(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記許容誤差範囲は、前記移動体が走行する走路の走行可能領域であって、前記自己位置における走行可能領域に前記移動体が収まり、かつ前記自己位置から前記経路に沿って所定時間走行した前記移動体の位置における走行可能領域内に前記移動体が収まる範囲に設定される請求項1乃至3の何れか一項に記載の経路選択方法。
前記移動体が前記経路を走行している場合において、前記自己位置誤差範囲が前記許容誤差範囲外となる場合、前記自己位置誤差範囲が前記許容誤差範囲内となる新たな経路を選択する請求項1乃至5の何れか一項に記載の経路選択方法。
前記自己位置誤差範囲が所定値を超える場合、前記自己位置誤差範囲が前記所定値以下となるように、前記移動体の位置または速度の制御を前記移動体に指示する請求項1乃至6の何れか一項に記載の経路選択方法。
地図上における移動体の位置を検出するセンサと接続され、前記センサによって検出された前記位置に基づいて推定される前記移動体の自己位置から目的地までの経路を選択する経路選択回路を備える経路選択装置において、
前記自己位置に対して許容される誤差の範囲であり、前記地図上の道路構造に対応した許容誤差範囲を設定する許容誤差設定回路と、
前記移動体が前記経路に沿って走行する場合における前記自己位置に対する誤差範囲である自己位置誤差範囲を推定する自己位置誤差推定回路と
を備え、
前記経路選択回路は、前記自己位置誤差範囲が前記許容誤差範囲内となる場合、前記自己位置誤差範囲と前記許容誤差範囲との差分である余裕度に基づいて前記経路を選択する経路選択装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0011】
[第1実施形態]
(経路選択装置の構成)
図1は、第1実施形態に係る経路選択装置100の機能ブロック構成図である。
図2は、経路選択装置100が搭載された車両Cの概略斜視図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、経路選択装置100は、センサ10及びセンサ20を含むセンサ群と接続されている。なお、当該センサ群と、経路選択装置100との接続は、有線または無線接続の何れでも構わない。当該センサ群によるセンシングの結果に基づいて、地図データ30上における車両Cの位置が検出される。
【0013】
センサ10は、車両C(移動体)に搭載され、道路上の対象物との位置関係に基づいて車両Cの位置を検出する。
【0014】
本実施形態では、センサ10は、車両Cの左右のドアミラー、及び左右のフロントフェンダー近傍にそれぞれ搭載される。具体的には、左右のドアミラーに搭載されるセンサ10は、車両Cの進行方向Dにおける前方及び側方を撮像するカメラによって構成される。センサ10は、例えば、CCD, CMOSなどの固体撮像素子により画像を撮影する。センサ10は、逐次、撮影した画像を経路選択装置100に出力する。
【0015】
また、左右のフロントフェンダー近傍に搭載されるセンサ10は、例えば、レーザ光の照射によって進行方向Dの前方における対象物の位置及び形状を検出するレーザスキャナによって構成される。センサ10は、逐次、当該対象物の位置及び形状の検出結果を経路選択装置100に出力する。
【0016】
センサ20は、地図上における車両Cの位置を検出する。具体的には、センサ20は、Global Positioning System(GPS)などの汎地球航法衛星システム(GNSS)を用いて車両Cの現在位置(座標)を測定する。なお、センサ20は、タイヤの回転数によるオドメトリ計測、またはジャイロ、加速度センサを用いた慣性計測(INS)などを含んでもよい。
【0017】
また、経路選択装置100は、地図データ30及び走行履歴データ40を取得する。地図データ30及び走行履歴データ40は、車両C内の記憶装置に保存されていてもよいし、無線通信ネットワークを介して車両C外から取得できるようにしてもよい。
【0018】
地図データ30は、道路形状、具体的には、車線幅、車線形状、停止位置などの情報を含む地図のデータである。走行履歴データ40は、車両Cが過去に走行した経路の履歴を示すデータである。走行履歴データ40は、後述するように、車両Cが経路に沿って走行した場合における車両Cの自己位置に対する誤差範囲(自己位置誤差範囲)を含む。
【0019】
