(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、キャッシュカードやクレジットカード、IDカード等の各種分野において、磁気カードやICカードなどが、幅広く使われてきた。
【0003】
その用途の拡大に伴い、単なる記録媒体としての機能だけではなく、カード自体に対しても高い意匠性が求められるようになってきている。
【0004】
そのような装飾性に優れた高意匠性のカードの例としては、例えば特許文献1では、カード基材上に設けた絵柄層にエンボス加工を施すことにより、立体的に見える装飾カードが開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、模様層が設けられた熱可塑性樹脂フィルムに、鏡面光沢を有する凹凸模様を形成した化粧シートの製造方法が開示されている。
【0006】
更に、特許文献3では、印刷画像を設けたカードにおいて、印刷画像とカード基材との間に鏡面印刷層を設けることにより、印刷画像を立体的に見せる装飾カードが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の装飾カードや特許文献2の化粧シートでは、表面に凹凸構造が形成されるため、平滑性を求められる用途には用いることができないというように、用途が限定される問題があった。更には、凹凸構造のために表面にゴミがたまりやすいという問題もある。
【0008】
また、特許文献2に見られる方法は、印刷画像の下層に鏡面印刷を有するため、印刷画像が鏡面印刷層上にのっているように見えることにより、立体感を出すことができるというものである。
【0009】
しかし、これは印刷画像が層全体として浮いているように見えるに過ぎず、印刷画像自体が立体的に見えるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、図中共通する項目については、同一の番号を附している。
【0022】
図1は、本発明の透明カードを構成する積層体の層構成の例を示す断面図である。
【0023】
図1では、ICインレット16を中心に設置して、コアシート11、外装シート12をもって両面から挟み込むようにラミネートされる構成が示されている。
【0024】
また、コアシート11と外装シート12との間には、
図1に示されるように中間層13が設けられてあっても良い。
【0025】
図1では、コアシート11、中間層13、外装シート12のそれぞれに対し、金属光沢層からなる画像情報部15a、15b、15cが設けられているが、積層体10に対して、1つ以上の層に金属光沢層からなる画像情報部が設けられていれば良く、必ずしも
図1の構成に限定されるものではない。
【0026】
図1は、非接触ICカードを例とした構成としているため、中心にICインレット16を設けたものとなっているが、所謂磁気カードや、接触式のICカードなどの場合には、必ずしもICインレット16を設ける必要はない。
【0027】
また、コアシート11が2層の構成となっているが、コアシート11は、単一層で構成されていても良い。
【0028】
画像情報部15a、15b、15cは、文字、記号、絵柄など任意のパターン状に各層に設けられており、それぞれの画像情報部が、異なる層に配置されることにより、
図2に示すように、透明カード1を平面視した際に、透明カード1の厚さ方向に奥行きを持った立体的な金属光沢を有する画像として、視認することが可能となる。
【0029】
また画像情報部15a、15b、15cは、金属光沢層をベタ状のパターン柄として設けられてあっても良いが、微細なドット状、あるいは直線又は曲線で構成されるストライプ状などからなるパターン柄として設けられてあっても良い。
【0030】
なお、画像情報部15a、15b、15cを用いて、特定の主画像に立体感を付与しようとする場合には、その主画像のパターン形状において、各画像情報部15a、15b、15cは、互いに同一形状又は相似形状を有することが望ましい。
【0031】
また、立体感を表現すべき主画像と主画像とは異なる背景画像とを表現しようとする場合には、例えば、画像情報部15aを主画像と異なる背景画像を表現するパターンとし、画像情報部15b、15cにおいて、主画像の立体感を表現することができる。
【0032】
この場合、前記主画像を表現する画像情報部15bと、画像情報部15cとは、互いのパターン形状が、同一形状又は相似形状を有することが望ましい。
【0033】
更には、立体感を表現すべき、主画像と主画像とは異なる前景画像とを表現使用とする場合には、画像情報部15cを主画像と異なる前景画像とし、画像情報部15aと、画像情報部15bとを、互いのパターン形状が、同一形状又は相似形状とすることが望ましい。
【0034】
ここで、ドット状とは、必ずしも円形である必要はなく、楕円形、三角形、四角形、多角形などの他に、星型やマーク、文字などの特殊形状として設けられてあっても良い。
【0035】
積層体10を構成する各部材について、以下に説明する。
【0036】
ICインレット16は、公知のものを任意に使用することができるが、例えばポリエチ
レンテレフタレート(PET)や、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、紙、合成紙などからなるICインレット用支持体上に、互いに電気的に接続されたICチップとアンテナが設けられたものを、使用することができる。
【0037】
