(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、歯垢は細菌と代謝物のかたまりであり、歯石は歯垢が次第に変化して歯表面に沈着したものであるから、物質として両者を完全に区別することは難しい。簡単に言えば、歯垢と歯石のうち歯磨き(ブラッシング)では取り除けないものが、歯石であると言える。
【0006】
ここで、特許文献1のように単に蛍光の強度に基づいて歯表面における生物的沈着物の存在の有無を検出する場合、歯垢と歯石の存在の有無を一括して検出できるが、歯垢と歯石とを互いに区別することができない。このため、生物的沈着物が存在するとの検出結果に応じて歯磨き(ブラッシング)継続を促すものとすると、既に歯垢が除去され、歯石だけが残っている状態になっても、ユーザは歯磨きを続けることになる。この結果、磨きすぎになって、歯茎に傷がついて出血したり、歯周病になったりするおそれがある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、歯垢と歯石のうち歯垢が除去され、歯石だけが残っている状態になったか否かを判定できる歯ブラシを提供することにある。
【0008】
また、この発明の課題は、そのような歯ブラシを含むシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の歯ブラシは、
毛が立設された起毛面を有するヘッド部を含む本体と、
上記本体に搭載され、歯表面へ向けて上記起毛面のうちの特定領域を通して光を照射する発光部、および、上記光による上記歯表面からの放射光を特定領域を通して受光する受光部と、
上記歯表面に対するブラッシング開始から予め定められた設定期間にわたって、上記受光部の出力に基づいて、上記歯表面における歯垢または歯石の存在の有無を一括して検出する検出部と、
上記設定期間内に上記検出部によ
って歯垢または歯石の存在有りが検出され、上記歯垢または歯石の存在有りの検出状態が
上記設定期間の経過時点で維持されているとき、上記歯表面に歯石の存在有りと判定する判定部と
を備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、歯垢または歯石の存在の有無を「一括して」検出するとは、歯垢と歯石のうち少なくとも一方が存在していれば「存在有り」として検出し、歯垢も歯石も存在していなければ「存在無し」として検出することを意味する。
【0011】
また、ブラッシング開始から「予め定められた
設定期間」とは、例えば3秒間から5秒間の範囲内で設定されるが、これに限られるものではない。
【0012】
この発明の歯ブラシでは、発光部が歯表面へ向けて上記起毛面のうちの特定領域を通して光を照射する。受光部は、上記光による上記歯表面からの放射光を特定領域を通して受光する。この受光部の出力に基づいて、検出部が、例えば特許文献1(特表2002−515276号公報)または本出願人が先に提案した特許出願(特願2016−060012号)などに開示されている手法によって、
上記歯表面に対するブラッシング開始から予め定められた設定期間にわたって、上記受光部の出力に基づいて、上記歯表面における歯垢または歯石の存在の有無を一括して検出する。さらに、
上記設定期間内に上記検出部によって歯垢または歯石の存在有りが検出され、上記歯垢または歯石の存在有りの検出状態が上記設定期間の経過時点で維持されているとき、判定部が、上記歯表面に歯石の存在有りと判定する。このように判定する理由は、既述のように歯垢と歯石のうちブラッシングでは取り除けないものが歯石であることから、上記検出部による歯垢または歯石の存在有りの検出状態が上記歯表面に対するブラッシング開始から予め定められた期間続いたときは、歯石だけが残っていると見なせるからである。したがって、この歯ブラシによれば、歯垢と歯石のうち歯垢が除去され、歯石だけが残っている状態になったか否かを判定できる。この結果、磨きすぎになって、歯茎に傷がついて出血したり、歯周病になったりするおそれを低減できる。
【0013】
なお、上記起毛面のうちの「特定領域」では、毛が省略されているのが望ましい。
【0014】
一実施形態の歯ブラシでは、上記本体に上記検出部と上記判定部とが搭載されていることを特徴とする。
【0015】
この一実施形態の歯ブラシでは、上記本体に上記検出部と上記判定部とが搭載されている。したがって、上記本体に搭載された要素のみによって、歯垢と歯石のうち歯垢が除去され、歯石だけが残っている状態になったか否かを判定できる。これにより、この歯ブラシから外部へ伸びる光ファイバ、配線などを省略し得る。そのようにした場合、ユーザが、この歯ブラシによって歯磨きを行うときに、邪魔物がなく、容易に歯磨きを行うことができる。
【0016】
一実施形態の歯ブラシでは、
上記本体の内部に、上記毛とともに上記ヘッド部をブラッシングのために振動させる駆動部を搭載し、
上記判定部によって上記歯表面に歯石の存在有りと判定されたとき、上記駆動部による振動の強度を弱める制御を行う制御部を備えたことを特徴とする。
【0017】
この一実施形態の歯ブラシでは、上記判定部によって上記歯表面に歯石の存在有りと判定されたとき、制御部が上記駆動部による振動の強度を弱める制御を行う。したがって、磨きすぎになるおそれを、さらに低減できる。
【0018】
一実施形態の歯ブラシでは、上記検出部による検出状態、または、上記判定部による判定結果を報知する報知部を備えたことを特徴とする。
【0019】
ここで、報知部による「報知」は、ブザー音の鳴動、ランプの点灯または点滅、表示画面による表示などを広く含む。
【0020】
この一実施形態の歯ブラシでは、報知部が、上記検出部による検出状態、または、上記判定部による判定結果を報知する。したがって、ユーザは、上記歯表面における歯垢または歯石の存在の有無、または、上記歯表面に歯石の存在有りということを、容易に知ることができる。
【0021】
