(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出部は、電力系統に接続されたインバータ装置の前記電力変換部に含まれる前記半導体素子の状態を検出して、前記半導体素子の状態に応じた電圧を出力する、請求項1に記載の半導体素子の状態監視装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の半導体素子の状態監視装置では、自己消弧型素子が故障したか否かの2つの状態が監視可能である一方、半導体素子のさらなる詳細な状態の監視が望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、詳細な状態を監視することが可能な半導体素子の状態監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による半導体素子の状態監視装置は、電力変換部に含まれる半導体素子の状態を検出して半導体素子の状態に応じた電圧を出力する検出部と、検出部から出力された電圧が入力されるとともに、入力された電圧を所定の基準値と比較し、その比較結果を比較出力する複数の比較部と
、複数の比較部から出力される比較結果を経時的に記憶する記憶部と、を含
み、
複数の比較部に設定された所定の基準値は、半導体素子の故障の種類を判別可能となるように、それぞれ異なる値に設定される。
【0009】
この発明の一の局面による半導体素子の状態監視装置では、上記のように、検出部から出力された電圧が入力されるとともに、入力された電圧を所定の基準値と比較し、その比較結果を出力する複数の比較部を含む。これにより、複数の比較部により半導体素子の状態の比較が行われるので、比較部が1つの場合と比べて、半導体素子の詳細な状態を監視することができる。たとえば、検出部から出力された電圧が、第1の基準値以上であるか、第2の基準値以上、第1の基準値未満であるか、または、第2の基準値未満であるか、が比較される。すなわち、検出部から出力された電圧が、少なくとも3つの場合(状態)のいずれに該当するかの監視を行うことができる。これにより、2つの状態のみが監視可能な場合に比べて、半導体素子の詳細な状態を監視することができる。
また、複数の比較部に設定された所定の基準値は、半導体素子の状態を判別可能となるように、それぞれ異なる値に設定される。これにより、監視可能な状態の数を増加させることができる。
【0010】
上記一の局面による半導体素子の状態監視装置において、好ましくは、検出部は、電力系統に接続されたインバータ装置の電力変換部に含まれる半導体素子の状態を検出して、半導体素子の状態に応じた電圧を出力する。このように構成すれば、電力系統に接続されたインバータ装置の電力変換部に含まれる半導体素子の状態を、詳細に監視することができる。
【0011】
上記一の局面による半導体素子の状態監視装置において、好ましくは、複数の比較部による比較結果を、シリアル信号として合成する合成部をさらに備える。このように構成すれば、複数の比較部による比較結果を、1つの信号線を介して取得することができるので、構成(信号線)を簡略化することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、第1比較部は、入力された電圧が、複数の比較部は、入力された電圧が、所定の基準値以上の場合に真値を出力するとともに、入力された電圧が、所定の基準値未満の場合に偽値を出力し、合成部は、複数の比較部の各々から出力される、真値または偽値をシリアル信号として合成する。このように構成すれば、シリアル信号に含まれる複数の比較結果に対応する信号が、真値であるかまたは偽値であるかを判断することにより、容易に、第1比較部および第2比較部の比較結果を取得することができる。
【0013】
上記合成部が備えられる半導体素子の状態監視装置において、好ましくは、複数の比較部は、アナログ回路からなる複数のコンパレータを含み、合成部は、アナログ回路からなるマルチプレクサを含む。このように構成すれば、マイコンなどにより電圧の比較の処理および信号の合成の処理を行う場合と異なり、半導体素子の状態監視装置の構成を簡略化することができる。
【0014】
上記一の局面による半導体素子の状態監視装置において、好ましくは、検出部は、半導体素子の電圧を分圧する分圧部を含み、複数の比較部には、分圧部により分圧された半導体素子の電圧が入力される。このように構成すれば、半導体素子に比較的高い電圧が印加される場合でも、半導体素子の電圧が分圧部により分圧されるので、比較部に比較的高い電圧が印加されるのを抑制することができる。
【0015】
上記一の局面による半導体素子の状態監視装置において、好ましくは、検出部は、半導体素子の温度を検出する温度検出部を含み、複数の比較部には、温度検出部により検出された半導体素子の温度に応じた電圧が入力される。このように構成すれば、半導体素子の温度(および、半導体素子近傍の電力変換部の温度)が、少なくとも3つの温度領域のいずれに該当するかの監視を行うことができる。
