特許第6805651号(P6805651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805651
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/117 20060101AFI20201214BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20201214BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20201214BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20201214BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   B60C11/117
   B60C5/00 H
   B60C11/03 B
   B60C11/13 B
   B60C11/03 200A
   B60C11/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-171110(P2016-171110)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-34728(P2018-34728A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 和真
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−057706(JP,A)
【文献】 独国実用新案第202008008298(DE,U1)
【文献】 特開平08−048113(JP,A)
【文献】 特開平05−278414(JP,A)
【文献】 特開平04−143105(JP,A)
【文献】 特開平06−024213(JP,A)
【文献】 特開昭64−052507(JP,A)
【文献】 特開2015−160470(JP,A)
【文献】 特開2015−058912(JP,A)
【文献】 特表2015−522479(JP,A)
【文献】 特開2015−217907(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0005904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 11/00−11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
車両への装着の向きが指定されることにより、外側トレッド端と、内側トレッド端とが定められたトレッド部を有し、
前記トレッド部は、タイヤ赤道と前記内側トレッド端との間である内側トレッド部と、タイヤ赤道と前記外側トレッド端との間である外側トレッド部とを含み、
前記内側トレッド部には、前記内側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる第1主溝と、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に連続してのびる第2主溝とが設けられており、
前記外側トレッド部には、他の溝と連通しない複数のスロットが設けられており、
前記スロットは、深さが5mm以上の複数の深底スロットを含み、
前記深底スロットのトレッド踏面での開口面積の総和は、前記外側トレッド部の全ての溝及びスロットを埋めて得られる外側トレッド表面積の5%以下であり、
前記スロットは、深さが5mm未満の複数の浅底スロットを含み、
前記浅底スロットの前記トレッド踏面での開口面積の総和は、前記外側トレッド表面積の3%〜10%である空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記外側トレッド部には、前記スロット以外には、溝が設けられていない請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
空気入りタイヤであって、
車両への装着の向きが指定されることにより、外側トレッド端と、内側トレッド端とが定められたトレッド部を有し、
前記トレッド部は、タイヤ赤道と前記内側トレッド端との間である内側トレッド部と、タイヤ赤道と前記外側トレッド端との間である外側トレッド部とを含み、
前記内側トレッド部には、前記内側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる第1主溝と、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に連続してのびる第2主溝とが設けられており、
前記外側トレッド部には、他の溝と連通しない複数のスロットが設けられており、
前記スロットは、深さが5mm以上の複数の深底スロットを含み、
前記深底スロットのトレッド踏面での開口面積の総和は、前記外側トレッド部の全ての溝及びスロットを埋めて得られる外側トレッド表面積の5%以下であり、
前記各スロットのトレッド踏面での開口輪郭は、直線部分を含まない円弧で形成されている空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記開口輪郭は、前記開口輪郭の重心が、前記スロットのタイヤ軸方向の中心よりもタイヤ軸方向外側に位置する卵型形状である請求項3記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
空気入りタイヤであって、
車両への装着の向きが指定されることにより、外側トレッド端と、内側トレッド端とが定められたトレッド部を有し、
