(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流遮断部は、前記制御信号が予め定められた遮断条件を満たすことに応じて、前記パワー半導体素子のゲートに流れる電流を遮断する、請求項5項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る点火装置1000の構成例を示す。点火装置1000は、自動車等の内燃機関等に用いられる点火プラグを点火する。本実施形態において、点火装置1000が自動車のエンジンに搭載される例を説明する。点火装置1000は、制御信号発生部10と、点火プラグ20と、点火コイル30と、電源40と、半導体装置100と、を備える。
【0009】
制御信号発生部10は、半導体装置100のオンおよびオフの切り換えを制御するスイッチング制御信号(以下、制御信号と略す)を発生する。制御信号発生部10は、例えば、点火装置1000が搭載される自動車のエンジンコントロールユニット(ECU)の一部または全部である。制御信号発生部10は、発生した制御信号を半導体装置100に供給する。制御信号発生部10が制御信号を半導体装置100に供給することにより、点火装置1000は点火プラグ20の点火動作を開始する。
【0010】
点火プラグ20は、放電により電気的に火花を発生させる。点火プラグ20は、例えば、10kV程度以上の印加電圧により放電する。点火プラグ20は、一例として、内燃機関に設けられ、この場合、燃焼室の混合気等の燃焼ガスを点火する。点火プラグ20は、例えば、シリンダの外部からシリンダ内部の燃焼室まで貫通する貫通孔に設けられ、当該貫通孔を封止するように固定される。この場合、点火プラグ20の一端は燃焼室内に露出され、他端はシリンダ外部から電気信号を受け取る。
【0011】
点火コイル30は、点火プラグ20に電気信号を供給する。点火コイル30は、点火プラグ20を放電させる高電圧を電気信号として供給する。点火コイル30は、変圧器として機能してよく、例えば、一次コイル32および二次コイル34を有するイグニッションコイルである。一次コイル32および二次コイル34の一端は、電気的に接続される。一次コイル32は、二次コイル34よりも巻き線数が少なく、二次コイル34とコアを共有する。二次コイル34は、一次コイル32に発生する起電力に応じて、起電力(相互誘導起電力)を発生させる。二次コイル34は、他端が点火プラグ20と接続され、発生させた起電力を点火プラグ20に供給して放電させる。
【0012】
電源40は、点火コイル30に電圧を供給する。電源40は、例えば、一次コイル32および二次コイル34の一端に予め定められた定電圧Vb(一例として、14V)を供給する。電源40は、一例として、自動車のバッテリーである。
【0013】
半導体装置100は、制御信号発生部10から供給される制御信号に応じて、点火コイル30の一次コイル32の他端および基準電位の間の導通(オン)および非導通(オフ)を切り換える。半導体装置100は、例えば、制御信号がハイ電位(オン電位)であることに応じて、一次コイル32および基準電位の間を導通させ、ロー電位(オフ電位)であることに応じて、一次コイル32および基準電位の間を非導通にさせる。
【0014】
ここで、基準電位は、自動車の制御システムにおける基準電位でよく、また、自動車内における半導体装置100に対応する基準電位でもよい。基準電位は、半導体装置100をオフにするロー電位でもよく、一例として、0Vである。半導体装置100は、制御端子102と、第1端子104と、第2端子106と、パワー半導体素子110と、第1ゲート制御部120と、放電回路130と、を備える。
【0015】
制御端子102は、パワー半導体素子110を制御する制御信号を入力する。制御端子102は、制御信号発生部10に接続され、制御信号を受け取る。第1端子104は、点火コイル30を介して電源40に接続される。第2端子106は、基準電位に接続される。即ち、第1端子104は、第2端子106と比較して高電位側の端子であり、第2端子106は、第1端子104と比較して低電位側の端子である。
【0016】
パワー半導体素子110は、ゲート端子(G)、コレクタ端子(C)、およびエミッタ(E)端子を含み、ゲート端子に入力する制御信号に応じて、コレクタ端子およびエミッタ端子の間を電気的に接続または切断する。パワー半導体素子110は、高電位側の第1端子104および低電位側の第2端子106の間に接続され、ゲート電位に応じてオンまたはオフに制御される。パワー半導体素子110は、一例として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である。
【0017】
パワー半導体素子110は、一例として、数百Vに至る耐圧を有する。パワー半導体素子110は、例えば、基板の第1面側にコレクタ電極が形成され、第1面とは反対側の第2面側にゲート電極およびエミッタ電極が形成される縦型デバイスである。また、パワー半導体素子110は、縦型MOSFETでもよい。一例として、パワー半導体素子110のエミッタ端子は、基準電位と接続される。また、コレクタ端子は、一次コイル32の他端に接続される。なお、本実施例において、パワー半導体素子110は、制御信号がオン電位となることに応じて、コレクタ端子およびエミッタ端子の間を電気的に接続するnチャネル型のIGBTである例について説明する。
【0018】
第1ゲート制御部120は、制御端子102から入力するパワー半導体素子110を制御する制御信号に応じて、パワー半導体素子110のゲート電位を制御する。即ち、第1ゲート制御部120は、制御信号に応じて、パワー半導体素子110をオンまたはオフにする電位を当該パワー半導体素子110のゲートに供給する。第1ゲート制御部120は、例えば、制御端子102から入力する電気信号を電源として用いる。第1ゲート制御部120は、第1スイッチ素子122と、オフ電位供給部124と、を有する。
【0019】
第1スイッチ素子122は、制御端子102とパワー半導体素子110のゲートとの間に接続され、入力する電位に応じてオンまたはオフに制御される。第1スイッチ素子122は、一例として、ゲート電位に応じてドレイン端子およびソース端子の間をオンまたはオフに制御されるFETである。第1スイッチ素子122は、ドレイン端子が制御端子102に接続され、ソース端子がパワー半導体素子110のゲート端子に接続され、制御端子102から入力する制御信号をパワー半導体素子110のゲート端子に供給するか否かを切り換える。
