(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記設定部は、前記検出部が検出した中心位置が前記画像解析範囲の中心となるように、前記画像解析範囲を設定するように構成される、請求項1または2に記載の移動量検知装置。
前記検出部は、前記2次元センサー上に形成されるパターンにおいて輝度が最も高い位置を前記中心位置として検出するように構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動量検知装置。
前記検出部は、前記基準画像を撮影してから予め定められた時間を経過したことに応じて、前記撮影部が直近に撮影した新規画像における前記パターンの中心位置を検出するように構成され、
前記設定部は、前記検出部が検出した前記新規画像における前記パターンの中心位置に基づいて、前記画像解析範囲を更新するように構成される、請求項11に記載の移動量検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この技術的思想の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施形態および各構成は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0028】
(技術思想)
図1は、実施形態に従う移動体の搬送速度を算出する方法を概略的に示す概念図である。
図1を参照して、ある実施形態に従う画像形成装置100は、搬送経路R1と、撮影部70と、FPGA(Field-Programmable Gate Array)86とを有する。記録媒体であるシートSが、搬送経路R1上を搬送されている。換言すれば、シートSは移動体である。
【0029】
撮影部70は、光源81と、2次元センサー84とを含む。光源81は、搬送経路R1に向けて光を照射する。2次元センサー84は、シートSの搬送方向(以下、「横方向」とも称する)およびこの搬送方向に直交する直交方向(以下、「縦方向」とも称する)に配列される複数の光電変換素子を有する。2次元センサー84は、搬送中のシートSによる反射光を光電変換素子によって検知する。換言すれば、2次元センサー84は、搬送中のシートSを撮影して、画像を生成する。2次元センサー84は、生成した画像をFPGA86に送信する。
【0030】
ある局面において、撮影部70は、異なるタイミングで撮影した第1画像と第2画像とをFPGA86に出力する。FPGA86に含まれる移動量算出部90は、第1画像および第2画像とに基づいて、第1および第2画像の撮影タイミング間におけるシートSの移動量を算出する。
【0031】
より具体的には、移動量算出部90は、第1画像および第2画像から解析範囲の画像を切り取り、切り取った2枚の画像に基づいてシートSの移動量を算出する。その理由は、第1画像と第2画像とをそのまま用いて移動量を算出する場合、処理量が多く、移動量算出までに要する時間が長くなってしまうためである。
【0032】
画像形成装置100の製造段階において、光源81が照射する光の光軸が2次元センサー84の中央を貫くように、光源81と2次元センサー84との位置関係が設定される。この状態において光源81は、光路110に従い光を照射する。2次元センサー84は、シートSによる反射光が形成するパターン110−Aを検出する。パターン110−Aの中心位置110−Cが2次元センサー84の中央となる。移動量算出部90は、2次元センサー84の中央を中心位置とする範囲110−Lを解析範囲として利用する。すなわち、移動量算出部90は、パターン110−Aのうち、範囲110−Lに対応する画像を用いて移動量を算出する。その理由は、解析範囲は、シートSの反射光が形成するパターン(スペックルパターン)の中央であるほど、移動量の誤差が小さくなるためである。
【0033】
しかしながら、光源81と2次元センサー84との位置関係は、画像形成装置100の耐久とともに変化し得る。例えば、光源81や2次元センサー84を固定する板金が熱膨張などにより変化するためである。
【0034】
ある局面において、光源81が予め設定された位置から傾いたとする。この状態において、光源81は、光路120に従い光を照射する。2次元センサー84は、シートSによる反射光が形成するパターン120−Aを検出する。パターン120−Aの中心位置120−Cは2次元センサー84の中央から横方向にずれている。この状態で、移動量算出部90がパターン120−Aのうち、範囲110−Lに対応する画像を用いて移動量を算出した場合、移動量の誤差が大きくなる。ある実施形態に従う画像形成装置100は、このような課題を解決し得る。
【0035】
画像形成装置100のFPGA86は、検出部88と、設定部89とをさらに含む。検出部88は、シートSによる反射光が2次元センサー84上に形成するパターンの中心位置を検出する。例えば、2次元センサー84上にパターン120−Aが形成されたことに応じて、検出部88は、パターン120−Aの中心位置120−Cを検出する。設定部89は、検出部が検出した中心位置に基づいて、移動量算出部90が画像解析を行なう解析範囲を設定する。例えば、設定部89は、中心位置120−Cが中央となる範囲120−Lを解析範囲として設定する。
【0036】
移動量算出部90は、第1画像における解析範囲の画像と、第2画像における解析範囲の画像とに基づいて、第1および第2画像の撮影タイミング間におけるシートSの移動量を算出する。FPGA86は、移動量算出部90が算出した移動量に基づきシートSの移動速度(搬送速度)を後述する制御部6に出力する。制御部6は、この搬送速度に基づき、画像形成装置の各種制御を実行する。
【0037】
上記によれば、ある実施形態に従う画像形成装置100は、光源81と2次元センサー84との位置関係が変化した場合であっても、精度よくシートSの搬送速度を検出することができる。以下に、このような制御を実現し得る画像形成装置100の具体的な構成および制御について説明する。
【0038】
(画像形成装置100の構成)
図2は、ある実施形態に従う画像形成装置100の構成例を説明する図である。