前記トレッド部は、タイヤ赤道と前記内側トレッド端との間である内側トレッド部と、タイヤ赤道と前記外側トレッド端との間である外側トレッド部とを含み、
前記内側トレッド部には、前記内側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる第1主溝と、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に連続してのびる第2主溝とが設けられており、
前記外側トレッド部には、他の溝と連通しない複数のスロットが設けられており、
前記スロットは、深さが5mm以上の複数の深底スロットを含み、
前記深底スロットのトレッド踏面での開口面積の総和は、前記外側トレッド部の全ての溝及びスロットを埋めて得られる外側トレッド表面積の5%以下であり、
前記第1主溝及び前記第2主溝の少なくとも一方は、トレッド法線に対して、10°以下の角度で溝幅を広げる向きにタイヤ半径方向外側にのびる一対の溝壁を有し、
前記溝壁のうち、前記内側トレッド端側に位置する第1溝壁のトレッド踏面側に、前記トレッド法線に対して30〜80°の角度で前記溝幅を広げる向きにのびる面取り斜面がさらに設けられている空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記各スロットのタイヤ軸方向の長さは、前記外側トレッド部のタイヤ軸方向の幅の5%〜30%である請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記各スロットの前記タイヤ周方向の長さは、前記タイヤ軸方向の長さの30%〜70%である請求項6記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1主溝は、タイヤ赤道から、前記内側トレッド部の幅の0.40〜0.70倍のタイヤ軸方向距離を隔てた位置に溝中心線を有する請求項1乃至7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記第2主溝は、タイヤ赤道から、前記内側トレッド部の幅の0.05〜0.20倍のタイヤ軸方向距離を隔てた位置に溝中心線を有する請求項8記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記内側トレッド部には、一端が前記内側トレッド端に連通し、かつ、他端が前記第1主溝には連通してない第1横溝が設けられている請求項1乃至9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記トレッド部には、前記第2主溝から前記外側トレッド端に向かってのび、かつ、前記外側トレッド端に連通することなく終端する第2横溝が設けられている請求項1乃至10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ性能、ウェット性能、及び、耐偏摩耗性を高めた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、公道での通常走行を可能としつつサーキット等でのスポーツ走行を重視した高性能空気入りタイヤが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。このような空気入りタイヤは、スポーツ走行時に高いドライ性能が要求される一方、通常走行時におけるウェット性能も要求されている。また、前記空気入りタイヤは、スポーツ走行時に外側トレッド部に大きな荷重が作用するため、とりわけ外側トレッド部の耐偏摩耗性も要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−338628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、外側トレッド部にスロットを設けることを基本として、ドライ性能、ウェット性能、及び、耐偏摩耗性を高めた空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、空気入りタイヤであって、車両への装着の向きが指定されることにより、外側トレッド端と、内側トレッド端とが定められたトレッド部を有し、前記トレッド部は、タイヤ赤道と前記内側トレッド端との間である内側トレッド部と、タイヤ赤道と前記外側トレッド端との間である外側トレッド部とを含み、前記内側トレッド部には、前記内側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる第1主溝と、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に連続してのびる第2主溝とが設けられており、前記外側トレッド部には、他の溝と連通しない複数のスロットが設けられており、前記スロットは、深さが5mm以上の複数の深底スロットを含み、前記深底スロットのトレッド踏面での開口面積の総和は、前記外側トレッド部の全ての溝及びスロットを埋めて得られる外側トレッド表面積の5%以下である。
【0006】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記スロットは、深さが5mm未満の複数の浅底スロットを含み、前記浅底スロットの前記トレッド踏面での開口面積の総和は、前記外側トレッド表面積の3%〜10%であるのが望ましい。
【0007】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記外側トレッド部には、前記スロット以外には、溝が設けられていないのが望ましい。
【0008】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記各スロットのタイヤ軸方向の長さは、前記外側トレッド部のタイヤ軸方向の幅の5%〜30%であるのが望ましい。
