特許第6805655号(P6805655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805655
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20201214BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20201214BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 657D
   H01L29/78 652K
   H01L29/78 655G
   H01L29/06 301R
   H01L29/78 652D
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 655B
   H01L29/78 653A
   H01L29/91 D
   H01L29/91 F
   H01L29/91 L
   H01L27/06 102A
   H01L27/088 E
   H01L29/06 301V
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-175099(P2016-175099)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-41845(P2018-41845A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−048230(JP,A)
【文献】 特開2007−311627(JP,A)
【文献】 特開2015−072999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/8234
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板の内部において前記ドリフト領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりも不純物濃度の高い第1導電型のエミッタ領域と、
前記半導体基板の内部において前記エミッタ領域と前記ドリフト領域の間に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板の内部において前記ベース領域と前記ドリフト領域の間に設けられ、前記ドリフト領域よりも不純物濃度の高い第1導電型の蓄積領域と、
前記半導体基板の上面から前記エミッタ領域、前記ベース領域および前記蓄積領域を貫通して設けられ、内部に導電部が設けられた複数のトレンチ部と
を備え、
前記蓄積領域の前記半導体基板の深さ方向における長さが1.5μm未満であり、
前記蓄積領域の前記半導体基板の深さ方向における不純物濃度分布は、不純物濃度が略一定の平坦領域を有している半導体装置。
【請求項2】
前記蓄積領域における不純物濃度を、前記半導体基板の深さ方向に積分した積分濃度が、1.2×1013/cm以上、1.8×1013/cm以下である
請求項1に記載の半導体装置
【請求項3】
前記平坦領域の前記半導体基板の深さ方向における長さは、前記蓄積領域の前記半導体基板の深さ方向における長さの半分以上である
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記平坦領域の不純物濃度分布は、複数のピークを有する
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の半導体装置において、p型のベース領域の下方に、高濃度のn型領域を形成した構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1 特開2007−311627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高濃度のn型領域を設けたIGBT等の半導体装置において、ターンオンdi/dtを大きくしすぎずに各特性を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つ態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板備えてよい。半導体装置は、半導体基板の内部においてドリフト領域の上方に設けられ、ドリフト領域よりも不純物濃度の高い第1導電型のエミッタ領域を備えてよい。半導体装置は、半導体基板の内部においてエミッタ領域とドリフト領域の間に設けられた第2導電型のベース領域を備えてよい。半導体装置は、半導体基板の内部においてベース領域とドリフト領域の間に設けられ、ドリフト領域よりも不純物濃度の高い第1導電型の蓄積領域を備えてよい。半導体装置は、半導体基板の上面からエミッタ領域、ベース領域および蓄積領域を貫通して設けられ、内部に導電部が設けられた複数のトレンチ部を備えてよい。蓄積領域の半導体基板の深さ方向における長さが1.5μm未満であってよい。
【0005】
蓄積領域における不純物濃度を、半導体基板の深さ方向に積分した積分濃度が、1.2×1013/cm以上、1.8×1013/cm以下であってよい。蓄積領域の半導体基板の深さ方向における不純物濃度分布は、不純物濃度が略一定の平坦領域を有していてよい。平坦領域の半導体基板の深さ方向における長さは、蓄積領域の半導体基板の深さ方向における長さの半分以上であってよい。
【0006】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面を部分的に示す図である。
図2図1におけるa−a'断面の一例を示す図である。
図3図2に示すb−b断面の深さ方向における不純物濃度分布を示す図である。
図4】深さ方向における不純物濃度分布の他の例を示す図である。
図5】蓄積領域16の平坦領域における、深さ方向の不純物濃度分布の一例を示す図である。
図6】半導体装置100におけるオン電圧Vonと、ターンオフ損失Eoffとの関係を示す図である。
図7】半導体装置100における内蔵ダイオードの順方向電圧Vfと、ターンオン損失Eoffとの関係を示す図である。
図8】半導体装置100におけるターンオン損失Eonと、ターンオフdi/dtとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、IGBT等のトランジスタを含むトランジスタ部70、および、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含むダイオード部80を有する半導体チップである。ダイオード部80は、半導体基板の上面においてトランジスタ部70と隣接して形成される。図1においてはチップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
