特許第6805670号(P6805670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805670
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】赤外線レンズモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20201214BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20201214BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G02B7/02 D
   G03B15/00 V
   H04N5/225 400
   H04N5/225 700
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-182107(P2016-182107)
(22)【出願日】2016年9月16日
(65)【公開番号】特開2018-45203(P2018-45203A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 幹人
(72)【発明者】
【氏名】山口 遼太
(72)【発明者】
【氏名】加原 明徳
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−077694(JP,A)
【文献】 特開2014−182071(JP,A)
【文献】 特開2003−298892(JP,A)
【文献】 特開2013−206204(JP,A)
【文献】 特開2005−017312(JP,A)
【文献】 特開2008−176078(JP,A)
【文献】 特開2007−316167(JP,A)
【文献】 特開2012−205259(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0138357(US,A1)
【文献】 中国実用新案第205103485(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 15/00
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を透過するレンズと、
前記レンズを保持する鏡筒と、を備え、
前記レンズは、
赤外線が入射する側の面である入射面と、
前記入射面とは反対側の面である裏面とを含み、
前記鏡筒は、
前記レンズの前記入射面側に位置し、前記レンズへの光の入射範囲を規定する規定面と、
前記規定面に接続され、前記レンズの前記入射面側における前記レンズの光軸に沿った高さが最も高い領域を含む端面と、を含み、
前記レンズの光軸を含む断面において、前記端面に沿う面と前記光軸とのなす角は鋭角であり、前記光軸に沿う方向における前記規定面の高さhを前記レンズの有効径Dで除した値であるh/Dが0.135以下であり、かつ前記光軸に垂直な面と前記端面に沿う面とのなす角θが12°以上であり、
前記レンズの光軸を含む断面において、前記端面に沿う面と前記光軸とのなす角は、前記規定面に沿う面と前記光軸とのなす角よりも大きい、赤外線レンズモジュール。
【請求項2】
前記レンズを構成する材料は硫化亜鉛である、請求項1に記載の赤外線レンズモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線レンズモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線による撮像を行うための赤外線カメラには、赤外線を透過するレンズを備える赤外線レンズモジュールが用いられる。赤外線カメラは、たとえば車載カメラとして用いることができる。車載カメラは、車両の外部に設置されることが多く、カメラの前面に雨滴、塵埃等の異物が付着する場合がある。カメラの前面にこのような異物が付着すると、車載カメラにて撮影された映像に異物が映り込み、鮮明な画像が得られないという問題が生じる。
【0003】
これに対し、レンズモジュールにワイパー装置、送風装置、清掃装置などを設置して、異物を除去する技術が提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−81097号公報
【特許文献2】特開2012−168457号公報
【特許文献1】特開2012−35654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された対応策では、レンズモジュールに異物を除去するための新たな装置を設置する必要がある。そのため、レンズモジュールの製造コストが上昇するという問題が生じる。
【0006】
そこで、製造コストの上昇を抑制しつつ、レンズ表面に付着する異物を除去することが可能な赤外線レンズモジュールを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従った赤外線レンズモジュールは、赤外線を透過するレンズと、レンズを保持する鏡筒と、を備える。レンズは、赤外線が入射する側の面である入射面と、入射面とは反対側の面である裏面とを含む。鏡筒は、レンズの入射面側に位置し、レンズへの光の入射範囲を規定する規定面と、規定面に接続され、レンズの入射面側におけるレンズの光軸に沿った高さが最も高い領域を含む端面と、を含む。レンズの光軸を含む断面において、上記端面に沿う面と光軸とのなす角は鋭角である。
【発明の効果】
【0008】
上記赤外線レンズモジュールによれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、レンズ表面に付着する異物を除去することが可能な赤外線レンズモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1における赤外線レンズモジュールの構造を示す概略断面図である。
図2】実施の形態1における赤外線レンズモジュールの構造を示す概略平面図である。
図3】実施の形態2における赤外線レンズモジュールの構造を示す概略平面図である。