経路選択装置100は、車両C(移動体)に搭載される。経路選択装置100は、センサ10及びセンサ20によって検出された車両Cの位置に基づいて推定される車両Cの自己位置から目的地までの経路を選択する。
【0020】
図1に示すように、経路選択装置100は、自己位置推定部110、自己位置誤差推定部120、経路計画部130、許容誤差設定部140、通過可否判定部150及び経路選択部160を備える。
【0021】
経路選択装置100は、例えば、中央演算処理装置(CPU)、メモリ、及び入出力I/Fなどを備える集積回路であるマイクロコントローラにより構成可能である。この場合、マイクロコントローラに予めインストールされたコンピュータプログラムをCPUが実行することにより、上述した各機能部が実現される。各機能部は、一体のハードウェアから構成されてもよく、別個のハードウェアから構成されてもよい。マイクロコントローラは、例えば自動運転制御などの車両Cに関わる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用されてもよい。
【0022】
自己位置推定部110は、車両Cの自己位置を推定する。具体的には、自己位置推定部110は、センサ10及びセンサ20から出力された検出結果を用いて、車両Cの自己位置を推定する。
【0023】
自己位置推定部110は、センサ10から出力された進行方向D前方の道路などの状況、及びセンサ20から出力された車両Cの現在位置に基づいて、地図データ30によって提供される地図上における自己位置を推定する。自己位置推定部110は、自己位置を推定する際に、地図上の道路や車線などへのマップマッチングを実行できる。
【0024】
自己位置誤差推定部120は、車両Cの自己位置に対する誤差範囲である自己位置誤差範囲Dsを推定する。本実施形態において、自己位置誤差推定部120は、自己位置誤差推定回路を構成する。
【0025】
自己位置誤差範囲Dsとは、車両Cが経路選択部160によって選択された経路に沿って走行する場合における自己位置に対する誤差範囲である。
【0026】
自己位置誤差推定部120は、現在の走行中に、自己位置推定部110によって推定された自己位置に基づいて、当該自己位置における自己位置誤差範囲Dsを推定する。
【0027】
本実施形態では、自己位置誤差範囲Dsは、道路(路面)上に設定された二次元直交座標系における共分散行列で表現され、標準偏差の範囲を当該誤差範囲とする。なお、当該誤差の表現方法及び当該誤差範囲の設定方法は、このような方法に限定されず、他の方法を用いても構わない。
【0028】
経路計画部130は、自己位置推定部110によって推定された自己位置、実質的には、車両Cの現在位置から目的地までの経路を計画する。
【0029】
具体的には、経路計画部130は、地図データ30を用いて、当該目的地までの複数の経路を検索する。また、経路計画部130は、各経路における許容誤差範囲Daと、走行履歴データ40に格納された当該経路の過去の走行における自己位置誤差範囲Ds0との差分である余裕度Mを算出する。許容誤差範囲Daは、許容誤差設定部140により取得する。
【0030】
本実施形態では、経路計画部130は、余裕度Mが最も大きい経路を抽出し、目的地までの経路を計画する。また、経路計画部130は、当該経路上に交差点などの右左折が必要な区間(右左折区間)、または分流・合流が必要な区間(分合流区間)が含まれる場合、当該経路の具体的な走行方法(右折または左折方向、分流・合流方向など)を示す走行計画を生成する。
【0031】
なお、経路計画部130は、余裕度Mが所定値以上となる経路、または他の条件(例えば、目的地までの距離または交通状況)と合わせて余裕度Mが所定値以上となる経路を選択するようにしてもよい。また、経路計画部130は、余裕度Mが所定値以上となる経路を、選択した経路の代替経路として保持する。また、走行履歴データ40に格納された当該経路の過去の走行における自己位置誤差範囲Ds0を考慮せずに走行計画を生成してもよい。この場合、経路計画部130は、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da以内となるまで、他の経路を生成することを繰り返せばよい。
【0032】
経路計画部130は、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Daを超えることが通過可否判定部150によって判定された場合、通過可否判定部150からの不可判定信号を受け取り、当該経路を候補から除外し、上述したような他の経路に代替(リルート)する。
