ポンプ作用)が弱まるのを防ぐことが可能となり、上部の転がり軸受にも潤滑油を運んで潤滑性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の組み合わせ軸受の実施の一形態を示す断面図である。
図2】第一軸受及びその上(下から二番目)の第二軸受を示す断面図である。
図3図2に示す保持器と異なる形態の保持器を有する組み合わせ軸受の断面図である。
図4】第一軸受の形態が異なる組み合わせ軸受の断面図である。
図5】従来の組み合わせ軸受を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の組み合わせ軸受の実施の一形態を示す断面図である。図1に示す組み合わせ軸受7は、複数(四つ)の転がり軸受10,20,20,20が上下に重ねて設けられた縦型の構成を有している。これら転がり軸受10,20,20,20は、それぞれの中心線Cが一直線上に並び、かつ、中心線Cを上下方向として、軸8と軸受ハウジング9との間に設けられている。このような組み合わせ軸受7は、例えば散水機の軸(8)を支持するために用いられる。
【0016】
図1に示す組み合わせ軸受7では、最も下の転がり軸受10以外の転がり軸受20は、同じ構成である。以下の説明では、最も下の転がり軸受10を第一軸受10と呼び、この第一軸受10以外の転がり軸受20を第二軸受20と呼ぶ。なお、第一軸受10と第二軸受20とでは、保持器14,24の形態が異なるが、その他は同じである。また、この組み合わせ軸受7では、軸受ハウジング9の底部に潤滑油(オイル)Qが溜められており、軸8の回転停止時では、四つの転がり軸受10,20,20,20のうちの一部(図2の場合、下二つ)の転がり軸受10,20が潤滑油に浸かった状態にある。
【0017】
図2は、第一軸受10及びその上(下から二番目)の第二軸受20を示す断面図である。第一軸受10は、内輪11、外輪12、これら内輪11と外輪12との間の環状空間15に設けられている複数の玉(転動体)13、及びこれら複数の玉13を保持する環状の保持器14を有している。内輪11は、玉13が転がり接触する内軌道16を有しており、外輪12は、玉13が転がり接触する外軌道17を有している。第一軸受10はアンギュラ玉軸受であり、玉13は内軌道16及び外軌道17に対して接触角Aを有して接触する。
【0018】
外輪12は、その内周側に、上側に向かうにしたがって拡径する拡径面18を有している。拡径面18は、外軌道17と連続してその上側に位置している。内輪11は、内軌道16の上側及び下側に肩部35,36を有しており、上側の肩部35は下側の肩部36よりも外径が大きい。
【0019】
第二軸受20は、内輪21、外輪22、これら内輪21と外輪22との間の環状空間25に設けられている複数の玉(転動体)23、及びこれら複数の玉23を保持する環状の保持器24を有している。内輪21は、玉23が転がり接触する内軌道26を有しており、外輪22は、玉23が転がり接触する外軌道27を有している。第二軸受20はアンギュラ玉軸受であり、玉23は内軌道26及び外軌道27に対して接触角Aを有して接触する。
【0020】
外輪22は、その内周側に、上側に向かうにしたがって拡径する拡径面28を有している。拡径面28は、外軌道27と連続してその上側に位置している。内輪21は、内軌道26の上側及び下側に肩部37,38を有しており、上側の肩部37は下側の肩部38よりも外径が大きい。
【0021】
第一軸受10及び第二軸受20は、前記のとおりアンギュラ玉軸受であり、また、外輪12,22は、上側に向かうにしたがって拡径する拡径面18,28を有している。この構成により、軸8と共に第一軸受10及び第二軸受20が回転すると、軸受ハウジング9の底部に溜められている潤滑油Qを下から上に流す作用(ポンプ作用)が発生する。なお、第一軸受10及び第二軸受20が回転すると、遠心力によって、環状空間15,25に存在している潤滑油Qは、遠心力によって外輪12,22それぞれの内周面に沿って下から上に流れる。
【0022】
ポンプ作用によって、第一軸受10において、潤滑油Qが外輪12に沿って環状空間15を下から上に流れ、更に、第二軸受20において、潤滑油Qが外輪22に沿って環状空間25を下から上に流れると、回転前に内輪11,21と保持器14,24との間の内側空間K1,K3に存在していた潤滑油Qの油面が低下する。これは、外輪12,22と保持器14,24との間の外側空間K2,K4において、潤滑油Qが外輪12,22に沿って下から上に流れると、内側空間K1,K3に存在していた潤滑油が外側空間K2,K4に引き込まれて供給されるためである。
