特許第6805722号(P6805722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6805722トレッド形状測定方法及びトレッド形状測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6805722
(24)【登録日】2020年12月8日
(45)【発行日】2020年12月23日
(54)【発明の名称】トレッド形状測定方法及びトレッド形状測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20201214BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20201214BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20201214BHJP
【FI】
   G01B11/24 A
   G01M17/02
   B60C19/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-208921(P2016-208921)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-72042(P2018-72042A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 智恵子
【審査官】 山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−021506(JP,A)
【文献】 特開2009−250740(JP,A)
【文献】 特開2005−077371(JP,A)
【文献】 特開2016−099287(JP,A)
【文献】 特表2012−508370(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0320581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
21/00−21/32
B60C 1/00−19/12
G01M 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド部の表面形状を測定するための方法であって、
レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して正の角度で傾けられた第1レーザー変位計と、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して負の角度で傾けられた第2レーザー変位計とを含む複数のレーザー変位計を、タイヤ子午線断面内で、タイヤ軸方向に移動させながら、各変位計から前記トレッド部の表面までの距離データを測定する測定工程、及び、
前記第1レーザー変位計によって測定された第1距離データと、前記第2レーザー変位計によって測定された第2距離データとを合成して、前記トレッド部の表面形状を表す距離データを得る計算工程とを含むことを特徴とするトレッド形状測定方法。
【請求項2】
前記正の角度と前記負の角度とは絶対値が等しい請求項1記載のトレッド形状測定方法。
【請求項3】
前記正の角度は、前記第1レーザー変位計の前記レーザー出射光とレーザー入射光とのなす角度θである請求項2記載のトレッド形状測定方法。
【請求項4】
前記計算工程は、前記第1距離データを前記正の角度に応じて補正し、前記第2距離データを前記負の角度に応じて補正する補正工程を含む請求項3に記載のトレッド形状測定方法。
【請求項5】
前記補正工程は、下記式を用いて前記距離データを補正する請求項4に記載のトレッド形状測定方法。
タイヤ半径方向の補正
L2=L1×cosθ
L1:前記レーザー変位計によって測定された移動中の前記レーザー変位計の基準位置から前記トレッド部の表面までの距離
L2:移動中の前記レーザー変位計の前記基準位置から測定箇所までのタイヤ半径方向の距離
タイヤ軸方向の補正
Y2=Y1+α
α=L1×sinθ
Y1:タイヤ軸方向に移動する前の前記レーザー変位計の前記基準位置から、移動中の前記レーザー変位計の前記基準位置までのタイヤ軸方向の距離
Y2:タイヤ軸方向に移動する前の前記レーザー変位計の前記基準位置から測定箇所までのタイヤ軸方向の距離
【請求項6】
タイヤのトレッド部の表面形状を測定するための装置であって、
レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して正の角度で傾けられた第1レーザー変位計と、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して負の角度で傾けられた第2レーザー変位計とを含む複数のレーザー変位計と、
各レーザー変位計をタイヤ子午線断面内で、タイヤ軸方向に移動させる移動手段と、
