(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805631
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】通信ユニットの仮止め用把持具
(51)【国際特許分類】
G01R 11/04 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
G01R11/04 B
G01R11/04 E
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-163423(P2016-163423)
(22)【出願日】2016年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-31641(P2018-31641A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】笠原 正也
【審査官】
青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−271164(JP,A)
【文献】
特開2010−043951(JP,A)
【文献】
特開2014−220474(JP,A)
【文献】
特開平01−141318(JP,A)
【文献】
実開昭52−004644(JP,U)
【文献】
特開2006−275789(JP,A)
【文献】
特開2012−189539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 11/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子台の前面に着脱自在に設けられた通信ユニットを備えたスマートメーターにおける通信ユニットの仮止め用把持具であって、
スマートメーターのケース体を左右側方から挟持する2つの挟持片と、
2つの挟持片の間隔が狭くなる方向に付勢する付勢手段と、を有し、
端子台から取り外した通信ユニットをケース体の前面に位置させたうえで、
ケース体の側とは反対側から2つの挟持片で通信ユニットを跨ぎつつ2つの挟持片各々の先端部でケース体を左右側方から挟持した状態で、
通信ユニットのうちのケース体の側とは反対側の部位をケース体へと向けて押圧して通信ユニットをケース体の前面に押し付けて仮止めする押圧部を備えた
ことを特徴とする通信ユニットの仮止め用把持具。
【請求項2】
2つの挟持片を互いに回動自在に支持し、挟持片の支点を挟んだ反対側を力点としての摘み部に形成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信ユニットの仮止め用把持具。
【請求項3】
2つの挟持片をその離接方向が直線方向になるように設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の通信ユニットの仮止め用把持具。
【請求項4】
2つの挟持片がケース体に接触する部分にクッション材を設けた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信ユニットの仮止め用把持具。
【請求項5】
ケース体を挟持したときに、通信ユニットをケース体に押し付ける押圧部にクッション材を設けた
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信ユニットの仮止め用把持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スマートメーター(通信機能付電力量計)に関し、特に、スマートメーターの設置或いは交換時にその作業性の向上を図ることができるスマートメーターの通信ユニットの仮止め用把持具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー法等が改正されることにより、電力小売の自由化が行われ、需要家においては、単一の発電供給事業者における多様な電力供給の契約メニュー(料金メニュー等)の多様化や、複数の発電供給事業者間との計量(同時同量サービス)等に対応し得る多機能型のスマートメーターが強く求められている。
【0003】
例えば、電力量計により計測される電力を、所定の信号に変換して、中央装置との間で送受信する通信機能が付加されたスマートメーターが普及されている。この種のスマートメーターとしては、例えば、負荷の電力量を計測するとともに、表示する計測表示部と、該計測表示部から計測したデータを光通信によって受光し、受光したデータを所定の信号に変換して外部の中央装置と送受信を行う通信ユニットとが、電力量計本体に設けられている。
【0004】
図1〜
図4は、スマートメーター10を示す。この背景技術で示すスマートメーター10も、後述する実施の形態で示すスマートメーター10も同じものであり、従って、各部の符号も同一のものを使用して説明する。
【0005】
