(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0014】
図1は、一般的なデータセンターの室内を模式的に表した断面図である。
【0015】
図1に示すように、一般的なデータセンターの室内は、機器設置エリア10aと、機器設置エリア10aの床下に設けられたフリーアクセスフロア(床下空間)10bとを有している。
【0016】
機器設置エリア10aには、複数(
図1では1台のみ図示している)のラック11が設置されている。また、各ラック11には、それぞれ複数の電子機器12が収納されている。電子機器12は、例えばサーバ又はストレージである。
【0017】
フリーアクセスフロア10bには、電源ケーブルや通信ケーブルが配置される。また、空調機13の送風口からフリーアクセスフロア10bに、低温のエアーが供給される。
【0018】
空調機13からフリーアクセスフロア10bに供給された低温のエアーは、機器設置エリア10aの床に設けられたグリル(通風口)14を通って機器設置エリア10aに移動する。そして、ラック11の吸気面からラック11内に入り、ラック11内の電子機器12を冷却する。電子機器12を冷却することにより温度が上昇したエアーは、ラック11の排気面から排出される。
【0019】
機器設置エリア10aの上方には排気流路15が設けられている。ラック11から排出された高温のエアーは、排気流路15を通って空調機13の吸気口に移動する。そして、吸気口から空調機13内に入ったエアーは、空調機13により冷却された後、再度送風口からフリーアクセスフロア10bに供給される。
【0020】
図2(a),(b)は、上述のデータセンターの問題点を示す図である。
【0021】
図2(a)は、グリル14から機器設置エリア10aに供給されるエアーの流量が少ない場合を示している。
【0022】
グリル14から機器設置エリア10aに供給されるエアーの流量が少ないと、ラック11の排気面から排出された高温のエアーが、ラック11の上を通って吸気面側に廻り込んでしまう。そのため、ラック11の上部に収納された電子機器12が十分に冷却されず、故障や誤動作又は処理能力の低下などの障害が発生する。
【0023】
図2(b)は、グリル14から機器設置エリア10aに供給されるエアーの流量が多い場合を示している。この場合、グリル14から供給された低温のエアーの一部は、ラック1内を通ることなく、ラック11の上部を通って排気面側に移動し、排気流路15内に入ってしまう。従って、空調機13から供給された低温のエアーを有効に利用できないため、空調機13の電力が無駄に消費される。
【0024】
以下の実施形態では、空調に要する電力の消費量を削減できるデータセンターについて説明する。
【0025】
(実施形態)
図3は、実施形態に係るデータセンターを示す模式図である。また、
図4は、同じくそのデータセンターの一部を示す斜視図である。
【0026】
図3,
図4に示すように、本実施形態に係るデータセンター60の室内には、多数のラック11が列毎に並んで配置されている。各ラック11には、例えば
図1のように、複数の電子機器12が収納されている。
【0027】
隣り合う列のラック11は、吸気面同士又は排気面同士を対向させている。そして、ラック11の吸気面側の空間の上方には、冷気供給用のダクト20が配置されている。一般的に、ラック11の吸気面側の空間はコールドアイルと呼ばれ、排気面側の空間はホットアイルと呼ばれている。
【0028】
ダクト20は、
図3に示すように、エアー配管61を介して空調機30の送風口に接続されている。空調機30は、熱交換器31と、加湿器32と、ダンパ33と、フィルタ34とを有している。熱交換器31には、例えば室外に配置された冷凍機(図示せず)等から供給される低温の冷媒が通流する冷媒流路が設けられている。また、空調機30の送風口には、エアー配管61内にエアーを送る送風機35が設けられている。
【0029】
エアー配管61には、エアー配管61内を通るエアーの温度及び湿度を検出する温湿度センサ52と、エアーの圧力を検出する静圧センサ53と、ダンパ45とが設けられている。センサ52,53から出力される信号は、制御部50に伝達される。また、ダンパ45は、制御部50からの信号により開閉する。
【0030】
更に、空調機30は、エアー配管62を介して室外に配置された外気導入部40に接続されている。本実施形態に係るデータセンター60では、外気の温度がある程度低くなると、外気導入部40を介して室内に外気が導入される。外気導入時の動作の詳細は後述する。
【0031】