【0023】
第一軸受10の保持器14について説明する。保持器14は、玉13の上側の隣りに設けられている上環状部41、玉13の下側の隣りに設けられている下環状部42、及び、これら上環状部41と下環状部42とを繋いでいる柱部43を有している。柱部43は、周方向に沿って等間隔で複数設けられている。上下の環状部41,42の間であって周方向で隣り合う柱部43の間が、玉13を収容するポケットとなる。
【0024】
ここで、第一軸受10において、外輪12は、前記のとおり、内周側に、上側に向かうにしたがって拡径する拡径面18を有している。また、外軌道17は、上側に向かうにしたがって拡径する部分を有している。これら上側に向かうにしたがって拡径する形状の拡径面18の一部及び外軌道17に、保持器14の柱部43は対向して設けられており、この柱部43も、上側に向かうにしたがって径方向外側に傾斜する形状を有している。この構成により、第一軸受10において、外側空間K2が狭くなるのを防ぎ、ポンプ作用を効果的に得ることが可能となる。
【0025】
なお、図5の従来例に示すように、保持器96が全体として円筒形状を有している場合、特に外輪93の下側の肩部と保持器96との間の隙間が小さくなり、潤滑油Qが外輪93と保持器96との間に浸入し難く、ポンプ作用の発生が弱くなるおそれがある。しかし、本実施形態では(図2参照)、外輪12の下側の肩部と保持器14との間が(従来例よりも)広くなっており、潤滑油Qが外輪12と保持器14との間に浸入しやすく、ポンプ作用を効果的に得ることが可能となる。
【0026】
この保持器14が有する下環状部42は、柱部43の延長方向に延びている基部42eと、この基部42eから更に下方に延びている延長部42fとを有している。下環状部42は、内輪11の肩部36に径方向から接近した状態となり、下環状部42の延長部42fは、内輪11の下面11bよりも低い位置まで下方に延びた形状を有している。延長部42fは、下に向かって直線状に伸びており、中心線Cを中心とする円筒形状を有している。内輪11の下面11bから下環状部42の下端42bまでの上下方向の寸法L1は、様々な値に設定することができ(ただし、L1>0)、例えば内輪11の幅寸法(上下方向の寸法)L2の30%〜70%とすることができ、図2に示す形態では、寸法L1は、寸法L2の50%となっている。
【0027】
また、この保持器14が有する上環状部41は、柱部43の延長方向に対して折れ曲がっており、上側に向かうにしたがって縮径するテーパ形状を有している。これにより、上環状部41は、内輪11の肩部35に径方向から接近した状態となる。
【0028】
第二軸受20の保持器24について説明する。保持器24は、玉23の上側の隣りに設けられている上環状部51、玉23の下側の隣りに設けられている下環状部52、及び、これら上環状部51と下環状部52とを繋いでいる柱部53を有している。柱部53は、周方向に沿って等間隔で複数設けられている。上下の環状部51,52の間であって周方向で隣り合う柱部53の間が、玉23を収容するポケットとなる。
【0029】
ここで、第二軸受20において、外輪22は、前記のとおり、内周側に、上側に向かうにしたがって拡径する拡径面28を有している。また、外軌道27は、上側に向かうにしたがって拡径する部分を有している。これら上側に向かうにしたがって拡径する形状の拡径面28の一部及び外軌道27に、保持器24の柱部53は対向して設けられており、この柱部53も、上側に向かうにしたがって径方向外側に傾斜する形状を有している。この構成により、第二軸受20において、外側空間K4が狭くなるのを防ぎ、ポンプ作用を効果的に得ることが可能となる。
【0030】
この保持器24が有する下環状部52は、柱部53の延長方向に延び、更に、小寸法について下方に延びている形状を有している。この下環状部52は、内輪21の肩部38に径方向から接近した状態となると共に、その下に位置する第一軸受10が有する内輪11の上側の肩部35に対して、隙間をあけて(接近して)軸方向に対向している状態となる。
また、この保持器24が有する上環状部51は、柱部53の延長方向に対して折れ曲がっており、上側に向かうにしたがって縮径するテーパ形状を有している。これにより、上環状部51は、内輪21の肩部37に径方向から接近した状態となる。