【0009】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記各スロットの前記タイヤ周方向の長さは、前記タイヤ軸方向の長さの30%〜70%であるのが望ましい。
【0010】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記各スロットのトレッド踏面での開口輪郭は、直線部分を含まない円弧で形成されているのが望ましい。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記開口輪郭は、前記開口輪郭の重心が、前記スロットのタイヤ軸方向の中心よりもタイヤ軸方向外側に位置する卵型形状であるのが望ましい。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1主溝は、タイヤ赤道から、前記内側トレッド部の幅の0.40〜0.70倍のタイヤ軸方向距離を隔てた位置に溝中心線を有するのが望ましい。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2主溝は、タイヤ赤道から、前記内側トレッド部の幅の0.05〜0.20倍のタイヤ軸方向距離を隔てた位置に溝中心線を有するのが望ましい。
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第1主溝及び前記第2主溝の少なくとも一方は、トレッド法線に対して、10°以下の角度で溝幅を広げる向きにタイヤ半径方向外側にのびる一対の溝壁を有し、前記溝壁のうち、前記内側トレッド端側に位置する第1溝壁のトレッド踏面側に、前記トレッド法線に対して30〜80°の角度で前記溝幅を広げる向きにのびる面取り斜面がさらに設けられているのが望ましい。
【0015】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記内側トレッド部には、一端が前記内側トレッド端に連通し、かつ、他端が前記第1主溝には連通してない第1横溝が設けられているのが望ましい。
【0016】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部には、前記第2主溝から前記外側トレッド端に向かってのび、かつ、前記外側トレッド端に連通することなく終端する第2横溝が設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空気入りタイヤの内側トレッド部には、内側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる第1主溝と、タイヤ赤道側をタイヤ周方向に連続してのびる第2主溝とが設けられている。第1主溝及び第2主溝は、ウェット走行時、内側トレッド部と路面との間の水を効果的に排出し、ハイドロプレーニング現象を防止することができる。
【0018】
外側トレッド部には、他の溝と連通しない複数のスロットが設けられている。スロットが設けられた外側トレッド部は、タイヤ走行時の変形によって比較的早期に発熱し、ひいてはサーキット等で高いグリップ力を発揮し得る。また、スロットは、他の溝と連通していないため、外側トレッド部の過度な剛性低下を防止できる。これは、外側トレッド部の耐偏摩耗性の向上に役立つ。
【0019】
スロットは、深さが5mm以上の複数の深底スロットを含む。このような深底スロットは、公道でのウェット走行時、排水効果が期待できる。一方、深底スロットのトレッド踏面での開口面積の総和は、外側トレッド部の全ての溝及びスロットを埋めて得られる外側トレッド表面積の5%以下である。これにより、外側トレッド部の過度な剛性低下が防止され、ひいてはサーキット走行時の外側トレッド部の耐偏摩耗性がさらに高められる。
【0020】
以上のように、本発明の空気入りタイヤは、ドライ性能、ウェット性能、及び、耐偏摩耗性をバランス良く高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1の内側トレッド部の拡大図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4図1の外側トレッド部の拡大図である。
図5図4のスロットの拡大図である。
図6】(a)は、図4のB−B線断面図であり、(b)は、図4のC−C線断面図である。
図7】本発明の他の実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
図8】本発明の他の実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
図9】(a)は、図8のD−D線断面図であり、(b)は、図8のE−E線断面図である。
図10】比較例1の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1のトレッド部2の展開図である。本実施形態の空気入りタイヤ1は、例えば、乗用車用として使用され、とりわけ公道での通常走行を可能としつつサーキット等でのスポーツ走行を重視した高性能空気入りタイヤとして好適に使用される。
【0023】
図1に示されるように、トレッド部2は、車両への装着の向きが指定されたトレッドパターンを具えている。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)等に文字やマークで表示されている。図1において、タイヤ1が車両に装着された場合、右側が車両内側に対応し、左側が車両外側に対応している。
【0024】