図2には、カラープリンターとしての画像形成装置100が示されている。以下では、カラープリンターとしての画像形成装置100について説明するが、画像形成装置100は、カラープリンターに限定されない。例えば、画像形成装置100は、モノクロプリンターであってもよいし、モノクロプリンター、カラープリンターおよびFAXの複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)であってもよい。
【0039】
図2に示されるように、画像形成装置100は、画像形成部1と、中間転写部2と、シート供給部3と、定着装置4と、シート巻取り部5と、制御部6などを備える。画像形成装置100は、ネットワーク(例えば、LAN:Local Area Network)に接続されており、外部の端末装置(不図示)からの印刷ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)色からなるカラーの画像形成を実行する。
【0040】
画像形成部1は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像ユニット10Y〜10Kを備えている。作像ユニット10Yは、一定速度で回転する感光体ドラム11Yの表面を帯電させ、帯電された感光体ドラム11Y上に、露光部の露光走査により静電潜像が形成されると、その静電潜像をY色のトナーで現像して、現像後のY色トナー像を中間転写ベルト21に静電的に一次転写する。
【0041】
他の作像ユニット10M、10C、10Kも、作像ユニット10Yと同様の帯電、露光、現像、一次転写の各工程を実行し、感光体ドラム11M上のM色トナー像、感光体ドラム11C上のC色トナー像、感光体ドラム11K上のK色トナー像を中間転写ベルト21に一次転写する。
図2では、1ページの原稿画像を表わすY〜K色のトナー像が中間転写ベルト21上で多重転写されるようにY〜K色のトナー像の形成タイミングが予め決められる。複数ページの原稿が存する場合は、原稿の1ページごとに、1ページ分の原稿画像に相当するトナー像が中間転写ベルト21上においてベルト周回方向に一定間隔をあけて順次、形成される。
【0042】
中間転写部2は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を張架する駆動ローラー22と従動ローラー23、24、25と、2次転写ローラー26などを備える。
【0043】
駆動ローラー22は、ベルトモーター71の回転駆動力により回転して、中間転写ベルト21を同図の矢印で示す方向に周回走行させる。ベルトモーター71は、例えば、DC(Direct Current)ブラシレスモーターからなる。従動ローラー23、24、25は、中間転写ベルト21の周回走行に伴って従動回転する。
【0044】
中間転写ベルト21の周回中に作像ユニット10Y〜10KによるY〜K色のトナー像が中間転写ベルト21の周面に多重転写される。
【0045】
中間転写ベルト21上に多重転写されたY〜K色のトナー像は、中間転写ベルト21の周回走行により、中間転写ベルト21を挟んで駆動ローラー22と対向配置される2次転写ローラー26に向けて搬送される。
【0046】
2次転写ローラー26は、中間転写ベルト21の二次転写位置261で中間転写ベルト21の周面に接しており、中間転写ベルト21の周回走行に伴って従動回転する。
【0047】
シート供給部3は、回転軸31に巻き付けられたロール紙33から長尺状のシートSを供給ローラー32を介して給紙調整部34に送る。給紙調整部34は、供給ローラー32からのシートSを画像形成装置100の本体9の搬送ローラー35に向けて搬送するが、シート供給部3におけるロール紙33から送り出されるシートSの搬送速度と、本体9におけるシートSの搬送速度との速度差を吸収するために、長尺状のシートSを弛ませて保持し、本体9へのシートSの給紙を調整する。なお、シートSは、普通紙だけでなく、例えばラベル紙などが用いられる場合もある。
【0048】
搬送ローラー35に供給されたシートSは、2次転写位置261、定着装置4、排出ローラー46、シート巻取り部5の排紙調整部53、搬送ローラー52を介して巻取りローラー51により巻取られる。排紙調整部53は、本体9におけるシートSの搬送速度と、シート巻取り部5の巻取りローラー51によるシートSの搬送速度との速度差を吸収するために、長尺状のシートSを弛ませて保持し、本体9からのシートSの排紙を調整する。
【0049】
シートSの巻取り中に、2次転写位置261を通過するシートSの表側(すなわち、中間転写ベルト21に接する側)の面に、中間転写ベルト21上で多重転写されたY〜K色のトナー像が2次転写ローラー26により静電的に一括して2次転写される。中間転写ベルト21上に複数ページのトナー像がベルト周回方向に一定間隔をあけて形成されている場合、長尺状のシートSが2次転写位置261を通過する間に、各ページのトナー像が一つずつ順番にシートS上に2次転写されていく。シートS上に2次転写された各ページのトナー像は、巻取られるシートSとともに定着装置4に搬送される。
【0050】
定着装置4は、ヒーター43が内挿されている筒状の加熱ローラー40と、筒状の定着ローラー41と、定着ローラー41とのニップ部45において定着ローラー41に所定の圧力で圧接されている加圧ローラー42とを備える。定着装置4は、ヒーター43を所定温度に加熱することで加熱ローラー40を熱する。加熱ローラー40が回転することにより熱が定着ローラー41と加圧ローラー42とのニップ部45に伝えられる。定着装置4は、ニップ部45の温度をトナーの定着に必要な温度(たとえば、150℃)に維持する。
【0051】
定着ローラー41は、DCブラシレスモーターからなる定着モーター72により
図2の矢印方向に駆動され、回転軸47を中心に回転する。なお、定着ローラー41ではなく、加熱ローラー40が回転駆動されてもよい。加圧ローラー42は、定着ローラー41に従動回転する。定着ローラー41および加圧ローラー42は、シートSを挟持搬送しつつ、シートS上への2次転写後のトナー像がニップ部45を通過する際に、加熱および加圧することによりそのトナー像をシートSの表側に熱定着させる。
【0052】