スマートメーター10は、電力量計本体11と、該電力量計本体11の前面下部に位置した端子台12と、該端子台12の前面を覆うように、かつ、差込方式で着脱自在に装着された通信ユニット13と、これら端子台12及び通信ユニット13を覆うように保護する保護カバー14とを有する。
【0006】
電力量計本体11はケース体15に覆われており、ケース体15の前面上部に表示部が設けられている。
【0007】
通信ユニット13は、電力量計本体11にこれとの間で信号を送受信する信号線16で接続され、また、端子台12の端子に電線17、17で接続されている。
【0008】
スマートメーター10の設置又は取換え時には、保護カバー14を取り外した後、通信ユニット13を端子台12から取り外し、端子台12の各端子に電源側電線、負荷側電線などを接続する。
【0009】
通信ユニット13を端子台12から取り外すのは、端子台12の前面を覆っているため、これを外さなければ電源側電線、負荷側電線などの接続ができないためである。
【0010】
そして従来、端子台12から取り外した通信ユニット13を一時的に仮止めするために粘着テープ100で電力量計本体11側のケース体15に貼着していた(
図12、
図13)。なお、
図12中、スマートメーター10のケース本体15の前面に網掛け状に示した部位は通信ユニット13を仮止めする位置を示す。
【0011】
このように通信ユニット13をケース本体15に仮止めするのは、端子台12から取り外した通信ユニット13を信号線16及び電線17、17に委ね、ぶら下げ状態にしては各信号線、電線に負荷が掛かり断線の虞がある。また、これを回避するために各信号線、電線の接続を外して、通信ユニット13を単体にして別の場所に一時的に置くことも考えられるが、その作業は面倒であり、かつ通信ユニット13を元の位置に戻したときに各線の接続を忘れたり、接続状態が不十分になったりする虞がある。そのため、上述のように、一時的にケース体15に粘着テープ100で貼着するのが一般的であった。
【0012】
一方、電力量計を交換する作業を行うに際して、端子台に電力量計を着脱自在にして交換作業を容易にすることができるという技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0013】
また、電力量計から延出する電源側電線と負荷側電線とを簡易かつ安全に短絡させ、電源側から負荷側への迂回通電回路を形成することによって、電力量計を交換する作業を容易にすることができるという技術も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2012−154850号公報
【特許文献2】特開2010−237052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、ケース体15は雨水により濡れていたり、埃などが付着していたりしていることが多く、粘着テープ100で通信ユニット13をケース体15に貼着することが困難な場合がある。このようなときにケース体15を拭いた後、粘着テープ100で通信ユニット13をケース体15に貼着したとしても、その粘着力は弱く、作業中に通信ユニット13が脱落してしまう虞があった。
【0016】
そして、通信ユニット13が脱落してしまうと、その勢いで信号線16、電線17にダメージを与えたり、また、それぞれの接続部位に不良が生じたりという問題があった。
【0017】
また、通信ユニット13をケース体15に両面粘着テープにて貼着することもあったが、この場合、使用後の両面粘着テープを剥がすのが大変で、面倒であるという問題もあった。
【0018】
そこでこの発明は、スマートメーターの設置及び/又は交換時において、通信ユニットを一時的に仮置きする場合にその作業性を向上させるとともに、各部品などの破損、接触不良などの不具合を防止する通信ユニットの仮止め用把持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、端子台の前面に着脱自在に設けられた通信ユニットを備えたスマートメーターにおける通信ユニットの仮止め用把持具であって、スマートメーターのケース体を左右側方から挟持する2つの挟持片と、2つの挟持片の間隔が狭くなる方向に付勢する付勢手段と、を有し、
端子台から取り外した通信ユニットをケース体の前面に位置させたうえで、ケース体の側とは反対側から2つの挟持片で
通信ユニットを跨ぎつつ2つの挟持片各々の先端部でケース体を
左右側方から挟持した状態で、
通信ユニットのうちのケース体の側とは反対側の部位をケース体へと向けて押圧して通信ユニットをケース体
の前面に押し付け
て仮止めする押圧部を備えた、ことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、通信ユニットをケース体の前部に位置させ、仮止め用把持具でケース体をその左右側方から挟持すると、通信ユニットは押圧部によりケース体に押し付けられる。
【0021】