【0020】
第1スイッチ素子122は、一例として、ゲート端子がオン電位(ハイ電位)となることに応じて、ドレイン端子およびソース端子の間を電気的に切断する、ノーマリーオンのスイッチ素子である。この場合、第1スイッチ素子122は、pチャネル型のMOSFETであることが望ましい。
【0021】
オフ電位供給部124は、制御信号が予め定められた遮断条件を満たすことに応じて、第1スイッチ素子122をオフにするオフ電位を第1スイッチ素子122のゲートに供給する。オフ電位供給部124は、パワー半導体素子110の異常通電および異常過熱等を検出する検出装置等に接続され、パワー半導体素子110の異常が検出されたことに応じて、遮断条件が満たされたとする。
【0022】
即ち、オフ電位供給部124は、パワー半導体素子110の異常が検出されたことに応じて、制御端子102からパワー半導体素子110への制御信号の供給を遮断する。オフ電位供給部124は、ロー電位からハイ電位となる遮断信号を発生させてよい。これにより、パワー半導体素子110は、オフ状態に切り換わる。オフ電位供給部124については、後述する。
【0023】
放電回路130は、パワー半導体素子110のゲートと基準電位の間に接続され、パワー半導体素子110のゲートの容量成分に充電された電荷を放電する。放電回路130は、制御端子102からパワー半導体素子110への制御信号の供給が遮断された場合、ゲート端子の電荷を放電させてパワー半導体素子110をオフ状態に切り換える。
【0024】
放電回路130は、一端がパワー半導体素子110のゲート端子に接続され、他端が基準電位に接続される。放電回路130は、予め定められた時定数で電荷を放電させてよい。即ち、放電回路130は、パワー半導体素子110への制御信号の供給が遮断されると、予め定められた時間が経過したのちに、パワー半導体素子110をオフ状態に切り換える。
図1は、放電回路130が抵抗素子である例を示す。放電回路130は、容量成分および/またはインダクタンス成分等を有してもよい。
【0025】
以上の本実施形態に係る半導体装置100は、パワー半導体素子110が正常な状態の場合、点火プラグ20を放電させて燃焼ガスを点火する。また、半導体装置100は、パワー半導体素子110の異常を検出した場合、当該パワー半導体素子110を緩遮断する。このような半導体装置100の動作について、次に説明する。
【0026】
図2は、本実施形態に係る半導体装置100の各部の動作波形の一例を示す。
図2は、横軸を時間、縦軸を電位または電流値とする。また、
図2は、制御端子102から入力する制御信号をVin、パワー半導体素子110のゲート電位をVg、パワー半導体素子110のコレクタ・エミッタ間電流(コレクタ電流とする)をIc、パワー半導体素子110のコレクタ・エミッタ間電位(コレクタ電位とする)をVc、オフ電位供給部124の出力電位(遮断信号)をVs、第1スイッチ素子122のONおよびOFF状態をM1とする。
【0027】
パワー半導体素子110に異常が検出されない正常状態において、制御信号Vinがロー電位の場合、遮断信号Vsはロー電位(一例として0V)、第1スイッチ素子122(M1)はON状態となる。これにより、制御信号Vinのロー電位がパワー半導体素子110のゲート電位Vgとなり、コレクタ電流Icは略0A、コレクタ電位Vcは電源の出力電位となる。
【0028】
そして、制御信号Vinがハイ電位になると、当該ハイ電位がパワー半導体素子110のゲート電位Vgとなってオン状態に切り換わり、コレクタ電流Icは増加を開始し、コレクタ電位Vcは略0Vになってから増加を開始する。即ち、電源40から点火コイル30の一次コイル32を介してコレクタ電流Icが流れる。なお、コレクタ電流Icの時間変化dIc/dtは、一次コイル32のインダクタンスおよび電源40の供給電圧に応じて定まり、予め定められた(または設定された)電流値まで増加する。例えば、コレクタ電流Icは、数A、十数A、または数十A程度まで増加する。
【0029】
そして、制御信号Vinが再びロー電位になると、当該ロー電位がパワー半導体素子110のゲート電位Vgとなり、パワー半導体素子110はオフ状態に切り換わり、コレクタ電流Icは急激に減少する。コレクタ電流Icの急激な減少により、一次コイル32の両端電圧は、自己誘導起電力により急激に増加し、二次コイル34の両端電圧に数十kV程度に至る誘導起電力を発生させる。点火装置1000は、このような二次コイル34の電圧を点火プラグ20に供給することにより、点火プラグ20を放電させて燃焼ガスを点火する。
【0030】
このような点火装置1000の点火動作が実行されると、コレクタ電流Icは略0Aに、コレクタ電位Vcは電源の出力電位に戻る。なお、コレクタ電位Vcは、点火動作として、瞬時的に高電位になってから電源の出力電位に戻る。以上が、
図2の制御信号Vinに「正常」と示した範囲の半導体装置100の動作である。
【0031】
次に、制御信号発生部10に故障等が発生し、制御信号Vinがハイ電位になったままロー電位に切り換わらなくなった例を説明する。この場合、制御信号Vinがハイ電位になった状態までは、以上に説明したとおり、ゲート電位Vgはハイ電位、コレクタ電流Icは増加を開始し、コレクタ電位Vcは略0Vになってから増加を開始する。
【0032】
ここで、制御信号Vinがハイ電位を継続させると、ゲート電位Vgもハイ電位を維持し、コレクタ電流Icは素子定数等から定められる電流値(一例として17A)まで増加して飽和し、これに伴ってコレクタ電位Vcも飽和する。即ち、パワー半導体素子110に飽和電流が継続して流れるので、当該パワー半導体素子110および/または当該パワー半導体素子110の周囲温度は上昇して異常状態となる。オフ電位供給部124は、このような異常な状態が検出されると、半導体装置100の自己遮断を開始する。
図2は、一例として、自己遮断の開始時刻を一点鎖線で示す。
【0033】