【0033】
また、経路計画部130は、現時点において自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Daを超える場合でも、走行履歴データ40に格納されている走行履歴から、この後、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da以内になると推定し、当該経路を走行可能と判定できる場合には、当該経路を候補とできる。
【0034】
例えば、経路計画部130は、当該走行履歴に基づいて、この後、車両Cが停車するための減速開始位置までに、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da内に収まることが推定できる場合、当該経路を候補とする。
【0035】
具体的には、経路計画部130は、現時点において自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Daを超える区間が存在する場合でも、この後、当該区間から減速開始位置までの許容誤差範囲Daを、当該走行履歴として保持されている許容誤差範囲Daと同等の範囲に補正する。経路計画部130がこのような補正をすることによって、当該区間の自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da以下となり、当該経路が計画され得る。
【0036】
許容誤差設定部140は、許容誤差範囲Daを設定する。本実施形態において、許容誤差設定部140は、許容誤差設定回路を構成する。
【0037】
許容誤差範囲Daは、自己位置推定部110によって推定された車両Cの自己位置に対して許容される誤差の範囲であり、地図上の道路構造に対応している。つまり、自己位置推定部110によって推定された自己位置には、一定の誤差が含まれており、許容誤差範囲Daは、自己位置推定部110による自己位置の推定精度を考慮して定められる当該自己位置に対する誤差の範囲である。
【0038】
具体的には、許容誤差設定部140は、自己位置推定部110から出力された自己位置における道路形状を地図データ30から取得する。許容誤差設定部140は、当該自己位置における走行可能領域内に仮許容誤差Da1を設定する。
【0039】
また、許容誤差設定部140は、経路計画部130から提供される目的地までの経路上において、所定時間T前方の位置における道路形状を地図データ30から取得する。許容誤差設定部140は、所定時間T前方の位置における走行可能領域内に仮許容誤差Da2を設定する。
【0040】
なお、許容誤差範囲Da、及び仮許容誤差Da1, Da2の具体例については、後述する。また、走行可能領域とは、車両Cの横方向(車幅方向)においては、道路上の車線境界を示す境界線(白線など)または縁石で区切られた車線の幅以下である。また、走行可能領域とは、車両Cの縦方向(進行方向)においては、例えば、停止線SLが存在する場合、停止線SLよりも手前の位置である。
【0041】
上述したように、許容誤差範囲Daは、地図上の道路構造に対応しているが、道路構造とは、具体的には、経路計画部130によって提供される目的地までの経路上の道路形状である。道路形状は、少なくとも直線区間、停止区間、右左折区間及び分合流区間の何れかを含む。
【0042】
許容誤差設定部140は、仮許容誤差Da1と仮許容誤差Da2とに基づいて、許容誤差範囲Daに設定する。具体的には、許容誤差設定部140は、処理としては、車両Cの自己位置における仮許容誤差Da1と、所定時間T前方の位置における仮許容誤差Da2とを、当該自己位置を基準として重ね合わせ、仮許容誤差Da1と仮許容誤差Da2とが重複する領域を許容誤差範囲Daとして設定する。
【0043】
許容誤差設定部140は、道路形状に対応して許容誤差範囲Daを設定できる。具体的には、許容誤差設定部140は、道路形状が直線区間の場合、縦方向(進行方向)における誤差範囲を広くする。一方、許容誤差設定部140は、道路形状が右左折区間(単路だがカーブの場合も含む)、または分合流区間の場合、縦方向における誤差範囲を狭くする。
【0044】
さらに、許容誤差設定部140は、道路形状が停止区間の場合、横方向(車幅方向)における誤差範囲を広くする。
【0045】