巻取り中のシートSは、定着ローラー41と2次転写ローラー26とに跨って搬送される。この搬送中に、シートSのうち、定着ローラー41と2次転写ローラー26との間に存するシート部分Sdに弛みが生じると、ニップ部45でシートSに皺が生じることがある。
【0053】
そこで、シートSの皺の発生を防止するため、シート部分Sdにシート搬送方向にある程度の張力が作用するようにしている。この張力は、例えば、2次転写ローラー26の回転速度に対して、定着ローラー41の回転速度を一定値だけ速く駆動させることにより生じる。
【0054】
シートSの搬送速度は、センサーユニット44によって検知される。センサーユニット44は、ニップ部45よりもシート搬送方向上流側かつシートSの搬送経路R1における位置Pよりも下側であり、ニップ部45の近傍の位置に配されている。センサーユニット44は、定着ローラー41と加圧ローラー42とにより挟持搬送されるシートSの裏側(すなわち、トナー像が転写されない側)の面の搬送速度を測定する。センサーユニット44は、シートSの搬送中に一定間隔(たとえば、数ミリ秒など)ごとに、シート表面の搬送速度を測定し、その測定結果を制御部6に送る。
【0055】
(センサーユニット44の構成)
図3は、センサーユニット44の構成例について説明する図である。
図3に示される例において、シートSが定着装置4に搬送されている。
【0056】
センサーユニット44は、撮影部70と、ADC(Analog-to-Digital Converter)85と、FPGA86と、ROM92とを備える。センサーユニット44は、シートSによる反射光が2次元センサー84上に形成するスペックルパターンを利用して、ある期間における搬送中のシートSの移動量を算出するための移動量検知装置として機能する。換言すれば、センサーユニット44は、シートSの搬送速度を測定する非接触式のセンサーである。
【0057】
撮影部70は、レーザー装置を含む光源81と、コリメータレンズであるレンズ82およびレンズ83と、2次元センサー84とを含む。
【0058】
2次元センサー84は、横方向および縦方向に配列される複数の光電変換素子を有する。ある実施形態において、横方向に配列される光電変換素子の数は、縦方向に配列される光電変換素子の数よりも多い、これにより、移動量算出部90は、より精度よくシートSの移動量を算出し得る。
【0059】
画像形成装置100の製造段階において、光源81は、搬送経路R1上における所定の照射位置Spに向けてレーザー光を発するように設定される。光源81から発せられたレーザー光は、レンズ82を通って、搬送中のシートSの面Saに照射される。
【0060】
シートSの面Saに入射するレーザー光とシートSの面Saとのなす角度θ2は、
図3では45°になっている。なお、角度θ2は、45°に限られず、例えば20°〜45°の範囲内のいずれかの角度としても良い。
【0061】
シートSの面Saは、微視的に見れば微小な凹凸を有する粗面といえ、この粗面にレーザー光(コヒーレント光)が照射されると、スペックルと呼ばれる粒状の模様が生じる。スペックルは、その粗面の各場所からのレーザー光の乱反射による散乱光の重ね合わせにより位相の異なる光が重なり合うために生じるものである。
【0062】
スペックルが生じたレーザー光のうち、シートSの面Saに対して角度θ1(たとえば、90°)で反射した反射光は、照射位置Spの直下に設けられているレンズ83を通って、受光部としての2次元センサー84の検知面に集光される。これにより、2次元センサー84の検知面において、その真上に位置するシートSの面Saに生じたスペックルパターンを検知することができる。
【0063】
スペックルは、シートSが移動しなければ変化しないが、シートSが移動すると変化する。シートSの搬送により、レーザー光の照射位置Spを通過する粗面の凹凸の部分が各時点で変わり、レーザーの乱反射光の重ね合わせの状態もその各時点で変化するからである。
【0064】
スペックルの変化速度は、シートSの搬送速度に依存し、スペックルの変化により、2次元センサー84の検知面におけるレーザー光の受光量も変化する。したがって、2次元センサー84の検知面におけるレーザー光の受光量の時間変化を検知することにより、シートSの表面の移動速度を測定することができる。よって、レーザー光のシートSへの照射位置Spは、シート表面の移動速度の測定位置といえる。
【0065】
2次元センサー84は、その検知面に集光されたレーザー光の受光量に応じたアナログの電圧信号を一定周期、例えば数ミリ秒ごとにADC(Analog to Digital Converter)85に出力する。
【0066】
ADC85は、2次元センサー84からのアナログの電圧信号を一定周期で受信するごとにデジタル信号に変換して、変換後のデジタル信号をFPGA86に出力する。
【0067】
FPGA86は、ノイズフィルタ87と、検出部88と、設定部89と、移動量算出部90とを含む。
【0068】
ノイズフィルタ87は、例えば、高感度ノイズを低減するための平滑化フィルタ,メディアンフィルタを含む。
【0069】
検出部88は、ノイズフィルタ87により処理された画像を受け付ける。検出部88は、この画像の中からシートSによる反射光が形成するスペックルパターンの中心位置を検出する。この処理の詳細は、
図12〜
図16を用いて後述される。
【0070】
設定部89は、検出部88が検出した中心位置が中央となるように解析範囲を算出する。設定部89は、ROM92に算出した解析範囲94を格納する。
【0071】
移動量算出部90は、ROM92に格納される解析範囲94に従い、異なるタイミングで撮影された2枚の画像それぞれから解析画像を切り出す。移動量算出部90は、2枚の解析画像に基づいて、当該2枚の画像の撮影タイミング間におけるシートSの移動量を算出する。移動量算出部90は、2枚の画像の撮影タイミング間隔と、算出した移動量とに基づいて、シートSの搬送速度を算出する。移動量算出部90は、算出したシートSの搬送速度を制御部6に出力する。制御部6は、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって構成され得る。
【0072】