オフ電位供給部124は、第1スイッチ素子122のゲートにオフ電位の遮断信号Vsを供給して、第1スイッチ素子122をOFF状態にする。これにより、パワー半導体素子110はオフ状態へと切り換えるが、放電回路130によって、パワー半導体素子110のゲート電位Vgは、正常動作におけるロー電位への切り換わりと比較して、緩やかにロー電位へと移行する。これにより、コレクタ電流Icは、ゲート電位Vgが閾値以下となってから減少が開始し、その後やがて0Aに戻る。なお、
図2は、ゲート電位Vgの閾値の例を点線で示す。
【0034】
したがって、コレクタ電位Vcは、点火動作が開始しない程度に緩やかに上昇し、ゲート電位Vgが閾値以下となったことに応じて、上昇速度が増加し、その後やがて初期状態の電位に戻る。コレクタ電流Icおよびコレクタ電位Vcが元に戻ってから、ゲート電位Vgは、ロー電位に戻る。なお、制御信号発生部10の状態が元に戻り、制御信号がロー電位になると、オフ電位供給部124の遮断信号Vsもロー電位となって第1スイッチ素子122をON状態に切り換える。以上が、
図2の制御信号Vinに「ON固定」と示した範囲の半導体装置100の動作である。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置100は、パワー半導体素子110の異常を検出した場合、コレクタ電流Icの急激な変動によって点火プラグが放電することを防止できる程度に、パワー半導体素子110のゲート電位を時間的に緩やかに低下させる。これにより、半導体装置100は、パワー半導体素子110の異常に応じて、点火プラグ20の誤放電を防止しつつ、パワー半導体素子110を緩遮断できる。
【0036】
図3は、本実施形態に係る点火装置2000の構成例を示す。
図2に示す点火装置2000において、
図1に示された本実施形態に係る点火装置1000の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。点火装置2000は、半導体装置200を備える。なお、点火装置2000が備える制御信号発生部10、点火プラグ20、点火コイル30、および電源40については説明を省略する。
【0037】
半導体装置200は、パワー半導体素子110に流れるコレクタ電流Icを略一定電流以下となるように制限し、点火プラグ20の誤放電を防止する。半導体装置200は、第2ゲート制御部210と、帰還部230と、を備える。なお、半導体装置200が備える制御端子102、第1端子104、第2端子106、および、パワー半導体素子110については説明を省略する。
【0038】
第2ゲート制御部210は、制御端子102およびパワー半導体素子110の間に設けられ、パワー半導体素子110のコレクタ電流Icに応じて、パワー半導体素子のゲート電位を制御する。即ち、第2ゲート制御部210は、コレクタ電流Icの大きさに応じてパワー半導体素子110のゲート電位を調節し、当該コレクタ電流Icを安定化させる。第2ゲート制御部210は、例えば、制御端子102から入力する電気信号を電源として用いる。第2ゲート制御部210は、第2スイッチ素子212と、検出部214と、抵抗216と、閾値出力部218と、比較部222と、第3スイッチ素子224と、を有する。
【0039】
第2スイッチ素子212は、第1端子104および第2端子106の間に接続され、入力する電位に応じてオンまたはオフに制御される。第2スイッチ素子212は、パワー半導体素子110と同様に、ゲートに入力する入力電位に応じて、第1端子104および第2端子106の間を電気的に接続または切断する。第2スイッチ素子212は、例えば、パワー半導体素子110と比較して、閾値が略同一で相互コンダクタンスが小さいパワー半導体素子である。第2スイッチ素子212の相互コンダクタンスは、一例として、パワー半導体素子110の1000分の1である。
【0040】
第2スイッチ素子212は、一例として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である。第2スイッチ素子212は、パワー半導体素子110と略同様の材質およびプロセスにより形成されることが望ましい。第2スイッチ素子212は、例えば、エミッタ端子が基準電位と接続され、コレクタ端子が一次コイル32の他端に接続される。本実施例において、第2スイッチ素子212は、入力電位がオン電位(ハイ電位)となることに応じて、コレクタ端子およびエミッタ端子の間を電気的に接続するnチャネル型のIGBTである例について説明する。即ち、第2スイッチ素子212は、制御信号に応じて、パワー半導体素子110と同様に動作し、パワー半導体素子110の動作をセンシングするセンスIGBTとして用いられる。
【0041】
検出部214は、第2スイッチ素子212および第2端子106の間に接続され、第1端子104から第2端子106に流れる電流量を検出する。検出部214は、例えば、検出した電流量に応じた検出電位V
SNSを検出結果として出力する。検出部214は、例えば、一端が第2スイッチ素子212のエミッタ端子に接続され、他端が基準電位に接続される抵抗を含む。この場合、検出部214は、第1端子104から第2スイッチ素子212を介して第2端子106に流れる電流に応じた電位差を、一端および他端の間に生じさせる。
【0042】
抵抗216は、制御端子102およびパワー半導体素子110の間に設けられる。また、抵抗216は、制御端子102および第2スイッチ素子212の間に設けられる。抵抗216は、例えば、一端が制御端子102に接続され、他端が第2スイッチ素子212のゲート端子に接続される。即ち、第2スイッチ素子212のゲート端子は、パワー半導体素子110と同様に、制御端子102から入力する制御信号が供給される。
【0043】
閾値出力部218は、予め定められた閾値電位V
REFを出力する。閾値出力部218は、例えば、検出部214に流れる電流量の許容値に応じた閾値電位を出力する。閾値出力部218は、定電流回路および抵抗等の組み合わせによって構成されてよく、また、ツェナーダイオードおよび抵抗等の組み合わせ等によって構成されてもよい。
【0044】
比較部222は、検出部214の検出結果と、閾値出力部218が出力する予め定められた閾値電位V
REFとを比較する。比較部222は、例えば、検出部214が出力する検出電位V
SNSが閾値電位V
REFを超えたことに応じて、比較結果としてハイ電位を出力し、当該検出電位V
SNSが閾値電位V
REF以下の場合に比較結果としてロー電位を出力する。比較部222は、例えば、コンパレータ等を有する。
