(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805711
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】ターミナルキャップ
(51)【国際特許分類】
H01R 4/70 20060101AFI20201214BHJP
【FI】
H01R4/70 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-204496(P2016-204496)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-67422(P2018-67422A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 将之
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 順也
(72)【発明者】
【氏名】石橋 孝夫
【審査官】
山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−168969(JP,U)
【文献】
特開2016−181428(JP,A)
【文献】
特開2004−152683(JP,A)
【文献】
実開昭53−131588(JP,U)
【文献】
実開昭54−060280(JP,U)
【文献】
実開昭61−157174(JP,U)
【文献】
実開平03−052961(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/70
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のハーネスの各圧着端子の基端部を互いに離間させて固定されるターミナル端子を保護するターミナルキャップであって、
前記ターミナル端子の少なくとも一部を覆うカバー部と、
前記カバー部から外方に突出すると共に、内部に前記複数本のハーネスが挿通される中空状のハーネス挿通部と、を備え、
前記ハーネス挿通部の突出端側部に、前記複数本のハーネスをそれぞれ挿通させる複数の貫通穴が設けられ、かつ、
前記突出端側部において、前記複数の貫通穴のうちで前記ハーネス挿通部を前記圧着端子に組みつけた際に下方に位置される貫通穴の周縁から下方に向かって延びると共に、前記突出端側部と隣接する突出横側部において、さらに連続して前記カバー部側へ延びるスリット穴が設けられた
ことを特徴とするターミナルキャップ。
【請求項2】
前記突出端側部に、前記複数の貫通穴を互いに連通させる長穴が設けられた
請求項1に記載のターミナルキャップ。
【請求項3】
前記ハーネス挿通部は、内周面が前記圧着端子に接触しないように、前記カバー部側から突出端側に向かうに従い内径を拡径させた
請求項1又は2に記載のターミナルキャップ。
【請求項4】
前記ハーネス挿通部が、前記カバー部側から突出端側に向かうに従い拡径する中空台形状に形成された
請求項3に記載のターミナルキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターミナルキャップに関し、特に、複数本のハーネスの各圧着端子がその基端部を互いに離間させて固定されるターミナル端子を保護するターミナルキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両に搭載されたバッテリやオルタネータ等の各種電装部品は、ハーネス等によって相互に接続されている。ハーネスは、例えば、ハーネス末端に取り付けられた圧着端子を雄螺子状のターミナル端子にナットにより締め付けることで固定される。一般的に、このようなターミナル端子には、ショート防止、直接被水防止、水や埃の侵入を防止するためのターミナルキャップが取り付けられている。
【0003】
この種のターミナルキャップとして、例えば、ターミナル端子を覆う半球状のカバー部と、ハーネスを挿通させる円筒状のハーネス挿通部とをゴム・樹脂等の材料で一体形成した構造が広く汎用されている(例えば、特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平05−025569号公報
【特許文献2】特開平09−320647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、
図4に示すように、ターミナル端子100には、複数本(図示例では2本)のハーネス110,120の圧着端子111,121が固定される場合がある。圧着端子111,121の基端部111A,121Aは、ハーネス110,120に嵌合される加締め爪等による厚みがあるため、これら複数の圧着端子111,121を一箇所のターミナル端子100に固定する場合には、各基端部111A,121Aが互いに重ならないように、各圧着端子111,121を略V字状に広げた状態で固定する必要がある。