なお、上記検出部による検出状態の報知は、上記判定部による判定結果の報知とは、異なる手段によるのが望ましい。例えば、上記検出部による検出状態としての歯垢または歯石の存在の有無がランプの点灯、消灯によって報知されるとき、上記判定部による判定結果としての「歯石の存在有り」の報知は「ブザー音の鳴動」によって行われるのが望ましい。これにより、ユーザは、上記検出部による検出状態(歯垢または歯石の存在有り)の報知と、上記判定部による判定結果(歯石の存在有り)の報知とを、容易に区別して認識できる。
【0022】
一実施形態の歯ブラシでは、上記判定部によって上記歯表面に歯石の存在有りと判定されたとき、あるいは、
上記設定期間内に上記検出部による検出状態が歯垢または歯石の存在有りから存在無しに遷移したとき、上記報知部は、歯列において上記毛でブラッシングされているブラッシング部位の変更を促す報知を行うことを特徴とする。
【0023】
ここで、「ブラッシング部位」とは、口腔内の歯列の表面を区分することで定義される複数の部位のうち、上記毛でブラッシングされている(毛が当たっている)部位をいう。
【0024】
ユーザが或るブラッシング部位をブラッシングしている状態で上記判定部によって上記歯表面に歯石の存在有りと判定されたとき、それ以上ブラッシングを継続しても上記歯石を取り除けないわけであるから、ユーザはそのブラッシング部位のブラッシングを終了して他の部位のブラッシングを行うべきである。また、ユーザが或るブラッシング部位をブラッシングしている状態で、上記検出部による検出状態が歯垢または歯石の存在有りから存在無しに遷移したとき、そのブラッシング部位について歯垢も歯石も存在無しになったわけであるから、ユーザはそのブラッシング部位のブラッシングを終了して他の部位のブラッシングを行うべきである。そこで、この一実施形態の歯ブラシでは、上記判定部によって上記歯表面に歯石の存在有りと判定されたとき、あるいは、
上記設定期間内に上記検出部による検出状態が歯垢または歯石の存在有りから存在無しに遷移したとき、上記報知部は、歯列において上記毛でブラッシングされているブラッシング部位の変更を促す報知を行う。この報知によって、ユーザは、例えば現在のブラッシング部位のブラッシングを終了して他の部位のブラッシングを行うように促される。したがって、磨きすぎになるおそれを、さらに低減できる。
【0025】
一実施形態の歯ブラシでは、
歯列において上記毛でブラッシングされているブラッシング部位を検出するブラッシング部位検出部と、
上記ブラッシング部位毎に、上記判定部によって上記歯表面に歯石の存在有りと判定されたか否かを表すデータを記憶する記憶部を備えたことを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の歯ブラシでは、ブラッシング部位検出部が、歯列において上記毛でブラッシングされているブラッシング部位を検出する。記憶部が、上記ブラッシング部位毎に、上記判定部によって上記歯表面に歯石の存在有りと判定されたか否かを表すデータを記憶する。したがって、上記記憶部のデータを参照すれば、ユーザは、例えば自身の口腔内の歯列において、どの部位に歯石が残っているか否かを認識できる。
【0027】
一実施形態の歯ブラシでは、上記記憶部に記憶されたデータを、上記本体の外部へ送信可能な通信部を備えたことを特徴とする。
【0028】
この一実施形態の歯ブラシでは、上記記憶部に記憶されたデータを、通信部によって、上記本体の外部へ送信することができる。これにより、上記歯ブラシの上記記憶部からのデータを、様々な用途に利用することができる。
【0029】
別の局面では、この発明のシステムは、
上記歯ブラシと、この歯ブラシの本体の外部に設けられたコンピュータ装置とを含むシステムであって、
上記コンピュータ装置は、
上記歯ブラシの上記記憶部からのデータを受信可能な通信部と、
上記記憶部からのデータを処理して、上記歯列において歯石が有る部位を表す画像を作成する表示処理部と、
上記表示処理部によって作成された画像を表示する表示器と
を備えたことを特徴とする。
【0030】
ここで、「コンピュータ装置」とは、名称の如何にかかわらず、例えばスマートフォン、タブレット端末など、実質的にコンピュータ装置であれば足りる。
【0031】
この発明のシステムでは、上記コンピュータ装置の通信部が、上記歯ブラシの上記記憶部からのデータを受信する。表示処理部は、上記記憶部からのデータを処理して、上記歯列において歯石が有る部位を表す画像を作成する。表示器は、上記表示処理部によって作成された画像を表示する。この画像を見たユーザは、自身の歯列において歯石が有る部位を直感的に認識できる。したがって、歯科医の診察、治療を受けるべきか否かを適切に判断できる。
【発明の効果】
【0032】
以上より明らかなように、この発明の歯ブラシによれば、歯垢と歯石のうち歯垢が除去され、歯石だけが残っている状態になったか否かを判定できる。
【0033】
また、この発明のシステムによれば、ユーザは、自身の歯列において歯石が有る部位を直感的に認識できる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
(電動歯ブラシの構成)
図1(A)、
図1(B)は、この発明の歯垢検出装置が組み込まれた一実施形態の電動歯ブラシ(全体を符号90で示す。)の外観を、互いに反対の側から斜めに見たところを示している。この電動歯ブラシ90は、毛210が立設されたヘッド部4と、手で握られるべきグリップ部5と、ヘッド部4とグリップ部5とを連結するネック部3とを備えている。ヘッド部4とネック部3とは、グリップ部5に対して着脱可能なブラシ部材2として一体に構成されている。ヘッド部4、ネック部3、グリップ部5を併せて、本体1と呼ぶ。本体1は、歯磨きの便宜のために、一方向に細長い形状を有している。なお、
図1(A)中には充電器100が図示されている。
【0037】
図2(A)は、電動歯ブラシ90を長手方向に沿って切断したときの縦断面を示している。グリップ部5は、このグリップ部5の外筐体からネック部3側へ突き出るように設けられたステム6を有している。ステム6は、先端が閉じた筒状の形状を有している。この例では、上記ブラシ部材2のネック部3が、このステム6を覆うように嵌合して装着されている。ブラシ部材2は消耗部品ゆえ、新品に交換できるよう、グリップ部5に対して着脱自在な構成となっている。ブラシ部材2のヘッド部4の片側の面(起毛面)4aには、毛(ブラシ)210が、この例では植毛により、起毛面4aから10mm〜12mm程度突出するように立設されている。なお、毛210は、植毛ではなく、溶着または接着されていても良い。