前記第1レーザー変位計によって測定された前記第1レーザー変位計から前記トレッド部の表面までの第1距離データと、前記第2レーザー変位計によって測定された前記第2レーザー変位計から前記トレッド部の表面までの第2距離データとを合成して、前記トレッド部の表面形状を表す距離データを得る計算手段とを含むことを特徴とするトレッド形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式のレーザー変位計を用いてタイヤのトレッド表面形状を測定するトレッド形状測定方法及びトレッド形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー変位計を用いてタイヤのトレッド部の表面形状を計測する装置が、種々提案されている。例えば、下記特許文献1では、レーザー変位計をタイヤ軸方向に移動させながら、測定された距離データに基づいてトレッド部の形状を測定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−56215号公報
【0004】
上記特許文献1に記載された装置では、レーザー光の軸線がタイヤ赤道面と平行になるように、レーザー変位計が配されている。このため、トレッド部の表面に形成されている周方向溝によって区分される陸部の側壁とレーザー出射光の軸線とが略平行となることから、該側壁にレーザー光を照射しその反射光を検知することができないことがある。これに伴い、側壁領域で距離データの欠落が生じ(図9参照)、陸部の形状を精密に測定できないことがあり、さらなる改善が要望されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、周方向溝によって区分される陸部の側壁領域でのデータの欠落を抑制できるトレッド形状測定方法及びトレッド形状測定装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、タイヤのトレッド部の表面形状を測定するための方法であって、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して正の角度で傾けられた第1レーザー変位計と、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して負の角度で傾けられた第2レーザー変位計とを含む複数のレーザー変位計を、タイヤ子午線断面内で、タイヤ軸方向に移動させながら、各変位計から前記トレッド部の表面までの距離データを測定する測定工程、及び、前記第1レーザー変位計によって測定された第1距離データと、前記第2レーザー変位計によって測定された第2距離データとを合成して、前記トレッド部の表面形状を表す距離データを得る計算工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記トレッド形状測定方法において、前記正の角度と前記負の角度とは、絶対値が等しいことが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記トレッド形状測定方法において、前記正の角度は、前記第1レーザー変位計の前記レーザー出射光とレーザー入射光とのなす角度θであることが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記トレッド形状測定方法において、前記計算工程は、前記第1距離データを前記正の角度に応じて補正し、前記第2距離データを前記負の角度に応じて補正する補正工程を含むことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記トレッド形状測定方法において、前記補正工程は、下記式を用いて前記距離データを補正することが望ましい。
タイヤ半径方向の補正
L2=L1×cosθ
L1:前記レーザー変位計によって測定された前記レーザー変位計の基準位置から前記トレッド部の表面までの距離
L2:前記レーザー変位計の前記基準位置から測定箇所までのタイヤ半径方向の距離
タイヤ軸方向の補正
Y2=Y1+α
α=L1×sinθ
Y1:タイヤ軸方向に移動する前の前記レーザー変位計の前記基準位置から、移動中の前記レーザー変位計の前記基準位置までのタイヤ軸方向の距離
Y2:前記レーザー変位計の前記基準位置から測定箇所までのタイヤ軸方向の距離
【0011】
本発明の第2発明は、タイヤのトレッド部の表面形状を測定するための装置であって、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して正の角度で傾けられた第1レーザー変位計と、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して負の角度で傾けられた第2レーザー変位計とを含む複数のレーザー変位計と、各レーザー変位計をタイヤ子午線断面内で、タイヤ軸方向に移動させる移動手段と、前記第1レーザー変位計によって測定された前記第1レーザー変位計から前記トレッド部の表面までの第1距離データと、前記第2レーザー変位計によって測定された前記第2レーザー変位計から前記トレッド部の表面までの第2距離データとを合成して、前記トレッド部の表面形状を表す距離データを得る計算手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1発明は、測定工程で第1レーザー変位計及び第2レーザー変位計を用いて、各レーザー変位計からトレッド部の表面までの距離データが測定される。