制御部6は、搬送されているシートSの搬送速度をセンサーユニット44から取得する。制御部6は、シートSの搬送速度に基づいて、定着ローラー41を駆動する定着モーター72の回転速度を制御し、シートSの搬送速度を予め定められた目標速度にする。これにより、制御部6は、例えば、ニップ部45でシートSに皺が生じることを抑制し得る。
【0073】
なお、制御部6は、センサーユニット44から取得したシートSの搬送速度に基づき、駆動ローラー22を駆動する2次転写モーター73の回転速度をさらに制御してもよい。このとき、制御部6は、定着モーター72の回転速度が2次転写モーター73の回転速度よりも速くなるように、2次転写モーター73を制御する。これにより、シートSは、定着装置4に引っ張られ、ニップ部45でシートSに皺が生じることを防止し得る。
【0074】
(シートSの移動)
図4は、異なるタイミングで撮影された2枚の画像を示す図である。
図4に示される画像は、2次元センサー84の検知面に集光されたレーザー光のスペックルパターンの撮影画像から、解析範囲を切り出した画像を表す。
【0075】
画像410は、1枚目に撮影した画像を表し、画像420は、画像410より後に撮影した画像(2枚目に撮影した画像)を表す。画像420が撮影されたときのシートSは、画像410が撮影されたときのシートSに比して、定着モーター72等の作用により搬送方向に移動している。
図4に示される例において、画像420が撮影されたときのシートSは、移動量ΔLだけ画像410が撮影されたときのシートS位置より搬送方向に移動している。
【0076】
(関連技術に従う移動量の算出)
図5は、関連技術に従う移動量の算出方法について説明する図である。関連技術に従う移動量算出部90Rは、切り出しユニット510と、離散フーリエ変換ユニット520と、規格化処理ユニット530と、合成ユニット540と、逆離散フーリエ変換ユニット550とを含む。
【0077】
移動量算出部90Rの切り出しユニット510には、異なるタイミングで撮影された2枚の画像である第1画像と第2画像を示すデータが入力される。
【0078】
切り出しユニット510は、第1画像および第2画像から予め定められた範囲の画像である第1解析画像と第2解析画像とを切り出す。一例として、予め定められた範囲は、入力された画像の中央を中心位置とする範囲であるとする。
【0079】
離散フーリエ変換ユニット520は、切り出しユニット510から入力される第1解析画像および第2解析画像を示すデータに対して、離散フーリエ変換処理を実行することにより、当該データを各波数成分に分解する。離散フーリエ変換ユニット520は、各波数成分ごとに分解したデータを、規格化処理ユニット530に出力する。
【0080】
規格化処理ユニット530は、各波数成分ごとに、第1解析画像に対応する振幅と、第2解析画像に対応する振幅とを乗算する。これにより、規格化処理ユニット530は、各波数ごとの振幅の大きさを規格化するとともに、各波数ごとの位相情報を抽出する。規格化処理ユニット530は、抽出した位相情報を合成ユニット540に出力する。
【0081】
合成ユニット540は、各波数ごとに抽出された位相情報を合成する。合成ユニット540は、合成した位相情報に基づいて、ピークのシフト量を算出することにより、第1解析画像と第2解析画像との位相差を導出する。合成ユニット540は、導出した位相差を逆離散フーリエ変換ユニット550に出力する。
【0082】
逆離散フーリエ変換ユニット550は、導出された波数空間における位相差に対して逆離散フーリエ変換処理を行なうことにより、この位相差を実空間における距離、すなわち、第1画像および第2画像の2枚の画像の撮影タイミング間における、シートSの移動量に変換する。
【0083】
上記のように、関連技術に従う移動量算出部90Rは、スペックルパターンにおける予め定められた範囲を解析範囲として、シートSの移動量を算出する。この関連技術に従う移動量算出部90の問題点について、次の
図6を用いて説明する。
【0084】
図6は、スペックルパターンにおける解析範囲と、算出される移動量との関係を説明する図である。
【0085】
図6の画像600を参照して、スペックルパターン(シートSによる反射光が2次元センサー84上に形成するパターン)の中央部ほど光量が多い(輝度が高い)ことが読み取れる。理想的には、ほぼ平行光を照射する光源81とコリメートレンズであるレンズ82とを組み合わせることにより、中央部の輝度と、周辺部の輝度とは等しくなるはずであるが、僅かな拡散の影響等により、中央部の輝度に比して、周辺部の輝度が低くなっている。
【0086】
このような状況において、スペックルパターンの中央部である範囲610を、切り出しユニット510による切り出し範囲(すなわち、解析範囲)とした場合に算出される移動量を、理想的な移動量であると定義する。スペックルパターンの中央部から少し横方向にずれた範囲620を切り出しユニット510による解析範囲とした場合に算出される移動量は、理想的な移動量に対し、0.025%異なる。スペックルパターンの中央部から大きく横方向にずれた範囲630を切り出しユニット510による解析範囲とした場合に算出される移動量は、理想的な移動量に対し、0.15%異なる。
【0087】
図6に示されるように、解析範囲の位置が、スペックルパターンの中央から離れる程、移動量の誤差が大きくなる。
【0088】
上述のように、関連技術に従う移動量算出部90Rの切り出しユニット510は、入力された画像に対して予め定められた範囲を解析画像として切り出すように構成される。そのため、画像形成装置100の使用に伴い、光源81と、2次元センサー84との位置関係が変化した場合、2次元センサー84上に形成されるスペックルパターンの位置が変化する。これにより、予め定められた解析範囲がスペックルパターンの中央位置から外れる。この場合、関連技術に従う移動量算出部90Rは、移動体の移動速度を精度よく検出できない。
【0089】
(スペックルパターンのずれ方)
次に
図7〜
図10を用いて、2次元センサー84上に形成されるスペックルパターンの位置のずれ方を説明する。
【0090】