【0038】
本体1のグリップ部5の外面には、電源のオン/オフを行うための電源スイッチSが設けられている。また、グリップ部5の内部には、駆動源であるモータ10、駆動回路12、電源部としての充電池13、充電用のコイル14、加速度センサ15などが設けられている。充電池13を充電する際には、
図1(A)中に示した充電器100に本体1を載置するだけで、電磁誘導により非接触で充電可能である。
【0039】
図2(A)中に示すように、ステム6の内部には、軸受203が設けられている。モータ10の回転軸11に連結された偏心軸30の先端が、この軸受203に挿入されている。偏心軸30は、軸受203の近傍に重り300を有しており、偏心軸30の重心はその回転中心からずれている。駆動回路12が動作モードに応じた駆動信号(たとえばパルス幅変調信号)をモータ10に供給し、モータ10の回転軸11を回転させると、回転軸11の回転に伴って偏心軸30も回転する。偏心軸30は、その回転中心から重心がずれているために、回転中心の回りに旋回するような運動を行う。よって、偏心軸30の先端が軸受203の内壁に対して衝突を繰り返し、毛210を高速に振動(運動)させることとなる。
【0040】
ヘッド部4の起毛面4aのうち、略中央の特定領域4cでは、毛が省略されている。ヘッド部4の特定領域4cに対応する内部には、発光部50と、第1の受光部51と、第2の受光部52とが、並べて配置されている。ヘッド部4の起毛面4aのうち少なくとも特定領域4cを含む部分(外筐体)は、厚さ1mm〜3mm程度の透明の樹脂材料からなっている。
【0041】
図2(B)中に示すように、発光部50は、特定領域4cを通して歯表面99aへ向けて紫外または青色に相当するピーク波長をもつ励起光Lを照射する発光ダイオードを含んでいる。この発光ダイオードは、この例ではバイバー(Bivar)社製のLED(型番SM0603UV−405)であり、405nmのピーク波長をもつ光Lを発生する。
【0042】
第1の受光部51は、歯表面99aからの放射光L′を特定領域4cを通して受けて、放射光L′のうち第1の波長域のみのスペクトル成分を透過させる第1の光学フィルタ部材51Fと、この第1の光学フィルタ部材51Fを透過した上記第1の波長域のみのスペクトル成分を受ける第1のフォトダイオード51Dとを含んでいる。第1の光学フィルタ部材51Fは、この例では朝日分光株式会社製のロングパスフィルタ(型番LV0610)であり、上記第1の波長域として620nm以上の波長の光を通過させる一方、620nm未満の波長の光を遮断する(ハイパスタイプ)。第1のフォトダイオード51Dは、この例では新日本無線株式会社製のPD(Photo Diode)(型番NJL6401R−3)からなる。
【0043】
第2の受光部52は、歯表面99aからの放射光L′を特定領域4cを通して受けて、放射光L′のうち第2の波長域のみのスペクトル成分を透過させる第2の光学フィルタ部材52Fと、この第2の光学フィルタ部材52Fを透過した上記第2の波長域のみのスペクトル成分を受ける第2のフォトダイオード52Dとを含んでいる。第2の光学フィルタ部材52Fは、この例では朝日分光株式会社製のロングパスフィルタ(型番LV0550)であり、上記第2の波長域として550nm以上の波長の光を通過させる一方、550nm未満の波長の光を遮断する(ハイパスタイプ)。第2のフォトダイオード52Dは、第1のフォトダイオード51Dと同様に、この例では新日本無線株式会社製のPD(Photo Diode)(型番NJL6401R−3)からなる。
【0044】
なお、これらの発光部50、第1の受光部51、第2の受光部52は、それぞれ、
図2(A)中に示すリード線31、接点端子32、および、バネ状端子33を介して、駆動回路12に電気的に接続されている。
【0045】
第1の受光部51、第2の受光部52は、フォトダイオードではなく、それぞれフォトトランジスタからなっていても良い。また、特定領域4cのうち、発光部50からの励起光Lが通る部分と、歯表面99aからの放射光L′が通る部分とは、異なっていてもよい。
【0046】
図2(A)中に示す加速度センサ15は、この例では、多軸(ここではx,y,zの3軸)の加速度センサからなっている。この例では、
図1(A)中に示すように、x軸がブラシ面(毛210の先端が作る、起毛面4aと平行な面)に対して平行になり、y軸が本体1の長手方向に一致し、z軸がブラシ面に対して垂直になるように設定されている。つまり、本体1を充電器100に載置したときに、重力加速度ベクトルがy軸に平行になり、ブラシ面を上に向けたときに、重力加速度ベクトルがz軸に平行になり、本体1を水平にしてブラシ面を横に向けたときに、重力加速度ベクトルがx軸に平行になる。加速度センサ15の各軸の出力は後述の制御部110に入力され、公知の手法(例えば特開2011−139844号公報、特開2013−42906号公報などに開示されている手法)によってブラッシング部位(後述)を検出するために利用される。
【0047】
加速度センサ15としては、ピエゾ抵抗タイプ、静電容量タイプ、もしくは熱検知タイプのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサを好ましく利用できる。MEMSセンサは非常に小型であるため、本体1の内部への組み込みが容易だからである。ただし、加速度センサ15の形式はこれに限らず、動電式、歪みゲージ式、圧電式などのセンサを利用しても構わない。また特に図示しないが、各軸のセンサの感度のバランス、感度の温度特性、温度ドリフトなどを補正するための補正回路を設けるとよい。また、動加速度成分やノイズを除去するためのバンドパスフィルタ(ローパスフィルタ)を設けてもよい。また、加速度センサの出力波形を平滑化することによりノイズを低減してもよい。
【0048】