図4】実施の形態3における赤外線レンズモジュールの構造を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。本願の赤外線レンズモジュールは、赤外線を透過するレンズと、レンズを保持する鏡筒と、を備える。レンズは、赤外線が入射する側の面である入射面と、入射面とは反対側の面である裏面とを含む。鏡筒は、レンズの入射面側に位置し、レンズへの光の入射範囲を規定する規定面と、規定面に接続され、レンズの入射面側におけるレンズの光軸に沿った高さが最も高い領域を含む端面と、を含む。レンズの光軸を含む断面において、上記端面に沿う面と光軸とのなす角は鋭角である。
【0011】
本発明者は、新たな装置を設置するのではなく、たとえば車載カメラの構成要素として使用された場合に得られる前方からの気流によって、レンズの表面に付着する異物を除去する方策について検討を行った。その結果、レンズへの光の入射範囲を規定する規定面と規定面に接続される端面とを含む鏡筒が採用される場合、端面に沿う面と光軸とのなす角が鋭角となるような鏡筒の形状を採用することにより、前方からの気流を有効に利用し、レンズの表面に付着する異物を除去可能であることが分かった。
【0012】
本願の赤外線レンズモジュールでは、レンズの光軸を含む断面において、上記端面に沿う面と光軸とのなす角が鋭角となる。その結果、前方からの気流を有効に利用することで、新たな装置を設置することなく、レンズの表面に付着する異物を除去することができる。このように、本願の赤外線レンズモジュールによれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、レンズ表面に付着する異物を除去することが可能な赤外線レンズモジュールを提供することができる。
【0013】
上記赤外線レンズモジュールでは、レンズの光軸を含む断面において、上記端面に沿う面と光軸とのなす角は、上記規定面に沿う面と光軸とのなす角よりも大きくてもよい。このようにすることにより、レンズへの光の入射範囲に影響を与えることなく、レンズの表面に付着する異物を除去することができる。
【0014】
上記赤外線レンズモジュールにおいて、レンズを構成する材料は硫化亜鉛(ZnS)であってもよい。ZnSから構成されるレンズは、温度変化に対する屈折率の変化が小さい。そのため、外部の温度の変化に対して安定な赤外線レンズモジュールを得ることができる。
【0015】
[本願発明の実施形態の詳細]
次に、本発明にかかる赤外線レンズモジュールの一実施の形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1におけるレンズモジュールの、光軸を含む断面を示す概略断面図である。また、図2は、実施の形態1におけるレンズモジュールを入射面側から見た状態を示す概略平面図である。
【0017】
図1および図2を参照して、実施の形態1における赤外線レンズモジュール1は、レンズ10と、鏡筒50とを備える。
【0018】
レンズ10は、赤外線、より具体的には波長8μm以上14μm以下の光を透過する赤外線レンズである。レンズ10を構成する材料は、たとえばZnSである。レンズ10は、入射面としての第1レンズ面11と、裏面である第2レンズ面12と、外周面13とを含む。第1レンズ面11は、中央に位置し、光軸Cと交差する凸面である中央領域11Aと、中央領域11Aを取り囲む平面である外縁領域11Bとを含む。第2レンズ面12は、中央に位置し、光軸Cと交差する凹面である中央領域12Aと、中央領域12Aを取り囲む平面である外縁領域12Bとを含む。
【0019】
鏡筒50は、キャップ20と、鏡筒本体30とを含む。鏡筒本体30は、中空円筒状の形状を有する。鏡筒本体30は、端部において第2レンズ面12の外縁領域12Bおよび外周面13に接触してレンズ10を支持する。本実施の形態において、鏡筒本体30は樹脂またはアルミニウム合金などの金属からなっている。
【0020】
キャップ20は、一方の端部に内周側に突出する突出部29が形成された円筒状の形状を有する。キャップ20は、たとえばアルミニウム合金などの金属からなっている。キャップ20の外周面26は、円筒面形状を有する。キャップ20の突出部29と第1レンズ面11の外縁領域11Bとが接触する。また、突出部29が形成された側とは反対側の端部において鏡筒本体30の端部と嵌め合う状態で、キャップ20は鏡筒本体30に対して固定されている。このようにして、レンズ10は鏡筒50に保持される。
【0021】
キャップ20の内周面は、第1レンズ面11の中央領域11Aと外縁領域11Bとの境界部に接触し、外縁領域11Bから離れるにしたがって内径が小さくなる第1テーパ面21と、第1テーパ面21に接続され、光軸C方向において外縁領域11Bから離れるにしたがって内径が大きくなる第2テーパ面23とを含む。第1テーパ面21と第2テーパ面23とは円環状の第1接続部22において接続されている。第1接続部22が、キャップ20の内周面において最も直径が小さい領域である。第1テーパ面21および第2テーパ面23は、いずれも円錐面形状を有する。第2テーパ面23は、レンズ10の第1レンズ面11側に位置し、レンズ10への光の入射範囲を規定する規定面である。端面25は、第2テーパ面23に円環状の第2接続部24において接続される。端面25は、レンズ10の第1レンズ面11側における光軸Cに沿った高さが最も高い領域である外周面26と端面25との接続部である第3接続部27を含む。
【0022】
そして、端面25に沿う面と光軸Cとのなす角αは鋭角(90°未満)である。すなわち、端面25は、光軸Cに近づくにしたがって、光軸C方向における高さが小さくなっている。別の観点から説明すると、端面25は、内周側に向けて傾斜する円錐面形状を有している。
【0023】
このようなキャップ20の形状を採用することにより、第1レンズ面11に対して光軸C方向からの気流が与えられる場合、第1レンズ面11近傍、特に第1接続部22近傍における風速が大きくなる。その結果、前方からの気流を有効に利用することで、新たな装置を設置することなく、レンズ10の表面に付着する異物を除去することができる。このように、本実施の形態の赤外線レンズモジュール1は、製造コストの上昇を抑制しつつ、レンズ表面に付着する異物を除去することが可能な赤外線レンズモジュールとなっている。