請求項2の発明は、請求項1に記載の通信ユニットの仮止め用把持具において、2つの挟持片を互いに回動自在に支持し、挟持片の回動支点を挟んだ反対側を力点としての摘み部に形成した、ことを特徴とする。
【0022】
請求項3の発明は、請求項1に記載の通信ユニットの仮止め用把持具において、2つの挟持片をその離接方向が直線方向になるように設けた、ことを特徴とする。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3に記載の通信ユニットの仮止め用把持具において、2つの挟持片がケース体に接触する部分にクッション材を設けた、ことを特徴とする。
【0024】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4に記載の通信ユニットの仮止め用把持具において、ケース体を挟持したときに、通信ユニットをケース体に押し付ける押圧部にクッション材を設けた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によれば、通信ユニットの仮止め用把持具をスマートメーターのケース体に挟持させるだけで通信ユニットをケース体の前面に押し付けることができ、かつ、ケース体が濡れていたり、埃が付着していたりしていても、確実に通信ユニットを仮止めすることができる。また、確実に通信ユニットを仮止めすることができるため、端子台における作業中に、通信ユニットが脱落することはなく、落下などにより破損、接続不良なども防止することができる。
【0026】
請求項2の発明によれば、2つの挟持片を互いに回動自在に支持し、挟持片の回動支点を挟んだ反対側を力点としての摘み部に形成した形状であり、構造が簡単で、かつ、その操作性は2つの摘み部を摘むだけで2つの挟持片を開く方向に回動することができ、きわめて簡単に操作することが可能となる。
【0027】
請求項3の発明によれば、2つの挟持片をその離接方向が直線方向になるように設けたことで、2つの挟持片によるケース体の把持方向と一致させることができ、強固な仮止めが可能となる。
【0028】
請求項4の発明によれば、挟持片のケース体との接触部にクッション材を設けたので、挟持片とケース体との接触状態に滑りが生じにくく、ケース体に対する安定した把持が可能となる。
【0029】
請求項5の発明によれば、ケース体を挟持したときに、通信ユニットをケース体に押し付ける押圧部にクッション材を設けたので、把持具の押圧部と通信ユニットとの接触状態に滑りが生じにくく、通信ユニットの安定した仮止めが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図2〜
図4とともに、従来からあるスマートメーターを示すもので、本図は端子台、通信ユニット、保護カバーを分解して示す斜視図である。
【
図2】保護カバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】通信ユニットが端子台に取り付けられ、保護カバーが取り外された状態を示す正面図である。
【
図4】保護カバーが外された状態を示す側面図である。
【
図5】
図6〜
図9とともに、この発明の第1の実施の形態を示すもので、本図は把持具の平面図である。
【
図6】通信ユニットを仮置きして把持具で仮止めする直前の状態を示す斜視図である。
【
図7】通信ユニットを把持具で仮止めした状態を示す正面図である。
【
図8】通信ユニットを把持具で仮止めした状態を示す底面図である。
【
図9】通信ユニットを把持具で仮止めした状態を示す側面図である。
【
図10】
図11とともにこの発明の第2の実施の形態にかかる把持具を示すもので、本図は把持具の斜視図である。
【
図12】従来の方法により通信ユニットを仮止めする方法を示す分解斜視図である。
【
図13】従来の方法により通信ユニットを仮止めした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明を図示の各実施の形態に基づいて説明する。
【0032】
図1〜
図4は、上記背景技術で説明した通り、従来からあるスマートメーター10を示す図である。
図5〜
図9にこの発明の第1の実施の形態を示す。
【0033】
この第1の実施の形態にかかる通信ユニットの仮止め用把持具20は、ほぼ同一形状の2つの構成部品からなり、その構成部品は平面形状が円弧状を呈した挟持片21とその一端から略120度の開き角で一方に伸びる摘み部22とが一体に形成され、このような2つの構成部品が挟持片21と摘み部22との間の屈曲部において回動自在に連結されている(
図5)。なお、図示は省略したが、把持具20の回動支点23部位には付勢手段が設けられ、対向する2つの挟持片21、21が互いに近づく方向に付勢されている。
【0034】
また、把持具20の挟持片21、21のほぼ先端部内側にはクッション材24、24が設けられ、また、挟持片21、21の回動支点23側に寄った位置にもクッション材25、25が設けられている。このクッション材25、25は後述するように通信ユニット13をケース体15に押し付ける押圧部として機能する。