図3は、電動歯ブラシ90の制御系のブロック構成を示している。この電動歯ブラシ90のグリップ部5の内部には、加速度センサ15に加えて、上述の駆動回路12をなす制御部110と、記憶部115と、操作部130と、報知部140と、通信部180と、電源部170とを備えている。なお、駆動部101は、既述のモータ10、回転軸11、偏心軸30、軸受203、および、重り300を表している。
【0049】
制御部110は、ソフトウェアによって動作するCPU(中央演算処理ユニット)を含み、モータ10の駆動に加えて、歯表面99aにおける歯垢または歯石の存在の有無の判定のための処理、その他の各種処理を実行する。また、制御部110は、時刻をカウントするタイマを内蔵している。
【0050】
操作部130は、既述の電源スイッチSを含み、ユーザがこの電動歯ブラシ90の電源のオン/オフを行うために働く。
【0051】
記憶部115は、この例では、非一時的にデータを記憶し得るEEPROM(電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ)を含んでいる。記憶部115には、制御部110を制御するための制御プログラムが格納されている。また、この例では、記憶部115には、歯列における部位毎の歯垢および/または歯石の存在有無を示すデータ(これを「歯垢/歯石データ」と呼ぶ。)がテーブルとして格納される(後述)。
【0052】
報知部140は、この例では赤色LEDランプ140R、緑色LEDランプ140G(
図1(A)参照)を含み、それらのLEDランプ140R,140Gの点灯、消灯によって、歯垢または歯石の有無を報知する。さらに、報知部140は、ブザー(図示せず)を含み、ブザー音の鳴動によって、歯垢または歯石の有無を報知しても良い。それらに代えて、またはそれらに加えて、モータ10の振動を、強レベルと弱レベルとの間で切り換えることによって、歯垢または歯石の有無を報知しても良い。
【0053】
通信部180は、制御部110によって制御されて所定の情報をネットワークを介して外部の装置に送信したり、また、外部の装置からの情報をネットワークを介して入力部として受信して制御部110に受け渡したりする。このネットワークを介した通信は、この例では無線通信(例えば、BT(Bluetooth(登録商標))通信、BLE(Bluetooth(登録商標) low energy)通信など)とする。ネットワークは、典型的には家庭内LAN(Local Area Network)、病院内LANであるが、これに限定されず、インターネットなどであってもよい。
【0054】
電源部170は、既述の充電池13を含み、この電動歯ブラシ90内の各部へ電力(この例では、DC2.4V)を供給する。
【0055】
(第1の動作例)
図4は、電動歯ブラシ90の制御部110が、歯表面99aにおける歯垢および/または歯石の有無を判定する処理のフローを例示している。この電動歯ブラシ90では、ユーザが電源スイッチSをオンすると、制御部110がモータ10を回転させて、毛210を振動させる。
【0056】
電源スイッチSがオンされると、
図4のステップS1で、制御部110は、歯表面99aのブラッシング開始から予め定められた期間Δtを計数するタイマをセットする。このタイマにセットされた設定期間Δtは、歯表面99aに歯垢と歯石のうち歯石だけが残っているか否かの判定(後述)のための期間である。この例では、設定期間Δtは、磨きすぎ防止のために、3秒間から5秒間の範囲内でセットされる。
【0057】
続いて、
図4のステップS2で、制御部110は検出部として働いて、この例では本出願人が先に提案した特許出願(特願2016−060012号)に開示されている手法によって、歯表面99aにおける歯垢または歯石の存在の有無を一括して検出する。
【0058】
具体的には、
図2(B)中に示すように、発光部50をオンして、発光部50から特定領域4cを通して歯表面99aへ向けて励起光Lを照射させる。それに応じて、歯表面99aから放射光L′が放射される。この放射光L′は、特定領域4cを通して、第1の受光部51、第2の受光部52によって受光される。第1の受光部51の出力、第2の受光部52の出力は、第1の出力値OUT1、第2の出力値OUT2として、制御部110に入力される。
【0059】
続いて、制御部110はゼロ点補正部として働いて、上記第1の出力値OUT1、第2の出力値OUT2から、それぞれ歯表面99aの周りの環境光Lbによる成分(すなわち、発光部50がオフのときの第1の出力値OUT1b、第2の出力値OUT2b)を差し引く補正を行う。具体的には、補正された第1の出力値ΔOUT1、第2の出力値ΔOUT2として、それぞれ差分
ΔOUT1=OUT1−OUT1b
ΔOUT2=OUT2−OUT2b
を算出する。
【0060】
ここで、
図6(A)は、第1の出力値ΔOUT1と第2の出力値ΔOUT2との比A′を示している。なお、この例では、比A′について、
A′=ΔOUT1/ΔOUT2
というように定義されている。
図6(A)および後述の
図6(B)において、横方向に並ぶ各棒は、エナメル質、レジン、金属歯、人工歯(セラミックまたはプラスチック)、歯石、歯垢の各試料に対応している。
図6(A)から分かるように、エナメル質、レジン、人工歯(セラミックまたはプラスチック)からなるグループは、比A′が概ね0.35よりも小さい。一方、金属歯、歯石、歯垢からなるグループは、比A′が概ね0.35よりも大きい。したがって、比A′と第1閾値α′=0.35との大小を判定することによって、エナメル質、レジン、人工歯(セラミックまたはプラスチック)からなるグループと、金属歯、歯石、歯垢からなるグループとを区分して識別できる。
【0061】
同様に、
図6(B)は、第1の出力値ΔOUT1と第2の出力値ΔOUT2との差B′を示している。なお、この例では、差B′について、
B′=ΔOUT2−ΔOUT1
というように定義されている。
図6(B)から分かるように、金属歯からなるグループは、差B′が概ね100,000(a.u.)よりも小さい。一方、エナメル質、レジン、人工歯(セラミックまたはプラスチック)、歯石、歯垢からなるグループは、差B′が概ね100,000(a.u.)よりも大きい。したがって、差B′と第2閾値β′=100,000(a.u.)との大小を判定することによって、金属歯からなるグループと、エナメル質、レジン、人工歯(セラミックまたはプラスチック)、歯石、歯垢からなるグループとを区分して識別できる。