車両への装着の向きが指定されることにより、トレッド部2は、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Te1と、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Te2とを有している。
【0025】
各トレッド端Te1、Te2は、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0026】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0027】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0028】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0029】
トレッド部2は、タイヤ赤道Cと内側トレッド端Te1との間の内側トレッド部5と、タイヤ赤道Cと外側トレッド端Te2との間の外側トレッド部6とを含んでいる。
【0030】
図2には、図1の内側トレッド部5の拡大図が示されている。図2に示されるように、内側トレッド部5には、内側トレッド端Te1側をタイヤ周方向に連続してのびる第1主溝11と、タイヤ赤道C側をタイヤ周方向に連続してのびる第2主溝12とが設けられている。第1主溝11及び第2主溝12は、ウェット走行時、内側トレッド部5と路面との間の水を効果的に排出し、高速走行時のハイドロプレーニング現象を防止することができる。
【0031】
主溝11、12は、例えば、タイヤ周方向に沿って直線状にのびている。また、本実施形態の主溝11、12は、例えば、一定の溝幅でのびている。但し、主溝11、12は、このような態様に限定されるものではなく、ジグザグ状若しくは波状にのびる態様、又は、溝幅が増減しながらのびる態様でも良い。
【0032】
第1主溝11は、例えば、タイヤ赤道Cから、タイヤ軸方向距離L1を隔てた位置に溝中心線11cを有している。前記タイヤ軸方向距離L1は、望ましくは内側トレッド部5の幅W1の0.40倍以上、より望ましくは0.50倍以上であり、望ましくは0.70倍以下、より望ましくは0.60倍以下である。これにより、第1主溝11の位置が最適化され、タイヤ赤道C付近のパターン剛性と、内側トレッド端Te1付近のパターン剛性とがバランス良く確保される。なお、内側トレッド部5の幅W1は、前記正規状態におけるタイヤ赤道Cから内側トレッド端Te1までのタイヤ軸方向の長さを意味する。溝中心線は、トレッド平面視において、一対の溝縁間の中心位置を通る線を意味する。
【0033】
第2主溝12は、例えば、タイヤ赤道Cから、タイヤ軸方向距離L2を隔てた位置に溝中心線12cを有している。前記タイヤ軸方向距離L2は、望ましくは内側トレッド部5の幅W1の0.05倍以上、より望ましくは0.10倍以上であり、望ましくは0.20倍以下、より望ましくは0.15倍以下である。このような第2主溝12は、ウェット走行時、タイヤ赤道C付近の水膜を効果的にタイヤ外方に排出する。
【0034】
図3には、第1主溝11及び第2主溝12のA−A線断面図が示されている。図3に示されるように、第1主溝11及び第2主溝12は、それぞれ、一対の溝壁20を有している。各溝壁20は、溝底部23からトレッド法線に対して10°以下の角度θ1で溝幅を広げる向きにタイヤ半径方向外側にのびている。
【0035】
第1主溝11及び第2主溝12の少なくとも一方は、一対の溝壁20のうち、内側トレッド端Te1側に位置する第1溝壁21のトレッド踏面側に、溝幅をさらに広げる向きにのびる面取り斜面24が設けられている。本実施形態では、第1主溝11及び第2主溝12の両方に面取り斜面24が設けられている。さらに望ましい態様として、第1主溝11と第2主溝12とは、実質的に同一の断面形状を有している。面取り斜面24は、陸部の横剛性を維持しつつ、主溝の容積を増加させるため、ドライ性能とウェット性能とがバランス良く高められる。また、面取り斜面24は、主溝の溝縁の偏摩耗を抑制するのにも役立つ。
【0036】
上述の効果をさらに高めるために、面取り斜面24のトレッド法線に対する角度θ2は、好ましくは30°以上、より好ましくは40°以上であり、好ましくは80°以下、より好ましくは70°以下である。
【0037】
サーキット等でのドライ性能と公道でのウェット性能とを確保するために、第1主溝11の溝深さd1及び第2主溝12の溝深さd2は、例えば、4.0〜10.0mmが望ましく、さらに望ましくは5.0〜7.0mmである。図2に示されるように、第1主溝11の溝幅W2及び第2主溝12の溝幅W3は、例えば、内側トレッド部5の幅W1の0.10〜0.15倍であるのが望ましい。
【0038】
図2に示されるように、内側トレッド部5は、例えば、第1主溝11と第2主溝12との間に、溝及びサイプのいずれもが設けられていないプレーンリブ25を具えているのが望ましい。プレーンリブ25の踏面のタイヤ軸方向の幅W4は、例えば、内側トレッド部5の幅W1の0.15〜0.25倍であるのが望ましい。このようなプレーンリブ25は、高い剛性を有し、例えば、サーキット走行時の操縦安定性を高めるのに役立つ。
【0039】
さらに望ましい態様として、本実施形態の内側トレッド部5には、上述した主溝11、12、に加え、内側トレッド端Te1側に設けられた複数の第1横溝13と、タイヤ赤道C側に設けられた複数の第2横溝14とが設けられている。
【0040】
第1横溝13は、例えば、一端が内側トレッド端Te1に連通し、他端が第1主溝11には連通していない。このような第1横溝13は、ウェット性能及び内側トレッド端Te1付近の耐偏摩耗性を高めることができる。
【0041】