ここで、アンテナはアルミニウムや銅などに代表される金属箔をパターン状にエッチングまたは抜き加工したものや、導電性インキをスクリーン印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット方式などの公知手段によってパターン状にもうけたもの、あるいは巻線溶着加工によるものなどを用いることができる。
【0038】
このようなICインレット16を挟み込むように設けられるコアシート11は、光透過性を有する熱可塑性樹脂からなり、具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂類、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、ポリ乳酸樹脂類、ポリオレフィン樹脂類、など任意の樹脂を単独あるいは複合体、アロイ体、ブレンド体として用いることができる。
【0039】
外装シート12は、光透過性を有する樹脂からなり、具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂類、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、トリアセチルセルロース樹脂などの合成樹脂、天然樹脂類、あるいはその樹脂の変性樹脂などを単独、あるいは組合せた複合体、アロイ体、ブレンド体などを用いることができる。
【0040】
中間層13は、光透過性を有する樹脂からなり、具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂類、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、ポリ乳酸樹脂類、ポリオレフィン樹脂類など任意の樹脂を単独あるいは複合体、アロイ体、ブレンド体として用いることができる。
【0041】
更に中間層13は、シート状のものとして、設置されてあっても良く、またコーティング層あるいは印刷層として設けられてあっても良い。
【0042】
また、上述のコアシート11、外装シート12、中間層13の各層は、それぞれ安定剤などの添加剤などの添加や帯電防止処理などが施されてあっても良く、更には、少なくともいずれか一つの層に対して、マット化処理や、日本工業規格X6301に見られる磁気カードの光透過濃度に関する規定を遵守ための処理が施されてあっても良い。
【0043】
マット化処理の具体的な方法としては、表面をマット調に調整した金属版を熱圧着して、対象となる層の表面をマット化する方法や、サンドブラスト法などによる表面マット化など、任意の手法を用いることができる。
【0044】
また、多孔性アルミナや多孔質炭酸カルシウム、シリカなどの無機材料や有機フィラーなどをマット剤として含有するインキ層を印刷あるいはコーティングされてあっても良く、更には前記マット剤が、各層を構成する樹脂中に添加されてあっても良い。
【0045】
上述のようなマット化処理を、少なくともいずれか一つの層に施すことにより、金属光沢層を設けた際に、金属光沢層がマット処理表面の影響を受け、金属光沢層における光の反射特性を変化させることができる。
【0046】
このため、マット化処理を施した層に設けられた金属光沢層からなる画像情報部15(a、b、cのいずれか)とマット化処理を施していない層に設けられた金属光沢層からなる画像情報部との間で、明確なコントラスト差が生じ、立体感をより際立たせることが可能となる。
【0047】
日本工業規格におけるX6301に示される規定は、カードをキャッシュディスペンサー(CD)やATM(Automatic Teller’s Machine)などのR/Wに挿入した際に、カードが挿入されたかどうかを検知する手段として、光源および検出器を用いていることに由来しており、これらのR/Wにおける検出方式は、近赤外の光源と検出器を備えたもので構成されているのが一般的と言える。
【0048】
このため、カードが挿入されたかどうかの検知に誤動作を発生させないためには、カードが、少なくとも近赤外線領域の光を、一定以上吸収又は反射させる必要がある。
【0049】
そこで、コアシート11、外装シート12、中間層13の少なくともいずれか一つの層に対して、各層を構成している樹脂中に、近赤外線領域に吸収特性を有する色材を添加するか、あるいは近赤外線領域に吸収特性を有する色材を含むインキ層を積層体10のいずれかの層に印刷またはコーティングする方法などが、用いられてあっても良い。
【0050】
近赤外線領域に吸収特性を有する色材の例としては、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。このような近赤外線領域に吸収特性を有する色材は、単独または混合物、あるいはその他の色材との混合物などとして、用いることができる。
【0051】
図1において、印刷層A14は、コアシート11の最内面側に設けられているが、印刷層A14は、これに限定されるものではなく、積層体10のいずれの層に設けられてあっても良い。
【0052】
印刷層A14は、積層体10において、最外面である画像情報15cが設けられた面上に形成されてあっても何ら問題はない。
【0053】
印刷層B17は、文字情報などを中心とした印刷層であり、印刷層B17が設けられる位置は、必ずしも外装シート12の最外面である必要はない。
【0054】
印刷層A14および印刷層B17は、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法など公知印刷技術を用いて形成することができる。
【0055】
また、各外装シート12の最外面側には、それぞれ保護層が形成されてあっても良い。