空調機30には、外気導入部40から送られてくるエアーの温度を検出する温度センサ54が設けられている。この温度センサ54の出力も制御部50に伝達される。
【0032】
図5は、ダクト20の側面図である。また、
図6は、ダクト20を下から見たときの図である。
【0033】
ダクト20は、角筒状のダクト本体21と、ダクト本体21内に配置された仕切り板22a,22bと、ダクト本体21の下面に設けられてエアーを吹き出す開口部25と、開口部25から吹き出すエアーの流れ方向を調整する風向板26とを有する。空調機30から送られてくるエアーは、仕切り板22a,22bにより仕切られた空間(エアー流路)内を通る。
【0034】
仕切り板22aは、ダクト20内のエアー流路の高さが先端側ほど低くなるように配置されている。また、2枚の仕切り板22bは、ダクト20内のエアー流路の幅が先端側ほど細くなるように配置されている。これらの仕切り板22a,22bにより、ダクト20内のエアー流路の断面積(エアーの流れ方向に直交する断面の面積)は、先端側ほど小さくなるようになっている。これにより、各開口部25から吹き出すエアーの量が均一化される。
【0035】
開口部25は、ダクト20の下側の面に、ダクト20の長手方向に沿って一定のピッチで配列されている。各開口部25には風向板26が設けられている。風向板26は、開口部25の3つの辺、すなわち先端側の第1の辺と第1の辺に隣り合う2つの第2の辺とに沿って設けられており、基端側(エアー供給源側)は解放されている。
【0036】
開口部25の長さ(ダクト20の長手方向に平行な方向の長さ)は例えば200mmであり、開口部25の幅(ダクト20の長手方向に直交する方向の長さ)は例えば1200mmである。また、風向板26の鉛直方向の長さは、例えば200mmである。
【0037】
本実施形態では、ダクト20とラック11との間に、複数の温度センサ51が配置されている。それらの温度センサ51は、
図7に示すように、ダクト20の開口部25から吹き出すエアーが直接当たらないように風向板26の幅方向の外側(ラック11の上方)に配置されている。また、
図3からわかるように、それらの温度センサ51は隣接する2つの風向板26の間(すなわち、開口部25間)に配置されている。
【0038】
外気導入部40には、外気から塵埃等を除去するためのフィルタ41と、外気の温度及び湿度を検出する温湿度センサ49とが設けられている。温湿度センサ49から出力される信号は、制御部50に伝達される。
【0039】
前述したように、外気導入部40は、エアー配管62を介して空調機30に接続されている。エアー配管62内には、送風機46とダンパ43とが設けられている。送風機46は制御部50からの信号に応じて動作し、ダンパ43は制御部50からの信号に応じて開閉する。また、エアー配管62には、エアー配管62内を通るエアーの圧力を検出する静圧センサ56が設けられている。この静圧センサ56から出力される信号も、制御部50に伝達される。
【0040】
更に、データセンター60には、室内のエアーを屋外に排出するための排気口18が設けられており、排気口18には送風機47とダンパ44とが配置されている。送風機47は制御部50からの信号に応じて動作し、ダンパ44は制御部50からの信号に応じて開閉する。
【0041】
制御部50は、静圧センサ53の出力と温度センサ51の出力とに基づいて、送風機35の回転数とダンパ45の開度とを調整する。
【0042】
更に、制御部50は、温湿度センサ49の出力に基づいて送風機46,47及びダンパ33,43,44を制御する。ダンパ43,44を開、ダンパ33を閉、送風機46,47をオンにしたときには外気導入モードとなり、ダンパ43,44を閉、ダンパ33を開、送風機46,47をオフにしたときには循環モードとなる。
【0043】
なお、外気導入部40、空調機30及び送風機35はエアー供給源の一例である。また、温湿度センサ49は第1のセンサの一例であり、ダンパ43は第1のダンパの一例である。
【0044】
以下、本実施形態に係るデータセンター60の空調制御について説明する。
【0045】
制御部50は、温湿度センサ49の出力から、外気の温度及び湿度を検出する。そして外気の温度及び湿度が所定の範囲内の場合、制御部50は、外気導入モードにすべく、送風機46,47及びダンパ33,43,44を制御する。なお、外気導入モードでは、空調機30の熱交換器31への冷媒の供給は停止される。
【0046】
図8は、外気導入モードにおけるエアーの流れを示す模式図である。
【0047】