【0016】
上記一の局面による半導体素子の状態監視装置において、好ましくは、検出部は、電力変換部に含まれる半導体素子の状態を定期的に検出する。このように構成すれば、たとえば、半導体素子が故障した場合に、半導体素子の故障直前の比較結果(監視結果)に基づいて、半導体素子の故障直前の状態を認知する(推定する)ことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、半導体素子の詳細な状態を監視することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1および
図2を参照して、第1実施形態による半導体素子202の状態監視装置100(以下、状態監視装置100という)の構成について説明する。
【0022】
(状態監視装置の構成)
状態監視装置100は、インバータ装置200の電力変換部201に含まれる半導体素子202の状態を監視する。半導体素子202の状態監視装置100は、インバータ装置200とは別個に、インバータ装置200を制御する制御盤(図示せず)に配置されている。また、インバータ装置200の電力変換部201とは、直流を交流に変換するインバータ部である。また、半導体素子202は、インバータ部に含まれるスイッチング素子である。スイッチング素子は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)202aおよびダイオード202bを含む。
【0023】
また、インバータ装置200は、電力系統210に接続されている。電力系統210から、比較的高い電圧(たとえば、3kV)が、インバータ装置200に入力される。
【0024】
状態監視装置100は、光電気変換器1を備えている。光電気変換器1は、入力された制御信号(光信号)を、電気信号に変換する。なお、制御信号は、状態監視装置100の全体を制御する制御部2から出力される。
【0025】
また、状態監視装置100は、ゲート駆動回路3を備えている。ゲート駆動回路3には、光電気変換器1により変換された電気信号が入力する。そして、ゲート駆動回路3は、入力された電気信号に基づいて、半導体素子202をオンまたはオフする。
【0026】
ここで、第1実施形態では、状態監視装置100は、電力変換部201に含まれる半導体素子202の状態を検出して半導体素子202の状態に応じた電圧を出力する分圧部4を備えている。なお、半導体素子202は、電力系統210に接続されたインバータ装置200の電力変換部201に含まれる半導体素子202である。したがって、半導体素子202には、比較的高い電力系統210の電圧が印加される。そこで、半導体素子202の電圧が、分圧部4により分圧されて、比較的高い電圧から比較的低い電圧に変換される。なお、分圧部4は、特許請求の範囲の「検出部」の一例である。
【0027】
具体的には、分圧部4は、互いに直列に接続された分圧抵抗4aおよび分圧抵抗4bを含む。分圧抵抗4aの一方端141aは、半導体素子202(IGBT)のコレクタ側に接続されている。また、分圧抵抗4aの他方端142aと、分圧抵抗4bの一方端141bとが接続されている。また、分圧抵抗4bの他方端142bは、半導体素子202(IGBT)のエミッタ側に接続されている。そして、分圧抵抗4aの抵抗をR1、分圧抵抗4bの抵抗をR2、半導体素子202(IGBT)のコレクタ側の電圧をVinとした場合、電圧降下された電圧Vout(=R2/(R1+R2)×Vin)が、分圧部4から出力される。
【0028】
また、第1実施形態では、状態監視装置100は、分圧部4から出力された電圧が入力されるとともに、入力された電圧を比較し、その比較結果を出力するコンパレータ5を備えている。すなわち、コンパレータ5には、分圧部4により分圧(電圧降下)された電圧が入力される。また、コンパレータ5は、複数のコンパレータ(コンパレータ5a、コンパレータ5b、および、コンパレータ5c)を含む。コンパレータ5aは、入力された電圧と基準値A1とを比較する。コンパレータ5bは、入力された電圧と基準値A1よりも小さい基準値A2とを比較する。コンパレータ5cは、入力された電圧と基準値A2よりも小さい基準値A3とを比較する。なお、コンパレータ5(5a〜5c)は、特許請求の範囲の「複数の比較部」の一例である。また、基準値A1〜A3は、特許請求の範囲の「所定の基準値」の一例である。また、基準値A1〜A3は、半導体素子202の状態が判別可能なように、それぞれ異なる基準値が設定されている。なお、基準値A1〜A3は半導体素子202の定格電圧等をもとに、定格電圧の5分の1の値、定格電圧の5分の2の値、定格電圧の5分の3の値、定格電圧の5分の4の値、定格電圧値、と設定してもよく、半導体素子202の定格電圧および半導体素子自体の電気特性に限らなくても良い。また、基準値A1〜A3は、すべて異なる値を設定しなくてもよい。
【0029】