また、許容誤差設定部140は、車両Cが目的地までの経路を走行する際に用いる走行計画に基づいて、許容誤差範囲Daを設定できる。具体的には、上述した道路形状と類似するが、許容誤差設定部140は、当該経路の走行計画に基づいて、車両Cが経路(交差点など)を直進する場合、縦方向における誤差範囲を広くする。一方、許容誤差設定部140は、車両Cが経路において右左折する場合、縦方向における誤差範囲を狭くする。
【0046】
さらに、許容誤差設定部140は、車両Cが経路において停止する場合、横方向における誤差範囲を広くする。
【0047】
このように、許容誤差範囲Daは、車両C(移動体)が走行する走路(道路などを意味するが、但し、必ずしも道路に限定されない)の走行可能領域であって、当該自己位置における走行可能領域に車両Cが収まり、かつ自己位置から経路に沿って所定時間T走行した車両Cの位置における走行可能領域内に車両Cが収まる範囲に設定される。
【0048】
また、許容誤差設定部140は、目的地までの経路における車両Cの過去の走行履歴に基づいて許容誤差範囲Daを設定してもよい。具体的には、許容誤差設定部140は、車両Cが過去に当該経路を走行した際に推定した自己位置誤差範囲Dsに基づいて、当該推定した自己位置誤差範囲Ds以上となる許容誤差範囲Daを設定する。
【0049】
通過可否判定部150は、自己位置誤差推定部120から提供される自己位置誤差範囲Dsと、許容誤差設定部140から提供される許容誤差範囲Daとを比較し、目的地までの経路上における区間・箇所の通過可否を判定する。通過可否判定部150は、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Daを超えると判定した場合には、通過不可判定信号を経路計画部130に送信する。経路計画部130は、当該通過不可判定信号に基づいて他の経路に代替(リルート)を実行する。
【0050】
具体的には、通過可否判定部150は、Da≧Dsの場合、通過可と判定し、Da<Dsの場合、通過不可と判定する。
【0051】
経路選択部160は、車両Cの自己位置から目的地までの経路を選択する。本実施形態において、経路選択部160は、経路選択回路を構成する。
【0052】
具体的には、経路選択部160は、通過可否判定部150による目的地までの経路上における区間・箇所の通過可否の判定結果に基づいて、経路計画部130によって計画された当該経路を選択するか否かを決定する。
【0053】
より具体的には、経路選択部160は、経路計画部130によって計画された経路において、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da内となる場合、当該経路を選択する。
【0054】
さらに、経路選択部160は、上述したように、経路計画部130が複数の経路を設定した場合、経路計画部130によって取得された余裕度M(許容誤差範囲Daと、走行履歴データ40に格納された当該経路の過去の走行における自己位置誤差範囲Dsとの差分)に基づいて、当該経路を選択できる。
【0055】
また、経路選択部160は、車両Cが当該経路を走行している場合において、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da外となる場合、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da内となる新たな経路を選択(リルート)する。具体的には、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da外となる場合、通過可否判定部150を介して経路計画部130から提供された代替経路が生成され、経路選択部160は、その経路の中から当該経路を選択する。
【0056】
(経路選択方法)
次に、上述した経路選択装置100による経路選択方法について説明する。具体的には、
図3〜
図10を参照して、経路選択動作、及び道路構造(道路形状)に基づく許容誤差範囲の設定動作について説明する。
【0057】
図3は、目的地までの経路選択フローを示す。
図3に示すように、経路選択装置100は、目的地までの複数の候補経路を検索する(S10)。
【0058】
経路選択装置100は、各候補経路の許容誤差範囲Daを演算する(S20)。許容誤差範囲Daの具体的な演算方法については、さらに後述する。
【0059】