【0045】
第3スイッチ素子224は、第2スイッチ素子212のゲートおよび第2端子106の間に接続され、比較部222の比較結果に応じて第2スイッチ素子212のゲート電位を制御する。第3スイッチ素子224は、例えば、比較部222の比較結果がハイ電位になったことに応じて、第2スイッチ素子212のゲートに接続されるドレイン端子と、第2端子106に接続されるソース端子との間の電気抵抗を減少させる。即ち、第3スイッチ素子224は、検出部214の検出電位V
SNSが閾値V
REFを超える場合、当該検出電位V
SNSが閾値V
REFを保つように第2スイッチ素子212のゲート電位Vgsを調節する。
【0046】
一方、第3スイッチ素子224は、比較部222の比較結果がロー電位の場合、第2スイッチ素子212のゲートおよび第2端子106の間の電気的接続を切断する。したがって、制御端子102から入力する制御信号に応じた電位が、抵抗216を介して第2スイッチ素子212のゲートおよびパワー半導体素子110のゲートに供給されることになる。第3スイッチ素子224は、一例として、ノーマリーオフのスイッチ素子であり、nチャネル型のMOSFETであることが望ましい。
【0047】
帰還部230は、パワー半導体素子110のコレクタ電位に応じて、パワー半導体素子110のゲートに電荷を帰還させる。帰還部230は、第2ゲート制御部210およびパワー半導体素子110の間に設けられ、第2ゲート制御部210の制御動作に応じて、パワー半導体素子110のゲートに電荷を供給する。帰還部230は、第1抵抗232と、第2抵抗234と、整流素子236と、を有する。
【0048】
第1抵抗232は、第1端子104およびパワー半導体素子110のゲートの間に設けられる。また、第2抵抗234は、パワー半導体素子110のゲートおよび第2ゲート制御部210の間に接続される。また、整流素子236は、パワー半導体素子110のゲートおよび第2端子106の間に接続される。即ち、第1抵抗232は、第1端子104および整流素子236の間に接続される。
【0049】
一例として、第1抵抗232の一端は、第1端子104に接続され、他端は、パワー半導体素子110のゲート、第2抵抗234の一端、整流素子236の一端、および、放電回路130の一端にそれぞれ接続される。この場合、第2抵抗234の他端は、第2ゲート制御部210の抵抗216の他端、第2スイッチ素子212のゲート端子、および、第3スイッチ素子224のドレイン端子にそれぞれ接続される。また、整流素子236の他端は第2端子106に接続される。
【0050】
以上の帰還部230は、パワー半導体素子110のコレクタ電位がゲート電位より大きくなった場合にパワー半導体素子110のゲート電位を増加させ、パワー半導体素子110のコレクタ電位の増加を緩和し安定させる。また、帰還部230は、パワー半導体素子110のコレクタ電流が過大になったことに応じて、コレクタ電位を第1抵抗232および第2抵抗234に流れる電流に応じた電位をパワー半導体素子110のゲート電位とする。このような半導体装置200の動作について、次に説明する。
【0051】
図4は、本実施形態に係る半導体装置200の各部の動作波形の一例を示す。
図4は、横軸を時間、縦軸を電位または電流値とする。また、
図4は、制御端子102から入力する制御信号をVin、パワー半導体素子110のゲート電位をVg、パワー半導体素子110のコレクタ電流をIc、パワー半導体素子110のコレクタ電位をVc、検出部214の検出電位をV
SNSとする。
【0052】
パワー半導体素子110の正常状態において、制御信号Vinがロー電位の場合、当該制御信号Vinのロー電位がパワー半導体素子110のゲート電位Vgとなり、コレクタ電流Icは略0A、コレクタ電位Vcは電源の出力電位となる。そして、制御信号Vinがハイ電位になると、当該ハイ電位がパワー半導体素子110のゲート電位Vgとなってオン状態に切り換わり、コレクタ電流Icは増加を開始し、コレクタ電位Vcは略0Vになってから増加を開始する。
【0053】
即ち、
図1および
図2で説明したように、電源40から点火コイル30の一次コイル32を介してコレクタ電流Icが流れる。なお、コレクタ電流Icの時間変化dIc/dtは、一次コイル32のインダクタンスおよび電源40の供給電圧に応じて定まり、当該時間変化dIc/dtにしたがって増加する。例えば、コレクタ電流Icは、数A、十数A、または数十A程度まで増加する。
【0054】
ここで、コレクタ電流Icの増加が継続すると、当該パワー半導体素子110および/または当該パワー半導体素子110の周囲温度は上昇して異常状態となってしまう。また、パワー半導体素子110に接続される部品等の定格電流を超えてしまうことも生じ、これらの部品の故障および破壊等を招いてしまうこともある。そこで、第2ゲート制御部210は、このようなコレクタ電流Icが閾値を超えた場合に、コレクタ電流Icの増加を停止させる。即ち、第2ゲート制御部210は、検出部214の検出電位V
SNSが基準電位V
REFを超えたことに応じて、コレクタ電流Icの電流制限を開始する。
図4は、一例として、電流制限の開始時刻を一点鎖線で示す。
【0055】
比較部222は、検出電位V
SNSが閾値電位V
REFを超えたことに応じて、ハイ電位を出力し、第3スイッチ素子224は、第2スイッチ素子212のゲートおよび第2端子106の間の電気抵抗を減少させる。即ち、第3スイッチ素子224のドレイン・ソース間に電流が流れて電圧降下が生じる。これにより、抵抗216および第3スイッチ素子224のオン抵抗によって制御信号Vinが分圧され、分圧された第3スイッチ素子224のドレイン電位が第2スイッチ素子212のゲート電位Vgsとなる。
【0056】
以上のように、第2スイッチ素子212のゲート電位Vgsは、制御信号Vinのハイ電位よりも低い電位となる。また、第1端子104から、第1抵抗232、第2抵抗234、および第3スイッチ素子224を介して第2端子106へと電流が流れるので、第2抵抗234の両端には電位差が生じる。即ち、パワー半導体素子110のゲート電位Vgは、制御信号Vinのハイ電位よりも低く、かつ、第2スイッチ素子212のゲート電位Vgsよりも高い電位となり、コレクタ電流Icの増加が制限される。
【0057】