また、第1実施形態では、コンパレータ5aは、入力された電圧が、基準値A1以上の場合に真値(Hレベルの信号)を出力するとともに、入力された電圧が、基準値A1未満の場合に偽値(Lレベルの信号)を出力する。また、コンパレータ5bは、入力された電圧が、基準値A2以上の場合に真値(Hレベルの信号)を出力するとともに、入力された電圧が、基準値A2未満の場合に偽値(Lレベルの信号)を出力する。また、コンパレータ5cは、入力された電圧が、基準値A3以上の場合に真値(Hレベルの信号)を出力するとともに、入力された電圧が、基準値A3未満の場合に偽値(Lレベルの信号)を出力する。なお、出力された値は、図示しない記憶装置に保存され、時系列ごとに後述するマルチプレクサ6に入力してもよい。
【0030】
また、第1実施形態では、状態監視装置100は、マルチプレクサ6を備えている。マルチプレクサ6は、コンパレータ5aによる比較結果と、コンパレータ5bによる比較結果と、コンパレータ5cによる比較結果とを、シリアル信号として合成する。具体的には、マルチプレクサ6は、コンパレータ5a、コンパレータ5bおよびコンパレータ5cの各々から出力される、真値(Hレベル)または偽値(Lレベル)をシリアル信号として合成する。なお、シリアル信号の詳細な説明については後述する。また、マルチプレクサ6は、特許請求の範囲の「合成部」の一例である。
【0031】
また、マルチプレクサ6は、コンパレータ5a、コンパレータ5bおよびコンパレータ5cからの出力に、光電気変換器1からの制御信号を結合させてシリアル信号として出力する。
【0032】
また、第1実施形態では、コンパレータ5は、アナログ回路からなる。また、マルチプレクサ6は、アナログ回路からなる。すなわち、制御部2やADコンバータ等を用いることなく、分圧部4から出力された電圧と基準値A1、A2およびA3との比較、および、シリアル信号の生成を行うことが可能である。
【0033】
また、状態監視装置100は、クロック回路7と、カウンタ回路8とを備えている。そして、マルチプレクサ6からのシリアル信号の出力のタイミングは、クロック回路7と、カウンタ回路8とによって決定される。すなわち、クロック回路7が、通信レートに応じたクロックを出力し、カウンタ回路8がクロックの数をカウントし、カウントされたクロックの数が、ある値に達した時、マルチプレクサ6からシリアル信号が出力される。
【0034】
また、第1実施形態では、分圧部4による、電力変換部201に含まれる半導体素子202の状態(電圧)の検出は、定期的に行われている。たとえば、検出間隔は、10ns毎である。たとえば、カウンタ回路8によってカウントされるクロックの数に基づいて、10ns毎に検出が行われる。また、マルチプレクサ6から、100ns毎に、シリアル信号が出力される。
【0035】
そして、半導体素子202の状態の検出の結果(シリアル信号)は、光電気変換器1を介して、制御部2に送信される。また、制御部2に送信されたシリアル信号は、記憶部9に記憶される。すなわち、定期的に行われた半導体素子202の状態の検出の結果(シリアル信号)が、継時的に、記憶部9に記憶されている。
【0036】
(シリアル信号)
次に、
図2を参照して、シリアル信号の詳細について説明する。なお、
図2は、半導体素子202がターンオフした時のシリアル信号の一例を表している。
【0037】
ここで、電力変換部201に含まれる半導体素子202のコレクタおよびエミッタ間の電圧が1400V、基準値A1が1500Vに相当する値、基準値A2が1000Vに相当する値、および、基準値A3が500Vに相当する値であるとする。なお、「1500Vに相当する値」とは、分圧部4の分圧抵抗4aの一方端141aの電圧(Vin)が、1500Vである場合に、分圧部4から出力される電圧Voutを意味する。
【0038】
そして、半導体素子202のコレクタおよびエミッタ間の電圧1400Vが、コンパレータ5aの基準値A1(1500Vに相当)よりも小さいので、コンパレータ5aは、偽値(Lレベル)を出力する。また、半導体素子202のコレクタおよびエミッタ間の電圧1400Vが、コンパレータ5bの基準値A2(1000Vに相当)よりも大きいので、コンパレータ5bは、真値(Hレベル)を出力する。また、半導体素子202のコレクタおよびエミッタ間の電圧1400Vが、コンパレータ5cの基準値A3(500Vに相当)よりも大きいので、コンパレータ5cは、真値(Hレベル)を出力する。
【0039】
そして、マルチプレクサ6は、コンパレータ5a〜5cの出力値に、光電気変換器1からの制御信号を結合させたシリアル信号を合成する。
【0040】
具体的には、
図2に示すように、シリアル信号の先頭には、スタートビットが配置されている。スタートビットは、2ビット分の情報量を有する。次に、スタートビットの後に、コンパレータ5a〜5cの出力値(V2信号、V1信号、V0信号)が配置されている。コンパレータ5a〜5cの出力値は、各々、1ビット分(HレベルまたはLレベル)の情報量を有する。次に、検出項目(監視項目)を追加した場合に用いられる予備のピットが配置されている。そして、最後に2ビット分の情報量を有するストップビットが配置されている。