第1レーザー変位計は、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して正の角度で傾けられ、第2レーザー変位計は、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して負の角度で傾けられる。これにより、トレッド部でタイヤ周方向にのびる周方向溝によって区分される陸部のうち、一方の側壁の形状が第1レーザー変位計によって、他方の側壁が第2レーザー変位計によってそれぞれ測定される。そして、計算工程では、第1レーザー変位計によって測定された第1距離データと、第2レーザー変位計によって測定された第2距離データとが合成されて、トレッド部の表面形状を表す距離データが得られる。これにより、陸部の側壁領域での距離データの欠落が抑制され、側壁領域を含むトレッド部の表面形状が測定されうる。
【0013】
本発明の第2発明は、第1レーザー変位計及び第2レーザー変位計を用いて、各レーザー変位計からトレッド部の表面までの距離データが測定される。第1レーザー変位計は、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して正の角度で傾けられ、第2レーザー変位計は、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して負の角度で傾けられる。これにより、トレッド部でタイヤ周方向にのびる周方向溝によって区分される陸部のうち、一方の側壁の形状が第1レーザー変位計によって、他方の側壁が第2レーザー変位計によってそれぞれ測定される。そして、計算手段は、第1レーザー変位計によって測定された第1距離データと、第2レーザー変位計によって測定された第2距離データとを合成し、トレッド部の表面形状を表す距離データを取得する。これにより、陸部の側壁領域での距離データの欠落が抑制され、側壁領域を含むトレッド部の表面形状が測定されうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のトレッド形状測定方法に使用されるトレッド形状測定装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2】上記トレッド形状測定装置の形状測定部を示す側面図である。
図3】上記トレッド形状測定装置の形状測定部を示す別の側面図である。
図4】本発明のトレッド形状測定方法の処理手順を示すフローチャートである。
図5】補正前後における第1距離データを示すグラフである。
図6】補正前後における第2距離データを示すグラフである。
図7】第1距離データを補正する要領を示す形状測定部の側面図である。
図8】第1距離データ及び第2距離データを合成することにより得られた距離データを示すグラフである。
図9】従来のトレッド形状測定装置によって得られた距離データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明のトレッド形状測定方法(第1発明)に使用されるトレッド形状測定装置1(第2発明)の一実施形態を示している。
【0016】
本実施形態のトレッド形状測定装置1は、トレッド部101の表面形状が測定されるタイヤ100を支持するタイヤ支持部2と、タイヤ100のトレッド部101の表面形状を測定するための形状測定部3と、形状測定部3から出力されたデータを処理するデータ処理部4とを有する。
【0017】
トレッド形状測定装置1は、タイヤ周方向にのびる周方向溝102を有するトレッド部101の形状測定に好適である。
【0018】
タイヤ支持部2は、タイヤ100をタイヤ軸廻りに回転可能に支持する。タイヤ支持部2は、タイヤ100に装着される測定用リム(図示せず)と、測定用リムをタイヤ軸廻りに回転可能に支持する支持軸22と、支持軸22を一定の角速度で回転駆動する駆動手段(図示せず)等を有している。測定用リムに装着されたタイヤ100の内腔空間には、適宜内圧が充填されている。
【0019】
形状測定部3は、非接触式のレーザー変位計31、32を含む。レーザー変位計31、32は、測定対象物にレーザー光を照射してその反射光を電気信号に変換することにより、レーザー変位計31、32から測定対象物までの距離データを測定する。
【0020】
各レーザー変位計31、32とデータ処理部4とは、有線又は無線による通信手段(図示せず)によって接続されている。各レーザー変位計31、32によって測定された距離に相当する電気信号(距離データ)は、データ処理部(計算手段)4に転送される。
【0021】