そして、第3スイッチ素子224は、検出部214の検出電位V
SNSが閾値V
REFを保つように第2スイッチ素子212のゲート電位Vgsを調節するので、コレクタ電流Icおよびコレクタ電位Vcを略一定の値に保つことができる。このように、第2ゲート制御部210は、コレクタ電流Icを一定に保つようにパワー半導体素子110のゲート電位Vgを調節するので、帰還部230は、当該ゲート電位Vgの調節に対応してパワー半導体素子110のゲートに電荷を供給する。即ち、帰還部230は、パワー半導体素子110のゲートに微小電流を還流させて、コレクタ電流Icを一定に保つ。
【0058】
そして、制御信号Vinが再びロー電位になると、当該ロー電位がパワー半導体素子110のゲート電位Vgとなり、パワー半導体素子110はオフ状態に切り換わり、コレクタ電流Icは急激に減少する。コレクタ電流Icの急激な減少により、一次コイル32の両端電圧は、自己誘導起電力により急激に増加し、二次コイル34の両端電圧に数十kV程度に至る誘導起電力を発生させる。
【0059】
このように、本実施形態に係る点火装置2000は、
図2で説明したように、二次コイル34の電圧を点火プラグ20に供給することにより、点火プラグ20を放電させて燃焼ガスを点火することができる。点火装置2000の点火動作が実行されると、コレクタ電流Icは略0Aに、コレクタ電位Vcは電源の出力電位に戻る。なお、コレクタ電位Vcは、点火動作として、瞬時的に高電位になってから電源の出力電位に戻る。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置200は、パワー半導体素子110のコレクタ電流Icを閾値以下の電流値に制限し、過電流が流れることを防止する。また、半導体装置200は、コレクタ電流Icの急激な変動によって点火プラグが誤放電することを防止できる。
【0061】
以上の本実施形態に係る半導体装置100および半導体装置200を組み合わせることで、過電流保護および自己遮断の機能を有するパワー半導体素子110の駆動回路が期待される。そこで、
図1に示す自己遮断回路と、
図3に示す過電流保護回路と、を組み合わせた半導体装置について、次に説明する。
【0062】
図5は、本実施形態に係る点火装置3000の構成例を示す。
図5に示す点火装置3000において、
図1および
図3に示された本実施形態に係る点火装置1000および点火装置2000の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。点火装置3000は、半導体装置300を備える。なお、点火装置3000が備える制御信号発生部10、点火プラグ20、点火コイル30、および電源40については説明を省略する。
【0063】
半導体装置300は、パワー半導体素子110に流れるコレクタ電流Icを略一定電流以下となるように制限し、点火プラグ20の誤放電を防止する。半導体装置200は、制御端子102、第1端子104、第2端子106、パワー半導体素子110、第1ゲート制御部120、放電回路130、第2ゲート制御部210、および帰還部230を備える。
【0064】
制御端子102から入力する制御信号は、
図1に示したように、第1ゲート制御部120に供給される。また、第1ゲート制御部120から出力された制御信号は、
図3に示したように、第2ゲート制御部210および帰還部230を介してパワー半導体素子110のゲートに供給される。なお、半導体装置300が備える各部は、
図1および
図3に示した各部と略同一の動作をするので、説明を省略する。このような半導体装置300の動作について、次に説明する。
【0065】
図6は、本実施形態に係る半導体装置300の各部の動作波形の一例を示す。
図6は、横軸を時間、縦軸を電位または電流値とする。また、
図6は、制御端子102から入力する制御信号をVin、パワー半導体素子110のゲート電位をVg、パワー半導体素子110のコレクタ電流をIc、パワー半導体素子110のコレクタ電位をVc、オフ電位供給部124の出力電位(遮断信号)をVs、第1スイッチ素子122のONおよびOFF状態をM1とする。
【0066】
パワー半導体素子110に異常が検出されない正常状態において、制御信号Vinがロー電位の場合、ロー電位からハイ電位になった場合、および、再びロー電位になった場合、コレクタ電流Icは閾値以下の範囲で増減する。即ち、第2ゲート制御部210および帰還部230は、パワー半導体素子110のゲート電位を変化させる動作をしない。したがって、半導体装置300の各部の動作波形は、
図2に「正常」と示した範囲の半導体装置100の動作と略同一である。そこで、
図6の制御信号Vinに「正常」と示した範囲の半導体装置300の動作については説明を省略する。
【0067】
次に、制御信号発生部10に故障等が発生し、制御信号Vinがハイ電位になったままロー電位に切り換わらなくなった例を説明する。制御信号Vinがハイ電位になった場合、ゲート電位Vgはハイ電位になり、コレクタ電流Icは増加を開始し、コレクタ電位Vcは略0Vになってから増加を開始する。
【0068】
ここで、制御信号Vinがハイ電位を継続させると、ゲート電位Vgもハイ電位を維持し、コレクタ電流Icの増加が継続する。第2ゲート制御部210は、このようなコレクタ電流Icが増加し続けて閾値を超えた場合に、コレクタ電流Icの増加を制限する。即ち、第2ゲート制御部210は、検出部214の検出電位V
SNSが基準電位V
REFを超えたことに応じて、コレクタ電流Icの電流制限を開始する。
図6において、電流制限の開始時刻の例として、「電流制限開始」と示す。
【0069】
コレクタ電流Icの電流を制限する動作については、
図4で説明した動作と略同一なのでここでは省略する。第2ゲート制御部210および帰還部230の電流制限の動作により、コレクタ電流Icを飽和電流よりも小さい電流値に制限することができるので、半導体装置300は、故障等が発生した場合においても、より安全で安定な動作を実行できる。
【0070】
オフ電位供給部124は、制御信号Vinがハイ電位になったままの異常な状態が検出されると、半導体装置300の自己遮断を開始する。
図6は、一例として、自己遮断の開始時刻を「自己遮断開始」と示す。
【0071】