【0006】
このため、ターミナルキャップ200を組み付ける際に、ターミナルキャップ200をナット締め付け作業時の仮保持位置(
図4中の実線)から組み付け完了位置(
図4中の破線)に移動させると、ターミナルキャップ200のハーネス挿通部220の内周面が各圧着端子111,121の基端部111A,121Aを強く押圧することになる。この結果、圧着端子111,121に強いストレスが作用し、基端部111A,121Aと先端部111B,121Bとの間に座屈による亀裂を生じさせることで、圧着端子111,121を破損させる場合がある。
【0007】
また、ターミナルキャップ200のハーネス挿通部220に複数本(図示例では2本)のハーネス110,120を挿通すると、各ハーネス110,120の外周とハーネス挿通部220の内周面との間に隙間が生じることで、ターミナル端子100に水や埃が侵入する課題もある。
【0008】
本開示の技術は、ターミナルキャップの組み付け作業時に圧着端子が破損することを効果的に防止すると共に、端子部への水や埃の侵入を抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の技術は、複数本のハーネスの各圧着端子がその基端部を互いに離間させて固定されるターミナル端子を保護するターミナルキャップであって、前記ターミナル端子の少なくとも一部を覆うカバー部と、前記カバー部から外方に突出すると共に、その内部に前記複数本のハーネスが挿通される中空状のハーネス挿通部と、を備え、前記ハーネス挿通部は、その内周面が前記圧着端子に接触しないように、前記カバー部側から突出端側に向かうに従い内径を拡径して形成されたことを特徴とする。
【0010】
また、前記ハーネス挿通部の突出端側部に、前記複数本のハーネスをそれぞれ挿通させる複数の貫通穴が設けられてもよい。
【0011】
また、前記突出端側部に、前記複数の貫通穴を互いに連通させる長穴が設けられてもよい。
【0012】
また、前記ハーネス挿通部が、前記カバー部側から突出端側に向かうに従い拡径する中空台形状に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の技術によれば、ターミナルキャップの組み付け作業時に圧着端子が破損することを効果的に防止することができ、さらに、端子部への水や埃の侵入を抑止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るターミナルキャップが適用された車両の配策構造の一例を示す模式的な側面図である。
【
図2】本実施形態に係るターミナルキャップを示す(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【
図3】本実施形態に係るターミナルキャップの組み付け作業工程を説明する図である。
【
図4】従来例のターミナルキャップを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るターミナルキャップを説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
図1は、本実施形態に係るターミナルキャップ30が適用された車両の配策構造の一例を示す模式的な側面図である。図中において、符号1はスタータモータ、符号2はスタータモータ1のターミナル端子、符号3はスタータモータ1の端子座部、符号10は一端側を図示しない車載バッテリに接続された第1ハーネス、符号20は一端側を図示しないオルタネータに接続された第2ハーネスをそれぞれ示している。
【0017】
第1ハーネス10の末端には、圧着端子11が取り付けられている。圧着端子11の基端部11Aには、第1ハーネス10に嵌合される加締め爪等が設けられている。圧着端子11の先端部11Bには、ターミナル端子2に挿入される丸型端子が設けられている。第2ハーネス20の末端には、圧着端子21が取り付けられている。圧着端子21の基端部21Aには、第2ハーネス20に嵌合される加締め爪等が設けられている。圧着端子21の先端部21Bには、ターミナル端子2に挿入される丸型端子が設けられている。
【0018】
これら各圧着端子11,21は、先端部11B,21Bの丸型端子を雄螺子状のターミナル端子2に挿入すると共に、当該ターミナル端子2にナット4を締め付けることで固定される。各圧着端子11,21は、好ましくは、先端部11B,21Bよりも厚みのある各基端部11A,21Aが互いに離間するように、先端部11B,21Bを支点に略V字状に広げられた状態で固定される。
【0019】
ターミナルキャップ30は、例えば、ゴム・樹脂等の弾性変形可能な材料で形成されてり、ターミナル端子2及び端子座部3を覆うカバー部31と、各ハーネス10,20を挿通させる中空状のハーネス挿通部32とを備えている。
【0020】
より詳しくは、
図2に示すように、カバー部31は、端子座部3(