外気の温度及び湿度が所定の範囲内の場合、制御部50は、ダンパ43,44を開とし、ダンパ33を閉とするとともに、送風機46,47をオンとする。これにより、外気導入部40、送風機46及びエアー配管62を介して空調機30に外気が導入され、更に空調機30から送風機35及びエアー配管61を介してダクト20に外気が供給される。そして、ダクト20の開口部25からラック11の吸気面側(コールドアイル)にエアー(外気)が吹き出す。
【0048】
ダクト20の開口部25から吹き出したエアーは、ラック11の吸気面からラック11内に入り、ラック11内の電子機器12(
図1参照)を冷却する。そして、電子機器12を冷却することにより温度が上昇したエアーは、ラック11の排気面からホットアイルに排出される。
【0049】
ラック11からホットアイルに排出された高温のエアーは、ホットアイルを上昇する。そして、天井に沿って横方向に移動し、ダンパ44及び送風機47を介して排気口18から屋外に排出される。
【0050】
ところで、ダクト20から吹き出すエアーの流量にもよるが、ラック11から排気された高温のエアーの一部が、ラック11の上を通って吸気面側に廻り込む。本実施形態では、
図9に示すように、ラック11の排気面側から吸気面側に廻り込んだ高温のエアーは、ダクト20から吹き出す低温のエアーと混合される。そのため、ラック11から排気された高温のエアーがそのままラック11内に入ることが回避される。
【0051】
以下、風向板26の形状及び効果について、より詳細に説明する。
【0052】
風向板26は、ダクト20(開口部25)から吹き出すエアーの流れ方向を調整し、ラック11の吸気面に低温のエアーを無駄なく送るために設けられている。
【0053】
例えば
図10に示すように、開口部25の先端側の辺のみに沿って風向板26aが設けられている場合、ダクト20から吹き出す低温のエアーは、
図11に矢印で示すように、ダクト20の幅方向に広がってしまう。そのため、ダクト20から吹き出す低温のエアーのうちの多くが、ラック11の上を通ってラック11の排気面側に直接移動し、ラック11内の電子機器12を冷却することなく空調機30に戻ってしまう。従って、空調機30から供給される低温のエアーを有効に利用することができず、空調機30の消費電力を十分に削減することができない。
【0054】
また、例えば
図12のように開口部25の4辺に沿って風向板26bが設けられている場合、排気面側からラック11の上を通って吸気面側に廻り込んだ高温のエアーと、ダクト20から吹き出す低温のエアーとが十分に混合されないままラック11内に導入される。そのため、高温のエアーが導入された部分では電子機器12を十分に冷却できなくなるおそれがある。
【0055】
これに対し、本実施形態のダクト20では、
図13に示すように、開口部25の先端側の辺だけでなく、幅方向の両側の辺にも風向板26を設けている。このため、
図14に示すように、ダクト20から吹き出すエアーの側方への広がりが抑制される。
【0056】
また、本実施形態のダクト20では、開口部25の基端側の辺(エアー供給源側の辺)に風向板を設けていない。このため、ラック11の排気面側からラック11の上を通って吸気面側に高温のエアーが廻り込んでも、
図15のように高温のエアーAは開口部25のすぐ下で開口部25から吹き出した低温のエアーBと混合されて、温度が低下する。従って、ラック11から排出された高温のエアーがラック11内に直接導入されることがなく、ラック11には設定された温度のエアーが供給される。
【0057】
例えば、外気温が10℃であり、ラック11から排出されるエアーの温度が30℃であるとする。そして、制御部50は、ラック11の吸気面側に供給されるエアーの温度が20℃となるように、ダンパ45の開度及び送風機31の回転数を制御するものとする。
【0058】
この場合、温度センサ51の検出温度が設定値(例えば20℃)よりも低いと、制御部50は送風機35の回転数を下げたり、ダンパ45の開度を下げたりして、ダクト20から吹き出すエアーの量を少なくする。これにより、ラック11の排気面側から吸気面側に廻り込むエアーの量が多くなり、ラック11の吸気面側のエアーの温度が上昇する。
【0059】
一方、温度センサ51の検出温度が設定値(例えば20℃)よりも高いと、制御部50は送風機35の回転数を上げたり、ダンパ45の開度を上げたりして、ダクト20から吹き出すエアーの量を多くする。これにより、ラック11の排気面側から吸気面側に廻り込むエアーの量が少なくなり、ラック11の吸気面側のエアーの温度が下降する。
【0060】
このようにして、ラック11の吸気面側には温度がほぼ20℃のエアーが供給される。