【0041】
図2に示すシリアル信号では、コンパレータ5a〜5cの各々出力値に相当する部分の論理値は、H、L、Lである。そして、この論理値を解読することにより、半導体素子202のコレクタおよびエミッタ間の電圧(Vin)が、1000V以上1500V未満であることが判別される。すなわち、半導体素子202の詳細な状態(電圧)を監視することが可能になる。たとえば、半導体素子202が故障する直前の電圧が、半導体素子202の耐圧を超える電圧であった場合、半導体素子202が過電圧によって故障したと推定される。また、半導体素子202が故障する直前の電圧が、半導体素子202の耐圧よりも低い電圧であった場合、半導体素子202が過電圧以外の原因によって故障したと推定される。
【0042】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0043】
第1実施形態では、上記のように、コンパレータ5は、入力された電圧と、基準値A1とを比較するコンパレータ5aと、入力された電圧と、基準値A1よりも小さい基準値A2とを比較するコンパレータ5bと、入力された電圧と、基準値A2よりも小さい基準値A3とを比較するコンパレータ5cとを含む。これにより、複数のコンパレータ5a〜5cにより半導体素子202の状態の比較が行われるので、コンパレータ5が1つの場合と比べて、半導体素子202の詳細な状態を監視することができる。すなわち、分圧部4から出力された電圧が、基準値A1以上であるか、基準値A2以上、基準値A1未満であるか、基準値A3以上、基準値A2未満であるか、または、基準値A3未満であるか、が比較される。すなわち、分圧部4から出力された電圧が、4つの場合(状態)のいずれに該当するかの監視を行うことができる。これにより、2つの状態のみが監視可能な場合に比べて、半導体素子202の詳細な状態を監視することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、分圧部4は、電力系統210に接続されたインバータ装置200の電力変換部201に含まれる半導体素子202の状態を検出して、半導体素子202の状態に応じた電圧を出力する。これにより、電力系統210に接続されたインバータ装置200の電力変換部201に含まれる半導体素子202の状態を、詳細に監視することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、コンパレータ5aによる比較結果と、コンパレータ5bによる比較結果と、コンパレータ5cによる比較結果とを、シリアル信号として合成するマルチプレクサ6をさらに備える。これにより、コンパレータ5aによる比較結果と、コンパレータ5bによる比較結果と、コンパレータ5cによる比較結果とを、1つの信号線を介して取得することができるので、構成(信号線)を簡略化することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、コンパレータ5は、入力された電圧が、基準値(A1、A2、A3)以上の場合に真値を出力するとともに、入力された電圧が、基準値(A1、A2、A3)未満の場合に偽値を出力する。そして、マルチプレクサ6は、コンパレータ5a〜5cの各々から出力される、真値または偽値をシリアル信号として合成する。これにより、シリアル信号に含まれるコンパレータ5a〜5cの比較結果に対応する信号が、真値であるかまたは偽値であるかを判断することにより、容易に、コンパレータ5a〜5cの比較結果を取得することができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、アナログ回路からなるコンパレータ5と、アナログ回路からなるマルチプレクサ6とを用いる。これにより、マイコンなどにより電圧の比較の処理および信号の合成の処理を行う場合と異なり、半導体素子202の状態監視装置100の構成を簡略化することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、上記のように、コンパレータ5には、分圧部4により分圧された半導体素子202の電圧が入力される。これにより、半導体素子202に比較的高い電圧が印加される場合でも、半導体素子202の電圧が分圧部4により分圧されるので、コンパレータ5に比較的高い電圧が印加されるのを抑制することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、分圧部4は、電力変換部201に含まれる半導体素子202の状態を定期的に検出する。これにより、たとえば、半導体素子202が故障した場合に、半導体素子202の故障直前の比較結果(監視結果)に基づいて、半導体素子202の故障直前の状態を認知する(推定する)ことができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、複数のコンパレータ5a〜5cに各々設定された所定の基準値A1〜A3は、半導体素子202の状態を判別可能となるように、それぞれ異なる値に設定される。これにより、監視可能な状態の数を増加させることができる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、