第2横溝14は、例えば、第2主溝12からタイヤ赤道C側に向かってのび、外側トレッド部6までのびている。本実施形態の第2横溝14は、さらに、外側トレッド端Te2(図1に示す)側に向かってのび、外側トレッド端Te2に連通することなく終端している。このような第2横溝14は、タイヤ赤道C付近の排水性を効果的に高めることができる。
【0042】
より望ましい態様として、本実施形態の第2横溝14は、溝深さが5mm以上の深底第2横溝14Aと、溝深さが5mm未満の浅底第2横溝14Bとを含んでいる。深底第2横溝14Aと浅底第2横溝14Bとは、例えば、タイヤ周方向に交互に設けられているのが望ましい。
【0043】
本実施形態の第1横溝13及び第2横溝14は、それぞれ、タイヤ軸方向に沿って直線状にのびている。また、第1横溝13及び第2横溝14は、それぞれ、一定の溝幅でのびている。このような第1横溝13及び第2横溝14は、内側トレッド部5の耐偏摩耗性を高めるのに役立つ。
【0044】
ドライ性能とウェット性能とをバランス良く高めるために、第1横溝13の溝長さL3及び第2横溝14の溝長さL4は、例えば、内側トレッド部5の幅W1の0.25〜0.30倍であるのが望ましい。第1横溝13の溝幅W5及び第2横溝14の溝幅W6は、例えば、内側トレッド部5の幅W1の0.05〜0.10倍であるのが望ましい。
【0045】
図4には、外側トレッド部6の拡大図が示されている。図4に示されるように、外側トレッド部6には、他の溝と連通しない複数のスロット15が設けられている。スロット15が設けられた外側トレッド部6は、タイヤ走行時の変形によって比較的早期に発熱し、ひいてはサーキット等で高いグリップ力を発揮し得る。また、スロット15は、他の溝と連通していないため、外側トレッド部6の過度な剛性低下を防止できる。これは、外側トレッド部6の耐偏摩耗性の向上に役立つ。
【0046】
スロット15は、深さが5mm以上の複数の深底スロット16を含んでいる。なお、本明細書において、深底スロット16は、少なくとも最大の深さが5mm以上に構成されたスロット15を意味する。理解し易いように、図4において、深底スロット16は、着色されている。このような深底スロット16は、公道でのウェット走行時、排水効果が期待できる。本実施形態の深底スロット16の最大の深さは、例えば、5.0〜10.0mmが望ましく、より望ましくは5.0〜7.0mmである。
【0047】
深底スロット16のトレッド踏面での開口面積の総和は、外側トレッド表面積の5%以下である。これにより、外側トレッド部6の過度な剛性低下が防止され、ひいてはサーキット走行時の外側トレッド部6の耐偏摩耗性がさらに高められる。なお、外側トレッド表面積とは、外側トレッド部6に配された、溝、サイプ、スロット等の凹み部分を全て埋めて得られる外側トレッド部6の外面の表面積を意味する。
【0048】
ウェット性能と耐偏摩耗性とを両立させるために、深底スロット16の前記開口面積の総和は、好ましくは前記外側トレッド表面積の4.5%以下、より好ましくは4.0%以下であり、好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.5%以上である。
【0049】
スロット15は、さらに、深さが5mm未満の複数の浅底スロット17を含んでいる。なお、本明細書において、浅底スロット17は、少なくとも最大の深さが5mm未満に構成されたスロット15を意味する。本実施形態の浅底スロット17の最大の深さは、例えば、3.5〜4.5mmとされている。
【0050】
浅底スロット17のトレッド踏面での開口面積の総和は、外側トレッド表面積の好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上であり、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下である。これにより、公道でのウェット性能が確保されつつ、優れたドライ性能が得られる。
【0051】
より望ましい態様として、外側トレッド端Te2を含む外側領域18には、深底スロット16が設けられておらず、浅底スロット17のみが設けられている。これにより、スロット15による外側領域18の剛性低下を最小限に抑制でき、ひいては優れたドライ性能及び耐偏摩耗性が期待できる。本実施形態では、浅底スロット17のみが設けられた外側領域18は、外側トレッド部6の幅W7の少なくとも35%の幅W8(境界36が2点鎖線で示される。)を有している。外側領域18の幅W8が確保されることにより、とりわけサーキット走行時の旋回性能が高められる。
【0052】
以下、各スロット15のさらに詳細な構成が説明される。図5には、スロット15の拡大図が示されている。図5に示されるように、スロット15のトレッド踏面での開口輪郭26は、例えば、直線部分を含まない円弧で形成されているのが望ましい。このようなスロット15は、その縁の偏摩耗を防止することができる。
【0053】
本実施形態のスロット15の開口輪郭26は、その重心27が、スロット15のタイヤ軸方向の中心28よりもタイヤ軸方向外側に位置する卵型形状であるのが望ましい。このようなスロット15は、外側トレッド部6に大きな荷重が作用した場合でも、縁が柔軟に変形し、ひいてはその偏摩耗を抑制することができる。但し、スロット15の開口輪郭26は、このような態様に限定されるものではなく、円形、楕円形、長円形等、種々の形状を採用し得る。
【0054】
各スロット15のタイヤ軸方向の長さL5は、好ましくは外側トレッド部6のタイヤ軸方向の幅W7(図4に示す)の5%以上、より好ましくは8%以上であり、好ましくは30%以下、より好ましくは15%以下である。
【0055】
各スロット15のタイヤ周方向の長さL6は、好ましくは前記タイヤ軸方向の長さL5の30%以上、より好ましくは50%以上であり、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下である。