図7は、スペックルパターンが横方向にずれていることを表す図である。光源81が照射する光とシートSとのなす角度θ2が45°、かつ、シートSと2次元センサー84とが平行である場合に、2次元センサー84上にスペックルパターン110−Aが形成されるものとする。このスペックルパターン110−Aの中心位置は、2次元センサー84の中央に一致するものとする。
【0091】
ここから、光源81と2次元センサー84との位置関係が変更され、例えば、角度θ2が45°未満になったとする。これにより、2次元センサー84上に形成されるスペックルパターン700は、スペックルパターン110−Aに比して横方向(搬送方向と逆側)に移動する。この場合、移動量の算出に用いられる解析範囲は、解析範囲110−Lから横方向にずれた解析範囲700−Lに変更されるべきである。
【0092】
図8は、スペックルパターンが縦方向にずれていることを表す図である。光源81と2次元センサー84との位置関係が変更され、例えば、光源81が照射する光の光軸と、搬送方向と直交する縦方向とがなす角度が非90°になったとする。これにより、2次元センサー84上に形成されるスペックルパターン800は、スペックルパターン110−Aに比して縦方向に移動する。この場合、移動量の算出に用いられる解析範囲は、解析範囲110−Lから縦方向にずれた解析範囲800−Lに変更されるべきである。
【0093】
図9は、スペックルパターンが2次元センサー84からはみ出していることを表す図である。光源81と2次元センサー84との位置関係が変更され、例えば、角度θ2が40°未満になったとする。これにより、2次元センサー84は、シートSによる反射光(すなわち、スペックルパターン900)の一部しか検知しない。この場合、移動量の算出に用いられる解析範囲は、解析範囲110−Lから横方向にずれた解析範囲900−Lに変更されるべきである。
【0094】
図10は、スペックルパターンが2次元センサー84よりも大きいことを表す図である。スペックルパターンの大きさは、光源81のアパーチャー(絞り)の口径に依存するものである。そのため、ある局面において、光源81が照射する光とシートSとのなす角度θ2が45°、かつ、シートSと2次元センサー84とが平行である場合に形成されるスペックルパターン1010−Aは、2次元センサー84よりも大きくなり得る。なお、本開示において、光源81のアパーチャーは楕円形(すなわち、スペックルパターンが楕円形)であるとしているが、他の局面において、光源81のアパーチャーの形状は楕円形に限られず、四角形その他の形状を採用し得る。
【0095】
図10の例において、光源81と2次元センサー84との位置関係が変更され、角度θ2が45°未満になったとする。これにより、2次元センサー84上に形成されるスペックルパターン1020−Aは、スペックルパターン1010−Aに比して横方向(搬送方向と逆側)に移動する。この場合、移動量の算出に用いられる解析範囲は、解析範囲1010−Lから横方向にずれた解析範囲1020−Lに変更されるべきである。
【0096】
(横方向に従う輝度分布、縦方向に従う輝度分布)
図11は、横方向に従う輝度分布、縦方向に従う輝度分布を説明する図である。分図(A)において、2次元センサー84の中央と、スペックルパターンの中央位置とが一致している。分図(B)において、2次元センサー84の中央に対して、スペックルパターンの中央位置が横方向にずれている。
【0097】
分図(C)は、スペックルパターンの横方向に従う輝度分布を説明する図である。分布1110は、分図(A)に示されるスペックルパターンの横方向に従う輝度分布である。分布1120は、分図(B)に示されるスペックルパターンの横方向に従う輝度分布である。横方向に従う輝度分布とは、2次元センサー84を構成する複数の光電変換素子のうち、縦方向に配列される複数の光電変換素子が検出する輝度(光量)を足し合わせた輝度の分布を表す。分図(C)に示される例において、画素位置100pixelの横方向に従う輝度は、2次元センサー84を構成する複数の光電変換素子のうち、横方向の画素位置100pixelに配列される1024個の光電変換素子が検出する輝度を足し合わせた輝度を示す。
【0098】
分図(C)に示されるように、分布1110のピーク位置1110−Pは、2次元センサー84の横方向の中央位置(680pixel)に現れる。一方、分布1120のピーク位置1120−Pは、2次元センサー84の横方向の中央位置からずれている。
【0099】
分図(D)は、スペックルパターンの縦方向に従う輝度分布を説明する図である。分布1130は、分図(A)に示されるスペックルパターンの縦方向に従う輝度分布である。分布1140は、分図(B)に示されるスペックルパターンの縦方向に従う輝度分布である。縦方向に従う輝度分布とは、2次元センサー84を構成する複数の光電変換素子のうち、横方向に配列される複数の光電変換素子が検出する輝度(光量)を足し合わせた輝度の分布を表す。分図(D)に示される例において、画素位置100pixelの縦方向に従う輝度は、2次元センサー84を構成する複数の光電変換素子のうち、縦方向の画素位置100pixelに配列される1360個の光電変換素子が検出する輝度を足し合わせた輝度を示す。
【0100】
分図(D)に示されるように、分布1130のピーク位置1130−Pは、2次元センサー84の横方向の中央位置(512pixel)に現れる。また、分布1140のピーク位置1140−Pも、2次元センサー84の横方向の中央位置(512pixel)に現れる。これは、分図(A)および分図(B)に示されるスペックルパターンの中心位置が、2次元センサー84の縦方向における中央に位置するためである。
【0101】
(スペックルパターンの中心位置の検出)
次に、
図12〜
図16を用いて、検出部88によるスペックルパターンの中心位置の検出制御について説明する。
【0102】
図12は、スペックルパターンの中心位置を検出する制御を説明する図(その1)である。ある局面において、検出部88は、2次元センサー84が検出する輝度分布を、
図11の分図(C)のように、横方向に従う輝度分布1200に変換する。
【0103】