【0010】
また、図1においては半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んで耐圧構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。耐圧構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。耐圧構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0011】
本例の半導体装置100は、半導体基板の上面側の内部に形成されたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。また、本例の半導体装置100は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート電極50を備える。エミッタ電極52およびゲート電極50は互いに分離して設けられる。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、トレンチ部の一例である。
【0012】
エミッタ電極52およびゲート電極50と、半導体基板の上面との間には層間絶縁膜が形成されるが、図1では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール58、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して形成される。
【0013】
エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56およびコンタクトホール58を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部21および接続部25が設けられてよい。接続部21および接続部25は、半導体基板の上面に形成される。
【0014】
ゲート電極50は、コンタクトホール49を通って、ゲート配線48と接触する。ゲート配線48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲート配線48は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲート配線48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例のゲート配線48は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部まで形成される。ゲートトレンチ部40の先端部においてゲート導電部は半導体基板の上面に露出しており、ゲート配線48と接触する。
【0015】
エミッタ電極52およびゲート電極50は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミまたはアルミシリコン合金で形成される。各電極は、アルミ等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよく、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
【0016】
1以上のゲートトレンチ部40および1以上のダミートレンチ部30は、トランジスタ部70の領域において所定の配列方向に沿って所定の間隔で配列される。トランジスタ部70においては、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に形成されてよい。
【0017】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分と、2つの延伸部分を接続する接続部分を有してよい。接続部分の少なくとも一部は曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分の端部を接続することで、延伸部分の端部における電界集中を緩和できる。ゲート配線48は、ゲートトレンチ部40の接続部分において、ゲート導電部と接続してよい。
【0018】
本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部分の間に設けられる。これらのダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよい。
【0019】
なお、トランジスタ部70において、ダイオード部80との境界には、複数のダミートレンチ部30が連続して配列されてよい。境界部分に形成されるダミートレンチ部30も、延伸部分と接続部分とを有してよい。接続部分を有するダミートレンチ部30と、直線形状のダミートレンチ部30の延伸方向における長さは同一であってよい。
【0020】
ダイオード部80との境界において連続して配列されるダミートレンチ部30の数は、ダイオード部80と離れたトランジスタ部70の内側において連続して配列されるダミートレンチ部30の数よりも多くてよい。なお、トレンチ部の数とは、配列方向に配列されたトレンチ部の延伸部分の数を指す。
【0021】
図1の例では、ダイオード部80との境界におけるトランジスタ部70では、2本のダミートレンチ部30が連続して配列されている。これに対して、トランジスタ部70の内側では、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30が1本ずつ交互に配列されている。
【0022】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に形成される。ウェル領域11は、ゲート電極50が設けられる側の活性領域の端部から、所定の範囲で形成される。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート電極50側の一部の領域はウェル領域11に形成される。ダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域11に覆われていてよい。
【0023】
各トレンチ部に挟まれたメサ部には、ベース領域14が形成される。ベース領域14は、ウェル領域11よりも不純物濃度の低い第2導電型である。本例のベース領域14はP−型である。
【0024】