オフ電位供給部124は、第1スイッチ素子122のゲートにオフ電位の遮断信号Vsを供給して、第1スイッチ素子122(M1)をOFF状態にする。これにより、パワー半導体素子110のゲートに蓄積された電荷が放電回路130によって、基準電位へと放電回路130の抵抗値に基づく時定数を有して緩やかに移動する。即ち、パワー半導体素子110のゲート電位Vgは、正常動作におけるロー電位への切り換わりと比較して、緩やかに減少する。
【0072】
しかしながら、放電回路130がパワー半導体素子110のゲートから基準電位へと微小電流を放電させることにより、点火プラグ20の誤放電を防止する一方で、帰還部230は、コレクタ電流Icを制限すべく、パワー半導体素子110のゲートへと微小電流を還流させる。したがって、
図5に示すように、第1ゲート制御部120、放電回路130、第2ゲート制御部210、および帰還部230を単純に組み合わせると、帰還部230による還流と、放電回路130による放電電流とが釣り合う条件で、パワー半導体素子110のゲート電位が決まることになる。
【0073】
この場合のゲート電位Vgは、例えば、Vc・Rge/(Rge+Rce)と示すことができる。なお、Rgeは放電回路130の抵抗値、Rceは第1抵抗232の抵抗値を示す。即ち、パワー半導体素子110のゲート電位Vgは、オン電位から緩やかに減少してから略一定の電位を保つことになる。当該一定の電位は、素子の定数等に応じて定まり、パワー半導体素子110の閾値より大きくなる場合がある。この場合、パワー半導体素子110は、
図6に示すように、オン状態を保つことになる。
【0074】
即ち、半導体装置300は、第1ゲート制御部120が自己遮断動作を実行しても、パワー半導体素子110を遮断することができない。このように、
図1に示す半導体装置100および
図3に示す半導体装置200は、それぞれ点火装置と半導体装置の保護および点火プラグ20の誤放電を防ぐ機能を備えるが、これらを組み合わせると誤動作してしまう場合があった。そこで、本実施形態に係る半導体装置400は、このような誤動作も防止して、より安全で安定な動作を実行する。
【0075】
図7は、本実施形態に係る点火装置4000の構成例を示す。
図7に示す点火装置4000において、
図1、
図3、および
図5に示された本実施形態に係る点火装置1000、点火装置2000、および点火装置3000の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。点火装置4000は、半導体装置400を備える。なお、点火装置4000が備える制御信号発生部10、点火プラグ20、点火コイル30、および電源40については説明を省略する。
【0076】
半導体装置400は、パワー半導体素子110に流れるコレクタ電流Icを略一定電流以下となるように制限し、点火プラグ20の誤放電を防止する。半導体装置200は、制御端子102、第1端子104、第2端子106、パワー半導体素子110、第1ゲート制御部120、放電回路130、第2ゲート制御部210、帰還部230、および電流遮断部410を備える。
【0077】
制御端子102から入力する制御信号は、
図1に示したように、第1ゲート制御部120に供給される。また、第1ゲート制御部120から出力された制御信号は、
図3に示したように、第2ゲート制御部210および帰還部230を介してパワー半導体素子110のゲートに供給される。なお、第1ゲート制御部120、放電回路130、および第2ゲート制御部210は、
図1および
図3に示した各部と略同一の動作をするので、説明を省略する。
【0078】
半導体装置400に設けられた帰還部230は、第1整流素子420を更に有する。第1整流素子420は、パワー半導体素子110のゲートから第1端子104側へと逆流する電気信号を抑制する。第1整流素子420は、パワー半導体素子110のゲートおよび第1抵抗232の間に設けられる。即ち、第1抵抗232は、第1端子および前記第1整流素子の間に接続される。なお、本実施形態において、帰還部230が有する整流素子236を、第2整流素子とする。即ち、第2整流素子(整流素子236)は、パワー半導体素子110のゲートおよび第2端子106の間に接続される。
【0079】
電流遮断部410は、制御端子102から入力する制御信号に応じて、第1端子104からパワー半導体素子110のゲートに流れる電流を遮断する。電流遮断部410は、制御信号が予め定められた遮断条件を満たすことに応じて、パワー半導体素子110のゲートに流れる電流を遮断する。即ち、電流遮断部410は、オフ電位供給部124が、パワー半導体素子110の遮断条件が満たされたと判断したことに応じて、パワー半導体素子110のゲートに流れる電流を遮断する。
【0080】
電流遮断部410は、第1抵抗232および第1整流素子420の間と、第2端子106との間に接続され、制御信号が遮断条件を満たすことに応じて、第1抵抗232および第1整流素子420の間と、第2端子106とを電気的に接続する。電流遮断部410は、一例として、オフ電位供給部124に接続され、オフ電位供給部124から遮断信号が当該ゲートに供給されることに応じて、オン状態に切り換わるノーマリーオフのスイッチ素子を有する。電流遮断部410は、例えば、nチャネル型のMOSFETである。
【0081】
半導体装置400は、電流遮断部410を備えることにより、パワー半導体素子110の異常が検出された場合に、当該パワー半導体素子110を確実にオフ状態にする。このような半導体装置400の動作について、次に説明する。
【0082】
図8は、本実施形態に係る半導体装置400の各部の動作波形の一例を示す。
図8は、横軸を時間、縦軸を電位または電流値とする。また、
図8は、制御端子102から入力する制御信号をVin、パワー半導体素子110のゲート電位をVg、パワー半導体素子110のコレクタ電流をIc、パワー半導体素子110のコレクタ電位をVc、オフ電位供給部124の出力電位(遮断信号)をVs、第1スイッチ素子122のONおよびOFF状態をM1、電流遮断部410のONおよびOFF状態をM2、とする。
【0083】
パワー半導体素子110に異常が検出されない正常状態において、制御信号Vinがロー電位の場合、ロー電位からハイ電位になった場合、および、再びロー電位になった場合、半導体装置400の各部の動作波形は、
図2および