検出部88は、輝度分布1200から、スペックルパターンのエッジ(端部)を検出する。一例として、検出部88は、輝度分布1200において、しきい値輝度Cthとの上下関係が反転する画素位置を、エッジとして検出する。
【0104】
図12に示される例において、検出部88は、輝度分布1200から2カ所のエッジ1200−Lとエッジ1200−Rとを検出する。これにより、検出部88は、2次元センサー84上に横方向に従うスペックルパターンがすべて含まれている(例えば、
図7,
図8の状態)と判断する。
【0105】
検出部88は、輝度分布1200から2カ所のエッジを検出したことに応じて、エッジ1200−Lとエッジ1200−Rとの中間である画素位置1200−Cを、スペックルパターンの中心位置(例えば、(X,Y))のうち横方向における位置(X)であると判断する。
【0106】
図13は、スペックルパターンの中心位置を検出する制御を説明する図(その2)である。検出部88は、
図12と同様に、2次元センサー84が検出する輝度分布を横方向に従う輝度分布1300に変換する。
【0107】
検出部88は、輝度分布1300から、スペックルパターンのエッジ(端部)を検出する。
図13に示される例において、検出部88は、輝度分布1300から1カ所のエッジ1300−Lを検出する。検出部88は、輝度分布1300から2カ所のエッジを検出できなかったことに応じて、輝度分布1300においてピークが存在するか否かを判断する。
【0108】
図13に示される例において、検出部88は、輝度分布1300においてピーク位置1300−Pを検出する。検出部88は、この判断に応じて、ピーク位置1300−Pを、スペックルパターンの中心位置のうち横方向における位置であると判断する。
【0109】
なお、上記の
図12および
図13の例において、検出部88は、スペックルパターンの中心位置(例えば、(X,Y))における横方向における位置(X)を特定しているが、同様のアルゴリズムによって、中心位置における縦方向における位置(Y)も求めることができる。
【0110】
上記によれば、ある実施形態に従う検出部88は、2次元センサー84が検出する輝度分布を横方向に従う輝度分布と、縦方向に従う輝度分布とに変換することにより、スペックルパターンの中心位置(X,Y)を特定することができる。
【0111】
図14は、他の実施形態に従うスペックルパターンの中心位置を検出する制御を説明する図(その1)である。他の実施形態において、検出部88は、2次元センサー84が出力する輝度分布に基づき、スペックルパターンのエッジ1400を特定し得る。一例として、検出部88は、2次元センサー84の出力する輝度分布を、横方向または縦方向にスキャンする。このとき、検出部88は、輝度分布における輝度としきい値輝度Cthとの上限関係が反転する位置を、スペックルパターンのエッジ1400であると特定する。
【0112】
次に、検出部88は、所定の方向1410に従うエッジ間の距離を算出する。検出部88は、このエッジ間の距離が最も長くなる端部の位置を特定する。
図14に示される例において、検出部88は、エッジ1420と、エッジ1430との2点を特定する。検出部88は、特定した2点のエッジ位置の中間1450を、スペックルパターンの中心位置として特定する。
【0113】
図15は、他の実施形態に従うスペックルパターンの中心位置を検出する制御を説明する図(その2)である。他の実施形態に従う検出部88は、
図14と同様に、スペックルパターンのエッジ1500を特定する。
【0114】
図15に示される例において、検出部88は、2次元センサー84上にエッジ1500のすべてが含まれていない(例えば、
図10の状態)と判断する。検出部88は、この判断に応じて、検出した複数のエッジ1500が形成する外径線に基づき、当該外径性が形成する図形(換言すれば、スペックルパターン)を推定する。検出部88は、推定した図形の重心1510を、スペックルパターンの中心位置として特定し得る。
【0115】
図16は、2次元センサー84上にスペックルパターンの中心位置がないと判断する制御を説明する図である。
【0116】
分図(A)に示される例において、スペックルパターン1600の中心位置1610が2次元センサー84上にないことを表している。この状態において、検出部88は、2次元センサー84が検出する輝度分布を横方向および/または縦方向に従う輝度分布に変換する。分図(B)に示される例において、検出部88は、2次元センサー84が検出する輝度分布を横方向に従う輝度分布1620に変換している。
【0117】
検出部88は、変換後の輝度分布1620に対して平滑化処理を行ない、輝度分布1630を得る。検出部88は、輝度分布1630において、ピーク(変曲点)が存在するか否かを判断する。一例として、検出部88は、所定距離(例えば、20pixel)ごとに傾きの平均値を算出し、当該傾きの平均値が正から負に切り替わる場合に、ピークが存在すると判断し得る。
【0118】
検出部88は、輝度分布1630において、ピークが存在しないと判断した場合に、スペックルパターン1600の中心1610が、2次元センサー84上に存在しないと判断する。検出部88は、その旨を制御部6に通知し得る。例えば、制御部6は、検出部88から当該通知を受け取った場合に、移動量算出部90が算出するシートSの搬送速度よりも、定着モーター72や2次転写モーター73に印加する電圧などによって定まるシートSの搬送速度(システム速度)を優先し得る。その理由は、
図6で説明した通り、解析範囲の位置が、スペックルパターンの中央から離れる程、移動量の誤差が大きくなるためである。
【0119】
(移動量算出部90の構成)
図17は、実施形態に従う移動量の算出方法について説明する図である。なお、
図5と同一符号を付している部分については、同じであるため、その部分についての説明は繰り返さない。
【0120】
図17を参照して、移動量算出部90は、切り出しユニット510に替えて、切り出しユニット1700を有する点において、
図5で説明した関連技術に従う移動量算出部90Rと相違する。
【0121】