データ処理部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ハードディスク装置等を有するコンピューター装置が適用されうる。データ処理部4は、ハードディスク装置等に格納されているプログラムに応じて動作する。例えば、データ処理部4は、各レーザー変位計31、32から転送された距離データ等を記憶し、CPUが各種の演算処理、情報処理等を実行することにより、トレッド部の表面形状を取得する。
【0022】
図2、3は、形状測定部3を示している。レーザー変位計31、32は、支持部33によって支持されている。支持部33は、レーザー変位計31、32をタイヤ100の子午線断面内で支持する。
【0023】
支持部33は、タイヤ100の軸方向に配されたレール34に沿って移動可能に構成されている。支持部33は、駆動手段(図示せず)によって駆動され、レーザー変位計31、32をタイヤ軸方向に移動させる。駆動手段は、レーザー変位計31、32のタイヤ軸方向の移動距離に応じた電気信号をデータ処理部4に出力する。駆動手段が出力する電気信号は、トレッド部101の形状の計算に用いられる。
【0024】
タイヤ100を回転させながら、レーザー変位計31、32をタイヤ軸方向に例えばタイヤ軸方向に1mmずつ移動させることにより、トレッド部101の全周の形状データに相当する距離データが取得される。
【0025】
図1に示されるように、レール34は、タイヤ100のサイズに応じて、タイヤ100のタイヤ半径方向に位置調整可能に構成されているのが望ましい。これにより、種々のサイズのタイヤ100について、トレッド部101の形状を迅速に測定可能となる。
【0026】
図2に示されるように、本実施形態の第1レーザー変位計31は、例えば、レーザー光を照射部31aから出射させ、測定対象物によって拡散反射されたレーザー光を受光部31bから入射させ、受光素子(図示せず)で検出し光電変換する。照射部31aから測定対象物までの距離が変動すると、受光素子上での受光位置が変動する。従って、レーザー変位計31は、照射部31aから測定対象物までの距離に対応する電気信号を出力する。
【0027】
第1レーザー変位計31は、レーザー照射光Lの軸線がタイヤ赤道面Cに対して正の角度で傾くように配されている。正の角度で傾くとは、図2において、第1レーザー変位計31のレーザー照射光Lがタイヤ赤道面Cに対して反時計回りに傾いていることを意味する。第1レーザー変位計31が、レーザー照射光Lの軸線がタイヤ赤道面Cに対して正の角度で傾くように配されているので、周方向溝102によって区分される陸部103のタイヤ軸方向一方側の側壁103aにレーザー照射光Lが入射され、その反射光が受光部31bによって検出されやすくなる。
【0028】
図3に示されるように、本実施形態の第2レーザー変位計32は、第1レーザー変位計31と同等の構成、すなわち、照射部32a及び受光部32bを有している。
【0029】
第2レーザー変位計32は、レーザー照射光Lの軸線がタイヤ赤道面Cに対して負の角度で傾くように配されている。負の角度で傾くとは、図3において、第2レーザー変位計32のレーザー照射光Lがタイヤ赤道面Cに対して時計回りに傾いていることを意味する。第2レーザー変位計32が、レーザー照射光Lの軸線が負の角度で傾くように配されているので、周方向溝102によって区分される陸部103のタイヤ軸方向一方側の側壁103bにレーザー照射光Lが入射され、その反射光が受光部32bによって検出されやすくなる。
【0030】
第1レーザー変位計31のレーザー照射光Lの軸線の上記正の角度と、第2レーザー変位計32のレーザー照射光Lの軸線の上記負の角度は、絶対値が等しいことが望ましい。これにより、陸部103のタイヤ軸方向一方側の側壁103a及び他方側の側壁103bにレーザー照射光Lが照射され易くなる。また、第1レーザー変位計31及び第2レーザー変位計32の角度調整が容易に行える。
【0031】
第1レーザー変位計31のレーザー照射光Lの軸線の上記正の角度は、第1レーザー変位計31の照射部31aから出射された出射光と受光部31bに入射する入射光とのなす角度θ以上であることが望ましい。より望ましい上記正の角度は、上記出射光と入射光とのなす角度θである。これにより、周方向溝102の幅が小さい場合であっても、側壁103a及びに溝底に第1レーザー変位計31のレーザー照射光Lを入射させやすくなり、距離データの欠落がより一層抑制される。
【0032】
第2レーザー変位計32のレーザー照射光Lの軸線の上記負の角度の絶対値についても、上記正の角度と同様である。すなわち、第2レーザー変位計32のレーザー照射光Lの軸線の上記負の角度の絶対値は、第2レーザー変位計32の照射部32aから出射された出射光と受光部32bに入射する入射光とのなす角度θ以上であることが望ましい。より望ましい上記負の角度は、上記出射光と入射光とのなす角度θである。
【0033】
なお、形状測定部3は、第1レーザー変位計31及び第2レーザー変位計32に加えて別のレーザー変位計を含んでいてもよい。例えば、当該別のレーザー変位計は、レーザー照射光Lの軸線がタイヤ赤道面Cに対して平行に配されていてもよい。このようなレーザー変位計によれば、溝底の形状を容易に測定することが可能となる。
【0034】