【0062】
このようにして、
図6(A)における比A′と第1閾値α′との間の大小の判定結果と、
図6(B)における差B′と第2閾値β′との間の大小の判定結果との組み合わせによって、歯表面99aに存在している物質が、歯垢または歯石であるか否かを判定する。
【0063】
なお、歯石は、歯垢が次第に変化して歯表面に沈着したものであるから、物質として両者を完全に区別することは難しい。
図6(A)、
図6(B)中に「歯石(および歯垢)」と表記しているのは、この理由による。
【0064】
このようにして、制御部110は、歯垢または歯石の存在の有無を一括して検出する。すなわち、歯垢と歯石のうち少なくとも一方が存在していれば「存在有り」として検出し、歯垢も歯石も存在していなければ「存在無し」として検出する。
【0065】
ここで、歯垢または歯石の存在有りと判定された場合(
図4のステップS3でYES)、ステップS4に進んで、制御部110は、例えば報知部140による赤色LEDランプ140Rの瞬時(例えば0.3秒間とする。以下同様。)の点灯によって、歯垢または歯石の存在有りを報知する。
【0066】
次に、
図4のステップS5で、制御部110は、タイマにセットされた設定期間Δtが経過したか否かを判定する。設定期間Δtが経過していなければ(
図4のステップS5でNO)、ステップS2〜S5の処理を繰り返す。
【0067】
この後、
図4のステップS3で歯垢または歯石の存在有りの検出状態(
図4のステップS3でYES)が維持されたまま、タイマにセットされた設定期間Δtが経過したら(
図4のステップS5でYES)、制御部110は判定部として働いて、歯表面99aに歯石の存在有りと判定する。
【0068】
このように判定する理由は、既述のように歯垢と歯石のうちブラッシングでは取り除けないものが歯石であることから、歯垢または歯石の存在有りの検出状態が歯表面99aに対するブラッシング開始から設定期間Δt続いたときは、歯石だけが残っていると見なせるからである。したがって、この電動歯ブラシ90によれば、歯垢と歯石のうち歯垢が除去され、歯石だけが残っている状態になったか否かを判定できる。
【0069】
続いて、
図4のステップS6で、制御部110は、例えば報知部140によるブザー音の瞬時の鳴動によって、歯石の存在有りを報知する。このように、この例では、歯垢または歯石の存在有りの報知(
図4のステップS4)に対して、歯石の存在有りの報知(
図4のステップS6)を異なる手段としている。これにより、ユーザは、歯垢または歯石の存在有りの報知と、歯石の存在有りの報知とを、容易に区別して認識できる。この結果、磨きすぎになって、歯茎に傷がついて出血したり、歯周病になったりするおそれを低減できる。
【0070】
一方、
図4のステップS3で歯垢または歯石の存在無しとされた場合(
図4のステップS3でNO)は、制御部110は、報知部140による緑色LEDランプ140Gの瞬時の点灯によって歯垢も歯石も存在無しを報知した後、
図4のステップS1〜S2の処理を繰り返す。そして、
図4のステップS7で、ユーザが電源スイッチSをオフすると、制御部110は処理を終了する。
【0071】
この電動歯ブラシ90では、本体1のグリップ部5に、検出部および判定部として働く制御部110が搭載されている。したがって、本体1に搭載された要素のみによって、歯垢と歯石のうち歯垢が除去され、歯石だけが残っている状態になったか否かを判定できる。これにより、この電動歯ブラシ90から外部へ伸びる光ファイバ、配線などを省略し得る。したがって、ユーザが、この電動歯ブラシ90によって歯磨きを行うときに、邪魔物がなく、容易に歯磨きを行うことができる。
【0072】
(第2の動作例)
歯の種類(上顎/下顎、臼歯/切歯など)や部分(舌側/頬側、歯面/噛み合わせ面など)によって、歯垢や歯石の付き方が異なる。それゆえ、歯垢および/または歯石の存在の有無の検出は、歯列における部位ごとに行うことが望ましい。
【0073】
この例では、
図7に示すように、上下の歯列を、「上顎前唇側」、「上顎前口蓋側」、「上顎左頬側」、「上顎左口蓋側」、「上顎右頬側」、「上顎右口蓋側」、「下顎前唇側」、「下顎前舌側」、「下顎左頬側」、「下顎左舌側」、「下顎右頬側」、「下顎右舌側」、の12箇所の部位に区分する。ただし、歯列の区分はこれに限らず、より細かい区分でもよい。例えば、個々の歯毎に区分してもよいし、個々の歯を左右半分ずつに区分してもよいし、上下左右の噛み合わせ面をそれぞれ一つの部位として区分してもよい。
【0074】
図5は、電動歯ブラシ90の制御部110が、そのような歯列における部位毎に、歯垢および/または歯石の有無を判定する処理のフローを例示している。この電動歯ブラシ90では、ユーザが電源スイッチSをオンすると、制御部110がモータ10を回転させて、毛210を振動させる。この例では、モータ10の振動の強度は、まず弱レベルに設定されるものとする。
【0075】
電源スイッチSがオンされると、
図5のステップS11で、制御部110はブラッシング部位検出部として働いて、歯列における12箇所の部位のうち、ヘッド部4の毛210によって現在ブラッシングされている(毛210が当たっている)部位(これを「ブラッシング部位」と呼ぶ。)を検出する。
【0076】
具体的には、制御部110は、加速度センサ15の各軸の出力に基づいて、公知の手法(例えば特開2011−139844号公報、特開2013−42906号公報などに開示されている手法)によって現在のブラッシング部位を検出する。なお、ブラッシング部位に毛210が当たっているか否かは、本体1内にブラシ圧(毛210に作用する荷重)を検知する荷重センサを設けて検知するのが望ましい。
【0077】
次に、