切り出しユニット1700は、ROM92に格納される解析範囲94に従い、入力される第1画像および第2画像から第1解析画像および第2解析画像を切り出す。この解析範囲94は、設定部89が、検出部88が検出したスペックルパターンの中心位置に基づいて設定する。より具体的には、設定部89は、検出部88が検出したスペックルパターンの中心位置が解析範囲94の中央になるように、解析範囲94を設定する。
【0122】
上記のように、実施形態に従う移動量算出部90は、入力された画像に対し、予め定められた範囲で切り出しを行なうのではなく、スペックルパターンの中心位置に基づく解析範囲で切り出しを行なう。これにより、移動量算出部90は、撮影部70を構成する光学系の位置関係が変化した場合であっても、高い精度で移動体の移動量を算出することができる。
【0123】
(具体的な制御の流れ)
図18は、ある実施形態に従う移動体の移動量の算出制御について説明するフローチャートである。
図18に示される処理は、FPGA86により実現され得る。他の局面において、処理の一部または全部が、制御部6(CPU)によって実現されてもよいし、他のハードウェアによって実現されてもよい。
【0124】
ステップS1810において、FPGA86は、制御部6から画像形成装置100に電源が投入された旨の通知を受け取る。
【0125】
ステップS1815において、FPGA86は、検出部88および設定部89として、解析範囲94(画像の切り取り範囲)の設定を行なう。この処理の詳細は、
図19で後述される。
【0126】
ステップS1820において、FPGA86は、画像形成装置100に印字ジョブが入力されたか否かを判断する。例えば、制御部6は、画像形成装置100に印字ジョブが入力された場合に、その旨をFPGA86に通知する。これにより、FPGA86は、この判断を行ない得る。
【0127】
FPGA86は、画像形成装置100に印字ジョブが入力されたと判断した場合(ステップS1820においてYES)、処理をステップS1825に進める。そうでない場合(ステップS1820においてNO)、FPGA86は、処理をステップS1820に戻す。
【0128】
ステップS1825において、FPGA86は、変数Nを初期化(例えば、1に設定)する。この変数Nは、例えば、図示しないRAM(Random Access Memory)に格納され得る。
【0129】
ステップS1830において、FPGA86は、搬送中のシートSを撮影部70により撮影してN番目の画像を生成する。
【0130】
ステップS1835において、FPGA86は、切り出しユニット1700として、生成したN番目の画像から、解析範囲94に対応する部分を切り出して、第N解析画像を生成する。
【0131】
ステップS1840において、FPGA86は、搬送中のシートSを撮影部70により撮影してN+1番目の画像を生成する。
【0132】
ステップS1845において、FPGA86は、生成したN+1番目の画像から、解析範囲94に対応する部分を切り出して、第N+1解析画像を生成する。
【0133】
ステップS1850において、FPGA86は、移動量算出部90として、第N解析画像と、第N+1解析画像とに基づいて、シートSの移動量を算出する。
【0134】
ステップS1855において、FPGA86は、印字ジョブが終了したか否かを判断する。例えば、制御部6は、印字ジョブが終了した場合に、その旨をFPGA86に通知する。これにより、FPGA86は、この判断を行ない得る。
【0135】
FPGA86は、印字ジョブが終了したと判断した場合(ステップS1855においてYES)、一連の処理を終了する。そうでない場合(ステップS1855においてNO)、FPGA86は、処理をステップS1860に進める。
【0136】
ステップS1860において、FPGA86は、変数Nをインクリメントした後、処理をステップS1840に戻す。
【0137】
図19は、
図18におけるステップS1815の処理の詳細を説明するフローチャートである。
【0138】
ステップS1910において、FPGA86は、光源81から移動体であるシートSに向けてレーザー光を照射する。
【0139】
ステップS1915において、FPGA86は、シートSによる反射光が2次元センサー84上に形成する基準画像(スペックルパターン)を生成する。
【0140】
ステップS1920において、FPGA86は、基準画像の横方向に従う輝度分布を取得する。
【0141】
ステップS1925において、FPGA86は、ノイズフィルタ87として、取得した輝度分布からノイズ成分を除去する。
【0142】
ステップS1930において、FPGA86は、横方向に従う輝度分布に2カ所のエッジ(スペックルパターンのエッジ)が存在するか否かを判断する。一例として、FPGA86は、輝度分布における輝度としきい値輝度Cthとの上限関係が反転する位置が2カ所あるか否かを判断する。
【0143】
FPGA86は、横方向に従う輝度分布に2カ所のエッジが存在すると判断した場合(ステップS1930においてYES)、処理をステップS1935に進める。そうでない場合(ステップS1935においてNO)、FPGA86は、処理をステップS1940に進める。
【0144】
ステップS1935において、FPGA86は、検出した2カ所のエッジ位置の中間を、スペックルパターンの中心位置のうち横方向における位置として設定して、処理をステップS1950に進める。
【0145】
ステップS1940において、FPGA86は、横方向に従う輝度分布において、ピークが存在するか否かを判断する。FPGA86は、ピークが存在すると判断した場合(ステップS1940においてYES)、処理をステップS1945に進める。そうでない場合(ステップS1940においてNO)、FPGA86は、処理をステップS1960に進める。
【0146】
ステップS1945において、FPGA86は、検出したピーク位置をスペックルパターンの中心位置のうち横方向における位置として設定して、処理をステップS1950に進める。
【0147】
ステップS1950において、FPGA86は、縦方向についてもステップS1920〜S1945と同様の処理を行ない、スペックルパターンの中心位置のうち縦方向における位置を設定する。
【0148】
ステップS1955において、FPGA86は、設定部89として、検出したスペックルパターンの中心位置が解析範囲の中央となるように、解析範囲94を設定する。