メサ部のベース領域14の上面には、ベース領域14よりも不純物濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が形成される。本例のコンタクト領域15はP+型である。また、トランジスタ部70においては、コンタクト領域15の上面の一部に、半導体基板よりも不純物濃度が高い第1導電型のエミッタ領域12が選択的に形成される。本例のエミッタ領域12はN+型である。
【0025】
コンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、隣接する一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで形成される。トランジスタ部70の1以上のコンタクト領域15および1以上のエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向に沿って交互にメサ部の上面に露出するように形成される。
【0026】
他の例においては、トランジスタ部70におけるメサ部には、コンタクト領域15およびエミッタ領域12が延伸方向に沿ってストライプ状に形成されていてもよい。例えばトレンチ部に隣接する領域にエミッタ領域12が形成され、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が形成される。
【0027】
ダイオード部80のメサ部には、エミッタ領域12が形成されていない。また、ダイオード部80のメサ部には、トランジスタ部70における少なくとも一つのコンタクト領域15と対向する領域にコンタクト領域15が形成される。
【0028】
トランジスタ部70において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に形成される。コンタクトホール54は、ベース領域14およびウェル領域11に対応する領域には形成されない。
【0029】
ダイオード部80において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびベース領域14の上方に形成される。本例のコンタクトホール54は、ダイオード部80のメサ部における複数のベース領域14のうち、最もゲート電極50に近いベース領域14に対しては形成されない。本例においてトランジスタ部70のコンタクトホール54と、ダイオード部80のコンタクトホール54とは、各トレンチ部の延伸方向において同一の長さを有する。
【0030】
図2は、図1におけるa−a'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面に形成される。
【0031】
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面に形成される。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向と称する。
【0032】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。半導体基板10の上面側には、P−型のベース領域14が形成される。
【0033】
当該断面において、トランジスタ部70の上面側には、N+型のエミッタ領域12、P−型のベース領域14およびN+型の蓄積領域16が、半導体基板10の上面側から順番に形成される。
【0034】
当該断面において、ダイオード部80の上面側には、P−型のベース領域14が形成されている。ダイオード部80には、蓄積領域16が形成されていない。また、トランジスタ部70と隣接するメサ部の上面には、コンタクト領域15が形成されている。
【0035】
トランジスタ部70において、蓄積領域16の下面にはN−型のドリフト領域18が形成される。ドリフト領域18とベース領域14との間に、ドリフト領域18よりも高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
【0036】
蓄積領域16は、トランジスタ部70の各メサ部に形成される。蓄積領域16は、各メサ部におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。ダイオード部80において、ベース領域14の下面には、ドリフト領域18が形成される。トランジスタ部70およびダイオード部80の双方において、ドリフト領域18の下面にはN+型のバッファ領域20が形成される。
【0037】
バッファ領域20は、ドリフト領域18の下面側に形成される。バッファ領域20の不純物濃度は、ドリフト領域18の不純物濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0038】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下面には、P+型のコレクタ領域22が形成される。ダイオード部80において、バッファ領域20の下面には、N+型のカソード領域82が形成される。
【0039】
半導体基板10の上面側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が形成される。各トレンチ部は、半導体基板10の上面から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達する。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部が不純物領域を貫通するとは、不純物領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間に不純物領域を形成したものも、トレンチ部が不純物領域を貫通しているものに含まれる。
【0040】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面側に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0041】
ゲート導電部44は、深さ方向において、少なくとも隣接するベース領域14と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層にチャネルが形成される。
【0042】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。当該断面におけるダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜38により覆われる。
【0043】
図3は、図2に示すb−b断面の深さ方向における不純物濃度分布を示す図である。図3のように、不純物の濃度を示す図の縦軸は対数軸である。本明細書において不純物濃度とは、ドナーまたはアクセプタ化した不純物の濃度を指す。図3に示す不純物濃度は、ドナーおよびアクセプタの濃度差に対応する。