経路選択装置100は、各候補経路の走行履歴に基づいて、車両Cが過去に走行した当該経路における自己位置誤差範囲Dsを取得する(S30)。具体的には、経路選択装置100は、走行履歴データ40を参照し、当該経路における自己位置誤差範囲Dsを取得する。なお、経路選択装置100は、該当する自己位置誤差範囲Dsが走行履歴データ40に格納されていない場合、道路形状に応じた所定値を設定してもよい。
【0060】
経路選択装置100は、S20において演算した許容誤差範囲Daと、S30において取得した過去の走行における自己位置誤差範囲Ds0とに基づいて、余裕度Mを取得する(S40)。具体的には、経路選択装置100は、許容誤差範囲Daと自己位置誤差範囲Ds0との差分である余裕度Mを取得する。
【0061】
経路選択装置100は、各候補経路について、自己位置誤差推定部120で推定された現在の走行中の自己位置誤差範囲Dsより、許容誤差範囲Da≧自己位置誤差範囲Dsの関係を満たすか否かを判定する(S50)。当該関係を満たさない場合、経路選択装置100は、当該候補経路を候補から除外する(S60)。
【0062】
一方、当該関係を満たす場合、現在位置から先の経路の余裕度Mに基づいて、現在位置から目的地までの経路を選択する(S70)。具体的には、経路選択装置100は、余裕度Mが最も大きい候補経路を目的地までの経路として選択する。
【0063】
図4は、許容誤差範囲の設定フローを示す。
図4に示すように、経路選択装置100は、車両Cの自己位置を取得する(S110)。
【0064】
経路選択装置100は、取得した自己位置における仮許容誤差Da1を推定する(S120)。仮許容誤差Da1の推定方法については、さらに後述する。
【0065】
経路選択装置100は、取得した自己位置から所定時間Tだけ進行方向D前方に進んだ位置を設定する(S130)。
【0066】
具体的には、経路選択装置100は、所定時間T(sec.)とすると、単純には、車両Cの現在の車速V[m/sec.]からL=VT[m]前方の位置を選択する。厳密には、経路選択装置100は、予め設定される車速プロファイルV(X)(地点Xで取るべき車速)に基づいて、V(X)を0からTまで積分した値(L=∫V(X)dt)だけ前方の位置を選択する。なお、所定時間Tには、車速Vの場合において、通常の減速度で車両Cが停車するまでの時間を設定してもよい。
【0067】
つまり、所定時間Tとは、車速Vに応じて前方注視点を変化させることに相当する。多くの場合、車両制御においては固定距離よりも固定時間で前方注視点を設定するほうがより自然である。但し、状況などに応じて、所定時間Tに代えて、所定距離L(固定距離)前方の位置を前方注視点に設定してもよい。
【0068】
経路選択装置100は、所定時間T前方における仮許容誤差Da2を推定する(S140)。仮許容誤差Da2の推定方法については、さらに後述する。
【0069】
経路選択装置100は、S120において推定した仮許容誤差Da1と、S140において推定した仮許容誤差Da2とに基づいて、許容誤差範囲Daを設定する(S150)。
【0070】
具体的には、経路選択装置100は、上述したように、仮許容誤差Da1と、仮許容誤差Da2とを、当該自己位置を基準として重ね合わせ、仮許容誤差Da1と仮許容誤差Da2とが重複する領域、つまり、共通部分を許容誤差範囲Daとして設定する。
【0071】
図5は、上述したS120及びS140において実行される仮許容誤差Da1, Da2の推定フローを示す図である。
図5に示すように、経路選択装置100は、当該位置(車両Cの自己位置または自己位置から所定時間Tだけ進行方向D前方に進んだ位置)における道路形状を取得する(S210)。また、経路選択装置100は、当該道路形状と対応付けられた走行可能領域を示す情報を合わせて取得する。
【0072】
経路選択装置100は、当該位置が停止区間(近傍に停止線SLまたは停止が強制される地点を含む区間)か否かを判定する(S220)。
【0073】
停止区間の場合、経路選択装置100は、停止位置(停止線の位置もしくは停止線と同様に停止が強制される位置)から車両Cの縦方向における許容誤差を設定する(S230)。
【0074】
ここで、
図6は、停止区間における許容誤差設定の説明図である。
図6に示すように、所定時間T前方の停止線SLの位置において停止する場合、仮許容誤差Da2の縦方向(仮許容誤差Da2内の矢印線参照)における許容誤差は、仮許容誤差Da1の縦方向における許容誤差よりも小さく設定される。
【0075】
次いで、経路選択装置100は、車両Cの横方向における許容誤差を設定する(S240)。
【0076】
ここで、
図7は、直線区間における許容誤差設定の説明図である。