図1参照)よりも大径に形成された円筒部31Aと、円筒部31Aの一端開口を塞ぐ略半球状の蓋部31Bとを有する。ハーネス挿通部32は、円筒部31Aの側部から径方向外方に突出するように、カバー部31と一体形成されている。
【0021】
本実施形態において、ハーネス挿通部32は、少なくとも組み付け作業時に、その内周面が各圧着端子11,21(
図1参照)に接触しないように、カバー部31側から外方に向かうに従い内径が拡径される略中空台形状(扇形)に形成されている。なお、ハーネス挿通部32の形状は、中空台形状に限定されず、その内周面が各圧着端子11,21に接触しない形状であれば、中空円錐状等の他の形状であってもよい。
【0022】
ハーネス挿通部32の突出端側部32Aには、各ハーネス10,20(
図1参照)をそれぞれ挿通させる一対の貫通穴33,34が穿設されている。各貫通穴33,34は、好ましくは、その穴径を各ハーネス10,20(
図1参照)の外径と略同径に形成されている。すなわち、各貫通孔33,34の内周と各ハーネス10,20(
図1参照)の外周との隙間をなくすことで、水や埃の侵入が防止されるようになっている。
【0023】
また、ハーネス挿通部32の突出端側部32Aには、各貫通穴33,34を互いに連通させる第1スリット穴(長穴)35が設けられている。さらに、ハーネス挿通部32の突出端側部32A及び、突出横側部32Bには、各貫通穴33,34のうち、ターミナルキャップ30を組みつけた際に下方に位置される貫通穴(本実施形態では貫通穴34)の周縁から第1スリット穴35とは反対方向に向かって延びる第2スリット穴36が設けられている。このように、貫通穴33,34の周縁にスリット穴35,36を設けることで、各ハーネス10,20の外径や、各圧着端子11,21の固定角度のばらつき、ハーネス本数の増加等に柔軟に対応できるようになっている。
【0024】
次に、
図3に基づいて、本実施形態に係るターミナルキャップ30の組み付け作業工程を説明する。
図3(A)に示すように、作業者は、ターミナルキャップ30をターミナル端子2から離れたハーネス10,20の所定位置に仮保持させた状態で、ナット4を図示しない工具等で締め付けることで、各圧着端子11,21を固定する。この際、各圧着端子11,21は、基端部11A,21Aが互いに重ならないように、略V字状に広げられた状態でターミナル端子2に固定される。
【0025】
次いで、作業者は、
図3(B)に示すように、ターミナルキャップ30を各圧着端子11,21側にスライド移動させ、カバー部31をターミナル端子2に被せることで、ターミナルキャップ30の組み付け作業を終了する。この際、ハーネス挿通部32は、その内周面が各圧着端子11,21に接触しない中空台形状に形成されているため、作業者は、各圧着端子11,21にストレスを掛けることなく、ターミナルキャップ30を滑らかにスライド移動させることができる。
【0026】
以上詳述したように、本実施形態のターミナルキャップ30によれば、ハーネス挿通部32を略中空台形状に形成したことで、組み付け作業時には、ハーネス挿通部32の内周面を各圧着端子11,21に接触させることなく、ターミナルキャップ30を滑らかにスライド移動させることができる。これにより、組み付け作業性が効果的に向上されると共に、ハーネス挿通部32の内周面が各圧着端子11,21に接触によるストレスを与えることで引き起こされる各圧着端子11,21の折損を確実に防止することができる。
【0027】
また、ハーネス挿通部32に各ハーネス10,20をそれぞれ挿通させる貫通穴33,34を別個に設けると共に、各貫通穴33,34の内径を各ハーネス10,20の外径と略同径に形成したことで、各貫通孔33,34と各ハーネス10,20とに隙間が生じないようになっている。これにより、各ハーネス10,20を伝わって流れる水や埃のターミナルキャップ30内への侵入を効果的に防止することができる。
【0028】
また、各貫通穴33,34の周縁にスリット穴35,36を設けたことで、各ハーネス10,20の外径や、各圧着端子11,21の固定角度のばらつき、ハーネス本数の増加等に柔軟に対応することが可能になる。
【0029】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0030】
例えば、ハーネス10,20の本数は2本に限定されず、3本以上であってもよい。
【0031】
また、ターミナルキャップ30が組み付けられる対象は、上記実施形態のスタータモータ1のターミナル端子2に限定されず、車載バッテリ等の他の電装部品のターミナル端子であってもよい。
【0032】
また、上記実施形態の適用範囲は、車両以外の配策構造にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 スタータモータ
2 ターミナル端子
3 端子座部
10 第1ハーネス
11 圧着端子
20 第2ハーネス
21 圧着端子
30 ターミナルキャップ
31 カバー部
32 ハーネス挿通部
33,34 貫通穴