【0061】
従来の外気導入型のデータセンターでは、室内に導入するエアーの温度が低すぎると、結露や静電気等により電子機器に不具合が発生するおそれがあるため、電子機器に不具合が発生しないように室内に導入する外気の温度の下限値を比較的高く設定している。
【0062】
例えば電子機器の許容温度の下限値が18℃であり、外気の温度が10℃であるとすると、従来のデータセンターでは室内に外気を導入せず、循環モードで動作する。
【0063】
しかし、本実施形態に係るデータセンター60では、上述したように10℃の外気を室内に導入しても、ラック11内に入るエアーの温度はほぼ20℃になる。
【0064】
このように、本実施形態のデータセンター60では、外気の温度が電子機器12の許容温度の下限値よりも低い場合であっても、室内に外気を導入することができる。
【0066】
外気の温度及び湿度が所定の範囲から外れている場合、制御部50は、循環モードにすべく、送風機46,47及びダンパ33,43,44を制御する。
【0067】
すなわち、制御部50は、温湿度センサ49の出力により外気の温度又は湿度が所定の範囲外であると判定した場合、送風機46,47をオフにし、ダンパ33を開、ダンパ43,44を閉にする。また、循環モードでは、空調機30の熱交換器31に冷媒を供給する冷凍機及びポンプをオンにする。
【0068】
図16は、循環モードにおけるエアーの流れを示す模式図である。
【0069】
ダンパ33及びフィルタ34を介して空調機30内に導入されたエアーは、熱交換器31により冷却される。そして、送風機31及びダンパ42を介してダクト20に送られ、ダクト20からラック11の吸気面側に吹き出す。
【0070】
ダクト20から吹き出したエアーは、ラック11の吸気面からラック11内に入り、ラック11内の電子機器12(
図1参照)を冷却する。電子機器12を冷却することにより温度が上昇したエアーは、ラック11の排気面からホットアイルに排出される。
【0071】
ホットアイルに排出されたエアーは、ホットアイルを上昇した後、天井に沿って空調機30側に移動し、空調機30の吸気口から空調機30内に入る。そして、熱交換器31により冷却された後、再度ダクト20に送られる。
【0072】
上述したように、本実施形態に係るデータセンター60は、外気の温度及び湿度が所定の範囲内のときは、室内に外気を導入してラック11内の電子機器12を冷却する。このとき、本実施形態では、ラック11から排出されたエアーの一部とダクト20から吹き出すエアーとを混合してラック11の吸気面側(コールドアイル)に供給する。そのため、外気の温度が電子機器12の許容温度の下限値よりも低い場合であっても、電子機器12には許容温度の下限値よりも高い温度のエアーを供給できる。
【0073】
その結果、本実施形態のデータセンター60では、従来では室内に導入できない低温のエアーを導入することができ、空調機30の稼働時間を削減できる。これにより、空調に要する電力を削減できるという効果を奏する。
【0074】
また、本実施形態では、低温の外気を室内に導入する場合に、送風機35の回転数が少なくなるので、送風機35で消費する電力も削減される。一般的に、送風機の消費電力は風量の2乗〜3乗に比例する。従って、送風機35の風量が50%になると、送風機31で消費する電力は1/4〜1/8に削減される。
【0075】
なお、本実施形態では、
図7に示すように、ラック11内に導入されるエアーの温度を検出する温度センサ51を、ダクト20とラック11との間に配置しているが、温度センサ51をラック11の吸気面に配置することも考えられる。
【0076】
しかし、ラックによっては、吸気面側に温度センサ51の取り付けに適した部材がないことがある。また、ラックの種類によって吸気面の位置が異なることがあり、ラックを替えると配線工事等が必要になることもある。
【0077】
これに対し、本実施形態では、ラック11内に導入されるエアーの温度を検出する温度センサ51をダクト20とラック11との間に配置しているので、ラック11を替えても配線工事等が不要であり、汎用性が高いという利点もある。
【0078】
また、本実施形態では、ダクト20の下に設けられた風向板26を、
図5に示すように基端側が解放された形状としているが、
図17に示すように湾曲した形状としてもよい。
図17に示す風向板27では、開口部25から吹き出したエアーは風向板27の湾曲面に沿って流れ、最終的に垂直方向に向かう。そのため、開口部25の幅方向の両側の辺に風向板を設けなくても、エアーが幅方向に広がることを抑制できる。