図7に示すような直線区間では、単純に、車両Cの横方向(仮許容誤差Da2内の矢印線参照)における許容誤差は、車線境界を示す境界線(白線など)と、縁石(また外側境界線)とによって区切られた車線の幅に設定される。
【0077】
図8は、カーブ区間における許容誤差設定の説明図である。
図8に示すようなカーブ区間でも、カーブに沿った位置に車両Cが位置できるように、境界線(白線など)と、縁石(また外側境界線)とによって区切られた車線の幅に基づいて仮許容誤差Da2が設定される。
【0078】
図8に示すように、所定時間T前方ではカーブに沿って車両Cが旋回するため、許容誤差範囲Daの縦方向における許容誤差は、仮許容誤差Da1, Da2よりも小さく設定される。
【0079】
図9及び
図10は、右左折区間となる交差点ISを含む区間における許容誤差設定の説明図である。右左折が可能となる交差点ISが経路に含まれる場合、車両Cが目的地までの経路を走行する際に用いる走行計画が生成され、当該走行計画に基づいて許容誤差範囲Daが設定される。
【0080】
図9に示すように車両Cが交差点ISを直進する場合、直前の直線区間の道路幅に基づいて横方向における誤差範囲が設定される。
【0081】
一方、
図10に示すように、車両Cが交差点ISを左折する場合、左折後の道路の幅に基づいて横方向における誤差範囲に基づいて、最終的な許容誤差範囲Daが設定される。
図10に示すように、許容誤差範囲Daでは、現時点、つまり、車両Cの自己位置において、縦方向における誤差範囲が小さく設定される。
【0082】
なお、横方向とは車両Cに対して定義されるものであり、
図10に示すように、車両Cが左方向に90度旋回した場合、車両Cの自己位置(仮許容誤差Da1の位置)では、縦方向の誤差範囲となることに留意されたい。
【0083】
このように、許容誤差範囲Daとは、車両Cの自己位置から所定時間T(または所定距離L)前方に車両Cが存在すべき走路の走行可能領域内に車両Cが収まることを含む。端的には、許容誤差範囲Daとは、車両Cの現在位置でも車線内から逸脱せず、かつ、近い将来においても車線内から逸脱しない範囲である。
【0084】
図5に戻り、経路選択装置100は、仮許容誤差Da1, Da2を推定する(S250)。具体的には、経路選択装置100は、道路(路面)上に設定された二次元直交座標系における共分散行列の標準偏差に相当する誤差楕円に基づいて仮許容誤差Da1, Da2を推定する。
【0085】
より具体的には、経路選択装置100は、当該誤差楕円の縦方向及び横方向の軸の長さを応じて、仮許容誤差Da1, Da2の範囲を設定する。
【0086】
上述した第1実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。上述したように、許容誤差範囲Daは、車両Cの自己位置に対して許容される誤差の範囲であり、地図上の道路構造に対応している。経路選択装置100は、当該自己位置に対する誤差範囲である自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da内となる場合、目的地までの経路として、当該経路を選択する。
【0087】
このため、例えば、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da内にとなる交差点において右左折するような経路が選択される。これにより、センサ群(センサ10, 20)によって検出された自己位置の誤差の大きさに基づいて、より適切な経路を選択できる。特に、経路選択装置100は、自動運転の続行に支障を来さない経路を選択できる。
【0088】
本実施形態では、許容誤差範囲Daは、目的地までの経路上の道路形状に対応して設定される。このため、直線区間、停止区間、右左折区間及び分合流区間などの道路形状に応じた適切な許容誤差範囲Daが設定できる。これにより、過度に小さい許容誤差範囲Daを設定する必要がなく、選択可能な経路を拡大し得る。
【0089】
本実施形態では、許容誤差範囲Daは、車両Cが当該経路を走行する際に用いる走行計画(直進または右左折など)に基づいて設定される。これにより、過度に小さい許容誤差範囲Daを設定する必要がなく、選択可能な経路を拡大し得る。
【0090】