【0044】
深さ方向における蓄積領域16の長さをL1とする。蓄積領域16の上端は、ベース領域14との境界部分であり、図3に示す不純物濃度分布においては極小値を示す位置である。蓄積領域16の下端は、ドリフト領域18との境界部分である。ただし、蓄積領域16とドリフト領域18との境界が不明瞭な場合には、蓄積領域16の下端として、蓄積領域16における不純物濃度の最大値に対して不純物濃度が1/10となる位置を用いてよく、不純物濃度が1/2となる位置を用いてもよい。
【0045】
蓄積領域16を設けることで、半導体装置100のオン電圧Vonを低減することができる。ただし、蓄積領域16を深く形成しすぎると、ターンオン時における電流変化の傾きを示すdi/dtが大きくなりすぎてしまい、回路の動作が不安定になってしまう。このため本例における蓄積領域16の長さLは、1.5μm未満である。これにより、蓄積領域16を設けたことによってオン電圧Von等の特性を改善しつつ、di/dtが大きくなりすぎることを抑制できる。なお、長さLの下限は、0.5μm程度であってよく、0.8μm程度であってもよい。
【0046】
図4は、深さ方向における不純物濃度分布の他の例を示す図である。本例の蓄積領域16は、深さ方向における不純物濃度分布が略一定の平坦領域を有してよい。深さ方向における平坦領域の長さをL2とする。平坦領域の長さL2は、蓄積領域16の全体の長さL1とほぼ等しくてよい。平坦領域の長さL2は、蓄積領域16の長さL1の半分以上であってよく、70%以上であってよく、90%以上であってもよい。
【0047】
このように、蓄積領域16に平坦領域を設けることで、蓄積領域16を全体的に高濃度化することができる。これにより、深さ方向における長さが短く形成された蓄積領域16を用いても、蓄積領域16の積分濃度を高くすることが容易になる。このため、ターンオンdi/dtを高くしすぎずに、オン電圧Von等の特性を改善することができる。
【0048】
例えば蓄積領域16における積分濃度は、1.0×1013/cm以上、1.8×1013/cm以下である。積分濃度の上限は、1.3×1013/cmであってもよい。このような範囲に積分濃度を設定することで、オン電圧Von等の特性を改善しつつ、di/dtが大きくなりすぎることを抑制できる。本例の平坦領域における不純物濃度は1.0×1017/cmであり、長さL2は1.3μmである。蓄積領域16における積分濃度は、平坦領域における積分濃度とほぼ等しく、1.3×1013/cm程度である。
【0049】
図5は、蓄積領域16の平坦領域における、深さ方向の不純物濃度分布の一例を示す図である。平坦領域における不純物濃度分布は、厳密に一定の不純物濃度を有さなくともよい。平坦領域は、蓄積領域16における不純物濃度のピークPを含む深さ方向に連続した領域であって、且つ、ピークPに対して不純物濃度が所定の変動範囲ΔD内である領域である。変動範囲ΔDは、ピークPの不純物濃度の50%以上の範囲であってよく、70%以上の範囲であってよく、90%以上の範囲であってもよい。
【0050】
また、平坦領域の不純物濃度分布は、複数のピークPを有してよい。図5の例では3つピークP1、P2、P3を有している。平坦領域が複数のピークPを有することで、イオン注入によって蓄積領域16を形成する場合に、平坦領域を容易に形成することができる。例えば、複数のピークPの位置のそれぞれに対して、プロトンまたはリンイオン等の不純物イオンを注入することで、平坦領域を容易に形成することができる。この場合、2つのピーク間における不純物濃度も変動範囲ΔD内となるように、それぞれのピークPの間隔を調整することが好ましい。
【0051】
図6は、半導体装置100におけるオン電圧Vonと、ターンオフ損失Eoffとの関係を示す図である。本例では、図4に示したように、蓄積領域16に平坦領域を有する半導体装置100の例を示している。図6のグラフにおいて四角で示されるプロットは、平坦領域の不純物濃度が1.0×1017/cm、長さL2が1.3μmの例であり、丸で示されるプロットは、平坦領域の不純物濃度が1.0×1017/cm、長さL2が0.8μmの例である。また、図3の例の半導体装置を×印のプロットで示している。
【0052】
図6に示すように、平坦な蓄積領域16を設けることで、オン電圧Vonを低減できる。また、蓄積領域16を長く形成することで、よりオン電圧Vonが低減されている。
【0053】
図7は、半導体装置100における内蔵ダイオードの順方向電圧Vfと、ターンオン損失Eonとの関係を示す図である。図7における各プロットは、図6における各プロットと対応している。図7に示すように、蓄積領域16を設けることで、同一の順方向電圧Vfに対するターンオン損失Eonを低減できる。
【0054】
図8は、半導体装置100におけるターンオン損失Eonと、ターンオンdi/dtとの関係を示す図である。図8においては、図6および図7に示した例に加えて、平坦領域の不純物濃度が1.0×1017/cm、長さL2が2.3μmの比較例を三角のプロットで示している。
【0055】
図8に示すように、蓄積領域16を長くしすぎると、ターンオンdi/dtが大きくなりすぎてしまう。このため、蓄積領域16の長さLは、1.5μm未満であることが好ましい。また、蓄積領域16における平坦領域の長さL2が、1.5μm未満であってもよい。蓄積領域16の長さLは、1.3μm以下であってもよい。また、蓄積領域16における平坦領域の長さL2が、1.3μm以下であってもよい。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0057】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・接続部、22・・・コレクタ領域、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、30・・・ダミートレンチ部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、48・・・ゲート配線、49・・・コンタクトホール、50・・・ゲート電極、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、56、58・・・コンタクトホール、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、82・・・カソード領域、100・・・半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8