図6に「正常」と示した範囲の半導体装置100および半導体装置300の動作と略同一である。そこで、
図8の制御信号Vinに「正常」と示した範囲の半導体装置400の動作については説明を省略する。
【0084】
次に、制御信号発生部10に故障等が発生し、制御信号Vinがハイ電位になったままロー電位に切り換わらなくなった例を説明する。この場合、
図6で説明したように、制御信号Vinがハイ電位を継続すると、ゲート電位Vgもハイ電位を維持し、コレクタ電流Icの増加が継続する。そして、第2ゲート制御部210は、検出部214の検出電位V
SNSが基準電位V
REFを超えたことに応じて、コレクタ電流Icの電流制限を開始する。
図8は、
図6の例と同様に、電流制限の開始時刻を「電流制限開始」と示す。
【0085】
コレクタ電流Icの電流を制限することにより、当該コレクタ電流Icを飽和電流よりも小さい電流値に制限することができるので、半導体装置400は、故障等が発生した場合においても、より安全で安定な動作を実行できる。そして、オフ電位供給部124は、制御信号Vinがハイ電位になったままの異常な状態が検出されると、半導体装置400の自己遮断を開始する。
図8は、
図6の例と同様に、自己遮断の開始時刻を「自己遮断開始」と示す。
【0086】
オフ電位供給部124は、第1スイッチ素子122のゲートにオフ電位の遮断信号Vsを供給して、第1スイッチ素子122(M1)をOFF状態にする。これにより、パワー半導体素子110のゲートに蓄積された電荷が放電回路130によって、基準電位へと放電回路130の抵抗値に基づく時定数を有して緩やかに移動する。即ち、パワー半導体素子110のゲート電位Vgは、正常動作におけるロー電位への切り換わりと比較して、緩やかに減少する。
【0087】
そして、オフ電位供給部124の遮断信号Vsに応じて、電流遮断部410(M2)はON状態に切り換わる。これにより、電流遮断部410は、帰還部230が第1端子104からパワー半導体素子110のゲートへと還流させる微小電流を遮断する。即ち、電流遮断部410は、第1端子104から第2端子106へと第1抵抗232を介して電気的に接続し、パワー半導体素子110のゲート電位Vgの減少を継続させる。
【0088】
そして、パワー半導体素子110のゲート電位Vgが、当該パワー半導体素子110の閾値よりも小さくなったことに応じて、パワー半導体素子110はオフ状態となり、コレクタ電流Icは0Aに戻る。コレクタ電位Vcは、点火動作が開始しない程度に緩やかに上昇し、ゲート電位Vgが閾値以下となったことに応じて、初期状態の電位に戻る。コレクタ電流Icおよびコレクタ電位Vcが元に戻ってから、ゲート電位Vgは、ロー電位に戻る。
【0089】
なお、制御信号発生部10の状態が元に戻り、制御信号がロー電位になると、オフ電位供給部124の遮断信号Vsもロー電位となって第1スイッチ素子122をON状態に、電流遮断部410をOFF状態に切り換える。以上が、
図8の制御信号Vinに「ON固定」と示した範囲の半導体装置400の動作である。
【0090】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置400は、パワー半導体素子110の異常を検出した場合、コレクタ電流Icの急激な変動によって点火プラグが放電することを防止できる程度に、パワー半導体素子110のゲート電位を時間的に緩やかに低下させる。これにより、半導体装置400は、パワー半導体素子110の異常に応じて、点火プラグ20の誤放電を防止しつつ、パワー半導体素子110を確実に緩遮断できる。即ち、半導体装置400は、外部からの制御信号に応じて点火コイル30に流れる電流を制御するイグナイタとして動作し、過電流保護および自己遮断の機能を正確に実行できる。
【0091】
図9は、本実施形態に係るオフ電位供給部124の構成例を示す。オフ電位供給部124は、リセット部510と、遮断条件検出部520と、ラッチ部540と、を有する。
【0092】
リセット部510は、制御端子102にオン電位が入力してから基準時間が経過した後に、リセット信号を出力する。リセット部510は、抵抗511と、抵抗512、インバータ513、インバータ514、抵抗515、キャパシタ516、およびインバータ517を含む。
【0093】
抵抗511および抵抗512は、制御端子102および第2端子106の間に直列に接続され、制御端子102から入力する制御信号Vinを分圧する。抵抗511の抵抗値をR1、抵抗512の抵抗値をR2とすると、分圧電位は、Vin・R2/(R1+R2)となる。一例として、制御信号が過渡的にオフ電位(0V)からオン電位(5V)にリニアに立ち上がる場合、分圧電位も、0Vから5・R2/(R1+R2)までリニアに立ち上がる。
【0094】
インバータ513は、抵抗511および抵抗512の間に接続され、分圧電位を受け取って反転出力する。インバータ514は、インバータ513の出力を受け取って反転出力する。抵抗515およびキャパシタ516は、RC回路を構成し、インバータ514の出力を受け取って時定数RCの遅延を有して立ち上がる信号を出力する。インバータ517は、抵抗515およびキャパシタ516の出力を受け取って反転出力する。
【0095】
なお、インバータ513、インバータ514、およびインバータ517は、それぞれ制御端子102から入力する制御信号を動作電源とする。したがって、制御信号が過渡的に立ち上がる場合、当該制御信号がインバータの閾値に至るまでは、制御信号と略同一の電位の信号を出力する。なお、本例において、各インバータの閾値は、略同一の値Vthiとする。以上のリセット部510の動作については、後述する。
【0096】
遮断条件検出部520は、予め定められた遮断条件が満たされたか否かを検出する。遮断条件検出部520は、パワー半導体素子110および/またはパワー半導体素子110の周辺回路等に温度上昇等の異常が発生したか否かを検出する。遮断条件検出部520は、例えば、パワー半導体素子110の導通状態が基準時間以上経過したか否かを検出する。これに代えて、またはこれに加えて、遮断条件検出部520は、パワー半導体素子110の温度を測定して基準温度以上に上昇したか否かを検出してもよい。
【0097】
遮断条件検出部520は、例えば、複数の検出回路等を含む。