本実施形態では、許容誤差範囲Daは、車両Cの自己位置における走行可能領域に車両Cが収まり、かつ当該自己位置から当該経路に沿って所定時間T走行した車両Cの位置における走行可能領域内に車両Cが収まる範囲に設定される。このため、センサ群によって検出された自己位置に一定の誤差が含まれる場合でも、目的地までの経路上において走行可能領域を車両Cが走行できる経路を選択し得る。これにより、車両Cが当該経路上を走行中において、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Daを突然超えることによって、車両Cが停止する(自動運転を停止)することを未然に回避し得る。
【0091】
本実施形態では、許容誤差範囲Daは、目的地までの経路における車両Cの過去の走行履歴に基づいて設定される。このため、当該走行履歴による実績に基づいた適切な許容誤差範囲Daが設定できる。これにより、過度に小さい許容誤差範囲Daを設定する必要がなく、選択可能な経路を拡大し得る。
【0092】
本実施形態では、車両Cが当該経路を走行している場合において、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da外となる場合、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Da内となる新たな経路が選択される。このため、自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Daを超えた場合でも、走行(自動運転)を継続し得る。
【0093】
本実施形態では、自己位置誤差範囲Dsと許容誤差範囲Daとの差分である余裕度Mに基づいて目的地までの経路が選択される。このため、車両Cが当該経路を走行して最中に、代替経路が選択されたり、車両Cが停止したりする可能性を低減し得る。
【0094】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る経路選択装置について説明する。
図11は、本実施形態に係る経路選択装置100Aの機能ブロック構成図である。
【0095】
図11に示すように、経路選択装置100Aは、上述した第1実施形態に係る経路選択装置100と比較すると、車両制御部170と接続されている。以下、上述した経路選択装置100と異なる部分について主に説明する。
【0096】
車両制御部170は、自己位置推定部110の自己位置情報から地図データ上の車両Cの位置を識別し、経路選択装置100Aの経路選択部160からの経路に沿って、目的地まで車両Cを走行させるために、車両Cの挙動を制御する。また、車両制御部170は、上述した自己位置誤差範囲Dsが所定値を超える場合、自己位置誤差範囲Dsが当該所定値以下となるように、車両Cの位置または速度の制御を車両Cに指示する。
【0097】
具体的には、車両制御部170は、許容誤差範囲Daと自己位置誤差範囲Dsとを比較した結果、車両Cの自己位置の推定精度が不足していると判定した場合、当該推定精度を回復させる制御を車両Cに指示する。
【0098】
車両制御部170は、当該推定精度が不足している場合、当該推定精度が回復するようなセンサ群(センサ10, 20)、特に、センサ10(カメラ、レーザスキャナ)による対象物を検出し易い位置または速度に車両Cを誘導する指示を生成する。
【0099】
図12は、経路選択装置100A(車両制御部170)の動作フローを示す。
図12に示すように、経路選択装置100Aは、車両Cの自己位置を取得する(S310)。
【0100】
経路選択装置100Aは、許容誤差範囲Daを設定する(S320)。許容誤差範囲Daの設定方法は、上述した第1実施形態と同様である。
【0101】
経路選択装置100Aは、車両Cの自己位置周辺における道路構造を取得する(S330)。具体的には、経路選択装置100Aは、車両Cの自己位置周辺の道路形状、具体的には、車線幅、車線形状、停止位置などの情報を取得する。また、経路選択装置100Aは、直線区間、停止区間、右左折区間及び分合流区間の有無を取得する。
【0102】
経路選択装置100Aは、車両Cの横方向における自己位置の推定精度が不足しているか否かを判定する(S340)。具体的には、経路選択装置100Aは、許容誤差範囲Daと自己位置誤差範囲Dsとを比較し、横方向における自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Daを十分に下回っているか否かを判定する。
【0103】
横方向における推定精度が不足している場合、当該推定精度を向上させる車両Cの制御を決定する(S350)。
【0104】
ここで、