図3および
図4を参照して、第2実施形態による半導体素子202の状態監視装置110について説明する。第2実施形態の状態監視装置110では、半導体素子202の電圧を検出(監視)していた上記第1実施形態と異なり、半導体素子202の温度を検出(監視)する。
【0052】
図3に示すように、第2実施形態の状態監視装置110では、電力変換部201の半導体素子202の近傍に、サーミスタ20が配置されている。サーミスタ20は、半導体素子202(および、半導体素子202近傍)の温度を検出する。そして、コンパレータ25には、サーミスタ20により検出された半導体素子202の温度に応じた電圧が入力される。ここで、半導体素子202の温度に応じた電圧とは、半導体素子202の温度が高くなれば高くなる程、高くなる(または、低くなる)電圧を意味する。なお、サーミスタ20は、特許請求の範囲の「温度検出部」および「検出部」の一例である。また、コンパレータ25は、特許請求の範囲の「複数の比較部」の一例である。
【0053】
コンパレータ25a〜25cは、各々、予め定められた温度T1、T2およびT3(T1>T2>T3)に各々相当する基準値T11、T12およびT13と、サーミスタ20により検出された半導体素子202の温度に応じた電圧とを比較する。これにより、半導体素子202の温度が、T1以上、T2以上T1未満、T3以上T2未満、または、T3未満のいずれの領域に位置しているかが判別される。すなわち、半導体素子202の詳細な状態(温度)を監視することが可能になる。なお、コンパレータ25(25a〜25c)は、特許請求の範囲の「複数の比較部」の一例である。また、基準値T11〜T13は、特許請求の範囲の「所定の基準値」の一例である。なお、基準値T11〜T13は、すべて異なる必要はない。
【0054】
また、
図4に示すように、マルチプレクサ26から出力されるシリアル信号において、スタートビットの後に、コンパレータ25a〜25cの比較結果(V22、V11、V00)が配置されている。また、マルチプレクサ26は、特許請求の範囲の「合成部」の一例である。
【0055】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0056】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0057】
第2実施形態では、上記のように、コンパレータ25には、サーミスタ20により検出された半導体素子202の温度に応じた電圧が入力される。これにより、半導体素子202の温度(および、半導体素子202近傍の電力変換部201の温度)が、4つの温度領域のいずれに該当するかの監視を行うことができる。
【0058】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0059】
[第3実施形態]
次に、
図5および
図6を参照して、第3実施形態による半導体素子202の状態監視装置120について説明する。第3実施形態の状態監視装置120では、半導体素子202の電圧と、半導体素子202の温度との両方を検出(監視)する。
【0060】
図5に示すように、第3実施形態の状態監視装置120は、半導体素子202のコレクタ側とエミッタ側とに接続される分圧部30と、電力変換部201の半導体素子202の近傍に配置されたサーミスタ31とを備えている。また、コンパレータ32は、コンパレータ32aとコンパレータ32bとを含む。コンパレータ32aは、分圧部30から出力された電圧と、基準値A1、A2およびA3とを比較する。コンパレータ32bは、サーミスタ31から出力された電圧と、基準値T11、T12およびT13とを比較する。なお、分圧部30は、特許請求の範囲の「検出部」の一例である。また、サーミスタ31は、特許請求の範囲の「検出部」および「温度検出部」の一例である。また、コンパレータ32、32aおよび32bは、特許請求の範囲の「複数の比較部」の一例である。
【0061】
また、マルチプレクサ33は、コンパレータ32aから出力された比較結果と、コンパレータ32bから出力された比較結果とをシリアル信号として合成する。具体的には、
図6に示すように、マルチプレクサ33から出力されるシリアル信号において、スタートビットの後に、コンパレータ32aから出力された比較結果(V2、V1、V0)と、コンパレータ32bから出力された比較結果(V22、V11、V00)とが配置されている。なお、マルチプレクサ33は、特許請求の範囲の「合成部」の一例である。
【0062】