図4は、本発明のトレッド形状測定方法の処理手順を示している。トレッド形状測定方法は、測定工程S1と計算工程S2とを含む。
【0035】
測定工程S1では、第1レーザー変位計31と、第2レーザー変位計32とをタイヤ子午線断面内で、タイヤ軸方向に移動させながら、各レーザー変位計31、32からトレッド部101の表面までの距離データが測定される。
【0036】
図5は、第1レーザー変位計31によって測定された第1距離データD1が示されている。第1レーザー変位計31が、レーザー照射光Lの軸線がタイヤ赤道面Cに対して正の角度θで傾くように配されているので、陸部103の一方側の側壁103aが測定されている。第1距離データD1では、陸部103の他方側の側壁103bのデータは欠落している。
【0037】
図6は、第2レーザー変位計32によって測定された第2距離データD2が示されている。第2レーザー変位計32が、レーザー照射光Lの軸線がタイヤ赤道面Cに対して負の角度−θで傾くように配されているので、陸部103の他方側の側壁103bが測定されている。第2距離データD2では、陸部103の一方側の側壁103aのデータは欠落している。
【0038】
計算工程S2では、データ処理部4が、第1距離データD1と第2距離データD2とを合成する。これにより、トレッド部101の表面形状を表す一つの距離データが得られる。
【0039】
本実施形態では、第1レーザー変位計31及び第2レーザー変位計32がタイヤ赤道面Cに対して傾けて配されているので、第1レーザー変位計31及び第2レーザー変位計32から出力された値を、レーザー照射光Lの軸線の傾きに応じて補正した後、合成するのが望ましい。
【0040】
すなわち、計算工程S2は、第1レーザー変位計31によって測定された第1距離データD1を正の角度θに応じて補正し、第2レーザー変位計32によって測定された第2距離データD2を負の角度−θに応じて補正する補正工程を含む。
【0041】
図7は、第1レーザー変位計31によって測定される第1距離データD1を補正する要領を示している。補正工程では、データ処理部4が、下記式を用いて第1距離データD1を補正する。
タイヤ半径方向の補正
L2=L1×cosθ
L1:測定中のレーザー変位計の基準位置O’からトレッド部の表面までの距離(補正前の距離)
L2:測定中のレーザー変位計の基準位置O’から測定箇所までのタイヤ半径方向の距離(補正後の距離)
タイヤ軸方向の補正
Y2=Y1+α
α=L1×sinθ
Y1:タイヤ軸方向に移動する前のレーザー変位計の基準位置Oから、測定中のレーザー変位計の基準位置O’までのタイヤ軸方向の距離(補正前の距離)
Y2:タイヤ軸方向に移動する前のレーザー変位計の基準位置Oから測定箇所までのタイヤ軸方向の距離(補正後の距離)
第2距離データD2に関しても、第1距離データD1と同様に補正される。
【0042】
図5及び図6では、補正前の第1距離データD1及び第2距離データD2と共に、補正後の第1距離データD11及び第2距離データD12が示されている。そして、データ処理部4は、補正後の第1距離データD11と補正後の第2距離データD12とを合成して、トレッド部101の表面形状を表す一つの距離データを計算する。
【0043】
図8は、データ処理部4によって計算されたトレッド部101の表面形状を表す距離データD20を示している。本実施形態では、第1レーザー変位計31及び第2レーザー変位計32がタイヤ赤道面Cに対して互いに逆向きに傾けて配されているので、陸部の側壁領域での欠落の生じない距離データD20が取得される。
【0044】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0045】
図1に示されるトレッド形状測定装置を用い、サイズ:255/55R18の空気入りタイヤが9×18のリムに装着され、内圧:250kPaの条件で、トレッド部の形状が測定された。第1レーザー変位計及び第2レーザー変位計には、キーエンス社製のレーザー変位計:LKG−150が用いられた。第1レーザー変位計は、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して+17゜で傾けられ、第2レーザー変位計は、レーザー出射光の軸線がタイヤ赤道面に対して−17゜で傾けられた。第1レーザー変位計及び第2レーザー変位計によって、タイヤ一周あたり4096点の第1距離データ及び第2距離データが測定され、図8に示されるトレッド部の表面形状を表す距離データが取得された。比較例として、レーザー光の軸線がタイヤ赤道面と平行になるように配された単一のレーザー変位計を用いて測定された距離データが図9に示される。
【0046】
図8、9から明らかなように、本発明のトレッド形状測定方法は、比較例と比べて陸部の側壁領域で欠落の生じない距離データが取得できることが確認された。
【符号の説明】
【0047】
1 トレッド形状測定装置
31 第1レーザー変位計
32 第2レーザー変位計
S1 測定工程
S2 計算工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9