図9は、遮断条件検出部520がタイマ回路522および温度検知回路524を含む例を示す。タイマ回路522は、パワー半導体素子110がオン状態になってからの経過時間を計測する。タイマ回路522は、計測時間が、基準時間を超えたことに応じて、遮断条件が満たされたと判断してハイ電位を出力してよい。温度検知回路524は、パワー半導体素子110および/またはパワー半導体素子110の周囲温度を検知する。温度検知回路524は、検知温度が、基準温度を超えたことに応じて、遮断条件が満たされたと判断してハイ電位を出力してよい。
【0098】
ラッチ部540は、遮断条件が検出されたことをラッチする。ラッチ部540は、第1NOR回路542と、第2NOR回路544と、第3NOR回路546と、第4NOR回路548と、を含む。第1NOR回路542、第2NOR回路544、第3NOR回路546、および第4NOR回路548は、それぞれ制御端子102から入力する制御信号を動作電源とする。したがって、制御信号がハイ電位になっていることを条件に、ラッチ部540は、遮断条件の検出に応じた遮断信号を出力する。制御信号がハイ電位になった場合のラッチ部540の動作を次に説明する。
【0099】
第1NOR回路542は、タイマ回路522および温度検知回路524の出力をそれぞれ受け取り、NOR演算結果を出力する。第1NOR回路542は、タイマ回路522および温度検知回路524のうち少なくとも一方がハイ電位の場合、ロー電位を出力する。即ち、第1NOR回路542は、パワー半導体素子110に異常が検出されない場合、ハイ電位を出力し、異常が検出されたことに応じてロー電位を出力する。
【0100】
第2NOR回路544は、第1NOR回路542の出力およびリセット部510のリセット信号をそれぞれ受け取り、NOR演算結果を出力する。即ち、第2NOR回路544は、パワー半導体素子110に異常が検出され、かつ、リセット信号が入力されない場合に、ハイ電位を出力する。
【0101】
第3NOR回路546は、第2NOR回路544およびラッチ部540の出力を受け取り、NOR演算結果を出力する。また、第4NOR回路548は、第3NOR回路546およびリセット信号を受け取り、NOR演算結果を出力する。第3NOR回路546および第4NOR回路548は、RSフリップフロップを構成する。即ち、第3NOR回路546および第4NOR回路548は、第4NOR回路548にリセット信号が入力された後、第3NOR回路546に入力するパワー半導体素子110の異常検出に応じたハイ電位を、セット信号としてラッチする。なお、ラッチ部540は、制御端子102から電源供給を受けて、ラッチした値を保持する。
【0102】
図10は、本実施形態に係るリセット部510の各部の動作波形の一例を示す。
図10は、横軸を時間、縦軸を出力電位とする。
図10は、制御端子102に入力する制御信号Vinがオフ電位(0V)からオン電位(5V)にリニアに立ち上がる場合に対する、インバータ513、インバータ514、およびインバータ517の出力電位の一例を示す。インバータ513、インバータ514、およびインバータ517の出力電位は、入力電位がそれぞれのインバータの閾値に至るまでは、制御信号Vinと略同一の電位となる。
【0103】
インバータ513は、電源の電位が閾値Vthiを超えても、入力する分圧電位Vin・R2/(R1+R2)が閾値Vthi以下なので、入力電位をロー電位として、ハイ電位を反転出力とする。なお、インバータ513は、ハイ電位を出力させるように動作しても、電源電位がハイ電位(例えば5V)に至る過程の過渡的な電位の場合、当該電源電位をハイ電位として出力する。
図10は、インバータ513の出力電位Vout1が、時刻t1以降においても、電源電位Vinを出力する例を示す。
【0104】
インバータ513は、電源の電位が閾値Vthiを超え、かつ、入力する分圧電位が閾値Vthiを超えたこと(即ち、ハイ電位の入力)に応じて、ロー電位を反転出力とする。
図10は、インバータ513の出力電位Vout1が、時刻t2においてロー電位(0V)となる例を示す。
【0105】
インバータ514は、電源の電位が閾値Vthiを超え、入力電位が閾値Vthiを超えた電位であることに応じて、ロー電位を反転出力とする。
図10は、インバータ514の出力電位Vout2が、時刻t1においてロー電位となる例を示す。インバータ514は、電源の電位が閾値Vthiを超え、入力電位がロー電位であることに応じて、ハイ電位を反転出力とする。なお、インバータ514は、電源電位がハイ電位に至る過程の過渡的な電位の場合、当該電源電位をハイ電位として出力する。
図10は、インバータ514の出力電位Vout2が、時刻t2以降において、電源電位Vinを出力する例を示す。
【0106】
抵抗515およびキャパシタ516によるRC回路は、インバータ514の出力信号を遅延させる。
図10は、RC回路が出力信号を10μs遅延させる例を示す。インバータ517は、電源の電位が閾値Vthiを超え、入力電位が閾値Vthiを超えた電位であることに応じて、ロー電位を反転出力とする。
図10は、インバータ517の出力電位Vout3が、時刻t3においてロー電位となる例を示す。
【0107】
以上のように、本実施形態に係るリセット部510は、制御端子102にオン電位が入力してから基準時間t2が経過した後に、リセット信号を出力する。
図10に示すリセット信号は、一例として、抵抗515およびキャパシタ516で設定された時定数をパルス幅とするパルス信号である。
【0108】
以上のように、本実施形態に係るオフ電位供給部124は、制御信号がハイ電位になっていることを条件に、パワー半導体素子110の異常検出に応じて、遮断条件が満たされとしてラッチ部540がラッチする。オフ電位供給部124は、遮断信号を第1スイッチ素子122に供給する。第1スイッチ素子122は、遮断信号に応じてオフ状態に切り換える。このように、第1スイッチ素子122およびオフ電位供給部124を有する第1ゲート制御部120は、遮断条件が検出されたことに応じて、パワー半導体素子110のゲート電位をオフ電位にするように機能する。
【0109】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0110】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。