図5のステップS12で、制御部110は、記憶部115に設定された歯垢/歯石データのテーブルを参照して、現在のブラッシング部位について、既に歯石の存在有無の情報が記録されているか否かを判断する。1回の歯磨き(例えば最大3分間というような一定期間をかけて行うユーザの動作を指す。)の開始時には、歯垢/歯石データは各部位について未だ記録されていないものとする(
図5のステップS12でNO)。
【0078】
次の表1は、歯磨き開始時(この例では、2016年7月1日、22時丁度)における記憶部115に設定された歯垢/歯石データのテーブルを例示している。
(表1)歯垢/歯石データのテーブル(歯磨き開始時)
【0079】
この表1の表側(左欄)には、ユーザの歯列における12箇所の部位が互いに区別して挙げられている。表1の表頭(右欄最上段)には、歯垢/歯石データが取得された日時が記録される。表1の表体(右欄)には、歯列における各部位に対応した歯垢または歯石の存在有無を表す情報が記録される。表1中の記号「−」は、データが未だ記録されていないことを示している。
【0080】
次に、
図5のステップS13で、制御部110は、歯表面99aのブラッシング開始から予め定められた期間Δtを計数するタイマをセットする。このタイマにセットされた設定期間Δtは、ブラッシング部位の歯表面99aに歯垢と歯石のうち歯石だけが残っているか否かの判定(後述)のための期間である。この例では、設定期間Δtは、磨きすぎ防止のために、3秒間から5秒間の範囲内でセットされる。
【0081】
続いて、
図5のステップS14で、制御部110は検出部として働いて、この例では本出願人が先に提案した特許出願(特願2016−060012号)に開示されている手法によって、歯表面99aにおける歯垢または歯石の存在の有無を一括して検出する。具体的には、
図4のステップS2に関して詳細に述べたのと同じ処理を行って、歯垢または歯石の存在の有無を一括して検出する。
【0082】
ここで、検出結果(検出状態)が歯垢または歯石の存在無しならば(
図5のステップS15でNO)、
図5のステップS23に進んで、制御部110は、例えば報知部140による緑色LEDランプ140Gの瞬時の点灯によって歯垢も歯石も存在無しを報知する。
【0083】
続いて、
図5のステップS24で、制御部110は、記憶部115に設定された「歯垢/歯石データ」のテーブルに、そのブラッシング部位について、歯垢も歯石も「存在無し」であることを記録する。さらに、
図5のステップS25で、制御部110は、モータ10の振動の強度を弱レベルに維持する。
【0084】
一方、検出結果(検出状態)が歯垢または歯石の存在有りならば(
図5のステップS15でYES)、
図5のステップS16に進んで、制御部110は、記憶部115に設定された「歯垢/歯石データ」のテーブルに、そのブラッシング部位について「歯垢有り」と記録する。この「歯垢有り」の記録は、実際には、そのブラッシング部位について歯垢または歯石が有ることを表している。
【0085】
続いて、
図5のステップS17で、制御部110は、例えば報知部140による赤色LEDランプ140Rの瞬時の点灯によって、歯垢または歯石の存在有りを報知する。さらに、
図5のステップS18で、制御部110は、歯垢または歯石が容易に除去されるように、モータ10の振動の強度を弱レベルから強レベルに切り替える。
【0086】
次に、
図5のステップS19で、制御部110は、そのブラッシング部位についてのブラッシング開始からタイマにセットされた設定期間Δtが経過したか否かを判断する。設定期間Δtが経過していなければ(
図5のステップS19でNO)、ステップS14〜S19の処理を繰り返す。
【0087】
この後、
図5のステップS15で歯垢または歯石の存在有りの検出状態(
図5のステップS15でYES)が維持されたまま、タイマにセットされた設定期間Δtが経過したら(
図5のステップS19でYES)、制御部110は判定部として働いて、歯表面99aに歯石の存在有りと判定する。
【0088】
このように判定する理由は、既述のように歯垢と歯石のうちブラッシングでは取り除けないものが歯石であることから、歯垢または歯石の存在有りの検出状態(
図5のステップS15でYES)がそのブラッシング部位についてのブラッシング開始から設定期間Δt続いたときは、歯石だけが残っていると見なせるからである。したがって、この電動歯ブラシ90によれば、歯垢と歯石のうち歯垢が除去され、歯石だけが残っている状態になったか否かを判定できる。
【0089】
続いて、
図5のステップS20で、制御部110は、例えば報知部140によるLEDランプの点灯に代えて、ブザー音の瞬時の鳴動によって歯石の存在有りを報知する。この例では、先の例と同様に、歯垢または歯石の存在有りの報知(
図5のステップS17)に対して、歯石の存在有りの報知(
図5のステップS20)を異なる手段としている。これにより、ユーザは、歯垢または歯石の存在有りの報知と、歯石の存在有りの報知とを、容易に区別して認識できる。この結果、磨きすぎになって、歯茎に傷がついて出血したり、歯周病になったりするおそれを低減できる。
【0090】
続いて、
図5のステップS21に進んで、制御部110は、記憶部115に設定された「歯垢/歯石データ」のテーブルに、そのブラッシング部位について、「歯垢有り」から「歯石有り」へ書き換えて記録する。さらに、
図5のステップS22で、制御部110は、モータ10の振動の強度を強レベルから弱レベルに切り替える。これにより、磨きすぎになるおそれを、さらに低減できる。
【0091】
なお、モータ10の振動の強度を強レベルから弱レベルに切り替えること(
図5のステップS22)によって、歯石の存在有りの報知(
図5のステップS20)の代わりとし、ステップS20を省略してもよい。
【0092】
また、タイマにセットされた設定期間Δt内に、
図5のステップS15で、検出結果(検出状態)が歯垢または歯石の存在有りから存在無しに遷移したとき(
図5のステップS15でYESからNOへ遷移したとき)、
図5のステップS23に進んで、制御部110は、例えば報知部140による緑色LEDランプ140Gの瞬時の点灯によって、歯垢も歯石も存在無しになったことを報知する。
【0093】