【0035】
このような把持具20で通信ユニット13を仮止めするには、まず、2つの摘み部22、22を摘むことにより、付勢手段に抗して挟持片21、21を開く。
【0036】
次に、通信ユニット13をケース体15の前面下部に位置させ、挟持片21、21を開いた状態の把持具20で通信ユニット13をケース体15に押し付ける。このとき、挟持片21、21の回動支点23側に寄った側のクッション材25、25が通信ユニット13を押圧することになる。
【0037】
これにより、把持具20の挟持片21、21はクッション材24、24、25、25を介して通信ユニット13、ケース体15に接触することになり、両者の接触が密着され、滑りにくく、より安定した状態を維持することができる。そのため、次の作業としての接線作業(端子台12の各端子への電源側電線、負荷側電線の接続など)の間に通信ユニット13が仮止め状態から脱落するのを防止することができる。
【0038】
そしてこの状態で、摘み部22、22の摘みを外すと、挟持片21、21の先端部のクッション材24、24がケース体15をその左右側方から挟持し、通信ユニット13の所定位置に仮止めとしての把持が完了する。
【0039】
なお、上記実施の形態においてケース体15との接触部、及び通信ユニット13との接触部にクッション材24、24、25、25を設けたが、本願発明はこれに限らず、挟持片21、21の材質を考慮したり、あるいは表面加工により滑り性を低くするようにしてもよい。
【0040】
図10及び
図11はこの発明の第2の実施の形態にかかる把持具を示すもので、
図10は把持具の斜視図、
図11は
図10に示すXI−XI線の断面図である。
【0041】
この第2の実施の形態にかかる通信ユニットの仮止め用把持具30は、板部材がL字状に折り曲げられたL字片31L、31RとこれらL字片31L、31Rにそれぞれ突設されたピン32L、32Rとこれらピン32L、32Rに張設されたコイルばね33とから成る。
【0042】
2つのL字片31L、31Rはその長片31Lb、31Rb同士が重ねるように位置され、それぞれの短片31La、31Raが同一方向に延びる向きで位置される。また、短片31Lbと31Rbとの互いに向き合う面にはクッション材34、34が設けられており、短片31Lbと31Rbとは、後述するように上記第1の実施の形態の把持具20における挟持片21、21として機能する。
【0043】
長片31La、31Raにはそれぞれ長孔31Lc、31Rcが形成され、また、それぞれの長孔31Lc、31Rcより外方(長片が伸びる方向)に寄った位置にピン32L、32Rが上記短片31Lb、31Rbと反対方向に突設されている。
【0044】
また、ピン32Lは短片31Lbと同一方向、すなわち、長片31Raと重なる方向にもやや突設されている(
図11)。
【0045】
そして、一方のL字片31Lのピン32L(短片31Lbと同一方向に突設された部分)は他方のL字片31Rの長孔31Rcに、また、他方のL字片31Rのピン32Rは一方のL字片31Lの長孔31Lcに、それぞれ挿通されている。
【0046】
このように形成された把持具30は、コイルばね33がピン32Lと32Rとの間に張設されているため、短片31Lbと31Rbとが互いに近づく方向に付勢されている。
【0047】
この把持具30で通信ユニット13の仮止めをするには、ピン32Lと32Rとを摘んで互いに近づけるようにし、短片31Lbと31Rbとの間隔を広げる。
【0048】
次に、通信ユニット13をケース体15の前面下部に位置させ、ピン32Lと32Rとの摘みを開放するとコイルばね33により短片31Lbと31Rbとが間隔を狭め、ケース体15をその左右側方から挟持する。このとき、把持具30で通信ユニット13をできるだけケース体15に押し付けることにより、前記長片31Rbが通信ユニット13を押圧部として機能する。これにより、通信ユニット13の所定位置に仮止めとしての把持が完了する。
【0049】
また、この把持具30によれば、短片31Lbと31Rbとの離接方向とケース体15を把持する方向とが一致するため、より強固な仮止めをなされる。
【0050】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の各実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10 スマートメーター
11 電力量計本体
12 端子台
13 通信ユニット
14 保護カバー
15 ケース体
16 信号線
17 電線
20 把持具
21 挟持片
22 摘み部
23 回動支点
24 クッション材
25 クッション材(押圧部)
30 把持具
31L、31R L字片
31La、31Ra 短片(挟持片)
31Lb、31Rb 長片(押圧部)
31Lc、31Rc 長孔
32L、32R ピン
33 コイルばね
34 クッション材
100 粘着テープ