【0031】
以上のように構成された組み合わせ軸受7によれば、第一軸受10及び第二軸受20それぞれは、回転すると環状空間15,25を外輪12,22に沿って下から上に潤滑油を流す作用(ポンプ作用)を発生させる構成を有している。このような回転によるポンプ作用を発生させることで、軸受ハウジング9の下部に溜められている潤滑油Qを、下から三番目及び四番目の第二軸受20にも供給することが可能となる。
【0032】
また、最も下の第一軸受10において、ポンプ作用により下から上へと外輪12に沿って潤滑油Qが流れると、内側空間K1では油面が低下すると共にエアが上から下へと流れ込み、やがてそのエアが外輪12側へ回り込もうとするが、保持器14が有する下環状部42は、内輪11の下面11bよりも低い位置まで下方に延びた形状を有している(図2参照)。このため、内側空間K1における油面が低下しても、エアが内輪11側から外輪12側へ回り込むのを抑制し、エアによってポンプ作用が弱まる(低下する)のを防ぐことが可能となる。つまり、保持器14が有している下環状部42は、内輪11側から外輪12側へエアが回り込むのを阻止する機能を有している。
【0033】
また、第一軸受10(第二軸受20)において、内輪11(21)は、下側の肩部36(38)よりも外径の大きい上側の肩部35(37)を有している。
そして、下から二番目の第二軸受20において、保持器24の下環状部52は、その下に位置する第一軸受10が有する内輪11の上側の肩部35に対して、隙間をあけて軸方向に対向している。
また、下から三番目以上の第二軸受20においては、保持器24の下環状部52は、その下に位置する第二軸受20が有する内輪21の上側の肩部37に対して、隙間をあけて軸方向に対向している。
【0034】
したがって、第二軸受20において、ポンプ作用により下から上へと外輪22に沿って潤滑油Qが流れると、内側空間K3では油面が低下すると共にエアが上から下へと流れ込み、やがてそのエアが、第一軸受10と第二軸受20との間及び上下の第二軸受20の間を通って、外輪22側へ回り込もうとするが、前記下環状部52によれば、その下隣りに位置する内輪11(21)との間の流路が狭くなり、内輪21側においてエアが通過しにくくなる。このため、上から内輪21側にエアが入りにくく、この結果、エアが内輪21側から外輪22側へ回り込むのを抑制し、ポンプ作用が弱まるのを防ぐことが可能となる。つまり、下から二番目以上の第二軸受20において、保持器24が有している下環状部52は、内輪21側から外輪22側へエアが回り込むのを阻止する機能を有している。
【0035】
また、第一軸受10(第二軸受20)において、外輪12(22)は、前記のとおり、その内周側に、上側に向かうにしたがって拡径する拡径面18(28)を有しており、保持器14(24)は、上側に向かうにしたがって径方向外側に傾斜する柱部43(53)を有している。このため、外側空間K2(K4)が狭くなるのを防ぎ、ポンプ作用を効果的に得ることが可能となる。更に、第一軸受10(第二軸受20)において、保持器14(24)が有する上側の上環状部41(51)は、上側に向かうにしたがって縮径するテーパ形状を有している。
【0036】
この構成によれば、最も下の第一軸受10の保持器14と、その上の(下から二番目の)第二軸受20の保持器24との間に、連続性を持たせることができる。つまり、内輪11,21側の内側空間K1,K3と、外輪12,22側の外側空間K2,K4とを、保持器14,24によって区画するような構成が得られ、二つの軸受10,20の間においても、エアが内輪11,21側から外輪12,22側へ回り込むのを抑制し、ポンプ作用が弱まるのを防ぐことが可能となる。
また、第二軸受20の保持器24と、その上の第二軸受20の保持器24との間においても、連続性を持たせることができる。つまり、内輪21側の内側空間K3と、外輪22側の外側空間K4とを、保持器24によって区画するような構成が得られ、上下二つの軸受20,20の間においても、エアが内輪21側から外輪22側へ回り込むのを抑制し、ポンプ作用が弱まるのを防ぐことが可能となる。
以上より、潤滑油Qが下から上に流れる外側空間K1(K3)の流路と、エアが侵入する(流れる)内側空間K2(K4)とを、保持器14,24によって区画することができる。
【0037】