【0056】
このような各スロット15は、外側トレッド部6の剛性を維持して優れたドライ性能を発揮しつつ、公道での十分なウェット性能を確保することができる。
【0057】
図6(a)には、図4の深底スロット16のB−B線断面図が示されている。図6(b)には、浅底スロット17のC−C線断面図が示されている。図6(a)及び(b)に示されるように、深底スロット16及び浅底スロット17は、例えば、タイヤ赤道C側(図6(a)及び(b)では右側である。)に配された傾斜面30を有している。傾斜面30は、スロットの底部からタイヤ赤道C側に向かって深さが漸減している。
【0058】
傾斜面30のタイヤ軸方向の長さL7は、例えば、スロット15のタイヤ軸方向の長さL5の50〜90%を構成している。このような傾斜面30は、スロット15のタイヤ赤道C側の縁の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0059】
深底スロット16の傾斜面30aのトレッド法線に対する角度θ3は、浅底スロット17の傾斜面30bのトレッド法線に対する角度θ4よりも小さいのが望ましい。このような深底スロット16は、さらに高い排水性を発揮することができる。具体的には、前記角度θ3は、例えば、40〜60°であるのが望ましい。前記角度θ4は、例えば、65〜75°であるのが望ましい。
【0060】
図7及び図8には、それぞれ、本発明の他の実施形態の空気入りタイヤのトレッド部2の展開図が示されている。図7及び図8において、上述した実施形態と共通する構成には、同一の符号が付されている。
【0061】
図7に示される実施形態では、外側トレッド部6には、上述したスロット15以外には、溝が設けられていない。さらに、この実施形態の内側トレッド部5には、第1主溝11及び第2主溝12のみが設けられ、横溝が設けられていない。このような実施形態のタイヤ1は、外側トレッド部6が高い剛性を有し、サーキット等でより優れたドライ性能を発揮することができる。
【0062】
図8に示される実施形態では、外側トレッド部6に長円形状のスロット15が設けられている。本実施形態では、タイヤ軸方向に沿ってのびるスロット15とタイヤ軸方向に対して斜めにのびるスロット15とが設けられている。具体的には、タイヤ軸方向に沿ってのびるスロット15がタイヤ軸方向に2つ並んだスロット対33がタイヤ周方向に複数設けられている。また、タイヤ周方向で隣り合うスロット対33の間に、斜めにのびるスロット15が設けられている。
【0063】
図9(a)には、図8の深底スロット16のD−D線断面図が示されている。図9(b)には、図8の浅底スロット17のE−E線断面図が示されている。図9(a)及び(b)に示されるように、この実施形態の深底スロット16は、外側トレッド端Te2側に設けられた5mm以上の深さを有する第1部分31と、タイヤ赤道C側に設けられかつ5mm未満の一定深さでタイヤ軸方向にのびる第2部分32とを含んでいる。また、この実施形態の浅底スロット17は、深底スロット16の第2部分32と実質的に同じ深さを有している。
【0064】
このような深底スロット16及び浅底スロット17は、外側トレッド部6の剛性低下を最小限に抑制し、より高いドライ性能を期待することができる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0066】
図1図7及び図8のいずれかの基本トレッドパターンを有するサイズ205/55R16の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1として、図10に示されるタイヤが試作された。比較例2として、図1のトレッドパターンを有し、かつ、深底スロットの開口面積の総和が、外側トレッド表面積の5%を超えているタイヤが試作された。比較例1及び2のタイヤは、上記の相違点を除き、実質的に実施例のタイヤと同一の構成を有している。各テストタイヤのドライ性能、ウェット性能、及び、耐偏摩耗性がテストされた。
装着リム:16×7.0JJ
タイヤ内圧:200kPa
【0067】
<ドライ性能>
上記テストタイヤを全輪に装着した排気量2000ccのFR車両でアスファルトの周回コースを走行したときのドライ性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ性能が優れていることを示す。
【0068】
<ウェット性能>
インサイドドラム試験機が用いられ、各テストタイヤが下記の条件で水深5.0mmのドラム面上を走行したときのハイドロプレーニング現象の発生速度が測定された。結果は、比較例1を100とする指数であり、数値が大きい程、前記発生速度が高く、ウェット性能が優れていることを示す。
スリップ角:1.0°
縦荷重:4.2kN
【0069】
<耐偏摩耗性>
上記テスト車両で一定距離走行後、タイヤ赤道での陸部の摩耗量と、外側トレッド端での陸部の摩耗量との差が測定された。結果は、比較例1を100とする指数であり、数値が小さい程、タイヤ赤道及び外側トレッド端での摩耗量が均一であり、耐偏摩耗性が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0070】
【表1】
【0071】
テストの結果、実施例の空気入りタイヤは、ドライ性能、ウェット性能、及び、耐偏摩耗性がバランス良く高められていることが確認できた。
【符号の説明】
【0072】
2 トレッド部
5 内側トレッド部
6 外側トレッド部
11 第1主溝
12 第2主溝
15 スロット
16 深底スロット
C タイヤ赤道
Te1 内側トレッド端
Te2 外側トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10