ここで、検出結果(検出状態)が歯垢または歯石の存在有りから存在無しに遷移することは、そのブラッシング部位について、歯表面99aに歯垢または歯石が存在していたが、その物質(歯垢または歯石)はブラッシングによって取り除かれたこと、すなわち、その物質は歯垢と歯石のうち歯垢であったことを意味している。
【0094】
続いて、
図5のステップS24で、制御部110は、記憶部115に設定された「歯垢/歯石データ」のテーブルに、そのブラッシング部位について、「歯垢有り」から、歯垢も歯石も「存在無し」へ書き換えて記録する。さらに、
図5のステップS25で、制御部110は、モータ10の振動の強度を
強レベルから
弱レベルに切り替える。これにより、磨きすぎになるおそれを、さらに低減できる。
【0095】
このようにして、記憶部115に設定された歯垢/歯石データのテーブルに、現在のブラッシング部位について、「歯垢有り」、「歯石あり」、歯垢も歯石も「存在無し」のいずれかが記録される(
図5のステップS16,S21,S24)。
【0096】
ユーザが或るブラッシング部位をブラッシングしている状態で歯表面99aに歯石の存在有りと判定されたとき(
図5のステップS19でYES)、それ以上ブラッシングを継続しても歯石を取り除けないわけであるから、ユーザはそのブラッシング部位のブラッシングを終了して他の部位のブラッシングを行うべきである。また、ユーザが或るブラッシング部位をブラッシングしている状態で、上記検出状態が歯垢または歯石の存在有りから存在無しに遷移したとき(
図5のステップS15でYESからNOへ遷移したとき)、そのブラッシング部位について歯垢も歯石も存在無しになったわけであるから、ユーザはそのブラッシング部位のブラッシングを終了して他の部位のブラッシングを行うべきである。そこで、
図5のステップS22またはステップS25の後、ステップS26に進んで、制御部110は、例えば報知部140によるブザー音の瞬時の鳴動によって、ブラッシング部位の変更を促す報知を行う。
【0097】
この報知によって、ユーザは、例えば現在のブラッシング部位のブラッシングを終了して他の部位のブラッシングを行うように促される。したがって、磨きすぎになるおそれを、さらに低減できる。
【0098】
なお、ブラッシング部位の変更を促す報知(
図5のステップS26)によって、歯石の存在有りの報知(
図5のステップS20)の代わりとし、ステップS20を省略してもよい。
【0099】
ユーザがヘッド部4の毛210を他の部位に移動させると、
図5のステップS11に戻って、制御部110は再びブラッシング部位検出部として働いて、ヘッド部4の毛210によって現在ブラッシングされているブラッシング部位を検出する。そして、ステップS12〜S26の処理を繰り返す。
【0100】
なお、ユーザがヘッド部4の毛210を、記憶部115に設定された歯垢/歯石データのテーブルで既に「歯石有り」と記録されているブラッシング部位に移動させたときは(
図5のステップS12でYES)、歯垢または歯石の存在の有無を再び検知する必要が無い。そこで、
図5のステップS20に進んで、制御部110は、そのブラッシング部位について、例えば報知部140によるブザー音の瞬時の鳴動によって歯石の存在有りを報知し(
図5のステップS20)、歯垢/歯石データのテーブルでの「歯石有り」の記録を維持し(
図5のステップS21)、モータ10の振動の強度を弱レベルに維持する(
図5のステップS22)。そして、制御部110は、例えば報知部140によるブザー音の瞬時の鳴動によって、ブラッシング部位の変更を促す報知を行う(
図5のステップS26)。
【0101】
図5のステップS27で、ユーザが電源スイッチSをオンしてから一定期間(この例では3分間)が経過したとき、または、ユーザが電源スイッチSをオフしたとき、制御部110は処理を終了する。
【0102】
このようにした場合、歯磨き終了時(この例では、2016年7月1日、22時2分)には、記憶部115に次の表2に例示するような歯垢/歯石データのテーブルが得られる。
(表2)歯垢/歯石データのテーブル(歯磨き終了時)
【0103】
この表2の歯垢/歯石データのテーブルを参照すれば、ユーザは、自身の口腔内の歯列において、例えば
図7中に示した「上顎右頬側」、「下顎前舌側」の2つの部位について歯石が残っていることを認識できる。それら以外の部位については歯垢も歯石も存在「無」しであることが分かる。また、歯磨き終了時には「歯垢有り」の部位は残らなかったことが分かる。
【0104】
この表2の歯垢/歯石データは、制御部110が通信部180を制御して、ネットワークを介して外部のコンピュータ装置、例えばユーザ自身のスマートフォン600(
図8参照)に送信され得る(
図5のステップS28)。これにより、上記歯垢/歯石データを、様々な用途に利用することができる。
【0105】
(システムの構成)
図8は、上述の電動歯ブラシ90とスマートフォン600とを含むシステム(全体を符号700で示す。)の構成を例示している。このシステム700は、電動歯ブラシ90と、コンピュータ装置としてのスマートフォン600とを、ネットワーク900を介して互いに無線通信可能に備えている。
【0106】
スマートフォン600は、本体600Mと、この本体600Mに搭載された、制御部610と、記憶部620と、操作部630と、表示器640と、通信部680と、電源部690とを含んでいる。このスマートフォン600は、市販のスマートフォンに、後述のアプリケーションソフトウェアをインストールしたものである。
【0107】
制御部610は、CPUおよびその補助回路を含み、スマートフォン600の各部を制御し、記憶部620に記憶されたプログラムおよびデータに従って処理を実行する。例えば、操作部630を介して入力された指示に基づいて、通信部680から入力されたデータを処理し、処理したデータを、記憶部620に記憶させたり、表示器640で表示させたり、通信部680を介して出力させたりする。
【0108】