なお、前記実施形態では、保持器14(24)が有する上側の上環状部41(51)は、上側に向かうにしたがって縮径するテーパ形状を有している場合について説明したが、その変形例として、図3に示すように、保持器14(24)が有する上側の上環状部41(51)は、上下方向に直線状となる円筒形状を有している構成であってもよい。
【0038】
図4は、第一軸受10の形態が異なる組み合わせ軸受7の断面図である。図4に示す組み合わせ軸受7の第二軸受20は、図1に示す組み合わせ軸受7の第二軸受20と同じである。図4に示す第一軸受10は、図1に示す第一軸受10と比較して、保持器14の形態が異なるが、その他については同じである。
【0039】
図4に示す組み合わせ軸受7では、最も下の第一軸受10が有する保持器14の下側の下環状部42は、内輪11の下面11bと対向する形状を有している。つまり、下環状部42は、柱部43の延長方向に延びている基部42eと、この基部42eから更に下方に延びている延長部42fと、延長部42fの下端部から径方向内側に向かって延びている円環部42gとを有している。下環状部42は、内輪11の肩部36に径方向及び軸方向から接近した状態となり、延長部42f及び円環部42gは、内輪11の下面11bよりも低い位置まで下方に延び更に径方向内側に延びた形状を有している。
【0040】
図4に示す保持器14によれば、前記のとおり、ポンプ作用により下から上へと外輪12に沿って潤滑油Qが流れると、内側空間K1,K2では油面が低下すると共にエアが上から下へと流れ、やがて、最も下の第一軸受10において、そのエアが外輪12側へ回り込もうとする。しかし、保持器14の下環状部42がこれを阻止するので、エアによってポンプ作用が弱まるのを防ぐことが可能となる。
【0041】
図4において、保持器14の円環部42gは、延長部42fと別体とすることができ、第一軸受10の組み立ての最後に円環部42gを延長部42fに組み付ける構成とすればよい。
【0042】
以上、前記各形態の組み合わせ軸受7によれば、第一軸受10及び第二軸受20それぞれが回転することで外輪12,22に沿って下から上に潤滑油Qを流す作用(ポンプ作用)が弱まるのを防ぐことが可能となり、上部の第二軸受20にも潤滑油Qを運んで潤滑性を確保することができる。そして、最も上の第二軸受20を通過した潤滑油Qは、この第二軸受20から上に排出され、軸受ハウジング9の下部の潤滑油溜りに戻る。つまり、第一軸受10及び第二軸受20それぞれにおけるポンプ作用で潤滑油を全体として循環させることができる。このため、組み合わせ軸受7全体としての潤滑性を確保することが可能となる。この結果、組み合わせ軸受7を含むユニット(散水機)の寿命を向上させることができ、また、回転抵抗を低減することができる。
【0043】
また、ポンプ作用が弱まるのを防ぐことができることから、軸受ハウジング9の下部に溜める潤滑油が少なくても潤滑性能を維持することが可能となる。このため、潤滑油の封入量を少なくすることもできる。
【0044】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の組み合わせ軸受は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
前記実施形態では、転動体を玉13として説明したが、他の形態であってもよく、例えば円すいころであってもよい。円すいころ軸受の場合においても、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって潤滑油を流すポンプ作用が発生する。そこで、軸方向他方側を上側となるように、複数の円すいころ軸受を重ねて設けた組み合わせ軸受としてもよい。このように、本発明の組み合わせ軸受は、回転によるポンプ作用が生じる転がり軸受を縦型に複数配置した構成であればよい。
【0045】
また、上下方向に重ねる転がり軸受の数は四つ以外とすることができる。また、本発明の組み合わせ軸受は、散水機以外の用途にも用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
7:組み合わせ軸受 10:第一軸受(転がり軸受)
11:内輪 11b:下面 12:外輪
13:玉(転動体) 14:保持器 15:環状空間
18:拡径面 20:第二軸受(転がり軸受)
21:内輪 22:外輪 23:玉(転動体)
24:保持器 25:環状空間 28:拡径面
35,36,37,38:肩部 41:上環状部
42:下環状部 43:柱部 51:上環状部
52:下環状部 53:柱部 C:中心線
Q:潤滑油
図1
図2
図3
図4
図5