なお、第3実施形態のその他の構成および効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0063】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0064】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、半導体素子の電圧または(および)温度が監視される例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、半導体素子の電圧および温度以外の状態(たとえば、電流など)を監視してもよい。
【0065】
また、上記第1〜第3実施形態では、スイッチング素子の状態が監視される例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、スイッチング素子以外の半導体素子(たとえば、抵抗、コンデンサなど)の状態を監視してもよい。
【0066】
また、上記第1〜第3実施形態では、1つの分圧部(1つのサーミスタ)に対して、コンパレータが3つ設けられている例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、1つの分圧部(1つのサーミスタ)に対して、コンパレータが2つ、または、4つ以上設けられていてもよい。コンパレータの数が多くなる程、より詳細な半導体素子の状態を監視することが可能になる。
【0067】
また、上記第1〜第3実施形態では、電力系統に接続されたインバータ装置の半導体素子の状態を監視する例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電力系統に接続されたインバータ装置以外(たとえば、無停電電源装置など)の半導体素子の状態の監視するようにしてもよい。
【0068】
また、上記第1〜第3実施形態では、コンパレータの比較結果を合成するためにマルチプレクサを用いる例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、コンパレータの比較結果を合成するためにマルチプレクサ以外の回路等を用いてもよい。
【0069】
また、上記第1〜第3実施形態では、複数のコンパレータの比較結果がマルチプレクサによりシリアル信号として合成される例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数のコンパレータの比較結果を合成せずに、複数のコンパレータの比較結果を並行に制御部に出力してもよい。
【0070】
また、上記第1および第3実施形態では、基準値A1(1500Vに相当)、基準値A2(1000Vに相当)、および、基準値A3(500Vに相当)同士の間隔が等間隔(500V間隔)である例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基準値同士の間隔が異なっていてもよく、同じ値であってもよい。
【0071】
また、上記第1〜第3実施形態では、本発明の「検出部」として、分圧部を用いる例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明の「検出部」として、分圧部以外の検出部を用いて、半導体素子の電圧を検出してもよい。
【0072】
また、上記第1〜第3実施形態では、本発明の「検出部」および「温度検出部」として、サーミスタを用いる例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明の「検出部」および「温度検出部」として、サーミスタ以外の検出部(温度検出部)を用いて、半導体素子の温度を検出してもよい。
【0073】
また、上記第1〜第3実施形態では、本発明の「複数の比較部」として、アナログ回路からなるコンパレータを用いるとともに、本発明の「合成部」として、アナログ回路からなるマルチプレクサを用いる例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明の「複数の比較部」として、アナログ回路からなるコンパレータ以外の回路等を用いてもよいし、本発明の「合成部」として、アナログ回路からなるマルチプレクサ以外の回路などを用いてもよい。
【0074】
また、上記第1および第3実施形態では、半導体素子の電圧が分圧部により分圧された後、コンパレータに入力される例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、半導体素子の電圧が比較的低い場合には、半導体素子の電圧を直接コンパレータに入力してもよい。
【0075】
また、上記第1〜第3実施形態では、半導体素子の状態が定期的(一定の時間間隔毎)に検出される例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、検出の時間間隔は、一定でなくてもよい。さらに、複数の比較部に半導体素子の状態(たとえば電圧)が時間的に遅れて入力されてもよい。
【0076】
また、上記第1〜第3実施形態では、状態監視装置が制御盤に配置されている例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、状態監視装置をインバータ装置の内部に配置してもよい。