【0149】
上記一連の制御によれば、移動量検知装置としてのセンサーユニット44は、撮影部70を構成する光学系の位置関係が変化した場合であっても、精度よくシートSの搬送速度を検出することができる。加えて、この移動量検知装置は、従来と同様のハードウェア構成を用いて、従来よりも高い精度で移動体の移動量を検知できる。そのため、この技術は、センサーユニット44の生産コストの上昇を抑制し得る。
【0150】
(その他の構成−中心位置の検出)
上記の実施形態に従うセンサーユニット44(移動量検知装置)は、撮影部70が撮影する画像に基づいて、スペックルパターンの中心位置を検出する構成であった。他の実施形態に従う画像形成装置100Aは、光源81および2次元センサー84の配置位置の変位量を物理的に測定し、その測定結果に基づいてスペックルパターンの中心位置を検出し得る。
【0151】
図20は、他の実施形態に従う画像形成装置100Aに含まれるセンサーユニット44Aの構成例を説明する図である。センサーユニット2000は、
図3で説明したセンサーユニット44に比して、測距センサー2010、2020をさらに備え、検出部88に替えて検出部88Aを備える点において相違する。
【0152】
測距センサー2010、2020は、例えば、光や超音波を用いて非接触に対象物までの距離を測定する。なお、他の局面において、これらのセンサーは、接触方式(例えば、差動トランス方式)により対象物の変位を測定する構成であってもよい。
【0153】
測距センサー2010は、測距センサー2010と光源81との距離を測定する。ある局面において、光源81は、角度θ2が45°となるように配置される。この場合、例えば、光源81が傾いて角度θ2が45°より大きくなった場合、測距センサー2010が測定する距離が短くなる。一方、光源81が傾いて角度θ2が45°より小さくなる場合、測距センサー2010が測定する距離が長くなる。
【0154】
検出部88Aは、測距センサー2010および2020の測定結果を受け付ける。検出部88Aは、測距センサー2010の測定結果に基づき、角度θ2を特定する。同様にして、検出部88Aは、測距センサー2020の測定結果に基づいて、2次元センサー84に対する垂線と、シートSとがなす角度θ1を特定する。
【0155】
検出部88Aは、特定した角度θ1と角度θ2とに基づいて、2次元センサー84におけるスペックルパターンの中心位置を特定する。
【0156】
上記によれば、他の実施形態に従うセンサーユニット2000は、測距センサーによってスペックルパターンの中心位置を検出し得る。このような構成によっても、センサーユニット2000は、撮影部70を構成する光学系の位置関係が変化した場合であっても、精度よく移動体の移動速度を算出することができる。
【0157】
(その他の構成−中心位置の更新)
上記の例では、センサーユニット44は、画像形成装置100の電源投入時にスペックルパターンの中心位置を検出するとともに、解析範囲94を設定する構成であった。他の局面において、センサーユニット44は、画像形成装置100への電源投入後に解析範囲94を更新(変更)する構成であってもよい。
図19の例において、FPGA86は、基準画像を撮影してから予め定められた時間(例えば、10分)を経過したことに応じて、当該経過時点において撮影部70が直近に撮影した新規画像に基づいて解析範囲94を更新してもよい。
【0158】
(その他の構成−解析範囲の手動設定)
上記の例では、センサーユニット44が自動的に解析範囲94を設定する構成であった。ある局面において、
図16のように、2次元センサー84上にスペックルパターンの中心位置が存在しない場合もあり得る。このような場合に、設定部89は、画像形成装置100に設けられる入力装置(不図示)が受け付けたユーザー入力に基づいて、解析範囲94を更新(変更)し得る。入力装置は、例えば、タッチパネル、ハードキー等であり得る。
【0159】
(その他の構成−解析範囲の設定(更新)条件)
上記の例では、センサーユニット44は、スペックルパターンの中心位置を検出して、当該中心位置を解析範囲の中央とするように解析範囲94を設定する構成であった。他の実施形態において、センサーユニット44は、初期状態において、2次元センサー84の中央を中心位置とする解析範囲が設定されており、所定条件を満たした場合に、スペックルパターンの中心位置を解析範囲の中央とするように解析範囲94を更新してもよい。所定条件とは、例えば、スペックルパターンの中心位置が、2次元センサー84の中央から予め定められた距離(画素数)以上離れた場合であり得る。
【0160】
上記に示される各種処理は、1つのFPGA86によって実現されるものとしてあるが、これに限られない。これらの各種機能は、少なくとも1つのプロセッサのような半導体集積回路、少なくとも1つの特定用途向け集積回路ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのDSP(Digital Signal Processor)、少なくとも1つのFPGA、および/またはその他の演算機能を有する回路を含む回路によって実装され得る。
【0161】
これらの回路は、有形の読取可能な少なくとも1つの媒体から、1以上の命令を読み出すことにより上記に示される各種機能を実現しうる。
【0162】
このような媒体は、磁気媒体(たとえば、ハードディスク)、光学媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、DVD)、揮発性メモリ、不揮発性メモリの任意のタイプのメモリなどの形態をとるが、これらの形態に限定されるものではない。
【0163】
揮発性メモリはDRAM(Dynamic Random Access Memory)およびSRAM(Static Random Access Memory)を含み得る。不揮発性メモリは、ROM、NVRAMを含み得る。半導体メモリは、少なくとも1つのプロセッサとともに半導体回路の1部分であり得る。
【0164】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。