図13A〜Dは、経路選択装置100Aによる車両Cの制御例を示す。
図13A及び
図13Bに示すように、横方向における推定精度が不足している場合、経路選択装置100Aは、道路の幅方向中心側に設けられた中央線CL、または道路の路肩側に設けられた外側境界線LE(または縁石)に車両Cを接近させることを指示する。
【0105】
なお、
図13Bのように、中央線CLが破線であり、外側境界線LEが実線である場合、より安定して検出でき推定精度がさらに向上する外側境界線LEに車両Cを接近させる。
【0106】
図12に戻り、経路選択装置100Aは、車両Cの縦方向における自己位置の推定精度が不足しているか否かを判定する(S360)。具体的には、経路選択装置100Aは、許容誤差範囲Daと自己位置誤差範囲Dsとを比較し、縦方向における自己位置誤差範囲Dsが許容誤差範囲Daを十分に下回っているか否かを判定する。
【0107】
縦方向における推定精度が不足している場合、当該推定精度を向上させる車両Cの制御を決定する(S370)。
【0108】
例えば、
図13Cに示すように、車両Cの進行方向前方に停止線SLが存在する場合、経路選択装置100Aは、停止線SLのより正確な検出を実現するため、車両Cの車速低下を指示する。
【0109】
停止線SLを通過する際の適切な車速は、センサ10の特性に依存するが、実験結果などから事前に決定しておくことが考えられる。或いは、車両Cの現在の車速に応じて低下させる車速の程度を決定してもよい。
【0110】
また、
図13Dに示すように、車両Cの進行方向前方おいて先行車両Cpが走行していることによって、道路標識RSがオクル―ジョンされている場合、経路選択装置100Aは、車両Cを道路標識RS側(図中では左側)に寄せることを指示する。これにより、道路標識RSのオクル―ジョンが解消されるため、地図データ30から取得した道路標識RSの位置に基づいて、車両Cの自己位置の高精度に推定できる。
【0111】
なお、道路標識RS以外に、路面表示、信号機、またはその他路側物など、縦方向における自己位置の推定精度の向上に寄与するものであればよい。
【0112】
上述した第2実施形態によれば、第1実施形態に加え、さらに、以下の作用効果が得られる。
【0113】
本実施形態では、経路選択装置100Aは、自己位置誤差範囲Dsが所定値を超える場合、自己位置誤差範囲Dsが当該所定値以下となるように、車両Cの位置または速度の制御を車両Cに指示する。
【0114】
このため、自己位置誤差範囲Dsが大きくなった場合には、車両Cの自己位置の推定精度が回復するように車両Cが制御される。これにより、走行(自動運転)を継続できる可能性を高め得る。
【0115】
[その他の実施形態]
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0116】
例えば、上述した第1実施形態及び第2実施形態(以下、実施形態)では、経路選択装置100(経路選択装置100A)には、センサ群(センサ10, 20)、地図データ30及び走行履歴データ40が含まれないものとして説明したが、経路選択装置100は、これらセンサ群、地図データ30及び走行履歴データ40の全部または一部を備えても構わない。
【0117】
また、上述した実施形態では、地図データ30に含まれる道路構造には、道路形状として、車線幅、車線形状、停止位置などの情報が含まれ、さらに、直線区間、停止区間、右左折区間及び分合流区間の有無が含まれるものとして説明したが、道路構造には、このような道路形状に限らず、道路の種別(高速道路、有料道路)、車線数、右折・左折レーン、信号機、道路標識、路面表示、路側物などの情報が含まれ得る。
【0118】
上述した実施形態では、車両Cは、
図2に示したように四輪の乗用自動車を例として説明したが、車両Cは、このような乗用自動車に限られず、四論以外の自動車、またはトラック・バスなどであっても構わない。さらに、経路選択装置100が搭載される対象は、車両に限らず、規定された走路を走行する乗り物、さらに広義には、移動体を含み得る。
【0119】
また、上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理装置は、また、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。
【0120】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。