【0056】
更には、積層体10の各層の層間には、熱ラミネート時に接着するための接着剤層が設けられてあっても何ら問題はない。
【0057】
図3は、金属光沢層を形成するための転写箔の構成例を示す断面図である。
【0058】
図3(A)は、基材21上に、剥離層22、金属薄膜層23、接着層24を順次設けた例を示しており、
図3(B)は、基材21上に、剥離層22、着色層25、金属薄膜層23、接着層24を順次設けた例を示している。
【0059】
基材21は、耐熱性を有するフィルムであることが望ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、トリアエチルセルロース(TAC)などの各種フィルムを用いることができるが、コスト面や取扱いの容易さなどから、PETが好適であると言える。
【0060】
剥離層22に使用可能な材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂など任意の樹脂やパラフィンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックスなどのワックス類などを単独あるいは複合体、アロイ体、ブレンド体として使用することができる。更に、各種フィラー類や添加剤などが加えられてあっても良い。
【0061】
着色層25に使用可能な材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂など任意の樹脂を単独あるいは複合体、アロイ体、ブレンド体として使用することができる。
【0062】
また、着色層25は用途に応じて、各種色材や、有機あるいは無機の各種フィラー類やワックス類などからなる光拡散剤などが添加されてあっても良く、これにより、積層体10中に設けられる金属光沢層20からなる画像情報部15a、15b、15cのコントラスト、視認性、デザイン性を向上させることが可能となる。
【0063】
金属薄膜層23は、例えば、Al、Sn、Ni、Cu、Au、Agなどの金属類ならびにこれらの合金群より選択される少なくとも1つの金属材料などを、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法(CVD法)などの気相体積法によって形成することができる。
【0064】
接着層24に使用できる材料としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、各種アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂などの各種樹脂を任意に選定して、単独あるいは複合体、アロイ体、ブレンド体として使用することができる。
【0065】
また、接着層24には、シリカなどの無機フィラーや有機フィラーなどの各種添加剤が添加されてあっても良い。
【0066】
図4は、
図3に例示されるような転写箔2を用いて、コアシート11、外装シート12、あるいは中間層13などからなる被転写体18に対して、金属光沢層20を形成する様子を模式的に示した図である。
【0067】
転写箔2の基材21側から、任意の形状に加工された転写ヘッド30を用いて、熱圧を加えることにより、被転写体18に対し、所望のパターン状に金属光沢層20を形成することができる。
【0068】
この時、先に述べたように、被転写体18上に形成される金属光沢層20は、ベタ状のパターン柄として設けられてあっても良いが、微細なドット状、あるいは直線又は曲線で構成されるストライプ状などからなるパターン柄として設けられてあっても良い。
【0069】
従って、転写ヘッド30は全体的な絵柄パターンを形成する輪郭形状と共に、輪郭形状内の転写箔と接する面内において、ドット状やストライプ状などの任意の凹凸形状を設けることができる。
【0070】
このような転写ヘッド30は、従来公知の切削技術やエッチング技術を用いることにより、金属版として形成することができる。
【0071】
上述の様にして得られる転写ヘッド30は、単独あるいは複数の転写ヘッドの組合せとして、絵柄パターンを形成していても良い。
【0072】
更には、少なくとも一部の転写ヘッド30は、転写ヘッド30を固定する固定部に対し、任意の方向に5°〜30°の範囲で傾けた状態で固定されてあっても良い。
【0073】
また、転写ヘッド30は、転写箔と接する面の少なくとも一部が、被転写体18と平行な面に対して、5°〜30°の範囲で、任意の方向に傾いている傾斜面あるいはレリーフ面が形成されてあっても良い。
【0074】
これにより、傾斜して固定された転写ヘッド30や、あるいは転写ヘッド30に設けられた傾斜面またはレリーフ面などに応じて、少なくとも部分的に傾きの異なる金属光沢層20を被転写体18上に設けることが可能となる。
【0075】
少なくとも部分的に傾きの異なる金属光沢綜20が設けられた被転写体18を積層して積層体10を形成することにより、この積層体10に対して一定方向から光を照射しながら観察すると、入射光に対する反射光の方向が、金属光沢層20の傾斜状態に応じて変化することとなる。
【0076】
従って、観察者は、複雑な反射光の変化を観察することにより、より一層の立体感を認識することが可能となる。
【0077】
以上のように、本発明の透明カードならびに透明カードの製造方法を用いることにより、比較的安価で、量産性に優れた製造プロセスでありながら、立体的で奥行き感のある金属光沢を有する画像情報を形成することが可能となり、極めて装飾性の高い透明カードを提供することができる。