【0024】
また、本実施の形態においては、端面25に沿う面と光軸Cとのなす角αは、第2テーパ面23に沿う面と光軸Cとのなす角βよりも大きい。このような構造が採用されることにより、レンズ10への光の入射範囲に影響を与えることなく、レンズ10の表面に付着する異物を除去することができる。
【0025】
(実施の形態2)
次に、他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図3は、実施の形態2におけるレンズモジュールの概略平面図であって、上記実施の形態1の図2に対応する図である。
【0026】
図3を参照して、実施の形態2における赤外線レンズモジュール1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2の赤外線レンズモジュール1では、キャップ20に溝部31が形成されている点において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0027】
具体的には、実施の形態2の赤外線レンズモジュール1においては、端面25および第2テーパ面23を径方向に貫通する溝部31が形成されている。溝部31は、周方向において等間隔に複数(本実施の形態では4本)形成されている。溝部31は、いずれも光軸C方向から平面的に見て直線状に延在する。このような溝部31を形成することにより、実施の形態2の赤外線レンズモジュール1においては、第1レンズ面11近傍における風速が一層大きくなる。
【0028】
(実施の形態3)
次に、さらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。図4は、実施の形態3におけるレンズモジュールの概略平面図であって、上記実施の形態1および2の図2および図3に対応する図である。
【0029】
図4を参照して、実施の形態4における赤外線レンズモジュール1は、基本的には実施の形態2の場合と同様の構造を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態3の赤外線レンズモジュール1は、溝部31の形状において、実施の形態2の場合とは異なっている。
【0030】
具体的には、実施の形態3の赤外線レンズモジュール1において、溝部31は光軸C方向から平面的に見て曲線状(円弧状)に延在している。このような溝の形状を採用することにより、溝部31内を通過してレンズ10へと光が入射することを抑制することができる。
【0031】
実施の形態2および3のように、αを鋭角にするとともに溝部31を形成することにより、前方からの気流を有効に利用できるが、αが90°の場合であっても溝部31の形成は有効である。溝部31は、たとえば切削加工により形成してもよいし、鍛造による成形や鋳造時の型によって形成してもよい。また、溝部31が形成された部材を別途作製し、当該部材をキャップ20に貼り付けてもよい。このような部材は、たとえば樹脂材料を射出成形することにより作製することができる。
【実施例】
【0032】
上記実施の形態と同様の構造を有するキャップ20において、光軸Cに沿う方向における第1テーパ面21の高さh(単位:mm)、第2テーパ面23の高さh(単位:mm)、光軸Cに垂直な面と端面25に沿う面とのなす角θ(単位:°)を変化させた場合のレンズ面近傍(第1接続部22近傍)における風速を見積もるシミュレーション実験を行った。風速は、第1レンズ面11に対して光軸Cに沿った方向から13.8m/s(時速50kmに相当)の気流が与えられる、との条件の下で導出した。また、実施の形態2の場合と同様の溝部31が形成される場合についても、同様に風速を見積もった。実験結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
表1において、第1テーパ面21および第2テーパ面23の高さは、レンズ10の有効径で除して規格化した値を示している。また、θについては、次の式(1)の関係が成立する。
α=90°−θ・・・(1)
また、h/Dが0である場合とは、第1テーパ面21が存在せず、第2テーパ面23において最も直径の小さい領域が第1レンズ面11に接触する場合を意味する。No.10および11は、実施の形態2と同様の溝部31を形成した場合に対応する。
【0034】
表1を参照して、No.1とNo.4との比較、およびNo.2とNo.5、No.7およびNo.8との比較から、θを正の値とすることにより、すなわちαを鋭角とすることにより、レンズ付近での風速が上昇することが確認される。このことから、αを鋭角とする本願の赤外線レンズモジュールによれば、前方からの気流を有効に利用できることが確認される。また、No.3、No.4およびNo.5の比較から、h/Dを小さくすることにより、レンズ付近での風速が上昇することが確認される。また、No.2、No.5、No.6、No.7、No.8およびNo.9の比較から、h/Dの大小によらず、αを鋭角とすることによりレンズ付近での風速が上昇することが確認できる。また、No.10とNo.11との比較から、溝部31が形成された場合でも、αを鋭角とすることにより、風速が上昇することが確認される。
【0035】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本願の赤外線レンズモジュールは、レンズに異物が付着するおそれがある環境下において使用される赤外線レンズモジュールに、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0037】
1 赤外線レンズモジュール
10 レンズ
11 第1レンズ面
11A 中央領域
11B 外縁領域
12 第2レンズ面
12A 中央領域
12B 外縁領域
13 外周面
20 キャップ
21 第1テーパ面
22 第1接続部
23 第2テーパ面
24 第2接続部
25 端面
26 外周面
27 第3接続部
29 突出部
30 鏡筒本体
31 溝部
50 鏡筒
図1
図2
図3
図4