記憶部620は、制御部610でプログラムを実行するために必要な作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)と、制御部610で実行するための基本的なプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)とを含む。また、記憶部620の記憶領域を補助するための補助記憶装置の記憶媒体として、半導体メモリ(メモリカード、SSD(Solid State Drive))などが用いられてもよい。
【0109】
操作部630は、この例では、表示器640上に設けられたタッチパネルからなっている。なお、キーボードその他のハードウェア操作デバイスを含んでいても良い。
【0110】
表示器640は、この例ではLCD(液晶表示素子)または有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイからなる表示画面を含む。表示器640は、制御部610による制御に従って、様々な画像を表示画面に表示させる。
【0111】
通信部680は、制御部610による制御に従って、ネットワーク900を介して、電動歯ブラシ90との間で無線通信(例えば、BT通信、BLE通信など)可能に構成されている。
【0112】
電源部690は、この例では充電池を含み、このスマートフォン600の各部へ電力を供給する。
【0113】
ユーザは、スマートフォン600に予め、アプリケーションソフトウェア(これを「歯石表示プログラム」と呼ぶ。)をインストールしておくものとする。この歯石表示プログラムは、電動歯ブラシ90の記憶部115からの歯垢/歯石データを処理して、ユーザの口腔内の様子を表す画像(これを「口腔内チャート」と呼ぶ。)を作成するためのものである。
【0114】
具体的には、ユーザが歯石表示プログラムを起動させると、スマートフォン600の通信部680が、ネットワーク900を介して、電動歯ブラシ90の記憶部115からの歯垢/歯石データを受信する。続いて、制御部610が表示処理部として働いて、その歯垢/歯石データを処理して、例えば
図9に示すように、ユーザの歯列において歯石が有る部位を表す口腔内チャート641を作成する。表示器640は、制御部610によって作成された口腔内チャート641を表示する(
図5のステップS29)。
【0115】
(表示例)
図9の口腔内チャート641では、表2の歯垢/歯石データのテーブルの内容に対応して、上下の歯列98U,98Lにおいて歯石が有る部位に、他の部位(歯石無しの部位)と区別するためのマーク98a,98bが付されている。この例では、それらのマーク98a,98bは、例示643に示すように、閉領域に斜線を付して構成されている。口腔内チャート641の周りには、歯列98U,98Lにおける「左上」、「右上」、「左下」、「右下」を表す標識97a,97b,97c,97dが表示されている。この口腔内チャート641を見たユーザは、自身の歯列において「上顎右頬側」、「下顎前舌側」に歯石が有ることを直感的に認識できる。したがって、歯科医の診察、治療を受けるべきか否かを適切に判断できる。
【0116】
なお、歯石が有る部位を示すマークは、斜線を付したものに限られず、点描を付したり、他の部位の色とは異なる色を付したものなどであってもよい。
【0117】
ここで、
図9の口腔内チャート641では、上下の歯列98U,98Lの左右を、ユーザの体の左右に合わせて表している。このようにした場合、一般的なユーザにとって、自身の歯列において歯石が有る部位を直感的に認識できる。
【0118】
また、例えば
図9中に示すように、表示器640に、口腔内チャート641とともに左右反転スイッチ642を表示して、ユーザの選択(左右反転スイッチ642の押下)により、口腔内チャート641を左右反転して表示できるようにしてもよい。その理由は、歯科分野では、患者の歯列を、患者に向かって見た向きで表すのが一般的だからである。その場合、口腔内チャート641の左右反転に伴って、
図10に示すように、「左上」を表す標識97aと「右上」を表す標識97bとを入れ替え、また、「左下」を表す標識97cと「右下」を表す標識97dとを入れ替えるものとする。これにより、ユーザが歯科医を訪問して歯石除去を依頼する場合に、
図10に示す向きの口腔内チャートを見せれば、歯科医との意思疎通が容易になる。
【0119】
また、仮に、歯磨き終了時にユーザの歯列に「歯垢有り」の部位が残っており、歯垢/歯石データのテーブルにその情報が含まれていれば、口腔内チャート641において、上下の歯列98U,98Lにおいて歯石が有る部位に併せて、歯垢が有る部位を表示してもよい。その場合、歯垢が有る部位を表すマークは、歯石が有る部位を表すマークに対して区別可能なものとするのが望ましい。
【0120】
また、スマートフォン600の記憶部620に、口腔内チャート641を、作成日時毎に時系列で蓄積してもよい。この場合、ユーザは、スマートフォン600の操作部630を通した操作によって、作成日時が異なる口腔内チャート641を、表示器640に順次または複数同時に表示させることができるものとする。これにより、ユーザは、それらの口腔内チャート641を参照することで、歯石が沈着してきた経過を認識できる。
【0121】
上述の実施形態では、電動歯ブラシ90の制御部110が検出部、判定部の機能を実行したが、これに限られるものではない。歯磨き中に電動歯ブラシ90とスマートフォン600との間で通信を行いながら、スマートフォン600の制御部610が検出部、判定部の機能を実行してもよい。そのようにした場合、電動歯ブラシ90の制御部110の構成を簡素化できる。これにより、制御部110を、CPUに代えて、例えばロジックIC(集積回路)によって構成することが可能になる。また、その場合、歯垢または歯石の存在有無の検出結果(検出状態)の報知、および、歯石の存在有りの報知は、スマートフォン600の機能、例えば表示器640による表示、図示しないスピーカによる音声、図示しない振動器による振動などによって行うのが望ましい。
【0122】
電動歯ブラシ90と組み合わされたシステムを構成するために、スマートフォン600に代えて、タブレット端末、パーソナルコンピュータなど、実質的にコンピュータ装置として機能する装置を用いてもよい。
【0123】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。